説明

印刷ヘッド組立体における微弱インクジェット、間欠インクジェット又は欠落インクジェットを補償するシステム

【課題】周囲のインクジェットを使用して、画像基材の追加パスを必要とすることなくまた印刷プロセスを遅くすることなく、欠落インクジェット、間欠インクジェット又は微弱インクジェットを補償することを可能にする。
【解決手段】システムは、1組の所定の発射信号パラメータ212を基準にして複数のインクジェット発射信号を生成するように構成された印刷ヘッド発射信号発生器204と、不良インクジェットを識別する信号に応じて不良インクジェットの近くのインクジェットによって射出される第1の量の液体インクを増やすために、少なくとも1つの所定の発射信号パラメータ212を修正するように構成された発射信号調整回路208とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、インクジェットから画像基材上にインクを射出する画像形成装置に関し、より詳細にはインクジェット差異を補償するためにインクジェットの発射信号を正規化する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、プロッタ、ファクシミリ装置等の商品では、印刷媒体を作成するためにドロップ・オン・デマンド・インクジェット技術が利用されてきた。一般に、インクジェット画像は、印刷ヘッド又は印刷ヘッド組立体上に配列された複数の液滴発生器又はインクジェットから画像基材上にインク滴を選択的に射出することによって形成される。例えば、印刷ヘッド組立体と画像基材が互いに対して移動され、インクジェットは、インク滴を適切な時間に放出するように制御される。インクジェット活動化のタイミングは、インクジェットを活動化させてインクを射出させる発射信号を生成する印刷ヘッド・コントローラによって実行される。画像基材は、印刷ドラムやベルト等の中間画像部材の場合もあり、インク画像は後で中間画像部材から紙等の印刷媒体に転写される。画像基材は、インク滴が直接射出される印刷媒体の移動ウェブやシートでもよい。インクジェットから射出されるインクは、プリンタに組み込まれた容器に蓄積された水性インク、溶剤インク、油性インク、UV硬化インク等の液体インクでよい。代替として、インクは、溶融装置に送られる固体形態で装填される場合もあり、溶融装置が、固体インクをその溶融温度まで加熱して、印刷ヘッドに供給される液体インクを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7021739号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷ヘッドの製造と組み立ての際にインクジェットにばらつきが生じる場合がある。そのばらつきには、インクジェット・ノズル直径、チャネルの幅や長さ等の物理的特性の違いや、インクジェットの熱的又は機械的活性力等の電気特性の違いがある。これらのばらつきによって、同じ大きさ又は同じ周波数の発射信号に応じてインクジェットから射出されるインクの量に差異が生じることがある。そのような差異を補償するために、これまで知られている幾つかのプリンタは、印刷ヘッド内の各インクジェットの発射信号を正規化するプロセスを実行する。従って、個々のインクジェットを活動化するために使用される電気発射信号を正規化することにより、印刷ヘッド内の全てのインクジェットが、実質的に同じ液滴量を有するインク滴を生成することができる。
【0005】
インクジェット・プリンタの動作中に起こる別の問題は、間欠インクジェット(intermittent inkjet)、微弱インクジェット(weak inkjet)、又は欠落インクジェット(missing inkjet)である。具体的には、幾つかのインクジェットは、画像基材上にインクを射出するために期待通りに動作しなくなるほど完全に又はある程度機能しなくなる。特許文献1が開示するそのようなインクジェットを補償する方法は、機能しないインクジェットを無効にし、その周囲のインクジェットを使用して欠落インクジェット、間欠インクジェット又は微弱インクジェットを補償する。無効にされたインクジェットによって行われる予定の印刷は、1つ又は複数の周囲のインクジェットによって、1つ又は複数の追加の画像基材パスで行われる。従って、この手法は、追加の基材パスを必要とするので印刷プロセスを遅くする。
【0006】
本発明のシステムは、周囲のインクジェットを使用して、画像基材の追加パスを必要とすることなくまた印刷プロセスを遅くすることなく、欠落インクジェット、間欠インクジェット又は微弱インクジェットを補償することを可能にする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシステムは、1組の所定の発射信号パラメータを基準にして複数のインクジェット発射信号を生成するように構成された印刷ヘッド発射信号発生器と、不良インクジェットを識別する信号に応じて不良インクジェットの近くのインクジェットによって射出される第1の量の液体インクを増やすために、少なくとも1つの所定の発射信号パラメータを修正するように構成された発射信号調整回路とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシステムは、周囲のインクジェットを使用して、画像基材の追加パスを必要とすることなくまた印刷プロセスを遅くすることなく、欠落インクジェット、間欠インクジェット又は微弱インクジェットを補償することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】微弱インクジェット、間欠インクジェット又は欠落インクジェットを補償するシステムを使用することができるインクジェット印刷システムのブロック図である。
【図2】インクジェット画像形成システムにおける微弱インクジェット、間欠インクジェット又は欠落インクジェットを補償するシステムのブロック図である。
【図3】インクジェットから射出されるインク滴量を発射信号電圧の関数として示すグラフである。
【図4】インクジェットが機能しない可能性を発射信号電圧の関数として示すグラフである。
【図5】インクジェット画像形成システムにおける微弱インクジェット、間欠インクジェット又は欠落インクジェットを補償する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で開示されるシステムの環境並びにシステムの詳細の概略的な理解のために図面を参照する。図面では、類似の要素を指定するために全体を通して類似の参照番号が使用される。
【0011】
図1は、画像形成装置、即ち画像形成装置10の少なくとも一部分を示し、本開示に関係する要素が示される。示した実施形態では、画像形成装置10は、連続的な媒体ウェブ上に印刷する固体インク印刷プロセスを実施する。このため、画像形成装置10は、ウェブ供給操作システム60、相変化インク印刷システム、及びウェブ加熱システム100を備える。以下に、図1に示した画像形成システムを参照してインクジェット補償システムについて述べるが、このインクジェット補償システムは、インクジェットを使用して画像基材上にインクを射出する任意の画像形成装置で使用することができる。
【0012】
図1に示したように、相変化インク印刷システムは、ウェブ供給操作システム60、印刷ヘッド組立体14、ウェブ加熱システム100、及び定着組立体50を備える。ウェブ供給操作システム60は、媒体ウェブ20を画像形成装置に供給するための1つ又は複数の媒体ローラ38を備えてもよい。この供給操作システムは、媒体ウェブを、印刷ゾーン18を通りウェブ加熱システム100を過ぎ定着組立体50を通る画像形成装置内の媒体経路に沿って、既知の方式で送るように構成される。このため、供給操作システム60は、ドライブ・ローラ、アイドラー・ローラー、テンション・バー等、媒体ウェブを画像形成装置内に通すための任意の適切な装置64を備えてもよい。システムは、印刷操作が実行された後で媒体ウェブ20を受け取るための巻き取りローラ(図示せず)を備えてもよい。代替として、媒体ウェブ20は、媒体ウェブを個別シートに切断するための当該技術分野で既知の切断装置(図示せず)に送られてもよい。
【0013】
印刷ヘッド組立体14は、ウェブが印刷ゾーン18内を通るときにインク滴を媒体ウェブ20上に直接射出するように適切に支持される。この補償システムを使用することができる他の画像形成システムでは、印刷ヘッド組立体14は、媒体ウェブ又は媒体シートに後で転写するためのドラムやベルト等の中間転写部材(図示せず)上に液滴を射出するように構成されてもよい。印刷ヘッド組立体14は、キャリッジ型プリンタ、部分幅アレイ型プリンタ、又はページ幅型プリンタに組み込まれてもよく、1つ又は複数の印刷ヘッドを備えてもよい。図示したように、印刷ヘッド組立体は、シアン色、マジェンタ色、黄色及び黒色からなるフルカラー画像を印刷するための4個のページ幅印刷ヘッドを備える。各印刷ヘッド内に複数のインクジェットが行と列で配置されている。各インクジェットは、液体インク供給源に結合され、インクジェット内の圧電アクチュエータ等のインクジェット・アクチュエータで受け取った発射信号に応じてインクジェット・ノズルからインクを射出する。
【0014】
図1に示した印刷システムでは、インクは、固体インク供給部24から印刷ヘッド組立体に供給される。しかしながら、本明細書で開示する補償システムを使用する水性システム又はエマルション・インク・システムでは、液体インクは、印刷システムに組み込まれた1つ又は複数の容量容器に蓄積される。相変化インク画像形成装置10が多色装置なので、インク供給部24は、相変化固体インクの4つの異なる色CYMK(シアン、黄、マジェンタ、黒)に相当する4つの供給源28、30、32、34を備える。相変化インク・システム24は、また、固体形態の相変化インクを液体形態に変化させて液体インクを印刷ヘッド組立体14に供給するための固相変化インク溶融制御組立体又は装置(図示せず)を備える。
【0015】
画像を形成するためにインク滴が印刷ヘッド組立体によって移動ウェブ上に射出された後で、ウェブは、放出されたインク滴(即ち、画像)をウェブに定着させる定着組立体50に通される。図1の実施形態では、定着組立体50は、媒体ウェブが通されるニップを形成するために互いに対して位置決めされた少なくとも1対の定着ローラ54を備える。媒体ウェブ上のインク滴は、ウェブに圧入され、ニップによって形成された圧力によってウェブ上に広げられる。定着組立体50は1対の定着ローラとして示されているが、当該技術分野で既知のように、定着組立体は、媒体上にインク画像を定着することができる任意の適切なタイプの装置又は機器でよい。
【0016】
印刷装置の様々なサブシステム、構成要素及び機能の操作及び制御は、コントローラの支援によって実行される。コントローラは、不良インクジェット補償プロセスを実行し後述するインクジェット調整回路を動作させるように構成されたプロセッサでよい。コントローラは、プログラム命令が記憶された関連メモリを備えた汎用処理装置でよい。プログラム命令の実行によって、コントローラは、インクジェット発射信号を生成し、各不良インクジェットの行識別子と列識別子で1つ又は複数の不良インクジェットを識別する信号を受け取り、1つ又は複数の近傍インクジェットの適切な調整を実施することができる。或いは、コントローラは、インクジェット補償システムを動作させるためにプリント回路上に構成された特定用途向け集積回路又は1組の電子部品でもよい。従って、コントローラは、ハードウェア単独で実施されてもよく、ソフトウェア単独で実施されてもよく、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせで実施されてもよい。一実施形態では、コントローラは、中央処理装置(図示せず)と電子記憶機構(図示せず)を備えた独立型マイクロコンピュータを備える。電子記憶機構は、読み出し専用メモリ(ROM)等の不揮発性メモリでもよく、EEPROMやフラッシュ・メモリ等のプログラム可能な不揮発性メモリでよい。コントローラは、画像データ供給源(図示せず)から受け取った画像データに従って印刷画像又は描写画像の作成を調整するように構成される。画像データ供給源は、スキャナ、デジタル複写機、ファクシミリ装置等の幾つかの異なる供給源のいずれでもよい。画素配置制御は、印刷データに従って媒体ウェブ20に対して実行され、これにより、媒体ウェブが印刷ゾーンに通されたときに印刷データに従って所望の画像が形成される。
【0017】
印刷ヘッド組立体の各印刷ヘッドは、セットアップ又は保守ルーチンの一部として、印刷ヘッドの各インクジェットが実質的に同じ印刷品質を持つインク滴を射出するように当該技術分野で既知の正規化プロセスにかけられてもよい。印刷ヘッドから射出された液滴の印刷品質は、例えば、量、速度、濃度等の幾つかの液滴パラメータと関連付けられてもよい。射出インク滴の量、速度、濃度等の印刷品質パラメータを測定又は検出するプロセスは既知である。印刷ヘッドの各インクジェットごとに印刷品質パラメータを検出又は測定した後で、各インクジェットの印刷品質パラメータが所定のインク滴基準を満たすかどうか判定されてもよい。インク滴の量が指定のインク滴基準を満たさない等、液滴パラメータが所定のインク滴基準を満たさない場合、インクジェットは、インク滴を所定のインク滴基準に戻すように較正されてもよい。例えば、各インクジェットから放出される液滴の印刷品質を調整するために、発射信号の1つ又は複数のセグメント(即ち、パルス)の電圧レベル、振幅及び/又はタイミングが選択的に変更されてもよい。発射信号を生成するための正規化されたパラメータは、それぞれの印刷ヘッドコントローラがアクセスするメモリに保存されてもよい。各印刷ヘッドのインクジェット発射信号を生成する発射信号パラメータが正規化された後、正規化された発射信号パラメータは、各印刷ヘッド・コントローラごとに記録又は記憶されてもよく、それにより後で、正規化された発射信号パラメータを使用してインクジェットを発射することができる。代替として、プリンタの操作前にインクジェット発射信号を生成するために、複数の所定の発射信号パラメータが記憶されてもよい。本明細書で使用されるとき、所定の発射信号パラメータは、演繹的発射信号パラメータと、正規化された発射信号パラメータとを指す。これらの所定の発射信号パラメータは、印刷ヘッド内のインクジェットにインクを射出させるインクジェット発射信号を生成するために、印刷ヘッド信号発生器によって使用される。
【0018】
1つの例示的な実施形態では、印刷システムは、インクジェットによって射出された液滴の濃度を検出する液滴濃度センサを含んでもよい。液滴濃度センサは、受像面上に射出された液滴に光を導く発光ダイオード(LED)と、各インクジェットによって放出された液滴から反射された光の強度を検出するCCDセンサ等の光検出器とを備えることができる。これにより、各インクジェットに対応する液滴濃度値を検出することができる。印刷ヘッドの各インクジェットの検出液滴濃度値は、所定のしきい値又は範囲と比較されて、各インクジェットが指定された濃度の液滴を射出しているかどうかが判定される。インクジェットの液滴濃度が、所望の濃度レベルを満たさない場合は、後述するようなシステムによって発射信号調整が実行されることがある。
【0019】
別の実施形態では、印刷システムは、不良インクジェット検出器を備えてもよい。不良インクジェット検出器は、印刷ヘッド内の各不良インクジェット位置を識別する信号を生成する。本明細書で使用されるような不良インクジェットとは、発射信号に応じて全くインクを射出しないか、発射信号の大きさに関して期待された量より少ないインクを常に射出するか、発射信号に応じて対応量のインクを間欠的に放出するインクジェットを指す。インクジェット識別データは、後述するように、不良インクジェットの近くの近傍インクジェット(neighboring inkjet)又は準近傍インクジェット(near neighboring inkjet)を識別するために使用される。その後で、画像がインク滴を発射する不良インクジェットを含むため、不良インクジェットの近くの1つ又は複数のインクジェットが、インクジェットが発射するインクの量を増やすように修正された発射信号を入力することになる。その結果、1つ又は複数の近位インクジェットは、不良インクジェットに不良がなければインク画像を形成するのに必要な量よりも多いインクを射出する。インクを増やすことにより、不良インクジェットによって生じる欠落又は薄い画素が人間の観察者の目から分かりにくくなる。
【0020】
図2に、欠落インクジェット、間欠インクジェット又は微弱インクジェットを補償するシステムのブロック図を示す。システム200は、印刷ヘッド206内のインクジェットの複数のインクジェット発射信号を生成するように構成された印刷ヘッド発射信号発生器204を備える。発射信号は、メモリ212に記憶された複数の発射信号パラメータを基準にして生成される。メモリ212に記憶された発射信号パラメータには、発射信号の最大電圧、発射信号のタイミング・シーケンス、及びインクジェットによるインクの発射に影響を及ぼす他の既知のパラメータがある。また、発射信号発生器は、発射信号調整回路208にも電気的に結合され、発射信号調整回路208は、また、発射信号パラメータが記憶されるメモリ212にも結合される。発射信号調整回路は、発射信号調整回路208が不良インクジェットを識別する信号を受け取ったときにインクジェットによって射出されるインクの量をインクジェットが増やすために、発射信号パラメータ及び/又はインクジェット発射信号を修正するように構成される。例えば、第1の信号の調整回路は、インクジェット発射信号の最大電圧を高めてもよい。印刷ヘッド発射信号発生器204は、追加電圧によって、インクジェットに追加インクを射出させる発射信号を生成することができる。欠落インクジェット、間欠インクジェット又は微弱インクジェットの近くの追加インクは、不良インクジェットによって提供されないインクを補償する支援をする。代替又は追加として、不良インクジェットによって印刷される予定の画素が、代わりに欠陥画素の近くのインクジェットによって印刷されてもよい。このシナリオでは、近位インクジェットの発射信号は、不良インクジェットが機能した場合の発射信号から、不良インクジェットに不良がなければ不良インクジェットによって射出されることになる画素のインクを近位インクジェットに射出させる発射信号に増加される。別の実施形態では、発射信号調整回路208は、不良インクジェットの近くの複数のインクジェット発射信号を増加させて、不良インクジェットによって印刷されるインクの画素を補償する。
【0021】
前に述べたように、印刷装置の操作を開始する前にインクジェットを正規化する方法は既知である。印刷ヘッド発射信号発生器204は、そのような既知の方法のうちの1つを実施し、正規化された発射信号パラメータをメモリ212に記憶する。記憶されたパラメータには、発射信号の最大電圧の第1の電圧値、発射信号のタイミング・シーケンス、及び他の既知の発射信号パラメータがある。第1の電圧値は、インクジェットを発射させるために使用されるフルスケール電圧より低い。一実施形態では、第1の電圧は、インクジェットを発射させるためのフルスケール電圧の約67パーセントである。発射信号の最大電圧がインクジェットを発射させるためのフルスケール電圧より低いので、インクジェットは、インクジェットから可能最大量を有するインク滴を生成できない。正規化後に、最大電圧は、システム200が組み込まれた印刷システムによって生成される画像内の最大画素値と関連付けられる。
【0022】
発射信号調整回路208は、不良インクジェットを識別するインクジェット検出器からの信号に応じて、インクジェットによって射出されるインクの量を増やすように所定の発射信号パラメータのうちの1つを修正する。例えば、調整回路208は、識別された不良インクジェットの近くにある少なくとも1つのインクジェットの最大電圧を第2の電圧まで高める。電圧範囲のこの拡大によって、印刷ヘッド発射信号発生器204は、第1の電圧レベルより高い電圧を有する発射信号を生成することができる。電圧が高いほどインクジェットによって生成されるインク滴の量が多くなる。一実施形態では、発射信号調整回路208は、不良インクジェットの近くの複数のインクジェットに関して、少なくとも1つの所定の発射信号パラメータを修正する。近傍インクジェットは、印刷ヘッド内のインクジェット・アレイの不良インクジェットと隣り合ったインクジェットである。準近傍インクジェットは、近傍インクジェットの近くにあるインクジェットである。
【0023】
発射信号発生器は、対応する発射信号パラメータが修正された近位インクジェット用の次の発射信号を生成するように構成される。発射信号を生成する際、発射信号発生器は、不良インクジェットを補償するために、発射されるインクジェット用の発射信号に補償値を加える。不良インクジェットが画像画素値を有する場合、近傍インクジェット用の発射信号は全て補償値を基準にして生成されてもよい。この発射信号によってインクジェットから射出される追加インクの量は、補償値と修正発射信号パラメータとを基準にして生成される。
【0024】
インクジェットの最大電圧を高めることによって起こる1つの問題は、インクジェットが後で故障する可能性が高いことである。図3に示したように、インクジェットによって射出される液滴量は、電圧の上昇に比例して多くなる。しかしながら、図4は、インクジェットが故障する率(間欠、微弱又は欠落(IWM)率)が、発射信号電圧の上昇と共に、特に発射信号電圧範囲の上側で非線形的に変化することを示す。IWM率曲線の急上昇部分内の電圧で発射信号が生成される可能性を低くするために、最大電圧は所定の限度に保持されてもよい。一実施形態では、発射信号調整回路208は、不良インクジェットの近傍のインクジェットの最大電圧を、インクジェットのフルスケール電圧の約85パーセントの第2の電圧レベルまで高める。
【0025】
別の実施形態では、所定の発射信号パラメータは、印刷ヘッド発射信号発生器によるインクジェット発射信号の生成を、最大インク量発射信号の約90パーセント以下のインクジェット発射信号に制限する。最大インク量発射信号は、インクジェットが射出することができる最大量のインクをインクジェットに射出させるインクジェット信号である。この実施形態では、発射信号調整回路は、インクジェット発射信号を、所定の発射信号パラメータに従って生成される信号から、最大インク量発射信号の約90パーセント〜100パーセントの範囲のインクジェット発射信号に修正する。
【0026】
図5に、欠落インクジェット、間欠インクジェット又は微弱インクジェットを補償するために印刷ヘッドを制御する方法を示す。方法500は、複数のインクジェット発射信号を生成する段階(ブロック504)を含む。発射信号は、複数の発射信号パラメータを基準として生成される。例えば、発射信号の最大電圧は、インクジェットを発射するためのフルスケール電圧より低い第1の電圧制限に対応することができる。不良インクジェットを識別する信号を受け取ると(ブロック508)、生成された発射信号が、不良インクジェットの近くのインクジェットによって射出されるインクの量を増やすことができるように、少なくとも1つの発射信号パラメータが修正される(ブロック510)。この例を続けると、最大電圧値は、不良インクジェットの近くの少なくとも1つのインクジェット用に第2の電圧制限まで高められてもよい。不良インクジェットを識別する信号は、不良インクジェットがある印刷ヘッドと、印刷ヘッド内のインクジェットの位置とを識別する。不良インクジェットによって射出される予定の画像画素を検出すると(ブロック514)、修正された発射信号パラメータを有するインクジェット発射信号が生成される(ブロック518)。検討している例では、生成された発射信号の最大電圧は、第2のレベルまで高められる。発射信号がインクジェットに送られてインクが射出される(ブロック520)。その結果、補償インクジェットから射出されるインク滴量が増えるので、不良インクジェットの障害が分かりにくくなる。この方法を、発射信号最大電圧の修正に関して説明したが、他の所定の発射信号パラメータを修正して不良インクジェットを補償してもよい。前述の方法の一実施形態では、複数の近傍インクジェットの最大電圧が高められる。前述のように、識別された不良インクジェットの近くのインクジェットは、近傍インクジェット及び/又は準近傍インクジェットを含んでもよい。
【0027】
図5の方法は、また、1つ又は複数のインクジェット発射信号を、所定の発射信号パラメータによって制限された範囲から最大インク量発射信号に近い範囲に調整する処理を含むことができる。例えば、インクジェット発射信号の生成は、最大インク量発射信号の約90パーセント以下の範囲に限定されてもよい。この調整は、インクジェット発射信号を、所定の発射信号パラメータに従って生成される信号から、最大インク量発射信号の約90パーセント〜100パーセントの範囲のインクジェット発射信号に修正することを含んでもよい。追加又は代替として、インクジェット発射信号調整は、不良インクジェットによって印刷される予定の画素を補償してもよい。このタイプの調整は、不良インクジェットに不良がなければ不良インクジェットによって印刷される画素を近位インクジェットに印刷させるために不良インクジェットの近くの単一インクジェットのインクジェット発射信号を増加させるか、不良インクジェットの近くの複数のインクジェットのインクジェット発射信号を増加させることを含む。複数のインクジェット発射信号の増加の総量は、不良インクジェットが画素を印刷するために生成するインクジェット発射信号に近い。
【符号の説明】
【0028】
204 印刷ヘッド発射信号発生器、206 印刷ヘッド、208 発射信号調整回路、212 発射信号パラメータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
欠落インクジェット、間欠インクジェット又は微弱インクジェットを補償する印刷ヘッド制御システムであって、
1組の所定の発射信号パラメータを基準にして複数のインクジェット発射信号を生成するように構成された印刷ヘッド発射信号発生器と、
不良インクジェットを識別する信号に応じて前記不良インクジェットの近くのインクジェットによって射出される第1の量の液体インクを増やすために、少なくとも1つの所定の発射信号パラメータを修正するように構成された発射信号調整回路とを含むシステム。
【請求項2】
前記印刷ヘッド発射信号発生器は、前記不良インクジェットの近くの前記インクジェット用のフルスケール電圧の約67パーセントの最大電圧を有するインクジェット発射信号を生成するように構成され、
前記発射信号調整回路は、前記不良インクジェットを識別する信号に応じて、前記最大電圧を、前記フルスケール電圧の約85パーセント未満のレベルまで高めるように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1組の所定の発射信号パラメータは、前記印刷ヘッド発射信号発生器によるインクジェット発射信号の生成を、最大インク量発射信号の約90パーセント以下のインクジェット発射信号に制限し、
前記印刷ヘッド発射信号発生器は、前記発射信号調整回路によって、前記最大インク量発射信号の約90パーセント〜100パーセントの範囲のインクジェット発射信号を生成することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記印刷ヘッド発射信号発生器は、前記所定の発射信号パラメータに記憶されたタイミング・シーケンスに対応するタイミング・シーケンスを有するインクジェット発射信号を生成するように構成され、前記インクジェット発射信号が、前記不良インクジェットに近い前記インクジェットに前記第1の量のインクを射出させ、
前記発射信号調整回路は、前記所定の発射信号パラメータに記憶された前記タイミング・シーケンスを修正して、前記印刷ヘッド発射信号発生器が、前記不良インクジェットの近くの前記インクジェットに第2の量のインクを射出させるインクジェット発射信号を生成できるように構成され、前記第2の量のインクは前記第1の量のインクより多い、請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−220571(P2009−220571A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57456(P2009−57456)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】