説明

半絶縁性のIII族メタルナイトライドおよびその製造方法

【課題】エレクトロニクス製品、および/または、オプトエレクトロニクス製品に利用するGaNデバイスを加工する基板として、大きく、高純度で、低コストの単結晶半絶縁性のガリウムナイトライドを提供する。
【解決手段】およそ5ミリメーターよりも長い結晶構造の基板部材と、他の結晶構造を実質的に保有しない特徴のウルツ鉱型構造と、前記他の結晶構造の体積は、ウルツ鉱型構造の体積のおよそ1%以下であって、不純物濃度がおよそ1015 cm-1よりも大きいLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、F、Clの少なくとも一つであって、およそ107Ω-cmよりも大きい電気抵抗であることを特徴とする結晶構造を含むガリウムナイトライド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年3月11日に出願された米国特許出願
番号61/313、112である半絶縁性のIII族メタルナイトライド、および、その製造方法の優先権を、享受するものである。
【0002】
本発明は、一般的な結晶成長のための、マテリアルのプロセスに関連する。詳細には、本発明は、半絶縁性のガリウムが含まれるナイトライド結晶を、アンモノ塩基、あるいは、アンモノ酸技術で合成したものである。本発明は、他の結晶・物質と多結晶のナイトライド物質との適切な合成方法を、提供するものである。
【0003】
このような結晶・物質には、特に限定されないが、GaN、AlN、InN、InGaN、AlGaN、および、AlInGaNが含まれる。そして、これらは、バルク、あるいは、パターン基板の生成に用いられる。このようなバルク、あるいは、パターン基板は、光電子デバイス、レーザー、発光ダイオード、ソーラーセル、光電気化学的な水分解・水素発生、光センサー、集積回路、および、トランジスタを含む多くのバラエティーに富む製品に用いることができる。
【背景技術】
【0004】
結晶構造の物質を含むガリウムナイトライドは、たとえば、青色発光ダイオードやレーザーなどのような、従来型の光電子デバイスを製造するための基板として用いられる。このような光電子デバイスは、一般的にサファイヤやシリコンカーバイド基板の上に作製され、これらの基板は、蒸着されたナイトライド層との組成とは異なっている。
【0005】
一般的な金属有機化学蒸着(MOCVD)法では、GaNの蒸着は、アンモニアと気化した有機金属化合物によって、処理が行なわれる。このよう従来の方法はそれなりの成果を上げてきたが、従来の成長処理レートでは、GaN物質のバルク層を製作することは難しかった。加えて、従来の方法では、転位密度も高く、光電子デバイスのパフォーマンスを下げる要因になっていた。
【0006】
バルクガリウムナイトライドからなる、高品質の基板は、商業的に利用可能であるが、ほとんどの場合、これらの基板は、電気導電性を有する。多くのケースでは、絶縁性の基板、あるいは、半絶縁性の基板が必要とされる。加えて、バルクガリウムナイトライド基板は、一般的に高価で、かつ、直径2インチ以上の基板は、c面配向でのみ利用できる。
【0007】
何人かのこの分野の技術者が、メタルディープアクセプタのドーパンを遷移する添加物を開示してきた。このようなものとして、たとえば、Mn、Fe、Co、Ni、Cuや他の物質を、ガリウムナイトライド中でドナーのスピーシーズを補い、半絶縁性の特徴をガリウムナイトライドに与えるものがある。たとえば、MonemarとLagerstedtは、FeやCrを、水素化物気相成長(HVPE)によって成長したGaNへ加え、高抵抗の結晶を得ていた(J. Appl. Phys. 50、6480 (1979))。Heikmanらは、Feを、有機金属化学気相成長法
(MOCVD)で成長させたGaNフィルムの中に注入し、同様に半絶縁性の特徴を得ていた(Appl.Phys.Lett.81、439(2002))。一般的に、これらの技術では、高い品質の独立したバルクGaNウエハを得ることができなかった。
【0008】
Porowskiらが取得した米国特許番号6273948には、ガリウムとII族金属の溶融混合物中の原子状窒素の溶液から結晶化された、高抵抗のGaNバルク結晶の製造方法が記載されている。ガリウムとII族金属には、たとえば、およそ0.5から2.0GPaの高い圧力下で、1300から1700℃の高温のベリリウム、あるいは、カルシウムがある。これにより、104から108Ωcm(ohm cm)の抵抗が可能となった。このプロセスから得られた結晶は、ほとんどの商業的電気機器で、基板サイズとして少なくとも直径が2インチ(>5 cm) 要求されているところ、およそ1cmの大きさであった。
【0009】
Vaudoらが取得した米国特許7170095には、相対的に高い品質の結晶で生成された独立のGaN結晶をドープするために、改善されたHVPE法が開示されている。このHVPE技術は、しかしながら、一般的で高価なバルクGaN結晶を生成するものではある。D’Evelynらが取得した米国特許7078731には、半絶縁性のGaN結晶を合成するためのアンモノサーマル法を開示している。たとえば、これらの方法には、Fe、あるいは、Coによるドーピングがある。Feがドープされた、あるいは、CoがドーピングされたGaN結晶は、個々に透明で無色というよりか、赤みを帯びた、琥珀色、あるいは、黒みを帯びている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであって、必要とされることは、透明、無色で、かつ、高い結晶品質を有する半絶縁性のナイトライド物質の低コストでの製造方法である。
【0011】
以下に、本発明の目的を達成するための手段を例示する。
【0012】
本発明は、特に制限されないが、結晶構造を含むガリウムナイトライドであって、およそ5ミリメーターよりも長い結晶構造の基板部材と、他の結晶構造を実質的に保有しない特徴のウルツ鉱型構造とを有する。そして、他の結晶構造の体積は、ウルツ鉱型構造の体積のおよそ1%以下であって、不純物濃度がおよそ1015 cm-1よりも大きいLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、F、Clの少なくとも一つであって、およそ107 Ω-cmよりも大きい電気抵抗である。
【発明の効果】
【0013】
ハイクオリティの半絶縁性の透明ガリウムナイトライド、メタルナイトライド結晶、または、ウエハーを、低コストに製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を、図面に基づき説明する。本発明の明細書および請求項にて記載された記述について、定量的に表現されたいかなる内容も、関連する基礎的な機能を変更しない限り、いかなる修正をも施すことができる。つまり、「およそ」などの用語で規定された数値は、正確に特定された数値に限定されるものではない。
【0015】
少なくとも一つの例として、「およそ」などの用語で規定された場合の差異は、測定器具の正確さを考慮に入れて定めることができる。同様に、「無い」という用語が加わった場合は、極わずかな数値や、あるいは、微量が含まれ、明確に他のものが言及されていない限り、修正された用語は自由に規定されることができる。
【0016】
メタルナイトライド金属には、III族金属が含まれる。適切な金属は、アルミニュウム、ガリウム、インジウムなどが含まれる。メタルナイトライドにおける「一つ以上の」という用語と金属との組み合わせは、たとえば、アルミニウムガリウムナイトライド(AlGaN)などの合成物が含まれる。ここで、用いられている「ガリウムナイトライド」という用語は、メタルナイトライドの実例として用いられているが、他のIII族メタルナイトライドなども、含ませることが可能と理解される。
【0017】
メタルナイトライドの合成物には、不純物も含まれる。ここで用いられている、「不純物」という用語は、III族メタルナイトライドとはっきりと異なり、単結晶、あるいは、多結晶のメタルナイトライドの主要な合成物から構成される、化学的な種を意味する。不純物のいくつかの種類は、化学的性質、原子構造、目的、効果から区別することができる。不純物は、一般的に、窒素、アルミニウム、ガリウム、インジウムとは異なり、酸素、カーボン、ハロゲン、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、主要なブロック元素などが含まれる。不純物は、原子構造が異なる、いくつかの形式で表現される。
【0018】
多くの場合、不純物は、遊離原子、あるいは、イオンとして表現され、たとえば、置換型の、あるいは、置換型のIII族メタルナイトライドの結晶格子の範囲内である。他の例では、不純物は、はっきりと異なる状態で示され、たとえば、III族メタルナイトライドグレイン、あるいは、III族メタルナイトライドのグレインバウンダリーの範囲内の含有物となる。不純物は、何らかの方法でIII族メタルナイトライドの物質を増進するために、意図的に加えられ、あるいは、意図的ではなく加えられることもある。最後に、不純物は、III族メタルナイトライドの電気的に、結晶的に、化学的に、あるいは、力学的性質に非常に大きな影響を与える場合もあり得る。
【0019】
ここで、そして、一般的な技術用語で用いられている「ドーパント」という用語は、不純物を自動的にIII族メタルナイトライド内に分散させ、たとえば、置換型の、あるいは、侵入型の不純物として、意図的に添加される典型的なものとして使用している。ドーパント、あるいは、ドーパントの前駆体(特に示唆がない限り「ドーパント」という。)に関して、III族メタルナイトライド構成の電気的性質は、一つ、あるいは、それ以上のドーパントを、処理中に上述の合成物に加えることによって制御される。
【0020】
このドーパントは、同様に、磁気的、および/または、発光性質を、III族メタルナイトライド構造に与える。適切なドーパントは、一つ以上のs-ブロック元素、あるいは、p-ブロック元素を含み、遷移金属元素、レアアース元素を含む。適切なs-ブロック元素、あるいは、p-ブロック元素は、たとえば、シリコン、ゲルマニウム、マグネシウム、錫を含む。他の適切なドーパントは、遷移グループ成分が含まれる。適切な遷移グループ成分には、たとえば、亜鉛、鉄、コバルトがある。適切なドーパントは、n型物質、p型物質、あるいは、半絶縁性物質がある。いくつかの実施形態において、酸素は、意図的、あるいは、意図的ではなく加えられた場合に関わらず、ドーパントとして作用する。
【0021】
単結晶、あるいは、多結晶における適切なドーパントの濃度レベルは、およそ1010atoms/cm3よりも大きい場合がある。ある実施例において、ドーパントの濃度は、およそ1010atoms/cm3から1015atoms/cm3のレンジ、およそ1015atoms/cm3から1016atoms/cm3のレンジ、およそ1016atoms/cm3から1017atoms/cm3のレンジ、およそ1017atoms/cm3から1018atoms/cm3のレンジ、およそ1018atoms/cm3から1021atoms/cm3のレンジ、およそ1021atoms/cm3よりも大きい。
【0022】
ここで用いられている、「ゲッター」という用語は、意図的に加えられた不純物で、より高い化学親和力を不要な不純物のために持つものである。たとえば、酸素があり、合成の主要な金属成分として、ガリウムがある。ゲッターは、多結晶のIII族メタルナイトライドに含有物として取り込まれ、たとえば、メタルナイトライド、メタルハロゲン化合物、金属酸化物、金属・酸化ハロゲン化合物、金属・酸化ナイトライドとなる。
【0023】
適切なゲッターの例としては、アルカリ土類金属、スカンジウム、チタニウム、バナジウム、クロミウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオビウム、レアアースメタル、ハフニウム、タンタル、タングステン、そしてそれらのナイトライド、ハロゲン化合物がある。いくつかの実施形態において、ゲッター不純物は、ゲッター、および、ドーパントとして作用し、このようなものとして、たとえば、マグネシウムがある。他の例では、ゲッター不純物原子は、より大きな原子、あるいは、ガリウムよりも大きな共有結合性の直径を有し、ドーパントとして取り込まれず、III族メタルナイトライドの電気的特性に大きな影響を与える十分なレベルとなって、大部分、あるいは、限定された部分がゲッターとして機能する。
【0024】
このゲッターは、多結晶のIII族メタルナイトライドの中に100ppmよりも大きなレベルで存在し、およそ100ppmから200ppm、およそ200ppmから500ppm、およそ500ppmから0.1%、およそ0.1%から0.2%、およそ0.2%から0.5%、およそ0.5%から2%、およそ2%から10%、あるいは、10%以上以上存在する。「ppm」、および、「%」は、特に言及がない場合は、重量に対する値として用いられる。
【0025】
他の場合には、不純物は、意図的ではなく、および/または、不要な添加物として、多結晶のIII族メタルナイトライド中に存在し、たとえば、処理および取り扱いに起因して生じる。他の意図的ではない不純物は、原材料中の混入物質によって生じる。多くの意図しない不純物は、選択した原材料と密接に結び付いている。多くの実施形態では、意図しない不純物は、多結晶のIII族メタルナイトライド中の置換型不純物、または、ドーパントとして要求されるレベルよりも高いレベルの酸素の量も含まれる。
【0026】
他の実施形態では、意図しない不純物は、III族の酸化物介在物として存在する酸素も含まれ、たとえば、Ga2O3、Al2O3、および/または、In2O3がある。意図しない酸化不純物は、金属原材料中の残存酸素から、合成プロセスで用いられるガス原材料中の不純物として存在する水分、あるいは、酸素から、合成プロセスの最中に反応炉の部材のガス放出から生成される水分から生じる。
【0027】
ある実施形態において、ガリウムナイトライド中のGa2O3、あるいは、置換型不純物として存在する酸素含有量の存在は、およそ10ppmよりも小さい。もう一つの実施形態において、ガリウムナイトライド中のGa2O3、あるいは、置換型不純物として存在する酸素含有量の存在は、およそ10ppmから3ppm、およそ3ppmから1ppm、およそ1ppmから0.3ppm、およそ0.3ppmから0.1ppm、0.1ppm以下のレンジである。
【0028】
ハイクオリティの半絶縁性の透明ガリウムナイトライド、メタルナイトライド結晶、または、ウエハーは、以下の方法により、低コストに製造することができる。
【0029】
一つ以上の高い品質のガリウムナイトライド種の結晶、あるいは、プレートが製造することができる。この種プレートは、最小限の横寸法は、少なくとも1センチメータである。多くの実施形態において、この種プレートは、少なくとも2センチメータの最大の横寸法と、少なくとも1センチメータの最小限の横寸法がある。
【0030】
他の実施形態において、この種プレートは、少なくとも3センチメータの最小限の横寸法、少なくとも4センチメータの最小限の横寸法、少なくとも5センチメータの最小限の横寸法、少なくとも6センチメータの最小限の横寸法、少なくとも8センチメータの最小限の横寸法、少なくとも10センチメータの最小限の横寸法がある。いくつかの実施形態において、この種プレートは、ガリウムナイトライドのバルク単結晶で構成されている。さらに、いくつかの実施形態において、この種プレートは、水素化物気相成長によって形成された結晶から用意されている。
【0031】
他の実施形態において、この種プレートは、アンモノサーマル法によって成長された結晶から用意されている。他の実施形態においても、この種プレートは、流動的な溶液から成長した結晶から形成されている。いくつかの実施形態において、この種プレートの大きな表面領域の転位密度は、およそ 106 cm-2以下である。
【0032】
いくつかの実施形態において、この種プレートの大きな表面領域の転位密度は、およそ 105 cm-2以下、およそ 104 cm-2以下、およそ 103 cm-2以下、あるいは、およそ 102 cm-2以下である。いくつかの実施形態において、大きな表面領域の結晶方位に関するX線の回折線の半値幅は、300アーク秒より、150アーク秒より、100アーク秒より、50アーク秒より、40アーク秒より、30アーク秒より、あるいは、20アーク秒よりも小さい。
【0033】
ある特定の実施形態において、種プレートの大きな表面領域の結晶方位は、{1 0 -1 0} m面のおよそ5度、およそ2度、およそ1度、およそ0.5度、およそ0.2度、あるいは、およそ0.1度の範囲内である。
【0034】
他の特定の実施形態において、種プレートの大きな表面領域の結晶方位は、(0 0 0 ±1) c面のおよそ5度、およそ2度、およそ1度、およそ0.5度、およそ0.2度、あるいは、およそ0.1度の範囲内である。さらに、他の特定の実施形態において、種プレートの大きな表面領域の結晶方位は、{1 1 -2 0} a面のおよそ5度、およそ2度、およそ1度、およそ0.5度、およそ0.2度、あるいは、およそ0.1度の範囲内である。
【0035】
いくつかの実施形態において、この種プレートは、半極性の大きな表面配向を有しており、(hkil) Bravais-Millerによって規定されている。この場合、i=-(h+k)であって、Iは零ではなく、hとkの少なくとも1つは零ではない。いくつかの実施形態において、種プレートの大きな表面領域の結晶方位は、{1 -1 0 ±1}、{1 -1 0 ±2}、{1 -1 0 ±3}、{2 0 -2 ±1}、あるいは、 {1 1 -2 ±2}のおよそ5度、およそ2度、およそ1度、およそ0.5度、およそ0.2度、あるいは、およそ0.1度の範囲内である。
【0036】
一つ以上の種プレートは、米国特許出願番号12/534844に記載されている通り、シードラックに加えられる。ここで、米国特許出願番号12/534844は本発明の一部として、その記載のすべてが参酌されるべきである。もし、種プレートの前面と背面が、c平面、あるいは、半極性配向として、結晶的に等価ではない場合において、二つの種プレートは、外部表面が結晶的な配向が等価になるように、背面同士を向き合うように配置する。
【0037】
米国特許出願番号61/12233には、多結晶のIII族メタルナイトライド、または、ガリウムナイトライドを含む物質が開示されており、この出願は本発明の一部として、その記載のすべてが参酌されるべきである。多結晶のIII族メタルナイトライドは、III族メタルナイトライド物質中に酸素原子を含み、III族金属酸化物、または、III族メタルナイトライド中の置換型不純物で、10ppm以下、1ppm以下、0.1ppm以下のものとして提供される。
【0038】
多結晶のIII族メタルナイトライドは、III族金属に関して少なくとも100ppmのレベルのゲッターから構成されており、このゲッターは、少なくとも、アルカリ土類金属、スカンジウム、チタニウム、バナジウム、クロミウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオビウム、レアアースメタル、ハフニウム、タンタル、および、タングステンから選択される。多結晶のIII族メタルナイトライドは、さらに、およそ1014 cm-3からおよそ1020 cm-3のレベルの補整的ドーパントから構成され、この補整的ドーパントは、少なくとも、V、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、および、Hgの中から選択される。
【0039】
補整的ドーパントは、多結晶のIII族メタルナイトライド
中に、少なくともV、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、CdおよびHgのうちの一つを、プロセス前、あるいは、プロセス中に、ガリウム、あるいは、III族金属に加えることによって作られる。このガリウム、あるいは、III族金属は、多結晶のメタルナイトライドを生成する水素ハロゲン化合物の存在によって、アンモニアと反応する。
【0040】
多結晶のIII族メタルナイトライドは、米国特許番号6656615、7125453、7078731、および、米国特許出願番号12/133365に記載されている、オートクレーブ、あるいは、カプセルの中のバスケットに配置されている。これらの出願は本発明の一部として、その記載のすべてが参酌されるべきである。アンモニアと鉱化剤、たとえば、アルカリ金属、アミド、ナイトライド、あるいは、アジド、アルカリ土類金属、アミド、ナイトライド、あるいは、アジド、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、a III族金属フッ化物、III族金属塩化物、あるいは、III族金属、アンモニア、HF、および、HCl間の反応生成物の少なくとも一つは、オートクレーブ、あるいは、カプセルに配置されている。
【0041】
いくつかの実施形態において、ゲッターも、オートクレーブ、あるいは、カプセルに配置されている。添加されたゲッターは、多結晶のIII族ナイトライドに存在する、ゲッター組成に加えて、配置される。添加されたゲッターは、アルカリ土類金属、Sc、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Hf、Ta、W、レアアースメタル、および、それらのナイトライド化合物、ハロゲン化合物、酸化ナイトライド化合物、酸化ハロゲン化合物、アミド類、イミド類、および、アジド類の少なくとも一つから構成されている。
【0042】
ある特定の実施形態において少なくともゲッターの一部分は、金属の状態で加えられ、少なくとも鉱化剤の一部分は、ゲッター金属とアンモニアの反応によって生成された水素と、アジドの分解によって生成された窒素は、およそ3:1の割合で存在し、そのような割合で、アジドとして加えられる。このことは、米国特許出願番号61/086799に記載されており、この出願は本発明の一部として、その記載のすべてが参酌されるべきである。
【0043】
添加されたゲッターは、意図しない不純物の除去に有効であり、たとえば、鉱化剤、あるいは、他の原材料の中に存在する酸素がある。一連の実施形態において、鉱化剤は、アルカリ金属からなり、ゲッターは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc.Y、レアアースメタル、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wのナイトライド、イミド、あるいは、アミドからなる。他の一連の実施形態において、鉱化剤は、Clからなり、ゲッターは、Sc、Cr、Zr、Nb、Hf、Ta、Wのナイトライド、塩化物、酸化ナイトライド、あるいは、酸塩化物からなる。さらに他の一連の実施形態において、鉱化剤は、Fからなり、ゲッターはCr、Zr、Nb、Hf、Ta、Wのナイトライド、フッ化物、酸化ナイトライド、あるいは、酸化フッ化物からなる。
【0044】
最終的に、原材料は、オートクレーブ、あるいは、カプセルに加えられ、オートクレーブ、あるいは、カプセルは、密封される。カプセルが用いられた場合に、適切な高い圧力装置の内部に配置される。ある実施形態において、高圧装置は、オートクレーブから構成される。オートクレーブに関しては、米国特許番号7335262に記載されており、この出願は本発明の一部として、その記載のすべてが参酌されるべきである。他の実施形態において、高圧装置は、内部加熱式の高圧装置であり、この技術は、米国特許番号7125453、米国特許出願番号2006/0177362A1、および、12/133364に記載されており、この出願は本発明の一部として、その記載のすべてが参酌されるべきである。
【0045】
多結晶のIII族メタルナイトライドとシード結晶は、超臨界アンモニアで、およそ400℃よりも高い温度、およそ0.2ギガパスカル(Gpa)で、多結晶のIII族メタルナイトライドの少なくともある部分がエッチング処理され、少なくともウルツ鉱型構造のIII族ナイトライド結晶の上に再結晶化される。
【0046】
いくつかの実施形態においては、本発明の多結晶のIII族メタルナイトライドは、温度がおよそ500℃以上、550℃以上、600℃以上、650℃以上、700℃以上、または、750℃以上の超臨界アンモニア中でプロセッシングされる。
【0047】
いくつかの実施形態においては、本発明の多結晶のIII族メタルナイトライドは、圧力がおよそ0.3GPa以上、0.4GPa以上、0.5GPa以上、0.6GPa以上、0.7GPa以上、または、0.8GPa以上の超臨界アンモニア中でプロセッシングされる。
【0048】
多結晶のIII族メタルナイトライドのゲッターの残余は、次第に、溶液中に溶け出し、多結晶のIII族メタルナイトライドとしてエッチされる。一度、溶液化すると、ゲッターは反応し、ゲッターメタルナイトライド、アミド、あるいは、ハロゲン化合物となる。ゲッターは、さらに、化学的に酸素と結合する。ゲッターは、超臨界アンモニア溶液から残余の酸素を除き、純度と透明度を改善させ、補整的ドーパントを低濃度において、半絶縁性を出したIII族ナイトライド単結晶を成長させることが可能となる。
【0049】
アンモノサーマル法による結晶成長III族メタルナイトライドは、ウルツ鉱型構造によって、特徴付けられる。このウルツ鉱型構造は、実質的に立方体要素が使われておらず、光吸収係数は、波長がおよそ385ナノメータから750ナノメータの間で、およそ2 cm-1以下である。
【0050】
アンモノサーマル法による成長でガリウムナイトライド結晶は、およそ5センチメータよりも長い結晶構造の基板部材からなり、ウルツ鉱型構造と、ウルツ鉱型構造と比較し、体積がおよそ0.1%以下の実質的に他の結晶構造を含まないようになっている。そして、不純物濃度は、1014 cm-3より、1015 cm-3より、1016 cm-3よりも高い、少なくとも、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、F、Clの中の一つからなっている。光吸収係数は、およそ385ナノメータから750ナノメータの間の波長で、およそ2 cm-1以下である。
【0051】
アンモノサーマル法による成長で、ガリウムナイトライド
結晶は、室温で抵抗が105Ω-cm以上、106Ω-cm以上、107Ω-cm以上、108Ω-cm以上、109Ω-cm以上、1010Ω-cm以上、1011Ω-cm以上、1012Ω-cm以上の半絶縁性となる。
【0052】
アンモノサーマル法による結晶成長III族メタルナイトライドは、一つ以上の補整的ドーパンの濃度によって、特徴付けられる。この濃度は、およそ1014 cm-3以下、およそ1015 cm-3以下、およそ1016 cm-3以下、およそ1017 cm-3以下、およそ1018 cm-3以下、およそ1019 cm-3以下である。
【0053】
補整的ドーパントは、少なくともV、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、および、Hgから選択される。好ましい実施例においては、アンモノサーマル法による結晶成長III族メタルナイトライドにおける補整的ドーパントの濃度は、酸素とシリコンの濃度の合計よりも大きい。
【0054】
アンモノサーマル法による結晶成長III族メタルナイトライドの光吸収係数は、およそ395nmから460nmの間の波長で、およそ10cm-1以下、およそ5cm-1以下、およそ2cm-1以下、およそ1cm-1以下、およそ0.5cm-1以下、およそ0.2cm-1以下、およそ0.1cm-1以下である。
【0055】
適切な期間、成長させることによって、半絶縁性のアンモノサーマル法による結晶成長III族メタルナイトライドは、厚さがおよそ1ミリメータよりも厚く、長さ、あるいは直径がおよそ20ミリメータよりも長くなる。好ましい実施形態において、長さは、およそ50ミリメータ、あるいは、およそ100ミリメータよりも大きい。
【0056】
成長後、アンモノサーマル法による結晶成長III族メタルナイトライドは、スライスされ、研磨され、一枚以上のウエハ、あるいは、結晶構造の基板部材の形成においてすでに知られた化学的・機械的に研磨される。好ましい実施形態において、少なくとも一つのウエハ、あるいは、結晶構造の基板部材の二乗平均平方根表面粗さは、およそ1ナノメータ以下であり、たとえば、原子間力顕微鏡法にて計測された値は、少なくともおよそ10マイクロメータx10マイクロメータとなる。
【0057】
半絶縁性のアンモノサーマル法による結晶成長III族メタルナイトライド結晶、あるいは、結晶からスライスされ研磨されたウエハは、発光ダイオード、レーザーダイオード、光センサー、アバランシェフォトダイオード、トランジスタ、整流器、サイリスタの少なくとも一つのオプトエレクトロニクス、および、電気デバイスを形成する基板に用いられ、そして、トランジスタ、整流器、ショットキー整流器、p-i-n ダイオード、金属-半導体-金属ダイオード、高電子移動度トランジスタ、金属-半導体電界効果トランジスタ、金属酸化膜電界効果トランジスタ、パワー・モス電界効果トランジスタ、パワー・ミス電界効果トランジスタ、
【0058】
バイポーラ接合トランジスタ、金属絶縁体電界効果トランジスタ、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ、パワー・絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、パワー・垂直接合電界効果トランジスタ、カスコードスイッチ、インナーサブバンドエミッタ、量子井戸赤外光検出器、量子ドット赤外光検出器、ソーラーセル、光電気化学的な水分解および水素発生のためのダイオードの少なくとも一つに用いられている。
【0059】
上述に記載した詳細な説明の全ての記載に対して、様々な修正や、代替物および均等物の利用は、本発明の範囲内である。そのため、上述の記載および図面は、請求の範囲によって規定される本発明の範囲を何ら限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
およそ5ミリメーターよりも長い結晶構造の基板部材と、
他の結晶構造を実質的に保有しない特徴のウルツ鉱型構造と、前記他の結晶構造の体積は、ウルツ鉱型構造の体積のおよそ1%以下であって、
不純物濃度がおよそ1015 cm-1よりも大きいLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、F、Clの少なくとも一つであって、
およそ107 Ω-cmよりも大きい電気抵抗であることを特徴とする結晶構造を含むガリウムナイトライド。
【請求項2】
前記ガリウムナイトライドの結晶の酸素の不純物濃度が、およそ1015 cm-3よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のガリウムナイトライド。
【請求項3】
前記ガリウムナイトライドの結晶の酸素の不純物濃度が、およそ1018 cm-3よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載のガリウムナイトライド。
【請求項4】
前記ガリウムナイトライドの結晶が、V、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hgの少なくともひとつから選択される補整的ドーパントを含み、当該補整的ドーパントの濃度がおよそ1015 cm-3よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のガリウムナイトライド。
【請求項5】
前記補整的ドーパントの濃度が、およそ1017 cm-3よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載のガリウムナイトライド。
【請求項6】
波長がおよそ395nmから460nmの間の波長における光吸収係数が、およそ10 cm-1より小さいことを特徴とする請求項1に記載のガリウムナイトライド。
【請求項7】
波長がおよそ395nmから460nmの間の波長における光吸収係数が、およそ0.2 cm-1より小さいことを特徴とする請求項1に記載のガリウムナイトライド。
【請求項8】
前記他の結晶構造が、およそ0.1%よりも小さい体積であることを特徴とする請求項1に記載のガリウムナイトライド。
【請求項9】
前記基板部材の厚さが、およそ1ミリメータよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のガリウムナイトライド。
【請求項10】
長さが、およそ20ミリメータよりも長いことを特徴とする請求項9に記載のガリウムナイトライド。
【請求項11】
長さが、およそ100ミリメータよりも長いことを特徴とする請求項1に記載のガリウムナイトライド。
【請求項12】
前記結晶構造の基板部材が、100メータよりも大きな曲率の結晶半径を有することを特徴とする請求項1に記載のガリウムナイトライド。
【請求項13】
前記結晶構造の基板部材が、無限の曲率の結晶半径を有することを特徴とする請求項1に記載のガリウムナイトライド。
【請求項14】
前記結晶構造の基板部材が、1ナノメータ以下の二乗平均平方根の、表面粗さを有することを特徴とする請求項1に記載のガリウムナイトライド。
【請求項15】
前記結晶構造が、
発光ダイオード、
レーザーダイオード、
光センサー、
アバランシェフォトダイオード、
トランジスタ、
整流器、
サイリスタの少なくとも一つデバイスに用いられ、そして、
トランジスタ、
整流器、
ショットキー整流器、
p-i-n ダイオード、
金属-半導体-金属ダイオード、
高電子移動度トランジスタ、
金属-半導体電界効果トランジスタ、
金属酸化膜電界効果トランジスタ、
パワー・モス電界効果トランジスタ、
パワー・ミス電界効果トランジスタ、
バイポーラ接合トランジスタ、
金属絶縁体電界効果トランジスタ、
ヘテロ接合バイポーラトランジスタ、
パワー・絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、
パワー・垂直接合電界効果トランジスタ、
カスコードスイッチ、
インナーサブバンドエミッタ、
量子井戸赤外光検出器、
量子ドット赤外光検出器、
ソーラーセル、
光電気化学的な水分解および水素発生のためのダイオードの少なくとも一つに用いられていることを特徴とする請求項1に記載のガリウムナイトライド。
【請求項16】
結晶構造の基板部材と、
他の結晶構造を実質的に保有しない特徴のウルツ鉱型構造と、前記他の結晶構造の体積は、ウルツ鉱型構造の体積のおよそ1%以下であって、
不純物濃度がおよそ1015 cm-1よりも大きいLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、F、Clの少なくとも一つ有し、
およそ107 Ω-cmよりも大きい電気抵抗を、さらに有することを特徴とする結晶構造を含むガリウムナイトライド。
【請求項17】
基板を有するIII族メタルナイトライドの形成方法において、
ソースマテリアルとしてIII族メタルナイトライドを供給し、当該 III族メタルナイトライドは、アルミニウム、ガリウム、インジウムの中から選択された金属を含み、さらに、 III族メタルナイトライド中の酸素含有量は、およそ10ppmよりも小さい、III族金属酸化物あるいは置換型不純物
であって、
チャンバーへIII族メタルナイトライドのソース物質を注入し、
窒素を含有する物質を、前記チャンバーへ加え、
当該チャンバーを、所定の温度まで加熱し、
当該チャンバーを、所定の圧力まで加圧し、
前記窒素を含有する物質を、前記III族金属のソース物質と、前記チャンバー内で反応させ、
他の結晶構造を実質的に保有しない特徴のウルツ鉱型構造であって、およそ107 Ω-cmよりも大きい電気抵抗を有することを特徴とする結晶構造のIII族メタルナイトライドの形成方法。
【請求項18】
前記III族メタルナイトライド中の酸素含有量は、およそ1ppmよりも小さい、III族金属酸化物あるいは置換型不純物
であることを特徴とする請求項17に記載の結晶構造のIII族メタルナイトライドの形成方法。
【請求項19】
前記III族メタルナイトライドのソース物質に関して、少なくとも100ppmのレベルのゲッターをさらに有し、当該ゲッターをIII族メタルナイトライドのソース物質とともに、前記チャンバーへ注入することを特徴とする請求項17に記載の結晶構造のIII族メタルナイトライドの形成方法。
【請求項20】
少なくとも、V、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hgから選択された補整的ドーパントを有することを特徴とする請求項17に記載の結晶構造のIII族メタルナイトライドの形成方法。



【公開番号】特開2011−230998(P2011−230998A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−53647(P2011−53647)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(511026706)ソラア インコーポレーテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】SORAA INC.
【住所又は居所原語表記】United States of America,California 93117,Goleta,485 Pine Avenue
【Fターム(参考)】