説明

半導体装置の製造方法および半導体装置

【課題】信頼性に優れた半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、基材の上に熱分解性の樹脂層を形成する工程と、熱分解性の樹脂層を介して、主面から裏面まで貫通する貫通プラグが複数設けられたシリコンウエハと基材とを固定する工程と、シリコンウエハの裏面上に、貫通プラグと電気的に接続する第1の半導体素子を設ける工程と、半導体封止用樹脂組成物を用いて、シリコンウエハの裏面上の複数の第1の半導体素子を封止する封止材層を形成する工程と、加熱処理により熱分解性の樹脂層を分解して、シリコンウエハから基材を分離することにより、シリコンウエハの主面を露出させる工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、貫通電極を有する実装基板に半導体チップを実装させるためのパッケージ方法が記載されている。このパッケージ方法は、次の工程を含む。まず、貫通配線を有する実装基板を作製する。この実装基板上に複数のチップを実装する。この後、これらのチップを絶縁樹脂で封止する(特許文献1の段落0005〜7)。しかしながら、貫通配線を有する実装基板は薄く強度が低下している。このため、かかる実装基板上にチップを実装する実装工程中に、実装基板が欠けたり割れたりすることが記載されている(特許文献1の段落0009)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−166909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が検討した結果、以下の課題が判明した。すなわち、上記技術においては、貫通配線を有する実装基板は薄く強度が低下している。このため、かかる実装基板上にチップを実装する実装工程中において、実装基板が欠けたり割れたりすることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のものを含む。
[1]
基材の上に熱分解性の樹脂層を形成する工程と、
前記熱分解性の樹脂層を介して、主面から裏面まで貫通する貫通プラグが複数設けられたシリコンウエハと前記基材とを固定する工程と、
前記シリコンウエハの前記裏面上に、前記貫通プラグと電気的に接続する第1の半導体素子を設ける工程と、
半導体封止用樹脂組成物を用いて、前記シリコンウエハの前記裏面上の複数の前記第1の半導体素子を封止する封止材層を形成する工程と、
加熱処理により前記熱分解性の樹脂層を分解して、前記シリコンウエハから前記基材を分離することにより、前記シリコンウエハの前記主面を露出させる工程と、を含む、半導体装置の製造方法。
[2]
前記半導体封止用樹脂組成物は、下記の硬化条件下で硬化させた硬化物が下記式を満たすような材料で構成されている、[1]に記載の半導体装置の製造方法。
(Tg−25℃)×(α1−α2)×E'≦20MPa
Tg:前記硬化物のガラス転移温度(℃)
E':前記硬化物の弾性率(Pa)
α1:前記硬化物の線膨張係数(ppm/℃)
α2:前記シリコンウエハの線膨張係数(ppm/℃)
硬化条件:前記半導体封止用樹脂組成物を125℃10分、150℃1時間の硬化条件で硬化する。
[3]
前記液状の半導体封止用樹脂組成物の粘度が、100Pa・s以上2000Pa・s以下である、[1]または[2]に記載の半導体装置の製造方法。
[4]
前記液状の半導体封止用樹脂組成物において、下記式で表されるTI値が0.5以上2以下である、[1]から[3]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
TI値=η2.5rpm/η0.5rpm
η2.5rpm:粘度計を用い、25℃、回転数2.5rpmで測定した粘度
η0.5rpm:粘度計を用い、25℃、回転数0.5rpmで測定した粘度
[5]
前記封止材層を形成する前記工程において、前記半導体封止用樹脂組成物を加熱する温度が、前記熱分解性の樹脂層が熱分解する温度よりも低い、[1]から[4]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
[6]
前記加熱処理は、200℃以上400℃以下の温度範囲で行う、[1]から[5]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
[7]
前記熱分解性の樹脂層の5%重量減少温度が400℃以下である、[1]から[6]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
[8]
前記熱分解性の樹脂層が、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[1]から[7]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
[9]
前記熱分解性の樹脂層が、光酸発生剤を含む、[1]から[8]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
[10]
前記ポリカーボネート系樹脂が、プロピレンカーボネート、シクロヘキシレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ノルボルネンカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の構造単位を含む、[8]に記載の半導体装置の製造方法。
[11]
前記貫通する貫通プラグが複数設けられた前記シリコンウエハと前記基材とを固定する前記工程は、
前記熱分解性の樹脂層上に、主面に複数の埋込導電部が設けられたシリコンウエハを配置する工程と、
前記シリコンウエハの裏面を研削して、前記裏面に前記埋込導電部を露出させて、前記貫通プラグとする工程と、を含む、[1]から[10]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
[12]
前記第1の半導体素子を設ける前記工程において、前記第1の半導体素子の一面に複数の第1の埋込導電部が設けられており、前記第1の半導体素子の前記第1の埋込導電部と前記シリコンウエハの前記埋込導電部とが電気的に接続されており、
前記封止材層を形成する前記工程の後、前記封止材層の上面とともに前記第1の半導体素子の他面を研削して、前記第1の半導体素子の前記他面に前記第1の埋込導電部を露出させて、第1の貫通プラグとする工程と、
前記第1の半導体素子の前記他面上に、前記第1の貫通電極と電気的に接続する第2の半導体素子を設ける工程と、
前記半導体封止用樹脂組成物を用いて、前記第1の半導体素子の前記他面に設けられた前記第2の半導体素子を封止する封止材層を形成する工程と、をさらに含む、[1]から[11]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
[13]
前記シリコンウエハの前記主面上に絶縁樹脂層を形成する工程と、
前記絶縁樹脂層上に配線回路を形成する工程と、を含む、[1]から[12]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
[14]
[1]から[13]のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法で得られた、半導体装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、信頼性に優れた半導体装置およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施の形態におけるウエハレベルパッケージを示す断面図および上面図である。
【図2】本実施の形態における積層パッケージを示す断面図である。
【図3】本実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図4】本実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図5】本実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図6】本実施の形態における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図7】図4(a)に示す半導体装置の製造手順を示す工程断面図の一部の拡大図である。
【図8】本実施の形態の変形例における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図9】本実施の形態の変形例における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【図10】本実施の形態の変形例におけるウエハレベルパッケージを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0009】
本実施の形態の半導体装置について説明する。
図1は、本実施の形態のウエハレベルパッケージ130の一例を模式的に示す断面図および上面図である。図1(a)は、図1(b)のAA'断面図である。また、図2は、本実施の形態の積層パッケージ100の一例を模式的に示す断面図である。
【0010】
図1(a)に示すように、本実施の形態のウエハレベルパッケージ130は、疑似ウエハ111と疑似ウエハ111上に設けられた配線層129とを備える。疑似ウエハ111は、薄層シリコンウエハ101、貫通プラグ105、半導体チップ108、封止材層110を含む。薄層シリコンウエハ101には、その主面から裏面まで貫通する貫通プラグ105が複数設けられている。半導体チップ108は、薄層シリコンウエハ101の主面の面内方向に複数設けられており、貫通プラグ105と電気的に接続されている。この半導体チップ108は、その側壁および上面を含む周囲が封止材層110により封止されている。疑似ウエハ111においては、一面側には、複数の貫通プラグ105を有する薄層シリコンウエハ101が形成されている。
【0011】
配線層129は、第1の絶縁層112、導電層118、導電体122、第2の絶縁層124、バンプ128を含む。バンプ128は、導電体122および導電層118を介して、貫通プラグ105と電気的に接続する。導電層118は、第1の絶縁層112の凹部に設けられている。導電体122は、その周囲を第1の絶縁層112および第2の絶縁層124で覆われている。
【0012】
図1(b)に示すように、薄層シリコンウエハ101の面内方向に、半導体チップ108が複数配置されている。薄層シリコンウエハ101の形状は、特に限定されないが、平面視において、円形状であることが好ましく、一部にオリフラやノッチが形成されていてもよい。また、封止材層110の形状は、特に限定されないが、平面視において、円形、矩形、正方形などが好ましい。半導体チップ108は、特に限定されないが、平面視において、縦横方向における配置数が同一でも異なってもよく、密度の向上や単位半導体チップ当たりの端子面積を確保する等の各種の観点から、点対称や格子状等に配置されてもよい。これらの複数の半導体チップ108は、同一材料の封止材層110により一括して覆われている。
【0013】
図2に示すように、積層パッケージ100は、インターポーザ132と、インターポーザ132上に配線回路134を介して実装された電子装置140とを含む。この電子装置140は、ウエハレベルパッケージ130を個片化して得られる。この電子装置140は、バンプ128および配線回路134を介してインターポーザ132と電気的に接続されている。
【0014】
インターポーザ132は、電子装置140を支持する基板である。インターポーザ132の平面視の形状は、特に限定されないが、正方形、長方形等の四角形状が好ましい。インターポーザ132の上面(一方の面)には、例えば、銅等の導電性金属材料で構成される配線回路134が、所定形状で設けられている。
【0015】
また、図2に示すように、薄層シリコンウエハ101と半導体チップ108とは接続部220(図1では不図示)を介して電気的に接続されており、接着層210により固定されていることが好ましい。接続部220の周囲は、接着層210に覆われている。接着層210は、例えば、半導体チップ108の直下のみに設けられている。
【0016】
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。
図3〜図6は、半導体装置の製造手順の一例を示す工程断面図である。
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、次の工程を含むことが好ましい。まず疑似ウエハ111を形成する。次いで、疑似ウエハ111上に配線層を形成して、ウエハレベルパッケージ130を得る。このウエハレベルパッケージ130を個片化して、電子装置140を得る。この電子装置140を実装基板上に実装することにより、積層パッケージ100を得る。
以下、各工程について詳述する。
【0017】
[疑似ウエハ111の形成工程]
疑似ウエハ111を形成する工程は、以下の工程を含む。まず、貫通プラグ105を有する薄層シリコンウエハ101を形成する。次いで、薄層シリコンウエハ101を基材に固定した状態で、この薄層シリコンウエハ101上に複数の半導体チップ108を実装する。この後、これらの半導体チップ108を封止する。
この薄層シリコンウエハ101固定工程は、基材10の上に熱分解性の樹脂層20を形成する工程と、熱分解性の樹脂層20を介して、主面から裏面まで貫通する貫通プラグ105が複数設けられたシリコンウエハ(薄層シリコンウエハ101)と基材10とを固定する工程を含む。詳細には、固定工程において、熱分解性の樹脂層20上に、主面に複数の埋込導電部106が設けられたシリコンウエハ102を配置し、続いて、シリコンウエハ102の裏面を研削して、裏面に埋込導電部106を露出させて、貫通プラグ105とする。
また、半導体チップ108実装工程は、薄層シリコンウエハ101の裏面上に、貫通プラグ105と電気的に接続する第1の半導体素子(半導体チップ108)を設ける工程を含む。
また、封止工程は、半導体封止用樹脂組成物を用いて、薄層シリコンウエハ101の裏面上の複数の半導体チップ108を封止する封止材層110を形成する工程を含む。
この後、加熱処理により熱分解性の樹脂層20を分解して、薄層シリコンウエハ101から基材10を分離することにより、薄層シリコンウエハ101の前記主面を露出させる。このような工程により、疑似ウエハ111が得られる。
以下、疑似ウエハ111形成工程の詳細を説明する。
【0018】
(薄層シリコンウエハ101固定工程)
まず、図3(a)に示すように、板状のシリコンウエハ102を用意する。続いて、このシリコンウエハ102の主面に、複数の非貫通孔104を形成する。非貫通孔104の間隔は、特に限定されないが、シリコンウエハ102上に実装されるチップの配置間隔やチップサイズ、単位面積当たりのチップの実装用IO(入出力)バンプ数に応じて適切に設定する。非貫通孔104の直径は、基板の厚さや所望の用途に応じて適切に設定され、所望の配線に応じて決めることができるが、例えば、10μm〜50μm程度とすることができる。また、深さ方向の断面視における非貫通孔104の形状は、特に限定されないが、楕円形、円形、三角形、矩形、多角形、順テーパ形状、逆テーパ形状等が好ましい。この非貫通孔104の形成には、化学的除去方法や物理的な除去方法等の各種の除去方法が用いられる。除去方法としては、例えば、Deep−ReactiveIonEtching(DRIE)法等のドライエッチング法、水酸化カリウム(KOH)水溶液などの薬液を用いたウェットエッチング法、レーザーエッチング法、マイクロドリル等を用いた機械加工法、光励起電解研磨法等が挙げられる。また、シリコンウエハ102に非貫通孔104を形成する前に、シリコンウエハ102上を保護層で覆ってもよい。
【0019】
次いで、図3(b)に示すように、非貫通孔104の内部に導電性材料を充填して、埋込導電部106を形成する。これにより、シリコンウエハ102の主面に複数の埋込導電部106を形成する。埋込導電部106を構成する導電性材料としては、特に限定されないが、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、インジウム(In)、ポリシリコン等の金属材料、また金錫合金、錫鉛(Sn−Pb)合金、錫(Sn)、鉛(Pb)、金(Au)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)などの合金はんだを使用することができる。これらの合金の組成は適切に設定できる。また、導電性材料の非貫通孔104への充填方法については、例えば、溶融金属吸引法、めっき法、または印刷法等を用いることができる。
【0020】
また、シリコンウエハ102の表面上並びに非貫通孔104の側壁上および底部上に、絶縁層を形成し、この絶縁層上に埋込導電部106を形成してもよい。この絶縁層としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンや絶縁樹脂など、他の絶縁材料等を用いることができる。絶縁層の形成方法としては、特に限定されないが、熱酸化法やプラズマCVD法などを用いることができる。これにより、十分な絶縁耐圧が得られる。
【0021】
次いで、基材10を用意する。基材10は、シリコンウエハ102と略同一形状のプレートが好ましく、平坦性、剛直性および耐熱性を有している犠牲材が好ましい。基材10としては、特に限定されるものはなく、シリコンウエハ、透明基材、セラミック板、ステンレス板、銅板、等の金属板等のダミー基材が挙げられる。これらの中でも、後述する、封止材層形成工程や配線層形成工程での作業性および現状の設備が利用できる利便性に優れるシリコンウエハが好ましい。また、詳しくは後述するが、熱分解性の樹脂層20に対し、活性エネルギー線を照射する必要がある場合には、基材10は、活性エネルギー線を透過する透明基材であることが好ましい。
【0022】
次に、基材10上に熱分解性の樹脂層20を形成する。熱分解性の樹脂層20を形成する方法としては、特に限定されるわけではないが、液状の熱分解性の樹脂組成物(ワニス)をスピンコート法、印刷法、ディスペンス法で形成する方法、フィルム状の熱分解性の樹脂組成物をラミネートする方法等が挙げられる。これらの中で、スピンコート方法およびラミネート方法が好ましい。これにより、熱分解性の樹脂層20の膜厚を均一にすることができる。
【0023】
液状の熱分解性の樹脂組成物をスピンコート法、印刷法、ディスペンス法で形成する方法としては、特に限定されるわけではなく、室温で液状の熱分解性の樹脂組成物または室温で固形の熱分解性の樹脂組成物を溶剤や希釈剤に溶解させたワニス状の熱分解性の樹脂組成物を、公知のスピンコーター、印刷機、ディスペンサーを用い形成することができる。
【0024】
また、フィルム状の熱分解性の樹脂組成物をラミネートする方法としては、特に限定されるわけではないが、ワニス状の熱分解性の樹脂組成物をポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の基材フィルムに塗布および乾燥することによりフィルム状の熱分解性の樹脂組成物を作製し、次いで、公知のラミネータ等を用いることによりフィルム状の熱分解性の樹脂組成物を形成することができる。
【0025】
熱分解性の樹脂層20は、熱分解性の樹脂組成物で構成される。ここで、熱分解性の樹脂層20を構成する熱分解性の樹脂組成物に含まれる熱分解性の樹脂成分の5%重量減少温度が400℃以下、特に、350℃以下であることが好ましい。5%重量減少温度を上記範囲とすることで、熱分解性の樹脂層20を熱分解する際に、半導体チップ108や封止材層110への熱の影響を少なくすることができる。例えば、5%重量減少温度を上記範囲とし、加熱時間を調整することで、400℃を超える加熱を行わずに、熱分解性の樹脂層20を熱分解することができる。
【0026】
なお、熱分解性の樹脂成分の5%重量減少温度を上記温度範囲とするためには、たとえば、脂環族や芳香族の骨格を有さない直鎖または分岐状の熱分解性樹脂成分を選択すればよい。
【0027】
また、熱分解性の樹脂層20を構成する熱分解性の樹脂組成物に含まれる熱分解性の樹脂成分の熱分解させる温度における重量減少は1%以上、特に、5%以上が好ましい。これにより、半導体チップ108に付着する熱分解性の樹脂層20の残渣を低減することができる。すなわち、熱分解させる温度における重量減少を上記範囲とすることで、加熱時間を調整することにより熱分解性の樹脂層20を熱分解させることができる。
ここで、熱分解性の樹脂成分の熱分解させる温度における重量減少は、TG/DTA(熱重量/示差熱分析、雰囲気:窒素、昇温速度:5℃/分)で測定される値である。
【0028】
また、熱分解性の樹脂層20を構成する熱分解性の樹脂組成物に含まれる熱分解性樹脂成分は、5%重量減少温度が50℃以上、特に、100℃以上である熱分解性樹脂成分であることが好ましい。これにより、封止材層110を形成し、さらに、封止材層110を硬化させるプロセス中に熱分解性の樹脂層20が不要に熱分解してしまうことを抑制できる。
【0029】
なお、5%重量減少温度を50℃以上とするためには、たとえば、熱分解性樹脂成分の分子量を調整すればよい。
【0030】
ここで、5%重量減少温度とは、それぞれTG/DTA(熱重量/示差熱分析)で測定した時の5%の重量が失われる温度を意味する。TG/DTA測定は、熱分解性の樹脂成分を約10mg精秤し、TG/DTA装置(セイコーインスツルメンツ社製)により測定(雰囲気:窒素、昇温速度:5℃/分)することができる。
【0031】
さらに、熱分解性の樹脂成分は、上述のように、加熱することにより熱分解し、揮発するタイプの熱分解性の樹脂成分以外に、熱分解性の樹脂成分を加熱することにより低分子化が進行し、熱分解性樹脂成分の溶融粘度および軟化温度が低下するタイプの熱分解性の樹脂成分も使用することができる。
【0032】
熱分解性の樹脂層20を構成する熱分解性の樹脂組成物の熱分解性の樹脂成分としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂成分の中でも、熱分解性の樹脂層20の熱分解時間を効果的に短縮することができる、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。
なお、熱分解性の樹脂層20を構成する熱分解性の樹脂組成物は1種類の樹脂のみから構成されていてもよく、また、2種以上の樹脂を含んでいてもよい。また、熱分解性の樹脂層20は、光酸発生剤を含有してもよい。
【0033】
ここで、ポリカーボネート系樹脂とは、少なくとも主鎖にカーボネート基(−O−(C=O)−O−)を構造単位として有する樹脂であり、他の構造単位を有していてもよい。
また、ポリエステル系樹脂とは、少なくとも主鎖にエステル基(−(C=O)−O−)を構造単位として有する樹脂であり、他の構造単位を有していてもよい。
また、ポリアミド系樹脂とは、少なくとも主鎖にアミド結合(−NH−(C=O)−)を構造単位として有する樹脂であり、他の構造単位を有していてもよい。
また、ポリイミド系樹脂とは、少なくとも主鎖にイミド結合(−(C=O)−NR−(C=O)−)を構造単位として有する樹脂であり、他の構造単位を有していてもよい。ここで、Rは有機基を示す。
また、ポリエーテル系樹脂とは、少なくとも主鎖にエーテル基(−O−)を構造単位として有する樹脂であり、他の構造単位を有していてもよい。
また、ポリウレタン系樹脂とは、少なくとも主鎖にウレタン結合(−O−(C=O)−NH−)を構造単位として有する樹脂であり、他の構造単位を有していてもよい。
【0034】
また、熱分解性の樹脂層20としては、活性エネルギー線を照射することで、熱分解温度が低下するような樹脂層が好ましい。熱分解性の樹脂層20は、たとえば、光酸発生剤と、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂からなる群から選ばれる1種以上の熱分解性の樹脂成分を含む熱分解性の樹脂組成物から構成されることが好ましい。これらの熱分解性の樹脂組成物に、光酸発生剤の存在下、活性エネルギー線を照射することで、熱分解温度が低下する熱分解性の樹脂層20を形成することが可能となる。
ここで、活性エネルギー線とは、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、X線、可視光線等を含む電磁波、若しくは電子線の総称であり、なかでもi線が好ましい。
【0035】
ポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート、1,2−ポリブチレンカーボネート、1,3−ポリブチレンカーボネート、1,4−ポリブチレンカーボネート、cis−2,3−ポリブチレンカーボネート、trans−2,3−ポリブチレンカーボネート、α,β−ポリイソブチレンカーボネート、α,γ−ポリイソブチレンカーボネート、cis−1,2−ポリシクロブチレンカーボネート、trans−1,2−ポリシクロブチレンカーボネート、cis−1,3−ポリシクロブチレンカーボネート、trans−1,3−ポリシクロブチレンカーボネート、ポリネオペンチルカーボネート、ポリヘキセンカーボネート、ポリシクロプロペンカーボネート、ポリシクロヘキシレンカーボネート、ポリ(メチルシクロヘキセンカーボネート)、ポリ(ビニルシクロヘキセンカーボネート)、ポリジヒドロナフタレンカーボネート、ポリヘキサヒドロスチレンカーボネート、ポリシクロヘキサンプロピレンカーボネート、ポリスチレンカーボネート、ポリ(3−フェニルプロピレンカーボネート)、ポリ(3−トリメチルシリロキシプロピレンカーボネート)、ポリ(3−メタクリロイロキシプロピレンカーボネート)、ポリパーフルオロプロピレンカーボネート、ポリノルボルネンカーボネートから選ばれる1種または2種以上の組み合わせを挙げることができる。
これらの中でも、特に、光酸発生剤存在下で、より効果的に熱分解温度を下げることができるという理由から、ポリプロピレンカーボネート、ポリシクロヘキシレンカーボネート、ポリブチレンカーボネート、ポリノルボルネンカーボネート、及びポリネオペンチルカーボネートが好ましい。
【0036】
ポリエステル系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、テレフタル酸又はテレフタル酸ジメチルを主たる酸成分とし、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコールより選ばれる少なくとも1種のアルキレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステル樹脂が挙げられる。上記テレフタル酸成分の一部を芳香族、脂環族又は脂肪族の二官能性カルボン酸成分で置き換えても良い。また、例えば、分子内にカルボン酸成分とアルコール基成分を併せ持つヒドロキシ酸である乳酸を重縮合したポリ乳酸も挙げることができる。
これらの中でも、特に、活性エネルギー線の照射により効果的に熱分解温度を低下させることができ、また、作業性に優れるという理由から、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸が好ましい。
【0037】
ポリアミド系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アジピン酸、ヘプタンジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、ノナンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸より選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸成分とテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンより選ばれる少なくとも1種のジアミン成分と重縮合反応することによって得られたポリアミド樹脂が挙げられる。また、例えば、ラクタムであるα−ピロリドン、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム、ε−エナントラクタムを開環重合させたポリアミド樹脂も挙げることができる。
これらの中でも、特に、活性エネルギー線の照射により効果的に熱分解温度を低下させることができ、また、作業性に優れるという理由から、6,6−ナイロンが好ましい。
ポリイミド系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミンより選ばれる少なくとも1種のジアミン酸成分と4,4'−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物、4,4'−ビフタル酸無水物、ジフェニル−2,3,3',4'−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニル−2,2',3,3'−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物より選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物と重付加反応することによって得られたポリイミド樹脂が挙げられる。
これらの中でも、特に、活性エネルギー線の照射により効果的に熱分解温度を低下させることができ、また、作業性に優れるという理由から、ポリ(4,4'−オキシジフェニレンピロメリットイミド)が好ましい。
【0038】
ポリウレタン系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4'−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4'−ジヒドロキシフェニルメタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールより選ばれた少なくとも1種のポリオールと2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートより選ばれる少なくとも1種のイソシアネートと重付加反応することによって得られたポリウレタン樹脂が挙げられる。
これらの中でも、特に、活性エネルギー線の照射により効果的に熱分解温度を低下させることができ、また、作業性に優れるという理由から、ポリ((エチレングリコール)−alt−(4,4'−フェニレン)イソシアネート)が好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル系樹脂としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等から選ばれる(メタ)アクリル系モノマーの共重合体等を挙げることができる。
これらの中でも、特に、活性エネルギー線の照射により効果的に熱分解温度を低下させることができ、また、作業性に優れるという理由から、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチルが好ましい。
【0040】
熱分解性の樹脂成分の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、5,000〜800,000であることが特に好ましい。重量平均分子量を上記下限値以上とすることにより、基材10に対する濡れ性が向上する効果、さらに、成膜性を向上するという効果を得ることができる。また、上記上限値以下とすることで、各種成分との相溶性や各種溶剤に対する溶解性、さらには、熱分解性を向上するという効果を得ることができる。
【0041】
熱分解性の樹脂成分は、熱分解性の樹脂組成物の全量(溶媒、希釈剤を除く)の10重量%〜99重量%の割合で配合することが好ましい。さらに好ましくは、20重量%以上で配合することが好ましい。熱分解性の樹脂成分の含有量を上記下限値以上とすることで、熱分解性の樹脂層20が基材10に残留することを防止できるとともに、基材10上に厚膜を形成できる。
【0042】
光酸発生剤としては、特に限定されないが、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(DPI−TPFPB)、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムテトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレート(TTBPS−TPFPB)、トリス(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート(TTBPS−HFP)、トリフェニルスルホニウムトリフレート(TPS−Tf)、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート(DTBPI−Tf)、トリアジン(TAZ−101)、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(TPS−103)、トリフェニルスルホニウムビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド(TPS−N1)、ジ−(p−t−ブチル)フェニルヨードニウム、ビス(パーフルオロメタンスルホニル)イミド(DTBPI−N1)、トリフェニルスルホニウム、トリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド(TPS−C1)、ジ−(p−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリス(パーフルオロメタンスルホニル)メチド(DTBPI−C1)、及びこれらの2種以上の組合せを挙げることができる。
これらの中でも特に、熱分解性の樹脂成分の熱分解温度を効率的に下げることができるという理由から、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(DPI−TPFPB)が好ましい。
【0043】
光酸発生剤は、熱分解性の樹脂組成物の全量(溶媒、希釈剤を除く)の0.01重量%〜50重量%の割合で配合することが好ましい。さらに好ましくは、0.1重量%〜30重量%の割合で配合することが好ましい。上記下限値以上とすることで、熱分解性の樹脂成分の熱分解温度を安定的に下げることが可能となり、上記上限値以下とすることで熱分解性の樹脂層20が残渣として残留することを効果的に防止することが可能となる。
【0044】
熱分解性の樹脂層20を構成する材料の組み合わせとして、特に好ましいものとしては、ポリプロピレンカーボネート、1,4−ポリブチレンカーボネート、又はポリネオペンチルカーボネートのいずれか1種以上と、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート−4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム(DPI−TPFPB)との組み合わせである。
【0045】
ポリカーボネート系樹脂は、光酸発生剤の存在下で、ポリカーボネート系樹脂の主鎖の熱切断が容易となる構造を形成するため、又は、ポリカーボネート系樹脂自身が容易に熱分解する熱閉環構造を形成する(熱閉環反応)ため、熱分解温度を下げることができると考えられる。
【0046】
下記の反応式(I)は、ポリプロピレンカーボネート樹脂の主鎖の熱切断及び熱閉環構造の形成のメカニズムを示す。
先ず、光酸発生剤由来のHが、ポリプロピレンカーボネート樹脂のカルボニル酸素をプロトン化し、さらに極性遷移状態を転移させ不安定な互変異性中間体[A]及び[B]を生じる。
次に、主鎖の熱切断の場合には、中間体[A]は、アセトン及びCOとして断片化する。
熱閉環構造の形成(a又はb)の場合には、中間体[B]は炭酸プロピレンを生成し、炭酸プロピレンはCO及びプロピレンオキシドとして断片化される。
【0047】
【化1】

また、熱分解性の樹脂組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤は、望ましくない酸の発生や、熱分解性の樹脂組成物の自然酸化を防止する機能を有している。
【0048】
酸化防止剤としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ニューヨーク州タリータウンのCiba Fine Chemicals社から入手可能なCiba IRGANOX(登録商標) 1076およびCiba IRGAFOS(登録商標) 168が好適に用いられる。
【0049】
また、他の酸化防止剤としては、例えば、Ciba Irganox 129、Ciba Irganox 1330、Ciba Irganox 1010、Ciba Cyanox(登録商標) 1790、Ciba Irganox 3114、Ciba Irganox 3125等を用いることもできる。
【0050】
酸化防止剤の含有量は、熱分解性の樹脂成分100重量部に対して、0.1〜10重量部であるのが好ましく、0.5〜5重量部であるのがより好ましい。
【0051】
また、熱分解性の樹脂組成物は、必要により酸捕捉剤、アクリル系、シリコーン系、フッ素系、ビニル系等のレベリング剤、シランカップリング剤、希釈剤等の添加剤等を含んでも良い。
【0052】
シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、単独でも2種以上混合して用いてもよい。
熱分解性の樹脂層20がシランカップリング剤を含むことにより、シリコンウエハ102または基材10との密着性を向上することが可能となる。
【0053】
なお、熱分解性の樹脂組成物として、活性エネルギー線を照射しても、熱分解温度が低下しないようなものを使用してもよく、たとえば、ノルボルネン系樹脂を含有するものとしてもよい。
ノルボルネン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(21)で示される構造単位を含むものを挙げることができる。
【0054】
【化2】

【0055】
式(21)において、R〜Rは、それぞれ、水素、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、芳香族基、脂環族基、グリシジルエーテル基、下記置換基(22)のいずれかである。また、mは0〜4の整数である。
【0056】
【化3】

【0057】
式(22)において、Rは、水素、メチル基またはエチル基のいずれかであり、R、RおよびRは、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルコキシ基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキルペルオキシ基、置換もしくは未置換の炭素数6〜20のアリールオキシ基のいずれかである。また、nは0〜5の整数である。
【0058】
直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基としては、特に限定されるものではないが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
これらの中でも、熱分解性の樹脂層20を構成する各種成分との相溶性や各種溶剤に対する溶解性、さらに、シリコンウエハ102と基材10とを固定した際の機械物性に優れるブチル基、デシル基が好ましい。
【0059】
芳香族基としては、特に限定されるものではないが、フェニル基、フェネチル基、ナフチル基等が挙げられるが、これらの中でも、シリコンウエハ102と基材10を固定した際の機械物性に優れるフェネチル基、ナフチル基が好ましい。
【0060】
脂環族基としては、特に限定されるものではないが、シクロヘキシル基、ノルボルネニル基、ジヒドロジシクロペンタジエチル基、テトラシクロドデシル基、メチルテトラシクロドデシル基、テトラシクロドデカジエチル基、ジメチルテトラシクロドデシル基、エチルテトラシクロドデシル基、エチリデニルテトラシクロドデシル基、フエニルテトラシクロドデシル基、シクロペンタジエチル基の三量体等の脂環族基等が挙げられる。
これらの中でも、シリコンウエハ102と基材10を仮固定した際の機械物性、さらには、加熱工程における熱分解性に優れるシクロヘキシル基、ノルボルネニル基が好ましい。
【0061】
置換基(22)中のRは、水素、又はメチル基またはエチル基であれば、特に限定されるものではないが、加熱工程における熱分解性に優れる水素原子が好ましい。
【0062】
置換基(22)中のR、RおよびRは、それぞれ、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルコキシ基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキルペルオキシ基、置換もしくは未置換の炭素数6〜20のアリールオキシ基のいずれかであれば、特に限定されるわけではない。
そのような置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基、アセトキシ基、プロピオキシ基、ブチロキシ基、メチルペルオキシ基、イソプロピルペルオキシ基、t−ブチルペルオキシ基、フェノキシ基、ヒドロキシフェノキシ基、ナフチロキシ基等が挙げられ、これらの中でも、基材10に対する密着性、半導体ウェハ加工時の機械特性に優れるメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が好ましい。
【0063】
一般式(21)中のmは、0〜4の整数であり、特に限定されるわけではないが、0または1が好ましい。mが0または1である場合、一般式(21)で示される構造単位は、下記一般式(23)または(24)で示すことができる。
【0064】
【化4】

【0065】
【化5】

【0066】
上記一般式(23)及び(24)において、R〜Rは、それぞれ、水素、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、芳香族基、脂環族基、グリシジルエーテル基、上記置換基(22)のいずれかである。
【0067】
上記一般式(23)及び(24)において、置換基(22)中のnは、0〜5の整数であり、特に限定されるわけではないが、nは0であることが好ましい。nが0である時、シリル基はケイ素−炭素結合を介して多環式環に直接結合しており、熱分解性の樹脂層20の熱分解性およびシリコンウエハの加工時の機械特性を両立することができる。
【0068】
上記一般式(21)で示される構造単位は、特に限定されるわけではないが、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5−ペンチルノルボルネン、5−ヘキシルノルボルネン、5−へプチルノルボルネン、5−オクチルノルボルネン、5−ノニルノルボルネン、5−デシルノルボルネン、5−フェネチルノルボルネン、5−トリエトキシシリルノルボルネン、5−トリメチルシリルノルボルネン、5−トリメトキシシリルノルボルネン、5−メチルジメトキシシシリルノルボルネン、5−ジメチルメトキシノルボルネン、5−グリシジルオキシメチルノルボルネン等のノルボルネン系モノマーを重合することにより得ることができる。
ノルボルネン系モノマーを重合する際は、単一のノルボルネン系モノマーで重合しても、複数のノルボルネン系モノマーを共重合しても良い。これらノルボルネン系モノマーの中でも、シリコンウエハ102と基材10とを固定した際の機械物性に優れるような、5−ブチルノルボルネン、5−デシルノルボルネン、5−フェネチルノルボルネン、5−トリエトキシシリルノルボルネン、5−グリシジルオキシメチルノルボルネンが好ましい。
【0069】
ノルボルネン系樹脂は、特に限定されるわけではなく、一般式(21)で示される単一の構造単位で形成されていてもよく、また、複数の構造単位で形成されていても良い。
【0070】
ノルボルネン系樹脂は、より具体的には、ポリノルボルネン、ポリメチルノルボルネン、ポリエチルノルボルネン、ポリプロピルノルボルネン、ポリブチルノルボルネン、ポリペンチルノルボルネン、ポリヘキシルノルボルネン、ポリへプチルノルボルネン、ポリオクチルノルボルネン、ポリノニルノルボルネン、ポリデシルノルボルネン、ポリフェネチルノルボルネン、ポリトリエトキシシリルノルボルネン、ポリトリメチルシリルノルボルネン、ポリトリメトキシシリルノルボルネン、ポリメチルジメトキシシシリルノルボルネン、ポリジメチルメトキシノルボルネン、ポリグリシジルオキシメチルノルボルネン等の単一重合体、ノルボルネン−トリエトキシシリルノルボルネン共重合体、ノルボルネン−グリシジルオキシメチルノルボルネン共重合体、ブチルノルボルネン−トリエトキシシリルノルボルネン共重合体、デシルノルボルネン−トリエトキシシリルノルボルネン共重合体、ブチルノルボルネン−グリシジルオキシメチルノルボルネン共重合体、デシルノルボルネン−グリシジルオキシメチルノルボルネン共重合体、デシルノルボルネン−ブチルノルボルネン−フェネチルノルボルネン−グリシジルオキシメチルノルボルネン共重合体等の共重合体、ポリグリシジルオキシメチルノルボルネン−ブチルノルボルネン−トリエトキシシリルノルボルネン共重合体が挙げられる。
これらの中でも、シリコンウエハ102と基材10とを固定した際の機械物性に優れるポリブチルノルボルネン、ポリデシルノルボルネン、ポリトリエトキシシリルノルボルネン、ポリグリシジルオキシメチルノルボルネン−ブチルノルボルネン−トリエトキシシリルノルボルネン共重合体、デシルノルボルネン−トリエトキシシリルノルボルネン共重合体、ブチルノルボルネン−グリシジルオキシメチルノルボルネン共重合体、デシルノルボルネン−グリシジルオキシメチルノルボルネン共重合体、デシルノルボルネン−ブチルノルボルネン−フェネチルノルボルネン−グリシジルオキシメチルノルボルネン共重合体が好ましい。
【0071】
ノルボルネン系樹脂の重量平均分子量は、10,000〜1,000,000であることが好ましく、30,000〜800,000であることが特に好ましい。重量平均分子量を上記範囲とすることで、熱分解性の樹脂層20の熱分解性およびシリコンウエハ加工時の熱分解性の樹脂層20の耐熱性を両立することができる。
ここで、重量平均分子量は、THFを溶媒としてGPC(ゲル浸透クロマトグラム)により、ポリスチレン換算値として算出することができる。
【0072】
一般式(21)で示される構造単位を有するノルボルネン系樹脂の合成方法としては、例えば、パラジウムイオン源を含有する触媒、ニッケル源を含有する触媒、白金を含有する触媒、ラジカル開始剤等を用いることにより合成することができるが、付加重合する際の反応性に優れるニッケル源を含有する触媒が好ましい。
【0073】
ノルボルネン系樹脂の合成は、ノルボルネン系モノマーを溶解することができる有機溶媒中で実施することができる。前記有機溶媒としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素;メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、エチルクロライド、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、2−クロロプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−クロロペンタンの如きハロゲン化(極性)炭化水素を挙げることができる。
【0074】
ノルボルネン系モノマー対するパラジウムを含有する触媒のモル比は、20:1〜100,000:1が好ましく、200:1〜20,000:1が特に好ましく、1,000:1〜10,000:1がさらに好ましい。
【0075】
ノルボルネン系モノマーをニッケル触媒で重合する場合、その重合温度は、−100℃〜120℃が好ましく、−60℃〜90℃が特に好ましく、−10℃〜80℃であることがさらに好ましい。
ノルボルネン系樹脂は、熱分解性の樹脂組成物の全量(溶媒、希釈剤を除く)の10重量%〜100重量%の割合で配合することが好ましい。さらに好ましくは、20重量%以上で配合することが好ましい。
【0076】
また、上記ワニスは、上述した各成分に加え、溶媒や、希釈剤を含有していてもよい。
溶媒としては、特に限定されるものではないが、メシチレン、デカリン、ミネラルスピリット類等の炭化水素類、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジグライム等のアルコール/エーテル類、炭酸エチレン、酢酸エチル、酢酸N−ブチル、乳酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等のエステル/ラクトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類、N−メチル−2−ピロリジノン等のアミド/ラクタム類が挙げられる。ワニスが溶媒を含有することにより、ワニスの粘度を調整することが容易となり、熱分解性の樹脂層20の薄膜を形成するのが容易となる。
【0077】
溶媒の含有量は、特に限定されるものではないが、熱分解性の樹脂組成物の全量の5〜98重量%であることが好ましく、10〜95重量%であることが特に好ましい。
【0078】
また、希釈剤としては、特に限定されるわけではないが、例えば、シクロヘキセンオキサイドやα−ピネンオキサイド等のシクロエーテル化合物、[メチレンビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビスオキシランなどの芳香族シクロエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどのシクロアリファティックビニルエーテル化合物等を挙げることができる。
ワニスが希釈剤を含むことにより、ワニスの流動性を向上することができる。これにより、熱分解性の樹脂層20の基材10に対する濡れ性を向上することが可能となる。
【0079】
ここで、図3(c)に戻り、熱分解性の樹脂層20は粘着性を有しており、この熱分解性の樹脂層20上に、主面に複数の埋込導電部106が設けられたシリコンウエハ102を固定させる。言い換えると、基材10の表面とシリコンウエハ102の主面の間に熱分解性の樹脂層20を配置して、基材10とシリコンウエハ102とを固定する。
【0080】
続いて、図3(d)に示すように、シリコンウエハ102の裏面を研削する。シリコンウエハ102の膜厚を薄くすると、その裏面に埋込導電部106が露出する。そして、この埋込導電部106は、薄層シリコンウエハ101の主面から裏面までを貫通する貫通プラグ105となる。薄層シリコンウエハ101(研削後のシリコンウエハ102)の厚みとしては、特に限定されないが、好ましくは5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。薄層シリコンウエハ101の厚みは、パッケージ全体の厚みや強度、半導体チップ108からの放熱性などに基づいて適切に選択できる。また、シリコンウエハ102の裏面を研削する方法としては、研磨装置を用いたバックグラインド法等が好ましい。
なお、このシリコンウエハ102の裏面の加工工程において、積層体はたとえば、300℃程度に加熱されるが、この熱により熱分解性の樹脂層20が熱分解し難く、シリコンウエハ102が基材10から剥離することがない。なお、シリコンウエハ102を基材10に固定した後、このシリコンウエハ102を研削することが好ましいが、シリコンウエハ102を研削して薄層シリコンウエハ101を得た後、この薄層シリコンウエハ101を、実装工程前に、基材10に固定してもよい。
【0081】
次いで、図4(a)に示すように、薄層シリコンウエハ101の裏面上に複数の半導体素子(半導体チップ108)を配置する。この半導体チップ108と貫通プラグ105とを電気的に接続する。半導体チップ108としては、ロジックやDRAM等の各種半導体チップを用いることができる。半導体チップ108の他に、シリコンウエハ102の裏面に配置する半導体素子として抵抗素子やコンデンサ等を用いてもよい。
【0082】
ここで、薄層シリコンウエハ101の裏面に半導体チップ108を実装する工程について、図7を用いて詳述する。図7は、図4(a)に示す半導体装置の製造手順を示す工程断面図の一部の拡大図である。半導体チップ108を実装する工程では、例えば、第一準備工程、第二準備工程、接着層形成工程、位置合わせ工程、および接合工程を含む。第1の準備工程は、電極パッド208が先端に搭載された貫通プラグ105を裏面に備える薄層シリコンウエハ101を用意する。第2の準備工程は、先端にバンプ206が設けられた電極パッド204を有する、半導体チップ108を用意する。接着層形成工程は、フラックス活性化合物を含有する接着層210を、薄層シリコンウエハ101の裏面または半導体チップ108の表面の少なく一方に配置して、電極パッド208または半田バンプ206を覆う(図7(a))。位置合わせする工程は、電極パッド208と半田バンプ206とを対向させた状態で、薄層シリコンウエハ101と半導体チップ108とを加熱状態で圧接して、薄層シリコンウエハ101と半導体チップ108とを接着層210で接合するともに、電極パッド208と半田バンプ206とを位置合わせする(図7(b))。接合工程は、半田バンプ206を加熱溶融して半田バンプ206と電極パッド208とを金属接合する(図7(c))。本実施の形態では、このような半導体チップ108を薄層シリコンウエハ101に実装する工程は、薄層シリコンウエハ101が熱分解性の樹脂層20を介して基材10に固定された状態で行われる。以下、各実装工程を詳述する。
【0083】
第1の準備工程において、例えば、薄層シリコンウエハ101の貫通プラグ105上に電極パッド208を形成することが好ましい。この電極パッド208は、2層以上の多層構造を有することが好ましい。これにより、貫通プラグ105の金属の拡散を防止できる。例えば、電極パッド208は、Au/Ni/Crの3層からなる金属薄膜であって、Cr層が埋込導電部106に接触する多層膜を用いることができる。また、電極パッド208としては、他の材料からなる金属薄膜や、ペーストの塗布などにより形成された導体層などを用いることができる。
【0084】
次いで、第2の準備工程において、例えば、電極パッド204の先端には、その一部または全部を覆うように半田バンプ206が設けられていることが好ましい。この半田バンプ206は、電極パッド208と一対一の関係で電気的に接続される。電極パッド204は、金属材で構成されており、例えば、電極パッド208と同様の金属で構成されていることが好ましい。ここで、本実施の形態においては、電極パッド204上に半田バンプ206が設けられているが、電極パッド208上に半田バンプ206が設けられていてもよく、両側のパッド上に半田バンプ206が設けられていてもよい。半田バンプ206を構成する材料は、後述のバンプ128と同様である。また、電極パッド204または電極パッド208の形状は、特に限定されないが、円柱形の他に、円錐、多角柱、多角錐、鋲形状等とすることができる。
【0085】
次いで、接着層形成工程は、フラックス活性化合物を含有するペースト状の接着層用組成物を薄層シリコンウエハ101の裏面または半導体チップ108の表面に塗布するか、またはフィルム状に成形された接着層210を薄層シリコンウエハ101の裏面または半導体チップ108の表面に貼付しておこなうことが好ましい(図7(a))。ペースト状の接着層用組成物を塗布する手段としては、特に限定されないが、たとえばディスペンサーを用いることができる。塗布量は、特に限定されないが、例えば、薄層シリコンウエハ101の主面または半導体チップ108の表面全体を覆うような量とする。一方、接着層210は、半田バンプ206を完全に覆うよう、半導体チップ108の表面の実質的に全面に被着されていてもよい。このようなフィルム状に成形された接着層210を得るには、例えばペースト状の接着層用組成物を塗布、乾燥して得る方法、フィルム状の接着層用組成物をラミネートする方法等が挙げられる。
【0086】
本実施の形態に係る接着層用組成物は、例えば、熱硬化性樹脂、及びフラックス活性を有する化合物を含む。
【0087】
熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂等が用いられる。中でも、硬化性と保存性、硬化物の耐熱性、耐湿性、耐薬品性に優れるエポキシ樹脂が好適に用いられる。
【0088】
エポキシ樹脂は、室温で固形のエポキシ樹脂と、室温で液状のエポキシ樹脂のいずれを用いてもよい。また、室温で固形のエポキシ樹脂と、室温で液状のエポキシ樹脂とを併用しても良い。これにより、樹脂の溶融挙動の設計自由度をさらに高めることができる。
【0089】
室温で固形のエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、3官能エポキシ樹脂、4官能エポキシ樹脂等が挙げられる。さらに具体的には、固形3官能エポキシ樹脂とクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とを含んでもよい。
【0090】
また、室温で液状のエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂またはビスフェノールF型エポキシ樹脂とすることができる。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0091】
熱硬化性樹脂の含有量は、特に限定されないが、接着層用組成物全体の25〜75重量%が好ましく、特に45〜70重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、良好な硬化性が得られると共に、良好な溶融挙動の設計が可能となる。
【0092】
フラックス活性を有する化合物は、接続を阻害する半田バンプなどの電極端子表面の酸化膜を還元し、酸化膜を取り除く還元力を有する機能を有するものである。フラックス活性を有する化合物としては、例えば分子中にカルボキシル基および/またはフェノール性水酸基が少なくとも1つ以上存在する化合物をいい、液状であっても固体であってもよい。
【0093】
カルボキシル基を含有するフラックス活性化合物としては、脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等が挙げられる。フェノール性水酸基を有するフラックス活性化合物としては、フェノール類が挙げられる。
【0094】
脂肪族酸無水物としては、例えば無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物ポリセバシン酸無水物等が挙げられる。
【0095】
脂環式酸無水物としては、例えばメチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0096】
芳香族酸無水物としては、例えば無水フタル酸無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート等が挙げられる。
【0097】
脂肪族カルボン酸としては、下記式(25)で示される化合物が挙げられる。
【0098】
【化6】

【0099】
また、フラックス活性、接着時のアウトガス及び接着剤の硬化後の弾性率やガラス転移温度のバランスから、上記式(25)中のnは、3以上10以下が好ましい。nを3以上とすることにより、接着剤の硬化後の弾性率の増加を抑制し、被接着物との接着性を向上させることができる。また、nを10以下とすることにより、弾性率の低下を抑制し、接続信頼性をさらに向上させることができる。
【0100】
上記式(25)で示される化合物として、例えばn=3のグルタル酸(HOOC−(CH−COOH)、n=4のアジピン酸(HOOC−(CH−COOH)、n=5のピメリン酸(HOOC−(CH−COOH)、n=8のセバシン酸(HOOC−(CH−COOH)およびn=10のHOOC−(CH10−COOH−が挙げられる。
【0101】
他の脂肪族カルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸等が挙げられる。
【0102】
芳香族カルボン酸としては、例えば安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレートニ酸、ピロメリット酸、メリット酸、トリイル酸、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、トルイル酸、ケイ皮酸、サリチル酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、浸食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸等のナフトエ酸誘導体;フェノールフタリン;ジフェノール酸等が挙げられる。
【0103】
フェノール性水酸基を有するフラックス活性化合物としては、例えばフェノール、o−クレゾール、2,6−キシレノール、p−クレゾール、m−クレゾール、o−エチルフェノール、2,4−キシレノール、2,5キシレノール、m−エチルフェノール、2,3−キシレノール、メジトール、3,5−キシレノール、p−ターシャリブチルフェノール、カテコール、p−ターシャリアミルフェノール、レゾルシノール、p−オクチルフェノール、p−フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAF、ビフェノール、ジアリルビスフェノールF、ジアリルビスフェノールA、トリスフェノール、テトラキスフェノール等のフェノール性水酸基を含有するモノマー類、フェノールノボラック樹脂、o−クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールFノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等が挙げられる。
【0104】
フラックス活性化合物は、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂との反応で三次元的に取り込まれるため、1分子中にエポキシ樹脂に付加することができる少なくとも2個のフェノール性水酸基と、金属酸化膜にフラックス作用を示す芳香族に直接結合したカルボキシル基を一分子中に少なくとも1個有する化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)等の安息香酸誘導体;1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,7−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸等のナフトエ酸誘導体;フェノールフタリン;およびジフェノール酸等が挙げられる。
これらのフラックス活性化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
フラックス活性を有する化合物の含有量は、特に限定されないが、フラックス活性を向上させる観点では、接着層用組成物全体の1重量%以上とすることが好ましく、特に5重量%以上とすることが好ましい。熱硬化樹脂と未反応のフラックス活性化合物が残留していると、マイグレーションの原因となる。したがって、熱硬化性樹脂と反応しないフラックス活性化合物が残らないようにするためには、フラックス活性化合物の含有量は、特に限定されないが、接着層用組成物全体の30重量%以下とすることが好ましく、特に25重量%以下とすることが好ましい。上記範囲内であると、銅箔表面の酸化膜を還元し強度の大きい良好な接合が得られる。
【0106】
接着層用組成物は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂の硬化剤を含むことが好ましい。
硬化剤としては、例えばフェノール類、アミン類、チオール類が挙げられる。熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂が用いられる場合、このエポキシ樹脂との良好な反応性、硬化時の低寸法変化および硬化後の適切な物性(例えば、耐熱性、耐湿性等)が得られるという点で、フェノール類が好適に用いられる。
【0107】
フェノール類としては、特に限定されるものではないが、接着剤の硬化後の物性を考えた場合、2官能以上が好ましい。例えばビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールA、ビフェノール、ビスフェノールF、ジアリルビスフェノールF、トリスフェノール、テトラキスフェノール、フェノールノボラック類、クレゾールノボラック類等が挙げられるが、溶融粘度、エポキシ樹脂との反応性および硬化後の物性を考えた場合、フェノールノボラック類およびクレゾールノボラック類を好適に用いることができる。
【0108】
硬化剤としてフェノールノボラック類が用いられる場合、その含有量は特に限定されないが、樹脂を確実に硬化させる観点では、接着層用組成物全体の5重量%以上とすることが好ましく、特に10重量%以上とすることが好ましい。エポキシ樹脂と未反応のフェノールノボラック類が残留していると、マイグレーションの原因となる。したがって、残渣として残らないようにするためには、接着層用組成物全体の30重量%以下とすることが好ましく、特に25重量%以下とすることが好ましい。
【0109】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、フェノールノボラック樹脂の含有量は、エポキシ樹脂に対する当量比で規定してもよい。具体的には、エポキシ樹脂に対するフェノールノボラック類の当量比は、特に限定されないが、0.5以上、1.2以下が好ましく、特に0.6以上、1.1以下が好ましく、最も0.7以上、0.98以下が好ましい。エポキシ樹脂に対するフェノールノボラック樹脂の当量比を上記下限値以上とすることで、硬化後の耐熱性、耐湿性を確保することができ、この当量比を上記上限値以下とすることで、硬化後のエポキシ樹脂と未反応の残留フェノールノボラック樹脂の量を低減することができ、耐マイグレーション性が良好となる。
【0110】
他の硬化剤としては、例えば融点が150℃以上のイミダゾール化合物を使用することができる。イミダゾール化合物の融点が低すぎると、半田粉が電極表面へ移動する前に接着剤の樹脂が硬化してしまい接続が不安定になったり、接着剤の保存性が低下したりする場合がある。そのため、イミダゾールの融点は150℃以上が好ましい。融点が150℃以上のイミダゾール化合物として、例えば2−フェニルヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4−メチルヒドロキシイミダゾール等が挙げられる。なお、イミダゾール化合物の融点の上限に特に制限はなく、接着剤の接着温度に応じて適宜設定することができる。
【0111】
硬化剤としてイミダゾール化合物が使用される場合、その含有量は特に限定されないが、接着層用組成物全体の0.005重量%以上、10重量%以下とすることが好ましく、特に0.01重量%以上、5重量%以下とすることが好ましい。
イミダゾール化合物の含有量を前記下限値以上とすることにより、熱硬化性樹脂の硬化触媒としての機能をさらに効果的に発揮させて、接着剤の硬化性を向上させることができる。また、イミダゾール化合物の含有量を上記上限値以下とすることにより、半田が溶融する温度において樹脂の溶融粘度が高すぎず、良好な半田接合構造が得られる。また、接着剤の保存性をさらに向上させることができる。
これらの硬化剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0112】
接着層用組成物は、特に限定されないが、製膜性樹脂を含むことが好ましい。これにより、フィルムへの製膜性を向上することができる。
製膜性樹脂としては、例えばフェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、アクリルゴム等を用いることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
製膜性樹脂として、フェノキシ樹脂が用いられる場合、その数平均分子量は、特に限定されないが、5,000〜15,000であるフェノキシ樹脂が好ましい。このようなフェノキシ樹脂を用いることにより、硬化前の接着剤の流動性を抑制し、層間厚みを均一にすることができる。フェノキシ樹脂の骨格は、ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールFタイプ、ビフェニル骨格タイプなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、飽和吸水率が1%以下であるフェノキシ樹脂が、接合時や半田実装時の高温下においても発泡や剥離などの発生を抑えることができるため、好ましい。
【0114】
また、製膜性樹脂として、接着性や他の樹脂との相溶性を向上させる目的で、ニトリル基、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基等の官能基を有するものを用いてもよく、このような樹脂として、例えば官能基を有するアクリルゴムを用いることができる。
製膜性樹脂として、(官能基を有する)アクリルゴムが用いられる場合、フィルム状の接着剤を作製する際の成膜安定性を向上させることができる。また、接着剤の弾性率を低下させ、被接着物と接着剤間の残留応力を低減することができるため、被接着物に対する密着性を向上させることができる。
【0115】
製膜性樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物全体の5重量%以上、45重量%以下とすることが好ましい。製膜性樹脂が前記範囲内で配合される場合、成膜性の低下が抑制されるとともに、接着剤の硬化後の弾性率の増加が抑制されるため、被接着物との密着性をさらに向上させることができる。また、上記範囲内とすることにより、接着剤の溶融粘度の増加が抑制される。
【0116】
また、接着層用組成物は、特に限定されないが、シランカップリング剤を含むことが好ましい。これにより、接着剤の被接着物への密着性をさらに高めることができる。シランカップリング剤としては、例えばエポキシシランカップリング剤、芳香族含有アミノシランカップリング剤等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、接着層用組成物全体の0.01〜5重量%が好ましく、特に0.1〜1重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、密着性を向上する効果に特に優れる。
【0118】
接着層用組成物は、上記以外の成分を含んでいてもよい。たとえば、樹脂の相溶性、安定性、作業性等の各種特性向上のため、各種添加剤を適宜添加してもよい。
【0119】
このような接着層用組成物をトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤に溶解し、得られたワニスをポリエステルシートに塗布し、上記溶剤が揮発する温度で乾燥させて、接着剤シートを作製することで、ポリエステルシートに形成された接着層210を得る。
【0120】
次いで、半導体チップ108の半田バンプ206と、薄層シリコンウエハ101の電極パッド208とが当接するように位置合わせしながら搭載する(図7(b)、(c))。この搭載は、半導体チップ108と薄層シリコンウエハ101とをリフロー温度で加熱し、互いに圧接して行うことが好ましい。この際、半田バンプ206の周囲が接着層210で覆われているため、半田バンプ206の表面の酸化膜を除去しながら、半田バンプ206と電極パッド204とを半田接続することが可能となる。これにより、半導体チップ108と薄層シリコンウエハ101とは、接続部220を介して電気的に接続される。
【0121】
接合する条件は、特に限定されないが、リフロー温度を半田材料の融点の+10℃〜100℃に設定し、1〜30秒加熱することが好ましい。このとき、半導体チップ108側からのみの加熱であればより好ましい。これにより、薄層シリコンウエハ101への熱ストレスを低減でき、チップとの線膨張係数差によって発生する反りを低減し、さらには揮発性ボイドも抑制することができるからである。
【0122】
次いで、接着層210を、加熱して硬化させる。これにより、電極パッド204、半田バンプ206及び電極パッド208から構成される接続部220の周囲を封止できるので、接続信頼性を向上させることができる。硬化条件は、使用する接着層用組成物に応じて適切に選択でき、特に限定されないが、例えば、100〜200℃で30〜180分間が好ましく、特に120〜170℃で60〜150分間が好ましい。たとえば、硬化温度としては、接着層用組成物の硬化物のガラス転移温度以上とする。
【0123】
接着層用組成物の硬化物のガラス転移温度は、特に限定されないが、例えば、20℃〜300℃であることが好ましく、50℃〜150℃であることが特に好ましい。
【0124】
以上、図7に示す実装工程により、一括して、薄層シリコンウエハ101と半導体チップ108とを接続部220で電気的に接続しつつ、接着固定することができる。このとき、薄層シリコンウエハ101は基材10に固定されているので、薄層シリコンウエハ101の強度不足を補うことができる。したがって、薄層シリコンウエハ101にクラック等が発生することを抑制することができる。
【0125】
また、図4(b)に戻り、半導体封止用樹脂組成物を用いて、薄層シリコンウエハ101の裏面の複数の半導体チップ108を封止する封止材層110を形成する。この封止材層110を形成する工程としては、塗布工程、及び成形工程を含むことが好ましい。塗布工程では、まず、半導体チップ108付き薄層シリコンウエハ101を成形金型に配置する。次いで、薄層シリコンウエハ101の実装面上(主面上)に、半導体封止用樹脂組成物として液状樹脂組成物をディスペンサーなどで塗布する。このとき、液状樹脂組成物は、半導体チップ108の上面上および側壁上の全面におよび、半導体チップ108同士の間隙部を埋めるように塗布される。この後、成形工程では、所望の硬化条件で、液状樹脂組成物を硬化することが好ましい。ここでは、圧縮成形を行うことが好ましい。この硬化条件としては、例えば、成形圧力は、好ましくは1以上10MPa以下であり、より好ましくは2以上8MPa以下、硬化温度は、好ましくは110℃以上130℃以下であり、より好ましくは120℃以上125℃以下であり、硬化時間は、好ましくは1分以上1時間以下であり、より好ましくは10分以上30分以下である。このような工程により、図4(b)に示すように、本発明の液状樹脂組成物の硬化物である封止材層110で、複数の半導体チップ108の周囲が封止される。この封止材層110は、薄層シリコンウエハ101の全面に形成されている。
封止層110を形成する温度は、熱分解性の樹脂層20が分解される温度よりも低いことが好ましい。本実施の形態では、封止層110を形成する温度は、半導体封止用樹脂組成物を加熱する温度により特定される。これにより、封止材層110を形成する前に、熱分解性の樹脂層20から構造体(表面に半導体チップ108が配置された薄層シリコンウエハ101)が分離して、歩留まりが低下することを抑制することができる。
【0126】
続いて、図4(c)に示すように、薄層シリコンウエハ101から基材10を分離する。この分離は、大気中で行ってもよいが、以下に示すように減圧下で行うことが好ましい。
【0127】
熱分解性の樹脂層20として、活性エネルギー線を照射することで、熱分解温度が低下する樹脂層を使用している場合には、熱分解性の樹脂層20に活性エネルギー線を照射して、熱分解温度を低下させる。具体的には、基材10の裏面から光を照射し、基材10を介して、熱分解性の樹脂層20に光を照射する。熱分解性の樹脂層20は、活性エネルギー線照射前に比べ、分解温度が低下することとなる。
活性エネルギー線を照射した後、熱分解性の樹脂層20の熱分解温度は、たとえば200℃以下となる。
ここで、熱分解温度とは、熱分解性の樹脂層20を熱重量測定装置を用いて空気気流中で25℃から10℃/分で昇温したとき50%重量が減少した温度をいう。
【0128】
次いで、基材10、熱分解性の樹脂層20、薄層シリコンウエハ101、半導体チップ108、及び封止材層110から構成される積層体を不図示の容器内に設置する。ポンプ(圧力調整手段)Pにより、容器内の気体を吸引して、大気圧よりも気圧が低い減圧下におく。より好ましくは、100Pa以下、さらに好ましくは真空下(5Pa以下)の雰囲気とする。なお、容器内の気圧の下限値は、特に限定されないが、装置の性能との関係上、たとえば、0.01Paとなる。
この減圧下で、積層体を熱分解性の樹脂層20の熱分解温度以上に加熱し、熱分解性の樹脂層20を熱分解する。熱分解性の樹脂層20は熱分解し、ガス化することとなる。
【0129】
図4(c)に示すように、熱分解性の樹脂層20が熱分解することで、薄層シリコンウエハ101と基材10とを分離することができる。本実施の形態では、熱分解性の樹脂層20の加熱温度は、例えば、200℃以上400℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。これにより、熱分解性の樹脂層20の分解による分離しやすさと熱履歴による半導体素子の歩留まりの低下の抑制のバランスが良好となる。
薄層シリコンウエハ101と基材10とを分離する際には、薄層シリコンウエハ101の周縁部の一部が基材10の表面に対し垂直方向に離れるように、薄層シリコンウエハ101を基材10から引き剥がす方法がある。また、薄層シリコンウエハ101に対するストレスをより低減するために、基材10を薄層シリコンウエハ101の表面方向に沿うようにスライドさせて、基材10を薄層シリコンウエハ101から引き剥がしてもよい。
【0130】
本実施の形態では、熱分解性の樹脂層20の残渣が非常に少ない、あるいは全くないため、いずれの方法で、薄層シリコンウエハ101と基材10とを分離しても、薄層シリコンウエハ101にクラックが生じてしまうことが抑制される。
【0131】
その後、必要に応じて、薄層シリコンウエハ101に付着した熱分解性の樹脂層20の残渣を除去するために、薄層シリコンウエハ101のクリーニングを行ってもよい。
【0132】
以上により、図4(c)に示すような、複数の半導体チップ108が封止材層110に封止されている、板状の疑似ウエハ111が得られる。言い換えると、封止材層110の一面においては、複数の半導体チップ108が埋め込まれており、この半導体チップ108の実装面および封止材層110の一面を覆うように、薄層シリコンウエハ101が設けられている。この疑似ウエハ111においては、薄層シリコンウエハ101が貫通プラグ105を備えている。このため、本実施の形態に係る疑似ウエハ111は、貫通プラグ105を介して、他の実装基板と接続できる。
【0133】
ここで、本発明に係る半導体封止用樹脂組成物について詳述する。
本発明に係る半導体封止用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)酸無水物、(C)無機充填材、(D)硬化促進剤、および(E)低応力材を含有する液状樹脂組成物であって、固形成分が全液状樹脂組成物に対して80重量%以上95重量%以下含有することが好ましい。
【0134】
また、本発明に係る半導体封止用樹脂組成物は、下記の条件下で硬化させた硬化物が下記式を満たすような材料で構成されていることが好ましい。
(Tg−25℃)×(α1−α2)×E'≦20MPa
Tg:半導体封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(℃)
E':半導体封止用樹脂組成物の硬化物の弾性率(Pa)
α1:半導体封止用樹脂組成物の硬化物の線膨張係数(ppm/℃)
α2:シリコンウエハの線膨張係数(ppm/℃)
硬化条件:半導体封止用樹脂組成物を125℃10分、150℃1時間の硬化条件で硬化する。
【0135】
本発明に係る半導体封止用樹脂組成物としては、低弾性のものを用いることが好ましい。これにより、この半導体封止用樹脂組成物を硬化させて得られた封止材層110とシリコンウエハとの内部応力が小さくなる。上記式(Tg−25℃)×(α1−α2)×E'≦20MPaは、封止材層110とシリコンウエハとの内部応力が小さいことを意味する。ここで、封止材層110と薄層シリコンウエハ101との内部応力差Δσを(Tg−25℃)×(α1−α2)×E'とする。このΔσは、好ましくは20MPa以下であり、より好ましくは15MPa以下であり、さらに好ましくは10MPa以下である。本発明に係る半導体封止用樹脂組成物の材料等、Tgとフィラー充填量を適切に選択することにより、内部応力差Δσを上記範囲内とすることができる。これにより、封止材層110と薄層シリコンウエハ101との内部応力差を小さくすることができる。このため、薄層シリコンウエハ101上に封止材層110が積層した構造体において(例えば、図4(c)に示す構造体参照)、薄層シリコンウエハ101の反りを抑制することができる。これにより、ウエハレベルパッケージ130において、薄層シリコンウエハ101に反りが生じることを抑制できる。したがって、本実施の形態によれば、接続信頼性等の信頼性に優れた半導体装置が得られる。また、寸法安定性に優れたウエハレベルパッケージ130が得られるため、本実施の形態の半導体装置の生産性を向上させることができる。
【0136】
本発明に係る半導体封止用樹脂組成物のガラス転移温度は、特に限定されないが、50℃以上300℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以上200℃以下である。本実施の形態においては、架橋密度を調整することにより、上記ガラス転移温度を適切に調整することができる。ガラス転移温度を測定する方法としては、熱機械分析装置(TMA/SS6100,SII社製)を用いて、四角柱状に硬化した液状樹脂組成物を圧縮法にて−100℃から300℃まで5℃/minで昇温測定し、ガラス転移温度を測定する方法が好ましい。
【0137】
本発明に係る半導体封止用樹脂組成物の弾性率は、特に限定されないが、5GPa以上30GPa以下が好ましく、より好ましくは10GPa以上25GPa以下である。本実施の形態においては、架橋密度及び無機充填材の充填量を調整することにより、上記弾性率を適切に調整することができる。上記弾性率を測定する方法としては、粘弾性測定装置(DMA−7e,PERKIN ELMER社製)を用いて、板状に硬化した液状樹脂組成物を3点曲げ法にて0℃から300℃まで5℃/minで昇温測定し、25℃での弾性率を測定することが好ましい。
【0138】
本発明に係る半導体封止用樹脂組成物の25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の領域における、線膨張係数は、特に限定されないが、1(ppm/℃)以上20(ppm/℃)以下が好ましく、より好ましくは5(ppm/℃)以上15(ppm/℃)以下である。本実施の形態においては、無機充填材の充填量を調整することにより、上記線膨張係数を適切に調整することができる。上記線膨張係数を測定する方法としては、熱機械分析装置(TMA/SS6100,SII社製)を用いて、四角柱状に硬化した液状樹脂組成物を圧縮法にて−100℃から300℃まで5℃/minで昇温測定し、ガラス状態領域での線膨張係数を測定する方法が好ましい。
【0139】
本発明に係るシリコンウエハ(薄層シリコンウエハ101)の25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の領域における、線膨張係数は、特に限定されないが、1(ppm/℃)以上10(ppm/℃)以下が好ましく、より好ましくは2(ppm/℃)以上5(ppm/℃)以下である。
【0140】
以下、本発明に係る液状樹脂組成物の各成分を詳述する
(A)エポキシ樹脂としては、一分子中にエポキシ基を2個以上有するもので、かつ常温において液状であれば、特に分子量や構造は限定されるものではない。
例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンのような芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ−アジペイドなどの脂環式エポキシなどの脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用しても良い。
(A)エポキシ樹脂としては、芳香族環にグリシジルエーテル構造またはグリシジルアミン構造が結合した構造を含むものが耐熱性、機械特性、耐湿性という観点から好ましい。(A)エポキシ樹脂として脂肪族または脂環式エポキシ樹脂を用いる場合は、信頼性、特に接着性という観点から使用する量を限定するほうが好ましい。(A)エポキシ樹脂としては、最終的に常温(25℃)で液状であることが好ましいが、常温で固体のエポキシ樹脂であっても常温で液状のエポキシ樹脂に溶解させ、結果的に液状の状態であればよい
【0141】
(B)酸無水物は硬化剤として用いられる。(B)酸無水物の例示としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、または無水メチルナジック酸などが挙げられる。これらは、低温での硬化が早いことと、硬化物のガラス転移温度が高くなることから好ましい。また、常温で液状であり、且つ粘度も低いことから、テトラヒドロ無水フタル酸を硬化剤として用いることがより好ましい。特にこれらは、単独で用いても2種以上用いても差し支えない。
【0142】
上記の(B)酸無水物以外の他の硬化剤としては、1分子内にエポキシと反応する官能基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であればこれを併用できる。官能基としては、例えばフェノール基が好ましい。また、他の硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ジフェニレン骨格などを有する)などのフェノール類が挙げられる。
【0143】
無機充填材(C)としては、一般に封止材料に使用されているものを使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、窒化珪素などが挙げられ、これらは単独でも2種類以上併用して用いても差し支えない。これらの中でも液状樹脂組成物の耐熱性、耐湿性、強度などを向上できることから溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ粉末が好ましい。(C)無機充填材の形状は、特に限定されないが、粘度特性や流動特性の観点から形状は球状であることが好ましい。
(C)無機充填材が溶融シリカの場合、溶融シリカの含有量としては、成形性と耐半田クラック性のバランスから、全液状樹脂組成物中に60重量%以上95重量%以下使用することが好ましく、更に好ましくは80重量%以上95重量%以下である。下限値未満の場合には、吸水率の上昇に伴う耐半田クラック性が低下することがあり、上限値を越えると液状封止用樹脂組成物のディスペンス性能に問題が生じる可能性がある。(C)無機充填材が溶融シリカ以外の場合は、(C)無機充填材の含有量は、体積換算で上記含有量の範囲内となるようにする。
【0144】
硬化促進剤(D)としては、エポキシ基と酸無水物との反応を促進させるものであればよく、一般に封止用材料に用いられるものを広く使用できる。例えば、ホスホニウム塩、トリフェニルホスフィン、イミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は単独でも混合して用いても差し支えない。好ましくは一般式(2)または一般式(3)の構造を有するホスホニウム塩、式(4)の構造を有するトリフェニルホスフィン、式(5)または式(6)の構造を有するイミダゾール化合物が低粘度化の観点から有効である。更に好ましくは一般式(2)の構造を有する硬化促進剤、または式(6)の構造を有するイミダゾール化合物が更なる低粘度化の観点から有効である。前記一般式(2)の硬化促進剤としては、例えば、下記式(7)、式(8)、および式(9)などが挙げられる。
【0145】
【化7】

(ただし、式(2)で、R1、R2、R3、及びR4は、芳香族もしくは複素環を有する、1価の有機基または1価の脂肪族基であって、それらの内の少なくとも1つは、分子外に放出しうるプロトンを少なくとも1個有するプロトン供与体がプロトンを1個放出してなる基であり、これらは互いに同一であっても異なっていても良い。)
【0146】
【化8】

(ただし、式(3)で、Arは置換または無置換の芳香族基を表し、同一分子内の二つの酸素原子は、芳香族炭素位の隣接に位置する。nは2〜12の整数である。)
【0147】
【化9】

【0148】
【化10】

【0149】
【化11】

【0150】
【化12】

【0151】
【化13】

【0152】
【化14】

【0153】
また一般式(3)の硬化促進剤としては、下記式(10)、式(11)、および式(12)などが挙げられる。
【0154】
【化15】

【0155】
【化16】

【0156】
【化17】

【0157】
(D)硬化促進剤の配合量は、全液状封止用樹脂組成物100重量部に対して、0.1重量部以上1.0重量部以下であることが好ましく、更に好ましくは0.3重量部以上0.8重量部以下である。下限値未満の場合には硬化が遅く生産性が低下し、上限値を越える場合には保存性が悪化する恐れがあるためである。
【0158】
(B)酸無水物と(D)硬化促進剤の配合比[(B)/(D)]は、3以上35以下が好ましく、5以上30以下であることがさらに好ましく、10以上20以下が特に好ましい。配合比[(B)/(D)]が、下限値未満の場合には保存性が悪化し、上限値を越える場合には硬化が遅く生産性が悪くなる恐れがあるためである。
また、(B)酸無水物の配合量は、液状樹脂組成物の合計100重量部に対して、2重量部以上10重量部以下が好ましく、更に好ましくは5重量部以上7重量部以下である。
(B)酸無水物の配合量が、下限値未満の場合には硬化性が悪くなり、生産性が低下する。そして、上限値を越える場合には、耐湿信頼性が低下する恐れがある。
【0159】
(E)低応力材としては、液状樹脂組成物を低弾性化させるものであればよく、一般に封止用材料に用いられるものを広く使用できる。例えば、エチレン・エチルアクリレート共重合樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、ブタジエン−ニトリルゴム、ポリウレタン、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、オレフィン系共重合体、ニトリルゴム、ポリブタジエンゴムやその変性物などが挙げられる。この内、(E)低応力材が液状ゴムの場合、添加によるTgの低下が大きくなるため固形ゴムが好ましい。固形ゴムの中でもコアシェルゴム粒子を用いると、線膨張係数の増加が抑えられる為更に好ましい。より好ましくはコアシェルシリコーンゴム粒子である。
また、(E)低応力材の添加量は、全液状樹脂組成物中に3〜30重量%であることが好ましく、5〜20重量%がより好ましい。下限値未満の場合には低弾性の効果が得られず、上限値を超える場合には粘度上昇が高く生産性が悪くなる恐れがあるためである。
【0160】
(E)低応力材がコアシェル粒子の場合、コア部のガラス転移温度は、シェル部のガラス転移温度に比べ、低く、室温よりも低いことが好ましい。その際にコア部とシェル部が同一種のゴムである必要は無く、コア部がシリコーンゴムでシェル部がアクリルゴムや、コア部がブタジエンゴムでシェル部にアクリルゴムなどを組み合わせても可能である。
【0161】
(E)低応力材がコアシェル粒子の場合、凝集しにくいという点で球状または略球状であることが好ましい。また(C)コアシェル粒子の粒子径は、好ましくは、0.01μm以上30μm以下であり、より好ましくは、0.1μm以上10μm以下である。粒子径が下限値未満では凝集力が強くなり、粘度が上昇し流動性が維持できない。また上限値を超えると狭ギャップに対して、樹脂詰まりを起こしてしまう可能性がある。
【0162】
本発明に係る液状樹脂組成物において、固形成分が全液状樹脂組成物に対して80重量%以上95重量%以下含まれる。固形成分は25℃において固形の成分であり、無機充填剤と固形の低応力材とを併せた含有量を示す。
【0163】
上記以外に用いることができる成分としては、消泡剤としてのシリコーン化合物やワックスなどの離型剤や難燃剤等が挙げられ、求める特性に応じて添加する事ができる。
【0164】
本発明に係る液状封止樹脂組成物の製造方法としては、例えば各成分、添加剤などをプラネタリーミキサー、三本ロール、二本熱ロール、ライカイ機などの装置を用いて分散混練したのち、真空下で脱泡処理して製造する。
【0165】
また、本発明に係る液状の半導体封止用樹脂組成物の粘度は、粘度測定計を用いて25℃の温度条件下で測定したとき、好ましくは50Pa・s以上2000Pa・s以下であり、より好ましくは100Pa・s以上500Pa・s以下である。本実施の形態においては、原料粘度、無機充填材の充填量を調整することにより、上記粘度を適切に調整することができる。上記線膨張係数を測定する方法としては、上記粘度の測定方法としては、E型粘度計に3°R7.7型コーンを装着し25℃で5rpmの条件で測定を実施する方法が好ましい。本発明に係る液状の半導体封止用樹脂組成物の粘度を上記範囲内とすることにより、塗りむらが低減し、ウエハレベルパッケージ130の生産性が向上させることができる。
【0166】
本発明に係る液状の半導体封止用樹脂組成物において、下記式で表されるTI値が0.5以上2以下であることが好ましい。
TI値=η2.5rpm/η0.5rpm
η2.5rpmは、粘度計を用い、25℃、回転数2.5rpmで測定した粘度であり、η0.5rpmは、粘度計を用い、25℃、回転数0.5rpmで測定した粘度であることが好ましい。本実施の形態においては、フィラー充填量、フィラー粒度分布を調整することにより、上記TI値を適切に調整することができる。本発明に係る液状の半導体封止用樹脂組成物のTI値を上記範囲内とすることにより、塗布時には所定の粘度を有しているので、樹脂が飛び散ることによる汚染を抑制でき、かつ、引き延ばす際には粘度が小さくなるので、塗りむらを低減することができる。これにより、ウエハレベルパッケージ130の生産性を向上させることができる。
【0167】
本実施の形態に係る封止材層110の厚み(層厚方向の厚み)としては、特に限定されないが、例えば、好ましくは100μm以上1000μm以下であり、より好ましくは50μm以上500μm以下である。また、半導体チップ108の上面から封止材層110の表面までの距離としては、特に限定されないが、好ましくは5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。これにより、封止材層110に起因する、薄層シリコンウエハ101との内部応力差が小さくなり、信頼性に優れた半導体装置が得られる。
【0168】
本発明に係る液状樹脂組成物の硬化物(封止材層110)の25℃での弾性率をE、ガラス転移温度以下での線膨張係数をα、前記液状樹脂組成物の(E)低応力材成分を(C)無機充填材成分に置換した液状樹脂組成物の硬化物の25℃での弾性率をE、ガラス転移温度以下での線膨張係数をαとした時、(Eα−Eα)/Eα<−0.05であることが好ましい。すなわち、本発明に係る液状樹脂組成物の封止材層110において、その線膨張係数×室温弾性率を所定値より小さくすることが好ましい。これにより、寸法安定性が優れるため、半導体パッケージにおける不良の発生を抑制することができる。
【0169】
本発明に係る液状樹脂組成物の硬化物(封止材層110)のガラス転移温度をTg、前記液状樹脂組成物の(E)低応力材成分を(C)無機充填材成分に置換した液状樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度をTgとした時、−0.05<(Tg−Tg)/Tgであることが好ましい。これより、耐熱性が向上するため、半導体パッケージに不良が発生することを抑制できる。
【0170】
[配線層129の形成工程]
図5(a)〜図6(d)は、本実施の形態に係る配線層129形成工程の手順を示す工程断面図である。この配線層129を形成する工程としては、疑似ウエハ111の一面上に絶縁樹脂層(第1の絶縁層112)を形成する工程と、絶縁樹脂層(第1の絶縁層112)上に、配線回路(導電体122)を形成する工程と、を含む。
以下、配線層129を形成する工程について詳述する。
【0171】
まず、図5(a)に示すように、貫通プラグ105が設けられている疑似ウエハ111の主面に、第1の絶縁層112を形成する。言い換えると、貫通プラグ105が露出して設けられている薄層シリコンウエハ101の一面の全面上に、第1の絶縁層112を形成する。
【0172】
第1の絶縁層112を構成する材料としては、特に限定されないが、有機樹脂組成物が好ましく、例えば、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂等のポリアミド樹脂、ポリベンゾシクロブテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂等を主成分とする感光性樹脂組成物を挙げることができる。これらの中でも、露光、現像する際の感度、解像度、また、ガラス転移温度、弾性率等の機械特性、さらには、薄層シリコンウエハ101に対する密着性に優れるポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂等のポリアミド樹脂を主成分とするポジ型感光性樹脂組成物が好ましい。
【0173】
第1の絶縁層112を疑似ウエハ111の主面に形成する方法としては、特に限定されないが、スピンナーを用いた回転塗布法、スプレーコーターを用いた噴霧塗布法、浸漬法、印刷法、ロールコーティング法等を用いることができる。これにより、感光性樹脂組成物を塗布し、続いて、この感光性樹脂組成物に含まれる溶剤をプリベークし揮散させることにより、第1の絶縁層112を形成することができる。この時、感光性樹脂組成物は、形成方法に応じて適宜溶剤等で希釈することにより、粘度を調整することができる。
【0174】
感光性樹脂組成物の塗布量は、特に限定されないが、第1の絶縁層112の最終膜厚が0.1〜30μmになるよう塗布することが好ましい。最終膜厚が下限値未満であると、封止材層110の絶縁膜としての機能を十分に発揮することが困難となることがある。また、最終膜厚が上限値を越えると、微細な加工パターンを得ることが困難となるばかりでなく、加工に時間がかかりスループットが低下することがある。また、プリベーク温度は、特に限定されないが、50〜150℃が好ましく、60〜130℃が好ましい。
【0175】
次いで、図5(b)に示すように、貫通プラグ105の位置に対応する第1の絶縁層112に、露光および現像処理を行う。これにより、第1の絶縁層112に凹部(開口部114)を形成する。この開口部114では、その底面に貫通プラグ105の表面が露出している。
【0176】
ここで、開口部114を形成するメカニズムについて説明する。疑似ウエハ111の主面上に形成された感光性樹脂組成物の塗膜(第1の絶縁層112)に、ステッパー等の露光装置でマスクの上から化学線を照射(露光)する。これにより、第1の絶縁層112には、露光された部分(以下露光部という)と露光されていない部分(以下、未露光部という)が形成される。この未露光部中のジアゾキノン化合物は現像液に不溶であり、またポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂等のポリアミド樹脂がジアゾキノン化合物と相互作用することで、さらに、未露光部は、現像液に対し耐性を持つようになる。一方、露光部においては、ジアゾキノン化合物が化学線の作用によって化学変化を起こし、現像液に可溶となる。このため、露光部の樹脂の溶解が促進される。この露光部と未露光部との溶解性の差を利用し、露光部を溶解除去することにより未露光部のみが残存する。このようにして、第1の絶縁層112に開口部114が形成される。
【0177】
露光する方法としては、特に限定されないが、貫通プラグ105に対応する位置に開口を有する露光パターンをマスクとして、第1の絶縁層112にX線、電子線、紫外線、可視光線等の化学線を照射することにより行うことが好ましい。化学線の波長としては、200〜500nmであることが好ましい。また、化学線としては、i線またはg線が好ましい。
【0178】
また、露光部を現像液で溶解除去することにより、開口部114が形成される。この現像液としては、特に限定されないが、溶剤、アルカリ水溶液を挙げることができ、環境に対する負荷の少ないアルカリ水溶液が好ましい。アルカリ水溶液としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第1アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第2アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第3アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第4級アンモニウム塩等を含むアルカリ類、等の水溶液および、これにメタノール、エタノール等のアルコール類を含む水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を好適に使用することができる。また、現像方法としては、例えば、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が好適である。
【0179】
次いで、図5(c)に示すように、第1の絶縁層112の表面上に導電層118を形成する。このとき、導電層118は、少なくとも開口部114内の壁面上および貫通プラグ105上に形成されていることが好ましい。
【0180】
導電層118を形成する方法としては、特に限定されないが、金属をスパッタリングする方法等が好適である。金属としては、特に限定されないが、Cr、Ti、Cu等が好ましい。また、低抵抗の観点からCuが好ましく、貫通プラグ105または後述の導電体122のCuの拡散を防止する観点からTiが好ましい。
【0181】
次いで、図5(d)に示すように、導電層118上にレジストパターン120を形成する。このレジストパターン120には、貫通プラグ105上に相当する位置に開口部116(凹部)が形成されている。すなわち、後の工程で開口部116に埋め込まれる導電体122が、貫通プラグ105と接続するビアおよび配線となるように、開口部116をレジストパターン120に形成する。
【0182】
レジストパターン120を構成するレジストとしては、特に限定されないが、液状またはフィルム状の感光性レジストが挙げられる。液状の感光性レジストを用いる場合のレジストパターン120の形成方法としては、例えば、導電層118の全面を覆うように、スクリーン印刷等の手法により液状の感光性レジストを形成し、次いで、開口を有するマスク(図示せず)を介して露光し、次いで、現像液により現像する。一方、フィルム状の感光性レジストを用いてレジストパターン120を形成する方法としては、例えば、導電層118の全面を覆うように、ラミネート等の手法によりフィルム状の感光性レジストを形成し、その後は、液状のレジストの場合と同様にする。
【0183】
図5(e)に示すように、次いで、レジストパターン120の開口部116内に、導電体122を埋め込む。導電体122は、めっき法で形成されることが好ましい。この導電体122は、電気的に貫通プラグ105と接続する。導電体122を構成する金属としては、特に限定されないが、電気抵抗が小さく信号の高速化に対応することができるCuが好ましい。この導電体122は、貫通プラグ105と電気的に接続する、ビアおよび配線となる。
【0184】
次いで、図6(a)に示すように、レジストパターン120を除去する。その後、レジストパターン120の直下(導電体122が形成されていない領域)の導電層118を除去する。これにより、導電体122の直下のみに、導電層118を残す。
【0185】
導電層118を除去する方法としては、特に限定されないが、導電層118の残渣が残り難い、反応性イオンエッチング(RIE)等の手法が好適である。反応性イオンエッチング等の手法により除去する際に、導電体122も若干膜減りを起こすが、導電層118よりも導電体122の厚みの方が十分に厚く形成されているため、導電体122が全て除去されてしまうことはない。
【0186】
次いで、図6(b)に示すように、第1の絶縁層112および導電体122を覆うように第2の絶縁層124を形成する。第2の絶縁層124を構成する材料は、第1の絶縁層112を構成する材料と同様のものから選択できる。第2の絶縁層124と第1の絶縁層112の材料は同種でもよく異種でもよい。また、第2の絶縁層110の形成方法は、第1の絶縁層112の形成方法と同様とする。
【0187】
次いで、図6(c)に示すように、第2の絶縁層124に開口部126を形成する。この開口部126は、導電体122上に相当する位置に形成される。第2の絶縁層110に開口部126を形成する方法としては、特に限定されないが、第1の絶縁層112を形成する方法と同様である。
【0188】
次いで、図6(d)に示すように、第2の絶縁層124の開口部126にバンプ128を形成する。この開口部126は、導電体122および導電層118を介して、貫通プラグ105と電気的に接続する。
【0189】
バンプ128を構成する材料としては、特に限定されないが、錫(Sn)、鉛(Pb)、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、アンチモン(Sb)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、金(Au)、ゲルマニウム(Ge)および銅(Cu)からなる群から選択される少なくとも2種以上の金属の合金、または錫単体からなることが好ましい。これらのうち、溶融温度および機械的物性を考慮すると、Sn−Pbの合金、鉛フリー半田であるSn−Biの合金、Sn−Ag−Cuの合金、Sn−Inの合金、Sn−Agの合金などのSnを含む合金がより好ましい。バンプ128の形状は、特に限定されないが、球状が好ましい。
【0190】
バンプ128を形成する方法としては、特に限定されないが、例えばSnを含む合金とフラックスを主成分とするペーストを、第2の絶縁層124の開口部126にスクリーン印刷等の手法により塗布、次いで、半田リフローを行うことにより形成する方法、また、第2の絶縁層124の開口部126に、例えばSnを含む合金からなる半田ボールを載置し、次いで、半田ボールにフラックスを塗布し、次いで、半田リフローを行うことにより形成する方法等が挙げられる。半田リフローを行うには、例えば半田リフロー装置を用いる。
【0191】
以上のようにして、疑似ウエハ111の主面に再配線工程を行い、配線層129を形成する。これにより、ウエハレベルパッケージ130を得る。
[個片化・実装工程]
【0192】
次いで、ウエハレベルパッケージ130を分割する。ウエハレベルパッケージ130を分割することにより、本実施の形態の電子装置140を複数得る(図2)。
【0193】
ウエハレベルパッケージ130の分割は、単独の半導体チップ108毎に分割してもよいし、複数の半導体チップ108単位で分割してもよい。複数の半導体チップ108単位で分割することにより、一つの電子装置140に複数の機能を有する半導体チップ108を配置することができる。このため、電子装置140の高機能化を実現することができる。
【0194】
ウエハレベルパッケージ130を分割する方法としては、特に限定されないが、レーザーやダイシングソー等の手法により分割することができる。これらの中でも、簡便に分割することができるダイシングソーによる方法が好ましい。
【0195】
このようにして得られた電子装置140は、半導体チップ108の外縁の外側に配線を引きまわし、入出力の配線数を増大させることができるため、電子装置140の高機能化を実現することができる。
【0196】
次いで、図2に示すように、分割された電子装置140を基板(インターポーザ132)に実装する。実装をするには、電子装置140のバンプ128とインターポーザ132の上に形成された配線回路134とを接続する。これらを接続するには、まず、バンプ128の少なくとも表面に半田層を有する場合、バンプ128にフラックスを塗布する。次いで、バンプ128と配線回路134とが対応する位置に調整して、電子装置140をインターポーザ132に載置する。次いで、半田リフロー装置を用いて半田接続を行うことにより、バンプ128と配線回路134とを接続する。この時、電子装置140とインターポーザ132はバンプ128と配線回路134が金属結合することにより、電気的に接続されている。これにより、図2に示す積層パッケージ100が得られる。
【0197】
インターポーザ132である回路基板は、絶縁性の基材を主体として構成されていることが好ましい。基材を構成する材料としては、繊維基材または樹脂フィルムなどが挙げられる。繊維基材としては、例えばガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、またはガラス以外の無機化合物を成分とする繊布もしくは不繊布等の無機繊維基材、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の有機繊維で構成される有機繊維基材が挙げられる。また、樹脂フィルム基材としては、例えばポリイミド樹脂フィルム、ポリエーテルイミド樹脂フィルム、ポリアミドイミド樹脂フィルム等のポリイミド樹脂系樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム等のポリアミド樹脂系フィルム、ポリエステル樹脂フィルム等のポリエステル樹脂系フィルムが挙げられる。これらの中でも主としてポリイミド樹脂系フィルムが好ましい。これにより、弾性率と耐熱性を特に向上し、良好な微細レーザー加工性を得ることができる。なお、基材には、微細粒径の無機フィラー(ナノフィラー)を含有してもよい。
また、基材の厚さは特に限定されず、例えば5〜125μmとすることができる。特に、12.5〜100μmとすることにより、基材の面直方向の屈曲性と、面内方向の伸縮性が良好に得られる。
【0198】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態においては、薄層シリコンウエハ101を基材10に固定した状態で、薄層シリコンウエハ101上に半導体チップ108を実装している。このため、薄層シリコンウエハ101の強度不足を基材10により補うことができる。これにより、薄層シリコンウエハ101にクラック等が発生することを抑制することができる。したがって、信頼性に優れた半導体装置が得られる。
【0199】
また、減圧下で熱分解性の樹脂層20の熱分解を行っている。このため、熱分解性の樹脂層20がガス化したものが、排出される結果、ガス化が促進される。これにより、薄層シリコンウエハ101に、熱分解性の樹脂層20が残存する量を低減できる。これにより、信頼性に優れた半導体装置が得られる。加えて、熱分解性の樹脂層20の残渣量が少ないので、薄層シリコンウエハ101の洗浄工程を簡略化したり、省略したりすることができる。これにより、本実施の形態の半導体装置の製造方法の簡略化を図ることができる。また、5Pa以下の雰囲気下で加熱して、熱分解性の樹脂層20を熱分解することで、よりいっそう確実に熱分解性の樹脂層20の残渣量を低減させることができる。また、基材10においても、熱分解性の樹脂層20の残渣が低減できるので、基材10を再利用することができる。
【0200】
また、本実施の形態では、半導体チップ108の実装工程および封止工程において、熱分解性の樹脂層20の熱分解が十分に抑制されている。このため、工程の途中で、薄層シリコンウエハ101から基材10が分離することが抑制されている。これにより、確実に薄層シリコンウエハ101のクラックを抑制できるので、信頼性に優れた半導体装置が得られる。
【0201】
本実施の形態においては、薄層シリコンウエハ101上に実装している半導体チップ108を封止する半導体封止用樹脂組成物として、低弾性のものを用いている。これにより、半導体封止用樹脂組成物の硬化物で構成される封止材層110と薄層シリコンウエハ101との内部応力差が小さくなる。このため、薄層シリコンウエハ101においては、反りが発生することが抑制されているので、寸法安定性に優れている。このような薄層シリコンウエハ101上に配線層129を形成できるので、信頼性の高いウエハレベルパッケージ130が得られる。このようなウエハレベルパッケージ130を個片化して得られる電子装置140や、当該電子装置140をインターポーザ132に実装して形成された積層パッケージ100においても、ウエハレベルパッケージ130と同様の効果が得られる。本実施の形態の半導体装置としては、形態が特に限定されず、ウエハレベルパッケージ130、電子装置140、積層パッケージ100のいずれでもよい。
【0202】
また、シリコンウエハ102上に複数の半導体チップ108を実装したのち、一括して、封止工程および配線層形成を行うことができる。このため、本実施の形態の半導体装置の製造方法は、生産性に優れている。また、疑似ウエハ111上に配線層129を形成しているので、所望の配線パターンを形成できる。このため、生産性に優れたウエハレベルパッケージ130が形成される。
【0203】
次に、本実施の形態の半導体装置の変形例について説明する。
図10(a)は、本変形例のウエハレベルパッケージの一例の断面図を示す。
本変形例のウエハレベルパッケージ301の一例においては、半導体チップ304が貫通プラグ303を有しており、この貫通プラグ303を介して、半導体チップ312が電気的に接続するように半導体チップ304上に形成されている。このように、本変形例は、半導体チップを積層する点以外は、基本的に本実施の形態と同様である。
以下、本変形例について、上記の実施の形態と相違する点について、詳述する。
【0204】
本変形例のウエハレベルパッケージ301においては、薄層シリコンウエハ101上に、半導体チップ304および半導体チップ312が積層している。この半導体チップ312は、半導体チップ304の貫通プラグ303を介して、貫通プラグ105、導電層118、導電体122およびバンプ128と電気的に接続している。このように、半導体チップ312は、バンプ128を経由して外部回路と電気的に接続できる。
【0205】
また、半導体チップ304において、貫通プラグ303は、例えば、トランジスタ回路に電気的に接続したものと、該トランジスタ回路に電気的に接続しないで回路内の素子および配線等とは絶縁されているものとを有してもよい。この貫通プラグ303は、少なくとも、接続が必要な半導体チップ312の電極に対抗する位置に設けられていればよい。また、貫通プラグ303を有する半導体チップ304の高さは、特に限定されず、各種の設計に応じて、適切に選択することができる。
【0206】
また、半導体チップ304および半導体チップ312としては、DRAM、ロジック等の各種の半導体素子を用いることができる。また、DRAM同士を積層してもよいし、DRAMとロジックとの異種の半導体素子を積層してもよい。本変形例では、2層の半導体素子の積層構造であるが、積層数としては、とくに限定されず、積層方向に対して、3層以上の積層構造については後述する。また、1つの半導体チップ304の面内方向においては、複数の半導体チップ312が設けられていてもよい。
【0207】
これらの半導体チップ304および半導体チップ312はそれぞれ、封止材層110および封止材層310に封止されている。
【0208】
次に、本変形例の半導体装置の製造方法について説明する。
図8は、本実施の形態の変形例における半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
本変形例の半導体装置の製造方法は、次の工程を含む。まず、薄層シリコンウエハ101上に第一の半導体素子(半導体チップ304)を設ける工程において、第1の半導体素子(半導体チップ304)の一面に第1の埋込導電部(プラグ302)が設けられており、半導体チップ304のプラグ302とシリコンウエハ102の埋込導電部106とを電気的に接続する。次いで、封止材層110を形成する工程後、封止材層110の上面とともに半導体チップ304の他面を研削して、半導体チップ304の他面にプラグ302を露出させて、第1の貫通プラグ(貫通プラグ303)とする。次いで、半導体チップ304の他面上に、貫通プラグ303と電気的に接続する第2の半導体素子(半導体チップ312)を設ける。次いで、前述の半導体封止用樹脂組成物を用いて、半導体チップ304の他面に設けられた半導体チップ312を封止する封止材層310を形成する。また、このような積層チップ工程は、薄層シリコンウエハ101が基材10上に固定された状態で行われる。
以下、各工程について詳述する。
【0209】
まず、図8(a)に示すように、図3(a)および図4(b)と同様の工程を行う。ただし、半導体チップ108に代えて、一面に埋め込まれたプラグ302を複数有する半導体チップ304を用いる。これにより、薄層シリコンウエハ101と半導体チップ304とが、貫通プラグ105、接続部220及びプラグ302により電気的に接続された構造体を得る。各半導体チップ304は、薄層シリコンウエハ101上に仮搭載後、一括して接合することができる。また、封止材層110により、半導体チップ304の上面上および側壁上は覆われており、半導体チップ304同士の間は埋め込まれている。
【0210】
続いて、図8(b)に示すように、封止材層110の上面上および半導体チップ304の上面上を研削する。この研削方法としては、前述の方法と同様である。これにより、半導体チップ304の他面上に、プラグ302を露出させて貫通プラグ303とする。
【0211】
続いて、図8(c)に示すように、半導体チップ304の上に半導体チップ312を実装する。実装方法としては、シリコンウエハ102上に半導体チップ304を実装する方法と同様の手法を用いることができる。これにより、貫通プラグ303を介して、半導体チップ304と半導体チップ312とを電気的に接続する。
【0212】
続いて、図8(d)に示すように、封止材層110の形成と同様にして、半導体チップ312を封止する封止材層310を形成する。この封止材層310は、封止材層110と同様の前記半導体封止用樹脂組成物を用いる。また、封止材層310により、半導体チップ312の上面上および側壁上は覆われており、半導体チップ312同士の間は埋め込まれている。この後、前述と同様にして、薄層シリコンウエハ101から基材10を分離する。
【0213】
以上の工程の後、図4(c)〜図6(d)と同様の工程を行う。すなわち、薄層シリコンウエハ101から基材10を分離して、疑似ウエハを得る。この疑似ウエハ上に配線層129を形成する。このようにして、図10(a)に示すような、ウエハレベルパッケージ301が得られる。このウエハレベルパッケージ301は、個片化して電子装置を得てもよく、この電子装置をさらにインターポーザ等の実装基板に実装して、積層パッケージを得てもよい。
【0214】
本変形例は、本実施の形態と同等の効果が得られる。
また、積層方向かつ面内方向に複数の半導体チップを積層できるので、面積の増大を抑制しつつ、チップの数を増大させることができる。このような三次元的な積層により、単位面積あたりの機能に優れた半導体装置が得られる。また、半導体チップ312は、半導体チップ304が積層される。また、積層される半導体チップ312の接続距離も短くなり、高密度かつ高速な半導体装置が得られる。
また、各実装工程において、半導体チップの品質や種類を選択し、この半導体チップを個別に搭載した後、一括接合することができる。このように種類等が異なる半導体チップを一括で実装できるため、作業性に優れた半導体装置の製造方法が得られる。
【0215】
次に、本実施の形態の半導体装置の他の変形例について説明する。
図10(b)は、本変形例のウエハレベルパッケージの他の一例の断面図を示す。
他の変形例のウエハレベルパッケージ300の一例においては、3層以上の半導体チップが積層している点が上記変形例と相違する以外は、基本的に上記変形例と同様である。
以下、他の変形例について、上記の変形例と相違する点について、詳述する。
ウエハレベルパッケージ300においては、複数かつ多機能の半導体チップが三次元的に積層されている。また、バンプ128が形成されている側を下層側としたとき、最上層の封止材層310には、半導体チップ312および抵抗素子316が設けられている。そして、最下層の封止材層110から中層の封止材層310においては、貫通プラグ303を有する半導体チップ304が設けられている。他の変形例においては、最下層および中層の封止材層310においては、全ての半導体チップが貫通ビアを有してもよいが、一部の半導体チップのみが貫通プラグ303を有してもよい。また、最上層以外の封止材層310においても、抵抗素子等の、半導体チップ以外の各種の半導体素子が設けられていてもよい。また、他の変形例においては、4層の積層構造としているが、積層数は特に限定されず、10層以上の積層構造としてもよい。
【0216】
また、半導体チップ304は、複数の貫通プラグ303を有してもよい。これにより、半導体チップ304の面内方向においては、複数の半導体素子(例えば、貫通プラグ303を有する半導体チップ304半導体チップ312、抵抗素子316等)を実装することができる。実装方法としては、前述と同様である、フラックス活性を有する接着層210を用いたハンダ接合方法などの方法で形成された配線層314を用いた接合方法等があげられる。複数の半導体チップ304に亘って配線層314を形成できる。このため、配線層314上に形成する半導体チップの配置の自由度がさらに向上する。
【0217】
また、各封止材層310の層厚は、特に限定されないが、好ましくは100μm以上1000μm以下であり、より好ましくは50μm以上500μm以下である。また、最上層において、半導体チップ312の上面から封止材層310の表層までの距離は、特に限定されないが、好ましくは5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。
【0218】
次に、他の変形例の半導体装置の製造方法について説明する。
図9(a)および(b)は、図8(a)および(b)に示す工程と同様にする。
続いて、図9(c)に示すように、半導体チップ304の上に半導体チップ306を実装する。この半導体チップ306はプラグ308を有する。このため、半導体チップ304の貫通プラグ303と半導体チップ306のプラグ308とが電気的に接続する。実装方法としては、シリコンウエハ102上に半導体チップ304を実装する方法と同様の手法を用いることができる。
【0219】
続いて、図9(d)に示すように、封止材層110の形成と同様にして、半導体チップ306を封止する封止材層310を形成する。この封止材層310は、封止材層110と同様の前記半導体封止用樹脂組成物を用いる。
【0220】
この後、図9(b)〜図9(d)から構成される一連の工程を複数繰り返して、半導体チップを積層する。その後、上記変形例と同様にして、図5(a)〜図6(d)と同様の工程を行う。すなわち、薄層シリコンウエハ101から基材10を分離して、疑似ウエハを得る。この疑似ウエハ上に配線層129を形成する。このようにして、図10(b)に示すような、ウエハレベルパッケージ300が得られる。
【0221】
他の変形例においては、本実施の形態および上記変形例と同様の効果が得られる。また、高密度に三次元実装することができるので、より小型、高速、及び高機能または多機能の半導体装置が得られる。
【実施例1】
【0222】
以下、実施例を用いて、本発明を具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
[実施例1]
(1)エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
SB−403S 日本化薬工業社製 100重量部
(2)無水物(B)として、メチルテトラヒドロフタル酸無水物
MT−500 新日本理化社製 100重量部
(3)無機充填材(C)として、無機充填剤1
FB−74 電気化学工業社製 1200重量部
(4)無機充填材(C)として、無機充填材2
SO−E2 アドマテックス社製 250重量部
(5)硬化促進剤(D)として、式(8)で表される硬化促進剤 7重量部
(6)低応力材(E)としてコアシェルシリコーンゴム粒子(コアシェルシリコーンゴム1)
KMP−605 信越化学工業社製 150重量部
(7)エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−403E 信越化学工業社製 4重量部
をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)10分間脱泡処理を行い、液状樹脂組成物を得た。
【0223】
作製した液状樹脂組成物について、以下の評価を行った。
液状樹脂組成物を125℃10分、150℃1時間の硬化条件により硬化して試験サンプルを作成した。又、上記液状樹脂組成物の(E)低応力材成分を(C)無機充填材1に置換した液状樹脂組成物を125℃10分、150℃1時間の硬化条件により硬化して試験サンプルを作成した。
【0224】
(a)粘度測定:E型粘度計に3°R7.7型コーンを装着し25℃で5rpmの条件で測定を実施した。
【0225】
(b)ガラス転移温度、線膨張係数:熱機械分析装置(TMA/SS6100,SII社製)を用いて、四角柱状に硬化した液状樹脂組成物を圧縮法にて−100℃から300℃まで5℃/minで昇温測定し、ガラス転移温度およびガラス状態領域での線膨張係数を測定した。
【0226】
(c)ガラス転移温度変化率:液状樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度をTg、前記液状樹脂組成物の(E)低応力材成分を(C)無機充填材1に置換した液状樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度をTgとした時、(Tg−Tg)/Tg×100である。
【0227】
(d)室温弾性率:上記の方法で得た液状樹脂組成物の硬化物(試験サンプル)から幅3mm、長さ15mm、厚み2mmの試験片を切り出す。粘弾性測定装置(DMA−7e,PERKIN ELMER社製)を用いて、JIS K7171に準拠し、試験片を3点曲げ法にて0℃から300℃まで5℃/minで昇温測定し、25℃での弾性率を測定した。
【0228】
(e)線膨張係数×室温弾性率変化率:液状樹脂組成物の硬化物の25℃での弾性率をE、ガラス転移温度以下での線膨張係数をα、前記液状樹脂組成物の(E)低応力材成分を(C)無機充填材1に置換した液状樹脂組成物の硬化物の25℃での弾性率をE、ガラス転移温度以下での線膨張係数をαとした時、(Eα−Eα)/Eα×100である。
【0229】
(f)内部応力差Δσ:上記液状樹脂組成物(半導体封止用樹脂組成物)の硬化物と、シリコンウエハとの積層構造において、下記内部応力差Δσを求めた。
(Tg−25℃)×E'×(α1−α2)
Δσ:(Tg−25℃)×(α1−α2)×E'
Tg:半導体封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(℃)
E':半導体封止用樹脂組成物の硬化物の弾性率(Pa)
α1:半導体封止用樹脂組成物の硬化物の線膨張係数(ppm/℃)
α2:シリコンウエハの線膨張係数(ppm/℃)
硬化条件:上記半導体封止用樹脂組成物を125℃10分、150℃1時間の硬化条件で硬化する。
【0230】
(g)密着力:10mm角に切断した表面がミラータイプの625μm厚シリコンウエハの裏面であるブライトエッチ面に、作製した液状樹脂組成物を塗布した。これを挟んで密着測定用の釘(銅製)を取り付け、125℃10分加熱硬化後、更に175℃4時間で後硬化を行い、測定サンプルを得た。釘の接着面積10mmである。これを測定装置(Dage4000,Dage社製)に半導体チップ面を万力で固定して取り付け、25℃において垂直方向に持ち上げて測定した。
【0231】
作製した液状樹脂組成物の25℃での粘度は、500Pa・s、ガラス転移温度は100℃、ガラス転移温度変化率は0%、線膨張係数は7ppm/℃、室温弾性率は15GPa、線膨張×室温弾性率変化率は−24%。内部応力値は9MPa、密着力は28Nであった。
【0232】
[信頼性評価]
半導体チップ上に回路配線された半導体ウエハ(Phase8、日立超LSI株式会社製,350μm厚)をダイシング装置で7mm角大に切断し、半導体チップを得た。次に8インチシリコンウエハ(725μm厚)を基材とし、剥離可能な熱発泡フィルム(リバアルファ、日東電工株式会社製)を、熱発泡フィルムの発泡面を常温で接着して支持基板を作った。支持基板に適当な間隔を空けて、半導体チップの電極がある活性面が熱発泡フィルムと接するように、ダイマウンター(DB200, 澁谷工業(株)製)で半導体チップを搭載した。半導体チップ付き支持基板を圧縮成形機にセットし、液状樹脂組成物適量載せ、成形圧力3MPa,125℃10分で硬化を行い、ウエハを得た。液状樹脂組成物の量は、成形後の樹脂厚みが600±10μmとなるように調整した。
ウエハを150℃1時間オーブンで熱処理し後硬化を行った後、支持基板を剥がす為に、200℃の吸着可能な熱盤上に置いて熱発泡フィルムを発泡させ、支持基板のウエハ部を剥離し、次いで熱発泡フィルム自体をウエハから剥離することで、表面に多数の半導体チップが露出した状態の再配置ウエハを得た。得られた再配置ウエハをチップ面を上にして表面粗さ測定装置(SURFCOM1400D,株式会社東京精密社製)を用いて測定距離18mm、測定速度6mm/sで測定し、反りは0.8mmであった。
得られた再配置ウエハ全体に、感光性バッファコート材をスピンコートし(DSPIN80A、(株)SOKUDO製、1500rpm、30秒)、次いで同装置にてプリベーク(125℃5分)を行い、再配置ウエハ表面に再配線用の絶縁膜を形成した。半導体チップの各接続パッドの位置で絶縁膜を開孔するために、光照射(ブロードバンドアライナーMA−8、ズース・マイクロテック(株)製、500mJ/cm)を行い、現像液(TMAH2.38%、23℃、62秒2回パドル)で現像、最終硬化(250℃、1.5時間)した。次にスパッター(SPF−740H、キャノンアネルバエンジニアリング(株)製)にてバッファコート上に、チタン500Å、銅3000Å厚みとなる様、順に成膜した。ここにレジスト(サンフォート155、旭化成イーマテリアルズ(株)製)を塗布し、再配線回路用マスクを用いてレジストの露光と現像を行った。更に銅メッキ処理で、全体に10μm厚みの銅の層を形成した後、レジストを剥離した。この状態では、バッファコート面に不要な銅とチタン層が残っているので、これらをエッチングにより除去後、もう一度スピンコートにてバッファコート層を設け、再配線後の別位置に開孔しバンプ接続の為の銅層を露出させた。再配線は、以上の手順で行った。
再配線まで終わった再配置ウエハは、ダイサーを用いて15mm角サイズに個片化した。この様にして、信頼性試験用の半導体パッケージ装置を組立てた。
本実施例の再配置ウエハの反りは、図3(a)に示すウエハレベルパッケージ130の反りと正の相関関係を示す。すなわち、本実施例の再配線ウエハの反り量が小さくなれば、図3(a)に示すウエハレベルパッケージ130の反り量も小さくなることが言える。
【0233】
(h)半田耐熱試験
上記作製した半導体パッケージを、125℃20時間処理し、次いで85℃85%RHの条件で168時間吸湿処理した。これを、最大温度260℃の時間が30秒となるように設定したリフローオーブンに3回通し、半田耐熱試験1を行った。(試験条件1とした。)
また、半田耐熱試験1(試験条件1)の吸湿処理条件を85℃60%RH168hとした以外は、同様にして、半田耐熱試験2を行った。(試験条件2とした。)
試験後のサンプルは、超音波探傷装置(FineSAT FS300型,日立建機(株)製)にて20MHzのプローブを用いて、内部の剥離状態を確認した。半導体チップの面積に対して、剥離面積の合計が10%以下の場合は微小剥離とし、それ以上の剥離面積では剥離として、剥離が見られた半導体パッケージの数を数えた。
液状樹脂組成物を用いた結果では微小剥離、剥離ともに見つからなかった。
【0234】
[実施例2]
(1)エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
SB−403S 日本化薬工業社製 100重量部
(2)無水物(B)として、メチルテトラヒドロフタル酸無水物
MT−500 新日本理化社製 100重量部
(3)無機充填材(C)として、無機充填剤1
FB−74 電気化学工業社製 750重量部
(4)無機充填材(C)として、無機充填材2
SO−E2 アドマテックス社製 150重量部
(5)硬化促進剤(D)として、式(8)で表される硬化促進剤 7重量部
(6)低応力材(E)としてコアシェルシリコーンゴム粒子(コアシェルシリコーンゴム1)
KMP−605 信越化学工業社製 100重量部
(7)エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−403E 信越化学工業社製 4重量部
をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)10分間脱泡処理を行い、液状樹脂組成物を得た。
作製した液状樹脂組成物を実施例1と同様に評価した。液状樹脂組成物25℃での粘度は、100Pa・s、ガラス転移温度は100℃、ガラス転移温度変化率は0%、線膨張係数は11ppm/℃、室温弾性率は7GPa、線膨張×室温弾性率変化率は−20%。内部応力値は11MPa、密着力は24N、再配置ウエハの反りは1.0mmであった。
【0235】
[実施例3]
(1)エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
SB−403S 日本化薬工業社製 100重量部
(2)無水物(B)として、メチルテトラヒドロフタル酸無水物
MT−500 新日本理化社製 100重量部
(3)無機充填材(C)として、無機充填剤1
FB−74 電気化学工業社製 2000重量部
(4)無機充填材(C)として、無機充填材2
SO−E2 アドマテックス社製 400重量部
(5)硬化促進剤(D)として、式(8)で表される硬化促進剤 7重量部
(6)低応力材(E)としてコアシェルシリコーンゴム粒子(コアシェルシリコーンゴム1)
KMP−605 信越化学工業社製 230重量部
(7)エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−403E 信越化学工業社製 4重量部
をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)10分間脱泡処理を行い、液状樹脂組成物を得た。
作製した液状樹脂組成物を実施例1と同様に評価した。液状樹脂組成物25℃での粘度は、1500Pa・s、ガラス転移温度は100℃、ガラス転移温度変化率は0%、線膨張係数は5ppm/℃、室温弾性率は21GPa、線膨張×室温弾性率変化率は−18%。内部応力値は5MPa、密着力は30N、再配置ウエハの反りは0.7mmであった。
【0236】
[実施例4]
(1)エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
SB−403S 日本化薬工業社製 100重量部
(2)無水物(B)として、メチルテトラヒドロフタル酸無水物
MT−500 新日本理化社製 100重量部
(3)無機充填材(C)として、無機充填剤1
FB−74 電気化学工業社製 1200重量部
(4)無機充填材(C)として、無機充填材2
SO−E2 アドマテックス社製 250重量部
(5)硬化促進剤(D)として、式(8)で表される硬化促進剤 7重量部
(6)低応力材(E)としてコアシェルシリコーンゴム粒子(コアシェルシリコーンゴム1)
KMP−605 信越化学工業社製 70重量部
(7)エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−403E 信越化学工業社製 4重量部
をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)10分間脱泡処理を行い、液状樹脂組成物を得た。
作製した液状樹脂組成物を実施例1と同様に評価した。液状樹脂組成物25℃での粘度は、400Pa・s、ガラス転移温度は100℃、ガラス転移温度変化率は0%、線膨張係数は7ppm/℃、室温弾性率は18GPa、線膨張×室温弾性率変化率は−10%。内部応力値は11MPa、密着力は23N、再配置ウエハの反りは0.9mmであった。
【0237】
[実施例5]
(1)エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
SB−403S 日本化薬工業社製 100重量部
(2)無水物(B)として、メチルテトラヒドロフタル酸無水物
MT−500 新日本理化社製 100重量部
(3)無機充填材(C)として、無機充填剤1
FB−74 電気化学工業社製 800重量部
(4)無機充填材(C)として、無機充填材2
SO−E2 アドマテックス社製 300重量部
(5)硬化促進剤(D)として、式(8)で表される硬化促進剤 7重量部
(6)低応力材(E)としてコアシェルシリコーンゴム粒子(コアシェルシリコーンゴム1)
KMP−605 信越化学工業社製 430重量部
(7)エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−403E 信越化学工業社製 4重量部
をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)10分間脱泡処理を行い、液状樹脂組成物を得た。
作製した液状樹脂組成物を実施例1と同様に評価した。液状樹脂組成物25℃での粘度は、1500Pa・s、ガラス転移温度は100℃、ガラス転移温度変化率は0%、線膨張係数は9ppm/℃、室温弾性率は6GPa、線膨張×室温弾性率変化率は−50%。内部応力値は6MPa、密着力は25N、再配置ウエハの反りは0.8mmであった。
【0238】
[実施例6]
(1)エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
SB−403S 日本化薬工業社製 100重量部
(2)無水物(B)として、メチルテトラヒドロフタル酸無水物
MT−500 新日本理化社製 100重量部
(3)無機充填材(C)として、無機充填剤1
FB−74 電気化学工業社製 1200重量部
(4)無機充填材(C)として、無機充填材2
SO−E2 アドマテックス社製 250重量部
(5)硬化促進剤(D)として、式(8)で表される硬化促進剤 7重量部
(6)低応力材(E)としてコアシェルシリコーンゴム粒子(コアシェルシリコーンゴム2)
KMP−600 信越化学工業社製 150重量部
(7)エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−403E 信越化学工業社製 4重量部
をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)10分間脱泡処理を行い、液状樹脂組成物を得た。
作製した液状樹脂組成物を実施例1と同様に評価した。液状樹脂組成物25℃での粘度は、500Pa・s、ガラス転移温度は100℃、ガラス転移温度変化率は0%、線膨張係数は7ppm/℃、室温弾性率は15GPa、線膨張×室温弾性率変化率は−24%。内部応力値は9MPa、密着力は27N、再配置ウエハの反りは1.0mmであった。
【0239】
[実施例7]
(1)エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
SB−403S 日本化薬工業社製 100重量部
(2)無水物(B)として、メチルテトラヒドロフタル酸無水物
MT−500 新日本理化社製 100重量部
(3)無機充填材(C)として、無機充填剤1
FB−74 電気化学工業社製 1200重量部
(4)無機充填材(C)として、無機充填材2
SO−E2 アドマテックス社製 250重量部
(5)硬化促進剤(D)として、式(8)で表される硬化促進剤 7重量部
(6)低応力材(E)としてコアシェルアクリルゴム粒子(コアシェルアクリルゴム)
W5500 三菱レイヨン社製 150重量部
(7)エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−403E 信越化学工業社製 4重量部
をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)10分間脱泡処理を行い、液状樹脂組成物を得た。
作製した液状樹脂組成物を実施例1と同様に評価した。液状樹脂組成物25℃での粘度は、500Pa・s、ガラス転移温度は100℃、ガラス転移温度変化率は0%、線膨張係数は12ppm/℃、室温弾性率は16GPa、線膨張×室温弾性率変化率は−7%。内部応力値は15MPa、密着力は27N、再配置ウエハの反りは1.2mmであった。
【0240】
[実施例8]
(1)エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
SB−403S 日本化薬工業社製 100重量部
(2)無水物(B)として、メチルテトラヒドロフタル酸無水物
MT−500 新日本理化社製 100重量部
(3)無機充填材(C)として、無機充填剤1
FB−74 電気化学工業社製 1200重量部
(4)無機充填材(C)として、無機充填材2
SO−E2 アドマテックス社製 250重量部
(5)硬化促進剤(D)として、式(8)で表される硬化促進剤 7重量部
(6)低応力材(E)としてエポキシ化ポリブタジエン(25℃で液状)
BF−1000 アデカ社製 70重量部
(7)エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−403E 信越化学工業社製 4重量部
をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)10分間脱泡処理を行い、液状樹脂組成物を得た。
作製した液状樹脂組成物を実施例1と同様に評価した。液状樹脂組成物25℃での粘度は、400Pa・s、ガラス転移温度は96℃、ガラス転移温度変化率は−4%、線膨張係数は13ppm/℃、室温弾性率は18GPa、線膨張×室温弾性率変化率は−6%。内部応力値は16MPa、密着力は22N、再配置ウエハの反りは1.8mmであった。
【0241】
[実施例9]
(1)エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
SB−403S 日本化薬工業社製 80重量部
(2)エポキシ樹脂(A)として、クレゾールノボラック型エポキシ
ESCN195LA(軟化点62℃) 住友化学社製 20重量部
(3)無水物(B)として、メチルテトラヒドロフタル酸無水物
MT−500 新日本理化社製 100重量部
(4)無機充填材(C)として、無機充填剤1
FB−74 電気化学工業社製 1200重量部
(5)無機充填材(C)として、無機充填材2
SO−E2 アドマテックス社製 250重量部
(6)硬化促進剤(D)として、式(8)で表される硬化促進剤 7重量部
(7)低応力材(E)としてコアシェルシリコーンゴム粒子(コアシェルシリコーンゴム1)
KMP−605 信越化学工業社製 150重量部
(8)エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−403E 信越化学工業社製 4重量部
をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)10分間脱泡処理を行い、液状樹脂組成物を得た。
作製した液状樹脂組成物を実施例1と同様に評価した。液状樹脂組成物25℃での粘度は、900Pa・s、ガラス転移温度は110℃、ガラス転移温度変化率は0%、線膨張係数は7ppm/℃、室温弾性率は16GPa、線膨張×室温弾性率変化率は−28%。内部応力値は10MPa、密着力は29N、再配置ウエハの反りは1.3mmであった。
【0242】
[実施例10]
(1)エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
SB−403S 日本化薬工業社製 100重量部
(2)無水物(B)として、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物
MH−700 新日本理化社製 100重量部
(3)無機充填材(C)として、無機充填剤1
FB−74 電気化学工業社製 1200重量部
(4)無機充填材(C)として、無機充填材2
SO−E2 アドマテックス社製 250重量部
(5)硬化促進剤(D)として、式(8)で表される硬化促進剤 7重量部
(6)低応力材(E)としてコアシェルシリコーンゴム粒子(コアシェルシリコーンゴム1)
KMP−605 信越化学工業社製 150重量部
(7)エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−403E 信越化学工業社製 4重量部
をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)10分間脱泡処理を行い、液状樹脂組成物を得た。
作製した液状樹脂組成物を実施例1と同様に評価した。液状樹脂組成物25℃での粘度は、500Pa・s、ガラス転移温度は96℃、ガラス転移温度変化率は0%、線膨張係数は7ppm/℃、室温弾性率は15GPa、線膨張×室温弾性率変化率は−23%。内部応力値は9MPa、密着力は27N、再配置ウエハの反りは1.1mmであった。
【0243】
[実施例11]
(1)エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
SB−403S 日本化薬工業社製 100重量部
(2)無水物(B)として、メチルテトラヒドロフタル酸無水物
MH−700 新日本理化社製 100重量部
(3)無機充填材(C)として、無機充填剤1
FB−74 電気化学工業社製 1200重量部
(4)無機充填材(C)として、無機充填材2
SO−E2 アドマテックス社製 250重量部
(5)硬化促進剤(D)として、式(10)で表される硬化促進剤 7重量部
(6)低応力材(E)としてコアシェルシリコーンゴム粒子(コアシェルシリコーンゴム1)
KMP−605 信越化学工業社製 150重量部
(7)エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−403E 信越化学工業社製 4重量部
をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)10分間脱泡処理を行い、液状樹脂組成物を得た。
作製した液状樹脂組成物を実施例1と同様に評価した。液状樹脂組成物25℃での粘度は、600Pa・s、ガラス転移温度は100℃、ガラス転移温度変化率は0%、線膨張係数は7ppm/℃、室温弾性率は15GPa、線膨張×室温弾性率変化率は−25%。内部応力値は9MPa、密着力は26N、再配置ウエハの反りは1.0mmであった。
【0244】
[比較例1]
(1)エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
SB−403S 日本化薬工業社製 100重量部
(2)無水物(B)として、メチルテトラヒドロフタル酸無水物
MH−700 新日本理化社製 100重量部
(3)無機充填材(C)として、無機充填剤1
FB−74 電気化学工業社製 450重量部
(4)無機充填材(C)として、無機充填材2
SO−E2 アドマテックス社製 100重量部
(5)硬化促進剤(D)として、式(8)で表される硬化促進剤 7重量部
(6)低応力材(E)としてコアシェルシリコーンゴム粒子(コアシェルシリコーンゴム1)
KMP−605 信越化学工業社製 70重量部
(7)エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−403E 信越化学工業社製 4重量部
をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)10分間脱泡処理を行い、液状樹脂組成物を得た。
作製した液状樹脂組成物を実施例1と同様に評価した。液状樹脂組成物25℃での粘度は、10Pa・s、ガラス転移温度は100℃、ガラス転移温度変化率は0%、線膨張係数は15ppm/℃、室温弾性率は5GPa、線膨張×室温弾性率変化率は−23%。内部応力値は23MPa、密着力は19N、再配置ウエハの反りは2.4mmであった。
【0245】
[比較例2]
(1)エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
SB−403S 日本化薬工業社製 100重量部
(2)無水物(B)として、メチルテトラヒドロフタル酸無水物
MH−700 新日本理化社製 100重量部
(3)無機充填材(C)として、無機充填剤1
FB−74 電気化学工業社製 3000重量部
(4)無機充填材(C)として、無機充填材2
SO−E2 アドマテックス社製 500重量部
(5)硬化促進剤(D)として、式(8)で表される硬化促進剤 7重量部
(6)低応力材(E)としてコアシェルシリコーンゴム粒子(コアシェルシリコーンゴム1)
KMP−605 信越化学工業社製 320重量部
(7)エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−403E 信越化学工業社製 4重量部
をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)10分間脱泡処理を行い、液状樹脂組成物を得た。
作製した液状樹脂組成物を実施例1と同様に評価した。液状樹脂組成物の25℃での粘度を測定しようとしたが、硬すぎて測定できず。その他硬化物評価も、サンプル作製が出来ず実施しなかった。
【0246】
[比較例3]
(1)エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
SB−403S 日本化薬工業社製 100重量部
(2)無水物(B)として、メチルテトラヒドロフタル酸無水物
MH−700 新日本理化社製 100重量部
(3)無機充填材(C)として、無機充填剤1
FB−74 電気化学工業社製 1200重量部
(4)無機充填材(C)として、無機充填材2
SO−E2 アドマテックス社製 300重量部
(5)硬化促進剤(D)として、式(8)で表される硬化促進剤 7重量部
(6)低応力材(E)としてコアシェルシリコーンゴム粒子(コアシェルシリコーンゴム1)
KMP−605 信越化学工業社製 20重量部
(7)エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−403E 信越化学工業社製 4重量部
をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)10分間脱泡処理を行い、液状樹脂組成物を得た。
作製した液状樹脂組成物を実施例1と同様に評価した。液状樹脂組成物25℃での粘度は、200Pa・s、ガラス転移温度は100℃、ガラス転移温度変化率は0%、線膨張係数は7ppm/℃、室温弾性率は21GPa、線膨張×室温弾性率変化率は−3%。内部応力値は21MPa、密着力は20N、再配置ウエハの反りは2.5mmであった。
【0247】
[比較例4]
(1)エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
SB−403S 日本化薬工業社製 100重量部
(2)無水物(B)として、メチルテトラヒドロフタル酸無水物
MH−700 新日本理化社製 100重量部
(3)無機充填材(C)として、無機充填剤1
FB−74 電気化学工業社製 800重量部
(4)無機充填材(C)として、無機充填材2
SO−E2 アドマテックス社製 200重量部
(5)硬化促進剤(D)として、式(8)で表される硬化促進剤 7重量部
(6)低応力材(E)としてコアシェルシリコーンゴム粒子
KMP−605 信越化学工業社製 580重量部
(7)エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−403E 信越化学工業社製 4重量部
をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)10分間脱泡処理を行い、液状樹脂組成物を得た。
作製した液状樹脂組成物を実施例1と同様に評価した。液状樹脂組成物の25℃での粘度を測定しようとしたが、硬すぎて測定できず。その他硬化物評価も、サンプル作製が出来ず実施しなかった。
【0248】
[比較例5]
(1)エポキシ樹脂(A)として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
SB−403S 日本化薬工業社製 100重量部
(2)無水物(B)として、メチルテトラヒドロフタル酸無水物
MH−700 新日本理化社製 100重量部
(3)無機充填材(C)として、無機充填剤1
FB−74 電気化学工業社製 1200重量部
(4)無機充填材(C)として、無機充填材2
SO−E2 アドマテックス社製 500重量部
(5)硬化促進剤(D)として、式(8)で表される硬化促進剤 7重量部
(6)低応力材(E)としてアクリルゴムポリマー(アクリルゴム、25℃で液状)
UP−1061 東亞合成社製 150重量部
(7)エポキシシランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
KBM−403E 信越化学工業社製 4重量部
をビーカーに取りスパチュラで混ぜ合わせた後、三本ロールにて3回混錬したのち、ビーカーに入れて真空オーブン(常温、5mmHg)10分間脱泡処理を行い、液状樹脂組成物を得た。
作製した液状樹脂組成物を実施例1と同様に評価した。液状樹脂組成物25℃での粘度は、100Pa・s、ガラス転移温度は80℃、ガラス転移温度変化率は−20%、線膨張係数は15ppm/℃、室温弾性率は16GPa、線膨張×室温弾性率変化率は98%。内部応力値は22MPa、密着力は22N、再配置ウエハの反りは2.6mmであった。
【0249】
実施例2〜11についても、実施例1と同様にして半導体パッケージを組立て半田耐熱試験を行った。試験条件2では何れも剥離は観察されなかったが、試験条件1では実施例4,7,8で、一つ微小剥離が観察された。
比較例1〜5についても、実施例1と同様にして半導体パッケージを組立てたが、比較例2と4では液状樹脂組成物Gは樹脂粘度が高すぎて成形できず、評価は行わなかった。比較例1と5について組立てた半導体パッケージで半田耐熱試験を行ったが、試験条件1では全数が剥離し、試験条件2では半数以上が剥離した。比較例3については試験条件1では約半数が剥離したが、試験条件2では剥離は観察されなかった。
【0250】
【表1】

【0251】
【表2】

【0252】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0253】
10 基材
20 熱分解性の樹脂層
100 積層パッケージ
101 薄層シリコンウエハ
102 シリコンウエハ
104 非貫通孔
105 貫通プラグ
106 埋込導電部
108 半導体チップ
110 封止材層
111 疑似ウエハ
112 第1の絶縁層
114 開口部
116 開口部
118 導電層
120 レジストパターン
122 導電体
124 第2の絶縁層
126 開口部
128 バンプ
129 配線層
130 ウエハレベルパッケージ
132 インターポーザ
134 配線回路
140 電子装置
204 電極パッド
206 半田バンプ
208 電極パッド
210 接着層
220 接続部
300 ウエハレベルパッケージ
301 ウエハレベルパッケージ
302 プラグ
303 貫通プラグ
304 半導体チップ
306 半導体チップ
308 プラグ
310 封止材層
312 半導体チップ
314 配線層
316 抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上に熱分解性の樹脂層を形成する工程と、
前記熱分解性の樹脂層を介して、主面から裏面まで貫通する貫通プラグが複数設けられたシリコンウエハと前記基材とを固定する工程と、
前記シリコンウエハの前記裏面上に、前記貫通プラグと電気的に接続する第1の半導体素子を設ける工程と、
半導体封止用樹脂組成物を用いて、前記シリコンウエハの前記裏面上の複数の前記第1の半導体素子を封止する封止材層を形成する工程と、
加熱処理により前記熱分解性の樹脂層を分解して、前記シリコンウエハから前記基材を分離することにより、前記シリコンウエハの前記主面を露出させる工程と、を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体封止用樹脂組成物は、下記の硬化条件下で硬化させた硬化物が下記式を満たすような材料で構成されている、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
(Tg−25℃)×(α1−α2)×E'≦20MPa
Tg:前記硬化物のガラス転移温度(℃)
E':前記硬化物の弾性率(Pa)
α1:前記硬化物の線膨張係数(ppm/℃)
α2:前記シリコンウエハの線膨張係数(ppm/℃)
硬化条件:前記半導体封止用樹脂組成物を125℃10分、150℃1時間の硬化条件で硬化する。
【請求項3】
前記液状の半導体封止用樹脂組成物の粘度が、100Pa・s以上2000Pa・s以下である、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記液状の半導体封止用樹脂組成物において、下記式で表されるTI値が0.5以上2以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
TI値=η2.5rpm/η0.5rpm
η2.5rpm:粘度計を用い、25℃、回転数2.5rpmで測定した粘度
η0.5rpm:粘度計を用い、25℃、回転数0.5rpmで測定した粘度
【請求項5】
前記封止材層を形成する前記工程において、前記半導体封止用樹脂組成物を加熱する温度が、前記熱分解性の樹脂層が熱分解する温度よりも低い、請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記加熱処理は、200℃以上400℃以下の温度範囲で行う、請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記熱分解性の樹脂層の5%重量減少温度が400℃以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記熱分解性の樹脂層が、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記熱分解性の樹脂層が、光酸発生剤を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記ポリカーボネート系樹脂が、プロピレンカーボネート、シクロヘキシレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ノルボルネンカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の構造単位を含む、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記貫通する貫通プラグが複数設けられた前記シリコンウエハと前記基材とを固定する前記工程は、
前記熱分解性の樹脂層上に、主面に複数の埋込導電部が設けられたシリコンウエハを配置する工程と、
前記シリコンウエハの裏面を研削して、前記裏面に前記埋込導電部を露出させて、前記貫通プラグとする工程と、を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1の半導体素子を設ける前記工程において、前記第1の半導体素子の一面に複数の第1の埋込導電部が設けられており、前記第1の半導体素子の前記第1の埋込導電部と前記シリコンウエハの前記埋込導電部とが電気的に接続されており、
前記封止材層を形成する前記工程の後、前記封止材層の上面とともに前記第1の半導体素子の他面を研削して、前記第1の半導体素子の前記他面に前記第1の埋込導電部を露出させて、第1の貫通プラグとする工程と、
前記第1の半導体素子の前記他面上に、前記第1の貫通電極と電気的に接続する第2の半導体素子を設ける工程と、
前記半導体封止用樹脂組成物を用いて、前記第1の半導体素子の前記他面に設けられた前記第2の半導体素子を封止する封止材層を形成する工程と、をさらに含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記シリコンウエハの前記主面上に絶縁樹脂層を形成する工程と、
前記絶縁樹脂層上に配線回路を形成する工程と、を含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法で得られた、半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−227443(P2012−227443A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95437(P2011−95437)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】