説明

半導体装置

【課題】パッシベーション膜のクラックを防止すると共に、配線部材の寿命を向上させることができる半導体装置を提供すること。
【解決手段】半導体素子が形成された基板上に配線部とパッシベーション膜50とが構成される半導体装置であって、パッシベーション膜50と配線部にけるパッシベーション膜50の直下の配線部材10との間に、配線部材10を覆う圧縮性の第1絶縁膜20と、第1絶縁膜20上に設けられる圧縮性の第2絶縁膜40と、第1絶縁膜20と第2絶縁膜40との間に配線部材10による角部の面取りするように設けられる絶縁性の引張応力膜30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子が形成された基板上に配線部とパッシベーション膜とが構成される半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置における表面保護構造の一例として特許文献1に示すものがあった。特許文献1に示される表面保護構造は、金属層を施しパターン化して形成された配線部材上にSiOを施し、このSiOを化学機械研磨により平坦化し、全体的に平坦化されたSiO上にSiを施すことによって形成されるものである。
【特許文献1】特開平5−198572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に示される表面保護構造においては、SiO及びSiが共に平坦化できるので、Siのクラックを抑制することができる。しかしながら、SiOとSiとは、共に圧縮性の高い材料であるあるため、配線部材のストレスマイグレーション寿命が低下するという問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、パッシベーション膜のクラックを防止すると共に、配線部材の寿命を向上させることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1に記載の半導体装置は、半導体素子が形成された基板上に配線部とパッシベーション膜とが構成される半導体装置であって、パッシベーション膜と配線部にけるパッシベーション膜の直下の配線部材との間に、配線部材を覆う圧縮性の第1絶縁膜と、第1絶縁膜上に設けられる圧縮性の第2絶縁膜と、第1絶縁膜と第2絶縁膜との間に配線部材による角部の面取りをするように設けられる絶縁性の引張応力膜とを備えることを特徴とするものである。
【0006】
このように、第1絶縁膜と第2絶縁膜との間に配線部材による角部の面取りするように設けられる絶縁性の引張応力膜を備えることによって、パッシベーション膜のクラックを完全に防止することができると共に、第1絶縁膜、第2絶縁膜、さらにはパッシベーション膜の応力を引張応力膜が緩和して配線部材のストレスマイグレーション寿命を向上させることができる。
【0007】
また、引張応力膜としては、請求項2乃至4に示すように、有機SOG、無機SOG、O−TEOSを採用すると好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施の形態における半導体装置の概略構成を示す断面図である。図2(a)〜(e)は、本発明の実施の形態における半導体装置の製造工程を示す工程別断面図である。図3(a)、(b)は、引張応力膜を設けない場合の配線部材の拡大断面図である。
【0010】
図1に示すように、半導体装置は、半導体素子が形成された基板上に配線部(配線部材10を含む)とパッシベーション膜50とが構成されるものである。
【0011】
なお、図1においては、半導体素子は省略して、半導体素子が形成された基板上に構成されるパッシベーション膜50と配線部におけるパッシベーション膜50の直下の配線部材10を示すものである。例えば、半導体素子は、LDMOS(Lateral Double-diffused MOS)トランジスタなどを採用することができるが、特に限定されるものではない。なお、半導体素子に関しては、例えば本出願人が先に特開2007−250587号公報等により開示しているので、本実施の形態における詳細な説明は省略する。また、例えば、配線部は、層間絶縁膜を介して数層の配線部材(例えばAl)が積層されるものである。
【0012】
配線部に含まれる配線部材10は、半導体基板や層間絶縁膜上などに形成されるものであり、例えば、Al、AlCu、純Al、AlSi、AlSiCuなどを採用することができる。
【0013】
配線部材10上には、配線部材10を覆うように第1絶縁膜20が設けられる。この第1絶縁膜20は、例えば、SiOなどの絶縁性かつ圧縮性の材料からなるものである。第1絶縁膜20は、配線部材10上に設けるため配線部材10によって角部ができる。
【0014】
第1絶縁膜20上には、この角部の面取りをするように、絶縁性の引張応力膜30が設けられる。この引張応力膜30は、第1絶縁膜20、第2絶縁膜40とは異なり、引張応力を有する材料からなるものであり、例えば、有機SOG、無機SOG、O−TEOSを採用すると好ましい。また、引張応力膜30は、図1からもわかるように、配線部材10間(第1絶縁膜20間)の凹部、配線部材10(第1絶縁膜20)による段差部を埋めるように設けることによって、角部の面取りをすることができる。
【0015】
引張応力膜30上には、引張応力膜30を覆うように第2絶縁膜40が設けられる。この第2絶縁膜40は、例えば、SiOなどの絶縁性かつ圧縮性の材料からなるものである。なお、引張応力膜30(有機SOG(Spin-on-glass)、無機SOG(Spin-on-glass)、O−TEOSなど)は、機械的強度が弱いため、引張応力膜30上に第2絶縁膜40を設けることによって補強することができる。そして、第2絶縁膜40上には、例えば、SiNなどからなるパッシベーション膜50が設けられる。
【0016】
ここで図2を用いて、本実施の形態における半導体装置の製造方法に関して説明する。
【0017】
まず、図2(a)に示すように、半導体素子、下地絶縁層、下部の配線部材、層間絶縁膜などが形成された基板上に配線部材10を形成する配線形成工程を実施する。次に、図2(b)に示すように、配線部材10上に例えばプラズマCVDで第1絶縁膜20を形成する第1絶縁膜形成工程を実施する。次に、図2(c)に示すように、第1絶縁膜20上に例えば有機SOG薬液を回転塗布した後、熱硬化させて引張応力膜30を形成する引張応力膜形成工程を実施する。次に、図2(d)に示すように、引張応力膜30上に例えばプラズマCVDで第2絶縁膜40を形成する第2絶縁膜形成工程を実施する。そして、図2(e)に示すように、第2絶縁膜40上に例えばプラズマCVDでパッシベーション膜50を形成するパッシベーション膜形成工程を実施する。
【0018】
通常、引張応力膜30を設けない場合、第1絶縁膜20、第2絶縁膜40、さらにパッシベーション膜50の圧縮応力によって、図3(a)に示す配線部材10内に点在する空孔60が図3(b)に示す配線部材10の角部に移動してボイド61となり配線部材10のストレスマイグレーション寿命が短くなる。
【0019】
しかしながら、本実施の形態における半導体装置は、上述のように、第1絶縁膜20と第2絶縁膜40との間に配線部材10による角部の面取りするように設けられる絶縁性の引張応力膜30を備えることによって、パッシベーション膜50を平坦化できパッシベーション膜50のクラックを完全に防止することができると共に、第1絶縁膜、第2絶縁膜、さらにパッシベーション膜50の応力を引張応力膜30が緩和して配線部材10のストレスマイグレーション寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明の実施の形態における半導体装置の製造工程を示す工程別断面図である。
【図3】(a)、(b)は、引張応力膜を設けない場合の配線部材の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 配線部材、20 第1絶縁膜、30 引張応力膜、40 第2絶縁膜、50 パッシベーション膜、60 空孔、61 ボイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が形成された基板上に配線部とパッシベーション膜とが構成される半導体装置であって、
前記パッシベーション膜と前記配線部にける当該パッシベーション膜の直下の配線部材との間に、
前記配線部材を覆う圧縮性の第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に設けられる圧縮性の第2絶縁膜と、
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との間に前記配線部材による角部の面取りをするように設けられる絶縁性の引張応力膜と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記引張応力膜は、有機SOGからなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記引張応力膜は、無機SOGからなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記引張応力膜は、O−TEOSからなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−34093(P2010−34093A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191402(P2008−191402)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】