半導体装置
【発明の詳細な説明】
[発明の目的]
(産業上の利用分野)
本発明は、高速信号で動作する半導体装置に係わり、特にマイクロストリップラインを備えた半導体装置に関する。
(従来の技術)
近年、光通信機器やスーパーコンピュータ用にGHz帯で動作する半導体装置の開発が急速な進歩を遂げている。特に、HBT,HEMT,GaAs−MESFET,Siバイポーラ等の基本素子の性能が向上し、これが回路としての性能向上の重要な要因となっている。回路の性能が向上するにつれ、素子,電源線及び信号配線等のレイアウトにおいても高速信号を取り扱うための工夫が必要となる。
その一つとして、半導体装置の主回路部の周囲に、電源線とグランド線(GND)線を積層して配置することで、電源線とGND線との間に容量(コンデンサ領域)を作る提案がある(東芝技術公開集vol.5−9 1987−4−1発行)。第6図にこの提案による集積回路の平面図を、第7図に第6図の矢視A−A断面を示す。主回路部61の周囲には、電源線とGND線を積層してなる容量部62が配置されている。容量部62の外側には、電源パッド63,GNDパッド64及び信号用パッド65が配置されている。容量部62は、GND線71上に誘電体膜72を介して電源線73を積層して構成される。そして、前記各パッド63,64はそれぞれGND線71及び電源線73を介して容量部62や主回路部61と電気的に接続されている。なお、図中70は半導体基板、74は絶縁膜を示している。
高速信号の変化に対する主回路部の電流変動は半導体装置外部及び内部の電源線の抵抗分より雑音電圧として現われ、回路の誤動作の原因になる。第6図に示した従来装置では、容量部62が存在すること、及び主回路部61を囲み周囲から電源を供給することで前記雑音電圧を抑え、且つ半導体装置外部からの雑音も抑える働きを持っている。
ところで、第6図に示す従来装置で、高速信号ラインを主回路部に接続するには、第8図の構造が考えられる。この図では、2本の信号配線81を主回路部61に接続することを考え、信号配線81の両側に容量部62(62a,62b)が配置されているとする。容量部62の電源線73(73a,73b)が第2層に配置されている場合、第9図(a)に第8図の矢視A−A断面を示す如く、層間結合部83を通じて電源線73を第1層に変え、電源線73の約半分の幅の第1層の接続用電源線84を介して両側の電源線73を接続する。また、第9図(b)に第8図の矢視B−B断面を示す如く、GND線71(71a,71b)も同様に、GND線71の約半分の幅の接続用GND線85を介して接続する。高速信号線は第2層とし、単一層である電源線84,GND線85上に位置したマイクロストリップ構造となる。
しかしながら、この種の装置にあっては次のような問題があった。即ち、高速の信号を取り扱う場合、信号線路途中での反射,定在波を防ぐため、高速信号線はインピーダンスコントロールされていることが求められる。半導体装置外部での信号系,測定系は通常50Ωを用いる。このため、半導体装置においても、内部には終端抵抗を用いる場合や信号モニタ端子を使って信号を半導体装置内部を通過させ外部で終端する場合には、信号線も50Ωにコントロールされる必要がある。半導体装置の第1,第2層間は通常5000Å程度であり、厚くとも1μm程度となる。これ以上の厚さでは、段切れや層間結合部の不良で電気的に不良になる他、半導体基板に対するストレスが大きく半導体素子の特性を変えてしまうことになる。
ここで、従来構造における層間絶縁膜72の材料をSiO2とすると、厚さ5000Åでマイクロストリップを作る場合、線幅は1μm程度となる。この値は、信号パッド65から主回路部61までの長さがあるため、配線抵抗が大きく不都合となる。また、任意のインピーダンスにコントロールするときの誤差も大きくなる。
また、第8図の例では信号配線81はパッド側は下層をGND線85とし、主回路側は下層を電源層84としている。電源関係で問題となることとして、GND線と電源線との間隔がインピーダンスの乱れとなること、GND線と電源線とが別な場所にあるため、電源電圧のノイズが信号線に与える影響は完全には相殺されないこと、信号配線を挟んだ両側の容量部間でGND線と電源線とが別に接続されているため、容量の効果が低減されることがあげられる。従って、信号配線部でのこれらの問題を改良し、測定系との整合が良く、且つ電源線のノイズに対し安定構造にする必要がある。
(発明が解決しようとする課題)
このように従来、半導体装置におけるマイクロストリップラインは、信号配線の幅や層間厚さを自由に変えることができないため、任意のインピーダンスにコントロールすることが困難であった。また、電源電圧のノイズを十分に低減できないという問題があった。
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、信号配線に対し該配線の幅や層間厚さを変えることなく、マイクロストリップラインとしてのインピーダンスを任意の値に設定することができ、且つ電源電圧のノイズを低減することのできる半導体装置を提供することにある。
[発明の構成]
(課題を解決するための手段)
本発明の骨子は、信号配線の上部又は下部に縞状に電源線及びGND線を配置することにより、インピーダンスをコントロールすると共に電源電圧のノイズを低減することにある。
即ち本発明は、主回路部とパッド部との間、又は主回路部同士をマイクロストリップラインで接続した高速信号用半導体装置において、主回路部とパッド部との間、又は主回路部同士を接続する信号配線の両側に電源線及びグランド線を積層配置してなるコンデンサ領域を設けると共に、信号配線の上部又は下部に誘電体を介して所定間隔で信号配線と直交する接地用配線を配置し、且つ接地用配線をコンデンサ領域をなす2種の配線に交互に接続するようにしたものである。
(作用)
本発明によれば、信号配線の上部又は下部の接地用配線の間隔,線幅を調整することにより、マイクロストリップラインとしてのインピーダンスを可変することができる。従って、信号配線の幅や層間厚さを変えることなく、マイクロストリップラインとしてのインピーダンスを希望する値、例えば50Ωに設定することが可能となる。また、接地用配線列の間隔を細かくすることで、信号配線の長さに対して一様なインピーダンスとすることができ、電源電圧及びGNDのノイズが信号線に与える影響も互いに相殺し、容量部の接合も一様となるため、電源線のノイズに対し安定な構造とすることが可能である。
(実施例)
以下、本発明の詳細を図示の実施例によって説明する。
第1図は本発明の第1の実施例に係わる半導体装置の信号配線及びその周辺のみを抜き出した背面図であり、第2図(a)〜(c)はそれぞれ第1図のA−A,B−B,C−C断面図である。
図中10は半導体基板であり、この基板10上には第1層目としてのGND線11(11a,11b)が所定距離離間して配置されている。GND線11の上には層間絶縁膜12を介して電源線13(13a,13b)がそれぞれ配置されている。そして、これらGND線11及び電源線13には異なった電位が与えられ、容量部21(21a,21b)として作用するものとなっている。
層間絶縁膜12の上で電源線13a,13bの間には、第2層配線としての信号配線14が設けられている。そして、信号配線14の両側の容量部21をつなぐように第1層の接地用配線15,16が等間隔に配置されている。配線15は容量部のGND線11から直接出ている。配置16は、容量部の電源線13から延長された部分と層間結合部17を介して接続されている。なお、基板には半絶縁性であるGaAsを用い、層間絶縁膜には厚さ6000ÅのSiO2を用いた。
信号配線14は、図示しない主回路部とパッド部とを接続するものであり、第1層配線15,16に対し容量で結び付いており、マイクロストリップラインとなっている。配線15,16の幅が2μmの時、このマイクロストリップラインの特性を50Ωにするために、配線15,16の間隔を6μmとした。
主回路部の内部回路では負電源を用いており、GND線が最も高い電位となる。面積の大半を占める容量部で電位の高いGND線が第1層となっていることから、この組み合わせでサイドゲート効果でFETの特性が変化してしまうことを防ぐことができている。
かくして本実施例によれば、信号配線14に対し、第1層の接地用配線15,16の間隔,線幅を調整することで層間厚さ,信号配線幅を変えずに、マイクロストリップラインとしてのインピーダンスを希望する値、例えば50℃に設定するこことができる。また、接地用配線列の間隔を細かくすることで、信号配線の長さに対して一様なインピーダンスとすることができ、電源電圧及びGNDのノイズが信号線に与える影響を互いに相殺することができる。さらに、容量部の接合も一様となるため、電源線のノイズを十分に低減することができる。
また、配線を作るプロセスとしては、リフトオフ法を用いた場合、リフトオフ法では、配線で囲まれた領域のメタルを除去することが困難である。しかし、この方法では、配線で囲まれた領域を作る必要がなく、プロセス的な困難は生じない。
第3図は本発明の第2の実施例に係わる半導体装置の信号配線及びその周辺のみを抜き出した平面図であり、第4図(a)〜(c)はそれぞれ第3図のA−A,B−B,C−C断面図である。なお、第1図及び第2図と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
この実施例が先に説明した実施例と異なる点は、信号配線の両側でGND線と電源線との積層関係を逆にしたことにある。即ち、信号配線14の左側では、先の第1の実施例と同様に第1層がGND線11a,第2層が電源線13aとなっているが、信号配線14の右側では逆に第1層が電源線13b,第2層がGND線11bとなっている。接地用配線15は、容量部21aの第1層GND線11aとは直接つながっており、容量部21bの第2層GND線11bとは層間結合部18を介して接続されている。また、接地用配線16は、容量部21bの第1層電源線13bとは直接つながっており、容量部21aの第2層電源線13aとは層間結合部17を介して接続されている。
原理,配線幅は先の実施例と同様であり、このような構成であっても、先の実施例と同様の効果が得られる。
第5図は本発明の第3の実施例に係わる半導体装置の全体構成を示す平面図である。主回路部30(31,32)の周囲に容量部33が配置されている。この実施例では主回路部30が2つの機能ブロック31,32に分割してある。機能ブロック31,32間には、電源電圧を安定にするため、加えて容量部34が設けられている。
本実施例における信号配線路は、41,〜,48で模式的に示してある。51は電源パッド、52はGNDパッドであり、それぞれ対応する電位に応じて第1層配線若しくは第2層配線を使って容量部33と接続されている。53は入力信号パッド、54はモニタ用パッド、55は出力用パッドである。56,57は信号線の主回路部への入力部である。56はそのままFETのゲートと結び付いているのに対し、57は50Ωの終端抵抗が付加されている。
一方の信号パッド53から与えられた信号は信号配線42を通じてリターンモニタ用パッド54に送られる。その途中、主回路部31内の入力部56でFETのゲートに信号が与えられる。他方の入力部53からの入力は信号配線43を通じて主回路部31に送られる。この線路の先端には50Ωの終端が付いている。信号配線46,〜,48は機能ブロック31,32を結ぶものであり、31側に出力、32側には50Ωの終端と入力回路が接続される。信号配線44,45は機能ブロック32の出力信号を出力パッド15に送る線路であり、出力用パッド55の外に計測器をつないで終端するため、ここでは終端抵抗を必要としない。
先の第2の実施例で示す構造を用いる場合、GND線と電源線の上下が一部不都合を生じる。49はその不都合を解消するためのダミー配線であり、勿論信号配線は必要としない。また、先の第1の実施例で示す構造を用いる場合は必要としない。
主回路部としての機能ブロック31,32を結び信号配線46,〜,48は、外部装置との入出力のための信号配線41,〜,45とは異なり、長さも短く、また31側の駆動能力も小さくて良いため、配線幅を広くする必要はない。そのため、ここでは配線幅を4μmとし、それに応じて第1層の配線列も幅2μm,間隔2μmとして50Ωのインピーダンスとした。
このような構成であれば、信号配線41,〜,48の配線幅及び層間厚さ等をそれぞれに最適な値に保持した状態で、接地用配線の間隔等を制御することにより、マイクロストリップラインのインピーダンスを50Ωに設定することができる。従って、コンデンサ領域で囲まれた主回路部(機能ブロック)にインピーダンスの乱れなく高速信号を与えることができ、先の実施例と同様の効果が得られる。
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではない。例えば、前記コンデンサ領域は必ずしも主回路部の周囲に配置されている必要はなく、信号配線の両側に配置すればよい。また、接地用配線の幅,間隔等の条件は仕様に応じて適宜変更可能である。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。
[発明の効果]
以上詳述したように本発明によれば、信号配線に対し該配線の幅や層間厚さを変えることなく、マイクロストリップラインとしてのインピーダンスを任意の値に設定することができ、また信号配線列の間隔を短くすることにより信号配線の長さに大して一様なインピーダンスとすることができる。従って、電源電圧のノイズを低減する効果を保ちながら、コンデンサ領域で囲まれた主回路部に、インピーダンスの乱れなく、高速信号を与えることができ半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の第1の実施例に係わる半導体装置の要部構成を示す平面図、第2図は第1図の矢視断面図、第3図3図は本発明の第2の実施例の要部構成を示す平面図、第4図は第3図の矢視断面図、第5図は本発明の第3の実施例の全体構成を示す平面図、第6図は従来装置の全体構成を示す平面図、第7図は第6図の矢視断面図、第8図8図は従来装置の要部構成を示す平面図、第9図は第8図R>図の矢視断面図である。
10……半導体基板、
11……GND線、
12……層間絶縁膜、
13……電源線、
14,41,〜,48……信号配線、
15,16……接地用配線、
17,18……層間接続部、
21……容量部(コンデンサ領域)、
30,31,32……主回路部(機能ブロック)
49……ダミー配線、
51……電源パッド、
52……GNDパッド、
53……入力信号パッド、
54……モニタ用パッド、
55……出力用パッド。
[発明の目的]
(産業上の利用分野)
本発明は、高速信号で動作する半導体装置に係わり、特にマイクロストリップラインを備えた半導体装置に関する。
(従来の技術)
近年、光通信機器やスーパーコンピュータ用にGHz帯で動作する半導体装置の開発が急速な進歩を遂げている。特に、HBT,HEMT,GaAs−MESFET,Siバイポーラ等の基本素子の性能が向上し、これが回路としての性能向上の重要な要因となっている。回路の性能が向上するにつれ、素子,電源線及び信号配線等のレイアウトにおいても高速信号を取り扱うための工夫が必要となる。
その一つとして、半導体装置の主回路部の周囲に、電源線とグランド線(GND)線を積層して配置することで、電源線とGND線との間に容量(コンデンサ領域)を作る提案がある(東芝技術公開集vol.5−9 1987−4−1発行)。第6図にこの提案による集積回路の平面図を、第7図に第6図の矢視A−A断面を示す。主回路部61の周囲には、電源線とGND線を積層してなる容量部62が配置されている。容量部62の外側には、電源パッド63,GNDパッド64及び信号用パッド65が配置されている。容量部62は、GND線71上に誘電体膜72を介して電源線73を積層して構成される。そして、前記各パッド63,64はそれぞれGND線71及び電源線73を介して容量部62や主回路部61と電気的に接続されている。なお、図中70は半導体基板、74は絶縁膜を示している。
高速信号の変化に対する主回路部の電流変動は半導体装置外部及び内部の電源線の抵抗分より雑音電圧として現われ、回路の誤動作の原因になる。第6図に示した従来装置では、容量部62が存在すること、及び主回路部61を囲み周囲から電源を供給することで前記雑音電圧を抑え、且つ半導体装置外部からの雑音も抑える働きを持っている。
ところで、第6図に示す従来装置で、高速信号ラインを主回路部に接続するには、第8図の構造が考えられる。この図では、2本の信号配線81を主回路部61に接続することを考え、信号配線81の両側に容量部62(62a,62b)が配置されているとする。容量部62の電源線73(73a,73b)が第2層に配置されている場合、第9図(a)に第8図の矢視A−A断面を示す如く、層間結合部83を通じて電源線73を第1層に変え、電源線73の約半分の幅の第1層の接続用電源線84を介して両側の電源線73を接続する。また、第9図(b)に第8図の矢視B−B断面を示す如く、GND線71(71a,71b)も同様に、GND線71の約半分の幅の接続用GND線85を介して接続する。高速信号線は第2層とし、単一層である電源線84,GND線85上に位置したマイクロストリップ構造となる。
しかしながら、この種の装置にあっては次のような問題があった。即ち、高速の信号を取り扱う場合、信号線路途中での反射,定在波を防ぐため、高速信号線はインピーダンスコントロールされていることが求められる。半導体装置外部での信号系,測定系は通常50Ωを用いる。このため、半導体装置においても、内部には終端抵抗を用いる場合や信号モニタ端子を使って信号を半導体装置内部を通過させ外部で終端する場合には、信号線も50Ωにコントロールされる必要がある。半導体装置の第1,第2層間は通常5000Å程度であり、厚くとも1μm程度となる。これ以上の厚さでは、段切れや層間結合部の不良で電気的に不良になる他、半導体基板に対するストレスが大きく半導体素子の特性を変えてしまうことになる。
ここで、従来構造における層間絶縁膜72の材料をSiO2とすると、厚さ5000Åでマイクロストリップを作る場合、線幅は1μm程度となる。この値は、信号パッド65から主回路部61までの長さがあるため、配線抵抗が大きく不都合となる。また、任意のインピーダンスにコントロールするときの誤差も大きくなる。
また、第8図の例では信号配線81はパッド側は下層をGND線85とし、主回路側は下層を電源層84としている。電源関係で問題となることとして、GND線と電源線との間隔がインピーダンスの乱れとなること、GND線と電源線とが別な場所にあるため、電源電圧のノイズが信号線に与える影響は完全には相殺されないこと、信号配線を挟んだ両側の容量部間でGND線と電源線とが別に接続されているため、容量の効果が低減されることがあげられる。従って、信号配線部でのこれらの問題を改良し、測定系との整合が良く、且つ電源線のノイズに対し安定構造にする必要がある。
(発明が解決しようとする課題)
このように従来、半導体装置におけるマイクロストリップラインは、信号配線の幅や層間厚さを自由に変えることができないため、任意のインピーダンスにコントロールすることが困難であった。また、電源電圧のノイズを十分に低減できないという問題があった。
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、信号配線に対し該配線の幅や層間厚さを変えることなく、マイクロストリップラインとしてのインピーダンスを任意の値に設定することができ、且つ電源電圧のノイズを低減することのできる半導体装置を提供することにある。
[発明の構成]
(課題を解決するための手段)
本発明の骨子は、信号配線の上部又は下部に縞状に電源線及びGND線を配置することにより、インピーダンスをコントロールすると共に電源電圧のノイズを低減することにある。
即ち本発明は、主回路部とパッド部との間、又は主回路部同士をマイクロストリップラインで接続した高速信号用半導体装置において、主回路部とパッド部との間、又は主回路部同士を接続する信号配線の両側に電源線及びグランド線を積層配置してなるコンデンサ領域を設けると共に、信号配線の上部又は下部に誘電体を介して所定間隔で信号配線と直交する接地用配線を配置し、且つ接地用配線をコンデンサ領域をなす2種の配線に交互に接続するようにしたものである。
(作用)
本発明によれば、信号配線の上部又は下部の接地用配線の間隔,線幅を調整することにより、マイクロストリップラインとしてのインピーダンスを可変することができる。従って、信号配線の幅や層間厚さを変えることなく、マイクロストリップラインとしてのインピーダンスを希望する値、例えば50Ωに設定することが可能となる。また、接地用配線列の間隔を細かくすることで、信号配線の長さに対して一様なインピーダンスとすることができ、電源電圧及びGNDのノイズが信号線に与える影響も互いに相殺し、容量部の接合も一様となるため、電源線のノイズに対し安定な構造とすることが可能である。
(実施例)
以下、本発明の詳細を図示の実施例によって説明する。
第1図は本発明の第1の実施例に係わる半導体装置の信号配線及びその周辺のみを抜き出した背面図であり、第2図(a)〜(c)はそれぞれ第1図のA−A,B−B,C−C断面図である。
図中10は半導体基板であり、この基板10上には第1層目としてのGND線11(11a,11b)が所定距離離間して配置されている。GND線11の上には層間絶縁膜12を介して電源線13(13a,13b)がそれぞれ配置されている。そして、これらGND線11及び電源線13には異なった電位が与えられ、容量部21(21a,21b)として作用するものとなっている。
層間絶縁膜12の上で電源線13a,13bの間には、第2層配線としての信号配線14が設けられている。そして、信号配線14の両側の容量部21をつなぐように第1層の接地用配線15,16が等間隔に配置されている。配線15は容量部のGND線11から直接出ている。配置16は、容量部の電源線13から延長された部分と層間結合部17を介して接続されている。なお、基板には半絶縁性であるGaAsを用い、層間絶縁膜には厚さ6000ÅのSiO2を用いた。
信号配線14は、図示しない主回路部とパッド部とを接続するものであり、第1層配線15,16に対し容量で結び付いており、マイクロストリップラインとなっている。配線15,16の幅が2μmの時、このマイクロストリップラインの特性を50Ωにするために、配線15,16の間隔を6μmとした。
主回路部の内部回路では負電源を用いており、GND線が最も高い電位となる。面積の大半を占める容量部で電位の高いGND線が第1層となっていることから、この組み合わせでサイドゲート効果でFETの特性が変化してしまうことを防ぐことができている。
かくして本実施例によれば、信号配線14に対し、第1層の接地用配線15,16の間隔,線幅を調整することで層間厚さ,信号配線幅を変えずに、マイクロストリップラインとしてのインピーダンスを希望する値、例えば50℃に設定するこことができる。また、接地用配線列の間隔を細かくすることで、信号配線の長さに対して一様なインピーダンスとすることができ、電源電圧及びGNDのノイズが信号線に与える影響を互いに相殺することができる。さらに、容量部の接合も一様となるため、電源線のノイズを十分に低減することができる。
また、配線を作るプロセスとしては、リフトオフ法を用いた場合、リフトオフ法では、配線で囲まれた領域のメタルを除去することが困難である。しかし、この方法では、配線で囲まれた領域を作る必要がなく、プロセス的な困難は生じない。
第3図は本発明の第2の実施例に係わる半導体装置の信号配線及びその周辺のみを抜き出した平面図であり、第4図(a)〜(c)はそれぞれ第3図のA−A,B−B,C−C断面図である。なお、第1図及び第2図と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
この実施例が先に説明した実施例と異なる点は、信号配線の両側でGND線と電源線との積層関係を逆にしたことにある。即ち、信号配線14の左側では、先の第1の実施例と同様に第1層がGND線11a,第2層が電源線13aとなっているが、信号配線14の右側では逆に第1層が電源線13b,第2層がGND線11bとなっている。接地用配線15は、容量部21aの第1層GND線11aとは直接つながっており、容量部21bの第2層GND線11bとは層間結合部18を介して接続されている。また、接地用配線16は、容量部21bの第1層電源線13bとは直接つながっており、容量部21aの第2層電源線13aとは層間結合部17を介して接続されている。
原理,配線幅は先の実施例と同様であり、このような構成であっても、先の実施例と同様の効果が得られる。
第5図は本発明の第3の実施例に係わる半導体装置の全体構成を示す平面図である。主回路部30(31,32)の周囲に容量部33が配置されている。この実施例では主回路部30が2つの機能ブロック31,32に分割してある。機能ブロック31,32間には、電源電圧を安定にするため、加えて容量部34が設けられている。
本実施例における信号配線路は、41,〜,48で模式的に示してある。51は電源パッド、52はGNDパッドであり、それぞれ対応する電位に応じて第1層配線若しくは第2層配線を使って容量部33と接続されている。53は入力信号パッド、54はモニタ用パッド、55は出力用パッドである。56,57は信号線の主回路部への入力部である。56はそのままFETのゲートと結び付いているのに対し、57は50Ωの終端抵抗が付加されている。
一方の信号パッド53から与えられた信号は信号配線42を通じてリターンモニタ用パッド54に送られる。その途中、主回路部31内の入力部56でFETのゲートに信号が与えられる。他方の入力部53からの入力は信号配線43を通じて主回路部31に送られる。この線路の先端には50Ωの終端が付いている。信号配線46,〜,48は機能ブロック31,32を結ぶものであり、31側に出力、32側には50Ωの終端と入力回路が接続される。信号配線44,45は機能ブロック32の出力信号を出力パッド15に送る線路であり、出力用パッド55の外に計測器をつないで終端するため、ここでは終端抵抗を必要としない。
先の第2の実施例で示す構造を用いる場合、GND線と電源線の上下が一部不都合を生じる。49はその不都合を解消するためのダミー配線であり、勿論信号配線は必要としない。また、先の第1の実施例で示す構造を用いる場合は必要としない。
主回路部としての機能ブロック31,32を結び信号配線46,〜,48は、外部装置との入出力のための信号配線41,〜,45とは異なり、長さも短く、また31側の駆動能力も小さくて良いため、配線幅を広くする必要はない。そのため、ここでは配線幅を4μmとし、それに応じて第1層の配線列も幅2μm,間隔2μmとして50Ωのインピーダンスとした。
このような構成であれば、信号配線41,〜,48の配線幅及び層間厚さ等をそれぞれに最適な値に保持した状態で、接地用配線の間隔等を制御することにより、マイクロストリップラインのインピーダンスを50Ωに設定することができる。従って、コンデンサ領域で囲まれた主回路部(機能ブロック)にインピーダンスの乱れなく高速信号を与えることができ、先の実施例と同様の効果が得られる。
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではない。例えば、前記コンデンサ領域は必ずしも主回路部の周囲に配置されている必要はなく、信号配線の両側に配置すればよい。また、接地用配線の幅,間隔等の条件は仕様に応じて適宜変更可能である。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。
[発明の効果]
以上詳述したように本発明によれば、信号配線に対し該配線の幅や層間厚さを変えることなく、マイクロストリップラインとしてのインピーダンスを任意の値に設定することができ、また信号配線列の間隔を短くすることにより信号配線の長さに大して一様なインピーダンスとすることができる。従って、電源電圧のノイズを低減する効果を保ちながら、コンデンサ領域で囲まれた主回路部に、インピーダンスの乱れなく、高速信号を与えることができ半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の第1の実施例に係わる半導体装置の要部構成を示す平面図、第2図は第1図の矢視断面図、第3図3図は本発明の第2の実施例の要部構成を示す平面図、第4図は第3図の矢視断面図、第5図は本発明の第3の実施例の全体構成を示す平面図、第6図は従来装置の全体構成を示す平面図、第7図は第6図の矢視断面図、第8図8図は従来装置の要部構成を示す平面図、第9図は第8図R>図の矢視断面図である。
10……半導体基板、
11……GND線、
12……層間絶縁膜、
13……電源線、
14,41,〜,48……信号配線、
15,16……接地用配線、
17,18……層間接続部、
21……容量部(コンデンサ領域)、
30,31,32……主回路部(機能ブロック)
49……ダミー配線、
51……電源パッド、
52……GNDパッド、
53……入力信号パッド、
54……モニタ用パッド、
55……出力用パッド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】主回路部とパッド部との間、又は主回路部同士をマイクロストリップラインで接続した高速信号用半導体装置において、前記主回路部とパッド部との間、又は主回路部同士を接続する信号配線と、この信号配線の両側に電源線及びグランド線を積層配置してなるコンデンサ領域と、前記信号配線と直交する配線からなり、前記信号配線の上部又は下部に誘電体を介して所定間隔で配置され、前記コンデンサ領域をなす2種の配線に交互に接続された接地用配線とを具備してなることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】前記コンデンサ領域は、前記信号配線を通す領域を除いて前記主回路部の周囲に配置されたものであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項1】主回路部とパッド部との間、又は主回路部同士をマイクロストリップラインで接続した高速信号用半導体装置において、前記主回路部とパッド部との間、又は主回路部同士を接続する信号配線と、この信号配線の両側に電源線及びグランド線を積層配置してなるコンデンサ領域と、前記信号配線と直交する配線からなり、前記信号配線の上部又は下部に誘電体を介して所定間隔で配置され、前記コンデンサ領域をなす2種の配線に交互に接続された接地用配線とを具備してなることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】前記コンデンサ領域は、前記信号配線を通す領域を除いて前記主回路部の周囲に配置されたものであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【第1図】
【第7図】
【第2図】
【第3図】
【第8図】
【第4図】
【第5図】
【第6図】
【第9図】
【第7図】
【第2図】
【第3図】
【第8図】
【第4図】
【第5図】
【第6図】
【第9図】
【特許番号】第2724193号
【登録日】平成9年(1997)11月28日
【発行日】平成10年(1998)3月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−47251
【出願日】平成1年(1989)2月28日
【公開番号】特開平2−226756
【公開日】平成2年(1990)9月10日
【出願人】(999999999)株式会社東芝
【参考文献】
【文献】特開 昭63−120446(JP,A)
【文献】特開 平2−45975(JP,A)
【文献】特開 平2−163960(JP,A)
【登録日】平成9年(1997)11月28日
【発行日】平成10年(1998)3月9日
【国際特許分類】
【出願日】平成1年(1989)2月28日
【公開番号】特開平2−226756
【公開日】平成2年(1990)9月10日
【出願人】(999999999)株式会社東芝
【参考文献】
【文献】特開 昭63−120446(JP,A)
【文献】特開 平2−45975(JP,A)
【文献】特開 平2−163960(JP,A)
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