説明

半田こての温度管理装置

【課題】作業者や管理者の手間を軽減できながら、半田こてのこて先の温度を適正に管理できる半田こての温度管理装置を得る。
【解決手段】温度管理装置1は、半田こて6のこて先7の温度を測定する温度測定部19と、温度測定部19で測定された検出温度が許容温度の範囲内であるか否かを判定する制御部31と、各半田こて6に付されたコード17を読み取るコードリーダ3と、判定結果を報知する報知手段26・27とを備えている。制御部31は、コードリーダ3で読み取られたコード17に含まれている各半田こて6の識別情報と許容温度情報に基づいて、検出温度が許容温度の範囲内にあるか否かの温度判定を行い、判定結果を表示部26やブザー27に報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田こての温度を管理するための温度管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC等の電子部品を使用する各種電気製品の組立作業は、通常流れ作業により行われており、この作業工程には半田付け作業も含まれる。手作業により半田付け作業が行われる場合には、作業者は作業効率を優先するあまり、こて先温度を高めに設定・調整する傾向にある。このように、こて先温度を高めに設定すると、電子部品の熱破壊や劣化等が生じやすくなり、結果として製品歩留まりの低下や品質の低下を招く。
この傾向は、鉛を含まない鉛フリー半田が普及するに連れて顕著となっている。すなわち、鉛フリー半田は、従来の鉛含有の半田よりも融点が高いため、作業効率の低下をおそれた作業者がこて先温度を高めに設定し、結果として電子部品が熱破壊されるという事態が生じていた。
【0003】
かかる対策としては、特許文献1〜3に示すような温度管理装置が公知であり、そこでは、識別カードを使って管理人の特定し、或いはカードやバーコードを使ってのみ温度の設定調整を可能としている。しかし、特許文献1乃至3のようなカードやバーコードのリーダ機能を具備する高機能な温度管理装置を全ての作業者に与えることは、装置の導入者である工場側や企業側のコスト負担が大きく、実用的であるとは言えない。
【0004】
【特許文献1】実開平1−80262号公報(第1−3図)
【特許文献2】実開平1−30141号公報(第1−3図)
【特許文献3】実開平1−84871号公報(第1−4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため現況においては、数回(3度程度)/日の頻度で、作業者にこて先の温度測定を義務付け、その測定結果を記録用紙に記入する形態が広く採用されている。しかし、測定温度の見誤りや記入ミス、或いは人為的な測定結果と異なる温度の誤記入等の要因に鑑みると、このような温度管理が万全であるとは全く以って言いがたい。作業者にとっては手書きすることが煩わしく、作業効率が低下する不満もある。
【0006】
加えて、管理者によるデータ管理の手間が煩雑で煩わしい。すなわち、手書きデータ(測定温度)と許容温度の範囲とを比較したチェック作業を日に数度行う必要があり、チェックに時間が取られ煩わしい。チェックミスが生じやすい不利もあり、特に、工場内で取り扱われる半田が数種あり、各半田の許容温度の範囲が異なる場合にチェックミスが生じやすい。
【0007】
本発明は以上のような問題を解決するためになされたものであり、作業者や管理者の手間を軽減できながら、半田こてのこて先の温度を適正に管理できる半田こての温度管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半田こての温度管理装置1は、図1および図4に示すように、半田こて6のこて先7の温度を測定する温度測定部19と、該温度測定部19で測定された検出温度が許容温度の範囲内であるか否かを判定する制御部31と、各半田こて6に付されたコード17を読み取るコードリーダ3と、判定結果を報知する報知手段26・27とを備えている。そして、制御部31は、前記コードリーダ3で読み取られたコード17に含まれている各半田こて6の識別情報と許容温度情報に基づいて、前記検出温度が許容温度の範囲内にあるか否かの良否判定を行い、判定結果を前記報知手段26・27に報知することを特徴とする。
【0009】
本発明において、「半田こて6に付されたコード17」とは、半田こて6の把持部やコード等にコード17が付されたものや、半田こて6の温度を制御する制御装置5の筐体にコード17が付された形態等を意味する。コード17とは、実施例に示すような二次元コードに限られず、コードが格納されたICチップなどをも含む概念である。また、コードリーダ3とは、これらに二次元コードやICチップに格納されたコードを読み取るものである。ICチップにコードが格納されている場合には、プラスチック製あるいは紙製のベースにICチップを搭載してなるシール或いはカードなどの形態としたうえで、これを半田こて6に付すことになる。なお、かかるコード17の概念は、以下の作業者用コード37や半田種別用コード67においても同様である。
報知手段26・27の具体例としては、ブザー音等を発するスピーカーや、ОK/NGの判定結果を表示するためのLED等を挙げることができる。
【0010】
線条の半田60をハブに巻き付けてなる半田リール61のフランジ62の外面、又は該半田リール61を回転自在に保持するリール台64の外面に、該半田60の種別が記録された半田種別用コード67が配された形態を採ることができる。
【0011】
外部メモリ22が着脱可能に装着されるメモリ装着部23を有し、前記制御部31は、少なくともコード17に含まれる各半田こて6の識別情報に関連付けて、前記温度判定の判定結果を外部メモリ22に記録する形態を採ることができる。なお、「少なくとも」の文言は、半田60の種別情報が、半田こて6の識別情報に関連付けて記録される場合を想定している。
【0012】
コードリーダ3は、半田こて6を使用する作業者を特定するための作業者用コード37を読み取り可能であり、制御部31は、コードリーダ3で読み取られた作業者用コード37に含まれている作業者を特定する作業者識別情報に関連付けて、少なくとも半田こて6の識別情報および温度判定の判定結果を外部メモリ22に記録するものとすることができる。
作業者用コード37は、作業者各人の名札36に付することができる。半田付け作業を行っている作業台に付してあってもよい。
【0013】
温度測定部19が、制御部31やメモリ装着部23を配置した装置本体2から分離可能に構成されており、温度測定部19を装置本体2に装着することで、温度測定部19で測定した検出温度のデータが、制御部31に読み取られる形態を採ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、管理者や作業者等のユーザーは、半田こて6に付されたコード17をコードリーダ3で読み取らせ、この読み取り動作に前後して、半田こて6のこて先7を温度測定部19に測定させる。制御部31は、コード17の読み取り動作で得られた許容温度と、温度測定部19で測定された検出温度とを比較し、検出温度が許容温度の範囲内にある場合にはОKの判定を下し、検出温度が許容温度の範囲外にある場合にはNGの判定を下して、判定結果を報知手段26・27で報知する。
【0015】
しかるに本発明に係る温度管理装置によれば、作業者および管理者は、検出温度が許容温度の範囲内にあるか否かを、音や光等の報知手段26・27により瞬時に把握できる。従って、作業者や管理者は、許容範囲の温度の確認作業や検出温度との比較作業等の手間を省いて、即座にこて先7の温度状態を知ることができ、温度検査に伴う半田付け作業の作業効率の低下を最小限に抑えることができる。
加えて、管理者による許容範囲の温度と検出温度との照合作業等を廃することができるので、管理者は報知手段26・27による判定結果を確認するだけで、各半田こて6の使用状況を把握・管理できる。従って、管理作業の手間を大幅に削減して、管理者の負担を小さくできる。
何よりもコード17に含まれた許容温度の情報に基づいて、こて先7の温度の判定を行うので、許容温度の範囲の確認作業等を完全に廃することができる。従って、複数台の半田こて6の許容温度の範囲が異なる場合でも、こて先7の温度の判定を正確に行うことができ、判定ミスが生じる余地が無い点で優れている。
【0016】
半田こて6のこて先7の許容温度は、原始的には当該半田こて6が半田付け作業を行う半田の種別を一つの大きな要因として決定される。従って、半田リール61のフランジ62の外面、又は該半田リール61を回転自在に保持するリール台64の外面に、該半田60の種別に関する情報が記録された半田識別用コード67を配して、当該コード67から読み取られた種別情報に基づいて、良否判定を行うようにしていると、より確実に良否判定を行うことができ、より信頼性に優れた温度管理装置を得ることができる。半田こて6の識別情報に対応させて、半田60の種別情報を管理することができ、管理作業の手間を大幅に削減して、管理者の負担を小さくできる。半田こて6に付されたコード17に記憶されている情報と、半田リール61等に付されているコード67に記憶されている情報とを対比し、両情報から半田こて6で取り扱っている半田60が指定されたものであるか否かを確認することもできる。つまり、コード17に半田60の種別情報が付されていると、当該種別情報と、コード67の種別情報とを対比することで、半田こて6で半田付け作業に供されている半田60が指定されたものであるか否かを簡単確実に確認することができる。また、当該確認動作による結果は、先の報知手段26・27を介して報知することができる。
【0017】
外部メモリ22が着脱可能に装着されるメモリ装着部23を有し、制御部31が、コード17に含まれる各半田こて6の識別情報に関連付けて、少なくとも温度判定の判定結果を外部メモリ22に記録する形態を採ることができる。これによれば、作業者がこて先7の温度を温度計で測定して記録用紙に記録する煩わしい手間を省くことができ、半田付け作業の作業効率の向上に貢献できる。測定温度の見誤りや記入ミス、人為的な誤記入等を完全に廃することができ、こて先7の温度を適正に管理できる。
外部メモリ22に格納されているデータを、パーソナルコンピュータ等に移動させて、これを表計算ソフト等を使って集計すれば、半田こて6の温度状況をパーソナルコンピュータの画面上で一目で管理できる。従って、管理者の管理業務負担を大幅に軽減できる。大規模な工場の場合でも、少人数の管理者で確実に半田こて6の使用状況を管理することができる。
【0018】
作業者識別情報に関連付けて、半田こて6の識別情報および良否判定の判定結果、場合によっては半田の種別情報などを外部メモリ22に記録すれば、作業者単位での管理・指導が可能となる。従って、より細かな管理体制を確立できる。
【0019】
温度測定部19が装置本体2から分離可能になっていると、例えば温度測定部19のみを作業者に与えて、これを検査時刻になると順番に各作業者に廻して温度測定を行い、作業者全員の測定が終了した後に温度測定部19を回収し、これを装置本体2に装着して検出温度のデータを制御部31に読み取らせて、良否判定を行うような使用形態を採ることができる。これによれば、作業者は温度測定機能に特化した温度測定部19を操作すればよく、多くの操作釦を備えた温度管理装置1の全体を各作業者が操作する場合に比べて、作業者の操作負担が軽減される。より迅速に温度測定を済ませることができるので、検査作業に伴う作業効率の低減も少なくできる。一台の装置本体2で複数台の温度測定部19に対応することができるので、作業人数が増加した場合には温度測定部19の台数を増やせばよく、工場側や企業側のコスト負担を抑えることができる。温度測定部19のサーミスタ等は消耗しやすいが、これを装置本体2と分離しておくことで、保守や点検、あるいはサーミスタ等の消耗部品の交換等が容易となる点でも優れている。
尤も、上述のような使用形態の場合には、予め各半田こて6、或いは作業者を温度測定部に登録しておくことが必要であり、作業者は検査に先立って、半田こて6の識別情報、或いは作業者名等を温度測定部の表示画面に表示させて、半田こて6や作業者の認証操作或いは確認操作を行ったうえで、実際の温度測定を行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1実施形態) 本発明に係る半田こての温度管理装置1の第1実施形態を図1乃至図3に基づき説明する。温度管理装置1は、図1および図3に示すように、装置本体2と二次元コードリーダ(コードリーダ)3とを有し、装置本体2の温度測定部19で半田こて6のこて先7の温度を測定するようになっている。半田こて6は、こて先7を加熱するヒータ11と、こて先7の温度を検知する温度センサ12とを備える。
【0021】
半田こて6には、接続コード10を介して半田こて制御装置5が接続される。半田こて制御装置5の筐体の前面には、こて先7の温度を設定するための温度調節つまみ15と、温度センサ12で検知されたこて先7の温度等を表示する表示部16が設けられる。半田こて制御装置5は、温度センサ12で検知されたこて先7の温度が温度調節つまみ15で設定された温度(設定温度)になるようにヒータ11を制御する。
【0022】
制御装置5の筐体の前面には、半田こて用の二次元コード(コード)17が貼り付けられている。尤も、二次元コード17の配設個所は、制御装置5の筐体前面に限られず、例えば半田こて6の把持部の接続コード10との連結部近傍に設けてもよい。
二次元コード17には、半田こて6を特定する識別情報や、こて先7の温度の許容温度範囲を示す許容温度情報が含まれる。許容温度情報は、許容される温度範囲の下限値と上限値とで構成されており、取り扱う半田の種別、或いは取り扱う電子部品の耐熱温度等に基づいて予め規定される。これら識別情報や許容温度情報は、例えばQRコード(登録商標)の方式により、二次元コード化されている。
【0023】
図3に示すように、半田60は、半田リール61の形態で作業台上に置かれ、当該半田リール61から引き出されて、半田こて6による半田付け作業に供される。半田リール61は、糸条の半田60が巻かれる不図示のハブと、該ハブの両端に配された円形のフランジ62とからなり、各フランジ62の外面の中心から外向きに突設された二本の回転軸63が、リール台64の軸受け穴65に受け止められて、該回転軸63まわりに回転可能に構成される。一個の半田リール61には、数百グラムから数キログラムの半田60が巻き付けられている。
【0024】
図3において、符号67は、フランジ62の外面に配された二次元コード(コード)を示す。このコード67には、半田60の種別情報(半田60の製品番号等)がコード化されて含まれている。場合によっては、当該種別情報に加えて、半田6のこて先7の許容温度情報を含めてもよい。
【0025】
温度管理装置1の装置本体2の側面には、こて先7の温度を測定する温度測定部19と、二次元コードリーダ3のコネクタ20が着脱可能に接続されるコネクタ21と、SDメモリカード等の外部メモリ22が着脱可能に接続(装着)されるメモリ用コネクタ(メモリ装着部)23とが配置される。ここでは、二次元コードリーダ3のコネクタ20および装置本体2のコネクタ21は、USB規格の端子とした。温度管理装置1の装置本体2の前面には、電源スイッチ等からなる操作部25と、温度測定部19で測定されたこて先7の温度等を表示する表示部(報知手段)26と、報知用のブザー(報知手段)27とが配置される。温度測定部19は、熱電対29を有し、この熱電対29にこて先7が接触することで(図3参照)、その温度が測定される。図2に示すように、装置本体2は、装置全体を制御する制御部31の他、起動用のプログラム等が格納されるROM32と制御部31の作業領域となるRAM33で構成される記憶部35を備える。
【0026】
二次元コードリーダ3は、先の半田こて用の二次元コード17だけでなく、作業者が所有する名札36に配置した作業者用二次元コード(コード)37(図3)を読み取ることができる。この作業者用二次元コード37には、作業者を識別するための作業者識別情報(氏名等)がコード化されて含まれている。
【0027】
次に、本実施形態に係る温度管理装置1の動作を説明する。まず、半田こて6のこて先7の温度測定に先立って、例えば管理者が二次元コードリーダ3を操作して、作業者用二次元コード37、半田こて用二次元コード17、半田リール61に付された半田種別用二次元コード67を読み取る。温度管理装置1の制御部31は、読み取った二次元コード17・37・67に基づいて、半田こてデータ(半田こて6の識別情報)、許容温度範囲データ(許容温度情報)、作業者データおよび半田6の種別情報をRAM33に記憶させる。
【0028】
次いで、管理者は、半田こて6のこて先7を温度測定部19の熱電対29に接触させ、この状態で操作部25の釦を押すことで、温度測定部19で測定されたこて先7の温度データが制御部31に読み込まれる。すると、制御部31は、測定されたこて先7の温度データと許容温度範囲データとを比較し、こて先7の温度が許容温度の範囲内にあると判定した場合には、表示部26にこて先7の温度および「OK」の表示(報知)を行う。
【0029】
一方、制御部31が、こて先7の温度が許容温度の範囲から外れていると判定した場合には、表示部26にこて先7の温度および「NG」の表示(報知)を行うとともにブザー27を鳴らす(報知する)。この後、管理者が、操作部25の釦を押すことで、温度測定部19によるこて先7の温度の測定が終了し、表示部26の「OK」や「NG」の表示が消去され、またブザー27が鳴っている場合には該ブザー27の音が停止される。こて先7の温度の測定が終了したときには、管理者はこて先7を温度測定部19から外す。また、管理者は、前記「NG」の場合には半田こて制御装置5の温度調節つまみ15でこて先7の温度を適正温度に調節し、または半田こて6を修理する。
【0030】
こて先7の温度の測定が終了したときには、制御部31は、測定日時データ、温度測定部19で測定されたこて先7の温度データ、こて先7の温度の判定結果(OK又はNG)のデータ、作業者識別情報および半田60の種別情報を、半田こて6の識別情報に関連付けて外部メモリ22に記録する。複数台の半田こて6を管理する場合には、以上のような二次元コード17・37・67の読み込みや温度測定等の一連の測定動作を、半田こて6毎に繰り返す。この測定動作は、例えば日に3回程度行われる。
【0031】
全ての半田こて6に対する測定動作が終了すると、管理者は外部メモリ22(SDカード)を装置本体2から外して、パーソナルコンピュータのメモリリーダに装填する。パーソナルコンピュータの記憶装置(ハードディスク)に、測定日時データ、温度データ、作業者識別情報、半田60や半田こて6の識別情報および判定結果といったデータを移動したのち、専用ソフト、或いは表計算ソフト等を立ち上げて、このデータをパーソナルコンピュータのディスプレイに一覧表で表示させる。この一覧表は、適宜にプリントアウトすることができる。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る温度管理装置1を用いれば、作業者および管理者は、検出温度が許容温度の範囲内にあるか否かを、表示部26の表示、或いはブザー27からの報知音により瞬時に把握できる。従って、作業者や管理者は、許容温度の確認作業や検出温度との比較作業等の手間を省いて、迅速にこて先7の温度状態を知ることができ、温度検査に伴う半田付け作業の作業効率の低下を最小限に抑えることができる。
加えて、管理者による許容温度と検出温度との照合作業等を廃することができるので、管理者は報知手段27による判定結果を確認するだけで、各半田こて6の温度状態を管理できる。従って、管理作業の手間を大幅に削減して、管理者の負担を小さくできる。半田6の種別を簡単確実に確認することができる点でも優れている。
何よりも二次元コード17に含まれた許容温度の情報に基づいて、こて先7の温度の判定を行うので、許容温度の範囲の確認作業等を完全に廃することができる。従って、複数台の半田こて6の許容温度の範囲が半田こて6毎に異なる場合でも、こて先7の温度の判定を正確に行うことができ、判定ミスの発生が生じる余地も無い。
【0033】
二次元コード17に含まれる各半田こて6の識別情報に関連付けて、測定日時データ、温度データ、作業者識別情報、半田6の種別情報および判定結果を外部メモリ22に記録するので、作業者がこて先7の温度を温度計で測定して記録用紙に記録する煩わしい手間を省くことができ、半田付け作業の作業効率の向上に貢献できる。測定温度の見誤りや記入ミス、人為的な誤記入等を完全に廃することができ、こて先7の温度を的確且つ正確に管理できる。
外部メモリ22に格納されているデータを、パーソナルコンピュータ等に移動させて、これを表計算ソフト等を使って集計すれば、こて先7の温度をパーソナルコンピュータの画面上で管理できる。従って、管理者が、記録用紙に記録された温度が許容温度の範囲内であるか否かを判定・チェックする手間を完全に廃して、管理者の管理業務負担を大幅に軽減できる。作業者単位あるいは半田こて6単位で傾向を捉えたり、分析することが容易であり、作業者単位あるいは半田こて6単位での管理・指導できる。従って、より細かな管理体制を確立できる。
【0034】
(第2実施形態) 本発明に係る半田こての温度管理装置1の第2実施形態を図4乃至図9に基づき説明する。第2実施形態の温度管理装置1は、温度測定部19が装置本体2から分離可能になっている点が、先の第1実施形態と大きく相違する。
【0035】
詳しくは、温度測定部19の前面には、図4および図5に示すように、電源スイッチ等からなる操作部39と、測定したこて先7の温度等を表示する表示部40とが配置され、温度測定部19の側面には、熱電対29と、装置本体2に着脱可能に接続(装着)するための本体接続用コネクタ41と、プリンタ42(図8)に着脱可能に接続するためのプリンタ用コネクタ43とが配置される。温度測定部19の内部には、電源用の二次電池45(図5)が配置されるとともに、図6に示すように、制御部46と、ROM48およびRAM49からなる記憶部50を有する。
【0036】
装置本体2の前面には、図4に示すように、操作部25と表示部(報知手段)26とブザー(報知手段)27とが配置され、装置本体2の側面には、外部メモリ22が着脱可能に接続(装着)されるメモリ用コネクタ(メモリ装着部)23と、温度測定部19の本体接続用コネクタ41が着脱可能に接続(装着)される測定部接続用のコネクタ51(図9)が配置される。装置本体2の内部には、図7に示すように制御部31と、ROM32およびRAM33からなる記憶部35とを有する。なお、本実施形態では、外部メモリ22としてUSBメモリを採用し、メモリ用コネクタ23としてUSB規格の端子を採用した。
【0037】
次に、第2実施形態に係る温度管理装置1の動作を説明する。ここではまず、温度測定部19のみを使って、複数の半田こて6の温度測定を行い、次いで、装置本体2に温度測定部19を接続させる使用形態について説明する。
かかる使用形態においては、温度測定部19による温度測定に先立って、半田こて6および作業者を温度測定部19および装置本体2に登録しておく。詳しくは、管理者は、装置本体2の二次元コードリーダ3を操作して、作業者用二次元コード37、半田こて6用の二次元コード17、半田識別用コード67に対する読み取り動作を行い、半田こて6の識別情報、作業者識別情報、許容温度範囲情報、および半田6の種別情報を装置本体2の記憶部35のRAM33および温度測定部19の記憶部50のRAM49に記憶させる。
【0038】
検査時刻となると、温度測定部19を作業者に与えて、温度測定を行う。作業者は、操作部39を操作して、作業者識別情報、或いは半田こて6の識別情報を表示部40に表示させて、さらに操作部39を操作して認証・確認動作を行ったのち、温度測定部19の熱電対29に半田こて6のこて先7を接触させて温度測定を行う。検出温度および検出時間は、RAM49に記憶され、表示部40には、検出温度と許容温度範囲とが表示される。この検出温度に基づいて作業者は温度制御を行う。複数人の作業者がいる場合には、温度測定部19を順送りし、各作業者は、認証・確認動作と温度測定動作とを行って、RAM49内に検出温度を記憶させる。例えば工場内のライン毎、或いは製造工程毎に複数人の作業者からなる複数のグループを設けて、各グループに一台の温度測定部19を与えてもよく、その場合には、グループ内で温度測定部19を廻して、認証・確認動作と温度測定動作とを行わせる。
【0039】
測定対象となる全ての作業者に対する温度測定が終了すると、管理者は温度測定部19を回収し、図4に示すように、温度測定部19を装置本体2のコネクタ51に装着する。これにより、温度測定部19のRAM49内に記憶されている検出温度および検出時間のデータが、作業者識別情報および半田こて6の識別情報とともに、装置本体2の制御部31に読み取られ、RAM33内に記憶される。制御部31は、表示部26に、作業者識別情報、半田こて6の識別情報、許容温度情報および測定時間等を表示する。管理者は、表示部26に表示されたデータを確認し、該データに間違いがなければ操作部25の釦を押す。これを受けて装置本体2の制御部31は、こて先7の温度データと許容温度情報とを比較し、こて先7の温度が許容温度の範囲内にあると判定した場合には、装置本体2の表示部26に「OK」の表示(報知)を行う。一方、装置本体2の制御部31が、こて先7の温度が許容温度の範囲から外れていると判定した場合には、表示部26に「NG」の表示(報知)を行うとともにブザー27を鳴らす(報知する)。この判定作業は、半田こて6毎に行ってもよいし、複数個の半田こて6に対してまとめて行ってもよい。
【0040】
また、装置本体2の制御部31は、測定日時、検出温度、判定結果および作業者識別情報を半田こて6の識別情報に関連づけて外部メモリ22に記録する。管理者は外部メモリ22を装置本体2から外して、パーソナルコンピュータのUSB端子に装填する。パーソナルコンピュータの記憶装置(ハードディスク)に、測定日時データ、温度データ、作業者識別情報、半田こて6の識別情報、半田60の種別情報および判定結果といったデータを移動させたのち、専用ソフト、或いは表計算ソフト等を立ち上げて、このデータをパーソナルコンピュータのディスプレイに一覧表で表示させる。この一覧表は、適宜にプリントアウトすることができる。
【0041】
第2実施形態のように、温度測定部19が装置本体2から分離可能になっていると、上述のごとく温度測定部19のみを作業者に与えて、これを検査時刻になると順番に各作業者に廻して温度測定を行い、作業者全員の測定が終了した後に温度測定部19を回収し、これを装置本体2に装着して検出温度のデータを制御部31に読み取らせて、良否判定を行うような使用形態を採ることができる。これによれば、作業者は温度測定機能に特化した温度測定部19を操作すればよく、多くの操作釦を備えた温度管理装置1の全体を各作業者が操作する場合に比べて、作業者の操作負担が軽減される。より迅速に温度測定を済ませることができるので、検査作業に伴う作業効率の低減も少なくできる。一台の装置本体2で複数台の温度測定部19に対応することができるので、作業人数が増加した場合には温度測定部19の台数を増やせばよく、工場側や企業側のコスト負担を抑えることができる。温度測定部19のサーミスタは消耗しやすいが、これを装置本体2と分離しておくことで、保守や点検、あるいはサーミスタ等の消耗部品の交換等が容易となる点でも優れている。
【0042】
上記のような使用形態の以外に、管理者が作業台を廻って、温度測定を行うようにしてもよい。この場合には、管理者は装置本体2の二次元バーコードリーダ3を操作して、作業者識別情報、半田こて6の識別情報、半田60の種別情報と許容温度情報とを読み取らせ、この読み取り動作に前後して温度測定部19を使って半田こて6の温度測定を行う。検出温度と測定時間とは温度測定部19のRAM49に記憶される。
温度測定が終了すると、温度測定部19を装置本体2のコネクタ51に装着し、RAM49に記録されている検出温度と測定時間のデータとが、装置本体2のRAM33に移動され、制御部31による良否判定が行われる。以後のパーソナルコンピュータへの外部メモリ22への移動操作等は先と同様である。
【0043】
上記実施形態以外に、図8に示すように、温度測定部19のプリンタ用コネクタ43にプリンタ42を接続することで、こて先7の温度データをプリンタ42でプリントアウトできるようにしてもよい。また、図9に示すように、装置本体2のメモリ用コネクタ23にパーソナルコンピュータ52を接続することで、外部メモリ22を介することなく、装置本体2に記憶されている測定毎の日時データ、こて先7の温度データ、判定結果データ、作業者データ、半田こてデータ、および半田の種別データをパーソナルコンピュータ52に直接読み込ませることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る半田こての温度管理装置の第1実施形態の全体図である。
【図2】第1実施形態の温度管理装置のブロック構成図である。
【図3】第1実施形態の温度管理装置の使用状態を示す図である。
【図4】本発明に係る半田こての温度管理装置の第2実施形態の全体図である。
【図5】第2実施形態の温度測定部での温度測定状態を示す図である。
【図6】第2実施形態の温度測定部のブロック構成図である。
【図7】第2実施形態の装置本体のブロック構成図である。
【図8】温度測定部にプリンタを接続した状態を示す図である。
【図9】装置本体にパーソナルコンピュータを接続した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 温度管理装置
2 装置本体
3 コードリーダ
6 半田こて
7 こて先
17 半田こて用コード
19 温度測定部
22 外部メモリ
23 メモリ装着部(メモリ用コネクタ)
26 報知手段(表示部)
27 報知手段(ブザー)
31 制御部
37 作業者用コード
67 半田種別用コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田こて(6)のこて先(7)の温度を測定する温度測定部(19)と、該温度測定部(19)で測定された検出温度が許容温度の範囲内であるか否かを判定する制御部(31)と、各半田こて(6)に付されたコード(17)を読み取るコードリーダ(3)と、判定結果を報知する報知手段(26・27)とを備えており、
制御部(31)は、前記コードリーダ(3)で読み取られたコード(17)に含まれている各半田こて(6)の識別情報と許容温度情報に基づいて、前記検出温度が許容温度の範囲内にあるか否かの良否判定を行い、判定結果を前記報知手段(26・27)に報知することを特徴とする半田こての温度管理装置。
【請求項2】
線条の半田(60)をハブに巻き付けてなる半田リール(61)のフランジ(62)の外面、又は該半田リール(61)を回転自在に保持するリール台(64)の外面に、該半田(60)の種別が記録された半田種別用コード(67)が配されている請求項1記載の半田こての温度管理装置。
【請求項3】
外部メモリ(22)が着脱可能に装着されるメモリ装着部(23)を有し、
前記制御部(31)は、各半田こて(6)の識別情報に関連付けて、少なくとも前記良否判定の判定結果および温度判定の判定結果を外部メモリ(22)に記録する請求項1又は2記載の半田こての温度管理装置。
【請求項4】
コードリーダ(3)は、半田こて(6)を使用する作業者を特定するための作業者用コード(37)を読み取り可能であり、
制御部(31)は、コードリーダ(3)で読み取られた作業者用コード(37)に含まれている作業者を特定する作業者識別情報に関連付けて、少なくとも前記半田こて(6)の識別情報、良否判定の判定結果を外部メモリ(22)に記録する請求項3記載の半田こての温度管理装置。
【請求項5】
温度測定部(19)が、制御部(31)を配置した装置本体(2)から分離可能に構成されており、
温度測定部(19)を装置本体(2)に装着することで、温度測定部(19)で測定した検出温度のデータが、制御部(31)に読み取られる請求項1乃至4のいずれかに記載の半田こての温度管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−166062(P2009−166062A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5091(P2008−5091)
【出願日】平成20年1月12日(2008.1.12)
【出願人】(592038018)株式会社エンジニア (10)
【出願人】(598003900)有限会社井出計器 (3)
【Fターム(参考)】