説明

半導体装置の製造方法

【課題】逆方向耐圧VBRの製造ばらつきを小さくすることが可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板102に不純物イオンを注入する不純物イオン注入工程S112と、半導体基板102に注入された不純物イオンを活性化するアニール工程S114と、アニール工程で活性化された不純物原子の埋め込み拡散を行う埋め込み拡散工程S116とをこの順序で含む半導体装置の製造方法において、不純物イオン注入工程S112においては、下地酸化膜を介することなく半導体基板102に直接不純物イオンを注入し、アニール工程S114と埋め込み拡散工程S116とを同一の熱処理炉で行うとともに、アニール工程S114終了後、熱処理炉中に酸素ガスを導入した状態でアニール温度T1から埋め込み拡散温度T2に昇温することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器などの電子機器は、異常電圧などに敏感なICやLSIが多用されている。このため、雷などの衝撃電圧(サージ電圧という。)や衝撃電流(サージ電流という。)などに対して十分な対策が必要である。このようなサージ電圧やサージ電流から電子機器を防護する半導体装置として2端子型双方向性サイリスタが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図8は、2端子型双方向性サイリスタ800の構成を説明するために示す図である。
2端子型双方向性サイリスタ800は、図8に示すように、例えば、n型半導体基板802の一方の表面及び他方の表面それぞれにベース層832、エミッタ層842及びオーミック層852が形成され、さらに、ガラス層860及び半田層870が形成された構成を有し、このような2端子型双方向性サイリスタ800は、サージ電圧やサージ電流から電子機器を防護するサージ防護素子として好適に用いることができる。
【0004】
ところで、2端子型双方向性サイリスタ800よりも高耐圧で高性能(高速応答性能、サージ印加時電圧上昇抑制性能)な2端子型双方向性サイリスタが知られている。このような2端子型双方向性サイリスタを従来の2端子型双方向性サイリスタということとする。
【0005】
図9は、従来の2端子型双方向性サイリスタ900の構成を説明するために示す図である。
従来の2端子型双方向性サイリスタ900は、図9に示すように、ベース層932よりも深い位置にn型埋め込み拡散領域924が形成されている。
このため、従来の2端子型双方向性サイリスタ900は、2端子型双方向性サイリスタ800よりも高耐圧で高性能(高速応答性能、サージ印加時電圧上昇抑制性能)な2端子型双方向性サイリスタとなる。
【0006】
図10は、従来の2端子型双方向性サイリスタ900を製造するための製造方法(以下、従来の2端子型双方向性サイリスタの製造方法という。)を説明するために示す図である。図10(a)〜図10(d)は各工程図である。なお、図10においては、従来の2端子型双方向性サイリスタの製造方法のうち、n型埋め込み拡散領域924を形成する工程(以下、埋め込み拡散領域形成工程S910という。)のみを示すこととする。
【0007】
従来の2端子型双方向性サイリスタの製造方法は、図10に示すように、半導体基板902の表面に下地酸化膜910及び不純物イオン注入用マスクMを形成し、当該不純物イオン注入用マスクMの開口部から下地酸化膜910を介して半導体基板902に不純物イオンを注入する不純物イオン注入工程S912(図10(a)及び図10(b)参照。)と、半導体基板902を所定のアニール温度T1に加熱して半導体基板902に注入された不純物イオンを活性化するアニール工程S914(図10(c)参照。)と、半導体基板902をアニール温度T1よりも高い所定の埋め込み拡散温度T2に加熱してアニール工程S930で活性化された不純物原子の埋め込み拡散を行う埋め込み拡散工程S916(図10(d)参照。)とをこの順序で含む。
【0008】
このため、従来の2端子型双方向性サイリスタの製造方法によれば、上記した埋め込み拡散領域形成工程S910を行うことにより、半導体基板902の深い位置に埋め込み拡散領域924を形成することができるため、上記したように高耐圧で高性能(高速応答性能、サージ印加時電圧上昇抑制性能)な2端子型双方向性サイリスタの製造方法を製造することができる。
【0009】
【特許文献1】特開平5−275687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の2端子型双方向性サイリスタの製造方法においては、不純物イオン注入工程S912に用いる下地酸化膜910の膜厚のばらつきを小さくすることが困難であることに起因して、注入される不純物イオンの濃度のばらつきを小さくすることが困難であり、ひいては、逆方向耐圧VBRのばらつきを小さくすることが困難であるという問題があった。
【0011】
なお、このような問題は、2端子型双方向性サイリスタを製造する方法だけに見られる問題ではなく、半導体基板の深い位置に埋め込み拡散領域を形成する埋め込み拡散工程を含む半導体装置(例えば、ファーストリカバリダイオード。)を製造する方法全般に見られる問題である。
【0012】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、逆方向耐圧VBRのばらつきを小さくすることが可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面に不純物イオン注入用マスクを形成し、当該不純物イオン注入用マスクの開口部から前記半導体基板に不純物イオンを注入する不純物イオン注入工程と、前記半導体基板を所定のアニール温度に加熱して前記半導体基板に注入された不純物イオンを活性化するアニール工程と、前記半導体基板を前記アニール温度よりも高い所定の埋め込み拡散温度に加熱して前記アニール工程で活性化された不純物原子の埋め込み拡散を行う埋め込み拡散工程とをこの順序で含む半導体装置の製造方法において、前記不純物イオン注入工程においては、下地酸化膜を介することなく前記半導体基板に直接前記不純物イオンを注入し、前記アニール工程と前記埋め込み拡散工程とを同一の熱処理炉で行うとともに、前記アニール工程終了後、前記熱処理炉中に酸素ガスを導入した状態で前記アニール温度から前記埋め込み拡散温度に昇温することを特徴とする。
【0014】
このため、本発明の半導体装置の製造方法によれば、不純物イオン注入工程においては、下地酸化膜を介することなく半導体基板に直接不純物イオンを注入することしているため、不純物イオン注入工程に用いる下地酸化膜の膜厚のばらつきに起因して注入される不純物イオンの濃度のばらつきを小さくすることが困難であるという問題がなくなり、逆方向耐圧VBRのばらつきを小さくすることが可能となる。
【0015】
なお、本発明の半導体装置の製造方法によれば、アニール工程と埋め込み拡散工程とを同一熱処理炉で行うとともに、アニール工程終了後、熱処理炉中に酸素ガスを導入した状態でアニール温度から埋め込み拡散温度に昇温することとしているため、その昇温過程で半導体基板の表面に保護酸化膜を形成することができる。その結果、半導体基板の表面に保護酸化膜が存在する状態で埋め込み拡散工程を行うことが可能となるため、埋め込み拡散工程中に、下地酸化膜が存在しないことに起因して、せっかく導入した不純物が半導体基板から外方拡散してしまったり、熱処理炉からの望ましくない不純物に半導体基板が汚染されてしまったりするということもない。
【0016】
(2)本発明の半導体装置の製造方法においては、前記熱処理炉中に酸素ガスを導入した状態のまま前記埋め込み拡散工程を開始することが好ましい。
【0017】
このような方法とすることにより、十分な厚さの保護酸化膜が半導体基板の表面に形成された状態で、埋め込み拡散工程を行うことができる。
【0018】
(3)本発明の半導体装置の製造方法においては、前記埋め込み拡散工程の途中から、前記熱処理炉中に酸素ガスの代わりに不活性ガスを導入することが好ましい。
【0019】
埋め込み拡散工程中にいったん十分な厚さの保護酸化膜が半導体基板の表面に形成された場合には、爾後、熱処理炉中に酸素ガスの代わりに不活性ガスを導入することとしても、半導体基板の表面に十分な厚さの保護酸化膜が存在する状態で埋め込み拡散工程を行うことが可能となる。不活性ガスとしては、窒素ガスを例示することができる。
【0020】
(4)本発明の半導体装置の製造方法においては、前記半導体装置は、2端子型双方向性サイリスタであることが好ましい。
【0021】
このような方法とすることにより、半導体基板の深い位置に埋め込み拡散領域を形成することができるため、高耐圧で高性能(高速応答性能、サージ印加時電圧上昇抑制性能)な2端子型双方向性サイリスタを製造することができる。また、逆方向耐圧VBRのばらつきを小さくすることが可能な2端子型双方向性サイリスタを製造することが可能となる。
【0022】
ところで、一般的には、下地酸化膜を介することなく半導体基板に直接不純物イオンを注入することとした場合には、半導体基板の表面が損傷し易くなるとともに、半導体基板の最表面における不純物濃度が低下し易くなるため、製造しようとする半導体装置の種類によっては、望ましい特性が得られないという問題が生じる場合がある。
これに対して、半導体装置が2端子型双方向性サイリスタである場合には、ベース領域、エミッタ領域及びオーミック領域ともに比較的深い位置まで不純物が導入された構造を有するため、上記のような問題は発生しにくいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の半導体装置の製造方法を、図に示す実施形態に基づいてさらに詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態においては、半導体装置として、2端子型双方向性サイリスタを例にとって説明する。
【0024】
[実施形態1]
実施形態1に係る2端子型双方向性サイリスタの製造方法は、埋め込み拡散領域形成工程S110、ベース層形成工程S120、エミッタ層形成工程S130、オーミック層形成工程S140をこの順序で含むものである。以下、これら各工程を順次説明する。
【0025】
〔埋め込み拡散領域形成工程S110〕
図1は、実施形態1に係る半導体装置の製造方法のうち埋め込み拡散領域形成工程S110を説明するために示す図である。図1(a)〜図1(d)は埋め込み拡散領域形成工程S110における各工程を示す図である。
図2は、実施形態1に係る半導体装置の製造方法のうちアニール工程S114〜埋め込み拡散工程S116における、処理温度と導入ガスの種類を説明するために示す図である。
【0026】
埋め込み拡散領域形成工程S110は、図1に示すように、例えばn型不純物(例えばリン)を1×1014cm−3含有するn型の半導体基板102を準備する半導体基板準備工程(図1(a)参照。)と、半導体基板102の一方の表面及び他方の表面それぞれに不純物イオン注入用マスクMを形成して、当該不純物イオン注入用マスクMの開口部から半導体基板102に不純物イオン(例えばリンイオン)を注入する不純物イオン注入工程S112(図1(b)参照。)と、半導体基板102を所定のアニール温度T1に加熱して半導体基板102に注入された不純物イオンを活性化するアニール工程S114(図1(c)参照。)と、半導体基板102をアニール温度T1よりも高い所定の埋め込み拡散温度T2に加熱してアニール工程S120で活性化された不純物原子の埋め込み拡散を行って、n型埋め込み拡散領域124を形成する埋め込み拡散工程S116(図1(d)参照。)とをこの順序で実施する。
【0027】
アニール工程S114は、例えば900℃で1時間行い、埋め込み拡散工程S116は、例えば1275℃で80時間行う。
【0028】
実施形態1に係る半導体装置の製造方法は、基本的には、従来の半導体装置の製造方法と同様の工程を含むものである。但し、実施形態1に係る半導体装置の製造方法においは、図1(b)に示すように、不純物イオン注入工程S112において、下地酸化膜を介することなく半導体基板102に直接不純物イオンを注入することとしている。
【0029】
また、実施形態1に係る半導体装置の製造方法においては、アニール工程S114と埋め込み拡散工程S116とを同一の熱処理炉で行うとともに、図2に示すように、アニール工程S114終了後、熱処理炉中に酸素ガスを導入した状態でアニール温度T1から埋め込み拡散温度T2に昇温することとしている。また、図2に示すように、熱処理炉中に酸素ガスを導入した状態のまま埋め込み拡散工程S116を開始することとしている。
【0030】
実施形態1に係る半導体装置の製造方法においては、上記した埋め込み拡散領域形成工程S110の終了後、ベース層形成工程S120、エミッタ層形成工程S130及びオーミック層形成工程S140を順次行う。
【0031】
図3は、実施形態1に係る半導体装置の製造方法のうちのベース層形成工程S120を説明するために示す図である。
図4は、実施形態1に係る半導体装置の製造方法のうちのエミッタ層形成工程S130を説明するために示す図である。
図5は、実施形態1に係る半導体装置の製造方法のうちのオーミック層形成工程S140を説明するために示す図である。
図6は、実施形態1に係る半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置(2端子型双方向性サイリスタ)の構成を示す図である。
【0032】
〔ベース層形成工程S120〕
ベース層を形成するための不純物イオン注入用マスクM2(例えば、フォトレジスト又はシリコン酸化膜。)を半導体基板102の一方の表面及び他方の表面にそれぞれ形成し、当該不純物イオン注入用マスクM2の開口部からp型不純物イオン(例えばボロンイオン)をそれぞれ注入する(図3(a)参照。)。その後、不純物イオン注入用マスクM2を除去してアニール工程を行い、p型不純物を活性化して(図3(b)参照。)、半導体基板102の一方の表面及び他方の表面それぞれにベース層132を形成する。なお、ベース層132の深さは例えば25μmであり、p型不純物の不純物濃度は例えば5×1018cm−3である。
【0033】
〔エミッタ層形成工程S130〕
エミッタ層を形成するための不純物イオン注入用マスクM3(例えば、フォトレジスト又はシリコン酸化膜。)を半導体基板102の一方の表面及び他方の表面にそれぞれ形成し、当該不純物イオン注入用マスクM3の開口部からn型不純物イオン(例えばリンイオン)をそれぞれ注入する(図4(a)参照。)。その後、不純物イオン注入用マスクM3を除去してアニール工程を行い、n型不純物を活性化して(図4(b)参照。)、半導体基板102の一方の表面及び他方の表面それぞれにエミッタ層142及びチャネルストッパ144を形成する。なお、エミッタ層142の深さは例えば10μmであり、n型不純物の不純物濃度は例えば1×1019cm−3である。
【0034】
〔オーミック層形成工程S140〕
オーミック層を形成するための不純物イオン注入用マスクM4(例えば、フォトレジスト又はシリコン酸化膜。)を半導体基板102の一方の表面及び他方の表面にそれぞれ形成し、当該不純物イオン注入用マスクM4の開口部からp型不純物イオン(例えばボロンイオン)をそれぞれ注入する(図5(a)参照。)。その後、不純物イオン注入用マスクM4を除去してアニール工程を行い、p型不純物を活性化して(図5(b)参照。)、半導体基板102の一方の表面及び他方の表面それぞれにオーミック層152を形成する。なお、オーミック層152の深さは例えば10μmであり、p型不純物の不純物濃度は例えば1×1019cm−3である。
【0035】
上記した埋め込み拡散領域拡散工程S110、ベース層形成工程S120、エミッタ層形成工程S130及びオーミック層形成工程S140を順次実施した後、ガラス層160及び半田層170を順次形成することによって実施形態1に係る半導体装置100を製造することができる(図6参照。)。
【0036】
実施形態1に係る半導体装置の製造方法によれば、不純物イオン注入工程S112においては、下地酸化膜を介することなく半導体基板102に直接不純物イオンを注入することしているため、不純物イオン注入工程に用いる下地酸化膜の膜厚のばらつきに起因して注入される不純物イオンの濃度のばらつきを小さくすることが困難であるという従来の問題がなくなり、逆方向耐圧VBRのばらつきを小さくすることが可能となる。
【0037】
また、実施形態1に係る半導体装置の製造方法によれば、アニール工程S114と埋め込み拡散工程S116とを同一熱処理炉で行うとともに、アニール工程S114終了後、熱処理炉中に酸素ガスを導入した状態でアニール温度T1から埋め込み拡散温度T2に昇温することとしているため、その昇温過程で半導体基板102の表面に保護酸化膜110を形成することができる。その結果、半導体基板102の表面に保護酸化膜110が存在する状態で埋め込み拡散工程S116を行うことが可能となるため、埋め込み拡散S116工程中に、下地酸化膜が存在しないことに起因してせっかく導入した不純物が半導体基板から外方拡散してしまったり、熱処理炉からの望ましくない不純物に半導体基板が汚染されてしまったりするということがなくなる。
【0038】
また、実施形態1に係る半導体装置の製造方法においては、熱処理炉中に酸素ガスを導入した状態のまま埋め込み拡散工程S116を開始することとしているため、十分な厚さの保護酸化膜110が半導体基体102の表面に形成された状態で、埋め込み拡散工程S116を行うことができる。
【0039】
また、実施形態1に係る半導体装置の製造方法によれば、半導体基板の深い位置に埋め込み拡散領域を形成することができるため、高耐圧で高性能(高速応答性能、サージ印加時電圧上昇抑制性能)な2端子型双方向性サイリスタを製造することができる。また、逆方向耐圧VBRのばらつきを小さくすることが可能な2端子型双方向性サイリスタを製造することが可能となる。
【0040】
[実施形態2及び3]
図7は、実施形態2及び3に係る半導体装置の製造方法のうちアニール工程S114〜埋め込み拡散工程S116における、処理温度と導入ガスの種類を説明するために示す図である。
【0041】
実施形態2に係る半導体装置の製造方法は、基本的には実施形態1に係る半導体装置の製造方法と同様の工程を有するが、埋め込み拡散工程S116の内容が実施形態1に係る半導体装置の製造方法の場合と異なる。すなわち、実施形態2に係る半導体装置の製造方法においては、図7に示すように、埋め込み拡散工程S116を実施形態1の場合よりも長時間(例えば140時間)行うこととしている。
【0042】
実施形態3に係る半導体装置の製造方法は、基本的には実施形態1に係る半導体装置の製造方法と同様の工程を有するが、埋め込み拡散工程S116の内容が実施形態1に係る半導体装置の製造方法の場合と異なる。すなわち、実施形態3に係る半導体装置の製造方法においては、図7に示すように、埋め込み拡散工程S116の途中から、熱処理炉中に酸素ガスの代わりに不活性ガスを導入することとしている。
【0043】
このように、実施形態2又は3に係る半導体装置の製造方法は、埋め込み拡散工程S116の内容が実施形態1に係る半導体装置の製造方法の場合と異なるが、実施形態1に係る半導体装置の製造方法の場合と同様に、不純物イオン注入工程S112においては、下地酸化膜を介することなく半導体基板102に直接不純物イオンを注入することとしているため、不純物イオン注入工程S112に用いる下地酸化膜の膜厚のばらつきに起因して注入される不純物イオンの濃度のばらつきを小さくすることが困難であるという従来の問題がなくなり、逆方向耐圧VBRのばらつきを小さくすることが可能となる。
【0044】
また、実施形態2又は3に係る半導体装置の製造方法によれば、熱処理炉中に酸素ガスを導入した状態のまま埋め込み拡散工程S116を開始することとしているため、十分な厚さの保護酸化膜110が半導体基板102の表面に形成された状態で、埋め込み拡散工程S116を行うことが可能となる。
【0045】
なお、実施形態3に係る半導体装置の製造方法によれば、埋め込み拡散工程S116の途中から、熱処理炉中に酸素ガスの代わりに不活性ガスを導入することとしているが、埋め込み拡散工程S116の途中までは、熱処理炉中に酸素ガスを導入しながら埋め込み拡散工程S116を行っているため、半導体基板102の表面に十分な厚さの保護酸化膜が存在する状態で埋め込み拡散工程S116を行うことが可能となる。
【0046】
実施形態2又は3に係る半導体装置の製造方法は、埋め込み拡散工程S116以外の工程については実施形態1に係る半導体装置の製造方法の場合と同様の工程を含むため、実施形態1に係る半導体装置の製造方法が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0047】
以上、本発明の半導体装置の製造方法を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0048】
(1)上記各実施形態においては、n型半導体基板を用いて2端子型双方向性サイリスタを製造することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、p型半導体基板を用いて2端子型双方向性サイリスタを製造することとしてもよい。
【0049】
(2)上記各実施形態においては、2端子型双方向性サイリスタの製造方法を例にとって本発明の半導体装置の製造方法を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、半導体基板の深い位置に埋め込み拡散領域を形成することが要求される他の半導体装置(例えば、ファーストリカバリダイオード。)の製造方法に本発明を適用することもできる。
【0050】
(3)上記各実施形態においては、エミッタ層形成工程の終了後、オーミック層形成工程を行うこととしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、オーミック層形成工程の終了後、エミッタ層形成工程を行ってもよい。
【0051】
(4)上記各実施形態においては、ベース層形成工程及びオーミック層形成工程において、イオン注入法を用いて不純物を導入しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、熱拡散法を用いて不純物を導入してもよい。このとき、熱拡散法に用いる拡散源として、気体、液体又は固体の拡散源を用いることができる。気体の拡散源としては例えばBCl(三塩化ホウ素)を用いることができ、液体の拡散源としては例えばPBF(ポリボロンフィルム)を用いることができ、固体の拡散源としては例えばBN板(窒化ホウ素からなる板)を例示することができる。
【0052】
(5)上記各実施形態においては、エミッタ層形成工程において、イオン注入法を用いて不純物を導入しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、熱拡散法を用いて不純物を導入してもよい。このとき、熱拡散法に用いる拡散源として、液体の拡散源を用いることができる。液体の拡散源としては例えばPOCl(オキシ塩化リン)を例示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施形態1に係る半導体装置の製造方法のうちの埋め込み拡散領域形成工程S110を説明するために示す図である。
【図2】実施形態1に係る半導体装置の製造方法のうちアニール工程S114〜埋め込み拡散工程S116における、処理温度と導入ガスの種類を説明するために示す図である。
【図3】実施形態1に係る半導体装置の製造方法のうちのベース層形成工程S120を説明するために示す図である。
【図4】実施形態1に係る半導体装置の製造方法のうちのエミッタ層形成工程S130を説明するために示す図である。
【図5】実施形態1に係る半導体装置の製造方法のうちのオーミック層形成工程S140を説明するために示す図である。
【図6】実施形態1に係る半導体装置100の構成を説明するために示す図である。
【図7】実施形態2及び3に係る半導体装置の製造方法のうちアニール工程S114〜埋め込み拡散工程S116における、処理温度と導入ガスの種類を説明するために示す図である。
【図8】2端子型双方向性サイリスタ800の構成を説明するために示す図である。
【図9】従来の2端子型双方向性サイリスタ900の構成を説明するために示す図である。
【図10】従来の2端子型双方向性サイリスタの製造方法を説明するために示す図である。
【符号の説明】
【0054】
100…半導体装置、102,802,902…半導体基板、110…保護酸化膜、120,141,143,920…n型不純物イオン注入領域、122,922…活性化されたn型不純物領域、124,924…埋め込み拡散領域、131,151…p型不純物イオン注入領域、132,832,932…ベース層、142,842,942…エミッタ層、144,844,944…チャネルストッパ、152,852,952…オーミック層、160,860,960…ガラス層、170,870,970…半田層、800,900…2端子型双方向性サイリスタ、910…下地酸化膜、M〜M4…不純物イオン注入用マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面に不純物イオン注入用マスクを形成し、当該不純物イオン注入用マスクの開口部から前記半導体基板に不純物イオンを注入する不純物イオン注入工程と、
前記半導体基板を所定のアニール温度に加熱して前記半導体基板に注入された不純物イオンを活性化するアニール工程と、
前記半導体基板を前記アニール温度よりも高い所定の埋め込み拡散温度に加熱して前記アニール工程で活性化された不純物原子の埋め込み拡散を行う埋め込み拡散工程とをこの順序で含む半導体装置の製造方法において、
前記不純物イオン注入工程においては、下地酸化膜を介することなく前記半導体基板に直接前記不純物イオンを注入し、
前記アニール工程と前記埋め込み拡散工程とを同一の熱処理炉で行うとともに、前記アニール工程終了後、前記熱処理炉中に酸素ガスを導入した状態で前記アニール温度から前記埋め込み拡散温度に昇温することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記熱処理炉中に酸素ガスを導入した状態のまま前記埋め込み拡散工程を開始することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記埋め込み拡散工程の途中から、前記熱処理炉中に酸素ガスの代わりに不活性ガスを導入することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体装置は、2端子型双方向性サイリスタであることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−40611(P2010−40611A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199073(P2008−199073)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【出願人】(591132955)株式会社秋田新電元 (29)
【Fターム(参考)】