説明

半田ごて

【課題】 半田ごてのこて先を交換するにあたって、半田付け作業時等のこて先が熱くなっている場合であっても、容易にこて先を交換することができる。
【解決手段】 こて先10は、断熱性を有すると共に前記こて先10の基端近傍を被覆して一体となるグリップ27,30を有し、前記こて本体50は、先端が前記グリップ27,30の基端と当接するベースプレート71と、前記ベースプレート71と一体とされ且つ前記こて先10の先端に向かって前進若しくは前記こて本体50の基端に向かって後退可能とされたスライダ70を有し、前記スライダ70を前記こて先10の先端に向かって前進させた場合に、前記ベースプレート71の先端が前記グリップ27,30の基端を押して、前記こて本体50に対して前記こて先10が移動されると共に前記雄端子24と前記雌端子61との係着が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田ごて、特に、こて先を交換可能にされた半田ごてに関する。
【背景技術】
【0002】
半田ごてのこて先にあっては、ヒータを設け、そのヒータの周囲に熱伝導性に優れた銅を配し、外表面を鉄メッキしてなるものが広く流通している。なお、この外表面とされる鉄メッキは、銅が濡れ半田(溶融した半田)に溶け出す、所謂半田食われを防止することを目的になされるものである。なお、前記鉄メッキの半田食われスピードは、銅の半田食われスピードに比して10分の1程度である。
【0003】
ところで、この種の半田ごてにおける鉄メッキにあっても、上述した銅ほどではないが、濡れ半田に食われてしまう性質を有する。従って、この種の半田ごてにあっては、半田付け作業を行うにしたがって、徐々に鉄メッキが濡れ半田に溶け出してしまって、何れは中の銅が剥き出しとなってしまうものとなっていた。このように銅が剥き出しの状態となってしまうと、すぐに銅も半田に食われてしまって、こて先として役の立たないものとなってしまっていた。つまり、半田ごて全体としても、使い物とならないものとなってしまっていた。このような問題を解決するにあたって、こて先をカートリッジ式に交換可能に構成した半田ごてが提供されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】実願平6−3364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のこて先を交換可能に構成された半田ごてにあっては、こて先をこて本体から取り外すにあたって、こて先を手で握って引っ張る必要があった。従って、このこて先が常温に近い温度に下がっている場合は、このこて先を容易に手で掴むことができるが、このこて先が熱くなってしまっている場合は、このこて先を手で掴んで取り外すことができず、こて先が冷めるまで待たなければ、交換できないものとなっていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、半田付け作業時等のこて先が熱くなっている場合であっても、そのこて先が冷めるのを待つことなく容易にこて先を交換可能とされた半田ごてを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の手段の半田ごてを提供する。
すなわち、請求項1に記載の半田ごての発明は、先端が半田を溶融可能に構成され基端に雄端子が設けられたこて先と、前記雄端子と係着可能とされた雌端子が内蔵され前記雄端子と前記雌端子とが係着することによって前記こて先と一体とされるこて本体とを含む半田ごてであって、前記こて先の外周に、断熱性を有し且つこて先の基端近傍を被覆するグリップを設けたことを特徴とする。
【0007】
この発明に係る半田ごてにあっては、グリップを、引っ張ったり、何らかの部材で押し出したりした場合には、こて先とこて本体とを一体にしている雄端子と雌端子との係着を解除することができることとなる。さらに、グリップは、断熱性を有し且つこて先の基端近傍を被覆して設けられるので、例えば、この半田ごて使用時等のこて先が熱くなっている場合であっても、こて先の先端の熱はグリップに伝達されないものとなって、作業者は、このグリップを素手で握ることができる。従って、作業者は、半田ごて使用時にあっても、素手で、このこて先をこて本体から取り外すことができる。
【0008】
請求項2に係る半田ごての発明は、先端が半田を溶融可能に構成され基端に雄端子が設けられたこて先と、前記雄端子と係着可能とされた雌端子が内蔵され前記雄端子と前記雌端子とが係着することによって前記こて先と一体とされるこて本体とを含む半田ごてであって、前記こて先は、断熱性を有すると共に前記こて先の基端近傍を被覆して一体となるグリップを有し、前記こて本体は、先端が前記グリップの基端と当接するベースプレートと、前記ベースプレートと一体とされ且つ前記こて先の先端に向かって前進若しくは前記こて本体の基端に向かって後退可能とされたスライダを有し、前記スライダを前記こて先の先端に向かって前進させた場合に、前記ベースプレートの先端が前記グリップの基端を押して、前記こて本体に対して前記こて先が移動されると共に前記雄端子と前記雌端子との係着が解除されることを特徴とする。
【0009】
この発明に係る半田ごてにあっては、スライダを先端に向かって前進させた場合に、スライダと一体とされたベースプレートの先端が、グリップの基端を押すものとなる。これによって、グリップは、こて本体に対して離間するように移動し、これに従って、グリップと一体とされたこて先も、こて本体に対して離間するように移動する。そして、こて先がこて本体に対して離間して移動されると共に、こて先の基端から突出して設けられた雄端子と、こて本体に内蔵された雌端子との係着は解除される。
【0010】
従って、スライダを先端に向かって前進させるようにスライドさせた場合、こて先とこて本体との互いの係着が解除され、こて先をこて本体から簡単に取り外すことができる。例えば、こて先が熱くなっている場合であっても、こて先とこて本体との互いの係着が解除されているので、このこて本体から取り外すことができる。
【0011】
請求項3に係る半田ごての発明は、請求項2に記載の半田ごてであって、前記グリップと前記こて先の基端近傍との間に断熱層を設けたことを特徴とする。
【0012】
この発明に係る半田ごてにあっては、グリップとこて先の基端近傍との間に断熱層が設けられるので、たとえ、半田ごてを使用時においてこて先の基端近傍が熱くなったとしても、その熱は、この断熱層によって断熱されることとなって、グリップまで熱くなり難いものとなる。従って、上述したように、こて本体からこて先を取り外す場合には、グリップを手で掴み易いようにされる。従って、こて先がこて本体から容易に取り外し易い半田ごてとなる。
【0013】
請求項4に係る半田ごての発明は、請求項2または請求項3に記載の半田ごてであって、前記雄端子と前記雌端子とが係着している場合は前記グリップを収納し且つ前記こて先が前記こて本体に対して移動した場合は前記こて本体から前記グリップが突出されるように、前記こて本体のアウタケースを設定したことを特徴とする。
【0014】
この発明に係る半田ごてにあっては、雄端子と雌端子とが係着している場合にはグリップが収納アウタケースに収納されるように、そして、こて先がこて本体に対して移動した場合にはグリップがこて本体から突出されるように、こて本体のアウタケースを設定したので、半田ごての使用時においてはグリップが収納されて外観の良いものとなり、また、こて本体からこて先を取り外す場合には、グリップを手で掴み易いようにされる。加えて、前記グリップは、こて先の熱が伝導され難く構成されたものであるので、たとえ、こて先が熱くなっている場合であっても、このグリップは素手で触ることができるものとされる。従って、こて先がこて本体から容易に取り外し易い半田ごてとなる。
【0015】
請求項5に係る半田ごての発明は、請求項4に記載の半田ごてであって、前記アウタケースの内周に向けて前記グリップを付勢する付勢手段を、前記アウタケースの内部に設けたことを特徴とする。
【0016】
この発明に係る半田ごてにあっては、アウタケースの内周に向けてグリップを付勢する付勢手段をアウタケースの内部に設けたので、グリップの外周はアウタケースの内周に押圧されることとなる。これによって、グリップとアウタケースとの間の摩擦力が高められ、こて先とこて本体とが、より確実に一体とされることとなって、半田付け作業中において好ましく使用することが可能な半田ごてとなる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る半田ごてによれば、半田ごてのこて先を交換するにあたって、半田付け作業時等のこて先が熱くなっている場合であっても、そのこて先が冷めるのを待つことなく、容易にこて先を交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係る半田ごての実施の形態について説明する。なお、図1は本発明に係る半田ごての斜視図、図2はこて先の分解斜視図、図3はこて先の側断面図及び先端拡大断面図、図4はグリップ部の長さ方向からの側面図及び断面方向からの側面図、図5は図1の半田ごての上分解斜視図、図6は図1の半田ごての下分解斜視図、図7は図1の半田ごての切り欠き側面図及び一部拡大側面図である。
【0019】
図1において、符号1は、本実施形態例の半田ごてである。
この半田ごて1は、その先端10aで半田を溶融し、その溶融された半田を所望箇所に付けたり、付けられていた半田を取り除いたりすることを目的として使用されるものである。この半田ごて1は、大まかに分けて、先端10aが溶融可能にされたこて先10と、そのこて先10の基端10b側に、こて先10と一体とされるように設けられるこて本体50とから構成されている。また、こて本体50の基端50bには、ゴムで形成されたコードアーマ80が取り付けられている。そして、このコードアーマ80には、電源と接続可能なコード81が設けられている。なお、以下、単に「先端」と称する場合は、その部材のこて先先端10a方向の端部を意味し、単に「基端」と称する場合は、その部材のこて本体基端50b方向の端部を意味する。
【0020】
次に、前記半田ごて1のうち、まず、こて先10について説明する。
こて先10は、図2に示すように、大きく分けて、こて先本体11と、このこて先本体11に内蔵される加熱装置20(図3(b)参照)と、前記こて先本体11の基端11bの近傍を被覆するように設けられたグリップ部27とから構成されている。
【0021】
こて先本体11は、図3(a)、及び図3(a)における範囲Aを拡大した図3(b)に示すように、内部が空洞にされた円錐状に形成される先端部12と、先端部12の開口端を接続して設けられる円筒部13とが一体となることで構成されている。なお、前記先端部12は、こて先10の先端10aとされている。ここで、こて先本体11は鉄によって形成されており、その先端11aの内部には、熱伝導性に優れた銅からなる伝導部14が充填されている。この伝導部14の内部には円柱状に切り欠かれた空洞部15が形成されており、この空洞部15には、コイル状に形成されたヒータ21及び感温器22が内蔵されて、その間隙を埋めるように絶縁性を有するセラミックスが充填されたものとなっている。そして、このヒータ21及び感温器22は、加熱装置20を構成するものである。すなわち、ヒータ21は、このこて先10の先端10aを熱くすることを目的として設けられるものであって、感温器22は、このこて先10の先端10aの温度を測定することを目的として設けられるものである。
【0022】
また、前記ヒータ21及び感温器22のそれぞれには、接続リード線23が接続されている。この接続リード線23は、前記ヒータ21に電力を供給すること、及び感温器22からの計測信号を伝達させることを目的として配されるものであり、互いに2本ずつ合計4本の接続リード線23が、前記ヒータ21及び感温器22のそれぞれに接続されている。なお、このこて先10には、前記こて先本体11と接するバネ部材31が設けられている。このバネ部材31は、後に説明する金属帯85と接するものであって、導電性の金属からなると共に、一端がこて先本体11と接続され、他端が金属帯85と接続され、略くの字状で形成されている。このバネ部材31は、この略くの字状に形成されたバネ部材31の中央部が変形されるように、その金属帯85に押圧されている。これによって、このバネ部材31は、形状が戻る戻り弾性を有する。そして、この弾性力によって、グリップ部27及び端子カバー30を、前記アウタケース51(こて本体50)の内周面に向け付勢することとなっている。なお、前記こて先本体11に溜まった電荷は、このバネ部材31、金属帯85、アース線87によってアースされる。
【0023】
そして、前記接続リード線23の端部には、金属からなる細長い板状で構成された接続端子とされる雄端子24が設けられている。具体的には、被覆が除去され導電線が剥き出しとされた前記接続リード線23の端部に、前記雄端子24の一端部を重ね合わせた後に、互いをかしめて圧着部25が形成される。このようにして前記接続リード線23の端部と前記雄端子とは接続されている。また、前記雄端子24は、こて先10の軸線方向に平行となるように設けられている。このように設けられることによって、後に説明する雌端子61に好適に嵌合可能となる。つまり、この嵌合によって、互いは係着されたものとなる。なお、符号26は、前記接続リード線23及び前記雄端子24同士を互いに絶縁して区分けすると共に、こて先10の軸線方向に前記雄端子24を姿勢良く突出させるために支持する第1介装部材である。
【0024】
そして、加熱装置20が内蔵されたこて先本体11には、グリップ部27が設けられる。このグリップ部27は、電気絶縁性及び耐熱性に優れた樹脂からなり略円筒状に形成されるものが組み付けられて構成されている。すなわち、前記グリップ部27は、図3(a)及び図4(a)の長さ方向からの側面図に示すように、一部が切り欠かれたように平面部27aが形成された断面を略円形状で形成されている。このように平面部27aが形成されることによって、後に説明するアウタケース51に収納する際に好適に位置決めなされると共に、このアウタケース51に収納された際に好適にアウタケース51内に保持されることとなる。また、前記グリップ部27の外周面にあっては、図3(a)及び図4(b)に示すように、手で握った場合の滑りを防止のために、周方向に複数の溝29が形成されている。
【0025】
そして、前記グリップ部27の内部には、その内部の内方に突出して前記こて先本体11を支持する突出部27bが5つ設けられている。この突出部27bの内周面は、前記こて先本体11の基端11bの近傍の外周面と密着している。このようにして、前記グリップ部27は、こて先本体11を前記グリップ部27と一体となるように保持する。また、突出部27bによって、前記こて先本体11の基端11b近傍を保持することによって、その突出部27b同士の間には、空間が形成された空気層27cとなっている。この空気層27cの空気は断熱性を有するので、このグリップ部27には、こて先本体11の熱が伝達され難いものとなっている。なお、この空気層27cは、この発明における断熱層に相当するものである。また、前記空気層27cを、若しくは前記突出部27bと空気層27cとを、適宜の断熱材に替え、この発明における断熱層としてもよい。
【0026】
さらに、このこて先10には、このグリップ部27に隣接して、端子カバー30が設けられている。この端子カバー30は、前記雄端子24を外部と絶縁することを目的として設けられるものであって、上述したグリップ部27と同様に、電気絶縁性及び耐熱性に優れた樹脂からなり円筒状に形成されるものが組み付けられて構成されている。そして、前記グリップ部27及び前記端子カバー30は、その各々に設けられた嵌合孔27d,30dに、前記第1介装部材26に設けられた突起部26a,26bを嵌め込んで連結されるものとなっている。つまり、この発明におけるグリップは、前記グリップ部27と前記端子カバー30によって構成される。従って、この発明におけるグリップの基端とは、前記端子カバー30の基端30bとなる。そして、この端子カバー30の基端30bは、後に説明するスライダ70のベースプレート71の先端71aに当接されている。なお、前記端子カバー30の基端30aは、前記グリップ部27の基端27bに当接されている。
【0027】
次に、前記こて先10が取り付けられるこて本体50について説明する。
こて本体50は、図5、図6、図7(a)及び、図7(a)における範囲Bを拡大した図7(b)に示すように、大まかに、略円筒状に形成されたアウタケース51と、前記アウタケース51に内蔵される接続装置60と、前記アウタケース51の外周に設けられるスライダ70とから構成されている。
【0028】
前記アウタケース51は、電気絶縁性及び耐熱性に優れた樹脂からなり略円筒状に形成されるものであって、半割れとなったものが組み付けられて構成されている。このアウタケース51は、先端51aが前記こて先10が出し入れ可能に開口されていると共に、空洞に構成された内部に接続装置60が設けられている。そして、基端51bには、前記コードアーマ80を係止させるための係止部52が形成されている。なお、このアウタケース51は、螺合によって半割れとされた互いが組み付けられて一体にされている。
【0029】
前記接続装置60は、雌端子61と、その雌端子61のそれぞれに接続されたリード線62とから構成されている。前記雌端子61は、前記雄端子24と嵌合可能とされる端子であって、前記雄端子24に対応して4つの雌端子が設けられている。そして、前記雄端子24と雌端子61との嵌合によって、互いは係着されるものとなっている。また、前記雌端子61のそれぞれにはリード線62が接続されている。また、このリード線62には前記コード81が接続されている。なお、前記雌端子61の外周には、この雌端子61を保護するためのカバー65が設けられている。
【0030】
そして、前記接続装置60には、これらの雌端子61及びリード線62同士を互いに絶縁して区分けすると共に、こて先10の軸線方向に前記雄端子24を姿勢良く設けて支持する第2介装部材63が設けられている。なお、この第2介装部材63の上面は、後に説明するスライダ70を好適に案内するために、平面状に形成されている。なお、前記第2介装部材63の下部には、前記バネ部材31と接する金属帯85と、前記金属帯85と接続されたアース線87とが配置されている。この金属帯85は、前記第2介装部材63と前記アウタケース51とによって固定されている。
【0031】
このアウタケース51の外周には、基端の近傍から略中央にかけて、後に説明するスライダ70を配設するための切り欠き部53が設けられている。この切り欠き部53は、このアウタケース51の軸線方向に延びて形成されるものであって、後に説明するスライダ70の幅及び長さに合わされて切り欠かれている。そして、その切り欠き部53の内方には、前記アウタケース51の内部から突出してスライダ70のスライドをガイドするガイド板54が設けられている。
【0032】
スライダ70は、ベースプレート71と、該ベースプレート71の基端側から外方に突出して形成される押出突出部72とから構成されている。このベースプレート71の上面の中間部には、先端に向かって下降した段差が形成され、前記押出突出部72の先端が前記切り欠き部53の先端縁53cに衝突することによって、スライダ70の前進はストップするように規制されている。また、前記ベースプレート71の先端71aは、前記端子カバー30の基端30bに当接されるようになっている。なお、前記ベースプレート71の下面は、平面状に形成されている。これによって、前記スライダ70は、前記ガイド板54及び第2介装部材63の上面によって好適に案内される。つまり、前記スライダ70は、こて本体先端51aに向かって前進した場合は、前記押出突出部72の先端が前記切り欠き部53の先端縁53cに衝突するまで安定的にスライド可能とされ、こて本体基端50bに向かって後退した場合は、このスライダ70の後端部70bが、前記切り欠き部53の後端縁53bに衝突するまで安定的にスライド可能とされる。
【0033】
以上のように構成された半田ごて1は、組み付けた際に、その組み付けがより確実なものとなるように、さらに、この半田ごてのグリップ性を向上させるように、前記こて本体50の外周を覆うように被せられる筒体91が設けられている。この筒体91は、ゴム材で構成されるものである。さらに、この筒体91の抜けを防止する留め具92も、前記こて本体50の先端部に取り付けられている。このように、筒体91と留め具92を設け、さらにネジ部材95に半割れとされたアウタケース51を一体にして、そして、コードアーマ80によって、この半田ごて1は確実に一体となっている。
【0034】
次に、上述の半田ごて1が奏する作用効果について、図8を参照しながら説明する。なお、図8はこて本体50からのこて先10の取り外しを段階的に示す図であって、図8(a)はこて先10がこて本体50に取り付けられている例を示し、図8(b)はスライダ70がこて先10に向かってスライドされている例を示し、図8(c)はこて先10がこて本体50から取り外された例を示している。
【0035】
すなわち、この半田ごて1は、図8(a)に示すように、交換可能とされたカートリッジ式のこて先10が、先端が開口されたこて本体50に取り付けられている。この図においては図示されてないが、このこて先10の基端側に設けられた前記雄端子24は、前記こて本体50の内部に設けられた雌端子61と嵌合されている。つまり、雄端子24は、雌端子61と好適に係着されており、この係着によって、こて先10はこて本体50から抜けないものとなって一体となっている。加えて、前記グリップ部27の外周は、こて本体50の内部に設けられた金属帯85の付勢によって、こて本体50の内周に押圧されている。これによって、グリップ部27の外周とこて本体50の内周との摩擦力が高められ、こて先10とこて本体50とをより確実な一体としている。そして、上述したように、筒体91と留め具92を設けて、さらにネジ部材95に半割れとされたアウタケース51を一体にして、そして、コードアーマ80によって、このこて本体50は、簡単でありながら安定的に組みつけられている。
【0036】
そして、前記スライダ70の押出突出部72を、こて先先端10aに向かって指で押し出すと、前記スライダ70は、前記ガイド板54及び第2介装部材63の上面によって案内されてスライドする。この際、このスライダ70を構成するベースプレート71の先端71aが、この発明のグリップ基端とされる端子カバー30の基端30bを押圧して、こて先10の先端10aに向かって前進させる。これによって、こて先10は、こて本体50から離間されるように移動する。つまり、こて先10は、こて本体50のアウタケース51から突出するように移動する。加えて、それまで前記アウタケース51に収納されていたグリップ部27も、前記アウタケース51から突出するように移動する。
【0037】
このように、前記こて先10が前記こて本体50から離間されるように移動した場合は、こて先10に設けられる雄端子24と、こて本体50内に設けられる雌端子61との係着が解除されることとなる。さらに、それまで収納されていたグリップ部27が手で掴める程度に外に現れるので、ユーザはこのグリップ部27を手で掴んで、こて先10を引き抜くことが可能となる。なお、前記グリップ部27は、上述したように、電気絶縁性及び耐熱性に優れた樹脂からなるので、たとえ、こて先10の先端10aが熱くなっていたとしても、このグリップ部27は熱くなっていないため、ユーザは、問題なくグリップ部27を掴むことができる。従って、たとえ、半田付け作業をしている場合にあっても、図8(c)に示すように、このこて先10を容易に引き抜くことができる。
【0038】
そして、引き抜かれたこて先10に替えて、新たなこて先10を前記こて本体50に差し込めば、再度、新品同様に、この半田ごてを使用することができる。なお、新たなこて先10を前記こて本体50に差し込む際は、前記雄端子24が前記雌端子61に係着されるまで押し込むことが必要である。この際、この発明のグリップ基端とされる端子カバーの基端30bが、前記スライダ70を構成するベースプレート71の先端71aを押圧して、こて本体50の基端50bに向かって後退させることとなる。
【0039】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、趣旨を逸脱しない範囲において適宜の選択が可能である。例えば、上述の実施の形態の半田ごて1にあっては、円錐状に形成されたものをこて先10の先端10aとしたが、この例に限定されることなく、適宜の形状を選択することができる。また、こて先10の取替えは、所謂半田食われが進んだ場合に行うばかりでなく、用途に応じて適宜にこて先を選択して交換してもよい。また、上述した、こて本体50の形状やスライダ70の形状にあっても、適宜の形状を選択することができる。
【0040】
さらに、前記半田ごて1にあっては、前記グリップ部27が前記アウタケース51から突出してしまうことを規制するストッパを、前記こて本体50の先端50aに設けてもよい。このようなストッパが設けられた場合には、半田付け作業中であっても、こて先10が、こて本体50から外れてしまうことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る半田ごての斜視図である。
【図2】こて先の分解斜視図である。
【図3】こて先の側断面図及び先端拡大断面図である。
【図4】グリップ部の長さ方向からの側面図及び断面方向からの側面図である。
【図5】図1の半田ごての上分解斜視図である。
【図6】図1の半田ごての下分解斜視図である。
【図7】図1の半田ごての切り欠き側面図及び一部拡大側面図である。
【図8】こて本体からのこて先の取り外しを段階的に示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 半田ごて
10 こて先
10a こて先の先端
10b こて先の基端
24 雄端子
27,30 グリップ
50 こて本体
50b こて本体の基端
61 雌端子
70 スライダ
71 ベースプレート
71a ベースプレートの先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が半田を溶融可能に構成され基端に雄端子が設けられたこて先と、前記雄端子と係着可能とされた雌端子が内蔵され前記雄端子と前記雌端子とが係着することによって前記こて先と一体とされるこて本体とを含む半田ごてであって、
前記こて先の外周に、断熱性を有し且つこて先の基端近傍を被覆するグリップを設けたことを特徴とする半田ごて。
【請求項2】
先端が半田を溶融可能に構成され基端に雄端子が設けられたこて先と、前記雄端子と係着可能とされた雌端子が内蔵され前記雄端子と前記雌端子とが係着することによって前記こて先と一体とされるこて本体とを含む半田ごてであって、
前記こて先は、断熱性を有すると共に前記こて先の基端近傍を被覆して一体となるグリップを有し、
前記こて本体は、先端が前記グリップの基端と当接するベースプレートと、前記ベースプレートと一体とされ且つ前記こて先の先端に向かって前進若しくは前記こて本体の基端に向かって後退可能とされたスライダを有し、
前記スライダを前記こて先の先端に向かって前進させた場合に、前記ベースプレートの先端が前記グリップの基端を押して、前記こて本体に対して前記こて先が移動されると共に前記雄端子と前記雌端子との係着が解除されることを特徴とする半田ごて。
【請求項3】
前記グリップと前記こて先の基端近傍との間に断熱層を設けたことを特徴とする請求項2に記載の半田ごて。
【請求項4】
前記雄端子と前記雌端子とが係着している場合は前記グリップを収納し、且つ前記こて先が前記こて本体に対して移動した場合は前記こて本体から前記グリップが突出されるように、前記こて本体のアウタケースを設定したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の半田ごて。
【請求項5】
前記アウタケースの内周に向けて前記グリップを付勢する付勢手段を、前記アウタケースの内部に設けたことを特徴とする請求項4に記載の半田ごて。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−198626(P2006−198626A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10092(P2005−10092)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000204136)太洋電機産業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】