説明

半導体装置の製造方法および製造装置

【課題】半導体基板に対するイオンの注入状態を適切に調整すること。
【解決手段】実施形態によれば、半導体装置の製造方法が提供される。半導体装置の製造方法は、検出工程と、算出工程と、調整工程とを含む。検出工程では、半導体基板へ照射されるイオンビームの断面形状であるビーム形状および前記イオンビームのビーム電流を検出する。算出工程では、前記検出工程によって検出された前記ビーム形状および前記ビーム電流に基づき、単位面積あたりの前記ビーム電流であるビーム電流密度を算出する。調整工程では、前記算出工程によって算出された前記ビーム電流密度に基づいて前記イオンビームを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造装置の1つとしてイオン注入装置が知られている。かかるイオン注入装置は、半導体基板に対してイオン化された不純物原子(以下、「イオン」と記載する)を注入する装置であり、イオンの注入量や注入深さを制御する各種パラメータの変更が可能である。
【0003】
ここで、かかるパラメータとしては、たとえば、ビーム電流や注入時間がある。そして、イオン注入装置では、これらのパラメータの値をあらかじめ設定しておくことで、イオンの注入状態を調整することが可能である。
【0004】
しかし、イオン源であるイオンソースの状態は変化しやすいので、あらかじめパラメータの値を適切な値に設定していたとしても、結果的に、半導体基板に対するイオンの注入状態にばらつきが生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−311648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、半導体基板に対するイオンの注入状態を適切に調整することができる半導体装置の製造方法および製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、半導体装置の製造方法が提供される。半導体装置の製造方法は、検出工程と、算出工程と、調整工程とを含む。検出工程では、半導体基板へ照射されるイオンビームの断面形状であるビーム形状および前記イオンビームのビーム電流を検出する。算出工程では、前記検出工程によって検出された前記ビーム形状および前記ビーム電流に基づき、単位面積あたりの前記ビーム電流であるビーム電流密度を算出する。調整工程では、前記算出工程によって算出された前記ビーム電流密度に基づいて前記イオンビームを調整する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態にかかる製造方法の説明図。
【図2】実施形態にかかる製造装置の模式図。
【図3】実施形態にかかる製造装置のブロック図。
【図4】ビーム電流またはビーム電流密度と反射光強度差との関係を示す図。
【図5】実施形態にかかる製造装置が取得するビーム分布の説明図。
【図6】実施形態にかかる製造装置が行うビーム調整の例を示す図。
【図7】実施形態にかかる製造装置が実行する処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる半導体装置の製造方法および製造装置を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、半導体装置の製造方法を単に「製造方法」と、半導体装置の製造装置を単に「製造装置」と、それぞれ記載する。
【0010】
まず、実施形態にかかる製造方法について、図1を用いて説明する。図1は、実施形態にかかる製造方法の説明図である。
【0011】
図1に示すように、実施形態にかかる製造方法は、半導体装置のデバイス特性を決定する不純物をイオン化して半導体基板へ注入する工程、いわゆる、イオン注入工程を含む。
【0012】
すなわち、実施形態にかかる製造方法では、ビーム照射部にて発生させたイオンビーム(以下、単に「ビーム」と記載する)を、半導体基板(たとえば、シリコンウエハ)へ照射する。なお、以下では、ビームの進行方向が、図1に示すXYZ座標系におけるX軸の正方向であるものとして説明する。
【0013】
そして、実施形態にかかる製造方法は、半導体基板へ照射されるビームの「ビーム分布」を取得する(図1の(A)参照)。なお、「ビーム分布」とは、半導体基板の被照射面と平行なYZ平面上におけるビーム電流の分布、すなわち、ビーム強度の分布である。
【0014】
ここで、実施形態にかかる製造方法は、取得したビーム分布に基づき、単位面積あたりのビーム電流を示す「ビーム電流密度」を算出する(図1の(B)参照)。そして、算出したビーム電流密度に基づき、ビームの照射状態を調整する(図1の(C)参照)。なお、図1に示す破線矢印は、ビーム照射部に対するフィードバック指示をあらわす。
【0015】
このように、実施形態にかかる製造方法は、半導体基板へ照射されるビームのビーム電流密度をモニターし、ビーム照射部に対してフィードバック制御を行う。そして、このようなフィードバック制御を随時行うことで、ビーム電流密度が所定の数値範囲(以下、「所定範囲」と記載する)内となるように調整する。
【0016】
したがって、実施形態にかかる製造方法によれば、半導体基板に対するイオンの注入状態を適切に調整することができる。そして、イオン注入の対象が、たとえば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であれば、安定したMOSFET特性を得ることが可能となる。
【0017】
なお、実施形態にかかる製造方法では、上記したビーム電流密度を、できるだけ大きい値に保つべく調整する制御を行うが、この点の詳細については後述する。以下では、図1を用いて説明した製造方法を適用した製造装置について説明する。
【0018】
図2は、実施形態にかかる製造装置10の模式図である。なお、図2には、説明を簡略化する観点から、製造装置10の一部の構成要素を示している。図2に示すように、製造装置10は、ホルダ10aによってウエハ201(図1に示した半導体基板に相当)を支持する。
【0019】
また、製造装置10は、ウエハ201へ照射されるビーム101を計測するビーム検出プローブ11を備える。また、製造装置10は、ビーム検出プローブ11の上流側(図2に示すX軸の負方向)に、4重極マグネット12aを備える。そして、製造装置10は、ビーム検出プローブ11および4重極マグネット12aに接続されるコントローラ13をさらに備える。
【0020】
ここで、ビーム検出プローブ11は、図示しない駆動部(たとえば、ステッピングモータ)によって図2に示すYZ平面上の所定の位置へ移動自在である。そして、コントローラ13は、かかる駆動部に対してビーム検出プローブ11の移動指示を行う。また、コントローラ13は、ビーム検出プローブ11から各種検出値を取得し、取得した検出値に基づいて4重極マグネット12aを制御することでビーム101の照射状態を調整する。
【0021】
たとえば、4重極マグネット12aに含まれる4つの磁極の正負の組み合わせを変更したり、各磁極に印加する電圧差を変更したりする指示を行うことで、コントローラ13は、ビーム101の径や形状を調整する。
【0022】
なお、コントローラ13の詳細な構成については、図3を用いて後述する。また、図2では、ビーム101の照射状態を調整するデバイスとして、4重極マグネット12aを例示したが、他のデバイスを併用することも可能である。このため、ビーム調整用のデバイス群の詳細については、図6を用いて後述することとする。
【0023】
次に、図2に示した製造装置10の構成について図3を用いてさらに詳細に説明する。図3は、実施形態にかかる製造装置10のブロック図である。図3に示すように、製造装置10は、ビーム検出プローブ11と、ビーム照射部12と、コントローラ13とを備える。
【0024】
また、コントローラ13は、制御部14と、記憶部15とを備える。そして、制御部14は、指示部14aと、分布取得部14bと、電流密度算出部14cと、更新部14dと、調整部14eとを備え、記憶部15は、パラメータ情報15aを記憶する。
【0025】
ビーム検出プローブ11は、図2を用いて既に示したように、ビーム101(図2参照)を計測する計測器である。また、このビーム検出プローブ11は、指示部14aの指示に従い、ビーム101中をY軸(図2参照)の正負方向およびZ軸(図2参照)の正負方向に移動するとともに、計測したビーム形状およびビーム電流を、分布取得部14bへ渡す。
【0026】
ビーム照射部12は、ビーム101(図2参照)をウエハ201へ向けて照射するとともに、ビーム101の照射状態を変更するデバイス群である。なお、かかるデバイス群の詳細については、図6を用いて後述する。
【0027】
コントローラ13は、ビーム検出プローブ11およびビーム照射部12とそれぞれ接続され、制御部14および記憶部15を備える。そして、制御部14は、製造装置10の全体制御を行う。なお、記憶部15は、ハードディスクドライブや不揮発性メモリといった記憶デバイスである。
【0028】
指示部14aは、ビーム検出プローブ11を、YZ平面(図2参照)の任意の位置へ位置付かせる指示を行う。すなわち、指示部14aは、ビーム101の断面形状を網羅するように、ビーム検出プローブ11を移動させる。
【0029】
分布取得部14bは、ビーム検出プローブ11によって計測されたビーム形状およびビーム電流を受け取る。なお、ビーム形状に含まれる部分領域ごとのビーム電流が、ビーム分布に相当する。また、分布取得部14bは、取得したビーム分布を、電流密度算出部14cへ渡す。
【0030】
電流密度算出部14cは、分布取得部14bから受け取ったビーム分布に基づき、ビーム電流密度を算出する。なお、ビーム電流密度とは、単位面積あたりのビーム電流のことを指す。
【0031】
ここで、製造装置10が、ビーム電流密度を算出する理由について図4を、分布取得部14bが取得するビーム分布について図5を、それぞれ用いて説明しておく。図4は、ビーム電流またはビーム電流密度と反射光強度差との関係を示す図である。
【0032】
なお、図4の(a)には、同一のイオン注入条件におけるビーム電流と反射光強度差との関係を、図4の(b)には、同じくビーム電流密度と反射光強度差との関係を、それぞれ示す。また、図4の(a)および(b)の横軸における最小単位は、同一のウエハ201に対する1つの注入工程であるので、横軸は時間経過とみなすことができる。
【0033】
また、図4の(a)の縦軸は、左側のスケールが反射光強度差(単位は、a.u.(arbitrary unit))であり、右側のスケールがビーム電流(単位は、A)である。そして、図4の(b)の縦軸は、右側がビーム電流密度(単位は、A/cm)である点で、図4の(a)と異なる。
【0034】
まず、反射光強度差について説明する。ウエハ201に対してイオンを注入する場合、注入されるイオンの総量(ドーズ量)の増加に応じ、イオン注入に起因するウエハ201の欠陥量(一次欠陥量)も増加する。このため、かかる一次欠陥量を測定することによってドーズ量を推定することができる。
【0035】
そして、一次欠陥量を測定する手法の1つとして、Si(シリコン)格子の結合が切れた箇所と、切れていない箇所とで熱振幅が異なることを利用する手法がある。具体的には、かかる手法では、レーザをウエハ201へ入射させることで格子振動を励起させ、熱振幅の違いを反射光の強度差(反射光強度差)として取得する。
【0036】
このように、反射光強度差を取得することで、ドーズ量を推定することができる。たとえば、反射光強度差が大きいほど、ドーズ量が大きいと推定することが可能である。したがって、ウエハ201におけるドーズ量のばらつきを抑制するためには、反射光強度差を所定範囲内に収めればよいことになる。
【0037】
ここで、図4の(a)に示すように、反射光強度差の時間経過を示すグラフと、ビーム電流の時間経過を示すグラフとの間には、特段の相関関係がみられない。たとえば、反射光強度差が減少傾向にある区間においてビーム電流が増加傾向となるなど、反射光強度差の増減と、ビーム電流の増減との関連性は見いだしにくい。
【0038】
ところが、従来は、イオン注入工程に先立ってビーム電流を静的に調整することで、ドーズ量を調整する試みが行われているにすぎなかった。しかし、図4の(a)からも明らかなように、同一のイオン注入条件においても反射光強度差には経時的なばらつきがみられるため、ドーズ量のばらつきを抑制することは困難であった。
【0039】
一方、図4の(b)に示すように、反射光強度差の時間経過を示すグラフと、ビーム電流密度との間には、相関関係がみられる。すなわち、反射光強度差が増加傾向にある場合には、ビーム電流密度も増加傾向にあり、反射光強度差が減少傾向にある場合には、ビーム電流密度も減少傾向にある。
【0040】
したがって、仮に、ビーム電流密度を一定に保つ制御を行えば、反射光強度差を一定に保つこと、すなわち、ドーズ量を一定に保つことができると推定される。そこで、実施形態にかかる製造装置10では、電流密度算出部14cにビーム電流密度を算出させ、算出されたビーム電流密度が所定範囲内に収まるようにビーム101の照射状態を調整することとした。
【0041】
これにより、反射光強度差のばらつきを抑制すること、すなわち、ドーズ量のばらつきを抑制することができる。したがって、製造される半導体装置の特性を安定化させることができる。
【0042】
次に、分布取得部14bが取得するビーム分布について図5を用いて説明しておく。図5は、実施形態にかかる製造装置10が取得するビーム分布の説明図である。なお、図5の(a)には、ビーム分布の例を、図5の(b)には、ビーム分布の拡大図を、図5の(c)には、電流密度のデータ例を、それぞれ示す。
【0043】
また、図5の(a)および(b)には、図1および図2に示した座標系と同一の座標系を示している。
【0044】
図5の(a)に示すように、ビーム分布51は、いわゆる等高線と同様に表現される。ここで、図5の(a)に例示した場合では、ビーム電流が高い順に、領域51a、領域51b、領域51cとなる。
【0045】
ここで、ビーム分布51の外周、すなわち、領域51cの外周は、ビーム101(図2参照)の外周に対応しており、ビーム分布51の外周の形状は、上記したビーム形状に相当する。なお、ビーム形状の内部におけるビーム電流の分布は、上記した分布取得部14bによって取得される。
【0046】
具体的には、分布取得部14bは、ビーム電流を、所定の面積を有するセルの集合ごとに取得する。なお、図5の(b)に示す拡大図は、図5の(a)に示した領域52に対応する。ここで、図5の(b)に示した「1」、「5」および「10」という値は、ビーム電流の大小をあらわすために用いた例示である。
【0047】
なお、上記したセル内の1点で取得したビーム電流を、このセルのビーム電流として取り扱ったり、セル内の複数点で取得したビーム電流の平均値を、このセルのビーム電流として取り扱ったりすることとしてもよい。
【0048】
そして、図5の(c)に示すように、電流密度算出部14cは、分布取得部14bによって取得されたビーム分布に基づき、部分エリア(上記した「セル」に対応)ごとの電流密度を算出する。たとえば、セルの面積が「S」であり、ビーム電流が「I」であれば、電流密度は「I/S」として算出される。
【0049】
ここで、部分エリアをN(ただし、Nは、1〜nの整数)とし、各部分エリアに対応する電流密度をd(d〜d)とあらわすと、電流密度算出部14cは、電流密度dの集合における最大値(ピーク電流密度)を、ビーム電流密度として採用する。
【0050】
ところで、電流密度算出部14cが、電流密度dの最大値をビーム電流密度として採用する理由は、電流密度dが高いほど、イオン注入によるウエハ201の一次欠陥量が増加すると考えられるためである。
【0051】
図3の説明に戻り、制御部14の説明をつづける。更新部14dは、電流密度算出部14cから受け取ったビーム電流密度に基づき、記憶部15のパラメータ情報15aを更新する。なお、パラメータ情報15aは、ビーム照射部12によるビーム101の照射状態を決定するパラメータ群である。
【0052】
ここで、更新部14dは、ビーム電流密度が、あらかじめ定められた所定範囲内に収まるように、パラメータ情報15aを更新する。その際、更新部14dは、ビーム電流密度を上昇させる必要があれば、ビーム電流を増大させる代わりにビーム形状の面積を低下させるように、すなわち、ビーム径を絞るように、パラメータ情報15aを更新する。
【0053】
なお、上記した所定範囲は、たとえば、所定の上限閾値および下限閾値を用いて定めることができる。また、上限閾値および下限閾値は、静的な値としてもよいし、たとえば、ビーム電流密度の変化の度合いに応じて変化する動的な値としてもよい。
【0054】
このように、更新部14dが、ビーム電流を増大させる代わりにビーム径を絞ることでビーム電流密度を増大させるのは、コスト増加や装置負荷の増大を回避しつつ、ウエハ201の非晶質化を図るためである。この点について、さらに詳細に説明しておく。
【0055】
従来、ウエハ201における不純物拡散層の活性化率を高める手法として、「ビーム電流」を増加させることによって、単位時間あたりにウエハ201へ注入するドーズ量、すなわち、ドーズレートを高める手法がある。
【0056】
かかる手法は、ドーズレートを高めることでイオン注入中のセルフアニーリングによる欠陥回復を抑制し、同一ドーズ量あたりの一次欠陥量を増やし、ウエハ201を非晶質化させることを目的としている。
【0057】
ここで、非晶質化したウエハ201は輻射率が高いので実効的なアニール温度も高くなり、アニール後に残留する二次欠陥量が減少する。したがって、高濃度の注入イオンを活性化することが可能となり、リーク電流が少ない良質な不純物拡散層の形成に有用であるといわれている。
【0058】
しかしながら、ビーム電流を増加させると、イオンソースガスの流量が増加するので、ソース部材周辺が摩耗しやすく、コスト増加や装置負荷の増大を招いてしまう。また、ビーム電流の最大値は、装置の経時変化によって下がる傾向があるため、ビーム電流を増加させたくても、増加させることができない場合もある。
【0059】
そこで、上記したように、ビーム電流を増大させる代わりにビーム径を絞ってビーム電流密度を増大させることとすれば、コスト増加や装置負荷の増大を回避しつつ、同一ドーズ量あたりの一次欠陥量を増やし、ウエハ201の非晶質化を図ることができる。
【0060】
つづいて、調整部14eについて説明する。調整部14eは、更新部14dによって更新されたパラメータ情報15aに基づき、ビーム照射部12によるビーム101の照射状態を調整する。なお、図3では、更新部14dと、調整部14eとを別々に示したが、更新部14dを調整部14eへ含めることとしてもよい。
【0061】
次に、調整部14eによるビーム調整の例について図6を用いて説明する。図6は、実施形態にかかる製造装置10が行うビーム調整の例を示す図である。なお、図6の(a)には、4重極マグネット12aを、図6の(b)には、イオン源チャンバ12bおよび引出電極12cを、図6の(c)には、イオン源チャンバ12b内に設けられるスリットを、それぞれ示す。
【0062】
図6の(a)に示すように、4重極マグネット12aは、ビーム101の通路まわりに、磁極12aa、磁極12ab、磁極12acおよび磁極12adの4つの磁極を備える。また、各磁極は、たとえば、電磁石で構成される。
【0063】
ここで、各磁極に印加する電圧差を変更したり、各磁極における極性(正または負)の組み合わせを変更したりすることで、ビーム101の形状および径を変更することができる。
【0064】
また、図6の(b)に示すように、イオン源チャンバ12bと、一対の引出電極12cとの距離d1を変更したり、一対の引出電極12c間の距離d2を変更したりすることによっても、ビーム101の形状および径を変更することができる。なお、図6の(b)に示すYZ平面上で、イオン源チャンバ12bと、一対の引出電極12cとの相対位置を変更することとしてもよい。また、これらの位置調整は、図示しない駆動部(たとえば、ステッピングモータ)によって行うことができる。
【0065】
さらに、図6の(c)に示すように、イオン源チャンバ12b内に設けられるスリット12ba、スリット12bbおよびスリット12bcのスリット幅(ビーム101を通過させる空隙の幅)をそれぞれ変更することによっても、ビーム101の形状および径を変更することができる。なお、図6の(c)には、3個のスリットを例示しているが、スリットの個数には、制限はない。
【0066】
次に、実施形態にかかる製造装置10が実行する処理手順について図7を用いて説明する。図7は、実施形態にかかる製造装置10が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0067】
図7に示すように、分布取得部14bが、ビーム電流およびビーム形状を取得すると(ステップS101)、電流密度算出部14cは、ビーム形状に含まれる部分領域ごとに電流密度を算出する(ステップS102)。
【0068】
また、電流密度算出部14cは、電流密度の最大値をビーム電流密度として選択する(ステップS103)。つづいて、更新部14dは、ビーム電流密度が所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS104)。そして、ビーム電流密度が所定範囲内である場合には(ステップS104,Yes)、パラメータ情報15aに含まれるパラメータを変更しない(ステップS105)。
【0069】
一方、ステップS104の判定条件を満たさない場合には(ステップS104,No)、ビーム電流密度が所定範囲内となるように、パラメータ情報15aに含まれるパラメータを変更する(ステップS106)。そして、調整部14eは、パラメータ情報15aに含まれるパラメータに基づくビーム照射指示をビーム照射部12に対して行い(ステップS107)、ステップS101以降の処理を繰り返す。
【0070】
なお、半導体集積回路としての半導体装置を製造する際には、ウエハ201上への製膜工程、製造装置10によって実行される上記したイオン注入工程、フォトマスクのマスクパターンをウエハ201へ転写する露光工程、ウエハ201から不要な薄膜などを除去するエッチング工程などが実行される。
【0071】
上述したように、実施形態にかかる製造装置では、ビーム検出プローブが、半導体基板へ照射されるイオンビームのビーム形状およびビーム電流を検出し、電流密度算出部が、これらの検出値に基づいてビーム電流密度を算出する。そして、調整部が、算出したビーム電流密度に基づいてイオンビームの照射状態を調整する。したがって、実施形態にかかる製造装置によれば、半導体装置に対するイオンの注入状態を適切に調整することができる。
【0072】
なお、上述した実施形態では、ビーム形状に含まれる部分領域ごとに電流密度を算出し、算出した電流密度のうち最大値をビーム電流密度として取り扱う場合について説明した。しかしながら、これに限らず、各部分領域に対応する電流密度をすべての部分領域にわたって平均した平均値をビーム電流密度として取り扱うこととしてもよい。
【0073】
また、上述した実施形態では、算出したビーム電流密度が所定範囲に含まれるようにビームの照射状態を調整する場合について説明したが、ビーム電流密度が所定の閾値に収束するようにビームの照射状態を調整することとしてもよい。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
10 製造装置、10a ホルダ、11 ビーム検出プローブ、12 ビーム照射部、12a 4重極マグネット、12b イオン源チャンバ、12c 引出電極、13 コントローラ、14 制御部、14a 指示部、14b 分布取得部、14c 電流密度算出部、14d 更新部、14e 調整部、15 記憶部、15a パラメータ情報、101 ビーム、201 ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板へ照射されるイオンビームの断面形状であるビーム形状および前記イオンビームのビーム電流を検出する検出工程と、
前記検出工程によって検出された前記ビーム形状および前記ビーム電流に基づき、単位面積あたりの前記ビーム電流であるビーム電流密度を算出する算出工程と、
前記算出工程によって算出された前記ビーム電流密度に基づいて前記イオンビームを調整する調整工程と
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記調整工程は、
前記ビーム電流密度が所定の範囲に含まれるように前記イオンビームを調整することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記調整工程は、
前記イオンビームにおける前記ビーム電流密度を上昇させる場合に、前記ビーム電流を増大させる代わりに前記ビーム形状の面積を低下させることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記算出工程は、
前記ビーム形状に含まれる部分領域ごとに電流密度を算出し、算出した電流密度の最大値を前記ビーム電流密度とすることを特徴とする請求項1、2または3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
半導体基板へ照射されるイオンビームの形状であるビーム形状および前記イオンビームのビーム電流を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記ビーム形状および前記ビーム電流に基づき、単位面積あたりの前記ビーム電流であるビーム電流密度を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記ビーム電流密度に基づいて前記イオンビームを調整する調整部と
を備えることを特徴とする半導体装置の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−156243(P2012−156243A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13050(P2011−13050)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】