説明

単一の光子計数用の読み出しチップ

本発明の目的は、光子計数画像装置の計数精度を損なうことなく、読み出し電子回路の特性および速度を非常に向上させることである。この目的は、本発明によれば、単一の光子計数用の読み出しチップ(2)であって、a)それぞれの検出器ダイオードに各々割り当てられた個々に動作するN番目の複数のチャネルであって、カウンタ(8〜8128)を有する各チャネルが、Mビットの長さとプログラマブルビット(pb1〜pb128)の数とを有するバイナリカウンタとして構成される個々に動作するN番目の複数のチャネルと、b)カウンタ(8〜8128)およびプログラマブルビット(pb1〜pb128)の値を入力するためのシリアルまたはパラレルデータ入力シフトレジスタ(4)と、c)複数のK個のデータ出力(20)を各々有する複数のデータ出力シフトレジスタ(16)であって、K個のデータ出力(20)の各々をデータ出力シフトレジスタ(16)の選択可能なビットに選択的にマルチプレクスするための手段(18)が設けられる複数のデータ出力シフトレジスタ(16)とを有する読み出しチップ(2)によって達成される。これらの特徴により、サイクル毎にカウンタをKビットの並列群で読み出すことができるので、カウンタをはるかに速く読み出すことが可能になる。さらに、読み出し速度を極めて向上させる重要性のビットにK個のデータ出力をマルチプレクスすることによって、各チャネルの各カウンタの選択可能な可変長ビットを有利に読み出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単一の光子計数用の読み出しチップに関する。
【0002】
X線回折パターンは、有機結晶構造および無機結晶構造の両方の分析に有用である。特に、X線源が、放射線損傷に対して実験を迅速に行うことを可能にしかつそのことを必要とする高線束シンクロトロン放射線である場合に、特に、タンパク質結晶等の有機材料は、X線検出器に厳しい要求を課す。さらに、重要かつ発展する分野は、結晶回折分析及び/又は粉末回折分析等の、シンクロトロン放射線を用いた時間分割回折実験である。試料、すなわち結晶または粉末の、時間に依存する反応を監視することにより、化学反応で発生する、時間に依存する結晶/分子変化を解明できる。高い時間分解能は、多くの場合、このような監視に重要である。
【背景技術】
【0003】
上記目的用の単一の高速光子計数画像装置は、(特許文献1)に開示されている。この引例は、単一のX線計数用の光子計数画像装置を詳細に開示しており、この光子計数画像装置は、
a)感光材料層と、
b)バイアス電位源と、
c)閾値電圧供給源と、
d)前記感光材料層に配置されたNxMアレイの光検出器ダイオードであって、前記光検出器ダイオードの各々がバイアス電位インターフェースとダイオード出力インターフェースとを有し、各光検出器ダイオードの前記バイアス電位インターフェースが前記バイアス電位に接続されるNxMアレイの光検出器ダイオードと、
e)各光検出器ダイオードのためにユニットセルを読み出す、高利得で低雑音のNxMアレイの読み出しユニットセルと、
f)前記ダイオード出力インターフェースに接続された入力インターフェースと、コンパレータユニットを備える高利得電圧増幅手段と、デジタルカウンタおよび直列に接続されたデジタルカウンタ出力インターフェースを備えるデジタルカウンタユニットとを備える各読み出しユニットセルであって、各デジタルカウンタユニットがコンパレータユニットの出力信号を計数し、前記デジタルカウンタ出力信号が、それぞれの光検出器ダイオードの吸収された入射光子の数に比例する各読み出しユニットセルと、
g)読み出しセルユニットの各々にアクセスすること、すなわち、デジタルカウンタに実際に記憶されたものとしてのデジタルデータをデジタルカウンタ出力インターフェースに読み出すことを可能にする行選択および列選択を含むマルチプレクス手段と、
h)出力バスに接続された各デジタルカウンタ出力インターフェースと、
i)マルチプレクス手段を制御するデータ処理手段に接続される前記出力バスと、
を備える。
【0004】
これらの措置によって、読み出し回路の構成を有する光子計数画像装置が形成され、この光子計数画像装置は、高速光子計数画像装置を実現するために、検出器ダイオードおよび/または読み出しユニットセルの局所的な欠陥に対する耐性を可能にし、また各検出器ダイオードおよび/または読み出しユニットセルのプログラムおよび/または状態を制御および再構成することを可能にする。
【0005】
しかし、この高速光子計数画像装置でも、データ読み出し速度を向上させることが望ましい。これまで、上記引例のカウンタは、XORフィードバックを有する18ビットのシフトレジスタ等の擬似ランダムカウンタとして構成されてきた。このカウンタからのデータは、読み出し中に1つのデジタル出力ピンに連続的に伝送される。18ビットのシフトレジスタでは、少なくとも1+18+1サイクルの読み出し時間が必要となる。
【特許文献1】国際公開第2004/064168号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、計数精度を損なうことなく、読み出し電子回路の特性および速度を非常に向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本発明によれば、単一の光子計数用の読み出しチップであって、
a)それぞれの検出器ダイオードに各々割り当てられた個々に動作するN番目の複数のチャネルであって、カウンタを有する各チャネルが、Mビットの長さとプログラマブルビットの数とを有するバイナリカウンタとして構成される個々に動作するN番目の複数のチャネルと、
b)カウンタおよびプログラマブルビットの値を入力するためのシリアルシフトレジスタまたはパラレルデータ入力レジスタであって、少数の計数のために全てのビットを読み出す必要が全くないので(例えば、XORフィードバックを有するシフトレジスタとして実現された擬似ランダムカウンタと対照的に)、バイナリカウンタによって可変長読み出しが可能になるシリアルシフトレジスタまたはパラレルデータ入力レジスタと、
c)複数のK個のデータ出力を各々有する複数のデータ出力シフトレジスタであって、K個のデータ出力の各々をデータ出力シフトレジスタの選択可能なビットに選択的にマルチプレクスするための手段が設けられる複数のデータ出力シフトレジスタと、
を有する読み出しチップによって達成される。
【0008】
これらの特徴により、カウンタをKビットの並列群で読み出すことができるので、カウンタをはるかに速く読み出すことが可能になる。さらに、各チャネルの各カウンタについて、読み出し速度を極めて向上させる重要性のビットにK個のデータ出力をマルチプレクスすることによって、選択可能な可変長ビットのみを読み出すことができ、すなわち、結晶の研究では、試料の規則的な格子構造の故に、より高い計数率を有するいくつかの希少領域と、同等に低い計数率を有する大部分の領域とが考慮される。
【0009】
さらに、動作速度を上げるために、データ入力シフトレジスタ、データ出力シフトレジスタ、ならびにチャネル選択シフトレジスタおよびカウンタは、信号毎の1つのサイクル内でレジスタをクリアおよびセットすることを可能にするクリア信号およびセット制御信号を含む。制御信号の生成を簡単にするためにまた制御信号の数を低減するために、制御信号は、データ入力シフトレジスタ、データ出力シフトレジスタおよびチャネル選択シフトレジスタ、ならびにカウンタにマルチプレクスされる。しかし、読み出し速度を損なわないようにするために、読み出しに必要な信号をマルチプレクスせずに利用することもできる。
【0010】
読み出し電子回路のアナログ部分に干渉できるようにするために、プログラマブルビットは、DACのために、すなわち、コンパレータの閾値を微調整するために、較正パルスをイネーブル/ディスエーブルするために、チャネルのアナログ出力をイネーブル/ディスエーブルするために、チャネルのコンパレータの出力をイネーブルするために用いられることができる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、データ入力シフトレジスタおよびデータ出力シフトレジスタは、少なくともカウンタの長さを有し得る。さらに、データ入力シフトレジスタは、上記のように用いられるプログラマブルビットに関する複数のビットを有することが好ましい。当然、カウンタの長さはデータ出力の数Kの奇数倍または偶数倍であり得る。倍数値に応じて、それぞれの複数の整数サイクルが、完全なデータ出力シフトレジスタを読み出すために用いられる。例えば、24ビットのバイナリカウンタと4ビットのパラレルデータ出力とを想定すると、1つのチャネルのカウンタ値を読み出すために、データ出力シフトレジスタを選択し、制御しまたリセットするための3つのサイクルを加えた、24ビットのストリング計数値を読み取るための6つのサイクルが必要となる。重要性の低い4つのビット0〜3のような4つのビットのみが読み出しに必要であった場合、全体で4つのサイクルのみが必要となる。これらの特徴により、それらの「重要性の低いチャネル」(より低い計数率)について、読み出し時間を50%以上短縮することが可能になる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態の別の有利な特徴は他の従属請求項から理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下の図面を参照して、本発明の実施例について詳細に説明する。図は、光子計数画像装置に使用するための読み出しチップ2の構成の概略図を示している。本実施例では、読み出しチップ2は、33ビットの長さを有するデータ入力シフトレジスタ4を備える。24ビットのデータ入力シフトレジスタ4は、選択可能なカウンタ8〜8128に接続される24ビットのデータ入力バス6に接続される。残りの9ビットのデータ入力シフトレジスタ4は、128チャネルの各々のプログラマブルビットpb1〜pb128を有する9ビットのデータ入力バス10を介して接続される。チャネルを選択するために、チャネル選択シフトレジスタ12が設けられる。プログラマブルビットpb1〜pb128は、例えば、それぞれのチャネルをイネーブル/ディスエーブルするために、アナログ信号(各ダイオードの入射光子の数およびエネルギーを反映する)をチップのアナログ出力に送信するために(すなわち較正およびデバッグ目的のために)用いられ、他のビットは、DAC(6ビット)をプログラムするために、コンパレータの閾値を微調整するために、較正パルスをイネーブル/ディスエーブルするため等に用いられる。
【0014】
カウンタ8〜8128は、24ビットのデータ出力バス14を介してデータ出力シフトレジスタ16に選択的に接続可能である。マルチプレクサ18によって、24ビットのデータ出力シフトレジスタを4ビットのデータ出力20に選択的に割り当てることができ、この4ビットのデータ出力により、本実施例において、データ出力シフトレジスタ16の選択可能な4ビットを並列に読み出すことが可能になる。本実施例では、マルチプレクサは、データ入力シフトレジスタのビットによって制御される。規則的な結晶格子を有する試料の回折パターンを具体的に考慮すると、チャネルの大部分は、4または8ビットの読み出しがこれらのチャネルに対して十分であると思われる同等に低い計数率を有し、試料の格子構造に対応した位置を有するそれらのチャネルのみが、それぞれのチャネルのカウンタの24ビットの全てを読み出す非常に高い計数率を受け取る。さらに、動作速度を上げるために、全てのレジスタ4、12、81〜128および16は、クリア信号およびセット制御信号の1期間を含む。これらの制御信号はさらにマルチプレクスされ、このことは、動作をさらに簡単にしつつ、制御信号の数が低減されることを意味する。このことは、例えば、それぞれの制御信号をモードマルチプレクスすることによってなされることができる。
【0015】
図面に示されている実施例は、種々の修正も可能にする読み出しチップ2の基本設計を有する。1つの好ましい態様は、データ出力シフトレジスタ16に関する構成の乗算であることができ、このために、複数のデータ出力シフトレジスタを設けることができる。この特徴により、複数のチャネルの読み出しが同時に可能になり、例えば、第2のデータ出力シフトレジスタにより、セットアップにおいて、1X128チャネルの代わりに、2X64チャネルを読み出すことが可能になる。2次元マトリックス(例えば、2次元検出器用の)として、チャネルを構成することも可能である。
【0016】
他の好ましい態様は、カウンタ8〜8128の最大長までの、4以上のビットを有するデータ出力20を提供することが可能であり、前記カウンタ8〜8128の最大長により、1つのみのサイクル(制御信号サイクルを加える)内において、カウンタおよびデータ出力の両方について長さが同一であった場合に、はるかに速くまた並列モードでカウンタを読み出すことが可能になる。
【0017】
別個のチャネルのカウンタを任意の値にセットできる。カウンタの完全長のパラレルデータ入力レジスタであることもできるシリアルデータ入力シフトレジスタ4によって、プログラマブルビットの値およびカウンタの値を読み出しチップ2に入力できる。さらに、入力シフトレジスタは、データ出力用のマルチプレクサをプログラムするために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】光子計数画像装置に使用するための読み出しチップ2の構成の概略図である。
【符号の説明】
【0019】
2 読み出しチップ
4 データ入力シフトレジスタ 33ビット
6 24ビットのデータ入力バス
126 カウンタチャネル126
127 カウンタチャネル127
128 カウンタチャネル128
10 9ビットのデータ入力バス
12 チャネル選択シフトレジスタ
14 24ビットのデータ出力バス
16 データ出力シフトレジスタ
18 マルチプレクサ
20 4ビットのデータ出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の光子計数用の読み出しチップ(2)において、
a)それぞれの検出器ダイオードに各々割り当てられた個々に動作するN番目の複数のチャネルであって、カウンタ(8〜8128)を有する各チャネルが、Mビットの長さとプログラマブルビット(pb1〜pb128)の数とを有するバイナリカウンタとして構成される個々に動作するN番目の複数のチャネルと、
b)前記カウンタ(8〜8128)および前記プログラマブルビット(pb1〜pb128)の値を入力するためのシリアルシフトレジスタまたはパラレルデータ入力レジスタ(4)と、
c)複数のK個のデータ出力(20)を各々有する複数のデータ出力シフトレジスタ(16)であって、前記K個のデータ出力(20)の各々を前記データ出力シフトレジスタ(16)の選択可能なビットに選択的にマルチプレクスするための手段(18)が設けられる複数のデータ出力シフトレジスタ(16)と、を有する読み出しチップ(2)。
【請求項2】
前記データ入力シフトレジスタ(4)および前記データ出力シフトレジスタ(16)、ならびにチャネル選択シフトレジスタ(12)およびカウンタ(8)が、クリア信号およびセット制御信号の1期間を含む請求項1に記載の読み出しチップ(2)。
【請求項3】
制御信号がマルチプレクスされ、また読み出しに必要な制御信号をマルチプレクスせずに利用することもできる請求項1または2に記載の読み出しチップ(2)。
【請求項4】
前記プログラマブルビット(pb1〜pb128)がDACのために、すなわち、コンパレータの閾値を微調整するために、較正パルスをイネーブル/ディスエーブルするために、チャネルのアナログ出力をイネーブル/ディスエーブルするために、またチャネルのコンパレータの出力をイネーブルするために用いられる請求項1〜3のいずれか1項に記載の読み出しチップ(2)。
【請求項5】
前記データ入力シフトレジスタ(4)および前記データ出力シフトレジスタ(16)が、少なくとも、前記カウンタ(8〜8128)の長さを有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の読み出しチップ(2)。
【請求項6】
前記カウンタ(8〜8128)の前記長さが前記データ出力(20)の数Kの奇数倍または偶数倍である請求項1〜5のいずれか1項に記載の読み出しチップ(2)。

【図1】
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【公表番号】特表2009−519585(P2009−519585A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540528(P2008−540528)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011098
【国際公開番号】WO2007/057213
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(501494414)パウル・シェラー・インスティトゥート (19)
【Fターム(参考)】