説明

単結晶育成装置

【課題】熱ロスを防止し、省電力効果を得ることができ、かつ、安全性も確保することができるCZ法単結晶育成装置を提供する。
【解決手段】原料融液5を収容するルツボ3と前記原料融液5を加熱するヒーター6とを格納するメインチャンバー2を具備するチョクラルスキー法によって単結晶インゴットを製造する単結晶育成装置1であって、前記ルツボ3の下側であって前記メインチャンバー2の底部に接触しない中空に、前記ルツボ3から漏れてきた融液17を収容することのできる、炭素材からなる第1断熱板4’を有し、前記第1断熱板4’は、受皿形状を有し、炭素繊維からなる断熱材で充填されたものであり、前記第1断熱板4’の湯漏れ融液の受容量は、前記ルツボ3に収容された原料融液5の最大容量以上であることを特徴とする単結晶育成装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法により単結晶棒を育成させる単結晶育成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体シリコン単結晶棒の製造に用いられる従来のチョクラルスキー法による単結晶育成装置の一例を図3により説明する。図3に示すように、単結晶育成装置101は、メインチャンバー102と、メインチャンバー102中に設けられたルツボ103と、ルツボ103の周囲に配置されたヒーター106と、ルツボ103を回転させるルツボ保持軸110及びその回転機構(不図示)と、シリコンの種結晶113を保持するシードチャック114と、シードチャック114を引上げるワイヤ115と、ワイヤ115を回転または巻き取る巻き取り機構(不図示)を備えて構成されている。ルツボ103は、その内側の原料融液105を収容する側には石英ルツボ103aが設けられ、その外側には黒鉛ルツボ103bが設けられている。また、ヒーター106の外側周囲にはヒーター断熱材107が設置され、ルツボ103の下方には断熱板104が配置されている。
【0003】
また、この単結晶育成装置101は、メインチャンバー102の底部に配置されルツボ103から漏れてきた融液を収容する湯漏れ受皿108を具備し、湯漏れ受皿108はその内壁に沿って配置された湯漏れ受皿内の断熱材109を有する。
【0004】
次に、上記の単結晶育成装置101による単結晶育成方法について説明する。まず、ルツボ103内でシリコンの高純度多結晶原料をヒーター106により融点(約1420°C)以上に加熱して融解する。そして、ワイヤ115を巻き出すことにより融液105の表面の略中心部に種結晶113の先端を接触又は浸漬させる。その後、ルツボ保持軸110を適宜の方向に回転させるとともに、ワイヤ115を回転させながら巻き取り、種結晶113を引上げることにより、単結晶育成が開始される。以後、引上げ速度と温度を適切に調節することにより略円柱形状の単結晶棒112を得ることができる。
【0005】
上記した単結晶育成装置における石英ルツボおよび黒鉛ルツボは、共に高い耐熱性を有しているが、やや脆く、耐衝撃性に乏しいという欠点がある。そこで、単結晶引上げに際し、多結晶原料をルツボに投入すると、その衝撃によってルツボに亀裂が入ることがあり、そこから溶融液(湯)が漏れる恐れがある。また、多結晶原料投入時にルツボ内の湯がルツボの周囲に飛散することもある。さらに使用により徐々にルツボが劣化したり、地震等により引上げ中の単結晶が落下した場合には、ルツボが破壊されて湯のほぼ全量が流出したりしてしまうこともある。
【0006】
このように、高温の湯がルツボ外へ流出、飛散すると、ルツボの周りからメインチャンバーの底部に至り、メインチャンバー底部やヒーター用端子部あるいはルツボ保持軸等の金属部やルツボ駆動装置、下部冷却水配管等を侵食することになる。特に高温のシリコンは反応性が高く金属に対する侵食作用が強いため、安全対策が必要とされる。
【0007】
これに備えて特許文献1などでは等方性黒鉛材による湯漏れ受皿を設けている。湯漏れ受皿の内部には、漏れてきた融液を全量確保するための空間を設ける必要があるので、熱が漏れやすいという問題がある。
【0008】
そこで特許文献2では湯漏れ受皿内に炭素繊維成型材(断熱材)を貼り付けて熱ロスの低減を図りながら、湯漏れ容量の確保を行っている。しかし近年の結晶の大直径化に伴い湯量が多くなり、湯漏れ受皿容量も大きくなったので、この空間からの熱ロスが無視できず、省電力の観点からは問題があるといえる。
【0009】
この熱ロスを低減するには、湯漏れ受内に断熱材(CZ法などで用いられるのは低密度の炭素繊維材など)を置く事が有効である。実際に熱ロス低減が主目的ではないが特許文献3、特許文献4、特許文献5等で融液を吸収可能な浸透性カーボンや炭素繊維材等を充填する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−68886号公報
【特許文献2】WO2001/064976号公報
【特許文献3】特開平5−270967号公報
【特許文献4】特開2003−55090号公報
【特許文献5】特開2008−7334号公報
【特許文献6】特開2001−302387号公報
【特許文献7】特開2009−215126号公報
【特許文献8】特開2002−326888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、開示されたこれらの方法では断熱材等に融液全量を吸収させるため、充分な厚みが必要である。また熱ロス防止の観点からも断熱材は厚い方が好ましい。断熱材が厚い場合にはルツボ側に比べて湯漏れ受皿側の断熱材は低温になっている。このような低温部を有する断熱材においては、高温の融液が一挙に漏れれば断熱材下側の低温部まで融液が到達して、断熱材全体が融液を吸収できる可能性はある。しかしながら、多くの場合少量ずつある程度の時間をかけて湯が漏れていく。このような場合、厚い断熱材では、下に行くほど低温になっているので、融液が断熱材の繊維を伝って下に落ちていく途中で冷却され、断熱材の途中で固まってしまう。融液が固まった部分より下側の断熱材には融液が到達しなくなるため、湯漏れを吸収できない領域が発生することになる。
【0012】
従って、特許文献3、特許文献4、特許文献5などに例示される厚い断熱材の全てを湯漏れ受容量として見込むことは非常に危険である。またこのように、漏れた融液が断熱材の途中で止まってしまっては、湯漏れの発見が遅れてしまう。また、例え湯漏れを全量湯漏れ受皿内に受け取れたとしても、湯漏れが発生したという事実を早期に発見し、その対処を早めに開始することが望ましい。
【0013】
このような観点から特許文献6では湯漏れを検知するセンサーを導入し湯漏れを発見する技術が開示されている。また更に特許文献7ではルツボ下に導入されている断熱板に誘導路を設けて湯漏れをセンサーに導き湯漏れをより早く検知する技術が開示されている。しかしこれらの技術においては、下部の断熱構造が充分とは言えず、省電力の観点からは問題があるといえる。
【0014】
また熱ロス低減という観点では、大型の断熱板を用いることが特許文献8に開示されている。しかしこの方法で断熱板を大きくしてしまうと、大きくした分が下部に用意してある湯漏れ受皿の容量に食い込んでしまい、湯漏れ受皿の容量を減じてしまう恐れがあり、湯漏れ受容量を充分確保することができず安全性の観点から問題がある。
【0015】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、熱ロスを防止して省電力効果を得ることができ、かつ、湯漏れ融液の受容量を充分確保して安全性を確保することができるCZ法単結晶育成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、原料融液を収容するルツボと前記原料融液を加熱するヒーターとを格納するメインチャンバーを具備するチョクラルスキー法によって単結晶インゴットを製造する単結晶育成装置であって、
前記ルツボの下側であって前記メインチャンバーの底部に接触しない中空に、前記ルツボから漏れてきた融液を収容することのできる、炭素材からなる第1断熱板を有し、
前記第1断熱板は、受皿形状を有し、炭素繊維からなる断熱材で充填されたものであり、
前記第1断熱板の湯漏れ融液の受容量は、前記ルツボに収容された原料融液の最大容量以上であることを特徴とする単結晶育成装置を提供する。
【0017】
このような湯漏れ融液を収容する機能を兼ねる第1断熱板を備えることで、熱ロスを防止し、省電力効果を得ることができ、かつ、湯漏れが発生した場合でも、ルツボ直下で湯漏れ融液の受容量を充分確保でき、安全性を確保することができる単結晶育成装置となる。
【0018】
また、前記第1断熱板は、受皿形状の上面に、ルツボから漏れてきた湯漏れ融液を誘導して第1断熱板内へ落下させるための誘導構造を有する炭素材を配したものであることが好ましい。
【0019】
これにより、第1断熱板が珪化などで脆くなってしまうことを防ぎ、その上、湯漏れ融液を所望の位置へ確実に誘導して、第1断熱板の断熱材に吸収させることができるので、より安全性の向上した単結晶育成装置となる。
【0020】
さらに、前記ルツボと前記第1断熱板との間に第2断熱板及び下部ヒーターの少なくとも一方が設置されたものであって、第2断熱板及び下部ヒーターはルツボから漏れてきた湯漏れ融液を誘導して第1断熱板へ落下させるための誘導構造を有するものであることが好ましい。
【0021】
このように、更に第2断熱板及び下部ヒーターの少なくとも一方を有することで、更なる省電力効果を得ることができる単結晶育成装置となる。また、これらの有する誘導構造により、湯漏れ融液を所望の位置へ確実に誘導して、第1断熱板の断熱材に吸収させることができるので、より安全性の向上した単結晶育成装置となる。
【0022】
また、前記第2断熱板は、ルツボから漏れてきた融液を収容することのできるものであることが好ましい。
【0023】
このような第2断熱板を有することで、第1断熱板の湯漏れ融液の受容量と、第2断熱板の湯漏れ融液の受容量とを足し合わせた容量は、ルツボに収容される原料融液の最大容量より大きくなり、より安全性の高い単結晶育成装置となる。
【0024】
さらに、前記第2断熱板は、少なくともルツボ面側に、誘導構造が形成された板状の炭素材を有するものであることが好ましい。
【0025】
このような炭素材を有することにより、適切に、湯漏れ融液を誘導して第1断熱板へ落下させ、落下した湯漏れ融液を断熱材へ吸収させることができるため、より安全性が向上した単結晶育成装置となる。
【0026】
また、前記第1断熱板に充填された断熱材は、前記第1断熱板、前記第2断熱板、又は前記下部ヒーターの誘導構造から湯漏れ融液が落下する部分に、落下した湯漏れ融液を第1断熱板の底部に導くための貫通孔を有することが好ましい。
【0027】
これにより、落下した湯漏れ融液はこの貫通孔を通じて第1断熱板の最下端に到達することが可能となるので、湯漏れ融液が断熱材の途中で固化することで湯漏れを吸収できない領域が発生する事態を回避できる単結晶育成装置となる。
【0028】
さらに、前記第1断熱板に充填された断熱材の貫通孔内に炭素材筒を有し、該炭素材筒は、炭素材筒内を通って第1断熱板の下部に導かれた融液が炭素材筒の下端部で筒外に流出可能なように、第1断熱板に充填された断熱材の貫通孔内に配置されたものであることが好ましい。
【0029】
これにより、湯漏れ融液が前記貫通孔の途中の断熱材に吸収されてしまい下端に到達できない事態を回避して、湯漏れ融液を第1断熱板の下部に導くことができるため、より安全性が確保された単結晶育成装置となる。
【0030】
また、前記炭素材筒は、側面に複数の穴が開けられた直胴部を有することが好ましい。
【0031】
これにより、炭素材筒を通ってきた湯漏れ融液の温度が第1断熱板に落下したと同時に固化する温度まで下がってしまい、断熱材の貫通孔に配置した炭素材筒の下端部を塞いでしまうような事態を回避できるため、より安全性が確保された単結晶育成装置となる。
【0032】
さらに、前記第1断熱板は、該第1断熱板に充填された断熱材の貫通孔の直下に湯漏れを検知するセンサーを有することが好ましい。
【0033】
これにより、断熱材の貫通孔へ導かれた湯漏れ融液をいち早く発見することができ、より安全性が確保される単結晶育成装置となる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明の単結晶育成装置であれば、湯漏れ融液を収容する機能を兼ねる第1断熱板を備えることで、熱ロスを防止し、省電力効果を得ることができ、かつ、湯漏れが発生した場合でも、ルツボ直下に湯漏れ融液の受容量を充分確保でき、安全性を確保することができる単結晶育成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のCZ法単結晶育成装置の第1の形態を示す図である。
【図2】本発明のCZ法単結晶育成装置の第2の形態を示す図である。
【図3】従来のCZ法単結晶育成装置の一例を示す図である。
【図4】本発明のCZ法単結晶育成装置の第1断熱板の一例を示す上面図である。
【図5】本発明のCZ法単結晶育成装置の第2断熱板の一例を示す上面図である。
【図6】本発明のCZ法単結晶育成装置の第2断熱板の他の形態を示す上面図である。
【図7】本発明のCZ法単結晶育成装置の炭素材筒の形態を示す断面図である。
【図8】本発明のCZ法単結晶育成装置の炭素材筒の別の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。前述の通り、熱ロスを防止し、省電力効果を得ることができ、かつ、安全性も確保できるCZ法単結晶育成装置が望まれていた。そこで、本発明者らは、上記問題点について鋭意検討を重ねた結果、熱ロス低減のためにルツボの下部に配置される断熱板を、断熱板としての機能と湯漏れ受皿としての機能を兼ね備える第1断熱板とすることで、従来、湯漏れ受皿としての機能を果たしていたメインチャンバーの下部空間の容量を気にかけることなく断熱板を厚くすることが可能であることを見出した。また、本発明者らは、このような比較的大型の断熱板であれば、ヒーターによって加熱され高温になる空間の体積を減少させることが可能であり省電力の効果があることを見出した。これにより、本発明者らは、湯漏れ融液の受容量を充分確保した安全な状態のまま、熱ロスを低減でき、省電力化をはかることができるCZ法単結晶育成装置となることを見出した。しかし、断熱材が漏れてきた湯を全量受け取り湯漏れ受として機能するのか不安なため、実験を行った。
【0037】
〔実験例1〕
等方性黒鉛で作製したヒーター及びルツボを備えた、チョクラルスキー法を模した簡単な炉を用意した。そのルツボの下端には穴を開けておき、その中にシリコン原料を入れておいて原料が溶融すると湯漏れが発生するようにした。また炉の下側には等方性黒鉛の湯漏れ受皿内に炭素繊維材からなる断熱材を充填して、ルツボの下に配置した。このとき断熱材の厚さは10cmとした。断熱材は炭素繊維系のものを用いた。炭素繊維の断熱材はその嵩密度が0.1〜1.0g/cmのものがラインナップされているが、最も標準的なものは0.13〜0.16g/cmである。なお、後述する実施例、比較例では全てこの嵩密度の炭素繊維断熱材を用いた。
【0038】
このヒーターに電力を供給し加熱を開始した。ルツボ内に入ったシリコン原料の一部が溶解し始めたのを確認し、5分程度経過した後、切電して冷却した。炉内が冷えた後中から湯漏れ受内の断熱材を取り出して観察した。その結果、断熱材の表面から厚さ数cmまでシリコンが浸透しており、そこから下へのシリコンの浸透はなかった。また断熱材の表面には固まったシリコンが隆起していた。
【0039】
以上のことから、湯漏れが少量ずつ発生した場合には、断熱材の表面近傍でシリコンが固まってしまい、吸収しきれないシリコンが表面に残ってしまうことが確認できた。従って、この状態が継続して大量の湯漏れに至った場合には、断熱材の上部しか湯漏れ融液を収容できず、断熱板から湯があふれ出す可能性があることがわかった。
【0040】
この実験結果を考察し、最終的に本発明を完成させた。以下、図面を用いて本発明についてより詳細に説明する。
【0041】
〔単結晶育成装置〕
本発明は、原料融液を収容するルツボと前記原料融液を加熱するヒーターとを格納するメインチャンバーを具備するチョクラルスキー法によって単結晶インゴットを製造する単結晶育成装置であって、
前記ルツボの下側であって前記メインチャンバーの底部に接触しない中空に、前記ルツボから漏れてきた融液を収容することのできる、炭素材からなる第1断熱板を有し、
前記第1断熱板は、受皿形状を有し、炭素繊維からなる断熱材で充填されたものであり、
前記第1断熱板の湯漏れ融液の受容量は、前記ルツボに収容された原料融液の最大容量以上であることを特徴とする単結晶育成装置である。まず、本発明の各形態について詳細に説明し、次に本発明の各構成要件について説明する。
【0042】
〔第1の形態〕
図1のような第1の形態の単結晶育成装置1では、従来用いられる断熱板の代わりに、湯漏れ融液17を収容することのできる受皿形状を有する第1断熱板4’を利用するものである。図3のような従来のチョクラルスキー法によって単結晶インゴットを製造する単結晶育成装置101では、原料融液105を収容するルツボ103とそれを加熱するヒーター106があり、それらの下側には主に熱ロスを防止するための断熱板104が設けられ、メインチャンバー102がこれらを格納している。従来の断熱板104は熱ロスの低減が主目的であるので、炭素繊維からなる板状に成形した断熱材が主として用いられており、また、シリコン単結晶育成の場合には珪化耐性の面で等方性黒鉛材などの炭素材を断熱板の上面や下面に配したサンドイッチ構造のものを用いることもある。しかし、このような断熱板104は湯漏れ融液を収容することのできるものとして考慮されていないため、受皿形状を有さず湯漏れが発生した際にここに湯を溜めるような構造にはなっていない。
【0043】
図1の本発明のチョクラルスキー法によって単結晶インゴットを製造する単結晶育成装置1は、原料融液5を収容するルツボ3とそれを加熱するヒーター6とを格納するメインチャンバー2を具備する。このメインチャンバー2の底部にある湯漏れ受皿8に接触しない中空に、ルツボ3から漏れてきた融液を収容する炭素材からなる第1断熱板4’が設置されている。
【0044】
湯漏れ融液17を収容する機能を兼ねる第1断熱板4’は受皿形状を有するものであり、この受皿形状は炭素材による筒状の側壁を設け、これを炭素材からなる底板と接合させることによって形成することができる。もちろん、このような第1断熱板4’の受皿形状を一体物として成型、切り出すことも可能である。また、一定の断熱効果を得るために、この第1断熱板4’内には炭素繊維からなる断熱材16が充填される。さらに、断熱材16は湯漏れ融液17を吸収可能なものである。また、第1断熱板4’の湯漏れ融液の受容量はルツボ3に収容された原料融液5の最大容量以上である必要がある。これにより、湯漏れが発生した場合でも、湯漏れ融液の受容量を充分確保でき、安全性を確保することができる単結晶育成装置となる。
【0045】
このような第1断熱板4’は一般に従来の断熱板よりも大きく厚くなると考えられる。本発明では、比較的大きな第1断熱板4’をルツボ3やヒーター6の直下に配することになるので、省電力効果が期待できる。さらに、第1断熱板4’は通常は断熱板として機能しているが、万が一湯漏れが発生した際には湯漏れ受皿として働くので、効率的に安全を確保できる。また、第1断熱板4’はヒーター6やルツボ3に近い位置にあるため、メインチャンバー底部に配される湯漏れ受皿8内の断熱材9より高温である。そのため、漏れた融液17が断熱材16の途中で固化して、それ以上融液が浸透しない領域が発生する心配も減少する。
【0046】
第1の形態において湯漏れが発生した際には、融液17は第1断熱板4’の上面の板状炭素材に落下し、誘導構造4’a,4’bを通って流れて、断熱材16が充填された第1断熱板4’に落下してそこで吸収されることができる(図1、4)。これにより、第1断熱板4’を有する単結晶育成装置1は、湯漏れ容量を充分確保した安全な状態のまま、熱ロスを低減でき、省電力化をはかることができるCZ法単結晶育成装置となる。しかしながら、実験例で示されたように、少量の湯漏れであったり、厚い断熱板の下側は低温なので液体のまま下部まで到達せず途中で固まってしまう心配がある。そこで、貫通孔16aを設けることが好ましい。更には、湯漏れを早期に検出するために、断熱材の貫通孔16aの直下に湯漏れを検知するセンサー11を配置することが好ましい。
【0047】
尚、本発明においては上記以外の構成については従来と同じとすることができる。例えば、ルツボ3を回転させるルツボ保持軸10及びその回転機構(不図示)と、シリコンの種結晶13を保持するシードチャック14と、シードチャック14を引上げるワイヤ15と、ワイヤ15を回転または巻き取る巻き取り機構(不図示)を備えて構成されることができる。また、ルツボ3は、その内側の原料融液5を収容する側には石英ルツボ3aが設けられ、その外側には黒鉛ルツボ3bが設けられている。さらに、ヒーター6の外側周囲にはヒーター断熱材7が設置されている。また、メインチャンバーの底部に薄板状の底部断熱材を配置しても良い。
【0048】
〔第2の形態〕
図2に本発明の単結晶育成装置の第2の形態を示す。第2の形態の単結晶育成装置1’では、ルツボ3と第1断熱板4’との間に第2断熱板4”及び下部ヒーター(不図示)の少なくとも一方が設置される。第1断熱板4’の受皿形状としては、上述したような一体成型や筒状側壁と底板との組み合わせなどが可能である。前述した第1の形態のように、第1断熱板4’だけを配した状態でも湯漏れ発生時の安全性に問題ないが、省電力の観点からは第2断熱板4”及び下部ヒーターの少なくとも一方が配置されることが望ましい。また、ルツボ3が劣化したり、地震等により引上げ中の単結晶が落下したりして、ルツボが破壊されて湯のほぼ全量が流出する場合を想定すると、第1断熱板4’の湯漏れ融液の受容量はルツボ3に収容された原料融液5の最大容量以上であることが必要である。
【0049】
このように、本発明の第2の形態では、第1断熱板4’に加え、第2断熱板4”が構築されるため、より高い省電力効果が期待できる。また、第1の形態と同じく、第2の形態においても第1断熱板4’は冷却されているメインチャンバー2と直接接触しているわけではないため、メインチャンバー2の底部に配される湯漏れ受皿8内の断熱材9よりも高温である。そのため、漏れた融液17が断熱材16の途中で固化し、湯漏れ融液の受容量として見込めない領域が発生するような事態も減少する。更に、第2の形態の場合には断熱板の代わりに下部ヒーターが用いられるような操業においても適用することが可能であり、汎用性が高いものとなる。
【0050】
第2の形態において湯漏れが発生した際には、融液17は第2断熱板4”に落下し、次に第2断熱板4”上を誘導構造4”a,4”bを通って流れて、所定の位置から落下し、第1断熱板4’に充填された断熱材16に吸収される(図2、5)。なお、図2ではルツボ下に第2断熱板4”を装着した場合を記載したが、第2断熱板4”ではなく下部ヒーターを設置する場合があり、その場合には下部ヒーターに誘導構造を施すことも可能である。以上のような形態であれば、ヒーターによって加熱され高温になる空間の体積を減少させることも可能であり、より省電力の効果がある。
【0051】
〔第3の形態〕
本発明の単結晶育成装置の第3の形態では、前述の第2断熱板4”も、ルツボ3から漏れてきた融液17を収容することのできるものとする。第3の形態では、本発明における第1断熱板4’の湯漏れ融液の受容量と、第2断熱板4”の湯漏れ融液の受容量とを足し合わせた容量は、ルツボに収容される原料融液の最大容量より大きくなり、安全性の観点からさらに好ましい。
【0052】
これら第1断熱板4’や第2断熱板4”の保持方法は、例えば3本以上の足を設けて支える方法(図2に例を示した)でも良いし、ルツボ3を支える軸10やヒーター6を支える軸に保持部分(図1に例を示した)を設けてそれらの軸に保持させても良い。もちろん、第1断熱板4’や第2断熱板4”の保持は固定式でも可動式でも良い。例えば、ルツボ軸に保持させる可動式の場合には、単結晶育成時に上昇して行くルツボとの距離が広がらず熱ロスの減少、省電力の観点から効果的である。何れにしても第1断熱板4’や第2断熱板4”を保持する接点を小さくすることで中空に浮かせ、熱ロスをできる限り低減することが望ましい。
【0053】
実際に、第3の形態において湯漏れが発生した際には、融液17は第2断熱板4”に落下し、第1断熱板及び第2断熱板内へ誘導されて、断熱材に吸収されることができる(不図示)。以下、本発明の単結晶育成装置の各構成要素について詳細に説明する。
【0054】
〔第1断熱板〕
本発明の単結晶育成装置では、ルツボから漏れてきた融液を収容することのできる、炭素材からなる第1断熱板が、ルツボの下側であってメインチャンバーの底部に接触しない中空に配置される。また、第1断熱板は、受皿形状を有し、炭素繊維からなる断熱材で充填されたものであり、湯漏れ融液の受容量はルツボに収容された原料融液の最大容量以上である。
【0055】
尚、最大容量とは、その装置に装備されるルツボの口径及び高さにより定まるもので、用いたルツボに充填可能な原料融液の最大容積のことである。通常はルツボに最初に充填される原料の量である初期チャージ量がこれにあたる。
【0056】
この第1断熱板の受皿形状の上面は断熱材がむき出しになっていても、もちろんルツボから漏れてきた融液を収容することのできるので問題ないが、第1断熱板はシリコンなど原料の蒸気にさらされるので、例えば珪化などで脆くなってしまうことがある。そこで、第1断熱板4’の受皿形状の上面には、板状の炭素材を配することが好ましく、特に、ルツボ3から漏れてきた湯漏れ融液17を誘導して第1断熱板4’内へ落下させるための誘導構造4’a,4’bを有する板状の炭素材を配することがより好ましい(図1,4)。これにより、断熱材の上面が珪化などで脆くなってしまうことを防ぎ、その上、ルツボから漏れてくる融液を所望の位置に誘導することができる。
【0057】
〔第2断熱板及び下部ヒーター〕
本発明の単結晶育成装置としては、ルツボと第1断熱板との間に第2断熱板及び下部ヒーターの少なくとも一方が設置されたものとすることができる。さらに、第2断熱板及び下部ヒーターはルツボから漏れてきた湯漏れ融液を誘導して第1断熱板へ落下させるための誘導構造を有するものであることが好ましい。このように、第2断熱板又は下部ヒーターを設置することで、熱ロスを防止し、更なる省電力効果を得ることができ、誘導構造により湯漏れ融液を本発明の第1断熱板へ確実に誘導することができる。
【0058】
また、第2断熱板は、ルツボから漏れてきた融液を収容することのできるものであることが好ましい。これにより第1断熱板4’の湯漏れ融液の受容量と、第2断熱板4”の湯漏れ融液の受容量とを足し合わせた容量は、ルツボに収容される原料融液の最大容量より大きくなり、安全性の高い単結晶育成装置となる。また、この場合、第2断熱板は、受皿形状を有し、炭素繊維からなる断熱材で充填されたものとすることができる。
【0059】
第2断熱板は、少なくともルツボ面側に、誘導構造が形成された板状の炭素材を有するものであることが好ましい。これにより、適切に、ルツボから漏れてきた湯漏れ融液を誘導構造で誘導して第1断熱板へ落下させ、落下した湯漏れ融液を断熱材へ吸収させることができる単結晶育成装置となる。
【0060】
〔誘導構造〕
前述の第1断熱板、第2断熱板、及び下部ヒーターは誘導構造を有することができる。これらの誘導構造により融液は断熱板の外周部から下に落とすか、又は断熱板に貫通孔を設けそこから下に落とすことができる。具体的には、誘導構造として誘導壁、凹凸形状、又はテーパー形状を設けたりすることができ、その先には、断熱板外周部に形成した堤の切れ目を用意したり、又は断熱板に貫通孔を形成したりして、そこから湯漏れ溶融液を落下させる構造とすることができる(図1〜6)。このような誘導構造を有することで、適切に、湯漏れ融液を誘導して第1断熱板へ落下させ、落下した湯漏れ融液を断熱材へ吸収させることができるため、より安全性が向上した単結晶育成装置となる。
【0061】
図1、図4には、第1断熱板4’上にテーパー構造4’aを設けて、貫通孔4’bに融液を誘導して落下させる誘導構造を例示した。また、図2、5には、第2断熱板4”の外周部及び内側に誘導壁4”aを設け、更に外周部の誘導壁4”aの一部を切り欠いた誘導壁の切れ目4”bから融液を下に落下させる誘導構造を例示してある。更に、図6には、第2断熱板4”の外周部及び内側に誘導壁4”aを設け、第2断熱板4”の貫通孔4”dから融液を落下させる誘導構造を例示した。このほかに貫通孔に融液を導入する誘導壁などを形成することも可能である。なお、第1及び第2断熱板の貫通孔や誘導壁の切れ目の下部には、第1及び第2断熱板を構成する断熱材に上面から直接融液が浸透しないように、図2などに示したように湯漏れ融液が流れる誘導構造を炭素材等で形成しておくことがより好ましい。
【0062】
〔断熱材〕
本発明における炭素繊維からなる断熱材としては、ルツボから漏れてきた湯漏れ融液を吸収できる断熱材であり、低密度の炭素繊維からなる材料が好ましい。第1断熱板に充填された断熱材には、断熱板上部に形成された誘導構造によって誘導された融液が流れ込んでくる。その際に、融液が断熱材の途中で固化してしまい、湯漏れ融液が吸収されない領域が形成される事態を避けることが望ましい。そのため、融液が断熱板底部まで到達しやすいように、本発明の単結晶育成装置では、第1断熱板に充填された断熱材は、誘導構造から湯漏れ融液が落下する部分に、落下した湯漏れ融液を第1断熱板の底部に導くための貫通孔を有することが好ましい。
【0063】
図1、2には第1断熱板4’の断熱材16に貫通孔16aを設けた例を示した。落下した融液はこの貫通孔16aを通じて最下端に到達することが可能である。これにより、湯漏れ融液17は、断熱材16の途中で固化することがなく、第1断熱板4’の底部に誘導され、吸収される。そのため、第1断熱板4’の容積を全て湯漏れ融液の受容量と見込むことができる。なお、第3の形態のように、第2断熱板4”がルツボ3から漏れてきた融液17を収容することのできるものである場合には、炭素繊維からなる断熱材で第2断熱板が充填されることもでき、該断熱材にも貫通孔を設けることができる。
【0064】
〔炭素材筒〕
また、本発明の単結晶育成装置では、断熱材の貫通孔内に炭素材筒を有し、該炭素材筒は、炭素材筒内を通って第1断熱板の下部に導かれた融液が炭素材筒の下端部で筒外に流出可能なように、断熱材の貫通孔内に配置されたものであることが好ましい。
【0065】
湯漏れの状況によっては、湯漏れ融液が貫通孔の途中の断熱材に吸収されてしまい、下端に到達できない可能性も考えられるので、断熱板4’の貫通孔16a内に炭素材からなる筒18a,18b,18c,18dを設置しその中に融液を通すことがより望ましい(図7、8)。ただし、炭素材筒の下端部をそのまま第1断熱板の底部に接触させてしまうと、筒内を通ってきた融液が筒外に流れ出る経路を形成できない。そこで、この炭素材筒の保持方法として、炭素材筒18aの下端部に足18aを設けて、又は炭素材筒18dに穴などを形成して第1断熱板4’に設置するのが好ましい(図7左、図8右に例を示した)。又は、炭素材筒18b,18cの下端部を第1断熱板4’ではなくその内部に充填されている断熱材16によって保持することもできる(図7右、図8左に例を示した)。
【0066】
以上のように貫通孔に炭素材筒を設けて融液を最下端部まで導入した場合においても、融液が落下したと同時に固化する温度まで下がってしまい、第1断熱板内の貫通孔に導入した炭素材筒の下部を塞いでしまう可能性もゼロではない。これを防止するための態様として、炭素材筒18c,18dのように、側面に複数の穴が開けられた直胴部を有する炭素材筒とすることが好ましい(図8右、左に例を示した)。これにより、その穴を通じて融液が断熱材側へ流出可能となる。
【0067】
〔湯漏れを検知するセンサー〕
以上のような第1断熱板とその湯漏れ融液の受容量を用意した場合であっても、湯漏れをいち早く発見し対処したほうが、更に安全であることは言うまでもない。そのために図1、2に示したように、第1断熱板4’は、断熱材16の貫通孔16aの直下に湯漏れを検知するセンサー11を有することが好ましい。これにより、断熱材の誘導構造へ導かれた湯漏れ融液をいち早く発見することができ、より安全性が確保される単結晶育成装置となる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の実施例および比較例をあげてさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0069】
〔実施例1〕
図1に示すように、メインチャンバーの底部に接触しない中空に第1断熱板を備えた単結晶育成装置を準備した。ここで、第1断熱板は図1に例示される板状炭素材を上面に有するものとした。また、第1断熱板の湯漏れ融液の受容量は、ルツボに収容された原料融液の最大容量以上とした。なお、第1断熱板に充填された断熱材は厚さを240mmとし、0.13〜0.16g/cmの最も標準的な嵩密度のものを使用した。
【0070】
この単結晶育成装置のメインチャンバー内で、直径26インチ(約65cm)のルツボに200kgの原料融液を収容し、磁場印加チョクラルスキー法(MCZ法)により直径8インチ(約20cm)のシリコン単結晶を育成した。より詳細には、ルツボ中の原料融液に種結晶を浸漬した後、溶融液から棒状の単結晶を引き上げながら、結晶成長軸方向に昇降可能なルツボを結晶成長中に結晶化して減少した融液の液面下降分を補うように上昇させ、融液表面の高さを一定に保ちながら行った。このときの第1断熱板の湯漏れ受の容積は、200kgのシリコンの固体の容積の1.2倍であった。
【0071】
〔実施例2〕
図2に示すように、メインチャンバーの底部に接触しない中空に第1断熱板を備え、ルツボと第1断熱板との間に第2断熱板を設置した単結晶育成装置を準備した。また、第1断熱板の湯漏れ融液の受容量は、ルツボに収容された原料融液の最大容量以上とした。なお、第1断熱板に充填された断熱材の厚さは180mmとし、0.13〜0.16g/cmの最も標準的な嵩密度のものを使用した。また、第2断熱板は板状炭素材の等方性黒鉛で形成され、誘導構造として図2及び図5に示されるように外周部に誘導壁を設け、誘導壁の一部に切り欠きを設けたものとした。
【0072】
この単結晶育成装置のメインチャンバー内に直径65cmのルツボを装備して、実施例1と同様に磁場印加チョクラルスキー法(MCZ法)により直径20cmのシリコン単結晶を育成した。このときの第1断熱板の湯漏れ受の容積は、200kgのシリコンの固体の容積の1.2倍であった。
【0073】
〔比較例〕
図3に示すように、本発明のような第1断熱板を有さない従来の単結晶育成装置を準備した。ここで、メインチャンバーの底部の湯漏れ受皿の内壁には厚さ2〜3cmの平面状の断熱材を配置した。さらに、厚さ60mmの断熱材を断熱板として用いた。
【0074】
この単結晶育成装置のメインチャンバー内に直径65cmのルツボを装備して、実施例1と同様に磁場印加チョクラルスキー法(MCZ法)により直径20cmのシリコン単結晶を育成した。
【0075】
実施例1〜2の単結晶育成装置でも比較例の単結晶育成装置でも問題なく結晶を育成することができたが、比較例ではメインチャンバーの底部からの熱ロスが大きかった。これに比べ、実施例1では、断熱材が充填された大型の第1断熱板を有するため、熱ロスが小さく、結果として、比較例と比較して約6%の省電力を達成することができた。さらに、第1断熱板に加え、第2断熱板を有する実施例2では、比較例と比較して約10%の省電力を達成することができた。
【0076】
また、実施例1〜2では、第1断熱板はルツボに収容された原料融液の最大容量以上の湯漏れ融液の受容量を有するものであるため、湯漏れが発生した場合でも湯漏れ受容量を確保でき、安全性を確保しながら省電力効果を得ることができる単結晶育成装置となる。これに比べ、比較例では熱ロスを減少させるために断熱板を大きく設計した場合には湯漏れ容量を確保できないおそれがあるため安全性から問題がある。
【0077】
ここではシリコン単結晶育成を例に説明を行ったが、本発明はシリコン単結晶の製造に用いられる単結晶育成装置に限られるものではなく、化合物半導体や酸化物単結晶などのCZ法を用いた単結晶育成装置に適用可能である。
【0078】
また、本発明の主旨はメインチャンバーの底部に接触しない中空に第1断熱板を有し、この第1断熱板によって従来の湯漏れ受皿の役割も兼ねることにある。これにより、本発明は、省電力と安全性の両者を兼ね備える単結晶育成装置となる。なお、この概念を有するかぎり、種々の変形、応用が可能であるのは当然である。
【0079】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0080】
1,1’…単結晶育成装置、 2…メインチャンバー、 3…ルツボ、 3a…石英ルツボ、 3b…黒鉛ルツボ、 4’…第1断熱板、 4’a…テーパー構造、 4’b…貫通孔、 4”…第2断熱板、 4”a…誘導壁、 4”b…誘導壁の切れ目、 5…原料融液、 6…ヒーター、 7…ヒーター断熱材、 8…湯漏れ受皿、 10…ルツボ保持軸、 11…湯漏れを検知するセンサー、 12…シリコン単結晶、 13…種結晶、 14…シードチャック、 15…ワイヤ、 16…断熱材、 16a…断熱材の貫通孔、 17…湯漏れ融液、 18a,18b,18c,18d…炭素材筒、 18a…足、 101…単結晶育成装置、 102…メインチャンバー、 103…ルツボ、 103a…石英ルツボ、 103b…黒鉛ルツボ、 104…断熱板、 105…原料融液、 106…ヒーター、 107…ヒーター断熱材、 108…湯漏れ受皿、 109…断熱材、 110…ルツボ保持軸、 112…シリコン単結晶、 113…シリコンの種結晶、 114…シードチャック、 115…ワイヤ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料融液を収容するルツボと前記原料融液を加熱するヒーターとを格納するメインチャンバーを具備するチョクラルスキー法によって単結晶インゴットを製造する単結晶育成装置であって、
前記ルツボの下側であって前記メインチャンバーの底部に接触しない中空に、前記ルツボから漏れてきた融液を収容することのできる、炭素材からなる第1断熱板を有し、
前記第1断熱板は、受皿形状を有し、炭素繊維からなる断熱材で充填されたものであり、
前記第1断熱板の湯漏れ融液の受容量は、前記ルツボに収容された原料融液の最大容量以上であることを特徴とする単結晶育成装置。
【請求項2】
前記第1断熱板は、前記受皿形状の上面に、前記ルツボから漏れてきた湯漏れ融液を誘導して前記第1断熱板内へ落下させるための誘導構造を有する炭素材を配したものであることを特徴とする請求項1に記載の単結晶育成装置。
【請求項3】
前記ルツボと前記第1断熱板との間に第2断熱板及び下部ヒーターの少なくとも一方が設置されたものであって、前記第2断熱板及び前記下部ヒーターは前記ルツボから漏れてきた湯漏れ融液を誘導して前記第1断熱板へ落下させるための誘導構造を有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単結晶育成装置。
【請求項4】
前記第2断熱板は、前記ルツボから漏れてきた融液を収容することのできるものであることを特徴とする請求項3に記載の単結晶育成装置。
【請求項5】
前記第2断熱板は、少なくともルツボ面側に、前記誘導構造が形成された板状の炭素材を有するものであることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の単結晶育成装置。
【請求項6】
前記第1断熱板に充填された断熱材は、前記第1断熱板、前記第2断熱板、又は前記下部ヒーターの誘導構造から湯漏れ融液が落下する部分に、落下した前記湯漏れ融液を前記第1断熱板の底部に導くための貫通孔を有することを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の単結晶育成装置。
【請求項7】
前記第1断熱板に充填された断熱材の貫通孔内に炭素材筒を有し、該炭素材筒は、前記炭素材筒内を通って前記第1断熱板の下部に導かれた融液が前記炭素材筒の下端部で筒外に流出可能なように、前記第1断熱板に充填された断熱材の貫通孔内に配置されたものであることを特徴とする請求項6に記載の単結晶育成装置。
【請求項8】
前記炭素材筒は、側面に複数の穴が開けられた直胴部を有することを特徴とする請求項7に記載の単結晶育成装置。
【請求項9】
前記第1断熱板は、該第1断熱板に充填された断熱材の貫通孔の直下に湯漏れを検知するセンサーを有することを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の単結晶育成装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−18686(P2013−18686A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154799(P2011−154799)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】