説明

半導体装置の製造方法

【課題】マイクロサンプリング片を取り出すことによって形成されるサンプリング穴を短時間で埋め戻す半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】マイクロサンプリング片を取り出したサンプリング穴12を、その穴12の上部の壁面に支持された膜17、18によって、内部に空洞19を残したままで塞ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、更に詳しくは、半導体ウェハー上でマイクロサンプリング用のサンプリング穴が形成された後に、そのサンプリング穴を埋め戻す工程を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化が進むにつれ、全体の工程が複雑化したため、途中工程の出来栄えを断面SEM、断面TEMで観察する必要性が増えてきた。特に、新デバイスの開発時には、何回にもわたって処理工程の改善活動が行われる、このため、断面SEM、断面TEMで観察する機会が多くなっている。しかしながら、断面観察は、破壊検査(抜き取り検査)となるので、それらを考慮したウェハー投入が必要となっている。ウェハーの大口径化に伴い、この抜き取り検査のため生産に寄与しないウェハーの投入が、半導体装置のコスト上昇をもたらすという問題があった。
【0003】
最近になって、ウェハー上の一部をマイクロサンプリングしながら、ウェハー上で拡散工程を継続していくという手法が提案されている。この手法では、ウェハーの一部領域から、FIB(集束イオンビーム)を利用した加工によって、サンプリング片を取り出す。マイクロサンプリングした領域(チップ)を登録しておくことにより、その領域についての最終の電気テストをキャンセルすることができる。また、マイクロサンプリング片を取り出したサンプリング穴については、局部的に酸化膜などを用いて埋め戻すことで、後工程でゴミの飛散等を引き起こす危険性が回避できる。マイクロサンプリングの手法は、例えば特許文献1〜3にその記載がある。
【0004】
図10(a)〜(d)は、従来のマイクロサンプリング法における一連の処理工程を示す模式的平面図、斜視図及び断面図である。半導体ウェハー上で、例えば絶縁膜にパターン40を作成する(同図(a))。次いで、ウェハーの一部に、マイクロサンプリング法におけるFIB加工のための枠(以下、FIBの加工枠と呼ぶ)を設定し、FIB照射によって、枠状(環状)の加工穴11を形成する(同図(b))。FIB加工で形成された加工穴11は、対向する2つの側縁部が斜めに形成され、その2つの側縁部が所定深さで交わる。このため、加工穴11の内側に形成されるサンプリング片15は、ウェハーから切り離された状態になる。FIB照射で形成されるデポジッション膜14を用い、既に切り離されたサンプリング片15にマイクロサンプリング棒13を固定する。このマイクロサンプリング棒13を用いて、半導体ウェハーからサンプリング片15を取り出す(同図(c))。サンプリング片15が取り出されて形成されたサンプリング穴12は、その全体が酸化シリコンから成る埋め込み膜16で埋め戻されて補修される(同図(d))。
【0005】
従来から、FIB加工後の加工穴は、Gaイオンビームにより励起されたTEOS系原料ガスを使って形成されたシリコン酸化膜によって、埋め戻しを実施している。マイクロサンプリング法のためにサンプリング片を取り出して形成されたサンプリング穴の埋め戻しについても、同様な手法が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、サンプリング穴の埋め戻しに際し、シリコン酸化膜形成用の原料ガスを導入しつつ、GaイオンによるFIB照射を行って、サンプリング穴全体をシリコン酸化膜で埋め戻した後に、引き続き、ArイオンによるFIB照射を行う手法を提案している。GaイオンのFIB照射及びArイオンのFIB照射を順次に行うことにより、埋め戻しに際して、サンプリング穴周辺の盛り上がりや、埋め戻し後の表面の凹凸などを防止している。
【特許文献1】特開2003−311435号公報
【特許文献2】特開平10−116872号公報
【特許文献3】特開2004−040129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のマイクロサンプリング手法については、解決すべき問題が残っている。それは、マイクロサンプリングで形成されたサンプリング穴を埋め戻すのに、多大の時間が必要なことである。例えば、サンプリング穴の寸法が、縦5μm×横5μm×深さ5μmとすると、そのサンプリング穴の1ポイントの埋め込みには約30分〜60分の作業時間を必要とする。このため、ウェハー面内で例えば5ポイントをサンプリングすると、その埋め戻しに、4時間程度又はそれ以上の埋め戻し作業が必要になる。この長時間の埋め戻し作業と、その作業時間によるウェハーの長時間停滞とがネックになり、マイクロサンプリングの手法はあまり普及していないのが実情である。
【0008】
本発明は、上記に鑑み、半導体ウェハー上に形成したサンプリング穴など、製造工程上で不要な穴を短時間で埋め戻すことが出来る埋め戻し工程を有する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の半導体装置の製造方法は、半導体ウェハー上に形成された不要穴を修復する処理を有する半導体装置の製造方法であって、
前記不要穴を修復する処理が、該不要穴の周縁部に支持され、該不要膜の深さよりも小さな厚みを有する閉止膜を形成する工程を含み、該閉止膜は、前記不要穴の内部に空洞を残したまま該不要穴の開口部を閉止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法では、不要穴の内部に空洞を残したまま、不良穴を閉止する閉止膜を形成するので、閉止膜の形成に必要な時間が短縮できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について詳細に説明する。図1(a)〜(c)は、本発明の第1の実施例の半導体装置の製造方法におけるサンプリング穴の埋め戻し処理の各工程段階の様子を順次に示す模式的斜視図である。なお、理解を容易にするために、一部の図面に断面図を付加した。また、本発明の理解を容易にするために、全図を通して同様な要素には、同様な符号を付して示した。
【0012】
本実施例における埋め戻し処理に先立って、以下の工程が実施される。半導体ウェハー上で所望のパターンが形成されると、その一部のマイクロサンプリングのために、FIB照射によって加工穴が形成され、その加工穴の内側のサンプリング片がウェハー上から取り除かれる。これによって、埋め戻すべき不要穴であるサンプリング穴が形成される。本実施例では、サンプリング穴の埋め戻しに、予め用意された埋め込み用半導体膜パターン(以下、単に埋め込みパターンと呼ぶ)17が使用される。
【0013】
図1(a)に示すように、埋め込みパターン17は、下面及び上面がそれぞれほぼ正方形状(又は長方形状)であり、下面が上面よりも小さな角錐台形状のパターンである。この埋め込みパターン17の上面の大きさは、サンプリング穴12の表面開口の大きさにほぼ適合し、その高さ寸法は、サンプリング穴12の深さ寸法よりも充分に小さい。埋め込みパターン17には、予めマイクロサンプリング棒13が、デポジッション膜14によって固定されている。埋め込みパターン17は、マイクロサンプリング棒13を用いて運ばれ、その全体がサンプリング穴12の内部に挿入される。
【0014】
埋め込みパターン17をサンプリング穴12の内部に挿入する際に、埋め込みパターン17の下面がサンプリング穴12の底部にまでは届かず、且つ、埋め込みパターン17の上面がサンプリング穴12の表面開口よりも僅かに下方になるように、その下面の幅がサンプリング穴12の幅に対して調整されている。埋め込みパターン17は、所定の高さ位置に達すると、その位置で停止するので、埋め込み用パターン17から、マイクロサンプリング棒13が切り離される(図1(b))。切り離しは、マイクロサンプリング棒13と、埋め込みパターン17とを接合するデポジッション膜14にFIBを集中的に照射することで行う。
【0015】
次に、埋め込みパターン17の上部に、埋め込み仕上げ膜18を成膜する。埋め込み仕上げ膜18の成膜では、サンプリング穴12の開口全体にFIB加工用の加工枠を設定し、シリコン酸化膜の原料ガスを導入しながら、FIB照射を行って一様に成膜を行う。これによって、サンプリング穴12の部分をウェハー面20と平坦に仕上げる。この状態を図1(c)の断面図に示した。埋め込みパターン17と埋め込み仕上げ膜18とにより、サンプリング穴12の開口を閉止する閉止膜が構成される。埋め込み仕上げ膜18の形成では、FIBによるTEOS系励起ガスの堆積を利用する一般的な埋め込み手法が用いられる。サンプリング穴12には、その内部に空洞19が発生するものの、特に実害はなく、埋め込み処理の時間が短縮される。埋め込み仕上げ膜18は、埋め込みパターン17が何らかの衝撃などで飛び出すのを防止する。本実施例の埋め込み方法を用いると、従来では30〜60分必要であった埋め込み処理時間が,例えば5〜10分程度に短縮可能となる。
【0016】
図2(a)〜(c)はそれぞれ、本発明の第2の実施例の半導体装置の製造方法における埋め込み処理を、図1(a)〜(c)と同様に示す。本実施例では、埋め込みパターンの形状が第1の実施例と異なる。詳しくは、本実施例の埋め込みパターン17Aは、角錐台の上面近傍のテーパー部分が、それ以外のテーパー部分と異なる傾斜角を有する点で、第1の実施例の埋め込みパターン17と異なる。つまり、図2(b)に示すように、サンプリング穴12の壁面とウェハー面(水平面)20とのなす角度をZ、埋め込みパターン17Aの上面近傍のテーパー面と水平面とのなす角度をX、埋め込みパターン17Aの下方側のテーパー面と水平面とのなす角度をYとすると、Y<X<Zである。このように、埋め込みパターン17Aの上面近傍のテーパー角度Xを他の部分のテーパー角度Yよりも緩くすることで、埋め戻し時の埋め込みパターン17Aの位置ずれを防止する。埋め込み仕上げ膜18の成膜方法は、第1の実施例と同様であり、埋め戻し後のサンプリング穴12の上面は、隣接するウェハー面20と平坦に仕上げられる。また、本実施例においても、サンプリング穴12の内部には空洞19が形成されるものの、実害はなく、埋め込み加工時間が短縮される。
【0017】
図3(a)〜(c)はそれぞれ、本発明の第3の実施例の半導体装置の製造方法における埋め込み処理を、図1(a)〜(c)と同様に示す。本実施例の埋め込みパターンの形状は、第2の実施例における埋め込みパターンの形状と同じである。本実施例における埋め込み処理は、埋め込みパターン17Aをサンプリング穴12に挿入した後に、埋め込み仕上げ膜18Aをサンプリング穴12の周縁近傍にのみ成膜する点で、第2の実施例の埋め込み処理と異なる。詳しくは、埋め込み仕上げ膜18Aは、埋め込みパターン17Aとサンプリング穴12の壁面とが隣接する部分に、その間の隙間を塞ぐように成膜される。これにより、埋め込み仕上げ膜18Aは、枠形状に、且つ、その枠の横断面が三角形状となるように成膜される。本実施例では、埋め戻し後のサンプリング穴12の上面とその周囲のウェハー面20との間に若干の段差が残る。しかし、ある程度以内の段差であれば、ゴミなどが堆積することはなく、実害はない。これによって、更なる埋め込み加工時間の短縮が可能になる。なお、ゴミの堆積が問題にならないことは、実プロセスにおいて確認されている。また、本実施例においても、サンプリング穴12の内部には空洞19が形成されるものの、実害はなく、埋め込み加工時間が短縮される。
【0018】
図4(a)〜(e)は、本発明の第4の実施例の半導体装置の製造方法における埋め込み処理を示す。本実施例では、サンプリング穴の周縁部に段差を形成する点で、先の実施例とは異なる。図4(a)に示すように、サンプリング穴12の最初の形状は、図1のサンプリング穴の形状と同じである。本実施例では、サンプリング穴12が形成された後に、サンプリング穴12の周縁部にサンプリング穴を拡張する形で段差21を形成する(同図(b))。埋め込みパターン17Bは、同図(c)に示すように、角錐台形状の埋め込みパターンの上面にフランジ22を追加したリベット型の形状を有する。フランジ22の厚み及び外形はそれぞれ、サンプリング穴12の周縁に形成した段差21の高さ及び外形に適合している。つまり、フランジ22の厚みは段差21の高さに一致し、フランジ22の外形寸法は、段差21の外形寸法よりも僅かに小さい。この形状により、同図(d)に示すように、埋め込みパターン17Bは、フランジ22が段差21に支持された状態で、サンプリング穴12内に吊り下げられる。埋め込み仕上げ膜18Bは、フランジ22と段差21の壁面との僅かな隙間に枠状に形成される(同図(e))。埋め込みパターン17Bにリベット型の形状を採用したにより、埋め込みパターン17Bの位置決めの精度が向上する。また、埋め戻し部分とパターン面との段差が解消する。本実施例においても、サンプリング穴12の内部には空洞19が形成されるものの、実害はなく、埋め込み加工時間が短縮される。
【0019】
図5(a)〜(c)はそれぞれ、本発明の第5の実施例の半導体装置の製造方法における埋め込み処理を、図1(a)〜(c)と同様に示す。本実施例では、サンプリング穴12が形成された後に、FIB照射を利用して、サンプリング穴12の壁面の所定高さ位置に枠状の埋め込み膜23を形成する。この状態を図5(a)に示す。この枠状の埋め込み膜23の形成では、ウェハー面20と直交する方向から見て埋め込み膜を形成する位置にFIBの加工枠を設定し、形成される埋め込み膜のカバレッジ性が悪くなるように成膜を行う。この目的のために、Gaイオンビームの加速電圧を通常に比して低くし、例えば、通常では12keVの加速電圧を使用するところを5keVとする。次いで、既に形成された枠状の埋め込み膜23の内側にFIB加工枠を設定し、枠状の埋め込み膜23の内側に埋め込み膜24を成膜する。この状態を図5(b)に示す。先の枠状の埋め込み膜23の成膜と同様に、加速電圧を下げてカバレッジを悪化させる工夫を施す。枠状の埋め込み膜23及び内側の埋め込み膜24の下方のサンプリング穴12の内部には、空洞19が形成されている。空洞19の内部には、不要なデポジッション膜25、26が一部に形成されているものの、実害はない。
【0020】
その後、FIB加工枠をサンプリング穴12の領域全体に設定し、先に形成した枠状の埋め込み膜23及び内側の埋め込み膜24の上部に、平坦化のための埋め込み仕上げ膜18Cを成膜する。この状態を図5(c)に示す。本実施例においても、サンプリング穴12の内部には空洞19が形成されるものの、実害はなく、埋め込み加工時間が短縮される。
【0021】
図6に、本発明の第6の半導体装置の製造方法における埋め込み処理を、図1と同様に示す。本実施例では、サンプリング穴12が形成された後に、サンプリング穴12の周縁部にFIBの加工枠を設定する。この加工枠は、同図(a)の矢印に示すように、FIB(Gaイオンビーム)の照射方向が斜めとなるように各壁面に向けて設定する。つまり、埋め込み膜のカバレッジ性を悪くするように、FIBの入射角度(サンプリング穴の各壁面とビームとのなす角度)を0°より大きく90°以下に設定する。FIB照射と共に原料ガスを供給する。これによって、同図(a)に示すような、サンプリング穴の各壁面からFIBの照射方向に沿って斜め上方に延びるような、枠状の埋め込み膜23Aが形成される。
【0022】
次に枠状の埋め込み膜23Aの内側部分にFIBの加工枠を設定し、枠状の埋め込み膜23Aの内側に埋め込み膜24Aを成膜する。ここで、枠状の埋め込み膜23AのためのFIBの加工枠と同様に、FIBの照射角度を斜めに設定する。形成される内側の埋め込み膜24Aの状態を図6(b)に示す。埋め込み膜23A、24Aは、全体としてサンプリング穴12の壁面からサンプリング穴12の中心方向に向かって上方に延びる膜形状を有する。最後に、枠状の埋め込み膜23A及び内側の埋め込み膜24Aの上部に、埋め込み仕上げ膜18Dを成膜する。この成膜では、FIBの加工枠をサンプリング穴12の領域全体に設定する。この状態を同図(c)に示す。サンプリング穴12の内部には空洞19が発生し、また、埋め戻し後のサンプリング穴12の部分が隣接するウェハー面20から隆起しているものの、特に実害はなく、埋め込み加工の時間が短縮される。
【0023】
第1〜第4の実施例で用いる埋め込みパターン17、17A、17Bは、半導体基板上で成膜及び微細加工を施すことにより製造する。その様子を第4の実施例で使用されるフランジ付きの埋め込みパターン17Bを例として説明する。FIB処理によって形成されるサンプリング穴の平面寸法は、縦5μm×横5μm、或は、縦5μm×横10μmなどと適当に選定され、更にその高さも適当に選定される。これは、サンプリング片には、実際にSEM観察又はTEM観察をするまでの間に、更に適当な薄膜加工が施されるので、マイクロサンプリングの段階では、それ程正確な精度が要求されないからである。また、マイクロサンプリングの深さについても、10μm程度あれば、殆どの観察が網羅されるからである。このため、サンプリングされた部分のサンプリング穴の大きさと、その埋め込みパターンとの組み合わせは、数種類以内に抑えても実用上では問題がない。
【0024】
図7(a)〜(e)、図8(f)〜(j)は、埋め込みパターン17Bを形成する様子を示している。まず、シリコン基板30上に厚み0.1μm程度の酸化膜31を成長する。次に、窒化膜32を厚み10μm程度に成長する。この状態を図7(a)に示す。次に、フォトレジストから成るマスクパターン33を窒化膜32上に形成する。本例では、FIBの加工枠が縦5μm×横5μmであるとして、マスクパターン33の開口幅を縦(5+1)μm×横(5+1)μmと選定している。この状態を同図(b)に示す。
【0025】
次に、窒化膜32を異方性ドライエッチングにより、所定の深さa(μm)まで垂直にエッチングする。この状態を図7(c)に示した。深さa(μm)は、埋め込みパターン17Bのフランジ(台座)22の厚みに選定する。次に、マスクパターン33を剥離する。この状態を図7(d)に示した。次に、マスクパターン34を形成する。マスクパターン34の開口幅を、縦(5−0.5)μm×横(5−0.5)μmとし、実際のサンプリングのためのFIBの加工枠よりもやや小さくしている。これは埋め込みに際して僅かな余裕(隙間)を持たせるためである。この状態を図7(e)に示す。
【0026】
次に、マスクパターン34を用い、異方性ドライエッチングにより窒化膜32を更にエッチングする。このときのエッチングは、酸化膜31に到達した時点で終了する。エッチングでは、形成される埋め込みパターンが、マイクロサンプリングされた後のサンプリング穴にすっぽりと入るテーパー角となるように、テーパーエッチングを行う。この状態を図8(f)に示す。
【0027】
次に、マスクパターン34を剥離する。この状態を図8(g)に示す。次に、プラズマ酸化膜35を堆積し、形成されたパターン内にプラズマ酸化膜35をカバレッジ性良く埋め込む。この状態を図8(h)に示す。次に、CMP法を用いて、形成されたプラズマ酸化膜35を研磨し、窒化膜32の表面が露出するまで研磨する。この状態を図8(i)に示す。次に熱リン酸を用いて、窒化膜32を完全に除去する。この状態を図8(j)に示した。
【0028】
図9(a)〜(c)は、上記で製造した埋め込みパターン17Bを取り出す様子を示している。同図(a)に、半導体基板28上に形成した埋め込みパターン17Bのアレイを示す。このチップ上で、取り出すべき埋め込みパターン17Bを1つ選択し、そのフランジ22の表面の一部に、FIBの加工枠を設定し、デポジッション膜を形成して、マイクロサンプリング棒13の先端をフランジ22に接続する。その状態を同図(b)に示した。次に、埋め込みパターン17Bの下部をFIB加工によって切断し、先にマイクロサンプリング棒13に接続された埋め込みパターン17Bを、マイクロサンプリング棒13を用いて持ち上げる。その状態を同図(c)に示す。符号29は、埋め込みパターン17Bが除去された後の台座部分を示す。これら一連の作業で、1つの埋め込みパターン17Bの切り出しが完了する。必要な数の埋め込みパターン17Bについて上記処理を繰り返す。
【0029】
本発明の構成は、以下を考慮して得られたものである。まず、サンプリング穴の埋め戻しを行う最大の目的は、後工程でサンプリング穴にゴミなどが堆積するのを防止するためである。サンプリング穴にゴミなどが一旦堆積すると、後工程でそのゴミが発散し製品を汚染する懸念がある。ゴミの堆積自体は、サンプリング穴に蓋をする程度で抑えられる。従って、埋め込み部の底部を空洞にして埋め込みを行い、埋め込み部の底部を空洞にしたままで埋め込み完了として、サンプリング穴の埋め戻し時間の短縮化を図るものである。
【0030】
本発明方法が使用される例としては、半導体デバイスのウェハー拡散工程における断面観察時で、しかも、マイクロサンプリングが必要とされる場合が特に挙げられる。しかし、この例に限定されるものではなく、製造プロセス中で、ウェハー表面に不必要な穴が形成されれば、その穴を塞ぐ目的で形成してもよい。
【0031】
以上、本発明をその好適な実施例に基づいて説明したが、本発明の半導体装置の製造方法は、上記実施例の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施例の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。例えば、埋め込みパターンや埋め込み仕上げ膜の材質は、FIB照射によって成膜可能な膜であればいかなる材質の膜でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施例の処理を示す模式的斜視図、及び、断面図である。
【図2】本発明の第2の実施例の処理を示す模式的斜視図、及び、断面図である。
【図3】本発明の第3の実施例の処理を示す模式的斜視図、及び、断面図である。
【図4】本発明の第4の実施例の処理を示す模式的斜視図、及び、断面図である。
【図5】本発明の第5の実施例の処理を示す模式的斜視図、及び、断面図である。
【図6】本発明の第6の実施例の処理を示す模式的斜視図、及び、断面図である。
【図7】埋め込みパターンを製造する処理の工程段階を順次に示す断面図である。
【図8】図7に後続する工程段階を順次に示す断面図である。
【図9】埋め込みパターンを取り出す処理を示す斜視図である。
【図10】従来のマイクロサンプリング法の処理を示す模式的平面図、斜視図、及び、断面図である。
【符号の説明】
【0033】
11:加工穴
12:サンプリング穴
13:マイクロサンプリング棒
14:デポジッション膜
15:サンプリング片
16:埋め込み膜
17、17A、17B:埋め込みパターン(埋め込み用半導体膜パターン)
18、18A、18B、18C、18D:埋め込み仕上げ膜
19:空洞
20:ウェハー面
21:段差
22:フランジ
23、23A:枠状の埋め込み膜
24、24A:内側の埋め込み膜
25、26:デポジッション膜
28:半導体基板
29:埋め込み膜除去後の台座
30:シリコン基板
31:酸化膜
32:窒化膜
33,34:マスクパターン
35:プラズマ酸化膜
40:絶縁膜のパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハー上に形成された不要穴を修復する処理を有する半導体装置の製造方法であって、
前記不要穴を修復する処理が、該不要穴の周縁部に支持され、該不要穴の深さよりも小さな厚みを有する閉止膜を形成する工程を含み、該閉止膜は、前記不要穴の内部に空洞を残したまま該不要穴の開口部を閉止することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記不要穴が、マイクロサンプリング片を取り出したサンプリング穴である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記閉止膜を形成する工程が、予め用意された膜パターンを前記不要穴の壁面に支持するステップと、該膜パターンと前記不要穴の壁面との隙間を少なくとも埋める仕上げ膜を形成するステップとを含む、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記仕上げ膜を形成するステップは、修復後の不要穴の上面と、該不要穴に隣接するウェハー面とを実質的に平坦にする、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記膜パターンは、該膜パターンの側面と前記不要穴の壁面とがなす角度が、前記不要穴の壁面で支持される位置に隣接する膜パターンの部分で、他の部分よりも小さい、請求項3又は4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記閉止膜を形成する工程に先だって、前記不要穴の周縁に段差を形成する工程を更に有し、前記膜パターンが上面にフランジを有し、前記膜パターンを支持するステップが、前記フランジの縁部を前記段差に乗せるステップを含む、請求項3又は4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記膜パターンを、半導体基板上で成膜及びパターニングによって形成されたチップから採取する、請求項3〜6の何れか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記仕上げ膜を形成するステップが、閉止膜の原料ガスを導入するステップと、該原料ガスを励起し前記不要穴の壁面に堆積させる集束イオンビーム(FIB)を照射するステップとを含む、請求項3〜7の何れか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記閉止膜を形成する工程が、閉止膜の原料ガスを導入しつつ該原料ガスを励起し前記不要穴の壁面に堆積させる集束イオンビーム(FIB)を照射するステップを有し、該FIBを照射するステップは、前記不要穴の内部の周縁部にFIBの加工枠を設定してFIBを照射するステップと、前記不要穴の中央部にFIBの加工枠を設定してFIBを照射するステップとを含む2段階照射を行う、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記FIBを照射するステップは、前記不要穴に閉止膜を堆積するプロセス条件として、他の工程段階で使用されているプロセス条件に比してカバレッジ性が低いプロセス条件を採用する、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記FIBの照射方向と前記不要穴の壁面とが成すFIBの照射角度が0度よりも大きく、90度よりも小さい、請求項9又は10に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−4591(P2009−4591A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164569(P2007−164569)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】