説明

単子葉植物におけるオイルの上昇

ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸の過剰発現を介した解糖流量を増加することによって種子中により高いオイルレベルを有する作物植物の作製方法を提供する。本発明は、さらに、ピルビン酸キナーゼをコードする核酸の過剰発現を含んで植物中のオイル含量を変化させることができ、ホスホフルクトキナーゼで、またはホスホフルクトキナーゼおよびピルビン酸キナーゼ・トランスジーンで形質転換した単子葉植物細胞および単子葉植物も含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出典明示して本明細書の一部とみなす、2005年3月26日に出願した米国仮特許出願番号60/684,809から35 U.S.C. 119(e)の優先権を主張する。
本発明は、ホスホフルクトキナーゼの過剰発現によって作物植物の種子中のオイルレベルを増加することに関する。
【背景技術】
【0002】
フルクトース−6−リン酸(F−6−P)からフルクトース−1,6−ビスリン酸(F−1,6−BP)の変換は、酵素ホスホフルクトキナーゼ(PFK)によって触媒される。ATP依存性PFKは、大部分の生物および組織においてこの工程を触媒し、この酵素は解糖流量の調節に長く関与している。実際、植物を含む多くの系において、アロステリック酵素ATP−PFKおよびピルビン酸キナーゼ(PK)の結合した調節が解糖を調節することに主に寄与していると考えられている。植物においては、ATP−PFKはプラスチドおよびサイトゾルに局在する。しばしば、これらの異なる細胞質位置に見出される酵素は、異なる動力学特性を有する。ATP−PFK酵素に加えて、これらの2の代謝の相互変換に関与する2の他の酵素が存在する:F−6−PおよびF−1,6−BPの無機ピロリン酸依存性可逆的相互変換を触媒するピロリン酸−依存性PFK(PPI−PFK)および糖新生の逆反応を触媒するフルクトース−1,6−ビスホスファターゼである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
Doehlertら(1988)は、PFKはトウモロコシの内胚乳(低オイル組織)よりも胚(高オイル組織)により豊富であることを見出した。穀粒の異なる部分内の炭水化物代謝に関与する酵素の豊富さの分布の調査において、これらの研究者は、PFK活性が大部分のオイルを沈積する穀粒のこれらの領域と相関することを見出した。解糖流量を調節することにおけるPFKの重要性を支持する多くの証拠が存在する(例えば、Plaxton, 1996)。外因性ホスホフルクトキナーゼ遺伝子を含むいくつかのトランスジェニック植物が作製されている(例えば、米国特許第7,012,171号;Burrellら,1994;Thomasら,1997;WO99/67392;Woodら,1999;Woodら,2002)が、単子葉植物および種子中のオイル含量を増加するためのPFKの使用は報告されていない。
【0004】
単子葉植物の発育している種子中でより高オイルレベルを生成するためには、これらの組織をデンプンよりもトリアシルグリセロール(TAG)により多くの取得炭素(優勢的にはスクロース)を変換させることが必要である。このことは、脂肪酸合成の基質としてピルビン酸およびアセチル−CoAを生成するためには、より多くのヘキソースが解糖によって分解されることが必要であることを示唆している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、単子葉植物の種子のような組織においてより高いオイルレベルを生じる、増大した解糖流量の意図した効果を有するpfk遺伝子の過剰発現およびそれによる増加した基質供給を含む。より詳細には、それは、単子葉植物の種子における細菌ラクトバシルス・デルブリューキイ・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbreuckii subspecies bulgaricus)からのATP依存性pfk遺伝子の過剰発現を含む。
【0006】
本発明は、その種子に増加したオイルを有する単子葉植物の作製方法を提供し、該方法は、所望によりプラスチド・トランジットペプチドをコードする核酸配列にも作動可能に連結されていてもよい種子−特異的発現向上プロモーターに作動可能に連結したホスホフルクトキナーゼをコードする核酸配列を含む形質転換単子葉植物を生育させて種子を生産し、それによって種子のオイル含量が該核酸配列を欠失している同質遺伝子型植物の種子と比較して増加する工程を含む。
【0007】
本発明は、その種子に増加したオイルを有する単子葉植物の作製方法を提供し、該方法は、所望によりプラスチド・トランジットペプチドをコードする核酸配列にも作動可能に連結されていてもよい種子−特異的発現向上プロモーターに所望により連結されていてもよい配列番号:9または13以外のホスホフルクトキナーゼをコードする核酸配列を含む形質転換単子葉植物を生育させて種子を生産し、それによって種子のオイル含量が該核酸配列を欠失している同質遺伝子型植物の種子と比較して増加する工程を含む。
【0008】
1の形態において、方法は、ホスホフルクトキナーゼをコードする核酸配列が、
a)配列番号:1または11を含む核酸配列および
b)配列番号:2または12をコードする核酸配列
よりなる群から選択される単子葉植物を作製することを含む。

もう1の形態において、植物は、さらに、所望により種子−特異的発現向上プロモーターに連結されていてもよいピルビン酸キナーゼをコードする第2の核酸配列を含む。この形態の1のバージョンにおいて、ピルビン酸キナーゼをコードする第2の核酸配列は、
a)配列番号:3を含む核酸配列および
b)配列番号:4をコードする核酸配列
よりなる群から選択される。
【0009】
種々の形態において、単子葉植物は、トウモロコシ(Zea mays)、イネ(Oryza sativa)、オオムギ(Hordeum vulgare)、キビ(Panicum miliaceum)、ライムギ(Secale cereale)、コムギ(Triticum aestivum)およびサトウモロコシ(Sorghum bicolor)よりなる群から選択される。
【0010】
種々の形態において、プロモーターは、胚−特異的発現向上プロモーター、内胚乳−特異的発現向上プロモーターならびに胚−および内胚乳−特異的発現向上プロモーターよりなる群から選択される。
【0011】
本発明は、形質転換植物細胞、形質転換植物および子孫、種子、オイルおよび粉も提供する。さらに、本発明は、動物飼料およびヒト食物組成物ならびにオイルを製造する方法を提供する。
【0012】
(配列の簡単な説明)
配列番号:1は、ラクトバシルス・デルブリューキイ・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbreuckii ssp. bulgaricus)からのホスホフルクトキナーゼをコードする核酸配列を記載する。
配列番号:2は、ラクトバシルス・デルブリューキイ・サブスピーシーズ・ブルガリカスからのホスホフルクトキナーゼのポリペプチド配列を記載する。
配列番号:3は、ラクトバシルス・デルブリューキイ・サブスピーシーズ・ブルガリカスからのピルビン酸キナーゼをコードする核酸配列を記載する。
配列番号:4は、ラクトバシルス・デルブリューキイ・サブスピーシーズ・ブルガリカスからのピルビン酸キナーゼのポリペプチド配列を記載する。
配列番号:5−8は核酸プライマーを記載する。
配列番号:9は、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)からのホスホフルクトキナーゼをコードする核酸配列を記載する。
配列番号:10は、シゾサッカロマイセス・ポンベからのホスホフルクトキナーゼのポリペプチド配列を記載する。
配列番号:11は、プロピオニバクテリウム・フリューデンレイシイ(Propionibacterium freudenreichii)からのホスホフルクトキナーゼをコードする核酸配列を記載する。
配列番号:12は、プロピオニバクテリウム・フリューデンレイシイからのホスホフルクトキナーゼのポリペプチドを記載する。
配列番号:13は、エスシェリキア・コリからのホスホフルクトキナーゼをコードする核酸配列を記載する。
配列番号:14は、エスシェリキア・コリからのホスホフルクトキナーゼのポリペプチド配列を記載する。
【0013】
(図面の簡単な説明)
以下の図面は本願明細書の一部分を形成し、本発明のある種の態様をさらに説明するために含める。本発明は、本明細書に示す特定の形態の詳細な記載と組み合わせてこれらの図面の1またはそれを超えるものに参照することによってより良好に理解し得る。
【0014】
図1は公開されたpfk遺伝子配列(EMBL受理番号X71403)を有するラクトバシルス・デルブリューキイ・サブスピーシーズ・ブルガリカスATCC11842株から単離したpfk遺伝子(配列番号:1)のコード配列のアライメントを示す。
【0015】
図2はプラスミドpMON72008を描く。
【0016】
図3はプラスミドpMON79823を描く。
【0017】
図4はプラスミドpMON79824を描く。
【0018】
図5はプラスミドpMON79827を描く。
【0019】
図6はプラスミドpMON72028を描く。
【0020】
図7はプラスミドpMON79832を描く。
【0021】
図8はプラスミドpMON81470を描く。
【0022】
図9はプラスミドpMON72029を描く。
【0023】
図10はプラスミドpMON83715を描く。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(例示的形態の記載)
【0025】
以下の定義は本発明の理解を支援するものとして提供する。「DNA配列」、「核酸配列」、「核酸分子」および「核酸セグメント」とは、ヌクレオチドの順序正しい並びを含む物理構造をいう。DNAセグメント、配列またはヌクレオチド配列は、より大きなヌクレオチド分子、ベクターなどに含まれ得る。加えて、これらの配列における核酸の順序正しい並びは、配列表、図、表、電子媒体などの形態で描くことができる。
【0026】
「コード配列」、「コード領域」、「構造配列」および「構造核酸配列」とは、各々がコドンを形成する一連のトリプレットでヌクレオチドが並ぶDNA配列、核酸配列、核酸分子のすべてまたはセグメントをいう。各コドンは特異的なアミノ酸をコードする。したがって、コード配列、コード領域、構造配列および構造核酸配列は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド配列を形成する一連のアミノ酸をコードする。コード配列、コード領域、構造配列および構造核酸配列は、より大きな核酸分子、ベクターなどに含まれ得る。加えて、これらの配列中のヌクレオチドの並びは、配列表、図、表、電子媒体などの形態で描くことができる。
【0027】
「cDNA」なる語は、mRNAに相補的であってそれらから由来する二本鎖DNAをいう。
「発現」とは、遺伝子によってコードされた情報が細胞中に存在し、および作動する構造に変換されるプロセスをいう。発現された遺伝子は、RNAに転写され、ついでタンパク質に翻訳されるもの、および、RNAに転写されたが、タンパク質に翻訳されないもの(例えば、トランスファーRNAおよびリボソームRNA)を含む。
【0028】
本明細書で用いる「遺伝子」とは、コード配列の前方(5’−非コード配列)および後方(3’−非コード配列)の調節配列を含む、特定のタンパク質を発現する核酸フラグメントをいう。「ネイティブ遺伝子」とは、それ自身の調節配列を含んで天然に見出される遺伝子をいう。「キメラ遺伝子」とは、天然では一緒に見出されない調節およびコード配列を含む、ネイティブ遺伝子ではないいずれの遺伝子をいう。したがって、キメラ遺伝子は、異なる起源に由来する調節配列およびコード配列、または同一の起源に由来するが天然で見出されるものと異なる様式で並んでいる調節配列およびコード配列を含み得る。「内因性遺伝子」とは、生物のゲノムにおいてその天然の位置に存在するネイティブ遺伝子をいう。「外因性」遺伝子または「トランスジーン」とは、形質転換法によってゲノムに導入された遺伝子をいう。トランスジーンは、形質転換法によって導入されるゲノミックDNAを含む(例えば、その活性プロモーターに連結したゲノミックDNA)。
【0029】
「異種的」とは、異なる起源に由来する2またはそれを超える核酸またはタンパク質配列の間の関係をいう。例えば、プロモーターとコード配列の組合せが通常は天然に見出されない場合はコード配列に対してプロモーターは異種的である。加えて、特定の核酸配列が特定の細胞または生物において天然に発生しない場合は、特定の核酸配列は細胞または生物について「異種的」となり得る。
【0030】
「配列ホモロジー」とは、位置同一性のパーセントによる、2またはそれを超える核酸またはアミノ酸配列の間の類似性のレベルをいう。ホモロジーなる語も、異なる核酸またはタンパク質の中の類似する機能特性の概念をいうために用いる。
【0031】
「ハイブリダイゼーション」とは、2の核酸ストランドが十分な配列相補性を有する場合に核酸の第1のストランドが第2のストランドに水素結合塩基対合を介して結合する能力をいう。本願明細書で用いるように、核酸分子は、それらが完全な相補性を示す場合に他の核酸分子の「相補体」という。本明細書で用いるように、1の分子のすべてのヌクレオチドが他のヌクレオチドに相補的である場合に、分子は「完全相補性」を示すという。したがって、2の核酸ストランドは、適当な条件下で互いにアニールしたままであることを許容する十分な安定性でもって互いにハイブリダイズすることができる場合に、十分な相補性を有するという。
【0032】
DNAハイブリダイゼーションを促進する適当なストリンジェンシー条件は、例えば、約45℃の6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)につづく20−25℃での2.0×SSCの洗浄であり、当業者に知られている。例えば、洗浄工程の塩濃度は、50℃での約2.0×SSCの低ストリンジェンシーから65℃での約0.2×SSCの高ストリンジェンシーまでで選択することができる。加えて、洗浄工程における温度は、室温、約22℃の低ストリンジェンシー条件から、約65℃の高ストリンジェンシー条件まで高めることができる。温度および塩は両方とも変化することができ、あるいは温度または塩濃度のいずれかを、本明細書に提供する1またはそれを超えるポリヌクレオチド分子、例えば配列番号:1、3または11に記載するポリヌクレオチド分子およびそれらの相補体に適度なストリンジェント条件、例えば、約2.0×SSCおよび約65℃下で核酸が特異的にハイブリダイズするように一定に保持することができる。
【0033】
「単離した」なる用語は、その結果の性質にかかわらず、天然環境から取り出されていることを意味する。例えば、イネ細胞からのクローニングによるように、イネから「単離された」核酸配列は、それをトウモロコシ細胞のゲノムに挿入する場合に「単離された」ままである。
【0034】
「作動可能に連結した」なる句は、お互いにそれらが適当な効果を奏するような2またはそれを超える核酸領域または核酸配列の空間配置をいう。例えば、プロモーター領域は、核酸配列の転写がプロモーター領域によって指示されるように核酸配列に対して位置することができる。プロモーター領域および核酸配列は「作動可能に連結する」。
【0035】
「ホスホフルクトキナーゼ」なる用語は、フルクトース−6−リン酸(F−6−P)からフルクトース−1,6−ビスリン酸(F−1,6−BP)へ変換することができる酵素をいう。これには、国際生化学連合酵素命名クラスEC2.7.1.11および2.7.1.90からの酵素が含まれる。
【0036】
「ピルビン酸キナーゼ」なる用語は、ホスホエノールピルビン酸からピルビン酸へ変換することができる酵素をいう。これには、国際生化学連合酵素命名クラスEC2.7.1.40からの酵素が含まれる。
【0037】
「プラスチド」なる用語は、クロロプラストまたはクロモプラストのような藻類および植物細胞の自己複製型細胞質オルガネラをいう。「トランジットペプチド」とは、ポリペプチドをサイトゾルにおけるその合成からプラスチドへ標的化し、プラスチド膜を通したその輸送を促進するタンパク質のN−末端のアミノ酸の配列をいう。ポリペプチドがプラスチドに入った後、トランジットペプチドはポリペプチドから切断される。
【0038】
「上流」および「下流」とは、ヌクレオチド配列の位置およびコード配列の転写または翻訳の向きに参照して用いる位置の用語であり、それは通常5'から3'方向に進む。
【0039】
「プロモーター」または「プロモーター領域」なる語は、通常はコード配列の上流(5')に見出され、核酸配列のRNA分子への転写を指示することができる核酸配列をいう。プロモーターまたはプロモーター領域は、典型的に、RNAポリメラーゼの認識サイトおよび転写の適当な開始に必要な他の因子の認識サイトを提供する。本明細書にて予想されるように、プロモーターまたはプロモーター領域は、調節領域を挿入または欠失し、プロモーターをランダム−もしくは部位特異的−突然変異に付すなどすることによって誘導化されたプロモーターの変形を含む。プロモーターの活性または強度は、同様に測定する第2のプロモーターに対して、それが産生するRNAの量の観点で、または細胞もしくは組織中のタンパク質蓄積の量の観点で測定することができる。
【0040】
「3'非−コード配列」なる句は、コード配列の下流に位置するヌクレオチド配列をいい、mRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響することができる調節シグナルをコードするポリアデニル化認識配列および他の配列を含む。これらは、通常、3'−非翻訳領域または3'−UTRという。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3'末端へのポリアデニル酸束の付加に影響することによって特徴付けられる。異なる3'非−コード配列の使用は、Ingelbrechtら(1989)によって例示されている。
【0041】
「翻訳リーダー配列」または「5'−非翻訳領域」または「5'−UTR」は、すべて、遺伝子のプロモーター配列とコード配列との間に位置するヌクレオチド配列をいう。5'−UTRは翻訳開始部位の上流の完全にプロセスされたmRNAに存在する。5'−UTRは、mRNAへの一次転写物のプロセシング、mRNA安定性または翻訳効率に影響することができる。翻訳リーダー配列の例は、記載されている(TurnerおよびFoster,1995)。
【0042】
「RNA転写物」とは、DNA配列のRNAポリメラーゼ触媒転写から生じる産物をいう。RNA転写物がDNA配列の完全な相補コピーである場合、それは一次転写物という。一次転写物の転写後プロセシングに由来するRNA配列は、成熟RNAという。「メッセンジャーRNA(mRNA)」とは、イントロンを含まず、細胞によってポリペプチドに翻訳され得るRNAをいう。
【0043】
「組換えベクター」とは、プラスミド、コスミド、ウイルス、自律複製配列、ファージ、または線状一本鎖、環状一本鎖、線状二本鎖、または環状二本鎖のDNAもしくはRNAヌクレオチド配列のような、それによってまたはその中で関心の核酸が増幅され、発現されまたは保存されるいずれかの因子をいう。組換えベクターは、いずれの起源から合成または由来し得、ゲノム組み込みまたは自律複製することができる。
【0044】
「調節配列」とは、その存在または不存在がコード配列の転写および発現に影響する、コード配列またはイントロンに対して上流(5')、その中または下流(3')に位置するヌクレオチド配列をいう。
【0045】
「実質的に相同」とは、例えばDNAStar(Madison, WI)における、CLUSTAL Wアルゴリズムによって測定されるような、配列において少なくとも約90%同一である2の配列をいう。
【0046】
「実質的に精製した」とは、そのネイティブな状態においてそれと通常会合する実質的にすべての他の分子から分離された分子をいう。より好ましくは、実質的に精製した分子は、調製物中に存在する優勢な種である。実質的に精製した分子は、約60%よりも高く、好ましくは約75%よりも高く、より好ましくは約90%よりも高く、および最も好ましくは約95%よりも高くで天然の混合物中に存在する他の分子(溶媒を除いて)を含まない。「実質的に精製した」なる句は、そのネイティブの状態で存在する分子を包含することを意図しない。好ましくは、本発明の核酸分子およびポリペプチドは実質的に精製されている。
【0047】
「形質転換」なる用語は、核酸分子の受容宿主への導入をいう。「宿主」なる用語は、細菌細胞、菌類、動物または動物細胞、植物または種子、または植物細胞、プロトプラスト、カリ(calli)、根、塊茎、種子、茎、葉、幼植物、胚および花粉を含むいずれかの植物の部分または組織をいう。
【0048】
本明細書で用いるように、「トランスジェニック植物」とは、そのゲノムに、例えば、核またはプラスチド・ゲノム、外来性核酸が安定して導入されている植物をいう。
【0049】
「同質遺伝子」なる用語は、トランスジーンを有するかまたは欠いている植物間または植物系統間の比較用語として、問題のトランスジーンを除いて、同一または類似する遺伝子背景を有する植物または系統を意味する。例えば、いわゆる同一の親F集団から表現型的に類似または同一の選抜を表す姉妹系統は、「同質遺伝子」と考える。安定な形質転換植物の子孫を、型(分子マーカー分析による遺伝子型、フィールド観察による表現型、またはその両方)およびトランスジーンについて選択しつつ、再発的な親としての非形質転換親を用いて3ないし6世代(またはそれを超える)の間、非形質転換親系統の植物と交雑および戻し交雑した場合に、得られるトランスジェニック系統はその非形質転換親系統に対して高度に「同質遺伝子」であると考える。
【0050】
「種子」、「穀粒」および「穀物」なる用語は、意味において等価であると理解される。穀粒なる用語は、トウモロコシまたはイネ植物の種子を説明するのにしばしば使用される。すべての植物において、種子は、種皮、胚、アリューロンおよび内胚乳からなる成熟胚珠である。
【0051】
ホスホフルクトキナーゼおよびピルビン酸キナーゼをコードする核酸
本発明は、特に、ホスホフルクトキナーゼ(国際生化学連合酵素命名クラスEC2.7.1.11および2.7.1.90;より詳細には配列番号:1および11)およびピルビン酸キナーゼ(EC2.7.1.40;より詳細には配列番号:3)をコードする核酸分子を用いる方法を提供する。
【0052】
1の形態において、これらの核酸分子は、単子葉植物における種子のオイル含量を変化させるために本発明の事情において使用する。
【0053】
かかる核酸分子は、standard PCR(商標)増幅技術にしたがって、鋳型としてのcDNA、mRNAまたはゲノムDNAおよび適当なオリゴヌクレオチド・プライマーを用いて増幅する。あるいは、それは、自動DNA合成機のような標準的な合成技術を用いて合成することもできる。
【0054】
望むなら、ホスホフルクトキナーゼまたはピルビン酸キナーゼをコードする核酸の配列は、植物宿主における発現に配列がより従順なように発現したタンパク質の得られるアミノ酸配列を変化することなく修飾することができる。コード配列は人工DNAとすることができる。本明細書中で用いる人工DNAとは、天然発生しないDNAポリヌクレオチド分子を意味する。人工DNA分子は、第1ポリヌクレオチドのコドン(または複数のコドン)を置換して等価物を作製することに基づく当該技術分野で知られている方法、あるいは、この新たな人工ポリヌクレオチドがトランスジェニック植物における発現の向上に有用である場合は、改善された、第二世代の人工ポリヌクレオチドのような種々の方法によってデザインすることができる。デザイン態様は、しばしばコドン慣用表を利用し、該表は植物、植物の型、ファミリーまたは属から単離されたコード配列の収集におけるコドンの出現頻度を編集することによって作製する。他のデザイン態様は、ポリアデニル化シグナル、イントロン・スプライシング部位または配列の長ATもしくはGCストレッチの出現を減少することを含む(米国特許第5,500,365号)。完全長コード配列またはそのフラグメントは、当該技術分野で知られている方法を用いて人工DNAから作製することができる。
【0055】
発現ベクターおよびカセット
植物発現ベクターは、前記した核酸分子に作動可能に連結したネイティブまたは非ネイティブのプロモーターを含むことができる。プロモーター(例えば、強力に発現、弱く発現、誘導発現、組織特異的に向上して発現(すなわち、ある組織において特異的または優先的に発現する)、器官特異的に向上して発現(すなわち、ある器官において特異的または優先的に発現)および発育段階特異的に向上して発現(すなわち、発育の特定のステージ(または複数のステージ)の間に特異的または優先的に発現)の選択は、当業者の範囲内である。同様にして、前記した核酸分子とプロモーターとを組合せることも当業者の範囲内である(例えば、Sambrookら,1989を参照されたい)。
【0056】
本発明の1の形態において、上記の核酸分子は、単子葉植物の種子中のオイルを増加させるのに十分な発現を引き起こす種子−特異的発現向上プロモーターに作動可能に連結する。本発明のプロモーターは、一般的に、限定されるものではないが、細菌、バクテリオファージまたは植物細胞において機能するプロモーターを含む。細菌発現に有用なプロモーターは、lacZ、Sp6、T7、T5またはイー・コリglgCプロモーターである。植物細胞に有用なプロモーターは、グロブリン・プロモーター(例えば、BelangerおよびKriz,(1991)を参照されたい)、ガンマゼインZ27プロモーター(例えば、Lopesら,(1995)を参照されたい)、L3オレオシン・プロモーター(米国特許第6,433,252号)、オオムギPER1プロモーター(Staceyら,(1996)、CaMV 35Sプロモーター(Odellら,(1985))、CaMV 19S(Lawtonら, 1987)、nos(Ebertら,1987)、Adh(Walkerら,1987)、スクロース・シンターゼ(Yangら,1990)、アクチン(Wangら,1992)、cab(Sullivanら,1989)、PEPCアーゼ・プロモーター(Hudspethら,1989)またはR遺伝子複合体と会合するもの(Chandlerら,1989)を含む。フィッグウォート・モザイクウイルス(FMV)プロモーター(Richinsら,1987)、アルセリン、トマトE8、パタチン、ユビキチン、マンノピン・シンターゼ(mas)およびチューブリン・プロモーターは、有用なプロモーターの他の例である。
【0057】
トウモロコシ中で発現するプロモーターは、トウモロコシ内胚乳に見出される貯蔵タンパク質の一群であるゼインをコードする遺伝子からのプロモーターを含む。ゼイン遺伝子のゲノムクローンは単離されており(Pedersenら,1982)およびRussellら,1997)、15kD、16kD、19kD、22kDおよび27kD遺伝子を含むこれらのクローンからのプロモーターを用いることができる。トウモロコシおよび他の植物において機能することが知られている他の種子−特異的発現向上プロモーターは、以下の遺伝子のプロモーターを含む:Waxy(顆粒結合デンプン・シンターゼ)、Brittle and Shrunken 2(ADPグルコース・ピロホスホリラーゼ)、Shrunken 1(スクロース・シンターゼ)、分岐酵素IおよびII、デンプン・シンターゼ、脱分岐酵素、オレオシン、グルテリン、およびBetl1(基底内胚乳輸送層(basal endosperm transfer layer))。当業者に知られている本発明の実施に有用な他のプロモーターも本発明によって意図される。
【0058】
また、転写エンハンサーまたは複製エンハンサーを用いて、特定のプロモーターからの発現を増大し得る。かかるエンハンサーの例は、限定されるものではないが、Adhイントロン1(Callisら,1987)、イネ・アクチン・イントロン(McElroyら,1991、米国特許第5,641,876号)、スクロース・シンターゼ・イントロン(Vasilら,1989)、トウモロコシHSP70イントロン(Zm.DnaKともいう)(米国特許第5,424,412号、Brownら))、TMVオメガ・エレメント(Gallieら, 1999)、CaMV 35Sエンハンサー(米国特許第5,359,142号および第5,196,525号、McPhersonら)またはオクトピン合成酵素エンハンサー(米国特許第5,290,924号、Lastら)を含む。転写開始部位とコード配列の開始点との間のDNA配列、すなわち、非翻訳リーダー配列は遺伝子発現に影響し得るため、特定のリーダー配列を利用することを望むこともできる。当業者に入手可能ないずれのリーダー配列も利用し得る。好ましいリーダー配列は、例えばmRNA安定性を増大または維持することによって、および/または、翻訳の不適当な開始を防ぐことによって(Joshi,1987)、結合した遺伝子の発現の最適レベルを指示する。かかる配列の選択は、当業者が随意に行い得る。特にトウモロコシ、イネおよび単子葉植物で高度に発現している遺伝子由来の配列は意図される。
【0059】
本発明の発現カセットは、異種核酸からの転写を終結するシグナルとして作用し、かつ、生じるmRNAのポリアデニル化を指示するカセットの3'末端付近の配列も含むであろう。これらは、通常、3'非翻訳領域または3'UTRという。転写終結シグナルとして作用し得るいくつかの3'エレメントは、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのノパリン合成酵素遺伝子(Bevanら,1983)、ノパリン3'非翻訳領域(Kridlら,1991)、グロブリン3'非翻訳領域(BelangerおよびKriz,1991)またはZ27(Lopesら,1995)のようなゼイン遺伝子からのものを含む。当該技術分野で知られている他の3'調節エレメントも、本発明のベクターで使用することができる。
【0060】
本発明の発現ベクターは、異種核酸配列に融合したトランジットペプチドをコードする配列も含むことができる。葉緑体トランジットペプチド(CTP)は、タンパク質のN−末端に融合してタンパク質を植物葉緑体に指向するように設計する。多くの葉緑体局在タンパク質は前駆体として核遺伝子から発現し、タンパク質移入工程の間に除去される葉緑体トランジットペプチドによって葉緑体に標的化される。他のかかる葉緑体タンパク質の例は、リブロース−1,5−ビスリン酸カルボキシラーゼの小サブユニット(SSU)、フェレドキシン、フェレドキシン・オキシドレダクターゼ、光捕集系複合体タンパク質Iおよびタンパク質II、およびチオレドキシンFを含む。詳細には、タバコ(Nicotiana tabacum)リブロース1,5−ビスリン酸カルボキシラーゼ小サブユニット葉緑体トランジットペプチド(SSU−CTP)(Mazurら,1985)を用いることができる。CTPとのタンパク質融合物を使用することによって非−葉緑体タンパク質を葉緑体に標的化することができること、および、CTP配列はタンパク質を葉緑体に標的化するのに十分であることが、イン・ビボ(in vivo)およびイン・ビトロ(in vitro)で示されている。アラビドプシス・タリアーナ(Arabidopsis thaliana)EPSPS CTP(Kleeら,1987)およびペチュニア・ハイブリーダ(Petunia hybrida)EPSPS CTP(della-Cioppaら,1986)のような好適な葉緑体トランジットペプチドの取込みは、トランスジェニック植物において葉緑体へ異種EPSPSタンパク質配列を標的化することが示されている。
【0061】
さらに、本発明は、前記した核酸分子を含むベクターを提供する。前記した核酸分子はいずれの好適なベクターにもクローン化することができ、それを用いていずれの好適な宿主も形質転換またはトランスフェクトすることができる。ベクターおよびそれを構築する方法の選択は、通常、当該技術分野において知られており、一般的な技術参考文献(一般的に、“Recombinant DNA Part D”(1987)を参照されたい)に記載されている。ベクターは、好ましくは、ベクターを導入すべき宿主(例えば、細菌、菌類または植物)の型に特異的である、適当にはベクターがDNAかRNAかを考慮して、転写および翻訳開始ならびに終止コドンのような調節配列を含むであろう。
【0062】
環状または線状であるベクターの構築物は、原核生物または真核生物宿主細胞で機能的である複製系に連結した前記した全体核酸配列またはその一部分を含むように調製することができる。複製系はColE1、2mμプラスミド、λファージ、繊維状ファージf1、アグロバクテリウム種(例えば、A. tumefaciensおよびアグロバクテリウム・リゾゲネス(A. rhizogenes))などに由来することができる。
【0063】
複製系および挿入した核酸配列に加えて、構築物は、形質転換またはトランスフェクト宿主の選択を許容する1またはそれを超えるマーカー遺伝子を含むことができる。マーカー遺伝子は、抗生物質、重金属、除草剤ほかに対する抵抗性のような殺生物剤抵抗性、原栄養体を提供するための栄養要求性宿主における相補性などを含む。
【0064】
本発明は、所望によりベクターの形態であってもよい、前記した核酸分子を含む宿主細胞を提供する。好適な宿主には、エスシェリキア・コリ(Escherichia coli)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、サッカロマイセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)およびノイロスポーラ・クラッサ(Neurospora crassa)を含む、植物、細菌および酵母細胞が含まれる。イー・コリ宿主には、TB−1、TG−2、DH5α、XL−Blue MRF’(Stratagene,La Jolla,CA)、SA2821、Y1090およびTG02が含まれる。植物細胞は、限定するものではないが、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、エンバク、ライムギ、キビ、サトウモロコシおよびイネを含む単子葉植物の細胞を含む。
【0065】
ポリペプチド
本発明は、ホスホフルクトキナーゼ、および、いくつかの例において、前記した核酸分子によってコードされるピルビン酸キナーゼを提供する。ポリペプチドは、好ましくはアミノ末端およびカルボキシル末端を含む。ポリペプチドは、D−アミノ酸、L−アミノ酸またはD−およびL−アミノ酸の混合物を含むことができる。
【0066】
変異型ポリペプチドを生成するためのネイティブ・アミノ酸配列の変化は、当業者に知られている種々の手段によって行うことができる。例えば、合成時に核酸分子の配列を変化させることによって、アミノ酸置換をポリペプチドに都合よく導入することができる。修飾配列を含む合成したオリゴヌクレオチドを発現ベクターに連結することによって、部位特異的突然変異を導入することもできる。あるいは、Walderら(1986);Bauerら(1985)および米国特許第4,518,584号および第4,737,462号に開示されているようなオリゴヌクレオチド−指向、部位特異的突然変異法を用いることができる。
【0067】
いずれか特定の天然発生アミノ酸について同類または中性置換に影響する合成および天然発生アミノ酸を選択することは当業者の範囲内である。当業者は、望ましくは、側鎖の疎水性または極性、側鎖の一般的サイズおよび生理学的条件下で酸性または塩基性特徴を有する側鎖のpK値を考慮することに加えて、いずれかの特定のアミノ酸置換を成す状況を考慮するであろう。例えば、リシン、アルギニンおよびヒスチジンは、しばしば互いに好適に置換し、より頻繁にはアルギニンおよびヒスチジンが互いに置換する。当該技術分野で知られているように、これは、すべての3のアミノ酸が塩基性側鎖を有し、一方でリシンおよびアルギニンの側鎖のpK値がヒスチジン(約6)に対するよりも互いに遙かに近い(約10および12)ためである。同様にして、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンはしばしば互いに置換するが、グリシンは頻繁に好適には他のメンバーの基に置換されない。これは、これらのアミノ酸の各々がポリペプチドに取りこまれた場合に比較的疎水的であるが、グリシンはα−炭素を欠いており回転(α−炭素の周りの)のフィーおよびプシー角を許容し、グリシニル残基が他のアミノ酸が互いに置換した場合にしばしば生じないコンフォメーションまたは二次構造における変化の引き金を引くことができるためである。頻繁に互いに好適に置換するアミノ酸の他の基には、限定されるものではないが、グルタミン酸およびアスパラギン酸よりなる群;フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンよりなる群;およびセリン、スレオニンおよび所望によりチロシンよりなる群が含まれる。さらに、当業者であれば、合成アミノ酸と天然発生アミノ酸とを容易にグループ化し得る。
【0068】
望むなら、ポリペプチドは、例えば、本発明のポリペプチドのグリコシル化、アミド化、カルボキシル化、またはリン酸化によって、あるいは酸付加塩、アミド、エステル、特にC−末端エステル、およびN−アシル誘導体の生成によって修飾し得る。当該技術分野で知られている方法に従って他の基との共有または非共有複合体を形成することによって、ポリペプチドを修飾してタンパク質誘導体を生成することもできる。共有結合複合体は、化学基をアミノ酸を含むポリペプチドの側鎖上の官能基、またはN−もしくはC−末端に連結することによって調製することができる。望ましくは、かかる修飾およびコンジュゲーションは、ポリペプチド(およびその変異型)の活性に悪影響を及ぼさない。かかる修飾およびコンジュゲーションはより高いまたは低い活性を有し得るであろうが、活性は望ましくは無効ではなく、変化していないポリペプチドの特徴である。
【0069】
ポリペプチド(およびフラグメント、変異型および融合タンパク質)は、多くの慣用技術のいずれかによって調製することができる。ポリペプチドは、天然発生起源または組換え起源から単離または実質的に精製することができる。例えば、組換えタンパク質の場合、望ましいタンパク質をコードするDNAフラグメントを、よく知られている分子遺伝学技術(例えばManiatisら,1989を参照されたい)および「実施例」において本願明細書に引用する他の参考文献を用いて、適当なベクターにサブクローニングし得る。フラグメントは転写され、つづいてタンパク質がイン・ビトロ(in vitro)で翻訳されることができる。市販のキットも利用することができる(例えば、Clontech、Amersham Life Sciences, Inc.、Arlington Heights, IL;Invitrogenなどによって製造されているような)。所望により、ポリメラーゼ連鎖反応を、核酸の操作に利用することもできる。
【0070】
かかるポリペプチドは、当該技術分野で知られている方法による自動ペプチド合成機を用いて合成することもできる。代わる代わる、ポリペプチド(およびフラグメント、変異型および融合タンパク質)は、当業者によく知られている標準ペプチド合成技術(Bodanszky,1984に要約されている)を用いて合成することができる。詳細には、ポリペプチドは固相合成(例えば、Merrifield,1963;Baranyら,1987;および米国特許第5,424,398号を参照されたい)の方法を用いて合成することができる。望ましくは、これは、自動ペプチド合成機を用いて行うことができる。t−ブチルオキシカルボニル(t−BOC)または9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸ブロッキング基の除去および樹脂からタンパク質の分離は、例えば、低温での酸処理によって行うことができる。ついで、ポリペプチドを含有する混合物を、例えばジエチルエーテルを用いて抽出して非−ペプチド有機化合物を除去することができ、合成したタンパク質を樹脂粉末から抽出することができる(例えば、約25%w/v酢酸を用いて)。ポリペプチドを合成した後に、所望により、いずれの不完全なタンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたは遊離アミノ酸を排除するために、さらなる精製(例えば、HPLCを用いて)を行うことができる。アミノ酸および/またはHPLC分析は合成したポリペプチドに対して行ってその同一性を確認することができる。本発明による他の適用については、それは、好ましくは、化学コンジュゲーションまたは当該技術分野で知られている遺伝子的手段を介してかのいずれかにより、より大きな融合タンパク質の一部分としてポリペプチドを生成するのが好ましい場合もある。これに関連して、本発明は、ポリペプチド(またはそのフラグメント)またはその変異型と、いずれか望ましい特性またはエフェクター機能を有する1またはそれを超える他のポリペプチド/タンパク質とを含む融合タンパク質も提供する。
【0071】
特定のタンパク質の生成および同定のためのアッセイは、タンパク質の種々の物理−化学的、構造、機能または他の特性に基づく。ユニークな物理−化学的または構造特性は、タンパク質を、非変性または変性ゲル電気泳動または等電点電気泳動のような電気泳動法によって、またはイオン交換またはゲル排除クロマトグラフィーのようなクロマトグラフィー技術によって分離および同定することを許容する。個々のタンパク質のユニークな構造は、ELISAアッセイのような様式で、特異的抗体を使用してその存在を検出する機会を付与する。アプローチの組合せを用いて、抗体を用いて電気泳動技術によって分離された個々の遺伝子産物を位置決定するウェスタン・ブロッティングのようななおより高い特異性を達成することができる。さらなる技術を用いて、精製後のアミノ酸配列決定による評価のような関心のある生成物の同一性を絶対的に確認することができる。これらは最も一般的なものであり、他の方法も使用することができる。
【0072】
アッセイ法は、特に発現したタンパク質が特定の基質および産物を含む化学反応を触媒することができる酵素である場合には、その機能性によってタンパク質の発現を同定することができる。例えば、植物抽出物においては、これらの反応は、物理的および/または化学的方法によって反応の基質の欠失または産物の生成を得、ついでそれを定量化することによって測定することができる。
【0073】
ホスホフルクトキナーゼまたはピルビン酸キナーゼの活性は、かかるアッセイを用いてイン・ビトロ(in vitro)で測定することができる。かかるアッセイの例には、LeBrasら(1991)およびLeBrasら(1993)が含まれる。代謝放射性同位元素トレーサー実験は、イン・ビボ(in vivo)で異なる生成物プールの生成を測定することができる。かかる実験においては、放射性同位元素標識した前駆体をインタクトな組織に与え、前駆体が代謝される際の放射性同位元素標識の結末をモニターする。
【0074】
多くの場合において、遺伝子産物の発現は、その発現の表現型結果を評価することによって決定する。かかる評価は、単純に視覚観察とすることができ、あるいはアッセイを含むことができる。かかるアッセイは、植物の化学組成、形態、または生理学的特性における変化を分析するような多くの形態をとることができる。化学組成はアミノ酸組成を変化する酵素または貯蔵タンパク質をコードする遺伝子の発現によって変化し得、これらの変化はアミノ酸分析によって、またはデンプン量を変化する酵素によって検出することができ、これは近赤外線反射分光学によって分析することができる。形態的変化は、より大きな背丈またはより太い茎を含むことができる。
【0075】
本発明の核酸分子、ベクターおよびポリペプチドは、農業的方法および種々のスクリーニング・アッセイにおいて使用することができる。例えば、核酸分子を用いて宿主細胞中のベクターを介してホスホフルクトキナーゼを発現し、生物試料中でホスホフルクトキナーゼをコードするmRNAを検出し、サザンブロットを介してホスホフルクトキナーゼをコードする遺伝子中の遺伝子変化を検出し、ホスホフルクトキナーゼを抑制し、または、ホスホフルクトキナーゼをアップ・レギュレートすることができる。ポリペプチドを用いて、ホスホフルクトキナーゼの欠損または植物において低下した活性を有するもしくは全く活性を有しない突然変異ホスホフルクトキナーゼの存在を補うことができ、または直接的または間接的かにかかわらず、植物におけるホスホフルクトキナーゼの基質の過剰なレベルを処理することができる。あるいは、ポリペプチドを用いて、その活性をモデュレートする能力について剤をスクリーニングすることができる。抗体を用いて、各々のポリペプチドを検出および単離し、ならびにかかるポリペプチドのアベイラビリティーをイン・ビボ(in vivo)で低下することができる。
【0076】
方法
本発明は、同様の遺伝的バックグラウンドを有する非形質転換植物の種子と比較して、単子葉植物の種子中のオイルを増加する方法を提供する。1の形態において、オイルを増加する方法は、種子−特異的発現向上プロモーターが胚−特異的発現向上プロモーターである場合を除き、所望によりプラスチド・トランジットペプチドをコードする核酸配列に作動可能に連結してもよい、種子−特異的発現向上プロモーターに作動可能に連結した配列番号:9または13以外のホスホフルクトキナーゼをコードする核酸配列で形質転換した単子葉植物を成長させて種子を生産する工程を含む。
【0077】
もう1の形態において、オイルを増加する方法は、単子葉植物の細胞に、
a)配列番号:1または11を含む核酸配列、および
b)配列番号:2または12をコードする核酸配列
よりなる群から選択されるホスホフルクトキナーゼをコードする核酸配列を導入する工程を含む。
【0078】
もう1の形態において、オイルを増加する方法は、さらに、植物を、種子−特異的発現向上プロモーターに作動可能に連結したピルビン酸キナーゼをコードする第2の核酸配列で形質転換する工程を含む。いまだもう1の形態において、オイルを増加する方法は、さらに、植物に、
a)配列番号:3を含む核酸配列、および
b)配列番号:4をコードする核酸配列
よりなる群から選択されるピルビン酸キナーゼをコードする第2の核酸配列を導入する工程を含む。
【0079】
種々の形態において、単子葉植物は、トウモロコシ(Zea mays)、イネ(Oryza sativa)、オオムギ(Hordeum vulgare)、キビ(Panicum miliaceum)、ライムギ(Secale cereale)、コムギ(Triticum aestivum)およびサトウモロコシ(Sorghum bicolor)よりなる群から選択される。

種々の形態において、プロモーターは、胚−特異的発現向上プロモーター、内胚乳−特異的発現向上プロモーター、および胚−および内胚乳−特異的発現向上プロモーターよりなる群から選択される。
【0080】
植物形質転換
本発明の1の形態において、目的のタンパク質または複数のタンパク質を発現するトランスジェニック植物を作製する。目的のタンパク質をコードする目的のポリヌクレオチド配列を植物細胞に導入する種々の方法が当該技術分野で知られており、それには、(1)マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、および微粒子媒介デリバリー(バイオリスティックまたは遺伝子ガン技術);(2)ウイルス媒介デリバリー;および(3)アグロバクテリウム媒介形質転換が含まれる。
【0081】
植物細胞の形質転換に最も一般的に使用される方法は、アグロバクテリウム媒介DNA移入法およびバイオリスティックまたはマイクロプロジェクタイル微粒子衝撃媒介法である。典型的に、核の形質転換が望ましいが、葉緑体またはアミロプラストのようなプラスチドを特異的に形質転換することが望ましい場合は、目的のポリヌクレオチドの微粒子媒介デリバリーを利用して植物プラスチドを形質転換し得る。
【0082】
アグロバクテリウム媒介形質転換は、アグロバクテリウム属に属する遺伝子工学的に設計した土壌細菌の使用を介して達成する。TiまたはRiプラスチドを保有しているアグロバクテリウム・ツメファシエンスおよびアグロバクテリウム・リゾゲネスの多数の野生型および非病原化株を、植物への遺伝子移入のために使用することができる。遺伝子移入は、例えば、出典明示して本明細書の一部とみなすBidneyらに対する米国特許第6,265,638号にさらに説明されているように、いずれか望ましいDNA片を多くの植物種に運搬するために遺伝子操作し得る「T−DNA」として知られている特異的DNAの移入を介して行う。
【0083】
植物のアグロバクテリウム−媒介遺伝子形質転換には、いくつかの工程が含まれる。病原性アグロバクテリウムおよび植物細胞を互いに最初に接触させる第1の工程は、一般的に「接種」と呼ばれる。接種は、好ましくはいくつかの植物細胞を傷害するいくつかの方法によって行い、それはアグロバクテリウムの病原性因子を活性化するクマリルアルコール、シナピン酸(これはアセトシリンゴンに還元される)、シナピルアルコールおよびコニフェリルアルコールのような植物細胞構成物を放出する。接種後、アグロバクテリウムおよび植物細胞/組織は、成長およびT−DNA移入に好適な条件下で数時間ないし数日またはそれを超える期間一緒に増殖させる。この工程は「共培養」と命名する。共培養およびT−DNAデリバリーの後、植物細胞は、殺菌剤または静菌剤で処理して、外植体と接触しておよび/または外植体を含む容器に残存しているアグロバクテリウムを殺菌する。このことを、トランスジェニック−対−非トランスジェニック植物細胞の優先的成長を促進するいずれかの選択剤の不存在下で行う場合、これは典型的に「遅延」工程という。トランスジェニック植物細胞に有利な選択圧の存在下で行う場合、それは「選択」工程という。「遅延」を用いる場合、それは典型的にそれに1またはそれを超える「選択」工程がつづく。
【0084】
微粒子衝撃(各々、その全体に参照して出典明示して本明細書の一部とみなす、米国特許第5,550,318号(Adamsら);米国特許第5,538,880号(Lundquistら)、米国特許第5,610,042号(Changら);および国際公開番号WO 95/06128(Adamsら))に関しては、微視的粒子を核酸でコートし、推進力によって細胞にデリバリーする。例示的な粒子には、タングステン、白金および好ましくは金からなるものが含まれる。
【0085】
加速によって植物細胞にDNAをデリバリーする方法の例示的な形態は、Biolistics Particle Delivery System(BioRad, Hercules, CA)であり、これを用いて、ステンレス鋼またはNytexスクリーンのようなスクリーンを介して、DNAまたは細胞でコートした粒子を、懸濁液で培養した単子葉植物細胞でカバーしたフィルター表面に推進する。
【0086】
微粒子衝撃技術は広く適用可能であり、それを用いて実質的にいずれの植物種も形質転換し得る。微粒子衝撃によって形質転換された種の例には、トウモロコシ(国際公開番号WO95/06128(Adamsら))、オオムギ、コムギ(その全体に参照して出典明示して本明細書の一部とみなす米国特許第5,563,055号(Townsendら)、イネ、エンバク、ライムギ、サトウキビおよびサトウモロコシのような単子葉植物種;ならびに、タバコ、ダイズ(その全体に参照して出典明示して本明細書の一部とみなす米国特許第5,322,783号(Tomesら))、ヒマワリ、ラッカセイ、ワタ、トマトおよび一般的マメ科植物(その全体に参照して出典明示して本明細書の一部とみなす米国特許第5,563,055号(Townsendら))を含む多数の双子葉植物が含まれる。
【0087】
形質転換の方法にかかわらず形質転換した植物細胞を選択または評点付けするために、細胞に導入したDNAは、再生植物組織で機能して他の毒性化合物に対する抵抗性を植物組織に付与する化合物を生成するように機能する遺伝子を含む。選択可能、スクリーニング可能または評点付け可能なマーカーとして使用する関心のある遺伝子には、限定されるものではないが、ベーター・グルクロニダーゼ(GUS)、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェラーゼ(LUX)、抗生物質または除草剤耐性遺伝子が含まれる。抗生物質抵抗性遺伝子の例には、ペニシリン、カナマイシン(およびネオマイイシン、G418、ブレオマイシン);メトトレキサート(およびトリメトプリム);クロラムフェニコール;カナマイシンおよびテトラサイクリンが含まれる。除草剤耐性に関与するタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子は当該技術分野で知られており、限定するものではないが、グリホセート耐性については米国特許第5,627,061号(Barryら)、米国特許第5,633,435号(Barryら)および米国特許第6,040,497号(Spencerら)に記載されている5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸合成酵素(EPSPS)および米国特許第5,094,945号(Comai)に記載されているaroAをコードするポリヌクレオチド分子;ブロモキシニル耐性については米国特許第4,810,648号(Duerrschnabelら)に記載されているブロモキシニル・ニトリラーゼ(Bxn)をコードするポリヌクレオチド分子:ノルフルラゾン耐性についてはMisawaら(1993)およびMisawaら(1994)に記載されているフィトエン・デサチュラーゼ(crtI)をコードするポリヌクレオチド分子;スルホニル尿素除草剤に対する耐性についてはSathasiivanら(1990)に記載されているアセトヒドロキシ酸合成酵素をコードするポリヌクレオチド分子(AHAS、aka ALS);および、その各々がグルホシネートおよびビアラホス耐性を提供するWohllebenら(1988)に記載されているPAT遺伝子およびDeBlockら(1987)に記載されているbar遺伝子の両方が含まれる。
【0088】
種々の形質転換外植体からの植物の再生、成長および培養は当該技術分野においてよく報告されている。この再生および成長プロセスは、典型的に、形質転換細胞を選択し、根付いた苗木ステージを介した胚成長の通常のステージを介した形質転換細胞の選択および個々の細胞の培養の工程を含む。トランスジェニック胚および種子は同様に再生する。得られたトランスジェニックの根付いたシュートは、その後に、土壌のような適当な植物成長媒体に植える。選択剤に対する曝露を生存する細胞またはスクリーニング・アッセイで陽性と評点付けされた細胞は、植物の再生を支持する培地で培養することができる。成長している苗木は、成熟用の温室または成長チャンバーに移す前に、土壌を含まない植物成長混合物に移し、寒気に曝す。
【0089】
本発明は、いずれの形質転換可能な細胞または組織とも使用し得る。本明細書で用いる形質転換可能とは、植物を生じるさらなる繁殖が可能な細胞または組織を意味する。当業者であれば、多数の植物細胞または組織が形質転換可能で、そこでは外因性DNAの挿入後に適当な培養条件に付して、植物細胞または組織が分化した植物に形成し得る。これらの目的に好適な組織には、限定されるものではないが、未熟胚、胚盤組織、懸濁細胞培養物、未熟花部、シュート分裂組織、結節外植体、カルス組織、胚軸組織、子葉、根および葉を含み得る。上記で引用したTomesらの'783号特許は、サイトカイニンで処理した後に子葉結節組織の未分化細胞が分裂細胞に分化することを許容し、かつ、細胞が成長のG1と成長の分裂期との間の期に入ることを許容するのに十分な期間インキュベートする方法を記載しており、これは形質転換に対する感受性を修飾することを陳述している。
【0090】
いずれの好適な植物培養培地も使用することができる。好適な培地には、限定するものではないが、オーキシン、サイトカイニン、ABAおよびジベレリンを含むさらなる植物成長調節剤を補充した、MSベースの培地(MurashigeおよびSkoog, 1962)またはN6ベースの培地(Chuら, 1975)が含まれる。当業者であれば種々の組織培養培地を熟知しており、それは適当に補充した場合、植物組織の成長および発達を支持し、植物の形質転換および再生に好適である。これらの組織培養培地は、市販の調製物として購入するか、または注文に応じて調製し、修飾し得る。当業者であれば、形質転換および再生に使用するための培地および栄養および成長調節剤のような培地補充物、ならびに関心のある特定品種について最適化し得るインキュベートの間の光強度、pHおよびインキュベーション温度を知っている。
【0091】
発現カセットがトランスジェニック植物に安定して取り込まれ、作動可能であることが確認された後、有性交雑によって同一または他の性的に和合性の種の他の植物にそれを導入することができる。多くの標準的な育種技術のいずれかを、交雑する種に依存して使用することができる。
【0092】
種子、粉、オイルならびに種子、粉およびオイルを含む製品
本発明は、約1,000、より好ましくは約20,000、およびなおより好ましくは約40,000を超える種子の容器も提供し、この場合、約10%、より好ましくは約25%、より好ましくは約50%、およびなおより好ましくは約75%またはより好ましくは約90%を超える種子が本発明の植物由来の種子である。
【0093】
本発明は、約10kg、より好ましくは約25kg、およびなおより好ましくは約50kgを超える種子の容器も提供し、この場合、約10%、より好ましくは約25%、より好ましくは約50%、およびなおより好ましくは約75%またはより好ましくは約90%を超える種子が本発明の植物由来の種子である。
【0094】
本発明のいずれの植物またはその一部分も収穫することができ、所望により、加工して飼料、粉またはオイル調製物を製造することもできる。この目的につき特に好ましい植物の部分は収穫した穀物であるが、他の植物部分も収穫し、かいばまたはサイレージに使用することができる。1の形態において、飼料、粉またはオイル調製物は、反芻動物用に処方化する。かかる処方において、本発明により可能となる穀物および粉中の増大したオイル含量は、より低いアシドーシスの危険性でもって、分娩後の乳牛に増加したカロリー摂取を与えるのに特に有用である「バイパス脂肪」を提供する。飼料、粉およびオイル調製物を製造する方法は、当該技術分野において知られている。例えば、米国特許第4,957,748;5,100,679;5,219,596;5,936,069;6,005,076;6,146,669;および6,156,227号を参照されたい。本発明の穀物またはミールは、他の穀物またはミールと混合することができる。1の形態において、本発明の収穫した穀物から製造したまたは本発明の方法によって生成した粉は、いずれかの生成物の粉成分の約0.5%、約1%、約5%、約10%、約25%、約50%、約75%または約90体積%または重量%よりも大きく構成する。もう1の形態において、粉調製物は混合することができ、混合物の約10%、約25%、約35%、約50%または約75体積%を超えて構成することができる。
【0095】
本発明によって製造したトウモロコシ・オイルおよび/またはコーンミールは、種々の他の成分と合することができる。製品に含まれる詳細な成分は、製品の最終的な使用に従って決定する。例示的な製品には、動物飼料、化学修飾物の原料、生分解性プラスチック、混合食物製品、食用油、調理油、潤滑剤、バイオディーゼル、スナック食品、化粧品、および発酵プロセス原料が含まれる。本明細書に記載する粉を取り込んでいる製品は、完成または部分完成ブタ、家禽およびウシ飼料、ペットフード、ならびに、押し出したスナック食品、パン、食物結合剤として、水耕栽培飼料、発酵性混合物、食品サプリメント、スポーツドリンク、栄養食品バー、マルチビタミンサプリメント、ダイエットドリンクおよび穀物食品のようなヒト食物製品も含まれる。
【0096】
コーンミールは、所望により、デンプンおよびタンパク質成分を分離する慣用的な方法に付してもよい。かかる方法には、例えば、乾燥製粉、湿式製粉、高圧ポンピングまたは低温法が含まれる。これらおよび他の好適な方法は、出典明示して本明細書の一部とみなすWatson(1987)に開示されている。
【0097】
コムギ、オオムギ、サトウモロコシおよびイネを含む本発明の他の単子葉穀物も同様に加工または製粉して、当該技術分野でよく知られている飼料、粉、穀粉、デンプン、粉、シロップ、穀物製品および発酵飲料を製造することができる。
【0098】
以下の実施例の文脈において本発明をさらに説明する。これらの実施例は本発明をさらに説明するために供するものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0099】
実施例
当業者であれば、本発明によって提供される方法および組成物の多くの利点を理解するであろう。以下の例は本発明の形態を示すために含める。本発明者らによって発見された以下に表す技術の例に開示する技術が本発明の実施によく機能することは当業者によって理解される。しかしながら、当業者は、本開示の観点から、多くの変形を開示された特定の形態になすことができ、いまだ本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく似たまたは同様の結果を得ることができることを理解しなければならない。本明細書中に引用したすべての参考文献は、それらが本明細書中で利用する方法、技術または組成物を補い、説明し、背景を提供し、または教示する範囲で、出典明示して本明細書の一部とみなす。
【0100】
実施例1
ラクトバチルス・デルブリューキイ・サブスピーシーズ・ブルガリカスpfkおよびpyk遺伝子のクローニング
ラクトバチルス・デルブリューキイ・サブスピーシーズ・ブルガリカス(ATCC株11842)はATCC(Manassas,VA)から得て、ATCC416培地で増殖した。エル・デルブリューキイ・サブスピーシーズ・ブルガリカスpfk遺伝子はpfkオープンリーディングフレーム(ORF)の上流にAscIクローニングサイトを導入する5'プライマー(オリゴ番号17167)(配列番号:6)およびORFのすぐ下流にSbfIクローニングサイトを導入する3'プライマー(オリゴ番号17167)(配列番号:6)を用いて溶解した培養物のアリコートから967bpの産物としてPCR(商標)増幅した。同様にして、pyk遺伝子を、pykORFのすぐ上流にAscIクローニングサイトを導入する5'プライマー(オリゴ番号17168)(配列番号:7)およびORFの下流にSbfIクローニングサイトを導入する3'プライマー(オリゴ番号17169)(配列番号:8)を用いて溶解した培養物のアリコートから1777bpの産物としてPCR(商標)増幅した。pfkおよびpyk PCR産物は、Topo TA cloning(Invitrogen,Carlsbad,CA)によってpCR2.1に各々クローン化した。クローンは、以前に記載したオリゴを用いるPCR(商標)によって適当なインサートについてスクリーニングする。pfkまたはpyk遺伝子についてPCR陽性であったクローンは、制限分析によってチェックしてPCR(商標)によって、ついで配列決定によって導入したフランキング・クローニングサイトの存在を確認する。図1はラクトバチルス・デルブリューキイ・サブスピーシーズ・ブルガリカスATCC株11842から単離したpfk遺伝子のコード配列(配列番号:1)と公開pfk遺伝子配列(EMBL受理番号X71403)とのアライメントを示す。前記に得た配列と公開された配列との間に1の相異が存在し;公開された配列はコード残基261にAを有する一方、前記したように単離した遺伝子はそのポジションにGを有する。予想したPFKタンパク質配列(例えば、配列番号:2)のアライメントは、それらが同一であったことを明らかにした。ラクトバチルス・デルブリューキイ・サブスピーシーズ・ブルガリカスpyk遺伝子のDNA配列(配列番号:3)も得、それは公開された配列(EMBL受理番号X71403)と同一であった。したがって、予想タンパク質配列(配列番号:4)は公開された予想PYKタンパク質配列と同一であった。
【0101】
【表1】

【0102】
実施例2
胚−標的化形質転換ベクターの構築
pMON72008
実施例1に記載した967bpのAscI/SbfI pfk遺伝子を、イー・コリ/アグロバクテリウム・ツメファシエンス・バイナリー形質転換ベクターpMON71055のトウモロコシL3オレオシン・プロモーター(P−Zm.L3)およびイネ・アクチン・イントロン(I−Os.Act)の下流のAscI/Sse8387Iサイトにクローニングして、pMON72004を形成した。同様にして、実施例1に記載した1777bpのAscI/SbfI pfk遺伝子を、イー・コリ/アグロバクテリウム・ツメファシエンス・バイナリー形質転換ベクターpMON71055のP−Zm.L3およびI−Os.Act配列の下流のAscI/Sse8387Iサイトにクローニングして、pMON72005を形成した。pfk/pyk二重遺伝子構築物(pMON72008)は、pfkカセットを含有するpMON72004から7165bpのPmeI/XbaIフラグメントを単離し、フラグメントをPfuポリメラーゼを用いて平滑化し、ついで平滑末端化したフラグメントをpMON72005のPmeIサイトにクローニングすることによって調製した。最終構築物、pMON72008(図2)は、制限分析およびDNA配列決定によって確認した。
【0103】
pMON79823
pMON72004からの3616bpのPmeI/XbaIを用いて、胚発現ベクターpMON71273からの2145bpのPmeI/XbaIフラグメントを置換して、I−Os.ActとP−Zm.L3によって駆動されるpfk遺伝子を含有するpMON79823(図3)を作製した。
【0104】
pMON79824
pMON72005からの4426bpのPmeI/XbaIを用いて、胚発現ベクターpMON71273からの2145bpのPmeI/XbaIフラグメントを置換して、I−Os.ActとP−Zm.L3によって駆動されるpfk遺伝子を含有するpMON79824(図4)を作製した。
【0105】
pMON79827
pMON79824からの6809bpのPmeI/XbaIを用いて、pMON79823からの2358bpのSmaI/KspIフラグメントを置換して、P−Zm.L3とI−Os.Actによって各々駆動されるpfkおよびpyk遺伝子を含有するpMON79827(図5)を作製した。
【0106】
実施例3
内胚乳−標的化ベクターの構築
pMON72028
前記の実施例1に記載した967bpのAscI/SbfI pfk遺伝子を、pMON68203のトウモロコシZ27プロモーター(P−Zm.Z27)およびトウモロコシHsp70イントロン(I−Zm.DnaK)配列の下流のAscI/Sse8387IサイトにクローニングしてpMON72012を作製した。同様にして、前記の実施例1に記載した1777bpのAscI/SbfI pyk遺伝子を、pMON68203のP−Zm.Z27およびI−Zm.DnaK配列の下流のAscI/Sse8387IサイトにクローニングしてpMON72013を作製した。pfkおよびpyk遺伝子の同時発現用のベクターは、pMON72012からpfk発現カセットを含有する3256bpのPmeI/EcoRIフラグメントを単離し、Pfuポリメラーゼでフラグメントを平滑末端化し、ついで、それをpMON72013(図5)のPmeIサイトにクローニングしてpMON72015を得ることによって調製した。エイ・ツメファシエンス形質転換の間のpfk/pykベクターの安定性を改善するために、pMON72015の7328bpのPmeI/EcoRIベクター骨格フラグメントをpMON72021の5496bpのPmeI/EcoRIベクター骨格フラグメントで置換することによって反復エレメントの数を減少して、最終二重遺伝子形質転換ベクターpMON72028(図6)を作製した。
【0107】
pMON79832
前記の実施例1に記載した973bpのNotI/Sse8387I pfk遺伝子を、pMON71274のP−Zm.Z27およびI−Zm.DnaK配列の下流のBsp120I/Sse8387Iサイトにクローニングして、P−Zm.Z27およびI−Zm.DnaKによって駆動されるpfk遺伝子を含むpMON79832(図7)を作製した。
【0108】
pMON81470
前記の実施例1に記載した1783bpのNotI/Sse8387I pyk遺伝子を、P−Zm.Z27およびI−Zm.DnaK配列の下流のpMON71274のNotI/Sse8387Iサイトにクローニングした。ついで、得られたベクターのpyk遺伝子カセットをAscI/SrfIで切断し、前記したpMON79832のMluI/SrfIサイトに連結して、各々P−Zm.Z27およびI−Zm.DnaKによって駆動される、pfkおよびpyk遺伝子を含むpMON81470(図8)を作製した。
【0109】
pMON72029
pMON72006からのpfk遺伝子に融合したニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)小サブユニット葉緑体トランジットペプチド(SSU−CTP)を含む1199bpのAscI/Sse8387I DNAフラグメントをpMON68203のAscI/Sse8387Iサイトにクローニングして、pMON72017を形成した。同様にして、pMON72007からのpyk遺伝子に融合したニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)SSU−CTPを含む2041bpのAscI/Sse8387IフラグメントをpMON68203のAscI/Sse8387Iサイトにクローニングして、pMON72019を形成した。pfkおよびpyk遺伝子の同時発現用のベクターは、pMON72017からpfk発現カセットを含む3204bpのPmeI/EcoRI DNAフラグメントを単離し、Pfuポリメラーゼでフラグメントを平滑末端化し、ついで、それをpMON72019のPmeIサイトにクローニングしてpMON72020を得ることによって調製した。アグロバクテリウム・ツメファシエンス形質転換の間のこのpfk/pyk二重遺伝子ベクターの安定性を改善するために、pMON72020の7135bpのPmeI/EcoRIベクター骨格フラグメントをpMON72021の5496bpのPmeI/EcoRIベクター骨格フラグメントで置換することによって反復エレメントの数を減少して、最終二重遺伝子形質転換ベクターpMON72029(図9)を作製した。
【0110】
pMON83715
pfk遺伝子に融合したニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)小サブユニット葉緑体トランジットペプチド(SSU−CTP)を含むpMON72017からの1.2kbのNotI/Sse8387I DNAフラグメントを、トウモロコシZ27プロモーター(P−Zm.Z27)およびトウモロコシHsp70イントロン(I−Zm.DnaK)の下流のグリホセート選択プラスミドpMON93102のNotI/Sse83871サイトにクローニングして、pMON83715(図10)を作製した。
【0111】
実施例4
トウモロコシの形質転換
Eliteトウモロコシ系統(Corn States Hybrid Serv., LLC, Des Moines, IA)を本発明と関連する形質転換に用いた。これらには、LH59(pMON72008、pMON72028、pMON72029で形質転換)、LH172(pMON72008、pMON72028で形質転換)、およびLH244(pMON79823、pMON79824、pMON79827、pMON79832、pMON81470で形質転換)が含まれる。形質転換外植体は,pMON72029を除くすべての構築物についてアグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介形質転換を介して得、これは、微粒子衝撃を介して得た。形質転換した組織から植物を再生した。ついで、温室で生育させた植物を関心の発現レベルの遺伝子ならびにオイルおよびタンパク質レベルについて分析した。
【0112】
実施例5
内胚乳−発現、サイトゾル−標的化PFKおよびPK構築物pMON72028の分析
構築物pMON72028は、内胚乳中のpfkおよびpykの両方の遺伝子のサイトゾル−標的化発現を生成するためにデザインした。第一世代からの成熟穀粒を、pfkおよびpykトランスジーンについてPCR(商標)によって分析した。単一の穀粒NMRおよびPCR(商標)によって67事象を分析した。64事象はpykトランスジーンについてPCR陽性であり、これらのうち7はpfkトランスジーンについても陽性であった。両方の遺伝子を含む2の事象は、PCR陽性穀粒が、PCR陰性穀粒と比較して全穀粒オイルレベルが統計的により高かったことを示した(0.73%の最大増加、P=0.05)。
【0113】
両方のトランスジーンについて陽性である7の事象を圃場に植えた。NIT(近赤外線透過)オイル分析は、3の事象について、分離カナマイシン陽性および陰性の穂からの貯蔵した穀粒の平均全穀粒オイル%に顕著な差異が存在することを明らかにした。これらの事象62221、71907および73131は、陽性穂のオイルレベルに統計的に有意な増加を有していた(各々、1.2%、0.8%、0.5%、P=0.05)。オイルレベルは、両方のトランスジーンを含むことが知られていた残りの4の事象について評価したが、評価はP=0.05の有意差でなかった。
【0114】
pfkおよびpykトランスジーンの両方を含む構築物pMON72028の5の事象およびそれらの陰性分離を2の異なるテスターに交雑した。第1のテスターは従来の堅い茎の同系繁殖体であり、第2のものは高オイル表現型(オイル自体7.5%)を有する堅い茎のテスターである。F1雑種種子を、雄性不稔雑種の範囲でトランスジーンを有さない系統からトランスジーンを有する系統の分離を生じる設計で6の場所に植えた。植物体は、各々の場所において、異なってランダムにした。各々の小区画の中央から手で6の穂を収穫し、殻から取り出し、穀粒を近赤外線透過(NIT)によってオイル、タンパク質およびデンプンについて分析した。オイルのパーセントは、すべての5の事象において、両方のテスターを用いて+0.5%ないし+1.1%(P<0.005)増大した。
【0115】
pMON79832,F1
LH244におけるpMON79832の26の事象からのF1穀粒に対するNMRオイル分析は、試験した26事象の9からのpfk PCR−陽性穀粒は、0.95%の最大増加でもって、全穀粒オイル%において有意に(P=0.05)高かった。実証のすべてを一緒に考慮すると、スチュデントT−検定は、PCR陽性穀粒についての平均穀粒オイル%(3.85%)がPCR陰性穀粒についての平均(3.66%)よりも有意に高い(0.19%)ことを明らかにした。切開した内胚乳組織の分析は、全内胚乳乾燥重量が有意に(P=0.05)減少しているという事実(8mg/穀粒の平均減少、41mg/穀粒の最大減少)にかかわらず、8の事象からのPCR陽性穀粒が陰性穀粒よりも有意に(P=0.05)高い内胚乳オイル%(0.48%の最大増加)を有し、7の事象が有意に(P=0.05)mg/穀粒ベースでより高い全内胚乳オイル(0.48mg/穀粒の最大増加)を有することを明らかにした。
【0116】
pMON81470,F1
LH244におけるpMON79832の20の事象からのF1穀粒に対するNMRオイル分析は、20の事象のうちの9からのpfk陽性穀粒が、1.1%の最大増加でもって全体穀粒オイル%において有意に(P=0.05)より高いことを明らかにした。すべての事象を一緒に考慮すると、スチュデントT−検定は、PCT陽性穀粒の平均穀粒オイル%(4.47%)が陰性穀粒についての平均(4.07%)よりも有意により高いことを明らかにした(0.4%、P<0.0001)。切開した内胚乳組織の分析は、全内胚乳乾燥重量が有意に減少しているという事実(30mg/穀粒の平均減少)(P=0.05)にかかわらず、9の事象からのPCR陽性穀粒が陰性穀粒よりも有意に(P=0.05)高い内胚乳オイル%(0.3%の平均増加、0.62%の最大増加)を有し、6の事象が有意にmg/穀粒ベースでより高い全内胚乳オイル(平均増加、0.28mg/穀粒;最大増加、0.48mg/穀粒)(P=0.05)を有することを明らかにした。これらのデータをpfk単独構築物(pMON79832)からのデータと比較すると、オイルの差の程度は二重遺伝子構築物pMON81470でより高く、オイルレベルにおける増加を有するより高頻度の事象が存在するようである。
【0117】
実施例6
内胚乳発現プラスチド−標的化構築物の分析
構築物pMON72029を設計して、トウモロコシ内胚乳におけるpfkおよびpyk遺伝子の両方のプラスチド標的化発現を創製した。pMON72029を含むトランスジェニック植物と非トランスジェニックLH59との間で相反交雑を行い、62の分離した事象から成熟穀粒を収穫した。
【0118】
単一の穀粒分析は、PCR(商標)により両方のトランスジーンを含むことが見出された13の事象のうちの9において平均内胚乳オイル濃度が有意に増加することを明らかにした(0.94%の平均増加、1.7%の最大増加、P=0.05)。pyk遺伝子のみを含む3の事象はいずれも、上昇した内胚乳オイル%を有しなかった。全穀粒オイル%の観点から、両方のトランスジーンを含む13の事象のうちの10は、増加した全穀粒オイル%(1.75%の平均増加、2.9%の最大増加)を有していた。オイル/穀粒の絶対量の観点から、両方の遺伝子を有する13の事象のうちの4は、有意に(P=0.05)増加したミリグラムのオイル/穀粒を有していた(1.5mg/穀粒の平均増加、2.5mg/穀粒の最大増加)。
【0119】
実施例7
胚発現サイトゾル標的化PFKおよびPK構築物pMON79823,F1の分析
pMON79823からの20の事象についての切開したpfk遺伝子PCR陽性および陰性のF1穀粒におけるオイルレベルのNMR分析は、分析した20の事象のうちの7が陽性穀粒において有意に(P=0.05)高い胚オイル%を有していることを明らかにした(1.7%の平均増加、5.8%の最大増加)。また、7の事象は陽性穀粒において有意に(P=0.05)より高い内胚乳オイル%(0.14%の平均増加、0.34%の最大増加)を有し、そのうちの4は胚オイル%の増加を有していたものと同一の事象であった。
【0120】
pMON79824,F1
pMON79824からの24の事象についてのpyk遺伝子PCR陽性および陰性F1穀粒のNMRオイル分析は、1の事象を除いてすべてのものにおいて胚オイル%は変化しておらず、同様にして、1の異なる事象を除いてすべてのものにおいて全穀粒オイル%は変化していないことを明らかにした。変化したオイルレベルを有する24の事象のうち1の頻度は、ランダム変動によって予想し得るものを超えるものではなかった。したがって、pykトランスジーンはこれらの条件下で単独でオイルレベルに影響しないようであった。
【0121】
pMON79827,F1
pfk/pyk事象を初めにpfkトランスジーンについてスクリーニングした。pMON79827からの24の事象についてのpfk遺伝子PCR陽性および陰性F1穀粒NMRオイル分析は、20の事象のうちの10が有意に(P=0.05)増加した胚オイル%(2.23%の平均増加、5.39%の最大増加)を有することを明らかにした。また、プロモーターが胚−特異的発現向上であるかにかかわりなく、20のうちの5の事象において内胚乳オイル%が増加した。
【0122】
pMON72008
構築物pMON72008を精鋭品種LH172に形質転換した。32の事象からの切開した成熟胚組織のNMR分析によって決定した平均胚オイル%のスチュデントT−検定比較は、すべての事象を横切るすべてのpfk遺伝子PCR陽性穀粒の平均が、2.59%の絶対値で陰性穀粒の平均よりも高く、この差が統計的に有意(P=0.05)であることを明らかにした。示された最大増加は3.5%であった。すべての事象を横切るpfk遺伝子PCR陽性穀粒についての全穀粒オイル%の平均(2.89%)は、陰性穀粒についての平均(3.01%)よりもわずかに低かったが、この差はP=0.05で有意でなかった。
【0123】
トランスジーンの発現はL3オレオシン・プロモーターによって指示されるが、これは胚組織において優先的に発現し、陰性穀粒(0.07%の平均増加、0.24%の最大増加)と比較してpfk遺伝子PCR陽性穀粒についてのすべての事象を横切って、小さいが、統計的に有意な平均内胚乳オイル%における増加が存在した。
【0124】
pMON72008事象からの発育している穀粒におけるpfkおよびpyk遺伝子についてのさらなるトランスジーン発現分析は、タンパク質発現を試験するためのウェスタン・ブロッティング分析および酵素アッセイの両方で行った。ウェスタン・ブロッティング分析は、すべての30のpfk遺伝子PCR陽性事象がPKタンパク質を発現することを見出し、一方30のうちの29がPFKタンパク質を発現することを見出した。PKタンパク質は、PFKタンパク質よりも高いレベルで常に発現していた。酵素活性は、ウェスタン・ブロットタンパク質発現結果とよく一致した。PK活性における上昇は、タンパク質発現結果と一致して、PFK活性における上昇よりも大きかった。
【0125】
実施例8
プロピオニバクテリウム・フリューデンレイシイ(Propionibacterium freudenreichii)ホスホフルクトキナーゼを発現する形質転換ベクターの構築
プロピオニバクテリウム・フリューデンレイシイからのホスホフルクトキナーゼを発現するさらなる種子−特異的発現向上構築物を作製した。内胚乳サイトゾル発現のために、ピイ・フリューデンレイシイpfk遺伝子(Genebank受理番号M67447)(配列番号:11)を増幅し、トウモロコシ形質転換用に設計したベクターの所望によりエンハンサーとしてトウモロコシDnaKイントロンがつづいてもよいトウモロコシ・ゼインZ27プロモーターの下流にクローニングした。内胚乳プラスチド発現のために、ピイ・フリューデンレイシイpfk遺伝子(配列番号:11)を増幅し、トウモロコシ形質転換用に設計したベクター中のpfk遺伝子に融合した、エヌ・タバカムSSU CTPがつづくトウモロコシ・ゼインZ27プロモーターの下流にクローニングした。胚サイトゾル発現のために、ピイ・フリューデンレイシイpfk遺伝子(配列番号:11)を増幅し、トウモロコシ形質転換用に設計したベクター中の、所望によりエンハンサーとしてトウモロコシDnaKイントロンがつづいてもよいオオムギPER1プロモーターの下流にクローニングした。すべての構築物についての形質転換を介して、形質転換外植体を得た。形質転換した組織から植物を再生した。ついで、温室で生育させた植物を、関心のある遺伝子の発現レベルならびにオイルおよびタンパク質レベルについて分析した。
【0126】
本明細書に開示および特許請求するすべての組成物および方法は、本明細書の開示に鑑みれ過度な実験なしに作製および実施し得るものである。本発明の組成物および方法を前記した説明形態の観点で記載したが、本発明の真の概念、意図および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載した組成物、方法、および方法の工程または工程の順番に変動、変化、修飾および変形を適用し得ることは当業者に明らかであろう。より詳細には、同一または同様の結果を達成しつつ、化学的および生理学的に関係するある種の剤を本明細書に記載した剤に代えて使用し得ることは明らかであろう。当業者に明らかなかかる同様の置換および修飾のすべては、添付した特許請求の範囲によって規定される発明の意図、範囲および概念の範囲内に存するとみなす。
【0127】
参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書に記載した例示的手順または他の詳細な補充を提供する範囲で、出典明示して本明細書の一部とみなす。

米国特許第4,518,584号;米国特許第4,737,462号;米国特許第4,810,648号;米国特許第4,957,748号;米国特許第5,094,945号;米国特許第5,100,679号;米国特許第5,196,525号;米国特許第5,219,596号;米国特許第5,290,924号;米国特許第5,322,783号;米国特許第5,359,142号;米国特許第5,424,398号;米国特許第5,424,412号;米国特許第5,500,365号;米国特許第5,538,880号;米国特許第5,550,318号;米国特許第5,563,055号;米国特許第5,610,042号;米国特許第5,627,061号;米国特許第5,633,435号;米国特許第5,641,876号;米国特許第5,936,069号;米国特許第6,005,076号;米国特許第6,040,497号;米国特許第6,146,669号;米国特許第6,156,227号;米国特許第6,265,638号;米国特許第6,433,252号;米国特許第7,012,171号

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【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は公開されたpfk遺伝子配列(EMBL受理番号X71403)を有するラクトバシルス・デルブリューキイ・サブスピーシーズ・ブルガリカスATCC11842株から単離したpfk遺伝子(配列番号:1)のコード配列のアライメントを示す。
【図2】図2はプラスミドpMON72008を描く。
【図3】図3はプラスミドpMON79823を描く。
【図4】図4はプラスミドpMON79824を描く。
【図5】図5はプラスミドpMON79827を描く。
【図6】図6はプラスミドpMON72028を描く。
【図7】図7はプラスミドpMON79832を描く。
【図8】図8はプラスミドpMON81470を描く。
【図9】図9はプラスミドpMON72029を描く。
【図10】図10はプラスミドpMON83715を描く。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子−特異的発現向上プロモーターに作動可能に連結したホスホフルクトキナーゼをコードするポリヌクレオチドを単子葉植物に導入することを含み、それによってその種子のオイル含量が該核酸配列を欠失している同質遺伝子植物の種子と比較して増加する、種子中に増加したオイルを有する単子葉植物の作製方法。
【請求項2】
ホスホフルクトキナーゼをコードするポリヌクレオチドが配列番号:9または配列番号:13以外の配列を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
種子−特異的発現向上プロモーターが胚−特異的発現向上プロモーターである場合を除いて、ホスホフルクトキナーゼをコードするポリヌクレオチドがプラスチド・トランジットペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されている請求項1記載の方法。
【請求項4】
ポリヌクレオチドが、
(a)配列番号:1または配列番号:11の核酸配列;および
(b)配列番号:2または配列番号:12のポリペプチド配列をコードする核酸配列
よりなる群から選択される核酸配列を含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
ポリヌクレオチドが、約0.2×SSCおよび65℃の高ストリンジェンシー条件下で(a)もしくは(b)の配列またはそれらの相補体にハイブリダイズする核酸配列を含む請求項4記載の方法。
【請求項6】
さらに、植物が、種子−特異的発現向上プロモーターに作動可能に連結したピルビン酸キナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む請求項4記載の方法。
【請求項7】
ピルビン酸キナーゼをコードするポリヌクレオチドが
(a)配列番号:3の配列を含む核酸配列;および
(b)配列番号:4のポリペプチド配列をコードする核酸配列
よりなる群から選択される核酸配列を含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
ポリヌクレオチドが、約0.2×SSCおよび65℃の高ストリンジェンシー条件下で(a)もしくは(b)の配列またはそれらの相補体にハイブリダイズする核酸配列を含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
植物が、トウモロコシ(Zea mays)、イネ(Oryza sativa)、オオムギ(Hordeum vulgare)、キビ(Panicum miliaceum)、ライムギ(Secale cereale)、コムギ(Triticum aestivum)およびサトウモロコシ(Sorghum bicolor)よりなる群から選択される単子葉植物である請求項1記載の方法。
【請求項10】
プロモーターが、胚−特異的発現向上プロモーター、内胚乳−特異的発現向上プロモーターならびに胚−および内胚乳−特異的発現向上プロモーターよりなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項11】
種子−特異的発現向上プロモーターに作動可能に連結されたホスホフルクトキナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む単子葉植物。
【請求項12】
ホスホフルクトキナーゼをコードするポリヌクレオチドが、配列番号:9または配列番号:13以外の配列を含む請求項11記載の植物。
【請求項13】
種子−特異的発現向上プロモーターが胚−特異的発現向上プロモーターである場合を除いて、ホスホフルクトキナーゼをコードするポリヌクレオチドがプラスチド・トランジットペプチドをコードするポリヌクレオチドに連結されている請求項11記載の植物。
【請求項14】
種子−特異的発現向上プロモーターに作動可能に連結されたホスホフルクトキナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む単子葉植物細胞。
【請求項15】
請求項7記載のホスホフルクトキナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項11記載の植物から生産された種子。
【請求項16】
請求項11記載のホスホフルクトキナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む請求項15記載の種子から製造した粉。
【請求項17】
請求項11記載のホスホフルクトキナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む請求項15記載の種子から製造した動物飼料組成物。
【請求項18】
請求項11記載のホスホフルクトキナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む請求項15記載の種子から製造したヒト食物組成物。
【請求項19】
請求項11記載のホスホフルクトキナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む請求項16記載の粉を含む動物飼料組成物。
【請求項20】
単子葉植物オイルの製造方法であって、
a)種子−特異的発現向上プロモーターに作動可能に連結したホスホフルクトキナーゼをコードするポリヌクレオチドを含む形質転換単子葉植物を生育させて種子を生産し;ついで
b)種子を加工してオイルを得る
工程を含む該製造方法。
【請求項21】
ホスホフルクトキナーゼをコードするポリヌクレオチドが、配列番号:9または配列番号:13以外の配列を含む請求項20記載の方法。
【請求項22】
種子−特異的発現向上プロモーターが胚−特異的発現向上プロモーターである場合を除いて、ホスホフルクトキナーゼをコードするポリヌクレオチドがプラスチド・トランジットペプチドをコードするポリヌクレオチドに連結されている請求項20記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−541732(P2008−541732A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513754(P2008−513754)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/020413
【国際公開番号】WO2006/127991
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(501231613)モンサント テクノロジー エルエルシー (71)
【Fターム(参考)】