説明

単孔中空ポリマー微粒子の製造方法

【課題】分級操作が必要なく、外径及び内径が極めて均一な単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を提供する。更に、該単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を用いて製造される単孔中空ポリマー微粒子を提供する。
【解決手段】非架橋ポリマーを含有する種粒子を、水を含有する分散媒中に分散させた種粒子分散液と、油溶性溶剤とを混合し、前記種粒子に前記油溶性溶剤を吸収させて膨潤粒子液滴の分散液を調製する工程と、前記膨潤粒子液滴の分散液と、水溶性ポリマーを含有する水溶液とを混合して混合液を調製する工程と、前記混合液の前記水溶性ポリマーの溶解度を低下させる操作を行うことにより、前記膨潤粒子液滴の表面に前記水溶性ポリマーを析出させる工程とを有する単孔中空ポリマー微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分級操作が必要なく、外径及び内径が極めて均一な単孔中空ポリマー微粒子の製造方法に関する。更に、本発明は、該単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を用いて製造される単孔中空ポリマー微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
単孔を有する中空ポリマー微粒子の製造方法として、親水性のモノマー、架橋性モノマー及び油溶性溶剤を重合開始剤と共に均一溶解してモノマー溶液を調製し、該モノマー溶液を水相中で乳化分散させた後、重合する方法がある。この製造方法は、生成するポリマーと油溶性溶剤との相分離効果を利用して、微粒子中に単孔を形成する方法である。
【0003】
しかし、この方法で得られる単孔を有する中空ポリマー微粒子は、粒子径分布が乳化分散の機械的な操作方法に依存しており、外径(粒子径)、内径(単孔の径)及び外径と内径との比を一定の範囲に制御することは困難であるという問題があった。
外径を揃える目的で、篩いやメッシュ等で分級操作を実施しても、充分に均一な外径分布の中空ポリマー微粒子を得ることは困難である。また、仮に外径を揃えたとしても内径を揃えることはできない。
また、得られた中空ポリマー微粒子を、比重差等を活用した流体力学的方法により分級する方法も知られている。しかし、外径が大きく内径も大きい(中空度の高い)微粒子と、外径が小さく内径も小さい(中空度の低い)微粒子とは同様の移動性を有してしまうことから、この方法ではこれらを分級することはできなかった。
【0004】
これに対して、モノマー成分を種粒子に吸収させたうえで重合させる中空ポリマー微粒子の製造方法が検討されている。この方法によれば、比較的外径が均一な中空ポリマー微粒子が製造できると考えられる。
例えば、特許文献1には、架橋性モノマー、親水性モノマー及びその他のモノマーを含む重合性モノマー成分を、この重合性モノマー成分によるコポリマーとは異なる組成の異種ポリマー微粒子の存在下において水性分散媒体中で分散させて当該異種ポリマー微粒子に重合性モノマー成分を吸収させ、次いで重合性モノマー成分を重合させる工程を有する、単一の内孔を有するポリマー粒子の製造方法が記載されている。上記特許文献1において、上記異種ポリマーの例として、ポリスチレン、又は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルエステル、メタクリルエステル及びブタジエンから選択される少なくとも1種とスチレンとのコポリマーが挙げられている。また、上記架橋性モノマーの例として、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられている。上記親水性モノマーの例としてアクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピリジン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられている。その他のモノマーの例として、スチレン等が挙げられている。しかしながら、特許文献1に記載された方法では、外径及び内径が充分に均一な中空ポリマー微粒子を得ることは難しかった。特許文献1の実施例においても、概ね単孔の中空ポリマー微粒子は得られているものの、その外径、内径ともに均一でなく、また、単孔構造の微粒子だけではなく複数の孔を有する微粒子が混じっていた。
【0005】
特許文献2には、イオン性モノマー(A−a)、重合時にモノマーからポリマーへの変化にともない、溶解度パラメーターが変化しないか、または増加する非イオン性モノマー(A−b)及び上記非イオン性モノマー(A−b)以外の非イオン性モノマー(A−c)を含むモノマーを重合して得られる重合体微粒子(A)の存在下に、イオン性モノマー(B−a)、重合時にモノマーからポリマーへの変化にともない、溶解度パラメーターが減少する非イオン性モノマー(B−b)及び非イオン性モノマー(B−b)以外の非イオン性モノマー(B−c)を含むモノマー成分(B)を水性媒体中で水溶性重合開始剤を用いて一定条件を満たす重合温度で乳化重合して平均内孔径が微粒子の平均粒子径の0.25〜0.8倍である単一の内孔を有する中空ポリマー微粒子の製造方法が記載されている。また、特許文献2に記載された製造方法において、上記重合体微粒子(A)とモノマー成分(B)の組み合わせのうち、非イオン性モノマー(A−b)成分を重合することにより得られたポリマーの溶解度パラメーター〔δ(A−b),p〕と非イオン性モノマー(B−b)成分のモノマーの溶解度パラメーター〔δ(B−b),m〕との差の絶対値が1.0以下であることが特徴であるとされている。しかしながら、特許文献2に記載された方法では、外径及び内径が充分に均一な中空ポリマー微粒子を得ることはできなかった。また、特許文献2に記載された製造方法では、水溶性重合開始剤を用いることから、モノマー油滴内の重合開始剤の含有量が少ないため、重合率が低下するだけでなく、水相中での乳化重合が併発して、内孔のない微粒子も混入してしまう問題もあった。
【0006】
特許文献3には、親水性モノマー、架橋性モノマー、他のモノマー、油性物質を含む均一混合液Aを、Aに対して不混和性の液体Bにミクロ多孔体膜を通して圧入することにより油滴を得た後に、重合させることにより油性物質を内核とした粒子を得る製造方法が示されている。しかしながら、ミクロ多孔体膜を通す方法は、従来の乳化装置を用いる方法に比べれば外径の分布が均一になるものの、結局は、分級等の操作を行う必要があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平04−068324号公報
【特許文献2】特開平04−279637号公報
【特許文献3】特開2002−105104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、分級操作が必要なく、外径及び内径が極めて均一な単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を提供することを目的とする。更に、本発明は、該単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を用いて製造される単孔中空ポリマー微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、非架橋ポリマーを含有する種粒子を、水を含有する分散媒中に分散させた種粒子分散液と、油溶性溶剤とを混合し、前記種粒子に前記油溶性溶剤を吸収させて膨潤粒子液滴の分散液を調製する工程と、前記膨潤粒子液滴の分散液と、水溶性ポリマーを含有する水溶液とを混合して混合液を調製する工程と、前記混合液の前記水溶性ポリマーの溶解度を低下させる操作を行うことにより、前記膨潤粒子液滴の表面に前記水溶性ポリマーを析出させる工程とを有する単孔中空ポリマー微粒子の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法は、非架橋ポリマーを含有する種粒子を、水を含有する分散媒中に分散させた種粒子分散液と、油溶性溶剤とを混合し、前記種粒子に前記油溶性溶剤を吸収させて膨潤粒子液滴の分散液を調製する工程を有する。なお、本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法は、非架橋ポリマーを含有する種粒子を、水を含有する分散媒中に分散させた種粒子分散液を調製する工程を有してもよい。
【0011】
上記種粒子は、非架橋ポリマーを含有する。
上記非架橋ポリマーを構成する非架橋性モノマーは特に限定されず、例えば、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸等が挙げられる。
【0012】
上記非架橋性モノマーを重合して上記種粒子を構成する際に、少量の架橋性モノマーを併用してもよい。少量の架橋性モノマーを併用することにより、得られる種粒子の強度が向上する。
上記架橋性モノマーは特に限定されず、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0013】
上記架橋性モノマーを配合する場合、上記非架橋性モノマーと上記架橋性モノマーとの合計に占める上記架橋性モノマーの配合量の好ましい上限は5重量%である。上記架橋性モノマーの配合量が5重量%を超えると、得られる種粒子への油溶性溶剤の吸収性が低下し、膨潤粒子液滴が形成されないことがある。上記架橋性モノマーの配合量のより好ましい上限は1重量%である。
【0014】
上記種粒子の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量の好ましい上限は50万である。上記種粒子の重量平均分子量が50万を超えると、得られる種粒子への油溶性溶剤の吸収性が低下し、膨潤粒子液滴が形成されないことがある。上記種粒子の重量平均分子量のより好ましい上限は10万である。上記種粒子の重量平均分子量の下限は特に限定されないが、1000未満であると、実質的に粒子を形成できないことがある。
【0015】
上記種粒子の体積平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は目的とする単孔中空ポリマー微粒子の平均外径(平均粒子径)の1/10、好ましい上限は目的とする単孔中空ポリマー微粒子の平均外径の1/1.05である。上記種粒子の体積平均粒子径が目的とする単孔中空ポリマー微粒子の平均外径の1/10未満であると、所望の単孔中空ポリマー微粒子の外径を得るために、吸収性能の限界を超えた多くの油溶性溶剤を吸収する必要があり、吸収残りが発生したり、得られる単孔中空ポリマー微粒子の外径が均一にならなかったりすることがある。上記種粒子の体積平均粒子径が目的とする単孔中空ポリマー微粒子の外径の1/1.05を超えると、ごく微量の油溶性溶剤しか吸収する余地がなく、高い中空度を有する単孔中空ポリマー微粒子が得られないことがある。上記種粒子の体積平均粒子径は、目的とする単孔中空ポリマー微粒子の平均外径の1/8以上であることがより好ましく、1/1.5以下であることがより好ましい。
【0016】
上記種粒子は、粒子径のCv値の好ましい上限が30%である。上記種粒子の粒子径のCv値が30%を超えると、膨潤した種粒子の粒子径が均一にならず、得られる単孔中空ポリマー微粒子の粒子径も均一にならないことがある。上記種粒子の粒子径のCv値のより好ましい上限は、20%である。
なお、上記種粒子の粒子径のCv値は、粒子径測定装置により測定される体積平均粒子径mと標準偏差σから、下記式(1)により算出することができる。
Cv=σ/m×100(%) (1)
なお、上記単孔中空ポリマー微粒子の平均外径は、走査型電子顕微鏡により、1視野に約100個の粒子が観察できる倍率で観察し、任意に選択した50個の粒子についてノギスを用いて最長径を測定し、最長径の数平均値を求めることにより算出することができる。
【0017】
上記種粒子を調製する方法は特に限定されず、ソープフリー乳化重合、乳化重合、分散重合等の方法が挙げられる。
【0018】
上記分散媒は、水を含有する分散媒であれば特に限定されず、水、又は、水にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤を添加した混合分散媒等が挙げられる。
【0019】
上記分散媒は、必要に応じて、分散剤を含有してもよい。
上記分散剤は特に限定されず、例えば、アルキル硫酸スルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0020】
上記種粒子分散液における上記種粒子の配合量は特に限定されず、好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は50重量%である。上記種粒子の配合量が0.1重量%未満であると、単孔中空ポリマー微粒子の生産効率が低くなることがある。上記種粒子の配合量が50重量%を超えると、種粒子が凝集してしまうことがある。上記種粒子の配合量のより好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は30重量%である。
【0021】
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法において、上記種粒子分散液と、油溶性溶剤とを混合し、上記種粒子に油溶性溶剤を吸収させて均一な膨潤粒子液滴の分散液を調製する。
【0022】
本明細書において油溶性溶剤とは、logPow(オクタノール/水分配係数)が0以上である溶剤を意味する。溶剤のlogPowは、以下のように求められる。
n−オクタノールと水とを充分に混合した混合液を24時間放置した後、混合液に溶剤を加えてさらに混合する。その後、オクタノール相中に含まれる溶剤濃度(Co)と水相中とに含まれる溶剤濃度(Cw)とをガスクロマトグラフィーにより測定し、得られたCo及びCwを用いて、下記式(2)からlogPowを算出できる。
logPow=log(Co/Cw) (2)
Co:オクタノール相中の溶剤濃度
Cw:水相中の溶剤濃度
【0023】
上記油溶性溶剤は特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素や、プロパン、シクロプロパン、ブタン、シクロブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、ノルマルヘプタン、シクロヘプタン、ノルマルオクタン、シクロオクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素又は環状炭化水素や、メチルイソブチルケトン等のケトン類や、酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの油溶性溶剤を用いた場合には、後述するように単孔中空ポリマー微粒子のシェルを形成した後、上記油溶性溶剤を揮発させることによって空洞を有する単孔中空ポリマー微粒子を製造してもよく、上記油溶性溶剤を揮発させずに上記油溶性溶剤を内包する単孔中空ポリマー微粒子を製造してもよい。
また、後述するように、これらの油溶性溶剤を用いて、熱膨張性の単孔中空ポリマー微粒子を製造することもできる。熱膨張性の単孔中空ポリマー微粒子を製造する場合には、上記油溶性溶剤として、イソペンタン、ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素等の揮発性の油溶性溶剤を用いることが好ましい。
これらの油溶性溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
また、上記油溶性溶剤として、硬化剤又は硬化促進剤を用いてもよい。
上記硬化剤は特に限定されず、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)、2−メチルイミダゾール(2MZ)等のイミダゾール化合物や、ポリエチレンポリアミン、メタキシレンジアミン等のポリアミン化合物や、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸等の酸無水物が挙げられる。上記硬化促進剤は特に限定されず、例えば、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸等の塩素置換カルボン酸化合物や、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール等の塩素置換フェノール化合物や、p−ニトロフェノール等のニトロ置換フェノール化合物や、チオフェノール、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン化合物等が挙げられる。これらの油溶性溶剤を用いた場合には、上記油溶性溶剤を内包する単孔中空ポリマー微粒子を製造することができる。
これらの油溶性溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記油溶性溶剤の配合量は、目的とする単孔中空ポリマー微粒子の外径及び内径により適宜調整すればよいが、上記種粒子100重量部に対する好ましい下限は15重量部、好ましい上限は100,000重量部である。上記油溶性溶剤の配合量が15重量部未満であると、高い中空度を有する単孔中空ポリマー微粒子が得られないことがある。上記油溶性溶剤の配合量が100,000重量部を超えると、上記種粒子の吸収性能の限界を超え、吸収残りが発生することがある。上記油溶性溶剤の配合量のより好ましい下限は230重量部、より好ましい上限は50,000重量部である。
【0026】
上記油溶性溶剤を直接上記種粒子分散液に加えて混合してもよいが、いったん水を含有する分散媒に添加して乳化液を調製し、該乳化液を上記種粒子分散液に加えて混合する方法が好ましい。乳化液として上記種粒子分散液に加えることにより、上記油溶性溶剤をより均一に上記種粒子に吸収させることができる。なお、上記乳化液に、上記種粒子分散液を加えて混合してもよい。
【0027】
上記油溶性溶剤の乳化液の分散媒は特に限定されず、上記種粒子分散液に用いた分散媒と同じ分散媒であってもよく、異なる分散媒であってもよい。
上記油溶性溶剤の乳化液の分散媒は、乳化剤を含有することが好ましい。上記乳化剤は特に限定されず、例えば、アルキル硫酸スルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0028】
上記油溶性溶剤の乳化液と上記種粒子分散液とを混合する際には、上記乳化液の全量を一括で加えて混合してもよいし、分割して加えて混合してもよい。分割して加える場合には、滴下することにより添加してもよい。
【0029】
上記種粒子分散液と、上記油溶性溶剤とを混合すると、上記種粒子に上記油溶性溶剤が吸収されて、均一な膨潤粒子液滴が形成される。
【0030】
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法において、得られた膨潤粒子液滴の分散液と、水溶性ポリマーを含有する水溶液とを混合して混合液を調製する工程を行う。
上記水溶性ポリマーは、水に完全に溶解すれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、ゼラチン−ポリアニオン類複合物、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
上記ポリアニオン類は特に限定されず、例えば、アラビアゴム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、寒天、ポリビニルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
また、上記水溶性ポリマーとして、ガスバリア性を発現するポリビニルアルコールを用いる場合には、上記油溶性溶剤として上記脂肪族炭化水素等の揮発性の油溶性溶剤を内包することにより、熱膨張性の単孔中空ポリマー微粒子を製造することができる。このような熱膨張性の単孔中空ポリマー微粒子は、シェルの軟化点温度以上に加熱して上記油溶性溶剤を気化させると、熱膨張し、より高中空度の微粒子となる。
【0031】
上記水溶性ポリマーの配合量は特に限定されないが、上記油溶性溶剤100重量部に対し、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が100重量部である。上記水溶性ポリマーの配合量が0.1重量部未満であると、形成される被膜が薄くなるため、単孔中空ポリマー微粒子を形成できないことがある。上記水溶性ポリマーの配合量が100重量部を超えると、上記混合液の粘度が上昇して取扱い性が低下することがある。上記水溶性ポリマーの配合量のより好ましい下限は1.0重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0032】
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法において、上記混合液の上記水溶性ポリマーの溶解度を低下させる操作を行う。上記水溶性ポリマーの溶解度を低下させる操作として、例えば、温度調整、pH調整、電解質の添加、貧溶媒の添加、硬化剤の添加等が挙げられる。
例えば、水溶性ポリマーがポリビニルアルコールである場合、ホウ砂やホルマリン−塩酸等を添加することにより上記混合液に対する溶解度を著しく低下させることができる。
水溶性ポリマーがアルギン酸ナトリウムやゼラチンである場合、塩化カルシウム、酸、高分子カチオン等を添加することにより上記混合液に対する溶解度を著しく低下させることができる。
水溶性ポリマーがメチルセルロースである場合、加熱することによりゲル化を促進させた後に、タンニン酸を添加して硬化させることにより上記混合液に対する溶解度を著しく低下させることができる。
【0033】
上記混合液に上記水溶性ポリマーの溶解度を低下させる操作を行うことにより、上記膨潤粒子液滴の表面に上記水溶性ポリマーが析出し、被膜が形成される。即ち、コアが上記油溶性溶剤、シェルが析出した水溶性ポリマーにより形成されている、コアシェル粒子分散液が得られる。
なお、析出した水溶性ポリマーにより形成されている被膜の強度を向上するために、更に、上記混合液に架橋剤等を添加してもよい。
【0034】
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法では、得られたコアシェル粒子を、純水を用いて繰り返して洗浄し、上記油溶性溶剤を揮発させることにより空洞を有する単孔中空ポリマー微粒子を製造してもよく、上記油溶性溶剤を揮発させずに上記油溶性溶剤を内包する単孔中空ポリマー微粒子を製造してもよい。
【0035】
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法によれば、外径及び内径が極めて均一である単孔中空ポリマー微粒子を製造することができる。外径及び内径が極めて均一であることから、篩、風力分級、比重差分級等による特別な分級操作が必要ない。歩留まりが高く、工程も短いので、単孔中空ポリマー微粒子を安く、早く供給することができる。
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を用いて製造される単孔中空ポリマー微粒子もまた、本発明の1つである。
【0036】
本発明の単孔中空ポリマー微粒子は、空洞を有していてもよく、上記油溶性溶剤を内包していてもよい。
本発明の単孔中空ポリマー微粒子は、空洞を有する場合、外径及び内径が極めて均一であることから、ごく少量の添加で比表面積を向上させることができ、光拡散性、軽量性、断熱性、クッション性、紫外線や可視光や赤外線等の選択吸収や反射、透過性を制御することができる。
【0037】
本発明の単孔中空ポリマー微粒子は、上記油溶性溶剤として硬化剤や硬化促進剤を内包する場合、例えば、エポキシ樹脂等の硬化物を製造するための硬化剤又は硬化促進剤を内包するマイクロカプセルとして用いることができる。即ち、硬化剤又は硬化促進剤を内包する本発明の単孔中空ポリマー微粒子を硬化性組成物中に含有し、必要に応じて機械的圧力又は熱でシェルを破壊することにより、硬化反応を開始させて硬化物を製造することができる。本発明の単孔中空ポリマー微粒子の外径及び内径が極めて均一であることから、本発明の単孔中空ポリマー微粒子を含有する硬化性組成物は、シェルの薄い部分で貯蔵中に硬化が開始したり、シェルの厚い部分で硬化中に硬化剤又は硬化促進剤が充分に滲み出さず反応性が低下したりすることがなく、その結果、貯蔵安定性が高く、硬化が均質となる。
【0038】
本発明の単孔中空ポリマー微粒子は、ガスバリア性を発現するポリビニルアルコールによってシェルが形成されており、かつ、上記油溶性溶剤として上記脂肪族炭化水素等の揮発性の油溶性溶剤を内包する場合、熱膨張性の単孔中空ポリマー微粒子として用いることができる。このような熱膨張性の単孔中空ポリマー微粒子は、シェルの軟化点温度以上に加熱して上記油溶性溶剤を気化させると、熱膨張し、より高中空度の微粒子となる。本発明の単孔中空ポリマー微粒子は外径及び内径が極めて均一であることから、熱膨張後の微粒子も外径及び内径が極めて均一となり、光拡散性、軽量性、断熱性、クッション性、紫外線や可視光や赤外線等の選択吸収や反射、透過性等の付与を目的として種々の用途に適用する場合、これらの性能の制御が容易となる。
【0039】
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の平均外径(平均粒子径)は特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は100μmである。平均外径が0.1μm未満であると、充分な大きさの単孔が得られなかったり、内包する油溶性溶剤の量が少なくなったりすることがある。平均外径が100μmを超えると、種粒子への油溶性溶剤の吸収が遅くなるため、生産性が低下することがある。本発明の単孔中空ポリマー微粒子の平均外径のより好ましい下限は0.5μm、より好ましい上限は20μmである。
【0040】
本発明の単孔中空ポリマー微粒子は、外径(粒子径)のCv値の好ましい上限が10%である。外径のCv値が10%を超えると、例えば、本発明の単孔中空ポリマー微粒子を、エポキシ樹脂等の硬化物を製造するための硬化剤又は硬化促進剤を内包するマイクロカプセルとして使用した場合、硬化物の硬化が均質とならないことがある。また、外径のCv値が10%を超えると、例えば、本発明の単孔中空ポリマー微粒子が熱膨張性である場合、熱膨張後の微粒子の外径の均一性も低下することがある。外径のCv値のより好ましい上限は7%である。
なお、本発明の単孔中空ポリマー微粒子の外径のCv値は、上記種粒子の粒子径のCv値と同様に算出することができる。
【0041】
本発明の単孔中空ポリマー微粒子の平均内径は特に限定されないが、好ましい下限は平均外径の5%、好ましい上限は平均外径の99.9%である。平均内径が平均外径の5%未満であると、充分な大きさの単孔が得られなかったり、内包する油溶性溶剤の量が少なくなったりすることがある。平均内径が平均外径の99.9%を超えると、シェルが薄くなるため、内包する油溶性溶剤が漏出することがある。本発明の単孔中空ポリマー微粒子の平均内径のより好ましい下限は平均外径の10%、より好ましい上限は平均外径の99%である。
【0042】
本発明の単孔中空ポリマー微粒子は、内径のCv値の好ましい上限が10%である。内径のCv値が10%を超えると、例えば、本発明の単孔中空ポリマー微粒子を、エポキシ樹脂等の硬化物を製造するための硬化剤又は硬化促進剤を内包するマイクロカプセルとして使用した場合、硬化物の硬化が均質とならないことがある。また、内径のCv値が10%を超えると、例えば、本発明の単孔中空ポリマー微粒子が熱膨張性である場合、熱膨張後の微粒子の内径の均一性も低下することがある。内径のCv値のより好ましい上限は7%である。
なお、本発明の単孔中空ポリマー微粒子の内径のCv値は、上記種粒子の粒子径のCv値と同様に算出することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、分級操作が必要なく、外径及び内径が極めて均一な単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を提供することができる。更に、本発明によれば、該単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を用いて製造される単孔中空ポリマー微粒子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されない。
【0045】
(実施例1)
スチレン100重量部、過硫酸カリウム3重量部、n―オクチルメルカプタン25重量部、水2500重量部を混合し、攪拌しながら70℃で24時間反応させて、体積平均粒子径0.5μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
油溶性溶剤としてのヘプタン100重量部に、乳化剤としてラウリル硫酸トリエタノールアミン2重量部と水900重量部とを加えて乳化し、乳化液を調製した。
得られた種粒子分散液に、ポリスチレン粒子重量の200倍の油溶性溶剤となるように乳化液を加えて混合し、24時間撹拌して、油溶性溶剤を吸収した種粒子の膨潤粒子液滴の分散液を得た。
【0046】
得られた膨潤粒子液滴の分散液を撹拌しながら、水溶性ポリマーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースの水溶液を、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの添加量が油溶性溶剤100重量部に対して5重量部となるように滴下して混合液を調製した。
得られた混合液を80℃に加熱した後、タンニン酸水溶液を、タンニン酸の添加量が油溶性溶剤100重量部に対して0.5重量部となるように滴下し、5時間反応させることにより、コアがヘプタン、シェルがヒドロキシプロピルメチルセルロース架橋体により形成されている、コアシェル粒子分散液を得た。
得られたコアシェル粒子を、純水を用いて繰り返して洗浄し、真空乾燥してヘプタンを揮発させて、ポリマー微粒子を得た。
【0047】
(実施例2)
スチレン100重量部、過硫酸カリウム3重量部、n―オクチルメルカプタン25重量部、水2500重量部を混合し、攪拌しながら70℃で24時間反応させて、体積平均粒子径0.5μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
油溶性溶剤としてのヘプタン100重量部に、乳化剤としてラウリル硫酸トリエタノールアミン2重量部と水900重量部とを加えて乳化し、乳化液を調製した。
得られた種粒子分散液に、ポリスチレン粒子重量の200倍の油溶性溶剤となるように乳化液を加えて混合し、24時間撹拌して、油溶性溶剤を吸収した種粒子の膨潤粒子液滴の分散液を得た。
【0048】
得られた膨潤粒子液滴の分散液を撹拌しながら、水溶性ポリマーとしてゼラチンの水溶液を、ゼラチンの添加量が油溶性溶剤100重量部に対して5重量部となるように滴下して混合液を調製した。
得られた混合液を80℃に加熱した後、アルギン酸ナトリウム水溶液を、アルギン酸ナトリウムの添加量が油溶性溶剤100重量部に対して0.5重量部となるように滴下し、5時間反応させることにより、コアがヘプタン、シェルがゼラチン架橋体により形成されている、コアシェル粒子分散液を得た。
得られたコアシェル粒子を、純水を用いて繰り返して洗浄し、真空乾燥してヘプタンを揮発させて、ポリマー微粒子を得た。
【0049】
(実施例3)
過硫酸カリウムを5重量部とした以外は実施例1と同様にして、体積平均粒子径0.2μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
この種粒子分散液に、乳化液の添加量をポリスチレン粒子重量の20倍の油溶性溶剤となるように添加した以外は、実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。
【0050】
(実施例4)
過硫酸カリウムを0.5重量部とした以外は実施例1と同様にして、体積平均粒子径2.0μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
この種粒子分散液に、乳化液の添加量をポリスチレン粒子重量の125倍の油溶性溶剤となるように添加した以外は、実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。
【0051】
(実施例5)
過硫酸カリウムを0.5重量部とし、更に、塩化ナトリウム0.1重量部を添加した以外は実施例1と同様にして、体積平均粒子径5.0μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
この種粒子分散液に、乳化液の添加量をポリスチレン粒子重量の125倍の油溶性溶剤となるように添加した以外は、実施例1と同様にしてポリマー微粒子を得た。
【0052】
(比較例1)
油溶性溶剤としてのヘプタン100重量部を多孔質膜に通して、乳化剤と水とを含有する連続層に分散させ、乳化液を作製した。
得られた乳化液を撹拌しながら、水溶性ポリマーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液を、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの添加量が油溶性溶剤100重量部に対して5重量部となるように滴下した。80℃に加熱した後に、タンニン酸水溶液を、タンニン酸の添加量が油溶性溶剤100重量部に対して0.5重量部となるように滴下し、5時間反応させることにより、コアがヘプタン、シェルがヒドロキシプロピルメチルセルロース架橋体により形成されている、コアシェル粒子分散液を得た。
得られたコアシェル粒子を、純水を用いて繰り返して洗浄し、真空乾燥してヘプタンを揮発させて、ポリマー微粒子を得た。
【0053】
(比較例2)
油溶性溶剤としてのヘプタン100重量部を多孔質膜に通して、乳化剤と水とを含有する連続層に分散させ、乳化液を作製した。
得られた乳化液を撹拌しながら、水溶性ポリマーとしてゼラチン水溶液を、ゼラチンの添加量が油溶性溶剤100重量部に対して5重量部となるように滴下した。80℃に加熱した後に、アルギン酸ナトリウム水溶液を、アルギン酸ナトリウムの添加量が油溶性溶剤100重量部に対して0.5重量部となるように滴下し、5時間反応させることにより、コアがヘプタン、シェルがゼラチン架橋体により形成されている、コアシェル粒子分散液を得た。
得られたコアシェル粒子を、純水を用いて繰り返して洗浄し、真空乾燥してヘプタンを揮発させて、ポリマー微粒子を得た。
【0054】
(評価)
実施例1〜5、比較例1、2で得られたポリマー微粒子について、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0055】
(1)外径の測定
得られたポリマー微粒子を、走査型電子顕微鏡により、1視野に約100個が観察できる倍率で観察し、任意に選択した50個の微粒子についてノギスを用いて最長径を測定し、この値の数平均値と変動係数を求め、これらを平均外径、外径Cv値とした。
【0056】
(2)内径の測定及び単孔性の評価
得られたポリマー微粒子を、エポキシ樹脂に包埋した後、樹脂を硬化させ、マイクロトームで断面切片を切り出した。得られた切片を走査型電子顕微鏡により、1視野に約100個の断面が観察できる倍率で観察した。
単孔性について、任意に選択した50個の微粒子の断面を観察して、単一の孔が存在する粒子の数が49個以上であった場合を「◎」、45〜48個であった場合を「○」、40〜44個であった場合を「△」、39個以下であった場合を「×」と評価した。
また、任意に選択した50個の微粒子の断面について、ノギスを用いて単一の孔の最長径を計測し、この値の数平均値と変動係数を求め、これらを平均内径、内径Cv値とした。なお、平均内径、内径Cv値は、単一の孔が存在する粒子について算出した。
【0057】
【表1】

【0058】
(実施例6)
スチレン100重量部、過硫酸カリウム3重量部、n―オクチルメルカプタン25重量部、水2500重量部を混合し、攪拌しながら70℃で24時間反応させて、体積平均粒子径0.5μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
【0059】
油溶性溶剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)100重量部及びトルエン100重量部を均一に溶解した混合液に、乳化剤としてラウリル硫酸トリエタノールアミン2重量部と水900重量部とを加えて混合し、乳化液を調製した。
【0060】
得られた種粒子分散液に、ポリスチレン粒子重量の200倍の油溶性溶剤となるように乳化液を加えて混合し、24時間撹拌して、油溶性溶剤を吸収した種粒子の膨潤粒子液滴の分散液を得た。
得られた膨潤粒子液滴の分散液を撹拌しながら、水溶性ポリマーとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースの水溶液を、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの添加量が油溶性溶剤100重量部に対して5重量部となるように滴下して混合液を調製した。
得られた混合液を80℃に昇温させた後、タンニン酸水溶液を、タンニン酸の添加量が油溶性溶剤100重量部に対して0.5重量部となるように滴下し、5時間反応させることにより、コアがトルエン/2−エチル−4−メチルイミダゾール、シェルがヒドロキシプロピルメチルセルロース架橋体により形成されている、コアシェル粒子分散液を得た。
得られたコアシェル粒子を、純水を用いて繰り返して洗浄し、真空乾燥してトルエンを揮発させてポリマー微粒子を得た。
【0061】
(実施例7)
油溶性溶剤としての2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)100重量部に代えて、2−メチルイミダゾール(2MZ)100重量部を用いた以外は、実施例6と同様にしてポリマー微粒子を得た。
【0062】
(実施例8)
過硫酸カリウムを5重量部とした以外は実施例6と同様にして、体積平均粒子径0.2μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
この種粒子分散液に、乳化液の添加量をポリスチレン粒子重量の20倍の油溶性溶剤となるように添加した以外は、実施例6と同様にしてポリマー微粒子を得た。
【0063】
(実施例9)
過硫酸カリウムを0.5重量部とした以外は実施例6と同様にして、体積平均粒子径2.0μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
この種粒子分散液に、乳化液の添加量をポリスチレン粒子重量の125倍の油溶性溶剤となるように添加した以外は、実施例6と同様にしてポリマー微粒子を得た。
【0064】
(実施例10)
過硫酸カリウムを0.5重量部とし、更に、塩化ナトリウム0.1重量部を添加した以外は実施例6と同様にして、体積平均粒子径5.0μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
この種粒子分散液に、乳化液の添加量をポリスチレン粒子重量の125倍の油溶性溶剤となるように添加した以外は、実施例6と同様にしてポリマー微粒子を得た。
【0065】
(比較例3)
メタクリル酸2重量部、アクリロニトリル8重量部及び2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1重量部を含有するイソプロピルアルコール溶液400重量部に、あらかじめ平均粒子径5μmに微粉砕した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール90重量部を分散させた。この分散液を、窒素雰囲気下、50℃で3時間反応させることにより、コアが1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、シェルがメタクリル酸/アクリロニトリル共重合体により形成されている、コアシェル粒子分散液を得た。その後、得られた分散液を濾過してポリマー微粒子を得た。
【0066】
(比較例4)
温度計、還流冷却器及びテフロン(登録商標)製半月型攪拌装置を備えた内容積1000mLの三ツ口丸底フラスコに、2−メチルイミダゾール(2MZ)28.0g及びアクリルポリマー(東亞合成社製「レゼダGP−300」)4.99gを仕込み、次いで、メチルイソブチルケトン(MIBK)593.95gを加え、温度を70℃に上げて完全に溶解した。次いで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「エピコート828」)の50重量%MIBK溶液143.74gを加えて混合し、混合物を300rpmの速度で攪拌しながら70℃で10時間反応させ、反応率をほぼ100%まで到達させることにより、コアが2−メチルイミダゾール(2MZ)、シェルがアクリルポリマーにより形成されている、コアシェル粒子分散液を得た。その後、得られた分散液を濾過してポリマー微粒子を得た。
【0067】
(比較例5)
油溶性溶剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)100重量部及びトルエン100重量部を均一に溶解した混合液に、乳化剤としてラウリル硫酸トリエタノールアミン2重量部と水900重量部とを加えて混合し、乳化液を調製した。
【0068】
得られた乳化液を、水に加えた(種粒子を用いなかった)以外は、実施例6と同様にしてポリマー粒子を得た。
【0069】
(評価)
実施例6〜10、比較例3〜5で得られたポリマー微粒子について、以下の方法により評価を行った。結果を表2に示した。
【0070】
(1)外径の測定
得られたポリマー微粒子を、走査型電子顕微鏡により、1視野に約100個が観察できる倍率で観察し、任意に選択した50個の微粒子についてノギスを用いて最長径を測定し、この値の数平均値と変動係数を求め、これらを平均外径、外径Cv値とした。
【0071】
(2)内径の測定及び単孔性の評価
得られたポリマー微粒子を、エポキシ樹脂に包埋した後、樹脂を硬化させ、マイクロトームで断面切片を切り出した。得られた切片を走査型電子顕微鏡により、1視野に約100個の断面が観察できる倍率で観察した。
単孔性について、任意に選択した50個の微粒子の断面を観察して、単一の孔が存在する粒子の数が49個以上であった場合を「◎」、45〜48個であった場合を「○」、40〜44個であった場合を「△」、39個以下であった場合を「×」と評価した。
また、任意に選択した50個の微粒子の断面について、ノギスを用いて単一の孔の最長径を計測し、この値の数平均値と変動係数を求め、これらを平均内径、内径Cv値とした。なお、平均内径、内径Cv値は、単一の孔が存在する粒子について算出した。
【0072】
(3)貯蔵安定性評価
得られたポリマー微粒子10重量部と、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「JER828」)100重量部との混合物を、40℃で7日間放置した。放置後、混合物がゲル状態になっていない場合を「○」、ゲル状態になった場合を「×」と評価した。
【0073】
【表2】

【0074】
(実施例11)
スチレン100重量部、過硫酸カリウム3重量部、n―オクチルメルカプタン25重量部、水2500重量部を混合し、攪拌しながら70℃で24時間反応させて、体積平均粒子径0.5μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
油溶性溶剤としてのヘプタン100重量部に、乳化剤としてラウリル硫酸トリエタノールアミン2重量部と水900重量部とを加えて乳化し、乳化液を調製した。
得られた種粒子分散液に、ポリスチレン粒子重量の200倍の油溶性溶剤となるように乳化液を加え、24時間撹拌して、油溶性溶剤を吸収した種粒子の膨潤粒子液滴の分散液を得た。
【0075】
得られた膨潤粒子液滴の分散液を撹拌しながら、水溶性ポリマーとしてポリビニルアルコールの水溶液を、ポリビニルアルコールの添加量が油溶性溶剤100重量部に対して5重量部となるように滴下して混合液を調製した。
得られた混合液を80℃に加熱した後、1%ホルマリン水溶液を、ホルマリンの添加量が油溶性溶剤100重量部に対して0.5重量部となるように滴下し、1規定の塩酸を10重量部加えて5時間反応させることにより、コアがヘプタン、シェルがポリビニルアルコールにより形成されている、コアシェル粒子分散液を得た。
得られたコアシェル粒子を、純水を用いて繰り返して洗浄し、真空乾燥して、ポリマー微粒子を得た。
【0076】
(実施例12)
過硫酸カリウムを0.5重量部とした以外は実施例11と同様にして、体積平均粒子径2.0μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
この種粒子分散液に、乳化液の添加量をポリスチレン粒子重量の125倍の油溶性溶剤となるように添加した以外は、実施例11と同様にしてポリマー微粒子を得た。
【0077】
(実施例13)
過硫酸カリウムを0.5重量部とし、更に、塩化ナトリウム0.1重量部を添加した以外は実施例11と同様にして、体積平均粒子径5.0μm、Cv値15%、かつ、球状の非架橋のポリスチレン粒子が1.5重量%の濃度で水に分散された種粒子分散液を調製した。
この種粒子分散液に、乳化液の添加量をポリスチレン粒子重量の125倍の油溶性溶剤となるように添加した以外は、実施例11と同様にしてポリマー微粒子を得た。
【0078】
(比較例6)
油溶性溶剤としてのヘプタン100重量部を多孔質膜に通して、乳化剤と水とを含有する連続層に分散させ、乳化液を作製した。
得られた乳化液を撹拌しながら、水溶性ポリマーとしてポリビニルアルコール水溶液を、ポリビニルアルコールの添加量が油溶性溶剤100重量部に対して5重量部となるように滴下した。80℃に加熱した後に、1%ホルマリン水溶液を、ホルマリンの添加量が油溶性溶剤100重量部に対して0.5重量部となるように滴下し、1規定の塩酸を10重量部加えて5時間反応させることにより、コアがヘプタン、シェルがポリビニルアルコールにより形成されている、コアシェル粒子分散液を得た。
得られたコアシェル粒子を、純水を用いて繰り返して洗浄し、真空乾燥して、ポリマー微粒子を得た。
【0079】
(評価)
実施例11〜13、比較例6で得られたポリマー微粒子について、以下の方法により評価を行った。結果を表3に示した。
【0080】
(1)外径の測定
得られたポリマー微粒子を、走査型電子顕微鏡により、1視野に約100個が観察できる倍率で観察し、任意に選択した50個の微粒子についてノギスを用いて最長径を測定し、この値の数平均値と変動係数を求め、これらを平均外径、外径Cv値とした。
【0081】
(2)内径の測定及び単孔性の評価
得られたポリマー微粒子を、エポキシ樹脂に包埋した後、樹脂を硬化させ、マイクロトームで断面切片を切り出した。得られた切片を走査型電子顕微鏡により、1視野に約100個の断面が観察できる倍率で観察した。
単孔性について、任意に選択した50個の微粒子の断面を観察して、単一の孔が存在する粒子の数が49個以上であった場合を「◎」、45〜48個であった場合を「○」、40〜44個であった場合を「△」、39個以下であった場合を「×」と評価した。
また、任意に選択した50個の微粒子の断面について、ノギスを用いて単一の孔の最長径を計測し、この値の数平均値と変動係数を求め、これらを平均内径、内径Cv値とした。なお、平均内径、内径Cv値は、単一の孔が存在する粒子について算出した。
【0082】
(3)熱膨張性(発泡性)評価
得られたポリマー微粒子を約0.1g計量し、10mLのメスシリンダーに入れた。その後、150℃に加熱したオーブンに5分間投入し、メスシリンダー内で膨張した熱膨張性のポリマー微粒子の容積を測定した。容積が5mL以上である場合を「◎」、2mL以上5mL未満である場合を「○」、0.5mL以上2mL未満である場合を「△」、0.5mL未満である場合を「×」とした。
【0083】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、分級操作が必要なく、外径及び内径が極めて均一な単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を提供することができる。更に、本発明によれば、該単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を用いて製造される単孔中空ポリマー微粒子を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非架橋ポリマーを含有する種粒子を、水を含有する分散媒中に分散させた種粒子分散液と、油溶性溶剤とを混合し、前記種粒子に前記油溶性溶剤を吸収させて膨潤粒子液滴の分散液を調製する工程と、
前記膨潤粒子液滴の分散液と、水溶性ポリマーを含有する水溶液とを混合して混合液を調製する工程と、
前記混合液の前記水溶性ポリマーの溶解度を低下させる操作を行うことにより、前記膨潤粒子液滴の表面に前記水溶性ポリマーを析出させる工程とを有する
ことを特徴とする単孔中空ポリマー微粒子の製造方法。
【請求項2】
油溶性溶剤を、水を含有する分散媒中に分散させた乳化液と、種粒子分散液とを混合することを特徴とする請求項1記載の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法。
【請求項3】
種粒子は、粒子径のCv値が30%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法。
【請求項4】
油溶性溶剤は、硬化剤又は硬化促進剤であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法。
【請求項5】
水溶性ポリマーは、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の単孔中空ポリマー微粒子の製造方法を用いて製造されることを特徴とする単孔中空ポリマー微粒子。
【請求項7】
平均外径が0.1〜100μmであり、かつ、外径のCv値が10%以下であることを特徴とする請求項6記載の単孔中空ポリマー微粒子。
【請求項8】
内径のCv値が10%以下であることを特徴とする請求項6又は7記載の単孔中空ポリマー微粒子。
【請求項9】
熱膨張性であることを特徴とする請求項6、7又は8記載の単孔中空ポリマー微粒子。

【公開番号】特開2010−185065(P2010−185065A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156995(P2009−156995)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】