説明

半導体装置の製造方法

【課題】8インチ径のFZウエハを用いる製造ラインで、投入ウエハの厚さを従来のものより薄くしても、ウエハの割れ欠けの頻度を従来と同様の程度に抑えることのできる半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】FZ法により形成される8インチ径用のSi単結晶インゴット100から、耐圧に必要な厚さ以上であって700μm未満のFZウエハを切り出す工程、CZ法により形成される8インチ径用のSi結晶インゴット100から、前記FZウエハ103の厚さと合わせて700μm以上となる厚さのCZウエハ106を切り出す工程、前記FZウエハ103と前記CZウエハ106を一方の主面で貼り合わせて貼り合わせウエハとする工程、前記貼り合わせウエハの前記FZウエハの他方の面を研磨し鏡面化する工程、前記FZウエハ103の鏡面化された他方の面に所要の半導体領域を形成する工程、前記CZウエハ106の他方の面を削り落とす工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に係わり、特には直径8インチ以上の大口径のFZ型半導体基板(以降ウエハ)を用いる場合に効果の大きい絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(以降IGBT)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ソーラー発電、風力発電などの技術分野の進展に伴い、近い将来、IGBTの需要が大幅に増加する可能性の高いことが想定される。そこで、製造ラインの効率化やウエハ当たりの取れチップ数増によるコストダウンの目的で、シリコン基板(シリコンウエハ)の大口径化(6インチ径から8インチ径へ)が進められている。
【0003】
パワー半導体装置を製造する際には、シリコンウエハの原材料として、CZ(チョクラルスキー)法に比べて高価であるが、高純度、高抵抗率が得られ易く、高耐圧特性が高良品率で得られるFZ(フローティングゾーン)法により結晶成長させたシリコン単結晶インゴットが使用される。しかし、FZ法によるシリコン結晶成長は、大口径化とともに生産効率が悪くなる方法であるので、現在多く用いられている6インチ径に比べ8インチ径のFZシリコン単結晶はコスト面からも、かなり高価になる。
【0004】
一方、前記FZ法による単結晶インゴットからスライスされたFZ−ウエハを用いてIGBTを製造する従来の製造方法により、よく知られたFS(フィールドストップ)−IGBTを製造する場合、最終的な仕上げのウエハに必要な厚さは、耐圧1800Vで180μm、耐圧1200Vで120μm、耐圧600Vで60μm程度である。しかし、製造工程でのウエハ割れや欠けを防ぐには、半導体装置を製造するウエハ工程に投入する当初のウエハの厚さは6インチ径の場合で600μm以上を必要とし、実際には625μm程度の厚さが好ましいとされている。
【0005】
また8インチ径の場合、少なくとも700μm以上を必要とし、一般的には725μm程度の厚さが好ましいとされる。すなわち、前述の投入ウエハの厚さと仕上げのウエハ厚さの差の大部分は研削による切り屑、研磨やラッピングによるロスやエッチングによる溶解により捨てられているのである。もちろん、6インチ径のウエハを用いた場合も同様に投入ウエハの厚さと仕上げのウエハの厚さでは差があり大部分は捨てられている。
【0006】
前記FS−IGBTの構造的な特徴は、特にn-ドリフト層の裏面側に、不純物濃度および幅の制御されたn型FS層およびp型コレクタ層を備えることである。このような構造により得られる、FS−IGBTの特性面での特長は、必要な耐圧を得るための高抵抗n-ドリフト層の厚さを薄くすることができるので、オン電圧が低減することである。また、FS−IGBTでは、そのデバイス特性がコレクタ側からのキャリア注入効率で決まるように、p型コレクタ層およびn型FS層の不純物濃度や厚さを調整している。よって、ライフタイムキラーを導入してターンオフタイム(またはスイッチング損失)をさらに小さくする必要が特にない特徴を有している。一方、低抵抗p型半導体基板上にエピタキシャル成長により、n+層と高抵抗n-ドリフト層を堆積させて製造されるPT(パンチスルー)型IGBTでは、オン電圧は小さいが、ライフタイムキラーの導入によりターンオフタイムを小さくすることが求められることが通常である。また、注入効率をコントロールされたpコレクタ層とオフ電圧時に延びる最大空乏層幅より厚いn-ドリフト層を必要とするNPT−IGBTでは、ライフタイムキラーを導入する必要は前記FS−IGBTと同様に無いけれど、n-ドリフト層が厚いため、オン電圧が大きくなり易い特徴がある。すなわち、FS−IGBTはPT−IGBTとNPT−IGBTの両者の長所を取り入れたIGBTと言える。
【0007】
一方、高耐圧素子を一体にして設ける半導体集積回路素子を形成するために厚さ600μmの6インチ径CZシリコン基板に、熱酸化膜を挟んで、低不純物濃度のFZシリコン基板を貼り合わせて一体化し、FZシリコン基板を研磨して薄くしてSOI基板とし、FZシリコン基板に半導体領域を形成する半導体装置の製造方法に係わる記述がある(特許文献1)。
【0008】
また、高耐圧化のために厚い高抵抗率層を必要とするIGBTの半導体基板を、エピタキシャル法あるいは熱拡散法のようにIGBT構造の表面部に欠陥が生じ易い方法を用いない製造方法とする。具体的には、半導体基板の貼り合わせ技術を用いる。たとえば、n+エピタキシャル層を成長させたp+シリコンウエハのn+層上にn-シリコンウエハを貼り合わせた半導体基板を用いて高耐圧IGBTを製造する方法についての記述がある(特許文献2)。
【0009】
シリコンウエハの裏面に、FS層形成用イオン注入を施した後、裏面に絶縁性の支持基板を貼り付ける工程、表面側に半導体装置の表面構造を作製した後、前記支持基板を取り除く工程、基板を取り除いた面にp型コレクタ層を形成する工程を有する半導体装置の製造方法とすることにより、ウエハ割れを低減し、良品率を高くすることに関する記載がある(特許文献3、4)。
【0010】
半導体基板の表面に不純物拡散層を形成後、裏面を削って薄くする工程を有し、裏面側に少なくとも700℃〜950℃の範囲の熱処理を必要とする拡散層の形成工程を施す前に、表面側からの廻りこみ拡散による不純物が貫通しない厚さの酸化膜を前記半導体基板の両面に形成することに関する記述がある(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−251562号公報(要約)
【特許文献2】特開平6−177390号公報
【特許文献3】特許第3969256号公報
【特許文献4】特開2002−261281号公報
【特許文献5】特開2008−103562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前述のように、FS−IGBTの耐圧に必要な厚さの薄いシリコンウエハを、ウエハ工程への投入当初のウエハ厚にすると、ウエハの割れ、欠けが多発し、良品率が極端に低下する。そのため、実際の製造ラインに投入されるウエハの厚さは、割れ欠けを防止するために6インチ径ウエハで厚さ600μm以上、8インチ径ウエハでは厚さ700μm以上が必要とされる。しかも、結晶インゴットからのスライスによりウエハを切り出す際には、たとえば、厚さ725μmのウエハを切り出すためには、図6に示すように、研磨、研削、エッチングなどで失われるスライスロス分は併せて330μmもある。前述のように、耐圧1200VのIGBTに必要な最終的なウエハ厚さは120μmであるので、725μmと120μmの差605μmがロスとなる。従って、1200V用IGBTのウエハ厚120μmの場合、当初からの厚さのロス分を合計すると、ロス分は、前記330μmと前記605μmの和から935μmにもなる。
【0013】
本発明は、以上述べた点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、FZウエハを用いる製造ラインで、投入するウエハのうちFZウエハの厚さを従来のものより薄くしても、ウエハの割れ欠けの頻度を従来と同様の程度に抑えることのできる半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、フローティングゾーン法により形成される8インチ径ウエハ用のシリコン単結晶インゴットから、半導体装置の設計耐圧に少なくとも必要な厚さ以上であって700μm未満のFZウエハを切り出す工程、チョクラルスキー法により形成される8インチ径ウエハ用のシリコン結晶インゴットから、前記FZウエハの厚さと合わせて700μm以上となる厚さのCZウエハを切り出す工程、前記FZウエハと前記CZウエハの、それぞれの一方の主面を相互に貼り合わせて貼り合わせウエハとする工程、前記貼り合わせウエハの前記FZウエハの他方の面を研磨し鏡面化する工程、前記FZウエハの鏡面化された他方の面に所要の半導体領域を形成する工程、前記貼り合わせウエハの前記CZウエハを他方の面から削り落とす工程を含む半導体装置の製造方法とすることにより、前記本発明の目的は達成される。
【0015】
前記所要の半導体領域をMOS表面構造とすることが好ましい。
前記CZウエハを他方の面から削り落とす工程の後に、露出するFZウエハ面にイオン注入によりコレクタ層を形成する工程を追加することが望ましい。
【0016】
前記追加工程を、露出するFZウエハ面にイオン注入によりフィールドストップ層とコレクタ層を形成する工程とすることもより好ましい。
前記CZウエハを他方の面から削り落とす工程において、注入効率が制御されたコレクタ層とするために必要な厚さ分のCZウエハ層を削り残すことも望ましい。
【0017】
また、フローティングゾーン法により形成されるシリコン結晶インゴットから、半導体装置の設計耐圧に少なくとも必要な厚さ以上のFZウエハを切り出す工程、チョクラルスキー法により形成されるシリコン結晶インゴットから、CZウエハを切り出す工程、前記切り出されたFZウエハおよびCZウエハをラッピングする工程、前記ラッピングする工程の後に前記FZウエハの一方の主面を研磨により鏡面とする工程、前記ラッピングする工程の後に前記CZウエハをエッチングする工程、前記CZウエハをエッチングする工程の後に前記CZウエハの一方の主面を研磨して鏡面とする工程、前記FZウエハの鏡面とされた一方の主面と前記CZウエハの鏡面とされた一方の主面とを相互に貼り合わせて貼り合わせウエハとする工程、前記貼り合わせウエハの前記FZウエハの他方の面を鏡面加工する工程、前記鏡面化されたFZウエハの他方の面に所要の半導体領域を形成する工程、前記CZウエハを他方の面から削り落とす工程を含む半導体装置の製造方法とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、FZウエハを用いる製造ラインで、投入するウエハのうちFZウエハの厚さを従来のものより薄くしても、ウエハの割れ欠けの頻度を従来と同様の程度に抑えることのできる半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】シリコン単結晶のインゴットから、結晶ブロックの切り出し、スライスしてウエハを形成するまでの工程を示すシリコン結晶ブロックの斜視図である。
【図2】切り出されたウエハの円周端の面取りおよびラッピング工程を示す断面図である。
【図3】機械化学的研磨、FZウエハとCZウエハの表面処理、貼り合わせ、FZウエハの面取り工程を示す断面図である。
【図4】FZウエハの表面エッチングから、裏面側CZウエハの削り落としおよび裏面側FS層、コレクタ層の形成工程を示す断面図である。
【図5】FS−IGBTの拡大要部断面図である。
【図6】ウエハ工程投入前のFZウエハの厚さとウエハ面の削り代を示す断面図である。
【図7】機械化学的研磨、FZウエハと絶縁膜で被覆されたCZウエハの表面処理、貼り合わせ、FZウエハの面取り工程を示す断面図である。
【図8】FZウエハの表面エッチングから、裏面側の絶縁膜で被覆されたCZウエハの削り落としおよび裏面側FS層、コレクタ層の形成工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の半導体装置の製造方法の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例の記載に限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
シリコン半導体装置に使用されるシリコン半導体基板(以降単にウエハ)の材料となるシリコン単結晶には、ルツボ内のシリコン溶融液にシリコン種結晶を浸し、種結晶を徐々に引き上げて単結晶を成長させるCZ(チョクラルスキー)法と、丸棒状のシリコン多結晶体の周囲に設けた高周波コイルにより多結晶体を円板状に加熱溶融させながら順次下に移動させることにより、単結晶化させるFZ(フローティングゾーン)法が知られている。
【0022】
400Ωcm以下の高抵抗率の8インチ径ウエハ用に結晶成長させて形成された前述のFZ法によるシリコン単結晶インゴットを、その端部を切り落とし、丸棒ブロック100に切り出し(図1(a))、それぞれ、導電型、抵抗率などを測定する。丸棒ブロック100の円周部分を研削して8インチ径に整形し、結晶の方向性を明視可にするためにノッチ101またはオリエンテーションフラットを形成する(図1(b))。
【0023】
ワイヤソー102またはIDブレードソー等でスライスする。たとえば、図6に示すように、スライス後の厚さは280+100で380μmのFZウエハとする(図1(c))。8インチウエハの場合、ラッピング後の厚さが300μmより薄くなるウエハは、加工途中テンプレートから飛び出して破損する危険がある。よって、ラッピングで両面から40μmづつ削って300μmの厚さとした。例えば、このラッピング工程の段階で、1800V耐圧のFS−IGBTの場合必要な180μmのような薄い厚さに、いきなり加工することはできない。
【0024】
従来の方法では、このスライス後の段階のウエハ厚さは725+160で885μmとしている。
スライスして切り出したFZウエハ103の円周部分の面取りをする(図2(d))。ウエハをラッピング盤104に載せて両面をラッピングし、前述のように、両面からそれぞれ40μmの厚さを減厚する(図2(e))。FZウエハ103の一方の面を機械化学的研磨装置105により、20μm研磨し鏡面とすると、FZウエハ103の厚さはスライス後の前記380μmからラッピングと機械化学的研磨により合わせて100μm薄くなって280μmとなる((図3(f))。
【0025】
図6に示すように、従来の方法では、ラッピング工程以降、機械化学的研磨された725μmのFZウエハとするまでに、ラッピングによるダメージの除去を目的とするエッチング工程が含まれているが、本発明にかかる方法では、削除してもよい。その理由は、従来の方法では、ラッピング工程後に、半導体領域としてMOS構造を形成する側は、研削、研磨を行い鏡面にする工程があるが、裏面は、ラッピング工程の後は、エッチングを行うのみである。ここでのエッチングは、混酸系の場合とアルカリ系の場合とが有る。混酸系のエッチャントでは、一般に弗酸、硝酸、酢酸の混液が利用される。また、アルカリ系のエッチャントでは、水酸化カリウム水溶液が利用される。いずれの場合も50℃から60℃程度に加熱して用いられる事が多い。混酸系のエッチャントを用いる場合、表面に局所的なラップ痕が有る場合でも、概ね一様にエッチングされ痕跡が残り難い。アルカリ系のエッチャントを用いる場合、平坦度は概して良好に仕上がるが、ラップ痕などの局所的な欠陥は選択的にエッチングされ易い。その為、アルカリ系のエッチャントを使用する場合、続けて研削が適用される事が多い。混酸系とアルカリ系のエッチャントは、適宜必要な平坦度に応じて選択すれば良い。
【0026】
エッチングを行わない場合、ラッピングされた表面が露出されており、素子形成工程において、加工面に形成されるダメージ層に研磨砥粒が残り易く、工程途中で脱離し汚染の原因となったり、加工ダメージ層自体が脱落し汚染源となる等の問題がある。
【0027】
一方、本発明にかかる方法では厚さ280μmのウエハの裏面にCZウエハを貼り付けるので、機械化学的研磨による鏡面化は必要であるが、ラッピングにより形成されたダメージが残っていても前述の問題は発生しない。表面側はCZウエハの貼り付け後に研削、機械化学的研磨工程を加えてウエハの厚さを調整してからMOS表面構造を形成するので、CZウエハの貼り付け工程の前ではラップされたままでもよく、従来のように、研削、機械化学的研磨工程をする必要が無い。また、CZウエハと貼り合わせた後280μmの厚さから減厚されることになるので、その分、従来の方法より、シリコン単結晶インゴットからのスライスウエハの厚さを薄くできるのである。
【0028】
次に、スライス、ラッピング、ラッピングによるダメージ除去のためのエッチングを行い、その後、一方の面を必要に応じて研削を行い、一方の面を機械化学的研磨により鏡面化した厚さ505μmの8インチ径のCZウエハ106を用意する。このCZウエハは、FZウエハより安価でまた入手が容易である。前述した厚さ280μmのFZウエハと厚さ505μmのCZウエハに対して、それぞれ親水性の清浄な表面にするために、よく知られたSC−1、SC−2洗浄処理をする(図3(g))。
【0029】
SC−1、SC−2処理とは、パーティクル除去を目的とするアンモニア水と過酸化水素からなるSC−1(Standard Clean−1)と金属不純物の除去を目的とする塩酸と過酸化水素からなるSC−2(Standard Clean−2)とを組み合わせた洗浄方法である。ここで、さらに図7、図8に示すように、CZウエハに膜厚4μm程度の酸化膜107を形成することにより、FZウエハとCZウエハとの貼り付け、接着をより容易に、確実にすることも好ましい。この場合は、本発明ではSOI基板の作成を目的とするものではないので、表面側にMOS構造を形成後、CZウエハとFZウエハの界面に挟まれている厚い酸化膜およびCZウエハをすべて削り落とし、確実にFZウエハの裏面を露出させてから、コレクタ層およびFS層を形成することが望ましい。
【0030】
洗浄後、FZウエハとCZウエハのそれぞれの鏡面を対向させるようにして貼り合わせる。O2雰囲気で1100℃、2時間程度の熱処理およびアニール処理を加え、貼り合わせの接合界面のシロキサン結合を促進させて前記FZとCZの2ウエハを一体化する(図3(h))。貼り合わせたウエハの厚さは785μmとなる。貼り合わせウエハのうち、FZウエハ103の支持体となるCZウエハ106の直径を減じないように、FZウエハ103のみの円周部分をメサ状(台形状に)に面取りを施す。面取りの切り込み幅は0.5mm〜5mm程度が好ましい(図4(i))。続いて、ウエハ全面を水酸化カリウム水溶液やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)等により約10μmエッチングして歪を除去する(図4(j))。
【0031】
FZウエハ103の露出面側を、30μm研削し、その後機械化学的研磨により20μm研磨し、鏡面化することにより725μmの貼り合わせウエハを得る(図4(k))。ここで、研削は必要に応じて行えばよく行わなくてもよい場合もある。研削を行わない場合は、その分CZウエハの厚さを厚く形成しておけばよい。貼り合わせウエハの厚さは、8インチ径のウエハの場合は、700μm以上で725μm程度までとすることが望ましい。5インチ径または6インチ径のウエハの場合は、600μm以上で625μm程度までとすることが望ましい。
【0032】
次に、貼り合わせウエハをウエハ工程に投入し、鏡面化したFZウエハ103面に、よく知られたIGBTの表面側MOS構造(図4には図示せず)を形成する(図4(l))。IGBTの構造については、図4では明示することは難しいので、省略したが、図5にIGBTの要部断面図を示す。図5ではIGBTの前記表面側MOS構造を、p型ベース層2、n型エミッタ領域3、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5、トレンチ6、層間絶縁膜7、エミッタ電極10により示す。次に、貼り付けウエハの裏面側のCZウエハ106を研削および研磨、エッチングを適宜行うことにより削り落としてFZウエハ103の裏面を露出させる(図4(m))。ここでの研削、研磨およびエッチングは、半導体装置の設計耐圧に必要なウエハ厚になるように薄くする。FZウエハ103として最終的に必要な厚さは耐圧1200Vで厚さ120μm、600Vで厚さ60μm程度である。
【0033】
n型の不純物としてリンを用い、p型不純物としてボロンを用い、FZウエハ103の裏面からイオン注入と必要に応じて熱拡散させて深さ5μm程度のFS層(図5のFS層8)と、このFS層の表面に深さ0.5μm程度のp型コレクタ層(図5のp型コレクタ層9))を形成する。さらに、このp型コレクタ層の表面にアルミニウム、チタン、ニッケル、金の順に4層構造の周知のコレクタ電極(図5のコレクタ電極11)をスパッタ法などの通常の方法により形成すると、FS−IGBTのウエハが完成する(図4(n))。
【0034】
以上の説明ではFS−IGBTを用いたが、裏面側にFS層の無いNPT−IGBTとすることもできる。その場合、FZウエハの厚さを、少なくとも設計耐圧時に空乏層が主接合から延びる最大幅以上のドリフト層厚さを含む厚さにする必要がある。また、p型コレクタ層については前述と同様に裏面側のCZウエハを削り落してから、イオン注入により形成することもできるが、p型CZウエハを用い、前述のようにCZウエハを削り落とす際に、すべて削り落とさないで、0.5μm程度薄く残してp型コレクタ層とすることもできる。この場合、表面側MOS構造を形成する前に、設計耐圧に必要なウエハの厚さに削っておく必要がある。
【0035】
以上、説明した実施例で、FS−IGBTを製造するために、8インチ径のFZウエハを用いて製造するウエハ工程では、ウエハ工程に投入する当初のFZウエハの厚さを、割れ、欠けを防ぐために通常必要とされる725μmより薄い280μmの厚さにしても、FZウエハに安価なCZウエハを貼り付けることにより、ウエハの割れ欠けの頻度を従来と同様の程度に抑えることができる。
【0036】
また、FZ結晶からのウエハの取れ数を増やすことが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
2 p型ベース層
3 n型エミッタ領域
4 ゲート絶縁膜
5 ゲート電極
6 トレンチ
7 層間絶縁膜
8 FS層
9 p型コレクタ層
10 エミッタ電極
11 コレクタ電極
100 丸棒ブロック
101 ノッチ
102 ワイヤソー
103 FZウエハ
104 ラッピング盤
105 機械化学的研磨装置
106 CZウエハ
107 酸化膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローテイングゾーン法により形成される8インチ径ウエハ用のシリコン結晶インゴットから、半導体装置の設計耐圧に必要な厚さ以上であって700μm未満のFZウエハを切り出す工程、チョクラルスキー法により形成される8インチ径ウエハ用のシリコン結晶インゴットから、前記FZウエハの厚さと合わせて700μm以上となる厚さのCZウエハを切り出す工程、前記FZウエハと前記CZウエハの、それぞれの一方の主面を相互に貼り合わせて貼り合わせウエハとする工程、前記貼り合わせウエハの前記FZウエハの他方の面を研磨し鏡面化する工程、前記FZウエハの鏡面化された他方の面に所要の半導体領域を形成する工程、前記CZウエハを他方の面から削り落とす工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記所要の半導体領域がMOS表面構造であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記CZウエハを他方の面から削り落とす工程の後に、露出するFZウエハ面にイオン注入によりコレクタ層を形成する工程を追加することを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記露出するFZウエハ面にイオン注入によりフィールドストップ層とコレクタ層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記CZウエハを他方の面から削り落とす工程において、注入効率が制御されたコレクタ層とするために必要な厚さ分のCZウエハ層を削り残すことを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
フローテイングゾーン法により形成されるシリコン結晶インゴットから、半導体装置の設計耐圧に必要な厚さ以上のFZウエハを切り出す工程、チョクラルスキー法により形成されるシリコン結晶インゴットから、CZウエハを切り出す工程、前記切り出されたFZウエハおよびCZウエハをラッピングする工程、前記ラッピングする工程の後に前記FZウエハの一方の主面を研磨により鏡面とする工程、前記ラッピングする工程の後に前記CZウエハをエッチングする工程、前記CZウエハをエッチングする工程の後に前記CZウエハの一方の主面を研磨して鏡面とする工程、前記FZウエハの鏡面とされた一方の主面と前記CZウエハの鏡面とされた一方の主面とを相互に貼り合わせて貼り合わせウエハとする工程、前記貼り合わせウエハの前記FZウエハの他方の面を鏡面加工する工程、前記鏡面化された前記FZウエハの他方の面に所要の半導体領域を形成する工程、前記CZウエハを他方の面から削り落とす工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。




【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−49384(P2011−49384A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196953(P2009−196953)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)