説明

半導体装置およびダイボンド材

【課題】高溶融温度を有し、鉛を含まない安価な接合材料を提供し、半導体装置の実装性および電気的信頼性を確保することを目的とする。
【解決手段】融点が200℃〜230℃の接合材料を用いてマザーボードに接合される半導体装置において、半導体基板11に半導体素子13を接合するダイボンド材である接合材料15を、0.8重量%〜10重量%のCuと0.02〜0.2重量%のGeを含むBi合金とすることで、半導体装置のマザーボードへのリフローによる接合の際に、半導体基板11に半導体素子13を接合する接合材料15が溶融しないため、半導体素子13の接続不良を抑制し、半導体装置の実装性および電気的信頼性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子と半導体基板との接合に用いるダイボンド材とダイボンド材を使用した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上に実装される半導体素子は、外部端子電極を備える半導体基板と電気的に接合する電極を備え、接合に用いる接合材料には、はんだ材料が一般に用いられている。半導体素子をダイボンドする際に注意するべき内容は、ダイボンド材の元素成分である。そして、半導体素子をダイボンドするには、半導体素子が傾くことなく、かつボイドがない状態で半導体基板に電気的接続されるダイボンド材を選択する必要がある。
【0003】
その半導体装置も、別の接合材料を用いてマザーボードに実装され、その接合材料は、一般に融点が200〜230℃のはんだ材料が用いられている。
半導体装置をマザーボードに実装する際には、半導体装置がマザーボードの所定の位置にはんだ材料を用いて固定できるように準備して、主に熱風方式のリフロー装置により、マザーボードとともに加熱し、融点が200〜230℃のはんだ材料を溶融させる。このとき、半導体装置の温度は230〜260℃に達するが、半導体装置の内部で半導体素子と半導体基板電極とを接合しているはんだ材料が溶融すると、はんだ材料の移動による意図しない電気的接続が生じ、不具合になる可能性がある。よって、半導体装置の内部に用いる接合材料は、リフロー装置内で到達する半導体装置の最高温度よりも高い溶融温度を有することが要求される。またさらに、金属間化合物を生じてダイボンド材の融点を下げていくことも避けなければならないので温度やそのプロセス回数に対応できる材料の選択は重要であり、かつ接合部の機械的強度劣化による剥離についても注意しなければならない。
【0004】
組成として錫を含むはんだ材料は、被接合材の金属と金属間化合物相を形成し、この金属間化合物層が経時変化し接合部の機械的強度劣化を生じている。
そこで、従来の半導体装置の内部で半導体素子と半導体基板電極とを接合するはんだ材料には、例えば、鉛を主成分として含み、約3重量%のSnを含む、溶融温度319℃のPb−Sn合金が用いられている。
【0005】
しかしながら、従来から用いられている半導体素子用ダイボンド材において、鉛−錫(Pb−Sn)はんだ、錫−アンチモン(Sn−Sb)はんだでは、金属として鉛(Pb)、アンチモン(Sb)を含有しており、将来的にはダイボンド材としての使用を避けている金属であり、ダイボンド材としては不適であった。特に鉛を用いた場合、廃棄物中のはんだ材料から、鉛が土壌に溶出することが懸念される。近年、地球環境保護への関心が高まってきており、鉛を含まないはんだ(鉛フリーはんだ)の開発が進められている。例えば、溶融温度が200〜250℃のPb−Sn合金からなるはんだ材料は、Sn−Ag合金もしくはSn−Cu合金からなるはんだ材料に置き換えられつつある。溶融温度が260℃以上のはんだ材料としては、主成分であるBiと少量のAgとを含むはんだ材料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ただし銀(Ag)や金(Au)を使用するはんだは、金属自身の価格が高く、ダイボンド材として価格が高価になり、生産コスト上の問題があった。鉛−インジウム(Pb−In)はんだでは、鉛(Pb)を含有しているのに加えて、融点が173℃と低いため、動作時に発熱を伴う電力用半導体素子のダイボンド材としては不適であった。
【0007】
そこでBiを主成分とする合金を含み、前記合金は、0.2〜0.8重量%のCuと、0.02〜0.2重量%のGeとあるいは0.02〜0.08重量%のNiとを含む接合材料を用いた電子部品に関するはんだ材料が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−353590号公報
【特許文献2】特許第3886144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の、Biを主成分とし、0.2〜0.8重量%のCuと、0.02〜0.2重量%のGeとを含む合金からなる接合材料をダイボンド材としてはんだに用いる場合、リフローなどでマザーボードに実装する温度に近いため、実装信頼性をあげるためにはさらに融点を上げる必要があった。
【0009】
本発明は、満足できる、例えば280℃以上の溶融温度を有し、鉛を含まない安価な接合材料を提供し、半導体装置の実装性および電気的信頼性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の半導体装置は、半導体素子を半導体基板に搭載してなる半導体装置であって、前記半導体基板に形成される1または複数の外部金属端子と、前記半導体素子と前記半導体基板とをそれぞれの電極を介して電気的に接続するための接続部と、前記半導体素子と前記半導体基板を接合するBiを主成分とする合金からなるダイボンド材とを有し、前記合金が0.8〜10重量%のCuと0.02〜0.2重量%のGeとを含むことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の半導体装置は、請求項1記載の半導体装置において、前記Cuの含有量が0.8〜3.8重量%であり、前記Geの含有量が0.02〜0.05重量%であることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の半導体装置は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の半導体装置において、前記合金が、さらに0.02〜0.08重量%のNiを含むことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の半導体装置は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の半導体装置において、前記合金が、さらに0.02〜0.05重量%のNiを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載のダイボンド材は、半導体基板に半導体素子を接合するダイボンド材であって、Biを主成分とし、0.8〜10重量%のCuと0.02〜0.2重量%のGeとを含む合金であることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載のダイボンド材は、請求項5記載のダイボンド材において、前記Cuの含有量が0.8〜3.8重量%であり、前記Geの含有量が0.02〜0.05重量%であることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載のダイボンド材は、請求項5または請求項6のいずれかに記載のダイボンド材において、前記合金が、さらに0.02〜0.08重量%のNiを含むことを特徴とする。
【0017】
請求項8記載のダイボンド材は、請求項5または請求項6のいずれかに記載のダイボンド材において、前記合金が、さらに0.02〜0.05重量%のNiを含むことを特徴とする。
【0018】
以上により、半導体装置の実装性および電気的信頼性を確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、融点が200℃〜230℃の接合材料を用いてマザーボードに接合される半導体装置において、半導体基板に半導体素子を接合するダイボンド材である接合材料を、0.8重量%〜10重量%のCuと0.02〜0.2重量%のGeを含むBi合金とすることで、半導体装置のマザーボードへのリフローによる接合の際に、半導体基板に半導体素子を接合する接合材料が溶融しないため、半導体素子の接続不良を抑制し、半導体装置の実装性および電気的信頼性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施の形態1)
本実施形態の半導体素子接合用のダイボンド材である接合材料は、Biを主成分とする合金を含み、前記合金は、0.8〜10重量%のCuと、0.02〜0.2重量%のGeとを含む。融点を上げる工夫については、270℃の融点であるBiを主成分とする合金に1083℃の融点であるCuを加えていく量が多くなればなるほど上がっていくことは知られている。ただ合金として0.8〜10重量%のCuを均等に配置させるには、1200℃の溶融るつぼに入れてCuをいったん溶融させ、冷却速度を速めることでCuの粒子が大きくならないようにする必要がある。さらに、Cuの含有量は0.8〜3.8重量%が好ましく、Geの含有量は0.02〜0.05重量%が好ましい。Biを主成分とする合金が3元合金(3種の元素からなる合金)である場合、CuとGe以外の残部はBiのみからなる。
【0021】
このような接合材料は、280℃以上の溶融温度を有するため、例えば表面実装タイプの半導体装置のような小型で電力用半導体素子を実装する場合に用いる接合材料として適している。半導体装置内部で用いられている接合材料の溶融温度が高いため、リフロー装置を用いて半導体装置をマザーボードに実装する際に半導体装置の不良が抑制される。また、本実施形態の接合材料は、高価な元素(例えばAgやAu)を含まないため、安価で製造することができ、更に、鉛を含まないため、鉛フリーとして提供することができる。
【0022】
280℃以上の溶融温度を有する接合材料を得る場合、共晶点温度が280℃以上である2元合金(2種の元素からなる合金)をベース(母材)に用いることが有効である。多くの元素の中から共晶点温度が280℃以上となる元素の組み合わせを選ぶ際、重視すべき点は、元素の毒性の有無と価格である。Pb、Hg、Sb、Se等の元素は、毒性の点から除外される。
【0023】
図5は2元合金の共晶点温度を示す図であり、縦軸の元素と横軸の元素との交点に示した数値は、それら2種の元素からなる合金の共晶点温度である。図5から、例えば、Sn−Ag合金の共晶点温度は221℃であり、Ni−Cu合金には共晶点が存在しないことがわかる。また、BiとCuとの組み合わせ、または、BiとGeとの組み合わせが、共晶点温度が270〜300℃の合金を与えることがわかる。
【0024】
この図において、BiとCuとの共晶合金は、99.5重量%のBiと0.5重量%のCuとを含む(Bi−0.5%Cu)。BiとGeとの共晶合金は、99重量%のBiと1重量%のGeとを含む(Bi−1%Ge)。しかし、Geの価格はCuの約420倍と高価である。よって、安価な材料を提供する観点からは、BiとCuとの組み合わせが有利である。
【0025】
図6はBiとCuとの二元合金(Bi−Cu合金)におけるCu含有量(重量%)とBi−Cu合金の融点(液相温度または固相温度)との関係を示す図である。
図6において、Cuの含有量が増えるにつれて融点が高くなり、0.8重量%では目標である280℃に達する。この接合材料の融点以上で均等にかつ安定した温度状態であるヒータを巻きつけ、吐出先端を必要量に制御できる形状にした溶融ポット内に接合材料を液状化させて保持し、その溶融ポット上部から圧力をかけて溶融ポット下部に液状化した接合材料を吐出させたい対象物である半導体基板を設置し、圧力をかける時間でもって制御する。その際接合材料においては液相温度と固相温度との差が小さいほうが作業性はよいが、作業の安定性を考慮してその液相温度よりも30℃から50℃高く溶融ポットのヒータ温度を設定しているので、Cuの含有率が10重量%までは課題と考えなくてもよい。しかし3.8重量%以上であるとBiとの合金を作れないCuの割合が増えることによって粘性が高くなり、作業性および濡れ性が低下する。一方、Cuの含有量が0.8重量%未満になると、融点が目標値より下がり、2次実装時のリフローでの再溶融によって溶融した接合材料と電極等との濡れ性が低下する可能性が高くなる。よって、Cuの含有量は0.8重量%以上であることが望ましい。
【0026】
以上より、Cuの含有量は0.8重量%以上10重量%以下であることが望ましい。また、Cuの含有量を0.8〜3.8重量%とすることにより、作業性を考慮した更に物性バランスに優れた接合材料を得ることができる。特にこの接合材料の液相温度よりも30℃から50℃高く均等にかつ安定した温度状態にできるようにヒータを巻きつけることにより容易にこの接合材料を得ることができる。
【0027】
0.2〜0.8重量%のCuを含むBi−Cu合金は、270℃未満の温度で溶融しない点では優れた接合材料である。しかし、メニスカス法による試験では、濡れ性が低いという知見が得られている。Bi−Cu合金は、99.5重量%という多量のBiを含む。そのため、合金内における酸化物の生成量が多くなっており、このことが濡れ性に影響していると考えられる。Biの酸化は、Biよりも優先的に酸化する元素を、Bi−Cu合金に微量添加することにより、抑制できると考えられる。Biよりも優先的に酸化する元素としては、Ge、Al、Li、P等が挙げられる。
【0028】
図7はBi−Cu合金にGe、Al、LiまたはPを添加した場合の酸化物生成量を例示する図であり、99.5重量%のBiと0.5重量%のCuとからなる共晶合金(Bi−0.5%Cu)に、0.05重量%のGe、Al、LiまたはPを添加し、300℃で4時間攪拌したときに、試料中に生成する酸化物の生成量を示している。ただし、試料全体の重量は8kgである。これらの元素を添加していない試料と比較して、Geを添加した試料では、特に酸化物の生成が抑制されていることがわかる。これは、GeがBi−0.5%Cuの表面で優先的に酸化し、酸化膜を形成するためと考えられる。以上より、Bi−Cu合金の酸化を抑制するためには、Geの添加が適していることがわかる。
【0029】
図8はBi−Cu−Ge合金におけるGe含有量と酸化物生成量との関係を示す図であり、0.5重量%のCuを含むBiとCuとGeとの三元合金(Bi−Cu−Ge合金)におけるGe含有量(重量%)と、酸化物生成量との関係を示している。ただし、合金全体の重量は8kgである。図8から、Geを0.02重量%以上添加すると、酸化物の生成が抑制されるが、Geの含有量が0.3重量%以上になると、酸化物生成量が多くなることがわかる。図8より、Geの含有量は0.02〜0.2重量%が好適であり、0.02〜0.05重量%が更に好適であることがわかる。
【0030】
以上のように、融点が200℃〜230℃の接合材料を用いてマザーボードに接合される半導体装置において、半導体基板に半導体素子を接合するダイボンド材である接合材料を、0.8重量%〜10重量%のCuと0.02〜0.2重量%のGeを含むBi合金とすることで、半導体装置のマザーボードへのリフローによる接合の際に、半導体装置の温度が230℃〜260℃になったとしても、半導体基板に半導体素子を接合する接合材料が270℃程度までは溶融しないため、半導体素子の接続不良を抑制し、半導体装置の実装性および電気的信頼性を確保することができる。
【0031】
また、本発明の接合材料を、特に熱容量の小さな半導体装置に用いることが有効的であり、半導体装置をマザーボードへ実装する際に発生する不良を抑制することができる。さらには半導体素子の裏面電極と接合部材、半導体基板の金属パッドと接合部材の間に金属間化合物層の成長がないため、長期的に熱やストレスがかかっても接合状態が変化せず、長期間の信頼性に耐える接合が得られる。また、2次実装時のリフローでの再溶融が抑えられ、金属間化合物の成長が抑えられる効果と2次実装による変化も抑えられ、さらに長期間の信頼性に耐える接合が得られる。これらのことにより、2次実装後の信頼性も考慮したパッケージ構成材料として採用することが可能となり、完全鉛フリー化が実現する。
(実施の形態2)
本実施形態のダイボンド材である接合材料は、Biを主成分とする合金を含み、前記合金は、0.8〜10重量%のCuと、0.02〜0.2重量%のGeと、0.02〜0.08重量%のNiとを含むことを特徴とする。ここで、実施の形態1と同様に、Cuの含有量は6〜10重量%が好ましく、Geの含有量は0.02〜0.05重量%が好ましい。また、Niの含有量は0.02〜0.05重量%が好ましい。このようにNiを添加することにより、実施の形態1の接合材料よりも、耐衝撃性が高くなる。
【0032】
耐衝撃性は、1.6mm×0.8mmサイズのチップコンデンサの側面に、60gの錘を180mmの高さから衝突させる試験により評価できる。
99.46重量%のBiと、0.5重量%のCuと、0.04重量%のGeとを含む3元合金(Bi−0.5%Cu−0.04%Ge)で接合された接合部を有するチップコンデンサを用い、上記の耐衝撃試験を行ったところ、チップコンデンサは接合部で破断した。破断後の接合部の断面を観察したところ、Bi含有量の多いα相と、Cu含有量の多いβ相との界面で破断していた。
【0033】
ここで、α相とβ相との均一性は、結晶外周値により評価できる。結晶外周値とは、10μm×10μmの範囲に存在するα相の外周長さの合計として定義される。結晶外周値が大きい場合、α相とβ相との混合は十分であり、結晶外周値が小さい場合、α相とβ相との混合は不十分である。
【0034】
上記試験で破断した接合部の断面で結晶外周値を測定したところ、結晶外周値は87μmであった。
図9はBi−Cu−Ge−Ni合金におけるNi含有量と、結晶外周値との関係を示す図であり、グラフAは0.5重量%のCuと0.04重量%のGeとを含むBiとCuとGeとNiとの四元合金(Bi−Cu−Ge−Ni合金)におけるNi含有量(重量%)と結晶外周値との関係を示し、グラフBは0.5重量%のCuと0.2重量%のGeとを含むBi−Cu−Ge−Ni合金におけるNi含有量(重量%)と結晶外周値との関係を示している。
【0035】
図9から、Ni含有量が0.02〜0.08重量%である場合に、結晶外周値が大きくなり、α相とβ相とが均一に混合されることがわかる。一方、Ni含有量が0.11重量%以上になると、結晶外周値が小さくなり、α相とβ相とが均一に混合されないことがわかる。図9から、Niの含有量は0.02〜0.08重量%が好適であり、0.02〜0.05重量%が更に好適であることがわかる。
【0036】
以上のように、実施の形態1における接合材料においてNiを添加し、0.02〜0.08重量%のNi含有量とすることにより、溶融温度を維持しながら、耐衝撃性を高くすることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態の半導体装置は、1または複数の半導体素子裏面電極を備える半導体素子を、1または複数の半導体基板電極を備える半導体基板に実装する際に、対応する半導体素子裏面電極と半導体基板電極とが電気的に接続するように、実施の形態1または実施の形態2に係るダイボンド材である接合材料を用いて半導体素子と半導体基板を接合することを特徴とする。
【0037】
半導体素子は、特に限定されないが、例えば電力用半導体装置が挙げられる。また単体だけでなくモジュールでも良く、特に表面実装部品が挙げられる。
本発明は、特に表面実装タイプのパッケージで4.5mm×7.6mmサイズ以下の電力用半導体素子を得る場合に好適である。
【0038】
半導体素子とその接合部である半導体基板電極との関係を図1および図2で説明する。
図1は本発明の半導体装置の構造を示す図、図2は本発明の半導体基板表面に金属薄膜を形成した半導体装置の構造を示す図である。
【0039】
図1および図2において、半導体基板11、21の表裏面(図2は表面のみ)にはNiめっきなどの金属薄膜12、22が蒸着され、半導体素子13、23を搭載する面である表面には半導体基板電極が形成される。半導体素子13、23の実装面である裏面には金属薄膜14、24が蒸着され、1または複数の半導体素子裏面電極が形成される。そして、半導体基板電極と半導体素子裏面電極とが電気的に接続するように接合材料15、25を用いて半導体素子13、23を半導体基板11、21に実装することにより半導体装置を構成している。ここでは、半導体素子13、23と半導体基板11、21の電気的接続を、実装領域に形成した半導体基板電極と半導体素子裏面電極とを接続することにより行ったが、半導体素子13、23表面に形成された電極と半導体基板の表面に形成された電極とをワイヤーで接続する等、その他の接続手段を用いても良い。なお、Niめっきなどの金属薄膜12、22は、半導体基板11、21の酸化防止や金属拡散を防止して接合材料15、25を設計どおりに保持することによって接続が安定するために用いている。図1と図2の違いは、半導体基板11、21の裏面に金属薄膜12の有無の差だけでどちらもその効果を得ることができる。
【0040】
接合材料15、25として、実施の形態1または実施の形態2に係る接合材料を用いることにより、半導体装置のマザーボードへのリフローによる接合の際に、半導体基板に半導体素子を接合する接合材料が溶融しないため、半導体素子の接続不良を抑制し、半導体装置の実装性および電気的信頼性を確保することができる。
(実施の形態4)
本実施の形態の半導体装置は、例として、半導体装置がTO−220C面実装タイプ:松下電器産業(株)製を、図3およびそれをマザーボードに実装する際に応力が最もかかる部位について図4を参照しながら説明する。
【0041】
図3は本発明の半導体装置の構成を示す図であり、図3(a)は樹脂を一部透視した平面図、図3(b)は側面図、図3(c)は裏面図である。図4は本発明の半導体装置の実装状態を説明するための図であり、図4(a)は側面図、図4(b)は半導体装置のマザーボード表面からの距離と応力の関係を示す図である。
【0042】
図3に示すように、半導体基板31は、半導体素子33を実装する領域に半導体素子の裏面電極と接続される半導体基板電極と、半導体基板電極と電気的に接続される外部金属端子30と、半導体基板電極と電気的に接続されない外部金属端子37とを備える。半導体素子33は、裏面に半導体基板電極と接続する半導体素子裏面電極と、表面に金属電極パッドとを備える。実施の形態4の半導体装置は、半導体基板31上に半導体素子33が実装され、半導体基板電極と半導体素子裏面電極とが電気的に接続されるように、実施の形態1および実施の形態2に係るダイボンド材である接合材料を用いて接合されている。また、金属電極パッド39と外部電極端子37とが金属ワイヤー38により接続されている。さらに、半導体素子33と金属ワイヤー38を保護するように樹脂36にて封止し、半導体素子33と電気的に接続された外部金属端子30の端部と、外部金属端子37の端部が樹脂36から露出している。
【0043】
図4に示すように、図3に示す半導体装置は、半導体装置の裏面および外部金属端子37をマザーボード実装用接合材料49でマザーボード40に接合されて実装されている。
また、半導体装置が図3のような樹脂パッケージの場合、図3(c)のマザーボード実装面から見た図面で説明すると、外部金属端子37とマザーボードをはんだで電気的接合がなされる。図4(a)で説明するとマザーボード40に外部金属端子37がマザーボード実装用接合材料49で接合される。
【0044】
つまり、半導体装置と、半導体装置を搭載するマザーボードと、半導体装置とマザーボードとを接合するマザーボード実装用接合材料である第1の接合材料とを具備し、第1の接合材料は、第1の合金を含む。
【0045】
半導体装置は、半導体素子と、半導体素子と接続される半導体基板電極と、半導体素子と裏面金属電極とを接合する第2の接合材料とを具備し、第2の接合材料は、実施の形態1または実施の形態2のダイボンド材である接合材料からなる。
【0046】
第1の接合材料は、リフロー装置による加熱で溶融することが好ましく、例えば200〜230℃の溶融温度を有する。このような溶融温度を有する接合材料は、従来から数多く提案されており、当業者であれば容易に入手可能である。
【0047】
第2の接合材料は、第1の接合材料よりも高い溶融温度を有する。よって、半導体装置をマザーボードに実装する際に、リフロー装置を用いた場合でも、半導体装置内の第2の接合材料の溶融は起こらない。よって、半導体素子の接続不良を抑制し、半導体装置の実装性および電気的信頼性を確保することができる。
【0048】
なおこのような図3に示すようなパッケージである場合には、表面実装タイプであるために図4(a)のような実装をする必要があり、図4(b)からもわかるように、熱が伝わるとともに半導体素子への応力が非常に高くなる構造体であるがために半導体素子のクラックが問題となりやすい。そのため、半導体装置内の第2の接合材料のボイドや不均一な状態での固着により、上述した半導体素子のクラックや半導体素子の放熱特性の劣化を生じさせる。したがって、溶融温度を高めることにより、半導体素子の接続不良を抑制し、半導体装置の実装性および電気的信頼性を確保することができる接合材料がより重要になる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、半導体素子の接続不良を抑制し、半導体装置の実装性および電気的信頼性を確保することができ、半導体素子と半導体基板との接合に用いるダイボンド材とダイボンド材を使用した半導体装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の半導体装置の構造を示す図
【図2】本発明の半導体基板表面のみに金属薄膜を形成した半導体装置の構造を示す図
【図3】本発明の半導体装置の構成を示す図
【図4】本発明の半導体装置の実装状態を説明するための図
【図5】2元合金の共晶点温度を示す図
【図6】Bi−Cu二元合金におけるCu含有量とBi−Cu合金の融点と粘度の関係を示す図
【図7】Bi−Cu合金にGe、Al、LiまたはPを添加した場合の酸化物生成量を例示する図
【図8】Bi−Cu−Ge合金におけるGe含有量と酸化物生成量との関係を示す図
【図9】Bi−Cu−Ge−Ni合金におけるNi含有量と、結晶外周値との関係を示す図
【符号の説明】
【0051】
11、21、31、41 半導体基板
12、22 金属薄膜
13、23、33、43 半導体素子
14、24 金属薄膜
15、25、35、45 接合材料
36、46 樹脂
30、37、47 外部金属端子
38、48 金属ワイヤー
39 金属電極パッド
40 マザーボード
49 マザーボード実装用接合材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を半導体基板に搭載してなる半導体装置であって、
前記半導体基板に形成される1または複数の外部金属端子と、
前記半導体素子と前記半導体基板とをそれぞれの電極を介して電気的に接続するための接続部と、
前記半導体素子と前記半導体基板を接合するBiを主成分とする合金からなるダイボンド材と
を有し、前記合金が0.8〜10重量%のCuと0.02〜0.2重量%のGeとを含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記Cuの含有量が0.8〜3.8重量%であり、前記Geの含有量が0.02〜0.05重量%であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記合金が、さらに0.02〜0.08重量%のNiを含むことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項4】
前記合金が、さらに0.02〜0.05重量%のNiを含むことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体基板に半導体素子を接合するダイボンド材であって、
Biを主成分とし、0.8〜10重量%のCuと0.02〜0.2重量%のGeとを含む合金であることを特徴とするダイボンド材。
【請求項6】
前記Cuの含有量が0.8〜3.8重量%であり、前記Geの含有量が0.02〜0.05重量%であることを特徴とする請求項5記載のダイボンド材。
【請求項7】
前記合金が、さらに0.02〜0.08重量%のNiを含むことを特徴とする請求項5または請求項6のいずれかに記載のダイボンド材。
【請求項8】
前記合金が、さらに0.02〜0.05重量%のNiを含むことを特徴とする請求項5または請求項6のいずれかに記載のダイボンド材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−158725(P2009−158725A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335423(P2007−335423)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】