半導体用ガラス基板及びその製造方法
【解決手段】半導体用ガラス基板の少なくとも一方の面に非貫通の穴、溝又は段差を有し、非貫通の穴、溝又は段差の側面と基板の非貫通の穴、溝又は段差を有する面との間に第1の面取り部が存在し、上記非貫通の穴、溝又は段差の側面及び底面が鏡面であると共に、上記第1の面取り部が鏡面である、半導体用ガラス基板。
【効果】本発明によれば、IC等の製造に重要な光リソグラフィ法において使用されるフォトマスク基板用合成石英ガラス基板やナノインプリント用モールド基板等の非貫通の穴、溝又は段差を有する半導体用ガラス基板おいて、形状精度が高く、底面及び側面が鏡面である非貫通の穴、溝又は段差を有し、非貫通の穴、溝又は段差において割れ及び欠けが発生しにくく、高い強度及び清浄度を有する半導体用合成石英ガラス基板を提供することができる。
【効果】本発明によれば、IC等の製造に重要な光リソグラフィ法において使用されるフォトマスク基板用合成石英ガラス基板やナノインプリント用モールド基板等の非貫通の穴、溝又は段差を有する半導体用ガラス基板おいて、形状精度が高く、底面及び側面が鏡面である非貫通の穴、溝又は段差を有し、非貫通の穴、溝又は段差において割れ及び欠けが発生しにくく、高い強度及び清浄度を有する半導体用合成石英ガラス基板を提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非貫通の穴、溝又は段差を有する半導体用ガラス基板及びその製造方法に関し、特に半導体関連電子材料の内、最先端用途のフォトマスク用ガラス基板、露光機等の部材用ガラス基板、レチクル用ガラス基板や、ナノインプリント用ガラス基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体用ガラス基板の品質としては、基板上の欠陥サイズ及び欠陥密度、平坦度、面粗度、材質の光化学的安定性、表面の化学的安定性等が挙げられ、デザイン・ルールの高精度化のトレンドに伴ってますます厳しくなってきている。
半導体用等に用いられるフォトマスク基板は、高い形状精度が求められる。これは、基板の形状精度が悪く、歪みを持った状態の場合、露光時にシリコンウェハ上の焦点ずれを生じ、パターン均一性が悪くなるため、微細パターンを形成することができなくなるからである。現在、半導体用リソグラフィ技術の主流である波長が193nmであるArFレーザー光源を使用したリソグラフィ技術や、次世代リソグラフィ技術として開発が進められている軟X線波長領域である13.5nmの波長を光源として使用するEUVリソグラフィ技術においては、フォトマスク用基板、反射型マスク基板に平坦度(特開2008−103512号公報:特許文献1)、平行度、外形公差といった形状精度が高いレベルで求められる。TFT液晶パネルのアレイ側のフォトマスク基板や、カラーフィルター用フォトマスク基板に関しても同様である。
【0003】
また、従来の露光方法に比べて、低コスト、簡便で高解像度な方式として研究が進められているナノインプリント技術においても、インプリント用のモールドとして高形状精度を持つ基板が求められている。ナノインプリントとは、微細な凹凸パターンを樹脂に押し付けて転写する技術で、転写されるパターンの解像度はモールド上の凹凸の解像度に依存する。そのため、微細パターンを描画する基板は、高い形状精度が求められる(特開平3−54569号公報:特許文献2)。
【0004】
その他、半導体等の製造工程で使用される露光装置等の様々な装置に組み込まれる合成石英ガラス部材にも、また高い純度と精度が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−103512号公報
【特許文献2】特開平3−54569号公報
【特許文献3】特表2009−536591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、サイズ、底面の残し厚さ、平行度等、形状を高精度に安定的に制御された、底面及び側面が鏡面である非貫通の穴、溝又は段差を有し、非貫通の穴、溝又は段差において割れ及び欠けが発生しにくく、高い強度及び清浄度を有する半導体用ガラス基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、非貫通の穴、溝又は段差
の底面及び側面の各縁の角部に面取り部を設け、これら全ての部位を鏡面とすることが前記課題の解決に有用であり、このような形状にすることで、これら非貫通の穴、溝又は段差の各縁の角部の割れ、欠けの発生を防ぎ、非貫通の穴、溝又は段差に繰り返しの荷重を加え、かなりの応力を付与しても破壊が生じ難いことを知見した。
【0008】
即ち、このような非貫通の穴、溝又は段差有する基板は、研削工程により非貫通の穴、溝又は段差を形成した後、底面及び側面の研削面を鏡面加工して得られるが、従来の形状では研削工程において、特に砥石を基板と水平方向ではなく垂直方向に上から下へ切り込んで研削する場合において、非貫通の穴、溝又は段差の各縁の角部に割れ及び欠けが発生しやすく、また角部の鏡面加工もしにくいという問題点があった。また基板を装置に組み込むために装置に接触させる際等にも、非貫通の穴、溝又は段差の各縁の角部において容易に割れ及び欠けが発生しやすいという問題点もあった。
【0009】
また、このような非貫通の穴、溝又は段差を有する基板は、基板の表面にフォトマスクやナノインプリント用の加工を施すものであるが、基板の一方の面に形成された非貫通の穴、溝又は段差の底面と基板の他方の面との間の距離(残し厚さ)は0.05〜80mm、特に好ましくは0.05〜11mmで、好ましくは基板の厚さの5〜50%、特に10〜30%であるように形成される。この場合、残し厚さは好適には薄く形成することが望まれるが、従来の形状では非貫通の穴、溝又は段差の側面と底面の間の角部に研削工程、鏡面加工工程の困難さから潜在的なクラックを含有することがあり、非貫通の穴、溝又は段差の底部の強度を安定的に保つことが難しく、そのため繰り返し荷重を加えると比較的容易に破壊が生じてしまう場合があるという問題があり、底部に強度を持たせる目的で非貫通の穴、溝又は段差の底面と基板の他方の面との間の距離(残し厚さ)を比較的厚く形成していた。
【0010】
ところが、上記のように、非貫通の穴、溝又は段差の側面及び底面の各縁の角部に面取り部を設け、これら全ての部位を鏡面とすることにより、各縁の角部の割れ及び欠けの発生が抑えられ、また側面と底面の間の面取り部を曲面とした曲面面取り部を存在させることで、側面と底面の間の強度が曲面面取り部の存在により高まることで、後述する実施例に示したように、非貫通の穴もしくは溝の底面と基板表面との間、又は段差の底面と基板裏面との間の距離(残し厚さ)をかなり薄く形成した場合にも、これにかなりの荷重を繰り返し加えても破壊し難く、かかる応力に十分耐えることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
従って、本発明は以下の非貫通の穴、溝又は段差を有する半導体用ガラス基板及びその製造方法を提供するものである。
<1> 半導体用ガラス基板の少なくとも一方の面に非貫通の穴、溝又は段差を有し、非貫通の穴、溝又は段差の側面と基板の非貫通の穴、溝又は段差を有する面との間に第1の面取り部が存在し、上記非貫通の穴、溝又は段差の側面及び底面が鏡面であると共に、上記第1の面取り部が鏡面である、半導体用ガラス基板。
<2> 前記非貫通の穴、溝又は段差の側面と底面の間に曲率半径0.1〜5.0mmの曲面の第2の面取り部が存在し、この曲面の第2の面取り部が鏡面である<1>記載の半導体用ガラス基板。
<3> 前記段差の底面と基板の端面との間に第3の面取り部が存在し、この第3の面取り部が鏡面である、<1>又は<2>記載の半導体用ガラス基板。
<4> 前記非貫通の穴、溝又は段差の側面、底面、前記面取り部の面粗度(Ra)が1nm以下である<1>〜<3>のいずれかに記載の半導体用ガラス基板。
<5> 前記非貫通の穴、溝又は段差の底部の強度が20MPa以上である<1>〜<4>のいずれかに記載の半導体用ガラス基板。
<6> 前記非貫通の穴、溝又は段差の底面の平坦度が0.01〜40μmである<1>〜<5>いずれかに記載の半導体用ガラス基板。
<7> 前記非貫通の穴、溝又は段差の底面の平行度が100μm以下である<1>〜<6>のいずれかに記載の半導体用ガラス基板。
<8> 半導体用合成石英ガラス基板の少なくとも一方の面に非貫通の穴、溝又は段差を形成すると共に、非貫通の穴、溝又は段差の側面と基板の非貫通の穴、溝又は段差を有する面との間に第1の面取り部、非貫通の穴、溝又は段差の側面と底面との間に曲率半径0.1〜5.0mmの曲面の第2の面取り部、段差の底面と基板の端面との間に第3の面取り部のうち、少なくともいずれかの面取り部を形成する研削工程と、形成された非貫通の穴、溝又は段差の側面及び底面及び形成された面取り部に回転研磨ツールのヤング率が7GPa以下の部材から成る研磨加工部をそれぞれ独立した一定圧力で接触させて側面、底面及び面取り部の研削面を鏡面加工する工程とを含む半導体用ガラス基板の製造方法。
<9> 鏡面加工工程が、非貫通の穴、溝又は段差及び形成された面取り部に回転研磨ツールの研磨加工部を1〜1,000,000Paの圧力で接触させて鏡面加工する<8>記載の半導体用ガラス基板の製造方法。
<10> 鏡面加工工程が、非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面並びに形成された面取り部に回転研磨ツールの研磨加工部をそれぞれ独立した圧力で同時に接触させて鏡面加工する<8>又は<9>記載の半導体用ガラス基板の製造方法。
<11> 鏡面加工工程が、基板の非貫通の穴、溝又は段差及び形成された面取り部の形状に沿うように回転研磨ツールと基板とを相対的に移動させて鏡面加工する<8>〜<10>のいずれかに記載の半導体用ガラス基板の製造方法。
<12> 鏡面加工工程が、基板の非貫通の穴、溝又は段差及び形成された面取り部の形状に沿うように回転研磨ツールを公転あるいは基板保持台を回転させて鏡面加工する<11>記載の半導体用ガラス基板の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、IC等の製造に重要な光リソグラフィ法において使用されるフォトマスク基板用合成石英ガラス基板やナノインプリント用モールド基板等の非貫通の穴、溝又は段差を有する半導体用ガラス基板おいて、形状精度が高く、底面及び側面が鏡面である非貫通の穴、溝又は段差を有し、非貫通の穴、溝又は段差において割れ及び欠けが発生しにくく、高い強度及び清浄度を有する半導体用合成石英ガラス基板を提供することができる。
また、非貫通の穴、溝又は段差に荷重をかける際、最大応力がかかる側面と底面の間に曲面面取り部を設けることで、底部の強度を高めることができる。これにより所定の荷重によって非貫通の穴、溝又は段差の底面の形状を変化させても、底面の破壊が起きない基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明における非貫通の穴を有する合成石英ガラス基板の一例を示す斜視図である。
【図2】同例の断面図である。
【図3】本発明における非貫通の穴を有する基板の他の例を示す斜視図である。
【図4】本発明における溝を有する合成石英ガラス基板の一例を示す斜視図である。
【図5】同例の断面図である。
【図6】本発明における段差を有する合成石英ガラス基板の一例を示す斜視図である。
【図7】同例の断面図である。
【図8】本発明における段差を有する基板の他の例を示す斜視図である。
【図9】本発明における段差を有する基板の別の例を示す斜視図である。
【図10】本発明における段差を有する基板の更に別の例を示す斜視図である。
【図11】回転研磨ツールの一例を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の半導体用ガラス基板の製造方法は、基板の所用箇所に非貫通の穴、溝又は段差を形成する研削工程と、形成された非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面に回転研磨ツールを一定圧力で接触させて底面及び側面の研削面を鏡面加工する工程とを含むものである。
【0015】
ここで、本発明の半導体用ガラス基板の製造方法に用いられるガラス基板は、公知の方法により製造されたものであればよく、必要に応じて基板表面にCr膜等が成膜されていたり、ナノメートルオーダーの微細な凹凸パターンが存在していてもよい。
【0016】
半導体用ガラス基板の形状は四角形状、円形状等とすることができ、ガラス基板の大きさは、ICフォトマスク基板やナノインプリント用基板のサイズから、大型液晶テレビフォトマスク用大型基板のサイズまで、適宜選定される。例えば、四角形状のガラス基板では20mm×20mm〜152mm×152mmのサイズから1,000mm×2,000mmのサイズの基板が好適に用いられる。丸形状のガラス基板では6インチφ、8インチφのウェハサイズが好適に用いられる。
【0017】
ここで、半導体用ガラス基板の厚さは適宜選定されるが、0.1〜300mm、好ましくは0.1〜100mm、更に好ましくは0.2〜30mmである。
【0018】
必要に応じてガラス基板は、予め平坦度及び平行度を測定して、精度の確認を行っておくことが好ましい。平坦度の測定は、測定精度の観点から、レーザー光等のコヒーレントな光を基板表面に当てて反射させ、基板表面の高さの差が反射光の位相のずれとして観測されることを利用した光学干渉式の方法が好ましく、例えばZygo社製Zygo Mark IVxpを用いて測定できる。また、平行度も、Zygo社製Zygo Mark IVxpを用いて測定できる。
【0019】
この場合、非貫通の穴、溝又は段差を形成するための研削工程を行う前の半導体用ガラス基板の表裏面の平坦度は0.01〜30μm、好ましくは0.01〜2μm、更に好ましくは0.01〜0.5μm、平行度は0.1〜50μm、好ましくは0.1〜5μm、更に好ましくは0.1〜3μmであることが、パターン均一性の点で好ましい。
【0020】
本発明の半導体用ガラス基板は、露光装置やナノインプリント装置に組み込むために、装置の形態や用途に合わせて非貫通の穴、溝、又は段差を有するものである。
【0021】
即ち、図1,2は四角形状の半導体用ガラス基板1の中央部に非貫通の穴2を形成したものであり、図3は円形状の基板1の中央部に非貫通の穴2を形成したものである。この場合、非貫通の穴は、通常基板1の裏面1bに形成され、基板1の表面1aには例えばフォトマスクやナノインプリント用加工が施される。図4,5は四角形状の基板1の裏面1bの中央部に幅方向に沿って溝3を形成したものである。図6,7は四角形状の基板1の表面1aの長さ方向両端部にそれぞれ段差4,4を形成したものである。この場合、段差は基板1の表面1aではなく、裏面1bに形成してもよく、また、図8に示したように、基板1の長さ方向両端部の表裏面にそれぞれ段差4を形成してもよい。更に、段差は基板の周縁部に沿って形成してもよく、図9,10はこれを示す。なお、図9は四角形状の基板1の周縁部に段差4を形成した例、図10は円形状の基板1の周縁部に段差4を形成した例を示す。なお、図9,10では段差4は基板1の表面1aに形成したが、裏面1bに形成することもできる。
また、基板の一方の面に非貫通の穴、溝、段差の2種類以上を形成したり、基板の一方の面に非貫通の穴、溝、段差のいずれかを形成し、基板の他方の面にこれと異なる非貫通の穴、溝、段差のいずれかを形成してもよい。
【0022】
非貫通の穴の形状は、平面形状が円形状、楕円形状、長円状、四角状、多角形状とすることができるが、図1,3に示すような円形状が好ましい。その大きさは、円形状であれば直径、楕円形状や長円状であれば長径、角状であれば対角長が5〜200mmであることが好ましい。溝の場合は、図4に示したように、両側壁3a,3bが互いに平行な平面に形成することが好ましいが、両側壁が平行でなくてもよく、一方又は双方の側壁が凸状又は凹状曲面であってもよい。更に、段差の場合、図6に示したように、その内壁4aが段差4の自由先端縁部4bにつながる基板端面と平行な平面に形成することが好ましいが、該端面と平行でなくてもよく、内壁が凸状又は凹状曲面であってもよい。なお、溝及び段差はその最大幅が5〜200mmであることが好ましい。
【0023】
上記非貫通の穴、溝、段差は、図2,5,7のように非貫通の穴、溝又は段差の側面と基板の非貫通の穴、溝又は段差を有する面との間に第1の面取り部5が存在する。更に、段差の場合、図7に示したように、段差の底面と基板の端面との間に第3の面取り部6が存在してもよい。上記面取り部5,6の幅Cは研削工程で発生した細かな欠け(チッピング)の除去又は基板の接触による割れ及び欠けを防ぐ等の点で、0.01〜5mm、好ましくは0.05〜1mmである。
【0024】
上記非貫通の穴、溝、段差は、図2,5,7のように非貫通の穴、溝又は段差の側面と底面の間に曲面を有する第2の面取り部7が存在することが好ましい。上記曲面面取り部の曲率半径Rは非貫通の穴、溝又は段差の底面に十分な強度を持たせる、角部に丸みを持たせ滑らかにすることで研削工程で発生するクラック及び割れを防ぐ、鏡面加工部の部材の端を接触しやすくさせ鏡面化をしやすくする等の点で、0.1〜5.0mm、好ましくは0.2〜2.0mmである。
【0025】
上記穴2、溝3、段差4の深さは基板の用途に応じて適宜選定されるが、半導体用合成石英ガラス基板の残し厚さ(非貫通の穴、溝又は段差の底面と、これらが形成された面と反対側の面との距離(図においてtで示す)は、強度の点から0.05〜80mm、好ましくは0.05〜29mm、更に好ましくは0.05〜11mmであり、半導体用合成石英ガラス基板の厚さの1〜90%、より好ましくは5〜50%、更に好ましくは10〜30%とすることが強度の点から好ましい。
【0026】
なお、例えばナノインプリント用基板の場合、上記非貫通の穴2、溝3は、基板の裏面側に形成し、穴2や溝3の底面に対向する表面部分にナノインプリントを施すための凹凸が形成される。また、段差4は、基板の表面側及び/又は裏面側に形成し、表面側にナノインプリントを施すための凹凸が形成される。
【0027】
本発明の製造方法において、はじめに非貫通の穴、溝又は段差を形成する研削工程では、マシニングセンターやその他数値制御工作機械を用いて、合成石英ガラスの加工面に、割れ、ヒビ、激しいチッピング等の発生しない研削条件で砥石を回転、移動させ、所定のサイズ、深さの非貫通の穴、溝又は段差の研削を施して行う。この際、第1、第2、第3の面取り部5,6,7も同様に形成することが好ましい。
【0028】
具体的には、ダイヤモンド砥粒、CBN砥粒等を電着又はメタルボンドで固定した砥石を用いて、主軸回転数100〜30,000rpm、特に1,000〜15,000rpm、切削速度1〜10,000mm/min、特に10〜1,000mm/minで研削することが好ましい。
【0029】
このように非貫通の穴、溝又は段差を研削、形成した段階において、これら非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面並びに面取り部の面粗度Raは2〜500nm、特に2〜100nmであるように研削砥石、研削条件を選定することが好ましく、また底面の平行度は90μm以下、特に1〜40μm、平坦度は0.01〜20μm、特に0.01〜10μmであることが好ましい。
【0030】
次に、非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面並びに面取り部のそれぞれの研削面を鏡面加工する工程は、研削面に回転研磨ツールの研磨加工部を底面と側面並びに面取り部とにそれぞれ別個に独立した一定圧力で接触させて、一定速度で相対的に移動させて行う。一定圧力、一定速度の条件で研磨を行うことにより、一定の研磨レートで研削面を均一に研磨することができる。具体的には、回転研磨ツールの研磨加工部の接触時の圧力としては、経済性及び制御のし易さ等の点で1〜1,000,000Pa、特に1,000〜100,000Paであることが好ましい。
【0031】
また、速度は、経済性及び制御のし易さなどの点で1〜10,000mm/minが好ましく、特に10〜1,000mm/minが好ましい。移動量は合成石英ガラス基板の形状、大きさに応じて適宜決められる。
【0032】
回転研磨ツールは、その研磨加工部が研磨可能な回転体であればいかなるものでも構わないが、ツールチャッキング部を持ったスピンドル、リューターに研磨ツールを装着させる方式等が挙げられる。
【0033】
研磨ツールの材質としては、少なくともその研磨加工部がセリウムパッド、ゴム砥石、フェルトバフ、ポリウレタン等、被加工物を加工除去でき、かつヤング率が好ましくは7GPa以下、更に好ましくは5GPa以下のものであれば種類は限定されない。研磨ツールの材質をヤング率7GPa以下の部材を用いることにより、圧力により研磨加工部を非貫通の穴、溝又は段差の面取り部の形状に沿うように変形させて、底面及び側面と同時に面取り部を鏡面化することが可能となる。
【0034】
研磨ツールの研磨加工部の形状は円又はドーナツ型の平盤、円柱型、砲弾型、ディスク型、たる型等が挙げられる。例えば、図11に示したように、研磨ツール10として、ピストン11に進退可能に収容され、図示していないモータ等の回転源の駆動により回転する回転軸12の先端に研磨加工部13を取り付けたものが使用し得る。
この場合、非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面を同時に研磨する点から、研磨加工部13の非貫通の穴、溝又は段差の側面と接触する部分の高さ(図11においてh1)は該側面の高さ(図2においてh0)以上であることが好ましい。また、研磨加工部13の直径(図11においてr1)は、非貫通の穴が円形である場合にはその直径(図2においてr0)、楕円状、長円状等の場合にはその短径のそれぞれ1/2以上(r1≧r0/2)であることが好ましい。また、溝の場合にはその溝の幅の1/2以上(r1≧W1/2)、段差の場合にはその幅以上(r1≧W2)であることが好ましい。
【0035】
上述した非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面並びに面取り部の研削面に回転研磨ツールの研磨加工部を接触させて研磨を行う場合、研磨砥粒スラリーを介在させた状態で加工を行うことが好ましい。
この場合、研磨砥粒としてはシリカ、セリア、アランダム、ホワイトアランダム(WA)、エメリー、ジルコニア、SiC、ダイヤモンド、チタニア、ゲルマニア等が挙げられ、その粒度は10nm〜10μmが好ましく、これらの水スラリーを好適に用いることができる。
【0036】
また、回転研磨ツールの相対移動速度は、上述したように、1〜10,000mm/min、特に10〜1,000mm/minの範囲で選定することができる。回転研磨ツールの研磨加工部の回転数は100〜10,000rpm、好ましくは1,000〜8,000rpm、更に好ましくは2,000〜7,000rpmである。回転数が小さいと加工レートが遅くなり、研削面を鏡面化するのに時間がかかりすぎる場合があり、回転数が大きいと加工レートが速くなったり、ツールの磨耗が激しくなるため、鏡面化の制御が難しくなる場合がある。
【0037】
本発明の半導体用ガラス基板の製造方法は、非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面並びに面取り部をそれぞれ独立の圧力で回転研磨ツールを接触させて鏡面加工することができる。圧力の調節は、空気圧ピストン、ロードセル等を用いることができ、例えば図11の回転研磨ツールの場合、空気圧ピストン11の圧力を調整することで底面に対する研磨加工部の圧力を調整することができ、また、図11の回転研磨ツールの場合、空気圧ピストン11に該ピストン11を非貫通の穴、溝又は段差の側部に向けて進退させる別のピストンを取り付け、該別のピストンの圧力を調整してピストン11の側部への圧力を調整し、あるいは更に別のピストンを設け、このピストンに進退する軸体を、基板を保持する基板保持台に連結し、この軸体の圧力を調整することで横方向への圧力を調整し、基板保持台の進退を調整するなどして、研磨加工部の上記側面に対する圧力を調整することができる。
このように、底面と側面への圧力を独立させ、単独の回転研磨ツールをそれぞれの面に独立した一定圧力で回転研磨ツールを接触させながら、一定速度で相対的に移動させることにより、それぞれの面を同時に独立の研磨レートで均一に研磨することができる。
【0038】
非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面を回転研磨ツールにより同時ではなく順番に別々に研磨する方法は、回転研磨ツールが底面及び側面に同時に接触してしまう部分が生じ、当該部分における研磨が不均一になる上、研磨時間がかかる。
【0039】
なお、本発明の半導体用ガラス基板の製造方法は、基板の非貫通の穴、溝又は段差並びに面取り部の形状に沿うように回転研磨ツールと基板とを相対的に移動させて鏡面加工することができる。移動させる方式は移動量、方向、速度を一定に制御できる方式であればいかなるものでもよい。例えば、多軸ロボット等を用いる方式等が挙げられる。
【0040】
回転研磨ツールと基板とを相対的に移動させる方法には、基板の非貫通の穴、溝又は段差並びに面取り部の形状に沿うように回転研磨ツールを公転あるいは基板を回転させる方法と、1軸以上の直線軸上を移動させる方法等がある。
【0041】
基板の非貫通の穴、溝又は段差並びに面取り部の形状に沿うように回転研磨ツールを公転あるいは基板を回転させて鏡面化する方法では、回転数、回転速度を一定に制御できる方式であればいかなるものでもよい。例えば、モータースピンドルにより、回転研磨ツールあるいは基板保持台を回転数0.1〜10,000rpm、特に1〜100rpmで、速度1〜10,000mm/min、特に10〜1,000mm/minで回転させる方式等が挙げられる。この方法は、真円形、楕円形あるいは壁面が曲面状の非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面を一定速度でそれぞれ独立した一定圧力にて均一に研磨して鏡面化する場合に特に有効である。
【0042】
基板の非貫通の穴、溝又は段差並びに面取り部の形状に沿うように回転研磨ツールあるいは基板を1軸以上の直線軸上を移動させて鏡面加工する方法では、移動量、速度を一定に制御できる方式であればいかなるものでもよいが、例えば、回転研磨ツールあるいは基板保持台を速度1〜10,000mm/min、特に10〜1,000mm/minでサーボモーター等によりスライダー上を移動させる方式等が挙げられる。この方法は、角形あるいは壁面が平面状の非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面を一定圧力、一定速度で均一に研磨して鏡面化する場合に特に有効である。
【0043】
必要に応じて鏡面加工工程後、基板の非貫通の穴、溝又は段差の底部及びその周辺におけるキズ、欠陥、クラックの有無を検査することができる。検査方法は、深さ200nm以上、幅1μm以上のキズ、欠陥、クラックを検出できる方法であればいかなるものでもよいが、例えば高輝度ランプを使用した目視観察、顕微鏡観察、レーザー光欠陥検査装置等による検査方法等が挙げられる。
【0044】
上記のようにして鏡面研磨して得られる非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面並びに面取り部は、面粗度Raが1nm以下、好ましくは0.5nm以下の鏡面である。非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面が鏡面でないと、光を透過させることができず、露光ができなくなる場合や、汚れが発生すると汚れが光の透過を邪魔してしまったり、パターンが汚染されたりする場合が生じて好ましくない。なお、面粗度RaはJIS B0601に準拠した値である。
【0045】
このように非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面を鏡面にすることにより、底面の強度は大きく増加する。特に、非貫通の穴、溝又は段差の側面と底面の間に曲面面取り部を設けることにより、底面に荷重を加える際最も大きな応力がかかる側面と底面の部分が厚みを持ち、鏡面化も十分になされるため、底面の強度は更に増加する。これにより、所定の範囲の荷重によって非貫通の穴、溝又は段差の底面の形状を変化させて、好ましくは100MNm-2以下、更に好ましくは5〜50MNm-2、特に好ましくは5〜20MNm-2の応力を非貫通の穴、溝又は段差の底部に加えても、底面の破壊は起きず、複数回荷重を加えても、耐久性が損なわれず、底面の破壊は起きなくなる。
【0046】
ここで、所定の範囲の荷重とは、例えば残し厚さがhmm、直径がammの円形の非貫通の穴の場合、底面全体に約1.3×108×h2/a2Pa以下、特に7.0×106×h2/a2〜7.0×107×h2/a2Pa、とりわけ7.0×106×h2/a2〜3.0×107×h2/a2Paの等分布荷重をいい、この荷重を加えた場合に、100MNm-2以下の応力が底部にかかる。同様に、残し厚さがhmm、幅がamm、長さがbmmの溝の場合、溝の底の中央に約30×b/a×h2N以下、特に1×b/a×h2〜15×b/a×h2N、とりわけ1×b/a×h2〜6×b/a×h2Nの集中荷重を加えた場合には、100MNm-2以下の応力が底部にかかる。また、残し厚さがhmm、幅がamm、長さがbmm(b>3a)の段差の場合、段差の自由先端縁部の中央部に約32×h2N以下、特に1×h2〜16×h2N、とりわけ1×h2〜6×h2Nの集中荷重を加えた場合には、100MNm-2以下の応力が底部にかかる。非貫通の穴に対する等分布荷重は、底部全体を空気圧、液圧等で、指定の圧力で指定の回数、加圧又は減圧することのできる試験装置を用いるなどして加えることができる。集中荷重は、底部の所定の場所を先端に細い棒や針等が付いた加圧装置等で、指定の圧力で指定の回数、加圧することのできる試験装置を用いるなどして加えることができる。
【0047】
本発明の半導体用ガラス基板の鏡面研磨後の非貫通の穴、溝又は段差の底面の平坦度は、基板の把持の点で0.01〜40μm、好ましくは0.01〜10μm、更に好ましくは0.01〜5μmである。平坦度が低いと、非貫通の穴、溝又は段差の底面を把持して露光装置やパターニング装置に組み込む場合、精密に平行に把持することができないおそれがある。また平坦度が低いと、非貫通の穴、溝又は段差を通して気体や液体の流入、排出等を行う場合、気体や液体が安定的に流れないおそれがある。
【0048】
また、基板表面と非貫通の穴、溝又は段差の底面の平行度は、パターンのずれの点で100μm以下、好ましくは50μm以下、更に好ましくは10μm以下である。平行度が低いと、非貫通の穴、溝又は段差を変形させて樹脂にインプリントする場合、きれいな対称形に変形させることができず、また非貫通の穴、溝又は段差の底面を把持してパターニング装置に組み込む場合、基板を平行に精密に把持することができず、焦点ずれ、パターンずれが生じるおそれがある。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0050】
[実施例1]
端面及び表裏面が研磨により鏡面化された大きさ100mm×100mm、厚さ6.35mmの合成石英ガラス基板Aを、原料基板として用意した。この合成石英ガラス基板の裏面の中心に、マシニングセンター、ダイヤモンド砥粒付砥石を使用して、深さ5.32mm、直径69.98mmφの円形で、側面と裏面との間に幅0.3mmの第1の面取り部を有する非貫通の穴を加工した。
次に、合成石英ガラス基板を基板保持台に固定して、1,000rpmで回転する直径50mmφ、高さ30mmの羊毛フェルトバフを非貫通の穴の底面に3,500Pa、側面に2,000Paで押し当てて、基板保持台を10rpmで回転させ、60分間研磨し、鏡面化した。研磨後、合成石英ガラス基板のザグリ穴の深さは5.35mm、残し厚さは1.00mm、直径は70mmφ、第1の面取り部の幅は0.4mmとなった。
非貫通の穴の側面と裏面との間をマイクロスコープにより観察したところ、細かな欠け(チッピング)は観察されなかった。
【0051】
ここで、鏡面化された合成石英ガラス基板Aの平行度、表裏面の平坦度、表裏面及び側面の面粗度Raは下記の通りであった。
平行度 0.6μm
表面 平坦度 0.212μm
面粗度 0.14nm
裏面 平坦度 0.355μm
面粗度 0.16nm
側面 面粗度 0.84nm
なお、平坦度、平行度の測定はZygo社製Zygo Mark IVxpを用いて行い、面粗度の測定には原子間力顕微鏡を使用した。
【0052】
また、上記合成石英ガラス基板Aの裏面に形成した非貫通の穴の鏡面研磨前の底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び周壁面、第1の面取り部の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 9μm
平坦度 3μm
面粗度 7.06nm
周壁面 面粗度 8.08nm
第1の面取り部 面粗度 6.93nm
なお、平坦度、平行度の測定はZygo Mark IVxpでは測定できず、マイクロメーターを用いて測定した。また、面粗度は原子間力顕微鏡を用いた。
【0053】
鏡面研磨後の非貫通の穴の底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び周壁面、第1の面取り部の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 10μm
平坦度 4μm
面粗度 0.30nm
周壁面 面粗度 0.39nm
第1の面取り部 面粗度 0.81nm
【0054】
[実施例2]
端面及び表裏面が研磨により鏡面化された大きさ100mm×100mm、厚さ6.35mmの合成石英ガラス基板Aを、原料基板として用意した。この合成石英ガラス基板の裏面の中心に、マシニングセンター、ダイヤモンド砥粒付砥石を使用して、深さ5.32mm、直径69.98mmφの円形で、側面と底面の間に曲率半径1.5mmの曲面の第2の面取り部を、側面と裏面との間に幅0.3mmの第1の面取り部を有する非貫通の穴を加工した。
次に、合成石英ガラス基板を基板保持台に固定して、1,000rpmで回転する直径50mmφ、高さ30mmの羊毛フェルトバフを非貫通の穴の底面に3,500Pa、側面に2,000Paで押し当てて、基板保持台を10rpmで回転させ、60分間研磨し、鏡面化した。研磨後、合成石英ガラス基板のザグリ穴の深さは5.35mm、残し厚さは1.00mm、直径は70mmφ、曲面の第2の面取り部の曲率半径は1.6mm、第1の面取り部の幅は0.4mmとなった。
【0055】
ここで、鏡面化された合成石英ガラス基板Aの平行度、表裏面の平坦度、表裏面及び側面の面粗度Raは下記の通りであった。
平行度 0.6μm
表面 平坦度 0.154μm
面粗度 0.13nm
裏面 平坦度 0.325μm
面粗度 0.15nm
側面 面粗度 0.76nm
なお、平坦度、平行度の測定はZygo社製Zygo Mark IVxpを用いて行い、面粗度の測定には原子間力顕微鏡を使用した。
【0056】
また、上記合成石英ガラス基板Aの裏面に形成した非貫通の穴の鏡面研磨前の底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び周壁面、第2の曲面面取り部及び第1の面取り部の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 8μm
平坦度 3μm
面粗度 6.48nm
周壁面 面粗度 7.40nm
第2の曲面面取り部 面粗度 4.61nm
第1の面取り部 面粗度 5.77nm
なお、平坦度、平行度の測定はZygo Mark IVxpでは測定できず、マイクロメーターを用いて測定した。また、面粗度は原子間力顕微鏡を用いた。
【0057】
鏡面研磨後の非貫通の穴の底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び周壁面、第2の曲面面取り部及び第1の面取り部の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 9μm
平坦度 4μm
面粗度 0.28nm
周壁面 面粗度 0.29nm
第2の曲面面取り部 面粗度 1.24nm
第1の面取り部 面粗度 0.81nm
なお、平坦度、平行度の測定はZygo Mark IVxpにて行い、面粗度は原子間力顕微鏡を用いた。
【0058】
また、上記と同条件で同様の非貫通の穴を鏡面研磨した同様の合成石英ガラス基板を50枚製作したところ、非貫通の穴の深さは5.35±0.01mm、直径は70±0.01mmφであった。
この合成石英ガラス基板に対して、高輝度ランプを用いた目視観察によりクラックがないことを確認し、非貫通の穴を−15kPaで減圧し、大気圧に戻すというサイクルを50,000回行い、耐久試験を行ったところ、50枚全ての基板で非貫通の穴の底面の破壊は起きなかった。
また、この合成石英ガラス基板に対して、耐久試験を行う前後で非貫通の穴を−50kPaで減圧し、約46MNm-2の応力を底部に加えても、50枚全ての基板で非貫通の穴の底面の破壊は起きなかった。
【0059】
[実施例3]
端面及び表裏面が研磨により鏡面化された大きさ152mm×152mm、厚さ6.35mmの合成石英ガラス基板Bを、原料基板として用意した。この合成石英ガラス基板の裏面の中心に、マシニングセンター、ダイヤモンド砥粒付砥石を使用して、深さ4.98mm、幅29.9mm、長さ152mmで、側面と底面の間に曲率半径0.9mmの第2の曲面面取り部を、側面と裏面との間に幅0.3mmの第1の面取り部を有する端面と平行な溝を加工した。
次に、合成石英ガラス基板を基板保持台に固定して、1,000rpmで回転する直径30mmφ、高さ30mmの羊毛フェルトバフを溝底面に2,000Pa、片方の側面に2,000Paで押し当てて、基板保持台を50mm/minで5往復移動させ、溝底面及びもう一方の側面に上記と同じ圧力で押し当てて基板保持台を50mm/minで5往復移動させて鏡面化した。研磨後、合成石英ガラス基板の溝の深さは5mm、幅は30.1mm、第2の曲面面取り部の曲率半径は1.0mm、第1の面取り部の幅は0.4mmとなった。
【0060】
ここで、鏡面化された合成石英ガラス基板Bの平行度、表裏面の平坦度、表裏面及び側面の面粗度Raは下記の通りであった。
平行度 0.9μm
表面 平坦度 0.252μm
面粗度 0.15nm
裏面 平坦度 0.471μm
面粗度 0.18nm
側面 面粗度 0.68nm
【0061】
また、上記合成石英ガラス基板Bの裏面に形成した溝の鏡面研磨前の底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び側壁面、第2の曲面面取り部及び第1の面取り部の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 13μm
平坦度 5μm
面粗度 7.51nm
側壁面 面粗度 8.97nm
第2の曲面面取り部 面粗度 5.73nm
第1の面取り部 面粗度 7.82nm
【0062】
鏡面研磨後の溝の底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び側壁面、第2の曲面面取り部及び第1の面取り部の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 16μm
平坦度 8μm
面粗度 0.58nm
側壁面 面粗度 0.63nm
第2の曲面面取り部 面粗度 1.01nm
第1の面取り部 面粗度 0.78nm
【0063】
なお、上記と同条件で同様の溝を鏡面研磨した合成石英ガラス基板を50枚製作したところ、溝の深さは5±0.01mm、幅は30±0.01mmであった。
この合成石英ガラス基板に対して、高輝度ランプを用いた目視観察によりクラックがないことを確認し、溝の底の中央に10Nの荷重を加え、0に戻すというサイクルを10,000回行ったところ、50枚全ての基板で溝の底面の破壊は起きなかった。
また、この合成石英ガラス基板に対して、耐久試験を行う前後で溝の底の中央に50Nの荷重を加え、約20MNm-2の応力を底部に加えても、50枚全ての基板で溝の底面の破壊は起きなかった。
【0064】
[実施例4]
端面及び表裏面が研磨により鏡面化された大きさ200mm×400mm、厚さ10mmの合成石英ガラス基板Cを、原料基板として用意した。この合成石英ガラス基板をマシニングセンター、ダイヤモンド砥粒付砥石を使用して、基板裏面の両端部に深さ6.95mm、幅19.99mm、長さ200mmで、側面と底面の間に曲率半径2.0mmの曲面の第2の面取り部を、側面と裏面との間に幅0.5mmの第1の面取り部を、底面と基板の端面との間に幅0.5mmの第3の面取り部を有する段差を持つ基板に加工した。
次に、合成石英ガラス基板を基板保持台に固定して、1,000rpmで回転する直径30mmφ、高さ30mmの羊毛フェルトバフを段差底面に2,000Pa、側面に2,000Paで押し当てて、基板保持台を200mm/minで5往復移動させ、両辺の段差を鏡面化した。研磨後、合成石英ガラス基板の段差の深さは7mm、幅は20mm、第2の曲面面取り部の曲率半径は2.1mm、第1及び第3の面取り部の幅は0.6mmとなった。
【0065】
ここで、鏡面化された合成石英ガラス基板Cの平行度、表裏面の平坦度、表裏面及び側面の面粗度Raは下記の通りであった。
平行度 5.3μm
表面 平坦度 2.085μm
面粗度 0.18nm
裏面 平坦度 3.193μm
面粗度 0.21nm
側面 面粗度 0.74nm
【0066】
また、上記合成石英ガラス基板Cの裏面に形成した段差の鏡面研磨前の両底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び側壁面、第2の曲面面取り部及び第1,第3の面取り部の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 14μm及び19μm
平坦度 7μm及び9μm
面粗度 10.49nm
側壁面 面粗度 9.54nm
第2の曲面面取り部 面粗度 5.89nm
第1の面取り部(側面−裏面間) 面粗度 4.97nm
第3の面取り部(底面−端面間) 面粗度 6.90nm
【0067】
鏡面研磨後の段差の両底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び側壁面、第2の曲面面取り部及び第1,第3の面取り部の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 16μm及び20μm
平坦度 8μm及び10μm
面粗度 0.21nm
側壁面 面粗度 0.25nm
第2の曲面面取り部 面粗度 0.78nm
第1の面取り部(側面−裏面間) 面粗度 0.89nm
第3の面取り部(底面−端面間) 面粗度 0.78nm
【0068】
合成石英ガラス基板を10枚製作したところ、段差の深さは7±0.01mm、幅は20±0.01mmであった。
この合成石英ガラス基板に対して、高輝度ランプを用いた目視観察によりクラックがないことを確認し、段差の自由先端縁部の中央部に20Nの荷重を加え、0に戻すというサイクルを5,000回行ったところ、10枚全ての基板で溝の底面の破壊は起きなかった。
また、この合成石英ガラス基板に対して、耐久試験を行う前後で段差の底面の両端の端面と平行な辺の中央に50Nの荷重を加え、約17MNm-2の応力を底部に加えても、10枚全ての基板で段差の底面の破壊は起きなかった。
【0069】
[比較例1]
端面及び表裏面が研磨により鏡面化された大きさ100mm×100mm、厚さ6.35mmの合成石英ガラス基板Aを、原料基板として用意した。この合成石英ガラス基板の裏面の中心に、マシニングセンター、ダイヤモンド砥粒付砥石を使用して、深さ5.32mm、直径69.98mmφの円形の非貫通の穴を加工した。
次に、合成石英ガラス基板を基板保持台に固定して、1,000rpmで回転する直径35mmφ、高さ30mmの羊毛フェルトバフを非貫通の穴の底面に3,500Pa、側面に2,000Paで押し当てて、基板保持台を10rpmで回転させ、60分間研磨し、鏡面化した。研磨後、合成石英ガラス基板のザグリ穴の深さは5.35mm、残し厚さは1.00mm、直径は70mmφとなった。
非貫通の穴の側面と裏面との間をマイクロスコープにより観察したところ、最大幅0.2mmの細かな欠け(チッピング)が全周で観察された。
【0070】
ここで、鏡面化された合成石英ガラス基板Aの平行度、表裏面の平坦度、表裏面及び側面の面粗度Raは下記の通りであった。
平行度 0.6μm
表面 平坦度 0.194μm
面粗度 0.23nm
裏面 平坦度 0.326μm
面粗度 0.25nm
側面 面粗度 0.99nm
なお、平坦度、平行度の測定はZygo社製Zygo Mark IVxpを用いて行い、面粗度の測定には原子間力顕微鏡を使用した。
【0071】
また、上記合成石英ガラス基板Aの裏面に形成した非貫通の穴の鏡面研磨前の底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び周壁面の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 8μm
平坦度 4μm
面粗度 5.92nm
周壁面 面粗度 7.06nm
なお、平坦度、平行度の測定はZygo Mark IVxpでは測定できず、マイクロメーターを用いて測定した。また、面粗度は原子間力顕微鏡を用いた。
【0072】
鏡面研磨後の非貫通の穴の底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び周壁面の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 9μm
平坦度 5μm
面粗度 0.24nm
周壁面 面粗度 0.33nm
なお、平坦度、平行度の測定はZygo Mark IVxpにて行い、面粗度は原子間力顕微鏡を用いた。
【0073】
また、上記と同条件で同様の非貫通の穴を鏡面研磨した同様の合成石英ガラス基板を50枚製作したところ、非貫通の穴の深さは5.35±0.01mm、直径は70±0.01mmφであった。
この合成石英ガラス基板に対して、高輝度ランプを用いた目視観察を行ったところ、50枚中で3枚に目視可能な大きさのクラックが発見された。また50枚全ての基板で非貫通の穴の側面と底面の間に鏡面化不足による研磨残りの跡が認められた。続いて非貫通の穴を−15kPaで減圧し、大気圧に戻すというサイクルを50,000回行い、耐久試験を行ったところ、50枚中17枚が減圧回数100回前後で非貫通の穴の底面が破壊した。
また、破壊されなかった33枚の合成石英ガラス基板に対して、非貫通の穴を−50kPaで減圧し、約46MNm-2の応力を底部に加えたところ、33枚全ての基板の非貫通の穴の底面が破壊した。
【符号の説明】
【0074】
1 基板
1a 基板表面
1b 基板裏面
2 非貫通の穴
3 溝
3a、3b 側壁
4 段差
5 第1の面取り部
6 第3の面取り部
7 曲面の第2の面取り部
10 研磨ツール
11 ピストン
12 回転軸
13 研磨加工部
【技術分野】
【0001】
本発明は、非貫通の穴、溝又は段差を有する半導体用ガラス基板及びその製造方法に関し、特に半導体関連電子材料の内、最先端用途のフォトマスク用ガラス基板、露光機等の部材用ガラス基板、レチクル用ガラス基板や、ナノインプリント用ガラス基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体用ガラス基板の品質としては、基板上の欠陥サイズ及び欠陥密度、平坦度、面粗度、材質の光化学的安定性、表面の化学的安定性等が挙げられ、デザイン・ルールの高精度化のトレンドに伴ってますます厳しくなってきている。
半導体用等に用いられるフォトマスク基板は、高い形状精度が求められる。これは、基板の形状精度が悪く、歪みを持った状態の場合、露光時にシリコンウェハ上の焦点ずれを生じ、パターン均一性が悪くなるため、微細パターンを形成することができなくなるからである。現在、半導体用リソグラフィ技術の主流である波長が193nmであるArFレーザー光源を使用したリソグラフィ技術や、次世代リソグラフィ技術として開発が進められている軟X線波長領域である13.5nmの波長を光源として使用するEUVリソグラフィ技術においては、フォトマスク用基板、反射型マスク基板に平坦度(特開2008−103512号公報:特許文献1)、平行度、外形公差といった形状精度が高いレベルで求められる。TFT液晶パネルのアレイ側のフォトマスク基板や、カラーフィルター用フォトマスク基板に関しても同様である。
【0003】
また、従来の露光方法に比べて、低コスト、簡便で高解像度な方式として研究が進められているナノインプリント技術においても、インプリント用のモールドとして高形状精度を持つ基板が求められている。ナノインプリントとは、微細な凹凸パターンを樹脂に押し付けて転写する技術で、転写されるパターンの解像度はモールド上の凹凸の解像度に依存する。そのため、微細パターンを描画する基板は、高い形状精度が求められる(特開平3−54569号公報:特許文献2)。
【0004】
その他、半導体等の製造工程で使用される露光装置等の様々な装置に組み込まれる合成石英ガラス部材にも、また高い純度と精度が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−103512号公報
【特許文献2】特開平3−54569号公報
【特許文献3】特表2009−536591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、サイズ、底面の残し厚さ、平行度等、形状を高精度に安定的に制御された、底面及び側面が鏡面である非貫通の穴、溝又は段差を有し、非貫通の穴、溝又は段差において割れ及び欠けが発生しにくく、高い強度及び清浄度を有する半導体用ガラス基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、非貫通の穴、溝又は段差
の底面及び側面の各縁の角部に面取り部を設け、これら全ての部位を鏡面とすることが前記課題の解決に有用であり、このような形状にすることで、これら非貫通の穴、溝又は段差の各縁の角部の割れ、欠けの発生を防ぎ、非貫通の穴、溝又は段差に繰り返しの荷重を加え、かなりの応力を付与しても破壊が生じ難いことを知見した。
【0008】
即ち、このような非貫通の穴、溝又は段差有する基板は、研削工程により非貫通の穴、溝又は段差を形成した後、底面及び側面の研削面を鏡面加工して得られるが、従来の形状では研削工程において、特に砥石を基板と水平方向ではなく垂直方向に上から下へ切り込んで研削する場合において、非貫通の穴、溝又は段差の各縁の角部に割れ及び欠けが発生しやすく、また角部の鏡面加工もしにくいという問題点があった。また基板を装置に組み込むために装置に接触させる際等にも、非貫通の穴、溝又は段差の各縁の角部において容易に割れ及び欠けが発生しやすいという問題点もあった。
【0009】
また、このような非貫通の穴、溝又は段差を有する基板は、基板の表面にフォトマスクやナノインプリント用の加工を施すものであるが、基板の一方の面に形成された非貫通の穴、溝又は段差の底面と基板の他方の面との間の距離(残し厚さ)は0.05〜80mm、特に好ましくは0.05〜11mmで、好ましくは基板の厚さの5〜50%、特に10〜30%であるように形成される。この場合、残し厚さは好適には薄く形成することが望まれるが、従来の形状では非貫通の穴、溝又は段差の側面と底面の間の角部に研削工程、鏡面加工工程の困難さから潜在的なクラックを含有することがあり、非貫通の穴、溝又は段差の底部の強度を安定的に保つことが難しく、そのため繰り返し荷重を加えると比較的容易に破壊が生じてしまう場合があるという問題があり、底部に強度を持たせる目的で非貫通の穴、溝又は段差の底面と基板の他方の面との間の距離(残し厚さ)を比較的厚く形成していた。
【0010】
ところが、上記のように、非貫通の穴、溝又は段差の側面及び底面の各縁の角部に面取り部を設け、これら全ての部位を鏡面とすることにより、各縁の角部の割れ及び欠けの発生が抑えられ、また側面と底面の間の面取り部を曲面とした曲面面取り部を存在させることで、側面と底面の間の強度が曲面面取り部の存在により高まることで、後述する実施例に示したように、非貫通の穴もしくは溝の底面と基板表面との間、又は段差の底面と基板裏面との間の距離(残し厚さ)をかなり薄く形成した場合にも、これにかなりの荷重を繰り返し加えても破壊し難く、かかる応力に十分耐えることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
従って、本発明は以下の非貫通の穴、溝又は段差を有する半導体用ガラス基板及びその製造方法を提供するものである。
<1> 半導体用ガラス基板の少なくとも一方の面に非貫通の穴、溝又は段差を有し、非貫通の穴、溝又は段差の側面と基板の非貫通の穴、溝又は段差を有する面との間に第1の面取り部が存在し、上記非貫通の穴、溝又は段差の側面及び底面が鏡面であると共に、上記第1の面取り部が鏡面である、半導体用ガラス基板。
<2> 前記非貫通の穴、溝又は段差の側面と底面の間に曲率半径0.1〜5.0mmの曲面の第2の面取り部が存在し、この曲面の第2の面取り部が鏡面である<1>記載の半導体用ガラス基板。
<3> 前記段差の底面と基板の端面との間に第3の面取り部が存在し、この第3の面取り部が鏡面である、<1>又は<2>記載の半導体用ガラス基板。
<4> 前記非貫通の穴、溝又は段差の側面、底面、前記面取り部の面粗度(Ra)が1nm以下である<1>〜<3>のいずれかに記載の半導体用ガラス基板。
<5> 前記非貫通の穴、溝又は段差の底部の強度が20MPa以上である<1>〜<4>のいずれかに記載の半導体用ガラス基板。
<6> 前記非貫通の穴、溝又は段差の底面の平坦度が0.01〜40μmである<1>〜<5>いずれかに記載の半導体用ガラス基板。
<7> 前記非貫通の穴、溝又は段差の底面の平行度が100μm以下である<1>〜<6>のいずれかに記載の半導体用ガラス基板。
<8> 半導体用合成石英ガラス基板の少なくとも一方の面に非貫通の穴、溝又は段差を形成すると共に、非貫通の穴、溝又は段差の側面と基板の非貫通の穴、溝又は段差を有する面との間に第1の面取り部、非貫通の穴、溝又は段差の側面と底面との間に曲率半径0.1〜5.0mmの曲面の第2の面取り部、段差の底面と基板の端面との間に第3の面取り部のうち、少なくともいずれかの面取り部を形成する研削工程と、形成された非貫通の穴、溝又は段差の側面及び底面及び形成された面取り部に回転研磨ツールのヤング率が7GPa以下の部材から成る研磨加工部をそれぞれ独立した一定圧力で接触させて側面、底面及び面取り部の研削面を鏡面加工する工程とを含む半導体用ガラス基板の製造方法。
<9> 鏡面加工工程が、非貫通の穴、溝又は段差及び形成された面取り部に回転研磨ツールの研磨加工部を1〜1,000,000Paの圧力で接触させて鏡面加工する<8>記載の半導体用ガラス基板の製造方法。
<10> 鏡面加工工程が、非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面並びに形成された面取り部に回転研磨ツールの研磨加工部をそれぞれ独立した圧力で同時に接触させて鏡面加工する<8>又は<9>記載の半導体用ガラス基板の製造方法。
<11> 鏡面加工工程が、基板の非貫通の穴、溝又は段差及び形成された面取り部の形状に沿うように回転研磨ツールと基板とを相対的に移動させて鏡面加工する<8>〜<10>のいずれかに記載の半導体用ガラス基板の製造方法。
<12> 鏡面加工工程が、基板の非貫通の穴、溝又は段差及び形成された面取り部の形状に沿うように回転研磨ツールを公転あるいは基板保持台を回転させて鏡面加工する<11>記載の半導体用ガラス基板の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、IC等の製造に重要な光リソグラフィ法において使用されるフォトマスク基板用合成石英ガラス基板やナノインプリント用モールド基板等の非貫通の穴、溝又は段差を有する半導体用ガラス基板おいて、形状精度が高く、底面及び側面が鏡面である非貫通の穴、溝又は段差を有し、非貫通の穴、溝又は段差において割れ及び欠けが発生しにくく、高い強度及び清浄度を有する半導体用合成石英ガラス基板を提供することができる。
また、非貫通の穴、溝又は段差に荷重をかける際、最大応力がかかる側面と底面の間に曲面面取り部を設けることで、底部の強度を高めることができる。これにより所定の荷重によって非貫通の穴、溝又は段差の底面の形状を変化させても、底面の破壊が起きない基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明における非貫通の穴を有する合成石英ガラス基板の一例を示す斜視図である。
【図2】同例の断面図である。
【図3】本発明における非貫通の穴を有する基板の他の例を示す斜視図である。
【図4】本発明における溝を有する合成石英ガラス基板の一例を示す斜視図である。
【図5】同例の断面図である。
【図6】本発明における段差を有する合成石英ガラス基板の一例を示す斜視図である。
【図7】同例の断面図である。
【図8】本発明における段差を有する基板の他の例を示す斜視図である。
【図9】本発明における段差を有する基板の別の例を示す斜視図である。
【図10】本発明における段差を有する基板の更に別の例を示す斜視図である。
【図11】回転研磨ツールの一例を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の半導体用ガラス基板の製造方法は、基板の所用箇所に非貫通の穴、溝又は段差を形成する研削工程と、形成された非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面に回転研磨ツールを一定圧力で接触させて底面及び側面の研削面を鏡面加工する工程とを含むものである。
【0015】
ここで、本発明の半導体用ガラス基板の製造方法に用いられるガラス基板は、公知の方法により製造されたものであればよく、必要に応じて基板表面にCr膜等が成膜されていたり、ナノメートルオーダーの微細な凹凸パターンが存在していてもよい。
【0016】
半導体用ガラス基板の形状は四角形状、円形状等とすることができ、ガラス基板の大きさは、ICフォトマスク基板やナノインプリント用基板のサイズから、大型液晶テレビフォトマスク用大型基板のサイズまで、適宜選定される。例えば、四角形状のガラス基板では20mm×20mm〜152mm×152mmのサイズから1,000mm×2,000mmのサイズの基板が好適に用いられる。丸形状のガラス基板では6インチφ、8インチφのウェハサイズが好適に用いられる。
【0017】
ここで、半導体用ガラス基板の厚さは適宜選定されるが、0.1〜300mm、好ましくは0.1〜100mm、更に好ましくは0.2〜30mmである。
【0018】
必要に応じてガラス基板は、予め平坦度及び平行度を測定して、精度の確認を行っておくことが好ましい。平坦度の測定は、測定精度の観点から、レーザー光等のコヒーレントな光を基板表面に当てて反射させ、基板表面の高さの差が反射光の位相のずれとして観測されることを利用した光学干渉式の方法が好ましく、例えばZygo社製Zygo Mark IVxpを用いて測定できる。また、平行度も、Zygo社製Zygo Mark IVxpを用いて測定できる。
【0019】
この場合、非貫通の穴、溝又は段差を形成するための研削工程を行う前の半導体用ガラス基板の表裏面の平坦度は0.01〜30μm、好ましくは0.01〜2μm、更に好ましくは0.01〜0.5μm、平行度は0.1〜50μm、好ましくは0.1〜5μm、更に好ましくは0.1〜3μmであることが、パターン均一性の点で好ましい。
【0020】
本発明の半導体用ガラス基板は、露光装置やナノインプリント装置に組み込むために、装置の形態や用途に合わせて非貫通の穴、溝、又は段差を有するものである。
【0021】
即ち、図1,2は四角形状の半導体用ガラス基板1の中央部に非貫通の穴2を形成したものであり、図3は円形状の基板1の中央部に非貫通の穴2を形成したものである。この場合、非貫通の穴は、通常基板1の裏面1bに形成され、基板1の表面1aには例えばフォトマスクやナノインプリント用加工が施される。図4,5は四角形状の基板1の裏面1bの中央部に幅方向に沿って溝3を形成したものである。図6,7は四角形状の基板1の表面1aの長さ方向両端部にそれぞれ段差4,4を形成したものである。この場合、段差は基板1の表面1aではなく、裏面1bに形成してもよく、また、図8に示したように、基板1の長さ方向両端部の表裏面にそれぞれ段差4を形成してもよい。更に、段差は基板の周縁部に沿って形成してもよく、図9,10はこれを示す。なお、図9は四角形状の基板1の周縁部に段差4を形成した例、図10は円形状の基板1の周縁部に段差4を形成した例を示す。なお、図9,10では段差4は基板1の表面1aに形成したが、裏面1bに形成することもできる。
また、基板の一方の面に非貫通の穴、溝、段差の2種類以上を形成したり、基板の一方の面に非貫通の穴、溝、段差のいずれかを形成し、基板の他方の面にこれと異なる非貫通の穴、溝、段差のいずれかを形成してもよい。
【0022】
非貫通の穴の形状は、平面形状が円形状、楕円形状、長円状、四角状、多角形状とすることができるが、図1,3に示すような円形状が好ましい。その大きさは、円形状であれば直径、楕円形状や長円状であれば長径、角状であれば対角長が5〜200mmであることが好ましい。溝の場合は、図4に示したように、両側壁3a,3bが互いに平行な平面に形成することが好ましいが、両側壁が平行でなくてもよく、一方又は双方の側壁が凸状又は凹状曲面であってもよい。更に、段差の場合、図6に示したように、その内壁4aが段差4の自由先端縁部4bにつながる基板端面と平行な平面に形成することが好ましいが、該端面と平行でなくてもよく、内壁が凸状又は凹状曲面であってもよい。なお、溝及び段差はその最大幅が5〜200mmであることが好ましい。
【0023】
上記非貫通の穴、溝、段差は、図2,5,7のように非貫通の穴、溝又は段差の側面と基板の非貫通の穴、溝又は段差を有する面との間に第1の面取り部5が存在する。更に、段差の場合、図7に示したように、段差の底面と基板の端面との間に第3の面取り部6が存在してもよい。上記面取り部5,6の幅Cは研削工程で発生した細かな欠け(チッピング)の除去又は基板の接触による割れ及び欠けを防ぐ等の点で、0.01〜5mm、好ましくは0.05〜1mmである。
【0024】
上記非貫通の穴、溝、段差は、図2,5,7のように非貫通の穴、溝又は段差の側面と底面の間に曲面を有する第2の面取り部7が存在することが好ましい。上記曲面面取り部の曲率半径Rは非貫通の穴、溝又は段差の底面に十分な強度を持たせる、角部に丸みを持たせ滑らかにすることで研削工程で発生するクラック及び割れを防ぐ、鏡面加工部の部材の端を接触しやすくさせ鏡面化をしやすくする等の点で、0.1〜5.0mm、好ましくは0.2〜2.0mmである。
【0025】
上記穴2、溝3、段差4の深さは基板の用途に応じて適宜選定されるが、半導体用合成石英ガラス基板の残し厚さ(非貫通の穴、溝又は段差の底面と、これらが形成された面と反対側の面との距離(図においてtで示す)は、強度の点から0.05〜80mm、好ましくは0.05〜29mm、更に好ましくは0.05〜11mmであり、半導体用合成石英ガラス基板の厚さの1〜90%、より好ましくは5〜50%、更に好ましくは10〜30%とすることが強度の点から好ましい。
【0026】
なお、例えばナノインプリント用基板の場合、上記非貫通の穴2、溝3は、基板の裏面側に形成し、穴2や溝3の底面に対向する表面部分にナノインプリントを施すための凹凸が形成される。また、段差4は、基板の表面側及び/又は裏面側に形成し、表面側にナノインプリントを施すための凹凸が形成される。
【0027】
本発明の製造方法において、はじめに非貫通の穴、溝又は段差を形成する研削工程では、マシニングセンターやその他数値制御工作機械を用いて、合成石英ガラスの加工面に、割れ、ヒビ、激しいチッピング等の発生しない研削条件で砥石を回転、移動させ、所定のサイズ、深さの非貫通の穴、溝又は段差の研削を施して行う。この際、第1、第2、第3の面取り部5,6,7も同様に形成することが好ましい。
【0028】
具体的には、ダイヤモンド砥粒、CBN砥粒等を電着又はメタルボンドで固定した砥石を用いて、主軸回転数100〜30,000rpm、特に1,000〜15,000rpm、切削速度1〜10,000mm/min、特に10〜1,000mm/minで研削することが好ましい。
【0029】
このように非貫通の穴、溝又は段差を研削、形成した段階において、これら非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面並びに面取り部の面粗度Raは2〜500nm、特に2〜100nmであるように研削砥石、研削条件を選定することが好ましく、また底面の平行度は90μm以下、特に1〜40μm、平坦度は0.01〜20μm、特に0.01〜10μmであることが好ましい。
【0030】
次に、非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面並びに面取り部のそれぞれの研削面を鏡面加工する工程は、研削面に回転研磨ツールの研磨加工部を底面と側面並びに面取り部とにそれぞれ別個に独立した一定圧力で接触させて、一定速度で相対的に移動させて行う。一定圧力、一定速度の条件で研磨を行うことにより、一定の研磨レートで研削面を均一に研磨することができる。具体的には、回転研磨ツールの研磨加工部の接触時の圧力としては、経済性及び制御のし易さ等の点で1〜1,000,000Pa、特に1,000〜100,000Paであることが好ましい。
【0031】
また、速度は、経済性及び制御のし易さなどの点で1〜10,000mm/minが好ましく、特に10〜1,000mm/minが好ましい。移動量は合成石英ガラス基板の形状、大きさに応じて適宜決められる。
【0032】
回転研磨ツールは、その研磨加工部が研磨可能な回転体であればいかなるものでも構わないが、ツールチャッキング部を持ったスピンドル、リューターに研磨ツールを装着させる方式等が挙げられる。
【0033】
研磨ツールの材質としては、少なくともその研磨加工部がセリウムパッド、ゴム砥石、フェルトバフ、ポリウレタン等、被加工物を加工除去でき、かつヤング率が好ましくは7GPa以下、更に好ましくは5GPa以下のものであれば種類は限定されない。研磨ツールの材質をヤング率7GPa以下の部材を用いることにより、圧力により研磨加工部を非貫通の穴、溝又は段差の面取り部の形状に沿うように変形させて、底面及び側面と同時に面取り部を鏡面化することが可能となる。
【0034】
研磨ツールの研磨加工部の形状は円又はドーナツ型の平盤、円柱型、砲弾型、ディスク型、たる型等が挙げられる。例えば、図11に示したように、研磨ツール10として、ピストン11に進退可能に収容され、図示していないモータ等の回転源の駆動により回転する回転軸12の先端に研磨加工部13を取り付けたものが使用し得る。
この場合、非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面を同時に研磨する点から、研磨加工部13の非貫通の穴、溝又は段差の側面と接触する部分の高さ(図11においてh1)は該側面の高さ(図2においてh0)以上であることが好ましい。また、研磨加工部13の直径(図11においてr1)は、非貫通の穴が円形である場合にはその直径(図2においてr0)、楕円状、長円状等の場合にはその短径のそれぞれ1/2以上(r1≧r0/2)であることが好ましい。また、溝の場合にはその溝の幅の1/2以上(r1≧W1/2)、段差の場合にはその幅以上(r1≧W2)であることが好ましい。
【0035】
上述した非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面並びに面取り部の研削面に回転研磨ツールの研磨加工部を接触させて研磨を行う場合、研磨砥粒スラリーを介在させた状態で加工を行うことが好ましい。
この場合、研磨砥粒としてはシリカ、セリア、アランダム、ホワイトアランダム(WA)、エメリー、ジルコニア、SiC、ダイヤモンド、チタニア、ゲルマニア等が挙げられ、その粒度は10nm〜10μmが好ましく、これらの水スラリーを好適に用いることができる。
【0036】
また、回転研磨ツールの相対移動速度は、上述したように、1〜10,000mm/min、特に10〜1,000mm/minの範囲で選定することができる。回転研磨ツールの研磨加工部の回転数は100〜10,000rpm、好ましくは1,000〜8,000rpm、更に好ましくは2,000〜7,000rpmである。回転数が小さいと加工レートが遅くなり、研削面を鏡面化するのに時間がかかりすぎる場合があり、回転数が大きいと加工レートが速くなったり、ツールの磨耗が激しくなるため、鏡面化の制御が難しくなる場合がある。
【0037】
本発明の半導体用ガラス基板の製造方法は、非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面並びに面取り部をそれぞれ独立の圧力で回転研磨ツールを接触させて鏡面加工することができる。圧力の調節は、空気圧ピストン、ロードセル等を用いることができ、例えば図11の回転研磨ツールの場合、空気圧ピストン11の圧力を調整することで底面に対する研磨加工部の圧力を調整することができ、また、図11の回転研磨ツールの場合、空気圧ピストン11に該ピストン11を非貫通の穴、溝又は段差の側部に向けて進退させる別のピストンを取り付け、該別のピストンの圧力を調整してピストン11の側部への圧力を調整し、あるいは更に別のピストンを設け、このピストンに進退する軸体を、基板を保持する基板保持台に連結し、この軸体の圧力を調整することで横方向への圧力を調整し、基板保持台の進退を調整するなどして、研磨加工部の上記側面に対する圧力を調整することができる。
このように、底面と側面への圧力を独立させ、単独の回転研磨ツールをそれぞれの面に独立した一定圧力で回転研磨ツールを接触させながら、一定速度で相対的に移動させることにより、それぞれの面を同時に独立の研磨レートで均一に研磨することができる。
【0038】
非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面を回転研磨ツールにより同時ではなく順番に別々に研磨する方法は、回転研磨ツールが底面及び側面に同時に接触してしまう部分が生じ、当該部分における研磨が不均一になる上、研磨時間がかかる。
【0039】
なお、本発明の半導体用ガラス基板の製造方法は、基板の非貫通の穴、溝又は段差並びに面取り部の形状に沿うように回転研磨ツールと基板とを相対的に移動させて鏡面加工することができる。移動させる方式は移動量、方向、速度を一定に制御できる方式であればいかなるものでもよい。例えば、多軸ロボット等を用いる方式等が挙げられる。
【0040】
回転研磨ツールと基板とを相対的に移動させる方法には、基板の非貫通の穴、溝又は段差並びに面取り部の形状に沿うように回転研磨ツールを公転あるいは基板を回転させる方法と、1軸以上の直線軸上を移動させる方法等がある。
【0041】
基板の非貫通の穴、溝又は段差並びに面取り部の形状に沿うように回転研磨ツールを公転あるいは基板を回転させて鏡面化する方法では、回転数、回転速度を一定に制御できる方式であればいかなるものでもよい。例えば、モータースピンドルにより、回転研磨ツールあるいは基板保持台を回転数0.1〜10,000rpm、特に1〜100rpmで、速度1〜10,000mm/min、特に10〜1,000mm/minで回転させる方式等が挙げられる。この方法は、真円形、楕円形あるいは壁面が曲面状の非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面を一定速度でそれぞれ独立した一定圧力にて均一に研磨して鏡面化する場合に特に有効である。
【0042】
基板の非貫通の穴、溝又は段差並びに面取り部の形状に沿うように回転研磨ツールあるいは基板を1軸以上の直線軸上を移動させて鏡面加工する方法では、移動量、速度を一定に制御できる方式であればいかなるものでもよいが、例えば、回転研磨ツールあるいは基板保持台を速度1〜10,000mm/min、特に10〜1,000mm/minでサーボモーター等によりスライダー上を移動させる方式等が挙げられる。この方法は、角形あるいは壁面が平面状の非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面を一定圧力、一定速度で均一に研磨して鏡面化する場合に特に有効である。
【0043】
必要に応じて鏡面加工工程後、基板の非貫通の穴、溝又は段差の底部及びその周辺におけるキズ、欠陥、クラックの有無を検査することができる。検査方法は、深さ200nm以上、幅1μm以上のキズ、欠陥、クラックを検出できる方法であればいかなるものでもよいが、例えば高輝度ランプを使用した目視観察、顕微鏡観察、レーザー光欠陥検査装置等による検査方法等が挙げられる。
【0044】
上記のようにして鏡面研磨して得られる非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面並びに面取り部は、面粗度Raが1nm以下、好ましくは0.5nm以下の鏡面である。非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面が鏡面でないと、光を透過させることができず、露光ができなくなる場合や、汚れが発生すると汚れが光の透過を邪魔してしまったり、パターンが汚染されたりする場合が生じて好ましくない。なお、面粗度RaはJIS B0601に準拠した値である。
【0045】
このように非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面を鏡面にすることにより、底面の強度は大きく増加する。特に、非貫通の穴、溝又は段差の側面と底面の間に曲面面取り部を設けることにより、底面に荷重を加える際最も大きな応力がかかる側面と底面の部分が厚みを持ち、鏡面化も十分になされるため、底面の強度は更に増加する。これにより、所定の範囲の荷重によって非貫通の穴、溝又は段差の底面の形状を変化させて、好ましくは100MNm-2以下、更に好ましくは5〜50MNm-2、特に好ましくは5〜20MNm-2の応力を非貫通の穴、溝又は段差の底部に加えても、底面の破壊は起きず、複数回荷重を加えても、耐久性が損なわれず、底面の破壊は起きなくなる。
【0046】
ここで、所定の範囲の荷重とは、例えば残し厚さがhmm、直径がammの円形の非貫通の穴の場合、底面全体に約1.3×108×h2/a2Pa以下、特に7.0×106×h2/a2〜7.0×107×h2/a2Pa、とりわけ7.0×106×h2/a2〜3.0×107×h2/a2Paの等分布荷重をいい、この荷重を加えた場合に、100MNm-2以下の応力が底部にかかる。同様に、残し厚さがhmm、幅がamm、長さがbmmの溝の場合、溝の底の中央に約30×b/a×h2N以下、特に1×b/a×h2〜15×b/a×h2N、とりわけ1×b/a×h2〜6×b/a×h2Nの集中荷重を加えた場合には、100MNm-2以下の応力が底部にかかる。また、残し厚さがhmm、幅がamm、長さがbmm(b>3a)の段差の場合、段差の自由先端縁部の中央部に約32×h2N以下、特に1×h2〜16×h2N、とりわけ1×h2〜6×h2Nの集中荷重を加えた場合には、100MNm-2以下の応力が底部にかかる。非貫通の穴に対する等分布荷重は、底部全体を空気圧、液圧等で、指定の圧力で指定の回数、加圧又は減圧することのできる試験装置を用いるなどして加えることができる。集中荷重は、底部の所定の場所を先端に細い棒や針等が付いた加圧装置等で、指定の圧力で指定の回数、加圧することのできる試験装置を用いるなどして加えることができる。
【0047】
本発明の半導体用ガラス基板の鏡面研磨後の非貫通の穴、溝又は段差の底面の平坦度は、基板の把持の点で0.01〜40μm、好ましくは0.01〜10μm、更に好ましくは0.01〜5μmである。平坦度が低いと、非貫通の穴、溝又は段差の底面を把持して露光装置やパターニング装置に組み込む場合、精密に平行に把持することができないおそれがある。また平坦度が低いと、非貫通の穴、溝又は段差を通して気体や液体の流入、排出等を行う場合、気体や液体が安定的に流れないおそれがある。
【0048】
また、基板表面と非貫通の穴、溝又は段差の底面の平行度は、パターンのずれの点で100μm以下、好ましくは50μm以下、更に好ましくは10μm以下である。平行度が低いと、非貫通の穴、溝又は段差を変形させて樹脂にインプリントする場合、きれいな対称形に変形させることができず、また非貫通の穴、溝又は段差の底面を把持してパターニング装置に組み込む場合、基板を平行に精密に把持することができず、焦点ずれ、パターンずれが生じるおそれがある。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0050】
[実施例1]
端面及び表裏面が研磨により鏡面化された大きさ100mm×100mm、厚さ6.35mmの合成石英ガラス基板Aを、原料基板として用意した。この合成石英ガラス基板の裏面の中心に、マシニングセンター、ダイヤモンド砥粒付砥石を使用して、深さ5.32mm、直径69.98mmφの円形で、側面と裏面との間に幅0.3mmの第1の面取り部を有する非貫通の穴を加工した。
次に、合成石英ガラス基板を基板保持台に固定して、1,000rpmで回転する直径50mmφ、高さ30mmの羊毛フェルトバフを非貫通の穴の底面に3,500Pa、側面に2,000Paで押し当てて、基板保持台を10rpmで回転させ、60分間研磨し、鏡面化した。研磨後、合成石英ガラス基板のザグリ穴の深さは5.35mm、残し厚さは1.00mm、直径は70mmφ、第1の面取り部の幅は0.4mmとなった。
非貫通の穴の側面と裏面との間をマイクロスコープにより観察したところ、細かな欠け(チッピング)は観察されなかった。
【0051】
ここで、鏡面化された合成石英ガラス基板Aの平行度、表裏面の平坦度、表裏面及び側面の面粗度Raは下記の通りであった。
平行度 0.6μm
表面 平坦度 0.212μm
面粗度 0.14nm
裏面 平坦度 0.355μm
面粗度 0.16nm
側面 面粗度 0.84nm
なお、平坦度、平行度の測定はZygo社製Zygo Mark IVxpを用いて行い、面粗度の測定には原子間力顕微鏡を使用した。
【0052】
また、上記合成石英ガラス基板Aの裏面に形成した非貫通の穴の鏡面研磨前の底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び周壁面、第1の面取り部の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 9μm
平坦度 3μm
面粗度 7.06nm
周壁面 面粗度 8.08nm
第1の面取り部 面粗度 6.93nm
なお、平坦度、平行度の測定はZygo Mark IVxpでは測定できず、マイクロメーターを用いて測定した。また、面粗度は原子間力顕微鏡を用いた。
【0053】
鏡面研磨後の非貫通の穴の底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び周壁面、第1の面取り部の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 10μm
平坦度 4μm
面粗度 0.30nm
周壁面 面粗度 0.39nm
第1の面取り部 面粗度 0.81nm
【0054】
[実施例2]
端面及び表裏面が研磨により鏡面化された大きさ100mm×100mm、厚さ6.35mmの合成石英ガラス基板Aを、原料基板として用意した。この合成石英ガラス基板の裏面の中心に、マシニングセンター、ダイヤモンド砥粒付砥石を使用して、深さ5.32mm、直径69.98mmφの円形で、側面と底面の間に曲率半径1.5mmの曲面の第2の面取り部を、側面と裏面との間に幅0.3mmの第1の面取り部を有する非貫通の穴を加工した。
次に、合成石英ガラス基板を基板保持台に固定して、1,000rpmで回転する直径50mmφ、高さ30mmの羊毛フェルトバフを非貫通の穴の底面に3,500Pa、側面に2,000Paで押し当てて、基板保持台を10rpmで回転させ、60分間研磨し、鏡面化した。研磨後、合成石英ガラス基板のザグリ穴の深さは5.35mm、残し厚さは1.00mm、直径は70mmφ、曲面の第2の面取り部の曲率半径は1.6mm、第1の面取り部の幅は0.4mmとなった。
【0055】
ここで、鏡面化された合成石英ガラス基板Aの平行度、表裏面の平坦度、表裏面及び側面の面粗度Raは下記の通りであった。
平行度 0.6μm
表面 平坦度 0.154μm
面粗度 0.13nm
裏面 平坦度 0.325μm
面粗度 0.15nm
側面 面粗度 0.76nm
なお、平坦度、平行度の測定はZygo社製Zygo Mark IVxpを用いて行い、面粗度の測定には原子間力顕微鏡を使用した。
【0056】
また、上記合成石英ガラス基板Aの裏面に形成した非貫通の穴の鏡面研磨前の底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び周壁面、第2の曲面面取り部及び第1の面取り部の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 8μm
平坦度 3μm
面粗度 6.48nm
周壁面 面粗度 7.40nm
第2の曲面面取り部 面粗度 4.61nm
第1の面取り部 面粗度 5.77nm
なお、平坦度、平行度の測定はZygo Mark IVxpでは測定できず、マイクロメーターを用いて測定した。また、面粗度は原子間力顕微鏡を用いた。
【0057】
鏡面研磨後の非貫通の穴の底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び周壁面、第2の曲面面取り部及び第1の面取り部の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 9μm
平坦度 4μm
面粗度 0.28nm
周壁面 面粗度 0.29nm
第2の曲面面取り部 面粗度 1.24nm
第1の面取り部 面粗度 0.81nm
なお、平坦度、平行度の測定はZygo Mark IVxpにて行い、面粗度は原子間力顕微鏡を用いた。
【0058】
また、上記と同条件で同様の非貫通の穴を鏡面研磨した同様の合成石英ガラス基板を50枚製作したところ、非貫通の穴の深さは5.35±0.01mm、直径は70±0.01mmφであった。
この合成石英ガラス基板に対して、高輝度ランプを用いた目視観察によりクラックがないことを確認し、非貫通の穴を−15kPaで減圧し、大気圧に戻すというサイクルを50,000回行い、耐久試験を行ったところ、50枚全ての基板で非貫通の穴の底面の破壊は起きなかった。
また、この合成石英ガラス基板に対して、耐久試験を行う前後で非貫通の穴を−50kPaで減圧し、約46MNm-2の応力を底部に加えても、50枚全ての基板で非貫通の穴の底面の破壊は起きなかった。
【0059】
[実施例3]
端面及び表裏面が研磨により鏡面化された大きさ152mm×152mm、厚さ6.35mmの合成石英ガラス基板Bを、原料基板として用意した。この合成石英ガラス基板の裏面の中心に、マシニングセンター、ダイヤモンド砥粒付砥石を使用して、深さ4.98mm、幅29.9mm、長さ152mmで、側面と底面の間に曲率半径0.9mmの第2の曲面面取り部を、側面と裏面との間に幅0.3mmの第1の面取り部を有する端面と平行な溝を加工した。
次に、合成石英ガラス基板を基板保持台に固定して、1,000rpmで回転する直径30mmφ、高さ30mmの羊毛フェルトバフを溝底面に2,000Pa、片方の側面に2,000Paで押し当てて、基板保持台を50mm/minで5往復移動させ、溝底面及びもう一方の側面に上記と同じ圧力で押し当てて基板保持台を50mm/minで5往復移動させて鏡面化した。研磨後、合成石英ガラス基板の溝の深さは5mm、幅は30.1mm、第2の曲面面取り部の曲率半径は1.0mm、第1の面取り部の幅は0.4mmとなった。
【0060】
ここで、鏡面化された合成石英ガラス基板Bの平行度、表裏面の平坦度、表裏面及び側面の面粗度Raは下記の通りであった。
平行度 0.9μm
表面 平坦度 0.252μm
面粗度 0.15nm
裏面 平坦度 0.471μm
面粗度 0.18nm
側面 面粗度 0.68nm
【0061】
また、上記合成石英ガラス基板Bの裏面に形成した溝の鏡面研磨前の底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び側壁面、第2の曲面面取り部及び第1の面取り部の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 13μm
平坦度 5μm
面粗度 7.51nm
側壁面 面粗度 8.97nm
第2の曲面面取り部 面粗度 5.73nm
第1の面取り部 面粗度 7.82nm
【0062】
鏡面研磨後の溝の底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び側壁面、第2の曲面面取り部及び第1の面取り部の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 16μm
平坦度 8μm
面粗度 0.58nm
側壁面 面粗度 0.63nm
第2の曲面面取り部 面粗度 1.01nm
第1の面取り部 面粗度 0.78nm
【0063】
なお、上記と同条件で同様の溝を鏡面研磨した合成石英ガラス基板を50枚製作したところ、溝の深さは5±0.01mm、幅は30±0.01mmであった。
この合成石英ガラス基板に対して、高輝度ランプを用いた目視観察によりクラックがないことを確認し、溝の底の中央に10Nの荷重を加え、0に戻すというサイクルを10,000回行ったところ、50枚全ての基板で溝の底面の破壊は起きなかった。
また、この合成石英ガラス基板に対して、耐久試験を行う前後で溝の底の中央に50Nの荷重を加え、約20MNm-2の応力を底部に加えても、50枚全ての基板で溝の底面の破壊は起きなかった。
【0064】
[実施例4]
端面及び表裏面が研磨により鏡面化された大きさ200mm×400mm、厚さ10mmの合成石英ガラス基板Cを、原料基板として用意した。この合成石英ガラス基板をマシニングセンター、ダイヤモンド砥粒付砥石を使用して、基板裏面の両端部に深さ6.95mm、幅19.99mm、長さ200mmで、側面と底面の間に曲率半径2.0mmの曲面の第2の面取り部を、側面と裏面との間に幅0.5mmの第1の面取り部を、底面と基板の端面との間に幅0.5mmの第3の面取り部を有する段差を持つ基板に加工した。
次に、合成石英ガラス基板を基板保持台に固定して、1,000rpmで回転する直径30mmφ、高さ30mmの羊毛フェルトバフを段差底面に2,000Pa、側面に2,000Paで押し当てて、基板保持台を200mm/minで5往復移動させ、両辺の段差を鏡面化した。研磨後、合成石英ガラス基板の段差の深さは7mm、幅は20mm、第2の曲面面取り部の曲率半径は2.1mm、第1及び第3の面取り部の幅は0.6mmとなった。
【0065】
ここで、鏡面化された合成石英ガラス基板Cの平行度、表裏面の平坦度、表裏面及び側面の面粗度Raは下記の通りであった。
平行度 5.3μm
表面 平坦度 2.085μm
面粗度 0.18nm
裏面 平坦度 3.193μm
面粗度 0.21nm
側面 面粗度 0.74nm
【0066】
また、上記合成石英ガラス基板Cの裏面に形成した段差の鏡面研磨前の両底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び側壁面、第2の曲面面取り部及び第1,第3の面取り部の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 14μm及び19μm
平坦度 7μm及び9μm
面粗度 10.49nm
側壁面 面粗度 9.54nm
第2の曲面面取り部 面粗度 5.89nm
第1の面取り部(側面−裏面間) 面粗度 4.97nm
第3の面取り部(底面−端面間) 面粗度 6.90nm
【0067】
鏡面研磨後の段差の両底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び側壁面、第2の曲面面取り部及び第1,第3の面取り部の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 16μm及び20μm
平坦度 8μm及び10μm
面粗度 0.21nm
側壁面 面粗度 0.25nm
第2の曲面面取り部 面粗度 0.78nm
第1の面取り部(側面−裏面間) 面粗度 0.89nm
第3の面取り部(底面−端面間) 面粗度 0.78nm
【0068】
合成石英ガラス基板を10枚製作したところ、段差の深さは7±0.01mm、幅は20±0.01mmであった。
この合成石英ガラス基板に対して、高輝度ランプを用いた目視観察によりクラックがないことを確認し、段差の自由先端縁部の中央部に20Nの荷重を加え、0に戻すというサイクルを5,000回行ったところ、10枚全ての基板で溝の底面の破壊は起きなかった。
また、この合成石英ガラス基板に対して、耐久試験を行う前後で段差の底面の両端の端面と平行な辺の中央に50Nの荷重を加え、約17MNm-2の応力を底部に加えても、10枚全ての基板で段差の底面の破壊は起きなかった。
【0069】
[比較例1]
端面及び表裏面が研磨により鏡面化された大きさ100mm×100mm、厚さ6.35mmの合成石英ガラス基板Aを、原料基板として用意した。この合成石英ガラス基板の裏面の中心に、マシニングセンター、ダイヤモンド砥粒付砥石を使用して、深さ5.32mm、直径69.98mmφの円形の非貫通の穴を加工した。
次に、合成石英ガラス基板を基板保持台に固定して、1,000rpmで回転する直径35mmφ、高さ30mmの羊毛フェルトバフを非貫通の穴の底面に3,500Pa、側面に2,000Paで押し当てて、基板保持台を10rpmで回転させ、60分間研磨し、鏡面化した。研磨後、合成石英ガラス基板のザグリ穴の深さは5.35mm、残し厚さは1.00mm、直径は70mmφとなった。
非貫通の穴の側面と裏面との間をマイクロスコープにより観察したところ、最大幅0.2mmの細かな欠け(チッピング)が全周で観察された。
【0070】
ここで、鏡面化された合成石英ガラス基板Aの平行度、表裏面の平坦度、表裏面及び側面の面粗度Raは下記の通りであった。
平行度 0.6μm
表面 平坦度 0.194μm
面粗度 0.23nm
裏面 平坦度 0.326μm
面粗度 0.25nm
側面 面粗度 0.99nm
なお、平坦度、平行度の測定はZygo社製Zygo Mark IVxpを用いて行い、面粗度の測定には原子間力顕微鏡を使用した。
【0071】
また、上記合成石英ガラス基板Aの裏面に形成した非貫通の穴の鏡面研磨前の底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び周壁面の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 8μm
平坦度 4μm
面粗度 5.92nm
周壁面 面粗度 7.06nm
なお、平坦度、平行度の測定はZygo Mark IVxpでは測定できず、マイクロメーターを用いて測定した。また、面粗度は原子間力顕微鏡を用いた。
【0072】
鏡面研磨後の非貫通の穴の底面の平行度、平坦度、面粗度Ra、及び周壁面の面粗度は下記の通りであった。
底面 平行度 9μm
平坦度 5μm
面粗度 0.24nm
周壁面 面粗度 0.33nm
なお、平坦度、平行度の測定はZygo Mark IVxpにて行い、面粗度は原子間力顕微鏡を用いた。
【0073】
また、上記と同条件で同様の非貫通の穴を鏡面研磨した同様の合成石英ガラス基板を50枚製作したところ、非貫通の穴の深さは5.35±0.01mm、直径は70±0.01mmφであった。
この合成石英ガラス基板に対して、高輝度ランプを用いた目視観察を行ったところ、50枚中で3枚に目視可能な大きさのクラックが発見された。また50枚全ての基板で非貫通の穴の側面と底面の間に鏡面化不足による研磨残りの跡が認められた。続いて非貫通の穴を−15kPaで減圧し、大気圧に戻すというサイクルを50,000回行い、耐久試験を行ったところ、50枚中17枚が減圧回数100回前後で非貫通の穴の底面が破壊した。
また、破壊されなかった33枚の合成石英ガラス基板に対して、非貫通の穴を−50kPaで減圧し、約46MNm-2の応力を底部に加えたところ、33枚全ての基板の非貫通の穴の底面が破壊した。
【符号の説明】
【0074】
1 基板
1a 基板表面
1b 基板裏面
2 非貫通の穴
3 溝
3a、3b 側壁
4 段差
5 第1の面取り部
6 第3の面取り部
7 曲面の第2の面取り部
10 研磨ツール
11 ピストン
12 回転軸
13 研磨加工部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体用ガラス基板の少なくとも一方の面に非貫通の穴、溝又は段差を有し、非貫通の穴、溝又は段差の側面と基板の非貫通の穴、溝又は段差を有する面との間に第1の面取り部が存在し、上記非貫通の穴、溝又は段差の側面及び底面が鏡面であると共に、上記第1の面取り部が鏡面である、半導体用ガラス基板。
【請求項2】
前記非貫通の穴、溝又は段差の側面と底面の間に曲率半径0.1〜5.0mmの曲面の第2の面取り部が存在し、この曲面の第2の面取り部が鏡面である請求項1記載の半導体用ガラス基板。
【請求項3】
前記段差の底面と基板の端面との間に第3の面取り部が存在し、この第3の面取り部が鏡面である、請求項1又は2記載の半導体用ガラス基板。
【請求項4】
前記非貫通の穴、溝又は段差の側面、底面、前記面取り部の面粗度(Ra)が1nm以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の半導体用ガラス基板。
【請求項5】
前記非貫通の穴、溝又は段差の底部の強度が20MPa以上である請求項1〜4のいずれか1項記載の半導体用ガラス基板。
【請求項6】
前記非貫通の穴、溝又は段差の底面の平坦度が0.01〜40μmである請求項1〜5のいずれか1項記載の半導体用ガラス基板。
【請求項7】
前記非貫通の穴、溝又は段差の底面の平行度が100μm以下である請求項1〜6のいずれか1項記載の半導体用ガラス基板。
【請求項8】
半導体用合成石英ガラス基板の少なくとも一方の面に非貫通の穴、溝又は段差を形成すると共に、非貫通の穴、溝又は段差の側面と基板の非貫通の穴、溝又は段差を有する面との間に第1の面取り部、非貫通の穴、溝又は段差の側面と底面との間に曲率半径0.1〜5.0mmの曲面の第2の面取り部、段差の底面と基板の端面との間に第3の面取り部のうち、少なくともいずれかの面取り部を形成する研削工程と、形成された非貫通の穴、溝又は段差の側面及び底面及び形成された面取り部に回転研磨ツールのヤング率が7GPa以下の部材から成る研磨加工部をそれぞれ独立した一定圧力で接触させて側面、底面及び面取り部の研削面を鏡面加工する工程とを含む半導体用ガラス基板の製造方法。
【請求項9】
鏡面加工工程が、非貫通の穴、溝又は段差及び形成された面取り部に回転研磨ツールの研磨加工部を1〜1,000,000Paの圧力で接触させて鏡面加工する請求項8記載の半導体用ガラス基板の製造方法。
【請求項10】
鏡面加工工程が、非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面並びに形成された面取り部に回転研磨ツールの研磨加工部をそれぞれ独立した圧力で同時に接触させて鏡面加工する請求項8又は9記載の半導体用ガラス基板の製造方法。
【請求項11】
鏡面加工工程が、基板の非貫通の穴、溝又は段差及び形成された面取り部の形状に沿うように回転研磨ツールと基板とを相対的に移動させて鏡面加工する請求項8〜10のいずれか1項記載の半導体用ガラス基板の製造方法。
【請求項12】
鏡面加工工程が、基板の非貫通の穴、溝又は段差及び形成された面取り部の形状に沿うように回転研磨ツールを公転あるいは基板保持台を回転させて鏡面加工する請求項11記載の半導体用ガラス基板の製造方法。
【請求項1】
半導体用ガラス基板の少なくとも一方の面に非貫通の穴、溝又は段差を有し、非貫通の穴、溝又は段差の側面と基板の非貫通の穴、溝又は段差を有する面との間に第1の面取り部が存在し、上記非貫通の穴、溝又は段差の側面及び底面が鏡面であると共に、上記第1の面取り部が鏡面である、半導体用ガラス基板。
【請求項2】
前記非貫通の穴、溝又は段差の側面と底面の間に曲率半径0.1〜5.0mmの曲面の第2の面取り部が存在し、この曲面の第2の面取り部が鏡面である請求項1記載の半導体用ガラス基板。
【請求項3】
前記段差の底面と基板の端面との間に第3の面取り部が存在し、この第3の面取り部が鏡面である、請求項1又は2記載の半導体用ガラス基板。
【請求項4】
前記非貫通の穴、溝又は段差の側面、底面、前記面取り部の面粗度(Ra)が1nm以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の半導体用ガラス基板。
【請求項5】
前記非貫通の穴、溝又は段差の底部の強度が20MPa以上である請求項1〜4のいずれか1項記載の半導体用ガラス基板。
【請求項6】
前記非貫通の穴、溝又は段差の底面の平坦度が0.01〜40μmである請求項1〜5のいずれか1項記載の半導体用ガラス基板。
【請求項7】
前記非貫通の穴、溝又は段差の底面の平行度が100μm以下である請求項1〜6のいずれか1項記載の半導体用ガラス基板。
【請求項8】
半導体用合成石英ガラス基板の少なくとも一方の面に非貫通の穴、溝又は段差を形成すると共に、非貫通の穴、溝又は段差の側面と基板の非貫通の穴、溝又は段差を有する面との間に第1の面取り部、非貫通の穴、溝又は段差の側面と底面との間に曲率半径0.1〜5.0mmの曲面の第2の面取り部、段差の底面と基板の端面との間に第3の面取り部のうち、少なくともいずれかの面取り部を形成する研削工程と、形成された非貫通の穴、溝又は段差の側面及び底面及び形成された面取り部に回転研磨ツールのヤング率が7GPa以下の部材から成る研磨加工部をそれぞれ独立した一定圧力で接触させて側面、底面及び面取り部の研削面を鏡面加工する工程とを含む半導体用ガラス基板の製造方法。
【請求項9】
鏡面加工工程が、非貫通の穴、溝又は段差及び形成された面取り部に回転研磨ツールの研磨加工部を1〜1,000,000Paの圧力で接触させて鏡面加工する請求項8記載の半導体用ガラス基板の製造方法。
【請求項10】
鏡面加工工程が、非貫通の穴、溝又は段差の底面及び側面並びに形成された面取り部に回転研磨ツールの研磨加工部をそれぞれ独立した圧力で同時に接触させて鏡面加工する請求項8又は9記載の半導体用ガラス基板の製造方法。
【請求項11】
鏡面加工工程が、基板の非貫通の穴、溝又は段差及び形成された面取り部の形状に沿うように回転研磨ツールと基板とを相対的に移動させて鏡面加工する請求項8〜10のいずれか1項記載の半導体用ガラス基板の製造方法。
【請求項12】
鏡面加工工程が、基板の非貫通の穴、溝又は段差及び形成された面取り部の形状に沿うように回転研磨ツールを公転あるいは基板保持台を回転させて鏡面加工する請求項11記載の半導体用ガラス基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−88793(P2013−88793A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232522(P2011−232522)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
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