説明

半導体装置の製造方法、フィルム状接着剤及び接着剤シート

【課題】フリップチップ実装による半導体装置の製造方法、それに用いるフィルム状接着剤及び接着剤シートを提供する。
【解決手段】ハンダバンプが形成された機能面を有する半導体ウェハの機能面に、接着剤層2を設けて接着剤層付き半導体ウェハ20を得る第1工程と、接着剤層付き半導体ウェハ20の機能面とは反対側の面を研削して半導体ウェハ20を薄化する第2工程と、薄化した半導体ウェハ20を接着剤層2とともに切断して複数の半導体素子に切り分けて接着剤層付き半導体素子を得る第3工程と、接着剤層付き半導体素子と、電極を有する他の半導体素子又は電極を有する半導体素子搭載用支持部材4とを、ハンダバンプ22及び電極が対向する方向にハンダバンプ22が有するハンダの融点より低い温度で加圧する第4工程と、加熱によりハンダバンプ22が有するハンダを溶融させてハンダバンプ22と電極とを接合する第5工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、及びそれに用いるフィルム状接着剤及び接着剤シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスの高機能化、軽薄短小化に伴って、半導体素子をフェイスダウン構造で配線回路基板に搭載するフリップチップ実装が行われている。
【0003】
一般にフリップチップ実装においては、半導体素子を保護するために半導体素子と、配線回路基板の間隙にアンダーフィル材による樹脂封止がなされる。アンダーフィル材の充填方式としては、チップと基板とを接続した後に低粘度の液状樹脂を注入する方式と、基板上にアンダーフィル材を設けた後にチップを搭載する方式がある。更に、後者の方式には、液状樹脂を塗布する方式とフィルム状樹脂を貼付ける方式がある。
【0004】
液状樹脂を用いる方式は、ディスペンサーによる精密な塗布量コントロールが困難である。特に、近年の薄型化されたチップを実装する場合、塗布量が多すぎると、ボンディング時に滲み出した樹脂がチップの側面を這い上がり、ボンディングツールを汚染してしまう。そのため、本方式では、ツールの洗浄が必要となり、量産時の工程が煩雑化する。
【0005】
他方、フィルム状樹脂を用いる方式は、フィルムの厚みを調整することによって最適な樹脂量を与えることが容易にできる反面、仮圧着工程と呼ばれるフィルム状樹脂を基板に貼付ける工程を必要とする。通常、仮圧着工程は、対象となるチップ幅よりも大きめの幅にスリットされたリール状の接着剤テープを用意し、チップサイズに応じて基材上の接着剤テープをカットして接着剤が反応しない程度の温度で基板上に熱圧着する。ところが、チップ搭載位置にフィルムを精度よく供給することは難しく、また微小チップなどに対応した細幅のリール加工は困難であることから、一般的に、歩留りの確保には、仮圧着で貼付けるフィルムをチップサイズより大きくすることで対応している。そのため、本方式では、隣接部品との距離や実装面積を余分に確保する必要があり、高密度化実装に対応しにくい。
【0006】
最近、高密度化実装技術の一つとして、接着剤層付き半導体ウェハを作製し、このウェハから得られる接着剤層付き半導体素子を用いる方法が検討されている。例えば、下記特許文献1には、フィルム状の接着剤が貼付されたウェハを準備し、このウェハの裏面を研削した後、ウェハを接着剤と共に切断してチップ化することにより、チップにチップサイズと同サイズの接着剤が付着したフィルム状接着剤付チップを作製し、これを回路基板に実装して半導体装置を製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−049482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ハンダバンプを有する接着剤層付チップの実装では、熱圧着によってハンダを溶融してハンダバンプと基板の電極とを接合し、接着剤を硬化させる。しかし、圧着温度は高温であり、かつ圧着時間は短時間であるため、従来の方法では、高温による発泡や圧着後のスプリングバックに起因して発生するバンプ部分のボイドを十分抑制することが難しい。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、圧着後のバンプ部分のボイドを十分に低減することができ、フリップチップ実装による半導体装置の製造における生産性を向上させることができる半導体装置の製造方法、それに用いるフィルム状接着剤及び接着剤シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ハンダバンプが形成された機能面を有する半導体ウェハの機能面に、熱硬化性樹脂とイミダゾール系硬化剤とを含有し、180℃における粘度が40〜350Pa・sであり、180℃におけるゲルタイムが15〜60秒であり、250℃におけるゲルタイムが3〜10秒である接着剤層を設けて接着剤層付き半導体ウェハを得る第1工程と、接着剤層付き半導体ウェハの機能面とは反対側の面を研削して半導体ウェハを薄化する第2工程と、薄化した半導体ウェハを接着剤層とともに切断して複数の半導体素子に切り分けて接着剤層付き半導体素子を得る第3工程と、接着剤層付き半導体素子と、電極を有する他の半導体素子又は電極を有する半導体素子搭載用支持部材とを、ハンダバンプ及び電極が対向する方向にハンダバンプが有するハンダの融点より低い温度で加圧する第4工程と、加熱によりハンダバンプが有するハンダを溶融させてハンダバンプと電極とを接合する第5工程と、を備える半導体装置の製造方法を提供する。
【0011】
なお、ハンダバンプが形成された機能面とは、半導体ウェハのハンダバンプが形成されている側の面を指す。
【0012】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、圧着後のバンプ部分のボイドを十分に低減することができ、フリップチップ実装による半導体装置の製造における生産性を向上させることができる。このような効果が得られる理由としては、半導体ウェハの機能面に上記特定の接着剤層を設け、上記第4工程及び第5工程によってハンダバンプと電極との接合を行うことにより、接着剤層の粘度特性及び硬化速度と熱圧着工程とを適合させることができ、これにより、ハンダバンプの周囲を接着剤で十分埋め込むことができるとともにハンダバンプと電極とが十分接触した状態でハンダの溶融と接着剤の硬化とを十分に行うことができ、圧着後のスプリングバックによってバンプ部分にボイドが発生してしまうことを十分防止することができることが考えられる。
【0013】
本発明の半導体装置の製造方法において、上記接着剤層がフラックス成分を更に含有し、第4工程の加圧をフラックス成分の融点又は軟化点より高い温度かつハンダバンプが有するハンダの融点より低い温度で行ってもよい。この場合、より強固な接続状態を得ることができる。
【0014】
また、本発明の半導体装置の製造方法において、支持基材及び該支持基材上に設けられた粘着剤層を有するバックグラインドテープと、該バックグラインドテープの前記粘着剤層上に設けられ、熱硬化性樹脂とイミダゾール系硬化剤とを含有し、180℃における粘度が40〜350Pa・sであり、180℃におけるゲルタイムが15〜60秒であり、250℃におけるゲルタイムが3〜10秒である接着剤層と、を備える、接着剤シートを用いて上記接着剤層付き半導体ウェハを得てもよい。この場合、製造工程を更に簡略化することができる。
【0015】
本発明はまた、熱硬化性樹脂とイミダゾール系硬化剤とを含有し、180℃における粘度が40〜350Pa・sであり、180℃におけるゲルタイムが15〜60秒であり、250℃におけるゲルタイムが3〜10秒であるフィルム状接着剤であって、ハンダバンプが形成された機能面を有する半導体ウェハを準備し、該半導体ウェハの機能面にフィルム状接着剤を貼り付け、半導体ウェハの機能面とは反対側の面を研削して半導体ウェハを薄化し、半導体素子又は半導体素子搭載用支持部材に接着するために用いられる、フィルム状接着剤を提供する。
【0016】
本発明のフィルム状接着剤は、上記の用途において、ウェハ裏面研削性、ハンダバンプの埋込性及び接続性を十分満たすことができる。
【0017】
本発明のフィルム状接着剤は、フラックス成分を更に含有することができる。
【0018】
本発明はまた、支持基材及び該支持基材上に設けられた粘着剤層を有するバックグラインドテープと、該バックグラインドテープの粘着剤層上に設けられ、熱硬化性樹脂とイミダゾール系硬化剤とを含有し、180℃における粘度が40〜350Pa・sであり、180℃におけるゲルタイムが15〜60秒であり、250℃におけるゲルタイムが3〜10秒である接着剤層と、を備える、接着剤シートであって、ハンダバンプが形成された機能面を有する半導体ウェハを準備し、該半導体ウェハの機能面に接着剤シートのフィルム状接着剤を貼り付け、半導体ウェハの機能面とは反対側の面を研削して半導体ウェハを薄化し、半導体素子又は半導体素子搭載用支持部材に接着するために用いられる接着剤シートを提供する。
【0019】
本発明の接着剤シートは、上記の用途において、ウェハ裏面研削性、ハンダバンプの埋込性及び接続性を十分満たすことができ、しかも半導体装置の製造工程を更に簡略化することができる。
【0020】
本発明の接着剤シートは、接着剤層がフラックス成分を更に含有することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、圧着後のバンプ部分のボイドを十分に低減することができ、フリップチップ実装による半導体装置の製造における生産性を向上させることができる半導体装置の製造方法、それに用いるフィルム状接着剤及び接着剤シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の接着剤シートの一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
【図3】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
【図4】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
【図5】本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態は、支持基材及び該支持基材上に設けられた粘着剤層を有するバックグラインドテープと、該バックグラインドテープの粘着剤層上に設けられ、熱硬化性樹脂とイミダゾール系硬化剤とを含有し、180℃における粘度が40〜350Pa・sであり、180℃におけるゲルタイムが15〜60秒であり、250℃におけるゲルタイムが3〜10秒である接着剤層と、を備える、接着剤シートを用意し、ハンダバンプが形成された機能面を有する半導体ウェハの機能面に、上記接着剤層を貼り付けて接着剤層付き半導体ウェハを得る第1工程と、接着剤層付き半導体ウェハの機能面とは反対側の面を研削して半導体ウェハを薄化する第2工程と、薄化した半導体ウェハを接着剤層とともに切断して複数の半導体素子に切り分けて接着剤層付き半導体素子を得る第3工程と、接着剤層付き半導体素子と、電極を有する他の半導体素子又は電極を有する半導体素子搭載用支持部材とを、ハンダバンプ及び電極が対向する方向にハンダバンプが有するハンダの融点より低い温度で加圧する第4工程と、加熱によりハンダバンプが有するハンダを溶融させてハンダバンプと電極とを接合する第5工程と、を備える。
【0024】
図1は、本発明の接着剤シートの一実施形態を示す模式断面図である。図1に示される接着剤シート10は、第1の支持基材1、本発明に係るフィルム状接着剤(接着剤層)2、粘着剤層3、及び第2の支持基材4から構成されている。本実施形態の接着剤シート10は、バックグラインド及び回路部材接続の両用途を兼ね備えることができるシートであり、接着剤層2が、ハンダバンプが形成された機能面を有する半導体ウェハの機能面に貼り付けられる。
【0025】
まず、本実施形態の接着剤シートが有するフィルム状接着剤(接着剤層)2について説明する。
【0026】
フィルム状接着剤(接着剤層)2は、熱硬化性樹脂とイミダゾール系硬化剤とを含有し、180℃における粘度が40〜350Pa・sであり、180℃におけるゲルタイムが15〜60秒であり、250℃におけるゲルタイムが3〜10秒である。
【0027】
フィルム状接着剤は、半導体素子や半導体素子搭載用支持部材などの回路部材を接続、接着させるために熱硬化性樹脂を含有する。
【0028】
熱硬化性樹脂としては、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂ハンドブック(新保正樹編、日刊工業新聞社)に記載されるエポキシ樹脂を広く使用することができる。具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂を使用することができる。また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂等、一般に知られているものを適用することができる。中でも、低粘度の観点より、液状エポキシ樹脂やジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、高接着の観点より、フェノールノボラック型エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂などが好ましい。
【0029】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート807,815,825,827,828,834,1001,1004,1007,1009、ダウケミカル社製DER−330,301,361、東都化成(株)製YD8125,YDF8170等が挙げられる。
【0030】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート152,154、日本化薬(株)製EPPN−201、ダウケミカル社製DEN−438等が挙げられる。
【0031】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬(株)製EOCN−102S,103S,104S,1012,1025,1027、東都化成(株)製YDCN701,702,703,704等のo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0032】
高機能型エポキシ樹脂としては、DIC(株)製HP−7200等が挙げられる。
【0033】
多官能エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン(株)製E1032−H60、チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製アラルダイト0163、ナガセケムテックス(株)製デナコールEX−611,614,614B,622,512,521,421,411,321等が挙げられる。
【0034】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート604、東都化成(株)製YH−434、三菱ガス化学(株)製TETRAD−X,TETRAD−C、住友化学(株)製ELM−120等が挙げられる。
【0035】
複素環含有エポキシ樹脂としては、チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製アラルダイトPT810等、UCC社製ERL4234,4299,4221,4206等が挙げられる。
【0036】
上記のエポキシ樹脂は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
フィルム状接着剤(接着剤層)2における熱硬化性樹脂の含有量は、フィルム状接着剤全量100質量部に対して、5〜75質量部が好ましく、5〜55質量部がより好ましい。熱硬化性樹脂の含有量が上記の範囲にあると、フィルム状接着剤(接着剤層)の弾性率及びフロー性抑制が十分確保でき、高温での取り扱い性を良好にできる。
【0038】
フィルム状接着剤(接着剤層)2は、熱硬化性樹脂の硬化を促進するためにイミダゾール系硬化剤を含有する。イミダゾール系硬化剤としては、接着剤層を形成するBステージ温度ではほとんど反応せず、ハンダを溶融させる高温の圧着温度で上記のエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂の硬化を高度に促進する化合物を用いることができる。例えば、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0039】
フィルム状接着剤(接着剤層)2におけるイミダゾール系硬化剤の含有量としては、熱硬化性樹脂100質量部に対して1質量部〜20質量部が好ましい。イミダゾール系硬化剤の含有量が係る範囲にあると、圧着時にハンダバンプと電極とが接触するまでは硬化をあまり進行させず、ハンダバンプと電極との接触、接続後に樹脂の硬化を開始させてフリップチップボンダーのヘッドが上がるまでの短い間で硬化を十分進行させることができる。これにより、ハンダバンプの埋込み、ハンダバンプと電極との接触を十分なものとしながら、スプリングバックによるボイド発生を防ぐことができ、圧着後のバンプ部分のボイドを十分に低減することができる。
【0040】
フィルム状接着剤(接着剤層)2は、フィルム形成成分としての高分子量成分を含有することができる。高分子量成分としては、接続信頼性を考慮に入れたものを用いることが好ましい。そのような高分子量成分として、アクリルゴムやフェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂が挙げられる。アクリルゴムとしては、接着性向上の点で、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、カルボキシル基、水酸基、エピスルフィド基などの官能基を有するものが好ましい。アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレート及びアクリロニトリルなどとの共重合体や、エチルアクリレート及びアクリロニトリルなどとの共重合体などからなるゴムである。共重合体モノマーとしては、例えば、ブチルアクリレート、エチルアクリレートアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等を挙げることができる。
【0041】
また、アクリルゴムとしては、架橋性の点で、グリシジル基を有する高分子量成分が好ましい。具体的には、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートを含む原料モノマーを重合させて得られる重量平均分子量が10万以上であるグリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体を挙げることができる。なお、本明細書において、グリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体とは、グリシジル基含有アクリル共重合体とグリシジル基含有メタクリル共重合体の両方を示す語句である。
【0042】
アクリルゴムは、上記共重合モノマーと、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートなどとから適宜モノマーを選択して製造したものを用いることができる。
【0043】
アクリルゴムとして、上記グリシジル基含有モノマーを重合させて得られるグリシジル基含有アクリル共重合体を使用する場合、その重合方法としては特に制限はなく、例えば、パール重合、溶液重合などの方法を使用することができる。
【0044】
アクリルゴムの重量平均分子量は、10万以上であることが好ましく、30万〜300万であることがより好ましく、40万〜250万であることが更により好ましく、50万〜200万であることが特に好ましい。アクリルゴムの重量平均分子量がこの範囲にあると、接着剤層の強度、可とう性及びタック性を良好にバランスさせることが容易となるとともに接着剤層のフロー性が良好となるため、配線の回路充填性(埋込性)を十分確保できる。なお、本明細書において、重量平均分子量とは、表1に示す条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
【0045】
【表1】



【0046】
フィルム状接着剤(接着剤層)2における高分子量成分の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して5〜55質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。
【0047】
フィルム状接着剤(接着剤層)2は、フィラーを含有することができる。フィラーとしては、無機フィラー及び有機フィラーがあり、求める用途によりどちらを用いてもよい。
【0048】
無機フィラーは、フィルム状接着剤(接着剤層)の取扱い性向上、熱伝導性向上、溶融粘度の調整及びチキソトロピック性付与、弾性率の向上などを目的として添加することができ、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が挙げられる。これらのフィラーは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
無機フィラーの形状は特に制限されない。なお、フィルム状接着剤(接着剤層)2に無機フィラーを添加する場合、フリップチップボンディングの際のチップと基板との位置あわせのためやダイシング時の位置合わせのために透過性が必要であることから、透過率が充分に維持できる程度に無機フィラーを加えることが好ましい。
【0050】
フィルム状接着剤(接着剤層)2における無機フィラーの含有量は、フィルム状接着剤全量100質量部に対して1〜100質量部が好ましい。係る含有量が1質量部未満であると、添加効果が十分に得られない傾向があり、100質量部を超えると、接着剤層の貯蔵弾性率の上昇、接着性の低下、ボイド残存による電気特性の低下等の問題が発生しやすくなる傾向がある。
【0051】
有機フィラーは、ボイド抑制効果や応力緩和を目的に添加することができ、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ブタジエンゴム、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート、アクリルゴム、ポリスチレン、NBR、SBR、シリコーン変性樹脂等を成分として含む共重合体が挙げられる。
【0052】
有機フィラーとしては、分子量が100万以上の有機微粒子又は三次元架橋構造を有する有機微粒子が好ましい。このような有機微粒子はフィルム状接着剤を形成するための接着剤組成物への分散性が高い。また、このような有機微粒子を含むフィルム状接着剤は、接着性と硬化後の応力緩和性に一層優れる。なお、ここで「三次元架橋構造を有する」とは、ポリマー鎖が三次元網目構造を有していることを示し、このような構造を有する有機微粒子は、例えば、反応点を複数有するポリマーを当該反応点と結合しうる官能基を二つ以上有する架橋剤で処理することで得られる。分子量が100万以上の有機微粒子、三次元架橋構造を有する有機微粒子は、いずれも溶媒への溶解性が低いことが好ましい。溶媒への溶解性が低いこれらの有機微粒子は、上述の効果を一層顕著に得ることができる。また、上述の効果を一層顕著に得る観点からは、分子量が100万以上の有機微粒子及び三次元架橋構造を有する有機微粒子は、(メタ)アクリル酸アルキル−シリコーン共重合体、シリコーン−(メタ)アクリル共重合体又はこれらの複合体からなる有機微粒子であることが好ましい。
【0053】
有機フィラーとして、コアシェル型の構造を有し、コア層とシェル層で組成が異なる有機微粒子を用いることもできる。コアシェル型の有機微粒子として、具体的には、シリコーン−アクリルゴムをコアとしてアクリル樹脂をグラフトした粒子、アクリル共重合体をコアとしてアクリル樹脂をグラフトとした粒子等が挙げられる。
【0054】
有機フィラーとして、分子量が100万以上の有機微粒子又は三次元架橋構造を有する有機微粒子を用いる場合、有機溶剤への溶解性が低いことから、粒子形状を維持したままでフィルム状接着剤中に含有させることができる。これにより、硬化後のフィルム状接着剤(接着剤層)2中に有機微粒子が島状に分散し、接続体の強度を向上させることができる。
【0055】
有機微粒子の平均粒径は0.1〜2μmであることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満ではフィルム状接着剤の溶融粘度が増加し、回路部材接続時にはんだが用いられる場合に、そのはんだ濡れ性を妨げる傾向あり、2μmを超えると溶融粘度の低減効果が少なくなり、接続時にボイド抑制効果が得られ難い傾向にある。
【0056】
フィルム状接着剤(接着剤層)2における有機フィラーの含有量は、フィルム状接着剤全量100質量部に対して1〜100質量部が好ましい。係る含有量が1質量部未満であると、添加効果が十分に得られない傾向があり、100質量部を超えると、接着性の低下、粘度上昇によるフィルムの凹凸が大きくなり、ボイド残存による電気特性の低下等の問題が発生しやすくなる傾向がある。
【0057】
フィルム状接着剤(接着剤層)2は、フラックス成分を含有することができる。フラックス成分としては、銅と銅、銅とハンダ、ハンダとハンダとの接合の際に酸化膜を除去し、強固な接続状態を作ることができるものを添加することができる。フラックス成分は、接着時のアウトガスおよび接着剤層の硬化後の弾性率や硬化後の線膨張係数のバランスから選定することができる。フラックス成分としては、例えば、アジピン酸、ジフェノール酸、セバシン酸等が挙げられる。
【0058】
フィルム状接着剤(接着剤層)2におけるフラックス成分の含有量は、フィルム状接着剤全量100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましい。
【0059】
フィルム状接着剤(接着剤層)2は、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を含有することができる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられる。但し、用いるカップリング剤の種類と、高分子量成分や熱硬化性樹脂との組み合わせによってはB−ステージ時に反応してしまうものがあるため、B−ステージ時に反応しにくいものを選定することが好ましい。
【0060】
上記シラン系カップリング剤としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらは、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。また、東レ・ダウコーニング(株)社製Z−6040(旧製品名SH−6040)などの市販品を用いることもできる。
【0061】
フィルム状接着剤(接着剤層)2におけるカップリング剤の含有量は、添加効果や耐熱性及びコストの面から、熱硬化性樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部とするのが好ましい。
【0062】
フィルム状接着剤(接着剤層)2には、本発明の効果を阻害しない程度であれば導電粒子を添加して、異方導電性接着フィルム(ACF)とすることができるが、導電粒子を含有させずに非導電性接着フィルム(NCF)とすることが好ましい。
【0063】
フィルム状接着剤(接着剤層)2は、上述した各成分を含有する接着剤組成物を溶剤に溶解若しくは分散してワニスとし、このワニスを第1の支持基材上に塗布し、加熱により溶剤を除去することによって形成することができる。
【0064】
第1の基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。市販のものとして、例えば、帝人デュポンフィルム株式会社製の「A−31」等のポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。厚みが10〜100μmであることが好ましく、30〜75μmであることがより好ましく、35〜50μmであることが特に好ましい。この厚みが10μm未満では塗工の際、第1の支持基材が破れる傾向があり、100μmを超えると廉価性に劣る傾向がある。
【0065】
上記ワニスを第1の支持基材上に塗布する方法としては、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等、一般に周知の方法が挙げられる。
【0066】
加熱により溶剤を除去するときの温度条件は70〜150℃程度が好ましい。
【0067】
用いる溶剤は、特に限定されないが、接着剤層形成時の揮発性等を沸点から考慮して決めることが好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の比較的低沸点の溶媒は接着剤層形成時に接着剤層の硬化が進みにくい点で好ましい。また、塗工性を向上させる目的で、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノン等の比較例高沸点の溶媒を使用することが好ましい。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
フィルム状接着剤(接着剤層)2の厚みは、特に制限はないが、2〜200μmが好ましい。厚みが2μmより小さいと、応力緩和効果が乏しくなる傾向があり、200μmより厚いと経済的でなくなる上に、半導体装置の小型化の要求に応えることが困難となる。
【0069】
フィルム状接着剤(接着剤層)2は、180℃における粘度が40〜350Pa・sであり、好ましくは45〜200Pa・s、さらに好ましくは50〜150Pa・sである。粘度が上記の範囲にあると、圧着時の樹脂溶融が容易になり、樹脂が十分に流動することができるため、ハンダバンプの周りにボイドが発生しにくく、さらには良好な接続をとるための前段階としてハンダバンプと電極との接触をより確実に図ることができる。
【0070】
また、ハンダバンプと電極との接触から接続までの樹脂の硬化時間が重要であり、フィルム状接着剤(接着剤層)2は、180℃におけるゲルタイムが15〜60秒であることが好ましく、17〜50秒であることがより好ましく、20〜40秒であることが更により好ましい。最終的な接続温度での硬化時間に関するものとして、250℃におけるゲルタイムが3〜10秒であることが好ましく、4〜9秒であることがより好ましく、5〜8秒であることが更により好ましい。
【0071】
フィルム状接着剤(接着剤層)2が、上記の条件を満たす特性を有し、上記第4工程及び第5工程によってハンダバンプと電極との接合を行うことにより、接着剤層の粘度特性及び硬化速度と熱圧着工程とを適合させることができ、これにより、ハンダバンプの周囲を接着剤で十分埋め込むことができるとともにハンダバンプと電極とが十分接触した状態でハンダの溶融と接着剤の硬化とを十分に行うことができ、圧着後のスプリングバックによってバンプ部分にボイドが発生してしまうことを十分防止することができる。
【0072】
フィルム状接着剤(接着剤層)2の180℃におけるゲルタイム及び250℃におけるゲルタイムは、JIS K5600−9−1に準じ、以下の手順で測定される。厚さ30μmのフィルム状接着剤を10mm□の打ち抜きパンチで打ち抜いたもの2枚(約0.01g)を重ね、更に4つ折りにして評価用サンプルを得る。得られた測定用サンプルを、所定の温度(180℃及び250℃)に熱せられているゲルタイム測定装置(ゲル化試験機、SYATEM SEIKO製)上に置き、竹串の先端にてかき混ぜ、樹脂溶融後、竹串の先端に一纏まりになるまでの時間(測定用サンプルを置いてから一纏まりになるまでの時間)を測定し、所定の温度におけるゲルタイムとする。
【0073】
フィルム状接着剤(接着剤層)2のゲルタイムの調整は、例えば、硬化成分の選定及びこれらの配合量によって行うことができる。
【0074】
また、フリップチップボンディング時の埋込性をより一層向上する観点から、フィルム状接着剤(接着剤層)2の5%重量減少温度は、180℃以上であることが好ましく、200〜350℃であることがより好ましい。
【0075】
本実施形態において、粘着剤層3及び第2の支持基材4はバックグラインドテープとして機能することができる。
【0076】
第2の支持基材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム等のプラスチックフィルムが挙げられる。また、第2の支持基材は、上記の材料から選ばれる2種以上が混合されたもの、又は、上記のフィルムが複層化されたものでもよい。
【0077】
第2の支持基材の厚みは、基材の厚みが薄いほうがラミネート性がよくなる傾向にあるが、5〜250μmが好ましく、30〜200μmがより好ましく、40〜150μmが更により好ましい。厚みが5μmより薄いと、半導体ウェハの研削(バックグラインド)時に支持基材が切れる可能性があり、250μmより厚いと経済的でなくなるため好ましくない。
【0078】
第2の支持基材は、光透過性が高いことが好ましく、具体的には、500〜800nmの波長域における最小光透過率が10%以上であることが好ましい。
【0079】
粘着剤層3は、例えば、主モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート及びメチルメタクリレートを用い、官能基モノマーとしてヒドロキシエチルアクリレート及びアクリル酸を用いた溶液重合法により合成されるアクリル共重合体を用いて形成することができる。例えば、上記アクリル共重合体を含有する塗布液を第2の支持基材上に塗布することにより、粘着剤層3を形成することができる。
【0080】
粘着剤層3の厚みは、1〜10μmが好ましい。厚みが1μm以下であると塗工が難しくなってしまい、さらには、ラミネート時の埋め込み性が劣る傾向がある。一方、粘着剤層3の厚みが10μmより厚いと、バックグラインド性が劣る可能性があるため好ましくない。
【0081】
本実施形態の接着剤シートは、ハンダバンプが形成された機能面を有する半導体ウェハを準備し、該半導体ウェハの前記機能面に接着剤シートのフィルム状接着剤を貼り付け、半導体ウェハの機能面とは反対側の面を研削して半導体ウェハを薄化し、半導体素子又は半導体素子搭載用支持部材に接着するために用いることができる。この場合、薄化した半導体ウェハを接着剤層とともに切断して得られる接着剤層付き半導体素子と、他の半導体素子又は半導体素子搭載用支持部材とを熱圧着することにより、ボイド発生が十分抑制され、接続信頼性に優れた半導体装置を得ることができる。
【0082】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法の各工程について説明する。本実施形態においては、上述した接着剤シート10を用いて接着剤層付き半導体ウェハを得ているが、ハンダバンプが形成された機能面を有する半導体ウェハの機能面に、上述したワニスを塗工することにより、接着剤層付き半導体ウェハを得てもよい。
【0083】
図2は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式断面図である。本実施形態においては、上述した接着剤シート10を用いて半導体装置が製造される。図2の(a)は、半導体ウェハの一実施形態を示す模式断面図であり、図2の(b)は、本実施形態の半導体装置の製造方法における一工程を説明するための模式断面図である。
【0084】
本実施形態で用いられる半導体ウェハは、半導体ウェハ20の一方面上に、バンプ22と、バンプ22上に設けられたはんだボール24とからなるハンダバンプ(突起電極)を備える。
【0085】
半導体ウェハ20としては、表面が酸化膜処理された6インチウェハや8インチウェハが挙げられる。バンプ22としては、特に限定されないが、銅、銀、金などで構成されるものが挙げられる。はんだボール24としては、鉛含有のはんだや鉛フリーはんだ等の従来公知のはんだ材料から構成されるものが挙げられる。
【0086】
薄厚化する前の半導体ウェハ20の厚みは、250〜800μmの範囲とすることができる。通常、切り出された半導体ウェハは、6〜12インチのサイズでは625〜775μmの厚みを有する。
【0087】
バンプ22の高さは、半導体小型化の観点から、5〜50μmが好ましい。はんだボール24の高さは、半導体小型化の観点から、2〜30μmが好ましい。
【0088】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、接着シート10から第1の支持基材1を剥離して、上記の半導体ウェハ20のハンダバンプが形成されている面(機能面)上に、フィルム状接着剤(接着剤層)2、粘着剤層3、第2の支持基材4をこの順に配置し、はんだボール24の先端が接着剤層2を貫通するように半導体ウェハ20と第2の支持基材4とに圧力を加える(図2の(b)を参照)。なお、はんだボールの先端が接着剤層を貫通することが最も望ましいが、数ミクロン程度の接着剤層がはんだボールの先端に残っていても、配線回路基板と半導体素子とがはんだボールを介して電気的に接続されるときの接続性に影響が無い程度であれば、なんら問題ない。本実施形態においては、半導体ウェハ20の機能面上に、真空ラミネートにより、接着剤層2を貼り合わせることにより、バンプの頭出しが容易となる。
【0089】
真空ラミネートには、ダイヤフラムを用いた方式や、ロールを用いた方式、また、プレス式などが存在するが、埋込性の観点よりダイヤフラム方式が好ましい。
【0090】
ラミネートの条件としては、ラミネート温度:50℃〜100℃、線圧:0.5〜3.0kgf/cm、送り速度:0.2〜2.0m/分が好ましい。
【0091】
真空ラミネートのダイヤフラム方式を用いる場合の条件としては、ステージ温度:20℃〜60℃、ダイヤフラム温度:50℃〜100℃、脱気時間:10〜100sec、加圧時間:10〜100sec、加圧:0.1〜1.0MPaが好ましい。ダイヤフラム方式の場合、ラミネート温度はダイヤフラム温度を指す。
【0092】
本実施形態においては、埋め込み性を良好にしてボイドの発生を十分抑制する観点から、フィルム状接着剤(接着剤層)2のラミネート温度におけるズリ粘度が6000Pa・s以下であることが好ましく、取り扱い性の点で100〜6000Pa・sが好ましい。ズリ粘度が100Pa・sより低いとラミネート時にボイドが出る傾向にあり、6000Pa・sより高いとラミネート時に充分にバンプ周辺を埋め込むことができず、好ましくない。
【0093】
フィルム状接着剤(接着剤層)2のズリ粘度は以下の手順で測定される。まず、厚さ30μmのフィルム状接着剤を作成し、これを60〜80℃の温度で貼り合わせることにより、400〜600μmの膜厚の測定用試料を作成する。この測定用試料について、ARES(TA INSTRUMENTS社製、製品名)を用いて、測定治具直径:8mm、測定周波数:10Hz、測定温度範囲:25℃〜260℃、昇温速度:10℃/分の条件でズリ粘度を測定し、所定の温度におけるズリ粘度が求められる。
【0094】
フィルム状接着剤(接着剤層)2のズリ粘度の調整は、例えば、高分子量成分の選定、フィラーの選定、及びこれらの配合量によって行うことができる。
【0095】
更に、圧着時の埋込性、ラミネート時のボイド低減の観点から、ラミネート温度におけるズリ粘度は200〜5500Pa・sがより好ましく、取り扱い性の観点から500〜5000Pa・sが更により好ましい。
【0096】
なお、ラミネートを、80℃を超える高温で行うと、バックグラインド後のウェハ反りが大きくなってしまう傾向がある。一方、ラミネート温度が低すぎると、バンプ周辺を埋め込むことが難しくなる傾向がある。そのため、ラミネートは50〜80℃で行うことが好ましい。本実施形態においては、フィルム状接着剤(接着剤層)2は80℃におけるズリ粘度が上記の範囲を満たすことが特に好ましい。
【0097】
次に、図3に示すように、半導体ウェハ20のハンダバンプ(突起電極)が形成されている側とは反対側の面を研磨して半導体ウェハ20を薄厚化する工程(バックグラインド工程)が行われる。
【0098】
研磨は、バックグラインダーを用いて行うことができる。また、この工程では、半導体ウェハ20を厚さ10〜150μmにまで薄厚化することが好ましい。薄厚化された半導体ウェハ20の厚さが10μm未満であると、半導体ウェハの破損が生じやすく、他方、150μmを超えると、半導体装置の小型化の要求に応えることが困難となる。
【0099】
その後、図4の(a)に示すように、薄厚化された半導体ウェハ20の研磨面側をダイシングシート6に貼り付け、ダイシング装置を用いて、半導体ウェハ20及び接着剤層2を切断し、個片化された半導体素子20aと切断された接着剤層2aとからなる接着剤付き半導体素子を得る(図4の(b))。第2の支持基材4及び粘着剤層3は、ダイシング前に接着剤層2から剥離される。
【0100】
こうして得られる接着剤層付き半導体素子は、本発明に係る接着シート10を用いて作製されることにより、突起電極付近が接着剤によって十分埋め込まれ、且つ、はんだボールの先端が接着剤から十分露出するものにすることができる。
【0101】
ダイシング工程の終了後、ピックアップ装置を用いて接着剤付き半導体素子をピックアップし、これを配線回路基板上に熱圧着する。
【0102】
本実施形態においては、接着剤層付き半導体素子と、電極を有する他の半導体素子又は電極を有する半導体素子搭載用支持部材とを、ハンダバンプ及び電極が対向する方向にハンダバンプが有するハンダの融点より低い温度で加圧する第1の熱圧着工程、及び、加熱によりハンダバンプが有するハンダを溶融させてハンダバンプと電極とを接合する第2の熱圧着工程の2段階の熱圧着を行う。
【0103】
接着剤層がフラックス成分を更に含有する場合、上記第1の熱圧着工程の加圧をフラックス成分の融点又は軟化点より高い温度かつハンダバンプが有するハンダの融点より低い温度で行ってもよい。この場合、より強固な接続状態を得ることができる。
【0104】
第1の熱圧着工程における熱圧着の条件としては、100℃〜200℃、圧力:0.1MPa〜1.5MPa、時間:1秒〜15秒が好ましく、温度:100℃〜180℃、圧力:0.1MPa〜1.0MPa、時間:1秒〜10秒がより好ましい。また、第2の熱圧着工程における熱圧着の条件としては、温度:230℃〜350℃、圧力:0.1MPa〜1.5MPa、時間:1秒〜15秒が好ましく、温度:230℃〜300℃、圧力:0.1MPa〜1.0MPa、時間:1秒〜15秒がより好ましい。
【0105】
なお、上記の温度及び圧力の条件は、接着剤層にかかる温度及び圧力を指す。
【0106】
このようにして、図5に示される、配線回路基板7の電極26と半導体素子20aのバンプ22とがはんだボール24を介して電気的に接続され、配線回路基板7と半導体素子20aとの間が接着剤2bにより封止された構造を有する半導体装置100が得られる。
【0107】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、はんだボールの先端を接着剤層から十分に露出させて、より確実な接続を行う観点から、接着剤層2の厚みが、ハンダバンプの高さ、本実施形態においてはバンプ22及びはんだボール24の合計高さTよりも小さく、且つ、接着剤層2及び第2の支持基材4の合計厚みが、上記合計高さよりも大きいことが好ましい。
【0108】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0109】
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0110】
<接着剤シートの作製>
(実施例1〜6、比較例1〜5)
下記表2又は3に示す組成比(単位:質量部)にて各成分を配合し、以下の工程を経て、フィルム状接着剤を作製した。
【0111】
まず、熱硬化性樹脂、硬化剤、フラックス成分、及び高分子量成分を、トルエンと酢酸エチルの混合溶媒中に溶解して、接着剤組成物のワニスを得た。得られたワニスを計量し、フィラーを下記表2又は3に示す組成比の割合となるように添加し、撹拌して分散物を得た。
【0112】
次に、得られた分散物を、支持基材としてのセパレータフィルム(PETフィルム、厚み38μm)上にロールコータを用いて塗布した後、70℃のオーブンで10分間乾燥させた。こうして、基材上に厚み30μmのフィルム状接着剤(接着剤層)が形成された接着シートを得た。
【0113】
他方で、バックグラインドテープを以下の手順で作製した。まず、主モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートを用い、官能基モノマーとしてヒドロキシエチルアクリレートとアクリル酸を用いたアクリル共重合体を溶液重合法にて得た。この合成したアクリル共重合体の重量平均分子量は40万、ガラス転移点は−38℃であった。このアクリル共重合体100質量部に、多官能イソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名コローネートHL)を10質量部の割合で配合して、粘着剤層形成用溶液を調製した。
【0114】
得られた粘着剤層形成用溶液を、厚さ100μmの軟質基材(ロンシール社製、軟質ポリオレフィンフィルム:POF−120A)の上に、乾燥時の粘着剤層の厚さが10μmになるよう塗工し、乾燥した。次に、シリコーン系離型剤を塗布したニ軸延伸ポリエステルフィルムセパレータ(厚さ25μm)を粘着剤層面にラミネートした。こうして得られた積層体を、室温で1週間放置して十分にエージングを行い、軟質基材/粘着剤層/セパレータの構成を有するバックグラインドテープを得た。
【0115】
その後、バックグラインドテープのセパレータを剥離し、露出した粘着剤層に、上記で得られた接着シートの接着剤層を、60℃にて貼り合わせ、支持基材/接着剤層/粘着剤層/軟質基材の構成を有する接着剤シートを得た。
【0116】
表2及び表3において、各記号は下記のものを意味する。
ZX−1356−2:東都化成(株)社製、BPA/BPF共重合型フェノキシ樹脂(Mw:60000、樹脂のTg:71℃)。
FX−293:東都化成(株)社製、フルオレン骨格含有フェノキシ樹脂(Mw:44000、樹脂のTg:163℃)。
G−2050M:日油(株)社製、マープルーフ、MMA/GMA二元系ポリマー、分子量20万、Tg:74℃、エポキシ当量340。
NO−009:根上工業(株)社製、MMA/GMA/BMA三元系ポリマー、分子量45万、Tg:40℃、エポキシ当量340。
1032H60:ジャパンエポキシレジン(株)社製、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型固形エポキシ樹脂(5%重量減少温度:350℃、固形、融点60℃)。
YL−983U:ジャパンエポキシレジン(株)社製、Bis−F型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量:184)。
HP−7200L:DIC(株)社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂。
HP−5000:DIC(株)社製、ナフタレン変性ノボラック型エポキシ樹脂。
YL−7175:ジャパンエポキシレジン(株)社製、長鎖Bis−F変性型エポキシ樹脂。
アジピン酸:和光純薬工業(株)社製。
2PHZ:四国化成工業(株)社製、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール。
2MAOK:四国化成工業(株)社製、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物。
HX−3941HP:旭化成ケミカルズ(株)社製、マイクロカプセル型硬化促進剤。
Z−6040:東レ・ダウコーニング(株)社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
SE−2050:(株)アドマテックス社製、シリカ粒子(平均粒径0.5μm)。
SE2050−SEJ:(株)アドマテックス社製、グリシジルシラン表面処理シリカ粒子(平均粒径0.5μm)。
EXL−2655:ロームアンドハースジャパン(株)社製、コアシェルタイプ有機微粒子。
【0117】
[接着剤シートの評価]
上記で得られた接着剤シートについて、下記の試験手順にしたがって、180℃における粘度、180℃におけるゲルタイム、250℃におけるゲルタイム、ウェハ裏面研削性、埋込性、接続性、及び接着力を評価した。結果を表3に示す。
【0118】
<180℃における粘度の測定>
上記で得られたフィルム状接着剤を所定のサイズ6φに打ち抜き、ガラスチップ(コーニングジャパン製、1737ガラス、15mm×15mm×0.7mm厚)に80℃/0.2MPa/3secの条件で圧着した。その後、厚み550μmの12mm×12mmのチップを載せ、フリップチップボンダー(松下電器産業株式会社製、商品名:FCB3)を用いて、加熱温度180℃、加圧圧力14N、加熱加圧時間10秒間の条件で圧着させて、ガラスチップ/フィルム状接着剤/チップが順次積層された形態のサンプルを作製した。このサンプルについて、圧着前後のフィルム状接着剤の体積変化を測定した。平行板プラストメータ法により、測定した体積変化から下記の粘度算出式により溶融粘度(粘度)を算出した。
η=8πFtZ/[3V(Z−Z)]
η:溶融粘度(Pa・s)
F:荷重(N)
t:加熱加圧時間(秒)
:初期厚み(m)
Z:加圧後厚み(m)
V:樹脂体積(m
【0119】
<ゲルタイム測定>
フィルム状接着剤の180℃におけるゲルタイム及び250℃におけるゲルタイムは、JIS K5600−9−1に準じ、以下の手順で測定した。厚さ30μmのフィルム状接着剤を10mm□の打ち抜きパンチで打ち抜いたもの2枚(約0.01g)を重ね、更に4つ折りにして評価用サンプルを得た。その後、所定の温度(180℃、250℃)に熱せられているゲルタイム測定装置(ゲル化試験機、SYATEM SEIKO製)上に評価用サンプルを置き、竹串の先端にてかき混ぜ、樹脂溶融後、竹串の先端に一纏まりになるまでの時間(評価用サンプルを置いてから一纏まりになるまでの時間)を測定し、所定の温度におけるゲルタイムとした。測定の回数は同一サンプルにつき10回行い、平均の時間を算出した。
【0120】
<ウェハ裏面研削性>
シリコンウェハ(厚み625μm)上に、温度80℃の条件で接着剤層を貼り付けて、バックグラインドテープ及び接着剤層付き半導体ウェハを得た。これをバックグラインダーに配置し、厚みが280μmとなるまでシリコンウェハの裏面を研削(バックグラインド)した。研削したウェハを目視及び顕微鏡観察で視察し、下記の基準に基づいてウェハ裏面研削性を評価した。
A:ウェハの破損及びマイクロクラックの発生がない。
B:ウェハの破損及びマイクロクラックの発生がある。
【0121】
<埋込性>
半導体素子搭載用支持部材として、プリフラックス処理によって防錆皮膜が形成された銅配線パターンを表面に有するガラスエポキシ基板のパターン表面にSR−AUS308を塗布したものを準備した。
【0122】
銅ピラー先端に鉛フリーはんだ層(Sn−3.5Ag:融点221℃)を有する構造のバンプ(高さ:約50μm)が形成された半導体ウェハのバンプ形成面上に、上記のウェハ裏面研削性の評価と同様にして接着剤層を貼り付けて接着剤層付きウェハを作製し、これを7.3mm×7.3mmにダイシングし、接着剤層付き半導体チップを得た。次に、第一工程として、接続部の温度が固形フラックス剤の融点以上でかつ鉛フリーはんだの融点より低い180℃となるようにフリップチップボンダー(パナソニックファクトリーソリューションズ(株)社製、製品名:FCB3)のヘッド温度を設定し(ステージ温度:40℃)、上記半導体素子搭載用支持部材と接着剤層付き半導体チップとを、荷重25N、10秒間圧着した。次に、第二工程として、接続部の温度が鉛フリーはんだの融点より高い250℃となるようにフリップチップボンダーのヘッド温度を設定し(ステージ温度:40℃)、荷重25N、10秒間圧着を行い、サンプルを作製した。なお、接続部の温度は、K型熱電対を半導体チップと基板の間に挟んだものを別途作製して測定した。
【0123】
こうして得られたサンプルについて、ボイドの発生状況を超音波顕微鏡で視察し、下記の基準に基づいて埋込性を評価した。
A:ボイドがほとんどなく、ボイドが埋込面積の10%未満である。
B:ボイドが多く存在し、ボイドが埋込面積の10%以上である。
【0124】
<接続性>
上記の埋込性評価と同様にしてサンプルを10個作製し、銅とハンダの接合部の断面観察、及び、382バンプのデイジーチェーン接続による導通の確認を行い、下記の基準に基づいて接続性を評価した。
A:デイジーチェーン接続及び断面観察のいずれにも問題が無い。
B:デイジーチェーン接続又は断面観察において問題が確認された。
【0125】
【表2】



【0126】
【表3】



【符号の説明】
【0127】
1…第1の支持基材、2…フィルム状接着剤(接着剤層)、3…粘着剤層、4…第2の支持基材、6…ダイシングテープ、7…配線回路基板、10…接着シート、20…半導体ウェハ、20a…半導体素子、22…バンプ、24…はんだボール、26…電極、100…半導体装置。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンダバンプが形成された機能面を有する半導体ウェハの前記機能面に、熱硬化性樹脂とイミダゾール系硬化剤とを含有し、180℃における粘度が40〜350Pa・sであり、180℃におけるゲルタイムが15〜60秒であり、250℃におけるゲルタイムが3〜10秒である接着剤層を設けて接着剤層付き半導体ウェハを得る第1工程と、
前記接着剤層付き半導体ウェハの前記機能面とは反対側の面を研削して半導体ウェハを薄化する第2工程と、
前記薄化した半導体ウェハを接着剤層とともに切断して複数の半導体素子に切り分けて接着剤層付き半導体素子を得る第3工程と、
前記接着剤層付き半導体素子と、電極を有する他の半導体素子又は電極を有する半導体素子搭載用支持部材とを、前記ハンダバンプ及び前記電極が対向する方向に前記ハンダバンプが有するハンダの融点より低い温度で加圧する第4工程と、
加熱により前記ハンダバンプが有するハンダを溶融させて前記ハンダバンプと前記電極とを接合する第5工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記接着剤層がフラックス成分を更に含有し、
前記第4工程の加圧をフラックス成分の融点又は軟化点より高い温度かつ前記ハンダバンプが有するハンダの融点より低い温度で行う、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
支持基材及び該支持基材上に設けられた粘着剤層を有するバックグラインドテープと、該バックグラインドテープの前記粘着剤層上に設けられ、熱硬化性樹脂とイミダゾール系硬化剤とを含有し、180℃における粘度が40〜350Pa・sであり、180℃におけるゲルタイムが15〜60秒であり、250℃におけるゲルタイムが3〜10秒である接着剤層と、を備える、接着剤シートを用いて前記接着剤層付き半導体ウェハを得る、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
熱硬化性樹脂とイミダゾール系硬化剤とを含有し、180℃における粘度が40〜350Pa・sであり、180℃におけるゲルタイムが15〜60秒であり、250℃におけるゲルタイムが3〜10秒であるフィルム状接着剤であって、
ハンダバンプが形成された機能面を有する半導体ウェハを準備し、該半導体ウェハの前記機能面に前記フィルム状接着剤を貼り付け、前記半導体ウェハの前記機能面とは反対側の面を研削して前記半導体ウェハを薄化し、半導体素子又は半導体素子搭載用支持部材に接着するために用いられる、フィルム状接着剤。
【請求項5】
フラックス成分を更に含有する、請求項4に記載のフィルム状接着剤。
【請求項6】
支持基材及び該支持基材上に設けられた粘着剤層を有するバックグラインドテープと、該バックグラインドテープの前記粘着剤層上に設けられ、熱硬化性樹脂とイミダゾール系硬化剤とを含有し、180℃における粘度が40〜350Pa・sであり、180℃におけるゲルタイムが15〜60秒であり、250℃におけるゲルタイムが3〜10秒である接着剤層と、を備える、接着剤シートであって、
ハンダバンプが形成された機能面を有する半導体ウェハを準備し、該半導体ウェハの前記機能面に前記接着剤シートの前記フィルム状接着剤を貼り付け、前記半導体ウェハの前記機能面とは反対側の面を研削して前記半導体ウェハを薄化し、半導体素子又は半導体素子搭載用支持部材に接着するために用いられる、接着剤シート。
【請求項7】
前記接着剤層がフラックス成分を更に含有する、請求項4に記載の接着剤シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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