説明

半導体装置の印字方法およびその印字方法が用いられて作製された半導体装置

【課題】型名などを容易にかつ確実に印字する半導体装置の印字方法を提供する。
【解決手段】本発明によって提供される半導体装置の印字方法は、半導体チップ1と、この半導体チップ1を覆う樹脂パッケージ5とを含む半導体装置Aに対して、その表面に印字するための印字方法であって、樹脂パッケージ5の表面に溝部6を形成する工程と、溝部6の内部に樹脂パッケージ5に対して識別可能な熱硬化性樹脂7を充填する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばチップ型の半導体装置の表面に記号などを印字するための半導体装置の印字方法、およびその印字方法が用いられて作製された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえばツェナーダイオードなどが内蔵されたチップ型の半導体装置が提案されている。この半導体装置は、たとえば略直方体形状に形成され、その上面には、型名などを表す記号などが印字されている。
【0003】
半導体装置の表面に印字する方法としては、たとえば特許文献1に、印字文字などとなるマーク部材を半導体装置の表面に埋め込む方法が開示されている。図6は、従来の、半導体装置Xの印字方法を示す概略図である。
【0004】
従来の半導体装置Xの印字方法では、図6(a)に示すように、下金型90の上面に半導体チップ91が搭載された基板92が支持され、下金型90と対向して上金型93が配置される。上金型93の下面には、型名などを表すマーク部材94が保持された転写シート95が密着される。そして、下金型90と上金型93との間の空間96に封止樹脂97を流し込むことにより、半導体チップ91および基板92が一括封止される。
【0005】
その後、図6(b)に示すように、転写シート95が除去され、このとき、マーク部材94は、封止樹脂97の表面に残存し封止樹脂97に埋め込まれた格好となる。これにより、この半導体装置Xでは、マーク部材94が印字されたことになり、マーク部材94によって型名などが把握される。
【0006】
しかしながら、従来の半導体装置Xの印字方法では、封止樹脂97の注入時には、型名などを表すマーク部材94が転写シート95に保持された状態を維持しなければならない。その一方で、転写シート95を除去するときには、マーク部材94を転写シート95から確実に離脱させなければならず、場合によっては文字欠けなどの不具合を生じる可能性があった。特に、比較的小型の半導体装置Xに上記印字方法を適用しようとすれば、マーク部材94は必然的に小さくなるので、その取り扱いが困難となり、上記不具合の生じる可能性がより顕著となる。さらに、封止前には予め転写シート95上に複数のマーク部材94を正確に配置させる必要があり、マーク部材94が小さくなると、マーク部材94同士の位置合わせも困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−134660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、型名などを容易にかつ確実に印字することができる半導体装置の印字方法を提供することをその課題とする。また、その印字方法が用いられて作製された半導体装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面によって提供される半導体装置の印字方法は、半導体チップと、この半導体チップを覆う樹脂パッケージとを含む半導体装置に対して、その表面に印字するための半導体装置の印字方法であって、上記樹脂パッケージの表面に溝部を形成する工程と、上記溝部の内部に上記樹脂パッケージに対して識別可能な樹脂を充填する工程と、を有することを特徴としている。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記樹脂を充填する工程の後、上記樹脂パッケージの表面にある余分な樹脂を除去する工程を、さらに有する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記溝部を形成する工程では、上記樹脂パッケージの表面をレーザ光によって掘削することにより溝部を形成する。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記樹脂パッケージは、黒色またはそれに近似する暗灰色であり、上記樹脂は、白色またはそれに近似する明灰色を有する熱硬化性樹脂である。
【0013】
このような構成によれば、樹脂パッケージの表面がたとえばレーザ光などによって掘削されて溝部が形成され、溝部にたとえば熱硬化性樹脂が充填される。溝部の内部に充填された熱硬化性樹脂は、外部に露出されるので、露出された熱硬化性樹脂によって型名などの記号を表すことができる。したがって、従来の印字方法に比べ、型名などの記号を容易にかつ確実に印字することができる。また、熱硬化性樹脂が白色またはそれに近似する明灰色を有しておれば、記号部分が高い視認性を有する半導体装置とすることができる。
【0014】
本発明の第2の側面によって提供される半導体装置は、半導体チップと、この半導体チップを覆う樹脂パッケージとを含む半導体装置であって、上記樹脂パッケージの表面に形成され、かつ内表面に凹凸を有する溝部を備え、上記溝部の内部には、上記樹脂パッケージに対して識別可能な樹脂が充填されていることを特徴としている。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記樹脂パッケージは、黒色またはそれに近似する暗灰色であり、上記樹脂は、白色またはそれに近似する明灰色である。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の印字方法が適用される半導体装置を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う要部断面図である。
【図3】本発明の印字方法を説明するための図である。
【図4】本発明の印字方法を説明するための図である。
【図5】本発明の印字方法を説明するための図である。
【図6】従来の半導体装置の印字方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1および図2は、本発明の印字方法が適用されて製造された半導体装置の一例を示す図である。図1は、半導体装置の要部斜視図であり、図2は、図1におけるII−II線に沿う要部断面図である。この半導体装置Aは、内部に半導体素子を備え、全体としてたとえばツェナーダイオードやPINダイオードなどを構成するものである。
【0020】
半導体装置Aは、半導体チップ1、互いに離間する金属製のリード2,3、ワイヤ4、および樹脂パッケージ5を備えている。半導体装置Aは、たとえば幅Wが0.6mm程度、奥行きDが0.3mm程度、高さHが0.3mm程度とされている。半導体装置Aは、リード2,3によって図示しない実装基板に対して表面実装可能とされている。
【0021】
半導体チップ1は、2つの電極を備えている。これらの電極は、半導体チップ1の下面および上面に形成されている。半導体チップ1は、その厚みH1がたとえば0.08mm程度とされている。半導体チップ1は、リード2の表面に搭載されている。これにより、半導体1の下面の電極は、リード2と導通している。一方、半導体チップ1の上面の電極は、ワイヤ4を介してリード3に接続されている。これにより、半導体チップ1の上面の電極は、リード3と導通している。リード2,3の厚みH2は、たとえば0.1mm程度とされている。
【0022】
樹脂パッケージ5は、半導体チップ1およびワイヤ4を保護するためのものである。樹脂パッケージ5は、遮光性を有するたとえば黒色あるいはそれに近似する暗灰色のシリコン樹脂を用いて形成されている。樹脂パッケージ5の上面には、この半導体装置Aの型名または型番などを表す記号などが印字されている。より詳細には、樹脂パッケージ5の上面には、上記記号を表す溝部6が形成され、この溝部6にたとえば白色あるいはそれに近似する明灰色の熱硬化性樹脂7が充填されている。
【0023】
溝部6は、後述するように、たとえばレーザ光が照射されることにより形成され、その内表面が凹凸状となっている。また、レーザ光が照射されることで樹脂パッケージ5の上面における溝部6の縁部も、厳密にはぎざぎざの非直線状になっている。溝部6は、その幅W1が30μm程度、その深さH3が10〜25μm程度とされている。
【0024】
次に、半導体装置Aの印字方法について、図3および図4を参照して説明する。
【0025】
半導体装置Aの印字方法においては、図3に示すように、半導体装置Aとなる部分が複数個連なっている上面視矩形状の連接基材11が準備される。連接基材11は、たとえば以下に示す工程によって製作される。すなわち、図示しない配置台の所定位置にリード2,3となる複数の棒状のリード材12を配置させ、リード材12の適所に複数の半導体チップ1を実装する。半導体チップ1の上面とリード材12とをワイヤ4でワイヤ・ボンディングする。そして、半導体チップ1、リード材12を覆うように封止樹脂13で封止し樹脂パッケージ5となる部分を作成する。なお、図3には、たとえば8個分の半導体装置Aとなる連接基材11が記載されているが、連接基材11を構成する半導体装置Aの数は、これに限るものではない。
【0026】
このようにして連接部材11を準備した後、図4(a),(b)に示すように、連接基材11の表面において型名などの記号となる部分を掘削することにより形成する。なお、図4は、連接部材11の要部を示している。より具体的には、封止樹脂13の表面に、所望の記号部分に相当する複数の溝部6を形成する。溝部6は、図示しないレーザ発振装置に接続されたトーチ14から出力されるレーザ光を、封止樹脂13の表面に照射させることにより形成される。この場合、レーザ発振装置では、たとえばYVOレーザが用いられ、レーザ光は、たとえば1064μmの波長で発振される。
【0027】
上記のように、レーザ発振装置によるレーザ光によって、封止樹脂13に溝部6が形成されると、図4(b)に示すように、溝部6の内表面は凹凸状となる。また、封止樹脂13の上面における溝部6の縁部も、厳密にはぎざぎざの非直線状になる。なお、封止樹脂13を掘削する方法としては、レーザ発振装置のレーザ光による方法に限るものではない。また、図4(b)には、複数の溝部6が整列するように形成されているが、これは掘削の一例を示すものであり、溝部6の掘削形状は印字される記号による。
【0028】
次に、溝部6が形成された連接基材11の表面に、図4(c)に示すように、熱硬化性樹脂7を塗布する。この場合、溝部6の内部に熱硬化性樹脂7が充填されるようにする。ここで、熱硬化性樹脂7は、たとえば白色あるいはそれに近似する明灰色であることが望ましいが、樹脂パッケージ5の表面色(本実施形態では黒色あるいはそれに近似する暗灰色)と色合いが十分に異なり、印字文字が明瞭であるものならば、熱硬化性樹脂7の色は白色などに限るものではない。
【0029】
次いで、図4(d)に示すように、連接基材11の表面に沿ってスキージ15などを移動させることにより、連接基材11の表面にある余分な熱硬化性樹脂7を除去する。これにより、図4(e)に示すように、溝部6以外の封止樹脂13の上面、および溝部6に埋まっている熱硬化性樹脂7を外部に露出させることができる。なお、余分な熱硬化性樹脂7を除去するには、スキージ15以外のものが用いられてもよい。
【0030】
次に、熱硬化性樹脂7の表面に熱を加え、熱硬化性樹脂7を硬化させる。なお、熱硬化性樹脂7は、自然乾燥によって硬化させてもよい。
【0031】
その後、図5に示すように、図示しないダイシングソーなどによって切断線Lに沿って連接基材11を所定の大きさに切断する。これにより、図1および図2に示すような形状の半導体装置Aを得ることができる。
【0032】
このように、本実施形態の印字方法によれば、半導体装置Aとなる部分の封止樹脂13の表面がたとえばレーザ光などによって掘削されて溝部6が形成され、溝部6に熱硬化性樹脂7が充填される。これにより、溝部6の内部に充填された熱硬化性樹脂7を外部に露出させることができるので、露出された熱硬化性樹脂7によって型名などの記号を表すことができる。したがって、たとえばマーク部材を封止樹脂に埋め込むことにより記号部分を形成していた従来の印字方法に比べ、型名などの記号を容易にかつ確実に印字することができる。また、熱硬化性樹脂7は、白色またはそれに近似する明灰色で構成されているので、記号部分において高い視認性を有する半導体装置Aとすることができる。
【0033】
本発明に係る半導体装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る半導体装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、半導体装置Aにおける樹脂パッケージ5内の構成は、図1または図2に示す構成に限るものではない。
【符号の説明】
【0034】
A 半導体装置
1 半導体チップ
2、3 リード
4 ワイヤ
5 樹脂パッケージ
6 溝部
7 熱硬化性樹脂
11 連接基材
12 リード材
13 封止樹脂
14 トーチ
15 スキージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、この半導体チップを覆う樹脂パッケージとを含む半導体装置に対して、その表面に印字するための半導体装置の印字方法であって、
上記樹脂パッケージの表面に溝部を形成する工程と、
上記溝部の内部に上記樹脂パッケージに対して識別可能な樹脂を充填する工程と、
を有することを特徴とする、半導体装置の印字方法。
【請求項2】
上記樹脂を充填する工程の後、上記樹脂パッケージの表面にある余分な樹脂を除去する工程を、
さらに有する、請求項1に記載の半導体装置の印字方法。
【請求項3】
上記溝部を形成する工程では、上記樹脂パッケージの表面をレーザ光によって掘削することにより溝部を形成する、請求項1または2に記載の半導体装置の印字方法。
【請求項4】
上記樹脂パッケージは、黒色またはそれに近似する暗灰色であり、
上記樹脂は、白色またはそれに近似する明灰色を有する熱硬化性樹脂である、請求項1ないし3のいずれかに記載の半導体装置の印字方法。
【請求項5】
半導体チップと、この半導体チップを覆う樹脂パッケージとを含む半導体装置であって、
上記樹脂パッケージの表面に形成され、かつ内表面に凹凸を有する溝部を備え、
上記溝部の内部には、上記樹脂パッケージに対して識別可能な樹脂が充填されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
上記樹脂パッケージは、黒色またはそれに近似する暗灰色であり、
上記樹脂は、白色またはそれに近似する明灰色である、請求項5に記載の半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate