説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】マイグレーションに起因する電気的な不良を防止する。
【解決手段】半導体装置10は、絶縁性薄膜基材20a、及び複数のリード22を有しているテープキャリア20と、テープキャリアに搭載されており、リードに接続されている複数の電極32を有している半導体チップ30と、半導体チップの少なくとも側面及び下面30bを一体的に覆っている封止部40と、絶縁性薄膜基材の裏面20ab側に設けられている第1撥水性膜50aとを具えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関し、特に柔軟性を有しているテープキャリア上に搭載されている半導体チップを含む封止パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
多ピン化による高密度実装の要求が高まるにつれて、半導体装置の様々なパッケージ形態が開発されてきている。
【0003】
このようなパッケージ形態の1つに、柔軟性のベーステープを基材としているため、柔軟性を有しているテープキャリアを用いるいわゆるCOF(Chip On Film)パッケージがある。
【0004】
COFパッケージとは、微細な配線パターンが形成されたテープキャリア上に半導体チップを搭載して、半導体チップの電極(以下、単にピン又はバンプとも称する。)とこの配線パターンとを電気的に接続した後、樹脂等により封止したパッケージである。
【0005】
COFパッケージは、他のパッケージ形態と比較して、より多ピン化、小型化及び薄型化が容易であり、例えばフラットパネルディスプレイ(FPD)といったデバイスに適用される、より薄型化が求められる半導体装置の高密度表面実装に極めて好適であるので、その利用範囲はますます拡大していくものと期待されている。
【0006】
このようなパッケージのさらなる多ピン化及び小型化の要求により、半導体チップが具える複数の電極同士の間隔(以下、単にピッチとも称する。)の急速な狭小化が進行している。
【0007】
電極ピッチの狭小化の進行に対応して、テープキャリアが具える配線の配線ピッチもより狭小化されてきている。
【0008】
このように、電極ピッチ及び配線ピッチがより狭小化されたパッケージには、エレクトロンマイグレーション及びイオンマイグレーション(以下、単にマイグレーションと総称する。)と称される現象に起因する電気的な不良が発生するおそれがある。
【0009】
ここでいうマイグレーションとは、半導体チップの電極にバイアス電圧が印加されたときに、電極同士間又は配線同士間でこれらを構成する金属材料が溶解し、これがデンドライト状の析出物として再析出することにより、電極同士間又は配線同士間の短絡、配線の断線といった電気的な不具合を発生させてしまう現象をいう。
【0010】
このマイグレーションは、電極又は配線に水分又は塩素イオンといったイオンが接触することにより発生しやすくなるといわれている。
【0011】
例えばCOFパッケージにおいて、このようなマイグレーションは、テープキャリアの上面側に設けられていて半導体チップを封止している封止部から、又はテープキャリアの下面側から浸透して配線或いは電極に至る水分の浸透に起因すると考えられている。
【0012】
特にテープキャリアの下面とその上側の配線及び搭載されている半導体チップの電極との離間距離は極めて小さいため、マイグレーションの原因となる水分の浸透の大部分は、このテープキャリアの下面側から起こるものと推測される。
【0013】
マイグレーションの発生を防止することを目的とするCOFパッケージが知られている。このCOFパッケージは、半導体チップが開口部内でインナーリードにより支持されて搭載されているテープキャリアを含んでいる。このCOFパッケージは、テープキャリアに搭載されている半導体チップを上面側から封止する封止部、すなわち第1の封止樹脂の直下に、下面側からこの開口部内を覆うさらなる封止樹脂、すなわち第2の封止樹脂を具えている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−221107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1が開示する構成では、封止部の直下である開口部内を覆う封止樹脂は、封止部と同一材料、すなわち従来の樹脂材料により構成するのが好ましいとされているため、半導体装置下側からの水分の侵入を、ある程度は防ぐことができるとしても十分ではないと考えられる。
【0015】
よって、こうした従来の技術では、上述したようなマイグレーションに起因する半導体装置の電気的な不具合の発生を防止できないおそれがある。
【0016】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、柔軟性を有するテープキャリアを用いるパッケージにおいて、マイグレーションの発生、ひいてはマイグレーションに起因する電気的な不良の発生防止を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、この発明の半導体装置は、表面及び当該表面に対向する裏面を有しており、表面側にチップ搭載領域が設定されている柔軟性の絶縁性薄膜基材、チップ搭載領域を含む表面上に延在して設けられている複数のリードを有しているテープキャリアを具えている。
【0018】
また半導体装置は、このテープキャリアのチップ搭載領域に搭載されており、上面、当該上面に対向する下面、及び上面及び下面に挟まれている側面を有していて、下面側に、テープキャリアの複数のリードに接続されている複数の電極を有している半導体チップを具えている。
【0019】
さらに半導体装置は、この半導体チップの少なくとも側面及び下面を一体的に覆い、かつ複数の電極及び電極に接続されていて、下面の直下に位置するリードの部分領域を含む領域を覆って設けられている封止部を具えている。
【0020】
さらにまた、この半導体装置は、絶縁性薄膜基材の裏面側であって、封止部の輪郭内及び当該輪郭内から当該輪郭外の領域にまたがって一体的に設けられている第1撥水性膜を具えている。
【0021】
この発明の半導体装置の製造方法は、下記のような工程を含んでいる。
【0022】
すなわち、表面及び当該表面に対向する裏面を有しており、表面側にチップ搭載領域が設定されている柔軟性の絶縁性薄膜基材、チップ搭載領域上に延在して設けられている複数のリードを有しているテープキャリアを準備する。
【0023】
このテープキャリアのチップ搭載領域に、上面、当該上面に対向する下面、及び上面及び下面に挟まれた側面を有していて、下面側に複数の電極を有している半導体チップを搭載する。このとき、半導体チップの複数の電極を、テープキャリアの複数のリードに接続して搭載する。
【0024】
半導体チップの少なくとも側面及び下面を一体的に覆い、かつ複数の電極及び当該電極に接続されていて下面の直下に位置するリードの部分領域を含む領域を覆う封止部を形成する。
【0025】
絶縁性薄膜基材の裏面側であって、封止部の輪郭内及び当該輪郭内から当該輪郭外の領域にまたがるように一体的に第1撥水性膜を形成する。
【発明の効果】
【0026】
この発明の半導体装置の構成によれば、撥水性膜を設けるので、パッケージ内への水分の浸透をより効果的に防止することができる。よって、テープキャリアの配線及び半導体チップの電極近傍でのマイグレーションの発生、ひいてはこのマイグレーションに起因する半導体装置の電気的不良の発生をより効果的に防ぐことができる。
【0027】
また、この発明の半導体装置を製造するにあたり、上述した工程を含む製造方法を実施すれば、半導体装置のより効率的な製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、各図は、この発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎず、これによりこの発明が特に限定されるものではない。また、以下の説明に用いる各図において、同様の構成成分については同一の符号を付して示し、その重複する説明を省略する場合がある。
【0029】
半導体装置の構成例(1)
図1(A)及び図1(B)を参照して、この発明の半導体装置の構成例(1)につき説明する。
【0030】
図1(A)は、この発明の半導体装置の構成例(1)を示す概略的な平面図であり、図1(B)は、図1(A)の半導体装置のI−I’一点鎖線による切り口を矢印方向からみた概略的な図である。
【0031】
図1(A)及び(B)に示すように、この発明の半導体装置10は、テープキャリア20を含んでいる。
【0032】
テープキャリア20は、柔軟性を有する素材により形成された長方形状の絶縁性薄膜基材20aをいわゆるベーステープとして含んでいる。絶縁性薄膜基材20aとしては、従来公知のテープキャリアパッケージ、すなわちTCP又はCOFパッケージに使用されている任意好適な材料から形成されているベーステープを使用することができる。結果として、テープキャリア20は柔軟性を有している。
【0033】
絶縁性薄膜基材20aは表面20aa及びこの表面20aaと対向する裏面20abを有している。
【0034】
この絶縁性薄膜基材20aの対向する一対の両側端部には、パッケージの製造工程で移送のために使用される複数のスプロケットホール20bが一列にそれぞれ穿設されている。
【0035】
表面20aa側には、チップ搭載領域20acが設定されている。このチップ搭載領域20acは、搭載される半導体チップの平面形状に応じた任意好適な形状とされている。チップ搭載領域20acの形状は、この例では長方形状とされている。
【0036】
テープキャリア20は、表面20aa上に延在している複数のリード22を具えている。複数のリード22はいわゆる金属細線パターンである。
【0037】
複数のリード22それぞれは、一端をチップ搭載領域20ac内に存在させてあり、かつ他端を絶縁性薄膜基材20aの端縁に沿うように延在させて配列されている。
【0038】
リード22上には、リード22それぞれの両端部を露出させ、かつ複数のリード22上に一体的にまたがるソルダーレジスト24が設けられている。
【0039】
以下、このソルダーレジスト24から露出するリード22の部分領域のうち、絶縁性薄膜基材20aの端縁側、すなわち外側に位置している部分領域をアウターリード22aと称し、チップ搭載領域20acを含む内側、すなわちソルダーレジスト24の内端縁24aから露出する側に延在している部分領域をインナーリード22bと称する。また、リード22の部分領域のうち、ソルダーレジスト24に覆われている領域をリード中間部22cと称する。この例ではアウターリード22aの末端部分近傍を電極パッドとして若干幅広に形成してある。
【0040】
なお、テープキャリア20は、特にTCP用の場合には、チップ搭載領域20acをいわゆる半導体チップ30を収めることができるいわゆるデバイスホールであるベーステープを貫通する開口部とし、インナーリード22bの末端部分をこの開口部内に突出する形態とすることもできる(図示せず。)。
【0041】
テープキャリア20のチップ搭載領域20acには、半導体チップ30が搭載されている。
【0042】
半導体チップ30は、この例では直方体状の形状を有している。すなわち、半導体チップ30は、長方形状の上面30a及びこの上面30aと対向する下面30bとを有している。
【0043】
半導体チップ30には複数の電極32が、半導体チップ30の下面30bを画成する各辺に沿うように配設されている。電極32は、この例では突起電極、すなわちバンプとして設けられている。
【0044】
複数の電極32それぞれは、この例では一対一の対応関係でインナーリード22bに接続されている。
【0045】
上述したリード22の形態、すなわち長さ、配置等は、インナーリード22bに搭載される半導体チップ30のチップサイズ、半導体チップ30の厚み及びインナーリード22bとのボンディングのための電極32の配置を考慮して決定すればよい。
【0046】
この発明の半導体装置10は、封止部40を具えている。封止部40は、この例では半導体チップ30の側面及び下面30bを一体的に覆っており、かつ上面30aを露出させている。この封止部40は、さらにこの上面30aをも覆う形態とすることもできる。
【0047】
封止部40は、好ましくは例えば従来公知のエポキシ系樹脂といった封止材料により構成するのがよい。
【0048】
このとき、封止部40は、複数の電極32及びこの電極32に接続されていて少なくとも下面30bの直下に位置するリード22の一部分を一体的に覆っている。また、封止部40は半導体チップ30の外周から最小でも250μm程度離間した位置まで形成される。この例では封止部40の最外縁はソルダーレジスト24の表面上に至っている。
【0049】
この発明の半導体装置10は、撥水性膜50を具えていることを特徴としている。この撥水性膜50は、外部環境からパッケージ内への水分の浸透を防止する撥水性を有している。この撥水性の程度は、好ましくは既に説明した封止部40より撥水性の程度が大きい材料を用いるのがよい。
【0050】
この例では半導体装置10は、テープキャリア20の裏面20ab側に、第1撥水性膜50aを具えている。
【0051】
この第1撥水性膜50aは、絶縁性薄膜基材20aの裏面20ab側であって、好ましくは封止部40が絶縁性薄膜基材20aに投影する輪郭内、すなわち、下面30bの直下に位置しており、この下面30bと同一形状、かつ同一面積の領域及びこの輪郭内より外側の領域にまたがって一体的に設けられている。
【0052】
この第1撥水性膜50aの形状及び面積は、半導体チップ30の電極32への水分の浸透を防止するという観点から、最小の大きさの場合には下面30bと同一形状、かつ同一面積とするのがよく、最大の大きさの場合にはスプロケットホール20b及びアウターリード22aの電極パッド部分に重ならない範囲、すなわち半導体装置としての機能を損なわないこと及び製造工程に支障を来さないことを条件とする最大範囲とするのがよい。
【0053】
この第1撥水性膜50aとしては、好ましくは例えば、いわゆるフッ素系材料、シリコーン系材料、又はウレタン系材料から構成される膜であって、水分の浸透を効果的に防止することができることに加え、半導体装置に適用するのに好適な絶縁性といった電気的特性を有している材料により構成される膜とするのがよい。
【0054】
撥水性膜50、すなわちこの例では第1撥水性膜50aは、その膜厚を最大でも0.5mm程度として構成するのがよい。
【0055】
このような撥水性膜を具える構成とすれば、特にテープキャリアの裏面側から水分の浸透をより効果的に防止することができる。よって、テープキャリアの配線及び半導体チップの電極近傍でのマイグレーションの発生、ひいてはこのマイグレーションに起因する半導体装置の電気的不良の発生をより効果的に防ぐことができる。
【0056】
この撥水性膜50は、膜厚を極めて薄いものとできるので、本質的に薄型であるというTCP又はCOFパッケージの特性を損なうことなく、パッケージに水分浸透防止効果を付与することができる。
【0057】
半導体装置の構成例(2)
図2(A)及び図2(B)を参照して、この発明の半導体装置の構成例(2)につき説明する。
【0058】
図2(A)は、この発明の半導体装置の構成例(2)を示す概略的な平面図であり、図2(B)は、図2(A)の半導体装置のI−I’一点鎖線による切り口を矢印方向からみた概略的な図である。
【0059】
この例の半導体装置10は、テープキャリア20の表面20aa側の封止部40をさらに覆う第2撥水性膜50bを具えていることを特徴としている。なお、この例の半導体装置10の構成要素は、この第2撥水性膜50bを除き、既に説明した構成例(1)の構成要素と何ら変わるところがないため、第2撥水性膜50b以外の構成要素についての詳細な説明は省略する場合もある。
【0060】
図2(A)及び(B)に示すように、この例の半導体装置10は、テープキャリア20を含んでいる。
【0061】
テープキャリア20は、柔軟性を有する素材により形成された長方形状の絶縁性薄膜基材20aをいわゆるベーステープとして含んでいる。
【0062】
この絶縁性薄膜基材20aの対向する一対の両側端部には、パッケージの製造工程で移送のために使用される複数のスプロケットホール20bが一列にそれぞれ穿設されている。
【0063】
表面20aa側には、チップ搭載領域20acが設定されている。このチップ搭載領域20acは、搭載される半導体チップの平面形状に応じた任意好適な形状とされている。
【0064】
テープキャリア20は、表面20aa上に延在している複数のリード22を具えている。複数のリード22はいわゆる金属細線パターンである。
【0065】
複数のリード22それぞれは、一端をチップ搭載領域20ac内に存在させてあり、かつ他端を絶縁性薄膜基材20aの端縁に沿うように延在させて配列されている。
【0066】
リード22上には、リード22それぞれの両端部を露出させ、かつ複数のリード22上に一体的にまたがるソルダーレジスト24が設けられている。
【0067】
テープキャリア20のチップ搭載領域20acには、半導体チップ30が搭載されている。
【0068】
半導体チップ30には複数の電極32が、突起電極、すなわちバンプとして設けられている。
【0069】
複数の電極32それぞれは、この例では一対一の対応関係でインナーリード22bに接続されている。
【0070】
半導体装置10は、封止部40を具えている。封止部40は、この例では半導体チップ30の側面及び下面30bを一体的に覆っており、かつ上面30aを露出させている。
【0071】
封止部40は、好ましくは例えば従来公知のエポキシ系樹脂といった封止材料により構成するのがよい。
【0072】
この発明の半導体装置10は、撥水性膜50を具えていることを特徴としている。
【0073】
図2(A)及び(B)に示すように、この例では半導体装置10は、第1の実施の形態と同様の第1撥水性膜50aに加えて、テープキャリア20の表面20aa側にさらに第2撥水性膜50bを具えている。
【0074】
この第2撥水性膜50bは、封止部40の表面全面上を一体的に覆って設けられている。
【0075】
第2撥水性膜50bは、この例では直方体状の半導体チップ30の上側角隅部からソルダーレジスト24の表面上に至る、封止部40が形成する傾斜面全面上を覆うように設けられている。
【0076】
この第2撥水性膜50bを設ける範囲は、封止部40を完全に覆う範囲とすればよい。
【0077】
この第2撥水性膜50bは、半導体チップ30の上面30aをも覆う構成とすることもできる。
【0078】
この第2撥水性膜50bを設ける最小範囲A1は、一般的な技術水準でいうと封止部40が最外縁端部と半導体チップ30の最外縁端部との最小離間距離はおよそ250μm程度であるのでこのような範囲を覆う封止部40を完全に覆う形態とすればよい。
【0079】
この第2撥水性膜50bを設ける最大範囲A2は、スプロケットホール20b及びアウターリード22aの電極パッド部分に重ならない範囲、すなわち半導体装置としての機能を損なわないこと及び製造工程に支障を来さないことを条件とする範囲とするのがよい。
【0080】
この第2撥水性膜50bとしては、第1撥水性膜50aと同様に、好ましくは例えば、いわゆるフッ素系材料、シリコーン系材料、又はウレタン系材料から構成される膜であって、水分の浸透を効果的に防止することができることに加え、半導体装置に適用するのに好適な絶縁性といった電気的特性を有している材料により構成される膜とするのがよい。
【0081】
第2撥水性膜50bは、その膜厚を最大でも0.5mm程度として構成するのがよい。
【0082】
このような第2撥水性膜をさらに具える構成とすれば、下面側からの水分の浸透防止効果に加えて、テープキャリアの上面側からの水分の浸透をより効果的に防止することができる。よって、テープキャリアの配線及び半導体チップの電極近傍でのマイグレーションの発生、ひいてはこのマイグレーションに起因する半導体装置の電気的不良の発生をより効果的に防ぐことができる。
【0083】
これら第1撥水性膜及び第2撥水性膜は、いずれも膜厚を極めて小さいものとできるので、薄型であるというTCP又はCOFパッケージの特性を損なうことなく、パッケージに水分浸透防止効果を付与することができる。
【0084】
半導体装置の製造方法例
次に、図3を参照して、この発明の半導体装置の製造方法例につき説明する。
【0085】
図3(A)、(B)及び(C)は、この発明の半導体装置の製造方法を説明するための工程図である。
【0086】
まず、既に説明した構成を具えているテープキャリア20を準備する。このような構成を有するテープキャリアは市場にて入手可能でもある。
【0087】
なお、テープキャリア20は、長尺のベーステープを基材としており、このベーステープに直列に配置された複数のチップ搭載領域20acを具えているが、特に図3においては、1つのチップ搭載領域20acのみを示して製造工程につき説明する。
【0088】
図3(A)に示すように、テープキャリア20のチップ搭載領域20acに、半導体チップ30を搭載する。
【0089】
この例ではバンプとして構成されている半導体チップ30の複数の電極32を、テープキャリア20の複数のリード22のインナーリード22bに接続する。このボンディング工程は、例えばボンディングツールを使用する金属共晶、又は熱圧着といった従来公知の任意好適な工程により行うことができる。
【0090】
次いで、図3(B)に示すように、封止部40を形成する。この封止部40は、半導体チップ30の少なくとも側面及び下面30bを一体的に覆い、かつ複数の電極32及びこの電極32に接続されていて下面30bの直下に位置するリード22、さらに半導体チップ30の上面30a側からみた輪郭から露出するインナーリード22bを一体的に覆うように形成する。
【0091】
また、封止部40は、半導体チップ30の上面30aを覆うように形成することができる。
【0092】
この封止部40の形成工程は、好ましくは例えば従来公知のエポキシ系樹脂といった封止材料を用いて、注入ノズルを用いるいわゆるアンダーフィル充填といった従来公知の任意好適な工程により行うことができる。
【0093】
図3(B)及び図3(C)に示すように、次に、撥水性膜50を形成する。撥水性膜50を形成する工程は、(1)既に説明した領域に第1撥水性膜50aを形成する工程、又はこの(1)工程及び(2)既に説明した領域に第2撥水性膜50bを形成する工程を含んでいる。この例では(1)工程終了後に(2)工程を実施する例を示してある。
【0094】
(1)工程及び(2)工程の両方を実施する場合には、(2)工程を先に実施した後に(1)工程を実施してもよい。なお、(2)工程は既に説明した封止部40の形成工程よりも後に行う必要があるが、(1)工程は封止部40の形成工程前、すなわち例えば半導体チップ30をテープキャリア20に搭載する工程より前に実施することもできる。
【0095】
この撥水性膜50の形成工程は、既に説明した任意好適な材料を用いる、好ましくは例えば従来公知のスプレイ噴霧工程、又は液滴滴下による塗布工程として行うことができる。
【0096】
上述の(1)工程及び(2)工程の両方を同一設備でこの順に実施する場合には、例えば(1)工程終了後にテープキャリア20の上面20aa側が上側となるように半導体チップ30が搭載されているテープキャリア20を反転させて(2)工程を実施すればよい。
【0097】
これら(1)工程及び(2)工程の両方を同時に行ってもよい。このようにすれば半導体装置の製造効率をさらに向上させることができる。
【0098】
図3(C)に示すように、(1)工程及び(2)工程を実施するにあたり、好ましくは、スプレイ噴霧工程又は塗布工程の実施前に撥水性膜50を非形成とする領域、すなわち撥水性膜非形成領域50Xを被覆するマスクパターン60を予め形成しておくのがよい。
【0099】
このマスクパターン60は、好ましくは例えば任意好適な従来公知のレジスト材料を用いるフォトリソグラフィ工程により形成し、撥水膜50の形成工程終了後に、選択された材料に応じた任意好適な手段によりこのマスクパターンを除去すればよい。
【0100】
このようにすれば、所望の領域にのみ効率的に撥水性膜50を形成することができる。
【0101】
最後に、アウターリード22aの外側で、複数のアウターリード22aの配列に直交する方向にテープキャリア20を切断して、個々の半導体装置10として切り出す。この工程により半導体装置10が個片化されて完成する。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】(A)は、この発明の半導体装置の構成例(1)を示す概略的な平面図であり、(B)は、図1(A)の半導体装置のI−I’一点鎖線による切り口を矢印方向からみた概略的な図である。
【図2】(A)は、この発明の半導体装置の構成例(2)を示す概略的な平面図であり、(B)は、図2(A)の半導体装置のI−I’一点鎖線による切り口を矢印方向からみた概略的な図である。
【図3】(A)、(B)及び(C)は、この発明の半導体装置の製造方法を説明するための工程図である。
【符号の説明】
【0103】
10:半導体装置
20:テープキャリア
20a:絶縁性薄膜基材
20aa:表面
20ab:裏面
20ac:チップ搭載領域
20b:スプロケットホール
22:リード
22a:アウターリード(電極パッド)
22b:インナーリード
22c:リード中間部
24:ソルダーレジスト
24a:内端縁
30:半導体チップ
30a:上面
30b:下面
32:電極(バンプ)
40:封止部
50:撥水性膜
50a:第1撥水性膜
50b:第2撥水性膜
50X:撥水性膜非形成領域
60:マスクパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面及び当該表面に対向する裏面を有しており、前記表面側にチップ搭載領域が設定されている柔軟性の絶縁性薄膜基材、前記チップ搭載領域を含む前記表面上に延在して設けられている複数のリードを有しているテープキャリアと、
前記テープキャリアの前記チップ搭載領域に搭載されており、上面、当該上面に対向する下面、及び前記上面及び前記下面に挟まれている側面を有していて、前記下面側に、前記テープキャリアの複数の前記リードに接続されている複数の電極を有している半導体チップと、
前記半導体チップの少なくとも前記側面及び前記下面を一体的に覆い、かつ複数の前記電極及び当該電極に接続されていて、前記下面の直下に位置する前記リードの部分領域を含む領域を覆って設けられている封止部と、
前記絶縁性薄膜基材の前記裏面側であって、前記封止部の輪郭内及び当該輪郭内から当該輪郭外の領域にまたがって一体的に設けられている第1撥水性膜と
を具えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記封止部は、前記半導体チップの前記側面及び前記下面を一体的に覆っており、かつ前記半導体チップの前記表面を露出させて設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記封止部の表面全面上を覆う第2撥水性膜をさらに具えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1撥水性膜、又は当該第1撥水性膜及び前記第2撥水性膜の両方あるいはいずれか一方は、フッ素系材料、シリコーン系材料、及びウレタン系材料を含む群から選択されるいずれかの撥水性材料により構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記撥水性材料は、前記封止部よりも撥水性の程度が大きい材料であることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1撥水性膜、又は当該第1撥水性膜及び前記第2撥水性膜の膜厚は、最大でも0.5mmであることを特徴とする請求項4又は5に記載の半導体装置。
【請求項7】
表面及び当該表面に対向する裏面を有しており、前記表面側にチップ搭載領域が設定されている柔軟性の絶縁性薄膜基材、前記チップ搭載領域上に延在して設けられている複数のリードを有しているテープキャリアを準備する工程と、
前記テープキャリアの前記チップ搭載領域に、上面、当該上面に対向する下面、及び前記上面及び前記下面に挟まれた側面を有していて、前記下面側に複数の電極を有している半導体チップを搭載する工程であって、当該半導体チップの複数の前記電極を、前記テープキャリアの複数の前記リードに接続して搭載する工程と、
前記半導体チップの少なくとも前記側面及び前記下面を一体的に覆い、かつ複数の前記電極及び当該電極に接続されていて前記下面の直下に位置する前記リードの部分領域を含む領域を覆う封止部を形成する工程と、
前記絶縁性薄膜基材の前記裏面側であって、前記封止部の輪郭内及び当該輪郭内から当該輪郭外の領域にまたがるように一体的に第1撥水性膜を形成する工程と
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記封止部を形成する工程の後に、前記封止部の表面全面上を一体的に覆う第2撥水性膜を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1撥水性膜を形成する工程は、撥水性膜形成領域を露出するマスクパターンを形成した後に、露出している前記撥水性膜形成領域に前記第1撥水性膜を形成し、前記マスクパターンを除去する工程であることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1撥水性膜及び前記第2撥水性膜を形成する工程は、撥水性膜形成領域を露出するマスクパターンを形成した後に、露出している前記撥水性膜形成領域に前記第1撥水性膜及び前記第2撥水性膜を形成し、前記マスクパターンを除去する工程であることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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