説明

半導体装置

【課題】フリップチップ実装構造を有する構成にて半導体素子からの放熱性を確保できる半導体装置を提供すること。
【解決手段】この半導体装置1は、被実装対象2を実装対象3に対してバンプ4を介してフリップチップ実装して構成されている。この半導体装置1では、被実装対象2が回路面上であって発熱部の近傍にパッド部を有している。また、実装対象3が熱伝導性材料あるいは放熱性材料から成る実装部32を有している。そして、パッド部と実装部32とがバンプ4を介して接続されることにより、被実装対象2が実装対象3にフリップチップ実装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関し、さらに詳しくは、フリップチップ実装構造を有する構成にて半導体素子からの放熱性を確保できる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な半導体装置では、半導体素子(被実装対象)をセラミックスパッケージあるいは金属パッケージ(実装対象)に実装する構造として、半導体素子の回路面を上方に配置すると共に、この半導体素子の下面とパッケージとをハンダや導電性接着剤により接続する構造(一般的な実装構造)が採用されている。かかる一般的な実装構造では、半導体素子の回路面に露出した接続用パッド部とパッケージ側の配線パターンとが金(Au)材料あるいはアルミニウム(Al)材料から成る極細のボンディングワイヤで接続されている。このとき、半導体素子の搭載位置のズレやボンディングワイヤの接続箇所の位置ズレにより、ボンディングワイヤの長さがバラつくことがある。このため、高周波回路では、ボンディングワイヤの長さのバラつきが電気特性のバラつきとなって現れるという課題がある。
【0003】
このため、近年の半導体装置では、半導体素子をパッケージに実装する方法として、フリップチップ実装構造が採用されている。このフリップチップ実装構造では、上記したボンディングワイヤの長さのバラつきによる電気特性のバラつきを抑えることができ、また、半導体素子の接続用パッド部とパッケージ側の配線パターンとの接続および半導体素子の素子搭載を同時に実施できる。これは、フリップチップ実装構造では、半導体素子の回路面および接続用パッド部を下方に配置して、超音波または熱圧着によりバンプと呼ばれる球状金属で半導体素子の接続用パッド部とパッケージの配線パターンとを接続するためである。これにより、半導体素子とパッケージとの電気的接続が確保されると共に、半導体素子の構造的な固定が行われている。
【0004】
かかるフリップチップ実装構造では、半導体素子の接続用パッド部とパッケージ側の配線パターンとを接続するときに、前述のボンディングワイヤが省略されるため、半導体素子の実装スペースの面積が半導体素子の平面積と同じになり、半導体装置が小型化される。さらに、半導体素子とパッケージとが球状金属であるバンプを介して接続されるので、ボンディングワイヤを用いた一般的な実装構造と比較して、半導体素子とパッケージとの接続構造に起因する電気特性のバラつきが抑制される。また、ボンディングワイヤの長さによる電気的損失も低減される。また、半導体素子の搭載工程と配線工程とを一度に実施できる。さらに、半導体素子とパッケージとを複数点にて接続する構造を単一工程にて一括して実施できるので、量産性が向上する。
【0005】
ところで、半導体装置では、半導体素子が発熱する。このため、半導体素子からの放熱性を十分に確保すべき課題がある。
【0006】
一般的な実装構造を採用する半導体装置では、パッケージのキャリアに冷却装置が取り付けられ、パッケージのキャリアから熱を逃がす構造が採用されている。このとき、半導体素子の回路面が上方に向けられてパッケージに実装されるので、半導体素子の下面全面がパッケージに熱的に接続されている。このため、半導体素子の発熱部からパッケージのキャリアまでの熱抵抗が低減されて、半導体素子からの放熱性が高められている。
【0007】
一方、フリップチップ実装構造を採用する半導体装置では、半導体素子の回路面がパッケージの配線パターンと向かい合わせになるため、半導体素子がパッケージに対してバンプのみにて熱的に接続されている。このため、半導体素子からの放熱経路が半導体素子の接続パッドのみとなり、半導体素子の発熱部からパッケージのキャリアまでの熱抵抗が一般的な実装構造よりも大きい。このため、半導体素子からの放熱性が十分に確保されないという課題がある。
【0008】
この点において、位相器、減衰器、小さな出力部に使用されるスイッチなどの半導体素子では、発熱量が小さいため、フリップチップ実装構造による発熱が問題となり難い。しかし、高周波回路に用いられる高出力増幅器や低雑音増幅器、大きな出力部に使用されるスイッチなどの半導体素子では、電界効果トランジスタ(FET)が構成要素として含まれるため、その動作時にソース電極とドレイン電極の間で熱が発生する。このとき、フリップチップ実装構造では、上記のように、半導体素子の発熱部からパッケージにかけての熱抵抗が非常に高いため、半導体素子の動作時にて、素子温度が素子ジャンクション温度を超過するおそれがある。また、素子温度が素子ジャンクション温度を超過しない場合であっても、素子温度の上昇により、半導体素子の寿命や出力が低下するおそれがある。
【0009】
かかる課題に関する従来の半導体装置として、特許文献1に記載される技術が知られている。特許文献1の半導体装置は、フリップチップ実装構造を有する構成において、半導体素子の回路面とパッケージの配線パターンとの間にアンダーフィルと呼ばれる接合補強剤を用いている。これにより、半導体素子の回路面とパッケージの配線パターンとの接続の信頼性が向上し、また、半導体素子からの放熱経路が確保されている。しかしながら、アンダーフィル剤は非導電性材料であり放熱性が十分でない。また、かかる構成にて、放熱性が満たされる場合にも、高い信頼性を必要とする半導体素子では、気密が必要となるため、アンダーフィル剤の適用が難しいという問題がある。
【0010】
なお、他の従来の半導体装置では、パッケージがセラミックス多層基板から成る構成において、パッケージがキャビティと呼ばれる凹形状の素子搭載部を有することにより、セラミックス層の厚さが薄くなり、熱抵抗が低減されている。また、パッケージがセラミックスに導体を充填したビアホールを有し、キャビティからの放熱を促進して熱抵抗を低減する構成が採用されている。しかしながら、かかる構成では、半導体素子からの放熱性が十分に確保されないという課題がある。
【0011】
特に、ガラスセラミックス多層基板を用いたパッケージに半導体素子をフリップチップ実装する構成では、半導体素子とガラスセラミックス多層基板とはバンプを介して接合されるため、放熱経路が極端に少なくなり熱抵抗が上昇する。また、ガラスセラミックスは熱伝導が非常に悪く、一般にセラミックスパッケージの熱抵抗は高いため、発熱の問題から半導体素子の使用できる出力が限られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−069281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明は、フリップチップ実装構造を有する構成にて半導体素子からの放熱性を確保できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、被実装対象を実装対象に対してバンプを介してフリップチップ実装して成る半導体装置であって、前記被実装対象が回路面上であって発熱部の近傍にパッド部を有すると共に、前記実装対象が熱伝導性材料あるいは放熱性材料から成る実装部を有し、且つ、前記パッド部と前記実装部とが前記バンプを介して接続されることにより、前記被実装対象が前記実装対象にフリップチップ実装されることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる半導体装置は、被実装対象を実装対象に対してバンプを介してフリップチップ実装して成る半導体装置であって、前記被実装対象が回路面上であって発熱部の近傍にパッド部を有すると共に、前記実装対象が幅広な表層導体から成る配線パターンを有し、且つ、前記パッド部と前記配線パターンとが前記バンプを介して接続されることにより、前記被実装対象が前記実装対象にフリップチップ実装されることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0016】
この発明にかかる半導体装置では、被実装対象が発熱すると、その熱が発熱部からパッド部およびバンプを経由して実装部に伝わる。そして、この熱が実装部から実装対象の本体部に放出され、あるいは、この実装部から外部に放出される。このとき、実装部が熱伝導性材料あるいは放熱性材料から成るので、実装部から本体部への伝熱が効率的に行われる。これにより、被実装対象からの放熱性が確保される利点がある。
【0017】
また、この発明にかかる半導体装置では、被実装対象が発熱すると、その熱が発熱部から信号用パッド部およびバンプを経由して実装対象の配線パターンに伝わる。そして、この熱が配線パターンからキャビティに放熱され、あるいは、配線パターンから実装対象の本体部に放出される。このとき、配線パターンの表層導体が幅広構造を有するので、配線パターンからキャビティへの放熱が促進され、あるいは、配線パターンから実装対象の本体部への伝熱が効率的に行われる。これにより、被実装対象からの放熱性が確保される利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、この発明の実施の形態1にかかる半導体装置を示す構成図である。
【図2】図2は、図1に記載した半導体装置のフリップチップ実装構造を示す拡大図である。
【図3】図3は、図1に記載した半導体装置の被実装対象を示す平面図である。
【図4】図4は、図1に記載した半導体装置の実装部を示す斜視図である。
【図5】図5は、図1に記載した半導体装置の実装部を示す組立斜視図である。
【図6】図6は、この実施の形態2にかかる半導体装置を示す構成図である。
【図7】図7は、図6に記載した半導体装置のフリップチップ実装構造を示す拡大図である。
【図8】図8は、図6に記載した半導体装置の配線パターンを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0020】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1にかかる半導体装置を示す構成図である。図2は、図1に記載した半導体装置のフリップチップ実装構造を示す拡大図である。図3は、図1に記載した半導体装置の被実装対象を示す平面図である。図4および図5は、図1に記載した半導体装置の実装部を示す斜視図(図4)および組立斜視図(図5)である。
【0021】
この半導体装置1は、例えば、フリップチップ実装(Flip Chip Attach)構造を有する半導体パッケージに適用される。フリップチップ実装構造とは、例えば、半導体素子の回路面とセラミックス多層基板の配線パターンとを相互に対向させると共にバンプ(接続用金属)を介して電気的に接続する方式をいう。かかるフリップチップ実装構造では、ボンディングワイヤを用いた一般的な実装構造(図示省略)と比較して、半導体装置の小型化や電気特性の均一化が実現される。また、実装工程と配線工程とを同時に実施できる等により、半導体装置の量産性を向上できる。
【0022】
この半導体装置1では、被実装対象2が実装対象3に対してバンプ4を介してフリップチップ実装されて構成される(図1参照)。また、この半導体装置1は、後述する放熱構造を有する。これにより、被実装対象2からの放熱が効率的に行われている。
【0023】
被実装対象2は、本体部21と、接地用パッド部22および信号用パッド部23とを有する(図3参照)。本体部21は、例えば、半導体素子などの電子部品、電子部品が実装された回路基板により構成される。接地用パッド部22は、グランド接続用のパッドである。信号用パッド部23は、実装対象3に対するシグナル接続用のパッドである。これらの接地用パッド部22および信号用パッド部23は、本体部21の回路面上であって発熱部24の近傍に配置される。例えば、被実装対象2が高周波回路に用いられる高出力増幅器や低雑音増幅器あるいは大きな出力を有する箇所に使用されるスイッチであるときには、被実装対象2が電界効果トランジスタ(Field effect transistor)を内部に有する。すると、被実装対象2の作動時にて、電界効果トランジスタのソース電極とドレイン電極との間が発熱する。したがって、この位置が被実装対象2の発熱部24となり、この発熱部24の近傍に接地用パッド部22および複数の信号用パッド部23がそれぞれ配置される。これにより、発熱部24から接地用パッド部22および信号用パッド部23への伝熱が効率的に行われる。
【0024】
なお、被実装対象2(本体部21)が半導体素子から成る構成では、その半導体素子の表面が金属よりも低い伝熱性を有する材料(例えば、ガリウム砒素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)など)により構成される。したがって、発熱部24と接地用パッド部22および信号用パッド部23とが近接されて配置されることにより、これらの間の熱抵抗値が低減されて伝熱性が向上する。
【0025】
実装対象3は、本体部31と、実装部32とを有する(図1および図2参照)。
【0026】
本体部31は、例えば、セラミックス多層基板などの配線基板により構成される。例えば、この実施の形態1では、実装対象3が、アルミナセラミックスを主成分とするHTCC(High Temperature Co-fired Ceramic)、ガラスセラミックスを主成分とするLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramic)などの立体配線可能なセラミックス多層基板により構成されている。また、本体部31は、キャビティ311を有する。このキャビティ311は、本体部31の上面(実装対象3の実装面)に形成された凹部である。また、キャビティ311の底面には、接地用の全面パターン(図示省略)が印刷され、この全面パターン上に金メッキ処理が施される。また、この全面パターンと実装対象3の接地部(金属製の薄板。図示省略。)とが実装対象3内部の導体ビアホールを介して接続される。これにより、キャビティ311の底面(全面パターン)の接地が確保される。
【0027】
実装部32は、ダイマウント部321および基板部322を有し、これらが積層されて構成される(図2および図4参照)。ダイマウント部321は、熱伝導性材料から成る部材である。例えば、この実施の形態1では、ダイマウント部321が、銅タングステン合金あるいは銅モリブデン合金などの低い線膨張を有する板状の金属部材から成り、半導体素子の搭載に適した高い熱伝導性を有している。基板部322は、熱伝導性材料あるいは放熱性材料から成る配線基板である。例えば、この実施の形態1では、基板部322が、アルミナセラミックスあるいは窒化アルミなどの高放熱性材料(例えば、ガラスセラミックス性の本体部21よりも高い放熱性を有する材料)から成るセラミックス基板であり、その上面に配線パターンPを有している(図4参照)。また、ダイマウント部321と基板部322とは、ハンダあるいは導電接着剤により接着される。この実装部32は、ダイマウント部321側をキャビティ311の底面(全面パターン)に接触させて、キャビティ311内に収容される。そして、ダイマウント部321がキャビティ311の底面に対してロウ付けあるいは高熱伝導性を有する導電性接着剤により接着される。これにより、実装部32がキャビティ311の底面に固定される。
【0028】
バンプ4は、例えば、金(Au)材料から成る球状の接続用金属である。なお、バンプ4には、公知のものが採用され得る。
【0029】
この半導体装置1では、被実装対象2の各パッド部22、23と実装対象3の実装部32とがバンプ4を介して電気的に接続されることにより、被実装対象2が実装対象3にフリップチップ実装される(図2参照)。例えば、この実施の形態1では、まず、被実装対象2の各パッド部22、23にそれぞれバンプ4が拡散接合される。あるいは、実装部32上であって各パッド部22、23に対応する位置に、それぞれバンプ4が拡散接合される。次に、被実装対象2の回路面が実装対象3の実装部32に対向するように、被実装対象2が実装部32上に配置される。そして、超音波方式あるいは熱圧着方式による熱がバンプ4に施されて、被実装対象2の各パッド部22、23と実装対象3の実装部32とが接続される。このとき、接地用パッド部22が実装部32のダイマウント部321に接続される。これにより、被実装対象2のグランド接続が確保される。また、信号用パッド部23が実装部32の基板部322(配線パターンP)に接続される。これにより、被実装対象2と実装対象3とのシグナル接続が確保される。その後に、実装部32の基板部322と本体部31とがヒートスプレッダ33を介して電気的に接続される。これにより、被実装対象2を実装した実装対象3と、外部端子(図示省略)との接続が可能となる。なお、ヒートスプレッダ33は、後述するように、基板部322から本体部31への伝熱経路となる。
【0030】
また、実装対象3の下面にキャリア5が取り付けられる(図1参照)。このキャリア5は、セラミックスに近い線膨張率を有する金属材料から成る。また、このキャリア5に冷却装置(図示省略)が取り付けられて、実装対象3(本体部31)の冷却が行われる。また、実装対象3の上面に枠状のリング6が配置される。このリング6は、実装対象3のキャビティ311および実装部32ならびに被実装対象2を囲んで配置される。また、このリング6の上面に薄い金属板から成る蓋7が配置されて、リング6の開口部が塞がれる。そして、この蓋7とリング6の開口部とが金スズ封止(AuSn封止)あるいはシーム溶接により真空下あるいは窒素雰囲気下にて固着されて、その内部が封止される。これにより、気密パッケージが形成される。
【0031】
この半導体装置1では、被実装対象2の作動時にて、被実装対象2の発熱部24が高温となると、この熱が発熱部24から接地用パッド部22および信号用パッド部23に伝わる(図2参照)。すると、(1)接地用パッド部22の熱がバンプ4を経由して実装対象3のダイマウント部321に伝わる。そして、この熱がダイマウント部321から本体部21に放熱される。このとき、金属製のダイマウント部321とガラスセラミックス製の本体部21とでは、ダイマウント部321の方が高い熱伝導性を有する。このため、熱がダイマウント部321を平面方向に拡散して、ダイマウント部321の全面から本体部21に伝わる。これにより、ダイマウント部321から本体部21への熱抵抗が低減されるので、その放熱が効率的に行われる。また、(2)信号用パッド部23の熱がバンプ4を経由して実装対象3の基板部322に伝わる。そして、この熱の一部が基板部322から外部に直接的に放熱される。このとき、基板部322が高放熱性材料から成るので、基板部322から外部への放熱が効率的に行われる。また、熱の一部が基板部322からダイマウント部321に伝わり、ダイマウント部321から本体部21に放熱される。このとき、基板部322が高熱伝導性材料から成るので、熱が基板部322の平面方向に拡散して、基板部322の全体から本体部21に伝わる。これにより、基板部322からダイマウント部321への熱抵抗が低減されるので、その放熱が効率的に行われる。さらに、熱の一部が基板部322からヒートスプレッダ33を経由して実装対象3の本体部31に伝わり、本体部31から放熱される。このとき、ヒートスプレッダ33が金属製なので、基板部322から本体部31への伝熱が効率的に行われる。これらの(1)、(2)により、被実装対象2からの放熱が効率的に行われる。これにより、被実装対象2のジャンクション温度が低減されるので、発熱による被実装対象2の出力低下や寿命低下が抑制される。なお、実装対象3の本体部31に伝わった熱は、本体部31からキャリア5に伝わり、このキャリア5が冷却装置(図示省略)により冷却されることにより、外部に放出される。
【0032】
なお、この半導体装置1では、さらに、被実装対象2が放熱用パッド部を有し、この放熱用パッド部と実装対象3とがバンプ4を経由して伝熱可能に接続されても良い(図示省略)。これにより、被実装対象2からの放熱がより効率的に行われる。
【0033】
[効果]
以上説明したように、この半導体装置1では、被実装対象2がその回路面上であって発熱部24の近傍にパッド部22、23を有すると共に、実装対象3が熱伝導性材料あるいは放熱性材料から成る実装部32を有する(図2参照)。そして、パッド部22、23と実装部32とがバンプ4を介して接続されることにより、被実装対象2が実装対象3にフリップチップ実装される。かかる構成では、被実装対象2が発熱すると、その熱が発熱部24からパッド部22、23およびバンプ4を経由して実装部32に伝わる。そして、この熱が実装部32から実装対象3の本体部31に放出され、あるいは、この実装部32から外部に放出される。このとき、実装部32が熱伝導性材料あるいは放熱性材料から成るので、実装部32から本体部31への伝熱が効率的に行われる。これにより、被実装対象2からの放熱性が確保される利点がある。
【0034】
また、この半導体装置1では、被実装対象2のパッド部(接地用パッド部)22が被実装対象2のグランド接続用パッドであり、実装対象3の実装部32がダイマウント部321を有する(図2参照)。そして、ダイマウント部321と接地用パッド部22とがバンプ4を介して接続される。かかる構成では、被実装対象2が発熱すると、その熱が発熱部24から接地用パッド部22およびバンプ4を経由して実装部32のダイマウント部321に伝わる。そして、この熱がダイマウント部321から実装対象3の本体部31に放出される。このとき、ダイマウント部321が金属製であり、且つ、接地用パッド部22が被実装対象2のグランド接続用パッドなので、被実装対象2から本体部31への伝熱が効率的に行われる。これにより、被実装対象2からの放熱性が確保される利点がある。
【0035】
また、この半導体装置1では、被実装対象2のパッド部(信号用パッド部)23が被実装対象2のシグナル接続用パッドであり、実装対象3の実装部32が高放熱性材料から成ると共に配線パターンPを有する基板部322を備える(図2参照)。そして、パッド部23と基板部322の配線パターンPとがバンプ4を介して接続される。かかる構成では、被実装対象2が発熱すると、その熱が発熱部24から信号用パッド部23およびバンプ4を経由して実装部32の基板部322に伝わる。そして、この熱が基板部322から外部に放出される。このとき、基板部322が高放熱性材料から成り、且つ、信号用パッド部23が被実装対象2のシグナル接続用パッドなので、被実装対象2から基板部322への伝熱が効率的に行われる。これにより、被実装対象2からの放熱性が確保される利点がある。
【0036】
また、この半導体装置1では、被実装対象2のパッド部(信号用パッド部)23が被実装対象2のシグナル接続用パッドであり、実装対象3の実装部32が金属製のダイマウント部321と高熱伝導性材料から成ると共に配線パターンPを有する基板部322とを積層して成る(図2参照)。そして、信号用パッド部23と基板部322の配線パターンPとがバンプ4を介して接続される。かかる構成では、被実装対象2が発熱すると、その熱が発熱部24から信号用パッド部23およびバンプ4を経由して実装部32の基板部322に伝わる。そして、この熱が基板部322からダイマウント部321に伝わって外部に放出される。このとき、基板部322が高熱伝導性材料から成るので、熱が基板部322の平面方向に拡散されつつダイマウント部321に伝わる。これにより、基板部322からダイマウント部321への熱抵抗が低減されるので、その放熱が効率的に行われる。これにより、被実装対象2からの放熱性が確保される利点がある。
【0037】
[ダイマウント部と基板部との積層構造]
なお、この半導体装置1では、上記のように、被実装対象2が接地用パッド部22と信号用パッド部23とを有し、また、実装部32が金属製のダイマウント部321と配線パターンPを有する基板部322とを積層して成る(図2および図3参照)。そして、被実装対象2が実装部32に対して基板部322側に配置される。
【0038】
このとき、ダイマウント部321が凸部3211を有すると共に、基板部322が貫通孔3221を有し、ダイマウント部321がこの凸部3211を貫通孔3221に挿入させつつ基板部322に積層されることが好ましい(図2、図4および図5参照)。そして、接地用パッド部22とダイマウント部321の凸部3211とが接続されると共に信号用パッド部23と基板部322の配線パターンPとが接続される。かかる構成では、被実装対象2とダイマウント部321との間に基板部322があるときに、被実装対象2の接地用パッド部22とダイマウント部321の凸部3211との接続が適正に確保される利点がある。
【0039】
例えば、この実施の形態1では、ダイマウント部321がその平面部に突起状の凸部3211を有している(図2、図4および図5参照)。また、この凸部3211の段間の寸法が厳密に管理されており、実装対象3であるセラミックス多層基板(本体部31)を構成する単体基板の厚さと同じ寸法に設定されている。また、凸部3211の角部のカッター逃げが極力発生しないように、凸部3211の切削加工が行われている。また、凸部3211の頂面が精密な切削面(例えば、6.3S以下の平面度を有する切削面)であることを要する。また、ダイマウント部321には、ニッケルメッキ加工の後に、金メッキ加工が施されている。このとき、金メッキ加工の厚さが十分に確保されて、純度の高い金メッキ材料から成るバンプ4を接続できるように構成されている。また、基板部322がこの凸部3211と嵌り合う貫通孔3221を有している。また、基板部322がセラミックス基板から成り、凸部3211の段間距離と同じ厚さを有している。また、ダイマウント部321がこの凸部3211を貫通孔3221に挿入させつつ基板部322に積層されることにより、実装部32が構成されている。このとき、基板部322が凸部3211を基準としてダイマウント部321に対して位置決めされている。そして、ダイマウント部321と基板部322とがハンダあるいは導電性接着剤により接着されている。また、フリップチップ実装構造では、接地用パッド部22とダイマウント部321の凸部3211とがバンプ4を介して接続され、また、信号用パッド部23と基板部322の配線パターンPとがバンプ4を介して接続されている。
【0040】
[実施の形態2]
図6は、この実施の形態2にかかる半導体装置を示す構成図である。図7は、図6に記載した半導体装置のフリップチップ実装構造を示す拡大図である。図8は、図6に記載した半導体装置の配線パターンを示す平面図である。これらの図において、上記の実施の形態1に記載した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
この実施の形態2の半導体装置1は、被実装対象2が回路面上であって発熱部24の近傍にパッド部22、23を有する点で、実施の形態1の半導体装置1と共通する(図2、図3、図6および図7参照)。ただし、実装対象3が実装部32を有さない点で相異する。このため、実装対象3がキャビティ311の底面(本体部31の実装面)に配線パターンPを有する。そして、パッド部22、23とこの配線パターンPとがバンプ4を介して接続されることにより、被実装対象2が実装対象3にフリップチップ実装される。
【0042】
ここで、この半導体装置1では、実装対象3が幅広な表層導体34から成る配線パターンPを有する(図8参照)。かかる構成では、被実装対象2が発熱すると、その熱が発熱部24から信号用パッド部23およびバンプ4を経由して実装対象3の配線パターンPに伝わる。そして、この熱が配線パターンPからキャビティ311に放熱され、あるいは、配線パターンPから実装対象3の本体部31に放出される。このとき、配線パターンPの表層導体34が幅広構造を有するので、配線パターンPからキャビティ311への放熱が促進され、あるいは、配線パターンPから実装対象3の本体部31への伝熱が効率的に行われる(表層導体34によるヒートスプレッダ効果)。これにより、被実装対象2からの放熱性が確保される利点がある。
【0043】
例えば、この実施の形態2では、実装対象3がセラミックス多層基板から成り、そのキャビティ311の底面に配線パターンPが形成されている(図7および図8参照)。そして、この配線パターンPを構成する表層導体34が実装対象3の平面方向に拡幅された幅広構造を有している。具体的には、表層導体34の幅が、一般的な配線パターンの表層導体の幅に対して2倍〜3倍に設定されている。また、この表層導体34は、配線パターンPの電気特性に影響を与えない範囲で拡幅されている。ここで、表層導体34の熱伝導率は、実装対象3であるセラミックス多層基板の熱伝導率よりも高い。このため、被実装対象2から配線パターンPに伝わった熱が、表層導体34により実装対象3の平面方向に拡散され、その後にキャビティ311中あるいは実装対象3内部に放出される。これにより、配線パターンPからの放熱が効率的に行われている。
【0044】
例えば、この実施の形態2では、配線パターンP(表層導体34)が配線パターンPの電気特性に影響を与えない範囲で厚肉に形成されている。例えば、表層導体34の幅が一般的な配線パターンの表層導体の肉厚に対して2倍〜3倍に設定されている。
【0045】
また、上記の構成では、実装対象3が配線パターンP(表層導体34)に伝熱可能に接続された内層導体35、36を有すると共に、この内層導体35、36が幅広構造あるいは厚肉構造を有することが好ましい(図6および図7参照)。かかる構成では、被実装対象2から配線パターンPに伝わった熱が、配線パターンPから内層導体35、36に伝わり、この内層導体35、36から実装対象3の本体部31内に放出される。このとき、内層導体35、36が幅広構造あるいは厚肉構造を有するので、内層導体35、36から実装対象3の本体部31内への伝熱が効率的に行われる。これにより、被実装対象2からの放熱性が向上する利点がある。
【0046】
例えば、この実施の形態2では、配線パターンPの信号接続部に信号用内層導体35が接続され、また、配線パターンPのグランド接続部に接地用内層導体36が接続されている(図6および図7参照)。また、これらの内層導体35、36がセラミックス多層基板(実装対象3)の実装面に近い内層部に配置されている。例えば、図7に示す構成では、配線パターンPを有する基板(キャビティ311の底面を構成する基板)に対して内層側にて隣接する基板に、内層導体35、36が形成されている。また、内層導体35、36が配線パターンPの電気特性に影響を与えない範囲で幅広あるいは厚肉に形成されている。例えば、内層導体35、36の幅あるいは肉厚が、一般的な配線パターンの内層導体に対して2倍〜3倍に設定されている。ここで、内層導体35、36の熱伝導率は、実装対象3であるセラミックス多層基板の熱伝導率よりも高い。このため、配線パターンPから内層導体35、36に伝わった熱が、内層導体35、36にて実装対象3の平面方向に拡散され、その後に実装対象3内部に放出される。これにより、配線パターンPからの放熱が効率的に行われている。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、この発明にかかる半導体装置は、フリップチップ実装構造を有する構成にて半導体素子からの放熱性を確保できる点で有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 半導体装置、2 被実装対象、21 本体部、22 接地用パッド部、23 信号用パッド部、24 発熱部、3 実装対象、31 本体部、311 キャビティ、32 実装部、321 ダイマウント部、3211 凸部、322 基板部、3221 貫通孔、33 ヒートスプレッダ、34 表層導体、35 信号用内層導体、36 接地用内層導体、4 バンプ、5 キャリア、6 リング、7 蓋、P 配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被実装対象を実装対象に対してバンプを介してフリップチップ実装して成る半導体装置であって、
前記被実装対象が回路面上であって発熱部の近傍にパッド部を有すると共に、前記実装対象が熱伝導性材料あるいは放熱性材料から成る実装部を有し、且つ、前記パッド部と前記実装部とが前記バンプを介して接続されることにより、前記被実装対象が前記実装対象にフリップチップ実装されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記パッド部が前記被実装対象のグランド接続用パッドであり、前記実装部が金属製のダイマウント部を有し、且つ、前記パッド部と前記ダイマウント部とが前記バンプを介して接続される請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記パッド部が前記被実装対象のシグナル接続用パッドであり、前記実装部が高放熱性材料から成ると共に配線パターンを有する基板部を備え、且つ、前記パッド部と前記基板部の配線パターンとが前記バンプを介して接続される請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記パッド部が前記被実装対象のシグナル接続用パッドであり、前記実装部が金属製のダイマウント部と高熱伝導性材料から成ると共に配線パターンを有する基板部とを積層して成り、且つ、前記パッド部と前記基板部の前記配線パターンとが前記バンプを介して接続される請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項5】
複数の前記パッド部が前記被実装対象のグランド接続用パッド(以下、接地用パッド部という。)と前記被実装対象のシグナル接続用パッド(以下、信号用パッド部という。)とから成り、前記実装部が金属製のダイマウント部と配線パターンを有する基板部とを積層して成ると共に、前記被実装対象が前記実装部に対して前記基板部側に配置されるときに、
前記ダイマウント部が凸部を有すると共に前記基板部が貫通孔を有し、前記ダイマウント部が前記凸部を前記貫通孔に挿入させつつ前記基板部に積層され、且つ、前記接地用パッド部と前記ダイマウント部の前記凸部とが接続されると共に前記信号用パッド部と前記基板部の前記配線パターンとが接続される請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項6】
被実装対象を実装対象に対してバンプを介してフリップチップ実装して成る半導体装置であって、
前記被実装対象が回路面上であって発熱部の近傍にパッド部を有すると共に、前記実装対象が幅広な表層導体から成る配線パターンを有し、且つ、前記パッド部と前記配線パターンとが前記バンプを介して接続されることにより、前記被実装対象が前記実装対象にフリップチップ実装されることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記配線パターンが厚肉構造を有する請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記実装対象が前記配線パターンに伝熱可能に接続された内層導体を有すると共に、前記内層導体が幅広構造あるいは厚肉構造を有する請求項6または7に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−267791(P2010−267791A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117727(P2009−117727)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】