説明

半導体特性を有する光触媒物質及びその製造方法と利用方法

【課題】半導体特性を有する光触媒物質及びその製造方法と利用方法を提供する。
【解決手段】(a)第1の金属に対して第2の金属が所定のモル比となるように、前記第1の金属の前駆体及び前記第2の金属の前駆体の混合物を形成する段階であって、その際、該第1の金属は光誘導された半導体特性を示す金属であり、該第2の金属はドーパントであり、(b)前記混合物から不要なイオンを除去するために前記第1の金属の前駆体及び第2の金属の前駆体の混合物を処理して、前記第2の金属のイオンが全体に分散された前記第1の金属の酸化物を含む初期生成物を形成する段階と、(c)前記初期生成物を乾燥して、前記第2の金属のイオンでドーピングされた、乾燥状態の第1の金属の酸化生成物を形成する段階であって、該乾燥状態の生成物は粒子を含み、(d)熱を加えることによって前記乾燥状態の第1の金属の酸化生成物を焼成して、光触媒物質を形成する段階という、逐次的な段階を含む、光触媒物質の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新たな光触媒物質、その製造方法及びその利用方法と、前記光触媒物質を用いる空気処理システムに関する。詳細には、一般にエアストリームに存在しうる揮発性有機化合物を分解する場合に、特に効果的であり、新規であり、かつ向上した光触媒物質を使用する空気浄化技術とともに、前記光触媒物質を製造する方法と、前記光触媒物質を用いてエアストリームをクリーンにして浄化するための装置及び方法に関するものである。本発明の光触媒物質についての詳細な説明は、エアストリームを“クリーンルーム”へ再循環させる前に、“クリーンルーム”環境から有機不純物を除去及び/または分解するためにエアストリームを処理することに関する。
【背景技術】
【0002】
空気から不純物を除去するために、半導体様の特性を有する金属または金属酸化物をベースとする光触媒物質を調製することが、空気浄化の技術において知られている。例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)及びこれらに類似する金属、並びにこれらの金属酸化物、例えばTiO、ZrO、SnO及びZnOは価電子バンド状態と伝導バンド状態とで表すことができる、少なくとも二つのエネルギー準位を有する半導体特性を示すことが知られている。従って、適当な波長の光エネルギーによって励起されたり活性化されると、このような物質は伝導バンドで電子が励起され、価電子バンドでは電子が抜け出て正孔が生成される。光触媒物質により、太陽光、蛍光光、紫外線または他の形態の光線は光触媒物質を活性化する場合に効果的に用いられる。
【0003】
異種の光触媒が、ここ数年の間に相当な注目を集めているのは周知の通りである。二酸化チタン(TiO)を用いる異種の光触媒の包括的な概要が、“Photocatalysis on TiO Surfaces:Principles、Mechanisms、and Selected Results.”という題目で記述されている(Chemical Reviews、A.L.Linsebigler et al.、1995年)。上記の論文は、汚染された空気と汚水で発見される有機化合物を破壊する場合の、TiOをベースとする光触媒物質の様々な用途について論じている。
【0004】
前述した論文は、有機化合物のような不純物を分解する場合、光触媒物質がどのように動作するかについて以下の有用な要約を掲載している。“異種の光触媒システムで、光誘導された分子の置換または反応は触媒の表面で起こる。・・・システムの初期励起に続いて電子移動及び/またはエネルギー移動が起こる。これは、(電子移動またはエネルギー移動を介しての)二次的な脱励起過程であり、前記脱励起過程は、異種の光触媒過程での化学反応へとつながる。・・・光触媒過程は、非常に反応性の高い電子的励起状態をひき起こす分子または基質による光子の初期吸収を含む。光誘導された化学作用の効率はシステムの光吸収特性によって調節される。”
光触媒物質が光エネルギーによって活性化されると、活性化された光触媒物質は顕著に強い酸化力を有するとともに、電子は“スーパーオキシド”アニオン(陰イオン)(一般にOで示される。)を形成し、正孔は水酸化(OH)ラジカルを形成する傾向がある。特に、O及びOHラジカルは光触媒の表面で接触する有機不純物を迅速かつ効果的に酸化させることができる。これにより、不純物は水(HO)と二酸化炭素(CO)に変換されるか、時には微量の相対的に無害な無機酸(例えばHCl)に変換される。従って、エアストリーム中の揮発性有機不純物は、光活性化された光触媒を有するエアストリームと接触することによって、効果的に分解されて環境から除去できる。
【0005】
“バンドギャップ光励起(band−gap photoexcitation)”で知られる現象は、前述したChemical Reviewsに次のような技術用語で記述されている。
【0006】
“連続的な電子状態を有する金属とは異なり、半導体は空乏エネルギー領域を有しており、そこでは、固体中で光活性によって生成される電子と正孔の再結合を促進するために利用できるエネルギー準位が全くない。充満した価電子バンドの上部から、空の伝導バンドの下部まで広がる空乏領域はバンドギャップと呼ばれる。ナノ秒の間にバンドギャップを横切って励起が発生すれば、生成された電子−正孔対が電荷を受けて溶液またはガスから半導体の表面に移動する。半導体がそのままの状態で、吸着種への電荷移動が続き発熱するならば、この過程を異種の光触媒物質と称する。
【0007】
そしてChemical Reviewsは、半導体表面で光誘導された化学反応である、電子と正孔に対する脱励起経路の方法を更に詳細に説明している。
【0008】
“吸着された有機種または無機種あるいは溶媒への、光誘導された電子の移動は、半導体表面への電子及び正孔の移動に起因する。表面に前記の種が予め吸収されると、電子移動過程はより効果的である。反面、表面で半導体は電子受容体(大概炭素ガス溶液中の酸素)を減少させるために電子を提供しうる(経路C)。順次、正孔は表面に移動し得る。その表面では、表面からドナー種(donor species)に由来する電子は、ドナー種を酸化させる表面の正孔と結合しうる(経路D)。
【0009】
しかしながら、光エネルギーを有する光触媒の励起によって発生する電子及び正孔は、非常に早く再結合する傾向がある。これにより活性化された光触媒物質の強い酸化力が中和される。Chemical Reviewsには次の通り、更に詳細に記載されている。“電子及び正孔の再結合は、吸着種への電荷の移動と拮抗している。”物質の高い酸化力を保存するのに十分な間、(“自由”電子及び正孔を有する)励起状態にとどまるように、光触媒物質を製造できれば、光触媒の効率は向上しうる。
【0010】
光触媒物質の酸化力の増加は電子と正孔の再結合速度を減少させることによって得ることができる。このような効果は、比較的少ない量の適当なドーパント(例えば、貴金属)を光触媒物質に添加することによって得ることができる。例えば、光触媒物質中の適当なドーパント分子は、一時的に自由電子と結合する電子トラップサイトとして働くことができる。これにより、正孔とともに電子が再結合することを防ぐことができる。同様に、光触媒物質中の適当なドーパント分子は、一時的に正孔を塞ぐ正孔トラップサイトとして働くことができる。これにより、電子とともに正孔が再結合することを防ぐことができる。
【0011】
光触媒物質の効率を向上させる他の手段としては、光触媒物質のバンドギャップエネルギーを増加させることである。このような効果は、相対的に少ない量の適当なドーパントを光触媒物質に添加させることによって得ることもできる。
【0012】
従って、貴金属を添加することによって金属酸化物の光触媒の光触媒効率を向上させうることが分かる。例えば、一般に金属アルコキシド前駆体で作られるTi、Zr、Sn、Zn、または類似した金属を用いた金属酸化物の光触媒は、光触媒物質中にトラップサイトを与えるために、好適に白金(Pt)、金(Au)または銀(Ag)のような貴金属を添加できる。光触媒を形成する際に前駆体として適当である金属アルコキシドは、一般に[M−O−アルキル]の化学式を有する。ここでMは適当な金属、Oは酸素、そしてアルキル基はメチル、エチル及び6個またはそれ以下の炭素原子を有する類似のアルキル基から選択される。
【0013】
このような製造方法で、溶液または所定の溶媒中で貴金属が分散した貴金属前駆体が調製される。そして金属酸化物の光触媒には、蒸着、含浸、共沈などの担持方法またはゾル−ゲル法のような類似の方法で貴金属が添加される。
【0014】
一般的な担持方法で、金属酸化物の光触媒は、貴金属前駆体の水槽にしばらくの間浸漬してから取り出す。貴金属の粒子は、溶媒または分散剤が光触媒を蒸発及び/またはドリップさせると、表面及び/または内側に蒸着される。担持過程は、効果的に光触媒をドーピングさせるため、何回も反復しなければならない。しかしながら、担持方法と比較すると、ゾル−ゲル法は非常に複雑で過程が長い(速度が遅い)傾向がある。
【0015】
しかしながら、このような従来技術は多くの制限ないし欠点がある。従来技術の一番重要な欠点は高価の物質である。Pt、Au、Ag及び貴金属は非常に高価である。更に、金属アルコキシド前駆体は相対的に高価な商品である。従来技術の二番目の欠点は相対的に製造過程が複雑で、長時間が必要となる点である。
【0016】
前述した従来方法の制限としては、金属アルコキシド前駆体技術を用いて、ナノサイズの金属酸化物粒子を光触媒として製造することが非常に難しい。光触媒物質の粒子サイズは光触媒の効率と反比例の関係にある。特に、光触媒の小さな粒子サイズは、不純物を分解する効率と大きく関連している。なぜなら、小さな粒子サイズは大きな表面積と相関し、エアストリームと光触媒物質との間の大きな活性接触面積とも相関しているからである。
【0017】
光触媒技術における最近の開発では、多様なドーパントを添加したTiOを用いて有用な光触媒物質が製造されている。例えば、特許文献1には、光触媒または紫外線吸収体としての酸化亜鉛、酸化白金、酸化マンガンまたは酸化アルミニウムでドーピングされた二酸化チタンを発熱的に製造する過程が開示されている。生産ストリームに酸化物のエアロゾルを注入することによってチタン二酸化物が添加される。
【0018】
また、先行技術として特許文献2には少なくとも一つのランタン金属酸化物とともにTiOが添加された光触媒の製造が開示される。光触媒物質はゲルを乾燥し、これを焼成してチタンを含むゲルを形成することによって製造される。
【特許文献1】大韓民国特許第10−0216032号明細書
【特許文献2】大韓民国特許公開第10−2005−0077887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、特許文献1のような製造過程は相対的に複雑な生産設備が要求され、徹底的に均一なTiOを添加することを保証できない。そして視覚できるサイズの光触媒粒子を製造できない。
【0020】
また、特許文献2のような製造過程はかなり珍しく、高価な“内部転移”ランタン系物質を用いて、乾燥及び焼成段階で相対的に高い工程温度で行われる。
【0021】
従来技術のかかる問題点と制限は、本発明の生成物、方法及び装置によって全てまたは少なくとも一部分は解決できる。
【0022】
本発明が解決しようとする技術的課題は、エアストリームから有機不純物を分解/除去することに有用であり、新規であり、かつ向上した光触媒物質を提供することにある。
【0023】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、前記の新しい光触媒物質の製造方法を提供することにある。
【0024】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、不純物を分解/除去するために流体ストリームを処理する、新規な光触媒物質を用いる方法及び装置を提供することにある。
【0025】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、貴金属なしに流体ストリームで不純物を除去/分解することに高い光触媒効率を有する比較的安価な光触媒物質、前記光触媒物質を製造する方法、並びに前記光触媒物質を用いる方法及び装置を提供することにある。
【0026】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、第1の金属の酸化物を含む光触媒物質を提供し、前記第1の金属は光誘導された半導体特性を有し、また、ドーピング特性を提供するために、前記第1の金属の酸化物に対して効果的な量の第2の金属のイオンを添加することにある。
【0027】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、第1の金属の前駆体を混合する段階を少なくとも一つ含み、光誘導された半導体特性を有する金属の群から選択された第1の金属の無機塩化物を含み、ドーパントの群から選択された第2の金属の無機塩化物を含む第2の金属の前駆体を有する製造方法を提供することにある。
【0028】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、第1の金属及び第2の金属の前駆体を混合し、前記前駆体混合物から不要なイオンを除去し、前記処理された混合物を乾燥し、前記乾燥された混合物を焼成するという逐次的な段階を含む製造方法を提供することにある。
【0029】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、エアストリーム内の有機不純物を分解/除去するため、エアストリームを処理する、本発明による光触媒物質を用いる空気浄化方法を提供することにある。
【0030】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、エアストリーム内の有機不純物を分解/除去するため、エアストリームを処理する、本発明による光触媒物質を用いる空気浄化装置を提供することにある。
【0031】
本発明の技術的課題は以上で言及した技術的課題で制限されることはない。また他の技術的課題は以下の記載から当業者に明確に理解されうる。
【課題を解決するための手段】
【0032】
前記技術的課題を達成するために、本発明は、(a)第1の金属に対して第2の金属が所定のモル比となるように、前記第1の金属の前駆体及び前記第2の金属の前駆体の混合物を形成する段階であって、その際、該第1の金属は光誘導された半導体特性を示す金属であり、該第2の金属はドーパントであり、(b)前記混合物から不要なイオンを除去するために前記第1の金属の前駆体及び第2の金属の前駆体の混合物を処理して、前記第2の金属のイオンが全体に分散された前記第1の金属の酸化物を含む初期生成物を形成する段階と、(c)前記初期生成物を乾燥して、前記第2の金属のイオンでドーピングされた、乾燥状態の第1の金属の酸化生成物を形成する段階であって、該乾燥状態の生成物は非常に小さい粒子を含み、(d)熱を加えることによって前記乾燥状態の第1の金属の酸化生成物を焼成して、光触媒物質を形成する段階という、逐次的な段階を含むことを特徴とする光触媒物質の製造方法を提供する。
【0033】
また、本発明は、(I)(i)第1の金属に対して第2の金属が所定のモル比となるように、前記第1の金属の前駆体及び前記第2の金属の前駆体の混合物を形成する段階であって、その際、該第1の金属は光誘導された半導体特性を有する金属であり、該第2の金属はドーパントであり、(ii)前記混合物から不要なイオンを除去するために前記第1の金属の前駆体及び第2の金属の前駆体の混合物を処理して、前記第2の金属のイオンが全体に分散された前記第1の金属の酸化物を含む初期生成物を形成する段階と、(iii)前記初期生成物を乾燥して、前記第2の金属のイオンでドーピングされた、乾燥状態の第1の金属の酸化生成物を形成する段階であって、該乾燥状態の生成物は非常に小さい粒子を含み、(iv)熱を加えることによって前記乾燥状態の第1の金属の酸化生成物を焼成して、光触媒物質を形成する段階と、によって製造された光触媒物質のベッドと、(II)前記光触媒を活性化するのに十分な前記光触媒物質のベッドに直接光を提供する光源と、(III)エアストリームが光触媒物質の活性化されたベッドに接触するように、有機不純物を含むエアストリームを循環させるための循環システムと、を組み合わせで含む、揮発性有機不純物を含有するエアストリームの浄化のための空気処理システムを提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明の実施形態によれば、本発明の光触媒はバンドギャップが広く、再結合速度が小さくなる。これにより光触媒活性が向上し、酸化力が強化される。また、本発明の光触媒はナノサイズの粒子から製造され、エアストリームと接触する場合、表面積が大きくなるという長所も有する。これにより揮発性有機化合物を分解する効果をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の第1の態様は、(a)第1の金属に対して第2の金属が所定のモル比となるように、前記第1の金属の前駆体及び前記第2の金属の前駆体の混合物を形成する段階であって、その際、該第1の金属は光誘導された半導体特性を示す金属であり、該第2の金属はドーパントであり、(b)前記混合物から不要なイオンを除去するために前記第1の金属の前駆体及び第2の金属の前駆体の混合物を処理して、前記第2の金属のイオンが全体に分散された前記第1の金属の酸化物を含む初期生成物を形成する段階と、(c)前記初期生成物を乾燥して、前記第2の金属のイオンでドーピングされた、乾燥状態の第1の金属の酸化生成物を形成する段階であって、該乾燥状態の生成物は非常に小さい粒子を含み、(d)熱を加えることによって前記乾燥状態の第1の金属の酸化生成物を焼成して、光触媒物質を形成する段階という、逐次的な段階を含むことを特徴とする、光触媒物質の製造方法である。
【0036】
前記光触媒物質は、ドーパントの群から選択される第2の金属が効果的なドーパント量だけ添加され、光誘導された半導体特性を有する第1の金属の酸化物を必須に含む。
【0037】
前記光誘導された半導体特性を示す金属は、前述したChemical Reviewsで限定されたように、固体内で光子によって生成された電子及び正孔の再結合を促進させることができる、エネルギー準位がない空乏エネルギー領域を有する金属を意味する。
【0038】
また、前記ドーパントは、前述したChemical Reviewsに記載されたように、電子状態の完全な連続体を有し、ドーパントとしての機能を有する金属を意味する。
【0039】
前記光誘導された半導体特性を示す金属及び前記ドーパントは、炭素を含まない。
【0040】
第1の金属及び第2の金属を提供するために用いられた前駆体物質の結果として、また前駆体物質から光触媒物質を製造するために用いられる方法の段階に続く一連の段階の結果として、前記光触媒物質は、平均粒径が0を超えて10nm以下である非常に小さい粒子で形成されうる。
【0041】
このようなナノサイズの光触媒粒子は、揮発性有機化合物を含むエアストリームと光触媒物質の間の表面/接触領域を増加させることによって揮発性有機化合物を分解する場合、光触媒物質の効率及び効果を相当程度向上させる。
【0042】
前述したChemical Reviewsは、鉄(Fe+3)または銅(Cu+2)のような転移金属をTiO光触媒にドーピングする一般的な概念として、光を照射する間、電子−正孔が再結合することを抑制するための電子のトラッピングが向上しうると開示しているものの、本発明の製造方法は何ら開示されていない。
【0043】
前記第1の金属の前駆体はMClの化学式で表現できる。ここで、Mは光誘導された半導体特性を示す金属(非炭素金属)であり、チタン、ジルコニウム、錫、亜鉛、並びにこれらの合金及び組み合わせからなる群から選択されうる。また、Clは塩化物イオンであり、x及びyは正の整数であり、1〜6の正の整数であることが好ましい。具体的例として、第1の金属の前駆体はTiCl、ZrCl、SnCl、ZnCl及びこれらの混合物からなる群から選択されうる。炭素は本発明で不純物としてみなすので、“半導体物質”であるとしても、本発明のMから炭素は除外される。
【0044】
前記第2の金属の前駆体はMClの化学式で表現できる。ここで、Mはドーパント(非炭素ドーパント)であり、鉄、タングステン、マンガン、バナジウム、並びにこれらの合金及び組み合わせからなる群から選択されうる。また、Clは塩化物イオンであり、x及びyは正の整数であり、1〜6の正の整数であることが好ましい。例として第2の金属の前駆体はFeCl、WCl、MnCl、VCl及びこれらの混合物からなる群から選択され、より具体的にはFeCl、FeClまたはFeCl、MnCl、MnCl、WCl、WCl、WCl、WCl、VCl、VCl及びVClが挙げられる。炭素は本発明で不純物としてみなすので、“ドーパント”であるとしても、本発明のMから炭素は除外される。
【0045】
また、前記(a)段階は、所定の溶媒で前記第2の金属の前駆体の溶液を形成する段階と、前記第2の金属の前駆体の溶液に前記第1の金属の前駆体を添加する段階と、前記溶液を混合し、第1の金属の前駆体及び前記第2の金属の前駆体の、実質的に均質な混合物を形成する段階と、を含んでもよい。
【0046】
前記第2の金属の前駆体はFeCl、WCl、MnCl、VCl及びこれらの混合物からなる群から選択され、x及びyは正の整数であり、前記所定の溶媒は水、塩酸、アセトン、エーテル及びエタノールからなる群から選択されうる。前記所定の溶媒で前記第2の金属の前駆体の溶液を形成する段階は、0〜1℃の温度で行われることが好ましい。前記第2の金属の前駆体の溶液中での前記第2の金属のモル濃度は0.1〜10モル%であることが好ましい。なお、前記第1の金属の前駆体を添加する際の温度は、0〜1℃であることが好ましい。
【0047】
また、前記(b)段階は、透析タイプのイオン除去処理でありうる。かかる段階において、前記第1の金属の前駆体及び第2の金属の前駆体の混合物から塩化物イオンが除去されることが好ましい。
【0048】
前記(b)段階は、塩化物イオンを透過させる一方で前記第1の金属及び前記第2の金属を透過させない半透膜を含む容器中に、前記第1の金属の前駆体及び第2の金属の前駆体の混合物を入れる段階と、前記混合物から実質的に塩化物イオンを除去するのに十分な間、前記前駆体の混合物を有する前記容器を純水槽中で流動させる段階と、前記容器から前記初期生成物を回収する段階と、を含んでもよい。
【0049】
前記容器が、少なくとも1時間、前記純水槽中で流動されることが好ましい。前記純水槽は、室温であることが好ましい。なお、本発明における「室温」とは、一般的な周囲温度(約20℃)という意味であるが、具体的には0〜40℃であり、好ましくは10〜30℃、より好ましくは10〜20℃である。
【0050】
また、前記(c)段階は、室温及び1.333×10〜1.333×10kPa(10〜10torr)の圧力で行われる真空乾燥段階であることが好ましい。
【0051】
また、前記(d)段階は、好ましくは50〜600℃、より好ましくは100〜500℃、更に好ましくは300〜500℃の温度で行われる。前記(d)段階は、1〜3時間行われるのが好ましい。
【0052】
前記(d)段階は、焼成前の段階(c)の前記生成物の有効性と比較して、揮発性有機化合物を分解する際の光触媒の効果を有意に高めるのに十分な時間及び温度で行われることが好ましい。
【0053】
本発明の光触媒で、第2の金属成分は、前述した先行技術の光触媒の高価な貴金属と類似した役割を果たすことが分かる。特に第2の金属成分は再結合性向を遅くし、光活性化された光触媒に対する高い酸化力を維持させることによって自由電子及び電子ホールのためのトラップサイトを提供する。本発明によって製造された光触媒は、第1の金属に対する第2の金属の効果的な所定のモル比を含むものである。前記第1金属に対する第2金属の効果的な所定のモル比は、非ドーピングされた光触媒に比して、再結合を遅くするための電子及び正孔トラッピングのより効果的なドーパントとしての役割を提供する。提供された本発明の一実施形態で、第1の金属に対する第2の金属の効果的な所定のモル比は、0.1〜10モル%の範囲を有するものである。
【0054】
本発明は、前述したように実質的に0を超えて10nm以下の平均粒径を有する粒子が含まれた最終生成物としての光触媒物質を製造する方法を提供する。前記方法は、4つの逐次的段階を含む。(a)第2の金属と第1の金属とが適当な比率となるように、第1の金属前駆体を第2の金属前駆体と混合し、(b)初期生成物のゾル、ゲルまたはパウダーを形成するため前駆体混合物から不純物イオンを除去し、(c)0を超えて10nm以下の平均粒径を有する実質的に全ての粒子を含む乾燥された生成物を得るため所定の温度及び圧力条件で前記段階(b)から生成された初期生成物を乾燥し、(d)最終光触媒生成物を生成するために調節された温度及び時間条件で前記乾燥された生成物粒子を焼成(熱処理)する。
【0055】
前記前駆体混合物から不純物イオン(一般に塩化物イオン)を除去する段階は、第1の金属酸化物の格子構造全体に分布する第2の金属イオンを有する第1の金属の酸化物を形成することである。これは最終光触媒生成物を生成するために、本発明の方法と同時に乾燥及び焼成が要求される“初期生成物”を作り出す。
【0056】
本発明の第2の態様は、空気浄化方法とエアストリームから揮発性有機不純物を分解/除去するために、本発明による光触媒物質を用いた空気処理システム(空気浄化装置)である。エアストリームに含まれる揮発性有機不純物を分解する方法としては、光触媒物質を光に露出させることによって、上記第1態様の方法によって製造された光触媒物質のベッド(bed)を活性化する段階と、揮発性有機不純物を含むエアストリームを、活性化された光触媒物質の前記ベッドに接触されるように通過させる段階と、を含むものがある。
【0057】
揮発性有機不純物を含有するエアストリームの浄化のための前記空気処理システムとしては、(I)(i)第1の金属に対して第2の金属が所定のモル比となるように、前記第1の金属の前駆体及び前記第2の金属の前駆体の混合物を形成する段階であって、その際、該第1の金属は光誘導された半導体特性を有する金属であり、該第2の金属はドーパントであり、(ii)前記混合物から不要なイオンを除去するために前記第1の金属の前駆体及び第2の金属の前駆体の混合物を処理して、前記第2の金属のイオンが全体に分散された前記第1の金属の酸化物を含む初期生成物を形成する段階と、(iii)前記初期生成物を乾燥して、前記第2の金属のイオンでドーピングされた、乾燥状態の第1の金属の酸化生成物を形成する段階であって、該乾燥状態の生成物は非常に小さい粒子を含み、(iv)熱を加えることによって前記乾燥状態の第1の金属の酸化生成物を焼成して、光触媒物質を形成する段階と、によって製造された光触媒物質のベッドと、(II)前記光触媒を活性化するのに十分な前記光触媒物質のベッドに直接光を提供する光源と、(III)エアストリームが光触媒物質の活性化されたベッドに接触するように、有機不純物を含むエアストリームを循環させるための循環システムと、を組み合わせで含むものがある。
【0058】
前記光触媒物質は、支持部材(support member)の表面にコーティングされているのが好ましい。前記光触媒物質は、0を超えて10nm以下の平均粒径を有する非常に小さい粒子で形成されるのが好ましい。なお、前記ベッド(bed)とは、前記光触媒物質が位置する部材であり、前記ベッドは前記支持部材の上に位置しうる。
【0059】
また、(a)前記第1の金属の前駆体は、MClの化学式を有し、Mは光誘導された半導体特性を示す金属であり、Clは塩化物イオンであり、x及びyは正の整数であり、(b)前記第2の金属の前駆体は、MClの化学式を有し、Mはドーパントであり、Clは塩化物イオンであり、x及びyは正の整数であることが好ましい。ここで、上記Mはチタン、ジルコニウム、錫、亜鉛並びにこれらの合金及び組み合わせからなる群から選択され、Mは鉄、タングステン、マンガン、バナジウム並びにこれらの合金及び組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。
【0060】
前記第1の金属の前駆体はTiCl、ZrCl、SnCl、ZnCl及びこれらの混合物からなる群から選択され、前記第2の金属の前駆体はFeCl、WCl、MnCl、VCl及びこれらの混合物からなる群から選択され、x及びyは正の整数であることが好ましい。
【0061】
前記(i)段階は、所定の溶媒で該第2の金属の前駆体の溶液を形成する段階と、前記第2の金属の前駆体の溶液に前記第1の金属の前駆体を添加する段階と、該溶液を混合し、第1の金属の前駆体及び前記第2の金属の前駆体の、実質的に均質な混合物を形成する段階と、を含んでもよい。ここで、前記第2の金属の前駆体はFeCl、WCl、MnCl、VCl及びこれらの混合物からなる群から選択され、x及びyは正の整数であり、前記所定の溶媒は水、塩酸、アセトン、エーテル及びエタノールからなる群から選択されることが好ましい。前記所定の溶媒で前記第2の金属の前駆体の溶液を形成する段階は、0〜1℃の温度で行われることが好ましく、前記第2の金属の前駆体の溶液中での前記第2の金属のモル濃度は0.1〜10モル%であることが好ましい。
【0062】
また、前記(ii)段階は、透析タイプのイオン除去処理であることが可能であり、前記第1の金属の前駆体及び第2の金属の前駆体の混合物から塩化物イオンが除去されることが好ましい。
【0063】
また、前記(iii)段階は、室温及び1.333×10〜1.333×10kPa(10〜10torr)の圧力で行われる真空乾燥段階であることが好ましい。
【0064】
また、前記(iv)段階は、好ましくは50〜600℃、より好ましくは100〜500℃、更に好ましくは300〜500℃の温度で行われる。更に、前記(iv)段階は、1〜3時間行われることが好ましい。
【0065】
上記した本発明の態様は、図面を参照しつつ後述される詳細な説明によってより明確に理解できるものである。
【0066】
以下、本発明の例示される実施形態を示す図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は多様な形態で実施でき、ここで説明する実施形態に限定して解釈されてはならない。このような実施形態は、本明細書が十分で完全なものとなるようにし、当業者が本発明の技術的範囲を十分に解析できるようにするために、提供されるものである。また、各層と領域の大きさと相対的な大きさを明確にするため、以下で参照する図面は誇張して記載されている。
【0067】
本発明による光触媒は、図1に概略的に示した4段階の方法によって製造される。図1に示す段階により製造される光触媒は、本明細書に示す全ての有利な特性、特に、高い光触媒効率という特性を有することを見出した。なお、以下の段階(S1)〜(S4)はそれぞれ、上記した段階(a)〜(d)の例示的な実施形態に相当する。
【0068】
高い光触媒効率は、0を超えて10nm以下の平均粒径を有するナノサイズの粒子から実質的になる光触媒物質を製造することによって得ることができる。従って、本発明の光触媒物質と実質的に同一の化学組成を有するけれども図1に示す製造方法とは異なる方法によって製造された物質は、本発明の光触媒物質のように、上記した有利な物理的及び化学的特性を全て有するとは限らない。
【0069】
図1に示すように、本発明の第1の段階(S1)は第1の金属の前駆体を第2の金属の前駆体と混合する段階である。前記第1及び第2の金属の前駆体は上記第1態様で挙げた組み合わせの群から選択される。
【0070】
混合段階(S1)を行う代表的な実施形態では、第2の金属の前駆体の測定されたモル量を0〜1℃という相対的に低い温度で、好ましくは所定の溶媒(例えば、水、塩酸、アセトン、エーテルまたはエタノール)で溶解し、第2の金属の前駆体溶液を形成する。それから、第1の金属に対する第2の金属のモル濃度が0.1〜10モル%の範囲になるように、適正に測定されたモル比の第1の金属前駆体が、例えばパウダー形態で溶液に添加されうる。なお、前記第2の金属の前駆体溶液中での前記第2の金属のモル濃度は、好ましくは0.1〜10モル%である。
【0071】
本実施形態による目的は、前述した混合段階の実施形態よりもむしろ、従来技術によって理解されるべきである。実質的に同一な他の方法を用いて、適当な比によってもまた効果的に行われ、第1の金属及び第2の金属の前駆体を混合できる。そしてこれと実質的に同一な対案的な混合方法は、混合段階(S1)の範囲内に含まれうる。
【0072】
本発明の方法の第2の段階(S2)は透析タイプのイオン除去段階(以下、透析/イオン除去段階とも称する)である。ここで一般に、塩化物イオン(Cl)のような不純物イオンが第1の金属及び第2の金属の前駆体の混合物から除去される。透析/イオン除去段階(S2)を行う一実施形態において、第1の段階(S1)での混合物を、塩化物イオンは透過するが第1の金属及び第2の金属は透過しない半透過性膜(半透膜)で構成される容器中に入れる。そして半透過性膜容器を所定時間(例えば、少なくとも1時間)、純水槽中で浮遊(流動)させる。この間、塩化物イオンは、半透過性膜を通過して前駆体混合物から除去され(濾され)、水槽中で拡散して希釈されることにより、塩化物イオン溶液となる。純水槽は、前駆体溶液から除去された塩化物イオンをトラップする物質を更に含んでもよい。上記の過程を経て、前記容器から初期生成物を回収することができる。
【0073】
このような透析/イオン除去段階(S2)は室温で効果的に行うことができる。もし当該段階が1時間またはそれ以上行われる場合、所定比率の第2の金属のイオンを含有する第1の金属の酸化物を含むゾル、ゲルまたはパウダーは、一般に半透過性膜容器で形成される。しかしながら、透析/イオン除去段階(S2)が十分な時間行われない場合、塩化物イオンの残留による干渉のために、最大ゾル収率(sol yield)を得ることができない。所定の透析/イオン除去段階の実施形態を詳述したが、この分野に熟練した当業者ならば十分に理解できるものである。この段階でもまた、他の実質的に同等な方法で第1の金属と第2の金属との混合物から不純物イオンの除去が効果的に行われてもよい。そしてこのような全ての他のイオン除去方法は透析/イオン除去段階(S2)の範囲内に包含されうる。
【0074】
本発明の方法の第3の段階(S3)は、透析/イオン除去段階(S2)によって生成されたゾル、ゲルまたはパウダーの形態の初期生成物を乾燥する段階である。乾燥段階(S3)は、所定の量子(ナノ)サイズの光触媒粒子を得ることを目的とした、1.333×10〜1.333×10kPa(10〜10torr)の圧力と室温という一定以上の真空度(真空条件)で行われる真空乾燥段階でありうる。前述したように、本発明の光触媒粒子となりうる、第2の金属イオンでドーピングされた乾燥状態の第1の金属の酸化生成物であって、乾燥状態で非常に小さい粒子を生成することが好ましい。ここで、光触媒の表面積が大きくなることにより、光触媒が揮発性有機化合物を吸収(吸着、分解)する能力を高めることによって、ナノサイズの粒子は光触媒活性を上げるので、実質的に全ての粒子がナノサイズの粒子である。特に、本発明の好ましい実施形態では、乾燥段階(S3)によって生成された乾燥状態の酸化生成物は0を超えて10nm以下の平均粒径を有する粒子からなる。
【0075】
特定の乾燥段階(S3)の実施形態は既に説明したが、この分野の熟練された当業者であれば理解できるものである。第2の段階(S2)からゾル−ゲルまたはパウダー生成物を乾燥するため実質的に同一な他の方法がこの段階で行われてもよい。そして、このような実質的に同一な他の乾燥方法は全て乾燥段階(S3)の範囲内に含まれうる。
【0076】
本発明の方法の第4の段階(S4)は焼成(熱処理)段階である。この段階は、本発明による光触媒の製造を完了させるのに際し、多様な目的を提供することが分かる。第1に、焼成段階(S4)は、S3段階までの結果として、S3段階の乾燥生成物中に存在しうる残留不純物を除去するのに役立つ。かかる不純物の存在は光触媒の光触媒活性を減少させうる。更に、焼成段階(S4)は光触媒のアナターゼ状態の結晶成長の度合いを促進させる。一般に本発明の光触媒のアナターゼ状態は非常に高いか若しくは最大の光触媒効率をもたらす光活性度を有する。一方、非常に高い温度及び/または非常に長い時間で第4の段階を行うことにより、光触媒の特性が消失しうる。従って、光触媒特性を向上させる際、本段階の効果を最適化するために、焼成段階(S4)を行うにあたって均衡(不純物の完成除去及びアナターゼ結晶成長に十分な焼成温度・時間を確保し、かつ過度の焼成によって光触媒の特性が消失しない程度の焼成温度・時間とすること)が見出される必要がある。
【0077】
焼成段階(S4)は50〜600℃の温度で3〜5時間行うことが好ましい。本発明の実施形態で、焼成段階(S4)における温度は、より好ましくは100〜500℃で、更に好ましくは300〜500℃で行われる。一般に50℃未満の焼成段階温度は光触媒から不純物を除去する場合、効果的ではないことが分かる。また、600℃を超える焼成段階温度は、光触媒のかなりの部分をアナターゼ状態から、所望でないルチル状態に変換(転移)させうる。このような結果に起因して、表面積及び細孔嵩縮小によって光触媒効率が低下する。この低下は光触媒粒子同士の部分的な焼結に起因して起こる。
【0078】
焼成段階(S4)は前述した広い範囲の多様な時間/温度条件で行うことができ、得られる光触媒物質の特性を好適に調節できる。
【0079】
前述した方法による光触媒物質は、第1の金属の酸化物の格子構造全体に分散した第2の金属のイオンを有する(第2の金属のイオンでドーピングされた)第1の金属の酸化物を必須に含む。光エネルギーに光触媒を露出させたとき、形成された電子及びホールのトラップサイトとして第2の金属イオンは効果的に働く。結果的に、伝導バンドにある電子と荷電子バンドにあるホールとの再結合がかなり遅くなる。そして、光活性化された光触媒は、長時間高い酸化力を維持する。また、本発明の光触媒はナノサイズの粒子として形成されるので、揮発性有機不純物を分解することで、得られる光触媒物質の光触媒効率を非常に高めることができる。
【0080】
また、本発明は、上記光触媒物質を用いてエアストリームに含まれた揮発性有機不純物を分解する方法、及び前記方法を用いた、揮発性有機不純物を含有するエアストリームの浄化のための空気処理システムを提供する。図8は、エアストリームを再循環させる前に不純物を除去することによって、閉ループ循環エアストリームを浄化するための、本発明による光触媒を用いるクリーンルームを概略的に示している。閉ループエア再循環クリーンルーム環境は、産業上、一般的に用いられているものであるが、不純物が実質的に存在しない作業空間を維持することが必要であるとともに、産業上使用している中で環境的に所望ではない副産物を生成しうる。現在では、半導体素子の製造が、クリーンルーム環境を必要とする作業空間の好適な例である。溶剤、洗浄剤及び試薬が産業上広く使用されているため、クリーンルームのエアストリームを再循環させるに際し、揮発性有機化合物が日常的に不純物となっている。本発明の光触媒は、このようなクリーンルーム装置において特に有用である。
【0081】
図8は概略的に天井領域14、下部層領域16及び冷却コイル20を含む、半導体製造に適当なクリーンルーム12を示す。クリーンルーム12の側壁、天井及び底はエア循環通路18を定義する。エア循環通路18に沿った地点、例えば天井領域14には、エアストリームが必ず通過するファンフィルターユニット(FFU)のアレイが設けられる。ファンフィルターユニットは、循環するエアストリームがユニットを通過する際に浄化処理され、新鮮なエアストリームをクリーンルームに供給するために設けられている。
【0082】
本発明の装置において、前記ユニットのアレイ中の各ファンフィルターユニットは、光触媒を活性化するのに適当な光源と組み合わせて、本発明による光触媒のベッドを含む揮発性有機化合物分解システムを含む。図9A〜図9Dに示す多様なファンフィルターユニット構造は、本発明の光触媒と容易に組み合わせて用いることができる。図9A〜図9Dのファンフィルターユニット構造は、文献(大韓民国特許公開第2005−075927号公報)に詳細に開示されている。
【0083】
図9A〜図9Dの各ファンフィルターユニット構造は、ファン110、粒子フィルター130、及び図9A〜図9Dにおけるそれぞれの化学フィルターエレメント120、220、320、420を備えたハウジングを含む。作動中、揮発性有機化合物、アンモニア、オゾン及び他の不純物を含みうるエアストリームは、ファンエレメント110によってファンフィルターハウジング中に吸い込まれる。揮発性有機化合物、アンモニア及びオゾンは、化学フィルターエレメントによって、化学的に溶解または分解する。その後、粒子は粒子フィルターエレメント130によって除去され、新鮮で浄化された空気がクリーンルームに供給される。
【0084】
本発明の一実施形態で、図9A〜図9Dのそれぞれ化学フィルターエレメント120、220、320、420は本発明による光触媒を混合する揮発性有機不純物分解システムを含む。このような化学フィルターエレメントは一定の形の支持部材の表面に本発明の光触媒をコーティングすることによって形成できる。例えば,支持部材はガラス、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、金属製のハニカムモノリス担体、またはボール若しくはコイルタイプの分子構造から選択できる。
【0085】
更に、本発明による化学フィルターエレメントは、光触媒を活性化させるために、支持部材の光触媒がコーティングされた表面付近及び表面側に設けられる光源、例えば紫外線ランプを含む。本発明の光触媒は、光活性化され、エアストリームと接触しうるクリーンルームシステムの内壁及び/または外壁の所定領域にコーティングされてもよい。
【0086】
本発明の実施形態は、“クリーン”ルーム環境が必要であるかまたは少なくとも所望される、抗菌状態での製造、半導体製造、及び他の用途を含む。特にドーパントとして貴金属を用いる従来の光触媒と比較すると、本発明の光触媒は相対的に製造コストが低廉である。本発明の光触媒の製造方法は混合段階、透析段階、乾燥段階及び焼成段階からなり、比較的単純であり、高コストで特別に設計された設備は必要としない。更に、前記方法をたった1サイクル行うだけで、完成した、かつ使用可能な光触媒を製造することができる。本発明の製造方法は、低温合成と低温真空乾燥を用いるものであり、これらもまた低コストの光触媒製造に貢献する。
【0087】
本発明の方法によって製造された光触媒は多くの物理的、化学的長所を有する。本発明の光触媒は、バンドギャップを大きくする特性及び再結合速度を小さくする効果を実現し、これは光触媒活性を向上させ、酸化力を増す。本発明の光触媒も、エアストリームと接触する際に大きな表面積を提供するナノサイズの粒子として製造されるという長所を有し、これによって前記エアストリームは揮発性有機化合物を分解する際に光触媒物質の効果を更に高めることができる。
【実施例】
【0088】
<実施例1>
本実施例では、本発明による第1の光触媒の製造を説明する。完成した第1の光触媒は、TiO格子全体に分散した格子間の鉄(Fe)イオンを有するTiOを含む。
【0089】
蒸留水で調製されたFeClの4種類の水溶液は次の通りである。
【0090】
例1a:0.1モル%FeCl
例1b:0.5モル%FeCl
例1c:1モル%FeCl
例1d:10モル%FeCl
4種の塩化鉄水溶液それぞれに塩化チタン(TiCl)を添加し(S1段階)、約1時間混合した。次に、ゾルを形成するため1時間、それぞれの混合物(4種)に透析段階(S2)を実行した。次に、1.333×10〜1.333×10kPa(10〜10torr)の圧力及び室温(詳細には10〜20℃)で4種のゾルそれぞれについて真空乾燥段階(S3)を実行した。
【0091】
4種の光触媒生成物は結果として、それぞれ4つの部分(portion)(全部で16の部分)に分けられる。それから各部分について焼成段階(S4)を実行した。4種の光触媒となりうる酸化生成物それぞれの第1の部分は30℃の温度(本質的に焼成されない。)で焼成段階を実行した。各酸化生成物の第2の部分は100℃で焼成した。各酸化生成物の第3の部分は300℃で焼成した。そして各酸化生成物の第4の部分は500℃で焼成した。このようにして完成した16の光触媒生成物(光触媒物質)は以下の実験(実施例3以下の実験)に用いられた。
【0092】
<実施例2>
本実施例では、本発明による第2の光触媒の製造を説明する。完成した第2の光触媒は、二酸化チタン(TiO)格子全体に分散したタングステン(W)イオンを含有する二酸化チタン(TiO)を含む。本実験は塩化鉄水溶液の代わりに濃度の異なる4種の塩化タングステン(WCl)水溶液を使用することを除いては実施例1と同一の方法で行った。このようにして完成した16の光触媒生成物(光触媒物質)は後述する実験を実施するのに用いられた。
【0093】
<実施例3>
本実施例では、異なる焼成段階温度の条件下での、光触媒の平均粒径と第2の金属のイオンの濃度との関係を示す。本実験で、粒子サイズは動的光散乱方法を用いて測定した。本実験の結果は、以下に説明する図3A〜図3Dに示されている。
【0094】
図3Aは“焼成前”、すなわち30℃の温度(本質的に焼成されない。)で焼成した第1の部分である実施例1及び実施例2の、それぞれ鉄及びタングステンが含まれた二酸化チタン光触媒に対する、平均粒径と第2の金属イオン濃度との関係を示す。図3Aは、鉄及びタングステンが含まれた二酸化チタンの光触媒について、4種のモル%濃度それぞれで、平均粒径は10nm以下であることを示す。図3Bは類似の結果を示すが、100℃で焼成した場合の平均粒径の方が多少大きいことが分かる。図3Cは、300℃での焼成結果を示しており、図3A及び図3Bと比較的類似した結果を示すことが分かる。しかしながら、図3Cでは、第2の金属の濃度が10モル%の場合、鉄及びタングステンを含む二酸化チタンの光触媒の平均粒径は、10nmに接近し始めることが分かる。図3Dは、500℃での焼成結果を示しており、鉄及びタングステンが含まれた二酸化チタンの光触媒のいずれにおいても、第2の金属の濃度が10モル%の場合、平均粒径はほぼ10nmであることが分かる。
【0095】
<実施例4>
本実施例は、前述した実施例1及び実施例2によって製造された光触媒についての吸収強度と吸収波長との関係を示す。本実験の目的は、どの物質が最も大きなバンドギャップエネルギーを有するかを調べること、並びに本発明の光触媒の特性(バンドギャップエネルギー)とドーピングされていない(鉄及びタングステンを含まない)二酸化チタンの特性(バンドギャップエネルギー)とを比較することである。
【0096】
バンドギャップエネルギー(Eg)の公式はEg=hv、ここでv=c/λである。従って、Eg=hc/λである。式中、λはUV−visスペクトラムから得ることができ、h及びcは定数である。従って、Egを算出できる。バンドギャップエネルギー(Eg)の増加は、光活性化段階を向上させうる再結合を抑制する。バンドギャップエネルギーの実験の結果を以下の図4A及び図4Bに示している。
【0097】
図4Aは、4種のモル%濃度それぞれに対する、実施例1の鉄含有二酸化チタンの光触媒についての吸収波長の関数として、吸収強度をプロットしたグラフである。このグラフは、実験した全ての濃度で、鉄を含むTiOのバンドギャップ(3.78eV〜3.66eV)が鉄を含まないTiOのバンドギャップ(3.2eV)(図示せず)より大きいことを示す。図4Bは図4Aと類似したグラフであり、実施例2のタングステンを含む二酸化チタンの光触媒に関する実験を示す。ここでも、グラフは実験した全ての濃度で、タングステンを含むTiOのバンドギャップ(3.75eV〜3.6eV)がタングステンを含まないTiOのバンドギャップ(3.2eV)より大きいことを示す。
【0098】
<実施例5>
本実施例は500℃までの焼成温度でアナターゼ結晶成長を促進させる実施例1及び実施例2によって製造された光触媒を用いて、焼成温度と光活性応答との関係を示す。
【0099】
本実施例の結果を、後述する図5A及び図5Bに示している。
【0100】
図5Aは30℃、100℃、300℃及び500℃それぞれの焼成温度で、実施例1の方法で製造した0.1モル%の鉄を含む二酸化チタンの光触媒のX線回折分析結果を示すグラフである。同様に、図5Bは30℃、100℃、300℃及び500℃それぞれの焼成温度で実施例2の方法で製造した0.5モル%のタングステンを含む二酸化チタンの光触媒のX線回折分析結果を示すグラフである。これらのグラフから、焼成温度が上がるにつれて(約500℃まで)、アナターゼ結晶成長が促進することが分かる。このことから、完成した光触媒が光活性の応答に優れることが推測される。本実施例で示すように、光活性の度合い(大きさ)は、TiO(アナターゼ相)>TiO(ルチル相)>ZnO>ZrO>SnOであると言える。
【0101】
例えば、500℃で焼成したTiOにおいてアナターゼ相を確認できる。500℃までの焼成は光活性を増加させる。XRDパターンのX軸はブラッグの法則(nλ=2dsinθ)から得られた2θである。従って、sinθ=nλ/(2d)である。
【0102】
前記の公式からnを有するθを得ることができ、n、λ及びdはXRD装置で固定された値である。XRDパターンのY軸は結晶度を示す強度である。
【0103】
<実施例6>
本実施例では、トルエン、普通の揮発性有機不純物及び典型的な(representative)揮発性有機不純物を分解する際の、本発明によって製造された多様な光触媒の有用性を互いに比較している。そして本発明によって製造された光触媒の分解能力と、デグッサ社製のP−25として知られた、商用として利用可能な光触媒(商用光触媒)の分解能力とを比較する。前記商用光触媒の化学組成は次の通りである。
【0104】
P25:TiO(ガス相酸化法)
ST−01:TiO(ゾル−ゲル法)
上記実施例の結果を図6A及び図6Bに示す。
【0105】
上記実施例を行うために、図2に概略的に示したような実験ラインガスクロマトグラフィーシステムを構築した。図2は、エアストリーム(空気流)が連続的に循環する閉ループのエア循環システムを示す。図中の矢印は循環方向を示す。ポンプ5は、エアストリームの流れを維持させる場合に用いられる。揮発性有機不純物(トルエン)の外部供給器1は、バルブ部材を含む供給ラインによって閉ループエア循環システムと連結しており、これは、閉ループシステムの不純物分解ユニットより上流の位置で、調節された量の不純物をエアストリームに供給するためである。
【0106】
図2に示すような不純物分解ユニットは、反応チャンバー内に設けられた石英窓のような紫外線透過窓を通じて、反応区画部に紫外線を照射するためのUVランプ2を含む。反応区画部の内側には、ランプ2を点灯すると紫外線にさらされる石英板(A)上に分散した光触媒3のベッドがある。不純物分解ユニットの下流はバルブ4であり、このバルブ4によって、循環エアストリームのサンプルを、連続的にまたは周期的に検出器6を用いた実験用閉ループシステムから除去し、トルエン不純物を除去する際の分解ユニットの有用性を測定することができる。
【0107】
本実施例のために第1の光触媒を本発明により製造し、前記第1の光触媒は0.1モル%の鉄イオンを添加したTiOから実質的になる。このような光触媒のうちの1つの部分(サンプル)は焼成をせず(詳細には、30℃で焼成したもの;図中、前焼成(焼乾前)と表記した)、一方、他の3つの部分(サンプル)はそれぞれ100℃、300℃及び500℃で焼成したものを用いた。また、第2の光触媒を本発明により製造した。前記第2の光触媒は0.5モル%のタングステンイオンを添加したTiOから実質的になる。このような光触媒のうちの1つのサンプルは焼成をせず(詳細には、30℃で焼成したもの;図中、前焼成(焼乾前)と表記した)、一方、他の3つの部分(サンプル)はそれぞれ100℃、300℃及び500℃で焼成したものを用いた。
【0108】
商用光触媒だけではなく、それぞれ製造した2gの光触媒を石英板上に分散した。各石英板は2.5×7cmのサイズを有し、光触媒を有する各石英板はシステムの反応チャンバー内に設けた。100ppmのトルエンを含むエア混合物を、50cc/分の速度で実験用光触媒を通るように循環した。紫外線ランプは150nmの波長の紫外線を発生した。このような実験の条件は次の通りである。反応チャンバー内の圧力=1atm、反応チャンバー内の温度=室温、反応時間=20分である。検出器6を用いて、開始時間から200分まで、20分周期で反応器/光触媒のベッドのエアストリーム下流のトルエン含有量を周期的にモニタリングした。このような実験結果を図6A及び図6Bに示している。
【0109】
図6Aは、図2の光触媒ベッド3に下記(a)〜(e)の光触媒をそれぞれ設け、図2に示す実験装置を用いた実験の結果を示す。(a)商用光触媒、(b)焼成前の実施例1による0.1モル%の鉄を添加したTiO光触媒、(c)100℃の焼成温度で行った実施例1による0.1モル%の鉄を添加したTiO光触媒、(d)300℃の焼成温度で行った実施例1による0.1モル%の鉄を添加したTiO光触媒、及び(e)500℃の焼成温度で行った実施例1による0.1モル%の鉄を添加したTiO光触媒を用いた。図6のY軸はエアストリーム中の不純物の反応後濃度(検出器6によって測定)を不純物の量に基づいて、エアストリームの不純物の初期濃度で割った(除した)値(反応後の不純物濃度/反応前の不純物の初期濃度)を示す。図6AのX軸は循環エアストリームに不純物を添加した時から測定した時間である。
【0110】
従って、図6Aはトルエン不純物を分解する光触媒の効率を示す。例えば、図6Aでは、商用光触媒(a)は、焼成前の0.1モル%の鉄イオンを添加したTiO光触媒(b)と同等以上の性能を発揮する。しかしながら、反応時間が200分を超過すると、前記商用光触媒は、エアストリーム中のトルエン不純物の約70%だけ分解した。100℃で焼成した本発明の0.1モル%の鉄イオンを添加したTiO光触媒(c)は焼成前の光触媒(b)より有意に優れる。しかしながら、商用光触媒とはほぼ同等の性能を発揮した。
【0111】
逆に、本発明による、300℃及び500℃で焼成した光触媒(d)、(e)は、他の光触媒より実質的に優れていた。(d)または(e)の光触媒を用いると、約160分後にはトルエン不純物の分解が実質的に完了する。更に、図6Aでは、(d)及び(e)の光触媒は約30分以下でトルエン不純物の少なくとも半分を分解し、20分(光触媒(d))または60分(光触媒(e))で不純物の90%以上を分解することから、他の光触媒より非常に早く作用することが分かる。なお、光触媒(d)は、光触媒(e)より実質的に早く不純物を分解することを示しており、これは500℃程度で焼成段階を行うより、300℃程度で焼成段階を行う方が、光触媒としての有用性が高い場合もあることを示している。
【0112】
図6Bは、タングステンを添加した4種の光触媒と商用光触媒を比較する点を除いては図6Aと類似する。すなわち、図6Bもまた、(a)商用光触媒、(b)焼成前の実施例2によって0.5モル%のタングステンを添加したTiO光触媒、(c)100℃の焼成温度で製造した実施例2による0.5モル%のタングステンを添加したTiO光触媒、(d)300℃の焼成温度で製造した実施例2による0.5モル%タングステンを添加したTiO光触媒、及び(e)500℃の焼成温度で製造した実施例2による0.5モル%タングステンを添加したTiO光触媒、についてのグラフを示している。
【0113】
図6Bで示す結果は概ね図6Aの結果と似ているが、最も重要な差異は、(d)及び(e)の光触媒の動作特性が全く異なる点にある。そして、光触媒(d)、(e)は両方とも、商用光触媒(a)、焼成前光触媒(b)または100℃の焼成温度で製造したタングステンを添加した光触媒(c)のいずれよりも非常に優れる性能を発揮した。このような実験結果は、最上の動作特性を得るために、焼成段階の重要性と焼成温度を注意深く調節することが要求されることを証明した。なお当業者であれば、本明細書に記載された内容に基づいて容易に、第1の金属酸化物、第2の金属ドーパント及び所定のモル%の第2の金属という特定の組み合わせの場合の最適な焼成温度を決定することができる。
【0114】
<実施例7>
本実施例の結果である図7はドーパントのローディング効果を示す。本実施例で実験された光触媒は、100℃での焼成の条件下、本発明による方法に従って製造した。TiOの格子全体にドーパントが分散するので、光触媒の光活性は低いドーパント濃度で向上することを示す。しかし、ドーパント濃度が高くなるにつれて、光活性が減少することが分かる。このような効果は、再結合を促進させるクラスターの形成あるいはTiOに対する光の干渉に起因すると考えられる。
【0115】
前述した実験では、本発明の製造方法によって、第1の金属の酸化物に比較的低い割合の第2の金属のイオンを添加(ドーピング)することは、非常に小さい粒子サイズ、相対的に大きなバンドギャップエネルギー、及び光触媒化された酸化物による揮発性有機不純物の高い分解能を有する、効率的かつ効果的な光触媒物質を生成することが確認された。焼成温度が低くなると粒子サイズはより小さくなる一方で、焼成温度が高くなると(少なくとも500℃まで)、光触媒の光活性の応答性を高めるアナターゼ結晶成長が促進する。一方、可能な温度範囲のうち最大の温度で焼成することに起因する、いかなるマイナスの性能上の効果も、中間程度の焼成温度、例えば約300℃を選択することによって、光触媒の製造方法を最適化させることが可能である。
【0116】
しかしながら、本発明による有用な光触媒は、第1の金属の酸化物に約0.1〜10モル%の第2の金属のイオンを添加(ドーピング)し、50〜600℃の温度、好ましくは100〜500℃の温度、より好ましくは300〜500℃の温度で焼成することによって製造できることが本発明の実施例により示された。
【0117】
以上、本発明の理解を容易にするために、いくつかの模範的な実施形態について添付された図面を参照しながら説明してきたが、前記実施形態は、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、前記実施形態から多様な変形や修正などが可能であるという点が理解できるであろう。したがって、本発明は、図面、説明された構造、及び工程順序にのみ限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に基づいて保護されねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は不純物を分解する装置に好適に用いられうる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明による光触媒の製造段階を示したフローチャートである。
【図2】本発明によって製造された光触媒の性能を実験する場合に用いられる、実験室ラインガスクロマトグラフィーシステムを示した図面である。
【図3A】焼成段階前及び後(互いに異なる3パターンの温度で行われる)の第1の金属に対する第2の金属の濃度による光触媒の平均粒子サイズ変化を示したグラフである。
【図3B】焼成段階前及び後(互いに異なる3パターンの温度で行われる)の第1の金属に対する第2の金属の濃度による光触媒の平均粒子サイズ変化を示したグラフである。
【図3C】焼成段階前及び後(互いに異なる3パターンの温度で行われる)の第1の金属に対する第2の金属の濃度による光触媒の平均粒子サイズ変化を示したグラフである。
【図3D】焼成段階前及び後(互いに異なる3パターンの温度で行われる)の第1の金属に対する第2の金属の濃度による光触媒の平均粒子サイズ変化を示したグラフである。
【図4A】本発明によって製造された光触媒の吸収波長によって吸収強度がどのように変化するかを示すグラフである。
【図4B】本発明によって製造された光触媒の吸収波長によって吸収強度がどのように変化するかを示すグラフである。
【図5A】様々な焼成温度での、本発明の方法により製造した0.1モル%の鉄を含む二酸化チタンの光触媒のX線回折分析結果を示すグラフである。
【図5B】様々な焼成温度での、本発明の方法により製造した0.5モル%のタングステンを含む二酸化チタンの光触媒のX線回折分析結果を示すグラフである。
【図6A】本発明の光触媒を用いた揮発性有機化合物の光触媒分解の効率が、焼成温度によってどのように変化するかを示すグラフである。
【図6B】本発明の光触媒を用いた揮発性有機化合物の光触媒分解の効率が、焼成温度によってどのように変化するかを示すグラフである。
【図7】光触媒中の第2の金属と第1の金属とのモル比によって変化する、本発明の光触媒を用いた揮発性有機体化合物の光触媒分解の効率を示すグラフである。
【図8】本発明の光触媒を用いたファンフィルターユニットを組み込んだ空気浄化装置の一実施形態を示す概略図である。
【図9A】本発明の光触媒を用いたシングルファンフィルターユニットの一実施形態を示す断面図である。
【図9B】本発明の光触媒を用いたシングルファンフィルターユニットの一実施形態を示す断面図である。
【図9C】本発明の光触媒を用いたシングルファンフィルターユニットの一実施形態を示す断面図である。
【図9D】本発明の光触媒を用いたシングルファンフィルターユニットの一実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0120】
S1 第1の段階、混合段階、
S2 第2の段階、透析/イオン除去段階、
S3 第3の段階、乾燥段階、
S4 第4の段階、焼成段階、
1 外部供給器、
2 UVランプ、
3 光触媒、光触媒ベッド、
4 バルブ、
5 ポンプ、
6 検出器、
A 石英板、
12 クリーンルーム、
14 天井領域、
16 下部層領域、
18 エア循環通路、
20 冷却コイル、
FFU ファンフィルターユニット、
110 ファン、
120 化学フィルターエレメント、
130 粒子フィルター
220 化学フィルターエレメント、
320 化学フィルターエレメント、
420 化学フィルターエレメント。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の金属に対して第2の金属が所定のモル比となるように、前記第1の金属の前駆体及び前記第2の金属の前駆体の混合物を形成する段階であって、その際、該第1の金属は光誘導された半導体特性を示す金属であり、該第2の金属はドーパントであり、
(b)前記混合物から不要なイオンを除去するために前記第1の金属の前駆体及び前記第2の金属の前駆体の混合物を処理して、前記第2の金属のイオンが全体に分散された前記第1の金属の酸化物を含む初期生成物を形成する段階と、
(c)前記初期生成物を乾燥して、前記第2の金属のイオンでドーピングされた、乾燥状態の第1の金属の酸化生成物を形成する段階であって、該乾燥状態の生成物は粒子を含み、
(d)熱を加えることによって前記乾燥状態の第1の金属の酸化生成物を焼成して、光触媒物質を形成する段階
という、逐次的な段階を含むことを特徴とする、光触媒物質の製造方法。
【請求項2】
前記光触媒物質は、平均粒径が0を超えて10nm以下である粒子で形成されることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
該第1の金属の前駆体はMClの化学式を有し、Mは光誘導された半導体特性を示す金属であり、Clは塩化物イオンであり、x及びyは正の整数であり、また、
該第2の金属の前駆体はMClの化学式を有し、Mはドーパントであり、Clは塩化物イオンであり、x及びyは正の整数であることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記Mはチタン、ジルコニウム、錫、亜鉛、並びにこれらの合金及び組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記Mは鉄、タングステン、マンガン、バナジウム、並びにこれらの合金及び組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項3または4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記(a)段階は、
所定の溶媒で該第2の金属の前駆体の溶液を形成する段階と、
前記第2の金属の前駆体の溶液に前記第1の金属の前駆体を添加する段階と、
該溶液を混合し、前記第1の金属の前駆体及び前記第2の金属の前駆体の、実質的に均質な混合物を形成する段階と、
を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
該第2の金属の前駆体はFeCl、WCl、MnCl、VCl及びこれらの混合物からなる群から選択され、x及びyは正の整数であり、前記所定の溶媒は水、塩酸、アセトン、エーテル及びエタノールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記所定の溶媒で前記第2の金属の前駆体の溶液を形成する段階は、0〜1℃の温度で行われることを特徴とする、請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
該第2の金属の前駆体の溶液中での前記第2の金属のモル濃度は0.1〜10モル%であることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記(b)段階は、透析タイプのイオン除去処理であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記(b)段階は、前記第1の金属の前駆体及び第2の金属の前駆体の混合物から塩化物イオンを除去することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記(b)段階は、
塩化物イオンを透過させる一方で前記第1の金属及び前記第2の金属を透過させない半透膜を含む容器中に、前記第1の金属の前駆体及び第2の金属の前駆体の混合物を入れる段階と、
前記混合物から実質的に塩化物イオンを除去するのに十分な間、前記前駆体の混合物を有する前記容器を純水槽中で流動させる段階と、
前記容器から前記初期生成物を回収する段階と、
を更に含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記容器が、少なくとも1時間、前記純水槽中で流動されることを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記純水槽は、室温であることを特徴とする、請求項12または13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記(c)段階は、室温及び1.333×10〜1.333×10kPa(10〜10torr)の圧力で行われる真空乾燥段階であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記(d)段階は、50〜600℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記(d)段階は、100〜500℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記(d)段階は、300〜500℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記(d)段階は、3〜5時間行われることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記(d)段階は、焼成前の段階(c)の前記生成物の有効性と比較して、揮発性有機化合物を分解する際の光触媒の効果を有意に高めるのに十分な時間及び温度で行われることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法によって製造されることを特徴とする、光触媒物質。
【請求項22】
請求項2に記載の方法によって製造されることを特徴とする、光触媒物質。
【請求項23】
光触媒物質を光に露出させることによって、請求項1に記載の方法によって製造された光触媒物質のベッドを活性化する段階と、
揮発性有機不純物を含むエアストリームを、活性化された光触媒物質の前記ベッドに接触されるように通過させる段階と、
を含む、エアストリームに含まれた揮発性有機不純物を分解することを特徴とする方法。
【請求項24】
(I)(i)第1の金属に対して第2の金属が所定のモル比となるように、前記第1の金属の前駆体及び前記第2の金属の前駆体の混合物を形成する段階であって、その際、該第1の金属は光誘導された半導体特性を有する金属であり、該第2の金属はドーパントであり、
(ii)前記混合物から不要なイオンを除去するために前記第1の金属の前駆体及び第2の金属の前駆体の混合物を処理して、前記第2の金属のイオンが全体に分散された前記第1の金属の酸化物を含む初期生成物を形成する段階と、
(iii)前記初期生成物を乾燥して、前記第2の金属のイオンでドーピングされた、乾燥状態の第1の金属の酸化生成物を形成する段階であって、該乾燥状態の生成物は非常に小さい粒子を含み、
(iv)熱を加えることによって前記乾燥状態の第1の金属の酸化生成物を焼成して、光触媒物質を形成する段階と、
によって製造された光触媒物質のベッドと、
(II)前記光触媒を活性化するのに十分な光を前記光触媒物質のベッドに直接提供する光源と、
(III)エアストリームが光触媒物質の活性化されたベッドに接触するように、有機不純物を含むエアストリームを循環させるための循環システムと、
を組み合わせで含む、揮発性有機不純物を含有するエアストリームの浄化のための空気処理システム。
【請求項25】
前記光触媒物質が支持部材の表面にコーティングされていることを特徴とする、請求項24に記載の空気処理システム。
【請求項26】
前記光触媒物質は、0を超えて10nm以下の平均粒径を有する非常に小さい粒子で形成されることを特徴とする、請求項24または25に記載の空気処理システム。
【請求項27】
(a)該第1の金属の前駆体は、MClの化学式を有し、Mは光誘導された半導体特性を示す金属であり、Clは塩化物イオンであり、x及びyは正の整数であり、
(b)該第2の金属の前駆体は、MClの化学式を有し、Mはドーパントであり、Clは塩化物イオンであり、x及びyは正の整数であることを特徴とする、請求項24〜26のいずれか1項に記載の空気処理システム。
【請求項28】
はチタン、ジルコニウム、錫、亜鉛並びにこれらの合金及び組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項24〜27のいずれか1項に記載の空気処理システム。
【請求項29】
は鉄、タングステン、マンガン、バナジウム並びにこれらの合金及び組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項24〜28のいずれか1項に記載の空気処理システム。
【請求項30】
該第1の金属の前駆体はTiCl、ZrCl、SnCl、ZnCl及びこれらの混合物からなる群から選択され、該第2の金属の前駆体はFeCl、WCl、MnCl、VCl及びこれらの混合物からなる群から選択され、x及びyは正の整数であることを特徴とする請求項24に記載の空気処理システム。
【請求項31】
i 前記(i)段階は、
所定の溶媒で該第2の金属の前駆体の溶液を形成する段階と、
前記第2の金属の前駆体の溶液に前記第1の金属の前駆体を添加する段階と、
該溶液を混合し、第1の金属の前駆体及び前記第2の金属の前駆体の、実質的に均質な混合物を形成する段階と、
を含むことを特徴とする、請求項24〜30のいずれか1項に記載の空気処理システム。
【請求項32】
該第2の金属の前駆体はFeCl、WCl、MnCl、VCl及びこれらの混合物からなる群から選択され、x及びyは正の整数であり、前記所定の溶媒は水、塩酸、アセトン、エーテル及びエタノールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項31に記載の空気処理システム。
【請求項33】
前記所定の溶媒で前記第2の金属の前駆体の溶液を形成する段階は、0〜1℃の温度で行われることを特徴とする、請求項31または32に記載の空気処理システム。
【請求項34】
該第2の金属の前駆体の溶液中での前記第2の金属のモル濃度は0.1〜10モル%であることを特徴とする、請求項31〜33のいずれか1項に記載の空気処理システム。
【請求項35】
前記(ii)段階は、透析タイプのイオン除去処理であることを特徴とする、請求項24〜34のいずれか1項に記載の空気処理システム。
【請求項36】
前記(ii)段階は、前記第1の金属の前駆体及び第2の金属の前駆体の混合物から塩化物イオンを除去することを特徴とする、請求項24〜35のいずれか1項に記載の空気処理システム。
【請求項37】
前記(iii)段階は、室温及び1.333×10〜1.333×10kPa(10〜10torr)の圧力で行われる真空乾燥段階であることを特徴とする、請求項24〜36のいずれか1項に記載の空気処理システム。
【請求項38】
前記(iv)段階は、50〜600℃の温度で行われることを特徴とする、請求項24〜37のいずれか1項に記載の空気処理システム。
【請求項39】
前記(iv)段階は、100〜500℃の温度で行われることを特徴とする、請求項24〜38のいずれか1項に記載の空気処理システム。
【請求項40】
前記(iv)段階は、300〜500℃の温度で行われることを特徴とする、請求項24〜39のいずれか1項に記載の空気処理システム。
【請求項41】
前記(iv)段階は、1〜3時間行われることを特徴とする、請求項24〜40のいずれか1項に記載の空気処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【公開番号】特開2007−216223(P2007−216223A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38068(P2007−38068)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【出願人】(592127149)韓国科学技術院 (129)
【Fターム(参考)】