説明

半田ショート防止用部品およびプリント基板の半田付け方法

【課題】 浸漬法によるプリント基板の自動半田付け方法において、隣接するリード間に溶融はんだが連なる所謂ブリッジ現象による半田ショートを効果的に防止する半田ショート防止用部品と、その半田付け方法を提供する。
【解決手段】 溶融はんだによるプリント基板のスルーホールへのリード付き電子部品の半田付けに用いる、リード間のブリッジ形成によるショートを防止する半田ショート防止用部品であって、平面部に貫通開口部を備える金属又は耐熱性樹脂のシート状薄板と、その貫通開口部をメッシュ形状とする仕切板とからなり、貫通開口部に設けられるメッシュ形状は、リード付き電子部品の隣接するリードが独立又は複数、且つプリント基板のスルーホールに対応するように、仕切板によってメッシュ状に区分され、その仕切板の上面がプリント基板と密着せず、且つ仕切板の厚みが0.5mm以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板を溶融はんだ槽の溶融はんだに接触させることにより、プリント基板上への各種電子部品の半田付けに際し、リード間に溶融はんだが連なる所謂ブリッジ現象を防止して半田ショートを防ぐための、半田ショート防止用部品、及びこの半田ショート防止用部品を用いた溶融はんだによるプリント基板の半田付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント基板に対する各種電子部品等の半田付け方法は、大別して鏝付け法、リフロー法および浸漬法がある。これらの中で鏝付け法は軸心に松脂を充填した半田線をプリント基板の半田付け部に当接して、その半田線を半田鏝で加熱溶融させながら半田付けを行うものであり、その生産性は極めて悪いものであるが、耐熱性に劣る電子部品を半田付けしたり、他の半田付け方法で発生した未半田や半田ショート等の半田付け不良を修正する方法としては、依然として重宝されている。
【0003】
またリフロー法は、半田粉末とペースト状フラックスによって調製された粘調性のソルダーペーストを、スクリーン印刷やディスペンサー吐出による手段によってプリント基板上の必要箇所に塗布し、その後ソルダーペーストが塗布されたプリント基板を、リフロー炉のような加熱装置において加熱することによって半田付けを行う方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このリフロー法は、選択される複数の必要箇所に同時に半田付けができるため、信頼性と生産性に優れた方法であるが、所定の半田粉末を製造するために多くの工程を要し、しかも特定の粒度の半田粉末を得るためには歩留まりが悪く、高コストとなるという問題があり、それに起因してコンピューターや携帯電話など、比較的に付加価値の高い電子機器に限って採用される半田付け方法である。
【0005】
一方、浸漬法は、自動半田付け装置を用いてプリント基板に複数の電子部品を同時に半田付けする方法であり、自動半田付け装置の噴流はんだ槽の噴流ノズルから噴流する溶融はんだに、プリント基板を接触させながら順次半田付けするため、半田自体を得るためには手間の係る加工を要さず、多数の半田付け箇所を一連の作業で半田付けするという経済性と生産性に優れた方法である。従って現在においてはテレビ、ビデオ、DVD、各種オーディオ機器、家電製品などの電子回路を構成するための、プリント基板の半田付け方法として広く採用されている。
【0006】
上記浸漬法における従来の自動半田付け装置は、例えば図11に示すようにフラクサー51、プリヒーター52、噴流はんだ槽53、冷却機56等の処理装置が順次備えられており、これらの処理装置上にプリント基板を搬送する搬送装置が設置されている。
【0007】
この自動半田付け装置50におけるプリント基板の半田付け方法は、プリント基板(図示せず)を搬送装置によって矢印方向へ搬送しながら、フラクサー51によってフラックスを塗布した後、プリヒーター52において予備加熱を施し、噴流はんだ槽53で半田付け部への溶融はんだの侵入を促し、次いで冷却機54で侵入した溶融はんだを冷却固化してろう付を完了する仕組みとなっている。この際、噴流はんだ槽53は荒波はんだ槽54と仕上げはんだ槽55のダブルウェーブはんだ槽を構成し、荒波はんだ槽54で形成されたツララや半田ショートなどの半田付け不良を、仕上げはんだ槽55における穏やかな噴流波によって修正するように構成されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
ところで、プリント基板の半田付けは、プリント基板上に形成されたスルーホールに、その表面から例えばコネクタ等の電子部品のリードを挿入して、リードとスルーホール間を半田によって接続したり、プリント基板の裏側に搭載された電子部品の電極とプリント基板のランドとを接続することによって行われるため、溶融した半田は細いスルーホールの内部や角張った電子部品の隅部にまで、十分に侵入しないと半田の付着しない未はんだ状態が生ずる。
【0009】
また、上記従来技術においても明らかなように、プリント基板に溶融した半田を付着させる噴流はんだ槽には、溶融はんだを荒れた状態で噴流させる一次噴流ノズルと、溶融はんだを穏やかな状態で噴流させる二次噴流ノズルとが設けられ、所謂ダブルウェーブはんだ槽を構成している。
【0010】
この一次噴流ノズルは強い吐出力を以ってプリント基板のスルーホールや電子部品等の隅部に溶融はんだを侵入させ、未はんだを防ぐために機能するが、一次噴流ノズルによって形成される溶融はんだの荒波は、文字通り荒れた状態で半田付け部に接触するため、半田付け部にツララやブリッジが形成される。プリント基板にツララが形成されると、その尖った先端から放電して電子機器の破壊を招くことが懸念され、また、ブリッジによる半田ショートが形成されてリード間が連なると、電子回路に短絡が生じて電子機器の機能が損なわれることがある。そこで一次噴流ノズルによって発生したツララやノズルを、上記二次噴流ノズルによる穏やかな溶融半田波によって再溶融させて除去するように構成されている。
【0011】
更に、ツララやノズルが生じた場合でも、その尖った先端からの放電による電子機器の破壊、或いはブリッジが形成されてリード間が連なることによる電子回路の短絡を防ぐ半田付け方法として、溶融はんだによる半田付け時に半田ショート防止用部品をプリント基板と半田付け冶具の間に介在させることで、ブリッジの形成による半田ショートを抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−198932号公報
【特許文献2】特許第2687218号公報
【特許文献3】特開2006−186086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このようにダブルウェーブ方式の噴流はんだ槽の開発と工程の改良、更には半田ショート形成の防止が相俟って、プリント基板における半田付け方法は著しく改善され、生産性の向上に加えて製品の信頼性も大幅に向上している。
【0014】
しかしながら、近年、高密度の集積回路用ICチップなど、多機能な電子部品の開発が著しく進化して、それらの電子部品を搭載するためのプリント基板の半田付け方法においては、リードのピッチ間隔がますます狭隘化されるなどなお改善の余地を残し、且つ煩雑な工程を重ねる半田付け方法を採用しているにも拘らず、依然として半田付不良、とりわけブリッジの発生による半田ショートについては未だ十分な防止対策が確立されておらず、手間の掛かる半田付け後の修正作業が必要不可欠となるなど、生産性の向上と品質の信頼性の確保などについては更に解決を望まれる課題が残されている。
【0015】
そこで、本発明は係る課題を解決することを所期の目的とし、簡略な手段によってブリッジの発生を防いで半田ショートを防止する半田ショート防止用部品と、その半田ショート防止用部品を用いたプリント基板の半田付け方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第一の発明は、溶融はんだを用いたプリント基板のスルーホールへのリード付き電子部品の前記リードを介する半田付けに用いられる、溶融はんだによるリード間のブリッジ形成を防ぎ、半田ショートを防止する半田ショート防止用部品において、この半田ショート防止用部品は、その平面部に貫通開口部を備える金属又は耐熱性樹脂のシート状薄板と、その貫通開口部をメッシュ形状とする仕切板とからなり、その貫通開口部に設けられるメッシュ形状は、リード付き電子部品の隣接するリードが独立または複数、且つプリント基板のスルーホールに対応するように、仕切板によってメッシュ状に区分され、この仕切板は、その上面がプリント基板と密着せず、且つ仕切板の厚みが0.5mm以上であることを特徴とするものである。
【0017】
また、この仕切板の厚みは0.5mm以上、リードの基板からの突き出し量以下で、半田ショート防止用部品はプリント基板と密着せず、且つプリント基板と1.0mm以下の隙間を形成するスペーサーを介して配置されることを特徴とし、さらに、仕切板の上面からプリント基板までの距離Hが0.0mmより大きく、すなわち隙間を有し、その隙間が1.0mm以下であることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の第二の発明は、半田付け用冶具に本発明の半田ショート防止用部品を配置し、その半田ショート防止用部品上に電子部品を配置したプリント基板を載置して、溶融はんだ槽を通過させる過程でプリント基板のスルーホールに電子部品のリードを介して各種電子部品を半田付けする方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る半田ショート防止用部品を用いるプリント基板の半田付け方法によれば、プリント基板とはんだ浴面との間に介在する本発明の半田ショート防止用部品によって、リード間に連なる溶融はんだが絶たれてブリッジの形成が未然に防止され、若しくは、半田付け後に半田ショート防止用部品を取り外すことによって、リードのピッチ間に連なって形成されたブリッジが同時に除去されるため、半田付け後の修正作業を省くことができ、生産性の向上が大きく図れる。
【0020】
また、従来から汎用されている荒波噴流はんだ槽による半田付け後、仕上げはんだ槽によるはんだ不良の修正工程を要することもなく、半田付け面に形成された半田ショートの原因となるブリッジを容易に除去できるため、プリント基板における電子回路形成の半田付けが簡略な操作によって容易に実施できる。
従って、高密度集積回路を有する各種電子部品等を搭載するプリント基板を、高い信頼性を維持しながら低価格での提供を可能とする。
【0021】
更に、本発明の半田ショート防止用部品は、汎用性の素材を用いて容易に作製することができるため、プリント基板半田付け方法における半田ショート防止用部品として安価に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による熔融はんだの半田付け作業における本発明の効果を示す図で、(a)は本発明を使用せずに半田がブリッジを形成して半田ショートを起こした場合、(b)は本発明によるブリッジ形成を防いで半田ショートを防止した場合を示す図である。
【図2】本発明の半田ショート防止用部品の一例を示す模式図で、(a)平面図、(b)はa−a線の拡大断面図、(c)はb−b線の拡大断面図、(d)はc−c線における拡大断面図である。
【図3】本発明の半田ショート防止用部品の使用方法を示す図で、(a)は一部にリード付き電子部品を載置したプリント基板/半田ショート防止用部品/半田付け用冶具からなる平面図で、(b)はd−d線における拡大断面図である。
【図4】(a)プリント基板、(b)半田ショート防止用部品、(c)半田付け用冶具の各々を示す模式平面図である。
【図5】本発明の半田ショート防止用部品の他の例を示す模式図で、(a)平面図、(b)はe−e線の拡大断面図、(c)はf−f線における拡大断面図である。
【図6】(a)から(c)は半田ショート防止用部品上面1aと仕切板11の関係を示す模式断面図である。
【図7】本発明の他の半田ショート防止用部品を示す模式図で、(a)平面図、(b)はg−g線の拡大断面図、(c)は図7(a)の半田ショート防止用部品を使用した場合のプリント基板との配置関係の説明図である。
【図8】貫通開口部のメッシュ形状の代表的な実施例を示す図である。
【図9】仕切板形状の実施形態を示す斜視外観図で、(a)矩形体、(b)凸状矩形体、(c)下向き凸曲面矩形体である。
【図10】実施例で用いた半田ショート防止用部品の使用方法を示す図で、(a)は実施例1及び実施例3、(b)は実施例2である。
【図11】浸漬法における従来の自動半田付け装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、図1(a)に示すような熔融はんだによる半田付け作業における熔融はんだのヒゲ生成による半田ショートの発生原因を調査した結果、第一に熔融はんだの流れが部品の配置などで悪くなっている部分の浸漬部分のリード間がショートすること。第二に熔融はんだの温度が下がった部分の熔融はんだに粘りが発生して浸漬部分のリード間がショートすることを見出し、完成に至ったものである。
【0024】
本発明では、熔融はんだの流れを悪くし、その温度を下げるという半田ショートを発生させる原因を助長するかのように基板から突き出た電子部品のリード間に設けられる、図1(b)に示される仕切板11によって逆に半田ショートを防止するものである。図1において、2は基板、11は仕切板、20はリード付き電子部品、aはリード間距離(リードピッチ)、hはリード21の基板からの突出し量、wは仕切板の幅である。
【0025】
本発明の半田ショート防止用部品には、熔融はんだとの濡れ性が悪い材料を用いる。
その素材としては、ステンレス鋼など耐食性金属の薄板をシート状に延伸したもの、或いはポリアミド樹脂などの耐熱性樹脂を用い、その表面にはプリント基板のスルーホールに対応してメッシュ状に加工され、プリント基板と溶融はんだ浴面との間、より具体的には、半田付け用冶具の基板面、中間層又ははんだ浴面にプリント基板と密着しない状態で、プリント基板と半田付け用冶具の間に介在し、半田付け用冶具によって固定されるものである。
なお、溶融はんだ浴面と半田ショート防止用部品との距離は、半田付けするプリント基板と電子部品との関係や溶融はんだの噴流レベルに合わせて適宜調整される。
【0026】
この際、プリント基板に搭載される電子部品のリードは、プリント基板に形成されたスルーホールに挿入され、半田ショート防止用部品の仕切板によって形成されたメッシュ形状の貫通開口部を通して溶融はんだ浴面に接触する。次いで溶融はんだ浴面の上昇に伴って溶融はんだはスルーホール内に侵入し、リードと基板のスルーホールとの半田による接続が完了すると、シート状の半田ショート防止用部品はプリント基板の裏面から容易に剥離し、リードのピッチ間に連なっていた溶融はんだによるブリッジは、仕切板の作用により同時に除去され、冷却固化が確認された後、半田付け用冶具からプリント基板を取り外すリードとプリント基板のスルーホールが、健全な形で溶着するようになる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について添付した図面に基づいて更に詳細に説明する。
図2は本発明の半田ショート防止用部品の一例を示す模式図で、(a)平面図、(b)はa−a線の拡大断面図、(c)はb−b線の拡大断面図、(d)はc−c線における拡大断面図である。図2(b)、(c)に示す仕切板11は、最大厚みtの両凸状矩形体仕切板で、図2(d)に示す仕切板11は、厚みtの矩形体仕切板である。
1は半田ショート防止用部品、10は貫通開口部、11は仕切板、12はシート状薄板、14は位置決め孔、15は貫通開口部10と仕切板11から構成されるメッシュ形状、tは仕切板11の厚み、tはシート状薄板12の板厚である。メッシュ形状15は、それぞれが対応する電子部品のリード配置に沿った形態で構成されている。
【0028】
この半田ショート防止部品1は、プリント基板に載置された複数の電子部品を同時に半田付けする時に用いる形態のものである。図3および図4を用いて、図2に示す半田ショート防止部品1の使用形態を次に説明する。
【0029】
図3は、図2に示す本発明の半田ショート防止用部品の使用方法を示す図で、(a)は一部にリード付き電子部品を載置したプリント基板/半田ショート防止用部品/半田付け用冶具からなる一部切り欠き平面図で、(b)はd−d線における拡大断面図である。
2はプリント基板、3は半田付け用冶具、40はスペーサー、44はスペーサー位置決め孔、20はリード付き電子部品、21はリード、22はプリント基板に設けられたスルーホールで、hはリード21のプリント基板2からの突き出し量である。
【0030】
この半田ショート防止用部品1を使用して電子部品20のプリント基板2への半田付けを行う場合、図3(b)で示すように半田付け用治具3上に半田ショート防止用部品1、スペーサー40を、それぞれの位置決め孔14、44に合わせて順に重ね、その上に所定位置に電子部品20を配置したプリント基板2を載せ、自動半田付け装置によってプリント基板2と電子部品20のリード21とを半田付けするものである。
【0031】
ここで、仕切板11の厚みtは、噴流する溶融はんだを的確にスルーホール22に導くために、電子部品のリード21の基板からの突き出し量h以下の厚みで、0.5mm以上の厚みとする。0.5mmより薄い場合では、必要量の溶融はんだの導出が不十分となり、満足する半田付けができず、hを超える厚みの場合には、溶融はんだの噴流を阻害する恐れがあり、同様に満足すべき半田付けができない。
【0032】
図4は、図2の半田ショート防止用部品を使用してプリント基板に電子部品を半田付けする際のそれぞれの形態を示すもので、(a)プリント基板、(b)半田ショート防止用部品、(c)半田付け用冶具の各々を示す模式平面図である。図4(c)の半田付け用冶具3には、プリント基板に載置される電子部品に対応した大きさの貫通開口部30と、半田ショート防止用部品1を載置する場合の位置決めを行う半田付け用治具位置決め孔34が設けられ、半田ショート防止用部品1の位置決め孔14と連帯して位置設定を行っている。
【0033】
図5は、本発明の半田ショート防止用部品の他の実施態様を示す模式図で、(a)平面図、(b)はe−e線の拡大断面図、(c)はf−f線の拡大断面図である。
図5(a)に示す半田ショート防止用部品1aは、単一の電子部品20をプリント基板2に半田付けする際に用いられるものである。先に図3、図4で説明した半田ショート防止用部品1と同様に、仕切板11により半田付けする電子部品20のリード21の配置に対応したメッシュ形状を有する貫通開口部10を平面部に有するシート状薄板12から構成されている。
【0034】
図5(a)の半田ショート防止用部品1aを使用して電子部品20のリード21のプリント基板2への半田付けは、図5(b)、(c)に示されるように、半田付け用治具3、半田ショート防止用部品1a、スペーサー40を、それらの位置決め孔34、14、44により位置合わせをして重ね、そのスペーサー40上に電子部品20を配置したプリント基板2を載せて半田付けを行うものである。
【0035】
図6はプリント基板2と仕切板11との関係を示す模式断面図で、仕切板上面11aとプリント基板2(プリント基板の下面2a)との距離Hは、望ましくは0mmより大きく、すなわち隙間を有し、その隙間は1.0mm以下が好ましい。
この距離Hが1.0mmを超えると、余分な溶融はんだが半田ショート防止用部品上に貯留することとなり、本発明の半田ショート防止用部品を以ってしても良好な半田付け性が得られなくなるためである。
【0036】
さらに、この距離Hの調整には、図6に示すように半田ショート防止用部品1上に適応した厚みのスペーサー40を設けて行う。このスペーサー40を用いることによって、プリント基板2はスペーサー40上に配置されることになる。また、スペーサー40がプリント基板2と接することによって、半田付け時にプリント基板下面2aに熔融はんだが回り込み付着することによる短絡の防止やプリント基板の汚れなどを防ぐ役割を担っている。
【0037】
図7は本発明の他の半田ショート防止用部品の実施態様を示す模式図で、(a)平面図、(b)はg−g線の拡大断面図、(c)は図7(a)の半田ショート防止用部品を使用した場合のプリント基板との配置関係の説明図である。図7において、1bは半田ショート防止用部品、13は凸状突起、Hはプリント基板下面と仕切板上面との距離、Lは半田ショート防止用部品とプリント基板との隙間である。
【0038】
図7の実施態様では、図7(c)でわかるように、スペーサーを用いずに半田ショート防止用部品1b上にプリント基板2を載置して半田付けを行うもので、仕切板上面11aがシート状薄板12より突出していない場合に用いるのに適している。
すなわち、図7(a)、(b)に示すシート状薄板12の上面に凸突起13を設けることで、図7(c)のようにプリント基板2と半田ショート防止用部品1bとの間に、プリント基板下面2aと仕切板上面11aとの距離Hが設定範囲となるような隙間Lが形成される。
この凸状突起13は、図7(b)のようにシート状薄板12に孔を設け、その孔に隙間Lに対応した所定の高さの頭部を有するピンを差し込む方法を採ることで種々の隙間Lに対応可能である。また、その形状は、図7(a)では半球状であるが、角柱、円柱、錐、錐台など、隙間Lが所望の値となるものであるなら良い。
【0039】
図8は、貫通開口部10を有するメッシュ形状の代表的な実施例を示す図で、15aはDIP(Dual Inline Package)やSIP(Single Inline Package)型の電子部品の半田付けに利用されるメッシュ形状、15bはPGA(Pin Grid Allay)などのpin挿入型パッケージの電子部品の半田付けに有効なメッシュ形状である。
【0040】
図9(a)から(c)は仕切板11の形状の実施例を示す斜視外観図で、(a)矩形体、(b)凸状矩形体、(c)下向き凸曲面矩形体などが挙げられるが、これらに限るものではなく、下方より噴出される溶融はんだを電子部品のリードに導出する形状であれば良い。なお、仕切板11の幅wは、電子部品のリードピッチに応じて適宜選択するが、0.05から0.3mmが望ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0042】
プリント基板2に板厚1.6mmの基材がガラス繊維から成るリジッド基板を採用し、図10(a)に示すようにプリント基板2への電子部品20の半田付けに際し、溶融はんだ浴面4と、このプリント基板1との間に介在するように、板厚が1.5mmのシート状のオーステナイト系ステンレス鋼製半田ショート防止用部品1を半田付け用冶具3によって固定した。
【0043】
図2に示す半田ショート防止用部品1の平面部には、図2に模式的に示す仕切板11と、この仕切板11によって区分けされる貫通開口部10からなるメッシュ形状15が、プリント基板2のスルーホール22に対応するようにして形成され、電子部品20のリード21は、対応するスルーホール22に挿入され、半田ショート防止用部品1の該当するメッシュ15を突き抜けて溶融はんだ浴面4に向かって突出している。
実施例1では、図9(b)に示す凸状矩形体形状の厚みtが0.7mmの仕切板11を使用し、プリント基板下面2aと仕切板上面11aとの距離Hが0.02mmとなるようにスペーサー40をプリント基板2と半田ショート防止用部品1の間に配置して調節した。
【0044】
このようにセットされたプリント基板2を、図示を省略した自動半田付け装置における搬送手段によって噴流はんだ槽上に移動し、上昇した溶融はんだ浴に浸漬してスルーホール22への溶融はんだの侵入を果たし、スルーホール22へのリード21の接合を完了する。その後自動半田付け装置における工程の流れの中で、強制的に冷却固化されたプリント基板2を半田付け用冶具3から取り外し、更に半田ショート防止用部品1を剥離すると、隣接するリード21のピッチ間において連なって形成されていたブリッジも同時に除去され、リード21のピッチ間におけるブリッジは皆無で、又、スルーホール22内においてリード21は健全な状態で半田付けされていることが確認された。
【実施例2】
【0045】
プリント基板2に板厚1.6mmの基材がガラス繊維から成るリジッド基板を採用し、図10(b)に示すようにプリント基板2への電子部品20の半田付けに際し、溶融はんだ浴面4と、このプリント基板1との間に介在するように、図7(a)に示す板厚が1.5mmのシート状のオーステナイト系ステンレス鋼製半田ショート防止用部品1を半田付け用冶具3によって固定した。
【0046】
この半田ショート防止用部品1の平面部には、図9(a)に模式的に示す仕切板11と、この仕切板11によって区分けされる貫通開口部10からなるメッシュ形状15が、プリント基板2のスルーホール22に対応するようにして形成され、電子部品20のリード21は、対応するスルーホール22に挿入され、半田ショート防止用部品1の該当するメッシュ15を突き抜けて溶融はんだ浴面4に向かって突出している。更に、プリント基板2と半田ショート防止用部品1との隙間を形成する凸状突起13が設けられている。
【0047】
実施例2では、図9(a)に示す矩形体形状の厚みtが1.0mmの仕切板11を使用し、プリント基板下面2aと仕切板上面11aとの距離Hが、0.5mmとなるような凸状突起13した。
【0048】
このようにセットされたプリント基板2を、図示を省略した自動半田付け装置における搬送手段によって噴流はんだ槽上に移動し、上昇したはんだ浴面に浸漬してスルーホール22への溶融はんだの侵入を果たし、スルーホール22へのリード21の接合を完了する。その後自動半田付け装置における工程の流れの中で、強制的に冷却固化されたプリント基板2を半田付け用冶具から取り外し、更に半田ショート防止用部品1を剥離すると、隣接するリード21のピッチ間において連なって形成されていたブリッジも同時に除去され、リード21のピッチ間におけるブリッジは皆無で、また、スルーホール22内においてリード21は健全な状態で半田付けされていることが確認された。
【実施例3】
【0049】
半田ショート防止用部品1が、板厚(t)が2.0mmのポリアミド樹脂で、仕切板11の厚みtが2.0mmであること以外は、実施例1と同じ条件で電子部品のプリント基板への半田付けを行ったところ、実施例1、2と同様に電子部品のリードのピッチ間におけるブリッジは皆無で、又スルーホール内においてリードは健全な状態で半田付けされていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上記各実施例からも明らかなように、本発明に係る半田ショート防止用部品を用いたプリント基板の半田付け方法によれば、静波状態におけるはんだ浴との接触によってプリント基板のスルーホールへのリードの半田付けが完了するので、主として荒波噴流槽における溶融はんだ粒の飛散に起因するツララが発生せず、しかもプリント基板と溶融はんだ浴面との間に介在した半田ショート防止用部品を取り外すことによって、電子部品のリードのピッチ間に連なって形成されたブリッジが同時に除去されることから、半田付け後の修正作業を省くことを可能にする。
【0051】
また、従来から汎用されている荒波噴流はんだ槽による半田付け後、仕上げはんだ槽によるはんだ不良の修正工程を要することもなく、半田付け面における半田ショートが容易に除去されるため、プリント基板における電子回路の形成のための半田付けが簡略な操作によって容易に実施できる。
従って高密度集積回路を有する各種電子部品等を搭載するプリント基板を、高い信頼性を維持しながら低価格で提供することが可能となる。
【0052】
更に、本発明のプリント基板の半田付け方法に用いられる半田ショート防止用部品は、汎用性の素材を用いて容易に作製することができるため、プリント基板の半田付け方法における半田ショート防止用部品として安価に提供することができるので、当該技術分野における半田ショート防止用部品、若しくはプリント基板の半田付け方法として幅広く採用されることが期待される。
【符号の説明】
【0053】
1、1a、1b 半田ショート防止用部品
2 プリント基板
2a プリント基板下面
3 半田付け用冶具
4 溶融はんだ浴面
10 貫通開口部
11 仕切板
11a 仕切板上面
12 シート状薄板
13 凸状突起
14 (半田ショート防止用部品)位置決め孔
15、15a、15b 貫通開口部と仕切板から構成されるメッシュ形状
20 リード付き電子部品
21 リード
22 スルーホール
30 貫通開口部
34 半田付け治具位置決め孔
40 スペーサー
44 スペーサー位置決め孔
50 自動半田付け装置
51 フラクサー
52 プリヒーター
53 噴流はんだ槽
54 荒波はんだ槽
55 仕上はんだ槽
56 冷却機

a リード間距離(リードピッチ)
リード21の基板からの突出し量
仕切板の幅
仕切板11の厚み
シート状薄板12の板厚
H プリント基板下面と仕切板上面との距離
L 半田ショート防止用部品とプリント基板との隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融はんだを用いたプリント基板のスルーホールへのリード付き電子部品の前記リードを介する半田付けに用いられる、溶融はんだによるリード間のブリッジ形成によるショートを防止する半田ショート防止用部品において、
前記半田ショート防止用部品は、
平面部に貫通開口部を備える金属又は耐熱性樹脂のシート状薄板と、
前記貫通開口部をメッシュ形状とする仕切板とからなり、
前記貫通開口部に設けられるメッシュ形状は、前記リード付き電子部品の隣接するリードが独立又は複数、且つ前記プリント基板のスルーホールに対応するように、前記仕切板によってメッシュ状に区分され、
前記仕切板は、前記仕切板の上面が前記プリント基板と密着せず、且つ仕切板の厚みが0.5mm以上であることを特徴とする半田ショート防止用部品。
【請求項2】
前記仕切板の厚みが、0.5mm以上、前記リードの基板からの突き出し量以下であることを特徴とする請求項1記載の半田ショート防止用部品。
【請求項3】
前記半田ショート防止用部品が、前記プリント基板と密着せず、且つ前記プリント基板と1.0mm以下の隙間を形成するスペーサーを介して配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の半田ショート防止用部品。
【請求項4】
前記仕切板の上面から前記プリント基板までの距離Hが、0.0mmより大きく、1.0mm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半田ショート防止用部品。
【請求項5】
半田付け用冶具に半田ショート防止用部品を配置し、前記半田ショート防止用部品上に電子部品を配置したプリント基板を載置して、溶融はんだ槽を通過させる過程で前記プリント基板のスルーホールに電子部品のリードを介して各種電子部品を半田付けする方法において、
前記半田ショート防止用部品が、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半田付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−233850(P2011−233850A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112602(P2010−112602)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(597165685)株式会社イトー (3)
【出願人】(505002129)株式会社 トーヤ (2)
【Fターム(参考)】