説明

半導体集積回路装置

【課題】DC−DCコンバータにおけるソフトスタート制御を高精度に行うことにより、起動時のコイルに流れる突入電流を低減し、該コイルの破損などを防止する。
【解決手段】DC−DCコンバータ1の起動時において、ソフトスタート用電圧生成回路20は、過電流保護用基準電圧生成回路19が生成した過電流保護用基準電圧を抵抗21とコンデンサ23によって構成された、いわゆるRC回路の時定数によって、0V(基準電位VSS)から徐々に電圧レベルを上昇させる過電流保護/ソフトスタート電圧Vocpsを出力する。過電流保護回路6は、コイル15に流れる電流(電圧)と過電流保護/ソフトスタート電圧Vocpsとを比較し、コイル15に流れる電流(電圧)が該過電流保護/ソフトスタート電圧Vocpsよりも高くならないように停止信号を出力し、PWM回路9を制御し、高精度なソフトスタート制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC−DCコンバータの信頼性向上技術に関し、特に、起動時におけるコイルの過電流保護に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどの電子機器には、安定化直流電源などとして電源システムが広く用いられている。この種の電源システムとしては、たとえば、DC−DCコンバータが知られており、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって液晶モニタのバックライト用LED(Light Emitting Diode)に供給する電源などを生成する。
【0003】
一般に、DC−DCコンバータには、起動時の突入電流を緩和するために、ソフトスタート機能を有している。このソフトスタート機能は、起動時において、バックライト用LEDに印加される電圧レベルを制御することにより、高電圧が急激にバックライト用LEDに印加されることを防止する機能であり、バックライト用LEDに流れる電流値(検出電圧)と起動時から電圧が徐々に電圧レベルが上昇するソフトスタート用電圧とを比較し、バックライト用LEDの検出電圧とソフトスタート用電圧とが略同じになるように制御している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のようなDC−DCコンバータのソフトスタート機能による電源供給技術では、次のような問題点があることが本発明者により見い出された。
【0005】
バックライト用LEDが起動した際に、該バックライト用LEDのリーク電流が流れてしまい、そのリーク電流によって検出電圧が発生してしまうことなる。この検出電圧がソフトスタート用電圧よりも高い電圧レベルの期間では、ソフトスタート機能が、バックライト用LEDに電源が供給されていないにも関わらず、供給される電圧レベルが高いと判断してPWM制御を停止する制御を行うことになる。
【0006】
そのため、バックライト用LEDのリーク電流量や検出電圧の誤差などの影響によって、ソフトスタートの開始時間が変動して不安定となってしまうという問題がある。
【0007】
また、ソフトスタート電圧がリーク電流による検出電圧の電圧レベルを超えた時点で、ソフトスタート機能がバックライト用LEDに供給される電圧レベルが小さいと判断し、バックライト用LEDに電源電圧を供給する制御を行うために、高電圧が急激にバックライト用LEDに印加され、その際の突入電流などによってDC−DCコンバータに設けられた昇圧用コイルなどが破損してしまう恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、ソフトスタート制御を高精度に行うことにより、起動時のコイルに流れる突入電流を低減し、該コイルの破損などを防止することのできる技術を提供することにある。
【0009】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
本発明は、供給される電源電圧を昇圧し、出力電圧として負荷に供給する昇圧部を制御する昇圧制御部を有する半導体集積回路装置であって、該昇圧制御部は、出力電圧を調整する電圧調整用信号と基準電圧とを比較し、その比較結果を出力するエラーアンプと、該エラーアンプから出力される比較結果に基づいてデュティ(Duty)比の異なるPWM信号を生成するPWM回路と、昇圧部に設けられた昇圧用コイルに流れる電流を電圧に変換した変換電圧と参照電圧とを比較し、変換電圧が参照電圧よりも高くなると、PWM回路に停止信号を出力するPWM制御回路と、参照電圧を生成する電源回路とを有し、該電源回路は、PWM回路が起動した際に、任意の期間をかけて徐々に電圧レベルが上昇するように参照電圧を生成するものである。
【0012】
また、本願のその他の発明の概要を簡単に示す。
【0013】
本発明は、電源回路が、徐々に電圧レベルが上昇する参照電圧を生成する第1の電源回路と、該第1の電源回路に供給する電圧を生成する第2の電源回路とを有し、第1の電源回路は、抵抗とコンデンサによるRC回路によって構成され、該RC回路の時定数によって、参照電圧を生成するものである。
【0014】
また、本発明は、PWM制御回路が、昇圧用コイルに過電流が流れたことを検出し、PWM回路に停止信号を出力し、該PWM回路の動作を停止させる過電流保護回路よりなるものである。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0016】
(1)負荷のリーク電流に関係なく、高精度なソフトスタート制御を実現することができる。
【0017】
(2)上記(1)により、突入電流などによるコイルの破損を防止することができ、DC−DCコンバータの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態によるDC−DCコンバータの一例を示す説明図である。
【図2】図1のDC−DCコンバータの起動時におけるタイミングチャートである。
【図3】本発明者が検討したDC−DCコンバータの一例を示す説明図である。
【図4】図3のDC−DCコンバータの起動時におけるタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態によるDC−DCコンバータの一例を示す説明図、図2は、図1のDC−DCコンバータの起動時におけるタイミングチャート、図3は、本発明者が検討したDC−DCコンバータの一例を示す説明図、図4は、図3のDC−DCコンバータの起動時におけるタイミングチャートである。
【0021】
〈発明の概要〉
本発明の概要は、バッテリなどから供給される電源電圧(電源電圧VBATT)を昇圧し、出力電圧(電源電圧Vout)として負荷(バックライト18)に供給する昇圧部(昇圧部3)を制御する昇圧制御部(昇圧制御部2)を有する半導体集積回路装置であって、前記昇圧制御部は、出力電圧を調整する電圧調整用信号(電圧Vsense)と基準電圧(基準電圧VREF)とを比較し、その比較結果を出力するエラーアンプ(エラーアンプ8)と、前記エラーアンプから出力される比較結果に基づいてデュティ比の異なるPWM信号を生成するPWM回路(PWM回路9)と、前記昇圧部に設けられた昇圧用コイル(コイル15)に流れる電流を電圧に変換した変換電圧と参照電圧(電圧Vocps)とを比較し、前記変換電圧が前記参照電圧よりも高くなると、前記PWM回路に停止信号を出力するPWM制御回路(過電流保護回路6)と、前記参照電圧を生成する電源回路(電圧生成回路5)とを有する。
【0022】
そして、前記電源回路は、前記PWM回路が起動した際に、任意の期間(期間t2)をかけて徐々に電圧レベルが上昇するように前記参照電圧を生成する。
【0023】
以下、上記した概要に基づいて、実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
本実施の形態において、DC−DCコンバータ1は、たとえば、デジタルカメラなどの電子機器に搭載されている。DC−DCコンバータ1は、電流帰還型のDC−DCコンバータであり、図1に示すように、昇圧制御部2、および昇圧部3から構成されている。
【0025】
昇圧制御部2は、電子機器に搭載される半導体集積回路装置4に設けられており、昇圧部3における昇圧動作の制御を行う。昇圧部3は、該半導体集積回路装置4に外部接続されており、昇圧制御部2から出力される信号に基づいて、電子機器に設けられたバッテリから供給される電源電圧VBATTを昇圧し、電源電圧Voutとして出力する。
【0026】
昇圧制御部2は、電圧生成回路5、過電流保護(OCP:Over Current Protection)回路6、基準電圧生成回路7、エラーアンプ8、PWM回路9、ドライバ10、およびトランジスタ11,12から構成されている。
【0027】
また、昇圧部3は、コンデンサ13,14、コイル15、ダイオード16、ならびに抵抗17から構成されている。
【0028】
コンデンサ13の一方の接続部には、電子機器のバッテリなどから供給される電源電圧VBATTが供給されるように接続されており、該コンデンサ13の他方の接続部には、基準電位VSSが接続されている。
【0029】
また、昇圧用のコイル15の一方の接続部には、電源電圧VBATTが供給されるように接続されており、該コイル15の他方の接続部には、電流の逆流を防止するダイオード16のアノード、および半導体集積回路装置4の外部端子T1がそれぞれ接続されている。
【0030】
ダイオード16のカソードには、コンデンサ14の一方の接続部が接続されており、該コンデンサ14の他方の接続部には、基準電位VSSが接続されている。そして、ダイオード16のカソードが、DC−DCコンバータ1の出力部となり、電源電圧Voutが出力される。
【0031】
電源電圧Voutは、電子機器に設けられた液晶ディスプレイのバックライト18に供給される。バックライト18は、複数のLED181〜18Nを直列接続した構成からなり、初段のLED181のアノードに電源電圧Voutが接続されている。また、最終段のLED18Nのカソードには、半導体集積回路装置4の外部端子T2が接続されている。
【0032】
また、抵抗17の一方の接続部には、半導体集積回路装置4の外部端子T3に接続されており、該抵抗17の他方の接続部には、基準電位VSSが接続されている。
【0033】
半導体集積回路装置4において、基準電圧生成回路7は、基準電圧VREFを生成する回路である。基準電圧生成回路7が生成した基準電圧VREFは、エラーアンプ8の正(+)側入力部に入力されるように接続されている。
【0034】
エラーアンプ8の負(−)側入力部には、外部端子T3が接続されており、該エラーアンプ8の出力部には、PWM回路9の入力部が接続されている。PWM回路9の出力部には、ドライバ10の入力部が接続されており、該ドライバ10の出力部には、NチャネルMOS(Metal Oxide Semiconductor)からなるトランジスタ11のゲートが接続されている。
【0035】
トランジスタ11の一方の接続部には、外部端子T1が接続されており、該トランジスタ11の他方の接続部には、外部端子T4が接続されている。この外部端子T4は、基準電位VSSに接続されている。NチャネルMOSからなるトランジスタ12の一方の接続部には、外部端子T2が接続されており、該トランジスタ12の他方の接続部には、外部端子T3を介して抵抗17が接続されている。
【0036】
また、電圧生成回路5は、過電流保護用基準電圧生成回路19、ならびにソフトスタート用電圧生成回路20から構成されている。過電流保護用基準電圧生成回路19は、過電流保護用基準電圧を生成し、ソフトスタート用電圧生成回路20は、過電流保護用基準電圧に基づいて、ソフトスタート制御の際に用いるソフトスタート電圧を生成する。
【0037】
これら過電流保護用基準電圧生成回路19、およびソフトスタート用電圧生成回路20が生成した電圧は、過電流保護/ソフトスタート電圧Vocpsとして電圧生成回路5から出力される。
【0038】
ソフトスタート制御とは、DC−DCコンバータ1がアクティブとなった際に、急激にバックライト18に印加されないように、ある期間をかけて(たとえば、10ms程度〜100ms程度)、0Vから規定の電圧値まで徐々に上昇するようにする制御である。
【0039】
過電流保護用基準電圧は、コイル15に流れる電流が過電流であるか否かを判定する電圧であり、ソフトスタート電圧は、DC−DCコンバータ1が生成する電源電圧Voutの電圧レベルが徐々に高くなるように制御するソフトスタート制御に用いられる電圧である。
【0040】
また、ソフトスタート用電圧生成回路20は、抵抗21、トランジスタ22、コンデンサ23から構成されている。抵抗21の一方の接続部には、過電流保護用基準電圧生成回路19が生成した過電流保護用基準電圧が入力されるように接続されている。抵抗21の他方の接続部には、PチャネルMOSからなるトランジスタ22の一方の接続部、およびコンデンサ23の一方の接続部がそれぞれ接続されており、この接続部が、電圧生成回路5の出力部となり、過電流保護/ソフトスタート電圧Vocpsが出力される。
【0041】
電圧生成回路5が生成した過電流保護/ソフトスタート電圧Vocpsは、過電流保護回路6に入力される。この過電流保護回路6には、外部端子T1を介してコイル15に流れる電流に比例した電流が入力されるように接続されている。また、過電流保護回路6の出力部には、PWM回路9の制御端子に接続されている。
【0042】
過電流保護回路6は、コイル15に流れる電流に比例した電流を電圧に変換し、その電圧が電圧生成回路5から出力される過電流保護/ソフトスタート電圧Vocpsよりも高くなると、コイル15に過電流が流れていると判断して停止信号をPWM回路9に出力し、該PWM回路9の動作を停止させる。
【0043】
また、過電流保護回路6は、DC−DCコンバータ1の起動時においては、ソフトスタート電圧として出力される過電流保護/ソフトスタート電圧Vocpsを用いてPWM回路9を制御して前述したソフトスタート制御を行う。
【0044】
抵抗17は、バックライト18に流れる電流を電圧に変換し、電圧Vsenseを発生させる。エラーアンプ8は、基準電圧生成回路7が生成する基準電圧VREFと抵抗17によって発生した電圧Vsenseとを比較し、その比較結果を出力する。
【0045】
PWM回路9は、エラーアンプ8から出力される比較結果に基づいてPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成する。たとえば、エラーアンプ8の比較結果において、基準電圧VREFよりも電圧Vsenseが小さい場合には、デュティ比が大きいPWM信号を生成し、基準電圧VREFよりも電圧Vsenseが大きい場合には、デュティ比が小さいPWM信号を生成する。
【0046】
ドライバ10は、PWM回路9が生成したPWM信号を増幅して出力する。トランジスタ11は、ドライバ10から出力される駆動信号LXに基づいて、オン/オフ動作を行い、コイル15をスイッチングする。
【0047】
また、電圧生成回路5、基準電圧生成回路7、エラーアンプ8、PWM回路9、およびトランジスタ12,22のゲートには、起動信号PONが入力されるようにそれぞれ接続されている。
【0048】
この起動信号PONは、たとえば、半導体集積回路装置4に設けられたCPU24から出力される。CPU24は、半導体集積回路装置4の制御を司る。電圧生成回路5、基準電圧生成回路7、エラーアンプ8、PWM回路9、ならびにトランジスタ12は、起動信号PONがアクティブ(たとえば、Hi信号)となると動作を開始する。
【0049】
次に、本実施の形態におけるDC−DCコンバータ1のソフトスタート制御について、図1、および図2のタイミングチャートを用いて説明する。
【0050】
図2において、上方から下方にかけては、CPU24から出力される起動信号PON、基準電圧生成回路7から出力される基準電圧VREF、抵抗17により発生する電圧Vsense、電圧生成回路5から出力される過電流保護/ソフトスタート電圧Vocps、ならびにドライバ10から出力される駆動信号LXにおけるそれぞれの信号タイミングを示している。
【0051】
まず、CPU24からHi信号の起動信号PONが出力されると、トランジスタ12がオン(導通状態)、トランジスタ22がオフ(非導通状態)となり、基準電圧生成回路7、エラーアンプ8、PWM回路9がアクティブの状態となる。
【0052】
それにより、基準電圧生成回路7からは基準電圧VREFが出力されるとともに、トランジスタ12がオンすることにより、LED181〜18Nにリーク電流が流れて抵抗17に発生する電圧Vsenseの電圧レベルが上昇(図2の期間t1)する。
【0053】
また、電圧生成回路5においては、Hi信号の起動信号PONにより、過電流保護用基準電圧生成回路19が過電流保護用基準電圧を生成する。ソフトスタート用電圧生成回路20では、トランジスタ22がHi信号の起動信号PONによってオフとなる。
【0054】
これによって、入力された過電流保護用基準電圧は、抵抗21とコンデンサ23によって構成された、いわゆるRC回路の時定数によって、図2に示すように、ある期間t2をかけて、0V(基準電位VSS)から過電流保護用基準電圧生成回路19が生成する過電流保護用基準電圧まで徐々に電圧レベルが上昇する過電流保護/ソフトスタート電圧Vocpsとして出力される。
【0055】
上記期間t2は、RC回路(抵抗21とコンデンサ23)の時定数だけで決まらず、過電流保護用基準電圧生成回路19の出力電圧を階段状に上昇させる事で設定される。RC回路の時定数だけは、図2に示すような直線的なカーブにはならず、積分波形となる。
【0056】
過電流保護用基準電圧生成回路19の出力電圧を階段状に変化させ、その出力電圧にフィルタをかけるために、RC回路(抵抗21とコンデンサ23)が設けられることにより、過電流保護/ソフトスタート電圧Vocpsが、図2に示すような、直線的なカーブとされている。
【0057】
なお、コイルへの突入電流が押さえられるならば、過電流保護用基準電圧生成回路19が発生する出力電圧は1段のみ変化させ、抵抗21とコンデンサ23によるRC時定数で、期間t2を設定する事は可能である。
【0058】
この場合、半導体集積回路装置4の形成される半導体基板(チップ)に内蔵するRC時定数としては大きな値となるので、RC(抵抗21とコンデンサ23)のレイアウト面積が大きくなる。したがって、この場合には、半導体基板の面積増加およびそれにともなう半導体集積回路装置4のコストアップに注意が必要である。
【0059】
PWM回路9は、エラーアンプ8から出力される基準電圧生成回路7の基準電圧VREFと抵抗17が発生した電圧Vsenseとの比較結果に基づいてPWM信号を生成する。
【0060】
過電流保護回路6は、コイル15に流れる電流(電圧)と徐々に電圧レベルが高くなっていく過電流保護/ソフトスタート電圧Vocpsとを比較し、コイル15に流れる電流(電圧)が該過電流保護/ソフトスタート電圧Vocpsよりも高くならないように停止信号を出力し、PWM回路9の動作を制御する。
【0061】
これによって、PWM回路9から出力されるPWM信号は、図2の期間t2において、過電流保護/ソフトスタート電圧Vocpsの電圧レベルが大きくなるにしたがって、小さいデュティ比から大きなデュティ比になるように制御される。それに伴い、ドライバ10からは、小さなデュティ比から徐々に大きなデュティ比となる駆動信号LX(図2の最下段に示す)が出力される。
【0062】
そして、電圧生成回路5から出力される過電流保護/ソフトスタート電圧Vocpsが図2の期間t2を過ぎて、過電流保護用基準電圧生成回路19が生成する過電流保護用基準電圧の電圧レベルとなると、過電流保護回路6によるPWM回路9の動作制御が行われなくなり、該PWM回路9は、エラーアンプ8の比較結果に基づいてPWM信号を生成する通常動作を行う。
【0063】
この通常動作において、過電流保護回路6は、コイル15に過電流が流れるか否かの検出を行っており、該コイル15に過電流が流れたことを検出(過電流保護/ソフトスタート電圧Vocpsよりもコイル15に流れる電流(電圧)が大きい場合)すると、停止信号をPWM回路9に出力する。
【0064】
図3は、本発明者が検討した一般的な電流負帰還型のDC−DCコンバータ50における構成の一例を示す説明図である。
【0065】
この場合、DC−DCコンバータ50は、図3に示すように、昇圧制御部51、および昇圧部52から構成されている。昇圧制御部51は、半導体集積回路装置内に設けられており、昇圧部52における昇圧動作の制御を行う。
【0066】
昇圧部52は、半導体集積回路装置に外部接続されており、昇圧制御部51から出力される信号に基づいて、電子機器に設けられたバッテリなどから供給される電源電圧VBATTを昇圧し、電源電圧Voutとして出力する。
【0067】
昇圧制御部51は、ソフトスタート電圧生成回路53、基準電圧生成回路54、過電流防止基準電圧生成回路55、過電流保護回路56、3入力のエラーアンプ57、PWM回路58、ドライバ59、およびトランジスタ60,61から構成されている。また、昇圧部52は、コンデンサ62,63、コイル64、ダイオード65、ならびに抵抗66から構成されている。
【0068】
DC−DCコンバータ50において、DC−DCコンバータ1と異なるところは、過電流保護回路56に過電流防止基準電圧生成回路55が生成した電圧が入力されている点、3入力のエラーアンプ57の一方の正(+)側入力部に、ソフトスタート電圧生成回路53が生成したソフトスタート電圧Vsfが入力され、エラーアンプ57の他方の正(+)側入力部に、基準電圧生成回路54が生成した基準電圧VREFが入力されている点である。
【0069】
また、半導体集積回路装置に設けられたCPUなどから出力される起動信号PONは、ソフトスタート電圧生成回路53、基準電圧生成回路54、エラーアンプ57、PWM回路58、およびトランジスタ61のゲートにそれぞれ入力されるように接続されている。DC−DCコンバータ50に接続されるバックライト67を含めて、その他の接続構成については、図1のDC−DCコンバータ1と同様であるので説明は省略する。
【0070】
ソフトスタート電圧生成回路53は、DC−DCコンバータ50のソフトスタート制御の際に用いるソフトスタート電圧Vsfを生成する。過電流防止基準電圧生成回路55は、過電流保護回路56がコイル64に流れる電流が過電流であるか否かを判定する際に用いる過電流保護用基準電圧を生成する。
【0071】
エラーアンプ57は、2つある正(+)側入力部に入力された電圧(ソフトスタート電圧Vsf、または基準電圧VREF)のうち、低い電圧レベルの電圧と該エラーアンプ57の負(−)側入力部に入力される抵抗66が発生する電圧Vsenseとを比較し、その比較結果を出力する。
【0072】
次に、DC−DCコンバータ50のソフトスタート制御について、図3、および図4のタイミングチャートを用いて説明する。
【0073】
図4において、上方から下方にかけては、半導体集積回路装置に設けられたCPUから出力される起動信号PON、基準電圧生成回路54から出力される基準電圧VREF/抵抗66により発生する電圧Vsense(一点鎖線)/ソフトスタート電圧Vsf(点線)、ならびにドライバ59から出力される駆動信号LXにおけるそれぞれの信号タイミングを示している。
【0074】
まず、CPUから、たとえば、Hi信号の起動信号PONが出力されると、トランジスタ61がオンとなり、ソフトスタート電圧生成回路53、基準電圧生成回路54、エラーアンプ57、ならびにPWM回路58がそれぞれアクティブの状態となる。
【0075】
それにより、基準電圧生成回路54からは基準電圧VREFが出力され、ソフトスタート電圧生成回路53からソフトスタート電圧Vsfが出力されるとともに、トランジスタ61がオンとなることにより、バックライト67を構成するLED671〜67Nにリーク電流が流れて電圧Vsenseが上昇する(図4の期間t3)。
【0076】
期間t3において、電圧Vsenseは、ソフトスタート電圧Vsfよりも高い電圧レベルであるので、エラーアンプ57は、バックライト67に供給される電圧Voutが高いと判定する結果を出力する。そのため、期間t3においては、PWM回路58によるPWM信号の生成が行われず、バックライト67に電源電圧Voutが供給されないことになる。よって、期間t3の間、ソフトスタート制御が行われていないことになる。
【0077】
そして、電圧Vsense(LED671〜67Nにリーク電流により発生する電圧)よりもソフトスタート電圧Vsfが高くなると(期間t3の終了後)、エラーアンプ57は、バックライト67に供給される電圧Voutが低いと判定するので、PWM回路58によるPWM信号の生成が行われることになる。
【0078】
このとき、ソフトスタート電圧Vsfが十分に高くなっているので、PWM回路58によって生成されるPWM信号のデュティ比は大きくなっており、トランジスタ60のスイッチングによってコイル64に大きな突入電流が流れてしまい、該コイル64の破損などが生じてしまう恐れがある。
【0079】
一方、DC−DCコンバータ1では、ソフトスタート制御を過電流保護回路6によって行うので、バックライト18にリーク電流が流れても安定したソフトスタート制御を行うことができる。
【0080】
それにより、本実施の形態によれば、バックライト18のリーク電流に関係なく、高精度で安定したソフトスタート精度を実現することができる。
【0081】
また、DC−DCコンバータ1の起動時におけるコイル15の突入電流を低く抑えることができるので、該コイル15の破損などを低減することができ、DC−DCコンバータ1の信頼性を向上させることができる。
【0082】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0083】
前記実施の形態におけるDC−DCコンバータは、デジタルカメラなどの電子機器に設けられた液晶ディスプレイのバックライトに電源電圧を供給する電源装置としたが、該DC−DCコンバータは、たとえば、電子機器に備えられた二次電池を充電する充電器などの他の用途にも用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、電流帰還型のDC−DCコンバータにおける信頼性の向上技術に適している。
【符号の説明】
【0085】
1 DC−DCコンバータ
2 昇圧制御部
3 昇圧部
4 半導体集積回路装置
5 電圧生成回路
6 過電流保護回路
7 基準電圧生成回路
8 エラーアンプ
9 PWM回路
10 ドライバ
11 トランジスタ
12 トランジスタ
13 コンデンサ
14 コンデンサ
15 コイル
16 ダイオード
17 抵抗
18 バックライト
181〜18N LED
19 過電流保護用基準電圧生成回路
20 ソフトスタート用電圧生成回路
21 抵抗
22 トランジスタ
23 コンデンサ
50 DC−DCコンバータ
51 昇圧制御部
52 昇圧部
53 ソフトスタート電圧生成回路
54 基準電圧生成回路
55 過電流防止基準電圧生成回路
56 過電流保護回路
57 エラーアンプ
58 PWM回路
59 ドライバ
60 トランジスタ
61 トランジスタ
62 コンデンサ
63 コンデンサ
64 コイル
65 ダイオード
66 抵抗
67 バックライト
671〜67N LED
T1 外部端子
T2 外部端子
T3 外部端子
T4 外部端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧を昇圧し、出力電圧として負荷に供給する昇圧部を制御する昇圧制御部を有する半導体集積回路装置であって、
前記昇圧制御部は、
前記出力電圧を調整する電圧調整用信号と基準電圧とを比較し、その比較結果を出力するエラーアンプと、
前記エラーアンプから出力される比較結果に基づいてデュティ比の異なるPWM信号を生成するPWM回路と、
前記昇圧部に設けられた昇圧用コイルに流れる電流を電圧に変換した変換電圧と参照電圧とを比較し、前記変換電圧が前記参照電圧よりも高くなると、前記PWM回路に停止信号を出力するPWM制御回路と、
前記参照電圧を生成する電源回路とを有し、
前記電源回路は、
前記PWM回路が起動した際に、任意の期間をかけて徐々に電圧レベルが上昇するように前記参照電圧を生成することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体集積回路装置において、
前記電源回路は、
徐々に電圧レベルが上昇する前記参照電圧を生成する第1の電源回路と、
前記第1の電源回路に供給する電圧を生成する第2の電源回路とを有し、
前記第1の電源回路は、
抵抗とコンデンサによるRC回路によって構成され、前記RC回路の時定数によって、前記参照電圧を生成することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の半導体集積回路装置において、
前記PWM制御回路は、
前記昇圧用コイルに過電流が流れたことを検出し、前記PWM回路に停止信号を出力し、前記PWM回路の動作を停止させる過電流保護回路であることを特徴とする半導体集積回路装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−249358(P2012−249358A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116945(P2011−116945)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】