説明

半導体発光装置

【課題】光源からの光の取り出し効率が高く、且つ照射光の配光特性の精度及び再現性が良好な半導体発光装置を提供することにある。
【解決手段】表面に導体パターンを形成したセラミック製の基板と、凹部を有し前記凹部内に貫通孔を設けたセラミック製の反射枠とを貼着してパッケージを形成し、該パッケージの前記反射枠の凹部内に載置した半導体発光素子と前記基板の表面の導体パターンとを、前記貫通孔を挿通するボンディングワイヤを介して電気的に接続した半導体発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子を発光源とする半導体発光装置に関するものであり、特に、表面実装型と称される半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の半導体発光装置は、大別して2種類の構造のものが実用化されている。一つは、基板上に半導体発光素子を実装し、トランスファーモールドによって該半導体発光素子を透光性樹脂で樹脂封止した構造のものである。他の一つは、半導体発光素子を実装する基板上に窓孔(キャビティ)を有する反射枠を設けてパッケージを形成し、該パッケージの窓孔内の基板上に半導体発光素子を実装し、更に窓孔内を透光性樹脂によって樹脂封止した構造のものである。
【0003】
前者と後者とを比較すると、前者は反射枠がない分、後者よりも小型化が容易であり、一方、後者は反射枠がある分、前者よりも光取り出し効率を高くすることができる。そのため、光源として小型化よりも光取り出し効率の高効率化が求められる場合は、後者の構造を有する半導体発光装置が用いられる。
【0004】
基板と反射枠とが一体に形成されたパッケージを用いた半導体発光装置の具体的な例としては、例えば図16に示す構造の半導体発光装置が提案されている。
【0005】
それは、基板表面に上面から側面を経て下面まで延びる導電性パターン101a、101bを形成したセラミック基板(第1セラミック基板)100と窓孔を有するセラミック反射枠(第2セラミック基板)102とからなり、セラミック基板100とセラミック反射枠102とは、導電性パターン101a、101bを挟んで貼り合わされてパッケージ103を形成している。
【0006】
セラミック反射枠102の窓孔内のセラミック基板100上には、複数の半導体発光素子(以下、LED素子とも称することもある)104a〜104dを載置する。そして、隣接するLED素子の電極同士をボンディングワイヤ105を介して電気的に接続すると共に、両端の電極と導電性パターン101a、101bとをそれぞれボンディングワイヤ105を介して電気的に接続する。
【0007】
更に、窓孔内には、LED素子104a〜104dを囲繞するように金属反射板106を配置すると共に、透光性樹脂を充填してLED素子104a〜104d、ボンディングワイヤ105、及び金属反射板106を樹脂封止する。
【0008】
このような構造を有する半導体発光装置は、発光源のLED素子を複数用いること、及びLED素子を実装する基板にセラミック基板を用いることにより光学的及び熱的な不具合の発生を抑制している。
【0009】
半導体発光装置に複数のLED素子を用いる目的は、発光色の異なる複数種のLED素子を用いて加法混色でいずれの光源光とも異なる色調の光(例えば、白色光)を得るため、或いは発光色が同一のLED素子を複数用いて各光源光の混合によって高輝度化を図るためである。
【0010】
このうち、半導体発光装置の高輝度化に際しては、発光面積の大きい大サイズのLED素子を実装することも可能であるが、発光面積の小さい小サイズのLED素子を複数実装する方が点灯時に発生する熱の拡散が効率良く行われ、LED素子の温度上昇を抑制することができる。その結果、LED素子の良好な発光効率を確保することが可能となる。
【0011】
また、小サイズのLED素子は、大サイズのLED素子と比較して単位発光面積当たりの価格が廉価であるため、小サイズのLED素子を用いることにより半導体発光装置を低価格化できる。
【0012】
更に、セラミック基板は樹脂基板と比較して耐熱性が高く、基板上に形成した導電性パターンにLED素子をはんだ接合する際、接合温度の高い無鉛はんだを使用することができる。
【0013】
また、セラミック基板は樹脂基板と比較して熱伝導率が高く、LED素子の点灯時に発生する熱の拡散が効率良く行われ、LED素子の温度上昇を抑制することができる。その結果、上述した小サイズのLED素子を複数実装することとの相乗効果によって、更なる発光効率の高効率化が可能となる(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−197974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上記構造の半導体発光装置はそのまま光源として用いることもあるが、所望の配光特性を得るために更に配光制御用の光学レンズを取り付けた状態で用いることも多い。
【0016】
所望の配光特性を精度良く且つ再現性良く実現するためには、複数のLED素子と配光制御用の光学レンズとの位置関係を精度良く且つ再現性よく確保することが必要である。その点、上記従来例の半導体発光装置は、セラミック基板(第1セラミック基板)に反射枠(第2セラミック基板)を貼り合わせた構造であり、配光制御用の光学レンズを取り付けるとすれば、例えば反射枠の窓孔に取り付けることになる。この場合、貼り合わせ時のセラミック基板に対する反射枠の位置ずれや、反射枠の焼成時の収縮によって、セラミック基板上のLED素子の実装位置と反射枠の窓孔の位置関係が必ずしも一定とはならない。そのため、配光制御用の光学レンズを取り付けたとしても配光特性を精度良く且つ再現性良く確保することは難しい。
【0017】
また、セラミック基板に廉価なアルミナセラミックを使用した場合には、表面の光反射率が良くない。従って、LED素子から放出された光の取り出し効率を高めるために、図16のように反射枠102の窓孔内にLED素子104a〜104dを囲繞するように金属反射板106を配置したり、セラミック基板100上の導電性パターン101a、101bを広範囲に設けたりして、反射光の有効利用を図る。
【0018】
そのうち、導電性パターンをLED素子から放出された光の反射に利用する方法は、特別な部品及び特別な製造工程を必要とせず極めて廉価な方法である。但し、その場合、反射効率を高めるために、導電性パターンの表面にAg(銀)又はAu(金)のメッキ層を設ける場合が多い。
【0019】
Agメッキ層は、反射率が非常に高く且つ可視光の全波長領域に亘って略均一な反射率を有しているが、周囲環境の影響による硫化や塩化等の変質で変色し、反射効率が低下することがある。一方、Auメッキ層は、周囲環境の影響に対して安定しているため反射率が低下することはないが、反射率の波長依存性がある。例えば、Auメッキ層は、550nmより長波長領域の光に対して高い反射率を有するが、520nm付近の光では急激に反射率が低下し、それ以下の短波長領域においては光反射率が低くなる。
【0020】
そのため、Auメッキ層は、赤、橙、黄、黄緑といった長波長領域の光に対しては反射率が高いが、青緑、青といった短波長領域の光に対しては反射率が低い。よって、従来の青色LED素子を発光源とする青色半導体発光装置や、青色光の混合光を照射光とする半導体発光装置(例えば、白色半導体発光装置)においては、光取り出し効率の高効率化は困難であった。
【0021】
本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的は、光取り出し効率が高く、且つ照射光の配光特性の精度及び再現性が良好な半導体発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本願の第1の発明は、表面に導体パターンを形成したセラミック製の基板と、凹部を有し前記凹部内に一箇所以上貫通孔を設けたセラミック製の反射枠とを貼着してパッケージを形成し、該パッケージの前記反射枠の凹部内に載置した半導体発光素子と前記基板の表面の導体パターンとを、前記貫通孔を挿通するボンディングワイヤを介して電気的に接続したことを特徴とする半導体発光装置である。
【0023】
また本願の第2の発明は、上記第1に発明において、前記反射枠の光反射率が、前記基板の光反射率より高いことを特徴とする半導体発光装置である。
【0024】
また本願の第3の発明は、上記本願の第1又は第2の発明において、前記貫通孔内を、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、ジルコニウム、酸化アルミニウムから選択される1種以上の粉末と透光性樹脂とを含むコーティング樹脂で充填したことを特徴とする半導体発光装置である。
【0025】
また本願の第4の発明は、上記本願の第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記反射枠の凹部内の半導体発光素子を載置する領域を、前記凹部内の底面より上方に突出する突出部に設け、前記凹部内の前記半導体発光素子を載置する面よりも低い部分を、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、ジルコニウム、酸化アルミニウムから選択される1種以上の粉末と透光性樹脂とを含むコーティング樹脂で充填したことを特徴とする半導体発光装置である。
【0026】
また本願の第5の発明は、上記本願の第3又は第4の発明において、前記反射枠の貫通孔内に、前記コーティング樹脂で封止された静電気放電保護素子(以下、ESD保護素子と称する)が搭載されたことを特徴とする半導体発光装置である。
【0027】
また本願の第6の発明は、上記本願の第3〜第5の発明において、前記コーティング樹脂中の前記粉末の含有量が、0.3〜50重量%であることを特徴とする半導体発光装置である。
【0028】
また本願の第7の発明は、上記本願の第1〜第6の発明において、さらに前記反射枠の凹部内を、透光性樹脂、又は蛍光体を含有する透光性樹脂で充填したことを特徴とする半導体発光装置である。
【0029】
また本願の第8の発明は、上記本願の第1〜第7のいずれか1つの発明において、前記半導体発光素子を、前記反射枠の凹部底面の中心軸を中心とする同一円に沿って等間隔で配置したことを特徴とする半導体発光装置である。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、表面に導体パターンを形成したセラミック製の基板と、凹部を有し前記凹部内に貫通孔を設けたセラミック製の反射枠とを貼着してパッケージを形成し、該パッケージの前記反射枠の凹部内に載置した半導体発光素子を前記基板の表面の導体パターンとを、前記貫通孔を挿通するボンディングワイヤを介して電気的に接続した半導体発光装置に関するものである。
【0031】
その結果、基板及び導体パターンに起因する光学的な不具合が最低限にまで抑制されると共に、半導体発光素子から放出された光の取り出し効率が高められ、半導体発光装置の高輝度化及び安定した輝度、色調を維持できる。
【0032】
また、本発明における半導体発光装置に配光制御用の光学レンズを用いる場合、光学レンズは半導体発光素子を載置する反射枠に取り付けるため、半導体発光素子と光学レンズとの位置関係はほとんど半導体発光素子の載置精度のみによって決まる。
【0033】
そのため、半導体発光素子と光学レンズとの位置関係を、高精度に且つ再現性良く確保することができ、照射光の配光特性の精度及び再現性を大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係るパッケージの分解図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るパッケージの組立図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るパッケージの説明図である。
【図4】同じく、本発明の一実施形態に係るパッケージの説明図である。
【図5】同じく、本発明の一実施形態に係るパッケージの説明図である。
【図6】本発明の一実施形態の上面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態の説明図である。
【図9】本発明の光学レンズを用いた場合の説明図である。
【図10】本発明の他の実施形態の説明図である。
【図11】同じく、本発明の他の実施形態の説明図である。
【図12】同じく、本発明の他の実施形態の説明図である。
【図13】本発明の一実施形態における半導体発光素子の実装に係る説明図である。
【図14】同じく、本発明の他の実施形態における半導体発光素子の実装に係る説明図である。
【図15】同じく、本発明の他の実施形態における半導体発光素子の実装に係る説明図である。
【図16】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図1〜図15を参照しながら詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明を説明するものであり、本発明は何らこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0036】
図1に示すように、本発明の半導体発光装置におけるパッケージ2は、基板10、反射枠20及び接着部材30の3つの部分によって構成されている。
【0037】
パッケージ2を構成する基板10は、廉価なアルミナセラミックからなるセラミック製の基板を用いることができる。該基板10には、上面から側面に延びる独立した2つの導体パターン11a、11bが形成されており、導体パターン11a、11bの表面にはAg(銀)又はAu(金)のメッキ層が設けられている。この導体パターン11a、11bは外部接続端子及び回路配線等の機能を有している。
【0038】
反射枠20は、ガラスフリットとアルミナとの混合物からなるセラミック製の反射枠を用いることができる。このセラミック製反射枠20はセラミック製基板10よりも高い光反射率を有することが好ましい。また、反射枠20は凹部21を有し、凹部21の平板状の底部22には所定の形状で底部22を貫通する貫通孔23が設けられている。
【0039】
なお、基板10と反射枠20とはその形状及び光学機能の違いから作製方法が異なる。基板10はグリーンシートを焼成してその焼成体上に導体パターン11a、11bを形成するものであり、反射枠20はセラミックの原料粉末をプレス成形してその成形品を焼成して焼成体を得るものである。
【0040】
そして、基板10と反射枠20とを、接着部材30を用いて貼着することにより、図2に示すようなパッケージ2を形成する。このとき、接着部材30としては、両面接着テープなどのシート状の部材を用いても良く、あるいは基板10にペースト状の接着剤を印刷した接着剤層を用いてもよい。
【0041】
ところで、反射枠20において、凹部21の底部22の下面(基板10側の面)と接着部材30が貼着される面との上下方向の位置関係は、図3のように、底部22の下面22aと接着部材30が貼着される面22bが面一にある状態が好ましい。あるいは図4のように、接着部材30を貼着する面22bに対して、底部22の下面22aが上方(基板10と反対側の方向)にある状態が好ましい。つまり、底部22の下面22aは、接着部材30が貼着される面22bより基板10側に突出しない状態にあることが好ましい。
【0042】
但し、図5のように、底部22の下面22aが、接着部材30が貼着される面22bより基板10側に突出した場合は、接着部材30を用いて基板10と反射枠20とを貼り合わせたときに、底部22の下面22aが基板10の表面10aに当接するか、あるいは下面22aが表面10aから浮いた状態となるように、下面22aの突出する高さ又は接着部材30の厚みを調整すればよい。これにより、基板10と反射枠20とを貼りあわせたときに、底部22の突出部に起因する接着力の低下が防止され、基板10と反射枠20との強固な貼着状態が確保できる。
【0043】
図6及び図7は、上記構成のパッケージを用いて組み立てた半導体発光装置の構造を示している。図6は上面図、図7は図6のA−A断面図である。
【0044】
なお、本実施形態は、発光源となる半導体発光素子3(具体例としてLED素子が挙げられ、以下、LED素子と称する)を6個使用し、すべてのLED素子3のアノード電極同士及びカソード電極同士を電気的に接続した並列接続の回路構成の場合を示した。
【0045】
発光源となる6個のLED素子3は、反射枠20の凹部21内の所望の位置に接着層(図示せず)を介して載置する。
【0046】
前記LED素子3は、素子の下部(反射枠20の凹部21内の底部22に接着層を介して固定される側の部分)が絶縁性のサファイア基板であり活性層がInGaNのものを用いることができる。また、素子のアノード電極及びカソード電極が、いずれも素子の上部に形成されたものを用いることができる。その具体例として青色発光LED素子が挙げられる。
【0047】
すべてのLED素子3のアノード電極及びカソード電極は、凹部21の底部22を貫通する貫通孔23を挿通するボンディングワイヤ4を介して導体パターン11a又は11bに、並列回路を構成するように電気的に接続する。
【0048】
そして、凹部21内に、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の透光性樹脂を充填して、凹部21内、搭載されたすべてのLED素子3及びすべてのボンディングワイヤ4を樹脂封止する。なお、LED素子の光源光と異なる色調の光が必要とされる場合には、透光性樹脂5に所望の色調の蛍光を発する一種又は複数種の蛍光体を適宜混合させた透光性樹脂5を用いることもできる。
【0049】
以上のように、本発明の半導体発光装置1は、LED素子3を凹部21内の底部22に載置し、LED素子3の各電極と基板10の導体パターン11a、11bとを、凹部21内の底部22に設けられた貫通孔23を挿通するボンディングワイヤ4を介して接続する。
【0050】
従って、図8のように、この貫通孔23の大きさを、ワイヤボンディング時の作業領域とボンディングワイヤ4の挿通領域とを兼ねる必要最小限の大きさにすることにより、基板10の表面10a、及び基板10に形成された導体パターン11a、11bの多くの部分を、底部22で覆い隠すことができる。これにより、基板表面、導体パターン、及び導体パターン表面のメッキ層による光学的な悪影響を最低限に抑制することができる。
【0051】
それと同時に、基板10より良好な光反射率を有するセラミック材料からなる凹部21の底部22が最大限の広さに確保されるため、LED素子3から放出された光が底部22によって効率よく反射されて有効に活用される。よって、LED素子3から放出された光の取り出し効率が高くなり、半導体発光装置1を高輝度化できる。
【0052】
つまり、半導体発光装置を上述した構造とすることにより、光の取り出し効率が高く高輝度で、且つ照射光量、輝度及び色調の経時変化が少ない半導体発光装置が実現できる。
【0053】
なお、上述した半導体発光装置はそのままでも光源として使用できるが、例えば、高光度化を図るために集光用の光学レンズを取り付けて狭指向性の照射光を得ることもできる。
【0054】
その場合は、図9(a)のように、まず個別に作製した半導体発光装置1と光学レンズ40を準備する。光学レンズ40は、所望の配光特性が得られるように、半導体発光装置1側の光入射面41及び照射方向側の光出射面42のそれぞれを適切な形状にする。また、半導体発光装置1及び光学レンズ40には、それぞれ互いに嵌合及び位置合わせのための嵌合部6、43を設けることができる。
【0055】
その後、図9(b)のように、半導体発光装置1の嵌合部6と光学レンズ40の嵌合部43とを嵌着して、所望の配光特性を有する半導体発光装置を提供する。
【0056】
このとき、LED素子3と光学レンズ40との位置ずれは、底部22上におけるLED素子3の載置精度のみによって決まる。すなわち、光学レンズ40はLED素子3を実装した反射枠20に取り付けるため、基板10と反射枠20との貼着位置精度に影響されない。
【0057】
そのため、LED素子3を凹部21内の底部22に載置する際、例えば画像認識によって、反射枠20の所定の位置を基準とするLED素子3の位置決めを行うことにより、底部22上の所定の位置に高精度で載置でき、LED素子3と光学レンズ40との位置関係を高精度に且つ再現性良く確保できる。
【0058】
次に、上述した半導体発光装置を基本構成とする他の実施形態について、図10〜図12を参照しながら説明する。
【0059】
図10を実施形態とする半導体発光装置1は、凹部21内の底部22のLED素子を載置した面より低い部分をコーティング樹脂7で充填している。前記コーティング樹脂7は、光反射性及び電気絶縁性を有する粉末を透光性樹脂に混合したものである。
【0060】
基板10及び基板10の表面に形成された導体パターン(図示せず)をコーティング樹脂7で被覆することにより、これらの部分の光反射率を向上できる。また、導体パターン表面にメッキ層を設けた場合においても、メッキ層の変色や波長依存性による光取り出し効率の低下を防止できる。従って、コーティング樹脂7は、硬化後の光反射率が、基板10、導体パターン、及び導体パターン表面のメッキ層よりも高くなることが好ましい。
【0061】
なお、光反射性及び電気絶縁性を有する粉末としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、ジルコニウム、酸化アルミニウム等を用いることができる。また、コーティング樹脂7に用いる透光性樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。コーティング樹脂における粉末の含有量が0.3重量%未満の場合、硬化後の光反射率が低いことがあり好ましくない。一方、コーティング樹脂7における粉末の含有量が50重量%を超える場合、硬化前のコーティング樹脂7の粘度が高くなり充填時の作業性が低下することがあり好ましくない。従って、コーティング樹脂7における粉末の含有率は、0.3〜50重量%の範囲内で反射光学特性や作業性を考慮して適宜決定することが好ましく、1〜30重量%の範囲内で決定することがより好ましい。
【0062】
図11を実施形態とする半導体発光装置1は、反射枠20の凹部21内の底部22の厚みを部分的に変えたものである。具体的には、凹部21内において、LED素子3を載置する領域とその近傍を他の領域(底部22)よりも上方に突出する突出部24とする。すなわち、凹部21内において、LED素子3を載置する面がLED素子3を載置しない面よりも高い位置となるようにする。そして、凹部21内の突出部24よりも低い部分をコーティング樹脂7で充填する。
【0063】
つまり、反射枠20の凹部21内においては、突出部24のLED素子3を載置する面より低い全ての底部22をコーティング樹脂7で被覆する。
【0064】
本実施形態は、特に、反射枠20の凹部21内に複数の貫通孔23を設けた半導体発光装置1を製造する場合に好適である。凹部21内の複数の貫通孔23にコーティング樹脂7を充填する際、基板10と底部22とが当接しているか、あるいは両者間に隙間があってもその隙間が極めて狭い場合、一箇所の貫通孔23からコーティング樹脂7を充填しても他の貫通孔23までは浸入しない。そのため、個々の貫通孔23に対してコーティング樹脂7を充填する作業が必要となる。
【0065】
それに対し、図11に例示した本実施形態では、凹部21内の貫通孔23に適量のコーティング樹脂7を充填すれば、LED素子3が載置された突出部24の上面22cより低い領域を一括して充填することができる。これによってコーティング樹脂7の充填作業が簡略化され生産効率が向上する。
【0066】
図12に例示する半導体発光装置1は、上記2例の実施形態に組み込むことができる。例えば、図10の構成を基本構成とし、基板10の導体パターン(記載せず)上にESD保護素子8を実装してコーティング樹脂7により樹脂封止することができる。
【0067】
白色半導体発光装置を作製する場合、発光源となるLED素子3に、例えばInGaN系の青色LED素子を使用することがある。InGaN系の青色LED素子は、静電気放電に対して弱く、製造工程や製品の取り扱い中に発生した静電気によって破損する恐れがある。
【0068】
そこで、図12に例示した本実施形態のように、半導体発光装置1にESD保護素子8を搭載することにより、静電気放電に起因するLED素子3の破損を防止し、半導体発光装置1の製造時の歩留まり及び信頼性を高めることができる。
【0069】
ESD保護素子は、一般的に、双方向ツェナーダイオードやバリスタをLED素子に並列に設けたり、ツェナーダイオードを逆並列に設けたりしたものである。
【0070】
本発明においてESD保護素子8を用いる場合、ESD保護素子8を貫通孔23内に載置すると共に、コーティング樹脂7で被覆することが好ましい。ESD保護素子8をコーティング樹脂7で被覆しない場合、ESD保護素子8がLED素子3から放出された光を遮り配光に悪影響を及ぼす恐れがある。そのため、貫通孔23内にコーティング樹脂7を充填し、ESD保護素子8を被覆すると共に良好な配光特性を確保することが好ましい。
【0071】
また、ESD保護素子8が双方向ツェナーダイオードやツェナーダイオードの場合、ESD保護素子8に光が照射されると、光電効果によってリーク電流が増加しツェナー特性が悪化する恐れがある。特に、半導体発光装置1が屋外で使用される場合、太陽光の中の赤外線波長領域の光はツェナー特性の悪化を招きESD保護機能を低下させる。そのため、本実施形態のように、ESD保護素子8を、光反射性及び電気絶縁性を有する粉末を含有するコーティング樹脂7で樹脂封止し遮光することが好ましい。これにより、ESD保護機能の低下を防止して信頼性の高い半導体発光装置を実現できる。
【0072】
さらに、本発明において、反射枠20の凹部21内に透光性樹脂を充填する場合には、蛍光体を含有する透光性樹脂を用いることができる。前記蛍光体としては、YAG系蛍光体、オルトシリケート系蛍光体、窒化物系蛍光体等を用いることができる。蛍光体の配合量としては、透光性樹脂100重量部に対し、5〜30重量部用いることが好ましい。
【0073】
本発明におけるLED素子の実装数は、LED素子の発光色の種類、半導体発光装置としての明るさ、LED素子の実装領域の大きさ等の要求特性や設計条件に基づいて任意に設定できるものである。従って、本発明の半導体発光装置に実装されるLED素子は、6個よりも多い場合も6個より少ない場合もある。
【0074】
図13〜図15は、LED素子3の実装数の例として、それぞれ1個(図13参照)、2個(図14参照)、3個(図15参照)実装したときのLED素子3の配置状態を示したものである。LED素子3の数が奇数であっても偶数であっても、全てのLED素子3は反射枠20の凹部底面の中心軸Xを中心とする同一円に沿って等間隔で配置する。これにより、半導体発光装置1からの照射光の光量分布あるいは色調分布が、偏らないで均一となる。
【符号の説明】
【0075】
1・・・ 半導体発光装置
2・・・ パッケージ
3・・・ 半導体発光素子(LED素子)
4・・・ ボンディングワイヤ
5・・・ 封止樹脂
6・・・ 嵌合部
7・・・ コーティング樹脂
8・・・ ESD保護素子
10・・・ 基板
10a・・・ 表面
11・・・ 導体パターン
11a・・・ 導体パターン
11b・・・ 導体パターン
20・・・ 反射枠
21・・・ 凹部
22・・・ 底部
22a・・・ 底部下面
22b・・・ 接着部材貼着面
22c・・・ 底部上面
23・・・ 貫通孔
24・・・ 突出部
30・・・ 接着部材
40・・・ 光学レンズ
41・・・ 光入射面
42・・・ 光出射面
43・・・ 嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に導体パターンを形成したセラミック製の基板と、凹部を有し前記凹部内に一箇所以上貫通孔を設けたセラミック製の反射枠とを貼着してパッケージを形成し、
該パッケージの前記反射枠の凹部内に載置した半導体発光素子と前記基板の表面の導体パターンとを、前記貫通孔を挿通するボンディングワイヤを介して電気的に接続したことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
前記反射枠の光反射率が、前記基板の光反射率より高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記貫通孔内を、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、ジルコニウム、酸化アルミニウムから選択される1種以上の粉末と透光性樹脂とを含むコーティング樹脂で充填したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記反射枠の凹部内の半導体発光素子を載置する領域を、前記凹部内の底面より上方に突出する突出部に設け、前記凹部内の前記半導体発光素子を載置する面よりも低い部分を、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、ジルコニウム、酸化アルミニウムから選択される1種以上の粉末と透光性樹脂とを含むコーティング樹脂で充填したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記反射枠の貫通孔内に、前記コーティング樹脂で封止された静電気放電保護素子が搭載されたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記コーティング樹脂中の前記粉末の含有量が、0.3〜50重量%であることを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
さらに前記反射枠の凹部内を、透光性樹脂、又は蛍光体を含有する透光性樹脂で充填したことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記半導体発光素子を、前記反射枠の凹部底面の中心軸を中心とする同一円に沿って等間隔で配置したことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の半導体発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−129632(P2011−129632A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285321(P2009−285321)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】