説明

単結晶製造装置

【課題】非単結晶原料から単結晶をチョクラルスキー法により製造する単結晶製造装置において、坩堝を支持し、かつ、回転させる回転軸の交換によるコストを抑制可能な単結晶製造装置を提供する。
【解決手段】非結晶原料が充填される坩堝12と、坩堝12を回転可能に支持する回転軸15とを備える単結晶製造装置10において、回転軸15は、この回転軸15の軸方向に並んで互いに着脱可能に組み合わされた複数の係合部材15a,15b,15cから構成される。このため、複数の係合部材のいずれかが劣化して破損した場合に、その破損した係合部材のみを交換することにより復旧することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶や非晶質などの単結晶に比べて結晶性の乏しい非単結晶原料から単結晶を製造する方法としてチョクラルスキー(CZ)法がある。CZ法による単結晶製造装置では、原料を充填するルツボを回転軸により支持する。シリコンなどの高融点材料の単結晶を製造する際には、一般的に回転軸の素材として高強度性および高耐熱性を有するカーボンが用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
シリコンなどの高融点材料の単結晶製造装置において、坩堝を支持し、かつ、回転させる回転軸は、高温に曝されるとともに繰り返し熱応力および回転力が負荷される。そのため、回転軸の一部が劣化して破損することがある。回転軸の破損は、他構成部材と接触する上端もしくは下端、または、上端もしくは下端の付近で発生しやすいことが分かっている。破損した回転軸は交換する必要があり、単結晶の製造コストを上げる一因となっている。
【0004】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、回転軸を部分的に交換可能に構成することにより、回転軸の交換によるコストを抑制可能な単結晶製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に基づく単結晶製造装置は、非単結晶原料から単結晶をチョクラルスキー法により製造する単結晶製造装置である。単結晶製造装置は、非単結晶原料が充填される坩堝と、坩堝を回転可能に支持する回転軸とを備える。回転軸は、この回転軸の軸方向に並んで互いに着脱可能に組み合わされた複数の係合部材を含む。
【0006】
本発明の一形態においては、複数の係合部材のうちの1つの係合部材が、上記軸方向の一端に凸部を有する。複数の係合部材のうちの他の1つの係合部材が、上記軸方向の他端に凹部を有する。凸部と凹部とが係合することにより、上記1つの係合部材と上記他の1つの係合部材とが組み合わされる。
【0007】
本発明の一形態においては、上記凸部の高さと上記凹部の深さとが異なり、上記1つの係合部材と上記他の1つの係合部材との間に隙間が形成されている。
【0008】
本発明の一形態においては、上記凸部の幅と上記凹部の幅が異なり、上記1つの係合部材と上記他の1つの係合部材との間に隙間が形成されている。
【0009】
本発明の一形態においては、回転軸が中空構造を有する。
本発明の一形態においては、回転軸の内部に、断熱部材が位置する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転軸を部分的に交換でき、部材交換コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係る単結晶製造装置の構成を示す断面図である。
【図2】同実施形態に係る回転軸の構造を示す断面図である。
【図3】同実施形態の第1変形例に係る回転軸の構造を示す一部断面図である。
【図4】同実施形態の第2変形例に係る回転軸の構造を示す一部断面図である。
【図5】同実施形態の第3変形例に係る回転軸の構造を示す一部断面図である。
【図6】同実施形態の第4変形例に係る回転軸の構造を示す一部断面図である。
【図7】同実施形態の第5変形例に係る回転軸の構造を示す一部斜視図である。
【図8】本発明の実施形態2に係る単結晶製造装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態1に係る単結晶製造装置について説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0013】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る単結晶製造装置の構成を示す断面図である。図1に示すように、本発明の実施形態1に係る単結晶製造装置10は、チャンバー11を有し、チャンバー11の内部に多結晶または非晶質などの単結晶に比べて結晶性の乏しい非単結晶原料が充填される坩堝が配置されている。チャンバー11の内側は、断熱材18で覆われている。
【0014】
本実施形態においては、坩堝は、2重構造を有しており、内側の石英製の坩堝12と外側のカーボン製の坩堝13とから構成されている。坩堝は、坩堝13の下部に取り付けられた受け皿14を介して円柱状の外形を有する回転軸15により回転可能に支持されている。
【0015】
回転軸15は、回転軸15の軸方向に並んで互いに着脱可能に組み合わされた複数の係合部材を含む。回転軸15は、カーボンで形成されている。本実施形態においては、上部係合部材15a、中部係合部材15bおよび下部係合部材15cの3つの中実の係合部材から回転軸15が構成されている。ただし、複数の係合部材の数は3つに限られず、複数であればよい。
【0016】
回転軸15は、金属シャフト16上に設置されている。金属シャフト16が回転駆動されることにより、回転軸15が回転する。坩堝の上方には、製造された単結晶1を引き上げるためのワイヤまたはシャフト19が配置されている。
【0017】
図2は、本実施形態に係る回転軸の構造を示す断面図である。図2に示すように、上部係合部材15aは、回転軸15の軸方向の下端に凹部152を有する。中部係合部材15bは、回転軸15の軸方向の上端に円柱状の凸部151および下端に凹部152を有する。下部係合部材15cは、回転軸15の軸方向の上端に円柱状の凸部151を有する。
【0018】
本実施形態においては、凸部151の高さと凹部152の深さとは略等しい。また、凸部151の幅と凹部152の幅とは略等しい。
【0019】
上部係合部材15aの凹部152と中部係合部材15bの凸部151とが係合することにより、上部係合部材15aと中部係合部材15bとが組み合わされる。中部係合部材15bの凹部152と下部係合部材15cの凸部151とが係合することにより、中部係合部材15bと下部係合部材15cとが組み合わされる。このように、着脱可能な3つの係合部材から回転軸15が構成されている。
【0020】
なお、凸部151と凹部152とは、互いに逆向きに形成されていてもよい。すなわち、上部係合部材15aは、回転軸15の軸方向の下端に凸部を有し、中部係合部材15bは、回転軸15の軸方向の上端に凹部および下端に凸部を有し、下部係合部材15cは、回転軸15の軸方向の上端に凹部を有してもよい。
【0021】
上部係合部材15aと中部係合部材15bとの間、および、中部係合部材15bと下部係合部材15cとの間には、坩堝などの重さにより互いの間に摩擦力が働く。この摩擦力により、回転軸15が一体で回転する。
【0022】
回転軸15を着脱可能な複数の係合部材で構成することにより、複数の係合部材のいずれかが劣化して破損した場合に、その破損した係合部材のみを交換することにより復旧することができる。
【0023】
また、回転軸15を複数の係合部材で構成することにより、係合部材同士の間の界面で伝熱抵抗が発生するため、回転軸15を伝わって拡散する熱量を低減することができる。その結果、回転軸15の下端または下端付近での熱応力が抑制され、回転軸15の破損頻度を低減することができる。また、ヒータ17の消費電力を低減することができる。
【0024】
図3は、本実施形態の第1変形例に係る回転軸の構造を示す一部断面図である。図3に示すように、第1変形例においては、凸部151aの高さL1と凹部152aの深さL2とが異なる。具体的には、L2>L1である。または、L1>L2であってもよい。
【0025】
その結果、上部係合部材15aと中部係合部材15bとの間に隙間が形成される。同様に、中部係合部材15bと下部係合部材15cとの間に隙間が形成される。この形成された隙間により、上部係合部材15aと中部係合部材15bとの接触面積、および、中部係合部材15bと下部係合部材15cとの接触面積が低減するため、回転軸15を伝わって拡散する熱量をさらに低減することができる。
【0026】
第1変形例に係る回転軸15においては、回転軸15の径方向において、上部係合部材15aと中部係合部材15bとが互いにずれることを防止できる。同様に、回転軸15の径方向において、中部係合部材15bと下部係合部材15cとが互いにずれることを防止できる。
【0027】
図4は、本実施形態の第2変形例に係る回転軸の構造を示す一部断面図である。図4に示すように、第2変形例においては、凸部151bの幅W1と凹部152bの幅W2とが異なる。具体的には、W2>W1である。
【0028】
その結果、上部係合部材15aと中部係合部材15bとの間に隙間が形成される。同様に、中部係合部材15bと下部係合部材15cとの間に隙間が形成される。この形成された隙間により、上部係合部材15aと中部係合部材15bとの接触面積、および、中部係合部材15bと下部係合部材15cとの接触面積が低減するため、回転軸15を伝わって拡散する熱量をさらに低減することができる。
【0029】
図5は、本実施形態の第3変形例に係る回転軸の構造を示す一部断面図である。図5に示すように、第3変形例においては、凸部151cの幅W1と凹部152cの幅W2とが異なる。具体的には、W2>W1である。ただし、凹部152cは窪みを有しており、窪みの幅はW1と略同等である。また、凸部151cの高さL1と凹部152cの深さL2とが異なる。具体的には、L1>L2である。凸部151cと凹部152cの窪みとは嵌め合っている。
【0030】
その結果、上部係合部材15aと中部係合部材15bとの間に隙間が形成される。同様に、中部係合部材15bと下部係合部材15cとの間に隙間が形成される。この形成された隙間により、上部係合部材15aと中部係合部材15bとの接触面積、および、中部係合部材15bと下部係合部材15cとの接触面積が低減するため、回転軸15を伝わって拡散する熱量をさらに低減することができる。
【0031】
第3変形例に係る回転軸15においては、回転軸15の径方向において、上部係合部材15aと中部係合部材15bとが互いにずれることを防止できる。同様に、回転軸15の径方向において、中部係合部材15bと下部係合部材15cとが互いにずれることを防止できる。
【0032】
図6は、本実施形態の第4変形例に係る回転軸の構造を示す一部断面図である。図6に示すように、第4変形例においては、凸部151dの幅W1と凹部152dの幅W2とが異なる。具体的には、W2>W1である。ただし、凸部151dは肩を有しており、肩幅はW2と略同等である。また、凸部151dの肩の高さL3と凹部152dの深さL2とが異なる。具体的には、L2>L3である。凸部151dの肩と凹部152dとは嵌め合っている。
【0033】
その結果、上部係合部材15aと中部係合部材15bとの間に隙間が形成される。同様に、中部係合部材15bと下部係合部材15cとの間に隙間が形成される。この形成された隙間により、上部係合部材15aと中部係合部材15bとの接触面積、および、中部係合部材15bと下部係合部材15cとの接触面積が低減するため、回転軸15を伝わって拡散する熱量をさらに低減することができる。
【0034】
第4変形例に係る回転軸15においては、回転軸15の径方向において、上部係合部材15aと中部係合部材15bとが互いにずれることを防止できる。同様に、回転軸15の径方向において、中部係合部材15bと下部係合部材15cとが互いにずれることを防止できる。
【0035】
図7は、本実施形態の第5変形例に係る回転軸の構造を示す一部斜視図である。図7に示すように、第5変形例においては、上部係合部材15aは、回転軸15の軸方向の下端に雌螺子部152eを有する。中部係合部材15bは、回転軸15の軸方向の上端に雄螺子部151eおよび下端に雌螺子部152eを有する。
【0036】
上部係合部材15aの雌螺子部152eと中部係合部材15bの雄螺子部151eとが螺合することにより、上部係合部材15aと中部係合部材15bとが組み合わされる。このように構成した場合にも、着脱可能な複数の係合部材から回転軸15を構成することができる。
【0037】
以下、本発明の実施形態2に係る単結晶製造装置について説明する。本実施形態に係る単結晶製造装置20は、回転軸の構成のみ実施形態1に係る単結晶製造装置10と異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
【0038】
(実施形態2)
図8は、本発明の実施形態2に係る単結晶製造装置の構成を示す断面図である。図8に示すように、本発明の実施形態2に係る単結晶製造装置20においては、回転軸25が中空構造を有する。
【0039】
本実施形態においては、上部係合部材25a、中部係合部材25bおよび下部係合部材25cの3つの係合部材から回転軸25が構成されている。上部係合部材25a、中部係合部材25bおよび下部係合部材25cの各々は中空構造を有しており、互いの係合構造は実施形態1に係る回転軸15と同様である。
【0040】
このように、回転軸25を中空構造にすることにより、上部係合部材25aと中部係合部材25bとの接触面積、および、中部係合部材25bと下部係合部材25cとの接触面積が低減するため、回転軸25を伝わって拡散する熱量をさらに低減することができる。または、中空構造にすることにより、各係合部材内での上部から下部への熱伝導が抑制され、回転軸25を伝わって拡散する熱量をさらに低減することができる。
【0041】
また、本実施形態においては、回転軸25の内部に断熱部材21が充填されている。断熱部材21は、たとえば、高珪酸ガラス繊維またはカーボンフェルトなどから構成されている。上部係合部材25aの内部に上部断熱部材21aが充填されている。中部係合部材25bの内部に中部断熱部材21bが充填されている。下部係合部材25cの内部に下部断熱部材21cが充填されている。
【0042】
このように、回転軸25の内部に断熱部材21を充填することにより、回転軸25を伝わって拡散する熱量を低減することができる。その結果、回転軸下端または下端付近での熱応力が抑制され、回転軸の破損頻度を低減することができる。また、ヒータ17の消費電力を低減することができる。
【0043】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
1 単結晶、2 融液、10,20 単結晶製造装置、11 チャンバー、12,13 坩堝、14 受け皿、15,25 回転軸、15a,25a 上部係合部材、15b,25b 中部係合部材、15c,25c 下部係合部材、16 金属シャフト、17 ヒータ、18 断熱材、19 ワイヤまたはシャフト、21 断熱部材、21a 上部断熱部材、21b 中部断熱部材、21c 下部断熱部材、151,151a,151b,151c,151d 凸部、151e 雄螺子部、152,152a,152b,152c,152d 凹部、152e 雌螺子部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非単結晶原料から単結晶をチョクラルスキー法により製造する単結晶製造装置であって、
非単結晶原料が充填される坩堝と、
前記坩堝を回転可能に支持する回転軸と
を備え、
前記回転軸は、該回転軸の軸方向に並んで互いに着脱可能に組み合わされた複数の係合部材を含む、単結晶製造装置。
【請求項2】
前記複数の係合部材のうちの1つの係合部材が、前記軸方向の一端に凸部を有し、
前記複数の係合部材のうちの他の1つの係合部材が、前記軸方向の他端に凹部を有し、
前記凸部と前記凹部とが係合することにより、前記1つの係合部材と前記他の1つの係合部材とが組み合わされる、請求項1に記載の単結晶製造装置。
【請求項3】
前記凸部の高さと前記凹部の深さとが異なり、
前記1つの係合部材と前記他の1つの係合部材との間に隙間が形成された、請求項2に記載の単結晶製造装置。
【請求項4】
前記凸部の幅と前記凹部の幅が異なり、
前記1つの係合部材と前記他の1つの係合部材との間に隙間が形成された、請求項2に記載の単結晶製造装置。
【請求項5】
前記回転軸が中空構造を有する、請求項1から4のいずれかに記載の単結晶製造装置。
【請求項6】
前記回転軸の内部に、断熱部材が位置する、請求項5に記載の単結晶製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−107808(P2013−107808A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256343(P2011−256343)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】