説明

半導体素子の実装方法

【課題】 スタッドバンプの形成やワイヤボンディングによる接合を行うにあたって、電極上に金属ボールを固着するための方法において、半導体素子へのストレスを軽減する。
【解決手段】 電極4の表面にプラズマを照射して、該表面を浄化し、さらに活性化して新生面を露出させる(a)とともに、ワイヤ6の先端部をスパークして金属ボール5を形成する際に、スパーク電圧やスパーク電流を調整して結晶粒を大径化して軟らかくした後(b)、金属ボール5を電極4の表面に押圧して接合する(c)。その後、ワイヤ6をプルカットしてスタッドバンプ2を形成し(d)、または基板8へワイヤボンディングを行う(e)。したがって、スパークから瞬時に形成される金属ボール5表面の酸化膜や付着物による殻を破り、金属ボール5の新生面を露出させ、電極4の新生面と一体化させることができ、接合に熱や超音波を加える必要はなく、半導体素子へのストレスを軽減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の実装方法に関し、特に半導体素子の実装にあたってのスタッドバンプの形成やワイヤボンディングによる接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、上記スタッドバンプの形成やワイヤボンディングによる接合を行う際には、たとえば特許文献1で示されるように、ワイヤをスパークして形成したスパークボールを、200℃程度に加熱した半導体素子に、超音波を加えながら押圧することで接合が行われている。これは、通常、金バンプと半導体素子のアルミ電極との接合は、150℃以下では良好に行えないためである。
【特許文献1】特公平4−41519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の従来技術では、半導体素子に加わる熱や超音波がストレスとなり、半導体素子の特性を損なう可能性がある。具体的には、たとえばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)チップに超音波を掛けると、微細な三次元構造の部分が破損してしまう。また、高温を掛けると、特性が変化してしまう。
【0004】
本発明の目的は、実装にあたっての半導体素子へのストレスを軽減することができる半導体素子の実装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の半導体素子の実装方法は、半導体素子の実装にあたって、電極上に金属ボールを固着するための方法において、前記電極の表面を活性化させる工程と、前記金属ボールの結晶粒を大径化させる工程と、前記金属ボールを前記電極の表面に押圧して接合する工程とを含むことを特徴とする。
【0006】
上記の構成によれば、半導体素子の実装のためのスタッドバンプの形成やワイヤボンディングによる接合を行うにあたって、電極上に金属ボールを固着するための方法において、前記電極の表面にプラズマを照射するなどして該表面を活性化させる工程、およびワイヤ先端部をスパークして前記金属ボールを形成する際に、スパーク電圧やスパーク電流を調整するなどして前記の結晶粒を大径化して軟らかくする工程を、いずれかを先にして順次に、または平行して行い、その後、前記金属ボールを前記電極の表面に押圧して接合することで、スパークから瞬時に形成されてしまう前記金属ボール表面の酸化膜や付着物による殻を破り、該金属ボールの新生面を露出させ、電極の新生面と一体化させる。
【0007】
したがって、スタッドバンプを形成したり、ワイヤボンディングを行うにあたって、金属ボールの電極への接合に、熱や超音波を加える必要はなく、実装にあたっての半導体素子へのストレスを軽減することができる。これによって、半導体素子およびそれを実装して成る半導体モジュールなどの半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0008】
また、本発明の半導体素子の実装方法では、前記半導体素子は、MEMSチップであることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、超音波や熱に弱い上記MEMSチップには、本発明が特に効果的である。
【0010】
さらにまた、本発明の半導体素子の実装方法は、前記電極の表面および金属ボールを金で形成することを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、接合強度をより高めることができる。
【0012】
また、本発明の半導体素子の実装方法は、前記接合の工程を、還元ガス雰囲気中で行うことを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、金属ボールの材料に、銅や半田等の酸化する材料を使用することができる。
【0014】
さらにまた、本発明の半導体素子の実装方法は、全工程を、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気中で行うことを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、接合面の酸化や汚染を抑え、安定的な接合を実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の半導体素子の実装方法は、以上のように、半導体素子の実装のためのスタッドバンプの形成やワイヤボンディングによる接合を行うにあたって、電極上に金属ボールを固着するための方法において、前記電極の表面にプラズマを照射するなどして、該表面を活性化させる工程、およびワイヤ先端部をスパークして前記金属ボールを形成する際に、スパーク電圧やスパーク電流を調整するなどして前記の結晶粒を大径化して軟らかくする工程を、いずれかを先にして順次に、または平行して行い、その後、前記金属ボールを前記電極の表面に押圧して接合することで、スパークから瞬時に形成されてしまう前記金属ボール表面の酸化膜や付着物による殻を破り、該金属ボールの新生面を露出させ、電極の新生面と一体化させる。
【0017】
それゆえ、スタッドバンプを形成したり、ワイヤボンディングを行うにあたって、金属ボールの電極への接合に、熱や超音波を加える必要はなく、実装にあたっての半導体素子へのストレスを軽減することができる。これによって、半導体素子およびそれを実装して成る半導体モジュールなどの半導体装置の信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の一形態に係る半導体素子の実装方法を説明するための図である。本実装工程は、シリコンチップなどの半導体素子1に対して、図示しない回路基板などへの実装のためのスタッドバンプ2を形成したり、ボンディングワイヤ3による接合を行うものであり、共に、半導体素子1の電極4に対して、金属ボール5を固着する工程を有する。
【0019】
前記金属ボール5の電極4への固着の工程には、先ず図1(a)で示す前記電極4の表面にアルゴン等のプラズマを照射するなどして、該表面を活性化することで該表面を浄化し、さらに新生面を露出させる工程と、図1(b)で示すワイヤ6の先端部をスパークして前記金属ボール5を形成する際に、スパーク電圧やスパーク電流を調整して結晶粒を大径化して軟らかくする工程とが、いずれかを先にして順次に、または平行して行われる。その後、常温で、図1(c)で示すように、前記金属ボール5が前記電極4の表面に押圧されて接合される。
【0020】
前記図1(a)で示す工程では、前記半導体素子1として、たとえばSi基板上に、SiO膜を400nm、Ti/W膜を200nm順に形成した上に、さらに200nm程度のAu層を形成して電極4の表面が形成されたものが用いられ、アルゴンプラズマを、φ4インチのウエハ換算で25〜150W程度、プラズマ照射時間を30〜180sec程度、アルゴンガス内圧を1〜10Pa程度の条件下で表面活性化処理が行われる。
【0021】
また、前記図1(b)で示す工程では、φ15〜35μmのAuワイヤを使用し、キャピラリ7の先端に位置するワイヤ6と、トーチと呼ばれる電極との間を1.3mmの間隔を空けて、ワイヤ6をスパークさせることでワイヤ先端部を溶融し、スパークボールと呼ばれる金属ボール5を形成している。φ15のAuワイヤで、たとえばスパーク電流は30mA、100μsecであり、この工程のスパークによって溶融された前記金属ボール5は、スパーク前のワイヤ6よりも結晶粒が大径化する。前記スパーク電圧やスパーク電流を調整することで、従来のスタッドバンプ2の形成時やワイヤボンディング時に比べても、結晶粒を大径化することができる。
【0022】
さらにまた、前記図1(c)で示す接合工程では、金属ボール5が、荷重150gで超音波アシスト無しで電極4に押圧される。その後、図1(d)で示すスタッドバンプ形成工程では、ワイヤ6をプルカットすることで、φ40〜100μmのスタッドバンプ2が形成される。また、押圧後、図1(e)で示すワイヤボンディング工程では、ボンディングワイヤ3をプルカットせず、基板8側にボンディングされる。
【0023】
このように作成することで、図1(b)で示す工程において、スパークから瞬時に形成されてしまう前記金属ボール5の表面の酸化膜や付着物(C,H,O)による殻を、前記図1(c)で示す接合工程で破り、該金属ボール5の新生面を露出させ、前記図1(a)で示すプラズマ照射工程で現れた電極4の新生面と一体化することができる。
【0024】
したがって、スタッドバンプ2を形成したり、ワイヤボンディングを行うにあたって、金属ボール5の電極4への接合に、熱や超音波を加える必要はなく、実装にあたっての半導体素子1へのストレスを軽減することができる。これによって、半導体素子1およびそれを実装して成る半導体モジュールなどの半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0025】
なお、前記前記図1(c)で示す接合工程において、若干の超音波をアシストすることで、押圧荷重を70gに低下して、荷重によるストレスを低下するとともに、より強度の高い接合が可能である。
【0026】
また、前記半導体素子1がMEMSチップである場合、該MEMSチップは超音波や熱に弱いので、本発明が特に効果的である。さらにまた、上述のように電極4の表面および金属ボール5を金で形成すると、接合強度をより高めることができる。
【0027】
[実施の形態2]
図2は、本発明の実施の他の形態に係る半導体素子の実装方法を説明するための図である。図2(a)〜図2(e)で示す本実装工程は、前述の図1(a)〜図1(e)で示す実装工程にそれぞれ類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、本実装工程では、図2(b)で示す金属ボール5’の形成工程および図2(c)で金属ボール5’の電極4’への接合工程が、還元ガス雰囲気中で行われることである。
【0028】
これに対応して、半導体素子1’は、たとえばSi基板上に、SiO膜を400nm形成した上に、1μm程度のCu膜を形成して電極4’の表面が形成されている。図2(a)で示すプラズマ照射工程では、アルゴンプラズマ密度およびプラズマ照射時間ならびにアルゴンガス内圧は前述とそれぞれ同一の条件である。
【0029】
一方、図2(b)で示す金属ボール5’の形成工程では、φ15〜35μmのCuワイヤを使用し、キャピラリ7の先端に位置するワイヤ6’をスパークさせることでワイヤ先端部を溶融し、前記金属ボール5’が形成される。この工程のスパークによって溶融された前記金属ボール5’は、スパーク前のワイヤ6’よりも結晶粒が大径化する。本実施の形態では、この工程において、ノズル9から、前記還元ガスとして、たとえばAr−10%Hガスが、1.75(l/min)でブローされる。
【0030】
同様に、図2(c)で示す接合工程でも、金属ボール5’を荷重100gで超音波アシスト無しで電極4’の表面のCu膜に押圧する際に、前記ノズル9からAr−10%Hガスが、1.75(l/min)でブローされる。
【0031】
その後、図2(d)で示すスタッドバンプ2’の形成工程では、ワイヤ6’がプルカットされ、図2(e)で示すワイヤボンディング工程では、ボンディングワイヤ3’をプルカットせず、基板8側にボンディングされる。
【0032】
本実施の形態においても、図2(c)で示す接合工程において、若干の超音波をアシストすることで、押圧荷重を低下し、荷重によるストレスを減少するようにしてもよい。
【0033】
このように接合の工程を還元ガス雰囲気中で行うことで、金属ボール5’の材料に、前記銅や半田等の酸化する材料を使用することができる。
【0034】
[実施の形態3]
本発明の実施のさらに他の形態の実装工程では、基本的に前述の図1(a)〜図1(e)で示す工程と同様の作業が行われる。注目すべきは、本実施の形態では、それら総ての作業が、一貫して真空雰囲気またはArやNなどの不活性ガス雰囲気中で行われることである。この場合、前記半導体素子1としては、たとえばSi基板上に、SiO膜を400nm形成した上に、1μm程度のCu膜を形成して前記電極4とされ、ワイヤ6としてCuワイヤが使用される。残余の条件は、図1と同様である。
【0035】
このように全工程を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気中で行うことで、接合面の酸化や汚染を抑え、安定的な接合を実現することができる。
【0036】
上述の第1〜第3の各実施の形態において示した各条件は、一実施形態における条件であって、電極4,4’および金属ボール5,5’の大きさや材料ならびにそれらの間に求められる接合強度になどに応じて適宜変更され、設定されるものである。このような各条件の設定は、当業者であれば適宜成し得る事項である。したがって、当業者が実施する変更は、特許請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を逸脱するものでない限り、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の一形態に係る半導体素子の実装方法を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の他の形態に係る半導体素子の実装方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0038】
1,1’ 半導体素子
2,2’ スタッドバンプ
3,3’ ボンディングワイヤ
4,4’ 電極
5,5’ 金属ボール
6,6’ ワイヤ
7 キャピラリ
8 基板
9 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子の実装にあたって、電極上に金属ボールを固着するための方法において、
前記電極の表面を活性化させる工程と、
前記金属ボールの結晶粒を大径化させる工程と、
前記金属ボールを前記電極の表面に押圧して接合する工程とを含むことを特徴とする半導体素子の実装方法。
【請求項2】
前記電極の表面を活性化させる工程は、プラズマ照射であることを特徴とする請求項1記載の半導体素子の実装方法。
【請求項3】
前記金属ボールの結晶粒を大径化させる工程は、ワイヤ先端部をスパークして前記金属ボールを形成する際に、スパーク電圧やスパーク電流を調整することで実現することを特徴とする請求項1または2記載の半導体素子の実装方法。
【請求項4】
前記半導体素子は、MEMSチップであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体素子の実装方法。
【請求項5】
前記電極の表面および金属ボールを金で形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体素子の実装方法。
【請求項6】
前記接合の工程を、還元ガス雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体素子の実装方法。
【請求項7】
全工程を、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体素子の実装方法。

【図1】
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【図2】
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