説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】凹凸が選択的に形成された基板の上に平坦な結晶成長膜が形成された半導体装置を実現できるようにする
【解決手段】半導体装置は、基板10と基板10の上に形成された半導体層とを備えている。基板10は、主面に設けられた平坦領域20と、平坦領域20と異なる部分に設けられ、第1の凹部11が形成された第1の凹凸領域21と、第1の凹凸領域21と平坦領域20との間に設けられ、主面の上に半導体を結晶成長させる場合の成長核の発生確率が、第1の凹凸領域21よりも低く且つ平坦領域20よりも高い、第2の凹部12が形成された第2の凹凸領域22とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体層を基板の上に成長させる際に、凹凸を有する面に結晶成長させる場合がある。例えば、微細な凹凸を有する基板の上に半導体層を結晶成長させることにより、半導体層の結晶性が向上するため、特性の優れた半導体装置を得ること可能となる(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
また、半導体発光装置(LED)において、光出射面に2次元周期を有する凹凸である、フォトニック結晶を設けることにより、光取り出し効率を向上させることができる。フォトニック結晶は、2次元周期を有する凹凸を設けた基板の上に半導体層を成長させることにより容易に形成することができる(例えば、特願2004−189892を参照。)。
【特許文献1】特開2002−289540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、凸凹を形成した基板の上に、半導体層を結晶成長する場合には、以下のような問題が生じることを本願発明者らは見いだした。図11はフォトニック結晶を備えたLEDを形成するための基板を示している。図11に示すようにフォトニック結晶を備えたLEDを形成するための基板110には、第1の領域112にのみ凹部111が周期的に形成されている。凹部111は、LEDの出射光の波長程度の周期を有する格子状に形成する必要がある。従って、通常は電子ビーム描画等を用いて形成しなければならず、基板の生産性を上げるためには描画面積をできるだけ小さくする必要がある。このため、第1の領域112の周囲に設けられた第2の領域113には凹部は形成されておらず、表面は平坦である。
【0005】
第1の領域112及び第2の領域113にGaN等からなるエピタキシャル層114を結晶成長すると、エピタキシャル層114は、第1の領域112の上と、第2の領域113とに分離して成長し、結晶成長が不連続になるという問題が生じる。これは、凹部111が周期的に形成された第1の領域112においては、平坦な第2の領域113と比べて成長核の発生確率が高くなり、第1の領域112と第2の領域113との境界において成長核の発生確率が不連続に変化するためである。第1の領域112において第2の領域113と比べて成長核の発生率が高くなる理由は、第1の領域112においては、凹部111により原材料の拡散長が短くなったり、ガス拡散が抑制されたりするという理由及び凹部と平坦部分とではV族元素とIII族元素との比が異なる等の理由による。
【0006】
また、成長核の発生率が不連続に変化する第1の領域112と第2の領域113との境界付近においては、異常な成長が生じ、膜厚が厚くなるという問題も生じる。境界領域における膜厚は、第1の領域112及び第2の領域113における膜厚の倍程度となる。
【0007】
結晶成長後の膜厚が不均一となると、結晶成長後のプロセスにおいて、フォトレジストを均一に塗布することができない、また、貼り合せ工程において密着性が悪化する。第1の領域112に凹部111の代わりに凸部が形成されている場合にも同じ問題が生じる。
【0008】
本発明は、本願発明者らが見いだした、フォトニック結晶等を形成する基板の凹凸が形成された領域と平坦な領域との境界付近における、結晶成長が不連続になり、異常成長が発生するという問題を解決し、凹凸が選択的に形成された基板の上に平坦な結晶成長膜が形成された半導体装置及びその製造方法を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の目的を達成するため、本発明は半導体装置を、成長核の発生確率がなだらかに変化する基板を備えている構成とする。
【0010】
具体的に本発明に係る半導体装置は、主面に設けられた第1の凹部又は凸部が形成された第1の凹凸領域と、第1の凹凸領域と隣接して設けられ、主面の上に半導体を結晶成長させる場合の成長核の発生確率が第1の凹凸領域と比べて低い、第2の凹部又は凸部が形成された第2の凹凸領域を有する基板と、基板の上に形成された半導体層とを備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の半導体装置によれば、第1の凹凸領域と隣接して設けられ、主面の上に半導体を結晶成長させる場合の成長核の発生確率が第1の凹凸領域と比べて低い、第2の凹部又は凸部が形成された第2の凹凸領域を有する基板を備えているため、基板における成長核の発生確率をなだらかに変化させることができる。第1の凹凸領域と、第2の凹凸領域とにおいて連続して半導体を結晶成長させることができる。また、第1の凹凸領域の、第2の凹凸領域と接する側において半導体の異常成長が生じることがない。その結果、平坦で均一な半導体層を備えた半導体装置を実現できる。
【0012】
本発明の半導体装置において基板は、主面における第2の凹凸領域を挟んで第1の凹凸領域と反対側に設けられた平坦領域を有し、第2の凹凸領域における成長核の発生確率は、平坦領域における成長核の発生確率と比べて高いことが好ましい。このような構成とすることにより、第1の凹凸領域と、第2の凹凸領域と、平坦領域とにおいて連続して半導体を結晶成長させることができる。
【0013】
本発明の半導体装置において第2の凹凸領域における第2の凹部又は凸部の密度は、第1の凹凸領域における第1の凹部又は凸部の密度と比べて低いことが好ましい。このような構成とすることにより、第2の凹凸領域における成長核の発生確率を第1の凹凸領域における成長核の発生確率よりも小さくできる。
【0014】
本発明の半導体装置において、第2の凹凸領域は、第1の凹凸領域と接する側における第2の凹部又は凸部の密度が、第1の凹凸領域と接する側の反対側と比べて高いことが好ましい。このような、構成とすることにより、成長核の発生確率をよりなだらかに変化させることが可能となる。
【0015】
本発明の半導体装置において、第1の凹部又は凸部は、格子状に配列されており、第2の凹部又は凸部は、第1の凹部又は凸部が配列された格子と比べて配列周期が長い格子状に配列されていることが好ましい。このような構成とすることにより、第2の凹凸の密度を第1の凹凸の密度よりも確実に小さくすることができる。
【0016】
本発明の半導体装置において、第1の凹部又は凸部は、格子状に配列されており、第2の凹部又は凸部は、第1の凹部又は凸部が配列された格子と同一周期の格子の格子点から任意に選択した格子点を除いた格子点に配列されていることが好ましい。このような構成とすることにより、第2の凹凸の密度を第1の凹凸の密度よりも確実に小さくすることができる。
【0017】
本発明の半導体装置において、第2の凹部又は凸部の径は、第1の凹部又は凸部の径よりも小さいことが好ましい。このような構成とすることにより、第2の凹凸領域における成長核の発生確率を第1の凹凸領域における成長核の発生確率よりも小さくできる。
【0018】
本発明の半導体装置において第2の凹部又は凸部の径は、第1の凹凸領域と接する側において第1の凹凸領域と接する側の反対側と比べて大きいことが好ましい。このような構成とすることにより、成長核の発生確率をよりなだらかに変化させることが可能となる。
【0019】
本発明の半導体装置において第1の凹部又は凸部は、第1の凹部であり、第2の凹部又は凸部は、第2の凹部であり、第2の凹部の深さは、第1の凹部の深さ以下であり且つ第1の凹凸領域と接する側において第1の凹凸領域と接する側の反対側と比べて浅いことが好ましい。このような構成とすることにより、第2の凹凸領域における成長核の発生確率を第1の凹凸領域における成長核の発生確率よりも小さくできる。
【0020】
この場合において第2の凹部は、上部の径が底部の径よりも大きいテーパ形状を有していることが好ましい。このような構成とすることにより、第2の凹部に半導体層を埋め込むことが容易となる。
【0021】
本発明の半導体装置において第1の凹凸は、第1の凸部であり、第2の凹凸は、第2の凸部であり、第2の凸部の高さは、第1の凸部の高さ以下であり且つ第1の凹凸領域と接する側において第1の凹凸領域と接する側の反対側と比べて低いことが好ましい。
【0022】
この場合において第2の凸部は、上部の径が底部の径よりも小さいテーパ形状を有していることが好ましい。
【0023】
本発明の半導体装置の製造方法は、主面に設けられた平坦領域と、主面の平坦領域と異なる部分に設けられ、第1の凹部又は凸部を有する第1の凹凸領域と、第1の凹凸領域と平坦領域との間に設けられ、半導体を結晶成長させる場合の成長核の発生確率が第1の凹凸領域よりも低く且つ平坦領域よりも高い、第2の凹部又は凸部が形成された第2の凹凸領域とを有する基板を準備する工程(a)と、基板の上に、半導体層を結晶成長する工程(b)とを備えていることを特徴とする。
【0024】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、第1の凹凸領域と平坦領域との間に設けられ、半導体を結晶成長させる場合の成長核の発生確率が第1の凹凸領域よりも低く且つ平坦領域よりも高い、第2の凹部又は凸部が形成された第2の凹凸領域を有する基板を備えているため、凹凸が形成された基板の上に結晶性が高く且つ平坦で均一な半導体層を形成することができる。従って、結晶性が高く均一な半導体層を利用した半導体装置及び凹凸を利用した半導体装置を容易に実現することができる。
【0025】
本発明の半導体装置の製造方法において工程(a)は、第1の凹凸領域と第2の凹凸領域とを異なるマスクを用いてエッチングすることにより、第1の凹部又は凸部と第2の凹部又は凸部とをそれぞれ形成する工程であり、第2の凹凸領域における第2の凹部又は凸部の密度は、第1の凹凸領域における第1の凹部又は凸部の密度と比べて低くなるように形成することが好ましい。
【0026】
本発明の半導体装置の製造方法において工程(a)は、第1の凹凸領域と第2の凹凸領域とを異なるマスクを用いてエッチングすることにより、第1の凹部と第2の凹部とをそれぞれ形成する工程であり、第2の凹部の深さは、第1の凹部の深さ以下であり且つ第1の凹凸領域と接する側において平坦領域と接する側と比べて浅くすることが好ましい。
【0027】
本発明の半導体装置の製造方法において工程(a)は、第1の凹凸領域と第2の凹凸領域とを異なるマスクを用いてエッチングすることにより、第1の凸部と第2の凸部とをそれぞれ形成する工程であり、第2の凸部の高さは、第1の凸部の高さ以下であり且つ第1の凹凸領域と接する側において平坦領域と接する側と比べて低くすることが好ましい。
【0028】
本発明の半導体装置の製造方法は工程(b)よりも後に、基板を除去する工程をさらに備えていることが好ましい。このような構成とすることにより、半導体層の表面にフォトニック結晶を形成することができる。また、半導体発光装置とした場合に、基板による光の吸収を防止し、より発光効率を向上させることができる。
【0029】
本発明の半導体装置の製造方法は工程(b)よりも後に、基板の平坦領域を除去する工程をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法によれば、凹凸が選択的に形成された基板の上に平坦な結晶成長膜が形成された半導体装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1(a)及び(b)は第1の実施形態に係る半導体装置の形成用基板であり、(a)は平面構成を示し、(b)は(a)のIb−Ib線における断面構成を示している。
【0032】
基板10の主面には、平坦領域20と、第1の凹部11が形成された第1の凹凸領域21と、平坦領域20と第1の凹凸領域21との間に設けられ、第1の凹部11と比べて密度が低い第2の凹部12が形成された第2の凹凸領域22とが設けられている。
【0033】
フォトニック結晶を形成する場合には、第1の凹凸領域21において第1の凹部11を、LEDの出射光の波長と同程度の長さの周期を有する格子状に形成する。例えば、一般的な波長が450nmのGaN系のLEDにおいては、周期を400nm程度の三角格子状に形成すればよい。
【0034】
結晶成長は、供給された原料ガスが基板付近で反応した生成物から成長核が発生し、発生した成長核から2次元的又は3次元的に結晶が成長したり、成長核同士が重合することにより進行する。基板に凹部が形成されている場合には、原料ガス及び反応生成物の拡散が抑制されるため、成長核の発生確率が高くなり、凹部の密度が高い程成長核の発生確率が高くなる。
【0035】
本実施形態の半導体装置の形成用基板においては、第2の凹凸領域22には、第2の凹部12が4000nmの周期で三角格子状に形成されており、第2の凹部12の密度は第1の凹部11の密度よりも小さくなる。従って、第2の凹凸領域22の成長核の発生確率は、第1の凹凸領域21と比べて小さく、平坦領域20と比べて大きい。つまり、成長核の発生確率が第1の凹凸領域21から第2の凹凸領域22を経て平坦領域20まで、段階的に変化するため、第1の凹凸領域21、第2の凹凸領域22及び平坦領域20のそれぞれにおいて分離して結晶成長が進むことを抑えることができる。また、第1の凹凸領域21と第2の凹凸領域22との境界部分及び第2の凹凸領域22と平坦領域20との境界部分において、異常成長が生じにくくなる。その結果、均一で平坦な結晶膜を得ることが可能となる。
【0036】
図2は凹部の形成周期と半導体層の異常成長との関係を測定した結果を示している。一定周期の凹部を形成した基板の上に、半導体層としてAlGaN膜をMOCVD法により1μm成長させた。図2の横軸は凹部の周期を示しており、縦軸は凹部の形成領域と平坦領域との境界部分における膜厚を示している。なお、基板にはサファイアを用い、凹部の直径は200nm、深さは150nmとした。
【0037】
図2に示すように凹部の形成周期が長くなるに従い、境界部分と他の部分との膜厚の差は小さくなり、境界部分における異常成長が生じにくくなり、膜の段切れが生じなくなる。結晶成長後のフォトレジストの塗布を均一に行うためには、膜厚の差を300nm以下として、膜の段切れをなくし、連続膜とすることが好ましい。従って、第2の凹部12の周期は3000nm以上とすることが好ましい。
【0038】
一方、第2の凹部12の周期と第1の凹部11の周期との差が大きくなりすぎると、第1の凹凸領域21と第2の凹凸領域22との境界部分において異常成長が発生する。従って、第2の凹部12の周期は、第1の凹部11の周期の15倍以下とすることが好ましい。
【0039】
第2の凹凸領域22の幅は、異常成長を抑制するためにはできるだけ広くすることが好ましいが、第2の凹凸領域22の形成によるプロセス時間の増加を考慮すると、50μm程度とすればよい。
【0040】
第2の凹凸領域22において、第2の凹部12の周期を段階的に変化させてもよい。例えば、図3に示すように第2の凹凸領域22の第1の凹凸領域21の側から平坦領域20の側へ、第2の凹部12の周期を400nm、1000nm、1500nm、3000nm、5000nmと順に変化させる。これにより、成長核の発生確率をより連続的に変化させることができるため、結晶膜の均一性が向上する。また、第1の凹部11の周期が非常に短い場合にも、均一な結晶膜を得ることが可能となる。
【0041】
本実施形態においては、第2の凹部12の周期を第1の凹部11の周期よりも長くすることにより、第2の凹部12の密度を第1の凹部11よりも小さくしている。しかし、図4に示すように周期自体は第1の凹部と同じとして、格子点をランダムに間引くことにより密度を小さくしてもよい。この場合、第2の凹部12の密度は、第1の凹部11の密度の10分の1〜15分の1程度とすることが好ましい。また、密度を徐々に変化させてもよい。
【0042】
また、図5に示すように第2の凹部12の直径を小さくすることにより、第2の凹部12の密度を第1の凹部11より小さくしてもよい。例えば、第2の凹凸領域22の第1の凹凸領域21の側から平坦領域20の側へ、第2の凹部12の直径を200nm、150nm、100nm、50nmと順に小さくする。
【0043】
以上示したような本実施形態の基板は、結晶性に優れた半導体層を第1の凹凸領域の上に形成できる。従って、半導体発光装置(LED)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)及びヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)等の半導体層の結晶性を向上させ高性能化することができる。また、LEDに用いた場合には、第1の凹凸領域の上に半導体層を形成することによりフォトニック結晶を容易に形成することができる。
【0044】
さらに、第1の凹凸領域と、第1の凹凸領域と比べて成長核の発生密度が小さい第2の凹凸領域とを備えているため、基板の上に均一で平坦な半導体層を形成することができる。これにより、半導体層を成長した後の工程においてレジストの塗布等が容易となり、半導体装置の製造を容易に行うことが可能となる。
【0045】
本実施形態においては、第1の凹凸領域21及び第2の凹凸領域22に凹部を形成したが、凸部を形成してもよい。また、基板自体に凹凸を形成する例を示しているが、基板の上に下地層を形成し、下地層に凹凸を形成してもよい。また、第1の凹部11及び第2の凹部12を三角格子状に配列したが、正方格子又は六方格子等に配列してもよい。基板の上に形成する半導体層の結晶性を高める場合には、第1の凹部11及び第2の凹部12を格子状ではなくランダムに配置してもよい。
【0046】
(第1の実施形態の一変形例)
以下に、第1の実施形態の一変形例について図面を参照して説明する。図6は第1の実施形態の一変形例に係る、半導体装置の形成用基板であり、(a)は平面構成を示し、(b)は(a)のIb−Ib線における断面構成を示している。
【0047】
第1の実施形態においては、第2の凹部12の密度を第1の凹部11の密度よりも小さくすることにより、第2の凹凸領域22における成長核の発生確率を、第1の凹凸領域21における成長核の発生確率と比べて小さくした。本変形例においては、第2の凹部12の深さを第1の凹部11の深さよりも浅くすることにより、第2の凹凸領域22における成長核の発生確率を第1の凹凸領域21における成長核の発生確率と比べて小さくしている。
【0048】
例えば、第2の凹凸領域22の第1の凹凸領域21の側から平坦領域20の側へ、第2の凹部12の深さを150nm、120nm、90nm、60nm、30nmと順に小さくする。凹部の深さは、電子ビームのドーズ量を調整することにより、レジストパターンの抜き量を変えることにより変化させればよい。
【0049】
さらに、図7に示すように、第2の凹部12の断面形状をテーパを有する形状としてもよい。第2の凹部12の側壁を外側に向けて傾斜させることにより、第2の凹部12の上端部においてなだらかに結晶を成長させることができ、より均一な結晶膜を得ることが可能となる。第2の凹部12の底面がV字状の例を示しているが、底面は平らでもよい。
【0050】
本変形例においても凹部に代えて、凸部を形成してもよい。また、基板自体に凹凸を形成する代わりに、基板の上に下地層を形成し、下地層に凹凸を形成してもよい。
【0051】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図8は第2の実施形態に係る半導体装置の断面構成を示している。図8に示すように本実施形態の半導体装置は発光装置(LED)であり、サファイアからなる基板30と、基板30の上に形成された半導体層50とを含む。
【0052】
基板30には、平坦領域40と、第1の凹部31が形成された第1の凹凸領域41と、平坦領域40と第1の凹凸領域41との間に設けられ、第1の凹部31と比べて密度が低い第2の凹部32が形成された第2の凹凸領域42とが設けられている。第1の凹部31は、直径が200nmで深さが150nmであり、400nm周期の三角格子状に配置されている。第2の凹部32は、直径が200nmで深さが150nmであり、4000nm周期の三角格子状に配置されている。第2の凹凸領域42の幅は50μmである。
【0053】
半導体層50は、基板30の上に形成された厚さが4μmのn型GaN層51と、厚さが3nmのInGaN活性層52と、厚さが200nmのp型GaN層53とからなる。p型GaN層53の上には、白金と金とが順次積層された厚さが1μmの高反射p側電極54が形成されている。n型GaN層51の一部は露出されており、露出部分には、チタンと金とが順次積層された厚さが1μmのn側電極55が形成されている。
【0054】
発光光は、基板30の側から取り出される。基板30には周期的に形成された第1の凹部31が設けられているため、n型GaN層51と基板30との界面に対して臨界屈折角よりも大きい法線角度で活性層52から放出された光も、装置から出射される。
【0055】
一方、第1の凹凸領域41と平坦領域40との間には、第1の凹部31と比べて密度が低い第2の凹部32が形成された第2の凹凸領域42が設けられている。従って、第1の凹凸領域41と第2の凹凸領域42との界面及び第2の凹凸領域42と平坦領域40との界面において半導体層50が異常成長することがなく、平坦で均一な半導体層50を得ることができる。その結果、半導体層50にフォトレジストを均一に塗布することが可能となり、結晶成長後の電極形成工程等を効率よく行うことができる。
【0056】
なお、本実施形態においては、第2の凹部32の周期を第1の凹部31の周期よりも長くした基板30を用いたが、第1の実施形態又は第1の実施形態の一変形例において示した他の基板を用いても同様の効果が得られる。また、基板にサファイアを用いたが、活性層から放射される光に対して透明な材料であれば、他の材質の基板を用いてもよい。
【0057】
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。図9は第3の実施形態に係る半導体装置の断面構成を示している。図9に示すように本実施形態の半導体装置は、出射面にフォトニック結晶が形成されたLEDである。保持基板87の上に、p側電極84を介在させて、p型GaN層83と、InGaN活性層82と、n型GaN層81とが順次形成された半導体層が保持されている。n型GaN層81の上には、n側電極85が形成されていると共に、直径が200nmで高さが150nmのフォトニック結晶が400nm周期の三角格子状に配置されている。
【0058】
図10は本実施形態に係るフォトニック結晶を有するLEDの製造方法を工程順に示している。まず、図10(a)に示すように、サファイアからなる基板60に、第1の凹凸領域71及び第2の凹凸領域72を形成する。第1の凹凸領域71には、直径が200で深さが150nmの第1の凹部61を400nm周期の三角格子状に形成する。第2の凹凸領域72は第1の凹凸領域71の周囲に50μmの幅で設け、直径が200nmで深さが150nmの第2の凹部62を4000nm周期の三角格子状に形成する。第1の凹部61及び第2の凹部62は、電子ビーム露光と反応性イオンエッチング(RIE)法とを用いて形成すればよい。第2の凹凸領域72の外側は、平坦領域70となっている。
【0059】
次に、図10(b)に示すように基板60の上に、有機金属化学気相堆積(MOCVD)法を用いてn型GaN層81と、InGaN活性層82と、p型GaN層83とを順次結晶成長する。
【0060】
次に、図10(c)に示すようにp型GaN層83の上に厚さが1μmの白金と金とが順次積層された層からなるp側電極84を形成した後、導電性の保持基板87をp側電極84の上に貼り付ける。
【0061】
次に、図10(d)に示すように基板60を剥離する。これにより、n型GaN層81の表面にフォトニック結晶が露出する。続いて、n型GaN層81の表面にチタンと金とからなるn側電極85を形成する。
【0062】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、第1の凹部61が周期的に形成された基板60の上に、n型GaN層81を成長させた後、基板60を除去することにより、容易にフォトニック結晶を形成することができる。また、第1の凹部61が形成された第1の凹凸領域71と平坦領域70との間には、第1の凹部61と比べて密度が小さい第2の凹部62が形成された第2の凹凸領域72が設けられている。
【0063】
成長核の発生確率は、第1の凹凸領域71から第2の凹凸領域72を経て平坦領域70まで順に小さくなる。従って、基板60の上に半導体層を平坦に成長させることが可能となる。p側電極84の形成及び保持基板87の貼り付け等の工程は、平坦面を加工する工程となるため、精度良く行うことができる。その結果、電気的特性に優れたLEDを歩留まりよく製造することが可能となる。
【0064】
なお、本実施形態において、第2の凹部62の周期を第1の凹部61の周期と比べて長くした基板60を用いたが、第1の実施形態及び一変形例において示した他の基板を用いてもよい。また、基板に凹部を形成する例を示したが、凸部を形成してもよい。
【0065】
なお、上記実施形態において波長が450nmの青色LEDを例に説明したが、活性層にAlGaInNを用い、n型およびp型GaN層の代わりにAlGaNを用い、紫外LEDを形成した場合でも、上記と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法は、凹凸が選択的に形成された基板の上に平坦な結晶成長膜を形成することができ、半導体装置及びその製造方法等として有用である
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置に用いる基板を示し、(a)は平面図であり、(b)は(a)のIb−Ib線における断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置における基板に形成した凹部の周期と、半導体層の異常成長との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置に用いる基板の別の例を示す平面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置に用いる基板の別の例を示す平面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置に用いる基板の別の例を示す平面図である。
【図6】(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態の一変形例に係る半導体装置に用いる基板を示し、(a)は平面図であり、(b)は(a)のVIb−VIb線における断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の一変形例に係る半導体装置に用いる基板の別の例を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図11】本発明の課題を説明するために従来の基板に形成された半導体層の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
10 基板
11 第1の凹部
12 第2の凹部
20 平坦領域
21 第1の凹凸領域
22 第2の凹凸領域
30 基板
31 第1の凹部
32 第2の凹部
40 平坦領域
41 第1の凹凸領域
42 第2の凹凸領域
51 n型GaN層
52 InGaN活性層
53 p型GaN層
54 p側電極
55 n側電極
60 基板
61 第1の凹部
62 第2の凹部
70 平坦領域
71 第1の凹凸領域
72 第2の凹凸領域
81 n型GaN層
82 InGaN活性層
83 p型GaN層
84 p側電極
85 n側電極
87 保持基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に設けられた第1の凹部又は凸部が形成された第1の凹凸領域と、前記第1の凹凸領域と隣接して設けられ、前記主面の上に半導体を結晶成長させる場合の成長核の発生確率が前記第1の凹凸領域と比べて低い、第2の凹部又は凸部が形成された第2の凹凸領域を有する基板と、
前記基板の上に形成された半導体層とを備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記基板は、
前記主面における前記第2の凹凸領域を挟んで前記第1の凹凸領域と反対側に設けられた平坦領域を有し、
前記第2の凹凸領域における成長核の発生確率は、前記平坦領域における成長核の発生確率と比べて高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の凹凸領域における前記第2の凹部又は凸部の密度は、前記第1の凹凸領域における前記第1の凹部又は凸部の密度と比べて低いことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の凹凸領域は、前記第1の凹凸領域と接する側における前記第2の凹部又は凸部の密度が、前記第1の凹凸領域と接する側の反対側と比べて高いことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の凹部又は凸部は、格子状に配列されており、
前記第2の凹部又は凸部は、前記第1の凹部又は凸部が配列された格子と比べて配列周期が長い格子状に配列されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の凹部又は凸部は、格子状に配列されており、
前記第2の凹部又は凸部は、前記第1の凹部又は凸部が配列された格子と同一周期の格子の格子点から任意に選択した格子点を除いた格子点に配列されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2の凹部又は凸部の径は、前記第1の凹部又は凸部の径よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2の凹部又は凸部の径は、前記第1の凹凸領域と接する側において前記第1の凹凸領域と接する側の反対側と比べて大きいことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1の凹部又は凸部は、第1の凹部であり、
前記第2の凹部又は凸部は、第2の凹部であり、
前記第2の凹部の深さは、前記第1の凹部の深さ以下であり且つ前記第1の凹凸領域と接する側において前記第1の凹凸領域と接する側の反対側と比べて浅いことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2の凹部は、上部の径が底部の径よりも大きいテーパ形状を有していることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1の凹凸は、第1の凸部であり、
前記第2の凹凸は、第2の凸部であり、
前記第2の凸部の高さは、前記第1の凸部の高さ以下であり且つ前記第1の凹凸領域と接する側において前記第1の凹凸領域と接する側の反対側と比べて低いことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第2の凸部は、上部の径が底部の径よりも小さいテーパ形状を有していることを特徴とする請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
主面に設けられた平坦領域と、前記主面の前記平坦領域と異なる部分に設けられ、第1の凹部又は凸部を有する第1の凹凸領域と、前記第1の凹凸領域と前記平坦領域との間に設けられ、半導体を結晶成長させる場合の成長核の発生確率が前記第1の凹凸領域よりも低く且つ前記平坦領域よりも高い、第2の凹部又は凸部が形成された第2の凹凸領域とを有する基板を準備する工程(a)と、
前記基板の上に、半導体層を結晶成長する工程(b)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記工程(a)は、前記第1の凹凸領域と前記第2の凹凸領域とを異なるマスクを用いてエッチングすることにより、前記第1の凹部又は凸部と前記第2の凹部又は凸部とをそれぞれ形成する工程であり、
前記第2の凹凸領域における前記第2の凹部又は凸部の密度は、前記第1の凹凸領域における前記第1の凹部又は凸部の密度と比べて低くなるように形成することを特徴とする請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記工程(a)は、前記第1の凹凸領域と前記第2の凹凸領域とを異なるマスクを用いてエッチングすることにより、第1の凹部と第2の凹部とをそれぞれ形成する工程であり、
前記第2の凹部の深さは、前記第1の凹部の深さ以下であり且つ前記第1の凹凸領域と接する側において前記平坦領域と接する側と比べて浅くすることを特徴とする請求項13に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記工程(a)は、前記第1の凹凸領域と前記第2の凹凸領域とを異なるマスクを用いてエッチングすることにより、第1の凸部と第2の凸部とをそれぞれ形成する工程であり、
前記第2の凸部の高さは、前記第1の凸部の高さ以下であり且つ前記第1の凹凸領域と接する側において前記平坦領域と接する側と比べて低くすることを特徴とする請求項13に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記工程(b)よりも後に、前記基板を除去する工程をさらに備えていることを特徴とする請求項13から16のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記工程(b)よりも後に、前記基板の前記平坦領域を除去する工程をさらに備えていることを特徴とする請求項13から17のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate