説明

半導電性樹脂組成物および配線回路基板

【課題】 超音波洗浄しても、表面抵抗値の変化が少なく、静電気の帯電を有効に除去する半導電性層を形成することのできる半導電性樹脂組成物、および、その半導電性樹脂組成物からなる半導電性層を備える配線回路基板を提供すること。
【解決手段】 イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、および、導電性粒子を溶媒に配合して、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体が溶解し、導電性粒子が分散する半導電性樹脂組成物を調製する。次いで、この半導電性樹脂組成物を、回路付サスペンション基板1の端子部6を含むカバー絶縁層5の表面に塗布し、乾燥することにより、半導電性層7を形成する。その後、端子部6に形成された半導電性層7を、エッチングにより除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導電性樹脂組成物および配線回路基板、詳しくは、電気機器や電子機器に装備される配線回路基板、および、その配線回路基板に半導電性層を形成するための半導電性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル配線回路基板や回路付サスペンション基板などの配線回路基板は、通常、ポリイミドからなるベース層と、そのベース層の上に形成された銅箔からなる導体回路と、ベース層の上および導体回路の上に形成されたポリイミドからなるカバー層とを備えており、電子部品を実装して、各種の電気機器や電子機器に搭載されている。
このような配線回路基板において、実装された電子部品の静電破壊を防止するために、カバー層の上に、導電ポリマー層を形成して、その導電ポリマー層によって静電気の帯電を除去することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−158480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、配線回路基板の製造では、通常、その最終工程において、電子部品を実装する端子部を含む配線回路基板の表面に付着している異物を除去するために、超音波洗浄する。しかし、超音波洗浄すると、導電ポリマー層の表面抵抗値が変化して、静電気の帯電を有効に除去できなくなるという不具合がある。
本発明の目的は、超音波洗浄しても、表面抵抗値の変化が少なく、静電気の帯電を有効に除去する半導電性層を形成することのできる半導電性樹脂組成物、および、その半導電性樹脂組成物からなる半導電性層を備える配線回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明の半導電性樹脂組成物は、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性粒子および溶媒を含有していることを特徴としている。
また、本発明の半導電性樹脂組成物では、前記導電性粒子が、カーボンブラック粒子、カーボンナノファイバーおよび金属酸化物粒子からなる群から選択される少なくとも1種であることが好適である。
【0005】
また、本発明の半導電性樹脂組成物では、さらに、感光剤を含有することが好適である。
また、本発明の配線回路基板は、導体層と、前記導体層に隣接する絶縁層と、上記した半導電性樹脂組成物からなり、前記絶縁層の表面に形成される半導電性層とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の半導電性樹脂組成物から半導電性層を形成すれば、その形成された半導電性層は、超音波洗浄しても表面抵抗値の変化が少ないので、静電気の帯電を有効に除去することができる。そのため、そのような半導電性層を備える本発明の配線回路基板によれば、超音波洗浄による異物の除去によって、接続信頼性の向上を図りつつ、静電気の帯電を有効に除去して、実装された電子部品の静電破壊を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の半導電性樹脂組成物は、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体と、導電性粒子と、溶媒とを含有している。
本発明において、イミド樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどが挙げられる。これらは、市販品として入手でき、そのような市販品として、ポリイミドとして、例えば、PI−113、PI−117、PI−213B(以上、丸善石油化学社製)、リカコート−20(新日本理化社製)が挙げられる。また、ポリエーテルイミドとして、ウルテム1000、ウルテムXH6050(以上、日本イージープラスチック社製)が挙げられる。また、ポリアミドイミドとして、例えば、HR16NN、HR11NN(東洋紡績社製)が挙げられる。
【0008】
また、イミド樹脂前駆体としては、例えば、ポリアミック酸が挙げられる。ポリアミック酸は、通常、有機テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることによって得ることができる。
有機テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物などが挙げられる。また、これら有機テトラカルボン酸二無水物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0009】
また、ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−2,2−ジメチルビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニルなどが挙げられる。また、これらジアミンは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0010】
そして、ポリアミック酸は、これら有機テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、実質的に等モル比となるような割合で、適宜の有機溶媒、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒中で、通常、0〜90℃で1〜24時間反応させることよって、ポリアミック酸の溶液として得ることができる。なお、ポリアミック酸の重量平均分子量は、例えば、5000〜200000程度、好ましくは、10000〜100000程度である。
【0011】
本発明において、導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック粒子、例えば、カーボンナノファイバー、例えば、酸化インジウムと酸化スズとの複合酸化物の粒子(ITO粒子)、酸化スズと酸化リンとの複合酸化物の粒子(PTO粒子)などの金属酸化物粒子が挙げられる。また、これら導電性粒子は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、カーボンブラックおよびカーボンナノファイバーが挙げられる。また、導電性粒子は、その平均粒子径が、例えば、10nm〜1μm、好ましくは、10nm〜400nm、さらに好ましくは、10nm〜100nmである。なお、導電性粒子がカーボンナノファイバーである場合には、例えば、その直径が100〜200nmであり、その長さが、5〜20μmである。平均粒子径(直径)がこれより小さいと、平均粒子径(直径)の調整が困難となる場合があり、また、これより大きいと、半導電性樹脂組成物の塗布に不向きとなる場合がある。
【0012】
本発明において、溶媒は、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体を溶解でき、導電性粒子を分散できれば、特に制限されないが、例えば、N−メチル−2ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒が挙げられる。また、これら溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。なお、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体として、ポリアミック酸が用いられる場合には、ポリアミック酸を溶解する反応溶媒を、そのまま半導電性樹脂組成物の溶媒として用いることができる。
【0013】
そして、本発明の半導電性樹脂組成物は、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性粒子および溶媒を配合することによって、調製することができる。
イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体と導電性粒子との配合割合は、例えば、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体100重量部に対して、導電性粒子が、例えば、3〜300重量部、好ましくは、5〜250重量部である。導電性粒子のイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体に対する配合割合が、これより少ないと、表面抵抗値が1011Ω/□より大きくなる場合がある。また、これより多いと、表面抵抗値が105Ω/□より小さくなる場合がある。また、溶媒は、これらイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体および導電性粒子が、半導電性樹脂組成物に対して、5〜40重量%(固形分濃度)、好ましくは、10〜30重量%(固形分濃度)となるように、配合する。固形分濃度がこれより小さいと、半導電性樹脂組成物の均一な塗布が困難となる場合がある。また、固形分濃度がこれより大きいと、溶媒に対する導電性粒子の分散性が不良となる場合がある。
【0014】
また、半導電性樹脂組成物の調製は、特に制限されず、例えば、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体および導電性粒子を、溶媒に配合して、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体が溶媒に対して均一に溶解し、導電性粒子が溶媒に対して均一に分散するまで、攪拌混合する。また、予めイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体を溶媒に溶解した樹脂溶液と、予め導電性粒子を溶媒に分散させた粒子分散液とを、混合することもできる。これによって、溶媒中において、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体が溶解され、導電性粒子が分散する半導電性樹脂組成物が調製される。
【0015】
このようにして得られた本発明の半導電性樹脂組成物では、塗布および乾燥し、必要により硬化させれば、半導電性層を形成することができる。そして、その形成された半導電性層は、超音波洗浄しても表面抵抗値の変化が少ないので、静電気の帯電を有効に除去することができる。
そのため、そのような半導電性層を配線回路基板に形成すれば、超音波洗浄による異物の除去によって、接続信頼性の向上を図りつつ、静電気の帯電を有効に除去して、実装された電子部品の静電破壊を確実に防止することができる、配線回路基板を得ることができる。
【0016】
図1は、本発明の配線回路基板の一実施形態である回路付サスペンション基板に、半導電性層を形成する工程を示す、工程図である。次に、図1を参照して、回路付サスペンション基板に半導電性層を形成する方法を説明する。
この方法では、まず、図1(a)に示すように、回路付サスペンション基板1を用意する。この回路付サスペンション基板1は、金属支持基板2と、金属支持基板2の上に形成されたベース絶縁層3と、ベース絶縁層3の上に形成された導体層としての導体パターン4と、導体パターン4を被覆するように、ベース絶縁層3の上に形成されたカバー絶縁層5とを備えている。
【0017】
金属支持基板2は、例えば、ステンレス箔、42アロイ箔、アルミニウム箔、銅−ベリリウム箔、りん青銅箔などからなる。金属支持基板2の厚みは、例えば、5〜100μmである。
ベース絶縁層3は、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの合成樹脂から形成される。好ましくは、ポリイミド樹脂からなる。ベース絶縁層3の厚みは、例えば、5〜50μmである。
【0018】
導体パターン4は、例えば、銅箔、ニッケル箔、金箔、はんだ箔またはこれらの合金箔からなり、複数の配線からなるパターンとして形成されている。導体パターン4の厚みは、例えば、3〜50μmである。
カバー絶縁層5は、ベース絶縁層3と同様の合成樹脂からなり、その厚みは、例えば、3〜50μmである。
【0019】
そして、この回路付サスペンション基板1には、磁気ヘッドなどの各種電子部品を実装するための端子部6が、カバー絶縁層5を開口させて、導体パターン4を露出させることによって、その導体パターン4の露出部分として形成されている。
そして、この方法では、図1(b)に示すように、端子部6の表面を含むカバー絶縁層5の表面に、半導電性層7を形成する。半導電性層7を形成するには、まず、上記した半導電性樹脂組成物を、端子部6の表面を含むカバー絶縁層5の表面に均一に塗布する。半導電性樹脂組成物の塗布は、特に制限されず、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコート法など公知の塗布方法が用いられる。次いで、塗布された半導電性樹脂組成物を乾燥する。半導電性樹脂組成物の乾燥は、溶媒の種類によって適宜決定されるが、例えば、60〜250℃、好ましくは、80〜200℃で、例えば、1〜30分間、好ましくは、3〜15分間加熱する。乾燥時間が、これより短いと、溶媒の除去が不十分となり、半導電性層7の表面抵抗値が大きく変化する場合がある。また、これより長いと、生産効率が低下する場合がある。
【0020】
なお、半導電性樹脂組成物が、イミド樹脂前駆体を含有する場合には、乾燥後、そのイミド樹脂前駆体を、例えば、減圧下、250℃以上で加熱することにより、硬化(イミド化)させる。
半導電性層7の厚みは、例えば、0.5〜5μm、好ましくは、0.5〜2μmである。半導電性層7の厚みが、これより薄いと、均一な層が得られない場合があり、これより厚いと、乾燥が不十分となり、かつ、コストの上昇を生じる場合がある。
【0021】
また、半導電性層7の表面抵抗値は、例えば、105〜1011Ω/□、好ましくは、106〜1010Ω/□である。半導電性層7の表面抵抗値が、これより低いと、実装された電子部品の誤動作を生じる場合があり、また、これより大きいと、静電気の帯電を有効に除去できない場合がある。
なお、半導電性層7の表面抵抗値は、例えば、MITSUBISHI PETROCHEMICAL社製のHiresta IP MCP−HT260(プローブ:HRS)を用いて測定することができる。
【0022】
次いで、この方法では、図1(c)に示すように、端子部6を除く半導電性層7の表面を、エッチングレジスト8で被覆する。エッチングレジスト8は、例えば、ドライフィルムフォトレジストを半導電性層7の表面に積層し、露光および現像する公知の方法により形成する。
その後、この方法では、図1(d)に示すように、エッチングレジスト8から露出する端子部6の表面に形成されている半導電性層7をエッチングにより除去する。エッチングは、例えば、エッチング液として水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いて、浸漬法またはスプレー法によって、ウエットエッチングする。
【0023】
そして、この方法では、図1(e)に示すように、エッチングレジストを、エッチングまたは剥離により除去する。
これによって、半導電性層7は、端子部6の表面を除くカバー絶縁層5の表面に形成される(但し、端子部6を囲むカバー絶縁層5の内周側面および端子部6の周縁部には、半導電性層7が形成されている。)。
【0024】
その後、端子部6の表面には、必要に応じて、金やニッケルからなるめっき層が、電解めっきまたは無電解めっきにより形成される。
そして、この方法では、最終工程において、端子部6が露出する回路付サスペンション基板1の表面に付着している異物を除去するために超音波洗浄するが、その超音波洗浄によっても、半導電性層7の表面抵抗値の変化が少なく、静電気の帯電を有効に除去することができる。そのため、この回路付サスペンション基板1では、超音波洗浄による異物の除去によって、接続信頼性の向上を図りつつ、静電気の帯電を有効に除去して、実装された磁気ヘッドなどの各種電子部品の静電破壊を確実に防止することができる。
【0025】
また、本発明の半導電性樹脂組成物には、さらに、感光剤を含有させることができる。感光剤としては、例えば、4−o−ニトロフェニル−3,5−ジメトキシカルボニル−2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン(ニフェジピン)、4−o−ニトロフェニル−3,5−ジメトキシカルボニル−2,6−ジメチル−1−メチル−4−ヒドロピリジン(N−メチル体)、4−o−ニトロフェニル−3,5−ジアセチル−1,4−ジヒドロピリジン(アセチル体)などのジヒドロピリジン誘導体が挙げられる。また、これら感光剤は、単独使用または2種以上併用することができる。なお、感光剤は、例えば、ポリエチレングリコールなどの溶媒に溶解して、溶液として調製することもできる。
【0026】
感光剤は、上記したイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、および、導電性粒子とともに、溶媒に配合する。感光剤の配合割合は、例えば、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体100重量部に対して、例えば、0.1〜100重量部、好ましくは、0.5〜75重量部である。感光剤のイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体に対する配合割合が、これより多くても少なくても、露光部と未露光部との適切な溶解速度差が得られず、パターンニングが困難な場合がある。なお、感光剤が配合される場合でも、溶媒は、これらイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性粒子および感光剤が、半導電性樹脂組成物に対して、5〜30重量%(固形分濃度)、好ましくは、5〜20重量%(固形分濃度)となるように、配合する。
【0027】
なお、感光剤を配合する場合には、上記したイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体として、好ましくは、イミド樹脂前駆体が用いられる。
このようにして得られた上記の半導電性樹脂組成物では、感光剤が配合されているので、塗布および乾燥した後に、露光および現像し、必要により硬化させれば、半導電性層7を所定のパターンで形成することができる。
【0028】
図2は、本発明の配線回路基板の一実施形態である回路付サスペンション基板に、半導電性層を形成する工程の他の実施形態を示す、工程図である。次に、図2を参照して、感光剤が配合された半導電性樹脂組成物を用いて、回路付サスペンション基板に半導電性層を所定のパターンで形成する方法を説明する。
この方法では、まず、上記と同様に、図2(a)に示すように、回路付サスペンション基板1を用意する。
【0029】
次いで、この方法では、図2(b)に示すように、端子部6の表面を含むカバー絶縁層5の表面に、感光剤が配合された半導電性樹脂組成物からなる皮膜9を形成する。皮膜9を形成するには、まず、感光剤が配合された半導電性樹脂組成物を、端子部6の表面を含むカバー絶縁層5の表面に、上記と同様の方法により、均一に塗布する。次いで、塗布された半導電性樹脂組成物を、上記と同様に、乾燥する。
【0030】
その後、この方法では、図2(c)に示すように、皮膜9を、フォトマスク10を介して露光する。フォトマスク10は、光を透過しない遮光部分10aと、光を透過する光透過部分10bとを所定のパターンで備えており、ネガ画像でパターンニングする場合には、図2(c)に示すように、端子部6を含む半導電性層7を形成しない部分には、遮光部分10aが対向し、それ以外の半導電性層7を形成する部分には、光透過部分10bが対向するように、フォトマスク10を配置して、露光する。
【0031】
次いで、必要によりネガ画像を形成するための所定温度で加熱後、図2(d)に示すように、半導電性層7における遮光部分10aが対向していた未露光部分、すなわち、半導電性層7における端子部6に対応する部分を、現像により除去する。現像は、例えば、現像液としてアルカリ水溶液などを用いる、浸漬法またはスプレー法などが用いられる。これによって、皮膜9が、端子部6を除くカバー絶縁層5の表面に、所定のパターンで形成される。
【0032】
なお、ポジ画像でパターンニングする場合には、上記した逆、すなわち、端子部6にフォトマスク10の光透過部分10bを対向させて露光した後、必要によりポジ画像を形成するための所定温度で加熱後、現像する。
その後、この方法では、図2(e)に示すように、半導電性樹脂組成物が、イミド樹脂前駆体を含有する場合には、そのイミド樹脂前駆体を、例えば、減圧下、250℃以上で加熱することにより、硬化(イミド化)させる。
【0033】
これによって、上記と同様に、半導電性層7が、端子部6の表面を除くカバー絶縁層5の表面に形成される(但し、端子部6を囲むカバー絶縁層5の内周側面および端子部6の周縁部には、半導電性層7が形成されている。)。なお、半導電性層7の厚みや表面抵抗値は、上記と同様である。
なお、上記の説明では、本発明の配線回路基板を、回路付サスペンション基板1を例示して説明したが、本発明の配線回路基板には、片面フレキシブル配線回路基板、両面フレキシブル配線回路基板、さらには、多層フレキシブル配線回路基板などが含まれる。例えば、図3に示すように、片面フレキシブル配線回路基板11では、ベース絶縁層3、導体パターン4およびカバー絶縁層5が順次積層されており、カバー絶縁層5が開口されることにより、導体パターン4の露出部分が端子部6として形成されている。そして、半導電性層7が、端子部6の表面を除くカバー絶縁層5の表面に形成されている(但し、端子部6を囲むカバー絶縁層5の内周側面および端子部6の周縁部には、半導電性層7が形成されている。)。なお、半導電性層7は、その目的および用途により、ベース絶縁層3に形成してもよく、また、ベース絶縁層3およびカバー絶縁層5の両方に形成してもよい。
【0034】
また、半導電性層7は、単一層で形成してもよく、また、多層で形成することもできる。半導電性層7を多層で形成する場合には、カバー絶縁層5から離間するに従って、各半導電性層7に含まれる導電性粒子の配合割合が少なくなるように、各半導電性層7を形成する。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例に限定されることはない。
実施例1
ステンレス箔からなる金属支持基板の上に、ポリイミドからなるベース絶縁層、銅箔からなる導体パターン、ポリイミドからなるカバー絶縁層が、順次積層されてなる回路付サスペンション基板を用意した(図1(a)参照)。なお、カバー絶縁層には、開口部が形成されており、その開口部から露出する導体パターンの露出部分が端子部とされている。
【0036】
ポリエーテルイミドの15重量%N―メチル―2―ピロリドン(NMP)溶液(東洋紡績社製、HR16NN)20gに、カーボンブラックの10重量%NMP分散液(デグサ社製、Special Black4)15gを添加し、攪拌して半導電性樹脂組成物を得た。
この半導電性樹脂組成物を、上記の回路付サスペンション基板の端子部を含むカバー絶縁層の表面に、バーコーターを用いて塗布し、100℃で5分間、さらに、180℃で15分間乾燥して、厚み2μmの半導電性層を形成した(図1(b)参照)。
【0037】
次いで、端子部を除くカバー絶縁層の表面を、エッチングレジストで被覆し(図1(c)参照)、エッチングレジストから露出する端子部の表面に形成されている半導電性層を、水酸化カリウム水溶液をエッチング液として用いて、エッチングにより除去した(図1(d)参照)。その後、水酸化ナトリウム水溶液を剥離液として用いて、エッチングレジストを剥離した(図1(e)参照)。これによって、半導電性層が、端子部の表面を除くカバー絶縁層の表面に形成された回路付サスペンション基板を得た。
【0038】
なお、半導電性層の初期の表面抵抗値は2.6×108Ω/□であった。
実施例2
ポリエーテルイミドの40重量%NMP溶液(日本GEプラスチック社製、ウルテムXH6050)7gに、ITO粒子の19.9重量%NMP分散液(触媒化成工業社製)22.3gを添加し、攪拌して半導電性樹脂組成物を得た。
【0039】
この半導電性樹脂組成物を、実施例1と同様の回路付サスペンション基板の端子部を含むカバー絶縁層の表面に、バーコーターを用いて塗布し、100℃で5分間、さらに、180℃で15分間乾燥して、厚み1μmの半導電性層を形成した。
以下、実施例1と同様にして、半導電性層が、端子部の表面を除くカバー絶縁層の表面に形成された回路付サスペンション基板を得た。
【0040】
なお、半導電性層の初期の表面抵抗値は2.9×108Ω/□であった。
実施例3
ポリエーテルイミドの15重量%NMP溶液(東洋紡績株式会社製、HR16NN)2gに、PTO粒子の20.6重量%NMP分散液(触媒化成工業社製)3.1gを添加し、攪拌して半導電性樹脂組成物溶液を得た。
【0041】
この半導電性樹脂組成物を、実施例1と同様の回路付サスペンション基板の端子部を含むカバー絶縁層の表面に、バーコーターを用いて塗布し、100℃で5分間、さらに、180℃で15分間乾燥して、厚み2μmの半導電性層を形成した。
以下、実施例1と同様にして、半導電性層が、端子部の表面を除くカバー絶縁層の表面に形成された回路付サスペンション基板を得た。
【0042】
なお、半導電性層の初期の表面抵抗値は8.3×107Ω/□であった。
合成例1(ポリアミック酸樹脂Aの合成)
1Lのセパラブルフラスコに、p−フェニレンジアミン27.6g(0.25mol)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル9.0g(0.05mol)を入れ、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)767gを加えて攪拌し、p−フェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた。
【0043】
これに、3,3’,4.4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物88.3g(0.3mol)を徐々に加え、30℃以下の温度で2時間攪拌を続け、濃度14重量%のポリアミック酸樹脂Aの溶液を得た。なお、この溶液の30℃での粘度は500Pa・sであった。
合成例2(ポリアミック酸樹脂Bの合成)
1Lのセパラブルフラスコに、p−フェニレンジアミン27.6g(0.25mol)と1,3−ビス(4−アミノフェキシ)ベンゼン(APB)13.1g(0.05mol)を入れ、NMP792gを加えて攪拌し、p−フェニレンジアミンとAPBを溶解させた。
【0044】
これに、3,3’,4.4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物88.3g(0.3mol)を徐々に加え、30℃以下の温度で2時間攪拌を続け、濃度14重量%のポリアミック酸樹脂Bの溶液を得た。なお、このポリアミック酸樹脂Bの溶液の30℃での粘度は400Pa・sであった。
実施例4
合成例1で得られたポリアミック酸樹脂Aの溶液に、感光剤(ニフェジピン37.5gとアセチル体25.0g)を添加し、さらに、カーボンブラックの10重量%NMP分散液(デグサ社製、Special Black4)374.7gを添加し、攪拌して、カーボンブラックが均一に分散した感光性半導電性樹脂組成物を得た。
【0045】
この感光性半導電性樹脂組成物を、実施例1と同様の回路付サスペンション基板の端子部を含むカバー絶縁層の表面に、スピンコーターを用いて塗布し、90℃で15分加熱することにより、厚み4μmの皮膜を形成した(図2(b)参照)。
次いで、フォトマスクを介して、露光量700mJ/cm2にて、紫外線を露光し(図2(c)参照)、190℃で10分間露光後加熱した後、現像することにより、皮膜をネガ型画像でパターンニングした(図2(d)参照)。
【0046】
その後、1.33Paに減圧した状態で、385℃で加熱して、イミド化し、半導電性層が、端子部の表面を除くカバー絶縁層の表面に形成された回路付サスペンション基板を得た(図2(e)参照)。
なお、半導電性層の初期の表面抵抗値は7.0×107Ω/□であった。
実施例5
合成例2で得られたポリアミック酸樹脂Bの溶液に、感光剤(ニフェジピン38.7gとアセチル体25.8g)を添加し、さらに、カーボンブラックの12重量%NMP分散液(デグサ社製、Special Black4)376.3gを添加し、攪拌して、カーボンブラックが均一に分散した感光性半導電性樹脂組成物を得た。
【0047】
次いで、この感光性半導電性樹脂組成物を用いて、実施例4と同様の方法により、半導電性層が、端子部の表面を除くカバー絶縁層の表面に形成された回路付サスペンション基板を得た。
なお、半導電性層の初期の表面抵抗値は3.0×108Ω/□であった。
実施例6
合成例1で得られたポリアミック酸樹脂Aの溶液に、感光剤(ニフェジピン6.2gとポリエチレングリコール31.2g)を添加し、さらに、カーボンブラックの4重量%NMP分散液(ライオン社製、ケッチェンブラック)を218.6g添加し、攪拌して、カーボンブラックが均一に分散した感光性半導電性樹脂組成物を得た。
【0048】
次いで、この感光性半導電性樹脂組成物を用いて、実施例4と同様の方法により、半導電性層が、端子部の表面を除くカバー絶縁層の表面に形成された回路付サスペンション基板を得た。
なお、半導電性層の初期の表面抵抗値は6.0×107Ω/□であった。
実施例7
合成例1で得られたポリアミック酸樹脂Aの溶液に、感光剤(ニフェジピン37.5gとアセチル体25.0g)を添加し、さらに、カーボンナノファイバーの4重量%NMP分散液(昭和電工社製、VGCF)281.0gを添加し、攪拌して、カーボンナノファイバーが均一に分散した感光性半導電性樹脂組成物を得た。
【0049】
この感光性半導電性樹脂組成物を、実施例1と同様の回路付サスペンション基板の端子部を含むカバー絶縁層の表面に、スピンコーターを用いて塗布し、90℃で15分加熱することにより、厚み4μmの皮膜を形成した(図2(b)参照)。
次いで、フォトマスクを介して、露光量700mJ/cm2にて、紫外線を露光し(図2(c)参照)、190℃で10分間露光後加熱した後、現像することにより、皮膜をネガ型画像でパターンニングした(図2(d)参照)。
【0050】
その後、1.33Paに減圧した状態で、385℃で加熱して、イミド化し、半導電性層が、端子部の表面を除くカバー絶縁層の表面に形成された回路付サスペンション基板を得た(図2(e)参照)。
なお、半導電性層の初期の表面抵抗値は4.0×106Ω/□であった。
実施例8
合成例2で得られたポリアミック酸樹脂Bの溶液に、感光剤(ニフェジピン38.7gとアセチル体25.0g)を添加し、さらに、カーボンナノファイバーの4重量%NMP分散液(昭和電工社製、VGCF−H)290.1gを添加し、攪拌して、カーボンナノファイバーが均一に分散した感光性半導電性樹脂組成物を得た。
【0051】
この感光性半導電性樹脂組成物を、実施例1と同様の回路付サスペンション基板の端子部を含むカバー絶縁層の表面に、スピンコーターを用いて塗布し、90℃で15分加熱することにより、厚み4μmの皮膜を形成した(図2(b)参照)。
次いで、フォトマスクを介して、露光量700mJ/cm2にて、紫外線を露光し(図2(c)参照)、190℃で10分間露光後加熱した後、現像することにより、皮膜をネガ型画像でパターンニングした(図2(d)参照)。
【0052】
その後、1.33Paに減圧した状態で、385℃で加熱して、イミド化し、半導電性層が、端子部の表面を除くカバー絶縁層の表面に形成された回路付サスペンション基板を得た(図2(e)参照)。
なお、半導電性層の初期の表面抵抗値は3.5×108Ω/□であった。
比較例1
1Lのガラス製ビーカーに、0.1Mペルオキソニ硫酸カリウム水溶液を500mL入れて、2〜3℃に保持し、これに、実施例1と同様の回路付サスペンション基板を浸漬した。
【0053】
続いて、これに、0.2Mピロール水溶液100mLを加えて、15℃に保持しながら10分間攪拌して、ピロールを重合することによって、ポリピロールからなる半導電性層を、回路付サスペンション基板の表面に形成した。なお、ポリピロールは、端子部および金属支持基板(金属表面)に対する漏れ性が不良であったため、端子部には形成されず、カバー絶縁層の表面にのみ形成された。
【0054】
なお、半導電性層の初期の表面抵抗値は1.0×106Ω/□であった。
評価
実施例1〜8および比較例1で得られた回路付サスペンション基板を、水中超音波洗浄(50kHz、25℃、10分間)した。その結果、表1に示すように、比較例1では表面抵抗値が大きく変化したのに対して、実施例1〜8では、その変化がわずかであった。
【0055】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の配線回路基板の一実施形態である回路付サスペンション基板に、半導電性層を形成する工程を示す、工程図であって、(a)は、回路付サスペンション基板を用意する工程、(b)は、端子部の表面を含むカバー絶縁層の表面に、半導電性層を形成する工程、(c)は、端子部を除くカバー絶縁層の表面を、エッチングレジストで被覆する工程、(d)は、エッチングレジストから露出する半導電性層を除去する工程、(e)は、エッチングレジストを除去する工程を示す。
【図2】本発明の配線回路基板の一実施形態である回路付サスペンション基板に、半導電性層を形成する工程の他の実施形態を示す、工程図であって、(a)は、回路付サスペンション基板を用意する工程、(b)は、端子部の表面を含むカバー絶縁層の表面に、感光剤が配合された半導電性樹脂組成物からなる皮膜を形成する工程、(c)は、皮膜を、フォトマスクを介して露光する工程、(d)は、半導電性層における端子部に対応する部分を、現像により除去する工程、(e)は、イミド樹脂前駆体を硬化(イミド化)させる工程を示す。
【図3】本発明の配線回路基板の他の実施形態である片面フレキシブル配線回路基板を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 回路付サスペンション基板
3 ベース絶縁層
4 導体パターン
5 カバー絶縁層
7 半導電性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性粒子および溶媒を含有していることを特徴とする、半導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記導電性粒子が、カーボンブラック粒子、カーボンナノファイバーおよび金属酸化物粒子からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、感光剤を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項4】
導体層と、前記導体層に隣接する絶縁層と、請求項1〜3のいずれかに記載の半導電性樹脂組成物からなり、前記絶縁層の表面に形成される半導電性層とを備えていることを特徴とする、配線回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−225625(P2006−225625A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142815(P2005−142815)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】