説明

単層及び多層カーボンナノチューブの混合構造体

本発明は、単層及び多層カーボンナノチューブの双方を含むカーボンナノチューブ構造体、並びに該構造体を調製するための方法に関する。これらのカーボンナノチューブ構造体には、限定はされないが、集合体、マット、プラグ、網状体、剛性多孔質構造体、押出し体など、カーボンナノチューブの肉眼で見える二次元及び三次元構造体が含まれる。本発明のカーボンナノチューブ構造体は、限定はされないが、濾過、吸着、クロマトグラフィーのための多孔質媒体;スーパーキャパシター、バッテリー及び燃料電池のための電極及び電流コレクター;触媒担体(電気触媒作用を含む)などを含む多様な用途を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書の記載の一部とする、2005年11月16日に出願の米国特許仮出願第60/737826号に基づく利益及び優先権を主張する。
【0002】
本発明は、単層及び多層カーボンナノチューブの双方を含むカーボンナノチューブ構造体、並びに該構造体を調製するための方法に関する。これらのカーボンナノチューブ構造体には、限定はされないが、集合体、マット、プラグ、網状体、剛性多孔質構造体、押出し体などの、カーボンナノチューブの肉眼で見える二次元及び三次元構造体が含まれる。本発明のカーボンナノチューブ構造体は、限定はされないが、濾過、吸着、クロマトグラフィーのための多孔質媒体;スーパーキャパシター、バッテリー及び燃料電池のための電極及び電流コレクター;触媒担体(電気触媒作用を含む)などを含む多様な用途を有する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
カーボンナノチューブ
本発明は、一般にはナノチューブと呼ばれるミクロン未満のグラファイト型炭素フィブリルの分野に位置する。炭素フィブリルは、1.0μ未満、好ましくは0.5μ未満、さらにより好ましくは0.2μ未満の直径を有するバーミキュラー型炭素堆積物である。カーボンナノチューブは、多層(すなわち、ナノチューブの軸にほぼ平行な1つを超えるグラフェン層を有する)又は単層(すなわち、ナノチューブの軸にほぼ平行なたった1つのグラフェン層を有する)のいずれかとすることができる。他のタイプのカーボンナノチューブについても後に説明する。
【0004】
本出願で教示するように処理することのできるカーボンナノチューブは、市販の連続炭素繊維と区別できる。少なくとも10、多くの場合10又はそれ以上のアスペクト比(L/D)を有するこれらの繊維とは対照的に、炭素フィブリルは、大きなアスペクト比が望ましいが、不可避的に有限のアスペクト比を有する。また、連続繊維の直径は、フィブリルの直径よりもはるかに大きく、常に1.0μより大きく、典型的には5〜7μである。
【0005】
カーボンナノチューブは、強化材料として市販されている連続炭素繊維、及び標準的なグラファイト及びカーボンブラックのような他の形態の炭素とは物理的及び化学的に異なる。標準的なグラファイトは、その構造ゆえに、ほとんど完全な飽和状態まで酸化される場合がある。さらに、カーボンブラックは、無秩序な核の周りにグラフェン構造体、炭素層を有する一般には球状粒子の形態の無定形炭素である。これらの相違のため、グラファイト及びカーボンブラックから、カーボンナノチューブの化学を予測することは困難である。
【0006】
カーボンナノチューブは、種々の形態で存在し、金属表面での各種の炭素含有気体の接触分解により調製されている。このようなバーミキュラー型炭素堆積物は、電子顕微鏡の出現直後から観察されてきた(Baker and Harris,Chemistry and Physics of Carbon,Walker and Thrower ed.,Vol.14,1978,p.83;Rodriguez,N.,J.Mater.Research,Vol.8,p.3233(1993))。
【0007】
1976年に、Endoらは、このような炭素フィブリルが成長する基本的メカニズムを解明した(参照により本明細書の記載の一部とする、Oberlin,A.and Endo,M.,J.of Crystal Growth,Vol.32(1976),pp.335〜349を参照されたい)。炭素フィブリルは、炭化水素含有ガスの存在下に炭素中で過飽和になる金属触媒粒子から始まることがわかった。円筒状の規則正しいグラファイトのコアが押出され、このコアは、Endoらによれば、熱分解で堆積されるグラファイトの外側層で直ちに被覆される。熱分解による外側被覆(overcoat)を有するこれらのフィブリルは、典型的には、0.1μを超える、より典型的には0.2〜0.5ミクロンの直径を有する。
【0008】
1983年に、Tennentは、参照により本明細書の記載の一部とする米国特許第4663230号に、熱で生じる連続した炭素の外側被覆を含まず、フィブリルの軸に実質上平行である複数のグラファイトの外側層を有する炭素フィブリルを記載している。かくして、それらの炭素フィブリルは、それらのc−軸、すなわち、グラファイトの湾曲層の接平面に垂直であり、それらの円筒軸に実質上垂直である軸を有するとして特徴付けることができる。それらの炭素フィブリルは、一般に、0.1μを超えない直径、及び少なくとも5の長さ/直径比を有する。望ましくは、それらは、熱で生じる連続した炭素の外側被覆、すなわち、フィブリルを調製するのに使用されるガス供給物の熱分解に由来する熱分解で堆積した炭素を実質上含まない。したがって、Tennentの発明は、より小さな直径、典型的には35Å〜700Å(0.0035μ〜0.070μ)のフィブリルの、及び規則正しい「成長したままの(as grown)」グラファイト表面の入手手段を提供した。構造の完全性はより低いが、やはり熱分解による炭素外側層を持たない繊維状炭素も成長した。
【0009】
Tennentらは、参照により本明細書の記載の一部とする米国特許第5171560号に、熱で生じる外側被覆を含まず、フィブリルの軸に対するグラファイト層の投影がフィブリル直径の少なくとも2倍の距離に及ぶようにフィブリルの軸に実質上平行であるグラファイト層を有する炭素フィブリルを発表している。典型的には、このようなフィブリルは、実質的には、実質上一定の直径を持つ円筒形のグラファイトナノチューブであり、そのc−軸が円筒形の軸に実質上垂直である円筒形のグラファイトシートを含む。それらは、熱分解で堆積する炭素を実質上含まず、0.1μ未満の直径、及び5を超える長さ/直径比を有する。これらのフィブリルは、本発明の方法で酸化することができる。
【0010】
ナノチューブ軸上へのグラファイト層の投影が、ナノチューブ直径の2倍の距離に及ばない場合、グラファイトナノチューブの炭素平面は、断面でニシン骨の外観を帯びる。これらは、フィッシュボーン型フィブリルと呼ばれる。Geusは、参照により本明細書の記載の一部とする米国特許第4855091号で、熱分解による外側被覆を実質的に含まないフィッシュボーン型フィブリルを調製するための方法を提供している。これらのカーボンナノチューブも、本発明の実施に際して有用である。
【0011】
触媒で成長した上記のフィブリルに類似した形態(morphology)をもつカーボンナノチューブは、高温炭素アーク中で成長させていた(Iijima,Nature 354,56,1991)。これらのアークで成長したナノ繊維は、Tennentの触媒で成長した初期のフィブリルと同様の形態を有することが今日では一般に認められている(双方とも参照により本明細書に引用される、Weaver,Science 265,1994;de Heer,Walt A.,「ナノチューブ及びその応用(Nanotubes and the Pursuit of Applications)」MRS Bulletin,April,2004)。口語的に「バッキーチューブ」と呼ばれることの多いアークで成長した炭素ナノ繊維も、本発明で有用である。
【0012】
有用な単層カーボンナノチューブ及びそれらの作製方法は、例えば、S Iijima及びT Ichihashiの論文「直径1nmの単一殻カーボンナノチューブ(Single−shell carbon nanotubes of 1−nm diameter)」Nature,vol.363,p.603(1993)、及びD S Bethune、C H Kiang、M S DeVries、G Gorman、R Savoy及びR Beyersの論文「単原子層の壁を有するカーボンナノチューブのコバルトで触媒される成長(Cobalt−catalysed growth of carbon nanotubes with single−atomic−layer walls)」Nature,vol.363,p.605(1993)中に開示されており、双方の論文とも、参照により本明細書に引用される。
【0013】
単層カーボンナノチューブは、その内容が参照により本明細書の記載の一部とされる、Moyらの米国特許第6221330号にも開示されている。Moyは、まず、それぞれ1〜6個の炭素原子及びヘテロ原子としてH、O、N、S又はClのみを有し、任意選択で水素と混合された1種以上のガス状炭素化合物を含む気相混合炭素供給原料ガス、並びに分解のための反応条件下で不安定であり、且つ該反応条件下で分解触媒として作用する金属含有触媒を形成する気相金属含有化合物を形成すること、次いで、分解反応の条件下で前記分解反応を実施して前記ナノチューブを製造することによる、1種以上のガス状炭素化合物の接触分解によって中空の単層カーボンナノチューブを製造する方法を開示した。本発明は、気相金属含有化合物をやはりガス状の炭素源を含む反応混合物中に導入する気相反応に関する。炭素源は、典型的には、ヘテロ原子としてH、O、N、S又はClを有し、任意選択で水素と混合されたC〜C化合物である。一酸化炭素、又は一酸化炭素と水素が好ましい炭素原料である。約400℃〜1300℃の高められた反応帯温度及び約0〜約100psigの圧力が、気相金属含有化合物の金属含有触媒への分解を生じさせると思われる。分解は、原子状金属又は部分的に分解された中間種に向かうものとすることができる。金属含有触媒は、(1)COの分解を触媒し、(2)SWNTの形成を触媒する。
【0014】
米国特許第6221330号の発明は、いくつかの実施形態において、金属含有触媒のエアゾールを反応混合物中に導入するエアゾール技術を採用できる。SWNTを製造するためのエアゾール法の利点は、均一な大きさの触媒粒子を生成させること、及び効率的で連続的な商業的又は工業的製造に向けてこのような方法を調整することが可能であることである。以前に考察した電気アーク放電及びレーザー堆積法を、このような商業的又は工業的製造に向けてスケールアップするのは経済的でない。本発明で有用な金属含有化合物の例には、金属カルボニル、金属アセチルアセトナート、及び分解して非担持の金属触媒を形成する蒸気として分解条件下に導入できるその他の材料が含まれる。触媒として活性な金属には、Fe、Co、Mn、Ni及びMoが含まれる。モリブデンカルボニル及び鉄カルボニルは、反応条件下で分解して気相触媒を形成できる好ましい金属含有化合物である。これらの金属カルボニルの固体形態は、前処理帯に送達され、そこで、気化し、それによって気相触媒前駆体になる。非担持の触媒上にSWNTを形成するために2つの方法を採用できることが見出された。
【0015】
第1の方法は、揮発性触媒の直接注入である。揮発性触媒前駆体の直接注入は、モリブデンヘキサカルボニル[Mo(CO)]及び二コバルトオクタカルボニル[Co(CO)]触媒を使用してSWNTを形成する結果になることが見出された。双方の材料とも、室温で固体であるが、周囲温度又は周囲温度に近い温度では昇華する。すなわちモリブデン化合物は、少なくとも150℃まで熱的に安定であり、コバルト化合物は、分解を伴って昇華する(「Organic Syntheses via Metal Carbonyls」Vol.1,I.Wender and P.Pino,eds.,InterScience Publishers,New York,1968,p.40)。
【0016】
米国特許第6221330号に記載の第2の方法は、気化器を使用して金属含有化合物を導入する(米国特許第6221330号中の図1を参照されたい)。該発明の好ましい一実施形態において、米国特許第6221330号の図2に示された気化器10は、その底から約1インチの箇所に第2の区画を形成するためのシール24を有する石英サーモウェルを備えている。この第2区画は、1/4インチの2つの穴26を有し、その穴は、開けたままであり、反応ガスに曝露される。触媒を、この区画中に入れ、次いで、気化器の炉32を使用して任意の所望温度で気化させる。この炉は、第1熱電対22を使用して制御される。金属含有化合物(好ましくは金属カルボニル)は、その分解点未満の温度で気化され、反応ガスであるCO又はCO/Hが、前駆体を、反応帯の炉38及び第2熱電対42で別個に制御される反応帯34中に押し流す。本出願人らは、実施可能性に関する特定の理論に制約されることを望むものではないが、その反応器温度で、金属含有化合物は、部分的に中間体種まで、又は完全に金属原子まで分解されると考えられる。これらの中間体種及び/又は金属原子は、より大きな実際の触媒である凝集粒子に合着する。粒子は、次いで、適正な大きさに成長し、COの分解を触媒し、且つSWNTの成長を促進する。米国特許第6221330号の図1の装置で、触媒粒子及び生じる炭素の諸形態物は、石英綿のプラグ36上に捕集される。粒子の成長速度は、気相の金属含有中間体種の濃度で決まる。この濃度は、気化器中の蒸気圧(及び、それゆえ温度)によって決められる。濃度があまりにも高い場合には、粒子成長が速すぎて、SWNT以外の構造体(例えば、MWNT、無定形炭素、オニオン型など)が成長する。米国特許第6221330号のすべての内容を、その中に記載の例を含めて、参照により本明細書の記載の一部とする。
【0017】
参照により本明細書の記載の一部とする、Bethuneらの米国特許第5424054号には、炭素蒸気をコバルト触媒と接触させて単層カーボンナノチューブを製造する方法が記載されている。炭素蒸気は、固体炭素の電気アーク加熱によって作られ、固体炭素は、無定形炭素、グラファイト、活性若しくは脱色炭、又はこれらの混合物とすることができる。炭素加熱の他の方法としては、例えば、レーザー加熱、電子ビーム加熱、及びRF誘導加熱が検討されている。
【0018】
参照により本明細書の記載の一部とするSmalleyの論文(Guo,T.,Nikoleev,P.,Thess,A.,Colbert,D.T.and Smally,R.E.,Chem.Phys.Lett.243:1〜12(1995))には、グラファイト棒及び遷移金属を高温レーザーで同時に気化させる、単層カーボンナノチューブの製造方法が記載されている。
【0019】
参照により本明細書の記載の一部とするSmalleyの論文(Thess,A.,Lee,R.、Nikolaev,P.,Dai,H.,Petit,P.、Robert,J.,Xu,C.,Lee,Y.H.,Kim,S.G.,Rinzler,A.G.,Colbert,D.T.,Scuseria,G.E.,Tonarek,D.,Fischer、J.E.and Smalley,R.E.,Science,273:483〜487(1996))には、少量の遷移金属を含むグラファイト棒を、オーブン中、約1200℃でレーザー気化させる単層カーボンナノチューブの製造方法も記載されている。単層ナノチューブが70%を超える収率で製造されることが報告されている。
【0020】
SWNTを形成するための担持された金属触媒も知られている。参照により本明細書の記載の一部とするSmalleyの論文(Dai,H.,Rinzler,A.G.,Nikolaev,P.,Thess,A.,Colbert,D.T.and Smalley,R.E.,Chem.Phys.Lett.,260:471〜475(1996))には、COから多層ナノチューブ及び単層ナノチューブの双方を成長させるための担持されたCo、Ni及びMo触媒、及びそれらの形成に関して提案された機構が記載されている。
【0021】
参照により本明細書の記載の一部とするSmalleyらの米国特許第6761870号(国際公開第00/26138号でもある)には、予熱(例えば、約1000℃まで)された高圧(例えば、30気圧)CO、及び触媒前駆体の分解温度未満に保たれたCO中の触媒前駆体ガス(例えば、Fe(CO))を混合帯に供給する方法が開示されている。この混合帯中で、触媒前駆体は、(1)前駆体の分解、(2)活性触媒金属原子の適切な大きさのクラスターの形成、及び(3)触媒クラスター表面でのSWNTの好都合な成長をもたらすことが報告されている温度まで急速に加熱される。
【0022】
カーボンナノチューブの他の製造方法が、その双方とも参照により本明細書の記載の一部とする、Resascoらの論文、「二元金属Co−Mo触媒上でのCOの接触分解による単層カーボンナノチューブの制御された製造(Controlled production of single−wall carbon nanotubes by catalytic decomposition of CO on bimetallic Co−Mo catalysts)」Chemical Physics Letters,317(2000)497〜503、及びResascoらの米国特許第6333016号に開示されている。そこでは、カーボンナノチューブは、炭素含有ガスを金属触媒粒子と接触させることによって製造される。
【0023】
単層カーボンナノチューブのさらなる製造方法が、2005年11月16日に出願のZhangらの米国特許出願第11/281571号「単層カーボンナノチューブの製造方法(Methods For Producing Single Walled Carbon Nanotubes)」、及びその親出願、2004年11月24日に出願の米国特許仮出願第60/630946号、2004年11月24日に出願の米国特許仮出願第60/630781号、2004年11月16日に出願の米国特許仮出願第60/628498号に開示されている。これらの参考文献のすべてを参照によりその全体を本明細書の記載の一部とする。
【0024】
カーボンナノチューブの凝集体及び集合体
製造される場合、カーボンナノチューブは、離散したナノチューブ、ナノチューブの凝集体、又はその双方の形態とすることができる。
【0025】
ナノチューブは、互いにランダムに絡み合って鳥の巣(「BN」)に似た、ナノチューブの絡み合った球を形成する各種の形態(走差電子顕微鏡法で測定されるような)を有する凝集体として、実質上同じ相対的配向を有する直線から僅かに曲がった若しくはよじれたカーボンナノチューブの束からなり、且つコーマ糸(「CY」)の外観(例えば、各ナノチューブの縦軸が、個々の曲がり又はよじれにも拘わらず、束中の周囲にあるナノチューブの方向と同一方向に伸びる)を有する凝集体として、或いは互いにゆるく絡み合って「オープンネット(open net)」(「ON」)状構造体を形成する凝集体として調製される。オープンネット状構造体において、ナノチューブの絡み度は、コーマ糸状凝集体(そこでは、個々のナノチューブが実質上同一の相対的配向を有する)の絡み度を超えるが、鳥の巣の絡み度よりも小さい。他の有用な凝集構造体には、綿菓子(「CC」)状構造体が含まれる。
【0026】
凝集体の形態は、触媒担体を選択することによって制御される。球状担体は、ナノチューブをすべての方向に成長させ、鳥の巣状凝集体の形成に導く。コーマ糸状及びオープンネット状凝集体は、1つ以上の容易に開裂できる平面を有する担体、例えば、1つ以上の容易に開裂できる表面及び1グラムあたり少なくとも1平方メートルの表面積を有する担体材料上に堆積した鉄又は鉄含有金属触媒粒子を使用して調製される。参照により本明細書の記載の一部とする、「炭素フィブリルを製造するための改良された方法及び触媒(Improved Methods and Catalysts for the Manufacture of Carbon Fibrils)」と題する1995年6月6日に出願のMoyらの米国特許第6143689号には、種々の形態(走差電子顕微鏡法で測定されるような)を有する凝集体として調製されたナノチューブが記載されている。
【0027】
カーボンナノチューブ凝集体の形成に関するさらなる詳細が、本発明と同様の譲受人にすべて譲渡され、且つ参照により本明細書の記載の一部とする、Tennentの米国特許第5165909号;Moyらの米国特許第5456897号;1991年5月1日に出願のSnyderらの米国特許第5707916号;1989年1月28日に出願のPCT出願第US89/00322号(「炭素フィブリル」)、国際公開第WO89/07163号;1994年8月2日に出願のMoyらの米国特許第5456897号;1990年9月27日に出願のPCT出願第US90/05498号(「バッテリー」)、国際公開第WO91/05089号;1995年6月7日に出願のMandevilleらの米国特許第5500200号;1994年;及び1994年10月11日に出願のMoyらによる米国特許第5569635号の開示中に見出される。
【0028】
カーボンナノチューブ構造体
カーボンナノチューブ構造体には、集合体、マット、プラグ、網状体、剛性多孔質構造体、押出し体などが含まれる。
【0029】
集合体は、三次元集合体の一次元軸、好ましくは二次元軸、最も好ましくは三次元軸に沿って比較的均一な特性を有するカーボンナノチューブ構造体である(例えば、参照により本明細書の記載の一部とする米国特許第5691054号)。二次元的に均一な集合体は、マットの形状をとる。三次元的に均一な集合体は、形成されて典型的にはプラグと呼ばれる容器の形状を取ることができる。多層カーボンナノチューブマットは、0.02mm〜0.50mmの厚さ、及び約0.20g/ccの密度を有することができる。一般に、集合体は、カーボンナノチューブ凝集体の構造をばらばらにし、次いでそれらを再集合させて集合体を形成することによって形成される。多層カーボンナノチューブ集合体は、0.001g/cc〜0.50g/ccの嵩密度、及び約0.02mmを超える少なくとも2つの次元を有することができる。集合体は、0.2mmを超える少なくとも2つの次元を有することもできる。
【0030】
網状体は、官能化された個々のカーボンナノチューブを、カーボンナノチューブの表面に配置された該官能基の間を連結する分子を使用して一緒に連結することによって形成される(参照により本明細書の記載の一部とする、例えば、PCT/US97/03553号又は国際公開第WO97/32571号)。一般に、マット状又はプラグ状網状体は、対応する集合体よりも低い密度を有することができるが、なお0.001g/cc〜0.50g/ccの範囲内にある。
【0031】
剛性多孔質構造体は、官能化された個々のカーボンナノチューブを、連結分子を使用しないで一緒に連結して集合体にすること、又はカーボンナノチューブ凝集構造体を接着剤で一緒に接着することによって形成される(参照により本明細書の記載の一部とする、例えば、米国特許第6099965号)。多層カーボンナノチューブの剛性多孔質構造体は、約100m/gを超える表面積を有することができ、ミクロ孔を実質上含まず、約2lb/inを超える破砕強度を有することができる。剛性多孔質構造体は、200m/gを超える表面積さえ有することができる。多層カーボンナノチューブの剛性多孔質構造体は、0.8g/cmを超える密度を有することができる。
【0032】
単層カーボンナノチューブは、典型的には、ほとんどの多層カーボンナノチューブよりも小さな直径を有する。したがって、単層カーボンナノチューブから創りだされる構造体(「単層カーボンナノチューブ構造体」)は、多層カーボンナノチューブから創りだされる構造体(「多層カーボンナノチューブ構造体」)よりも、かなり大きな比表面積(m/g)及び低い密度を有する。表面積は、本出願中で列挙されるような、カーボンナノチューブ構造体を使用する多くの応用に関して決定的に重要な性能パラメーターである。
【0033】
さらに、単層カーボンナノチューブ構造体は、多層カーボンナノチューブ構造体よりも小さな有効細孔径を有することができる。より小さな有効細孔径を有することは、多くの応用において有益であるが、他の状況下で望ましくない場合がある。例えば、より小さな細孔は、より大きな比表面を有する触媒担体を生じさせる。逆に、より小さな細孔は、拡散を制限され且つ閉塞されやすい。したがって、より小さな細孔の利点は、他の事柄に対して釣り合いを取る必要がある。全多孔度、細孔径分布などのパラメーターは、有効細孔径の重要な資格因子になる。したがって、多層カーボンナノチューブの集合体、網状体、剛性多孔質構造体及び押出し体は、30m/g〜600m/gの比表面積を有し、一方、対応する単層カーボンナノチューブの集合体、網状体、剛性多孔質構造体及び押出し体は、1000m/g〜2500m/gの比表面積を有する。
【0034】
一般に、単層カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブよりも、より高価で且つ純度が低く、分散するのがより難しく、且つ官能化するのがより困難である。かくして、多層カーボンナノチューブは、調製するのがより容易である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
かくして、単層及び多層カーボンナノチューブの双方によって提供される利益を含むカーボンナノチューブに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0036】
発明の概要
本発明は、単層及び多層カーボンナノチューブの双方の混合物を含むカーボンナノチューブ構造体を提供する。
【0037】
これらのカーボンナノチューブ構造体には、限定はされないが、集合体、マット、プラグ、網状体、剛性多孔質構造体、押出し体などの、カーボンナノチューブの肉眼で見える二次元及び三次元構造体が含まれる。
【0038】
本発明のカーボンナノチューブ構造体は、限定はされないが、濾過、吸着、クロマトグラフィーのための多孔質媒体;スーパーキャパシター、バッテリー及び燃料電池のための電極及び電流コレクター;触媒担体(電気触媒作用を含む)などを含む多様な用途を有する。
【0039】
本発明は、単層及び多層カーボンナノチューブの双方の混合物を含むカーボンナノチューブ構造体を創り出すための新たな方法も提供する。
【0040】
本発明が従来技術を超えて提供するその他の改善は、本発明の好ましい実施形態を示す以下の説明の結果として確認される。該説明は、いかなる点でも、本発明の範囲を制約することを意味せず、むしろ単に本発明の好ましい実施形態の実行例を提供することを意図する。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲中で指摘される。
【0041】
発明の詳細な説明
定義
用語「ナノチューブ」、「ナノ繊維」及び「フィブリル」は、単層又は多層カーボンナノチューブを指すのに互換的に使用される。それぞれは、1μ未満(多層ナノチューブの場合)又は5nm未満(単層ナノチューブの場合)の断面(例えば、縁を有する角のある繊維)又は直径(例えば、丸い)を好ましくは有する伸長した構造体を指す。用語「ナノチューブ」には、「バッキ−チューブ」及びフィッシュボーンフィブリルも含まれる。
【0042】
「多層ナノチューブ」は、本明細書中で使用される場合、例えば、Tennentらの米国特許第5171560号に記載されているような、実質上一定な直径をもつ実質上円筒状のグラファイト型ナノチューブであり、そのc−軸が該円筒軸に対して実質上垂直である円筒状の複数のグラファイト型シート又は層を含むカーボンナノチューブを指す。
【0043】
「単層ナノチューブ」は、本明細書中で使用される場合、例えば、Moyらの米国特許第6221330号に記載されているような、実質上一定な直径をもつ実質上円筒状のグラファイト型ナノチューブであり、そのc−軸がそれらの円筒軸に対して実質上垂直であるただ1つの円筒状グラファイト型シート又は層を含むカーボンナノチューブを指す。単層カーボンナノチューブは、「SWT」又は「SWNT」と呼ぶこともできる。
【0044】
用語「官能基」は、それらが連結している化合物又は物質に、特有の化学的及び物理的特性を付与する原子群を指す。
【0045】
「官能化された」表面は、化学基が吸着された又は化学的に結合された炭素表面を指す。
【0046】
「グラフェン型」炭素は、その炭素原子が、本質的に平らな層を形成している六角形の縮合環の状態で3つの別の炭素原子にそれぞれ連結されている炭素の一形態である。その層は、直径方向がほんの少数の環からなる小板であるか、或いはそれらの層は、長さ方向が多くの環からなり、幅方向が少数の環からなるリボンであってよい。
【0047】
「グラファイト型」炭素は、本質的に互いに平行であり、その間隔が3.6オングストロームを超えない複数のグラフェン型層からなる。
【0048】
用語「凝集体」は、絡み合ったカーボンナノチューブを含む、密で顕微鏡でしか見えない粒子状構造体を指す。
【0049】
用語「ミクロ細孔」は、2ナノメートル未満の直径を有する細孔を指す。
【0050】
用語「メソ細孔」は、2ナノメートルを超え50ナノメートルに満たない横断面を有する細孔を指す。
【0051】
用語「表面積」は、BET技術で測定できる物質の全表面積を指す。
【0052】
用語「利用可能な表面積」は、ミクロ細孔(すなわち、2nm未満の直径又は横断面を有する細孔)に属さない表面積を指す。
【0053】
用語「等方性」は、構造体のある平面又は体積内での物理的特性の測定値が、すべて、測定方向に無関係であり、一定の値であることを意味する。このような中身の詰まっていない組成物の測定は、空隙空間の平均値を計算に入れるため、構造体の代表的サンプルについて行なうべきであることが理解される。
【0054】
「オゾンで処理された」カーボンナノチューブ、凝集体又は任意の他のカーボンナノチューブと対比して使用される場合の用語「未処理の」は、そのカーボンナノチューブ、凝集体、又は構造体が、オゾンで特に処理されていないことを意味する。この用語は、オゾン処理の前にオゾン処理ではない他の非オゾン処理を受けたカーボンナノチューブ、凝集物、又は構造体を排除しない。
【0055】
カーボンナノチューブ混合物を含む構造体
本発明は、従来のカーボンナノチューブ構造体の欠陥を、単層及び多層カーボンナノチューブの双方を含めることによって解決する。多層及び単層カーボンナノチューブの双方を含むカーボンナノチューブ構造体は、多層カーボンナノチューブに付随するかなりのマクロ細孔性を維持しながら、単層カーボンナノチューブに付随する大きな比表面積及び小さな有効細孔径を維持することができる。多層カーボンナノチューブは、また、より低い費用で得られ、且つカーボンナノチューブ構造体中に分散及び官能化することがより容易である。
【0056】
典型的な実施形態において、本発明のカーボンナノチューブ構造体は、構造の完全性及び物理的構造を提供するための多層カーボンナノチューブ、及び有効表面積を提供するための単層カーボンナノチューブを含む。これらの構造体は、2つの方式の細孔径分布を示すことができる。
【0057】
混合構造体は、0.001g/mL〜0.50g/mL、好ましくは0.05g/mL〜0.5g/mLの密度を有する。混合構造体は、300m/g〜1800m/g、好ましくは500m/g〜1000m/gの表面積を有する。
【0058】
カーボンナノチューブ構造体における多層カーボンナノチューブに対する単層カーボンナノチューブの比率は、重量で1/1000〜1000/1、1/100〜100/1、又は1/10〜10/1の範囲とすることができる。
【0059】
好ましくは、カーボンナノチューブ構造体における多層カーボンナノチューブに対する単層カーボンナノチューブの比率は、重量で1/1000〜100/1、又は1/10〜100/1の範囲とすることができる。さらに、カーボンナノチューブ構造体における多層カーボンナノチューブに対する単層カーボンナノチューブの比率は、さらに、重量で1/1000〜10/1、又は1/100〜10/1の範囲とすることができる。
【0060】
より好ましくは、カーボンナノチューブ構造体における多層カーボンナノチューブに対する単層カーボンナノチューブの比率は、重量で1/1000〜1/1、1/100〜1/1、又は1/10〜1/1の範囲である。或いは代わりに、カーボンナノチューブ構造体における多層カーボンナノチューブに対する単層カーボンナノチューブの比率は、重量で1/1〜1000/1、1/1〜100/1、又は1/1〜10/1の範囲とすることができる。
【0061】
カーボンナノチューブ構造体を調製するための方法
次の米国特許、すなわち、第6203814号、6099965号、6414836号を参照により本明細書の記載の一部とする。したがって、それらの特許中のすべて教示は、当明細書の一部とみなされる。同様に、2005年11月16日に同時に出願された次の米国出願、すなわち、「金属装填カーボンナノチューブからの担持された触媒を調製するための方法(Methods For Preparing Supported Catalysts From Metal Loaded Carbon Nanochubes)」と題する米国特許出願第11/281814号、「単層カーボンナノチューブからの触媒担体及び担持された触媒を調製するための方法(Method For Preparing Catalyst Supports And Supported Catalysts From Single Walled Carbon Nanotubes)」と題する米国特許出願第11/281575号、及び「単層カーボンナノチューブを調製するための方法(Method For Preparing Single Walled Carbon Nanotubes)」と題する米国特許出願第11/281571号を参照により本明細書の記載の一部とする。したがって、それらの出願のすべても、当明細書の一部とみなされる。
【0062】
典型的な実施形態において、カーボンナノチューブ構造体は、まず、単層カーボンナノチューブ凝集体を分散させる(すなわち、必要なら凝集体をばらばらにして個々のチューブにする)こと、次いで、多層カーボンナノチューブ(また、必要ならば、ばらばらにして個々のチューブにして)を添加して単層カーボンナノチューブと混合すること、次いで混合物からカーボンナノチューブ構造体を形成させることによって調製される。
【0063】
別の典型的な実施形態では、三次元相互貫入構造体が、分散された、多層ナノチューブで担持された触媒の表面での単層ナノチューブのin−situ成長を介して作製される。例えば、高度に分散された、カーボンナノチューブ上に担持された炭化Mo触媒が、参照により本明細書の記載の一部とする米国特許第6514897号に開示されている。次いで、Co触媒を、炭化Moナノ粒子の表面に堆積させて、高められた温度で炭素含有反応物に曝露された場合に単層カーボンナノチューブを成長させるのに有効な触媒を構築できる。一方、Fe、Co及びNiなどの金属を、多層ナノチューブを成長させる能力のある制御された大きさで、単層表面に堆積させることができる。
【0064】
別法として、多層ナノチューブを成長させる能力のある制御された大きさをもつFe、Co及びNiなどの金属を、単層カーボンナノチューブの表面に堆積させることができる。
【0065】
好都合には、多層カーボンナノチューブは、官能化され、官能化されたチューブの自己反応を介して構造体を形成する。好ましくは、多層及び単層カーボンナノチューブを、別々に製造し、別々に前処理した後に、混合された構造体を集めることができる。例えば、多層カーボンナノチューブを、架橋できるように事前酸化することができ、単層カーボンナノチューブに触媒又は触媒前駆体を事前装填した後に、担持された触媒構造体を集めることができる。
【0066】
さらに別の典型的な実施形態では、多層及び単層カーボンナノチューブの混合物を使用して、本発明のカーボンナノチューブ構造体を形成できる。例えば、多層カーボンナノチューブ及び単層カーボンナノチューブの混合物を、多層カーボンナノチューブに特異的な官能化試薬で処理することができる。単層及び多層カーボンナノチューブのこのような混合物は、触媒による成長によって同時的に形成できる。
【0067】
1つ1つにされた単層カーボンナノチューブは、分散後の再凝集を回避するため、一般には、界面活性剤を用いて安定化する必要がある。多層カーボンナノチューブは、このような再凝集を防止するのを助ける「遮断剤」として作用できる。次いで、混合されたチューブを、例えば、濾過又は押出しによって構造体中に集めることができる。続く熱処理は、多層カーボンナノチューブを架橋し、高度に特異的な表面を提供する構造体の内部に単層カーボンナノチューブを閉じ込める。
【0068】
単層カーボンナノチューブの分散は、ポリマー、界面活性剤、ミセル及びDNA中で実施できる。ポリマー中で、単層及び多層カーボンナノチューブは、2軸スクリュー混合機中での溶融過程中に生じる剪断力を介して分散できる。一方、ポリマー、界面活性剤又はミセル中で単層カーボンナノチューブの液状化工処理を実施した後に、官能化された多層チューブとブレンドして、高度分散を達成できる。単層カーボンナノチューブを、抽出し、生物学的過程中に分散させることができる。DNAで包まれた単層カーボンナノチューブは、極めて高い分散及び純度を提供し、事前に官能化された多層チューブ上に選択的に堆積させることができる。
【0069】
単層及び多層カーボンナノチューブの別々の及び一緒にした分散物の、官能化と組み合わせた及び官能化と無関係なすべての組合せが、想定され、本発明の範囲に包含される。典型的な実施形態において、図1は、剛性多孔質単層/多層カーボンナノチューブ構造体を調製するのに使用できる種々の方法の例示的概略図を提供する。
【0070】
さらに別の実施形態において、本発明のカーボンナノチューブ構造体は、まず、多層カーボンナノチューブから構造体を創り出すことによって調製され、次いで、その多孔性を利用して、例えば、単層カーボンナノチューブの分散物(適切には界面活性剤で安定化された)を多層カーボンナノチューブ構造体中を通して流すことによって単層カーボンナノチューブを捕捉する。デプスフィルターとして作用する多層カーボンナノチューブの多孔性は、単層カーボンナノチューブを捕捉して高度に特有な領域をもつ混合された構造体をもたらす。任意選択で、単層カーボンナノチューブを、官能化又は前処理した後に、多層カーボンナノチューブで捕捉できる。この実施形態では、結合剤を使用して非官能化多層カーボンナノチューブから多層カーボンナノチューブ構造体を容易に創り出すことができる。別法として、多層カーボンナノチューブに対して親和性を有する結合剤を使用することができ、多層カーボンナノチューブと単層カーボンナノチューブの混合物から混合された構造体が組み立てられる。
【実施例】
【0071】
(例1)
米国特許第6827919号に記載の方法で作られた5gの単層カーボンナノチューブ(SWNT)及び15gの「CC」型多層ナノチューブ(MWNT)を、実験室規模の2軸スクリュー押出し機中で80gのポリ塩化ビニルと共に250℃で混合し、続いて押し出す。すべてのポリマー内容物を除去するために、この複合材をγ−ブチロラクトンで蒸解することができ、生じた懸濁液を、濾過し、アルゴン中400℃で焼成して、25%の単層及び75%の多層ナノチューブを含む剛性多孔質ナノチューブを形成する。
【0072】
(例2)
0.1gの単層及び0.4gのCC型ナノチューブを100mLビーカーに入れる。次いで、この混合物に100gのイソプロパノールを添加する。次いで、この混合物を、プローブ式ソニケーターで、大部分が個別化されたナノチューブの安定な懸濁液を形成するまで4時間にわたり処理した。次いで、この懸濁液を濾過し、単層及び多層カーボンナノチューブの混合物(20/80)を有するナノチューブマットを形成することができる。
【0073】
(例3)
20gのカーボンナノチューブ(CC型)を1リットル丸底フラスコに入れ、フラスコに600mLの濃硝酸(63%)を添加し、温度を還流状態まで上昇させた。2時間反応させた後、系を室温まで冷却した。続いて、生成物を濾過中に中性となるまで脱イオン水で徹底的に洗浄した。湿りフィルターケーキ(サンプルA)をさらなる処理のために取って置く。
【0074】
(例4)
米国特許第6827919号に記載の方法で作製した2gの単層ナノチューブを、まず、20%HClで処理して、このような材料を作製する原因となる金属触媒のなんらかの残留物を除去する。処理済みの材料を、フィルター上で捕捉し、脱イオン水で濾液が中性pHになるまで徹底的に洗浄する。次いで、洗浄済みのナノチューブを、2リットルの1wt%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液に懸濁し、プローブ式ソニケーターを使用する高剪断に4時間さらして、大部分が個別化された単層ナノチューブを生じさせる。懸濁液(サンプルB)をさらなる処理のために取って置く。
【0075】
(例5)
酸化されたMWNT(サンプルA)を、脱イオン水に0.05wt%の濃度で再懸濁し、プローブ式ソニケーターを使用する高剪断に1時間さらして大部分が個別化された多層ナノチューブ(サンプルC)を生じさせる。
【0076】
別の容器中で、例4のサンプルBで記載したと同様のSWNT分散液を調製する。SWNTのこの分散液に酸化されたMWNTであるサンプルCを添加し、ワーリングブレンダ−で混合する。生じたスラリーを、さらに、プローブ式ソニケーターを使用する連続高剪断混合に1時間さらして、相互に貫入した単層及び多層ナノチューブの網状体を形成する。次いで、この混合物を、遠心分離、それに続く濾過によって総固形物が約5%となるまで濃縮する。フィルターケーキ中に生じたペースト様材料を、Retsch乳鉢粉砕機中で均一な粘稠度になるまでブレンドした後、それを、ストランドを形成する円形の隙間を備えたダイを通して押し出す。ストランドを、より短い長さに切断し、空気中200℃で一夜乾燥した後、アルゴン雰囲気中600℃で6時間焼成して、相互に貫入している単層及び多層ナノチューブを含む剛性粒子を生成させる。MWNTに対するSWNTの比率は、サンプルCに対するサンプルBの量で調節できる。
【0077】
(例6)
乾いた単層カーボンナノチューブを、ナノチューブの表面にカルボキシル、ヒドロキシル、カルボニル、及びラクトンなどの官能基をより効率的に生じさせる2004年10月22日に出願の米国特許仮出願第60/621132号に開示の方法を使用するオゾン処理にかける。オゾンは、250mg/時間の速度でオゾンを発生できる、カリフォルニア州サンルイスオビスポ、Del Industry社製の空気清浄機を介して発生させる。次いで、オゾンと空気との混合物(オゾン0.29%)を、1200mL/分の流速で、作ったままの乾燥単層ナノチューブを詰めた1インチ(外径)反応管内を通過させる。オゾン処理の前後でのナノチューブの重量を記録する。室温で3〜45時間反応させる。処理されたサンプル上の酸性基の相対量を、滴定により測定する。0.25gのサンプルを300mLの脱イオン水を入れたフラスコ中に入れ、スラリーを0.1N NaOHで滴定する。NaOHの消費量をmeq/gとして総表面酸性基の量に変換する。2meq/gの滴定濃度が得られた。
【0078】
(例7)
例6で作製したオゾン処理SWNTを例4に記載の方法を使用して個別化してサンプルDを得る。サンプルC及びDを使用して、SWNTとMWNTとの剛性多孔質構造体を例5に記載したようにして調製できる。
【0079】
(例8)
多層カーボンナノチューブで作られるナノチューブマットは、サンプルCを濾過し、続いてアルゴン中240℃で架橋することによって作製される。作ったままのマットは、単層カーボンナノチューブを捕集するための捕捉媒体として使用できる。例4からの分散された単層カーボンナノチューブサンプル(サンプルB)を、ブフナー漏斗上に敷いたマット上に注ぎ入れる。MWNTに対するSWNTの比率は、サンプルBの量及びマットの重量によって調節できる。
【0080】
(例9)
SWNT(サンプルB)及びMWNT(サンプルC)の双方の懸濁液が濾過漏斗に同時に添加されるように濾過装置を組み立てる。添加比率は、所望の値、例えば1/1又は5/1などのSWNTに対するMWNTの比率で調節される。次いで、濾過されたケーキを−78℃で凍結乾燥する。生じるフェルトは、均一に分布した単層及び多層ナノチューブを含むが、例5で作製した製品と較べると機械的強度が小さい。
【0081】
(例10)
代わりに、SWNT(サンプルB)及びMWNT(サンプルC)の懸濁液を濾過漏斗に逐次的に添加することを除けば、例9に記載したと同様の方法を適用する。
【0082】
(例11)
SWNT−MWNT及びSWNT−SWNT及びMWNT−MWNTの間の重なり合いは、カルボキシル、ヒドロキシルなどの表面の酸素化された基のアルゴンなどの不活性環境中での焼成によって実施される架橋を介して確立できる。焼成温度は、通常、240℃〜600℃の間で選択される。焼成された構造体は、単層ナノチューブの大きな表面積、例えば1000m/gを維持すると同時に、多層ナノチューブの剛性多孔質の性質を示す。別法として、ポリ塩化ビニル、アクリルポリマー、フェノール樹脂などの焼成で炭化可能なポリマーからの残留物に適用して、このような構造体を生じさせることもできる。
【0083】
(例12)
サンプルDを、さらに、希釈したエチレングリコール(エチレングリコール:脱イオンHOが容積で3:2)中でKPtClと共に120℃〜130℃での8時間の還流にさらし、単層ナノチューブ上にPt粒子を堆積させる。オゾンで処理された単層ナノチューブの10mgにつき、約1.5mgのKPtCl及び20mLの希釈したエチレングリコールを添加する。次いで、生成物(Ptを担持したSWNT束)を、冷却し、遠心分離し、数滴のHCl(懸濁液を不安定にするための非酸化性酸)で微酸性とした脱イオン水で洗浄する。最終材料の典型的な金属担持量は、SWNT上にPtが10wt%である(サンプルE)。次いで、サンプルEに脱イオン水を添加して均一な懸濁液を形成し、超音波処理の下、例5で作製されたサンプルCと混合する。最後に、得られる懸濁液を、ロータリーエバポレーターを使用して濃縮し、濾過し、120℃で乾燥し、アルゴン中500℃で焼成し、架橋により剛性多孔質構造体を形成する。最終生成物は、多層ナノチューブで形成された剛性多孔質構造体内に閉じ込めて1〜2nmのPt粒子を担持させた単層ナノチューブの小さな束から構成される。
【0084】
(例13)
例5から作製されたサンプルは、主として親水性の表面を有する多層ナノチューブ、及び主として疎水性の表面を有する単層ナノチューブを有する、相互に貫入した単層及び多層ナノチューブを含む。次いで、両親媒性ブロックコポリマーであるポリ(スチレン−ブロック−アクリル酸)(PS−b−PAA)を、双方のブロックを十分に溶媒和してミセルを形成しない溶媒であるジメチルホルムアミド中に溶解する。トルエンなどの第2溶媒を徐々に添加すると、溶液は、PSマトリックス内でPAA球の擬似六角形配列を有するミセルを形成する。PAA領域中のカルボン酸基を、イオン交換プロトコール中で利用して、Pdイオンを選択的に捕捉できる。PS−b−PAAミセルにPd(NO水溶液を、連続的に撹拌しながら6時間で添加して、十分なイオン交換を可能にする。次いで、金属を担持させたミセルを、例5から作製したと同様のものとブレンドする。濾過し、120℃で乾燥し、アルゴン中300℃で焼成した後、サンプルを、さらに、300℃のH中での還元に1時間さらす。生成物であるサンプルFは、剛性多孔質に作られた多層ナノチューブの内部にさらに閉じ込められた個体化された単層ナノチューブ上に好ましくは担持されたPd粒子を有する、触媒担持量が5%の触媒が50%の金属分散を示す。
【0085】
(例14)
Thomas Swan社から得たSWNTを用いて例1〜7を繰り返す。これらのSWNTは、担持された触媒から成長した精製済みのチューブであると思われる。上記と同様の結果が得られる。
【0086】
(例15)
硝酸Coと硝酸Mgとの共沈殿によりCo−Mo/MgO触媒を調製した。0.116gのCo(NO)・6HO及び2.175gのMg(NO・6HOを、100mLのビーカー中で23mLの脱イオン水に溶解した。Co/Mgのモル比は1/20とした。次いで、20gの0.1%ヘプタモリブデン酸アンモニウム溶液をCo(NOとMg(NOとの混合溶液中に添加し、その溶液を一定の撹拌下に保持した。次いで、約3gの30%NHOHを添加してCo及びMgを同時に沈殿させた。最後に、得られた懸濁液を濾過し、アセトンで洗浄し、空気中100℃で乾燥した。この時点で、約2.8%の概算Mo担持量が考えられた。次いで、この触媒10mgを1インチの石英反応管に入れた。200mL/分のアルゴン流下に、温度を700℃まで上昇させ、ガス流を600mL/分でエチレン/水素(1/4の比率)に切り替えた。ほんの1〜2分反応させた後、ガス流をアルゴンに戻し、系を室温まで冷却した。別の実験セットでは、反応直後に、温度を同時に800℃まで上昇させながら反応ガスを5分間アルゴンに切り替えた。続いて単層カーボンナノチューブを成長させるための試薬として一酸化炭素を使用した。COの流れは、500mL/分に調節した。15分後、COをアルゴンに替えることによって反応を停止した。
【0087】
透過電子顕微鏡を使用して生成物を調べ、代表的な画像を図2に示した。図2Aには、触媒を700℃でエチレン及び水素に短時間、例えば2分間曝露した後の生成物を示した。1nm〜1.5nmの金属ナノ粒子が、約10nmの直径を有する多層ナノチューブの表面に被覆されて観察された。図2Bには、空気にさらされないで、多層カーボンナノチューブ上に担持されたin−situで形成された金属ナノ粒子は、1nm〜1.5nmの単層カーボンナノチューブをさらに成長させることができることを示した。すなわち、図2Bには、2Aの直後にCOと800℃で15分間反応させた後の生成物を示した。これらのチューブは3〜5つのチューブを含む小さな束の形態であるか、或いは単一チューブとして個別化されている。
【0088】
したがって、多層カーボンナノチューブを作製するのに適した条件下で短時間反応させた後に、多層ナノチューブが、それらの表面に被覆された大きさが約1nmの金属ナノ粒子を有する三次元網状体を既に形成していることが観察された。続いて、単層ナノチューブの形成のための準備が整った条件下で炭素系反応物を接触させると、これらのin−situで生じた金属触媒ナノ粒子が、大部分が細い束(3〜4本のチューブ)の形態であるか個別化されている単層ナノチューブをさらに生じさせる。ナノチューブ混合物の組成は、2つの別個の反応の持続時間を変えることによって容易に調節できる。
【0089】
(例16)
SWNTを成長させる触媒は、ex−situでMWNT(CC型)上に事前に堆積させることもできる。カーボンナノチューブで担持されたMoO及びMoCナノ粒子は、米国特許第6514897号に記載の方法を使用して調製できる。これらの材料のサンプルは、初期C/Mo比を20として調製される。次いで、鉄、コバルト種又はこれらの組合せを、望ましい濃度をもつ金属硝酸塩水溶液を含浸させることによってこのサンプルに添加される。典型的な実験において、0.674gのFe(NO・9HO及び0.485gのCo(NO・6HOを5gのMoC/MWNTサンプルに添加し、続いて空気中250℃で焼成する。次いで、10gのこの触媒を1インチの石英反応管に入れる。次いで反応器をアルゴン流下に800℃まで急速に加熱する。次いで、ガス流を500mL/分のCOに切り替え、30分間反応させる。TEMによって、生成物は、多層ナノチューブ網状体の内部に相互に織り合わされた単層ナノチューブを有することがわかった。
【0090】
(例17)
例6からのオゾンで処理した20gのSWNT及び8gのγ−アルミナ(オキシドCとしてDegussa社から入手できる)及び100mLの脱イオン水からなるスラリーを、多首の250mLバッフル付きフラスコ中で、急速に撹拌しながら調製した。スラリーのpHを6.0に調節した。5mLの脱イオン水に溶解した0.52gのモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24・4HO]及び1.5gの41%硝酸鉄[Fe(NO]溶液(Fe9.5%)を混合することによって溶液Iを調製した。溶液I及び20wt%炭酸アンモニウム溶液(溶液II)を、pHを6.0±0.5に維持するために急速に撹拌しながら同時に添加した。pHは、溶液I及び溶液IIの相対的添加速度により調節した。Sigma Chemical社から入手できるシリコーン系消泡剤ANTIFORM289を5〜300ppm添加して沈殿中の発泡を抑えた。添加には約1時間を要し、添加後、生じたスラリーを、50番のWhatman濾紙を使用して真空で濾過した。フィルターケーキを、Waringブレンダ−中、総容積100mLの脱イオン水を用い、分割して中間速度で2分間再スラリー化することによって2回徹底的に洗浄し、次いで真空濾過した。フィルターケーキを、対流オーブン中、162℃で一夜乾燥した。サンプルを100メッシュまで粉砕し、生産性を試験した。
【0091】
50gの上記サンプルを、1インチ石英反応器中でさらに試験した。管型反応器を、アルゴン流中、680℃まで急速に加熱して反応器をパージした後、標準条件下で400及び200mL/分の流速の水素とエチレンとの混合物に切り替えた。反応器をその温度に約20分間維持した後、反応器をアルゴン中で冷却し、空にした。触媒を基準にした収率は7であり、鉄含有量を基準にした収率は140である。MWNTに対するSWNTの比率は約1/10である。
【0092】
採用した用語及び表現は、制約ではなく説明の用語として使用され、その一部として示され且つ説明される特徴の任意の等価体を排除するこのような用語又は表現の使用に意図はなく、様々な変更が本発明の範囲内で可能であることが認識される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】単層及び多層カーボンナノチューブの混合構造体を形成するための典型的な実施形態中で使用できる様々な方法の概略図を例示する図である。
【図2】例15による様々な段階におけるカーボンナノチューブの透過電子顕微鏡写真を提供する、図2A及び2Bからなる図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ構造体。
【請求項2】
集合体、マット、プラグ、網状体、剛性多孔質構造体、及び押出し体からなる群から選択される、請求項1に記載のカーボンナノチューブ構造体。
【請求項3】
単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブを混合するステップ、及び
単層及び多層カーボンナノチューブの前記混合物から前記構造体を形成するステップ
を含む、請求項1に記載のカーボンナノチューブ構造体を調製するための方法。
【請求項4】
多層カーボンナノチューブの構造体を形成するステップ、及び
前記多層カーボンナノチューブ構造体内で単層カーボンナノチューブを成長させるステップ
を含む、請求項1に記載のカーボンナノチューブ構造体を調製するための方法。
【請求項5】
多層カーボンナノチューブの構造体を形成するステップ、及び
前記多層カーボンナノチューブ構造体内で単層ナノチューブを捕捉するステップ
を含む、請求項1に記載のカーボンナノチューブ構造体を調製するための方法。
【請求項6】
単層カーボンナノチューブの構造体を形成するステップ、及び
前記単層カーボンナノチューブ構造体内で多層カーボンナノチューブを成長させるステップ
を含む、請求項1に記載のカーボンナノチューブ構造体を調製するための方法。
【請求項7】
単層カーボンナノチューブの構造体を形成するステップ、及び
前記単層カーボンナノチューブ構造体内で多層ナノチューブを捕捉するステップ
を含む、請求項1に記載のカーボンナノチューブ構造体を調製するための方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate


【公表番号】特表2009−515812(P2009−515812A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541397(P2008−541397)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/044846
【国際公開番号】WO2008/051239
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(593169485)ハイピリオン カタリシス インターナショナル インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】