説明

半導体発光素子

【課題】結晶構造が互いに異なる二の半導体層を積層した半導体発光素子の場合、自発分極や格子ひずみ起因のピエゾ分極に起因する分極電荷が生じ、キャリア輸送が阻害されてしまう。従来、不純物濃度を高くすることでキャリアの輸送を円滑としていたが、不純物濃度を高くすることは、不純物による光吸収、活性層への不純物拡散等の半導体発光素子の光学特性及び信頼性に関わり、円滑なキャリア輸送と半導体発光素子の光学特性及び信頼性とを両立することは困難であるという課題があった。そこで、本願発明では不純物濃度を高めることなく、前記二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することを目的とする。
【解決手段】
上記目的を達成するために、本願発明は、積層された互いに組成の異なる二の半導体層との間に積層方向に組成が変化するバンドギャップ変化層を配置することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体層を積層して形成される半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子はキャリアの再結合により光を発生させる活性層と呼ばれる半導体層及び活性層を両側から挟み活性層にキャリアを供給するキャリア供給層と呼ばれる半導体層から構成されるダブルヘテロ接合構造を基本構造としている。活性層のバンドギャップにより発光する光の波長が定まるため、活性層は所望の波長の光が得られる材料や構成が選択される。キャリア供給層は活性層にキャリアを供給しやすくするために活性層よりバンドギャップが広くなるように設計され、キャリアの極性をコントロールする不純物が添加されている。
【0003】
半導体発光素子、特にレーザーダイオードにおいては光強度分布(横モード)の単峰性を向上させ、半導体発光素子と光ピックアップ等の外部機器との結合効率を向上させるために、また、効率よく半導体発光素子を発光させるために活性層の一部にキャリアを集中させて供給することが求められる。従って、電極やキャリア供給層を積層方向と垂直な方向に帯状に形成したストライプ構造とすることも多い(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
従来の半導体発光素子140の断面の概念図を図14に示す。半導体発光素子140は活性層の一部にキャリアを集中させて供給するためストライプ形状電極を採用している。ストライプ形状電極とは半導体層に隣接して積層された金属等の電極の形状をマイクロストリップラインのように帯状にした電極である。例えば、半導体発光素子140は電極11、n型基板12、電子を供給するキャリア供給層としてn側第一半導体層25、n型第二半導体層27、活性層14、正孔を供給するキャリア供給層としてp側第一半導体層15、p型第二半導体層17及びストライプ形状電極19を積層して構成される。なお、半導体発光素子140において、n型第二半導体層27とn型基板12との間及びp型第二半導体層17とストライプ形状電極19との間の少なくとも一方に一又は二以上の半導体層が配置されることもある。さらに、活性層14は活性層14のp側第一半導体層15の側に電子のキャリアオーバーフローを防ぐ電子バリア層を有することもある。
【特許文献1】特開平05−055696号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体発光素子は、図14に示すように活性層14に対してp型の側においてp型第二半導体層17と活性層14との間に電気特性を改善する目的や活性層14で発光した光を閉じ込める目的でp側第一半導体層15を配置することが多い。しかし、p側第一半導体層15とp型第二半導体層17とのIII族窒化物系化合物の元素の組成が互いに異なる場合、前記二の半導体層との間には分極特性及び格子定数の違いにより、p側第一半導体層15とp型第二半導体層17との間に自発分極や格子ひずみ起因のピエゾ分極(以下、「自発分極や格子ひずみ起因のピエゾ分極」を「分極」と略記する。)に起因する分極電荷が生ずる。従って、p側第一半導体層15とp型第二半導体層17との間に正の分極電荷が生ずる場合、ストライプ形状電極19によってp型第二半導体層17に部分的に注入された正孔は前記分極電荷の電場からの斥力を受ける。従って、p型第二半導体層17からp側第一半導体層15への正孔の輸送が阻害され、正孔は正孔の流れ91のようにp側第一半導体層15内を拡散してしまう。一方、活性層14のn型側においてもp型側と同様にn型第二半導体層27と活性層14との間に電気特性を改善する目的や活性層14で発光した光を閉じ込める目的でn側第一半導体層25を配置することが多く、p型側の説明と同様に前記分極による負の分極電荷が生ずる場合、電子の輸送が阻害されることになる。
【0006】
特にC軸方向に積層したIII族窒化物系化合物のヘテロ構造のヘテロ界面では前記分極電荷が顕著に現れており、不純物濃度を高くすることでキャリアの輸送を円滑としていた。しかし、活性層14の近傍であるp側第一半導体層15及びn側第一半導体層25の不純物濃度を高くすることは、不純物による光吸収、活性層14への不純物拡散等の半導体発光素子140の光学特性及び信頼性に関わり、円滑なキャリア輸送と半導体発光素子140の光学特性及び信頼性とを両立することは困難であるという課題があった。
【0007】
本願発明は上記課題を解決するためになされたもので、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明は、積層された互いに組成の異なる二の半導体層との間に積層方向に組成が変化するバンドギャップ変化層を配置することとした。
【0009】
具体的には、本願第一の発明は、電子と正孔とが再結合することにより光を発生させる活性層と、前記活性層に対して極性がp型の側に積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第一半導体層と、前記第一半導体層の前記活性層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表され、積層方向に組成が連続的に単調変化するIII族窒化物系化合物のバンドギャップ変化層と、前記バンドギャップ変化層の前記第一半導体層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第二半導体層と、を備える半導体発光素子であって、前記活性層に対して極性がp型の側の前記活性層の端から前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅の中心に至るまでの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下であり、前記バンドギャップ変化層のバンドギャップは、前記第一半導体層に隣接する側の前記第一半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップから前記第二半導体層に隣接する側の前記第二半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップへ連続的に単調変化することを特徴とする半導体発光素子である。
【0010】
組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物は組成を変化させることでバンドギャップを調整することができる半導体である。従って、前記III族窒化物系化合物においてx及びyで指定される組成を単調変化させることで、前記バンドギャップ変化層のバンドギャップを単調変化させることができる。
【0011】
本願第一の発明では、前記活性層に対して極性がp型の側(以下、「極性がp型の側」を「p型側」と略記する。)において、前記第二半導体層の組成から前記第一半導体層の組成へ連続的に単調変化する前記バンドギャップ変化層を前記第二半導体層の組成と等しい側を前記第二半導体層に隣接し、且つ前記第一半導体層の組成と等しい側を前記第一半導体層に隣接することで、前記第二半導体層から前記第一半導体層へ急峻な組成変化を避け、前記第二半導体層から前記第一半導体層へバンドギャップを連続的に単調変化させることができる。従って、前記バンドギャップ変化層により前記第二半導体層から前記第一半導体層までの間で前記分極電荷を分散させることができ、前記分極電荷の電場からの斥力が低減するため、キャリアである正孔は前記第二半導体層から前記第一半導体層へ円滑に移動することができる。
【0012】
さらに、前記活性層の積層方向の端のうちp型側の端からp型側の積層方向に30(nm)以上200(nm)以下の範囲に前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅(以下、「積層方向の幅」を「膜厚」と略記する。)の中心を配置することで、キャリアは前記第二半導体層、前記バンドギャップ変化層、第一半導体層を円滑に移動して前記活性層に到達することができるため、活性層に近い前記第一半導体層に添加する不純物を低減することができる。
【0013】
従って、本願第一の発明は、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することができる。
【0014】
本願第二の発明は、電子と正孔とが再結合することにより光を発生させる活性層と、前記活性層に対して極性がp型の側に積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第一半導体層と、前記第一半導体層の前記活性層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表され、積層方向に組成が階段状に単調変化するIII族窒化物系化合物のバンドギャップ変化層と、前記バンドギャップ変化層の前記第一半導体層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第二半導体層と、を備える半導体発光素子であって、前記活性層に対して極性がp型の側の前記活性層の端から前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅の中心に至るまでの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下であり、前記バンドギャップ変化層のバンドギャップは、前記第一半導体層に隣接する側の前記第一半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップから前記第二半導体層に隣接する側の前記第二半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップへ階段状に単調変化することを特徴とする半導体発光素子である。
【0015】
組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物は組成を変化させることでバンドギャップを調整することができる半導体である。従って、前記組成式において互いに異なる値のx及びyで指定される組成の前記III族窒化物系化合物薄膜を複数積層させ前記バンドギャップ変化層を構成することで、前記バンドギャップ変化層のバンドギャップを階段状に単調変化させることができる。
【0016】
本願第二の発明では、前記活性層に対してp型側において前記第二半導体層の組成から前記第一半導体層の組成へ階段状に単調変化する前記バンドギャップ変化層を前記第二半導体層の組成と等しい側を前記第二半導体層に隣接し、且つ前記第一半導体層の組成と等しい側を前記第一半導体層に隣接することで、前記第二半導体層から前記第一半導体層へ急峻な組成変化を避け、前記第二半導体層から前記第一半導体層へバンドギャップを階段状に単調変化させることができる。従って、前記バンドギャップ変化層により前記第二半導体層から前記第一半導体層までの間で前記分極電荷を分散することができ、前記分極電荷の電場からの斥力が低減するため、キャリアである正孔は前記第二半導体層から前記第一半導体層へ円滑に移動することができる。
【0017】
さらに、前記活性層の積層方向の端のうちp型側の端からp型側の積層方向に30(nm)以上200(nm)以下の範囲に前記バンドギャップ変化層の膜厚の中心を配置することで、キャリアは前記第二半導体層、前記バンドギャップ変化層、第一半導体層を円滑に移動して前記活性層に到達することができるため、活性層に近い前記第一半導体層に添加する不純物を低減することができる。
【0018】
従って、本願第二の発明は、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することができる。
【0019】
本願第一の発明又は本願第二の発明に係る半導体発光素子は、前記第二半導体層の前記バンドギャップ変化層の側と反対の側に外部から電圧を印加するための電極をさらに備え、前記電極から前記第二半導体層又は前記第一半導体層に至るまでメサ状であってもよい。
【0020】
前記活性層の一部にキャリアを集中させて供給するため半導体発光素子の一部をメサ状に形成(以下、「半導体発光素子の一部をメサ状に形成した部分」を「メサ部」と略記する。)して、キャリアの移動路を狭め、電流を狭搾することもある。
【0021】
前記メサ部において組成が互いに異なるIII族窒化物系化合物を積層した場合、正孔は前記分極電荷の斥力を受け、結晶性の悪いメサ部の側壁付近に集中して移動することになり、円滑な正孔輸送が阻害されることになる。本願発明において前記第一半導体層に至るまでをメサ状とした場合、前記メサ部に前記バンドギャップ変化層が含まれ、前記分極電荷を低減することができるため、正孔はメサ部の中央付近を移動することができ、前記第二半導体層から前記第一半導体層への正孔輸送を円滑とすることができる。
【0022】
一方、前記メサ部と前記活性層との間において組成が互いに異なるIII族窒化物系化合物を積層した場合、正孔は前記分極電荷の斥力を受け、前記メサ部により狭搾され注入された正孔が前記III族窒化物系化合物内を拡散することになる。本願発明において前記第二半導体層に至るまでをメサ状とした場合、メサ部通過した正孔は前記バンドギャップ変化層による前記分極電荷の低減により前記第二半導体層内で拡散せず、前記第二半導体層から前記第一半導体層へ円滑に移動することができる。
【0023】
従って、本願第一の発明又は本願第二の発明は、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することができる。電子と比較し、有効質量が大きい正孔は結晶性の悪い前記メサ部の側壁付近の影響を受けやすく前記バンドギャップ変化層の効果は大きい。
【0024】
本願第三の発明は、電子と正孔とが再結合することにより光を発生させる活性層と、前記活性層に対して極性がn型の側に積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第一半導体層と、前記第一半導体層の前記活性層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表され、積層方向に組成が連続的に単調変化するIII族窒化物系化合物のバンドギャップ変化層と、前記バンドギャップ変化層の前記第一半導体層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第二半導体層と、を備える半導体発光素子であって、前記活性層に対して極性がn型の側の前記活性層の端から前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅の中心に至るまでの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下であり、前記バンドギャップ変化層のバンドギャップは、前記第一半導体層に隣接する側の前記第一半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップから前記第二半導体層に隣接する側の前記第二半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップへ連続的に単調変化することを特徴とする半導体発光素子である。
【0025】
前記活性層に対して極性がn型の側(以下、「極性がn型の側」を「n型側」と略記する。)においても本願第一の発明の説明と同様に、前記バンドギャップ変化層により前記第二半導体層から前記第一半導体層までの間で前記分極電荷を分散することができ、前記分極電荷の電場から受ける斥力が低減するため、キャリアである電子は前記第二半導体層から前記第一半導体層へ円滑に移動することができる。
【0026】
さらに、前記活性層の積層方向の端のうちn型側の端からn型側の積層方向に30(nm)以上200(nm)以下の範囲に前記バンドギャップ変化層の膜厚の中心を配置することで、キャリアは前記第二半導体層、前記バンドギャップ変化層、第一半導体層を円滑に移動して前記活性層に到達することができるため、活性層に近い前記第一半導体層に添加する不純物を低減することができる。
【0027】
従って、本願第三の発明は、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することができる。
【0028】
本願第四の発明は、電子と正孔とが再結合することにより光を発生させる活性層と、前記活性層に対して極性がn型の側に積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第一半導体層と、前記第一半導体層の前記活性層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表され、積層方向に組成が階段状に単調変化するIII族窒化物系化合物のバンドギャップ変化層と、前記バンドギャップ変化層の前記第一半導体層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第二半導体層と、を備える半導体発光素子であって、前記活性層に対して極性がn型の側の前記活性層の端から前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅の中心に至るまでの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下であり、前記バンドギャップ変化層のバンドギャップは、前記第一半導体層に隣接する側の前記第一半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップから前記第二半導体層に隣接する側の前記第二半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップへ階段状に単調変化することを特徴とする半導体発光素子である。
【0029】
前記活性層に対してn型側においても本願第二の発明の説明と同様に、前記バンドギャップ変化層により前記第二半導体層から前記第一半導体層までの間で前記分極電荷を分散することができ、前記分極電荷の電場から受ける斥力が低減するため、キャリアである電子は前記第二半導体層から前記第一半導体層へ円滑に移動することができる。
【0030】
さらに、前記活性層の積層方向の端のうちn型側の端からn型側の積層方向に30(nm)以上200(nm)以下の範囲に前記バンドギャップ変化層の膜厚の中心を配置することで、キャリアは前記第二半導体層、前記バンドギャップ変化層、第一半導体層を円滑に移動して前記活性層に到達することができるため、活性層に近い前記第一半導体層に添加する不純物を低減することができる。
【0031】
従って、本願第四の発明は、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することができる。
【0032】
本願発明に係る半導体発光素子の前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅は3(nm)以上100(nm)未満であることが望ましい。
【0033】
前記第一半導体層と前記第二半導体層との間の急峻な組成変化を緩和する目的に挿入される前記バンドギャップ変化層の膜厚は、前記目的達成のために3(nm)以上であることが求められる。一方、前記バンドギャップ変化層は膜厚に比例し電気抵抗が大きくなるため、前記バンドギャップ変化層の膜厚は100(nm)未満が望ましい。
【0034】
従って、本願発明は、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することができる。
【0035】
本願発明に係る半導体発光素子の前記第二半導体層のバンドギャップは前記第一半導体層のバンドギャップより広いことが好ましい。
【0036】
前記第二半導体層のIII族窒化物系化合物のバンドギャップを前記第一半導体層のIII族窒化物系化合物のバンドギャップより広くすることで、キャリアにとって前記第二半導体層より前記第一半導体層の方がエネルギー的に安定する。従って、キャリアは前記第二半導体層から前記バンドギャップ変化層を通り、前記第一半導体層へ円滑に移動することができる。
【0037】
従って、本願発明は、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することができる。
【0038】
本願発明に係る半導体発光素子は、前記第一半導体層、前記バンドギャップ変化層及び前記第二半導体層の積層方向と前記第一半導体層のIII族窒化物系化合物の結晶、前記バンドギャップ変化層のIII族窒化物系化合物の結晶及び前記第二半導体層のIII族窒化物系化合物の結晶のC軸方向とが平行であることが好ましい。
【0039】
前記分極電荷が顕著に現れる前記III族窒化物系化合物の結晶をC軸方向に揃えて積層した場合であっても、前記第一半導体層、前記バンドギャップ変化層及び前記第二半導体層を順に積層することで、前記分極電荷は小さくなり、前記第一半導体層から前記第二半導体層へのキャリア輸送を円滑することができる。
【0040】
従って、本願発明は、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することができる。
【0041】
本願発明に係る半導体発光素子は、前記第一半導体層は前記組成式においてx=0及び0.95≦y≦1であり、前記活性層で発生した光を導波する光ガイド層として機能し、前記第二半導体層は前記組成式においてx=m(0.05≦m≦0.1)及びx+y=1の関係であり、前記活性層にキャリアを供給するクラッド層として機能し、且つ前記バンドギャップ変化層は前記組成式において0≦x≦m及びx+y=1の関係の範囲であり、構造全体として半導体レーザとしての機能を有することが好ましい。
【0042】
前記第二半導体層の前記III族窒化物系化合物の組成を前記組成式においてx=m(0.05≦m≦0.1)及びx+y=1とする、すなわちAlGa1−mNとし、前記第一半導体層の前記III族窒化物系化合物の組成を前記組成式においてx=0及びy=1とする、すなわちGaNとすることで、前記第二半導体層のバンドギャップは前記第一半導体層のバンドギャップより大きくなる。従って、キャリアは前記第二半導体層から前記バンドギャップ変化層を通り、前記第一半導体層へ円滑に移動することができ、前記第二半導体層はキャリアを供給するクラッド層として機能する。
【0043】
また、前記第一半導体層の前記III族窒化物系化合物の組成を前記組成式においてx=0及び0.95≦y≦1とする、すなわちGaN又はInGaN化合物とすることで屈折率が小さくなり前記活性層で発生した光は前記第一半導体層で反射する。活性層に対してp型側及び/又はn型側に前記第一半導体層を配置することで前記活性層で発生した光は前記第一半導体層を導波するとともに誘導放出を促し、前記第一半導体層は光ガイド層として機能する。
【0044】
従って、本願発明は、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動でき、半導体レーザとして機能する半導体発光素子を提供することができる。
【0045】
本願発明に係る半導体発光素子は、前記第一半導体層のIII族窒化物系化合物と前記第二半導体層のIII族窒化物系化合物とを隣接した界面に生ずる分極の電荷密度をρ(cm−2)、前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅をd(cm)と表したとき、前記バンドギャップ変化層に添加される不純物の不純物濃度n(cm−3)は、0.5ρ/d≦n≦3ρ/dの範囲であることが好ましい。
【0046】
前記半導体発光素子の電気抵抗を下げるために、前記バンドギャップ変化層には不純物を添加することが好ましい。一方、不純物濃度が高い場合、結晶欠陥が増加するため、半導体発光素子の電気抵抗が上昇し、結晶欠陥に光が吸収される量が増加して半導体発光素子の発光効率が低下することになる。また、不純物としてMgを添加した場合、Mg拡散により半導体発光素子が劣化して信頼性が低下することになる。従って、前記バンドギャップ変化層の不純物濃度は前記の範囲であることが好ましい。
【0047】
従って、本願発明は、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することができる。
【発明の効果】
【0048】
本願発明により、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本願発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本願発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0050】
(実施の形態1)
本実施形態は、電子と正孔とが再結合することにより光を発生させる活性層と、前記活性層に対して極性がp型の側に積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第一半導体層と、前記第一半導体層の前記活性層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表され、積層方向に組成が連続的に単調変化するIII族窒化物系化合物のバンドギャップ変化層と、前記バンドギャップ変化層の前記第一半導体層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第二半導体層と、を備える半導体発光素子であって、前記活性層に対して極性がp型の側の前記活性層の端から前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅の中心に至るまでの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下であり、前記バンドギャップ変化層のバンドギャップは、前記第一半導体層に隣接する側の前記第一半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップから前記第二半導体層に隣接する側の前記第二半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップへ連続的に単調変化することを特徴とする半導体発光素子である。
【0051】
本願第一の発明に係る一の実施の形態である半導体発光素子101の断面の概念図を図1に示す。半導体発光素子101は電極11、n型基板12、n型下地層13、n側第一半導体層25、n型第二半導体層27、活性層14、p側第一半導体層15、p側バンドギャップ変化層16、p型第二半導体層17、p型コンタクト層18及びストライプ形状電極19を備える。半導体発光素子101はn型基板12上に各半導体層を積層しており、活性層14に対してストライプ形状電極19の側の半導体層、すなわち活性層14に対してp型側において少なくともp型第二半導体層17及びp型コンタクト層18をp型としている。一方、活性層14に対して電極11の側の半導体層、すなわち活性層14に対してn型側において少なくともn型第二半導体層27、n型下地層13及びn型基板12をn型としている。半導体発光素子101は電極11とストライプ形状電極19とでn型基板12を含む半導体層を挟み込んだ裏面電極型の半導体発光素子である。
【0052】
電極11及びストライプ形状電極19は半導体発光素子101に電圧を印加するために配置される。電極と半導体とが接触したときに整流性を生ずれば半導体発光素子としての効率を損なうため、電極11及びストライプ形状電極19は半導体とオーム接触できる素材であることが望ましい。さらに、外部の電源等の装置との配線との接触抵抗が小さい素材であることが望ましい。そのため、半導体と接触する素材と配線と接続する素材との間にバッファとなる素材を挟む構造であることが好ましい。例えば、n型半導体と接触する電極11の素材としては、Ti/Al/Ti/AuやAl/Auが例示される。p型半導体と接触するストライプ形状電極19の素材としては、Ni/Au、Pd/Au及びPt/Auが例示される。
【0053】
電極11はn型基板12との接触抵抗を低減するためにn型基板12のn型下地層13を積層した側と反対側(以下、「n型基板12のn型下地層13を積層した側と反対側」を「n型基板12の裏面」と略記する。)全面に積層していることが好ましい。一方、ストライプ形状電極19は活性層14の一部にキャリアを集中させて供給するためp型コンタクト層18上に帯状に配置される。
【0054】
n型基板12は半導体薄膜で構成される半導体発光素子101を物理的に支えるために配置される。半導体発光素子101の基板として半導体薄膜が良好に成長する素材が選択される。例えば、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物(以下、「組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物」を「AlGaIn1−x−yN化合物」と略記する。)を積層させる場合は窒化ガリウム(GaN)又は炭化珪素(SiC)が例示される。
【0055】
活性層14は電子及び正孔の再結合により光を発光する層である。活性層14に採用される素材のバンドギャップにより発光する光の波長が定まる。活性層14に採用される素材は発光効率の高い直接遷移型の半導体であることが好ましい。AlGaIn1−x−yN化合物薄膜を使用することで、組成変更により幅広いバンドギャップを作り出すことができ、所望の波長の半導体発光素子を製造することができる。また、活性層14はバンドギャップが互いに異なる少なくとも二種類の半導体薄膜を交互に配置させることで、バンドギャップの広い方の半導体薄膜を障壁層とし、バンドギャップの狭い方の半導体薄膜を井戸層とした多重量子井戸構造(MQW)とすることもできる。活性層14を前記MQWとすることで特定のエネルギー状態に電子が集中し、小電流でも効率よく発光することが実現できる。MQWとした場合、前記井戸層のバンドギャップで発光する光の波長が定まる。なお、前記MQWの両端を障壁層としてもよく、井戸層としてもよい。例えば、前記障壁層として前記組成式においてx=0、y=q(0.95≦q≦1、好ましくは0.97≦q≦1)、すなわち組成式がGaIn1−qNと表されるIII族窒化物系化合物薄膜と前記井戸層として前記組成式においてx=0、y=p(p<q且つ0.80≦p≦0.95、好ましくは0.85≦p≦0.9)、すなわち組成式がGaIn1−pNと表されるIII族窒化物系化合物薄膜とを組み合わせたMQWが例示される。なお、以下の記載において「組成式がGaNと表されるIII族窒化物系化合物」を「GaN化合物」と略記し、「組成式がGaIn1−qNと表されるIII族窒化物系化合物」を「GaIn1−qN化合物」と略記し、「組成式がGaIn1−pNと表されるIII族窒化物系化合物」を「GaIn1−pN化合物」と略記する。
【0056】
前記障壁層の膜厚は5(nm)以上20(nm)以下が好ましく、7(nm)以上15(nm)以下がより好ましい。
【0057】
前記井戸層の膜厚は1(nm)以上10(nm)以下が好ましく、3(nm)以上5(nm)以下がより好ましい。
【0058】
活性層14の膜厚のうちMQWの膜厚(前記障壁層と前記井戸層との膜厚の合計)は380(nm)以上480(nm)以下であることが好ましい。
【0059】
さらに、半導体発光素子の発光に伴う発熱による熱エネルギーを受けた電子が量子井戸の障壁を越えてp型側の半導体層へ移動してしまうキャリアオーバーフローという現象を防止するAlGaIn1−x−yN化合物の電子バリア層を前記MQWに対してp型側の前記MQWの端に配置してもよい。前記電子バリア層はバンドギャップが広く、伝送帯の底部準位が高いため、前記熱エネルギーを得た電子であっても前記電子バリア層を通過してp型側の半導体層へ移動することができない。例えば、前記電子バリア層として前記組成式においてx=s、x+y=1(0.1≦s≦0.3、好ましくは0.15≦s≦0.25)、すなわち組成式がAlGa1−sNと表されるIII族窒化物系化合物(以下、「組成式がAlGa1−sNと表されるIII族窒化物系化合物」を「AlGa1−sN化合物」と略記する。)薄膜が例示される。前記電子バリア層の膜厚は10(nm)以上30(nm)以下、好ましくは15(nm)以上25(nm)以下であることが例示される。キャリアオーバーフローの電子はp型の半導体層において、発光に携わらない無効キャリアとなって半導体発光素子の発光効率を低下させるため、活性層14は前記電子バリア層を有することで無効キャリアを減少させることができ、半導体発光素子の発光効率を高くすることができる。
【0060】
n型第二半導体層27はAlGaIn1−x−yN化合物の半導体層である。n型第二半導体層27は前記組成式においてx=m(0.01≦m≦0.15、好ましくは0.05≦m≦0.1)、x+y=1の関係、すなわち組成式がAlGa1−mNと表されるIII族窒化物系化合物(以下、「組成式がAlGa1−mNと表されるIII族窒化物系化合物」を「AlGa1−mN化合物」と略記する。)が例示される。n型第二半導体層27はキャリア密度を高めるためn型不純物、例えばSiが添加される。不純物濃度は5×1017(cm−3)以上1×1019(cm−3)以下であることが例示される。n型第二半導体層27の膜厚は300(nm)以上2000(nm)以下が好ましく、400(nm)以上1200(nm)以下であることがより好ましい。
【0061】
n側第一半導体層25はAlGaIn1−x−yN化合物の半導体層である。活性層14に不純物が拡散しないようにn側第一半導体層25には不純物は添加されない、又はn型第二半導体層27に添加された不純物の濃度より低い濃度に設計される。また、n側第一半導体層25のバンドギャップは活性層14のバンドギャップより広くかつn型第二半導体層27のバンドギャップより狭く設計される。活性層14が前記MQWである場合、n側第一半導体層25のバンドギャップは前記MQWを構成する障壁層のバンドギャップより広く、n型第二半導体層27のバンドギャップより狭い。具体的には、n側第一半導体層25の組成を前記組成式においてx=0及びy=1とする、すなわちGaN化合物とすることが例示される。なお、n側第一半導体層25の組成を前記組成式においてx=0及び0.95≦y≦1とする、すなわちGaInN化合物としてもよい。n側第一半導体層25の膜厚は20(nm)以上200(nm)以下が好ましく、50(nm)以上150(nm)以下であることがより好ましい。
【0062】
p型第二半導体層17はAlGaIn1−x−yN化合物の半導体層である。p型第二半導体層17は前記組成式においてx=m(0.01≦m≦0.15、好ましくは0.05≦m≦0.1)、x+y=1の関係、すなわちAlGa1−mN化合物が例示される。p型第二半導体層17はキャリア密度を高めるためp型不純物、例えばMgが添加される。不純物濃度は5×1018(cm−3)以上1×1020(cm−3)以下であることが例示される。p型第二半導体層17の膜厚は100(nm)以上2000(nm)以下が好ましく、200(nm)以上500(nm)以下であることがより好ましい。
【0063】
p側第一半導体層15はAlGaIn1−x−yN化合物の半導体層である。活性層14に不純物が拡散しないようにp側第一半導体層15には不純物は添加されない、又はp型第二半導体層17に添加された不純物の濃度より低い濃度に設計される。また、p型第一半導体層15のバンドギャップは活性層14のバンドギャップより広く設計される。活性層14が前記MQWである場合、p側第一半導体層15のバンドギャップは前記MQWを構成する障壁層のバンドギャップより広く、p型第二半導体層17のバンドギャップより狭い。具体的には、p側第一半導体層15の組成を前記組成式においてx=0及びy=1とする、すなわちGaN化合物とすることが例示される。なお、p側第一半導体層15の組成を前記組成式においてx=0及び0.95≦y≦1とする、すなわちGaInN化合物としてもよい。p側第一半導体層15の膜厚は20(nm)以上200(nm)以下が好ましく、50(nm)以上150(nm)以下であることがより好ましい。
【0064】
p側バンドギャップ変化層16は積層方向に組成が連続的に単調変化するAlGaIn1−x−yN化合物の層である。すなわち、p側バンドギャップ変化層16は積層方向においてp側バンドギャップ変化層16の一の側から他の側へ前記組成式におけるx及びyの値が連続的に単調変化する組成を有する。例えば、p側バンドギャップ変化層16は、積層方向に対するp側バンドギャップ変化層16の一の側が前記組成式においてx=0及びy=1であるGaN化合物であり、他の側が前記組成式においてx=0.08及びy=0.92であるAl0.08Ga0.92N化合物であり、前記一の側から前記他の側へ向かって前記組成式においてxの値が0から0.08へ連続的に単調変化し且つyの値がx+y=1の関係を保ちつつ1から0.92へ連続的に単調変化する組成を有する。
【0065】
p側バンドギャップ変化層16は組成が連続的に単調変化するため、p側バンドギャップ変化層16内において急峻な組成変化による格子ひずみを低減できる。
【0066】
なお、p側バンドギャップ変化層16の膜厚は3(nm)以上100(nm)未満であることが好ましく、3(nm)以上50(nm)以下であることがより好ましい。
【0067】
p側バンドギャップ変化層16にはp型とするためにp型不純物を添加してもよい。具体的にはp型不純物としてMgが例示される。例えば、不純物濃度を1×1018(cm−3)以上1×1019(cm−3)以下とすることが例示できる。
【0068】
なお、前記第一半導体層のIII族窒化物系化合物と前記第二半導体層のIII族窒化物系化合物とを隣接した界面に生ずる分極の電荷密度をρ(cm−2)、前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅をd(cm)と表したとき、前記バンドギャップ変化層に添加される不純物の不純物濃度n(cm−3)は、数1の範囲、すなわち電荷密度ρをバンドギャップ変化層の膜厚dで除算した商の50%以上300%以下の範囲であることが好ましい。
【数1】

【0069】
さらに円滑なキャリア輸送のため数2の範囲であることが好ましく、数3の範囲であることがより好ましい。
【数2】

【数3】

【0070】
GaN化合物とAl0.08Ga0.92N化合物との間に配置されるバンドギャップ変化層の不純物濃度を以下に例示する。GaN化合物とAl0.08Ga0.92N化合物との界面に生ずる分極電荷密度はρ=3×1012(cm−2)である。バンドギャップ変化層の膜厚を10(nm)としたとき、前記バンドギャップ変化層に添加される不純物の不純物濃度nは1.5×1018(cm−3)以上9×1018(cm−3)以下の範囲であることが好ましい。
【0071】
p型コンタクト層18はストライプ形状電極19とオーム接触するための半導体層である。例えば、膜厚が10(nm)以上100(nm)以下のGaN化合物が例示できる。p型コンタクト層18がGaN化合物の場合、添加する不純物としてMgが例示される。
【0072】
n型下地層13はn型下地層13上に積層する半導体の結晶性を向上させることができる。例えば、膜厚1μm以上5μm以下のSiを不純物としてn型としたGaN化合物が例示できる。不純物濃度は5×1017(cm−3)以上1×1019(cm−3)以下であることが例示される。
【0073】
半導体発光素子101はn型基板12上にn型下地層13、n型第二半導体層27、n側第一半導体層25、活性層14、p側第一半導体層15、p側バンドギャップ変化層16、p型第二半導体層17及びp型コンタクト層18を順に積層する。各半導体層を積層する手段は後述する。
【0074】
p側バンドギャップ変化層16の前記一の側の組成をp側第一半導体層15の組成と等しくし、前記他の側の組成をp型第二半導体層17の組成と等しくした場合、p側バンドギャップ変化層16の前記一の側とp側第一半導体層15とを隣接し、及び前記他の側とp型第二半導体層17とを隣接するようにp側バンドギャップ変化層16を積層する。p側第一半導体層15からp型第二半導体層17に至るまで組成が連続的に単調変化するため、p側第一半導体層15からp型第二半導体層17に至るまでバンドギャップも連続的に単調変化する。例えば、p側第一半導体層15がGaN化合物であり、p型第二半導体層17が組成式Al0.08Ga0.92N化合物である場合、p側バンドギャップ変化層16の前記一の側の組成をGaNとし、前記他の側の組成をAl0.08Ga0.92Nとすることで、p側第一半導体層15とp側バンドギャップ変化層16との間及びp側バンドギャップ変化層16とp型第二半導体層17との間に急峻な組成の変化がなくなり、p側第一半導体層15からp型第二半導体層17に至るまで組成は連続的に単調変化する。
【0075】
従って、p側第一半導体層15とp側バンドギャップ変化層16との間及びp側バンドギャップ変化層16とp型第二半導体層17との間に急峻な組成の変化がなくなるため、キャリア輸送を阻害していた分極電荷を分散させることができ、正孔はp型第二半導体層17からp側第一半導体層15へ円滑に移動することができる。
【0076】
半導体発光素子101の各半導体層は有機金属気相成長法(以下、「有機金属気相成長法」を「MOCVD法」と略記する。)を利用して積層される。MOCVD法は原料ガスを反応炉(チャンバ)に導き入れ、チャンバ内に固定され、摂氏600度から摂氏1100度に維持された基板上で原料ガスを熱分解して反応させ薄膜をエピタキシャル成長させる方法である。原料ガスの流量及び濃度、反応温度及び時間、希釈ガスの種類等の製造パラメータを制御することで組成や膜厚の異なる半導体層を容易に積層して製造することができる。
【0077】
n型下地層13、n型第二半導体層27、n側第一半導体層25、活性層14、p側第一半導体層15、p側バンドギャップ変化層16、p型第二半導体層17及びp型コンタクト層18がAlGaIn1−x−yN化合物薄膜の場合、MOCVD法はIII属元素としてGa(CH(トリメチルガリウム、以下「TMG」と略記する。)、In(C(トリエチルインジウム、以下「TMI」と略記する。)及びAl(CH(トリメチルアルミニウム、以下「TMA」と略記する。)をキャリアガスである水素又は窒素でバブリングさせた蒸気を原料ガスとして使用し、窒化物とするためにアンモニア蒸気を使用する。また、不純物はp型ドーパントとしてCPMg(シクロペンタジエニルマグネシウム)又はn型ドーパントとしてSiH(シラン)も同様に蒸気としてチャンバに導き入れることができる。MOCVD法はCPMg又はSiH、TMG、TMI、TMA及びアンモニアを所定の混合比で混合した混合ガスの流量ならびに基板温度の製造パラメータで所望のAlGaIn1−x−yN化合物を成長させることができる。MOCVD法はAlGaIn1−x−yN化合物の膜厚を反応時間で制御することができる。
【0078】
具体的に、半導体発光素子101は以下のように作成される。n形基板12をチャンバ内に導入し、前記チャンバ内をキャリアガスで置換すると共にn形基板12の温度を600〜1100℃程度に昇温する。
【0079】
以下、原料ガスは水素又は窒素のキャリアガスにてチャンバに導入する。
【0080】
次いで、GaN化合物が成長するようにTMG、アンモニア及びSiHの原料ガスを所定の割合で混合した混合ガス(混合ガスA)を導入して、所定の時間n型基板12上で反応させてn形下地層13を積層する。
【0081】
次いで、n型第二半導体層27が成長する比率でTMG、TMI、TMA、アンモニア及びSiHの原料ガスを混合した混合ガス(混合ガスB)を導入して、所定の時間n型下地層13上で反応させてn型第二半導体層27を積層する。例えば、n型第二半導体層27がAl0.08Ga0.92N化合物である場合、TMG、TMA、アンモニア及びSiHの混合ガスBを使用する。
【0082】
同様に、n側第一半導体層25が成長する比率でTMG、TMI、TMA、アンモニア及びSiHの原料ガスを混合した混合ガス(混合ガスC)を導入して、所定の時間n型第二半導体層27上で反応させてn側第一半導体層25を積層する。なお、不純物を添加しない場合はSiHを止めて反応させる。例えば、n側第一半導体層25がノンドープのGaN化合物である場合、TMG及びアンモニアの混合ガスCを使用する。
【0083】
同様に、n側第一半導体層25上に活性層14を積層する。なお、活性層14がMQWの場合には製造パラメータを所定の時間毎に切り替えることで前記障壁層と前記井戸層とを交互に積層することができる。さらに、活性層14が電子バリア層を有する場合には所定の時刻に製造パラメータを切り替えることでMQWのp型側の端に電子バリア層を積層できる。
【0084】
例えば、障壁層がGa0.97In0.03N化合物薄膜、井戸層がGa0.9In0.1N化合物薄膜、電子バリア層がAl0.2Ga0.8N化合物からなる活性層14を積層する場合、まず、n側第一半導体層25上に井戸層を積層するためTMG、TMI及びアンモニアの混合ガス(混合ガスD)でGa0.9In0.1N化合物薄膜を成長させる。次いで、前記井戸層の上に障壁層を積層するためにTMG、TMI及びアンモニアの混合ガス(混合ガスE)でGa0.97In0.03N化合物薄膜を成長させる。続いて、再び、混合ガスDに切り替え、井戸層を積層する。さらに、混合ガスEに切り替え、障壁層を積層する。同様に混合ガスDと混合ガスEとを所定回数切り替えることで所定数の井戸層を形成できる。所定数の井戸層を形成した後、電子バリア層を積層するためにTMG、TMA、CPMg及びアンモニアの混合ガス(混合ガスF)でAl0.2Ga0.8N化合物薄膜を成長させる。
【0085】
活性層14を積層した後、p側第一半導体層15が成長するTMG、TMI、TMA、アンモニア及びCPMgの混合比の混合ガス(混合ガスG)を導入して、所定の時間活性層14上で反応させてp側第一半導体層15を積層する。例えば、p側第一半導体層15がノンドープのGaN化合物である場合、TMG及びアンモニアの混合ガスGを使用する。
【0086】
次いで、p側第一半導体層15上にp側バンドギャップ変化層16を積層する。p側バンドギャップ変化層16を積層するための反応ガスについては後述する。
【0087】
次いで、p型第二半導体層17が成長するTMG、TMI、TMA、アンモニア及びCPMgの混合比の混合ガス(混合ガスH)を導入して、所定の時間p側バンドギャップ16上で反応させてp型第二半導体層17を積層する。例えば、p型第二半導体層17がAl0.08Ga0.92N化合物である場合、TMG、TMA、アンモニア及びCPMgを所定の割合の混合ガスHを使用する。
【0088】
p側バンドギャップ変化層16の成長において、反応時刻に応じて混合ガスGから混合ガスHへTMG、TMI、TMA及びアンモニアの混合比を連続的に単調変化させることで、p側第一半導体層15からp型第二半導体層17まで積層方向に組成が単調変化し、バンドギャップの急峻な変化のない半導体層を得ることができる。また、CPMgを反応ガスに加えることでp側バンドギャップ変化層16をp型とすることができる。
【0089】
p型第二半導体層17を積層した後、p型コンタクト層18が成長するTMG、アンモニア及びCPMgの混合比の混合ガス(混合ガスI)を導入して、所定の時間p型第二半導体層17上で反応させてp型コンタクト層18を積層する。
【0090】
なお、活性層14とp側第一半導体層15との界面からp側バンドギャップ変化層16の膜厚の中心までの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下、より好ましくは30(nm)以上100(nm)以下となるようにp側第一半導体層15及びp側バンドギャップ変化層16を積層するように制御する。すなわち混合ガスFを混合ガスGへ切り替えた時刻からp側バンドギャップ変化層16の積層時間の半分の時刻になるまでの時間を制御する。従って、p側第一半導体層15の膜厚は活性層14とp側バンドギャップ変化層16との積層方向の距離を前記範囲であるように制限される。
【0091】
なお、n型基板12に前記III族窒化物系化合物を成長させる方法としては、分子線エピタキシャル成長法(MBE法)を利用してもよい。
【0092】
p型コンタクト層18を積層した後、p型コンタクト層18上にストライプ形状電極19の素材及びn型基板12の裏面に電極11の素材を積層する。電極の素材の積層方法としてはスパッタリング法や真空蒸着法を利用できる。
【0093】
電極の素材を積層した後、ストライプ形状電極19を形成する。ストライプ形状電極19を形成する方法としてはリソグラフィ技術とドライエッチングを用いることができる。リソグラフィ技術によりストライプ状のレジストパターンを形成し、ストライプ形状電極19の素材をストライプ状にエッチングする。ストライプ形状電極19の素材とp型コンタクト層18、例えばGaN化合物との選択比の高いエッチングガスを用いることでp型コンタクト層18をエッチングストップ層として前記レジストパターンに覆われていないストライプ形状電極19の素材を良好にエッチングすることができる。続いてレジストを除去することでストライプ形状電極19を形成することができる。
【0094】
半導体発光素子101のバンドダイヤグラムの概念図を図2に示す。図2において11aは電極11の領域、12aはn型基板12の領域、13aはn型下地層13の領域、25aはn側第一半導体層25の領域、27aはn型第二半導体層27の領域、14aは活性層14の領域、15aはp側第一半導体層15の領域、16aはp側バンドギャップ変化層16の領域、17aはp型第二半導体層17の領域、18aはp型コンタクト層18の領域及び19aはストライプ形状電極19の領域のバンドギャップを示している。21は価電子帯のトップ準位、22は伝導帯の底部準位である。図2のバンドダイヤグラムにおいて半導体発光素子101の活性層14はMQW構造であり、前記MQWに対してp型側の前記MQWの端に電子バリア層を有している。活性層14の領域14aにおいて14bは井戸層の領域、14cは障壁層の領域、14dは電子バリア層の領域を示している。なお、図2において電極11からn型基板12まで及びp型コンタクト層18からストライプ形状電極19までのバンドギャップの一部を省略して表示している。
【0095】
ストライプ形状電極19を陽極として、電極11を陰極として電圧を印加することで電極11から電子が、ストライプ形状電極19から正孔が半導体発光素子101に注入される。
【0096】
電極11から注入された電子は多数キャリアが電子であるn型のn型基板12、n型下地層13及びn型第二半導体層27を活性層14の方向へ円滑に移動することができる。n側第一半導体層25のバンドギャップはn型第二半導体層27のバンドギャップより狭いため、電子は伝導帯の底部準位22に沿ってエネルギー的に安定するn側第一半導体層25へ移動できる。電子はn側第一半導体層25より狭いバンドギャップの活性層14の各井戸層に集中する。
【0097】
一方、ストライプ形状電極19から注入された正孔は多数キャリアが正孔であるp型のp型コンタクト層18、p型第二半導体層17を活性層14の方向へ円滑に移動することができる。p側第一半導体層15のバンドギャップはp型第二半導体層17のバンドギャップより狭く、p側バンドギャップ変化層16によってp側第一半導体層15の価電子帯のトップ準位21とp型第二半導体層17の価電子帯のトップ準位21とはなだらかに接続され、正孔は価電子帯のトップ準位21に沿ってエネルギー的に安定するp側第一半導体層15へ移動できる。p側第一半導体層15へ移動した正孔はp側第一半導体層15のバンドギャップより狭い活性層14の各井戸層に集中する。なお、活性層14のp型電子バリア層は広いバンドギャップを有するが、価電子帯のトップ準位21が高いため、正孔の移動に対する前記電子バリア層の影響は少ない。
【0098】
活性層14は活性層14の各井戸層に集中した前記電子及び前記正孔が再結合することにより量子井戸の価電子帯のトップ準位21と伝導帯の底部準位22との間で表現されるバンドギャップに応じた波長の光を発光する。
【0099】
また、活性層14とp側バンドギャップ変化層16との積層方向の距離は一定の範囲にあるため、ストライプ形状電極19により狭搾され注入された正孔はp型第二半導体層17、p側バンドギャップ変化層16内及びp側第一半導体層15内での拡散が減少し、図1に示す正孔の流れ91のように活性層14のストライプ形状電極19の直下の部分に集中して到達する。
【0100】
従って、本願発明により、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することができる。特に、従来p型の不純物としてMgを添加する場合、円滑な正孔輸送をするためには不純物濃度を高める必要があったが、p側バンドギャップ変化層16により不純物濃度を低減した状態でも円滑な正孔輸送が可能となるため、本願発明の効果は大きい。
【0101】
また、前記分極電荷の分散により正孔が受ける斥力が低減するため半導体発光素子101の電気抵抗及びビルトイン電圧が低くなり、半導体発光素子101の動作電圧を下げることができる。従って、半導体発光素子101が半導体レーザの場合にはしきい値電流の低減及び電流対光量のスロープ効率の改善を図ることができ、半導体発光素子101がLEDの場合には輝度向上をはかることができる。
【0102】
なお、互いに組成の異なる二のIII族窒化物系化合物の結晶をC軸方向に揃えて積層した場合に最も強く格子ひずみが生じ、前記分極電荷が顕著に現れる。従って、p側第一半導体層15、p側バンドギャップ変化層16及びp型第二半導体層17の積層方向とp側第一半導体層15のIII族窒化物系化合物の結晶、p側バンドギャップ変化層16のIII族窒化物系化合物の結晶及びp型第二半導体層17のIII族窒化物系化合物の結晶のC軸方向とが平行の場合にp側バンドギャップ変化層16の効果、すなわち前記分極電荷の分散の効果が最も大きくなる。従って、p側バンドギャップ変化層16はp側第一半導体層15の不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間においてキャリア輸送を円滑にすることができる。
【0103】
(実施の形態2)
本願第一の発明に係る他の実施の形態である半導体発光素子103の断面の概念図を図3に示す。図3において、図1で用いた符号と同じ符号は半導体層であり同じ機能を有する。半導体発光素子103と図1の半導体発光素子101との違いは、半導体発光素子101は基板の裏面に陰電極を設けた裏面電極型に対し、半導体発光素子103は陽電極と陰電極が基板に対して同一の方向にある型である。具体的には、半導体発光素子103には半導体発光素子101の電極11及びn型基板12を備えず、n型基板32及び電極31を備えたことである。
【0104】
n型基板32は半導体薄膜で構成される半導体発光素子103を物理的に支えるために配置される。半導体発光素子103の基板として半導体薄膜が良好に成長する素材が選択される。例えば、AlGaIn1−x−yN化合物を積層させる場合はサファイヤが例示される。
【0105】
電極31は半導体発光素子103に電圧を印加するために配置される。電極31は図1の電極11で説明した機能を有し、素材としては、Ti/Al/Ti/AuやAl/Auが例示される。
【0106】
半導体発光素子103は以下に説明するように作成される。MOCVD法を用いてn型基板32上にn型下地層13、n型第二半導体層27、n側第一半導体層25、活性層14、p側第一半導体層15、p側バンドギャップ変化層16、p型第二半導体層17及びp型コンタクト層18を順に積層する。続いて、図1の半導体発光素子101で説明したようにストライプ形状電極19を形成する。
【0107】
続いて、電極31を形成する箇所の陰電極部Mの半導体層を除去するために再度リソグラフィ技術を用いて陽電極部Pの上層を覆うレジストパターンを作り、ドライエッチングで陰電極部Mのp型コンタクト層18からn型下地層13の膜厚の一部までの半導体層を除去する。n型下地層13の膜厚の一部までのエッチングなのでエンドポイント、すなわち陰電極部Mに残すn型下地層13の膜厚はエッチング時間で制御する。
【0108】
陰電極部Mを形成した後、ストライプ形状電極19の形成と同様にして電極31を形成する。
【0109】
半導体発光素子103のバンドダイヤグラムの概念図を図4に示す。図4において図2で用いた符号と同じ符号は同じ積層膜の領域であり同じ機能を有する。図4の半導体発光素子103のバンドダイヤグラムにおいて図2の半導体発光素子101のバンドダイヤグラムと異なる部分は活性層14の領域14aに対してn型側においてn型基板12の領域12a及び電極11の領域11aがなく、電極31の領域31aが表示されていることである。なお、図4においてp型コンタクト層18からストライプ形状電極19まで及びn型下地層13から電極31までのバンドギャップの一部を省略して表示している。
【0110】
ストライプ形状電極19を陽極として、電極31を陰極として電圧を印加することで電極31から電子が、ストライプ形状電極19から正孔が半導体発光素子103に注入される。
【0111】
電極31から注入された電子は図2の半導体発光素子101のバンドダイヤグラムで説明したように半導体発光素子103の活性層14の各井戸層に集中する。
【0112】
一方、ストライプ形状電極19から注入された正孔は図2の半導体発光素子101のバンドダイヤグラムで説明したように半導体発光素子103の活性層14の各井戸層に集中する。従って、半導体発光素子103は量子井戸の価電子帯のトップ準位21と伝導帯の底部準位22との間で表現されるバンドギャップに応じた波長の光を発光する。
【0113】
また、半導体発光素子103は図1の半導体発光素子101と同様に活性層14とp側バンドギャップ変化層16との積層方向の距離が一定の範囲にあるため、ストライプ形状電極19により狭搾され注入された正孔は図1に示す正孔の流れ91のように活性層14のストライプ形状電極19の直下の部分に集中して到達する。
【0114】
従って、本願発明により、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することができる。
【0115】
つまり、半導体発光素子103は半導体発光素子101と同様にしきい値電流の低減、電流対光量のスロープ効率の改善、輝度向上等の効果を得ることができる。
【0116】
また、半導体発光素子103は半導体発光素子101と同様にp側第一半導体層15、p側バンドギャップ変化層16及びp型第二半導体層17においてIII族窒化物系化合物の結晶のC軸を揃えて積層した場合にp側バンドギャップ変化層16の効果、すなわち前記分極電荷の分散の効果が最も大きくなる。従って、p側バンドギャップ変化層16はp側第一半導体層15の不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間においてキャリア輸送を円滑にすることができる。
【0117】
(実施の形態3)
本実施形態は、電子と正孔とが再結合することにより光を発生させる活性層と、前記活性層に対して極性がp型の側に積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第一半導体層と、前記第一半導体層の前記活性層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表され、積層方向に組成が階段状に単調変化するIII族窒化物系化合物のバンドギャップ変化層と、前記バンドギャップ変化層の前記第一半導体層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第二半導体層と、を備える半導体発光素子であって、前記活性層に対して極性がp型の側の前記活性層の端から前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅の中心に至るまでの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下であり、前記バンドギャップ変化層のバンドギャップは、前記第一半導体層に隣接する側の前記第一半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップから前記第二半導体層に隣接する側の前記第二半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップへ階段状に単調変化することを特徴とする半導体発光素子である。
【0118】
本願第二の発明に係る一の実施の形態である半導体発光素子105の断面の概念図を図5に示す。図5において、図1及び図3で用いた符号と同じ符号は同じ半導体層であり同じ機能を有する。半導体発光素子105と図3の半導体発光素子103との違いは、半導体発光素子105には半導体発光素子103のp側バンドギャップ変化層16を備えず、p側バンドギャップ変化層56を備えたことである。
【0119】
p側バンドギャップ変化層56は積層方向に組成が階段状に単調変化するAlGaIn1−x−yN化合物の層である。すなわち、p側バンドギャップ変化層56は積層方向においてp側バンドギャップ変化層56の一の側から他の側へ前記組成式におけるx及びyの値が階段状に単調変化する組成を有する。具体的にはp側バンドギャップ変化層56はバンドギャップの異なる複数のAlGaIn1−x−yN化合物薄膜をバンドギャップの幅の広い順又は狭い順に積層して構成される。例えば、p側バンドギャップ変化層56は、積層方向の一の側から積層方向の他の側へ向かってそれぞれ膜厚が10(nm)のGaN化合物薄膜、Al0.02Ga0.98N化合物薄膜、Al0.04Ga0.96N化合物薄膜、Al0.06Ga0.94N化合物薄膜及びAl0.08Ga0.92N化合物薄膜を順に積層して構成される。p側バンドギャップ変化層56のバンドギャップは前記一の側から前記他の側に向かって、最も狭いGaN化合物薄膜のバンドギャップから最も広いAl0.08Ga0.92N化合物薄膜のバンドギャップへ階段状に単調変化する。なお、前記化合物薄膜の組成は不均等に変化させてもよく、前記化合物薄膜の膜厚も不均等であってもよい。
【0120】
p側バンドギャップ変化層56は組成が階段状に単調変化するため、p側バンドギャップ変化層56内において急峻な組成変化による格子ひずみを低減できる。
【0121】
なお、p側バンドギャップ変化層56の膜厚は3(nm)以上100(nm)未満であることが好ましく、3(nm)以上50(nm)以下であることがより好ましい。
【0122】
p側バンドギャップ変化層56にはp型とするためにp型不純物を添加してもよい。具体的にはp型不純物としてMgが例示され、不純物濃度nは1×1018(cm−3)以上1×1019(cm−3)以下の範囲が例示される。なお、p側バンドギャップ変化層56の不純物濃度の範囲は図1のp側バンドギャップ変化層16で説明したようにp側第一半導体層15とp型第二半導体層17とを隣接した界面に生ずる分極の電荷密度及びp側バンドギャップ変化層56の積層方向の幅から算出することが好ましい。
【0123】
半導体発光素子105は以下に説明するように作成される。MOCVD法を用いてn型基板32上にn型下地層13、n型第二半導体層27、n側第一半導体層25、活性層14、p側第一半導体層15、p側バンドギャップ変化層56、p型第二半導体層17及びp型コンタクト層18を順に積層する。p側バンドギャップ変化層56は所定時間毎に階段状に前記製造パラメータを変更して積層させて作成する。なお、活性層14とp側第一半導体層15との界面からp側バンドギャップ変化層56の膜厚の中心までの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下、より好ましくは30(nm)以上100(nm)以下となるようにp側第一半導体層15及びp側バンドギャップ変化層56を積層する。
【0124】
続いて、図1の半導体発光素子101で説明したようにストライプ形状電極91を形成する。続いて、図3の半導体発光素子103で説明したように陰電極部Mを形成して電極31を形成する。
【0125】
p側バンドギャップ変化層56の一の側の組成をp側第一半導体層15の組成と等しくし、他の側の組成をp型第二半導体層17の組成と等しくすることで、図1のp側バンドギャップ変化層16の効果と同じ効果を得られる。すなわち、p側バンドギャップ変化層56の前記一の側とp側第一半導体層15とを隣接し、及び前記他の側とp型第二半導体層17とを隣接するようにp側バンドギャップ変化層56を積層することで、p側第一半導体層15とp側バンドギャップ変化層56との間及びp側バンドギャップ変化層56とp型第二半導体層17との間に急峻な組成の変化がなくなるため、キャリアの輸送を阻害していた分極電荷を分散させることができ、正孔はp型第二半導体層17からp側第一半導体層15へ円滑に移動することができる。
【0126】
半導体発光素子105のバンドダイヤグラムの概念図を図6に示す。図6において図2又は図4で用いた符号と同じ符号は同じ積層膜の領域であり同じ機能を有する。図6の半導体発光素子105のバンドダイヤグラムにおいて図4の半導体発光素子103のバンドダイヤグラムと異なる部分は活性層14の領域14aに対してp型側においてp側バンドギャップ変化層16の領域16aがなく、p側バンドギャップ変化層56の領域56aが表示されていることである。なお、図6においてp型コンタクト層18からストライプ形状電極19まで及びn型下地層13から電極31までのバンドギャップの一部を省略して表示している。
【0127】
ストライプ形状電極19を陽極として、電極31を陰極として電圧を印加することで電極11から電子が、ストライプ形状電極19から正孔が半導体発光素子105に注入される。
【0128】
電極31から注入された電子は図2の半導体発光素子101のバンドギャップで説明したように半導体発光素子105の活性層14の各井戸層に集中する。
【0129】
一方、活性層14に対してp型側において、p側バンドギャップ変化層56によってp側第一半導体層15の価電子帯のトップ準位21とp型第二半導体層17の価電子帯のトップ準位21とは階段状に接続されており、ストライプ形状電極19から注入された正孔は価電子帯のトップ準位21に沿ってエネルギー的に安定するp側第一半導体層15へ移動できる。p側第一半導体層15へ移動した正孔は図2の半導体発光素子101のバンドギャップで説明したように半導体発光素子105の活性層14の各井戸層に集中する。
【0130】
従って、半導体発光素子105は量子井戸の価電子帯のトップ準位21と伝導帯の底部準位22との間で表現されるバンドギャップに応じた波長の光を発光する。
【0131】
また、半導体発光素子105は図1の半導体発光素子101と同様に活性層14とp側バンドギャップ変化層16との積層方向の距離が一定の範囲にあるため、ストライプ形状電極19により狭搾され注入された正孔は図1に示す正孔の流れ91のように活性層14のストライプ形状電極19の直下の部分に集中して到達する。
【0132】
従って、本願発明により、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することができる。
【0133】
つまり、半導体発光素子105は半導体発光素子101と同様にしきい値電流の低減、電流対光量のスロープ効率の改善、輝度向上等の効果を得ることができる。
【0134】
また、半導体発光素子105は半導体発光素子101と同様にp側第一半導体層15、p側バンドギャップ変化層56及びp型第二半導体層17においてIII族窒化物系化合物の結晶のC軸を揃えて積層した場合にp側バンドギャップ変化層56の効果、すなわち前記分極電荷の分散の効果が最も大きくなる。従って、p側バンドギャップ変化層56はp側第一半導体層15の不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間においてキャリア輸送を円滑にすることができる。
【0135】
なお、半導体発光素子105は図1の半導体発光素子101で説明したn型基板12に半導体層を積層することで半導体発光素子101と同様に裏面電極型の半導体発光素子とすることができる。
【0136】
(実施の形態4)
本実施形態は、電子と正孔とが再結合することにより光を発生させる活性層と、前記活性層に対して極性がn型の側に積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第一半導体層と、前記第一半導体層の前記活性層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表され、積層方向に組成が連続的に単調変化するIII族窒化物系化合物のバンドギャップ変化層と、前記バンドギャップ変化層の前記第一半導体層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第二半導体層と、を備える半導体発光素子であって、前記活性層に対して極性がn型の側の前記活性層の端から前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅の中心に至るまでの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下であり、前記バンドギャップ変化層のバンドギャップは、前記第一半導体層に隣接する側の前記第一半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップから前記第二半導体層に隣接する側の前記第二半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップへ連続的に単調変化することを特徴とする半導体発光素子である。
【0137】
本願第三の発明に係る一の実施の形態である半導体発光素子107の断面の概念図を図7に示す。図7において、図1、図3及び図5で用いた符号と同じ符号は同じ半導体層であり同じ機能を有する。半導体発光素子107と図3の半導体発光素子103との違いは、半導体発光素子107には半導体発光素子103のp側バンドギャップ変化層16を備えず、n側バンドギャップ変化層76を備えたことである。
【0138】
n側バンドギャップ変化層76は図1のp型バンドギャップ変化層16と同様に積層方向に組成が連続的に単調変化するAlGaIn1−x−yN化合物の層である。すなわち、n側バンドギャップ変化層76は積層方向においてn側バンドギャップ変化層76の一の側から他の側へ前記組成式におけるx及びyの値が連続的に単調変化する組成を有する。例えば、n側バンドギャップ変化層76は、図1で説明したp側バンドギャップ変化層16と同様の組成のIII族窒化物系化合物が例示できる。
【0139】
n側バンドギャップ変化層76は組成が連続的に単調変化するため、n側バンドギャップ変化層76内において急峻な組成変化による格子ひずみを低減できる。
【0140】
なお、n側バンドギャップ変化層76の膜厚は3(nm)以上100(nm)未満であることが好ましく、3(nm)以上50(nm)以下であることがより好ましい。
【0141】
n側バンドギャップ変化層76にはn型とするためにn型不純物を添加してもよい。具体的にはn型不純物としてSiが例示され、不純物濃度nは5×1017(cm−3)以上5×1018(cm−3)以下の範囲が例示される。なお、n側バンドギャップ変化層76の不純物濃度の範囲は図1のp側バンドギャップ変化層16で説明したようにn側第一半導体層25とn型第二半導体層27とを隣接した界面に生ずる分極の電荷密度及びn側バンドギャップ変化層76の積層方向の幅から算出することが好ましい。
【0142】
半導体発光素子107は以下に説明するように作成される。MOCVD法を用いてn型基板32上にn型下地層13、n型第二半導体層27、n側バンドギャップ変化層76、n側第一半導体層25、活性層14、p側第一半導体層15、p型第二半導体層17及びp型コンタクト層18を順に積層する。なお、活性層14とn側第一半導体層25との界面からn側バンドギャップ変化層76の膜厚の中心までの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下、より好ましくは30(nm)以上100(nm)以下となるようにn側第一半導体層25及びn側バンドギャップ変化層76を積層する。
【0143】
従って、活性層14とn側バンドギャップ変化層76との積層方向の距離を前記範囲とするため、n側第一半導体層25の膜厚は20(nm)以上200(nm)以下であることが好ましい。
【0144】
続いて、図1の半導体発光素子101で説明したようにストライプ形状電極91を形成する。続いて、図3の半導体発光素子103で説明したように陰電極部Mを形成して電極31を形成する。
【0145】
n側バンドギャップ変化層76の一の側の組成をn側第一半導体層25の組成と等しくし、他の側の組成をn型第二半導体層27の組成と等しくした場合、図1のp側バンドギャップ変化層16の効果と同じ効果を得られる。すなわち、n側バンドギャップ変化層76の前記一の側とn側第一半導体層25とを隣接し、及び前記他の側とn型半導体層27とを隣接するようにn側バンドギャップ変化層76を積層することで、n側第一半導体層25とn側バンドギャップ変化層76との間及びn側バンドギャップ変化層76とn型第二半導体層27との間に急峻な組成の変化がなくなるため、キャリアの輸送を阻害していた分極電荷を分散させることができ、電子はn型第二半導体層27からn側第一半導体層25へ円滑に移動することができる。
【0146】
半導体発光素子107のバンドダイヤグラムの概念図を図8に示す。図8において図2、図4及び図6で用いた符号と同じ符号は同じ積層膜の領域であり同じ機能を有する。図8の半導体発光素子107のバンドダイヤグラムにおいて図4の半導体発光素子103のバンドダイヤグラムと異なる部分は活性層14の領域14aに対してp型側にp側バンドギャップ変化層16の領域16aがなく、活性層14の領域14aに対してn型側にn側バンドギャップ変化層76の領域76aが表示されていることである。なお、図8においてp型コンタクト層18からストライプ形状電極19まで及びn型下地層13から電極31までのバンドギャップの一部を省略して表示している。
【0147】
ストライプ形状電極19を陽極として、電極31を陰極として電圧を印加することで電極11から電子が、ストライプ形状電極19から正孔が半導体発光素子107に注入される。
【0148】
電極31から注入された電子は多数キャリアが電子であるn型のn型下地層13及びn型第二半導体層27を活性層14の方向へ円滑に移動することができる。n側第一半導体層25のバンドギャップはn型第二半導体層27のバンドギャップより狭く、n側バンドギャップ変化層76によってn側第一半導体層25の伝導帯の底部準位22とn型第二半導体層27の伝導帯の底部準位22とはなだらかに接続され、電子は伝導帯の底部準位22に沿ってエネルギー的に安定するn側第一半導体層25へ移動できる。n側第一半導体層25へ移動した電子はn側第一半導体層25のバンドギャップより狭い活性層14の各井戸層に集中する。
【0149】
一方、ストライプ形状電極19から注入された正孔は多数キャリアが正孔であるp型のp型コンタクト層18、p型第二半導体層27を活性層14の方向へ円滑に移動することができる。p側第一半導体層15のバンドギャップはp型第二半導体層17のバンドギャップより狭いため、正孔は価電子帯のトップ準位21に沿ってエネルギー的に安定するp側第一半導体層15へ移動できる。正孔はp側第一半導体層15より狭いバンドギャップの活性層14の各井戸層に集中する。
【0150】
従って、半導体発光素子107は量子井戸の価電子帯のトップ準位21と伝導帯の底部準位22との間で表現されるバンドギャップに応じた波長の光を発光する。
【0151】
また、活性層14とn側バンドギャップ変化層76との積層方向の距離は一定の範囲にあり、電子はn型第二半導体層27からn側第一半導体層25へ円滑に移動できるため、電極31により注入された電子は一箇所に集中することなく、図7に示す電子の流れ97のようにn型第二半導体層27、n側バンドギャップ変化層76内及びn側第一半導体層25内を均一に移動することができ、半導体発光素子107の電気抵抗を下げることができる。
【0152】
従って、本願発明により、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することができる。
【0153】
つまり、半導体発光素子107は半導体発光素子101と同様にしきい値電流の低減、電流対光量のスロープ効率の改善、輝度向上等の効果を得ることができる。
【0154】
また、半導体発光素子107は半導体発光素子101と同様にn側第一半導体層25、n側バンドギャップ変化層76及びn型第二半導体層27においてIII族窒化物系化合物の結晶のC軸を揃えて積層した場合にn側バンドギャップ変化層76の効果、すなわち前記分極電荷の分散の効果が最も大きくなる。従って、n側バンドギャップ変化層76はn側第一半導体層25の不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間においてキャリア輸送を円滑にすることができる。
【0155】
なお、半導体発光素子107は図1の半導体発光素子101で説明したn型基板12に半導体層を積層することで半導体発光素子101と同様に裏面電極型の半導体発光素子とすることができる。
【0156】
(実施の形態5)
本実施形態は、電子と正孔とが再結合することにより光を発生させる活性層と、前記活性層に対して極性がn型の側に積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第一半導体層と、前記第一半導体層の前記活性層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表され、積層方向に組成が階段状に単調変化するIII族窒化物系化合物のバンドギャップ変化層と、前記バンドギャップ変化層の前記第一半導体層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第二半導体層と、を備える半導体発光素子であって、前記活性層に対して極性がn型の側の前記活性層の端から前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅の中心に至るまでの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下であり、前記バンドギャップ変化層のバンドギャップは、前記第一半導体層に隣接する側の前記第一半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップから前記第二半導体層に隣接する側の前記第二半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップへ階段状に単調変化することを特徴とする半導体発光素子である。
【0157】
本願第四の発明に係る一の実施の形態である半導体発光素子109の断面の概念図を図9に示す。図9において、図1、図3、図5及び図7で用いた符号と同じ符号は同じ半導体層であり同じ機能を有する。半導体発光素子109と図7の半導体発光素子107との違いは、半導体発光素子109には半導体発光素子107のn側バンドギャップ変化層76を備えず、n側バンドギャップ変化層96を備えたことである。
【0158】
n側バンドギャップ変化層96は積層方向に組成が階段状に単調変化するAlGaIn1−x−yN化合物の層である。すなわち、n側バンドギャップ変化層96は積層方向においてn側バンドギャップ変化層96の一の側から他の側へ前記組成式におけるx及びyの値が階段状に単調変化する組成を有する。例えば、n側バンドギャップ変化層96は、図5で説明したp側バンドギャップ変化層56と同様に構成され、同様の組成のIII族窒化物系化合物が例示できる。
【0159】
n側バンドギャップ変化層96は組成が階段状に単調変化するため、n側バンドギャップ変化層96内において急峻な組成変化による格子ひずみを低減できる。
【0160】
なお、n側バンドギャップ変化層96の膜厚は3(nm)以上100(nm)未満であることが好ましく、3(nm)以上50(nm)以下であることがより好ましい。
【0161】
n側バンドギャップ変化層96にはn型とするために図1のp側バンドギャップ変化層16で説明した不純物濃度の範囲でn型不純物を添加してもよい。具体的にはn型不純物としてSiが例示され、不純物濃度nは5×1017(cm−3)以上5×1018(cm−3)以下の範囲が例示される。なお、n側バンドギャップ変化層96の不純物濃度の範囲は図1のp側バンドギャップ変化層16で説明したようにn側第一半導体層25とn型第二半導体層27とを隣接した界面に生ずる分極の電荷密度及びn側バンドギャップ変化層96の積層方向の幅から算出することが好ましい。
【0162】
半導体発光素子109は以下に説明するように作成される。MOCVD法を用いてn型基板32上にn型下地層13、n側第一半導体層25、n側バンドギャップ変化層96、n型第二半導体層27、活性層14、p側第一半導体層15、p型第二半導体層17及びp型コンタクト層18を順に積層する。n側バンドギャップ変化層96は図5の半導体発光素子105で説明したように所定時間毎に階段状に前記製造パラメータを変更して積層させて作成する。なお、活性層14とn側第一半導体層25との界面からn側バンドギャップ変化層96の膜厚の中心までの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下、より好ましくは30(nm)以上100(nm)以下となるようにn側第一半導体層25及びn側バンドギャップ変化層96を積層する。
【0163】
続いて、図1の半導体発光素子101で説明したようにストライプ形状電極91を形成する。続いて、図3の半導体発光素子103で説明したように陰電極部Mを形成して電極31を形成する。
【0164】
n側バンドギャップ変化層96の一の側の組成をn側第一半導体層25の組成と等しくし、他の側の組成をn型第二半導体層27の組成と等しくした場合、図1のp側バンドギャップ変化層16の効果と同じ効果を得られる。すなわち、n側バンドギャップ変化層96の前記一の側とn側第一半導体層25とを隣接し、及び前記他の側とn型半導体層27とを隣接するようにn側バンドギャップ変化層96を積層することで、n側第一半導体層25とn側バンドギャップ変化層96との間及びn側バンドギャップ変化層96とn型第二半導体層27との間に急峻な組成の変化がなくなるため、キャリアの輸送を阻害していた分極電荷を分散させることができ、電子はn型第二半導体層27からn側第一半導体層25へ円滑に移動することができる。
【0165】
半導体発光素子109のバンドダイヤグラムの概念図を図10に示す。図10において図2、図4、図6及び図8で用いた符号と同じ符号は同じ積層膜の領域であり同じ機能を有する。図10の半導体発光素子109のバンドダイヤグラムにおいて図7の半導体発光素子107のバンドダイヤグラムと異なる部分は活性層14の領域14aに対してn型側においてn側バンドギャップ変化層76の領域76aがなく、n側バンドギャップ変化層96の領域96aが表示されていることである。なお、図10においてp型コンタクト層18からストライプ形状電極19まで及びn型下地層13から電極31までのバンドギャップの一部を省略して表示している。
【0166】
ストライプ形状電極19を陽極として、電極31を陰極として電圧を印加することで電極11から電子が、ストライプ形状電極19から正孔が半導体発光素子109に注入される。
【0167】
活性層14に対してn型側において、n側バンドギャップ変化層96によってn側第一半導体層25の伝導帯の底部準位22とn型第二半導体層27の伝導帯の底部準位22とは階段状に接続され、電子は伝導帯の底部準位22に沿ってエネルギー的に安定するn側第一半導体層25へ移動できる。n側第一半導体層25へ移動した電子は半導体発光素子109の活性層14の各井戸層に集中する。
【0168】
一方、ストライプ形状電極19から注入された正孔は図1の半導体発光素子101のバンドダイヤグラムで説明したように半導体発光素子109の活性層14の各井戸層に集中する。
【0169】
従って、半導体発光素子105は量子井戸の価電子帯のトップ準位21と伝導帯の底部準位22との間で表現されるバンドギャップに応じた波長の光を発光する。
【0170】
また、半導体発光素子109のn側バンドギャップ変化層96は図7の半導体発光素子107のn側バンドギャップ変化層76と同様に活性層14とn側バンドギャップ変化層96との積層方向の距離が一定の範囲にあり、電子は電子の流れ97のようにn型第二半導体層27からn側第一半導体層25へ円滑に移動でき、半導体発光素子109の電気抵抗を下げることができる。
【0171】
従って、本願発明により、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することができる。
【0172】
つまり、半導体発光素子109は半導体発光素子101と同様にしきい値電流の低減、電流対光量のスロープ効率の改善、輝度向上等の効果を得ることができる。
【0173】
また、半導体発光素子109は半導体発光素子101と同様にn側第一半導体層25、n側バンドギャップ変化層96及びn型第二半導体層27においてIII族窒化物系化合物の結晶のC軸を揃えて積層した場合にn側バンドギャップ変化層96の効果、すなわち前記分極電荷の分散の効果が最も大きくなる。従って、n側バンドギャップ変化層96はn側第一半導体層25の不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間においてキャリア輸送を円滑にすることができる。
【0174】
なお、半導体発光素子109は図1の半導体発光素子101で説明したn型基板12に半導体層を積層することで半導体発光素子101と同様に裏面電極型の半導体発光素子とすることができる。
【0175】
(実施の形態6)
本願第一の発明に係る他の実施の形態である半導体発光素子111の断面の概念図を図11に示す。図11において、図1、図3、図5、図7及び図9で用いた符号と同じ符号は同じ半導体層であり同じ機能を有する。半導体発光素子111と図3の半導体発光素子103との違いは、半導体発光素子111には半導体発光素子103のn側第一半導体層25とn型第二半導体層27との間にn側バンドギャップ変化層76を備えたことである。
【0176】
半導体発光素子111は以下に説明するように作成される。MOCVD法を用いてn型基板32上にn型下地層13、n型第二半導体層27、n側バンドギャップ変化層76、n側第一半導体層25、活性層14、p側第一半導体層15、p側バンドギャップ変化層16、p型第二半導体層17及びp型コンタクト層18を順に積層する。なお、活性層14とp側第一半導体層15との界面からp側バンドギャップ変化層16の膜厚の中心までの積層方向の距離及び活性層14とn側第一半導体層25との界面からn側バンドギャップ変化層76の膜厚の中心までの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下、より好ましくは30(nm)以上100(nm)以下となるようにp側第一半導体層15、p側バンドギャップ変化層16、n側第一半導体層25及びn側バンドギャップ変化層96を積層する。
【0177】
続いて、図1の半導体発光素子101で説明したようにストライプ形状電極91を形成する。続いて、図3の半導体発光素子103で説明したように陰電極部Mを形成して電極31を形成する。
【0178】
図1の半導体発光素子101及び図7の半導体発光素子107で説明したようにp側バンドギャップ変化層16及びn側バンドギャップ変化層76を配置したことでキャリアの輸送を阻害していた分極電荷を分散させることができ、正孔はp型第二半導体層17からp側第一半導体層15へ、及び電子はn型第二半導体層27からn側第一半導体層25へ円滑に移動することができる。
【0179】
半導体発光素子111のバンドダイヤグラムの概念図を図12に示す。図12において図2、図4、図6、図8及び図10で用いた符号と同じ符号は同じ積層膜の領域であり同じ機能を有する。図12の半導体発光素子111のバンドダイヤグラムにおいて図4の半導体発光素子103のバンドダイヤグラムと異なる部分は活性層14の領域14aに対してn型側においてn側バンドギャップ変化層76の領域76aが表示されていることである。なお、図12においてp型コンタクト層18からストライプ形状電極19まで及びn型下地層13から電極31までのバンドギャップの一部を省略して表示している。
【0180】
ストライプ形状電極19を陽極として、電極31を陰極として電圧を印加することで電極11から電子が、ストライプ形状電極19から正孔が半導体発光素子111に注入される。
【0181】
電極31から注入された電子は図8の半導体発光素子107のバンドギャップで説明したように半導体発光素子111の活性層14の各井戸層に集中する。
【0182】
一方、ストライプ形状電極19から注入された正孔は図2の半導体発光素子101のバンドダイヤグラムで説明したように半導体発光素子111の活性層14の各井戸層に集中する。
【0183】
従って、半導体発光素子111は量子井戸の価電子帯のトップ準位21と伝導帯の底部準位22との間で表現されるバンドギャップに応じた波長の光を発光する。
【0184】
また、半導体発光素子111は図1の半導体発光素子101と同様に活性層14とp側バンドギャップ変化層16との積層方向の距離が一定の範囲にあるため、ストライプ形状電極19により狭搾され注入された正孔は図11に示す正孔の流れ91のように活性層14のストライプ形状電極19の直下の部分に集中して到達する。
【0185】
一方、半導体発光素子111は図7の半導体発光素子107と同様に活性層14とn側バンドギャップ変化層76との積層方向の距離が一定の範囲にあり、電子は図11に示す電子の流れ97のようにn型第二半導体層27からn側第一半導体層25へ円滑に移動でき、半導体発光素子111の電気抵抗を下げることができる。
【0186】
従って、本願発明により、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動できる半導体発光素子を提供することができる。
【0187】
つまり、半導体発光素子111は半導体発光素子101と同様にしきい値電流の低減、電流対光量のスロープ効率の改善、輝度向上等の効果を得ることができる。
【0188】
また、半導体発光素子111は半導体発光素子101及び半導体発光素子107と同様に各半導体層の積層方向と各半導体層のIII族窒化物系化合物のC軸方向とが平行の場合にp側バンドギャップ変化層16及びn側バンドギャップ変化層76の効果、すなわち前記分極電荷の分散の効果が最も大きくなる。
【0189】
なお、半導体発光素子111においてp側バンドギャップ変化層16の代替として図5で説明したp側バンドギャップ変化層56又は/及びn側バンドギャップ変化層76の代替として図9で説明したn側バンドギャップ変化層96を配置しても同様の効果を得ることができる。
【0190】
(実施の形態7)
本実施形態は、前記第二半導体層の前記バンドギャップ変化層の側と反対の側に外部から電圧を印加するための電極をさらに備え、前記電極から前記第二半導体層又は前記第一半導体層に至るまでメサ状であってもよい。
【0191】
本願第一の発明に係る他の実施の形態である半導体レーザである半導体発光素子113の断面の概念図を図13に示す。半導体発光素子113と図11の半導体発光素子111との違いは、ストライプ形状電極19からp型第一半導体層15の膜厚の一部までをメサ状に形成し、メサ部8としていることである。図13において、図1、図3、図5、図7、図9及び図11で用いた符号と同じ符号は同じ半導体層であり同じ機能を有するが、半導体発光素子113が半導体レーザとして機能するために、積層される半導体層は以下に説明する半導体であることがさらに望ましい。
【0192】
n型下地層13は膜厚1μm以上のSiを不純物としてn型としたGaN化合物であることが望ましい。不純物濃度は3×1018(cm−3)であることが例示される。
【0193】
n型第二半導体層27は活性層14に電子を供給するクラッド層として機能させるため、膜厚が1000(nm)の前記組成式においてm=0.08、すなわちAl0.08Ga0.92N化合物であり、不純物のSi濃度は3×1018(cm−3)であることが望ましい。
【0194】
n側第一半導体層25は活性層14で発生した光を反射し、導波する光ガイド層として機能させるために膜厚が100(nm)のノンドープのGaN化合物又は不純物のSi濃度が1×1018(cm−3)以下の低ドープのGaN化合物であることが望ましい。
【0195】
n側バンドギャップ変化層76はn側第一半導体層25と隣接する側の組成をGaN化合物とし、n型第二半導体層27と隣接する側の組成をAl0.08Ga0.92N化合物としてn側第一半導体層25と隣接する側からn型第二半導体層27と隣接する側へ向かって、Alの組成が0から0.08へ連続的に単調変化し且つGaの組成がx+y=1の関係を保ちつつ1から0.92へ連続的に単調変化していることが望ましい。n側バンドギャップ変化層76の膜厚は10(nm)である。また、添加される不純物のSi濃度は1.5×1018(cm−3)以上9×1018(cm−3)以下の範囲であることが例示され、3×1018(cm−3)であることが好ましい。
【0196】
活性層14は井戸層を外側に配置したMQWであり、前記MQWに対してp型側の前記MQWの端に電子バリア層を有する。井戸層は前記組成式においてp=0.87、すなわちGa0.87In0.13N化合物、障壁層は前記組成式においてq=1、すなわちGaN化合物及び前記電子バリア層は前記組成式においてs=0.2、すなわちAl0.2Ga0.8N化合物であることが望ましい。また、前記井戸層の膜厚は3(nm)、前記障壁層の膜厚は10(nm)及び前記電子バリア層の膜厚は20(nm)であることが望ましい。前記電子バリア層はp型とするために不純物としてMgが添加される。不純物濃度は1×1019(cm−3)以上1×1020(cm−3)以下の範囲であることが例示され、5×1019(cm−3)であることが好ましい。
【0197】
p側第一半導体層15は活性層14で発生した光を反射し、導波する光ガイド層として機能させるために膜厚が100(nm)のノンドープのGaN化合物又は不純物のMg濃度が1×1019(cm−3)以下の低ドープのGaN化合物であることが望ましい。
【0198】
p型第二半導体層17は活性層14に正孔を供給するクラッド層として機能させるため、膜厚が500(nm)の前記組成式においてm=0.08、すなわちAl0.08Ga0.92N化合物であり、不純物のMg濃度は3×1019(cm−3)であることが望ましい。
【0199】
p側バンドギャップ変化層16はp側第一半導体層15と隣接する側の組成をGaN化合物とし、p型第二半導体層17と隣接する側の組成をAl0.08Ga0.92N化合物としてp側第一半導体層15と隣接する側からp型第二半導体層17と隣接する側へ向かって、Alの組成が0から0.08へ連続的に単調変化し且つGaの組成がx+y=1の関係を保ちつつ1から0.92へ連続的に単調変化していることが望ましい。p側バンドギャップ変化層16の膜厚は10(nm)である。また、添加される不純物のMg濃度は1.5×1018(cm−3)以上9×1018(cm−3)以下の範囲であることが例示され、3×1018(cm−3)であることが好ましい。
【0200】
p型コンタクト層18は膜厚が50(nm)のMgを不純物としてp型としたGaN化合物であることが望ましい。
【0201】
半導体発光素子113は、図11の半導体発光素子111を形成した後、メサ部8を形成する。
【0202】
ストライプ形状電極19を陽極として、電極31を陰極として電圧を印加することで電極11から電子が、ストライプ形状電極19から正孔が半導体発光素子113に注入される。
【0203】
図1の半導体発光素子101で説明したように、p側バンドギャップ変化層16によりp型第二半導体層17からp型第一半導体層15の間の正孔輸送が円滑になるため、半導体発光素子113の正孔は結晶性の良いメサ部8の中央付近を移動することができる。
【0204】
また、活性層14とp側バンドギャップ変化層16との積層方向の距離は一定の範囲にあるため、ストライプ形状電極19及びメサ部8により狭搾され注入された正孔はp型第二半導体層17、p側バンドギャップ変化層16内及びp側第一半導体層15内での拡散が減少し、図1に示す正孔の流れ91のように活性層14のストライプ形状電極19の直下の部分に集中して到達する。
【0205】
一方、半導体発光素子113は図7の半導体発光素子107と同様に活性層14とn側バンドギャップ変化層76との積層方向の距離が一定の範囲にあり、電子は図13に示す電子の流れ97のようにn型第二半導体層27からn側第一半導体層25へ円滑に移動でき、半導体発光素子113の電気抵抗を下げることができる。
【0206】
活性層14に集中した正孔及び電子は再結合してMQWの前記井戸層のバンドギャップで表される波長の光を発生する。p側第一半導体層15及びn側第一半導体層25はガイド層として前記光を導波し、誘導放出を促す。
【0207】
従って、本願発明により、不純物濃度を高めることなく、つまり光学特性及び信頼性の劣化をもたらすことなく互いに組成の異なる二の半導体層との間をキャリアが円滑に移動でき、半導体レーザとして機能する半導体発光素子を提供することができる。
【0208】
なお、半導体発光素子113において、p側バンドギャップ変化層16の代替として図5で説明したp側バンドギャップ変化層56又は/及びn側バンドギャップ変化層76の代替として図9で説明したn側バンドギャップ変化層96を配置しても同様の効果を得ることができる。
【0209】
なお、半導体発光素子113と同様にp側第一半導体層15及びn側第一半導体層25は活性層14で発生した光を反射させるため活性層14より屈折率が小さくなるような組成に設計され、活性層14で発生した光を導波する光ガイド層の機能を有し、p型第二半導体層17及びn型第二半導体層27は活性層14にキャリアを供給するクラッド層としての機能を有することで、半導体発光素子101、半導体発光素子103、半導体発光素子105、半導体発光素子107、半導体発光素子109及び半導体発光素子111は構造全体として半導体レーザとして機能する。
【産業上の利用可能性】
【0210】
本願発明の半導体発光素子の構成は受光素子として利用することができる。また、トランジスタやダイオード等の電子デバイス、HEMTに代表されるような化合物高周波用電子デバイスにも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】本願第一の発明に係る一の実施の形態である半導体発光素子101の断面の概念図である。
【図2】本願第一の発明に係る一の実施の形態である半導体発光素子101のバンドダイヤグラムの概念図である。
【図3】本願第一の発明に係る他の実施の形態である半導体発光素子103の断面の概念図である。
【図4】本願第一の発明に係る他の実施の形態である半導体発光素子103のバンドダイヤグラムの概念図である。
【図5】本願第二の発明に係る一の実施の形態である半導体発光素子105の断面の概念図である。
【図6】本願第二の発明に係る一の実施の形態である半導体発光素子105のバンドダイヤグラムの概念図である。
【図7】本願第三の発明に係る一の実施の形態である半導体発光素子107の断面の概念図である。
【図8】本願第三の発明に係る一の実施の形態である半導体発光素子107のバンドダイヤグラムの概念図である。
【図9】本願第四の発明に係る一の実施の形態である半導体発光素子109の断面の概念図である。
【図10】本願第四の発明に係る一の実施の形態である半導体発光素子109のバンドダイヤグラムの概念図である。
【図11】本願第一の発明に係る他の実施の形態である半導体発光素子111の断面の概念図である。
【図12】本願第一の発明に係る他の実施の形態である半導体発光素子111のバンドダイヤグラムの概念図である。
【図13】本願第一の発明に係る他の実施の形態である半導体発光素子113の断面の概念図である。
【図14】従来の半導体発光素子140の断面の概念図である。
【符号の説明】
【0212】
101、103、105、107、109、111、113、140 半導体発光素子
8 メサ部
11、31 電極
12、32 n型基板
13 n型下地層
14 活性層
15 p側第一半導体層
16、56 p側バンドギャップ変化層
76、96 n側バンドギャップ変化層
17 p型第二半導体層
18 p型コンタクト層
19 ストライプ形状電極
21 価電子帯のトップ準位
22 伝導帯の底部準位
25 n側第一半導体層
27 n型第二半導体層
91 正孔の流れ
97 電子の流れ
11a 電極11の領域
12a n型基板12の領域
13a n型下地層13の領域
14a 活性層14の領域
14b 井戸層の領域
14c 障壁層の領域
14d 電子バリア層の領域
15a p側第一半導体層15の領域
16a p側バンドギャップ変化層16の領域
17a p型第二半導体層17の領域
18a p型コンタクト層18の領域
19a ストライプ形状電極19の領域
25a n側第一半導体層25の領域
27a n型第二半導体層27の領域
31a 電極31の領域
56a p側バンドギャップ変化層56の領域
76a n側バンドギャップ変化層76の領域
96a n側バンドギャップ変化層96の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子と正孔とが再結合することにより光を発生させる活性層と、
前記活性層に対して極性がp型の側に積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第一半導体層と、
前記第一半導体層の前記活性層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表され、積層方向に組成が連続的に単調変化するIII族窒化物系化合物のバンドギャップ変化層と、
前記バンドギャップ変化層の前記第一半導体層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第二半導体層と、
を備える半導体発光素子であって、
前記活性層に対して極性がp型の側の前記活性層の端から前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅の中心に至るまでの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下であり、
前記バンドギャップ変化層のバンドギャップは、前記第一半導体層に隣接する側の前記第一半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップから前記第二半導体層に隣接する側の前記第二半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップへ連続的に単調変化することを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
電子と正孔とが再結合することにより光を発生させる活性層と、
前記活性層に対して極性がp型の側に積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第一半導体層と、
前記第一半導体層の前記活性層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表され、積層方向に組成が階段状に単調変化するIII族窒化物系化合物のバンドギャップ変化層と、
前記バンドギャップ変化層の前記第一半導体層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第二半導体層と、
を備える半導体発光素子であって、
前記活性層に対して極性がp型の側の前記活性層の端から前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅の中心に至るまでの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下であり、
前記バンドギャップ変化層のバンドギャップは、前記第一半導体層に隣接する側の前記第一半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップから前記第二半導体層に隣接する側の前記第二半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップへ階段状に単調変化することを特徴とする半導体発光素子。
【請求項3】
前記第二半導体層の前記バンドギャップ変化層の側と反対の側に外部から電圧を印加するための電極をさらに備え、
前記電極から前記第二半導体層又は前記第一半導体層に至るまでメサ状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
電子と正孔とが再結合することにより光を発生させる活性層と、
前記活性層に対して極性がn型の側に積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第一半導体層と、
前記第一半導体層の前記活性層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表され、積層方向に組成が連続的に単調変化するIII族窒化物系化合物のバンドギャップ変化層と、
前記バンドギャップ変化層の前記第一半導体層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第二半導体層と、
を備える半導体発光素子であって、
前記活性層に対して極性がn型の側の前記活性層の端から前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅の中心に至るまでの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下であり、
前記バンドギャップ変化層のバンドギャップは、前記第一半導体層に隣接する側の前記第一半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップから前記第二半導体層に隣接する側の前記第二半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップへ連続的に単調変化することを特徴とする半導体発光素子。
【請求項5】
電子と正孔とが再結合することにより光を発生させる活性層と、
前記活性層に対して極性がn型の側に積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第一半導体層と、
前記第一半導体層の前記活性層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表され、積層方向に組成が階段状に単調変化するIII族窒化物系化合物のバンドギャップ変化層と、
前記バンドギャップ変化層の前記第一半導体層の側と反対の側に隣接して積層され、組成式AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)と表されるIII族窒化物系化合物の第二半導体層と、
を備える半導体発光素子であって、
前記活性層に対して極性がn型の側の前記活性層の端から前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅の中心に至るまでの積層方向の距離が30(nm)以上200(nm)以下であり、
前記バンドギャップ変化層のバンドギャップは、前記第一半導体層に隣接する側の前記第一半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップから前記第二半導体層に隣接する側の前記第二半導体層のバンドギャップと略等しいバンドギャップへ階段状に単調変化することを特徴とする半導体発光素子。
【請求項6】
前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅は3(nm)以上100(nm)未満であることを特徴とする請求項1から5に記載のいずれかの半導体発光素子。
【請求項7】
前記第二半導体層のバンドギャップは前記第一半導体層のバンドギャップより広いことを特徴とする請求項1から6に記載のいずれかの半導体発光素子。
【請求項8】
前記第一半導体層、前記バンドギャップ変化層及び前記第二半導体層の積層方向と前記第一半導体層のIII族窒化物系化合物の結晶、前記バンドギャップ変化層のIII族窒化物系化合物の結晶及び前記第二半導体層のIII族窒化物系化合物の結晶のC軸方向とが平行であることを特徴とする請求項1から7に記載のいずれかの半導体発光素子。
【請求項9】
前記第一半導体層は前記組成式においてx=0及び0.95≦y≦1であり、前記活性層で発生した光を導波する光ガイド層として機能し、
前記第二半導体層は前記組成式においてx=m(0.05≦m≦0.1)及びx+y=1の関係であり、前記活性層にキャリアを供給するクラッド層として機能し、
且つ前記バンドギャップ変化層は前記組成式において0≦x≦m及びx+y=1の関係の範囲であり、
構造全体として半導体レーザとしての機能を有することを特徴とする請求項1から8に記載のいずれかの半導体発光素子。
【請求項10】
前記第一半導体層のIII族窒化物系化合物と前記第二半導体層のIII族窒化物系化合物とを隣接した界面に生ずる分極の電荷密度をρ(cm−2)、前記バンドギャップ変化層の積層方向の幅をd(cm)と表したとき、前記バンドギャップ変化層に添加される不純物の不純物濃度n(cm−3)は、0.5ρ/d≦n≦3ρ/dの範囲であることを特徴とする請求項1から9に記載のいずれかの半導体発光素子。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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