説明

単分子増幅及びDNA長の検出

核酸の検出、定量及び統計分析のために単分子増幅を実施するための方法及びシステムを提供する。対象核酸長を判定及び定量するための方法及びシステムも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府支援研究開発から創出された発明の権利に関する陳述)
本願の技術の一部はNIST−ATP助成番号70NANB8H4000の下に開発された。政府は本発明に所定の権利をもつことができる。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は例えば疾患診断、病原体、環境汚染物質等の検出のために例えば複雑な混合物から単分子を増幅することによる単分子検出の分野に関する。高スループットシステム(例えばマイクロフルイディックシステム)で増幅を実施すると、低コピー数反応混合物に分画される複雑なサンプル中の希少分子を検出することができ、例えば複雑なサンプルの多数のアリコートを増幅することにより、対象希少コピー核酸を検出することができる。本発明の方法とシステムは個々の対象核酸が所与長をもつか否かを判定することができる。
【背景技術】
【0003】
核酸の検出は医療、法科学、生産加工、動植物育種、及び他の多くの分野の中核である。疾患状態(例えば癌)、感染性生物(例えばHIV)、遺伝系統、遺伝子マーカー等の検出機能は疾患診断及び予後、マーカーによる選択、正確な犯罪現場検証、産業用生物増殖能及び他の多くの技術の汎用技術である。対象核酸の完全性の判定は感染又は癌の病理に関連し得る。
【0004】
最も強力で基本的な核酸検出技術の1つは核酸増幅である。即ち、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT−PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、及びQ−βレプリカーゼや他のRNA/転写技術(例えばNASBA)等の多くの典型的フォーマットでは、核酸の単コピーを検出するよりも多数のコピーを検出するほうが容易であるため、対象核酸を検出する前に対象核酸を増幅する。
【0005】
PCR、RT−PCR及びLCRは多種多様な分野で特に広く使用されている。これら及び他の増幅方法の使用に関する詳細は各種標準教科書に記載されており、例えばSambrookら,Molecular Cloning−A Laboratory Manual(第3版),Vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,2000(「Sambrook」);Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubelら編,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,(2002年追補(「Ausubel」))及びPCR Protocols A Guide to Methods and Applications(Innisら編)Academic Press Inc.San Diego,CA(1990)(Innis)が挙げられる。PCRと関連増幅法については多くの入手可能な生物学教科書が詳細に記載している。
【0006】
更に最近では、PCR及び他の増幅反応を実施する多数の高スループットアプローチが開発されており、例えばマイクロフルイディックデバイスでの増幅反応や、前記デバイス内又はデバイス上で増幅核酸を検出及び分析する方法が挙げられる。このような技術に関する詳細は技術及び特許文献に記載されており、例えばKoppら(1998)“Chemical Amplification:Continuous Flow PCR on a Chip”Science,280(5366):1046;USP6,444,461(Knappら)(2002年9月3日)MICROFLUIDIC DEVICES AND METHODS FOR SEPARATION;USP6,406,893(Knappら)(2002年6月18日)MICROFLUIDIC METHODS FOR NON−THERMAL NUCLEIC ACID MANIPULATIONS;USP6,391,622(Knappら)(2002年5月21日)CLOSED−LOOP BIOCHEMICAL ANALYZERS;USP6,303,343(Kopf−Sill)(2001年10月16日)INEFFICIENT FAST PCR;USP6,171,850(Nagleら)(2001年1月9日)INTEGRATED DEVICES AND SYSTEMS FOR PERFORMING TEMPERATURE CONTROLLED REACTIONS AND ANALYSES;USP5,939,291(Loewyら)(1999年8月17日)MICROFLUIDIC METHOD FOR NUCLEIC ACID AMPLIFICATION;USP5,955,029(Wildingら)(1999年9月21日)MESOSCALE POLYNUCLEOTIDE AMPLIFICATION DEVICE AND METHOD;USP5,965,410(Chowら)(1999年10月12日)ELECTRICAL CURRENT FOR CONTROLLING FLUID PARAMETERS IN MICROCHANNELS、及び他の多くの文献が挙げられる。
【0007】
増幅技術は広く使用されており、これらの技術は真の高スループットシステムに応用されているが、核酸、特に希少コピー核酸の増幅と検出には依然として所定の技術的な問題がある。これは増幅試薬が希少核酸以外に所与サンプル中の高コピー核酸を増幅し、これらの2種の核酸が同一サンプル中で1又は数塩基しか相違しない場合に特に該当する。例えば、1組のプライマーが所与サンプル中の高コピー核酸と低コピー核酸にハイブリダイズするならば、高コピー核酸の幾何的増幅が比例して増幅反応の大半を占め、得られる増幅核酸集団中で低コピー核酸を識別することは困難又は不可能である。従って、例えば希少核酸のみを増幅するプライマーセットが容易にみつからない場合には、遺伝子の低コピー数対立遺伝子を検出することは非常に難しいと思われる(実施者は完全な試薬特異性が実際に希少又は不在であることを認識するであろう)。サンプル中の高コピー数核酸が増幅されると、低コピー核酸からのシグナルは打ち消されてしまう。このような問題にも拘わらず、疾患や感染の早期発見や他の多くの用途には希少コピー核酸の識別が不可欠であると思われる。
【0008】
これらの問題は従来技術で検討されていないことに留意すべきである。少数の著者がシングルコピー増幅を理論的実験として記載しており(例えばMullisら(1986)Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263−273;Liら(1988)Nature 335:414−417;Saikiら(1988)Science 239:487−491,及びZhangら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5847−5851)、DNA鋳型単分子の確率的PCR増幅後に産物をマイクロスケールデバイスでCE分析することも記載されている(Lagallyら(2001)Anal.Chem.73:565−570)が、これらの従来のアプローチのうちでサンプル中の希少コピー核酸の検出に適したものは皆無である。即ち、これらのアプローチのうちで高スループット自動化に適したものは皆無であり、従来技術の装置は希少コピー核酸を実際に検出するように応用することができない。例えば、Lagallyら,前出のデバイスは増幅しようとするサンプルをチャンバーに流入させ、システムのフローを停止し、増幅反応を実施し、増幅産物をチャンバーから流出させるようにデバイスを手動で再設定し、増幅産物を一度に1回の反応のためにチャンバーから排出し、産物を検出している。この面倒なプロセスの結果、有用な時間で実施及び分析される増幅反応は少なく、システムを運転させるためには使用者が連続的に介在する必要があった。更に、従来方法のうちで例えばサイズ選択的クロマトグラフィーの付加段階を介さずに均質混合物から対象核酸長を明確に判定する方法も皆無である。
【0009】
従来技術で全く検討されていない増幅法の別の問題は希少核酸で定量分析を実施するのが極めて困難であるという点である。検出に関する上記問題は定量分析にも当てはまり、更に希少核酸を増幅できるとしても定量がサンプル中の高コピー数核酸の存在により影響を受けるという別の問題もある。これは、増幅が希少核酸の検出に十分に特異的である場合でも、高コピー数の他の増幅核酸が増幅反応中に反応成分の増幅反応に競合効果をもつためである。従って、特にシステムの成分が予め特性決定又は精製されていない場合には、サンプル中の希少核酸濃度を正確に評価することは一般に不可能である(当然のことながら、増幅に選択される材料が既に特性決定されている場合には増幅産物を定量的に評価することは多少容易になる)。既に完全に特性決定されている材料の増幅は学術的に有用であるが、未知材料の特性決定に応用できないならば、このアプローチは実用価値が低い。例えば、希少核酸を定量できないと、例えば疾患診断、疾患予後診断及び対象核酸の正確な統計評価を実施する可能性が限られる。
【0010】
対象核酸のサイズ決定は希少配列の識別が特に重要であると思われる分野である。例えば、所定の癌や欠失突然変異に起因する症状等の疾患状態では、他の核酸の複雑な混合物中の対象核酸長が診断基準となり得る。USP6,586,177(Shuber)(2003年7月1日)METHODS FOR DISEASE DETECTIONでは、2個以上のプライマー対によるマルチウェルフォーマットで臨床サンプルを増幅した後に増幅反応のアガロースゲル電気泳動によりアンプリコンを可視化している。Shuberはこのアッセイが所定臨床サンプル中の癌細胞に由来する全長DNAに対するアポトーシス後の細胞に由来する分解DNAの比率を測定するために有用であり得ると示唆している。しかし、この方法は非特異的であり、時間と手間がかかり、分離したアンプリコンが同一核酸鎖から増幅されたことを確認できず(即ち曖昧)、長さの差が僅少の長い核酸を区別することができず、均質混合物から長さを直接判定することができず、多数の複雑な臨床サンプル中の他の核酸のバックグラウンドに対して対象核酸を検出することができない。
【特許文献1】USP6,444,461
【特許文献2】USP6,406,893
【特許文献3】USP6,391,622
【特許文献4】USP6,303,343
【特許文献5】USP6,171,850
【特許文献6】USP5,939,291
【特許文献7】USP5,955,029
【特許文献8】USP5,965,410
【特許文献9】USP6,586,177
【非特許文献1】Sambrookら,Molecular Cloning−A Laboratory Manual(第3版),Vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,2000(「Sambrook」)
【非特許文献2】Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubelら編,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,(2002年追補(「Ausubel」))
【非特許文献3】PCR Protocols A Guide to Methods and Applications(Innisら編)Academic Press Inc.San Diego,CA(1990)(Innis)
【非特許文献4】Koppら(1998)“Chemical Amplification:Continuous Flow PCR on a Chip”Science,280(5366):1046
【非特許文献5】Mullisら(1986)Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.51:263−273
【非特許文献6】Liら(1988)Nature 335:414−417
【非特許文献7】Saikiら(1988)Science 239:487−491
【非特許文献8】Zhangら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5847−5851
【非特許文献9】Lagallyら(2001)Anal.Chem.73:565−570
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記に鑑み、サンプル中の希少対象核酸を識別及び定量する確実な高スループット法が必要である。対象核酸の長さ、量及び比率を高い分解能と確度で効率的に確認する方法とシステムを入手できることが望ましい。本発明はこれらの特徴及び以下の記載から自明の他の特徴を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は例えば疾患診断(例えば癌診断)、病原体検出、希少環境核酸検出等の目的でサンプル中の対象希少核酸の検出及び統計的特性決定に単分子増幅を使用できるという驚くべき発見に関する。例えば、対象希少核酸を含むサンプルに由来する反応混合物が各々対象希少核酸のコピーを少数(例えば1)しかもたないか又は全くもたない場合に、例えば反応混合物中に対象核酸が識別されるまでこのような反応混合物で多数の個々の増幅反応を実施することができる。サンプル中の付加核酸も低コピー数反応で増幅し、統計的方法を使用して付加核酸に対する対象核酸の相対比を決定し、例えば所定比率の全長及びフラグメント化形態を含む対象核酸の相対又は絶対濃度を決定することができる。方法全体の速度を著しく増加するために、本発明の方法の段階の大半又は全部を連続フローフォーマットで実施できることが望ましい。あるいは、例えば複数増幅領域を一度に同時にスキャンするように検出器を構成する場合には、1段階以上を停止フローモードで実施してもよい(同時検出によりこれらの態様のスループットは増加する)。
【0013】
これらの方法を実施するには高スループットマイクロフルイディックシステムで具体化されるような高スループット増幅システムが特に適しており、例えば対象核酸が検出されるまで、及び/又は確実な統計的評価を実施できるように対象核酸の十分なコピーが検出されるまで多数の低コピー数増幅反応を実施することにより、被分析サンプル中に著しく低濃度で存在する対象核酸を検出するために使用することができる。関連側面において、本発明は初期核酸からのシグナルが増幅中に分散する距離を検討し、この分散を熱拡散率及び/又はTaylor Aris分散、又は関連現象に起因する予想分散と比較することにより(又は単に観察された分散を経験的に観察される対照反応と比較することにより)反応混合物中における初期核酸のコピーの有無とその数(又は反応混合物における初期核酸の有無)を決定する新規方法も提供する。これは対象核酸を含むアリコートから発生されるシグナルの形状(振幅、シグナル幅、及び/又は他のシグナル形状特徴)をモニターし、予測されるか又は経験的に観察されるシグナル形状に比較することにより実施することができる。シグナルのこれらの形状特徴は非常に再現性が高く、バックグラウンドランダムシグナル変動から対象シグナルを識別することができる。この種の方法によると、アリコート中の分子数の測定と共に、バックグラウンドシグナル変動から対象シグナルを識別することができる。本発明の各種方法の実施に適したシステム及びキットも本発明の特徴である。定量する核酸は組成が分かっているもの(例えば対照)でもよいし、分かっていないものでもよい。これらの核酸は実験用核酸(該当実験における主対象核酸)でもよいし、他の未知核酸(例えば対象生物サンプルに由来する特性決定されていないゲノム及び/又はcDNA)でもよい。
【0014】
従って、第1の側面では、対象核酸の検出方法が提供される。本方法では、対象核酸と1種以上の付加核酸を含むサンプルを複数の反応混合物に分画する。反応混合物の少なくとも2個は各々対象核酸のシングルコピーを含むシングルコピー反応混合物である。複数の反応混合物は更に、少なくとも1個の付加核酸コピーを含む少なくとも1個の付加反応混合物を含む。複数の反応混合物に1回以上の増幅反応を実施する(この場合、増幅反応は対象核酸を増幅してもしなくてもよく、即ち反応混合物が対象核酸のコピーをもたない場合には増幅せず、1個以上のコピーをもつ場合には増幅する)。シングルコピー反応混合物の1個以上で対象核酸を検出する。このような分析からの複数の結果に基づいて統計的推測と数学的関係を決定することができる。例えば、複雑なサンプル中の全長及びフラグメント化対象核酸の絶対数及び/又は相対比率を決定することができる。
【0015】
密接に関連する側面において、本発明は低コピー核酸と異なる1個以上の高コピー付加核酸をもつサンプル中の対象低コピー核酸の検出方法に関する。本方法はサンプルを複数の反応混合物に分画する段階を含む。混合物は対象核酸のコピーを含まない複数(例えば約5以上、約10以上、約50以上、約100以上、約150以上、又は約500以上)のゼロコピー反応混合物と、対象核酸のシングルコピーを含む少なくとも1個のシングルコピー反応混合物を含む。ゼロコピー反応混合物とシングルコピー反応混合物を増幅反応に付す(増幅が実際に行われるか否かは問わない)。次にシングルコピー反応混合物中で対象核酸を検出する(これは対象核酸が1又は複数の個々のシングルコピー反応混合物中で検出される可能性を含む)。ゼロコピー反応混合物とシングルコピー反応混合物の比率を例えばサンプル希釈データと共に数式に組込むと、サンプル中の対象核酸の濃度、及び/又は全長又はフラグメント化形態の核酸の比率を決定することができる。
【0016】
付加関連類の態様では、サンプル中の対象核酸を定量する関連方法が提供される。本方法では、対象核酸各2コピー以下(一般には1コピー以下)を含む少なくとも25個の反応混合物にサンプルを分画することができる。反応混合物を1回以上の増幅反応に付すことができる。次に対象核酸を複数の反応混合物中で検出する。多数の態様では、複数の反応混合物中の対象核酸の検出に基づいて対象核酸の統計評価を実施する。1類の態様では、2コピー以下を含む少なくとも50以上、少なくとも75以上、又は少なくとも100以上の反応混合物を1回以上の増幅反応に付す。
【0017】
付加類の関連態様では、低コピー対象核酸の検出方法が提供される。本方法では、低コピー対象核酸を含むサンプルを複数の反応混合物に分画する。複数の反応混合物は対象核酸コピーを含まず、反応混合物の少なくとも1個は対象核酸少なくとも1コピーを含む。少なくとも1個のマイクロチャンバー又はマイクロチャネルを含むマイクロフルイディックデバイスで複数のゼロコピー反応混合物を1回以上の増幅反応に付す。対象核酸はゼロコピー反応混合物中に存在しないことを確認する。少なくとも1個の付加ゼロコピー反応混合物と対象核酸を含む反応混合物を1回以上の増幅反応に付す。対象核酸を含む反応混合物中で対象核酸を検出する。別法として、少なくとも核酸が検出されるまでマイクロフルイディックデバイスで反応混合物を増幅し、対象核酸の有無を調べる。低コピー数核酸では、このために、対象核酸が検出されるまで多数の増幅反応をゼロコピー反応混合物で実施する必要があると思われる。
【0018】
本発明は例えば拡散/分散を考慮することによりサンプル中の対象核酸を定量する方法も提供する。本方法では、対象核酸又はその相補配列1コピーを含むサンプルを少なくとも1個の反応混合物に分画する。反応混合物を少なくとも1回の増幅反応に付すことにより、対象核酸のコピーを増幅する。対象核酸、又はそれに対応するシグナルが存在する形状、体積、幅、長さ、高さ、面積等を検出する。反応混合物又はサンプル中の対象核酸のコピー数を表すものとして形状、体積、幅、高さ、長さ、又は面積を解釈することにより、サンプル中の対象核酸を定量する。シグナルのこれらの形状特徴は非常に再現性が高いため、バックグラウンドランダムシグナル変動から対象シグナルを識別するのは簡単である。関連側面では、拡散/分散の知識やこれらの現象の再現性を使用して1個以上のターゲット分子のシグナルをランダム基線システム変動から確実に識別することができる。いずれの場合も、この解釈は例えば熱拡散率及び/又はTaylor Aris分散を考慮して形状、体積、幅、高さ、長さ及び/又は他のシグナル形状特徴を予測値と比較するか、及び/又はシステムで実施される既知反応に経験的に観察される値から逆算することにより、各種方法で実施することができる。この方法は材料がフロー中に分散する連続フローシステムに特に相当することに留意すべきである。対象核酸のフラグメント化及び非フラグメント化形態の定量又は比率測定では、例えば異なる波長のシグナルを発生するプローブを使用することにより、シグナルを均質混合物から並行して読み取ることができる。核酸の2個以上の形態(長さ)の定量は同一又は異なるシグナルパラメーターの解釈に基づいて別々に実施することができる。
【0019】
更に別の類の態様では、希少核酸を検出する高スループット停止フロー方法が提供される。例えば、対象核酸を含むサンプルを複数の反応混合物に分画する対象核酸の検出方法が提供される。反応混合物の少なくとも2個は対象核酸のシングルコピーを各々含むシングルコピー反応混合物である。反応混合物をマイクロチャネルネットワークに流し、マイクロチャネルネットワーク内で停止フロー条件下に1回以上の増幅反応に付す。停止フロー条件下にシングルコピー反応混合物中で対象核酸を検出する。検出段階は複数の反応生成物を同時に検出できることが望ましい。例えば、CCDアレイ又は適切な画像プロセッサーを使用して増幅産物からシグナル「クラウド」の完全チップ(又はそのサブ領域)をスキャンすることができる。即ち、増幅後に(例えば2個以上のプローブを検出するためには2個以上の周波数で)完全チャネル又はチャネルネットワークを同時にスキャンし、増幅によるシグナルが発生する任意ないし全領域を同時に(又は所望により、スキャナー/検出器の2回以上のパスで)検出することができる。サイズ検出が異なるシグナルをもつ2個以上のプローブを使用する場合には、システムソフトウェアは(一般に対象核酸が所与長をもつことを示す)同時シグナルと(一般に対象核酸がフラグメント化されていることを示す)非同時シグナルのシグナル位置を比較することができる。
【0020】
当然のことながら、上記方法は相互にオーバーラップし、上記方法の多くを併用することができる。同様に、上記任意ないし全方法は該当方法のスループットを改善するために連続フローフォーマットで実施することができ、及び/又はマイクロチャネルネットワークの複数領域(又は全体)の画像分析と停止フローを併用することができる。
【0021】
本発明の任意ないし全方法について、反応混合物は対象核酸と、1又は複数の付加核酸(一般に非対象サンプル天然核酸又は対照核酸)を含むことができ、該当方法は反応混合物中の対象核酸及び/又は複数の付加核酸を検出する段階を含む。前記方法は場合により反応混合物又はサンプル又はその両者における対象核酸、又は複数の付加核酸、又はその両者の数を合計する段階を含む。反応混合物又はサンプル中の対象核酸及び/又は複数の付加核酸の合計に対する反応混合物中の対象核酸又は複数の付加核酸の比を決定することができる。これから、反応混合物又はサンプル中の対象核酸の濃度又は比率を決定することができる。同様に、対象核酸数と複数の付加核酸の合計から反応混合物中の合計核酸数の指標が得られる。
【0022】
本発明の任意ないし全方法について、サンプル又は反応混合物の分画はサンプルを複数の反応容器(例えばマイクロタイタープレートのウェル)で希釈、及び/又はサンプルをマイクロフルイディック希釈チャネル又はチャンバーに流入させる操作を含むことができる。マイクロフルイディック態様では、サンプルを場合によりマイクロフルイディック希釈チャネル又はチャンバー(本発明のシステムにおける希釈モジュール形態)で希釈することにより、サンプルをマイクロフルイディック希釈チャネル又はチャンバーで複数の希釈アリコートに分画する。場合により、例えば複数のサンプルをデバイス又は反応容器に同時に流入させることにより、分画/希釈工程の一部又は全部を高スループットのために多重化することができる。サンプル、アリコート、反応混合物等は(例えばマイクロフルイディックデバイスに)加圧下又は電気浸透圧下、又は他の利用可能な任意方法により流動させることができる。マイクロフルイディック態様の便宜のためには、例えば増幅反応の反応及び/又は緩衝液成分(例えばポリメラーゼ、プライマー、遺伝子座特異的試薬、ラベル、塩類、マグネシウム、水及び/又は同等物)の一部又は全部を含む共通反応成分レザバーからサンプルを希釈することができる。あるいは、1個以上の成分を1個以上の付加レザバーに配置し、増幅前に成分を混合することもできる。これらの任意ないし全段階を連続フローフォーマット又は本明細書に記載する停止フロー/同時画像分析法を利用して実施できることが望ましい。
【0023】
対象核酸及び/又は任意付加核酸の濃度は本発明の方法では場合により低く、例えばアリコート当たり約1分子である。例えば、サンプルを対象分子約1個/ナノリットル以下の濃度まで希釈することができる。場合により、希釈したアリコートを各々同一程度まで希釈するが、希釈したアリコートを(例えば希釈系列を形成するように)示差的に希釈してもよい。アリコートの容量は例えばマイクロフルイディック用例で試薬コストを低く維持するように非常に低くすることができる。例えば、アリコートは容量約100nl未満、例えば容量約10nl未満、又は例えば容量約1nl以下とすることができる。
【0024】
多数の態様では、反応混合物の少なくとも1個はエマルションとして分散された水溶液である(典型的増幅反応で使用される酵素は一般に水性環境で良好に機能する)。これはマイクロフルイディックデバイスでは個々に分解した反応混合物液滴の形態を取ることができ、マイクロタイタープレートのレザバーでは流体の形態を取ることができ、あるいは反応混合物の少なくとも1個が非混和性液体に懸濁した水滴を含むエマルションの水相で調製される場合等の他の形態を取ることができる(この態様では、反応混合物がエマルションで調製される場合に反応混合物で増幅を実施することができる)。エマルション態様では、対象核酸は場合により増幅反応を実施する前に水相の少なくとも1個の水滴中にシングルコピーとして存在する。対象核酸は増幅反応の実施後にエマルション中で検出される。場合により、複数の付加核酸もエマルションの水相で調製され、本方法は複数の付加核酸を検出する段階を含む。本発明の他の態様と同様に、例えばエマルション中の所与長をもつ対象核酸の濃度及び/又は比率を決定するために、例えばエマルション中の核酸サイズの比について統計分析を実施することができる。
【0025】
本発明の任意方法において、反応混合物の少なくとも10個は場合により低コピー反応混合物である(例えば100以下、通常は50以下、典型的には10以下、一般には2以下、多くの場合には1以の対象核酸及び/又は付加核酸コピーを含む)。場合により、反応混合物の少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも500以上が低コピー反応混合物である。低コピー反応混合物は1以下の対象核酸コピーを含むシングル又はゼロコピー反応混合物を少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも500以上含むことができる。反応混合物は対象核酸コピーを含まなくてもよく、多くの場合には含まない。従って、複数の反応混合物は対象核酸コピーを含まない複数のゼロコピー反応混合物を含むことができる。即ち、反応混合物の少なくとも約10、25、50、100、150、500、1,000又は10,000以上は対象核酸コピーを含まないゼロコピー反応混合物とすることができる。1側面では、本発明は全長又はフラグメント化対象核酸を個々に識別するためにこのような多数のゼロコピー反応混合物を迅速に検索することができる。
【0026】
本発明の数種の態様では、サンプルは対象核酸と異なる少なくとも1種の付加核酸を含む。付加核酸は対象核酸よりも高コピー数でサンプル中に存在することができ、多くの場合にはそうである。付加核酸は既知核酸(例えば対照又はハイブリダイゼーション阻害核酸)でもよいし、それ自体組成の一部又は全部が未知でもよい(対象核酸を生物サンプル、例えば患者由来細胞又は組織サンプル中で検出しようとする一般的な場合)。例えば、付加核酸はサンプル中の対象核酸の少なくとも約100倍、少なくとも約1,000倍、少なくとも約10,000倍、少なくとも約100,000倍、少なくとも約1,000,000倍以上の濃度で存在することができる(即ち、サンプル中の対象核酸の少なくとも約100倍、少なくとも約1,000倍、少なくとも約10,000倍、少なくとも約100,000倍、少なくとも約1,000,000倍以上のコピーをもつことができる)。十分な数のサンプルアリコートをスクリーニングすることにより、その相対濃度に関係なく、対象核酸を検出することができる。
【0027】
場合により、付加核酸は対象核酸から独立して検出することができる。例えば対象核酸及び/又は付加核酸の統計分析のために、対象核酸と付加核酸の比を決定することができる。(対象核酸、付加核酸、又は他の核酸にいずれかに関係なく)反応混合物中の核酸数を合計し、サンプル中、又は本発明の各種アリコート及び反応混合物の任意のものにおける核酸の濃度(又は相対濃度)を決定することができる。所定態様では、本発明の方法を使用してフラグメント化対象核酸、所与長の核酸及び/又は付加核酸の比及び/又は量を決定することができる。
【0028】
対象核酸は原則的に任意の検出可能な核酸とすることができる。例えば、SNP、低コピー核酸、癌関連核酸、感染性又は病原体関連核酸、法医学用核酸等が挙げられる。本発明の方法は著しく低コピー数の核酸を識別することができ、及び/又は核酸をサイズにより識別することができるので、本発明は癌細胞又は病原体が低濃度で存在する初期疾患診断に適用するのに適している。例えば、大便サンプル中には結腸癌細胞が存在し得るが、少なくとも結腸癌の初期では、癌細胞DNA濃度はこのようなサンプル中のDNA全体に比較して低い(一般にDNAサンプルが由来する細胞の1%を著しく下回る)。一般に、癌細胞に由来する核酸はサンプル中の他の(アポトーシス)細胞に由来する核酸よりも比較的全長である。本発明はこのようなサンプル中の癌DNAを識別し、比率を決定し、定量することにより、新規疾患診断及び予後診断法を提供する。同様のアプローチを使用してこのようなサンプルが一般に採取又は誘導される任意体液又は組織(例えば血液、尿、血清、血漿、唾液、涙液、痰、大便、射精液、子宮頸管スワブ、膣分泌液等)に由来する癌DNA又は病原体核酸を識別することができる。これらのサンプルから、ウイルス(例えばHIV、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス等)、寄生虫(例えばマラリア原虫(Plasmodiuni)、線虫類等)、細菌(例えば病原性大腸菌、サルモネラ菌等)等の感染性/病原性物質を識別することができる。病原体が関連非病原性生物に比較して比較的低濃度で存在する場合(例えば病原性大腸菌は非病原性大腸菌に比較して消化管内に初期に低濃度で存在する)に本方法は特に適切である。方法は例えば臨床サンプル中で溶解した細菌に由来する核酸から生きた細菌に由来する核酸を識別することができる。
【0029】
最も一般には、本発明の方法は熱サイクル増幅反応を利用するが、非熱サイクル反応も使用できる(例えばマイクロスケール用例では熱の代わりに変性剤の使用が比較的一般的な方法である)。1典型類の態様では、1個以上のマイクロスケール増幅チャンバー又はチャネルで反応混合物を熱サイクルに付すことにより反応混合物を1回以上の増幅反応に付す。(例えばマイクロスケール増幅チャンバー又はチャネルで)例えば反応混合物の流体に電流を印加するか、(例えばマイクロスケール増幅チャンバー又はチャネルで)反応混合物と接触又は近接する加熱エレメントを抵抗加熱するか、ジュール−トンプソン又はペルチエデバイスで加熱するか、あるいは他の利用可能な任意加熱又は加熱冷却法によりマイクロスケールデバイス(又は反応容器)で各種熱サイクル法を使用することができる。
【0030】
場合により、操作間の交差汚染を減らすために操作ラン間にシステムの成分を1種以上の試薬で処理することができる。例えば、1個以上の前段増幅産物からの望ましくない汚染を減らすために、増幅反応間に増幅チャネルに酸又は塩基を流入させることができる。
【0031】
適切な類の態様では、検出は例えば(二重標識プローブのポリメラーゼ消化前、消化中、又は消化後に二重標識プローブを検出することにより機能する)TaqMan(登録商標)プローブの使用、分子ビーコンの使用等によるリアルタイム均質PCR検出を含むことができる。リアルタイム検出は例えば単に未標識プローブからアンプリコンの分離後に標識プローブによりアンプリコンを検出することにより省略することができる。
【0032】
場合により、検出段階は反応混合物、又はサンプル、又はその両者における対象核酸を定量することを含むことができる。あるいは、検出段階とは別に核酸を定量することもできる。いずれの場合も、対象核酸の定量は場合により複数のシングルコピー反応混合物中で核酸を検出する段階と、統計的又は確率論的分析を実施して対象核酸のシングルコピーを含む反応混合物の百分率又は分布を決定する段階を含む。統計的又は確率論的分析は利用可能な任意技術又はその組合せを含むことができ、例えばポアソン分析、モンテカルロ分析、遺伝子アルゴリズムの適用、ニューラルネットワークトレーニング、マルコフモデリング、隠れマルコフモデリング、多次元スケーリング、部分最小二乗(PLS)分析、又は主成分分析(PCA)が挙げられる。
【0033】
方法の多くでは、例えば所与反応混合物中の対象核酸の関連シグナルの再現可能な形状、長さ、幅、高さ、体積又は面積を検出することにより対象核酸(例えば全長及び/又はフラグメント化形態)の初期出発濃度を決定することができる。例えば、シグナルは対象核酸に結合したラベルから検出することができる。Taylor−Aris分散計算、又は熱拡散率計算、又はその両者に基づくか、あるいは既知数の増幅用出発核酸をもつ経験的に観察される反応混合物セットと比較することにより、反応混合物の1個に存在するか、及び/又はサンプル中に存在する対象核酸数と形状、長さ、幅、高さ、体積又は面積を場合により相関させる。従って、1側面では、本発明は所与反応混合物中の1種以上の増幅核酸の拡散、又は分散、又はその両者を計算する段階と、増幅前の所与反応混合物の1個における対象核酸のコピー数と拡散、又は分散、又はその両者を相関させる段階を含む。
【0034】
本発明の方法を実施するのに適したシステム及び/又はキットも本発明の特徴である。本システム及び/又はキットは本発明の任意方法段階を実施するための(例えばコンピューター又はコンピューター読み取り可能な媒体で例えばシステムソフトウェアとして具体化された)システム命令を含むことができる。サンプルを保存、移送、分画、又は希釈するための流体操作エレメント(例えばマイクロフルイディック操作エレメント)と検出器エレメントも本発明のシステム及びキットのコンポーネントとすることができる。更に、パッケージング材料、統合エレメント(例えば機器ケース、電源等)、システム及びキットの使用説明書等も本発明の特徴とすることができる。
【0035】
1態様において、本発明はサンプル中の低コピー対象核酸の検出用システムを提供する。本システムはサンプルを複数アリコートに希釈する希釈モジュールと、複数アリコートの1個以上を熱サイクルに付すように構成された増幅チャネル又はチャンバーを含むマイクロフルイディックデバイスを含む。マイクロフルイディックデバイスと一体的であるか又は近接して配置された検出器も含まれ、前記検出器は対象核酸の1個以上の増幅コピーをマイクロフルイディックデバイス内又は前記デバイス上で検出するように構成されている。対象核酸コピーを含まない複数のゼロコピーアリコートと、対象核酸のシングルコピーを含む1個以上のシングルコピーアリコートを含む複数のアリコートにサンプルを分画するように希釈モジュールに指示するシステム命令も含まれる。一般に、システムは検出器により検出されるような対象核酸の増幅コピーにより占められる再現可能なシグナル形状、長さ、幅、体積又は面積をアリコートの1個に存在する対象核酸のコピー数、又はサンプル中に存在する対象核酸のコピー数、又はその両者と相関させるシステムソフトウェアを更に含む。システムは一般に核酸の濃度及び/又は比率を提供するように異なる長さをもつ対象核酸の絶対数又は相対数を評価することができる。任意ないし全システムコンポーネントは対象サンプルがシステムの操作中に連続的に流動するように選択することができる。あるいは、本明細書に記載する停止フロー/同時画像分析法を適用することができる。
【0036】
関連態様では、サンプル中の1種以上の低コピー対象核酸の定量用システムが提供される。本システムでは、希釈モジュールがサンプルを複数のアリコートに希釈する。増幅チャネル又はチャンバーを含むマイクロフルイディックデバイスが複数のアリコートの1個以上を熱サイクルに付すように構成されている。マイクロフルイディックデバイスと一体的であるか又は近接して配置された検出器が反応混合物アリコートの熱サイクル後にアリコートの1個に存在する(多くの場合には検出可能なプローブとハイブリダイズしているか又は先にハイブリダイズして放出されたプローブにより表される)対象核酸の増幅コピーからのシグナルにより占められる再現可能な形状、長さ、幅、体積又は面積を検出するように構成されている。システムは対象核酸の増幅コピーにより占められる形状、長さ、幅、体積又は面積をアリコートの1個に存在する対象核酸のコピー数、又はサンプル中に存在する対象核酸のコピー数、異なる長さをもつ核酸の比率等と相関させるシステムソフトウェアを更に含む。場合により、システムは対象核酸コピーを含まない複数のゼロコピーアリコートと、対象核酸のシングルコピーを含む1個以上のシングルコピーアリコートを含む複数のアリコートにサンプルを分画するように希釈モジュールに指示するシステム命令を含む。
【0037】
上記システム態様の多くでは、希釈モジュールは場合により例えば希釈チャネルとしてマイクロフルイディックデバイスと一体的にすることができる。マイクロフルイディックデバイスはマイクロチャンバー又はチャネルに電流を流すように配置された1個以上の電極を更に含む。マイクロチャンバー又はチャネルへの電流を使用してマイクロチャンバー又はチャネルを加熱することができる。マイクロフルイディックデバイスは場合によりマイクロチャンバー又はチャネルの内側又はその近傍に配置され、マイクロチャンバー又はチャネル内の流体を加熱する1個以上の加熱エレメント(例えば抵抗加熱エレメント、ペルチエデバイス又はジュール−トンプソンデバイス)を含むか又はこれと連結されている。
【0038】
検出器は一般にマイクロフルイディックデバイス内又は前記デバイス上で1個以上の電磁エネルギーを検出するように構成されるが、他のインデバイスセンサー(例えばpH、導電率等)も使用することができる。例えば、検出器はサンプルの蛍光、発光、及び/又は蛍光偏光を検出することができる。場合により、所定態様では検出器はオフデバイス機器(例えばサイズ選択的クロマトグラフィー装置又は質量分析計)とすることができる。
【0039】
システムは場合により本発明の任意方法段階を実施するための命令を備えるソフトウェアを含む。例えば、システムは熱サイクルに付したアリコートの1個以上から受信したシグナルの1種以上の統計的又は確率論的分析を実施する統計的又は確率論的システムソフトウェアを含むことができる。例えば、統計的又は確率論的分析としてはポアソン分析、モンテカルロ分析、遺伝子アルゴリズムの適用、ニューラルネットワークトレーニング、マルコフモデリング、隠れマルコフモデリング、多次元スケーリング、PLS分析、及び/又はPCA分析が挙げられる。統計的又は確率論的分析は場合によりサンプル中の対象核酸の濃度、比率、又は数を定量的に決定する段階を含む。
【0040】
上記システムは場合により希釈モジュールにより希釈されるまでサンプルを保存するサンプル保存モジュール、サンプル保存モジュールからサンプルを抽出し、希釈モジュールに送達するサンプル抽出モジュール等の流体操作又は保存部材を更に含む。これらの部材は場合によりシステムに(例えばサンプルを含む)流体の連続フローを提供する(従って、高サンプルスループットを提供する)ように設計されている。代用、又は併用として、停止フロー/同時画像分析を本発明のシステムで使用することができる。
【0041】
本発明の重要な側面は低又はシングルコピー反応混合物からのシグナルの有無に基づいて対象核酸が少なくとも所与長をもつか否かを判定するための方法及びシステムである。このような判定用の反応混合物は一般に対象核酸の1個以上の鎖に沿って離間された位置の配列に相補的な2個以上のプローブを含む。反応混合物中で2個以上のプローブが同時検出された場合には、個々の核酸分子がプローブハイブリダイゼーション部位間でフラグメント化していないと判断することができる。前記2種のプローブシングルコピー反応混合物技術により長さを判定するのに有用なシステムは反応混合物を調製及び検出するための希釈モジュール及びマイクロフルイディックデバイスと、検出器から獲得したシグナルデータを解釈及び相関させるためのコンピューターを含むことができる。
【0042】
サンプル中の対象核酸が少なくとも所与長を含むか否かを判定する方法は、検出可能なマーカーをもつ2個以上の異なるプローブと反応混合物中の対象核酸を接触させる段階と、核酸を検出領域に流入させ、プローブからの1個以上のシグナルを検出する段階を含む。異なるプローブから2個以上のシグナルが同時に検出された場合には対象核酸がプローブ間でフラグメント化していないと判断することができる。単一シグナルが検出された場合には核酸がフラグメント化していると判断することができる。このような判定はサンプル中の対象核酸の完全性のアッセイとみなすことができる。核酸長判定及び識別用サンプルとしては例えば全血、血清、血漿、大便、尿、膣分泌液、射精液、滑液、生検、脳髄液、羊水、痰、唾液、リンパ液、涙液、汗、及び尿が挙げられる。
【0043】
サンプル中の対象核酸長を識別する好ましい態様では、増幅反応を使用してアッセイの感度を増加することができる。第1のプライマー対及び第1のプライマー対により規定される配列の外側の少なくとも1個のプライマーをもつ第2のプライマー対と対象核酸を接触させ、プライマーからポリメラーゼ伸長させてマイクロチャネル又はマイクロチャンバーで対象核酸を反応混合物中で増幅し、第1のプライマー対により規定される第1のアンプリコン又は第2のプライマー対により規定される第2のアンプリコンを生成する。第1及び第2のアンプリコンに相補的であり、検出可能なマーカーをもつ第1及び第2のプローブを反応混合物に導入し、利用可能な相補配列とハイブリダイズさせ、1個以上のシグナルをプローブから検出する。プローブの一方のみからシグナルが検出された場合には対象核酸がフラグメント化していると判断し、両方のプローブからシグナルが検出された場合には対象核酸がフラグメント化していないと判断する。この高感度アッセイの好ましい態様では、検出される反応混合物は対象核酸のシングルコピーのみを含む。前記方法で検出される反応混合物は例えばシグナル検出前に標識成分の分離を必要としない均質混合物とすることができる。
【0044】
多くの態様では、所望数の低、シングル、及びゼロコピー反応を独立して検出できるようにサンプル中の核酸濃度を調整する。調整は例えば免疫沈降、固体支持体吸着、又は限外濾過による濃縮とすることができる。調整は例えば系列希釈又は流体混合による希釈とすることができる。1態様では、反応混合物中に約1分子/ナノリットル以下の濃度とするように対象核酸を希釈又は濃縮する。
【0045】
多くの態様では、確証的データを獲得し、適切な信頼度レベルで統計的推測を実施できるように、複数の低コピー、シングルコピー、及びゼロコピー反応からの検出結果を集計する。例えば、本発明の1側面では、定量的結果を得るために、各々プローブとのハイブリダイゼーション用として対象核酸2コピー以下を含む少なくとも25個の反応混合物にサンプルを分画し、1個のプローブからのシグナル及び/又は2個以上のプローブからのシグナルが検出されるアリコート数をカウントすることが好ましい。特に定量又は比率分析には、対象核酸のシングルコピー又はゼロコピーをもつ1個以上の反応混合物に分画(濃縮、希釈及び/又は小容量に分離)することが好ましい。集計したデータから1マーカーシグナルと2マーカーシグナルの数を評価し、異なる長さをもつ対象核酸の比率を決定することができる。所定のこのような比率と所定疾患状態との高信頼度の相関の閾値を設定することができる。
【0046】
多くの態様では、例えばランダム切断により核酸がプライマー間でフラグメント化しにくいように又はアンプリコンが不変対照材料として機能できるように、対象核酸の比較的短いセクションを増幅することが望ましい。1側面では、増幅における1個のプライマー対が増幅及び/又はハイブリダイゼーション効率の対照として機能する。これらのプライマー対は約100塩基対長のアンプリコンを規定することが好ましい。プローブターゲットアンプリコンのプライマー対は各プローブでほぼ同一長であることが好ましく、>約1000塩基対〜約20塩基対、又は約200塩基対〜約50塩基対、又は約100塩基対とすることができる。本明細書に記載する所定態様、例えばアンプリコンが短いアンプリコンとこの短いアンプリコンにオーバーラップする長いアンプリコンを含む場合には、長いほうのアンプリコンは一般に約5000塩基対〜約200塩基対、又は約1000塩基対である。増幅判定の大半の例では、プローブの少なくとも1個は1個のプライマー対により規定されるアンプリコン配列に相補的であるが、別のプライマー対により規定されるアンプリコン配列には非相補的である。
【0047】
長さの判定方法における増幅は一般にターゲット(例えば対象核酸)配列の量を増加するため、ハイブリダイズしたプローブの量を増加するため、又はこのようなプローブからのシグナルを増加するために重合酵素を含む増幅反応を構成することにより実施される。本方法における核酸増幅は一般にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)用熱安定性DNAポリメラーゼ、RT−PCR用逆転写酵素、リガーゼ連鎖反応(LCR)用リガーゼ、Q−βレプリカーゼ、又はRNA/転写技術用酵素等のポリメラーゼを増幅反応に加える。
【0048】
長さ判定で使用されるプローブは対象核酸の長さに沿って異なる配列特異性をもつことができる。異なる特異性をもつプローブ上の検出可能なマーカーは同一シグナルをもつことができるが、核酸又は関連アンプリコン上の異なる相補配列とハイブリダイズするプローブは検出可能に相異するシグナルをもつことが好ましい。プローブは適切な任意検出可能なマーカーをもつことができるが、好ましいマーカーは蛍光色素に基づく。特に、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)検出可能なマーカー又は分子ビーコン(MB)マーカーを含むプローブが好ましい。
【0049】
対象核酸の所与長の判定方法は核酸とそのフラグメント化状態を定量することができる。このような定量は単に低又はシングルコピー反応におけるプローブからのシグナル数をカウントし、既知希釈倍率、効率係数、標準曲線等に基づいて核酸量を計算すればよい。定量は例えば異なる検出可能なマーカーシグナルをもつ2個以上の異なるプローブからのシグナル数に基づいて対象核酸の各種フラグメント化形態の量を別々に決定することができる。実シグナル(即ちシグナルがアーチファクトではないこと)を確認するか、及び/又はサンプル中の核酸の所定量を表すものとして1個以上のシグナル(例えばチャートピーク)の形状、体積、幅、高さ、長さ、面積、又は比等のシグナルパラメーターを解釈することができる。定量はシグナルピークパラメーターと内部標準シグナルとの比較に基づくことができる。場合により、定量は異なる増幅度の2個以上の反応混合物からのシグナルと類似増幅度の標準反応混合物との比較に基づくことができる。この態様では、反応混合物を異なる流速でサーモサイクラーに流すか、反応混合物をサーモサイクラーに異なる距離で流入させるか、反応混合物をサーモサイクラーに異なる時間保持するか、又は反応混合物を異なる増幅サイクル数に付すことにより、異なる増幅度を得ることができる。
【0050】
そのシグナルピークを標準シグナルピークセットと比較することにより、未知量の対象核酸を含むサンプルを定量することができる。例えば、既知量の対象核酸を含有する標準材料の希釈系列を所定増幅サイクル数で増幅し、標準材料から生成された標準アンプリコンに関連するシグナルを検出し、対象サンプル核酸を前記増幅サイクル数で増幅し、対象サンプル核酸から生成されたサンプルアンプリコンに関連するシグナルを検出し、1個以上の標準アンプリコンシグナルをサンプルアンプリコンシグナルと比較してサンプル中の対象核酸の濃度値を決定することにより、サンプル中の対象核酸を定量することができる。比較のためのサンプル及び標準シグナルパラメーターとしては例えばそのシグナルピークの形状、シグナルピーク上の変曲点、シグナルピークの傾き、シグナルピーク振幅、シグナルピーク面積、高さの2分の1のシグナルピーク幅、及び/又は同等物が挙げられる。各種反復試験スキームにより結果の信頼性を強化することができる。例えば、増幅、検出、及び比較段階を異なる増幅サイクル数で1回以上繰返し、統計的評価のために対象サンプル核酸の付加濃度値を決定すると、より高精度又は高確度でサンプル中の対象核酸の濃度値結果が得られる。
【0051】
2個以上の異なるサイクル数で増幅後にシグナルデータを集めることにより改善されたアッセイ結果を得ることができる。定量アッセイを異なる増幅度で実施する主要な利点はアッセイの使用可能範囲を拡大することである。一般に、複数の増幅レベルの分析により提供される付加データの統計的評価は、精度、確度、及び感度等の他のアッセイパラメーターを強化することができる。複数の増幅の検出に基づくサンプル中の対象核酸の定量は、対象核酸を2以上の増幅サイクル数で増幅する段階と、2以上の増幅サイクル数から生成されたアンプリコンに関連するシグナルを検出する段階と、増幅サイクル数に対するシグナルパラメーターのサンプル曲線を作成する段階と、サンプル曲線からの1個以上の識別可能点を濃度に対する識別可能点の標準曲線と比較し、対象核酸を定量する段階を含む。シグナル曲線からの識別可能点の例としては変曲点、所定傾きをもつ点、所定シグナル振幅をもつ点、最大シグナル振幅の所定フラクションをもつ点、及び/又は同等点が挙げられる。
【0052】
シグナル対サイクル曲線からの識別可能点に依存するこのような定量アッセイは完全性の評価においてフラグメント化及び非フラグメント化対象核酸を定量又は比率測定するために使用することができる。対象核酸の2個以上の異なるアンプリコンを規定する反応混合物中で対象核酸を複数の増幅サイクルで増幅し;少なくとも2の異なる増幅サイクル数の後に異なるアンプリコンの各々に関連する異なるシグナルを均質反応混合物から検出し;増幅サイクル数に対する異なるシグナルの各々のサンプル曲線を作成し;識別可能点に対する対象核酸濃度を表す1個以上の標準曲線とサンプル曲線からの1個以上の識別可能点を比較することにより、サンプル中のフラグメント化対象核酸と所与長対象核酸の比率を決定することができる。各アンプリコンを相対的又は絶対的に定量し、サンプル中の対象核酸配列の量を決定することができる。好ましい態様では、検出される増幅反応混合物は低コピー又はシングルコピー反応混合物であるため、フラグメント化核酸と所与長核酸を明確に判定することができる。即ち、低又はシングルコピー混合物から2個以上又は異なるシグナルが同時検出された場合には所与長の核酸であると判断することができ、異なるシグナルの1個が検出された場合にはフラグメント化核酸であると判断することができる。本明細書の他の箇所に記載するように、サンプルと標準に実施する増幅サイクル数は例えば増幅反応混合物を異なる流速でサーモサイクラーに流すか、増幅反応混合物をサーモサイクラーに異なる距離で流入させるか、増幅反応混合物をサーモサイクラーに異なる時間保持するか、又は増幅反応混合物を異なる増幅サイクル数に付すことにより制御することができる。
【0053】
サンプル中の対象核酸長の識別システムを使用して本明細書に記載する方法の多くを実施することができる。前記システムは基本的に対象核酸の1個以上のアンプリコンを提供する条件下で1個以上の反応混合物を収容する増幅マイクロチャネル又はマイクロチャンバーをもつマイクロフルイディックデバイスと、マイクロフルイディックデバイスと一体的であるか又は近接して配置され、均質混合物から1個以上のシグナルとしてアンプリコンを検出するように構成された検出器と、1個以上の個々の対象核酸分子の長さを表すものとして1個以上の同時に検出されたシグナルを解釈し、対象核酸長を識別するソフトウェアシステムを含むことができる。マイクロフルイディックデバイスに複数の増幅チャネルを配置することにより、システムの高スループット側面を強化することができる。システムは反応混合物の調製前もしくは調製中に対象ヌクレオチドを捕獲するため、又は検出用にアンプリコンを捕獲するために固体支持体上にオリゴヌクレオチド等のアフィニティー分子を含むことができる。例えば本発明の高スループット側面を強化するための他のシステムエレメントとしてはサンプル保存モジュール、サンプル抽出モジュール、及びコンピューターが挙げられる。
【0054】
本発明のシステムは反応混合物成分の濃度を調整するための希釈モジュールを含むことができる。希釈モジュールは増幅マイクロチャネル又はマイクロチャンバーに対象核酸の1個以上のシングルコピー反応混合物を提供する濃度までサンプルを希釈するように構成することができる。このような希釈モジュールは系列マルチウェルプレート希釈液を調製するための装置、又はマイクロフルイディックデバイスの希釈チャネルとすることができる。システムは対象核酸コピーを含まない複数のゼロコピーアリコートと、対象核酸のシングルコピーを含む1個以上のシングルコピーアリコートを含む複数のアリコートにサンプル又は反応混合物を分画するように希釈モジュールに指示する命令を含むことができる。このような希釈(又は濃縮)により、シグナルを個別にカウントするように実質的数のオーバーラップしない反応混合物アリコートが得られる。
【0055】
システムの反応混合物は核酸の増幅、プライマー又はプローブのハイブリダイゼーション反応、及び/又は検出可能なマーカーシグナルの検出に関連する成分を含むことができる。長さを検出するための典型的な反応混合物は対象核酸と、第1のプライマー対と、第1のプライマー対により規定される配列の外側の対象核酸配列に相補的な少なくとも1個のプライマーを含む第2のプライマー対と、第1のプライマー対により規定されるアンプリコンを合成することができるポリメラーゼを含むことができる。所定態様では、対照プライマー対が100塩基対長以下のアンプリコンを規定し、試験プライマー対が約100塩基対〜約3000塩基対長のより長いアンプリコンを規定する。この態様では、対照アンプリコンは通常、長い対照プローブのプローブシグナルをもつ長いアンプリコンの配列とオーバーラップし、フラグメント化している核酸の比率を表す。他の態様では、2組のプライマー対がほぼ同一長のアンプリコンを規定するが、これらのアンプリコンはオーバーラップしない。この態様では、低又はシングルコピー反応からの同時シグナルは対象核酸が所与長(プローブとプローブ間の距離により規定される長さ)をもつと判断することができる。
【0056】
増幅反応混合物及び/又はハイブリダイゼーション混合物は対象核酸長を判定するための1個以上のプローブを含むことができる。プローブは1個以上の検出可能なマーカーと、検出可能なマーカーが検出器により検出可能なシグナルを発生するようにアンプリコンの1個以上に相補的な配列をもつことができる。プローブは1個のプライマー対により規定されるアンプリコン配列に相補的であり、別のプライマー対により規定されるアンプリコン配列には非相補的とすることができるが、所定の上記方法では、プローブは第1のアンプリコンと第2のアンプリコンの両者に共通の配列に相補的とすることができる。例えば受信したシグナルの振幅から、同一マーカーをもつ2個の異なるプローブがシングルコピー反応に存在すると推測することができる。しかし、多くの態様では、2個以上の異なるプローブが同時シグナルを容易に独立してモニターするように各々異なるシグナルを含むことができる。例えば、異なるプローブ上の検出可能なマーカーは異なる蛍光発光波長をもつことができる。プローブは例えば蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)検出可能なマーカー又は分子ビーコン(MB)マーカーとすることができる。特に好ましい態様では、プローブは低レベルバックグラウンドノイズに対して均質混合物から1個以上の陽性シグナルを検出できるように、ヌクレアーゼ活性によりFRETプローブから除去可能なクエンチャーを含む検出可能なマーカーをもつ。
【0057】
長さを判定するためのシステムは反応成分の増幅条件を提供する増幅チャネル又はチャンバーを含むことができる。好ましいシステムでは、チャンバーはサーモサイクラーであり、対象核酸はポリメラーゼ反応により増幅される。増幅マイクロチャネル又はマイクロチャンバーは、例えばマイクロチャネルに加熱電流を印加するための電極、抵抗加熱エレメント、ジュール−トンプソンデバイス、ペルチエデバイス、及び/又は同等物を含むことができる。増幅マイクロチャネル又はマイクロチャンバーはサンプル中の他の対象核酸分子又はサンプル中の付加核酸から単一対象核酸分子の増幅産物を実質的に分離するために十分小さい容量の対象核酸のアンプリコンを生成するように反応混合物を熱サイクルに付すように構成することができる。本発明のシステムでは、例えばサイズ選択的媒体又はアフィニティー媒体中で異なるアンプリコン又は異なるプローブを分離せずにアンプリコンを検出することができる。
【0058】
ソフトウェアシステムは長さを判定する方法の高スループット側面を強化し、検出されたシグナルの解釈を自動化するようにコンピューターで機能することができる。例えば、システムソフトウェアはサンプル中の対象核酸のコピー数、所与長をもつ対象核酸数、又は異なる長さをもつ対象核酸の比率を表すものとして検出器からのシグナル体積、幅、高さ、長さ、面積、及び/又は比を解釈することができる。
【0059】
システムの検出器は適切な任意の検出可能なマーカーからシグナルを検出することができる。検出器としては例えば蛍光光度計、電荷結合デバイス、レーザー、酵素もしくは発色酵素基質、光電子増倍管、分光光度計、走査型検出器、顕微鏡、ガルボスキャナー、及び/又は同等物等の技術が挙げられる。好ましい態様では、検出器は異なるシグナルをもつ2個以上の検出可能なマーカーから独立してシグナルを検出することができ、例えば2個以上の周波数の発光を同時に検出することができる蛍光光度計である。
【0060】
上記方法及びシステムの多くは併用することができる。本発明のその他の特徴は以下の記載から自明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
本発明の一因は希少核酸をサンプル中又はサンプルから増幅及び検出する方法を検討する際に驚くべき発想の転換をした点にある。従来、希少核酸の検出は増幅及び検出反応の特異性と感度を改善する方法を見いだそうとすることにより実施された。これは反応が対象核酸を特異的に増幅及び識別する能力を増すほどシステムの信頼性とスループットが増すためである。簡単なたとえを挙げると、干し草の山の中の針を探そうとする場合に、従来技術の思想は干し草の山からより効率的に針を取出す方法に着目している。
【0062】
本発明は全く異なるアプローチで対象核酸を識別しようとするものである。複雑なサンプルから対象核酸を直接検出しようとするのではなく、完全なサンプルを単に低コピー数アリコートに分解し、対象核酸がみつかるまで低コピー数アリコートを増幅反応と個々の検出に付す。簡単なたとえを続けると、干し草の山全体を干し草1本ずつに分け、各々について干し草であるか針であるかを調べる。この低又はシングルコピー増幅の概念は非常に低いバックグラウンドに対して高感度の分析を提供することができる。
【0063】
このような低又はシングルコピー増幅は核酸長を評価するために本発明で特に有用であると思われる。例えば、ターゲット核酸の両端に特異的なプローブ対とドットブロットサンプルをハイブリダイズした場合には、ターゲットの完全性に関する結果が曖昧になる可能性がある。ターゲット核酸がフラグメント化しているか否かに関係なく、両方のプローブからのシグナルが同一ブロットで検出される。しかし、ターゲットをシングルコピー増幅し、単離反応混合物中でプローブとハイブリダイズした場合に、両方のプローブからシグナルが検出されたならば、ターゲットはプローブに相補的な配列間でフラグメント化していないと判断される。他方、シングルコピーターゲット核酸フラグメントを増幅及びハイブリダイゼーションした場合には、プローブの一方のみからシグナルが検出される。従って、2個のプローブからの同時シグナルは全長ターゲットを表し、プローブの一方のみからシグナルが検出された場合にはシングルコピー反応にフラグメント化ターゲットが存在すると判断することができる。
【0064】
最新の高スループットシステムによりこの新発想アプローチが可能になり、即ち例えばマイクロフルイディック増幅技術を使用して低コストで著しく多数の増幅反応を実施することが可能になったため、サンプル中の任意特定対象核酸を著しく精緻にサンプリングすることができる。これらのシステムの連続フロー又は高スループット停止フロー特性により、アプローチは更に容易になる。更に、このような精緻なサンプリング法によりサンプルを試験すると、サンプルの組成及びフラグメント化又は非フラグメント化対象核酸の比率に関して多量の定量情報(とそれに伴う統計分析の可能性)が得られる。この結果、対象核酸の存在度(又は相対存在度)に関連する診断及び予後情報が得られる。
【0065】
(定義)
本発明は特定装置又は生物系、又は増幅方法に限定されず、当然のことながら種々のものに適用できると理解すべきである。同様に、本明細書で使用する用語は特定態様のみの説明を目的とし、限定的でないことも理解すべきである。本明細書と特許請求の範囲で使用する単数形はそうでないことが内容から明白である場合を除き、場合により複数形も含む。従って、例えば「マイクロフルイディックデバイス」とは場合により1、2又はそれ以上の装置の組合せを含む。
【0066】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全科学技術用語は本発明が属する分野の当業者に通常理解されている通りの意味をもつ。本発明の試験の実施には本明細書に記載するものと同様又は等価の任意方法及び材料を使用することができるが、好ましい材料と方法は本明細書に記載する。本発明の記載及び特許請求の範囲では、以下の用語は以下の定義に従って使用する。
【0067】
「アリコート」は対象成分(例えばサンプル又は反応混合物)の一部である。アリコートは対象成分に対して希釈してもよいし、濃縮してもよいし、希釈しなくてもよい。
【0068】
「対象核酸」はサンプル中の増幅、検出及び/又は定量すべき任意核酸である。対象核酸は本発明の方法及びシステムを使用してフラグメント化形態及び/又は非フラグメント化形態で検出及び識別することができる。
【0069】
「増幅反応」は1)鋳型が増幅されるか、又は2)鋳型が存在していたならば鋳型が増幅されると予想される反応である。従って、「増幅反応」は増幅すべき核酸を含むサンプルアリコート、又は核酸を含まないサンプルアリコートで実施することができる。鋳型の実際の増幅は増幅反応を実施するための要件ではない。
【0070】
本明細書で使用する「反応混合物」とは増幅反応及び/又はハイブリダイゼーション反応の成分混合物を意味する。対象核酸を含むか又は含まない反応混合物のアリコートも反応混合物とみなすことができる。シングルコピー反応混合物は対象核酸及び任意関連アンプリコンが別の対象核酸又はその関連アンプリコンとオーバーラップしない容量の反応混合物の成分を含む。
【0071】
「ゼロコピー」反応混合物又はアリコートは該当核酸(例えば対象核酸、又は付加核酸)のコピーをもたない反応混合物又はアリコートである。これは該当核酸以外にサンプルに由来する核酸を含むものでもよいし、サンプルに由来する鋳型核酸を全く含まないものでもよい。
【0072】
「シングルコピー」反応混合物は該当核酸1コピーをもつ。反応混合物は例えば所与長核酸、又はそのフラグメントのシングルコピーを含む増幅反応混合物又はハイブリダイゼーション混合物とすることができる。
【0073】
「低コピー」反応混合物又はアリコートは該当核酸を数コピーしかもたない反応混合物又はアリコートである。一般に、このような反応混合物は該当核酸コピー数が50以下、一般には25以下、通常は10以下、多くの場合には5以下、2以下又は1以下である。
【0074】
「高コピー」核酸反応混合物又はアリコートは低コピー数反応混合物又はアリコートの少なくとも10倍、一般には低コピー数反応混合物の10倍、10倍、10倍、又は10倍以上のコピーをもつ。
【0075】
サンプル中の核酸の絶対量又は相対量を決定する場合に核酸はサンプル中で「定量」ないし「定量化」される。これはコピー数、核酸の濃度、サンプルの所定の他の成分(例えば別の核酸)に対する核酸の比もしくは比率、又は他の適切な任意表現として表現することができる。
【0076】
本明細書で使用する対象核酸の「所与長」とは核酸にハイブリダイズした2個のプローブ間の距離とプローブに相補的な配列の和を意味する。所与長は例えば塩基対単位で測定した既知距離でもよいし、例えば低又はシングルコピー反応混合物からの同時シグナルの検出により、非フラグメント化配列として存在すると判定された未知距離でもよい。
【0077】
本明細書で使用する「異なるプローブ」なる用語は異なるターゲット配列に相補的であるか又はストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で特異的にハイブリダイズするプローブを意味する。
【0078】
本明細書で使用する「異なる検出可能なマーカー」なる用語は本発明で検出器により識別可能なシグナルを発生する検出可能なマーカーを意味する。
【0079】
(対象核酸及びサンプル)
本発明の方法で検出すべき対象核酸は原則的に任意核酸とすることができる。(逆翻訳により核酸配列を誘導することができる)多数の核酸及びアミノ酸の配列が入手可能である。本発明の方法では数十万種の公知アミノ酸を識別しようとせずに、これらのアミノ酸の任意のものを検出することができる。公知核酸の一般的な配列寄託機関としてはGenBank、EMBL、DDBJ及びNCBIが挙げられる。他の寄託機関もインターネットを検索することにより容易に確認できる。核酸はRNA(例えば増幅がRT−PCR又はLCRを含む場合)又はDNA(例えば増幅がPCR又はLCRを含む場合)、又はそのアナログ(例えば合成核酸又はそのアナログの検出)とすることができる。例えば突然変異、一塩基多型(SNP)、対立遺伝子、アイソタイプ、フラグメント、全長核酸、アンプリコン等の任意核酸変異を検出することができる。更に、本発明は定量的であるため、発現レベル、フラグメント化、又は遺伝子コピー数の変動を本発明の方法により検出することができる。
【0080】
一般に、本発明の方法は対象核酸について患者(例えば患者からの体液及び/又は老廃物)に由来するサンプルをスクリーニングするのに特に有用である。これは本発明の方法では比較的多量のこのような材料に由来するサンプルをスクリーニングできるためである(このような材料の採取も比較的非侵襲性である)。(例えば癌細胞中に存在する)対象核酸はサンプルの関連核酸集団の1%以下(例えば対象遺伝子の対立遺伝子の約1%、.1%、.001%、.0001%以下)である可能性が高い。従って、本発明の方法により全血、血清、血漿、大便、尿、膣分泌液、射精液、滑液、生検、脳髄液、羊水、痰、唾液、リンパ液、涙液、汗、又は尿等及び原則的に任意対象組織を希少核酸又はフラグメント化について容易にスクリーニングすることができる。これらのサンプルは一般にインフォームドコンセント後に標準医療検査法により患者から採取される。
【0081】
分画及び増幅前に、例えばBerger and Kimmel,Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology volume 152 Academic Press,Inc.,San Diego,CA(「Berger」);Sambrookら,Molecular Cloning−A Laboratory Manual(第3版),Vol.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,2000(「Sambrook」);及び/又はCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubelら編,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,(2002年補遺)(「Ausubel」)に教示されている方法等の利用可能な任意方法により核酸を場合によりサンプルから精製する。細胞又は他のサンプルから核酸を精製するための多数のキットが市販されている(例えばEasyPrep(登録商標)、FlexiPrep(登録商標)(いずれもPharmacia Biotech製品);StrataClean(登録商標)(Stratagene製品);及びQIAprep(登録商標)(Qiagen製品)参照)。あるいは、サンプルを単に例えば分画と希釈後に直接増幅してもよい。単分子検出の1つの利点は反応中のサンプル成分濃度が低いため、核酸精製の必要を軽減できるという点である。即ち、サンプルの希釈により望ましくない成分の存在度を減らすと同時に対象核酸を反応混合物に分配する。
【0082】
本発明の方法で検出すべき好ましい類の対象核酸は癌に関与する核酸である。本発明の方法では癌に関連する任意核酸を検出することができ、例えば過剰発現もしくは突然変異ポリペプチド増殖因子(例えばsis)、過剰発現もしくは突然変異増殖因子受容体(例えばerb−B1)、過剰発現もしくは突然変異シグナル伝達蛋白質、例えばG−蛋白質(例えばRas)、又は非受容体チロシンキナーゼ(例えばabl)、又は発現もしくは突然変異調節蛋白質(例えばmyc,myb,jun,fos等)及び/又は同等物をコードする核酸が挙げられる。1好適態様では、特定又は任意対象核酸をフラグメント化量についてスクリーニングし、高度フラグメント化は一般に正常細胞のアポトーシスに関連し、低度フラグメント化は例えば癌細胞の痂皮形成に関連する。一般に、癌はシグナル伝達分子及び対応する癌遺伝子産物(例えばMos、Ras、Raf及びMetをコードする核酸);並びに転写アクチベーター及びサプレッサー(例えばp53、Tat、Fos、Myc、Jun、Myb、Rel、及び/又は核受容体)に結び付けられることが多い。p53は口語では細胞の「分子警官」と呼ばれ、全公知癌の約50%がp53の1箇所以上の遺伝子損傷に起因し得るので特筆される。
【0083】
説明のために癌に関連する1類の遺伝子を例にとると、多くの核ホルモン受容体が詳細に記載されており、発癌活性を付与するようにこれらの受容体を変異させるメカニズムも解明されている。例えば、甲状腺ホルモン作用の生理的及び分子基礎はYen(2001)“Physiological and Molecular Basis of Thyroid Hormone Action” Physiological Reviews 81(3):1097−1142とその引用文献に記載されている。十分に特性決定された公知核受容体としてはグルココルチコイド(GR)、アンドロゲン(AR)、ミネラロコルチコイド(MR)、プロゲスチン(PR)、エストロゲン(ER)、甲状腺ホルモン(TR)、ビタミンD(VDR)、レチノイド(RAR及びRXR)の受容体、及びエイコサノイドと結合するペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)が挙げられる。所謂「オーファン核受容体」も核受容体スーパーファミリーに含まれ、ステロイド及び甲状腺ホルモン受容体等の古典的核受容体と構造的に相同である。本発明の方法ではこれらの任意受容体又はその発癌形態をコードする核酸を検出することができる。現在入手可能な全薬剤の約40%が核受容体及び/又はその発癌形態のアゴニスト又はアンタゴニストであり、これらの受容体(及びそのコーディング核酸)が本発明の方法による分析ターゲットとして比較的重要であることが明らかである。
【0084】
上述のように、対象核酸の好ましい1類は例えば大便に由来するサンプル中の結腸癌の診断用核酸である。結腸癌はよく見られる疾患であり、散発性と遺伝性がある。結腸癌の各種パターンの分子基礎は多少詳細に分かっている。一般に、生殖細胞突然変異が遺伝性結腸癌症候群の基礎であり、体細胞突然変異の蓄積が散発性結腸癌の基礎である。アシュケナージ系ユダヤ人では、従来多形と考えられていた突然変異が家族性結腸癌の原因らしい。癌遺伝子、サプレッサー遺伝子、及びミスマッチ修復遺伝子の少なくとも3種の異なる類の遺伝子の突然変異が結腸癌病因として記載されている。核酸の1例はフィブロネクチンに相同性をもつ細胞接着分子であるDCC(結腸癌欠失)をコードする。結腸癌の付加形態は損傷を含む常染色体優性遺伝子hMSH2である。家族性大腸腺腫症は染色体#5のMCC遺伝子座に損傷をもつ別の形態の結腸癌である。結腸癌の更に詳細については、Calvertら(2002)“The Genetics of Colorectal Cancer”Annals of Internal Medicine 137(7):603−612とその引用文献参照。大便中に検出することができる各種結腸癌及び結腸癌マーカーについては、例えばBoland(2002)“Advances in Colorectal Cancer Screening:Molecular Basis for Stool−Based DNA Tests for Colorectal Cancer:A Primer for Clinicians”Reviews In Gastroenterological Disorders Volume 2,Supp.1とその引用文献参照。他の癌と同様に、Rasやp53等の癌に相関する他の各種遺伝子における突然変異は癌の有用な診断指標である。別の側面では、本発明の方法を使用するフラグメント化レベルの検出は結腸癌の検出に特に有用であると思われる。例えば、大便試料中で入手可能な合計患者DNAの量は少ないので、本発明の増幅側面はDNAの試験に有用であると思われる。正常結腸内壁から脱落した細胞に由来するDNAは一般に例えば約100塩基対長のフラグメントに分解されるが、結腸腫瘍細胞から結腸内腔に入るDNAは一般にフラグメント化していないと思われる。大便試料中に所定閾値を上回る比率の非フラグメント化核酸の存在が検出されたならば、結腸癌の存在に相関すると考えられる。
【0085】
子宮頸癌は例えば膣分泌液から得られるサンプル中での検出に好ましい別のターゲットである。子宮頸癌はパポバウイルスに起因すると考えられ、E6及びE7の2種類の癌遺伝子をもつ。E6はp53と結合してこれを除去し、E7はPRBと結合してこれを除去する。p53の損失とpRBの非調節下のE2F/DP増殖因子の無制御な作用が子宮頸癌に至る1つのメカニズムである。更に、結腸癌と同様に、膣スワブ中に所定閾値を上回る比率の非フラグメント化核酸の存在が検出されたならば、子宮頸癌の存在に相関すると考えられる。
【0086】
本発明の方法による検出の別の好ましいターゲットは例えば涙液に由来するサンプル中の網膜芽細胞腫である。網膜芽細胞腫はpRB遺伝子の不活性化に起因する眼腫瘍である。親が突然変異pRB遺伝子をもつ場合には遺伝することが分かっている(当然のことながら、体細胞突然変異はこの癌の非遺伝性形態の原因となり得る)。
【0087】
本発明の方法では神経線維腫症1型を検出することができる。NF1遺伝子が不活性化されると、ras癌遺伝子のGTPase活性が活性化される。NF1が欠失しているならば、rasは活性が過剰になり、神経腫瘍の原因となる。本発明の方法はCSF内又は組織サンプリングにより神経線維腫症1型を検出するために使用することができる。
【0088】
多数の他の形態の癌が公知であり、本発明の方法を使用して例えば関連遺伝子損傷、フラグメント化比率、又は完全長対象核酸の絶対濃度を検出することにより検出することができる。適切な損傷又はフラグメント化値を検出することにより検出可能な癌としてはリンパ、血液、胃、消化管、結腸、精巣、膵臓、膀胱、子宮頸管、子宮、皮膚、及び関連遺伝子損傷又はフラグメント化閾値が存在する他のほぼ全組織の癌が挙げられる。この点については、The Molecular Basis of Human Cancer Coleman and Tsongalis(編)Humana Press;ISBN:0896036340;第1版(2001年8月)参照。
【0089】
同様に、例えば感染性真菌(例えばAspergillus、又はCandida種);細菌、特に病原細菌モデルとして利用できる大腸菌(及び当然のことながら所定の病原性細菌株)や医学的に重要な細菌(例えばStaphylococci(例えばaureus)又はStreptococci(例えばpneumoniae));原生動物(例えば胞子虫類(例えばPlasmodia)、根足虫類(例えばEntamoeba)及び鞭毛虫類(Trypanosoma、Leishmania、Trichomonas、Giardia等));ウイルス(例えば(+)RNAウイルス(例えばポックスウイルス(例えばワクシニア)、ピコルナウイルス(例えばポリオ)、トガウイルス(例えば風疹)、フラビウイルス(例えばHCV)、及びコロナウイルス)、(−)RNAウイルス(例えばラブドウイルス(例えばVSV)、パラミクソウイルス(例えばRSV)、オルトミクソウイルス(例えばインフルエンザ)、ブンヤウイルス及びアレナウイルス)、dsDNAウイルス(例えばレオウイルス)、RNA→DNAウイルス(即ちレトロウイルス、例えばHIV及びHTLV)、及び所定のDNA→RNAウイルス(例えばB型肝炎))等の病原性又は感染性生物に由来する核酸も本発明の方法により検出することができる。本発明のシングル及び低コピー増幅法は例えば(全長核酸をもつ)生きた病原体と(フラグメント化核酸をもつ)死んで溶解した病原体を識別するために細菌感染浸出液中で多くの場合に有用であり得る。
【0090】
本発明の方法によると、アミダーゼ、アミノ酸ラセマーゼ、アシラーゼ、デハロゲナーゼ、ジオキシゲナーゼ、ジアリールプロパンペルオキシダーゼ、エピメラーゼ、エポキシドヒドロラーゼ、エステラーゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、グルコースイソメラーゼ、グリコシダーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、ハロペルオキシダーゼ、モノオキシゲナーゼ(例えばp450類)、リパーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、ニトリルヒドラターゼ、ニトリラーゼ、プロテアーゼ、ホスファターゼ、スブチリシン、トランスアミナーゼ及びヌクレアーゼ等の酵素(例えば産業用酵素)をコードする各種核酸も検出することができる。同様に、昆虫耐性蛋白質(例えばCry蛋白質)、澱粉及び脂質産生酵素、植物及び昆虫毒素、毒素耐性蛋白質、マイコトキシン解毒蛋白質、植物成長酵素(例えばリブロース1,5−ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ、「RUBISCO」)、リポキシゲナーゼ(LOX)及びホスホエノールピルビン酸(PEP)カルボキシラーゼ等の農業関連蛋白質も検出することができる。
【0091】
(サンプル分画)
サンプルは標準又はマイクロフルイディック流体操作アプローチ(又はその組合せ)を使用して分画及び/又は希釈することができる。希釈/分画のための標準流体操作アプローチとしては、例えば適切な容量のサンプルをマイクロタイタートレイにピペッティングする方法や、適切な希釈剤を添加する方法が挙げられる。これらの操作は手動で実施してもよいし、例えばマイクロタイタートレイで系列希釈溶液を使用するように構成されたもの等の入手可能な高スループット流体ハンドラーを使用して実施してもよい。本発明では対象サンプルの多数のアリコートの作成及び使用を意図しているので、(例えば自動ピペッターとロボットマイクロタイタートレイ操作を組込んだ)高スループット装置が好ましい。
【0092】
多数の自動流体操作システムが市販されており、本発明の関連でサンプルを分画及び/又は希釈するために使用することができる。例えば、一般に例えばロボット及び流体操作モジュールを含む各種Zymateシステムを利用する各種自動システムがZymark Corporation(Zymark Center,Hopkinton,MA)から市販されている。同様に、例えばマイクロタイタートレイ操作用に各種実験室システムで使用される汎用ORCA(登録商標)ロボットも例えばBeckman Coulter,Inc.(Fullerton,CA)から市販されている。いずれの場合も、本発明の方法の実施においては従来の高スループットシステムをマイクロフルイディックシステムに代用又は併用することができる(例えば、従来のシステムを使用してサンプルをマイクロタイタートレイに分注し、マイクロフルイディックシステムから材料を吸引することができる)。
【0093】
1側面では、エマルションを作製し、サンプルアリコートがエマルション内の液滴を含むか又は液滴から構成されるようにする。エマルションを標準熱サイクル反応により増幅し、増幅した核酸を標準装置(例えばフローサイトメーター、顕微鏡ステーション、又はCCDアレイ)によりエマルションの液滴内で検出することができる。
【0094】
マイクロフルイディックシステムは本発明に簡便に適用することができる好ましい流体操作及び増幅技術を提供する。典型的態様では、マイクロスケールキャビティ(少なくとも1個の寸法が約500μM未満、多くの場合には約100μM未満のチャネル、チャンバー等)のネットワークを含むマイクロフルイディックデバイスにサンプルを吸引し、キャビティ(例えばチャネル及び/又はチャンバー)のネットワークでサンプルを混合、希釈、分画又は他の方法で操作する。例えば、マイクロスケールデバイスはネットワークと流体連通しており、マイクロスケールデバイスの本体構造から外側に延びる1個以上のキャピラリーを含むことができる。負圧(真空)をキャピラリーに印加し、流体を容器(例えばマイクロタイタートレイのウェル)からネットワークに吸引する。このプロセスは多数のサンプルをネットワークに同時に吸引して処理できるように、複数のキャピラリーチャネルを含むデバイスを使用することにより多重化することができる。あるいは、複数サンプルをマイクロフルイディックデバイスに順次吸引し、同時処理及び分析のために複数チャネルに内部で導くこともできる。乾燥サンプルとのサンプルインターフェースも例えばマイクロフルイディックデバイスに吸引する前にサンプルを水和するようにキャピラリーから流体を部分的又は完全に排出することにより、この基本システムを使用して実施することができる(一般に流体をキャピラリー先端で懸滴としてサンプルと接触させた後にキャピラリー内に逆吸引する)。両者アプローチについては、USP6,482,364(Parceら)(2002年11月19日)MICROFLUIDIC SYSTEMS INCLUDING PIPETTOR ELEMENTS;USP6,042,709(Parceら)(2000年3月28日)MICROFLUIDIC SAMPLING SYSTEM AND METHODS;USP6,287,520(Parceら)(2001年9月11日)ELECTROPIPETTOR AND COMPENSATION MEANS FOR ELECTROPHORETIC BIAS及びUSP6,235,471(Knappら)(2001年5月22日)CLOSED−LOOP BIOCHEMICAL ANALYZERSも参照されたい。利用可能な方法を使用して原則的に任意流体操作(分画、希釈、加熱及び冷却)をネットワークで実施することができる。マイクロスケールデバイスでの希釈及び分画操作に関する詳細は特許文献に記載されており、例えばUSP6,149,870(Parceら)(2000年11月21日)APPARATUS FOR IN SITU CONCENTRATION AND/OR DILUTION OF MATERIALS IN MICROFLUIDIC SYSTEMS;USP5,869,004(Parceら)(1999年2月9日)METHODS AND APPARATUS FOR IN SITU CONCENTRATION AND/OR DILUTION OF MATERIALS IN MICROFLUIDIC SYSTEMS;及びUSP6,440,722(Knappら)(2002年8月27日)MICROFLUIDIC DEVICES AND METHODS FOR OPTIMIZING REACTIONSが挙げられる。混合/希釈又は分画すべきサンプル及び成分はピペッターエレメントを介するか又は装置自体の反応成分レザバーから、又は一般にはその両者を利用してマイクロスケールデバイスに導入することができる。例えば、サンプルはピペッターチャネルを介してマイクロフルイディックデバイスに導入し、希釈し、オンデバイス希釈及び/又は試薬レザバーから共通試薬を供給することができる。遺伝子座特異的試薬(例えば増幅プライマー対)をデバイスのウェルに配置してもよいし、デバイスから例えばマイクロタイタープレートに供給してもよい(その場合にはピペッターチャネルによりアクセスすることができる)。これらの任意又は全操作は連続又は停止フローフォーマットで実施することができる。
【0095】
チップが実施する機能としては一般に反応アセンブリ(反応混合物のアセンブリ)、熱サイクル、及びイメージング(検出)段階中の光学システムの「キュベット」としての機能が挙げられる。反応アセンブリでは、加熱が開始する直前に一緒にした反応混合物成分(特にマグネシウムと酵素)をアセンブルする。これは「ホットスタート」と呼ばれ、特異性の利点を提供する。熱サイクル中に、システムは場合により一定流体運動と温度変化の連続シーケンスの両者を提供する。イメージング中には、高データ転送速度CCDが分散/核酸定量法を使用して十分なダイナミックレンジを提供するのに有用である。
【0096】
本発明の実施に使用することができる流体操作及び分析の全側面を実施する商業的システムが市販されている。例えば、Caliper Technologies(Mountain View,CA)製250HTSシステム及びAMS90SEが挙げられる。これらのシステムはシリアル連続フロー様式で実験を実施し、「チップ−ワールド」インターフェース、又はシッパーと呼ぶサンプルアクセルシステムを利用してマイクロウェルプレート内の材料をチップに結合したキャピラリーにシッピングし、チップのチャネル内に吸引する。チャネル内で材料は対象成分と混合され、処理及び結果検出段階が実施される。
【0097】
従来の流体操作を使用するか、又はマイクロフルイディックアプローチ(又はその両者)を使用するかに関係なく、特定結果を達成するように分画及び/又は希釈イベントを実施することができる。例えば、サンプルを各アリコートに均等に希釈することもできるし、あるいはサンプルを示差的に希釈することもできる(例えば希釈系列を作成することができる)。アリコート自体をシステムにより使用される流体操作アプローチに適した容量とすることができ、例えば数マイクロリットル(マイクロタイタープレートの場合)から100nL、10nL、更には1nL以下まで(マイクロフルイディックアプローチの場合)のオーダーとすることができる。
【0098】
アリコートは高コピー数又は低コピー数の任意該当核酸をもつように選択することができる(例えば低コピー数アリコートでは、50以下、一般に25以下、通常は10以下、多くの場合には5以下、2以下又は1以下の該当核酸コピー)。作成されるアリコート数はサンプルのサイズと実施者により所望される定量情報量により異なる。例えば、希少核酸の単純な検出が所望される場合には、アリコートの1個で核酸を検出するために十分な低コピー数及び/又はシングルコピー数アリコートをサンプルから作成する。更に定量情報が必要な場合には、例えば所与信頼度値が得られるように確実な統計情報を提供するために十分なコピーを作成する。いずれの場合も、これはアリコート1個〜10以上の任意値、例えば10、100、1,000、10,000、100,000、1,000,000、1,000,000,000以上のアリコートを含むことができる。本発明により作成し、対象核酸に関して評価することができるアリコート数に理論的限界はないが、システムのスループットとサンプルのサイズに関して実際的な考慮すべき点がある(スループットが低いほど、所与時間に分析できるアリコートは少なくなり、サンプルサイズが大きいほどサンプルから作成可能なアリコートは多くなる)。マイクロフルイディックアプローチを使用すると、試薬使用(とそれに伴う試薬コスト)を最小限にすることができる。場合により増幅中を含めてサンプル及び試薬の連続フローを提供するようにシステムをフォーマッティングすることにより、本発明のシステムは対象核酸について多数の異なるサンプルを検索するプロセスを著しく迅速化することができる。同様に、停止フローアプローチを使用する場合には、PCR反応からのシグナルの同時処理を使用すると、対象核酸についてサンプルを検索するプロセスを迅速化することができる。下記実施例では、モデルサンプルのポアソン統計に妥当な定量情報を提供するためには希釈範囲毎に約150個のアリコートで十分であった。当然のことながら、本発明の方法ではもっと少ないアリコートを使用することもできる。
【0099】
本発明の態様の多くでは、サンプル中の該当核酸の希少性(及び選択される希釈度)によりアリコートの多くが対象核酸のゼロコピーをもつことに留意すべきである。これは連続フロー分析システムでは検出に問題なく、流速を使用して対象核酸の検出前に検出器を通過したアリコート(未検出)数を計算することができる。不連続フローシステム(例えばマイクロウェルプレートシステム)では、単にブランク反応(増幅産物を含まないウェル)をカウントし、対象核酸の増幅頻度を決定することができる。いずれにせよ、1〜10以上の任意数のゼロコピー反応混合物をシステムにより作成及び評価することができ、例えば約10、25、50、100、500、1,000、10,000、100,000、又は1,000,000以上のゼロコピー反応混合物を対象核酸の検出プロセスで検出することができる。同様に、対象核酸以外の付加核酸(例えば対照、又は該当遺伝子座特異的試薬により同様に増幅される対象核酸の代替対立遺伝子)もシステムにより検出することができる(又は検出することができない)。システムにおけるこのような代替核酸と対象核酸の比率は1未満〜10以上、例えば1倍、10倍、100倍、1,000倍、10,000倍、100,000倍、1,000,000倍、1,000,000,000倍以上とすることができる。
【0100】
更に、本発明の実施例と図面に実証するように、連続フローフォーマットは驚くほど効率的なシステムであり、システムに投入する単分子の高比率が増幅される。この効率は例えば細菌戦又は伝染病検出用途で非常に希少な分子が存在する場合にこのような分子を確実に検出するのに有用である。高効率の証拠は本発明の実施例、表及び図面に示す。一般に、本発明のシステムを使用すると、対象サンプル中に存在するか、又は増幅するアリコート集団中に存在する希少分子の少なくとも90%、一般には95%、多くの場合には99%以上を増幅することができる。効率係数はシグナルデータのより正確な定量的解釈に数式を調整するように例えば経験的に決定することができる。
【0101】
(アリコート増幅)
本発明の方法はサンプル又はアリコートからの対象核酸の1個以上の配列と、場合により、1個以上の付加核酸を増幅する段階を含む。一般に、核酸長の解釈を可能にするように対象核酸の2個以上の配列を別個の位置で増幅する。利用可能な任意増幅法を使用することができ、PCR、RT−PCR、LCR、及び/又は各種RNA増幅法の任意のものが挙げられる。本発明の方法で対象核酸を増幅するのに好ましい増幅法はPCR、RT−PCR及びLCRである。増幅した核酸の検出を容易にするために(例えばTaqMan(登録商標)プローブ又は分子ビーコンプローブによる)リアルタイムPCR及び/又はRT−PCRを使用することもできる。
【0102】
当業者は一般にこれらの増幅法の詳細を熟知していると予想される。これらの増幅法に関する詳細は例えばいずれも前出のSambrook(2000);Ausubel(2002)及びInnis(1990)に記載されている。その他の詳細はPCR:A Practical Approach(The Practical Approach Series)Quirkeら(編).(1992)Oxford University Press刊に記載されている。
【0103】
PCRの各種応用に関するその他の詳細も文献に記載されている。例えば、植物における核酸増幅に関する詳細は例えばPlant Molecular Biology(1993)Croy(編)BIOS Scientific Publishers,Inc.に記載されている。同様に、癌検出のためのPCRに関するその他の詳細も各種文献に記載されており、例えばBernard and Wittwer(2002)“Real Time PCR Technology for Cancer Diagnostics”Clinical Chemistry 48(8):1178−1185;Perouら(2000)“Molecular portraits of human breast tumors”Nature 406:747−52;van’t Veerら(2002)“Gene expression profiling predicts clinical outcome of breast cancer”Nature 415:530−6;Rosenwaldら(2001)“Relation of gene expression phenotype to immunoglobulin mutation genotype in B cell chronic lymphocytic leukemia”J Exp Med 194:1639−47;Alizadehら(2000)“Distinct types of diffuse large B−cell lymphoma identified by gene expression profiling”Nature 403:503−11;Garberら(2001)“Diversity of gene expression in adenocarcinoma of the lung”Proc Natl Acad Sci U S A 98:13784−9;Tirkkonenら(1998)“Molecular cytogenetics of primary breast cancer by CGH”Genes Chromosomes Cancer 21:177−84;Watanabeら(2001)“A novel amplification at 17q21−23 in ovarian cancer cell lines detected by comparative genomic hybridization”Gynecol Oncol 81:172−7、及び他の多くの文献が挙げられる。
【0104】
(分子ビーコン)
1側面では、例えば分子ビーコン又はTaqMan(登録商標)プローブを使用して本明細書に記載の各種アリコート又は反応混合物でリアルタイムPCRを実施する。分子ビーコン(MB)は適切なハイブリダイゼーション条件下でステム及びループ構造と自己ハイブリダイズするオリゴヌクレオチド又はPNAである。MBはオリゴヌクレオチド又はPNAの末端にラベルとクエンチャーをもつので、分子内ハイブリダイゼーションを可能にする条件下でラベルは一般にクエンチャーによりクエンチされる(又は少なくともその蛍光が変化する)。MBが分子内ハイブリダイゼーションを示さない条件下(例えば増幅中にターゲット核酸、例えばアンプリコンの領域と結合している場合)では、MBラベルはクエンチされない。
【0105】
MBの標準作製及び使用方法に関する詳細は文献周知であり、MBは多数の試薬メーカーから入手可能である。例えばLeoneら(1995)“Molecular beacon probes combined with amplification by NASBA enable homogenous real−time detection of RNA.”Nucleic Acids Res.26:2150−2155;Tyagi and Kramer(1996)“Molecular beacons:probes that fluoresce upon hybridization”Nature Biotechnology 14:303−308;Blok and Kramer(1997)“Amplifiable hybridization probes containing a molecular switch”Mol Cell Probes 11:187−194;Hsuihら(1997)“Novel,ligation−dependent PCR assay for detection of hepatitis C in serum”J Clin Microbiol 34:501−507;Kostrikisら(1998)“Molecular beacons:spectral genotyping of human alleles”Science 279:1228−1229;Sokolら(1998)“Real time detection of DNA:RNA hybridization in living cells”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:11538−11543;Tyagiら(1998)“Multicolor molecular beacons for allele discrimination”Nature Biotechnology 16:49−53;Bonnetら(1999)“Thermodynamic basis of the chemical specificity of structured DNA probes”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:6171−6176;Fangら(1999)“Designing a novel molecular beacon for surface−immobilized DNA hybridization studies”J.Am.Chem.Soc.121:2921−2922;Marrasら(1999)“Multiplex detection of single−nucleotide variation using molecular beacons”Genet.Anal.Biomol.Eng.14:151−156;及びVetら(1999)“Multiplex detection of four pathogenic retroviruses using molecular beacons”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:6394−6399も参照されたい。MB作製及び使用に関するその他の詳細は特許文献にも記載されており、例えばUSP5,925,517(1999年7月20日)(Tyagiら)発明の名称“Detectably labeled dual conformation oligonucleotide probes,assays and kits”;USP6,150,097(Tyagiら)(2000年11月21日)発明の名称“Nucleic acid detection probes having non−FRET fluorescence quenching and kits and assays including such probes”及びUSP6,037,130(Tyagiら)(2000年3月14日)発明の名称“Wavelength−shifting probes and primers and their use in assays and kits”が挙げられる。
【0106】
MBは例えばPCR、LCR又は他の核酸増幅反応中等のリアルタイムを含めて核酸を検出及び定量するための確実な試薬である(例えばMBはターゲットの形成に伴って検出するために使用することができる)。各種メーカーが標準及び注文分子ビーコンを製造しており、例えばCruachem(cruachem.com)、Oswel Research Products Ltd.(UK;oswel.com)、Research Genetics(Invitrogenの1部門,Huntsville AL(resgen.com))、the Midland Certified Reagent Company(Midland,TX mcrc.com)及びGorilla Genomics,LLC(Alameda,CA)が挙げられる。分子ビーコンを利用する各種キットも市販されており、例えばStratagene(La Jolla,CA)製品Sentinel(登録商標)Molecular Beacon Allelic Discrimination Kitsや、Eurogentec SA(ペルギー,eurogentec.com)とIsogen Bioscience BV(オランダ,isogen.com)の各種キットが挙げられる。
【0107】
MB成分(例えばフルオロフォアやクエンチャーで標識されたものを含むオリゴ)は従来方法を使用して合成することができる。例えば、オリゴ又はペプチド核酸(PNA)は標準方法を使用して市販自動オリゴヌクレオチド/PNA合成器で合成することができる。自動合成中又は従来記載されている合成後反応によりオリゴ又はPNAにラベルを付けることができる。例えばTyagi and Kramer(1996)“Molecular beacons:probes that fluoresce upon hybridization”Nature Biotechnology 14:303−308並びにUSP6,037,130(Tyagiら)(2000年3月14日)発明の名称“Wavelength−shifting probes and primers and their use in assays and kits”及びU.S.Pat.No.5,925,517(1999年7月20日)(Tyagiら)発明の名称“Detectably labeled dual conformation oligonucleotide probes,assays and kits”参照。機能化オリゴの合成に関するその他の詳細はNelsonら(1989)“Bifunctional Oligonucleotide Probes Synthesized Using A Novel CPG Support Are Able To Detect Single Base Pair Mutations”Nucleic Acids Research 17:7187−7194に記載されている。ラベル/クエンチャーは例えばクエンチャー(例えば4−ジメチルアミノアゾベンゼン−4’−スルホニル部分(DABSYL))を導入するには例えば細孔径を制御したガラスカラムを使用することによりオリゴヌクレオチドPNAに導入することができる。例えば、クエンチャーは自動合成中にオリゴヌクレオチドの3’末端に付加することができ;結合部位が第1級アミノ基である場合には4−(4’−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸のスクシンイミジルエステル(DABCYL)を使用することができ;結合部位がスルフヒドリル基である場合には4−ジメチルアミノフェニルアゾフェニル−4’−マレイミド(DABMI)を使用することができる。同様に、ヌクレオシドをフルオレセインで置換するフルオレセインホスホロアミダイトを使用するか、又はスペーサーによりチミジン環にフルオレセイン部分を導入するフルオレセインdTホスホロアミダイトを使用してフルオレセインをオリゴに導入することができる。フルオレセイン部分を末端位置に結合するためには、ヨードアセトアミドフルオレセインをスルフヒドリル基に結合することができる。自動合成中に5’−テトラクロロ−フルオレセインホスホロアミダイトを使用してテトラクロロフルオレセイン(TET)を導入することができる。他の反応性フルオロフォア誘導体と夫々の結合部位としてはアミノ基と結合した5−カルボキシローダミン−6G(RHD)のスクシンイミジルエステル;スルフヒドリル基と結合したテトラメチルローダミンのヨードアセトアミド;アミノ基と結合したテトラメチルローダミンのイソチオシアネート;又はスルフヒドリル基と結合したテキサスレッドのスルホニルクロリドが挙げられる。これらの標識成分の合成中に、共役したオリゴヌクレオチド又はPNAを所望により例えば高圧液体クロマトグラフィー又は他の方法により精製することができる。
【0108】
(TaqMan(登録商標)プローブ)
本発明によると、二重標識蛍光発生オリゴヌクレオチドプローブ、通称「TaqMan(登録商標)プローブ」を使用するPCR定量を実施することができる。これらのプローブは2種の異なる蛍光色素で標識された短い(例えば20〜25塩基)オリゴデオキシヌクレオチドから構成される。各プローブの5’末端にはレポーター色素が配置され、各プローブの3’末端にはクエンチ色素が配置される。オリゴヌクレオチドプローブ配列はPCRアンプリコンに存在する内部ターゲット配列と相補的にすることができる。プローブが無傷の場合には、2種のフルオロフォア間でエネルギー移動が生じ、レポーターからの発光がクエンチャーによりクエンチされる(蛍光共鳴エネルギー移動ないしFRET)。PCRの伸長段階中に、プローブは反応で使用されるポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性により開裂し、オリゴヌクレオチド−クエンチャーからレポーターが放出され、レポーター発光強度が増加する。
【0109】
従って、TaqMan(登録商標)プローブはラベルとクエンチャーをもつオリゴヌクレオチドであり、ラベルは増幅で使用されるポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ作用によりハイブリダイゼーション後と増幅中に放出される。こうして合成中に増幅のリアルタイム測定が行われる。各種TaqMan(登録商標)試薬が例えばApplied Biosystems(本社Foster City,CA)や、Biosearch Technologies(例えばブラックホールクエンチャープローブ)等の各種専門メーカーから市販されている。
【0110】
(一般プローブ合成法)
一般に、プローブ、分子ビーコン、PNA、LNA(ロックト核酸)等のオリゴヌクレオチドを作製するための合成方法は周知である。例えば、オリゴヌクレオチドは例えばNeedham−VanDevanterら(1984)Nucleic Acids Res.,12:6159−6168に記載されているように例えば市販自動合成器を使用してBeaucage and Caruthers(1981),Tetrahedron Letts.,22(20):1859−1862に記載の固相ホスホロアミダイトトリエステル法に従って化学的に合成することができる。修飾オリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドも当業者に公知の各種メーカーに注文することができる。多数のオリゴ合成サービス業者があるので、これは広く利用可能な技術である。The Midland Certified Reagent Company(mcrc@oligos.com)、The Great American Gene Company(www.genco.com)、ExpressGen Inc.(www.expressgen.com)、Operon Technologies Inc.(Alameda,CA)及び他の多くのメーカー等の任意メーカーに任意核酸を注文することができる。同様に、PNAもPeptidoGenic(pkim@ccnet.com)、HTI Bio−products,inc.(www.htibio.com)、BMA Biomedicals Ltd(U.K.)、Bio−Synthesis,Inc.及び他の多くのメーカー等の任意メーカーに注文することができる。
【0111】
(マイクロフルイディックシステムにおける増幅)
PCR及び他の増幅反応を実施する多数の高スループットアプローチが開発されており、例えばマイクロフルイディックデバイスでの増幅反応や、前記デバイス内又はデバイス上で増幅核酸を検出及び分析する方法が挙げられる。このような技術に関する詳細は例えば技術及び特許文献に記載されており、例えばKoppら(1998)“Chemical Amplification:Continuous Flow PCR on a Chip”Science,280(5366):1046;USP6,444,461(Knappら)(2002年9月3日)MICROFLUIDIC DEVICES AND METHODS FOR SEPARATION;USP6,406,893(Knappら)(2002年6月18日)MICROFLUIDIC METHODS FOR NON−THERMAL NUCLEIC ACID MANIPULATIONS;USP6,391,622(Knappら)(2002年5月21日)CLOSED−LOOP BIOCHEMICAL ANALYZERS;USP6,303,343(Kopf−Sill)(2001年10月16日)INEFFICIENT FAST PCR;USP6,171,850(Nagleら)(2001年1月9日)INTEGRATED DEVICES AND SYSTEMS FOR PERFORMING TEMPERATURE CONTROLLED REACTIONS AND ANALYSES;USP5,939,291(Loewyら)(1999年8月17日)MICROFLUIDIC METHOD FOR NUCLEIC ACID AMPLIFICATION;USP5,955,029(Wildingら)(1999年9月21日)MESOSCALE POLYNUCLEOTIDE AMPLIFICATION DEVICE AND METHOD;USP5,965,410(Chowら)(1999年10月12日)ELECTRICAL CURRENT FOR CONTROLLING FLUID PARAMETERS IN MICROCHANNELS;Service(1998)“Microchips Arrays Put DNA on the Spot”Science 282:396−399),Zhangら(1999)“Automated and Integrated System for High−Throughput DNA Genotyping Directly from Blood”Anal.Chem.71:1138−1145及び他の多くの文献が挙げられる。
【0112】
例えば、USP6,391,622(Knappら)(2002年5月21日)CLOSED−LOOP BIOCHEMICAL ANALYZERSとその引用文献は試薬保存システムにアクセスすることができると共にマイクロフルイディックシステムで各種方法の任意のものによりPCR又は他の増幅反応を実施することができるマイクロフルイディックエレメントを含むシステムを記載している。例えば、マイクロフルイディックシステムは材料を本体構造内に吸引するためにマイクロフルイディックシステムの本体構造から外側に延びる1個以上のキャピラリーをもつことができる。本体構造内のマイクロフルイディックキャビティ(少なくとも1個の寸法が約500ミクロン未満、一般に約100ミクロン未満のチャネル、チャンバー等)で増幅反応が実施される。本体構造から外側に延びるキャピラリーは例えば真空又は電気浸透力の印加により流体をキャピラリー内に吸引することにより標準試薬保存エレメント(マイクロタイタープレート等)にアクセスすることができる。同様に、キャピラリーは流体を部分的又は完全に排出してライブラリーメンバーを再水和した後に再水和流体をキャピラリーに逆吸引することにより基板上の乾燥試薬ライブラリー(例えばCaliper Technologies製品LibraryCard(登録商標)試薬アレイ)にアクセスすることができる。例えば、キャピラリーは流体を部分的に排出してキャピラリー上に懸滴を形成した後に、水和すべき材料と接触させることができる。その後、懸滴中の材料をキャピラリー内に逆吸引する。いずれの場合も、分子ビーコン又はTaqMan(登録商標)プローブを該当増幅反応に組込み、マイクロフルイディックデバイスで検出してリアルタイムPCR検出を行うことができる。あるいは、例えばハイブリダイズしたプローブからハイブリダイズしなかったプローブを分離する分離操作前又は後に標識プローブにハイブリダイズさせる等の従来方法によりPCRアンプリコンを検出することができる。例えば、マイクロスケールデバイスのチャネルで電気泳動分離を実施することができる。
【0113】
(従来の高スループットシステム)
代替態様では、標準流体処理アプローチをマイクロフルイディックアプローチに代用又は併用する。本発明に関連する希釈又は他の操作と同様に標準反応容器(例えばマイクロタイタープレート)でPCRを実施することができる。マイクロフルイディック以外の流体操作アプローチ用として各種高スループットシステムが入手可能である(一般に数個の反応チャンバーを含むプレート、例えば96ウェル、384ウェル又は1536ウェルマイクロタイタープレートを要する)。これらのアプローチは流体処理操作を実施するために従来のロボットを使用することができ、増幅反応を実施するために従来の市販サーモサイクラーを使用することができる。自動流体操作システムについては上記参照。
【0114】
(増幅した核酸の検出)
本発明では増幅した核酸を検出するために利用可能な任意方法を使用することができる。一般的なアプローチとしては分子ビーコン又はTaqMan(登録商標)プローブによるリアルタイム増幅検出、インターカレーション型色素(臭化エチジウム又はサイバーグリーン)の検出、例えば取込まれなかったラベルから増幅産物の電気泳動分離後に増幅プローブ又は増幅した核酸自体に取込まれたラベルの検出、及び/又は核酸と結合する二次試薬の検出が挙げられる。これらの一般アプローチの詳細は本明細書に引用する文献、例えばSambrook(2000)、Ausubel(2002)、及びリアルタイムPCR検出に関連する本明細書のセクションで引用する文献に記載されている。核酸を標識するための付加標識ストラテジー及び対応する検出ストラテジーは例えばHaugland(1996)Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,第6版,Molecular Probes,Inc.(Eugene OR);又はHaugland(2001)Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,第8版,Molecular Probes,Inc.(Eugene OR)(CD ROM版)に記載されている。
【0115】
増幅した核酸(アンプリコン)は均質(実質的に未分離)反応混合物又は溶液(例えば分子ビーコン又はTaqMan(登録商標)プローブを使用)中で検出することもできるし、(例えば電気泳動による)分離中又は分離後に検出することもできる。これらのストラテジーの詳細は上記文献に記載されている。
【0116】
本発明では増幅と検出は一般にマイクロフルイディックデバイスを含むシステムに統合される。核酸を検出するための検出部材を含む入手可能なマイクロフルイディックシステムとしてはCaliper Technologies(Mountain View,CA)製250HTSシステム及びAMS90SEや、Agilent 2100バイオアナライザー(Agilent,Palo Alto,CA)が挙げられる。検出(及び分離/検出)機能を含むシステムに関するその他の詳細は例えば上記文献やParceら“High Throughput Screening Assay Systems in Microscale Fluidic Devices”WO 98/00231等の特許文献に詳細に記載されている。
【0117】
一般に、本発明の装置は場合により例えば蛍光、燐光、放射能、pH、電荷、吸光度、発光、温度、磁気等を検出するシグナル検出器を含む。増幅した核酸の検出には蛍光検出が特に好ましく、一般に使用される(他方、アンプリコンで上流及び/又は下流操作を実施することができ、その場合には質量分析やサイズ排除等の他の検出方法を要する場合もある)。
【0118】
検出器は場合により増幅反応及び/又はハイブリダイゼーション反応からの1又は複数のシグナルをモニターする。例えば、検出器は「リアルタイム」増幅アッセイ結果に対応する光学シグナルをモニターすることができる。検出器は単一型のシグナルをモニターすることもできるし、例えば複数の異なるシグナルを同時にモニターすることもできる。
【0119】
検出器の例としては光電子増倍管、分光光度計、CCDアレイ、走査型検出器、顕微鏡、ガルボスキャナー及び/又は同等物が挙げられる。検出可能なシグナルを発生するアンプリコン又は他の成分を検出器に通過させてもよいし、増幅反応の部位に対して検出器を移動させてもよい(あるいは、検出器は例えばCCDアレイのようにチャネル領域、又はマイクロタイターウェルに対応する多数の空間位置を同時にモニターすることができる)。本発明の検出器は例えばマイクロフルイディックデバイスの1個以上の検出領域に流入する本発明の核酸に関連するプローブからシグナルを検出することができる。
【0120】
検出器は例えば検出器シグナル情報をアッセイ結果情報(例えば対象核酸の存在、対象核酸長、対象核酸長の比率、及び/又は疾患状態との相関)等に変換するためのソフトウェアをもつコンピューター(又は他の論理装置)を含むか又はこれに作動的に連結することができる。
【0121】
シグナルは場合により例えば既知ソースからのシグナルをモニターすることによりマイクロフルイディックシステムを校正することにより校正される。例えば、シグナルは参照光源、内部参照シグナルに対して校正することもできるし、バックグラウンドを上回る陽性シグナルを検出するように標準化することもできる。
【0122】
マイクロフルイディックシステムはシステムでシグナルをモニターするために複数の異なる検出システムを利用することもできる。本発明の検出システムは特定チャネル領域(又は他の反応検出領域)で材料を検出及びモニターするために使用される。チャネルで任意細胞又は液滴の流速と速度が検出されたら、場合によりセンサーにより測定し、上記のように制御することができる。
【0123】
本発明の方法及びシステムで有用な検出システムの例としては光学センサー、温度センサー、圧力センサー、pHセンサー、導電率センサー等が挙げられる。これらの型のセンサーは各々本明細書に記載するマイクロフルイディックシステムに容易に組込まれる。これらのシステムにおいて、このような検出器は検出器がデバイス、チャネル、又はチャンバーとセンサー接続するように、マイクロフルイディックデバイス又はデバイスの1個以上のチャネル、チャンバーもしくは導管の内側又はこれに隣接して配置することができる。本明細書で使用する特定領域又はエレメントの「センサー接続」なる用語は一般に検出器がその目的であるマイクロフルイディックデバイスの特性、マイクロフルイディックデバイスの一部、又はマイクロフルイディックデバイスの一部の内容物を検出できるような位置に検出器を配置することを意味する。例えば、マイクロスケールチャネルとセンサー接続するように配置されたpHセンサーはこのチャネル内に配置された流体のpHを測定することができる。同様に、マイクロフルイディックデバイスの本体とセンサー接続するように配置された温度センサーはデバイス自体の温度を測定することができる。
【0124】
特に好ましい検出システムとしては本明細書に記載するマイクロフルイディックシステムに組込まれたマイクロフルイディックデバイスのチャネル及び/又はチャンバー内の材料の光学的性質を検出するための光学検出システムが挙げられる。このような光学検出システムは一般にマイクロフルイディックデバイスのマイクロスケールチャネルに隣接して配置され、デバイスのチャネル又はチャンバーを横切って配置された光学検出窓を介してチャネルとセンサー接続している。光学検出システムとしては、チャネル内で材料からの発光された光、材料の透過率又は吸光度、及び材料のスペクトル特性を測定することが可能なシステムが挙げられる。好ましい側面では、検出器は蛍光又は化学発光材料等の材料からの発光量を測定する。従って、検出システムは一般に検出窓を透過した光シグナルを集光し、このシグナルを適当な光検出器に伝達するための集光光学素子を含む。変動倍率、視野直径、及び焦点距離の顕微鏡対物レンズがこの光学素子列の少なくとも一部として容易に利用される。光検出器は場合により分光光度計、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管、ダイオードアレイ、又は場合によっては例えば電荷結合デバイス(CCD)等のイメージングシステム等である。検出システムは一般に検出された光データを分析、保存及びデータ操作のためにコンピューターに伝達するためにアナログ−デジタル又はデジタル−アナログコンバーターを介してコンピューターに連結されている。
【0125】
標識アンプリコン等の蛍光材料の場合には、検出器は一般に蛍光材料を活性化するのに適した波長で光を発生する光源と、検出窓を介して光源をチャネル又はチャンバーに含まれる材料に誘導するための光学素子を含む。光源は適当な波長を提供する任意数の光源とすることができ、レーザー、レーザーダイオード、及びLEDが挙げられる。他の検出システムでは他の光源が使用される。例えば、光散乱/透過率検出スキーム等では広帯域光源が一般に使用される。一般に、光選択パラメーターは当業者に周知である。
【0126】
検出器は別個のユニットとして存在することができるが、システム又はマイクロフルイディックデバイスと共に単一機器に統合することもできる。これらの機能を単一ユニットに統合すると、コントローラー、検出器及びコンピューター間に情報を伝達するために少数又は単一の通信ポートを使用することにより、これらの機器とコンピューターの接続が容易になる。
【0127】
(対象核酸のカウント及び統計分析)
本発明の1つの特徴はサンプル中の希少(及び他の)核酸を確実に定量できることである。この確実な定量によりサンプルの統計的又は確率論的分析が可能になる。例えば、ポアソン分析、モンテカルロ分析、遺伝子アルゴリズムの適用、ニューラルネットワークトレーニング、マルコフモデリング、隠れマルコフモデリング、多次元スケーリング、部分最小二乗(PLS)分析、又は主成分分析(PCA)をいずれも本発明により作成したデータに適用することができる。これらの統計評価を使用し、例えばサンプル中の所与核酸の濃度、存在度、又は核酸長比率を決定し、存在度又は比率を関連する診断又は予後に相関させることができる。
【0128】
データの作成及び分析方法と他の関連概念の理解に有用な一般文献としては、Neil Weiss(1999)Introductory Statistics & Elementary Statistics,第5版,ISBN:0201434490;Berinstein(1998)Finding Statistics Online:How to Locate the Elusive Numbers You Need.Medford,NJ:Information Today;Everitt,(1998)The Cambridge Dictionary of Statistics New York:Cambridge University Press;Kotz(1988).Encyclopedia of Statistical Sciences,vol.1−9 plus supplements New York:Wiley;Dillon and Goldstein(1984).Multivariate Analysis:Methods and Applications New York:Wiley;Tabachnick and Fidell(1996)Using Multivariate Statistics New York:HarperCollins College Publishers;Boxら(1978)Statistics for Experimenters New York:Wiley;Cornell(1990)Experiments with Mixtures New York:Wiley;John,P.W.M.(1998)Statistical Design and Analysis of Experiments Philadelphia:SIAM;Gibas and Jambeck(2001)Bioinformatics Computer Skills O’Reilly,Sebastipol,CA;Pevzner(2000)Computational Molecular Biology and Algorithmic Approach,The MIT Press,Cambridge MA;Durbinら(1998)Biological Sequence Analysis:Probabilistic Models of Proteins and Nucleic Acids,Cambridge University Press,Cambridge,UK;及びRashidi and Buehler(2000)Bioinformatic Basics:Applications in Biological Science and Medicine CRC Press LLC,Boca Raton,FLが挙げられる。
【0129】
(拡散及び分散の計算)
本発明の1つの特徴は再現性の高いピークパラメーター、例えば増幅反応からのシグナルの振幅、幅、面積、及び/又は形状特徴を反応の出発コピー数に相関させることができ、及び/又はバックグラウンド変動から対象シグナルを識別するために使用できるという発見である。この相関は熱拡散率とTaylor Aris拡散を考慮して理論レベルで実施することもできるし、標準との比較(例えば出発材料の既知コピー数をもつ増幅反応のピーク形状、例えば高さ、幅、又は一般形状プロフィルとの比較)により実施することもできる。核酸長の判定において2個以上のプローブの検出器シグナルの解釈で同一又は異なるピークパラメーターを評価することができる。
【0130】
理論計算アプローチでは、ラベルは一般に最初は時間(t)とピーク中心(x=0)に対する空間位置(x)の関数として−h<x<hの範囲内であり、ラベル又はラベルに対応する成分(例えば対象核酸)の濃度(C)は1/2C{erf[(h−x)/(2Dt)1/2)]}に等しく、前記式中、Cは時刻t=0における初期濃度であり、erfは誤差関数であり、Dは全分散の係数である。Dはシステムにおける熱拡散とTaylor分散(D)の和に等しい。他方、Taylor分散(D)はラベルが流れるマイクロフルイディックキャビティの寸法と形状、流速(u)及び熱拡散率(d)に依存する。一般にd=K(d)/Dである(式中、Kはラベルが流れるマイクロフルイディックキャビティの関数である比例定数であり、dは特徴的マイクロフルイディックキャビティ長である)。例えば、マイクロフルイディックキャビティが円形チャネルであり、K=1/192ならば、dは円形チャネルの直径であり、D=d+Dである。熱拡散率とTaylor Aris分散に関する更に詳細についてはMICROFLUIDIC SYSTEMS AND METHODS FOR DETERMINING MODULATOR KINETICS,USSN 09/609,030(Andrea Chow)出願日2000年6月30日に記載されている。
【0131】
(その他のシステム詳細)
本発明のシステムはマイクロフルイディックデバイス、反応混合物、検出器、サンプル保存エレメント(マイクロタイタープレート、成分の乾燥アレイ等)、フローコントローラー、増幅装置又はマイクロフルイディックモジュール、コンピューター及び/又は同等物を含むことができる。これらのシステムは対象核酸を分画、増幅及び分析するために使用することができる。システムのマイクロフルイディックデバイス、増幅コンポーネント、検出器及び保存エレメントについては上記にある程度詳細に記載した。以下、適切なコントローラーとコンピューターについて記載するが、多数の構成が利用可能であり、当業者はそれらの使用について熟知していると予想され、本発明への適用方法も理解されると思われる。
【0132】
(フローコントローラー)
本発明のマイクロフルイディックデバイスの内側の流体及び/又は材料の輸送と誘導を例えば圧力又は動電型制御により制御するために本明細書に記載するマイクロフルイディックデバイスと各種制御機器を場合により併用する。
【0133】
例えば、多くの場合に、流体輸送及び誘導は流体流を導くための外部又は内部圧力源を組込んだ圧力フローシステムを使用して全体又は一部を制御される。内部圧力源としてはマイクロ加工ポンプ、例えば従来技術に記載されているダイアフラムポンプ、サーマルポンプ、ラム波ポンプ等が挙げられる。例えば米国特許第5,271,724号、5,277,556号、及び5,375,979号並びに公開PCT出願第WO94/05414号及びWO97/02357号参照。本明細書に記載するシステムは更に動電型材料誘導及び輸送システムを利用することができる。
【0134】
外部圧力源を使用し、チャネル端のポートに印加することが好ましい。これらの印加圧力、又は真空はチャネル長の両端間に差圧を生じ、流体流を誘導する。本明細書に記載する相互接続チャネルネットワークでは、容量に加えられる流速差は場合により複数のポートに異なる圧力又は真空を印加するか、あるいは好ましくは共通の廃液ポートに単一真空を印加し、所望流速を生じるのに適した抵抗をもつ各種チャネルを構成することにより得られる。システム例はUSSN09/238,467(出願日1/28/99)に記載されている。
【0135】
一般に、コントローラーシステムは本明細書に記載するようなマイクロフルイディックデバイス又はシステムエレメントを収容するか又はこれと接続するように適宜構成される。例えば、コントローラー及び/又は検出器は場合によりコントローラー及び/又は検出器とデバイス間の適切な接続を助長するようにマイクロフルイディックデバイスを実装する段を含む。一般に、前記段は入れ子ウェル、整列ピン及び/又は孔、(適正なデバイス整列を助長するための)非対称縁構造等の適切な実装/整列構造エレメントを含む。多数のこのような構成が本明細書に引用する文献に記載されている。
【0136】
上記制御機器は更に場合により上流流速を制御するように対象領域の下流の材料の動電型注入又は排出を行うためにも使用される。上記同一機器及び技術は流量制御エレメントとして機能するように下流ポートに流体を注入するためにも利用される。
【0137】
(コンピューター)
上記のように、コントローラーシステム及び/又は検出システムの一方又は両方は予めプログラムしてあるか又はユーザーが入力した命令に従ってこれらの機器の操作を命令し、これらの機器からデータ及び情報を受信し、この情報を解釈し、操作し、ユーザーに報告するように機能する適切にプログラムされたプロセッサー又はコンピューター(論理装置)に連結することができる。従って、コンピューターは一般に(例えば必要に応じてアナログ−デジタル又はデジタル−アナログコンバーターを含む)これらの機器の一方又は両方に適宜連結される。
【0138】
コンピューターは一般に例えばGUIの設定パラメーターフィールドへのユーザー入力形態、又は例えば各種異なる特定オペレーションのために予めプログラムされた命令の形態のユーザー命令を受信するのに適したソフトウェアを含む。その後、ソフトウェアは所望オペレーションを実行するように流体誘導及び輸送コントローラーのオペレーションを命令するのに適した言語にこれらの命令を変換する。その後、コンピューターはシステムに含まれる1個以上のセンサー/検出器からデータを受信し、データを解釈し、ユーザーに理解されるフォーマットで提供するか、又は例えば流速(連続フローを含む)、温度、印加電圧等のモニター及び制御等におけるプログラミングに従って、別のコントローラー命令を開始するように前記データを使用する。
【0139】
システム及び/又はキットは本発明の任意方法段階を実施するための(例えばコンピューター又はコンピューター読み取り可能な媒体で例えばシステムソフトウェアとして具体化された)システム命令を含むことができる。例えば、システムは場合により検出器により検出されるような対象核酸の増幅コピーにより占められる形状、長さ、幅、体積及び/又は面積をアリコートの1個に存在する対象核酸のコピー数、又はサンプル中に存在する対象核酸のコピー数、又はその両者と相関させるシステムソフトウェアを含む。同様に、システムは場合により対象核酸のコピーを含まない複数のゼロコピーアリコートと、対象核酸のシングルコピーを含む1個以上のシングルコピーアリコートを含む複数のアリコートにサンプルを分画するように希釈モジュールに指示するシステム命令を含む。
【0140】
上記統計機能も例えばコンピューター、コンピューターメモリー又はコンピューター読み取り可能な媒体で具体化されたシステムソフトウェアに組込むことができる。例えば、コンピューターは(例えば熱サイクルにより)増幅に付したアリコートの1個以上から受信したシグナルの1種以上の統計的又は確率論的分析を実施する統計的又は確率論的システムソフトウェアを含むことができる。例えば、統計的又は確率論的分析としてはポアソン分析、モンテカルロ分析、遺伝子アルゴリズムの適用、ニューラルネットワークトレーニング、マルコフモデリング、隠れマルコフモデリング、多次元スケーリング、PLS分析、及び/又はPCA分析が挙げられる。統計的又は確率論的分析ソフトウェアは場合によりサンプル中の対象核酸の濃度、比率、又は数を定量的に決定する。
【0141】
システムのコンピューターとソフトウェアは1種以上の分析からのシグナルデータを受信して評価し、対象核酸の定量及び/又は比率測定を実施する。基本的形態では、例えば所望単位(例えばnL当たりのコピー、ng/μL等)で出力するための変換係数でシグナルの振幅又は積分面積を調整することができる。あるいは、既知濃度の1個以上の標準材料を分析して回帰分析データを得、濃度変化に伴う検出可能なシグナルの変化を方程式(標準曲線)として表し、1個以上のシグナルパラメーターをこの方程式に挿入することにより未知濃度を決定することもできる。特定態様では、所定強度のシグナルを得るために必要な増幅サイクル数に基づいて対象核酸を定量することができる。
【0142】
本発明では、コンピューターは一般にチャネル内の材料をモニターするためのソフトウェアを含む。更に、ソフトウェアは場合により動電型又は圧力調節型の材料注入又は排出を制御するために使用される。注入又は排出を使用して上記のように流速を調節し、成分を混合する等の操作を実施する。
【0143】
(システム例)
図6及び7は本発明のモデルシステムの模式図である。図6に示すように、システム600はマイクロフルイディックデバイス601を含む。デバイス601はデバイス内に形成された主チャネル604を含む。例えば主チャネル604を通して真空源608(及び/又は下記レザバー又はウェルのいずれか)に真空を印加することにより、例えばレザバー606から増幅成分を流出させる。ウェル610又は612から主チャネル604に増幅成分を流入し、例えば反応混合物を形成することもできる。材料をウェル606又は608から流出させてもよいし、例えば廃液ウェルとして使用する場合や、真空源に連結する場合には、これらのウェルに材料を流入してもよい。ウェル614、612、610、606、又は608からの流出は流体圧を調節するか、又は動電型アプローチにより実施することができる。図6及び7に示すチャネル構成の代わりに図1のデバイス等の構成を使用することもできる。他の適切な各種マイクロフルイディック構成が本明細書に引用する文献に記載されている。
【0144】
増幅反応の実施に関連する材料は上記ウェルから流出させてもよいし、デバイス601の外部ソースから流出させてもよい。上記のように、統合システムは外部試薬源にアクセスするために例えばデバイス601から突出するピペッターチャネル620(シッパー)を含むことができる。例えば、上記のように、ピペッターチャネル620はサンプルもしくはサンプルアリコート、又は遺伝子座特異的試薬、又は本発明の実施に有用な他の試薬をプレートのウェルに含むマイクロウェルプレート622にアクセスすることができる。増幅に関連するアリコート又は試薬はピペッターチャネル620を通してチャネル604に流入させることができる。検出器624がチャネル604とセンサー接続しており、例えば上記のようなラベルとアンプリコンの相互作用に起因するシグナルを検出する。検出器624は検出器624により検出されたシグナル情報をデジタル化し、保存し、操作するコンピューター626に作動的に連結されている。
【0145】
電圧/圧力コントローラー628が例えばシステムのウェル、又はチャネル604(又は他の上記チャネル、ウェル、もしくはチャンバー)に流体結合した真空カップリングで電圧、圧力、又はその両者を制御する。場合により、上記のように、コンピューター626が電圧/圧力コントローラー628を制御する。1組の態様では、コンピューター626はシグナル情報を使用して別の反応パラメーターを選択する。例えば、プレート622からのウェルで対象核酸の増幅が検出されると、コンピューターは場合により例えば異なる濃度のアリコートを増幅反応に送達するために、ピペッターチャネル620を通して分析のためにウェルから付加アリコートを排出するように指示する。同様に、核酸が存在しないと判定されると(ゼロコピー反応)、コンピューター626は別のアリコートを処理するようにコントローラー628に指示することができる。統計情報が所望される場合には、コンピューター626は統計分析に十分なデータを作成するのに適した流体操作を実施するようにコントローラー628に指示する。コンピューター626は場合によりユーザーが目視可能なディスプレイに連結されるか又はこれを含み、ユーザーがコンピューターを制御できるようにすると共に、システムにより検出された結果を目視できるようにユーザーに読み出し情報を提供する。
【0146】
図7は試薬又はサンプルの固相アレイをマイクロフルイディックシステムによりアクセスする代替態様を示す。図7に示すように、システム700はマイクロフルイディックデバイス701を含む。デバイス701はピペッターチャネル720とデバイス内に形成されたマイクロフルイディックネットワークを含む。一般に圧力(正又は負)及び/又は動電型圧力をマイクロフルイディックネットワークに印加することにより、プライマー対、ポリメラーゼ、緩衝液、プローブ等の増幅成分をデバイス701に流す。
【0147】
上記のように、統合システムは外部試薬源にアクセスするために例えばデバイス701から突出するピペッターチャネル720を含むことができる。例えば、上記のように、ピペッターチャネル720はサンプルもしくはサンプルアリコート、又は遺伝子座特異的試薬、又は本発明の実施に有用な他の試薬を含む固相アレイ725にアクセスすることができる。流体はチャネル720から部分的又は完全に排出され、アレイ725上の材料を再水和する。例えば、チャネル720は材料を再水和するために使用される懸滴を含むことができ、懸滴はマイクロフルイディックデバイス701内に分配するためにチャネル720内に逆吸引される。検出器724がデバイス701及びコンピューター/コントローラー726とセンサー接続している。コンピューター/コントローラー726は図6のコンピューター626と同様に操作させることができる。いずれの場合も、コンピューター626又はコンピューターコントローラー726は場合により該当ピペッターチャネルがアレイ又はトレイのウェルでサンプル又は他の材料を処理できるように、トレイ622又はアレイ725、及び/又はマイクロフルイディックデバイス601又は701の運動を制御する。
【0148】
上記システムの多くの変形も適切である。例えば、本発明では多数の型の加熱システムを使用することができる。例えば、固定加熱領域の周囲にチャネルを巻き付けることができる。ロボット又は流体システムエレメントを使用して複数の異なる温度の水浴(例えば典型的なアニール、反応及び解離条件下の典型的な増幅反応では水浴3個)で流体を加熱することができる。
【0149】
(その他のキット詳細)
本発明は本明細書に記載する方法を実施するためのキットも提供する。特に、これらのキットは一般に本明細書に記載するシステムコンポーネントと、調査者が本発明の方法を実施し易くするための付加コンポーネントを含む。
【0150】
キットは更に、一般にシステムコンポーネントをパッケージングする容器を含む。本発明のキットのエレメントは一般に単一パッケージ又は関連パッケージセットに一括パッケージングされる。パッケージは場合により本発明のアッセイで使用される試薬(例えば緩衝液、増幅試薬、サイジングプローブ対、標準試薬等)と、本明細書に記載する方法に従ってアッセイを実施するための説明書を含む。プレパッケージド試薬の場合には、キットは場合により測定せずにすぐに方法に添加できる予め測定又は予め配量された試薬(例えば予め測定された流体アリコート、又はキットのエンドユーザーが再構成し易い予め計量もしくは予め測定された固体試薬)を含む。
【0151】
一般に、本明細書に記載するマイクロフルイディックデバイスは場合によりデバイスの好ましい機能を実施するための試薬を含むようにパッケージングされる。例えば、キットはアッセイコンポーネント、試薬、サンプル材料、対照材料等と共に記載する任意マイクロフルイディックデバイスを含むことができる。このようなキットは更に一般にデバイスと試薬の使用説明書を含み、試薬がデバイス自体に予め配置されていない場合には、デバイスのチャネル及び/又はチャンバーに試薬を導入するための説明書も含む。後者の場合には、これらのキットは場合によりマイクロフルイディックシステムに材料を導入するための特殊な補助デバイス、例えば適切に構成されたシリンジ/ポンプ等を含む(1好適態様では、デバイス自体が材料をデバイス内のチャネルとチャンバーに導入するための電気ピペッター等のピペッターエレメントを含む)。前者の場合には、このようなキットは一般にデバイスのチャネル/チャンバーに予め配置された必要な試薬と共にマイクロフルイディックデバイスを含む。一般に、このような試薬は分解や長期保存中の例えば漏洩による損失を防止するように安定化形態で提供される。試薬保存には多数の安定化方法が広く使用されており、例えば化学安定剤(即ち酵素阻害剤、殺微生物剤/制菌剤、抗凝固剤)の添加、例えば固体支持体への固相化、マトリックス(即ちゲル)取込み、凍結乾燥等による材料の物理的安定化が挙げられる。
【実施例】
【0152】
以下、実施例により本発明を例証するが、これによって本発明を限定するものではない。当然のことながら、本明細書に記載する実施例と態様は例証のみを目的とし、これらの記載に鑑みて種々の変形又は変更が当業者に示唆され、これらの変形又は変更も本明細書の精神及び範囲と特許請求の範囲に含まれる。
【0153】
(マイクロフルイディックフォーマットによるDNAの単分子増幅及び検出)
(緒言)
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるDNAの所望領域の増幅は分子生物学分野に革命をもたらした。増幅中に高値マイクロリットルの流体を使用する従来のPCRフォーマットでは、出発DNAコピー数は一般に少なくとも数百から数万分子である。マイクロフルイディクスの最近の進歩により、PCRを千分の1にし、ナノリットルの反応容量範囲まで縮小できることが明らかになった。サンプル濃度が一定に維持される場合、このような小容量の出発DNA鋳型数は用途によっては統計的に許容できないとみなされるカットオフコピー数を下回る可能性がある。例えば、一塩基多型(SNP)分析では、出発コピー数が少な過ぎる(約数十コピー未満)場合には、ヘテロ接合サンプルからの2個の異なる対立遺伝子は統計変動により均等量で増幅することができず、このサンプルの正しいSNP識別に不確実性を生じる可能性がある。
【0154】
理論的限度内では、ただ1個のDNAコピーしかPCR反応の出発鋳型として必要とされない。このような反応からの増幅産物は多数のDNA親鋳型の混合物ではなく、単一の親DNA鋳型の純粋な「クローン」である。単分子増幅及び検出の結果、他の方法では達成できない所定の興味深い適用が可能になる。このような適用の1つは癌遺伝子の検出である。本実施例は(1)マイクロフルイディック技術を使用して単分子PCRを実施するための方法、(2)単分子増幅の分析と検出、及び(3)癌検出に単分子PCR検出を使用する適用例について記載する。
【0155】
本発明者らは単分子PCRがマイクロフルイディックチャネルで可能であることを実験により立証した。フローの不在下の実験では、単分子PCRを裏付ける証拠として、加熱した増幅マイクロチャネル(従って「検出領域」にも相当)に沿って蛍光プローブの局在「クラウド」(増幅産物に対応)が観察された。シッパーチップ連続フローフォーマットでは単分子PCRの証拠はより決定的であり、実験観察を裏付けるに十分な統計を得るために非常に多数の実験を容易に実施することができる。
【0156】
(連続フロープロトコール)
図1のチップデザイン模式図に示すようなマイクロフルイディックシッパーチップを使用し、分配チャネル105への圧力勾配を使用してシッパーを介してDNAサンプル(例えばゲノムDNA)をチップ100に導入した。アセンブリ−ライン方式の連続フロー下でオンチップ試薬レザバーから共通試薬チャネル106を通して供給した共通試薬とサンプルをまず混合した後、8個のアリコートに等分して8個の独立した分析チャネル110−118に導入した。チャネル毎に専用のチップレザバーから供給した遺伝子座特異的試薬と各アリコートを混合して反応混合物を形成した後、チップ100の制御加熱領域構成するように増幅マイクロチャネル110−118の近位に金属トレースを含む加熱領域130に通した。チャネル110−118へのチャネル固有試薬の試薬添加はオンチップ「ホットスタート」を行うエレガントなマイクロフルイディック方法であり、全試薬を増幅直前に分析チャネルに添加する。前記領域の温度は加熱領域130におけるチャネル内のPCR条件に合わせて適宜周期的に変化させた(温度設定点と各滞留時間を制御)。加熱チャネル長と流体速度は合計PCRサイクルが所望数、通常は25〜40サイクルとなるように選択する(但し、サイクル時間が短く、サイクル数の多い非効率的なPCRアプローチも使用できる;USP6,303,343(Kopf−Sill)(2001年10月16日)発明の名称INEFFICIENT FAST PCRも参照されたい)。8チャネル検出領域135はチャネル110−118でPCRアンプリコンを検出するのに適した検出器を含む。
【0157】
(希少分子の増幅と検出)
本発明者らは単分子PCR増幅を連続フローフォーマットで実験的に立証するために、図1に示すPCRシッパーチップを使用した。サンプルをシッパーに供給するマイクロタイタープレートで濃度が1分子/nL未満になるまで希釈度を増したDNAサンプルを調製した(代替態様ではオンチップ希釈を実施することもできる)。チャネル当たり1分子未満の非常に低濃度のDNAをサンプリングする場合の統計変動により、チャネルによって増幅シグナルを示すものと示さないものがあると予想される。増幅が観察される試験フラクションはポアソン統計により最良に表される。
【0158】
表1は8チャネルの各々の平均DNAコピー数が0.02〜48の場合の1組のPCR実験の結果をまとめたものである。各DNA濃度について8個のPCR実験を同時に実施した。各サンプルで測定可能なPCR蛍光シグナルの発生値を表1に記録し、最大発生値は8であり、最小値は0である。PCR発生百分率を計算し、ポアソン統計予測と比較した。PCR発生百分率の測定値と予測値には非常に良好な一致を認められた。表2は別の日に同様の実験セットを繰返した結果をまとめたものである。図2は2組の実験の予測統計(ポアソン)と測定統計(試験1及び2)のグラフによる比較である。予測値と実測値は密接な一致を示す。
【表1】


【表2】

【0159】
連続フローモードでは、シッピングしたサンプルは分子拡散とフロー分散によりプラグ長が広がる。シッピングしたサンプルが数十又は数百の出発DNA鋳型コピーを含むとき、蛍光PCRプローブ領域の幅に及ぼす拡散と分散の効果はTaylor−Aris分散を考慮することにより予測することができる。単分子PCRでも同様の計算を実施することができるが、蛍光産物のピーク形状は大きなサンプルプラグ対応物よりも狭い。このようにピークが狭いのは単分子の場合のほうがDNAを増幅する出発領域が狭いことに主に起因する(数百μmに対して数nm)。図3A及び3Bはチャネル内の出発DNAコピー数の関数としてピーク面積とピーク(スラグ)幅の分析をまとめたものである。予想通り、低コピー数の増幅ほど実際に狭いピークを示した(逆も同様)。
【0160】
単分子を増幅及びタイピングするシステムは、サンプルがヘテロ接合である場合には全ピークが一方又は他方のTaqManプローブで正であるが、両方では正にならないという事実によっても裏付けられる。
【0161】
本発明により実施可能な単分子タイピングには他の用例もある。例えば、ゲノム内に近接して位置する配列に2種のTaqMan(登録商標)又は分子ビーコンアッセイを実施することができる。これらのアッセイを使用して同一増幅分子上に近接配列が存在するか否かを調べることができる。これはサイジングアッセイを実施する間接的な方法であり、個々の分子がTaqMan(登録商標)/ビーコン部位の両者をもつか否かを照会することができ、分子が両方の部位を含むサイズをもつ頻度の指標が得られる。これらの2部位をタイピングし、ハプロタイピング法を実施することもできる。
【0162】
(TaqManプローブ開裂により発生した蛍光を測定することによりオンチップPCR増幅をモニターするための実験)
本実施例はTaqManプローブ開裂により発生した蛍光を測定することによりオンチップPCR増幅をモニターするための実験に関する。図5はチャネル当たりの入力コピー数計算値に対する1/2最大値のピーク幅を示す(オンチップ)。
【0163】
本実験では、必要な全PCR試薬をオンチップでロードした。DNAサンプル1個を384ウェルプレートにてアッセイ緩衝液で希釈した(0.72ng/μL〜11.5ng/μL)。増幅サイクル時間は17秒とした(90℃5秒、58℃7秒及び72℃5秒)。全注入サンプルに合計35増幅サイクルを実施した。350秒間の緩衝液洗浄(サンプル間)を挟んでサンプルを合計200秒間注入した。各マイクロフルイディックチャネルについて最大ピークの1/2でPCRシグナル(ピーク)幅をオンチップで測定した(合計8個)。データから明らかなように全チャネルの単分子の増幅は所定時間(約40−50秒)で同一幅になる。チップに注入する分子(コピー)が増えるにつれてオーバーラップし始め、やがてピーク幅が増加する。しかし、注入時間が長いと、注入したDNAスラグの縁部に多少の単分子が出現する。
【0164】
(対立遺伝子タイピングへの方法の応用)
癌研究では、突然変異遺伝子が通常はサンプル中に野生型よりも著しく低濃度で出現するため、癌遺伝子の検出は非常に困難である。単一クローンを一度に試験することは現在可能であるので、単分子から増幅を検出できるならば、バックグラウンド中の高濃度の野生型と共に低濃度の突然変異遺伝子を検出する問題を解決できよう。所与サンプル中に存在する癌の原因となる少数の突然変異遺伝子を検出するには多数回のPCRを実施するのが有用であるが、マイクロフルイディックシッパーチップフォーマットをチップ上の平行PCRと併用すると、このような点まで単一クローンを一度に試験する速度が増加する。図4はチャネル当たり平均1コピー未満までの非常に少ない出発コピー数でのSNP分析の原蛍光強度測定値を示す。これらのデータは単分子PCR条件でSNPを検出できることを示す。
【0165】
図10−12は単分子増幅を立証する付加実験からの付加データを示す。図10−11に示すように、100%が第1のSNP対立遺伝子である第1組の実験データを左側に示し、1%が第2のSNP対立遺伝子(99%が第1の対立遺伝子)である第2組の実験を右側に示す。図の上部のシグナル線は第1の対立遺伝子の増幅を検出するための(長波長「赤色」シグナルを発生する)第1の色素検出システムを使用したデータであり、下部の線は第2の対立遺伝子の増幅を検出するための第2の色素検出システム(短波長「青色」シグナル)からのデータである。データは1個のサンプルスラグ中に検出されたDNA分子合計約700個を示す。図面から明らかなように、右側のみが第2のSNPの増幅に対応するシグナルピークを示す。このデータは本発明のシステムが大集団内の希少分子を正確に増幅及び検出できることを証明するものである。即ち、モデルとして各々SNPの2個の対立遺伝子にホモ接合の2個のDNAサンプルを混合した。この実験では、他方の対立遺伝子のDNA分子の大集団中に存在していた一方の対立遺伝子のDNA単分子を検出した(この場合には約700分子中の5〜7個の低コピー対立遺伝子)。図11は6回の別々の実験の結果を示し、分子間の特長的ピーク形状が一定であることを立証しており、PCRと得られるアンプリコンの分散の両者の再現性が非常に高いことを実験により証明している。実際に、本発明のようなLabChip(登録商標)システムは1)マイクロフルイディックシステムでは、より少数の野生型分子中に希少分子が存在するようにチャネルを通してサンプルを分散させるのが有用であり(各アリコート中の出発材料の比例的増幅により生じる問題を軽減する);2)再現性のある流体操作と分析により、分子シグナルとランダムシグナル変動を区別するために使用可能な予測可能な単分子ピーク形状が得られるという点で希少分子に対する感度を無制限にできる。
【0166】
図12は第2のSNPに対する第1のSNPの力価測定を示し、第1のSNP(上部トレースの「FAM DNA」)と第2のSNP(下部トレースの「VIC DNA」)に対応するアンプリコンからのシグナルが適切なシグナル相関を示すことが分かる。表示する百分率は第1のホモ接合サンプル(第1のホモ接合サンプルの2個の対立遺伝子は「FAM」であり、即ち、ホモ接合サンプルからの材料は「FF」ホモ接合である)と第2のホモ接合サンプル(第2のホモ接合サンプルの2個の対立遺伝子はVIC DNAサンプル、「VV」である)からのDNAの百分率に対応する。ここで、「FAM DNA」はFAM色素ラベルを付けた特異的オリゴ配列によりプローブされるDNA配列を意味し、「VIC DNA」はVIC色素ラベルを付けた特異的オリゴ配列によりプローブされるDNA配列を意味する。「FF」は「FAM」(オリゴ)配列のホモ接合DNAサンプルを意味し、「VV」は「VIC」(オリゴ)配列のホモ接合DNAサンプルを意味する。
【0167】
(癌マーカーの検出の立証)
図13はTaqManプローブを使用してオンチップで実施した癌検出に関連する2個の突然変異部位の検出例を示す。本発明のシステムが癌診断に適していることを立証するために、本発明のシステムを使用し、TaqManプローブを使用して多数の癌(例えば結腸直腸癌)マーカーを試験した。これらのアッセイの2例を図13に示し、一方はK−RAS遺伝子であり、他方はp53遺伝子であり、いずれも結腸癌等の各種癌の診断マーカーである。データトレースは1本のマイクロフルイディックチャネルで時間に対する2種の波長の蛍光を示す。正常対立遺伝子に特異的なものと突然変異対立遺伝子に特異的なものとの2個のTaqManプローブを設計し、このオンチップアッセイフォーマットで試験した。正常DNAの存在は野生型プローブで検出され(上部データトレースに白黒表示で示す「赤」シグナル)、突然変異体DNA分子は突然変異体プローブで検出される(下部データトレースに白黒表示で示す「青」シグナル)。「赤」の上部蛍光シグナルが強く、「青」の下部蛍光シグナルが弱いことからサンプルスラグ中のDNA分子の大半(約500)は正常である。このシグナルは正常ゲノムDNA分子の増幅産物の周囲の対立遺伝子特異的(赤、上部)及びバックグラウンド(青、下部)TaqManプローブ開裂により発生される。突然変異体分子(適切な点突然変異をもつ合成DNA鋳型)がシステムを通過する場合には、(赤(上部)バックグラウンドピークに対して)大きな青(下部)ピークとして増幅及び認識される。
【0168】
(不均質核酸混合物の正確な分析を可能にするマイクロフルイディクスによる単分子増幅装置及び方法)
連続フローPCRシステムはマイクロフルイディック処理環境で個々の低コピー、シングルコピー、及びゼロコピー増幅反応混合物の空間的分離を可能にする。一般に、空間的分離は出発鋳型濃度が両親からの対立遺伝子の表示を正確に確保するに十分高い場合に異なる反応を分離するために使用される(例えば約50個のゲノム等価物を使用することが多い)。本発明では、各分子の増幅及び検出産物を流体分離するように個々の鋳型分子を分離するのに十分にDNAを希釈することにより同一作業を実施する。検出産物が対立遺伝子特異的である場合には、2個の対立遺伝子の一方のみのシグナルが検出される。対立遺伝子毎に結果をカウントすると、ゲノタイプが非常に正確に得られる。この方法によるゲノタイプの欠点はスループットが低下し、1個のゲノタイプを得るために1回だけでなく多数の反応が必要になるという点である。2対立遺伝子システム中の出発濃度は通常約50/50(又は少なくとも同一桁)であり、ゲノタイプ生化学のシグナルノイズ比は良好であるので、ゲノタイプは一般に1回の反応で実施される。
【0169】
しかし、出発サンプル中の異なる対立遺伝子の表示が著しく相違する場合には、ゲノタイプ生化学は不十分に表示された対立遺伝子の正確な定量を与えるために十分に適切ではない。実際に、実際問題として、5個のうちの1個のコピーにしか存在しない対立遺伝子の検出に多くの典型的検出生化学を使用することは非常に困難である。癌では、突然変異体/正常比は著しく低い(1000分の1)ため、従来の生化学的方法では検出不能である。他方、単分子を増幅する場合には、反応を連続システムで所望時間繰返し、循環させることができ、理論的な検出限界はない(実際的限界として、突然変異体ゲノタイプが非常に希少である場合には、例えば連続フロー高スループットフォーマットで多数の反応を検出することが必要になる)。
【0170】
これはPCRにより感染性物質を定量するためのストラテジーも提供する。今日では、サイクル毎の定量と同様の条件下で増幅された鋳型分子の標準曲線との比較に依存するPCR又はRT−PCRにより実施されている。本発明では、既知流速でサンプルを流し、鋳型濃度のより正確で定量的な測定として単位容量当たりの増幅を測定した。ウェルで希濃度のサンプルを増幅することにより同じことを実施できる。合計陽性ウェル数がe=0.37の場合には、各ウェルが単一鋳型分子しかもたないという統計的確率が高かった。コピー数の測定方法として独立した確実な方法を使用するならば、任意時点でフロー流中に2分子以上を存在させることもできる。
【0171】
(ウイルス検出及び分析のための停止フロー条件下のマイクロフルイディックデバイスにおける単分子PCR)
ウイルス検出に望ましい感度(例えば約50−100コピー/ml)を考慮すると、チップ上の処理容量と初期サンプル容量のミスマッチによりマイクロフルイディックプラットフォームを使用する検出に応用するのは困難である。しかし、本願で立証されたマイクロフルイディックデバイスにおけるPCRの特徴の1つは核酸のシングルコピーを定量できるという点である。従って、生物学的に妥当な細胞又はウイルス粒子濃度で対象サンプル中の感染細胞又はウイルス粒子数をカウントすることができる。本実施例では、10マイクロリットルのオーダーの出発容量からの定量的単分子PCRについて記載する(〜1mlから約10ulのサンプルを取得する初期プレ濃縮段階は標準技術、例えば免疫沈降又は磁気ビーズへのハイブリダイゼーション捕獲により実施することができる)。
【0172】
例えばウイルス粒子>50個を含む濃縮溶液〜10ulをマイクロフルイディックチップ上で以下のように完全に処理(又は前記容量の実質的部分を処理)することができる。サンプルをPCRに必要な試薬(例えば1:11比)(例えばプライマー、プローブ、dNTP等)とオンチップで混合する。10ulのオーダーのホールドアップ容積をもつマイクロフルイディックネットワーク(図8参照)に混合物を加圧ロードし、フローを停止する。図面から明らかなように、図8に模式的に示すデバイスはPCR試薬ウェル801、サンプルウェル802、真空/廃液ウェル803、イメージング領域804(検出領域)及びマイクロフルイディックネットワーク805を含む。次に外部から又は場合により抵抗もしくはジュール加熱によりチップに熱を加えることによりネットワークの内容物を熱サイクルに付す。熱サイクルが完了したら、チップをイメージングし、各々一般にウイルス粒子からのDNAのシングルコピーに対応する蛍光の全「クラウド」を位置決定する(図9参照)。
【0173】
図9は熱サイクル後の図8の流体ネットワークの模式図である。スポット806はシングルアンプリコン(例えば1例ではウイルス粒子アンプリコン)からの蛍光「クラウド」を表す。定量的PCRのためにスポット806をカウントすることができる。この特定用例には、固定点の検出器(例えばフォトダイオード)による連続フローモードよりもチップの流体ネットワーク全体を同時にイメージング(例えばCCDイメージング)することが最も効率的であると思われる。しかし、連続フローを使用することもできる。イメージングのためのチップの有効面積は一般に20×30mmのオーダーである(但し、場合により増減してもよい)。この面積はDNAアレイ用に一般に使用されている技術による高解像度イメージング(〜1〜2um解像度)に対応する。このようなイメージングとしてはCCDイメージング、共焦点レーザースキャン、及び/又は同等方法が挙げられる。
【0174】
定量のダイナミックレンジはチップのサイズにある程度依存して一般に少なくとも10〜10である。20×30mmの典型的サイズでは、ダイナミックレンジは約10である。ダイナミックレンジを推定する1つの方法はコピー間の平均間隔を試験した後に全実験期間の予測拡散距離を計算する方法である。このような容量をマイクロフルイディックチップで処理できることを立証するための概算を以下に示す。
【0175】
10uLサンプルをnL範囲まで更に濃縮する必要があるか否かを調べるために、以下の計算を実施した。その結果、それ以上の濃縮は不要であるという結論に達した。
【0176】
深さ30um、幅120um、及び長さ30mmの一連の平行チャネル(例えば64本)にロードするならば、これらのチャネルの合計容量は6.2μLである。更に6.2μL中の容量の半量がPCR試薬に由来し、残りの半量が元の10μLサンプルに由来すると仮定するならば、ラン当たり10μLのうちの約3μLがサンプリングされ、これは統計的サンプリング又は実際の使用し易さの観点から妥当な容量である。更に、濃縮サンプル10μLが初期出発時の1mL容量の血漿からの粒子100個を含んでいるならば、PCR効率が100%に近い場合にはラン当たり約30個のPCRクラウドを検出することができる。これらのクラウドはチャネルに沿って平均62mm間隔であるか、又はチャネル2本毎にクラウド約1個である。
【0177】
次に検討する問題はチップサイズと検出実用性である。64本(2∧n二進分割)の平行チャネルを200um間隔で搭載するならば、21mmを占めることになる。従って、30mm×21mmの面積がイメージング(又はスキャン)され、チャネルに出現すると思われる30個のPCRクラウド(停止フローモード)を検出することができる。これは典型的なDNAアッセイチップのサイズと同等であり、入手可能なチップスキャナーを検出に使用できることを意味する。
【0178】
要約すると、1mLを10μLまで濃縮してチップウェルに入れるならば、検出のためにそれ以上の濃縮は不要である。容量を増加するために何らかの操作(例えば溶離用緩衝液への中和剤の添加、溶解剤の添加等)をする場合には、付加濃縮段階が望ましい場合もある。溶解剤の添加を避けるためには、分画前にウェルで10μL溶液中の粒子の超音波溶解を実施することが望ましいと思われる。
【0179】
上記方法による定量分析用プロトコールの1例を以下に示す。1)例えばアフィニティー吸着(標準技術)によるオフチップ濃縮と溶離によりサンプルを1mLから10μLに減らす;2)濃縮液10μLをチップウェルに入れ、超音波を加えて粒子を溶解させる;3)加圧によりPCR試薬のオンチップ添加と共にDNAサンプルを平行チャネルにロードした後、フローを停止する;4)外部ヒーターを始動し、全チャネルに停止フローモードでPCRを実施する;5)チャネルをイメージング又はスキャンし、単分子PCRのシグナルを検出する。
【0180】
本発明の1側面はチップ上で停止フロー条件を確保するための方法を提供することである。多数の方法を利用できる。例えば、温度感受性材料(例えばポリマー)を使用して停止フロー条件を設定することができる。停止フローを達成する簡単な方法は標準チップ−キャピラリー又はチップ−チューブ接続と弁の併用である。
【0181】
(対象核酸が所与長をもつか否かを判定するための方法及び装置)
本発明の単分子増幅技術は反応混合物中の対象ヌクレオチドが例えばプローブ間でフラグメント化しているか又は所与長をもつかを明確に判定するために使用することができる。例えば、シングルコピー反応混合物中の対象核酸の両端にハイブリダイズした2個以上の異なるプローブから同時シグナルは核酸がフラグメント化していないことを高レベルの信頼度で表すことができる。複数のターゲット核酸コピーとのドットブロットハイブリダイゼーション等の従来方法では、対象核酸の両端にハイブリダイズしたプローブの同時検出は全長対象核酸の存在及び/又は1対以上の非関連フラグメント化対象核酸の存在を表すので対照的である。
【0182】
長さの判定方法及びシステムは個々の全長又はフラグメント化対象核酸の存在を検出すると共に、多量の付加核酸を含む複雑な混合物中でもフラグメント化対象核酸の比率又は濃度を示すカウントを提供することができる。検証アッセイ結果の報告と関連疾患状態との相関のためにこのようなカウントを統計分析することができる。
【0183】
(核酸のフラグメント化状態の判定方法)
反応混合物中に平均約1個の個々の対象核酸(シングルコピー)を含む反応容量を提供するために十分小さい容量に対象核酸を含むサンプルを希釈及び/又は含有させることができる。対象核酸シングルコピー上の別個の配列に相補的な2個のプローブにシングルコピー対象核酸をハイブリダイズさせる場合に反応混合物中に2個のハイブリダイズしたプローブが同時に検出されたならば、核酸は別個のプローブターゲット配列間でフラグメント化していないと判断する。他方、核酸がターゲット配列間でフラグメント化している場合には、シングルコピー反応混合物はフラグメントを1個しか含まず、ハイブリダイズしたプローブは1個しか検出されない。サンプルをこのようなシングルコピー反応混合物に希釈及び/又は細分することにより、1個以上の対象核酸が特定プローブに相補的な配列とプローブ間の核酸を含む少なくとも一定の長さ(所与長)を含むか否かを高い信頼度で判定することができる。
【0184】
核酸が所与長をもつか否かを判定する方法は一般に、例えば前記核酸を含むサンプルの濃度を調整する段階と;核酸を反応混合物中でプローブ、プライマー対、及びポリメラーゼと接触させる段階と;核酸を増幅し、特異的に検出可能なアンプリコンを生成する段階と;プローブを反応混合物中で核酸及び/又はアンプリコンとハイブリダイズさせる段階と;反応混合物成分を検出領域に流入させる段階と;ハイブリダイズしたプローブからシグナルを検出する段階と;シグナルを解釈し、フラグメント及び所与長核酸量又は比率を得る段階を含むことができる。サンプルソースに関連すると思われる疾患状態とこのような量又は比率を相関させることができる。
【0185】
対象核酸の濃度は核酸が所与長をもつか否かを判定する方法で有用な数の低コピー、シングルコピー、及び/又はゼロコピー反応混合物を提供するように調整することができる。適切なコピー数が本発明の反応混合物及び検出器で得られるように例えば限外濾過、アフィニティー吸着、又は免疫沈降によりサンプルを濃縮することができる。望ましい核酸濃度が得られるように、例えばマイクロウェルプレートでの系列希釈又は流体システム希釈チャネルで緩衝液もしくは試薬と混合することによりサンプルを希釈することができる。多くのマイクロフルイディック態様では、対象核酸約1分子/ナノリットルの濃度が反応又は検出に望ましい。本発明の方法では、対象核酸を反応混合物中約100分子/nL〜約0.01分子/nL、又は約10分子/nL〜約0.1分子/nL、又は約3分子/nL〜約1分子/nLの範囲に調整することができる。
【0186】
所与長の判定方法では感度を増すように対象核酸をより多数のプローブターゲット分子まで増幅することが一般に有用である。高度に特異的又は高度に強力な検出可能なマーカーシグナルをもつプローブ(例えば増幅又はサンドイッチプローブ)を使用することにより個々の未増幅対象核酸を検出することが予想できる。しかし、1好適態様では、対象核酸からの配列(及び/又は相補配列)のコピー(アンプリコン)を作成することができる重合性酵素を含有する反応混合物中で対象核酸を増幅する。より好ましい態様では、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で2個以上のプライマー対及びポリメラーゼ酵素と接触させることにより対象核酸を増幅する。
【0187】
一般に、PCR増幅反応はマイクロフルイディックデバイスの増幅マイクロチャネル又はマイクロチャンバーで実施される。このため、スループットを上げ、サンプル使用量を減らし、シングルコピー反応混合物を単離することが可能になる。例えば、温度安定性DNAポリメラーゼと1個以上のプライマー対を含む反応混合物成分を対象核酸と共に温度制御増幅マイクロチャネルに流入させることができる。特定位置で対象核酸とハイブリダイズしたプライマー対から重合させることによりアンプリコンを伸長させることができ、従って、プライマーはアンプリコンを規定する。PCR技術で周知であると共に上記に記載したように、核酸溶融、プライマーとのアニール、及びポリメラーゼによるプライマー伸長のサイクルを反復することにより、プライマー対により規定される配列(及び第2鎖相補配列)をもつ核酸の量を何桁も増加させることができる。所与核酸長の判定方法では、一般に2個以上のプライマー対を反応混合物に加え、所期プローブに結合した対象核酸の2個以上の領域を増幅する。増幅した核酸の領域は所与(既知又は未知)配列長で離間され、プローブに相補的な配列を含むことができる。所定態様では、プローブ自体がアンプリコンを規定するプライマー対のメンバーとすることができる。
【0188】
対象核酸(及び/又は任意アンプリコン)を2個以上の異なるプローブと接触させ、対象核酸がプローブに相補的な配列間に所与長を含むか否かを判定することができる。対象核酸が1本鎖の場合には、2本のプローブが鎖に沿って所与長で離間した相補的配列とハイブリダイズすることができる。対象核酸が2本鎖であるか、及び/又は例えば増幅反応で重合した相補鎖をもつ場合には、プローブはどちらか一方の鎖又は所与配列長の距離で離間した両方の鎖上の配列と相補的であり、これとハイブリダイズすることができる。
【0189】
本方法の1態様では、図14に示すように2個以上のプライマー対により規定されるアンプリコンはオーバーラップせず、ほぼ所与長の配列により分離している。対象核酸140が第1のプライマー対141により規定される第1のアンプリコン配列と第2のプライマー対142により規定される第2のアンプリコン配列の間でフラグメント化していない場合には、低又はシングルコピー増幅反応混合物は第1のアンプリコン143と第2のアンプリコン144の両方を含む。このような反応混合物が第1及び第2のアンプリコン配列に夫々特異的な第1及び第2のプローブとハイブリダイズすると、同時プローブシグナル145が発生する。対象核酸140が第1のプライマー対141により規定される第1のアンプリコン配列と第2のプライマー対142により規定される第2のアンプリコン配列の間でフラグメント化している場合には、シングルコピー増幅反応混合物は第1のアンプリコン143又は第2のアンプリコン144のどちらか一方を含むが、両方は含まない。これらのシングルコピー反応混合物が第1及び第2のアンプリコン配列に夫々特異的な第1及び第2のプローブとハイブリダイズすると、第1のプローブシグナル146、又は第2のプローブシグナル147のどちらか一方が検出されるが、両方は検出されない。このような増幅におけるプライマー対は一般に約100塩基対のアンプリコン配列を規定し、アンプリコンは>約5000塩基対〜約20塩基対、又は約50塩基対〜約1000塩基対である。
【0190】
別の態様では、図15に示すように、短いアンプリコンの配列でオーバーラップする増幅のために第1鎖プライマー150は第2鎖プライマー151及び152で共有される。対象核酸153が短いアンプリコン154配列と長い第2鎖プライマー152配列の間でフラグメント化していない場合には、増幅反応は短いアンプリコン154と長いアンプリコン155の両方を生じる。このような場合には、短いアンプリコンに特異的なプローブ及び長いアンプリコンに特異的なプローブとのハイブリダイゼーションにより短いプローブシグナル156と長いプローブシグナル157が同時に発生する。対象核酸153が短いアンプリコン154配列と長い第2鎖プライマー152配列の間でフラグメント化している場合には、増幅反応は短いアンプリコン154しか生じず、シングルコピー反応混合物の検出により短いプローブシグナル156しか生じない。所定態様では、短いアンプリコンは増幅及びハイブリダイゼーション反応の有効性を確認する対照配列として機能することができる。場合により、短いアンプリコンは反応混合物サンプル中に存在する全長及びフラグメント化対象核酸の合計数を表すための内部参照として機能することができる。サンプル中の核酸を(アポトーシス細胞で生じるような)ランダム分解する態様では、短いアンプリコン中に規定される領域は長いアンプリコン中に規定される領域よりもフラグメント化している可能性が著しく低いと思われる。プライマー対が共通第1鎖プライマーを共有するこれらの態様では、所与長の判定は短いアンプリコン領域の外側の配列にハイブリダイズするプローブの検出に基づくことができ、即ちシングルコピー反応における同時シグナルは判定に必要ない。しかし、これらの態様は例えばシングルコピー検出法により提供される個別カウントの恩恵を受け、カウントの精度とデータからの統計的推測の信頼度を増すことができる。このような増幅におけるプライマー対は一般に上記のように約100塩基対の短いアンプリコン配列を規定する。長いアンプリコンを規定するプライマー対は一般に>約5000塩基対〜約200塩基対、又は約500塩基対〜約2000塩基対、又は約3000塩基対の配列長により分離される。
【0191】
増幅反応は当分野で公知の適切な任意技術を使用し、上記アリコートの増幅のセクションに記載したように実施することができる。例えば、増幅法はPCR、RT−PCR、LCR、及び/又は各種RNA増幅法の任意のものとすることができる。
【0192】
対象核酸が所与長をもつか否かを判定する基本的方法は2個以上のプライマー対又はプローブを使用するが、3個以上のプライマー対又はプローブを使用することにより対象核酸長及びフラグメント化状態に関する付加情報を得ることができる。付加プローブ及び/又はプライマー対は、第1及び第2のプライマー対及びプローブの間及び/又はその外側の長さ判定能を強化することができる。例えば、第1及び第2のプライマー対間の配列を増幅する付加プライマー対を使用し、プローブされたアンプリコンを検出すると、低又はシングルコピー反応から付加情報が得られる。このような場合には、第1プローブと付加プローブのみが同時検出されたならば、対象核酸はプローブ間に所与長をもつが、付加プローブ相補配列と第2のプローブ相補配列の間に切れ目があると判断することができる。付加シグナルと第2のシグナルのみが同時に検出された場合には、対象核酸は付加プローブ相補配列と第2のプローブ相補配列の間に所与長をもつが、第1のプローブ相補配列と付加プローブ相補配列の間に切れ目があると判断することができる。この場合の非フラグメント化対象核酸はシングルコピー反応の検出で第1、付加及び第2のプローブの各々からの同時シグナルをもつ。別の例では、第1及び第2のプライマー対により挟まれた配列の外側の配列を増幅する付加プライマー対を使用し、3個の適切なプローブでアンプリコンを検出すると、低又はシングルコピー反応から有用な情報が得られる。このような場合には、第1プローブと付加プローブのみが同時検出されたならば、対象核酸はプローブ間に所与長をもつが、第1のプローブ相補配列と第2のプローブ相補配列の間に切れ目があると判断することができる。付加シグナルと第2のシグナルが同時検出された場合には、対象核酸は付加プローブ相補配列と第2のプローブ相補配列の間に所与長をもつが、第1のプローブ相補配列と第2のプローブ相補配列の間に切れ目があると判断することができる。この場合の非フラグメント化対象核酸はシングルコピー反応で第1、付加及び第2のプローブの各々からの同時シグナルをもつ。このような対象核酸は付加プローブと第1又は第2のプローブの近いほうの間に少なくとも所与長をもつと共に、第1及び第2のプローブ間に所与長をもつ。当業者に自明の通り、付加プローブ及び/又は関連プライマー対を更に加えると、付加核酸長情報が得られる。
【0193】
相補的プローブは対象核酸及び/又は関連アンプリコンと特異的にハイブリダイズし、低又はシングルコピーハイブリダイゼーションに由来する1個以上のシグナルを発生することにより、前記核酸が少なくとも所与長をもつか否かの判定に有用な情報を与える。プローブは必要なレベルの特異性を提供するのに適したストリンジェンシー条件(例えば緩衝液イオン強度及び温度)下でハイブリダイズすることができる。多くの態様では、高ストリンジェント条件下でプローブを核酸にハイブリダイズさせる。長さを判定する好適態様では、プローブは上記アリコートの増幅のセクションに記載したように分子ビーコン(MB)プローブ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)プローブ、又はTaqMan(登録商標)プローブである。好ましい態様では、検出可能なマーカーは異なるプローブの各々に固有の定量的に異なるシグナルを発生する。場合により、2個以上の異なるプローブが同一シグナルをもつ場合もあり、シングルコピー反応混合物中の2個のプローブの同時存在を例えば二重振幅又は面積のシグナルとして検出することができる。
【0194】
相補的プローブにハイブリダイズしたターゲット対象核酸及び/又は関連アンプリコンをマーカーシグナル検出操作に付すことができる。混合物中に存在するシグナルを検出するために増幅及び/又はハイブリダイゼーション反応混合物を検出領域に流入させることができる。ハードウェアの構成に応じて、検出領域は例えばマイクロチャンバーもしくはマイクロチャネル、増幅反応混合物が形成又は増幅された領域、ハイブリダイゼーション反応が行われた領域、反応領域の下流のキュベット領域、マイクロフルイディックデバイスと一体的であるかもしくは近接する検出領域、及び/又は同等領域とすることができる。検出器は上述のようにマーカーシグナルに適切で且つ他のシステムハードウェアに対応する任意型とすることができる。核酸又はアンプリコンにハイブリダイズするか及び/又はこれから放出されたプローブは検出領域に流入又は通過することにより検出することができ、検出器でプローブをスキャンするか、あるいは例えば当分野で公知のイメージング技術を使用してプローブを2又は3次元検出領域で検出することができる。
【0195】
検出されたシグナルを解釈し、対象核酸を検出し、前記核酸が少なくとも所与長をもつか否かを判定することができる。プライマーとアンプリコンの観点から上述したように、低又はシングルコピー反応混合物中に1個以上のプローブが同時に検出された場合には、対象核酸長に関する情報が得られる。理論的には、対象核酸が所与長をもつか否かの判定にプライマーとアンプリコンは不要であるが、このような判定の感度を増すには増幅スキームが有用であると思われる。核酸に沿って所与距離で離間した配列で核酸(又は関連アンプリコン)に特異的にハイブリダイズした2個以上のプローブから低又はシングルコピー反応混合物中でシグナルが検出された場合には、核酸はプローブ間でフラグメント化していないと判断することができる。1個のプローブのみからシグナルが検出された場合には、核酸に切れ目が存在すると判断することができる。複数の低コピー、シングルコピー、及びゼロコピー反応混合物からの検出データの蓄積により、サンプル中に存在する核酸の定量、比率測定、及び相関に有用な情報が得られる。
【0196】
異なる長さの対象核酸は原則的に本明細書の各所、特に上記対象核酸のカウント及び統計分析のセクションに記載するように定量することができる。低コピー、シングルコピー、及び/又はゼロコピー反応混合物から検出されたシグナルを解釈及びカウントし、量計算に有用なデータを蓄積することができる。例えば、同時シグナル、孤立シグナル、及び無シグナル(ゼロコピー)反応のカウントに基づいてサンプル中の全長又はフラグメント化対象核酸の合計量について推定することができる。希釈倍率、効率係数、内部参照値等に従って適宜調節することができる。関連シグナルカウントの比率に基づいて全長とフラグメント化対象核酸の比率を決定することができる。当分野で自明の通り、得られるシグナルデータの量が多いほどこのような定量的測定の精度又は確度を改善することができる。例えば、本方法では例えばサンプルのフラグメント化状態を解釈するため、フラグメントと非フラグメント化核酸の比率を計算するため、対象核酸を定量するため、疾患状態との有効な相関を行うため等の目的で統計的に有効なデータセットを集計するように2コピー以下(シングルコピー及びゼロコピー反応を含む)の少なくとも25個の反応混合物にサンプルを分画することによりサンプルを評価することが好ましい。
【0197】
別の側面では、1個以上のシグナルの形状、体積、幅、高さ、長さ、面積、又は比を評価し、対象核酸に関する定量情報を得ることができる。獲得されたシグナルのこれらのピークパラメーターを回帰分析し、サンプル中の対象核酸の濃度変化に伴うパラメーター変化を最も厳密に反映する標準曲線方程式を同定することができる。アッセイが異なる検出可能なマーカーをもつ2個以上のプローブからの異なるシグナルの検出を含む場合には、異なる検出シグナルの回帰分析のために同一又は異なるピークパラメーターを入力することができる。
【0198】
1態様では、増幅サイクル数の増加に伴うシグナルの変化を測定することによりサンプル中の対象核酸の量を測定することができる。増幅サイクルの増加に伴うシグナル強度変化をプロットとすると、S字曲線になることが多い。変曲点、所定傾きをもつ点、所定絶対シグナル強度をもつ点、最大(プラトー)シグナル強度の所定フラクションをもつ点、及び/又は同等点等の曲線上の所定の厳密な点を高精度で識別することができる。既知核酸濃度の標準材料のアッセイからのこれらの識別可能点の任意のものの回帰分析に基づいて有用な標準曲線を作成することができる。例えば、選択された識別可能点に達するために必要な増幅サイクルに対する既知対象核酸濃度を表す標準曲線を作成することができる。このような標準曲線は例えばこのような曲線の標準データ又は数値表示のプロット曲線とすることができる。標準曲線に対して未知サンプルの核酸濃度を決定することができる。例えば増幅反応混合物を異なる速度、異なる時間、及び/又は異なる距離で活性増幅領域に流し、異なる増幅サイクル数を経た一連の反応混合物を得ることにより、異なる増幅度を一貫して得ることができる。
【0199】
1態様では、サーモサイクラーチャネルの活性サイクル加熱領域に増幅反応混合物を異なる距離で流すことにより、異なる程度の例えばPCR増幅が得られる。例えば、熱サイクル反応が停止する前に増幅反応混合物を活性サイクル増幅領域に所定距離だけ流入させることができる。この場合には、反応混合物の流動スラグの前端のほうが増幅サイクルが多く、後から流入する後端に近い混合物のほうが増幅サイクルが少なくなる。反応混合物のこのようなスラグが検出器を通過し続けるようにしたならば、検出器シグナル出力は図16Aに示すように逆S字曲線になると思われる。あるいは、前端近傍の反応混合物が後端近傍の反応混合物よりも増幅サイクルが少なくなるように先にサーモサイクラーから流出するように、熱サイクルの開始前に増幅反応混合物のスラグを不活性増幅領域に流入させることもできる。反応混合物のこのスラグが検出器を通過して検出されると、スラグの前端の弱い増幅と後端の強い増幅が示す図16Bに示すようなS字曲線検出器シグナル出力を発生する。
【0200】
対象核酸のフラグメント化状態又は完全性に関する情報を例えばサンプルソース生物の疾患状態に相関させることができる。例えば本発明の方法を使用して得られた所定核酸の長さに関する定性的、定量的、及び/又は比率データを比較することにより、当分野で公知の相関分析を実施することができる。例えば、非フラグメント化核酸の量、又は所与長をもつ核酸に対するフラグメント化核酸の比率に疾患状態を相関させることができる。統計分析を使用して比率閾値又は定量的閾値を設定し、許容不能な偽陽性結果を伴わずに相関疾患状態に陽性であると思われるサンプルを許容可能な信頼度で識別することができる。例えば、大便又は子宮頸管スワブサンプル中のフラグメント化核酸と非フラグメント化核酸の比率が所定の値である場合には、このサンプルは例えば夫々結腸又は子宮頸癌患者に由来する可能性があると判断することができる。
【0201】
(対象核酸の定量方法)
本発明の方法及びシステムは対象核酸を定量するための各種フォーマットで使用することができる。定量アッセイは所望品質の出力結果を提供するように構成することができる。例えば、特定アッセイのデザインによりアッセイパラメーター(例えば感度、確度、精度、及び偽陽性又は偽陰性率)を変化させることができる。アッセイの反復により精度を増すことができる。定量アッセイは例えば所望範囲、感度及び/又は確度で有効な結果を提供するのに最適なシグナルピークパラメーターを評価することにより改善することができる。
【0202】
サンプルシグナル出力ピークを一連の標準シグナル出力ピークと比較すると、サンプル中の対象核酸の濃度を表すことができる。例えば、既知量の対象核酸を含有する一連の標準材料を各々同数の増幅サイクルで増幅すると、図17に示すような一連の検出可能なシグナルを生じることができる。核酸標準の各濃度について、アンプリコンに関連する異なる検出可能なシグナルピークを検出することができる。1態様では、未知濃度の対象核酸を含むサンプルを標準材料と同一サイクル数で増幅する。得られたアンプリコンを標準と同一のプローブ及び検出可能なマーカーシステムで検出すると、所定の顕著なピークパラメーターをもつシグナルが得られる。サンプルからのシグナルを評価し、分析目的に最適なシグナルピークパラメーター(例えばシグナルピークの形状、シグナルピーク上の変曲点、シグナルピークの傾き、シグナルピーク振幅、シグナルピーク面積、高さの2分の1のシグナルピーク幅等)を識別することができる。例えば、ピーク面積により最高確度の定量的比較が得られ、ピーク高さにより高精度比較が得られ、ピーク形状により広い濃度範囲にわたって適切な定量的比較が得られる。特定例の比較に適したシグナルピークパラメーターの識別は例えば当分野で周知のアッセイ実施及び検証方法を使用して決定することができる。核酸定量の精度及び/又は確度は標準値間の中間値との比較の補間、複製標準の試験、反復サンプルアッセイの統計分析、2個以上の増幅レベルでの比較試験、及び/又は同等手段により強化することができる。
【0203】
多重アッセイ結果を使用することにより核酸定量の信頼性を強化する1つの方法はサンプルと標準の増幅シグナル応答曲線の比較に依存する。例えば、多数の増幅サイクルで発生したアンプリコン関連シグナルの量を各種既知濃度の標準のシグナルに比較することができる。図18Aに模式的に示すように、増幅サンプルからのシグナルは低値180から出発し、所定点181で対数的に増加し、増幅サイクル数の増加と共に最大シグナルプラトー182に向かって漸近するので、S字曲線を描く。異なる既知濃度の対象核酸を含む標準材料を増幅すると、図18Bに示すように、一連の標準S字曲線が得られる。例えば各種レベルのコンシステンシーをもつサンプル及び標準曲線上の点を識別することができる。識別可能点は例えば変曲点、所定傾きをもつ点、所定シグナル振幅をもつ点、最大(例えばプラトー漸近)シグナル振幅の所定フラクションをもつ点等とすることができる。サンプルが識別可能点に達するために必要な増幅サイクル数からサンプル中の核酸濃度を決定できるように、図18Cに示すように、識別可能点までのサイクルに対する濃度の標準曲線を作成することができる。例えば、最大傾き(最大シグナル増加率)の点183を標準曲線の各々で厳密に識別することができる。最大傾きまでのサイクルを濃度に対してプロットし、標準曲線を作成することができる。標準曲線から最大傾きまでのサイクル数185を与える濃度184として未知サンプルの対象核酸濃度を読み取ることができる。当然のことながら、このような決定には必ずしも標準曲線又はサンプル曲線を手動プロットする必要はない。本明細書において曲線の作成とは関連因子(例えば濃度と傾き、シグナルパラメーターと増幅サイクル、識別可能点と濃度等)の関係を表す全手段を含み、例えば手動で実施するか、アナログ又はデジタルコンピューターとソフトウェアにより実施するかを問わず、データプロット、回帰分析、曲線フィット、方程式決定、及び/又は同等手段が挙げられる。対象核酸定量の本態様では、例えば上記核酸のフラグメント化状態の判定方法のセクションに記載したように、標準反応混合物とサンプル反応混合物を異なる増幅サイクル数で増幅することが好ましい。
【0204】
所与長対象核酸及び/又はフラグメント化対象核酸の量と比率は例えば2個以上のプローブシグナルについて作成した識別可能点までの増幅サイクルに対する濃度の標準曲線を参照することにより高精度で決定することができる。この場合、例えば上記段落に記載した方法に従って、フラグメント化又は非フラグメント化対象核酸に関連する検出可能なシグナルを別々に定量し、サンプル中の対象核酸の完全性を評価することができる。1側面では、対象核酸の2個以上に関連するシグナルについて識別可能点までの増幅サイクルに対する濃度の標準曲線を別々にプロットすることができる。(例えばアンプリコンの配列にハイブリダイズしており、シグナルを発生する検出可能なマーカーをもつ核酸プローブに由来する場合にシグナルはアンプリコンに関連している。)各アンプリコンについてサンプルの識別可能点までのサイクルを標準曲線と比較し、フラグメント化対象核酸と所与長対象核酸の濃度を別々に決定することができる。1好適態様では、均質反応混合物からシグナルを検出する。別の好ましい態様では、対象核酸の完全性に関する高分解データが得られるように、低又はシングルコピー反応混合物からシグナルを検出する。
【0205】
(核酸のフラグメント化状態の判定用システム)
本発明のシステムはサンプル中の対象核酸長の高感度識別に好適な効率的な処理用ハードウェアを提供することができる。核酸長の識別システムは原則的に単分子増幅について本明細書に記載する通りとすることができるが、例えば多重プローブの増幅、検出、解釈、及び/又は相関には付加エレメントを加える。核酸長を識別するためのコアシステムは例えばマイクロチャネル又はマイクロチャンバーに低及びシングルコピー反応混合物を収容することが可能なマイクロフルイディックデバイスと、均質反応混合物から1個以上のシグナルを識別することが可能な検出器と、単一又は同時に検出されたシグナルを解釈し、サンプルからの個々の核酸長を決定するように構成されたソフトウェアシステムを含む。付加サブシステムとしては単分子増幅システム一般について上述したようなサンプル保存モジュール、抽出モジュール、希釈モジュール、及びコンピューターが挙げられる。
【0206】
図19に示すような典型的な核酸長識別用システムは以下のように機能することができる。抽出モジュール193により抽出され、マイクロフルイディックデバイス194によるサンプリングのために送達されるまでマイクロタイタープレート191のウェル内のサンプル190は保存モジュール192に保持することができる。サンプルはキャピラリーシッパーチューブ195を通ってマイクロフルイディックデバイスのマイクロチャネル196又はマイクロチャンバーに吸引され、サンプルは一体的希釈モジュール197(例えば希釈チャネル)を通って試薬198と緩衝液199で希釈され、増幅反応混合物を構成する。反応混合物は多重増幅領域200の各チャネルに別々に分注され、低コピー、シングルコピー、及び/又はゼロコピー反応混合物を増幅条件(例えば熱サイクル)に付すことができる。増幅した反応混合物アリコートは検出領域201に流入し、1個以上の異なるプローブ上の検出可能なマーカーからのシグナルを検出器202により検出することができる。検出器はコンピューター203と連携し、システムソフトウェアによる解釈及び/又は相関のために検出器シグナルを送信することができる。
【0207】
システムにおける核酸識別用サンプルは天然又は非天然核酸を含む任意サンプルとすることができる。例えば、サンプルとしては一塩基多型(SNP)をもつ核酸、癌関連核酸、感染性物質に由来する核酸、全血、血清、血漿、大便、尿、膣分泌液、射精液、滑液、生検、脳脊髄液、羊水、又は法医学用核酸が挙げられる。サンプルはサンプルの保存期間を長くするのに適した温度、光、及び湿度の環境条件下で上記のような保存モジュールに保存することができる。サンプルライブラリーは例えばマルチウェルプレート内の各種液体アリコートのマトリックス又はスライド上の乾燥スポットとして保存することができる。サンプルは在庫システムにより追跡可能であると共にサンプル抽出システムによりアクセス可能な保存モジュール内の位置に配置することができる。
【0208】
核酸長の識別システムでは、例えばシステムの高スループット性能を強化するために抽出モジュールを利用することができる。抽出モジュールは保存モジュールから指定サンプルを取出し、分析のために希釈モジュール又はマイクロフルイディックデバイスに送達することができる。抽出モジュールは例えば運動自由度6のロボットアーム、x−yプロットトレイ捕捉器、ベルトコンベヤー、及び/又は同等手段を備えることができる。タグ付きサンプルを識別及び追跡するためにバーコードリーダー又は高周波識別システムを抽出モジュールに組込むことができる。
【0209】
核酸長判定用反応混合物は対象核酸、2個以上のポリメラーゼプライマー対、ヌクレオチド三リン酸、緩衝液及び/又は2個以上の検出機能なプローブを含むように調製することができる。反応混合物成分は任意時間又は場所で任意順序で混合することができる。反応混合物はマイクロフルイディックデバイスの外部、例えばマイクロウェルプレートで手動又は自動ピペッターシステムを使用して構成することができる。反応混合物はマイクロフルイディックデバイスの外部で例えば手動系列希釈又は自動希釈モジュールを使用することにより希釈することができる。希釈により、システムの増幅マイクロチャネル、ハイブリダイゼーション反応、及び/又は検出領域で所望量の低、シングル、及びゼロコピー反応混合物が得られるような対象核酸濃度とすることができる。反応混合物は例えばアンプリコンを規定し、対象核酸上に所与間隔でプローブに相補的な配列を挟む2個以上のプライマー対を含むことができる。好ましいプライマー対は約50塩基対〜約3000塩基対、又は約100塩基対のサイズのアンプリコンを規定する。好ましい態様では、プライマー対はほぼ同一融点をもち、ほぼ同一長のアンプリコンを規定する。1態様では、アンプリコンは1個以上のプローブに相補的な配列をもつ領域で長いアンプリコンとオーバーラップする短いアンプリコンを含む。
【0210】
1側面では、システムは例えば分析用サンプル成分のアフィニティー濃縮、又はハイブリダイゼーション反応混合物成分の濃縮を実施するための固体支持体を含むことができる。固体支持体は反応成分(例えば対象核酸、プライマー、プローブ等)に相補的であり、前記成分を特異的に捕獲することが可能なアフィニティーエレメント(例えばオリゴヌクレオチド)をもつことができる。固体支持体はシステム投入に合わせて対象核酸の濃度を調節するのに有用であり得る。固体支持体は増幅又はハイブリダイゼーション段階中に成分を固相化することができる。対象核酸及び/又はその関連アンプリコンとハイブリダイズしたプローブは検出のために検出領域で捕獲することができる。所定反応混合物成分を固体支持体に固相化し、他の所定成分は流動させることができるが、検出時に同一混合物中に異なるプローブが存在しているならば、混合物は均質であるとみなすことができる。
【0211】
対象核酸又は関連アンプリコンとハイブリダイズするように増幅反応混合物及び/又はハイブリダイゼーション混合物に1個以上のプローブを存在させることができる。例えば長いアンプリコンの検出が非フラグメント化核酸を表すような所定態様では、単一プローブからのシグナルは非フラグメント化核酸の存在を裏付けることができる。しかし、好適態様では、システムは対象核酸に沿って所与距離で離間された核酸配列に特異性をもつ2個以上のプローブを含む。多くの場合には2本鎖核酸の第2鎖の配列に特異的な代替プローブを所与長のほぼ各末端に配置することによりシグナルを増強することができ、一般に、代替プローブは第1鎖プローブの近傍にハイブリダイズするが、プライマー相互のハイブリダイゼーションを避けるために第1鎖プローブに相補的ではない。好ましいプローブは対象核酸との結合に関連する有意シグナル変化をもつ。従って、例えば均質混合物から低バックグラウンドに対する陽性シグナルが得られる(即ちハイブリダイズしていないプローブを反応混合物から分離する必要がない)。プローブは上記の各種検出可能なマーカーの任意のものをもつことができるが、核酸長の識別に好ましいプローブは分子ビーコン(MB)、TaqMan(登録商標)、及び蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)プローブである。
【0212】
本発明の1側面では、単一反応混合物で複数のアッセイを実施することができる(多重化)。例えば、反応混合物は2種以上の対象核酸に対する独立して検出可能なプローブを含むことができる。反応混合物は例えば第1の対象核酸の第1の所与長の両端の配列に相補的なプローブ対と、別の対象核酸の第2の所与長の両端の配列に相補的な別のプローブ対を含むように構成することができる。4個のプローブは反応混合物中で個々に検出できるように各々異なる検出可能なマーカーをもつことができる。検出器領域中の反応混合物が3個のプローブシグナルを同時に発生するならば、システムソフトウェアは所与長をもつ識別可能な第1の対象核酸のシングルコピーと、他の核酸のフラグメント化シングルコピーの存在を示すものとしてこれを明確に解釈することができる。当業者はこのような多重スキームを使用して他の明確なシグナル組合せを予想することができる。
【0213】
核酸長の識別システムにおけるマイクロフルイディックデバイスとしては、システム例のセクションに上述したように試薬ウェル、ガス、液体及び電気接触用ポート、サンプルシッパー、マイクロチャネル及びマイクロチャンバー、増幅マイクロチャネル、並びに検出領域をもつチップが挙げられる。好適態様では、マイクロフルイディックデバイスはシッパー、(図1に示すような)多重増幅チャネル、及び多重周波数のレーザー励起と蛍光検出用に構成された検出領域等の部材を含む。
【0214】
システムの検出器は反応混合物成分の均質混合物から2個以上のシグナルを検出することが可能な任意構成とすることができる。検出器はハイブリダイズしたプローブにより発生される検出可能なマーカーシグナルの型に適合するように構成することができる。検出器としては例えば蛍光光度計、電荷結合デバイス、レーザー、酵素、又は酵素基質、光電子増倍管、分光光度計、走査型検出器、顕微鏡、ガルボスキャナー等が挙げられる。検出器は増幅反応混合物、アリコート、ハイブリダイゼーション反応混合物、又は反応混合物成分が流入した検出領域をモニターすることができる。本方法ではハイブリダイゼーションによる蛍光プローブが好ましいので、本システムの好ましい検出器は蛍光光度計である。同一の検出可能なマーカーシグナルをもつ2個のプローブの存在を識別することもできるが、シグナルは異なり、検出器は均質混合物から2個以上の異なるシグナルを同時に識別できることが好ましい。より好ましい態様では、検出器は光ファイバーにより検出領域に送られるレーザー光励起光源と、2個以上の発光波長を同時に検出することが可能なフォトダイオードアレイを含む。
【0215】
ソフトウェアシステムは1個以上のシグナルを解釈及び/又はシグナルを疾患状態に相関させるためのシステムのエレメントとすることができる。ソフトウェアシステムは例えばシグナルをカウントするため、濃度を計算するため、比率を計算するため、標準曲線を作成するため、及び/又は例えば疾患状態との相関を評価するためのアルゴリズムを含むことができる。ソフトウェアは例えば検出領域における所与長の核酸の存在を表すものとして2個以上のシグナルの同時発生を解釈することができる。ソフトウェアは例えば検出領域におけるフラグメント化核酸の存在を表すものとして単一シグナルを解釈することができる。ソフトウェアは例えばシグナルカウント数、反応容量、希釈又は濃縮倍率、効率係数、既知入力値及び定数、シグナルピーク形状及び/又は同等因子等の情報を考慮することにより対象核酸の量を計算することができる。ソフトウェアはサンプル中の対象核酸のコピー数、所与長をもつ対象核酸数、又は異なる長さをもつ対象核酸の比率を表すものとして検出器により検出されるシグナルの体積、幅、高さ、長さ、面積、及び/又は比等のピークパラメーターを解釈することができる。ソフトウェアシステムは例えば検証量又は比率閾値をサンプルのアッセイ結果と比較することにより1個以上のシグナル検出結果を疾患状態に相関させることができる。
【0216】
コンピューターは核酸長の識別システムの重要なエレメントであり得る。コンピューターはシステムにおける制御機能(例えばサンプル識別、サンプル抽出、サンプルシッピング、マイクロチップ圧力及び電圧の制御、検出器シグナルの受信、並びにシグナルのソフトウェア解釈)を統合することができる。好ましい態様では、コンピューターはサンプル又は標準アッセイからのシグナルを受信、保存、及び評価するためにシグナル検出器と連携している。システムのコンピューターは上記コンピューターのセクションに記載した通りとすることができる。例えば、本発明のシステムは例えば本明細書に記載する核酸長判定方法を実施するためのソフトウェアシステムに入力したデータセット及び命令セットを備えるデジタルコンピューターを含むことができる。コンピューターは例えばPC(DOS(登録商標)、OS2(登録商標)、WINDOWS(登録商標)オペレーティングシステム対応Intelx86又はPentiumチップ)、MACINTOSH(登録商標)、Power PC、又はSUN(登録商標)ワークステーション(LINUX又はUNIXオペレーティングシステム対応)又は当業者に公知の他の市販コンピューターとすることができる。コンピューターは例えばシステムに組込んだメモリ付き集積回路又はプロセッサー等の単純な論理装置とすることができる。検出器シグナルを解釈するためのソフトウェアも入手可能であるか、あるいはVisualbasic、Fortran、Basic、Java等の標準プログラミング言語を使用して当業者により容易に構築することができる。
【0217】
以上、明確に理解できるように本発明を多少詳細に記載したが、本発明の真の範囲を逸脱することなく形態や細部に種々の変更が可能であることは以上の開示から当業者に自明である。例えば、上記技術及び装置の多くは種々に組合せて使用することができる。
【0218】
本明細書に引用する全公報、特許、特許出願、及び/又は他の文献はその開示内容全体を全目的で参考資料として組込み、各公報、特許、特許出願、及び/又は他の文献を全目的で参考資料として組込むと個々に記載しているものとして扱う。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】本発明の実施例の多くで使用した8チャネルPCRシッパーチップのチップデザインを模式的に示す。
【図2】2回の実験の投入コピー数に対する増幅百分率を予測(ポアソン)値と比較したグラフである。
【図3】図3A及びBはピーク面積とピーク幅の棒グラフを示す。
【図4A】増幅反応のピーク幅を示すグラフである。
【図4B】増幅反応のピーク幅を示すグラフである。
【図4C】増幅反応のピーク幅を示すグラフである。
【図4D】増幅反応のピーク幅を示すグラフである。
【図5】単分子増幅ピーク幅のグラフ分析である。
【図6】本発明のシステムの模式図である。
【図7】本発明のシステムの模式図である。
【図8】対象核酸をスキャンするためにチャネルネットワークの同時画像処理を使用する停止フローシステムの模式図である。
【図9】熱サイクル後の流体ネットワークの模式図である。スポットはシングルコピー増幅反応からの蛍光「クラウド」を表す。定量的PCR分析のためにスポットをカウントする。
【図10】単分子DNA増幅を示すデータグラフである。
【図11】単分子DNA増幅を示すデータグラフ(6パス)である。
【図12】単分子DNA増幅を示すデータグラフ(3パネル)である。
【図13】TaqManプローブを使用してオンチップで実施した癌検出に関連する2個の突然変異部位の検出のグラフを示す。
【図14】オーバーラップしない2個のアンプリコン配列を使用して増幅した対象核酸の低〜シングルコピー検出の模式図を示す。
【図15】少なくとも1個のプローブに相補的な配列でオーバーラップする2個のアンプリコン配列を使用して増幅した対象核酸の低〜シングルコピー検出の模式図を示す。
【図16】図16A〜16Bは活性サイクル増幅領域に増幅反応混合物を異なる距離で流入させることにより作成した増幅曲線の模式図を示す。
【図17】25サイクル又は40サイクルの増幅サイクルに付した一連の核酸標準材料で検出されたシグナルピークを示す。
【図18】図18A〜18Cは最大傾きの識別可能点に到達するために必要な増幅サイクル数に基づく対象核酸の定量を立証する模式図を示す。
【図19】対象核酸長を識別するための本発明のシステムの模式図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の対象核酸が少なくとも所与長を含むか否かを判定する方法であって、
検出可能なマーカーを各々含む2個以上の異なるプローブと反応混合物中の対象核酸を接触させる段階と;
対象核酸を検出領域に流入させる段階と;
1個以上の検出可能なマーカーをプローブから検出する段階を含み;
2個以上の異なるプローブからシグナルが同時に検出された場合には対象核酸がプローブ間でフラグメント化していないと判断し、サンプル中の対象核酸が少なくとも所与長をもつと判定する前記方法。
【請求項2】
反応混合物が対象核酸のシングルコピーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
異なるプローブの1個のみからシグナルが検出された場合には対象核酸がフラグメント化していると判断する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
所与長の判定が対象核酸の完全性を判定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
2個以上のプローブが各々異なるシグナルをもつ検出可能なマーカーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
プローブの少なくとも1個が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)検出可能なマーカー又は分子ビーコン(MB)マーカーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
疾患状態に関連する長さの比又は定量的閾値を識別することにより1種以上の対象核酸の1個以上の長さを疾患状態に相関させる段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
対象核酸を第1のプライマー対と接触させる段階と;
第1のプライマー対により規定される配列の外側の対象核酸の配列に相補的な少なくとも1個のプライマー又はその相補配列を含む第2のプライマー対と対象核酸を接触させる段階と;
プライマーでプライマー伸長を開始してマイクロチャネル又はマイクロチャンバーに収容された反応混合物中の対象核酸を増幅し、第1のプライマー対により規定される第1のアンプリコン又は第2のプライマー対により規定される第2のアンプリコンを生成する段階を更に含み;
少なくとも第1のプローブが第1のアンプリコンの配列に相補的であり、少なくとも第2のプローブが第2のアンプリコンの配列に相補的であり;
それによって前記検出の感度を増加する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1個のプライマー対が100塩基対長以下のアンプリコンを規定する対照プライマーを含み、別のプライマー対が約100塩基対〜約3000塩基対長のより長いアンプリコンを規定する試験プライマーを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1のプライマー対により規定される対象核酸の領域が第2のプライマー対により規定される対象核酸の領域とオーバーラップしない請求項8に記載の方法。
【請求項11】
プローブの少なくとも1個が1個のプライマー対により規定されるアンプリコン配列に相補的であるが、別のプライマー対により規定されるアンプリコン配列には非相補的である請求項8に記載の方法。
【請求項12】
第1のプライマー対又は第2のプライマー対により規定される配列の外側の対象核酸の配列に相補的な少なくとも1個のプライマー又はその相補配列を含む1個以上の付加プライマー対と対象核酸を接触させる段階を更に含み;
それによって1個以上の付加アンプリコンを生成し、1個以上の付加アンプリコンに特異的なプローブと第1又は第2のプローブからシグナルが同時に検出された場合には対象核酸がシグナルを発生するプローブに相補的な配列間でフラグメント化していないと判断する請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記増幅がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT−PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Q−βレプリカーゼ又はRNA/転写技術を含む請求項8に記載の方法。
【請求項14】
対象核酸各2コピー以下を含む少なくとも25個の反応混合物にサンプルを分画する段階と;
サンプルアリコートで個々に接触及び検出を実施する段階と;
1個のプローブからシグナルが検出されるアリコート数を個々にカウントするか又は2個以上のプローブからシグナルが検出されるアリコート数を個々にカウントする段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも25個の反応混合物が対象核酸のシングルコピーを含む1個以上の反応混合物を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも25個の反応混合物が対象核酸のコピーを含まない1個以上の反応混合物を含む請求項14に記載の方法。
【請求項17】
1プローブシグナルと2プローブシグナルの数を評価し、異なる長さをもつ対象核酸の比率を決定する段階を更に含む請求項14に記載の方法。
【請求項18】
疾患状態を前記比率に相関させる段階を更に含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
対象核酸を定量する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記定量が異なるプローブの1個以上からのシグナル数をカウントすることを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記定量が1個以上のシグナルの体積、幅、高さ、長さ、面積、形状、又は比を検出することを含む請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記定量がプローブ検出可能なマーカーシグナルと内部標準シグナルの比較を含む請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記定量が異なる増幅度を含む2個以上の反応混合物からのシグナルの比較を含む請求項19に記載の方法。
【請求項24】
異なる流速でサーモサイクラーに流すか、サーモサイクラーに異なる距離で流入させるか、サーモサイクラーに異なる時間保持するか、又は異なる増幅サイクル数に付すことにより、2個以上の反応混合物が異なる増幅度を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
対象核酸のシングルコピーを含む1個以上の反応混合物を得るようにサンプルを希釈する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項26】
対象核酸を約1分子/ナノリットル以下の濃度まで希釈する請求項25に記載の方法。
【請求項27】
サンプルが全血、血清、血漿、大便、尿、膣分泌液、射精液、子宮頸管スワブ、滑液、生検、脳髄液、羊水、痰、唾液、リンパ液、涙液、汗、及び尿から構成される群から選択されるサンプルを含む請求項1に記載の方法。
【請求項28】
サンプル中の対象核酸長の識別方法であって、
対象核酸を第1のプライマー対と接触させる段階と;
第1のプライマー対により規定される配列の外側の対象核酸の配列に相補的な少なくとも1個のプライマー又はその相補配列を含む第2のプライマー対と対象核酸を接触させる段階と;
対象核酸のシングルコピーを含む反応混合物中の対象核酸を増幅し、第1のプライマー対により規定される第1のアンプリコン又は第2のプライマー対により規定される第2のアンプリコンを生成する段階と;
各々検出可能なマーカーからのシグナルを含み、第1のアンプリコンの配列に相補的な第1のプローブ又は第2のアンプリコンの配列に相補的な第2のプローブと反応混合物を接触させる段階と;
シグナルの1個以上を検出する段階を含み;
プローブの一方のみからシグナルが検出された場合には対象核酸がフラグメント化していると判断し、両方のプローブからシグナルが検出された場合には所与長をもつ核酸であると判断することにより、対象核酸長を識別する前記方法。
【請求項29】
反応混合物がマイクロチャネル又はマイクロチャンバーに収容されている請求項28に記載の方法。
【請求項30】
サンプル中の対象核酸長の識別方法であって、
対象核酸を第1のプライマー対と接触させる段階と;
第1のプライマー対により規定される配列の外側の対象核酸の配列に相補的な少なくとも1個のプライマー又はその相補配列を含む第2のプライマー対と対象核酸を接触させる段階と;
プライマーでプライマー伸長を開始してマイクロチャネル又はマイクロチャンバーに収容された反応混合物中の対象核酸を増幅し、第1のプライマー対により規定される第1のアンプリコン又は第2のプライマー対により規定される第2のアンプリコンを生成する段階と;
各々検出可能なマーカーからのシグナルを含み、第1のアンプリコンの配列に相補的な第1のプローブ又は第2のアンプリコンの配列に相補的な第2のプローブと反応混合物を接触させる段階と;
シグナルの1個以上を検出する段階を含み;
プローブの一方のみからシグナルが検出された場合には対象核酸がフラグメント化していると判断し、両方のプローブからシグナルが検出された場合には所与長をもつ核酸であると判断することにより、対象核酸長を識別する前記方法。
【請求項31】
反応混合物が対象核酸のシングルコピーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項32】
サンプル中の対象核酸の定量方法であって、
複数の増幅サイクルにより対象核酸を増幅する段階と;
2回以上の増幅サイクルで生成されたアンプリコンに関連するシグナルを検出する段階と;
増幅サイクル数に対するシグナルパラメーターのサンプル曲線を作成する段階と;
サンプル曲線からの1個以上の識別可能点を濃度に対する識別可能点の標準曲線と比較することにより、対象核酸を定量する段階を含む前記方法。
【請求項33】
識別可能点が変曲点、所定傾きをもつ点、所定絶対シグナル振幅をもつ点、又は最大シグナル振幅の所定フラクションをもつ点を含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
サンプル中の対象核酸の定量方法であって、
対象核酸の2個以上の異なるアンプリコンを規定する反応混合物中で複数の増幅サイクルにより対象核酸を増幅する段階と;
複数の増幅サイクルの少なくとも2サイクル後に異なるアンプリコンの各々に関連する異なるシグナルを均質反応混合物から検出する段階と;
増幅サイクル数に対する異なるシグナルのサンプル曲線を作成する段階と;
サンプル曲線からの1個以上の識別可能点を核酸濃度に対する識別可能点の1個以上の標準曲線と比較することにより、アンプリコンの1個以上に関連する対象核酸の1個以上の配列を定量する段階を含む前記方法。
【請求項35】
前記検出が低コピー又はシングルコピー反応混合物から1個以上のシグナルを検出することを含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
2個以上の異なるシグナルが同時に検出された場合には所与長の核酸であると判断し、異なるシグナルが1個だけ検出された場合にはフラグメント化核酸であると判断する請求項35に記載の方法。
【請求項37】
識別可能点が変曲点、所定傾きをもつ点、所定絶対シグナル振幅をもつ点、又は最大シグナル振幅の所定フラクションをもつ点を含む請求項34に記載の方法。
【請求項38】
増幅反応混合物を異なる流速でサーモサイクラーに流すか、増幅反応混合物をサーモサイクラーに異なる距離で流入させるか、増幅反応混合物をサーモサイクラーに異なる時間保持するか、又は増幅反応混合物を異なる増幅サイクル数に付すことにより増幅サイクル数を制御する請求項34に記載の方法。
【請求項39】
サンプル中の対象核酸の定量方法であって、
複数の対象核酸標準材料を所定増幅サイクル数で増幅する段階と;
異なる既知核酸濃度をもつ標準材料で生成された標準アンプリコンに関連するシグナルを検出する段階と;
対象サンプル核酸を前記増幅サイクル数で増幅する段階と;
対象サンプル核酸で生成されたサンプルアンプリコンに関連するシグナルを検出する段階と;
1個以上の標準アンプリコンシグナルをサンプルアンプリコンシグナルと比較し、サンプル中の対象核酸の濃度値を決定することにより、対象核酸を定量する段階を含む前記方法。
【請求項40】
前記比較がシグナルピークの形状、シグナルピーク上の変曲点、シグナルピークの傾き、シグナルピーク振幅、シグナルピーク面積、及び高さの2分の1のシグナルピーク幅から構成される群から選択されるシグナルパラメーターの比較を含む請求項39に記載の方法。
【請求項41】
増幅サイクル数を変えて前記増幅、検出、及び比較段階を1回以上繰返すことにより、対象サンプル核酸の付加濃度値を決定する段階と;
濃度値を統計的に評価することにより、より高精度又は高確度でサンプル中の対象核酸の濃度値結果を提供する段階を更に含む請求項39に記載の方法。
【請求項42】
サンプル中の対象核酸長の識別システムであって、
対象核酸の1個以上のアンプリコンを提供する条件下で反応混合物を収容する増幅マイクロチャネル又はマイクロチャンバーを含むマイクロフルイディックデバイスと;
マイクロフルイディックデバイスと一体的であるか又は近接して配置され、均質混合物から1個以上のシグナルとしてアンプリコンを検出するように構成された検出器と;
1個以上の個々の対象核酸分子の長さを表すものとして1個以上の同時に検出されたシグナルを解釈することにより、対象核酸長を識別するソフトウェアシステムを含む前記システム。
【請求項43】
サンプルが一塩基多型(SNP)をもつ核酸、癌関連核酸、感染性物質に由来する核酸、全血、血清、血漿、大便、尿、膣分泌液、子宮頸管スワブ、射精液、滑液、生検、脳脊髄液、羊水、又は法医学用核酸を含む請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
反応混合物が対象核酸と、第1のプライマー対と、第1のプライマー対により規定される配列の外側の対象核酸配列に相補的な少なくとも1個のプライマーを含む第2のプライマー対と、第1のプライマー対により規定されるアンプリコンを合成することができるポリメラーゼを含む請求項42に記載のシステム。
【請求項45】
1個のプライマー対が100塩基対長以下のアンプリコンを規定する対照プライマーを含み、別のプライマー対が約100塩基対〜約3000塩基対長のより長いアンプリコンを規定する試験プライマーを含む請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
第1のプライマー対により規定される対象核酸の領域が第2のプライマー対により規定される対象核酸の領域とオーバーラップしない請求項44に記載のシステム。
【請求項47】
増幅マイクロチャネル又はマイクロチャンバーがマイクロチャネルに加熱電流を印加するための電極、抵抗加熱エレメント、ジュール−トンプソンデバイス、又はペルチエデバイスを含む請求項42に記載のシステム。
【請求項48】
増幅マイクロチャネル又はマイクロチャンバーがサンプル中の他の対象核酸分子又はサンプル中の付加核酸から単一対象核酸分子の増幅産物を実質的に分離するために十分小さい容量の対象核酸のアンプリコンを生成するように反応混合物を熱サイクルに付すように構成されている請求項42に記載のシステム。
【請求項49】
サイズ選択的媒体又はアフィニティー媒体中で分離せずにアンプリコンを検出する請求項42に記載のシステム。
【請求項50】
システムソフトウェアがサンプル中の対象核酸のコピー数、所与長をもつ対象核酸数、又は異なる長さをもつ対象核酸の比率を表すものとして検出器により検出されたシグナルの体積、幅、高さ、長さ、面積、形状、又は比を解釈する請求項42に記載のシステム。
【請求項51】
1個以上の検出可能なマーカーとアンプリコンの1個以上に相補的な配列を含む1個以上の核酸プローブを更に含み、検出可能なマーカーが検出器により検出可能なシグナルを発生する請求項42に記載のシステム。
【請求項52】
検出器が蛍光光度計、電荷結合デバイス、レーザー、酵素もしくは酵素基質、光電子増倍管、分光光度計、走査型検出器、顕微鏡、又はガルボスキャナーを含む請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
蛍光光度計が2個以上の周波数の発光を同時に検出することができる請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
検出器が異なるシグナルをもつ2個以上の検出可能なマーカーからのシグナルを独立して検出することができる請求項51に記載のシステム。
【請求項55】
プローブの少なくとも1個が1個のプライマー対により規定されるアンプリコン配列に相補的であるが、別のプライマー対により規定されるアンプリコン配列には非相補的である請求項51に記載のシステム。
【請求項56】
プローブの少なくとも1個が第1のアンプリコン配列と第2のアンプリコン配列に相補的である請求項51に記載のシステム。
【請求項57】
2個以上のプローブが各々異なるシグナルを含む請求項51に記載のシステム。
【請求項58】
異なるシグナルが異なる蛍光発光を含む請求項57に記載のシステム。
【請求項59】
プローブの少なくとも1個が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)検出可能なマーカー又は分子ビーコン(MB)マーカーを含む請求項51に記載のシステム。
【請求項60】
FRET検出可能なマーカーがヌクレアーゼ活性によりFRETプローブから除去可能なクエンチャーを含む請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
システムが高スループットシステムである請求項42に記載のシステム。
【請求項62】
更に希釈モジュールを含む請求項42に記載のシステム。
【請求項63】
希釈モジュールが増幅マイクロチャネル又はマイクロチャンバーで対象核酸に1個以上のシングルコピー反応混合物を提供する濃度までサンプルを希釈するように構成されている請求項62に記載のシステム。
【請求項64】
希釈モジュールが系列マルチウェルプレート希釈又はマイクロフルイディックデバイスの希釈チャネルを含む請求項62に記載のシステム。
【請求項65】
対象核酸コピーを含まない複数のゼロコピーアリコートと、対象核酸のシングルコピーを含む1個以上のシングルコピーアリコートを含む複数のアリコートにサンプルを分画するように希釈モジュールに指示するシステム命令を更に含む請求項62に記載のシステム。
【請求項66】
検出器と接続するコンピューターを更に含む請求項42に記載のシステム。
【請求項67】
マイクロフルイディックデバイスが更に複数の増幅チャネルを含む請求項42に記載のシステム。
【請求項68】
反応混合物の調製前にサンプルを保存するサンプル保存モジュール、又は反応混合物の調製前に保存モジュールからサンプルを抽出するサンプル抽出モジュールを更に含む請求項42に記載のシステム。
【請求項69】
反応混合物の調製前又は調製中に対象ヌクレオチドを捕獲するため又は検出用にアンプリコンを捕獲するために固体支持体に結合した捕獲用オリゴヌクレオチドを更に含む請求項42に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2008−502325(P2008−502325A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513461(P2007−513461)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/017065
【国際公開番号】WO2005/113148
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PENTIUM
2.Linux
3.UNIX
4.JAVA
【出願人】(506076709)カリパー・ライフ・サイエンシズ・インク. (11)
【Fターム(参考)】