説明

半導体装置

【課題】体格を大型化せず、かつ低コストで電極部材の温度上昇を抑えることができる半導体装置を提供すること。
【解決手段】半導体装置10は、電源調整用基板31の回路パターン35a,35b上にコンデンサ32が実装される電源調整モジュール30と、電源調整モジュール30の下方に配置され、絶縁金属基板22の銅パターン24上に半導体素子23が実装される半導体モジュール12とを有する。また、半導体装置10は、絶縁金属基板22と熱的に結合されたヒートシンク11と、直流電源41に接続される正極用電極部材27及び負極用電極部材28とを有する。正極用電極部材27及び負極用電極部材28は、電源調整用基板31の回路パターン35a,35b、及び絶縁金属基板22の銅パターン24と電気的に接続されるとともに絶縁金属基板22を介してヒートシンク11に面接触して、このヒートシンク11に熱伝達可能に結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源調整モジュールと、この電源調整モジュールの下方に配置された半導体モジュールと、この半導体モジュールの基板と熱的に結合されたヒートシンクと、電源と電気的に接続される電極部材と、を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を有するモジュールの上方に別のモジュールを配置した半導体装置として、例えば、特許文献1の回路モジュールが挙げられる。図5(a)に示すように、回路モジュール80は、第1の基板81に半導体素子82を有する第1のモジュール基板83と、第2の基板87に、半導体素子82制御用の駆動素子84を有する第2のモジュール基板85とを有する。そして、回路モジュール80においては、ケース材86によって第1のモジュール基板83の上方に第2のモジュール基板85が配置されている。第1のモジュール基板83の第1の基板81には外部リード88が固着されるとともに、この外部リード88は第2の基板87に形成されたスルーホール87aに挿入されている。この外部リード88により、第1の基板81に形成された回路パターン81aと、第2の基板87に形成された回路パターン87bとが信号接続されている。
【0003】
そして、特許文献1の回路モジュール80においては、電源(図示せず)からの主電流は、図示しない電源調整部を流れた後、駆動素子84に流れる。この駆動素子84からの電気信号が外部リード88を介して半導体素子82に伝達されることで、半導体素子82が駆動制御されるようになっている。よって、回路モジュール80において、外部リード88には電源からの主電流は流れず、外部リード88はあまり発熱しないようになっている。
【0004】
ところで、半導体素子を有するモジュールの上方に別のモジュールを配置した半導体装置であって、その別のモジュールに電源からの主電流が流れるように構成された半導体装置がある。図5(b)に示すように、半導体装置90は、半導体素子91を有する半導体モジュール92と、電源調整用の電子部品(例えば、コンデンサ)93を有する電源調整用モジュール94とを有する。電源調整用モジュール94の回路パターン94aには外部接続電極95(電極部材)を介して電源99が電気的に接続されている。また、電源調整用モジュール94には、内部接続電極96(電極部材)を介して半導体モジュール92の回路パターン92aが電気的に接続されている。そして、電源99からの主電流は、外部接続電極95から電子部品93に流れ、この電子部品93によって調整された電流は、内部接続電極96を介して半導体モジュール92の半導体素子91に流れるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−88000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5(b)に示す半導体装置90において、外部接続電極95には電源99からの主電流が流れるため温度上昇し、この温度上昇に伴い外部接続電極95周辺の電子部品93や駆動回路(図示せず)等の温度も上昇してしまう。外部接続電極95の温度上昇を抑えるためには、熱容量を大きくするために外部接続電極95を大型化したり、高熱伝導率の材料(例えば、銅)で外部接続電極95を製造したりすることが考えられるが、体格が大きくなったり、製造コストが嵩んでしまう。
【0007】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、体格を大型化せず、かつ低コストで電極部材の温度上昇を抑えることができる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、電源調整用基板の回路パターン上に電子部品が実装される電源調整モジュールと、該電源調整モジュールの下方に配置され、基板の回路パターン上に半導体素子が実装される半導体モジュールと、前記基板と熱的に結合されたヒートシンクと、電源に接続される電極部材と、を有する半導体装置に関する。そして、半導体装置において、前記電極部材が、前記電源調整用基板の回路パターン、及び前記基板の回路パターンと電気的に接続されるとともに前記基板を介して前記ヒートシンクに面接触して該ヒートシンクに熱伝達可能に結合されている。
【0009】
これによれば、電極部材に電源からの主電流が流れ、電極部材が発熱しても、その熱は電極部材から基板を介してヒートシンクに直接伝わる。このため、電極部材の冷却効率を高めることができ、電極部材の温度上昇を抑えることができる。したがって、電極部材の熱伝導率を高めるために電極部材を大型化したり、高熱伝導率の材料を用いる必要がなく、電極部材を大型化せず、かつ低コストで電極部材の温度上昇を抑えることができる。
【0010】
また、前記電極部材は、前記基板を介して前記ヒートシンクに面接触するとともに前記電源調整用基板の回路パターン及び前記基板の回路パターンと電気的に接続される第1電極部と、該第1電極部から立設されるとともに前記電源と電気的に接続される第2電極部と、を一体に備え、前記第1電極部は、前記第2電極部よりも大形状をなすように第2電極部の外面より外方へ延設されていてもよい。
【0011】
これによれば、例えば、電極部材をリードやピンで形成する場合と比べると、ヒートシンクへの電極部材の熱的な接触面積を広く確保することができ、電極部材からヒートシンクへの熱伝導率をより高めて冷却効率を高めることができる。
【0012】
また、前記第1電極部には、該第1電極部を前記ヒートシンクに固定する固定部材が挿通される挿通孔が形成されていてもよい。
これによれば、挿通孔に挿通した固定部材をヒートシンクに固定することで、電極部材をヒートシンクに固定することができる。したがって、電極部材が外部電極部材と内部電極部材に別れていた場合のように、各電極部材を別々に固定する場合と比べると、電極部材の固定作業を簡単に行うことができ、半導体装置の組立てを簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、体格を大型化せず、かつ低コストで電極部材の温度上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の半導体装置を示す斜視図。
【図2】半導体装置を模式的に示す断面図。
【図3】電極部材を示す斜視図。
【図4】半導体装置の回路構成図。
【図5】(a)は特許文献1の回路モジュールを示す図、(b)は従来技術を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を車両に搭載される半導体装置に具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
図1及び図2に示すように、半導体装置10に一体のヒートシンク11はアルミニウム系金属や銅等で形成されるとともに、このヒートシンク11上には、半導体モジュール12が接合されている。図2に示すように、半導体モジュール12は、基板としての絶縁金属基板22に半導体素子23が実装されてなる。半導体素子23は、1個のスイッチング素子(MOSFET)及び1個のダイオードが一つのデバイスとして組み込まれている。すなわち、半導体素子23は、図4に示される一つのスイッチング素子Q1〜Q6及び一つのダイオードD1〜D6を備えたデバイスとなる。
【0016】
図2に示すように、絶縁金属基板22の樹脂層26は、表面に回路パターンとしての銅パターン24を有するとともに、裏面に樹脂層26とヒートシンク11とを接合する接合層として機能するアルミ板25を有する。なお、樹脂層26は、電気的な絶縁機能を有するとともに、高熱伝導の機能を有するものである。そして、絶縁金属基板22は、ボルトBによってヒートシンク11に接合され、絶縁金属基板22はヒートシンク11に熱的に結合されている。
【0017】
図1及び図2に示すように、絶縁金属基板22上には、アルミニウムにより略棒状に形成された電極部材としての正極用電極部材27及び負極用電極部材28が配置されている。アルミニウム製の正極用電極部材27及び負極用電極部材28は、絶縁金属基板22上に配置される第1電極部27a,28aを備える。図3に示すように、第1電極部27a,28aは矩形板状に形成されるとともに、第1電極部27a,28aの長辺方向の両側には、挿通孔27b,28bが第1電極部27a,28aを厚み方向に貫通して形成されている。そして、正極用電極部材27及び負極用電極部材28は、挿通孔27b,28bに挿通された固定部材としてのボルトBをヒートシンク11に固定(螺合)することでヒートシンク11に固定されている。なお、挿通孔27b,28b内には筒状の絶縁部材21が挿入され、この絶縁部材21によりボルトBが第1電極部27a,28aから絶縁されている。
【0018】
正極用電極部材27及び負極用電極部材28において、第1電極部27a,28aの長辺方向の中央には丸棒状をなす第2電極部27c,28cが立設されている。第1電極部27a,28aは、第2電極部27c,28cよりも大形状をなし、第2電極部27c,28cの周面(外面)に対し、第1電極部27a,28aの長辺方向両方(外方、図3では左右両方)、及び短辺方向の一方(外方、図3では前方)に向けて延設されている。
【0019】
また、第1電極部27a,28aの上面において、第2電極部27c,28c以外の部位は、後述の電源調整用基板31を支持する支持面Sを構成している。さらに、第2電極部27c,28cにおける第1電極部27a,28a寄りの周面から第1電極部27a,28aの上面に至るまでの位置には、連結部27d,28dが形成されるとともに、この連結部27d,28dにより第1電極部27a,28aに対する第2電極部27c,28cの強度が確保されている。
【0020】
そして、図2に示すように、正極用電極部材27及び負極用電極部材28の第1電極部27a,28aは、その下面が、半導体モジュール12の絶縁金属基板22に面接触するとともに、絶縁金属基板22を介してヒートシンク11に面接触し、第1電極部27a,28aとヒートシンク11とは熱的に結合されている。また、第1電極部27a,28aは、絶縁金属基板22の銅パターン24と電気的に接続されている。
【0021】
図1及び図2に示すように、正極用電極部材27及び負極用電極部材28の第1電極部27a,28a(支持面S)上には、電源調整モジュール30が支持され、半導体モジュール12の上方に電源調整モジュール30が配置されている。
【0022】
この電源調整モジュール30の電源調整用基板31において、絶縁基板34の一面(上面)には、負極用の回路パターン35aが設けられるとともに、絶縁基板34の他面、すなわち、負極用の回路パターン35aが設けられた面と反対側の面(下面)には、正極用の回路パターン35bが設けられている。本実施形態では、回路パターン35a,35bは銅で形成されている。電源調整用基板31には電子部品として複数(この実施形態では4個)のコンデンサ32が配置され、この電源調整用基板31とコンデンサ32とから電源調整モジュール30が構成されている。
【0023】
電源調整モジュール30において、各コンデンサ32は、正極端子(図示せず)が電源調整用基板31の正極用の回路パターン35bを介して正極用電極部材27の第1電極部28aと電気的に接続されている。また、各コンデンサ32は、負極端子(図示せず)が負極用の回路パターン35aを介して負極用電極部材28の第1電極部28aと電気的に接続されている。
【0024】
また、正極用電極部材27の第2電極部27cは、直流電源41のプラスに接続され、負極用電極部材28の第2電極部28cは直流電源41のマイナスに接続されている。そして、直流電源41からの主電流が、正極用電極部材27から電源調整モジュール30のコンデンサ32に流れると、コンデンサ32で充電が行われる。コンデンサ32が充電されていれば、コンデンサ32を流れた電流は半導体モジュール12へ流れる。すなわち、直流電源41からの主電流は、電源調整モジュール30で調整された後、半導体モジュール12に流れるようになっている。
【0025】
次に、半導体装置10の回路構成を説明する。図4に示すように、半導体装置10は、電源調整モジュール30と半導体モジュール12とからなるインバータ回路を有する。このインバータ回路は、6個のスイッチング素子Q1〜Q6を有する。各スイッチング素子Q1〜Q6には、MOSFET(metal oxide semiconductor 電界効果トランジスタ)が使用されている。インバータ回路は、第1及び第2のスイッチング素子Q1,Q2、第3及び第4のスイッチング素子Q3,Q4、第5及び第6のスイッチング素子Q5,Q6がそれぞれ直列に接続されている。各スイッチング素子Q1〜Q6のドレインとソース間には、ダイオードD1〜D6が、逆並列に接続されている。第1、第3及び第5のスイッチング素子Q1,Q3,Q5及び各第1、第3及び第5のスイッチング素子Q1,Q3,Q5に接続されたダイオードD1,D3,D5の組はそれぞれ上アームと呼ばれる。また、第2、第4及び第6のスイッチング素子Q2,Q4,Q6及び第2、第4及び第6のスイッチング素子Q2,Q4,Q6に接続されたダイオードD2,D4,D6の組はそれぞれ下アームと呼ばれる。
【0026】
第1、第3及び第5のスイッチング素子Q1,Q3,Q5のドレイン用の銅パターン24が、正極用電極部材27の第1電極部27aに接続され、第2、第4及び第6のスイッチング素子Q2,Q4,Q6のソース用の銅パターン24が、負極用電極部材28の第1電極部28aに接続されている。すなわち、半導体モジュール12の銅パターン24は、正極用電極部材27及び負極用電極部材28に電気的に接続されている。
【0027】
また、正極用電極部材27と負極用電極部材28の間にはコンデンサ32が複数並列に接続されている。そして、コンデンサ32の正極端子が、正極用の回路パターン35bを介して正極用電極部材27の第1電極部27aに接続され、コンデンサ32の負極端子が、負極用の回路パターン35aを介して負極用電極部材28の第1電極部28aに接続されている。
【0028】
スイッチング素子Q1,Q2の間の接合点はU相端子Uに、スイッチング素子Q3,Q4の間の接合点はV相端子Vに、スイッチング素子Q5,Q6の間の接合点はW相端子Wに、それぞれ接続されている。そして、U相端子U、V相端子V及びW相端子Wはモータ(図示せず)に接続されている。各スイッチング素子Q1〜Q6のゲートは駆動信号入力端子G1〜G6に接続されている。各スイッチング素子Q1〜Q6のソースは信号端子S1〜S6に接続されている。駆動信号入力端子G1〜G6及び信号端子S1〜S6は制御装置(図示せず)に接続されている。正極用電極部材27の第2電極部27cは、直流電源41のプラスに接続され、負極用電極部材28の第2電極部28cは直流電源41のマイナスに接続されている。
【0029】
次に、上記構成の半導体装置10の作用について説明する。半導体装置10は、例えば、車両の電源装置の一部を構成するものとして使用される。
直流電源41からの直流電流が、正極用電極部材27の第2電極部27cから第1電極部27aを流れて、電源調整モジュール30の回路パターン35bからコンデンサ32を流れるとともに、半導体モジュール12の銅パターン24から半導体素子23に流れる。絶縁金属基板22において、上アームの第1、第3及び第5のスイッチング素子Q1,Q3,Q5及び下アームの第2、第4及び第6のスイッチング素子Q2,Q4,Q6がそれぞれ所定周期でオン、オフ制御されることによりモータに交流が供給されてモータが駆動される。そして、電流は負極用電極部材28から直流電源41に流れる。
【0030】
半導体装置10において、正極用電極部材27及び負極用電極部材28の第2電極部27c,28cが、主電流が流れることに伴い発熱すると、この熱は第2電極部27c,28cから第1電極部27a,28aを伝わり、半導体モジュール12の絶縁金属基板22に伝わる。このとき、電源調整用基板31は、正極用電極部材27及び負極用電極部材28の支持面Sに支持されているだけであり、電源調整用基板31が正極用電極部材27及び負極用電極部材28での熱伝導の妨げ(熱抵抗)にならない。
【0031】
そして、絶縁金属基板22に伝わった熱は、ヒートシンク11に伝わり、ヒートシンク11から放熱される結果、正極用電極部材27及び負極用電極部材28が冷却され、温度上昇が抑えられる。また、第1電極部27a,28aは、第2電極部27c,28cより大形状をなすように矩形状をなし、しかも、絶縁金属基板22を介してヒートシンク11に面接触しているため、第1電極部27a,28aからヒートシンク11への熱伝導率が高まる。
【0032】
さらに、コンデンサ32が通電に伴い発熱するが、この熱は電源調整用基板31を介して正極用電極部材27及び負極用電極部材28に伝わり、コンデンサ32が冷却される。加えて、スイッチング素子Q1〜Q6、ダイオードD1〜D6が通電に伴い発熱するが、この熱は絶縁金属基板22を介してヒートシンク11に伝わり、スイッチング素子Q1〜Q6、ダイオードD1〜D6が冷却される。
【0033】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)直流電源41と電気的に接続される正極用電極部材27及び負極用電極部材28に、電源調整用基板31の回路パターン35a,35b、及び絶縁金属基板22の銅パターン24を電気的に接続した。そして、この正極用電極部材27及び負極用電極部材28を、絶縁金属基板22を介してヒートシンク11に面接触させ、熱的に結合させた。このため、正極用電極部材27及び負極用電極部材28に直流電源41からの主電流が流れ、正極用電極部材27及び負極用電極部材28が発熱しても、熱を正極用電極部材27及び負極用電極部材28から絶縁金属基板22を介してヒートシンク11に直接伝え、両電極部材27,28の冷却効率を高めることができる。したがって、正極用電極部材27及び負極用電極部材28を大型化することなく、正極用電極部材27及び負極用電極部材28の温度上昇を抑えることができる。
【0034】
(2)正極用電極部材27及び負極用電極部材28を、絶縁金属基板22を介してヒートシンク11に面接触させ、正極用電極部材27及び負極用電極部材28の熱をヒートシンク11に直接伝えるようにし、正極用電極部材27及び負極用電極部材28の冷却効率を高めるようにした。このため、正極用電極部材27及び負極用電極部材28を、銅のように高熱伝導率の材料で形成しなくてもよく、本実施形態のようにアルミニウムで形成することができる。アルミニウムは、銅に比べて安価であり、成形も容易であることから、正極用電極部材27及び負極用電極部材28の温度上昇を抑えることができながらも、その製造コスト、ひいては半導体モジュール12の製造コストを抑えることができる。
【0035】
(3)半導体装置10において、半導体モジュール12に設けられた半導体素子23は、電源調整モジュール30に設けられたコンデンサ32に比べ発熱量が大きいが、ヒートシンク11によって冷却される。電源調整モジュール30においては、コンデンサ32の発熱量は半導体素子23に比べて小さいがヒートシンク11が存在せず、熱容量も小さい。このため、電源調整モジュール30は半導体モジュール12より発熱量が大きい。しかし、電源調整モジュール30で発生した熱を、正極用電極部材27及び負極用電極部材28から絶縁金属基板22を介してヒートシンク11に伝えることができる。したがって、正極用電極部材27及び負極用電極部材28により、電源調整モジュール30の温度上昇も抑えることができる。
【0036】
(4)正極用電極部材27及び負極用電極部材28は、絶縁金属基板22に面接触する第1電極部27a,28aと、この第1電極部27a,28aから立設されるとともに直流電源41に接続される第2電極部27c,28cとを一体に備える。そして、第1電極部27a,28aは第2電極部27c,28cより大形状をなす。このため、絶縁金属基板22を介したヒートシンク11への正極用電極部材27及び負極用電極部材28の接触面積を広く確保することができ、各電極部材27,28からヒートシンク11への熱伝導率をより高めて冷却効率を高めることができる。
【0037】
(5)正極用電極部材27及び負極用電極部材28を、矩形板状の第1電極部27a,28aと、丸棒状の第2電極部27c,28cとから形成した。このため、例えば、正極用電極部材27及び負極用電極部材28がリードやピンで形成される場合と比べて、正極用電極部材27及び負極用電極部材28の熱容量を大きくして熱伝導率を高めることができる。
【0038】
(6)正極用電極部材27及び負極用電極部材28を、矩形板状の第1電極部27a,28aと、丸棒状の第2電極部27c,28cとから形成した。そして、第1電極部27a,28aの支持面Sに電源調整用基板31を支持させた状態で、その回路パターン35a,35bを第1電極部27a,28aと電気的に接続した。このため、正極用電極部材27及び負極用電極部材28は、電源調整用基板31によってヒートシンク11との熱的な結合が分断されることがなく、各電極部材27,28の熱を絶縁金属基板22を介してヒートシンク11に効率良く伝えることができる。
【0039】
(7)正極用電極部材27及び負極用電極部材28を、矩形板状の第1電極部27a,28aと、丸棒状の第2電極部27c,28cとから形成し、第1電極部27a,28aに挿通孔27b,28bを形成した。そして、挿通孔27b,28bに挿通したボルトBをヒートシンク11に固定することで、正極用電極部材27及び負極用電極部材28をヒートシンク11に固定することができる。したがって、第1電極部27a,28aと第2電極部27c,28cを一度の固定作業でヒートシンク11に固定することができ、半導体装置10の組立てを簡単に行うことができる。
【0040】
(8)正極用電極部材27及び負極用電極部材28を、矩形板状の第1電極部27a,28aと、丸棒状の第2電極部27c,28cとから形成した。そして、絶縁金属基板22上に第1電極部27a,28aを配置するとともに、第1電極部27a,28aの支持面S上に電源調整用基板31を支持させた状態で、電源調整用基板31、第1電極部27a,28a、及び絶縁金属基板22を貫通させたボルトBをヒートシンク11に固定し、両電極部材27,28をヒートシンク11に固定した。よって、正極用電極部材27及び負極用電極部材28のヒートシンク11への固定と同時に、絶縁金属基板22及び電源調整用基板31を位置決め配置することができ、半導体装置10の組立てを簡単に行うことができる。
【0041】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、半導体装置10の正極及び負極共に本発明の電極部材(正極用電極部材27と負極用電極部材28)を用いたが、正極及び負極のいずれか一方のみに本発明の電極部材を採用し、他方は本発明の電極部材以外の電極であってもよい。
【0042】
○ 正極用電極部材27及び負極用電極部材28は、絶縁金属基板22を介してヒートシンク11に面接触するのであれば、第1電極部27a,28aが第2電極部27c,28cより大形状をなさなくてもよく、例えば、円柱状や角筒状、錐形状であってもよい。
【0043】
○ 実施形態では、ヒートシンク11を金属製としたが、ヒートシンク11を熱伝導率の高い合成樹脂製に変更してもよい。
○ 実施形態では、電源調整モジュール30を、電子部品としてのコンデンサ32を電源調整用基板31に備えるものに具体化したが、電源調整用基板31に他の電子部品を備えるものであってもよい。
【0044】
○ 実施形態では、正極用電極部材27及び負極用電極部材28を、ボルトBを用いてヒートシンク11に固定した。しかし、正極用電極部材27及び負極用電極部材28が、絶縁金属基板22を介してヒートシンク11に面接触するのであれば、ボルトBによる固定の代わりに、接着剤による接着等で正極用電極部材27及び負極用電極部材28を固定してもよい。
【0045】
○ 実施形態では、正極用電極部材27及び負極用電極部材28を直流電源41と電気的に接続したが、電源としての交流電源と電極部材とを電気的に接続してもよい。
○ 電子部品装置の用途は、車両に搭載されるものに限らず、家電製品や産業機械に適用してもよい。
【0046】
○ コンデンサ32の数は4個に限らず、半導体装置10の定格電流値及び使用するコンデンサの容量により決まり、3個以下でも5個以上でもよい。
○ スイッチング素子Q1〜Q6はMOSFETに限らず、他のパワートランジスタ(例えば、IGBT(絶縁ゲートバイポーラ型トランジスタ))やサイリスタを使用してもよい。
【0047】
○ 半導体装置10は、インバータ回路に限らず、例えば、DC−DCコンバータに適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0048】
(イ)前記電子部品はコンデンサである請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の半導体装置。
(ロ)前記第1電極部には、前記電源調整用基板を支持する支持面が設けられている請求項2、請求項3、及び技術的思想(イ)のうちいずれか一項に記載の半導体装置。
【0049】
(ハ)前記支持面上に前記電源調整用基板を支持した状態で前記固定部材を前記電源調整用基板、第1電極部、及び基板を貫通させて前記ヒートシンクに固定する技術的思想(ロ)に記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0050】
B…固定部材としてのボルト、10…半導体装置、11…ヒートシンク、12…半導体モジュール、22…基板としての絶縁金属基板、23…半導体素子、24…回路パターンとしての銅パターン、27…正極用電極部材、28…負極用電極部材、27a,28a…第1電極部、27b,28b…挿通孔、27c,28c…第2電極部、30…電源調整モジュール、31…電源調整用基板、32…電子部品としてのコンデンサ、35a,35b…回路パターン、41…電源としての直流電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源調整用基板の回路パターン上に電子部品が実装される電源調整モジュールと、
該電源調整モジュールの下方に配置され、基板の回路パターン上に半導体素子が実装される半導体モジュールと、
前記基板と熱的に結合されたヒートシンクと、
電源に接続される電極部材と、を有する半導体装置であって、
前記電極部材が、前記電源調整用基板の回路パターン、及び前記基板の回路パターンと電気的に接続されるとともに前記基板を介して前記ヒートシンクに面接触して該ヒートシンクに熱伝達可能に結合されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記電極部材は、前記基板を介して前記ヒートシンクに面接触するとともに前記電源調整用基板の回路パターン及び前記基板の回路パターンと電気的に接続される第1電極部と、該第1電極部から立設されるとともに前記電源と電気的に接続される第2電極部と、を一体に備え、前記第1電極部は、前記第2電極部よりも大形状をなすように第2電極部の外面より外方へ延設されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1電極部には、該第1電極部を前記ヒートシンクに固定する固定部材が挿通される挿通孔が形成されている請求項2に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−195374(P2012−195374A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56849(P2011−56849)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】