説明

半硬質磁性粉および半硬質ボンド磁石

【課題】トルクリミッター等のヒステリシス発生装置に使用した場合に十分なトルクを得ることができる半硬質ボンド磁石を提供する。
【解決手段】半硬質ボンド磁石の磁性粉として、
化学式:Fe100-a-b-c-d−Ra−Bb−Tic−Nbd
但し、a:2.0〜3.5 at%、
b:6.0〜9.0 at%、
c:0.5〜1.5 at%、
d:0〜1.5 at%
で示される組成になり、保磁力(iHc)が8.0〜160.0 kA/m、残留磁束密度(Br)が 1.0〜1.5Tである磁性粉を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適度の保磁力と高い残留磁束密度を有する半硬質磁性粉およびそれを用いた半硬質ボンド磁石に関するものである。
本発明の半硬質ボンド磁石は、トルクが強く、特に異形状対応可能なトルクリミッターやダンパー、ショックアブソーバー、テンショナー、ブレーキおよびアクセルペダル等に要求される非接触式のヒステリシス発生装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トルクリミッターとして、例えば図1に示すように、内側に金属製のヒステリシス板1を配設した円筒状のケーシング2内に、回転軸3を挿通した焼結磁石4を回転可能に装着した構造のものが知られている。
【0003】
しかしながら、上記の構造になるトルクリミッターは、金属製のヒステリシス板が不可欠であり、部品点数や組立工数が多くなるため、コストアップを招くという問題があった。また、部品点数や組立工数が多くなると、寸法誤差が生じ易くなるため、ヒステリシス板と焼結磁石との間のクリアランスを大きくする必要があるが、クリアランスを大きくすると、ヒステリシストルクにバラツキを生じるばかりでなく、装置の大型化を余儀なくされるところに問題があった。
【0004】
上記の問題を解決するものとして、従来の金属製ヒステリシス板を配設した円筒状ケーシングに代えて、図2に示すように、円筒状の半硬質プラスチックマグネット5を用いる構造のものが提案された(例えば特許文献1)。
【0005】
この特許文献1では、半硬質プラスチックマグネットとして、総重量に対して75〜95重量%の鋳造磁石粉体と、3〜20重量%の樹脂バインダーと、0.1〜5重量%の滑り剤と、0.5〜3重量%のカップリング剤とからなり、保磁力(He)が100〜1100エルステッド、残留磁束密度(Br)が1000〜10000ガウスのものを推奨している。
【0006】
また、上記の鋳造磁石粉体に代えて、保磁力(He)が100〜1100エルステッドの酸化物磁性粉(フェライト粉末)を用いたヒステリシスボンド磁石も提案されている(例えば特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】特開2000−243613号公報
【特許文献2】特開2005−12047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示の半硬質プラスチックマグネットの開発により、ヒステリシストルクの安定化および装置の小型化については目的が達成されたものの、この半硬質プラスチックマグネットは、磁性粉として、鋳造磁石を粉砕した粉体を使用するため、粒度分布が大きく、また粒形が鋭角的で不揃いの凹凸状であるため、流動性が悪く成形が困難なところに問題を残していた。
また、上記の鋳造磁石粉体を用いた半硬質プラスチックマグネットは、その残留磁束密度が十分とは言えず、トルクリミッター等の用途に使用した場合に十分なトルクが得難いため、その利用範囲は限定的であった。
【0009】
この点は、特許文献2に開示の酸化物磁性粉(フェライト粉末)を用いたヒステリシスボンド磁石も同様で、やはり十分な残留磁束密度が得られないため、トルクリミッター等の用途に使用した場合に十分なトルクを得ることができなかった。
【0010】
本発明は、上記の実情に鑑み開発されたもので、トルクリミッター等の用途に使用した場合に十分なトルクを得ることができる半硬質ボンド磁石を、その素材である半硬質磁性粉と共に提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
さて、発明者らは、まず、トルクリミッター等の用途に使用した場合に十分なトルクを得ることができる半硬質磁性粉の特性について調査した。
その結果、保磁力(iHc)が8.0〜160.0 kA/mで、かつ残留磁束密度(Br)が1.0〜1.5Tとすることが有用であることが判明した。
【0012】
そこで、次に、上記の特性が得られる磁石組成について検討を重ねた。
前記した鋳造磁石粉体(アルニコ磁石)や酸化物磁性粉(フェライト粉末)の他に、半硬質磁石の代表的なものとして鉄−クロム−コバルト磁石が知られているが、この磁石は剛性が高いため加工し難く、その厚みは加工できる厚みに限定されることから、磁石側からの磁束をもれなく利用することは困難なため、十分なトルクを得ることはできなかった。また、この磁石は、加工後に熱処理を必要とするが、その温度管理が難しいため、ばらつきが発生し易いだけでなく、エネルギーコストが高いという点にも問題を残していた。
【0013】
そこで、発明者らは、新たに、上記の特性を達成できる磁性粉を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、半硬質ボンド磁石の素材である磁性粉としては、希土類元素、ボロンおよびチタンの3つの元素を基本構成成分とするものが有効であり、かかる磁性粉を適量のバインダー樹脂と混合したボンド磁石は、トルクリミッター等の半硬質材料として利用した場合に、極めて高いトルクを発現させ得ることの新規知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0014】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.化学式:Fe100-a-b-c-d−Ra−Bb−Tic−Nbd
但し、a:2.0〜3.5 at%、
b:6.0〜9.0 at%、
c:0.5〜1.5 at%、
d:0〜1.5 at%
で示される組成になり、保磁力(iHc)が8.0〜160.0 kA/m、残留磁束密度(Br)が 1.0〜1.5Tであることを特徴とする半硬質磁性粉。
【0015】
2.前記R(希土類元素)がネオジムまたはプラセオジウムであること特徴とする上記1記載の半硬質磁性粉。
【0016】
3.上記1または2に記載の半硬質磁性粉:50〜75体積%に対し、バインダー樹脂を50〜25体積%配合したことを特徴とする半硬質ボンド磁石。
【0017】
4.前記半硬質磁性粉と前記バインダー樹脂中に、さらに滑剤:0.1〜5体積%およびカップリング剤:0.5〜3体積%を配合してなる上記3記載の半硬質ボンド磁石。
【0018】
5.ボンド磁石の配向が等方性であることを特徴とする上記3または4記載の半硬質ボンド磁石
【0019】
6.ボンド磁石の形状が、円筒状または円盤状または板状であることを特徴とする上記3〜5のいずれかに記載の半硬質ボンド磁石。
【発明の効果】
【0020】
本発明の半硬質ボンド磁石は、固有保持力が適切な領域にあり、併せて残留磁束密度が大きいので大きなヒステリシストルクを得ることができる。
また、半硬質磁粉とバインダー樹脂を基本構成成分とするので、適切な成形方法により異形の最適な形状に調節できるため、ハウジングを兼用することができ、その結果、安価にトルクリミッター、ダンパー、ショックアブソーバー、テンショナー、ブレーキ、クラッチおよびアクセルペダル等のヒステリシス発生装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体的に説明する。
前述したとおり、トルクリミッター等のヒステリシス発生装置としては、適度の保磁力と高い残留磁束密度を有することが求められている。
ここに、適正な保磁力は、共に使用される軸側の永久磁石等の残留磁束密度にも依存するので、一概には言えないものの、一般に、保磁力が8.0 kA/m(100エルステッド)に満たないと、例えばトルクリミッター用に用いた場合に十分なヒステリシストルクが得られず、一方160.0 kA/m(2000エルステッド)を超えると、例えば、ヒステリシスボンド磁石とともに用いられる磁石の残留磁束密度が小さい場合に、コギングが生じる場合があり、スムーズなヒステリシストルクが得られないことがある。
【0022】
また、残留磁束密度(Br)が1.0Tに満たないと、アルニコや鉄−クロム−コバルト磁石などの既存の磁石と大差なく、十分なヒステリシストルクが得られない。なお、上限は特に限定されないが、工業的には1.5T程度とするのが好ましい。
【0023】
そこで、本発明では、保磁力(iHc)が8.0〜160.0 kA/mで、残留磁束密度(Br)が 1.0〜1.5Tの特性を目標として、半硬質磁性粉の開発と取り組んだところ、前述したとおり
化学式:Fe100-a-b-c-d−Ra−Bb−Tic−Nbd
但し、a:2.0〜3.5 at%、
b:6.0〜9.0 at%、
c:0.5〜1.5 at%、
d:0〜1.5 at%
で示される組成に到達したのである。
【0024】
ここに、希土類元素(R)の含有量が2.0at%に満たないと、残留磁束密度(Br)が1.0Tに届かないため所望のトルクが得られず、一方3.5 at%を超えると、保磁力(iHc)が 160.0 kA/mを超え、共に使用される軸側の磁石によってはコギングが発生したり、十分なトルクが得られないという不利が生じる。
かかる希土類元素としては、従来公知のものいずれもが使用できるが、中でもネオジムやプラセオジウムは高い残留磁束密度(Br)を得る上で有利である。これらは、単独でまたは必要に応じ2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
また、ボロン(B)の含有量が6.0at%に満たないと保磁力の値が小さくなり、一方8.0at%を超えると残留磁束密度が低下するという不利が生じる。
【0026】
同様に、チタン(Ti)の含有量が0.5 at%に満たないと保磁力の値が小さくなり、一方1.5 at%を超えると残留磁束密度が低下するという不利が生じる。
【0027】
なお、ニオブ(Nb)は、必ずしも必要ではないが、このニオブは保磁力向上に役立つ点で有用であるので、必要に応じて添加することができる。しかしながら、Nb含有量が1.5 at%を超えると残留磁束密度が低下するという不利が生じる。
【0028】
上記した磁粉とバインダー樹脂の比率は、特に限定されるものではないが、磁性粉:50〜75体積%に対し、バインダー樹脂を50〜25体積%程度とするのが好適である。
というのは、磁粉が50体積%未満の場合は実用に耐える十分なトルクを得難く、一方75体積%を超えると成型時の流動性が劣悪となり、成形品にウエルドラインが発生して機械的強度の大幅な低下を惹き起こしたり、良好半硬質ボンド磁石をつくることができない。
【0029】
半硬質磁性粉の平均粒径は、特に限定されるものではないが1〜100μm 程度とするのが適当である。というのは、平均粒径が1μm 未満の場合は成型し難くなり、一方100μmを超えると成形表面の肌荒れや大粒子の形成面からの脱落が懸念されるからである。
【0030】
また、本発明に用いられるバインダー樹脂としては、既に知られたものが使用でき、それらには、ポリアミド12、芳香環を含む芳香族ポリアミドなどのポリアミド系樹脂、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどを単独または共重合したポリオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、塩素化ポリエチレン(CPE)樹脂、液晶樹脂、フェノール系樹脂、熱可塑ポリイミド樹脂、アクリロニトリルブタジエンなどのゴム等を使用でき、これらを単独でまたは必要により2種以上混合して用いることができる。これらの中でも、ポリアミド樹脂、PPS樹脂、液晶樹脂、熱可塑ポリイミド樹脂がとりわけ好適である。
【0031】
また、本発明の半硬質ボンド磁石は、必要に応じて、滑剤およびカップリング剤を含有することができる。
滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、エチレンビスアミド(EBS)、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等のワックス類等が挙げられ、これらは単独でまたは必要に応じ組み合わせて用いることができる。
【0032】
また、カップリング剤としては、シラン系カップリング剤およびチタネート系カップリング剤等が好適であり、これらのうちから選んだ1種または2種以上を磁性粉の種類やバインダー樹脂の種類に応じて適宜選択して使用することができる。
【0033】
これら滑剤およびカップリング剤の添加量は特に規定するものではないが、通常、磁性粉と前記バインダー樹脂の合計量に対して、滑剤:0.1〜5体積%およびカップリング剤:0.5〜3体積%程度低下するのが好適である。
滑剤が0.1体積%未満では、金型からの離型が困難となる場合があり、生産性が低下してコストアップを招いたり、離型時に成形品の表面がえぐり取られることがあり、この場合には該部分から機械的強度の低下およびヒステリシストルクの低下をもたらす場合がある。一方、5体積%を超えると成形品表面からのブリードを惹き起こしたり、機械的強度の低下をもたらす場合がある。
また、カップリング剤が0.5体積%未満では、加工時の流動性不良に起因した加工不良が生じ、一方3体積%を超えると熱分解によるガス発生に起因したボイドの発生および機械強度の低下が懸念される。
【0034】
その他、本発明の半硬質ボンド磁石には、必要に応じて、通常使用される可塑剤、抗酸化剤、安定剤等を含有させても差し支えない。
【0035】
本発明の半硬質ボンド磁石は、上記の如き組成物を射出成形、押出成形等により、円筒状、円盤状および板状等、所望の形状に適宜成形することができる。
【0036】
上記の如くして得られる本発明の半硬質ボンド磁石は、トルクリミッター、ダンパー、ショックアブソーバー、テンショナー、ブレーキ、クラッチおよびアクセルペダル等のヒステリシス発生装置を提供できるものとして有用である。
【0037】
なお、本発明の半硬質ボンド磁石と共にヒステリシス発生装置を構成する軸側の磁石としては、通常、永久磁石が用いられ、焼結磁石、ボンド磁石のいずれでもよい。しかしながら、焼結磁石は、寸法精度に劣るという問題がある。この点、ボンド磁石は上記のような問題がなく、また成形性や寸法精度に優れ、さらには割れや欠けが発生し難いという点でも有利である。
【0038】
このようなボンド磁石の磁性粉としては、フェライト系磁性粉をはじめとして、サマリュウム−コバルト系磁性粉、ネオジム−鉄−ボロン系磁性粉、サマリュウム−鉄−窒素系磁性粉等の希土類系磁性粉など、従来公知の異方化永久磁性粉いずれもが使用できる。また、これらは、単独でも2種以上複合して使用することもできる。
このときのバインダー樹脂としては、本発明の半硬質ボンド磁石と同じものを用いることができる。配合割合は磁性粉が40〜70体積%、バインダー樹脂が60〜30体積%程度とすることが好ましい。磁性粉が40体積%未満では十分な磁気特性が得られず、一方70体積%を超えると成形性の悪化を招く。
【0039】
なお、本発明に従う半硬質ボンド磁石をヒステリシス発生装置として使用する場合には、前掲図2に示した、円筒状の半硬質プラスチックマグネット5に代えて用いればよい。
【実施例】
【0040】
実施例1
半硬質磁性粉としては、組成がFe87−Nd3−B8−Ti1−Nb1で、保磁力(iHc)が88 kA/m(1100エルステッド)、残留磁束密度(Br)が1.44Tの粉体(平均粒径が40μm)を用いた。
この半硬質磁性粉:69体積%と、バインダー樹脂としてポリアミド12:30体積%、滑剤としてステアリン酸鉛およびカップリング剤としてビニルトリクロルシランを、それぞれ0.5体積%および0.5体積%混合した磁石組成物を、射出成形により、円筒状(内径:16mm、外径:18mm、長さ:20mm)の半硬質ボンド磁石に成形した。得られた半硬質ボンド磁石の特性値を表1に示す。
かくして得られた半硬質ボンド磁石を、図2に示したようなトルクリミッターに組み込んだ際のヒステリシストルクについて測定した値を、表1に併記する。
なお、軸側の永久磁石としては、(BH)max が88 kJ/m3(11 MGOe)で、iHc が640 kA/m(8000 Oe)のネオジムボンド磁石を用いた。また、着磁した磁極数は、図2(b)に示すように12とした。
【0041】
比較例1
厚み:0.6 mmの鉄−クロム−コバルト半硬質磁石板を、内径が16mmとなるようにポリアミド66で作製されたケースに入れ、図1に示したようなトルクリミッターに組み込んだ際のヒステリシストルクを、実施例1と同様にして測定した
得られた結果を表1に比較して示す。
【0042】
比較例2
実施例1のネオジ系の半硬質ボンド磁石に代えて、表1に示すような特性値になるアルミナ鋳造半硬質ボンド磁石を、図2に示したようなトルクリミッターに組み込んだ際のヒステリシストルクを、実施例1と同様にして測定した
得られた結果を表1に比較して示す。
【0043】
比較例3
実施例1のネオジ系の半硬質ボンド磁石に代えて、表1に示すような特性値になるフェライト半硬質ボンド磁石を、図2に示したようなトルクリミッターに組み込んだ際のヒステリシストルクを、実施例1と同様にして測定した
得られた結果を表1に比較して示す。
【0044】
【表1】

【0045】
同表に示したとおり、本発明に従うネオジ系の半硬質ボンド磁石を用いた場合には、従来の磁石を用いた場合に比べて、高いヒステリシストルクを得ることができた。
【0046】
実施例2
半硬質磁性粉としては、組成がFe89−Pr3−B7−Ti1で、保磁力(iHc)が72 kA/m(900エルステッド)、残留磁束密度(Br)が1.35Tの粉体(平均粒径が60μm)を用いた。
この半硬質磁性粉:68体積%と、バインダー樹脂としてポリアミド12:31体積%、滑剤としてステアリン酸鉛およびカップリング剤としてビニルトリクロルシランを、それぞれ0.5体積%および0.5体積%混合した磁石組成物を、射出成形により、円筒状(内径:16mm、外径:18mm、長さ:20mm)の半硬質ボンド磁石に成形した。
かくして得られた半硬質ボンド磁石を、図2に示したようなトルクリミッターに組み込んだ際のヒステリシストルクについて測定した値を、表2に併記する。
なお、軸側の永久磁石としては、実施例1と同じものを用いた。
【0047】
比較例4
半硬質磁性粉として、組成がFe91−Pr1−B7−Ti1で、保磁力(iHc)が7 kA/m(88エルステッド)、残留磁束密度(Br)が0.9Tの粉体(平均粒径が50μm)を用いた以外は、実施例2と同様にして、半硬質ボンド磁石に成形した。
かくして得られた半硬質ボンド磁石を、図2に示したようなトルクリミッターに組み込んだ際のヒステリシストルクを、実施例2と同様にして測定した
得られた結果を表2に比較して示す。
【0048】
【表2】

【0049】
同表に示したとおり、ネオジ系の半硬質ボンド磁石であっても、本発明の成分組成および特性値を満足しない磁性粉を用いた場合(比較例4)には、本発明の場合(実施例2)ほど高いヒステリシストルクを得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上述したとおり、本発明の半硬質ボンド磁石は、安価で安全性に富み、高トルクのトルクリミッター、ダンパー、ショックアブソーバー、クラッチおよびアクセルペダル等のヒステリシス発生装置用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】金属製のヒステリシス板を用いた従来のトルクリミッターを示す概略断面図である。
【図2】円筒状の半硬質プラスチックマグネットを用いたトルクリミッターを示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ヒステリシス板
2 ケーシング
3 回転軸
4 焼結磁石
5 半硬質プラスチックマグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式:Fe100-a-b-c-d−Ra−Bb−Tic−Nbd
但し、a:2.0〜3.5 at%、
b:6.0〜9.0 at%、
c:0.5〜1.5 at%、
d:0〜1.5 at%
で示される組成になり、保磁力(iHc)が8.0〜160.0 kA/m、残留磁束密度(Br)が 1.0〜1.5Tであることを特徴とする半硬質磁性粉。
【請求項2】
前記R(希土類元素)がネオジムまたはプラセオジウムであること特徴とする請求項1記載の半硬質磁性粉。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半硬質磁性粉:50〜75体積%に対し、バインダー樹脂を50〜25体積%配合したことを特徴とする半硬質ボンド磁石。
【請求項4】
前記半硬質磁性粉と前記バインダー樹脂中に、さらに滑剤:0.1〜5体積%およびカップリング剤:0.5〜3体積%を配合してなる請求項3記載の半硬質ボンド磁石。
【請求項5】
ボンド磁石の配向が等方性であることを特徴とする請求項3または4記載の半硬質ボンド磁石
【請求項6】
ボンド磁石の形状が、円筒状または円盤状または板状であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の半硬質ボンド磁石。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−41916(P2008−41916A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213927(P2006−213927)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(801000027)学校法人明治大学 (161)
【出願人】(391029392)中川特殊鋼株式会社 (9)
【Fターム(参考)】