説明

半導体装置及びその製造方法、LCDドライバ用パッケージ

【課題】 メタル配線の屑が残留し兼ねない簡便なダイシングを容認でき、かつ、バンプ電極の高さを低くしつつ、フィルムキャリアのインナリードのショートを防止できる半導体装置及びその製造方法、LCDドライバ用パッケージを提供する。
【解決手段】バンプ電極11は、半導体チップ10の半導体集積回路との接続関係を有し、半導体チップ10主表面上において相互にチップ端部より中央側に寄って配置されている。これにより、バンプ電極11と破線で示すリード12が接続されるとすると、リード12は、チップ端部10E上にさしかかるまでに有利に変形できる余裕が生じる。すなわち、リード12は、チップ端部10E上において離れた位置に置くことができる。これにより、半導体チップ10は、バンプ電極11の高さを低くしても、チップ端部10Eと接触し難いリード12との接続形態を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部端子としてバンプ電極を形成し、TCP(tape carrier package)実装を伴う半導体装置及びその製造方法、特に狭ピッチで多数のバンプ電極を有するLCDドライバ用パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
TCP実装を伴う製品は、TAB(tape automated bonding)技術によって組み立てられる。すなわち、半導体チップは、その主表面に外部端子としてバンプ電極を形成し、フィルムキャリアにインナリードボンディングされる。フィルムキャリアは、繰り返し配線パターンの形成された長尺のテープ形状である。フィルムキャリアは、インナリードが露出したデバイスホール及びアウタリードを有する。フィルムキャリアは、デバイスホール毎に自動的に送り出される。半導体チップは、デバイスホールの所定位置に合わせ込まれ、バンプ電極とインナリードが熱圧着等の技術でボンディングされる。その後、半導体チップは、TCP製品として、アウタリードを回路基板の要所にボンディングすることになる。
【0003】
半導体チップは、ウェハのダイシング工程を経てチップ化されている。ダイシング工程で必要なスクライブ領域の幅は、狭いほどよい。つまり、ダイシングブレードにより消滅するスクライブ領域の幅が小さいほどチップの有効領域が増やせるからである。スクライブ領域には、検査用の素子やパッド、回路配線等が配備されている。つまり、スクライブ領域には、メタル配線が存在する。ダイシングブレードは、その厚さを小さくして、ダイシングすることはできる。しかし、このようなダイシングを実施すると、半導体チップは、その切断面にメタル配線の屑を残してしまう危険性が高くなる。
【0004】
フィルムキャリアのインナリードは、半導体チップ端部と接触する恐れがある。しかも、上記のように、半導体チップ切断面にメタル配線の屑が残留していたなら、容易にショートする懸念がある。ショート防止対策は、次のとおりである。
(i)半導体ウェハのスクライブ領域は、検査用の素子やパッド、回路配線等が余裕を持って設けられるように広く確保する。
(ii)ダイシングブレードは、その厚さを大きくする。あるいは、ダイシングを2回に分けるなどダイシング方法を工夫する。これにより、半導体チップ切断面にメタル配線の屑が残留しないようにする。
(iii)半導体チップのバンプ電極は、なるべく高くする。これにより、フィルムキャリアのインナリードは、半導体チップとの離間距離を大きくとることができる。これにより、半導体チップ端部と接触し難くする。
【0005】
しかしながら、上記(i),(ii)の対策では、チップの有効領域が増やせない。また、ダイシング方法を工夫する手間や工数の増加でコスト高を招く。上記(iii)の対策では、バンプ電極製造にコスト上昇を招く。特に、狭ピッチで多数のバンプ電極を有するLCDドライバチップ等は、コスト上昇率が著しく、避けたいところである。
【0006】
また、他の対策として次のような例がある。半導体チップとフィルムキャリアのインナリードボンディングは、半導体チップ端部とインナリードがより遠ざかるように、フィルムキャリアを変形させながら行う(例えば、特許文献1)。すなわち、チップ端部にメタル配線の屑が残留するような場合でも、ショートを防止しようという構成である。
【特許文献1】特開平2002−9108号公報(5頁、6頁、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体装置は、その製造工程において、生産効率向上のため、またウェハ上のチップの有効領域を増やすべく、メタル配線の屑が残留し兼ねない簡便なダイシングを行いたい。これにより、フィルムキャリアのインナリードがチップ端部に接触するとショートを起こす危険性がある。対策として、バンプ電極の高さをある程度高くする。バンプ電極はチップ端部から近い位置にあり、バンプ電極が高ければ、インナリードがチップ端部から遠くなる。この対策は、フィルムキャリアを変形させてボンディングする[特許文献1]においてもいえることである。そこで、バンプ電極のコスト上昇が問題である。特に、狭ピッチで多数のバンプ電極を有するLCDドライバチップ等は、コスト上昇率が著しい。
【0008】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたもので、メタル配線の屑が残留し兼ねない簡便なダイシングを容認でき、かつ、バンプ電極の高さを低くしつつ、フィルムキャリアのインナリードのショートを防止できる半導体装置及びその製造方法、LCDドライバ用パッケージを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体装置は、半導体素子が複数設けられて構成される半導体集積回路を有する半導体チップと、前記半導体チップの主表面上において相互にチップ端部より中央側に寄って配置された前記半導体集積回路との接続関係を有する外部接続用の複数のバンプ電極と、を含む。
【0010】
上記本発明に係る半導体装置によれば、バンプ電極は、半導体チップ端部から遠い位置に設けられる。これにより、バンプ電極とリードが接続される場合、リードは、チップ端部上にさしかかるまでに有利に変形可能な余裕が生じる。すなわち、リードは、チップ端部上において離れた位置に置くことができる。これにより、半導体チップは、バンプ電極の高さを低くしても、チップ端部と接触し難いリードとの接続形態を得ることができる。
【0011】
上記本発明に係る半導体装置において、前記バンプ電極は、前記半導体集積回路を構成する配線層の所定層を用いた配線パターンを下地とし、前記半導体集積回路上方に設けられている。設計にあまり負担のかからない、なるべく上層の配線パターンでの引き回しが好ましい。
【0012】
本発明に係る半導体装置は、半導体素子が複数設けられて構成される半導体集積回路を有する半導体チップと、前記半導体チップの主表面上において相互にチップ端部より中央側に寄って配置された前記半導体集積回路との接続関係を有する外部接続用の複数のバンプ電極と、絶縁フィルムに支持された複数のリードを有し、前記半導体チップの端部近傍上方では前記絶縁フィルムが存在し、かつ前記リードがインナリードとして前記バンプ電極それぞれに接続されるフィルムキャリアと、を含む。
【0013】
上記本発明に係る半導体装置によれば、バンプ電極は、半導体チップ端部から遠い位置に設けられる。これにより、フィルムキャリアのインナリードは、チップ端部上にさしかかるまでにチップ端部から接触し難い配置に無理なく変形可能である。しかも、バンプ電極の配置関係上、半導体チップの端部近傍上方では絶縁フィルムが存在するようになる。これにより、フィルムキャリアは、バンプ電極を低くしても、チップ端部と接触し難いインナリードの接続形態が得られる。
【0014】
上記本発明に係る半導体装置において、次のいずれかの特徴を有することによって、より信頼性が向上するフィルムキャリアと半導体チップの結合形態が得られる。
前記フィルムキャリアのインナリードは、前記バンプ電極との接続部から前記半導体チップ主表面上で上方に曲がり、前記半導体チップとの所定の離間距離を保持していることを特徴とする。
また、前記フィルムキャリアのインナリードは、前記バンプ電極との接続部から前記半導体チップ主表面上で上方に曲がり、前記半導体チップとの所定の離間距離を保持した形態で、前記半導体チップ端部から近傍の前記絶縁フィルムの部分を含んで樹脂により保護されていることを特徴とする。
【0015】
上記本発明に係る半導体装置において、前記半導体チップは、LCDドライバ用チップであることを特徴とする。特にバンプ電極数が多く、また、チップ長手に沿ってバンプ電極をチップ中央側に寄せ易いこともあり、絶大な効果を発揮する。
【0016】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上の各チップ領域に半導体素子を複数配し、層間絶縁膜を介した複数の配線層による配線パターンの所定の相互接続により半導体集積回路を構成するウェハ工程に関し、前記配線層いずれかの配線パターンでもって前記チップ領域端部より前記チップ領域の中央側に寄って各電極パッドを配置し、前記各電極パッド上に外部接続用のバンプ電極を形成する。
【0017】
上記本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、設計にあまり負担のかからない、配線パターンでの引き回しを伴い、バンプ電極は、半導体チップ端部から遠い、チップ中央寄りの位置に設ける。バンプ電極は、比較的高さの低いものを形成する。リードが接続される場合、リードは、チップ端部上にさしかかるまでにチップ端部と接触し難い位置に十分変形可能だからである。
【0018】
上記本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記半導体基板が前記各チップ領域に応じてダイシングされ半導体チップ化される工程と、絶縁フィルムに支持されたリードを有するフィルムキャリアを準備し、前記バンプ電極それぞれに一括で前記リードがインナリードとして接続されるインナリードボンディング工程と、を含み、前記インナリードボンディング工程後、前記フィルムキャリアは、前記半導体チップの端部近傍上方において前記絶縁フィルムが位置するように保持することを特徴とする。
上記特徴によれば、バンプ電極の位置関係により、半導体チップの端部近傍上方において絶縁フィルムを存在させることが容易になる。フィルムキャリアは、バンプ電極を低くしても、チップ端部と接触し難いインナリードの接続形態が得られる。
【0019】
また、上記本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記半導体基板が前記各チップ領域に応じてダイシングされ半導体チップ化される工程と、絶縁フィルムに支持されたリードを有するフィルムキャリアを準備し、前記バンプ電極それぞれに一括で前記リードがインナリードとして接続されるインナリードボンディング工程と、を含み、前記インナリードボンディング工程後、前記インナリードは、前記半導体チップ端部から近傍の前記絶縁フィルムの部分を含んで樹脂により保護され、前記フィルムキャリアは、前記半導体チップの端部近傍上方において前記絶縁フィルムが位置するように保持することを特徴とする。
【0020】
上記特徴によれば、バンプ電極の位置関係により、半導体チップの端部近傍上方において絶縁フィルムを存在させることが容易になる。フィルムキャリアは、少なくともインナリードとチップ端部が接触しない形態が得られ、かつ、その形態が樹脂により固定される。これにより、より信頼性が向上するフィルムキャリアと半導体チップの結合形態が得られる。
【0021】
本発明に係るLCDドライバ用パッケージは、半導体素子が複数設けられて構成される半導体集積回路を有する一辺が他辺の五倍以上長い長方形の半導体チップと、前記半導体チップの主表面上において長手の対向する一辺に沿って相互にチップ端部より中央側に寄って配置された前記半導体集積回路との接続関係を有する外部接続用の複数のバンプ電極と、絶縁フィルムに支持された複数のリードを有し、前記半導体チップの端部近傍上方では前記絶縁フィルムが存在し、かつ前記リードがインナリードとして前記バンプ電極それぞれに接続され前記インナリードが前記バンプ電極との接続部から前記半導体チップ主表面上で上方に曲がり前記半導体チップとの所定の離間距離をとった形態を有するフィルムキャリアと、前記半導体チップ端部から近傍の前記絶縁フィルムの部分を覆うと共に、少なくとも前記フィルムキャリアのインナリードの形態を固定する保護用の樹脂と、を含む。
【0022】
上記本発明に係るLCDドライバ用パッケージによれば、バンプ電極は、半導体チップ端部から遠い位置に設けられる。これにより、フィルムキャリアのインナリードは、チップ端部上にさしかかるまでにチップ端部から接触し難い配置に無理なく変形可能である。しかも、バンプ電極の配置関係上、半導体チップの端部近傍上方では絶縁フィルムが存在するようになる。半導体チップとフィルムキャリアは、チップ端部近傍では接触し得ない位置関係をもって樹脂により固定される。これにより、半導体チップのバンプ電極を低くしても、LCDドライバ用パッケージの信頼性は高く維持できる。
なお、上記本発明に係るLCDドライバ用パッケージにおいて、前記バンプ電極は、5〜15μmの範囲の所定高さを有して設けられている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の要部を横から示す図である。半導体チップ10は、図示しない内部に、半導体素子が複数設けられて構成される半導体集積回路を有する。半導体チップ10は、外部端子としてバンプ電極11を有している。バンプ電極11は、半導体チップ10の半導体集積回路との接続関係を有し、所定の配線パターンで形成された図示しないパッド上に形成されている。ここで、バンプ電極11は、半導体チップ10主表面上において相互にチップ端部より中央側に寄って配置されている。
【0024】
上記実施形態によれば、バンプ電極11は、半導体チップ10の端部10Eから極力遠い位置に設けられる。これにより、破線で示すリード12がバンプ電極11に接続されるとすると、リード12は、チップ端部10E上にさしかかるまでに有利に変形できる余裕が生じる。すなわち、リード12は、チップ端部10E上において離れた位置に置くことができる。これにより、半導体チップ10は、バンプ電極11の高さを低くしても、チップ端部10Eと接触し難いリード12との接続形態を得ることができる。リード12は、チップ端部10Eにメタル配線の屑が残留していたとしても、それを回避するのに十分な距離をもって配置できる。また、リード12は、先端の接続領域を除いて絶縁フィルムでコートされることが多い。バンプ電極11の位置関係から、絶縁フィルムの部分をチップ端部10E上に配することが容易になる。リード12の配置形態を保ったまま、樹脂封止してもよい(図示せず)。従って、バンプ電極の高さを低くしつつ、ショート防止に寄与する。
【0025】
図2は、図1のような本発明に係る半導体装置の製造方法の要部を例示する説明図である。半導体集積回路は、半導体チップ20として切り出される前の半導体ウェハ状態で、図示しない半導体素子を複数形成する。そして、半導体集積回路は、これらの半導体素子が関係するよう、層間絶縁膜を介した複数の配線層による配線パターン所定の相互接続によって構成される。各電極パッドPADは、上記配線層いずれかの配線パターンWRでもって、チップ端部20Eよりチップ20の中央側に寄って配置する。設計にあまり負担のかからない、なるべく上層の配線パターンでの引き回しが好ましい。各電極パッドPAD周辺にはパッシベーション膜22が形成される。バンプ電極21は、これら各電極パッドPAD上に形成する。
【0026】
このように、バンプ電極21は、半導体集積回路中央側上方に設けられる能動面バンプの構成である。しかし、設計変更することにより、バンプ電極21下に素子を設けないようにすることも考えられる。これにより、バンプ電極21は、非能動面バンプとして半導体チップ20の中央側に寄って配置することも考えられる。
【0027】
バンプ電極21は、例えば金バンプであり、次のように形成される。TiW/Au積層等のバリアメタル23が電極パッドPAD上を含んでパッシベーション膜22上に形成される。次に、図示しないレジストを塗布し、レジストパターンを形成する。レジストパターンは、電極パッドPAD上方に所定の開口を形成する。レジストパターンに従って電解めっき法により金めっきが達成される。その後、レジストパターンを除去し、電極パッドPAD上の金めっき形状をマスクにしてパッシベーション膜22上の余分なバリアメタルをエッチング除去する。これにより、バンプ電極21が形成される。バンプ電極21は、上述したように、高さを低くすることができ、バンプコストの軽減に寄与する。
【0028】
図3は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の要部を示す平面図である。また、図4は、図3の構成を横から示す図である。
半導体チップ30は、例えばLCDドライバチップである。LCDドライバチップは、半導体素子が複数設けられて構成される半導体集積回路を有する一辺が他辺の五倍以上長い長方形である。
【0029】
LCDドライバチップ内部における半導体集積回路は、図示しないが、信号データが入力される入力回路部、RAM(Random Access Memory)等で構成される記憶部、データ処理部としてゲートアレイ等で形成されるロジック回路部、及びラッチ回路を含み信号出力をする出力回路部等を含み、各部が相関するように半導体集積回路が構成されている。
【0030】
半導体チップ30は、LCDドライバチップとして、入力回路部、出力回路部に対応して狭ピッチで多数のバンプ電極31(311,312)を有する。特に、出力回路部側のバンプ電極312の配列はより狭ピッチで、バンプ電極数も非常に多い。これらバンプ電極31は、半導体チップ30主表面上において相互にチップ端部30Eより中央側に寄って配置されている。これらバンプ電極31は、上記図2に示すように、所定の配線パターンでチップ中央側に寄せられたパッド上に形成されるものである。
【0031】
フィルムキャリア32は、絶縁フィルム33に支持された複数のリード34を有する。フィルムキャリア32は、リード34がインナリード341として露出するデバイスホール35を有する。インナリード341は、半導体チップ30のバンプ電極31それぞれに接続されている。インナリード341とバンプ電極31との接続は、周知のTAB技術が用いられる。すなわち、フィルムキャリア32は、デバイスホール35毎に自動的に送り出されてくる。半導体チップ30は、デバイスホール35の所定位置に合わせ込まれ、ボンディングツールを用いてバンプ電極31とインナリード341が熱圧着等の技術で一括ボンディングされる。
【0032】
インナリード341は、バンプ電極31との接続部から半導体チップ30主表面上で上方に曲がり、チップ端部30Eでは、半導体チップ30と所定の離間距離をとった形態を有する。これは、バンプ電極31が半導体チップ30の中央寄りに配されていることにより可能になった形態である。つまり、リード34は、チップ端部30E上にさしかかるまでにチップ端部30Eと接触し難い位置に十分変形可能だからである。
【0033】
また、フィルムキャリア32は、チップ端部30E近傍上方では絶縁フィルム33が存在する形態となっている。これもまた、バンプ電極31が半導体チップ30の中央寄りに配されていることにより必然的に可能になる形態である。つまり、バンプ電極31からチップ端部30Eまでの距離が長くなったため、フィルムキャリア32は、チップ端部30E上方ではリード34を支持する絶縁フィルム33の領域にかかる形態となる。
【0034】
絶縁フィルム33は、例えばポリイミドフィルムであり、その厚さは100μm以下、例えば70〜80μm程度である。絶縁フィルム33上に厚さ30μ以下、例えば10〜20μm程度のリード34が形成されている。
【0035】
図4において、破線CMは、ウェハのダイシング工程で切り分けられた半導体チップ30に関し、チップ端部30Eに残留する恐れのある切り屑、例えばメタル配線の屑を示している。上述したように、リード34は、チップ端部30Eにメタル配線の屑CMが残留していたとしても、それを回避するのに十分な距離をもって配置できる。しかも、リード34は、チップ端部30E上方においては絶縁フィルム33により保護されている。仮に、リード34がチップ端部30Eに接近するようなことがあっても、絶縁フィルム33が接触し、リード34は保護され、ショートしない。
【0036】
上記実施形態の構成によれば、バンプ電極31は、その高さを低くしつつ、ショート防止に寄与する。因みに、従来の、チップ端部寄りにバンプ電極を配したLCDドライバチップのバンプ電極の高さが20μm程度必要だとすると、本発明の構成を採用したバンプ電極31の高さは、10μm程度と、約50%低くすることが可能である。バンプ電極31は、5〜15μmの範囲の所定高さを有して設けられれば、十分信頼性が保てる。これにより、メタル配線の屑が残留し兼ねない簡便なダイシングを容認でき、かつ、バンプコストを削減しつつ、信頼性を損なわないTCP製品が実現できる。
【0037】
図5は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の要部を示しており、図4の構成において樹脂封止した形態である。第2実施形態と同様の箇所は同一の符号を付す。すなわち、フィルムキャリア32のインナリード341は、上述したように、バンプ電極31との接続部から半導体チップ30主表面上で上方に曲がり、半導体チップ30との所定の離間距離を保持した形態である。樹脂部材41は、上記形態を固定すべく、半導体チップ30端部から近傍の絶縁フィルム33の部分を含んでインナリード341を覆っている。
【0038】
上記樹脂部材41で封止する方法は、例えば次のようである。半導体チップ30とフィルムキャリア32のインナリードボンディング工程後、エポキシ樹脂等を含む流動性のある樹脂を塗布し、定着させる。樹脂部材41は、半導体チップ30端部から近傍の絶縁フィルム33の部分を含んでインナリード341を覆い、硬化させる。樹脂部材41は、様々考えられ限定されない。半導体チップ30周辺上のインナリード341またはリード34の配置形態が保護、固定されればよい。
【0039】
上記実施形態の構成によれば、前記第2実施形態と同様の効果が得られる。バンプ電極31の位置関係により、バンプ電極31の高さを低くでき、しかも半導体チップ30の端部近傍上方においてフィルムキャリア32の絶縁フィルム33を存在させることが容易になる。フィルムキャリア32は、少なくともインナリード341とチップ端部30Eが接触しない形態が得られ、かつ、その形態が樹脂部材41により固定される。これにより、より信頼性が向上するフィルムキャリア32と半導体チップ30の結合形態が得られる。
【0040】
上記第2実施形態、第3実施形態に係る半導体装置は、LCDドライバチップの例を示した。LCDドライバチップは、特にバンプ電極数が多く、また、チップ長手に沿ってバンプ電極をチップ中央側に寄せ易いこともあり、本発明の構成を採用することで、絶大な効果を発揮する。しかし、本発明の構成は、LCDドライバチップ以外のTCP製品にも利用可能である。
【0041】
図6は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置の要部を示す平面図、図7は、図6の構成の横から示す図である。
半導体チップ50は、バンプ電極51を有する。バンプ電極51は、本発明に係る上記各実施形態で示してきたように、半導体チップ50主表面上において、可能な限り相互にチップ端部50Eより中央側に寄って配置されている。バンプ電極51は、前記図2に示すように、所定の配線パターンでチップ中央側に寄せられたパッド上に形成されるものである。
【0042】
フィルムキャリア52は、絶縁フィルム53に支持された複数のリード54を有する。フィルムキャリア52は、リード54がインナリード541として露出するデバイスホール55を有する。インナリード541は、半導体チップ50のバンプ電極51それぞれに接続されている。インナリード541とバンプ電極51との接続は、周知のTAB技術が用いられる。
【0043】
インナリード541は、バンプ電極51との接続部から半導体チップ50主表面上で上方に曲がり、チップ端部50Eでは、半導体チップ50と所定の離間距離をとった形態を有する。また、フィルムキャリア52は、チップ端部50E近傍上方では絶縁フィルム53が存在する形態となっている。両者の形態は、前記第2実施形態で示したように、バンプ電極51が半導体チップ50の中央寄りに配されていることにより実現する。仮に、リード54が、チップ端部50Eに接近するようなことがあっても、絶縁フィルム53により保護される。そして、バンプ電極51の位置関係により、フィルムキャリア52は、バンプ電極51の高さを低くしても、チップ端部50Eと接触し難いインナリードの接続形態が得られる。
【0044】
また、破線で示す樹脂部材56は、半導体チップ50とフィルムキャリア52のインナリードボンディング工程後、半導体チップ50端部から近傍の絶縁フィルム53の部分を含んでインナリード541を覆い、硬化させる。これにより、半導体チップ50周辺上のインナリード541またはリード54の配置形態が保護、固定される。
【0045】
上記実施形態の構成においても、前記第2実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、バンプ電極51の位置関係により、バンプ電極51の高さを低くでき、しかも半導体チップ50の端部近傍上方においてフィルムキャリア52の絶縁フィルム53を存在させることが容易になる。フィルムキャリア52は、少なくともインナリード541とチップ端部50Eが接触しない形態が得られ、かつ、その形態が樹脂部材56により固定される。これにより、より信頼性が向上するフィルムキャリア52と半導体チップ50の結合形態が得られる。
【0046】
上記各実施形態及び方法によれば、バンプ電極は、半導体チップ端部から遠い位置に設けられる。これにより、バンプ電極とリードが接続される場合、リードは、チップ端部上にさしかかるまでチップ端部から接触し難い配置に無理なく変形可能となる。しかも、バンプ電極の配置関係上、半導体チップの端部近傍上方では絶縁フィルムが存在するようになる。これにより、フィルムキャリアは、バンプ電極を低くしても、チップ端部と接触し難いインナリードの接続形態が得られる。また、このようなインナリードの接続形態が、樹脂により固定されれば、より信頼性が向上するフィルムキャリアと半導体チップの結合形態が得られる。この結果、メタル配線の屑が残留し兼ねない簡便なダイシングを容認でき、かつ、バンプ電極の高さを低くしつつ、フィルムキャリアのインナリードのショートを防止できる、製造コストを抑えた半導体装置及びその製造方法、LCDドライバ用パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施形態に係る半導体装置の要部を横から示す図。
【図2】図1のような構成の半導体装置の製造方法の要部を例示する説明図。
【図3】第2実施形態に係る半導体装置の要部を示す平面図。
【図4】図3の構成を横から示す図。
【図5】第3実施形態に係る半導体装置の要部で図4の樹脂封止形態を示す図。
【図6】第4実施形態に係る半導体装置の要部を示す平面図。
【図7】図6の構成を横から示す図。
【符号の説明】
【0048】
10,20,30,50…半導体チップ、10E,20E,30E,50E…チップ端部、11,21,31,51…バンプ電極、12,34,54…リード、13…半導体素子回路、22…パッシベーション膜、23…バリアメタル、32,52…フィルムキャリア、33,53…絶縁フィルム、341,541…インナリード、35,55…デバイスホール、41,56…樹脂封止部材、CM…メタル配線の屑。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が複数設けられて構成される半導体集積回路を有する半導体チップと、
前記半導体チップの主表面上において相互にチップ端部より中央側に寄って配置された前記半導体集積回路との接続関係を有する外部接続用の複数のバンプ電極と、
を含む半導体装置。
【請求項2】
前記バンプ電極は、前記半導体集積回路を構成する配線層の所定層を用いた配線パターンを下地とし、前記半導体集積回路上方に設けられている請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体素子が複数設けられて構成される半導体集積回路を有する半導体チップと、
前記半導体チップの主表面上において相互にチップ端部より中央側に寄って配置された前記半導体集積回路との接続関係を有する外部接続用の複数のバンプ電極と、
絶縁フィルムに支持された複数のリードを有し、前記半導体チップの端部近傍上方では前記絶縁フィルムが存在し、かつ前記リードがインナリードとして前記バンプ電極それぞれに接続されるフィルムキャリアと、
を含む半導体装置。
【請求項4】
前記フィルムキャリアのインナリードは、前記バンプ電極との接続部から前記半導体チップ主表面上で上方に曲がり、前記半導体チップとの所定の離間距離を保持している請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記フィルムキャリアのインナリードは、前記バンプ電極との接続部から前記半導体チップ主表面上で上方に曲がり、前記半導体チップとの所定の離間距離を保持した形態で、前記半導体チップ端部から近傍の前記絶縁フィルムの部分を含んで樹脂部材により保護されている請求項3記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体チップは、LCDドライバ用チップである請求項1〜5いれか一つに記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体基板上の各チップ領域に半導体素子を複数配し、層間絶縁膜を介した複数の配線層による配線パターンの所定の相互接続により半導体集積回路を構成するウェハ工程に関し、前記配線層いずれかの配線パターンでもって前記チップ領域端部より前記チップ領域の中央側に寄って各電極パッドを配置し、前記各電極パッド上に外部接続用のバンプ電極を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記半導体基板が前記各チップ領域に応じてダイシングされ半導体チップ化される工程と、
絶縁フィルムに支持されたリードを有するフィルムキャリアを準備し、前記バンプ電極それぞれに一括で前記リードがインナリードとして接続されるインナリードボンディング工程と、を含み、
前記インナリードボンディング工程後、前記フィルムキャリアは、前記半導体チップの端部近傍上方において前記絶縁フィルムが位置するように保持する請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記半導体基板が前記各チップ領域に応じてダイシングされ半導体チップ化される工程と、
絶縁フィルムに支持されたリードを有するフィルムキャリアを準備し、前記バンプ電極それぞれに一括で前記リードがインナリードとして接続されるインナリードボンディング工程と、を含み、
前記インナリードボンディング工程後、前記インナリードは、前記半導体チップ端部から近傍の前記絶縁フィルムの部分を含んで樹脂により保護され、前記フィルムキャリアは、前記半導体チップの端部近傍上方において前記絶縁フィルムが位置するように保持する請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
半導体素子が複数設けられて構成される半導体集積回路を有する一辺が他辺の五倍以上長い長方形の半導体チップと、
前記半導体チップの主表面上において長手の対向する一辺に沿って相互にチップ端部より中央側に寄って配置された前記半導体集積回路との接続関係を有する外部接続用の複数のバンプ電極と、
絶縁フィルムに支持された複数のリードを有し、前記半導体チップの端部近傍上方では前記絶縁フィルムが存在し、かつ前記リードがインナリードとして前記バンプ電極それぞれに接続され前記インナリードが前記バンプ電極との接続部から前記半導体チップ主表面上で上方に曲がり前記半導体チップとの所定の離間距離をとった形態を有するフィルムキャリアと、
前記半導体チップ端部から近傍の前記絶縁フィルムの部分を覆うと共に、少なくとも前記フィルムキャリアのインナリードの形態を固定する保護用の樹脂と、
を含むLCDドライバ用パッケージ。
【請求項11】
前記バンプ電極は、5〜15μmの範囲の所定高さを有して設けられている請求項10記載のLCDドライバ用パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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