説明

半導体素子、撮像素子、撮像モジュール、撮像装置、並びに、製造装置および方法

【課題】パッドの腐食を抑制することにより、金属材料とパッドとの接続性を向上させることができるようにする。
【解決手段】本開示の半導体素子は、内部回路の外部端子となる電極と、前記電極の表面に形成され、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜とを備える。本開示は、半導体素子、撮像素子、撮像モジュール、撮像装置、並びに、製造装置および方法に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体素子、撮像素子、撮像モジュール、撮像装置、並びに、製造装置および方法に関し、特に、パッドの腐食を抑制することにより、金属材料とパッドとの接続性を向上させることができるようにした半導体素子、撮像素子、撮像モジュール、撮像装置、並びに、製造装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置へ通電するために、通常、半導体装置には電極(パッド)が設けられている。パッドの材料には、一般的に、アルミニウム(Al)またはシリコン(Si)、銅(Cu)などを含有したアルミニウム合金が用いられている。そのパッドは外部のボード基板、パッケージ、チップなどの部品と接続される。外部装置の接続には、金(Au)を主体としたワイヤーボンディング(WB)、錫(Sn)を主体とした半田リフローなどが用いられている。
【0003】
このように、パッドは、金属材料(Au, Snなど)を通して、半導体装置と外部装置との電気的な接続を行う機能を有しており、パッドと金属材料との接続性には十分に注意を払う必要があった。
【0004】
パッドの主体となるアルミニウムは、比較的融点が低い材料で、酸、アルカリに溶解する材料であるため、腐食を起こしやすかった。以下に腐食の例を説明する。
【0005】
(1) 析出腐食
半導体装置の製造では、一般的に、パッド電極を含む金属形成、水分などの進入を防止する保護膜形成、最後にパッド(電極)となる部分のみ開口する工程でパッドは形成される。パッド開口時においては4フッ化メタン(CF4)などのフッ素(F)の含有されたガス系が用いられる。そのため、パッド表面及び表面近傍にはフッ素(F)が存在する。フッ素(F)の存在により、パッドの主成分であるアルミニウム(Al)とフッ素(F)の反応物が成長し、異物としてパッドに残存する恐れがあった(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
(2) ガルバニック腐食
従来、エレクトロマイグレーション(EM)やストレスマイグレーション(SM)などの配線信頼性を向上させるために、主成分のアルミニウム(Al)の中に、シリコン(Si)、銅(Cu)などの金属を含有させることが一般的であった。特に銅(Cu)を含有させる配線材料が広く使用されていた。アルミニウム(Al)と銅(Cu)にはその材料固有で有する標準電極電位を有しており、両金属が導電性を有する水溶液中に存在すると、卑なる金属であるアルミニウム(Al)が溶解する恐れがあった(ガルバニック腐食)。半導体工程においては、個片化工程であるダイシング工程において発現する現象であり、アルミニウム(Al)が溶解するだけでなく、溶解したアルミニウム(Al)がシリコンなどのダイシング切削屑と化合物を形成し、絶縁性の高い異物がパッド表面に付着する恐れがあった(例えば、非特許文献2参照)。
【0007】
このように、半導体装置と外部装置とを電気的に接続するパッドに異物や欠損(アルミニウムの溶解)が存在すると、ワイヤーボンディングや半田バンプなどの金属材料とパッドとの接続性を劣化させ、高抵抗化や信頼性不良になる恐れがあった。
【0008】
そこで、特開2005−150508号公報(以下、特許文献1と称する)には、析出腐食に関して、開口後にアルカリ溶液で洗浄を行う手法が開示されている。また、特開2009−27030号公報(以下、特許文献2と称する)には、ガルバニック腐食に関して、ダイシング装置のパラメータの最適化などで対応する方法が開示されている。しかしながらこれらの方法では、一方の問題点に対しては解決できるが、他方の問題点に対しては解決が困難であった。したがって、両方の問題点を解決するためには、両方の方法を適用する必要があり、その場合、製造の工程数やコストが増大する恐れがあった。
【0009】
これに対して、特開2010−147357号公報(以下、特許文献3と称する)には、パッド部開口後、ドライエッチング処理時のエッチングガスを堆積させて成膜したフロロカーボンを形成する手法が開示されている。
【0010】
このフロロカーボンは、絶縁膜をエッチング除去する際に用いたフッ素系ガスを堆積することにより形成される保護膜であり、耐湿性を有しているので、パッド電極表面に残留されたフッ素成分と大気中の水分と反応することを防ぐことができ、パッド電極の腐食を抑制することができる。このフロロカーボンの膜厚は、耐湿性と撮像特性を両立させるために50乃至100nm程度とされる。フロロカーボンの膜厚を50nm未満とした場合には、耐湿性が充分では無く、パッド電極表面に残留したフッ素成分と大気中の水分との接触を充分に断つことが困難になる恐れがある。逆に、フロロカーボンの膜厚を100nmよりも厚くした場合、パッド電極とワイヤーボンド若しくはバンプとの間の接合強度が低下し、更に、パッド電極とワイヤーボンド若しくはバンプとの間の電気伝導性に悪影響を及ぼしてしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Investigation and Failure Analysis of "Flower-like" Defects on Microchip Aluminum Bondpads in Wafer Fabrication, ICSE2006 Proc.2006, pp626-629
【非特許文献2】A Study on Al Bondpad Grain Boundaries and Galvanic Corrosion in Wafer Fabrication, ICSE2004 Proc. 2004, Kuala Lumpur, Malaysia
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、パッド表面を薄膜で覆ってしまう構造の場合、水分を起因として生成する析出腐食、ガルバニック腐食を抑制することができる。しかしながら、パッド表面に比較的厚い(50nm)絶縁物を形成することは、ワイヤーボンディング、半田バンプとの接合性が低下する恐れがあった。
【0013】
例えば、パッド上に半田バンプを形成する場合、パッド上にUBM(アンダーバリアメタル)及びシード層が形成され、マスク形成され、半田バンプ材がめっきにてパッド内にのみ形成される。パッド表面に絶縁物が存在すると、パッドとUBMとの電気的な接続性を確保できない恐れがある。
【0014】
そのため、UBM形成前に絶縁物を除去する工程が行われる。固体撮像素子の場合、表面には有機系材料(例えば、レンズ、反射防止膜など)が形成されている場合が多い。フロロカーボンは、カーボン(C)、フッ素(F)をベースにした有機材料である。ウエット(湿式)の手法で除去するならば強アルカリ薬液が用いられ、ドライ(乾式)の手法ならばバックスパッタリングなどの物理的手法で用いられることになる。
【0015】
しかしながら、いずれの手法の場合も、フロロカーボンの保護膜の、固体撮像素子の最表面層に存在する有機系材料との選択比が略1となる等、選択比を十分に確保することが困難であるため、ロバストな製造フロー構築は困難であった。
【0016】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、パッドの腐食を抑制することにより、金属材料とパッドとの接続性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示の一側面は、内部回路の外部端子となる電極と、前記電極の表面に形成され、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜とを備える半導体素子である。
【0018】
前記保護膜は、前記電極を含む前記半導体素子の表面全体に形成されるようにすることができる。
【0019】
前記保護膜は、四塩化シリコンガスと酸素ガスが混入されたガス系にて形成されるようにすることができる。
【0020】
前記保護膜は、シリコンおよび酸素を主体とする薄膜であるようにすることができる。
【0021】
前記保護膜は、前記保護膜を前記電極から剥離せずに、金属材料を前記電極に接合可能な程度の厚さに形成されるようにすることができる。
【0022】
本開示の他の側面は、入射光を光電変換する光電変換素子と、前記光電変換素子に入射される前記入射光を前記光電変換素子に集光するレンズと、内部回路の外部端子となる電極と、前記電極および前記レンズの表面に形成され、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜とを備える撮像素子である。
【0023】
前記保護膜の屈折率は、前記レンズの屈折率より小さいようにすることができる。
【0024】
前記レンズ表面に、屈折率が前記レンズよりも小さい薄膜である反射防止膜がさらに形成され、前記保護膜は、前記反射防止膜の表面に形成されるようにすることができる。
【0025】
前記保護膜の屈折率は、前記反射防止膜の屈折率より小さいようにすることができる。
【0026】
前記保護膜は、前記電極を露出させる開口部の側壁にもさらに形成されるようにすることができる。
【0027】
本開示のさらに他の側面は、入射光を光電変換する光電変換素子と、前記光電変換素子に入射される前記入射光を前記光電変換素子に集光するレンズと、内部回路の外部端子となる電極と、前記電極および前記レンズの表面に形成され、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜とを有する撮像素子と、前記撮像素子を収納するパッケージとを備える撮像モジュールである。
【0028】
本開示のさらに他の側面は、入射光を光電変換する光電変換素子と、前記光電変換素子に入射される前記入射光を前記光電変換素子に集光するレンズと、内部回路の外部端子となる電極と、前記電極および前記レンズの表面に形成され、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜とを有する撮像素子が収納されたパッケージを含む撮像モジュールを備える撮像装置である。
【0029】
本開示のさらに他の側面は、内部回路の外部端子となる電極を備える半導体素子を生成する半導体素子生成部と、前記半導体素子生成部により生成された前記半導体が有する前記電極の表面に、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜を形成する保護膜形成部とを備える製造装置である。
【0030】
前記保護膜形成部は、四塩化シリコンガスと酸素ガスが混入されたガス系を分解させることにより、前記電極の表面に前記保護膜を形成することができる。
【0031】
前記保護膜形成部は、前記半導体素子が有する有機膜が破壊されない程度の温度で、前記四塩化シリコンガスと前記酸素ガスが混入されたガス系を分解させることができる。
【0032】
前記保護膜形成部は、前記四塩化シリコンガスと前記酸素ガスが混入されたガス系をプラズマにより分解させることができる。
【0033】
前記半導体素子生成部により生成された前記半導体が有する前記電極を露出させるように開口する開口部をさらに備え、前記保護膜形成部は、前記開口部により開口され、露出された前記電極の表面に、前記保護膜を形成することができる。
【0034】
前記保護膜形成部は、前記電極の表面だけでなく、前記半導体素子が有する、入射光を光電変換素子に集光するレンズの表面にも前記保護膜を形成することができる。
【0035】
前記保護膜形成部は、前記電極の表面だけでなく、前記半導体素子が有する、入射光を光電変換素子に集光するレンズの表面に形成される、屈折率が前記レンズよりも小さい薄膜である反射防止膜の表面にも前記保護膜を形成することができる。
【0036】
本開示のさらに他の側面は、また、製造装置の製造方法であって、半導体素子生成部が、内部回路の外部端子となる電極を備える半導体素子を生成し、保護膜形成部が、生成された前記半導体が有する前記電極の表面に、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜を形成する製造方法である。
【0037】
本開示の一側面においては、内部回路の外部端子となる電極と、電極の表面に形成され、外部水分が接触しないように電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜とが備えられる。
【0038】
本開示の他の側面においては、入射光を光電変換する光電変換素子と、光電変換素子に入射される入射光を光電変換素子に集光するレンズと、内部回路の外部端子となる電極と、電極およびレンズの表面に形成され、外部水分が接触しないように電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜とが備えられる。
【0039】
本開示のさらに他の側面においては、入射光を光電変換する光電変換素子と、光電変換素子に入射される入射光を光電変換素子に集光するレンズと、内部回路の外部端子となる電極と、電極およびレンズの表面に形成され、外部水分が接触しないように電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜とを有する撮像素子と、撮像素子を収納するパッケージとが備えられる。
【0040】
本開示のさらに他の側面においては、入射光を光電変換する光電変換素子と、光電変換素子に入射される入射光を光電変換素子に集光するレンズと、内部回路の外部端子となる電極と、電極およびレンズの表面に形成され、外部水分が接触しないように電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜とを有する撮像素子が収納されたパッケージを含む撮像モジュールとが備えられる。
【0041】
本開示のさらに他の側面においては、内部回路の外部端子となる電極を備える半導体素子が生成され、生成された半導体が有する電極の表面に、外部水分が接触しないように電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜が形成される。
【発明の効果】
【0042】
本開示によれば、パッドの腐食を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本技術を適用した表面照射型の撮像素子の主な構成例を示す図である。
【図2】パッドの腐食を説明する図である。
【図3】保護膜膜圧と接合強度の関係の例を説明する図である。
【図4】膜厚と膜密度の関係の例を説明する図である。
【図5】保護膜膜種と接合強度の関係の例を説明する図である。
【図6】側壁の保護膜について説明する図である。
【図7】本技術を適用した裏面照射型の撮像素子の主な構成例を示す図である。
【図8】本技術を適用した製造装置の主な構成例を示す図である。
【図9】製造処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図10】製造工程を説明する図である。
【図11】製造工程を説明する図である。
【図12】製造工程を説明する図である。
【図13】製造工程を説明する図である。
【図14】製造工程を説明する図である。
【図15】製造工程を説明する図である。
【図16】製造工程を説明する図である。
【図17】本技術を適用した表面照射型の撮像素子の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本技術を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(撮像素子)
2.第2の実施の形態(製造装置・製造方法)
3.第3の実施の形態(撮像素子)
【0045】
<1.第1の実施の形態>
[撮像素子]
図1は本技術を適用した半導体素子である撮像素子の主な構成例を示す図である。図1には、撮像素子100の断面図が示されている。撮像素子100は、表面照射型の撮像素子であり、図1に示されるように、半導体基板110、配線層120、絶縁層130、パッシベーション層140、平坦化層150、カラーフィルタ160、およびマイクロレンズ170等の各層が積層される。
【0046】
半導体基板110には、入射光を光電変換して得られた電荷を蓄積するフォトダイオード111が画素毎に形成される。
【0047】
配線層120には、フォトダイオード111から電荷を抽出する回路の配線121が、多層構造に形成される。
【0048】
フォトダイオード111が形成される画素領域においては、配線層120の上に、絶縁層130、パッシベーション層140、平坦化層150、カラーフィルタ160、およびマイクロレンズ170等が積層される。
【0049】
また、配線層120の図中上側の、フォトダイオードが形成されない領域には、パッド181が形成される。パッド181は、配線層120に形成される回路(内部回路)を撮像素子100の外部の装置に接続するための外部端子となる電極である。つまりパッド181は、配線121に電気的に接続される。パッド181の素材は任意であるが、例えば、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、銅(Cu)などを含有したアルミニウム合金等が用いられている。
【0050】
パッド181は、図中上側に開口される。すなわち、図1に示されるように、パッド181の図中上側においては、絶縁層130乃至マイクロレンズ170が除去され、露出する。この開口部分(露出部分)に、金(Au)を主体としたワイヤーボンディング(WB)や、錫(Sn)を主体とした半田リフローが行われ、そのパッド181が外部のボード基板、パッケージ、若しくはチップなどの部品と接続される。
【0051】
このままだと、図2Aに示されるように、ダイシング工程等により、パッド181の露出部分が大幅に腐食する恐れがある。そこで、図1に示されるように、画素領域を含む撮像素子100の表面全体を覆うように、保護膜(保護層)182が形成される。
【0052】
この保護膜182は無機材料を主体としたものであり、大気中の水分、若しくは、製造工程において使用される水分等に代表される外部水分に対するブロッキング作用(防水効果・防湿効果)を有し、パッドの露出部の腐食を抑制することができる。
【0053】
図2はパッドの腐食の様子の例を示している。図2Aに示されるように、保護膜182が形成されていないパッドの場合、ダイシング工程によって、露出部分に大規模なガルバニック腐食が発生する。このガルバニック腐食により、ワイヤーボンディングや半田バンプ等の金属材料とパッド181との接合性が大幅に劣化する。
【0054】
これに対して、図1の例のように保護膜182が形成されるパッド181の場合、図2Bに示されるように、ダイシング工程が行われても、ガルバニック腐食が略発生しない。つまり、図2Bの場合、保護膜182によりダイシング工程で使用される純水がブロッキングされ、アルミニウム(Al)と銅(Cu)の異種金属によるガルバニック効果がほとんど発生しない。
【0055】
なお、実際には、後述するプローブ検査工程において、保護膜182の一部が破壊される。したがって、図2Bに示されるように、保護膜182が形成される場合であっても、パッドの一部(破壊された部分)は、腐食する。ただし、図2Aと比較して明らかなように、この場合、腐食する面積は、極めて小さく、ワイヤーボンディングや半田バンプ等の金属材料とパッド181との接合性に影響を及ぼすほどではない。
【0056】
なお、保護膜182の素材は、このような防水・防湿効果を有する無機材料であれば任意であるが、例えば、シリコンや酸素を主成分とした材料であってもよい。
【0057】
また、この無機材料の保護膜182の厚さは、望ましい結果が得られる所定の厚さに設定される。例えばフロロカーボンのような有機材料の保護膜の場合と比べて大幅に薄くすることができる。例えば、保護膜182の膜圧は、有機材料の保護膜の約10分の1程度とすることができる。
【0058】
保護膜182が薄すぎる場合、外部水分に対するブロッキング作用(防水効果や防湿効果)が不要に低減する恐れがある。また、保護膜182が厚すぎる場合、ワイヤーボンディングや半田バンプ等の金属材料とパッド181との接合性を不要に劣化させる恐れがある。
【0059】
この保護膜182の適切な膜圧は、保護膜182の材質などによって決定される。
【0060】
図3は保護膜膜厚に対する金属材料とパッド181との接合の強さ(接合強度)の例を示したものである。接合強度は、シェア接合強度と比例する単位であるurb.unitで示される。パッドが大きいボール径の場合、保護膜182の膜厚と、金属材料とパッド181との接合強度との関係は、例えば、図3Aに示されるグラフのようになる。図3Aのグラフにおいて、各縦線分は、それぞれ、各膜厚の接合強度のバラつきの幅(大きさ)を示し、各縦線分上の点は、それぞれ、各膜厚の接合強度の平均値が示されている。
【0061】
図3Aに示されるように、パッド181が大きいボール径の場合、保護膜182の膜厚が大きくなるに従い、金属材料とパッド181との接合強度の平均値とばらつきが大きくなる。
【0062】
また、パッド181が小さいボール径の場合、所定の膜厚において接合強度の平均値が小さくなったり、バラつきが小さくなったりする。安定した接合強度を得るためには、ばらつきは小さい方が望ましい。また、接合性を向上させるためには、接合強度は強い程よい。したがって、接合強度のばらつきがより小さく、かつ、接合強度の平均値がより大きくなる膜圧が適切な膜圧として選択される。
【0063】
なお、図1の例の場合、マイクロレンズ170上に保護膜182が形成されている。有機膜で形成されたマイクロレンズの屈折率は比較的大きい。これに対して、シリコンと酸素で構成された無機系材料の屈折率は、マイクロレンズ170の屈折率より小さい。したがって、マイクロレンズ170上に形成された保護膜182による、反射防止効果が期待できる。
【0064】
保護膜182の素材が無機材料であるので、保護膜182が形成される撮像素子100などの最表面層の有機材料(マイクロレンズ170)にダメージを与えずに半田バンプ形成を行うことができる。
【0065】
撮像素子100において、保護膜182は、パッドの露出部分だけでなく、上層に形成される有機膜のマイクロレンズ170の上にも、その表面を覆うように形成される。したがって、保護膜182は、有機膜(マイクロレンズ170)が耐えられる温度で形成する必要がある。
【0066】
半導体素子の生成において、成膜方法には、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)、ALD(Atomic Layer Deposition)、またはCoating(塗布)などがある。各成膜方法には、下記に示されるような制約条件がある。
【0067】
(1)ALD
比較的低温で形成し、膜厚制御も容易であるが、成膜速度が小さい。
(2)Coating
コンフォーマルな形成ができない。そのため、パッド内には多量の膜が形成される。
(3)CVD
一般的には、350-400℃の成膜温度であり、有機材料形成後に保護膜を形成することは難しい。200℃前後で形成する低温形成方法がある。
【0068】
無機膜の形成には、一般的に、CVD法が用いられるが、CVD法は350-400℃であり、マイクロレンズ170などの有機膜上に形成するには高すぎる温度である。
【0069】
そこで、四塩化シリコン(SiCl4)と酸素(O2)の混合ガスを100℃以下のプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)することにより、保護膜182の薄膜を形成するようにする。
【0070】
例えば、保護膜182は、以下のような条件で形成することができる。
【0071】
・パワー 350-800W,
・ガスフロー
四塩化シリコン 20-50sccm
酸素 30-100sccm
・ガス圧力 5-15mTorr
・温度 50-100℃
・成膜時間 4-15sec
【0072】
より具体的には、これらの各条件は、形成する保護膜182の膜厚の目標値(設定膜厚)に応じて調整する。
【0073】
成膜装置は一般的なCVD装置でよい。ドライエッチング装置もプラズマ生成装置であり、CVD装置と原理的には同じである。パッドをCF4などのフロロカーボン系のガスにてドライエッチングで開口した後、レジストをアッシング(O2プラズマ)にて剥離し、続いて、薄膜形成を行うことで、真空プロセスを大気ブレークすることなくでき、効率の良い製造工程になる。
【0074】
上記には、固体撮像素子のような比較的低温を必要とする半導体装置について記載したが、メモリー製品やロジック製品などの場合、400℃程度まで耐えられる膜で構成されている。その場合については、前述した350-400℃で形成可能なCVD法にて形成することが可能である。しかしながら、高温で形成されたCVD膜は非常に緻密な膜であり、膜質をコントロールすることが困難である。
【0075】
例えば、図4に膜密度を測定した結果を示す。図4の上側に示される高温で形成されたCVD膜の場合、図4の下側に示される本技術の保護膜182の場合と比較して膜密度が高くなってしまう。つまり、高温で形成されたCVD膜の場合、保護膜182の場合よりも金属材料とパッドの接合性が劣化する。
【0076】
また、膜種毎の接合強度を図5に示す。図5に示されるように、高温で形成されたCVD膜であるCVD酸化シリコンやCVD窒化シリコン膜種の場合、本開示の保護膜182の場合よりも、平均結合強度が低下し、かつ、ばらつきが大きい。つまり、保護膜182の場合の方が、高温で形成されたCVD膜の場合よりも、好適な接合強度が得られる。
【0077】
図4に示されるように、膜密度が大きくなると接合強度が劣化するため、その劣化分を膜厚で調整する必要があるが、300mmウエハまたはそれ以上のような大面積に均一な膜厚を形成することは非常に困難である。
【0078】
以上のように、撮像素子100において、パッド181開口後に保護膜182が形成されるため、パッド181に残存する僅かなフッ素(F)、または、アルミニウム(Al)と結合されたフッ化アルミニウム(AlFx)は、保護膜182のブロッキング作用により、大気中、または、製造工程中の水分との接触が抑制される。そのため、フッ素を起因とした析出腐食の成長が抑制され、外観的な異常や、接合を阻害するような異物の発生が抑制される。また、その保護膜182は非常に薄いので、その後に行われるワイヤーボンディングなどの接合性の劣化やパッド181の信頼性の低下を抑制することができる。
【0079】
また、保護膜182の存在により、ダイシング工程などの導電性液体(CO2含有の純水など)とパッド181との接触が抑制されるので、パッド181の材料として一般的に適用されているAlSiCu, AlCuなどのCuを含んだアルミニウム合金は、異種金属の存在によるガルバニック腐食の発生が抑制される。また、その保護膜182は非常に薄いので、その後に行われるワイヤーボンディングなどの接合性の劣化やパッド181の信頼性の低下を抑制することができる。
【0080】
また、図6に示されるように、保護膜182は、パッド開口部の側壁部分にも形成される(点線の楕円182Aおよび182Bで囲まれた部分)。
【0081】
このようにすることにより、例えば、大気放置時の水分などの画素領域への進入を抑制することができる。したがって、撮像素子100のデバイスとしての信頼性の向上が期待される。
【0082】
また、このようにすることにより、例えば、パッド開口部の側壁からの光入射を抑制することができる。したがって、撮像素子100は、光の回り込み等による誤動作の発生を抑制することが期待される。
【0083】
さらに、このようにすることにより、例えば、パッド181のエッチング工程において生成されるパッド開口部の側壁に付着したフロロカーボン系のデポから発生するF系物質を保護膜182で覆うことができる。したがって、撮像素子100は、パッド181の腐食(ハロゲンによる金属腐食)を抑制することができる。
【0084】
[裏面照射型の撮像素子]
なお、以上においては、本技術を適用した半導体素子の例として表面照射型の撮像素子を説明したが、本技術は、任意の半導体素子に適用することができる。つまり、保護膜182は、図1の撮像素子100に限らず、外部出力端子であるパッドを有するものであれば任意の半導体素子に形成することができる。
【0085】
例えば、保護膜182は、図7に示されるような裏面照射型の撮像素子に形成するようにしてもよい。図7の例の場合、撮像素子200は、土台となる半導体基板に対して、多層構造の配線層210、フォトダイオード221が形成される半導体基板220、カラーフィルタ230、およびマイクロレンズ240が積層される。
【0086】
また、撮像素子200には、撮像素子100の場合と同様に、保護膜182が、パッド181の開口部(露出部分)だけでなく、フォトダイオード221が形成される画素領域の、マイクロレンズ240上や、パッド開口部の側壁等にも形成される。
【0087】
この保護膜182が形成されることにより、撮像素子200は、撮像素子100の場合と同様に、ワイヤーボンディングなどの接合性の劣化やパッド181の信頼性の低下を抑制することができる。
【0088】
また、以上においては、撮像素子100がCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである場合について説明したが、これに限らず、撮像素子100はCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであってもよい。
【0089】
<2.第2の実施の形態>
[製造装置]
図8は、撮像素子100を製造する製造装置の主な構成例を示すブロック図である。図8に示されるように、製造装置300は、制御部301、入力部311、出力部312、記憶部313、通信部314、およびドライブ315を有する。また、製造装置300は、撮像素子製造部331、パッド開口部332、保護膜形成部333、特性測定部334、裏面研磨部335、および個片化部336を有する。
【0090】
制御部301は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等を有し、その他の各部を制御し、撮像素子100の製造に関する処理を行う。例えば、制御部301のCPUは、ROMに記憶されているプログラムに従って各種の処理を実行する。また、CPUは、記憶部313からRAMにロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAMにはまた、CPUが各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0091】
入力部311は、キーボード、マウス、タッチパネル、および外部入力端子などよりなり、ユーザ指示や外部からの情報の入力を受け付け、制御部301に供給する。出力部312は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイやLCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイ、スピーカ、並びに外部出力端子などよりなり、制御部301から供給される各種情報を画像、音声、若しくは、アナログ信号やデジタルデータとして出力する。
【0092】
記憶部313は、フラッシュメモリ等SSD(Solid State Drive)やハードディスクなどよりなり、制御部301から供給される情報を記憶したり、制御部301からの要求に従って、記憶している情報を読み出して供給したりする。
【0093】
通信部314は、例えば、有線LAN(Local Area Network)や無線LANのインタフェースやモデムなどよりなり、インターネットを含むネットワークを介して、外部の装置との通信処理を行う。例えば、通信部314は、制御部301から供給される情報を通信相手に送信したり、通信相手から受信した情報を制御部301に供給したりする。
【0094】
ドライブ315は、必要に応じて制御部301に接続される。そして、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア321がそのドライブ315に適宜装着される。そして、そのドライブ315を介してリムーバブルメディア321から読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部313にインストールされる。
【0095】
撮像素子製造部331乃至個片化部336は、制御部301に制御され、撮像素子100を製造する各工程の処理を行う。
【0096】
[製造処理の流れ]
図9のフローチャートを参照して、製造処理の流れの例を説明する。なお、適宜、図10乃至図16を参照して説明する。図10乃至図16は、製造処理の各工程の様子を説明する図である。なお、図10乃至図16は、製造される撮像素子(撮像素子400)の断面の一部の構成を模式的に示しており、説明に不要な部分は適宜省略している。
【0097】
製造処理が開始されると、ステップS101において、撮像素子製造部331は、制御部301に制御されて、撮像素子400を製造する。図10には、撮像素子400のパッド451の部分が示されている。図10に示されるように、撮像素子400は、基板層410、パッド451、パッシベーション層420、平坦化層430、図示せぬカラーフィルタ、およびレンズ層440が積層されている。
【0098】
撮像素子製造部331は、アルミニウム(Al)またはアルミニウム合金を形成した後、リソグラフィ及びドライエッチングによりパッド451を含む配線パターンを形成後、パッシベーション層420、および平坦化層430を順次形成する。そして、撮像素子製造部331は、その上部に、図示せぬカラーフィルタやレンズ層440を形成する。
【0099】
パッド451を構成する配線の主配線には、例えば、アルミニウム(Al)またはアルミニウム合金が用いられる。これらの主配線には、エレクトロマイグレーション(EM)、ストレスマイグレーション(SM)などの配線信頼性を考慮して、アルミニウム合金が用いられることが一般的である。アルミニウム合金には主材料のアルミニウムに1%(重量換算)以下のシリコン(Si)、銅(Cu)、チタン(Ti)などの金属が混入されている。一般的には、このようなアルミニウム合金AlSi、AlSiCu、またはAlCuなどが使用されている。また、パッド451にはアルミニウムまたはアルミニウム合金の主配線のほかに、アルミニウムまたはアルミニウム合金の上下層にチタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、チタンタングステン(TiW)、窒化タングステン(WN)などを代表とする高融点金属を含むバリアメタルが設けられる。なお、配線層の材質および構成は、任意であり、上述した例に限らない。
【0100】
上述したように、ガルバニック腐食は異種金属の標準電極電位の違いで発生することから、AlSi、AlSiCu、AlCuを代表とするアルミニウム合金で構成されたパッド電極にてガルバニック腐食が発生しやすい。
【0101】
パッシベーション層420には、例えば窒化シリコン(SixNy)が適用される。窒化シリコン(SixNy)単層でもよいが、ストレス緩和をするために酸化シリコン(SiO2)が積層されるようにしてもよい。
【0102】
図示せぬカラーフィルタは、シリコン基板に形成されたフォトダイオードに対して正確に対面関係にあることが望ましい。平坦化層430の1つの役割はフォトダイオードとカラーフィルタの対面性を上げることである。また、カラーフィルタの材質によるが、カラーフィルタの密着性向上も平坦膜の役割の一つである。カラーフィルタは赤、青、緑の3色を用いるのが一般的であるが、マツェンダ、シアン、イエローの3色でもかまわないし、4色以上であってもよい。カラーフィルタは所望する画像に合わせて材料を選択することができる。なお、図10においては、カラーフィルタの図示を省略しているが、パッド451が形成される領域にはカラーフィルタを残さないようにするのが一般的である。
【0103】
レンズ層440のマイクロレンズはカラーフィルタ上に形成される。基本的には、カラーフィルタとマイクロレンズも正確に対面関係にするが、例えば、画像内の画素間の補正にマイクロレンズの位置で補正することが可能であり、必ずしも正確な対面関係を必要するわけではない。図示は省略するが、例えば、3色のカラーフィルタに大きな段差(厚さの違い)がある場合、レンズ層440のマイクロレンズのフォトダイオードに対する対面性を確保するために平坦化膜がカラーフィルタ上に形成されるようにしてもよい。マイクロレンズの形成には、例えば、リフロー法、エッチバック法、およびインプリント法などがあるが、その形成方法は任意である。
【0104】
なお、図示は省略するが、マイクロレンズ(レンズ層440)の上に集光効率を向上させるための導波路構造が形成されるようにしてもよい。
【0105】
このようにレンズ層440が形成されると、ステップS102において、パッド開口部332は、制御部301に制御されて、図11に示されるように、撮像素子400のパッド451の上方を開口し、パッド451を上側に露出させる。
【0106】
より具体的には、パッド開口部332は、レジスト塗布形成後、リソグラフィにてパッド451のマスクを露光し、レジスト加工を行う。パッド451部のみレジスト開口された後、パッド開口部332は、ドライエッチングにより、レンズ層440、平坦化層430、およびパッシベーション層420をエッチングする。ドライエッチング終了後、パッド開口部332は、表面に残されたレジストをアッシング、または、湿式手法によりレジスト剥離を行う。
【0107】
エッチング後の断面を示す図を図11に示す。有機系膜、無機系膜の複数層を一括してエッチングすることが望ましいが、それぞれの膜ごと加工してもかまわない。エッチングガスには、CF4, C2F6, C3F8, CHF3, SF6などのフッ素(F)系ガスを主体とし、酸素(O), アルゴン(Ar)などのガスを適宜導入してもよい。これらのガスはプラズマ化され、活性なイオン、ラジカルになり、被エッチング膜とケミカル反応し、エッチングされる。
【0108】
図11に示されるように、撮像素子400のパッド451の上方に開口部460が形成されると、処理はステップS103に進められる。
【0109】
ステップS103において、保護膜形成部333は、制御部301に制御されて、図12に示されるように、撮像素子400の最上位層の上から保護膜471を形成する。この処理(保護膜形成)により、開口部460でない部分のレンズ層440、開口部460のパッド451、および、開口部460の側壁部分の各表面に保護膜471が形成される。このように保護膜471を形成することにより、パッド451の露出部分が保護膜471により覆われる。つまり、パッド451が外部水分と接触しないように保護される。
【0110】
また、このように開口部460だけでなく、開口部460以外も一様に保護膜471を形成することにより、マスク処理等が不要になり、保護膜形成部333は、容易に保護膜471を形成することができる。
【0111】
なお、保護膜形成部333は、保護膜471を形成する前に、アルゴン(Ar)イオンによるバックスパッタリング(逆スパッタリング)を行った後、真空をブレークせずに保護膜を形成すると、接合性及び後述する測定時プローブ特性に有効な効果を与えることができる。一般に、アルミニウム(Al)は大気にさらすと、すぐに不動態層、すなわち、酸化アルミニウム層が形成される。酸化アルミニウム層は絶縁性を有しているので、その上層に形成される保護膜471とあわせた比較的厚い絶縁層が形成されることになってしまう。絶縁層はできる限り薄いほうが接合性などには良い方向であるので、このような酸化アルミニウム層の形成は望ましく無い。したがって、上述したように処理することにより、保護膜形成部333は、接合性およびプローブ特性を向上させることができる。
【0112】
なお、不動態層として形成される酸化アルミニウム層のパッド腐食の抑制効果は非常に小さいので、できるだけ除去したほうが望ましいが、必ずしも不動態層を除去しなければならないということではない。つまり、参加アルミニウム層が形成されていてもよい。
【0113】
ステップS104において、特性測定部334は、制御部301に制御されて、図13に示されるように、プローブ481を用いて特性測定を行う。この処理(プローブ測定)において、プローブ481は、パッド451に電気的に接触するように、開口部460のパッド451上に形成された保護膜471の一部を破壊する。
【0114】
パッド451の表面に形成された保護膜471は非常に薄いので測定のプローブ481がコンタクトされる際に、保護膜471は容易に破壊される。特に、保護膜471は膜密度も比較的小さいので、プローブコンタクトに弊害を及ぼすようなことはない。
【0115】
ステップS105において、裏面研磨部335は、制御部301に制御されて、図14Aに示されるように、撮像素子400に表面側からバックグラインド(BG)保護テープを貼り付け、図14Bに示されるように、基板層410の裏面側を研削する。
【0116】
この処理は、基板(シリコン)の薄肉化工程であり、最初に表面を保護するためのバックグラインド(BG)保護テープがウエハ表面に貼り付けられた後、ウエハの裏面、すなわち、基板の厚さの中でデバイス性能に寄与しない部分が除去される。薄肉化することにより、ウエハ/チップの軽量化、後述するパッケージの薄肉化を実現することができる。
【0117】
ステップS106において、個片化部336は、制御部301に制御されて、図15Aに示されるように、バックグラインド(BG)保護テープを剥離し、図15Bに示されるように、ウェハ491を複数のチップ492に個片化する。
【0118】
より具体的には、個片化部336は、薄肉化されたウエハをシートに貼り付けた後、前工程で行われたBG保護テープを剥離する。その後、個片化部336は、ダイシング装置(ソーイング装置)により、ウエハ491を個片化し複数のチップ492に分割する。
【0119】
ダイシングはダイアモンド砥粒が電着されたブレードによるカッティングにより行われる。ダイシングはブレードとウエハの摩擦による発熱防止、スムーズなカッティングなどを目的として、純水中で行われる。純水の比抵抗が高いと半導体装置は静電破壊するため、個片化部336は、純水に二酸化炭素(CO2)などを混入させ、比抵抗を低くする。
【0120】
AlとCuなどの異種金属を含むパッド451が比抵抗の低い純水に浸漬されると、それぞれの金属が有する標準電極電位の違いにより、卑なる金属が溶解するガルバニック現象が発現する。例えば、AlとCuの系においては、貴なる金属はCu(標準電極電位 +0.334V)であり、卑なる金属はAl(標準電極電位 -1.68V)である。パッド451に対策が施されてない場合、比抵抗の低い純水に浸漬されると、卑なる金属であるAlが溶解する。保護膜471がパッド451の表面に形成されることにより、AlとCuの異種金属を含むパッド451の表面の、比抵抗の低い純水(溶解のドライビングフォース)への接触が抑制されるので、Alの溶解が抑制される。
【0121】
ステップS107において、個片化部336は、制御部301に制御されて、図16に示されるように、個片化されたチップ(すなわち撮像素子400)を所定のパッケージ493に配置し、ワイヤボンディングを行い、開口部460のパッド451に金属ワイヤ494を、半田付け等により電気的に接続する。
【0122】
個片化されたチップ492はリプレイス装置にてパッケージに運ばれ、パッケージに運ばれたチップはダイボンド材にてパッケージに貼り付けられる。次に、パッケージとチップを電気的に接続するためのワイヤーボンディング工程が行われる。パッケージ側の電極(リードフレーム)とチップ側の電極であるパッドをAuなどを代表とする金属ワイヤーで接続する。
【0123】
パッド451での接合は、熱、超音波(振動)などのエネルギーを印加することにより行われる。パッド451の表面には保護膜471が形成されているが、その保護膜471は非常に薄いので、金属ワイヤーを接合させる際に、その保護膜はブレークし、その下部にあるパッド451と正確な合金層を形成し、十分な接合性を有することになる。
【0124】
ステップS107の処理が終了すると、製造処理が終了される。
【0125】
以上のようにして、図1に示されるような構成の撮像素子100が製造される。つまり、製造装置300は、特別に複雑な工程を必要とせずに、撮像素子100を容易に製造することができる。
【0126】
より具体的には、保護膜471はCVDにて形成されることから、パッドのドライエッチングによる開口、その後、アッシング(O2プラズマ)によるレジスト剥離、保護膜形成を1つの装置で真空のブレークなく、連続的に行うことができる。すなわち、真空装置での一貫処理が可能であり、製造工程のスループット改善や、ウエハ処理の高効率化を実現することができる。
【0127】
<3.第3の実施の形態>
[撮像素子]
なお、図1の撮像素子100において、さらに、マイクロレンズ170上に反射防止膜が形成されるようにしても良い。図17は、その場合の撮像素子の構成例を示す断面図である。
【0128】
図17に示される撮像素子500は、基本的に図1に示される撮像素子100と同様の構成を有する撮像素子であるが、マイクロレンズ170の上にさらに、反射防止膜511が形成される。反射防止膜511は、マイクロレンズ170よりも屈折率が小さい。したがって、反射防止膜511は、マイクロレンズ170の表面における光の反射を抑制することができる。
【0129】
このように反射防止膜511を設け、その上に保護膜182が積層されるようにしても、保護膜182自体が非常に薄い膜であり、画素特性には影響を及ぼさない。また、反射防止膜511の屈折率より保護膜182の屈折率が小さい場合、撮像素子500は、その反射防止効果をさらに向上させることができ、画像性能をさらに向上させることができる。
【0130】
本発明は、撮像素子に限らず、任意の半導体素子、その半導体素子を用いたモジュール、または、そのモジュールを用いた装置に適用することができる。例えば、上述した撮像素子は、図16に示されるように、パッケージに設置し、撮像モジュールとしてもよいし、さらにその撮像モジュールを用いた撮像装置としてもよい。
【0131】
上述した一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0132】
この記録媒体は、例えば、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを配信するために配布される、プログラムが記録されているリムーバブルメディア321(図8)により構成される。このリムーバブルメディア321には、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)や光ディスク(CD-ROMやDVDを含む)が含まれる。さらに、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)や半導体メモリ等も含まれる。また、上述した記録媒体は、このようなリムーバブルメディア321だけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに配信される、プログラムが記録されている制御部301(図8)のROMや、記憶部313(図8)に含まれるハードディスクなどにより構成されるようにしてもよい。
【0133】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0134】
また、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0135】
また、本明細書において、システムとは、複数のデバイス(装置)により構成される装置全体を表すものである。
【0136】
また、以上において、1つの装置(または処理部)として説明した構成が、複数の装置(または処理部)として構成されるようにしてもよい。逆に、以上において複数の装置(または処理部)として説明した構成が、まとめて1つの装置(または処理部)として構成されるようにしてもよい。また、各装置(または各処理部)の構成に上述した以外の構成が付加されるようにしてももちろんよい。さらに、システム全体としての構成や動作が実質的に同じであれば、ある装置(または処理部)の構成の一部が他の装置(または他の処理部)の構成に含まれるようにしてもよい。つまり、本開示の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0137】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1) 内部回路の外部端子となる電極と、
前記電極の表面に形成され、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜と
を備える半導体素子。
(2) 前記保護膜は、前記電極を含む前記半導体素子の表面全体に形成される
前記(1)に記載の半導体素子。
(3) 前記保護膜は、四塩化シリコンガスと酸素ガスが混入されたガス系にて形成される
前記(1)または(2)に記載の半導体素子。
(4) 前記保護膜は、シリコンおよび酸素を主体とする薄膜である
前記(3)に記載の半導体素子。
(5) 前記保護膜は、前記保護膜を前記電極から剥離せずに、金属材料を前記電極に接合可能な程度の厚さに形成される
前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の半導体素子。
(6) 入射光を光電変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子に入射される前記入射光を前記光電変換素子に集光するレンズと、
内部回路の外部端子となる電極と、
前記電極および前記レンズの表面に形成され、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜と
を備える撮像素子。
(7) 前記保護膜の屈折率は、前記レンズの屈折率より小さい
前記(6)に記載の撮像素子。
(8) 前記レンズ表面に、屈折率が前記レンズよりも小さい薄膜である反射防止膜がさらに形成され、
前記保護膜は、前記反射防止膜の表面に形成される
前記(7)に記載の撮像素子。
(9) 前記保護膜の屈折率は、前記反射防止膜の屈折率より小さい
前記(8)に記載の撮像素子。
(10) 前記保護膜は、前記電極を露出させる開口部の側壁にもさらに形成される
前記(6)乃至(9)のいずれかに記載の撮像素子。
(11) 入射光を光電変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子に入射される前記入射光を前記光電変換素子に集光するレンズと、
内部回路の外部端子となる電極と、
前記電極および前記レンズの表面に形成され、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜と
を有する撮像素子と、
前記撮像素子を収納するパッケージと
を備える撮像モジュール。
(12) 入射光を光電変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子に入射される前記入射光を前記光電変換素子に集光するレンズと、
内部回路の外部端子となる電極と、
前記電極および前記レンズの表面に形成され、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜と
を有する撮像素子が収納されたパッケージを含む撮像モジュール
を備える撮像装置。
(13) 内部回路の外部端子となる電極を備える半導体素子を生成する半導体素子生成部と、
前記半導体素子生成部により生成された前記半導体が有する前記電極の表面に、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜を形成する保護膜形成部と
を備える製造装置。
(14) 前記保護膜形成部は、四塩化シリコンガスと酸素ガスが混入されたガス系を分解させることにより、前記電極の表面に前記保護膜を形成する
前記(13)に記載の製造装置。
(15) 前記保護膜形成部は、前記半導体素子が有する有機膜が破壊されない程度の温度で、前記四塩化シリコンガスと前記酸素ガスが混入されたガス系を分解させる
前記(14)に記載の製造装置。
(16) 前記保護膜形成部は、前記四塩化シリコンガスと前記酸素ガスが混入されたガス系をプラズマにより分解させる
前記(15)に記載の製造装置。
(17) 前記半導体素子生成部により生成された前記半導体が有する前記電極を露出させるように開口する開口部をさらに備え、
前記保護膜形成部は、前記開口部により開口され、露出された前記電極の表面に、前記保護膜を形成する
前記(13)乃至(16)のいずれかに記載の製造装置。
(18) 前記保護膜形成部は、前記電極の表面だけでなく、前記半導体素子が有する、入射光を光電変換素子に集光するレンズの表面にも前記保護膜を形成する
前記(13)乃至(17)のいずれかに記載の製造装置。
(19) 前記保護膜形成部は、前記電極の表面だけでなく、前記半導体素子が有する、入射光を光電変換素子に集光するレンズの表面に形成される、屈折率が前記レンズよりも小さい薄膜である反射防止膜の表面にも前記保護膜を形成する
前記(13)乃至(18)に記載の製造装置。
(20) 製造装置の製造方法であって、
半導体素子生成部が、内部回路の外部端子となる電極を備える半導体素子を生成し、
保護膜形成部が、生成された前記半導体が有する前記電極の表面に、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜を形成する
製造方法。
【符号の説明】
【0138】
100 撮像素子, 170 マイクロレンズ, 181 パッド, 182 保護膜, 200 撮像素子, 300 製造装置, 333 保護膜形成部, 400 撮像素子, 451 パッド, 471 保護膜, 500 撮像素子, 511 反射防止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部回路の外部端子となる電極と、
前記電極の表面に形成され、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜と
を備える半導体素子。
【請求項2】
前記保護膜は、前記電極を含む前記半導体素子の表面全体に形成される
請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記保護膜は、四塩化シリコンガスと酸素ガスが混入されたガス系にて形成される
請求項1に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記保護膜は、シリコンおよび酸素を主体とする薄膜である
請求項3に記載の半導体素子。
【請求項5】
前記保護膜は、前記保護膜を前記電極から剥離せずに、金属材料を前記電極に接合可能な程度の厚さに形成される
請求項1に記載の半導体素子。
【請求項6】
入射光を光電変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子に入射される前記入射光を前記光電変換素子に集光するレンズと、
内部回路の外部端子となる電極と、
前記電極および前記レンズの表面に形成され、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜と
を備える撮像素子。
【請求項7】
前記保護膜の屈折率は、前記レンズの屈折率より小さい
請求項6に記載の撮像素子。
【請求項8】
前記レンズ表面に、屈折率が前記レンズよりも小さい薄膜である反射防止膜がさらに形成され、
前記保護膜は、前記反射防止膜の表面に形成される
請求項7に記載の撮像素子。
【請求項9】
前記保護膜の屈折率は、前記反射防止膜の屈折率より小さい
請求項8に記載の撮像素子。
【請求項10】
前記保護膜は、前記電極を露出させる開口部の側壁にもさらに形成される
請求項6に記載の撮像素子。
【請求項11】
入射光を光電変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子に入射される前記入射光を前記光電変換素子に集光するレンズと、
内部回路の外部端子となる電極と、
前記電極および前記レンズの表面に形成され、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜と
を有する撮像素子と、
前記撮像素子を収納するパッケージと
を備える撮像モジュール。
【請求項12】
入射光を光電変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子に入射される前記入射光を前記光電変換素子に集光するレンズと、
内部回路の外部端子となる電極と、
前記電極および前記レンズの表面に形成され、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜と
を有する撮像素子が収納されたパッケージを含む撮像モジュール
を備える撮像装置。
【請求項13】
内部回路の外部端子となる電極を備える半導体素子を生成する半導体素子生成部と、
前記半導体素子生成部により生成された前記半導体が有する前記電極の表面に、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜を形成する保護膜形成部と
を備える製造装置。
【請求項14】
前記保護膜形成部は、四塩化シリコンガスと酸素ガスが混入されたガス系を分解させることにより、前記電極の表面に前記保護膜を形成する
請求項13に記載の製造装置。
【請求項15】
前記保護膜形成部は、前記半導体素子が有する有機膜が破壊されない程度の温度で、前記四塩化シリコンガスと前記酸素ガスが混入されたガス系を分解させる
請求項14に記載の製造装置。
【請求項16】
前記保護膜形成部は、前記四塩化シリコンガスと前記酸素ガスが混入されたガス系をプラズマにより分解させる
請求項15に記載の製造装置。
【請求項17】
前記半導体素子生成部により生成された前記半導体が有する前記電極を露出させるように開口する開口部をさらに備え、
前記保護膜形成部は、前記開口部により開口され、露出された前記電極の表面に、前記保護膜を形成する
請求項13に記載の製造装置。
【請求項18】
前記保護膜形成部は、前記電極の表面だけでなく、前記半導体素子が有する、入射光を光電変換素子に集光するレンズの表面にも前記保護膜を形成する
請求項13に記載の製造装置。
【請求項19】
前記保護膜形成部は、前記電極の表面だけでなく、前記半導体素子が有する、入射光を光電変換素子に集光するレンズの表面に形成される、屈折率が前記レンズよりも小さい薄膜である反射防止膜の表面にも前記保護膜を形成する
請求項13に記載の製造装置。
【請求項20】
製造装置の製造方法であって、
半導体素子生成部が、内部回路の外部端子となる電極を備える半導体素子を生成し、
保護膜形成部が、生成された前記半導体が有する前記電極の表面に、外部水分が接触しないように前記電極を保護する無機材料の薄膜である保護膜を形成する
製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2013−89756(P2013−89756A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228760(P2011−228760)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】