説明

半導体装置を製造する製造装置及び半導体装置を製造する製造方法

【課題】従来の接合装置では、電極の平坦化及びCMP処理以降の工程における接合面酸化により、十分な接合を達成できないことがあった。
【解決手段】複数の半導体基板がそれぞれの接合面で接合されて積層された半導体装置を製造する製造装置は、接合面を活性化する活性化装置と、活性化装置により活性化され、かつ、重ね合わされた複数の半導体基板を、加圧及び加熱の少なくともいずれかにより接合する接合装置と、活性化装置による活性化から接合装置による接合に至る間の、接合面が酸化される酸化雰囲気に曝されることによる酸化の進行度合いを推定する酸化推定手段を含む制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置を製造する製造装置及び半導体装置を製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯電子機器の製造にとって、メモリ、MPU等の電子部品を高密度に実装する技術は最も重要な技術の一つである。このための技術としてフリップチップ実装技術の開発が従来から行われており、最近ではこの技術を利用して半導体チップを積層して更なる高密度電子装置を得るための開発が盛んに行われている。このフリップチップ技術による実装では半導体チップを配線基板に接合するとき、あるいは、半導体チップを半導体チップ上に重ねて接合するときに、接合電極としてバンプを形成することが行われている。このバンプ形成にあたっては、電極材として金、銀、アルミニウム等が使用されているが、導電性、及び酸化されにくいという点、更に価格の点から銅が一般的に使用されている。
【0003】
このような電極接合を行う一般的な方法として加圧と加熱による拡散接合方式がとられている。しかしながら、電極接合をチップレベルで行う場合には問題ないが、ウェハレベルで接合を行う場合には接合物間の熱膨張率の違いによる電極位置ずれの問題が発生する。この問題点を解消する方法として、加熱により生じる熱膨張を伴わない常温接合方式が検討されている。この方式は物質が本来有している原子間結合力を利用するもので、接合面を清浄して接合面どうしを数nm以下の間隔にすることにより実現される。したがって、この接合方法を用いる場合の条件は、(1)接合面が平坦面であること、(2)接合面には酸化層、及び異物の付着がないこと、である。このような条件を満足させた接合装置が、例えば特許文献1に提案されている。
【特許文献1】特開平1−148481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の接合装置では、電極の平坦化及びCMP(Chemical Mechanical Polishingの略:化学的機械的研磨法)処理以降の工程における電極表面酸化により、十分な接合を達成できないことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、複数の半導体基板がそれぞれの接合面で接合されて積層された半導体装置を製造する製造装置であって、接合面を活性化する活性化装置と、活性化装置により活性化され、かつ、重ね合わされた複数の半導体基板を、加圧及び加熱の少なくともいずれかにより接合する接合装置と、活性化装置による活性化から接合装置による接合に至る間の、接合面が酸化される酸化雰囲気に曝されることによる酸化の進行度合いを推定する酸化推定手段を含む制御部と、を備える。
【0006】
また、本発明の第2の態様においては、複数の半導体基板がそれぞれの接合面で接合されて積層された半導体装置を製造する製造方法であって、接合面を活性化する活性化ステップと、活性化ステップにより活性化され、かつ、重ね合わされた複数の半導体基板を、加圧及び加熱の少なくともいずれかにより接合する接合ステップと、活性化ステップによる活性化から接合ステップによる接合に至る間の、接合面が酸化される酸化雰囲気に曝されることによる酸化の進行度合いを推定する酸化推定ステップと、推定ステップにより推定した酸化の進行度合いにより、推定後のプロセスを変更する変更ステップと、を備える。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
はじめに、常温近傍における活性化接合(Surface Activated Bonding)について説明する。なお、以下において電極金属とは、特に具体的な記載をしない限り、積層するウェハの接合面における接触部である金属を言う。例えば、ウェハの表面に形成された配線パターン、バンプなどが相当する。したがって、「接合面を接合する」という場合、これらの表面金属同士が接合することを意味する。
【0010】
CMPにより平坦化された表面は一般的には研磨前に存在していた表面酸化層は除去され、電極金属の表面が露出される。しかし、研磨工程の研磨により露出した金属面も、大気中に曝されると再び酸化されていく。例えば、銅の場合、時間と共に、電極金属の表面に亜酸化銅CuOからなる酸化層が形成される。この状態では、表面に凹凸が生じ、亜酸化銅が生じる前後で表面の銅材には体積変化が生じる。酸化によってCuOが生じると、体積が2.67倍になる。この結果、表面近くの銅の原子が亜酸化されるに伴って表面粗さが増加することになる。そして、表面は亜酸化銅層に覆われた凸凹状態となる。また、活性なCu原子が露出している活性化表面は、酸化が進行することによりCuOで覆われて不活性な面となる。この凸凹状態、不活性な状態の接合面を接触、加圧しても接合面間には本来の原子間力が作用しないことになり、常温活性化接合はできない。
【0011】
次工程の活性化工程では、例えばアルゴンイオンの照射によりスパッタ作用を受けてこの表面の亜酸化銅層を除去する。この場合、表面の平面度の低下が極力抑えられるように亜酸化銅層のみを除去して、活性な銅が表面に現れるように制御される。そして、この活性化工程を行う活性化装置は、チャンバ内の雰囲気を所定の状態に設定できるので、ウェハがこのチャンバ内に載置されている限り酸化されない又は酸化の進行を極めて遅くすることができる。
【0012】
しかし、次工程であるウェハどうしの重ね合わせ等を行うアライメント工程においては、重ね合わせ等を行うアライメント装置のチャンバ内を、銅の酸化を阻止する雰囲気にすることが困難である。これは、ウェハどうしの厳密な位置合わせを行うために必要なステージの存在等による。したがって、アライメント工程においては、ウェハの酸化が再び進行することになる。
【0013】
次工程の接合工程は、重ね合わせたウェハを接合装置に搬入して行う。接合装置は、活性化装置と同じく、チャンバ内の雰囲気を所定の状態に設定できるので、ウェハを接合装置内に搬入すれば、再び酸化の進行を食い止めることができる。上述の通り、時間と共に電極金属の表面に亜酸化銅CuOが形成されるので、アライメント工程を短時間で通過すれば、不活性な亜酸化銅層の成長を抑え、表面の凸凹を一定のレベル内に抑制することができる。表面の不活性な亜酸化銅層の厚さである酸化膜厚、及び亜酸化銅層の凸凹である表面粗さが一定のレベル内であれば、常温活性化接合に近い条件での接合、すなわち、一般的な拡散接合方式における加圧圧力、加熱温度までは必要としない接合ができる。
【0014】
次に、本実施の形態に係る半導体装置を製造する製造装置について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る製造装置100の概略構成図である。製造装置100は、異なる工程をそれぞれ担う構成装置として研磨装置200、活性化装置300、アライメント装置400及び接合装置500を備える。更に製造装置100は、これら構成装置間を接続する空間であるロードロックチャンバ610、620、630と、各構成装置及び各ロードロックチャンバを制御する制御盤700を備える。
【0015】
各ロードロックチャンバには、ウェハもしくはウェハホルダを搬送する搬送装置670が配置されている。なお、ここで言うウェハホルダは、ウェハを保持した状態のウェハホルダも含むものとする。搬送装置670は複数の腕部671を有し、その接続部においてアクチュエータを備えている。このアクチュエータの作用により、搬送装置670は、その把持部672で把持した例えばウェハ680を回転もしくは進退させ、隣接する構成装置に搬入し、もしくは隣接する構成装置から搬出する。また、搬送装置670は把持部672の付け根にもアクチュエータを備えており、把持部672がウェハもしくはウェハホルダを保持した状態で、把持部672を回転させ、ウェハもしくはウェハホルダを反転させることができる。
【0016】
把持部672は、ウェハもしくはウェハホルダを吸着可能なように真空、負圧による吸引部を備えており、この吸引部による吸引を制御することによりウェハもしくはウェハホルダを着脱する。なお、把持部672による把持は、吸引に限らず、例えば静電吸着により吸着するように構成しても良い。
【0017】
搬送装置670は、以上のような動作により、ウェハもしくはウェハホルダを隣接する構成装置間で搬送し、かつ、上向きもしくは下向きである予定された向きで各構成装置に引き渡すことができる。なお、搬送装置670の動作は、制御部である制御盤700からの指示により制御される。
【0018】
各ロードロックチャンバの隣接する構成装置との境界には、それぞれゲートバルブが設けられている。具体的には、ロードロックチャンバ610と研磨装置200、活性化装置300との間にはそれぞれゲートバルブ611、612が、ロードロックチャンバ620と活性化装置300、アライメント装置400との間にはそれぞれゲートバルブ621、622が、ロードロックチャンバ630とアライメント装置400、接合装置500との間にはそれぞれゲートバルブ631、632が設けられている。それぞれのゲートバルブは、制御盤700からの指示により開閉される。
【0019】
各ロードロックチャンバは、隣接するそれぞれの構成装置における加工雰囲気が異なる場合に、構成装置間でウェハもしくはウェハホルダを問題なく受け渡しするために配置されている。例えば、研磨装置200において大気中で処理されるウェハ680を、真空雰囲気である活性化装置300に取り込む場合、まず、ゲートバルブ612を閉じた状態でゲートバルブ611を開いて、ウェハ680をロードロックチャンバ610内に搬送する。そして、ゲートバルブ611を閉じてロードロックチャンバ610内を接続されている真空装置により真空化する。所定の真空度になったときに、ゲートバルブ612を開いてウェハ680を真空状態の隣接する活性化装置に移す。このような動作により、研磨装置200において大気中に置かれたウェハを、真空状態である活性化装置300に、活性化装置の真空状態を保ったまま、移すことができる。
【0020】
ゲートバルブ601は、外部装置と研磨装置200との境界に設けられ、また、ゲートバルブ641は、接合装置500と外部装置との境界に設けられている。これらのゲートバルブは、加工前後のウェハ、及びウェハホルダの搬入出の時に開閉されるものであり、外界の塵埃の侵入を防ぎ、製造装置100内の加工雰囲気を保つ役割を担う。
【0021】
制御盤700は、各構成装置及び各ロードロックチャンバを制御すると共に、製造装置100内で加工中のウェハ、及び加工中のウェハを保持するウェハホルダの管理も行う。特に、加工されるウェハごとに、ロードロックチャンバ620の内部がアライメント装置400と同等の雰囲気になった時点から、ロードロックチャンバ630の内部が接合装置500と同等の雰囲気になった時点までを計時する計時部を備える。つまり、加工されるウェハが、銅の酸化が進行する雰囲気に曝される時間を計時する計時部を備える。そして、制御盤700は、この計時部によって計時された時間によりその後の処理を変更する判断を行い、その処理を実行する指示を各構成要素および各ロードロックチャンバに対して送信する。具体的な判断、及びその後の処理の変更については後述する。
【0022】
次に各構成装置について説明する。図2は、研磨装置200の構造を模式的に示す断面図である。本実施形態においては、研磨装置200として例えば液体供給装置を備えるCMP装置を用いる。研磨装置200は、被研磨物であるウェハWをその表面が上向きに露出する状態で吸着により保持する回転定盤205と、この回転定盤205の上方に設置され、回転定盤205に保持されたウェハWの表面である被研磨面と対向する研磨パッド221を下面に有した研磨ヘッド220とを備えて構成されている。この研磨装置200では、研磨パッド221の直径はウェハWの直径よりも小さく、研磨パッド221をウェハWに上方から接触させた状態で双方を相対移動させることによりウェハWの表面全体を研磨できるようになっている。ウェハWは外部装置から搬入され、回転定盤205に載置される。なお、ここでウェハWは単独の1枚の状態で回転定盤205に載置されてその表面が研磨されても良いし、すでに積層されたウェハが載置されてその最外面を構成するウェハの表面が研磨されても良い。
【0023】
回転定盤205及び研磨ヘッド220を支持する支持フレーム202は、水平な基台203と、この基台203上に紙面に垂直な方向であるY方向に延びて設けられたレール上を移動自在に設けられた第1ステージ206と、この第1ステージ206から垂直に延びて設けられた垂直フレーム207と、この垂直フレーム207上を移動自在に設けられた第2ステージ208と、この第2ステージ208から水平に延びて設けられた水平フレーム209と、この水平フレーム209上を移動自在に設けられた第3ステージ210とを有して構成されている。
【0024】
第1ステージ206内にはモータM1が設けられており、これを制御装置により回転駆動することにより第1ステージ206を上記レールに沿って、すなわちY方向に移動させることができる。第2ステージ208内にはモータM2が設けられており、これを制御装置により回転駆動することにより第2ステージ208を垂直フレーム207に沿って、すなわちZ方向に移動させることができる。また、第3ステージ210内にはモータM3が設けられており、これを制御装置により回転駆動することにより第3ステージ210を水平フレーム209に沿って、すなわちX方向に移動させることができる。このため、モータM1、M2、M3の回転動作を組み合わせることにより、第3ステージ210を回転定盤205上方の任意の位置に移動させることができる。
【0025】
回転定盤205は、基台203上に設けられたテーブル支持部204から上方に延びて設けられた回転軸211の上端部に水平に取り付けられている。この回転軸211はテーブル支持部204内に設けられたモータM4を制御装置により回転駆動することによりZ軸回りに回転させることができ、これにより回転定盤205をXY面内で回転させることができる。
【0026】
研磨ヘッド220は第3ステージ210から下方に延びて設けられたスピンドル216の下端部に取り付けられている。このスピンドル216は第3ステージ210内に設けられたモータM5を制御装置により回転駆動することによりZ軸回りに回転させることができ、これにより研磨ヘッド220全体を回転させて研磨パッド221をXY面内で回転させることができる。また、スピンドル216は第3ステージ210内に設けられた研磨ヘッド220を昇降移動させる昇降機構としてのエアシリンダ217の駆動により上下方向に移動可能となっている。
【0027】
回転定盤205に載置されたウェハWに対し、所定の接触圧で研磨パッド221を押し当て、モータM1、M2を駆動して研磨ヘッド220をXY方向に揺動させる。ウェハWの研磨中には、研磨液供給装置より研磨液であるシリカ粒を含んだスラリーを圧送して研磨パッド221の下面側に研磨液が供給される。このようにウェハWの表面は、研磨液の供給を受けつつウェハW自身の回転運動と研磨ヘッド220の、すなわち研磨パッド221の回転及び揺動運動とにより満遍なく研磨される。
【0028】
なお、研磨装置200は、研磨するCMP装置本体に連続して、研磨後のウェハWを洗浄する洗浄装置および洗浄後のウェハWを乾燥する乾燥装置を備えている。したがって、搬送装置670によってロードロックチャンバ610へ搬出されるウェハWは、研磨された後に洗浄及び乾燥を施された、異物の付着のないウェハである。ただし、研磨装置200において加工されるウェハは、大気もしくは乾燥工程中のIPA(Isopropyl Alcohol)蒸気、窒素混合ガス等に曝された状態にあるので、研磨直後から酸化が進行する。
【0029】
図3は、活性化装置300の一例としての第1の活性化装置310の構造を模式的に示す断面図である。第1の活性化装置310は、前段の研磨工程との接続に関してロードロックチャンバ610と隣接しており、その境界にはゲートバルブ612が設けられている。また、後段のアライメント工程との接続に関してロードロックチャンバ620と隣接しており、その境界にはゲートバルブ621が設けられている。また、この第1の活性化装置310に真空装置380を取り付けて、チャンバ内の雰囲気を所定の状態に設定できるようになっている。チャンバ内の雰囲気を大気圧より低圧である所定の真空度の状態に設定することで、酸化されない又は酸化の進行を極めて遅くすることができる。
【0030】
第1の活性化装置310は、ウェハWをその表面が上向きに露出する状態で吸着により保持する回転定盤305を備える。回転定盤305は、テーブル支持部304から上方に延びて設けられた回転軸303の上端部に水平に取り付けられている。この回転軸303はテーブル支持部304内に設けられたモータMを制御装置により回転駆動することによりZ軸回りに回転させることができ、これにより回転定盤305をXY面内で回転させることができる。
【0031】
第1の活性化装置310は、回転定盤305に保持され、回転されるウェハWに対して、流入された不活性ガスをイオンガン311によりイオン化した粒子を照射する。不活性ガスとしてはアルゴンガスが一般的である。これにより、ウェハWの表面の亜酸化銅層が除去される。この第1の活性化装置310としては、例えば、ビーコ社のイオン照射装置を用いることができる。
【0032】
図4は、活性化装置300の別の一例としての第2の活性化装置320の構造を模式的に示す断面図である。第1の活性化装置310は、前段の研磨工程との接続に関してロードロックチャンバ610と隣接しており、その境界にはゲートバルブ612が設けられている。また、後段のアライメント工程との接続に関してロードロックチャンバ620と隣接しており、その境界にはゲートバルブ621が設けられている。また、この第1の活性化装置310に真空装置380を取り付けて、チャンバ内の雰囲気を所定の状態に設定できるようになっている。チャンバ内の雰囲気を所定の状態に設定することで、酸化されない又は酸化の進行を極めて遅くすることができる。
【0033】
第2の活性化装置320は、ウェハWをその表面が上向きに露出する状態で吸着により保持する回転定盤305を備える。回転定盤305は、テーブル支持部304から上方に延びて設けられた回転軸303の上端部に水平に取り付けられている。この回転軸303はテーブル支持部304内に設けられたモータMを制御装置により回転駆動することによりZ軸回りに回転させることができ、これにより回転定盤305をXY面内で回転させることができる。
【0034】
第2の活性化装置320は、流入された不活性ガスを放電電極321、322、放電電源323によりプラズマ状態にし、このプラズマ中に回転定盤305に保持され、回転されるウェハWを置くことにより洗浄活性化する。これにより、ウェハWの表面の亜酸化銅層が除去される。
【0035】
図5は、アライメント装置400の構造を模式的に示す断面図である。アライメント装置400は、枠体411の内側に配された固定ステージ421、移動ステージ422及び昇降部460を備える。アライメント装置400は、前段の活性化工程との接続に関してロードロックチャンバ620と隣接しており、その境界にはゲートバルブ622が設けられている。また、後段の接合工程との接続に関してロードロックチャンバ630と隣接しており、その境界にはゲートバルブ631が設けられている。アライメント装置400には、チャンバ内をN2雰囲気にするための調整器480が備えられている。なお、アライメント装置400は調整器480を備えてない場合も想定され、その場合は大気に曝されることになる。
【0036】
枠体411は、互いに平行で水平な天板412及び底板416と、天板412及び底板416を結合する複数の支柱414とを備える。天板412、支柱414及び底板416は、それぞれ高剛性な材料により形成され、内部機構の動作に係る反力が作用した場合も変形を生じない。
【0037】
固定ステージ421は、天板412の下面に固定され、ウェハホルダWHに保持されたウェハWを下面に保持する。ウェハWは、静電吸着により、ウェハホルダWHの下面に保持されて、後述するアラインメントの対象の一方となる。
【0038】
移動ステージ422は、底板416の上に載置され、底板416に対して固定されたガイドレール452に案内されつつX方向に移動するXステージ454と、Xステージ454の上でY方向に移動するYステージ456とを有する。これにより、移動ステージ422に搭載された部材を、XY平面上の任意の方向に移動できる。
【0039】
昇降部460は、移動ステージ422上に搭載され、シリンダ462及びピストン464を有する。ピストン464は、外部からの指示に応じて、シリンダ462内をZ方向に昇降する。ピストン464の上面には、ウェハホルダWHが保持される。更に、ウェハホルダWH上にウェハWが保持される。当該ウェハWは、後述するアラインメントの対象の一方となる。
【0040】
なお、ウェハWは、その表面(図上では下面)に、アラインメントの基準となるアラインメントマークMを有する。ただし、アラインメントマークMは、そのために設けられた図形等であるとは限らず、ウェハWに形成された配線、バンプ、スクライブライン等でもあり得る。
【0041】
アライメント装置400は、更に、一対の顕微鏡442、444と、反射鏡472とを有する。一方の顕微鏡442は、天板412の下面に、固定ステージ421に対して所定の間隔をおいて固定される。
【0042】
他方の顕微鏡444及び反射鏡472は、移動ステージ422に、昇降部460と共に搭載される。これにより顕微鏡444及び反射鏡472は、昇降部460と共に、XY平面上を移動する。移動ステージ422が静止状態にある場合、顕微鏡444及び反射鏡472と昇降部460とは既知の間隔を有する。また、昇降部460の中心と顕微鏡444との間隔は、固定ステージ421の中心と顕微鏡442との間隔に一致する。
【0043】
アライメント装置400が図示の状態にある場合に、顕微鏡442、444を用いて、対向するウェハWのアラインメントマークMを同時にもしくは別々に観察できる。従って、例えば、顕微鏡442により得られた映像から、移動ステージ422に載置されたウェハWの正確な位置を知ることができる。また、顕微鏡444により得られた映像から、固定ステージ421に載置されたウェハWの正確な位置を知ることができる。
【0044】
反射鏡472は、干渉計等の計測装置を用いて移動ステージ422の移動量を測定する場合に用いられる。なお、図4では、紙面に直角に配された反射鏡472が示されるが、Y方向の移動を検出する他の反射鏡472も装備している。
【0045】
図6は、アライメント装置400の動作を示す図である。同図に示すように、移動ステージ422がX方向に移動される。ここで、移動ステージ422の移動量を、昇降部460の中心と顕微鏡444の中心との間隔と同じにすることにより、移動ステージ422上のウェハWが、固定ステージ421に保持されたウェハWの直下に搬送される。このとき、上下のウェハWのアラインメントマークMは、ひとつの鉛直線上に位置する。
【0046】
この状態で互いのウェハWが接触するまで昇降部460を押し上げ、ウェハホルダWHに設けられた吸着子を作用させることにより、2枚のウェハを正確な位置合わせをした状態で固定することができる。この状態では、2枚のウェハホルダが、2枚のウェハを挟み込んだ状態で一体的に固定されている。
【0047】
なお、ここでは単に2枚のウェハを位置合わせするものとして説明したが、他方がすでに積層されたウェハであっても良い。積層されたウェハであっても、その表面にはアライメントマークMが存在するので、同様に位置合わせができる。
【0048】
図7は、接合装置500の概略構成を示す側断面図である。この図に示すように、接合装置500は、枠体544の内側に配置された、押圧部546、加圧ステージ548、受圧ステージ550、圧力検知部552を備える。接合装置500は、前段のアライメント工程との接続に関してロードロックチャンバ630と隣接しており、その境界にはゲートバルブ632が設けられている。また、さらに後段の工程である外部装置との接続に関して、その境界にはゲートバルブ641が設けられている。
【0049】
枠体544は、互いに平行で水平な天板554及び底板556と、天板554及び底板556を結合する複数の支柱558とを備える。天板554、支柱558及び底板556は、ウェハW及びウェハホルダWHへの加圧の反力が作用した場合に変形が生じない程度の剛性を有する。また、この接合装置500に真空装置590を取り付けて、チャンバ内の雰囲気を所定の状態に設定できるようになっている。チャンバ内の雰囲気を所定の状態に設定することで、酸化されない又は酸化の進行を極めて遅くすることができる。
【0050】
枠体544の内側において、底板556の上には、押圧部546が配置される。押圧部546は、底板556の上面に固定されたシリンダ560と、シリンダ560の内側に配置されたピストン562とを有する。ピストン562は、図示されていない空圧駆動部により駆動されて、図中に矢印Zにより示す、底板556に対して直角な方向に昇降する。
【0051】
ピストン562の上端には、加圧ステージ548が搭載される。加圧ステージ548は、ピストン562の上端に結合された水平な板状の支持部566と、支持部566に平行な板状の基板保持部568とを有する。
【0052】
基板保持部568は、複数のアクチュエータ567を介して、支持部566から支持される。アクチュエータ567は、図示された一対のアクチュエータ567の他に、紙面に対して前方及び後方にも配置される。また、これらアクチュエータ567の各々は、相互に独立して動作させることができる。このような構造により、アクチュエータ567を適宜動作させることにより、基板保持部568の傾斜を任意に変えることができる。また、基板保持部568は、ヒータ570を有しており、当該ヒータ570により加熱される。
【0053】
アライメント装置400で位置合わせされた2枚のウェハWを挟み込んで一体となっている2枚のウェハホルダWHは、ロードロックチャンバ630に設置された搬送装置670により、基板保持部568に載置される。載置されたウェハホルダWHは、真空吸着等により基板保持部568の上面に吸着される。これにより、ウェハWは、ウェハホルダWH及び基板保持部568と共に揺動する一方、基板保持部568からの移動あるいは脱落を防止される。
【0054】
受圧ステージ550は、基板接触部572及び複数の懸架部574を有する。懸架部574は、天板554の下面から垂下される。基板接触部572は、懸架部574の下端近傍において下方から支持され、加圧ステージ548に対向して配置される。基板接触部572は、ヒータ576を有する。
【0055】
基板接触部572は、下方から懸架部574により支持される一方、上方への移動は規制されない。ただし、天板554及び基板接触部572の間には、複数のロードセル578、580、582が挟まれる。複数のロードセル578、580、582は、圧力検知部552の一部を形成して、基板接触部572の上方移動を規制すると共に、基板接触部572に対して上方に印加された圧力を検出する。
【0056】
ウェハW及びウェハホルダWHが基板保持部568に載置された状態で押圧部546を駆動すると、加圧ステージ548が受圧ステージ550に向かって上昇して、2枚のウェハWを挟み込んで一体となっている2枚のウェハホルダWHを押圧する。さらに、押圧中に、ヒータ570、576により加圧ステージ548及び受圧ステージ550を加熱することで、ウェハW同士の接合が行われる。
【0057】
接合装置500の加圧圧力および加熱温度は、制御盤700からの制御により設定される。この加圧圧力および加熱温度は、一般的な拡散接合方式に比較して低圧、低温に設定され、常温活性化接合に近い条件で接合される。設定圧力及び設定温度は、ウェハWの表面の酸化膜厚及び表面粗さに依存するものであり、例えば、表面粗さが4nmであるときには、Cu−Cu接合に対して、1kPa、250℃が設定される。
【0058】
本実施形態における図1に示す製造装置100は、各構成装置間にロードロックチャンバを設けて、直列的に配置している。しかし、各構成装置のレイアウトはこれに限られるものではない。例えば一つのロードロックチャンバに一つの搬送装置を設置して、各構成装置はこのロードロックチャンバに接続するように、つまり、並列的に配置しても良い。この場合は、搬送装置を共有することができ、また、ロードロックチャンバと各構成装置との境界に設けるゲートバルブの数も削減することができる。また、スループットを向上を図ることを目的として、各構成装置を複数設けても良い。例えば、接合装置500を複数台設ければ、一の接合に並行して、他の接合を行うことができる。
【0059】
次に、互いに接合されるウェハが、それぞれ研磨されてから接合されるまでの加工手順について2つの実施例を用いて説明する。なお、以下の説明において、ウェハホルダの着脱、及び各ゲートバルブの開閉などの付随する作業については、特に必要な場合を除き説明を省略するが、必要に応じてこのような作業を経るものとする。また、3枚以上のウェハを接合してなる半導体装置を製造する場合は、既に2枚以上が接合して積層されたウェハに、新たな一枚のウェハを接合することになるが、以下の実施例においては、このような場合も含むものとする。
【0060】
(第1実施例)
図8は、第1実施例を示すフロー図である。まず1枚目のウェハであるウェハ1が外部装置から研磨装置200に搬入され、ステップS101で、研磨装置200によりウェハ1の表面を平坦化する。ここでは、例えば表面粗さが3nm以下となるように目標値を設定して平坦化する。ウェハ1に対する研磨工程が完了すると、ステップS102へ進む。ステップS102では、ウェハ1を研磨装置200から搬出し、ロードロックチャンバ610を介して活性化装置300へ搬入する。
【0061】
ウェハ1を研磨装置200から搬出すると、次にステップS103では、ウェハ1と同様に、2枚目のウェハであるウェハ2が外部装置から研磨装置200に搬入され、研磨装置200によりウェハ2の表面を平坦化する。ここでも、例えば表面粗さが3nm以下となるように目標値を設定して平坦化する。ウェハ2に対する研磨工程が完了すると、ステップS104へ進む。ステップS104では、ウェハ2を研磨装置200から搬出し、ロードロックチャンバ610を介して活性化装置300へ搬入する。
【0062】
ステップS105では、ウェハ1及びウェハ2を活性化装置300により活性化する。活性化装置300のチャンバ内は、上述のように、酸化されない又は酸化の進行が極めて遅い雰囲気に設定されている。したがって、ウェハ1及びウェハ2の活性化の手順は幾通りか考えられる。まず先に搬入されるウェハ1を活性化してその後チャンバ内に設置されたウェハストッカーに仮置きし、その後搬入されるウェハ2を活性化することで、ウェハ1及びウェハ2を共に活性化された状態にすることができる。この場合、ウェハ1を、ウェハストッカーに仮置きするのではなく、ゲートバルブ621を開き、活性化装置300の加工雰囲気と同等に調整されたロードロックチャンバ620の搬送装置670に把持させても良い。あるいは、活性化装置300へウェハ2が搬入されてくるまでウェハ1を活性化装置内で待機させ、ウェハ1及びウェハ2を同時に回転定盤305に載置して活性化することもできる。つまり、ステップS105では、ウェハ1及びウェハ2が共に活性化されるまでは、活性化装置300内に留めるようにし、ウェハ2が活性化される前に活性化されたウェハ1をアライメント装置400の加工雰囲気に曝させないことが重要である。
【0063】
次にステップS106では、ウェハ1を活性化装置300から搬出する。ウェハ1及びウェハ2は共に活性化された状態であるので、ここでウェハ1とウェハ2が入れ替わっても良い。また、ここでの搬出とは、活性化装置300からロードロックチャンバ620へ運び出され、ゲートバルブ621及びゲートバルブ622が共に閉じられた状態であることを言う。この状態でロードロックチャンバ内の雰囲気は、活性化装置300の雰囲気から、アライメント装置400の雰囲気に置換される。この過程において、ウェハ1はアライメント装置400の雰囲気である、酸化が進行する雰囲気に曝されることになる(ステップS107)。ステップS108では、この時点から計時部による計時を開始する。具体的には、開始時点の基準が常に一定であれば、雰囲気の置換開始時点すなわちゲートバルブ621の開放時点を検出するセンサを設けてそのセンサがゲートバルブ621の開放を検出した時点を計時開始時点としても良いし、置換中のアライメント装置400の雰囲気濃度を検出するセンサを設けてそのセンサが検出する濃度が予め定められた濃度に達した時点を計時開始時点としても良い。また、完全にアライメント装置400の雰囲気と同等の雰囲気に置換された時点を計時開始時点としても良い。そして、ウェハ1をアライメント装置400へ搬入する。
【0064】
次に、ステップS109で、ウェハ2を活性化装置300からロードロックチャンバ620へ搬出する。そして、ロードロックチャンバ620の雰囲気をアライメント装置400の雰囲気に置換した後、アライメント装置400へ搬入する。
【0065】
アライメント装置400には、ウェハ1及びウェハ2がそれぞれウェハホルダに保持された状態で、固定ステージ421、移動ステージ422に載置される。そして、正確な位置合わせを行った後に重ねあわされて、2枚のウェハホルダが、2枚のウェハを挟み込んだ状態で一体的に固定されている(ステップS110)。
【0066】
重ねあわされた2枚のウェハは、ステップS111で、アライメント装置400から搬出される。ここでの搬出とは、アライメント装置400からロードロックチャンバ630へ運び出され、ゲートバルブ631及びゲートバルブ632が共に閉じられた状態であることを言う。この状態でロードロックチャンバ内の雰囲気は、アライメント装置400の雰囲気から、接合装置500の雰囲気に置換される。この過程において、重ねあわされた2枚のウェハは、接合装置500の雰囲気である、酸化の進行を妨げる雰囲気に置かれることになる(ステップS112)。ステップS113では、この時点で計時部による計時を終了する。具体的には、終了時点の基準が常に一定であれば、雰囲気の置換開始を計時終了時点としても良いし、置換中の接合装置500の雰囲気濃度が予め定められた濃度に達した時点を計時終了時点としても良い。また、完全に接合装置500の雰囲気と同等の雰囲気に置換された時点を計時終了時点としても良い。
【0067】
ステップS114では、制御盤700において、計時部により計時された時間により、その後のプロセスを変更する。本実施例において具体的には、接合装置500における加圧、加熱条件を変更する。制御盤700は記憶装置を備え、この記憶装置には、計時した時間に対する加圧圧力、加熱温度の参照テーブルが記憶されている。計時時間が長いということは、それだけ酸化層が形成される雰囲気に曝されたことになるので、不活性な酸化膜が厚く、表面粗さが粗いことになり、常温活性接合に近い条件での接合ができなくなる。つまり、計時時間が長ければ長いほど、一般的な拡散接合方式における加圧圧力、加熱温度に近い条件になる。したがって、記憶されている参照テーブルは、計時した時間が長くなるほど加圧圧力が大きく、または、加熱温度が高くなる関係が成立する。具体的な数値は、各構成装置の加工雰囲気下で接合が実現される実測結果もしくはシミュレーション結果により、予め定められる。このように計時部は、記憶されている参照テーブルを参照して判断、及び設定の変更を行う制御盤700と共に、酸化の進行度合いを推定する酸化推定手段として機能する。そして、制御盤700により決定された加圧圧力、加熱温度が接合装置500に対して設定され、ステップS115において重ね合わされたウェハ1及びウェハ2が接合される。接合されたウェハ1及びウェハ2は、ゲートバルブ641を介して外部装置に搬出され、一連の工程を終了する。
【0068】
(第2実施例)
図9は、第2実施例を示すフロー図である。第2実施例のうち、第1実施例と共通するフローについては、同じ符番を付し、その説明を省略する。具体的には、ステップS113の計時終了後のプロセス変更に関わるフローが、第1実施例と異なる。
【0069】
ステップS120では、制御盤700において、計時部により計時された時間tが予め定められた時間tよりも大きいか否かを判断する。接合装置500による接合時の加圧圧力及び加熱温度は予め所定の値に設定されている。このとき、予め設定された加圧圧力および加熱温度で接合を実現するためには、接合されるウェハの酸化膜が所定の厚さ以下であって、表面粗さが所定の粗さ以下でなければならない。酸化膜が所定の厚さ以下であって表面粗さが所定の粗さ以下となるためには、ウェハが酸化される雰囲気に曝される時間が所定の時間以下でなければならない。このときの所定の時間がtである。具体的なtは、各構成装置の加工雰囲気下で接合が実現される実測結果もしくはシミュレーション結果により、予め定められる。このように計時部は、記憶されている所定の時間tを参照して判断を行う制御盤700と共に、酸化の進行度合いを推定する酸化推定手段として機能する。
【0070】
計時部により計時された時間tが予め定められた時間tよりも大きい場合には、接合装置500による接合を禁止し、外部装置に一旦搬出した後、もしくはアライメント装置400及び活性化装置300を経由して、再び研磨装置200へ搬入する。そして、ウェハ1の平坦化であるステップS101からやり直す。計時部により計時された時間tが予め定められた時間tよりも大きくない場合には、接合装置500による接合が実現できるので、ステップS115へ進み、接合工程を実行する。接合されたウェハ1及びウェハ2は、ゲートバルブ641を介して外部装置に搬出され、一連の工程を終了する。
【0071】
なお、上記ステップS120において、計時部により計時された時間tが予め定められた時間tよりも大きい場合には、ウェハ1及びウェハ2を再び研磨装置200へ搬入した。しかし、表面粗さが所定の粗さに達していないと想定される場合には、つまり、時間tよりも大きく予め定められた時間tよりも小さい場合には、研磨装置200まで戻さず、ウェハ1及びウェハ2を活性化する活性化装置300へ搬入しても良い。この場合は、ステップS105へ戻ることになる。
【0072】
なお、上記実施例においては、接合装置500において、加圧及び加熱によりウェハの接合を行ったが、加圧を行わずに加熱だけを行う、もしくは、加熱を行わずに加圧だけを行うことにより接合を実現しても良い。また、ステップS114においては、計時された時間tにより加圧、加熱条件を変更したが、加圧圧力及び加熱温度の条件は同じにしたまま、加圧時間もしくは加熱時間を変更しても良い。すなわち、計時された時間tが長いほど加圧時間もしくは加熱時間を長くするように参照テーブルを構築しても良い。
【0073】
さらには、通常は加圧のみを行い計時時間tが長くなった場合には加熱を行うようにしても良い。なお、アライメント装置400が調整器480を備える場合と備えない場合では、実測結果もしくはシミュレーション結果にも現れるが、一般的に調整器480を備えず大気に曝される場合の方が、参照テーブルの加圧圧力を大きく、加熱温度を高く、もしくは加圧時間、加熱時間の時間を長く設定する必要がある。
【0074】
(第3実施例)
次に、上記の第1実施例及び第2実施例に加え、製造装置100が更に表面粗さ計測器800を備える場合について、以下に第3実施例として説明する。具体的には、ウェハ表面の表面粗さを計測する工程を担う構成装置として、表面粗さ計測器800を活性化装置300のチャンバ内に備える。
【0075】
図10は、表面粗さ計測器800の構造を模式的に示す断面図である。ウェハ接合面の表面粗さの計測は、ナノオーダーでの計測ができればどのような機器を用いても良いが、ここでは、一例として原子間力顕微鏡(AFM)を用いる。AFMは、板ばね状の形状を呈するカンチレバーのように、可撓性を有する部材の先端に設けられた探針を、計測対象である試料の表面状で、試料に対して相対的に移動させて走査する。そして、走査中における探針の上下の変位量を測定することによって、試料の表面形状を計測する。
【0076】
図10に示す表面粗さ計測器800は、光てこ方式のAFMである。この表面粗さ計測器800は、可撓性を有するカンチレバー831と、カンチレバー831の先端部に設けられた探針832、ウェハWをXYZ方向に微小移動させるためのアクチュエータ883、カンチレバー831の背面に設けられた反射面830に、レーザ光を照射する光源836を備える。アクチュエータ883は、例えば、円筒型のチューブの外周上にPZTからなる4つの電極を分割して貼り付け、XYZ方向の動きを可能にしたチューブスキャナにより構成される。なお、アクチュエータ883は、その上面にウェハWを載置する載置面を有し、載置したウェハWを吸着により保持する機能を備える。
【0077】
また、表面粗さ計測器800は、レーザ光を所定エリアに照射するためにレーザ光を集光するためのレンズ841、反射面830で反射したレーザ光を受光する、2つの受光部からなる二分割光検出器837を備える。更に、アクチュエータ883を支持するテーブル805を有し、テーブル805は、シリンダ803及びXYステージ804がモータMにより駆動されることにより、XYZ方向に粗動する。これらによって構成される表面粗さ計測器800は、上述のように活性化装置300のチャンバ内に活性化装置と共に並置される。
【0078】
本実例においては、例えばウェハWの中心部分と周辺部分4箇所の、合計5箇所の微小エリアにおいて表面粗さを計測する。この場合、それぞれの箇所の移動はテーブル805の粗動により行い、それぞれの箇所における微小エリア内の移動は深さ方向の計測を行いながらアクチュエータ883による走査により行う。ウェハの表面粗さとしては、例えば、まず各微小エリアごとにPV値(Peak to Valley値)として最深部と最浅部の差を計測し、計測された5箇所の差のうち最大の値を採用する。なお、微小エリアの数、及び各微小エリア内において計測するポイントの数は、スループットを考慮して適宜設定される。粗さの指標としては、PV値の他にも、算術平均粗さであるRa値、二乗平均粗さであるRms値などを用いることもできる。
【0079】
本実施例において、互いに接合されるウェハが、それぞれ研磨されてから接合されるまでの加工手順については、上記の第1実施例および第2実施例に準ずる。表面粗さ計測器800によって計測されたウェハWの表面粗さの情報は、計時終了後のプロセス変更に関する判断の補助情報として用いられる。
【0080】
まず、第1実施例に対してウェハWの表面粗さの情報を補助情報として用いる場合について、図8を参照しながら説明する。ステップS105においてウェハ1及びウェハ2の活性化が完了したところで、表面粗さ計測器800によりそれぞれの表面粗さを計測する。計測した表面粗さは制御盤700の記憶部に記憶する。ステップS114では、計時部により計時された時間に加え、制御盤700の記憶部において記憶されたウェハ1及びウェハ2の表面粗さを考慮して、その後のプロセスを変更する。本実施例のように計時された時間に加えて表面粗さを考慮する場合、制御盤700の記憶装置に記憶される参照テーブルは、パラメータとして表面粗さにも対応した参照テーブルが用意される。
【0081】
表面粗さが大きいということは、それだけ接触条件が悪いことになり、常温活性接合に近い条件での接合ができなくなる。つまり、表面粗さが大きいほど、一般的な拡散接合方式における加圧圧力、加熱温度に近い条件になる。したがって、記憶されている参照テーブルは、表面粗さが大きくなるほど加圧圧力が大きく、または、加熱温度が高くなる関係が成立する。この関係が満たされるように、計時時間に対する条件に加味する形で、参照テーブルが用意される。具体的な数値は、各構成装置の加工雰囲気下で接合が実現される実測結果もしくはシミュレーション結果により、予め定められる。なお、その後の処理工程は図8のフローと同様である。
【0082】
次に、第2実施例に対してウェハWの表面粗さの情報を補助情報として用いる場合について、図9を参照しながら説明する。ステップS105においてウェハ1及びウェハ2の活性化が完了したところで、表面粗さ計測器800によりそれぞれの表面粗さを計測する。計測した表面粗さは制御盤700の記憶部に記憶する。ステップS120では、計時部により計時された時間tが予め定められた時間tよりも大きいか否かにより、その後の処理を変更しているが、本実施例では、この時間tを、制御盤700の記憶部において記憶されたウェハ1及びウェハ2の表面粗さにより変更する。上述のように、表面粗さが大きいということは、それだけ接触条件が悪いことになり、常温活性接合に近い条件での接合ができなくなるので、計測された表面粗さが大きいほど、時間tを短くする。具体的なtは、各構成装置の加工雰囲気下で接合が実現される実測結果もしくはシミュレーション結果により、予め定められる。なお、その後の処理工程は図9のフローと同様である。
【0083】
(第4実施例)
次に、上記の第1実施例及び第2実施例に対して、計時部の替わりに製造装置100が膜厚計測器900を備える場合について、以下に第4実施例として説明する。具体的には、ウェハ表面の酸化層の膜厚を計測する工程を担う構成装置として、膜厚計測器900を活性化装置300のチャンバ内に備える。
【0084】
図11は、膜厚計測器900の構造を模式的に示す断面図である。ウェハ接合面の酸化膜厚の計測は、例えばウェハの予め定められた領域における亜酸化銅CuO層の厚さが計測ができればどのような機器を用いても良いが、非接触でウェハへ損傷を与えることがない方式を用いる機器であることが好ましい。ここでは、一例として分光法を用いた分光計測器を用いる。分光法を用いた分光計測器は、非破壊非接触で測定でき、酸化膜の屈折率がわかれば、高精度で膜厚を計測することができる。具体的には光の干渉効果を利用するもので、酸化膜の表面で反射した光と裏面で反射した光が、互いに干渉を起こすときの干渉パターンから膜厚を求める。
【0085】
膜厚計測器900は、測定用光源910、投光用光ファイバー912、分光ユニット914、Y型分岐光ファイバー920、投受光ヘッド922、光ファイバー切替ユニット924、受光用光ファイバー926及び検出器930を備える。また、被測定対象であるウェハWは、テーブル905の定められた位置に載置される。テーブル905は、シリンダ903及びXYステージ904がモータMにより駆動されることにより、XYZ方向に移動する。
【0086】
測定用光源910より射出された測定光は、投光用光ファイバー912を経由して、分光ユニット914に到達する。分光ユニットには、投光用光ファイバー912に接続されている接続部に対向して、複数のY型分岐光ファイバー920の一端が接続されている接続部が設けられている。そして、少なくともウェハWの測定したい領域に対応するY型分岐光ファイバー920に導光されるよう、接続部同士が接続される。接続部同士の接続は、全てのY型分岐光ファイバー920に同時に導光されるように行っても良い。
【0087】
分光ユニット914を経由して投受光ヘッド922に到達した測定光は、ウェハWの被測定領域に向けて投光される。そして、その反射光を同じく投受光ヘッド922で受光し、受光された測定光は、Y型分岐光ファイバー920を経由して光ファイバー切替ユニット924に導かれる。すなわち、Y型分岐光ファイバー920は、Y型の分岐点を有しており、3つの端部を有する。3つの端部は、一つは分光ユニット914に、一つは投受光ヘッド922に、一つは光ファイバー切替ユニット924に接続されている。
【0088】
光ファイバー切替ユニット924に到達した測定光は、受光用光ファイバー926へ導光されて検出器930へ到達する。光ファイバー切替ユニット924は、ウェハWの被測定領域に対応して、複数のY型分岐光ファイバー920の一つと受光用光ファイバー926を選択的に接続する。検出器930では、受光した測定光に基づいて、被測定領域における酸化膜厚を演算する。酸化膜厚の計測領域は、例えばウェハWの中心部分と周辺部分4箇所の、合計5箇所とする。この場合、それぞれの領域に対向して投受光ヘッド922が配設されている。
【0089】
本実施例において、互いに接合されるウェハが、それぞれ研磨されてから接合されるまでの加工手順については、上記の第1実施例および第2実施例に準ずる。膜厚計測器900によって計測されたウェハWの酸化膜厚の情報は、接合装置500へウェハが搬入されてからのプロセス変更に関する判断に用いられる。
【0090】
まず、第1実施例に対してウェハWの酸化膜厚の情報を用いる場合について、図8を参照しながら説明する。本実施例においては、計時部の替わりに膜厚計測器900を備えているので、計時部に関するステップS108及びステップS113が存在せず、また、ステップS114の設定における判断が異なる。本実施例ではステップS114に替えてステップS130を備えるものとする。なお、膜厚計測器900による酸化膜厚の計測は、ステップS105においてウェハ1及びウェハ2の活性化が完了した後に行うものとする。計測した酸化膜厚は制御盤700の記憶部に記憶する。
【0091】
ステップS130では、制御盤700において、膜厚計測器900により計測された酸化膜厚により、その後のプロセスを変更する。本実施例において具体的には、接合装置500における加圧、加熱条件を変更する。制御盤700は記憶装置を備え、この記憶装置には、計測した酸化膜厚に対する加圧圧力、加熱温度の参照テーブルが記憶されている。酸化膜が厚いということは、それだけ不活性な酸化膜が厚く、常温活性接合に近い条件での接合ができなくなる。つまり、計測した酸化膜厚が厚ければ厚いほど、その後に進行する酸化の度合いを加味した、一般的な拡散接合方式における加圧圧力、加熱温度に近い条件が設定される。したがって、記憶されている参照テーブルは、計測した酸化膜厚が厚くなるほど加圧圧力が大きく、または、加熱温度が高くなる関係が成立する。具体的な数値は、各構成装置の加工雰囲気下で接合が実現される実測結果もしくはシミュレーション結果により、予め定められる。このように膜厚計測器900は、記憶されている参照テーブルを参照して判断、及び設定の変更を行う制御盤700と共に、酸化の進行度合いを推定する酸化推定手段として機能する。なお、その後の処理工程は図8のフローと同様である。
【0092】
次に、第2実施例に対してウェハWの酸化膜厚の情報を用いる場合について、図9を参照しながら説明する。本実施例においては、計時部の替わりに膜厚計測器900を備えているので、計時部に関するステップS108、ステップS113及びステップS120が存在しない。本実施例では、膜厚計測器900による酸化膜厚の計測は、ステップS105においてウェハ1及びウェハ2の活性化が完了した後に行われ、酸化膜厚計測の後、新たにステップS140が実行される。計測した酸化膜厚は制御盤700の記憶部に記憶する。
【0093】
ステップS140では、予め定められた酸化膜厚hと、制御盤700の記憶部において記憶されたウェハ1及びウェハ2の酸化膜厚hを比較して、その後の処理を変更する。接合装置500による接合時の加圧圧力及び加熱温度は予め所定の値に設定されている。このとき、予め設定された加圧圧力および加熱温度で接合を実現するためには、接合されるウェハの酸化膜が一定の膜厚以下でなければならない。酸化膜が一定の厚さ以下となるためには、ウェハが酸化される雰囲気に曝されて進行する酸化膜の厚さを差し引いた初期段階の酸化膜が所定の酸化膜厚以下でなければならない。このときの所定の酸化膜厚がhである。具体的なhは、各構成装置の加工雰囲気下で接合が実現される実測結果もしくはシミュレーション結果により、予め定められる。このように膜厚計測器900は、記憶されている予め定められている酸化膜厚hを参照して判断を行う制御盤700と共に、酸化の進行度合いを推定する酸化推定手段として機能する。なお、その後の処理工程は図9のフローと同様である。
【0094】
このような実施例は、アライメント装置400における位置合わせに要する時間がほぼ一定の場合に有効である。つまり、アライメント装置400の雰囲気である酸化が進行する雰囲気に曝される時間が一定であれば、酸化の進行も一定と仮定し、アライメント装置400に搬入する前の酸化膜厚を基準にしてこれを加味し、接合時における全体としての酸化の進行度合いを正確に推定することができる。
【0095】
(第5実施例)
次に、上記の第4実施例に加え、製造装置100が更に表面粗さ計測器800を備える場合について、以下に第5実施例として説明する。具体的には、ウェハ表面の表面粗さを計測する工程を担う構成装置として、表面粗さ計測器800を活性化装置300のチャンバ内に膜厚計測器900と共に備える。
【0096】
このような構成における処理フローは、第1実施例及び第2実施例の処理フローを修正して第3実施例の処理フローを構成したように、第4実施例の処理フローを修正することになる。具体的には、第4実施例の参照テーブルを、計測された表面粗さを加味した参照テーブルに置き換える、又は、所定の酸化膜厚がhを、計測された表面粗さを加味して可変にする。このように構成することで、より正確な酸化の進行度合いを推定することができる。
【0097】
なお、上記第4実施例、第5実施例においては、接合装置500において、加圧及び加熱によりウェハの接合を行ったが、加圧を行わずに加熱だけを行う、もしくは、加熱を行わずに加圧だけを行うことにより接合を実現しても良い。また、ステップS130においては、計測された酸化膜厚により加圧、加熱条件を変更したが、加圧圧力及び加熱温度の条件は同じにしたまま、加圧時間もしくは加熱時間を変更しても良い。すなわち、計測された酸化膜厚が厚いほど加圧時間もしくは加熱時間を長くするように参照テーブルを構築しても良い。
【0098】
さらには、通常は加圧のみを行い酸化膜が厚くなった場合には加熱を行うようにしても良い。なお、アライメント装置400が調整器480を備える場合と備えない場合では、実測結果もしくはシミュレーション結果にも現れるが、一般的に調整器480を備えず大気に曝される場合の方が、参照テーブルの加圧圧力を大きく、加熱温度を高く、もしくは加圧時間、加熱時間の時間を長く設定する必要がある。
【0099】
(第6実施例)
次に、製造装置100が計時部と共に膜厚計測器900を備える場合について、以下に第6実施例として説明する。具体的には、制御盤700が計時部を備えると共に、ウェハ表面の酸化層の膜厚を計測する工程を担う構成装置として、膜厚計測器900を活性化装置300のチャンバ内に備える。膜厚計測器900の構成、及びウェハWに対する計測方法は上記第4実施例と同等である。
【0100】
本実施例において、互いに接合されるウェハが、それぞれ研磨されてから接合されるまでの加工手順については、上記の第1実施例および第2実施例に準ずる。膜厚計測器900によって計測されたウェハWの酸化膜厚の情報は、計時部によって計測された計時時間情報と共に、計時終了後のプロセス変更に関する判断情報として用いられる。
【0101】
まず、第1実施例に対してウェハWの酸化膜厚の情報も判断情報として用いる場合について、図8を参照しながら説明する。ステップS105においてウェハ1及びウェハ2の活性化が完了したところで、膜厚計測器900によりそれぞれの酸化膜厚を計測する。計測した酸化膜厚は制御盤700の記憶部に記憶する。ステップS114では、計時部により計時された時間に加え、制御盤700の記憶部において記憶されたウェハ1及びウェハ2の酸化膜厚を判断材料として、その後のプロセスを変更する。本実施例のように計時された時間に加えて酸化膜厚を考慮する場合、制御盤700の記憶装置に記憶される参照テーブルは、パラメータとして酸化膜厚にも対応した参照テーブルが用意される。
【0102】
酸化膜が厚いということは、それだけ不活性な酸化膜が厚く、常温活性接合に近い条件での接合ができなくなる。つまり、計測した酸化膜厚が厚ければ厚いほど、一般的な拡散接合方式における加圧圧力、加熱温度に近い条件になる。したがって、記憶されている参照テーブルは、酸化膜厚が厚くなるほど加圧圧力が大きく、または、加熱温度が高くなる関係が成立する。この関係が満たされるように、計時時間に対する条件に加味する形で、参照テーブルが用意される。具体的な数値は、各構成装置の加工雰囲気下で接合が実現される実測結果もしくはシミュレーション結果により、予め定められる。なお、その後の処理工程は図8のフローと同様である。
【0103】
次に、第2実施例に対してウェハWの酸化膜厚の情報も判断情報として用いる場合について、図9を参照しながら説明する。ステップS105においてウェハ1及びウェハ2の活性化が完了したところで、膜厚計測器900によりそれぞれの酸化膜厚を計測する。計測した表面粗さは制御盤700の記憶部に記憶する。ステップS120では、計時部により計時された時間tが予め定められた時間tよりも大きいか否かにより、その後の処理を変更しているが、本実施例では、この時間tを、制御盤700の記憶部において記憶されたウェハ1及びウェハ2の酸化膜厚により変更する。上述のように、酸化膜厚が厚いということは、それだけ接触条件が悪いことになり、常温活性接合に近い条件での接合ができなくなるので、計測された酸化膜厚が厚いほど、時間tを短くする。具体的なtは、各構成装置の加工雰囲気下で接合が実現される実測結果もしくはシミュレーション結果により、予め定められる。なお、その後の処理工程は図9のフローと同様である。
【0104】
なお、時間tではなく、酸化膜厚hを基準として、その後の処理を変更しても良い。その場合は、この酸化膜厚hを、計時された時間により変更する。または、基準となる時間t及び酸化膜厚hを定めておき、いずれかの基準を超えるとき、または共に超えるときに、接合装置500への搬入を禁止するように構成しても良い。
【0105】
(第7実施例)
次に、上記の第6実施例に加え、製造装置100が更に表面粗さ計測器800を備える場合について、以下に第7実施例として説明する。具体的には、ウェハ表面の表面粗さを計測する工程を担う構成装置として、表面粗さ計測器800を活性化装置300のチャンバ内に膜厚計測器900と共に備える。
【0106】
このような構成における処理フローは、第1実施例及び第2実施例の処理フローを修正して第3実施例の処理フローを構成したように、第6実施例の処理フローを修正することになる。具体的には、第6実施例の参照テーブルを、計測された表面粗さを加味した参照テーブルに置き換える。このように構成することで、より正確な酸化の進行度合いを推定することができる。
【0107】
なお、上記第6実施例、第7実施例においては、接合装置500において、加圧及び加熱によりウェハの接合を行ったが、加圧を行わずに加熱だけを行う、もしくは、加熱を行わずに加圧だけを行うことにより接合を実現しても良い。また、加圧圧力及び加熱温度の条件は同じにしたまま、加圧時間または加熱時間を変更しても良い。すなわち、計測された酸化膜厚が厚いほど、表面粗さが大きいほど、加圧時間もしくは加熱時間を長くするように参照テーブルを構築しても良い。
【0108】
以上の全ての実施例では共通して、アライメント装置400の加工雰囲気が、酸化が進行する雰囲気であるものとして説明したが、アライメント装置400がある程度酸化の進行が抑制される雰囲気に調整されている構成であっても良い。いずれにしても、ウェハが活性化されてから接合されるまでにはタイムラグが生じ、雰囲気が調整されていたとしても、多少なりとも酸化が進行するからである。その意味で、各構成装置のチャンバ内が、厳密に酸化が進行しない雰囲気に調整されていない限り、上記の各実施例の形態が適用できる。
【0109】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】製造装置100の概略構成図である。
【図2】研磨装置200の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】活性化装置300の一例としての第1の活性化装置310の構造を模式的に示す断面図である。
【図4】活性化装置300の別の一例としての第2の活性化装置320の構造を模式的に示す断面図である。
【図5】アライメント装置400の構造を模式的に示す断面図である。
【図6】アライメント装置400の動作を示す図である。
【図7】接合装置500の構造を模式的に示す断面図である。
【図8】第1実施例を示すフロー図である。
【図9】第2実施例を示すフロー図である。
【図10】表面粗さ計測器800の構造を模式的に示す断面図である。
【図11】膜厚計測器900の構造を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0111】
100 製造装置、200 研磨装置、202 支持フレーム、203 基台、204 テーブル支持部、205 回転定盤、206 第1ステージ、207 垂直フレーム、208 第2ステージ、209 水平フレーム、210 第3ステージ、211 回転軸、216 スピンドル、217 エアシリンダ、220 研磨ヘッド、221 研磨パッド、300 活性化装置、303 回転軸、304 テーブル支持部、305 回転定盤、310 第1の活性化装置、311 イオンガン、320 第2の活性化装置、321、322 放電電極、323 放電電源、380 真空装置、400 アライメント装置、411 枠体、412 天板、414 支柱、416 底板、421 固定ステージ、422 移動ステージ、442、444 顕微鏡、452 ガイドレール、454 Xステージ、456 Yステージ、460 昇降部、462 シリンダ、464 ピストン、472 反射鏡、480 調整器、500 接合装置、544 枠体、546 押圧部、548 加圧ステージ、550 受圧ステージ、552 圧力検知部、554 天板、556 底板、558 支柱、560 シリンダ、562 ピストン、566 支持部、567 アクチュエータ、568 基板保持部、570 ヒータ、572 基板接触部、574 懸架部、576 ヒータ、578、580、582 ロードセル、590 真空装置、601、611、612、621、622、631、632、641 ゲートバルブ、610、620、630 ロードロックチャンバ、670 搬送装置、671 腕部、672 把持部、680 ウェハ、700 制御盤、800 表面粗さ計測器、803 シリンダ、804 XYステージ、805 テーブル、830 反射面、831 カンチレバー、832 探針、836 光源、837 二分割光検出器、841 レンズ、883 アクチュエータ、900 膜厚計測器、903 シリンダ、904 XYステージ、905 テーブル、910 測定用光源、912 投光用光ファイバー、914 分光ユニット、920 Y型分岐光ファイバー、922 投受光ヘッド、924 光ファイバー切替ユニット、926 受光用光ファイバー、930 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体基板がそれぞれの接合面で接合されて積層された半導体装置を製造する製造装置であって、
前記接合面を活性化する活性化装置と、
前記活性化装置により活性化され、かつ、重ね合わされた複数の半導体基板を、加圧及び加熱の少なくとも一方により接合する接合装置と、
前記活性化装置による前記活性化から前記接合装置による前記接合に至る間の、前記接合面が酸化される酸化雰囲気に曝されることによる酸化の進行度合いを推定する酸化推定手段を含む制御部と、
を備える製造装置。
【請求項2】
前記酸化推定手段は、前記酸化雰囲気に曝される時間を計時する計時手段を含み、
前記酸化の進行度合いを前記計時手段によって計時された時間により推定する請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記活性化装置および前記接合装置のチャンバ内部は真空装置により前記接合面が酸化されない又は酸化の進行を極めて遅くする雰囲気に設定されており、
前記計時手段は、前記半導体基板が、前記活性化装置から搬出されてから前記接合装置に搬入されるまでの時間を計時する請求項2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記活性化装置と前記接合装置の間に、前記接合面同士の位置合わせを行い互いの半導体基板を重ね合わせるアライメント装置を備え、
前記アライメント装置は、前記酸化雰囲気に設置されている請求項3に記載の製造装置。
【請求項5】
前記活性化装置と前記アライメント装置の間、および前記アライメント装置と前記接合装置の間には、それぞれ搬送装置が配置されるロードロックチャンバを備え、
前記ロードロックチャンバは、前記活性化装置、前記アライメント装置、前記接合装置との境界にゲートバルブを有し、
前記制御部は、前記ゲートバルブの開閉を制御して、隣接する装置間の雰囲気を置換する請求項4に記載の製造装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記計時手段により計時した計時時間により、計時後のプロセスを変更する請求項2から5のいずれか1項に記載の製造装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記計時手段により計時した時間が長くなるほど前記接合装置における加圧圧力を大きくする、加熱温度を高くする、および接合時間を長くする、の少なくとも一つを設定する請求項6に記載の製造装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記計時手段により計時した時間が、予め定められた設定時間より長くなったときには、前記接合装置による接合を禁止する請求項6に記載の製造装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記接合装置への搬入が禁止された前記半導体基板を、前記活性化装置または研磨装置へ搬送する請求項8に記載の製造装置。
【請求項10】
前記酸化推定手段は、前記接合面における一領域の酸化膜厚を計測する膜厚計測手段を含み、
前記酸化の進行度合いを前記膜厚計測手段によって計測された酸化膜厚により推定する請求項1に記載の製造装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記膜厚計測手段により計測した酸化膜厚により、計測後のプロセスを変更する請求項10に記載の製造装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記膜厚計測手段により計測した酸化膜厚が厚くなるほど前記接合装置における加圧圧力を大きくする、加熱温度を高くする、および接合時間を長くする、の少なくとも一つを設定する請求項11に記載の製造装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記膜厚計測手段により計測した酸化膜厚が、予め定められた設定膜厚より厚くなったときには、前記接合装置による接合を禁止する請求項11に記載の製造装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記接合装置への搬入が禁止された前記半導体基板を、前記活性化装置または研磨装置へ搬送する請求項13に記載の製造装置。
【請求項15】
前記酸化推定手段は、前記酸化雰囲気に曝される時間を計時する計時手段と、前記接合面における一領域の酸化膜厚を計測する膜厚計測手段を含み、
前記酸化の進行度合いを、前記計時手段によって計時された時間、及び、前記膜厚計測手段によって計測された酸化膜厚により推定する請求項1に記載の製造装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記計時手段により計時した計時時間及び前記膜厚計測手段により計測した酸化膜厚により、計時及び計測後のプロセスを変更する請求項15に記載の製造装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記計時手段により計時した時間が長くなるほど、前記膜厚計測手段により計測した酸化膜厚が厚くなるほど、前記接合装置における加圧圧力を大きくする、加熱温度を高くする、および接合時間を長くする、の少なくとも一つを設定する請求項16に記載の製造装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記計時手段により計時した時間が予め定められた設定時間より長くなったとき、及び、前記膜厚計測手段により計測した酸化膜厚が予め定められた設定膜厚より厚くなったとき、の少なくとも一方の条件が満たされた場合には、前記接合装置による接合を禁止する請求項17に記載の製造装置。
【請求項19】
前記制御部は、前記接合装置への搬入が禁止された前記半導体基板を、前記活性化装置または研磨装置へ搬送する請求項18に記載の製造装置。
【請求項20】
前記酸化推定手段は、更に、前記接合面の表面粗さを計測する粗さ計測手段を含み、
前記酸化の進行度合いを前記粗さ計測手段によって計測された表面粗さを考慮して推定する請求項1から19のいずれか1項に記載の製造装置。
【請求項21】
複数の半導体基板がそれぞれの接合面で接合されて積層された半導体装置を製造する製造方法であって、
前記接合面を活性化する活性化ステップと、
前記活性化ステップにより活性化され、かつ、重ね合わされた複数の半導体基板を、加圧及び加熱の少なくとも一方により接合する接合ステップと、
前記活性化ステップによる前記活性化から前記接合ステップによる前記接合に至る間の、前記接合面が酸化される酸化雰囲気に曝されることによる酸化の進行度合いを推定する酸化推定ステップと、
前記推定ステップにより推定した前記酸化の進行度合いにより、推定後のプロセスを変更する変更ステップと、
を備える製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−212638(P2010−212638A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60234(P2009−60234)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】