説明

単相一方向弾性表面波変換器および改良された反射器

弾性表面波(SAW)デバイス用の一方向変換器。一実施形態では、このデバイスは、(1)伝搬のSAWの方向に垂直な開回路反射器が配置される圧電基板上の定められた領域、および定められた領域内に配置され、対向するバス・バーに接続された低反射率変換器電極のペアであって、SAW伝搬の方向に垂直で、電極のペアの励起中心が反射器からSAWの中心周波数のレイリー波長の約7/8のところに配置されるように位置決めされた、低反射率変換器電極のペアを含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、同一出願人による、参照により本明細書に組み込まれている、「A Single Phase Unidirectional SAW Transducer」という表題の2003年10月8日に出願した米国仮出願第60/509,693号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般に、弾性表面波(SAW)デバイスを対象とし、より具体的には、単相一方向弾性表面波変換器、およびSAWデバイス用の改良された反射器を対象とする。
【背景技術】
【0003】
電子デバイスの小型化の際限のないトレンドが、より小さく効率のよいコンポーネントの開発圧力を高めている。例えば、無線通信システムでは、信号処理に使われる受動素子、特に動作周波数が1GHzを超える素子の性能向上がますます求められている。SAWフィルタの場合、通常要求される特性には、低い挿入損失、低い通過域リップル、高度の位相の直線性、および高い選択性がある。これらの要求に応えるため、単相一方向変換器(SPUDT)がよく使用される。SPUDTデバイスは、SAWセンサおよびSAW無線ICタグにも使用できる。
【0004】
SPUDT構造は、それぞれのユニット・セル内で、変換の中心が反射の中心に関してシフトするように反射器および変換器を配置する必要がある。理想的には、この位相シフトは、±π/2に等しくなければならない。ほとんどのSPUDT構造では、幅が1/8レイリーSAW波長である電極および幅が1/4から3/8波長の範囲の反射器を使用して、非反射変換を得る。ほとんどの場合、電極は、幅が1/8波長以下である。したがって、GHz範囲では、電極の限界寸法は、光リソグラフィに基づく大規模加工技術の実現性の限界を超える。
【0005】
2GHz以上の周波数で動作するSAWデバイスでは、波長は約2μmである。そのため、幅が1/8波長の電極は絶対的な幅が約0.25μmである。厚さが1波長の2%から10%の範囲である場合、電極の絶対的高さは、約40〜200nmである。電極のアルミニウムの断面がこのように小さいので、抵抗損失は甚だしく高くなる。このような理由から、SPUDT変換器は、1GHzを超えるときにはめったに使用されない。
【0006】
したがって、当該技術で必要なのは、光リソグラフィに基づく大規模加工技術を使用して製造可能な1GHzを超える高さの周波数で基板上で動作可能な低損失一方向変換器である。
【0007】
さらに当該技術で必要なのは、SAW無線ICタグとともに使用する優れた反射器構成である。SAW無線ICタグの場合、変換器生成交信パルスへの応答で反射されたエネルギーを可能な限り多く取り込めることが重要である。基板上に配置されたアルミニウム反射器が変換器と同じサイズの場合、またその反射器がまっすぐであり、交信パルスに対し実質的に垂直である場合、変換器から発生したかなりの量のエネルギーが反射パルスに含まれることにはならない。これは、変換器から離れてSAWタグ表面を進行してゆくときにサイズが拡大するという事実により、変換器から発生するパルスの一部が反射器に影響を及ぼすことがないからである。
【0008】
そのため、当該技術で必要なのは、より活発な反射信号を変換器に戻すために交信パルス・エネルギーのより多くを取り込める能力を持つSAWタグ上で使用するのに優れている反射器である。
【特許文献1】米国仮出願第60/509,693号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術の上述の欠陥に対処するために、本発明は、SAWデバイスの一方向変換器を提供する。一実施形態では、このデバイスは、(1)伝搬のSAWの方向に垂直な開回路反射器が配置される圧電基板上の定められた領域、および(2)定められた領域内に配置され、対向するバス・バーに接続された低反射率変換器電極のペアであって、SAW伝搬の方向に垂直で、電極のペアの励起中心が反射器からSAWの中心周波数のレイリー波長の約7/8のところに配置されるように位置決めされた、低反射率変換器電極のペアを含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため、本発明は、SAW基板上で一方向にSAWのエネルギーを集中させる変換器を提供する。このようなデバイスは、SAW無線ICタグなどのSAWデバイスの場合に有利である。SAW RFIDタグでは、反射信号の1つの集合のみを取り扱うことが望ましい。さらに、本発明では、他の方法だと捨てられてしまう変換器から発生するエネルギーがSAW交信パルスのエネルギーに加えられるため、より活発な交信パルスを提示する。
【0011】
一実施形態では、本発明は、定められた領域がSAWの中心周波数におけるレイリー波長の2倍に、正整数−1を掛けたSAWの中心周波数のレイリー波長を加えた値におおよそ等しい距離のところにあるようにする。他の実施形態では、変換器電極は、SAWの中心周波数におけるレイリー波長の約1/2の距離で隔てられる。さらに他の実施形態では、変換器電極は、それぞれ、SAWの中心周波数においてレイリー波長の約1/4の幅を持つ。
【0012】
製造上の便宜のため、反射器と変換器電極の両方にアルミニウムを使用すると役立つ。本発明の一実施形態では、電極が低い全反射率を持つことを提示する。本発明のいくつかの実施形態のうちの1つでは、電極は、SAWの中心周波数でレイリー波長の1/10にほぼ等しい太さを持つ。本発明の有利な一実施形態は、機械的な反射率が電極のペアと反射器の反射率の電気的部分と比べて反対の符号を持つような圧電基板を備えるデバイスを提示する。このような圧電基板は、128°LiNbOである。
【0013】
さらに他の実施形態では、電極の幅は、1/4波長よりも小さい。さらに他の実施形態では、反射器の幅は、0.3波長と0.5波長の間である。
【0014】
本発明の有利な一実施形態では、約1/4波長の幅を持ち、約1/2波長の距離で隔てられている少なくとも2つの開回路反射器を提示する。本発明の他の実施形態では、反射器からSAWの中心周波数におけるレイリー波長の約7/8のところに配置されている、電極のペアの励起中心は、レイリー波長の7/8のプラスまたはマイナス10パーセントに等しい量だけ変化させられる。
【0015】
本発明の有用な一実施形態では、電極の複数のペアを用意し、それらのペアのそれぞれが複数の波長分に等しい距離のところでオフセットされ、同じ極性順序で同じバス・バーに接続されるようにする。他の実施形態では、デバイスは、さらに、複数の同等の反射器からなり、それぞれの反射器は、反射器が電極とオーバーラップしないように互いから複数の波長分に等しい距離のところでオフセットされる。
【0016】
このデバイスの他の有用な実施形態では、定められた領域の周期的集まりからなるようにする。この実施形態では、定められた領域の周期的集合は、準周期的に配置され、その周期は、定められた領域の長さに等しいか、または整数倍の波長分だけその長さよりも長く、波長は圧電基板の全長にそってゆっくり変化(チャープ)する。本明細書で説明されているような発明は、低損失アプリケーション用の一方向SAW変換器として使用すると役立つ。
【0017】
本発明のさらに他の実施形態では、並列音響サブチャネル内に配置され、1波長分だけ隔てられ、波の伝搬方向に垂直であり、電気的に並列接続されている、複数の定められた領域を提示する。
【0018】
もちろん、本発明の特に有用なアプリケーションは、SAWICタグで使用される。そのため、本明細書で説明されているデバイスは、定められたスペースがSAWICタグ上に配置されている場合に使用すると役立つ。
【0019】
本発明のきわめて有用な実施形態は、(1)SAW変換器が配置されている圧電基板、および(2)SAW変換器により発生される交信パルスへの応答を反射するため基板上にある、交信パルスの回折場と実質的に一致するように基板上に配列されている反射器からなるSAWデバイスを提示する。一実施形態では、反射器は、交信パルスの遠隔場内に配置されるが、他の実施形態では、近接場内に配置される。
【0020】
もちろん、デバイスは、さらに、基板上に配列された複数の反射器で構成することもできる。このような場合、複数の反射器のうち少なくとも1つを交信パルスの近接場内に配置し、複数の反射器のうち少なくとも1つを交信パルスの遠隔場内に配置することができ、それでも、本発明の意図された範囲内に収めることができる。
【0021】
本発明は、さらに、交信パルスの回折場内の一定位相の等高線に実質的に一致するように反射器を湾曲させることも提示する。さらに他の実施形態では、反射器は、交信パルスの回折場内の一定振幅の等高線に実質的に一致するように湾曲される。さらに他の実施形態では、反射器は、交信パルスの回折場内の一定位相の等高線と一定振幅の等高線の両方に実質的に一致するように湾曲される。特に有用な実施形態では、反射器が、実質的湾曲形状を形成し、交信パルスの回折場内の一定振幅の等高線または一定位相の等高線のいずれかに実質的に一致するようにセグメントに分割されることを提示する。
【0022】
また本発明を使用することで、反射された信号が交信パルスの振幅および位相分布に実質的に一致するように反射器が反射パルスを変換器に集束させることができ有益である。
【0023】
本発明は、反射器が開回路金属ストリップまたは短絡回路のいずれかであるときに使用すると役立つ。また、非金属製反射器の場合にも使用すると役立つ。本発明の有用な一実施形態では、反射器をセグメントに分割することを提示する。セグメント分割された反射器の場合、有用な一実施形態では、1/4波長にほぼ等しいセグメントのそれぞれの間にスペースを設ける。他の実施形態では、反射器は、交信パルスのメインローブおよび第1サイドローブを包含するように設計される。反射器が交信パルスのメインローブと第1サイドローブを包含する一実施形態では、8個のセグメントがメインローブに使用され、4個のセグメントが全部で16個のセグメントでサイドローブのそれぞれに使用される。
【0024】
本発明の重要な一実施形態は、(1)SAW変換器が配置されている圧電基板、および(2)SAW変換器により発生される交信パルスへの応答を反射するため基板上にある、交信パルスの回折場の振幅および位相と実質的に一致するように実質的湾曲形状で基板上に配列されている反射器を備えるSAWデバイスを提示する。
【0025】
前段では、当業者であれば後の本発明の詳細な説明をよく理解できるように本発明の好ましい特徴および代替え特徴の概要を述べている。これ以降、本発明の請求項の主題を形成する本発明の追加の特徴について説明する。当業者であれば、開示されている概念および特定の実施形態を本発明と同じ目的を実施するため他の構造を設計または修正する場合の基盤として容易に使用できることは理解するであろう。また、当業者であれば、そのような同等の構造が本発明の精神および範囲から逸脱しないことも理解するであろう。
本発明をより完全に理解できるように、付属の図面とともに以下の説明が参照される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
最初に図1を参照すると、本発明により構成される一方向変換器デバイス100が例示されている。表面155上にセル110が配置された圧電基板150の上面図が示されている。セル110は、SAWレイリー波長の約2倍の長さ120を持つ(圧電基板150上で発生するSAWの中心周波数のところで決定される)。セル110内には、強反射の幅1/2波長の浮動または開回路反射器130および圧電基板上でSAWを励起するために使用される弱反射の幅1/4波長の電極140のペアが示されている。電極140はそれぞれ、電極140が反対極性のバス・バー160に接続されるようにバス・バー160に接続されている。例示されているデバイス100は反対極性のバス・バー160に接続された電極140のペアを備え、それにより、浮動反射器130の内部反射を使用して、電極140を一方向SAW変換器にする。
【0027】
本発明では、SAWパルスの中心周波数におけるレイリー波長の約2倍に、正整数−1を掛けたレイリー波長を加えた長さ120を持つスペース内の圧電基板150上に構成された一方向SAW変換器を提示する。図1に例示されている実施形態において、正整数は1と仮定され、したがって、長さ120はレイリー波長の2倍に等しい。SAWの伝搬170の方向は左から右である。電極140は、アルミニウムとすることができ、伝搬170の方向にほぼ垂直な形で配置され、レイリー波長の約1/2の距離だけ隔てられる。電極140はそれぞれ、幅が約1/4レイリー波長であり、それぞれ、反対極性のバス・バー160に接続される。
【0028】
セル110内には、電極140のペアに並列に配向された開回路反射器130(アルミニウム製とすることができる)が配置される。反射器130は、反射の中心が、電極140間の間隙の中心となっている、電極140のペアの励起中心から約7/8波長の距離のところに配置されるように位置決めされる。SAWの主要な方向は、反射器130から電極140のペアに向かう方向である。
【0029】
いくつかの圧電基板150では、反射性を有する機械部品は、反射性を有する電気部品と比較して反対の符号を持つ。このような圧電基板150を使用することで、幅1/4波長の浮動または短絡回路反射器130および電極140の低損失が達成されるが、それは、電極140の全反射率が実質的に相殺されるからである。このような基板材料の一例として、128°LiNbOがあり、その場合、幅1/4波長の電極140は1波長の約.1%から10%に等しいアルミニウム製電極140の太さに対して弱反射である。Cuの割合が低いAlCuなどのアルミニウムをベースとする合金も、反射器および電極の材料として使用できる。反射率を最大にするため、開回路反射器130の幅は、0.3波長から0.5波長の範囲内である。反射の中心は、幅の広い短絡回路または浮動反射器130の近似的中心にあり、また励起の中心は、幅1/4波長の電極140の間の間隙の中心にある。反射中心から励起中心までの公称距離を、対応するシフト量だけセル110内の反射器130の位置を調整することにより1波長の10%以内で変化させて、最適な一方向性を見つけることができる。図1では、SAWは、主に右へ伝搬する。セル110内の発生した前方伝搬波と反射された前方伝搬波の比較(電極140内の幅1/4波長のフィンガーの反射を無視する)から、位相差は4πに等しく、したがって、伝搬波は建設的干渉を生じることがわかる。反射位相係数は+π/2であり、ただし128°LiNbO上の開反射器の中心を基準点とする。反対方向では、発生した信号と反射された信号との位相差は、5πであり、互いに相殺し合う傾向がある。間隙を含む、この構造におけるすべての限界寸法は、1/4波長のオーダーである。
【0030】
128°LiNbOが幅1/4波長の電極140で使用される場合、電極140は、厚さが1波長の0.1%から10%の金属については弱反射である。実際、128°LiNbO3については、1%から8%の範囲のアルミニウムの厚さが本発明の目的に最もかなっている。厚さ範囲は、薄い場合には抵抗性が上がることと厚い場合には高アスペクト比のアルミニウム縦断面を得ることが困難であることにより制限される。さらに、それぞれの特定の厚さについて、電極140の消滅反射率に対応する金属化比(a/p)を見つけるか、または決定することができる。
【0031】
例えば、短絡回路の長い回折格子では、a/p=0.5に対する反射係数は、2.5%の相対的アルミニウム厚さについてゼロに近い。厚さがあるほど、反射率を下げるために金属化比を小さくしなければならない。単一の幅1/2波長の浮動または開回路反射器130では、反射係数は、幅1/4波長の短絡回路電極140に対する反射係数よりも著しく高く、最大値は0.3から0.5の間の金属化比a/pについて生じることがわかる。
【0032】
反対符号の機械的反射および電気的反射の特性を示す電極および反射器の他の基板および材料に類似のアプローチを適用することができることは明白である。この基準を満たす他の例は、YZ−LiNbOである。本発明の重要な特徴は、上述の構造を弱反射電極140および強反射器130として使用することである。
【0033】
次に図2を参照すると、反射器230のペアとともに変換器を使用する一方向変換器デバイス200の一実施形態が例示されている。この実施形態では、セル210は、浮動または開回路反射器230のペアを備え、それぞれの反射器230は1/4波長に近い幅を持つペアとなっている。約1/2波長のペア内の反射器230のそれぞれの間は分離されている。反射の中心は、2つの反射器230の間の分離距離の真ん中にあるとみなされる。電極240の反射中心から励起中心までの公称距離は、7/8波長であり、対応するシフト量だけユニット・セル210内の反射器230の位置を調整することにより変換器電極240の周期の±10%以内で変化させて、最適な一方向性を見つけることができる。反射器230のペアは、2つのバス・バー260に順次接続されている変換器電極240の2つのペアの間に置かれる。この構造の限界寸法は、1/8波長のオーダーであり、このため、この構造は図1に関して上で説明されている構造に比べて高周波アプリケーションにとってはあまり魅力のないものとなっている。
【0034】
次に図3を参照すると、それぞれの追加電極345ペアが電極の第1のペアから複数波長分の距離のとこでオフセットされ、電極340の第1のペアと同じ極性順で同じバス・バー360に接続されている電極340の第1のペアと本質的に同等である電極345の少なくとももう1つのペアをSAWデバイス300が備える一実施形態が例示されている。
【0035】
他の実施形態では、SAWデバイスは、第1の反射器340と本質的に同等の少なくとももう1つの反射器345を備え、追加の反射器335はそれぞれ、第1の反射器330から複数の波長分の距離のところでオフセットされ、電極345の追加のペアが存在する場合、波長の数(m)は、m≠n+1とされ、反射器330、335が変換器電極340、345と重なることを回避する。ここで、正の数n、mは、右に向かうシフトに対応する。この手順で、構造にそって電極340、345および反射器330、335の変換器ペアの数を変化させることができ、それにより、性能が向上した重み付き一方向構造が作られる。
【0036】
次に図4を参照すると、図1で説明されている同一セクションの周期的集まりを含むSAWデバイス400が例示されており、変換器電極440は、反対極性のバス・バー460に周期的に接続され、周期は2波長に等しい。ここで、それぞれのセクションにおいて、電極440の1つのペアのみが使用され、反射器430は、幅1/2波長を含むだけであり、浮動または開回路である。この実施形態は、重みなし一方向SAW変換器に対応する。シングル・エンドの回路では、信号はバス・バー460の1つに接続され、他のバス・バー460は接地されることは明白である。この一方向変換器は、低損失のSAWの発生に使用することができ、また例えば、SAWセンサ、アクチュエータなどの多数のアプリケーションを有する。
【0037】
次に図5を参照すると、フィルタ・アプリケーションに関する本発明の一実施形態が例示されており、そこでは、少なくとも1つの一方向SAW変換器500が、入力変換器として動作し、同じ音響チャネル570でSAWを発生する入力バス・バー560に接続され、概略が例示されている受信側変換器590が、同じ音響チャネル570内に置かれた出力バス・バー565に接続されている。受信側変換器590は、2つよりも多い電極545を備えることに留意されたい。また、変換器は、本発明の実施形態のどれにおいても任意の個数の電極を備えることができ、それでも本発明の意図された範囲内にあることに留意されたい。
【0038】
次に図6を参照すると、少なくとも2つの一方向SAW変換器600が開口Wの並列音響サブチャネル610内に置かれ、波の伝搬方向に垂直な方向でその波長に相当する距離で隔てられ、電気的に並列接続されている本発明の一実施形態が例示されている。図に示されている特定のケースでは、4つの一方向変換器が並列接続されている。変換器は、1波長のオーダーの幅を有する、狭いバス・バー682、683により隔てられている。すべての変換器により順方向(右)に向かって発生するSAWは、全開口が4Wに近い単一の音響ビームを生成する。前記変換器の並列接続により、抵抗損失および回折損失が減少する。
【0039】
図7には、1つの一方向変換器700およびSAWICタグ720が音響チャネル710で適用され、そのようなSAWICタグ720を帯びたデバイスの識別コードに対応する応答信号を発生するSAWタグ・アプリケーションに使用されるSAWデバイスが例示されている。
【0040】
SAWデバイスで使用されるいくつかの知られているソリューションを本発明に適用することができることは明白である。例えば、前記一方向変換器は、チャープ化できる、つまり、これは、セクションの長さに等しい、または波長の整数倍だけセクションの長さよりも長い、周期で準周期的に配置される多数の前記セクションを含み、波長は構造の全長にそってゆっくりと変化するということである。
【0041】
他の可能性は、扇形構造の使用である。当業者にとっては、このような標準的な変更形態が本発明の範囲に含まれることは明白である。
【0042】
本発明で1/4波長以上の幅の電極を使用すると、2〜3GHzの周波数範囲までの標準的なリソグラフィ技術によりデバイスを製造することができる。幅の広い浮動電極を反射器として使用すると、特に、SAWタグなどの開口の広さが重要であるアプリケーションでは、抵抗損失が劇的に減少する。
【0043】
次に図8A〜8Fを参照すると、変換器からさまざまな距離にある圧電基板上の交信パルスの振幅810および位相820に対する回折波形が例示されている。両極端を扱う上で、図8Aには近接場波形が例示され、図8Fには、遠隔場波形が例示されている。図8Fからわかるように、交信パルスは、変換器から離れるにつれ、広がり、発散する。図8Fは、パルスの振幅810および位相820の両方がメインローブ830およびサイドローブ835を持ち、これは、メインローブ830への段部のように見える。これらのローブ830、835は、反射されるエネルギーの大半をなす。この反射エネルギーを可能な限り捕捉しようとすることは有益である。
【0044】
次に図9を参照すると、交信パルスの回折場と実質的に一致するように配列された本発明により構成される圧電素子上の反射器が例示されている。図10には、図9に詳しく例示されているタイプの反射器1010を使用する代表的なSAWタグ1000が例示されている。図からわかるように、本発明により構成される反射器1010は、図8Aに示されているエネルギーを捕捉するため交信パルスの近接場1020、または図8Fに示されているエネルギーを捕捉するため交信パルスの遠隔場1030のいずれかの中で使用することができる。もちろん、複数のこのような反射器1010は、一般に、SAW RFIDタグ1000の場合に使用されるが、これは、本明細書で説明されているタイプの1つまたは複数の反射器1010は基板上の近接場1020で、また他の反射器は同じ基板上の遠隔場1030で使用できることを意味し、すべて本発明の意図された範囲内にある。
【0045】
図9に例示されているように、反射器は、交信パルスの回折場内で、一定位相の等高線と一定振幅の等高線、またはその両方に実質的に一致するような形状または湾曲を有する。もちろん、非金属製反射器が使用される場合、または金属製反射器の場合に反射器が電気的に絶縁されていない場合、交信パルスの一定位相の等高線に一致するだけでよい。
【0046】
交信パルスの回折場内の一定位相の等高線または一定振幅の等高線に一致する基本的湾曲形状を形成するために反射器をセグメントに分割することにはかなりの利点がありうる。これは、近似するために小さな直線を使用することに比べて信号等高線に一致する曲線を形成することは困難であるため、製造の観点からは有利である。セグメント分割の他の利点は、金属製反射器の場合、反射器の電圧を比較的容易に制御できるという点である。本発明の一実施形態では、反射器を、変換器により伝搬されるSAWの中心周波数の1/4に近いスペースで隔てられた複数のセグメントに分割すると都合がよいことがわかっている。
【0047】
反射器を湾曲させる他の利点は、変換器により検出されたときに交信パルスと同じ近似形状を応答パルスに持たせるように反射信号を集束させることができるという点である。したがって、応答パルスは、反射器に到達する交信パルスの部分と実質的に同じ位相および振幅を持つことになる。
【0048】
本明細書で説明されている設計は、開回路反射器または短絡回路反射器の両方に使用することができる。また、非金属製反射器にも使用できる。非金属製および短絡金属製反射器の場合、交信信号の一定位相の等高線に一致するだけでよい。
【0049】
図8Fからわかるように、反射器が交信パルスのメインローブ830および第1サイドローブ835を包含することが有利である。もちろん、近接場反射器の場合、図8Aからわかるように、反射器はメインローブ830を包含するだけでよいが、それは、サイドローブ835が実質的に識別不可能であるからである。セグメント分割された反射器が使用されるときに遠隔場の場合、サイドローブ835のそれぞれに対する4つのセグメントおよびメインローブ830に対する8つのセグメントを反射器内の全部で16個のセグメントに使用することが有利であることが判明している。
【0050】
図11を参照すると、交信パルスの回折場の振幅および一定位相の等高線の両方に実質的に一致する本発明により構成されるセグメント分割された金属製開回路反射器の代表的な例が示されている。
【0051】
本発明は詳細に説明されているが、当業者であれば、その最も広範な形態で、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書においてさまざまな変更、置換、および改変を行うことができることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明により構成される一方向変換器デバイスを例示する図である。
【図2】電極の複数のペアを使用する本発明により構成される一方向変換器の一変更形態を例示する図である。
【図3】変換器電極および反射器の複数のペアを使用することによるSAWデバイスの変換率および反射率の調整を例示する図である。
【図4】図1に例示されているタイプの周期的分布SPUDTセルを使用し本発明により構成される基本的な一方向SAW変換器を例示する図である。
【図5】本発明により構成される少なくとも1つの一方向変換器を使用するSAWフィルタを例示する図である。
【図6】共通音響チャネルで弾性表面波を発生する並列接続SAW変換器を例示する図である。
【図7】本発明により構成される少なくとも1つの一方向変換器を使用するSAWタグを例示する図である。
【図8A】変換器からさまざまな距離にある圧電基板上の交信パルスの振幅および位相に対する回折波形を例示する図である。
【図8B】変換器からさまざまな距離にある圧電基板上の交信パルスの振幅および位相に対する回折波形を例示する図である。
【図8C】変換器からさまざまな距離にある圧電基板上の交信パルスの振幅および位相に対する回折波形を例示する図である。
【図8D】変換器からさまざまな距離にある圧電基板上の交信パルスの振幅および位相に対する回折波形を例示する図である。
【図8E】変換器からさまざまな距離にある圧電基板上の交信パルスの振幅および位相に対する回折波形を例示する図である。
【図8F】変換器からさまざまな距離にある圧電基板上の交信パルスの振幅および位相に対する回折波形を例示する図である。
【図9】交信パルスの回折場と実質的に一致するように配列された本発明により構成される圧電素子上の反射器を例示する図である。
【図10】図9に詳しく例示されているタイプの反射器を使用する代表的なSAWタグの図である。
【図11】交信パルスの回折場の振幅および一定位相の等高線の両方に実質的に一致する本発明により構成されるセグメント分割された金属製開回路反射器の代表的な例の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性表面波(SAW)デバイスであって、
SAW伝搬方向に垂直な開回路反射器が配置されている圧電基板上の定められた領域と、
前記定められた領域内に配置され、対向するバス・バーに接続された低反射率変換器電極のペアであって、前記電極は前記SAW伝搬の方向に垂直であり、電極の前記ペアの励起中心が前記反射器から前記SAWの中心周波数のレイリー波長の約7/8のところに配置されるように位置決めされた、低反射率変換器電極のペアとを備える弾性表面波(SAW)デバイス。
【請求項2】
前記定められた領域は、前記SAWの中心周波数における前記レイリー波長の2倍に、正整数−1を掛けた前記SAWの中心周波数の前記レイリー波長を加えた値におおよそ等しい距離のところにある請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記電極は、前記SAWの中心周波数における前記レイリー波長の約1/2の距離で隔てられる請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記電極はそれぞれ、前記SAWの中心周波数における前記レイリー波長の約1/4の幅を有する請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記開回路反射器は、アルミニウム製である請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記電極は、アルミニウム製である請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記電極は、全反射率が低い請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記電極は、前記SAWの中心周波数における前記レイリー波長の1/10におおよそ等しい厚さを有する請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
さらに、前記機械的な反射率が電極の前記ペアと前記反射器の反射率の前記電気的部分と比べて反対の符号を持つような圧電基板を使用することを含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記圧電基板は、128°LiNbOである請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記電極の幅は、1/4波長よりも短い請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記反射器の幅は、0.3波長から0.5波長の間である請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
さらに、約1/4波長の幅を持ち、約1/2波長の距離で隔てられている少なくとも2つの開回路反射器を備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記反射器から前記SAWの中心周波数におけるレイリー波長の約7/8のところに配置されている電極の前記ペアの前記励起中心は、レイリー波長の前記7/8のプラスまたはマイナス10パーセントに等しい量だけ変化する請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
さらに、電極の複数のペアを備え、電極の前記ペアのそれぞれは複数の波長分に等しい距離のところでオフセットされ、同じ極性順序で同じバス・バーに接続される請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
さらに、複数の同等の反射器を備え、それぞれの反射器は前記反射器が前記電極とオーバーラップしないように互いから複数の波長分に等しい距離のところでオフセットされる請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
さらに、前記定められた領域の周期的な集合を含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記定められた領域の前記周期的集合は、準周期的に配置され、前記周期は、前記定められた領域の長さに等しいか、または整数倍の波長分だけ前記長さよりも長く、前記波長は前記圧電基板の全長にそってゆっくり変化(チャープ)する請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記デバイスは、低損失のアプリケーション用の一方向SAW変換器として使用される請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
さらに、並列音響サブチャネル内に配置され、前記波の前記伝搬方向に垂直な前記波長に相当する距離で隔てられ、電気的に並列接続される複数の前記定められた領域を備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
前記定められたスペースは、SAWICタグ上に配置される請求項1に記載のデバイス。
【請求項22】
SAWデバイスであって、
SAW変換器が配置されている圧電基板と、
前記SAW変換器により発生する交信パルスへの応答を反射するための前記基板上の反射器であって、前記交信パルスの前記回折場に実質的に一致するように前記基板上に配列された、反射器とを備えるSAWデバイス。
【請求項23】
前記反射器は、前記交信パルスの遠隔場内に配置される請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
前記反射器は、前記交信パルスの近接場内に配置される請求項22に記載のデバイス。
【請求項25】
さらに、前記基板上に配列された複数の反射器を備える請求項22に記載のデバイス。
【請求項26】
前記複数の反射器のうちの少なくとも1つは、前記交信パルスの前記近接場内に配置され、前記複数の反射器のうちの少なくとも1つは、前記交信パルスの遠隔場内に配置される請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記反射器は、前記交信パルスの回折場内で一定位相の等高線に実質的に一致するように湾曲される請求項22に記載のデバイス。
【請求項28】
前記反射器は、前記交信パルスの回折場内で一定振幅の等高線に実質的に一致するように湾曲される請求項22に記載のデバイス。
【請求項29】
前記反射器は、前記交信パルスの回折場内で一定位相の前記等高線および一定振幅の前記等高線に実質的に一致するように湾曲される請求項22に記載のデバイス。
【請求項30】
前記反射器は、前記交信パルスの回折場内で一定位相の前記等高線または一定振幅の前記等高線のいずれかに実質的に一致する実質的湾曲形状を形成するようにセグメント分割される請求項22に記載のデバイス。
【請求項31】
前記反射器は、前記変換器により発生した前記交信パルスの振幅および位相分布に実質的に一致する反射パルスを前記変換器に集束させる請求項29に記載のデバイス。
【請求項32】
前記反射器は、開回路金属ストリップである請求項22に記載のデバイス。
【請求項33】
前記反射器は、短絡回路金属ストリップである請求項22に記載のデバイス。
【請求項34】
前記反射器は、非金属製である請求項22に記載のデバイス。
【請求項35】
前記反射器は、セグメント分割される請求項22に記載のデバイス。
【請求項36】
前記セグメントのそれぞれの間の前記スペースは、ほぼ1/4波長に等しい請求項35に記載のデバイス。
【請求項37】
前記反射器は、前記交信パルスのメインローブおよび第1サイドローブを包含する請求項22に記載のデバイス。
【請求項38】
前記反射器は、前記交信パルスの前記メインローブと前記第1サイドローブを包含し、8個のセグメントは、前記メインローブに使用され、4個のセグメントは、前記サイドローブのそれぞれに使用される請求項27に記載のデバイス。
【請求項39】
SAWデバイスであって、
SAW変換器が配置されている圧電基板と、
前記SAW変換器により発生する交信パルスへの応答を反射するための前記基板上の反射器であって、前記反射器は前記交信パルスの前記回折場の前記振幅および位相に実質的に一致する実質的湾曲形状で前記基板上に配列された、反射器とを備えるSAWデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−508752(P2007−508752A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534416(P2006−534416)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/033353
【国際公開番号】WO2005/036898
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(504235654)アールエフ ソウ コンポーネンツ,インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】