説明

印刷検査装置、印刷装置及び印刷検査方法

【課題】検査精度を大きく低下させることなく、印刷用紙の全体に関して検査を行いつつ検査にて取り扱うデータ量を大幅に低減する。
【解決手段】印刷装置が備える検査系統は、印刷用紙の単位領域ごとに比較対象となるデータ量が比較的多い詳細検査と、データ量が比較的少ない簡易検査とが可能である。モード信号が”H”のときに処理対象となる印刷用紙の領域が詳細検査の検査対象とされ、モード信号が”L”のときに処理対象となる印刷用紙の領域は簡易検査の検査対象とされる。したがって、検査精度を大きく低下させることなく印刷用紙の全体に関して検査を行い、さらに、検査にて取り扱うデータ量を大幅に低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置によって印刷された印刷物を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷装置で印刷された印刷物に関して、必要な内容が正しく印刷されているかの検査を行う印刷検査装置が提案されている。このような印刷検査装置においては、例えば、印刷装置が印刷に用いる画像データを基準データとする一方で、実際の印刷物の内容を受光センサなどで読み取って得られる画像データを被検査データとし、基準データと被検査データとの比較により検査がなされるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−318731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数のページが連続的に印刷される場合などでは、その印刷の検査結果がほぼリアルタイムに得られることが望まれる。このため印刷検査装置では、画像データという膨大なデータを、ほぼリアルタイムに処理が可能な非常に高速な演算性能が要求される。このような高速な演算性能は、印刷検査装置のコスト上昇の一因となっている。
【0005】
コスト削減のために印刷検査装置において取り扱うデータ量を低減するには、例えば、検査において比較する画像データの解像度を低下させることや、印刷物の一部のみを検査対象とすることなどが考えられる。
【0006】
しかしながら、比較する画像データの解像度を低下させると、軽微なレベルの不良を長期間にわたって発見できない可能性があり、また、印刷物の一部のみを検査対象とすると、検査対象とならない部分の不良を発見できない。したがって、いずれの場合も検査精度が大きく低下することになる。
【0007】
また、可変印刷(複数のページのそれぞれに固有の内容を印刷する印刷手法/バリアブル印刷)の結果に関して検査を行う場合では、ページごとに印刷内容が異なることから、印刷物の全体に関して検査を行うことが特に望ましい。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、検査精度を大きく低下させることなく、印刷物の全体に係る検査を行いつつ、検査にて取り扱うデータ量を大幅に低減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、印刷装置の印刷物を検査する印刷検査装置であって、前記印刷装置が印刷に用いる印刷データに基づいて基準データを生成する基準生成手段と、前記印刷物から被検査データを取得する取得手段と、前記印刷物の単位領域ごとに、当該単位領域に係る前記基準データと前記被検査データとを比較して検査を行う検査手段と、を備え、前記検査手段は、前記単位領域ごとに比較対象となるデータ量が比較的多い詳細検査と、前記データ量が比較的少ない簡易検査とが可能であり、前記印刷物のうちの一部領域が前記詳細検査の検査対象とされ、前記印刷物のうちの前記一部領域を除く領域の一部もしくは全部分が前記簡易検査の検査対象とされる。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の印刷検査装置において、前記印刷物は、複数のページを含み、前記印刷物の内容は、前記複数のページのそれぞれに固有の可変部分を含む。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の印刷検査装置において、前記検査手段が検査を行う前から、前記印刷物の内容のうち前記可変部分を除いた固定部分を示す固定部データを記憶する記憶手段、をさらに備え、前記基準生成手段は、前記検査手段の検査にあたって、前記印刷装置が前記可変部分の印刷に用いる可変部データを入力し、入力した前記可変部データと、前記記憶手段に記憶された前記固定部データと、に基づいて前記基準データを生成する。
【0012】
また、請求項4の発明は、請求項3に記載の印刷検査装置において、前記基準生成手段に入力される前記可変部データのデータ量は、当該可変部データを前記詳細検査に用いるときは、前記詳細検査に十分な量とされ、当該可変部データを前記簡易検査に用いるときは、前記詳細検査に不十分で前記簡易検査に十分な量とされる。
【0013】
また、請求項5の発明は、請求項2に記載の印刷検査装置において、前記可変部分は、再利用部分と、前記再利用部分を除いた非再利用部分とを含むものであり、前記検査手段が検査を行う前から、前記印刷装置が前記再利用部分の印刷に用いる候補となる複数の再利用データと同一内容の複数の再利用データを記憶する第1記憶手段と、前記検査手段が検査を行う前から、前記印刷物の内容のうち前記可変部分を除いた固定部分を示す固定部データを記憶する第2記憶手段と、をさらに備え、前記基準生成手段は、前記検査手段の検査にあたって、前記印刷装置が前記非再利用部分の印刷に用いる非再利用データと、前記印刷装置が前記再利用部分の印刷に用いる再利用データを指定する指定情報と、を入力し、入力した前記非再利用データと、前記第1記憶手段に記憶された前記複数の再利用データのうち入力した前記指定情報に指定された再利用データと、前記第2記憶手段に記憶された前記固定部データと、に基づいて前記基準データを生成する。
【0014】
また、請求項6の発明は、請求項5に記載の印刷検査装置において、前記第1記憶手段に記憶される前記複数の再利用データのそれぞれのデータ量は、前記詳細検査に不十分で前記簡易検査に十分な量とされる。
【0015】
また、請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の印刷検査装置において、前記印刷物は、それぞれが連続ページ群からなる複数のグループに区分され、前記グループごとに少なくとも一の領域が、前記詳細検査の検査対象とされる。
【0016】
また、請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の印刷検査装置において、前記印刷物は、複数のページが連結状態で含まれる用紙ブロックで構成され、前記用紙ブロックごとに少なくとも一の領域が、前記詳細検査の検査対象とされる。
【0017】
また、請求項9の発明は、請求項8に記載の印刷検査装置において、前記用紙ブロックに含まれる前記複数のページのうち印刷順位が最終もしくは最終に近い目視可能となるページの一の領域が、前記詳細検査の検査対象とされる。
【0018】
また、請求項10の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の印刷検査装置において、前記印刷物に含まれるテストパターンが、前記詳細検査の検査対象とされる。
【0019】
また、請求項11の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の印刷検査装置において、前記印刷物に含まれる、前記印刷装置の印刷品質を維持するためになされる保守印刷の結果が、前記詳細検査の検査対象とされる。
【0020】
また、請求項12の発明は、印刷物を検査可能な印刷装置であって、印刷に用いる印刷データに基づいて基準データを生成する基準生成手段と、前記印刷物から被検査データを取得する取得手段と、前記印刷物の単位領域ごとに、当該単位領域に係る前記基準データと前記被検査データとを比較して検査を行う検査手段と、を備え、前記検査手段は、前記単位領域ごとに比較対象となるデータ量が比較的多い詳細検査と、前記データ量が比較的少ない簡易検査とが可能であり、前記印刷物のうちの一部領域が前記詳細検査の検査対象とされ、前記印刷物のうちの前記一部領域を除く領域の一部もしくは全部分が前記簡易検査の検査対象とされる。
【0021】
また、請求項13の発明は、印刷装置の印刷物を検査する印刷検査方法であって、前記印刷装置が印刷に用いる印刷データに基づいて基準データを生成する基準生成工程と、前記印刷物から被検査データを取得する取得工程と、前記印刷物の単位領域ごとに、当該単位領域に係る前記基準データと前記被検査データとを比較して検査を行う検査工程と、を備え、前記検査工程では、前記単位領域ごとに比較対象となるデータ量が比較的多い詳細検査と、前記データ量が比較的少ない簡易検査とが可能であり、前記印刷物のうちの一部領域が前記詳細検査の検査対象とされ、前記印刷物のうちの前記一部領域を除く領域の一部もしくは全部分が前記簡易検査の検査対象とされる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1ないし13の発明によれば、印刷物のうちの一部領域に関して詳細検査がなされ、一部領域を除く領域には簡易検査がなされる。このため、検査精度を大きく低下させることなく、印刷物の全体に係る検査を行いつつ、検査にて取り扱うデータ量を大幅に低減できる。
【0023】
また、特に請求項2の発明によれば、印刷物の内容が互いに異なる全てのページに対しての検査を行いつつ、検査にて取り扱うデータ量を大幅に低減できる。
【0024】
また、特に請求項3の発明によれば、基準データの生成のために入力するデータ量を低減できる。
【0025】
また、特に請求項4の発明によれば、可変部データとして検査に必要なデータ量のみが入力されるため、基準データの生成のために入力するデータ量をさらに低減できる。
【0026】
また、特に請求項5の発明によれば、可変部分が再利用部分を含む場合において、基準データの生成のために入力するデータ量を大幅に低減できる。
【0027】
また、特に請求項6の発明によれば、第1記憶手段に記憶すべき再利用データのデータ量を低減できる。
【0028】
また、特に請求項7の発明によれば、グループごとに詳細検査がなされるため、グループ単位で印刷物が良好か否かを確認することができ、印刷物の管理が容易となる。
【0029】
また、特に請求項8の発明によれば、用紙ブロックごとに詳細検査がなされるため、用紙ブロック単位で印刷物が良好か否かを確認することができ、印刷物の管理が容易となる。
【0030】
また、特に請求項9の発明によれば、目視確認が容易な印刷順位が最終もしくは最終に近い目視可能なページに関して詳細検査がなされるため、目視確認での結果と詳細検査の結果との対比が容易となる。
【0031】
また、特に請求項10の発明によれば、テストパターンが詳細検査の検査対象とされるため、詳細検査の検査精度を向上できる。
【0032】
また、特に請求項11の発明によれば、保守印刷の結果が詳細検査の検査対象とされるため、印刷装置の印刷品質の維持と、印刷物の検査とを同時に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。以下では、具体例として、本発明の実施の形態に係る印刷検査装置としての機能が印刷装置の内部に組み込まれる場合について説明する。
【0034】
<1.第1の実施の形態>
<1−1.全体概要>
図1は、第1の実施の形態に係る印刷装置の概略構成を示す図である。印刷装置10は、外部の編集装置11から入力される印刷データに基づいて、インクジェット方式(インクを霧状にして印刷用紙に吹き付ける方式)にて印刷用紙8を印刷するインクジェットプリンタとして構成されている。
【0035】
印刷装置10は、装置全体を制御する制御部1と、それに制御される処理系統とを備えている。制御部1は、CPU、RAM及びROMなどから構成されるマイクロコンピュータを備えている。制御部1による各種の制御機能は、CPUが所定のプログラムやデータに従ってRAMを利用しつつ演算処理を行うことにより実現される。
【0036】
印刷装置10の処理系統は、印刷データを用いて印刷を行う印刷系統2と、印刷対象となる印刷用紙8を搬送する搬送系統4と、印刷物たる印刷された印刷用紙8を検査する検査系統3とに大別される。
【0037】
印刷系統2は、印刷に用いる画像データである印刷データを処理するRIP処理部21及び印刷データ処理部22と、処理された印刷データに基づいて印刷用紙8への印刷を行う印刷ヘッド23とを備えている。
【0038】
編集装置11から入力された印刷データ(ソースデータ)は、RIP処理部21によりラスタライズされ、ラスタ形式の印刷データ(ラスタデータ)に変換される。RIP処理部21によって得られたラスタデータは、印刷データ処理部22により、印刷ヘッド23が印刷可能な印刷データ(ヘッドデータ)にさらに変換される。印刷ヘッド23は、このヘッドデータに基づいて印刷用紙8に対して印刷を行う。印刷ヘッド23には、印刷用紙8の上面(印刷対象面)に対向して主走査方向(印刷用紙8の搬送方向(副走査方向)に水平面にて直交する方向)に一次元に配列した複数のノズルが設けられており、これら複数のノズルによりインクジェット方式の印刷がなされる。
【0039】
搬送系統4は、印刷前の印刷用紙81を収容する第1収容部41と、印刷済の印刷用紙82を収容する第2収容部42とを備え、これら第1及び第2収容部41,42に設けられるモータ(図示省略)により、第1収容部41から第2収容部42まで印刷用紙8を搬送する。本実施の形態の印刷装置10が取り扱う印刷用紙8の全体としての用紙ブロックは、長尺状の用紙がロール状に巻かれた用紙ロールとなっており、第1及び第2収容部41,42の双方において印刷用紙8はロール状に巻き取られた状態で収容される。
【0040】
搬送系統4はまた、第1収容部41から第2収容部42までの印刷用紙8の搬送経路を規定する複数のローラ43を備えている。印刷用紙8は、これらの複数のローラ43に案内されつつ搬送されることで、印刷ヘッド23の直下を水平方向に図中右側(副走査方向)へ移動する。印刷ヘッド23は、このようにして直下を通過する印刷用紙8に対して印刷を行うことになる。
【0041】
検査系統3は、印刷が行われた印刷用紙8の内容を読み取って画像データを取得する撮像センサ32と、撮像センサ32で得られた画像データに基づいて検査を行う印刷検査部31とを備えている。
【0042】
撮像センサ32は、一次元に配列された複数の受光画素からなるラインセンサとして構成されており、印刷用紙8の搬送経路の印刷ヘッド23よりも下流側の上部に配置されている。撮像センサ32の複数の受光画素は、印刷用紙8の上面に対向して主走査方向に沿って配列されている。これら複数の受光画素が、その直下を通過する印刷用紙8を走査することにより、印刷ヘッド23に印刷された印刷用紙8の内容が画像データとして取得される。なお、撮像センサ32は、複数の受光画素が二次元に配列された二次元センサとして構成されてもよい。
【0043】
印刷検査部31は、撮像センサ32にて取得された画像データを被検査データとして用い、この被検査データと、印刷すべき内容を含む基準データとを比較して、印刷用紙8に印刷すべき内容が正しく印刷されているかの検査を行う。この印刷検査部31については、後に詳述する。
【0044】
また、上述した制御部1、印刷系統2、搬送系統4及び検査系統3は、バスライン9を介して相互に接続される。これにより、制御部1、印刷系統2、搬送系統4及び検査系統3の相互間で各種のデータや信号の送受信が可能とされている。
【0045】
<1−2.可変印刷>
上記構成を有する印刷装置10は、複数のページのそれぞれに固有の内容を印刷する可変印刷(バリアブル印刷)が可能となっている。以下、印刷装置10によってなされる可変印刷の概要について説明する。
【0046】
図2及び図3は、印刷装置10で取扱われる印刷用紙8の一例を示す図である。図2は印刷前の印刷用紙81の状態を示し、図3は印刷済の印刷用紙82の状態を示している。これらの図においては、印刷用紙8としてクレジットカードなどの利用明細書に用いられるものを示している。印刷装置10で取扱い可能な印刷用紙8はこれに限定されるものではないが、以下では具体例として、印刷装置10がこの利用明細書に係る印刷を行うものとして説明する。
【0047】
これらの図に示すように、用紙ロールとして構成される印刷用紙8は長尺状となっており、複数のページPを直列的に連結した状態で含んでいる。また、図2に示すように、印刷前の印刷用紙81の各ページPには、所定のフォーマットが予め印刷(プレ印刷)されている。このプレ印刷の内容は、複数のページPの間において共通である。
【0048】
印刷装置10は、このようなプレ印刷がなされた印刷用紙81の各ページに対してさらに追加的に印刷を行うことで、図3に示すような印刷用紙82を生成する。この追加的な印刷が可変印刷とされており、印刷する内容は複数のページのそれぞれに固有のものとされる。したがって、図3に示すように、印刷済の印刷用紙82においては複数のページPの間で内容が互いに異なることになる。
【0049】
以下、印刷済の印刷用紙82の内容において、複数のページ間で共通の部分(プレ印刷に係る部分)を「固定部分」といい、複数のページのそれぞれに固有の部分(可変印刷に係る部分)を「可変部分」という。
【0050】
また、本実施の形態の例では印刷装置10が利用明細書に係る印刷を行うものであるため、一の顧客に係る利用明細書は、一のページとなることもあれば、連続した複数のページとなることもある。本実施の形態では、このような一の顧客に係る連続ページ群(一または連続した二以上のページ)のそれぞれを「グループ」Gという。したがって、印刷済の印刷用紙82は、それぞれが連続ページ群からなる複数のグループGに区分されることになる。
【0051】
<1−3.動作概要>
次に、印刷装置10の動作の概要について説明する。図4は、印刷装置10における動作の概要を示す図である。
【0052】
図4の左側のフローに示すように、印刷装置10では、まず、固定部分を予め含む印刷用紙81が第1収容部41に収容され、第2収容部42まで搬送可能な状態にセットされる(ステップS11)。そして、搬送系統4により印刷用紙8が搬送されつつ、印刷系統2により印刷用紙8の各ページに対して可変部分を印刷する印刷処理がなされる(ステップS12)。全てのページに関しての印刷が完了すると、固定部分と可変部分との双方を含む印刷済の印刷用紙82が得られ、この印刷済の印刷用紙82が第2収容部42から取り外されることになる(ステップS13)。このような一連の処理が、一の印刷用紙8の全体としての用紙ブロック(一巻きの用紙ロール)ごとになされる処理となる。
【0053】
この一連の処理において、印刷系統2により印刷処理(ステップS12)がなされている間においては、それと並行して、図の右側のフローに示すように、検査系統3により、印刷済の印刷用紙82を検査する検査処理がなされるようになっている(ステップS22)。以下、このように並行してなされる印刷処理(ステップS12)、及び、検査処理(ステップS22)を総称して「印刷検査処理」Ps1という。
【0054】
ところで、本実施の形態の印刷装置10では、印刷用紙8の検査のための検査モードとして、比較的高精度に検査する詳細検査モードと、比較的低精度に検査する簡易検査モードとの2つがある。これらの2つの検査モードは、RIP処理部21から出力されるモード信号に基づいて切り替えられるようになっている。なお、この説明ではRIP処理部21からモード信号が出力されるよう説明を行うが、制御部1からモード信号が出力されてもよい。
【0055】
「印刷検査処理」Ps1において印刷系統2及び検査系統3の双方は、実施する検査モードに応じた処理を行うようになっている。以下では、このような印刷検査処理Ps1の詳細について説明する。
【0056】
<1−4.印刷検査処理に係る機能構成>
図5は、印刷検査処理Ps1に係る印刷系統2及び検査系統3の機能の詳細を示すブロック図である。
【0057】
図5において、可変部データ削減部51及びデータ変換部52は、印刷系統2の印刷データ処理部22が備える画像処理機能を示している。また、基準データ生成部61、固定部データ削減部62、データ比較部64、及び、被検査データ削減部65は、検査系統3の印刷検査部31が備える画像処理機能を示している。これら画像処理機能としての各部にはそれぞれRIP処理部21からモード信号MSが入力され、検査モードに応じた画像処理がなされるようになっている。これらの各部は、専用の集積回路等のハードウェア回路で実現されてもよく、ソフトウェア的に実現されてもよい。
【0058】
また、固定部データメモリ63は、印刷検査部31に設けられる画像データを記憶可能な画像メモリである。この固定部データメモリ63には、印刷用紙8の固定部分の内容を示す画像データである固定部データ72が記憶される。この固定部データ72は、図4のステップS21に示すように、印刷検査処理Ps1がなされる前、すなわち、印刷用紙8の検査を行う前から、撮像センサ32により取得されて予め記憶される。固定部データ72の取得の際には、印刷前の印刷用紙8の一ページ分が印刷を伴わずに搬送され、これを撮像センサ32が読み取るようになっている。
【0059】
また、図6は、印刷検査処理Ps1における印刷系統2及び検査系統3の処理の詳細を示す図である。図中左側のフローが印刷系統2の印刷処理(図4:ステップS12)の流れを示し、右側のフローが検査系統3の検査処理(図4:ステップS22)の流れを示している。以下、これらの詳細について順に説明する。
【0060】
<1−5.印刷処理>
まず、図5と図6中の左側のフローとを参照して、印刷系統2の印刷処理について説明する。
【0061】
この印刷系統2の主たる処理は、可変部分に係る可変部データ71に基づいて、印刷用紙8を印刷するというものである(ステップSP4)。RIP処理部21からラスタデータとして供給される可変部データ71は、データ変換部52によりヘッドデータに変換されて印刷ヘッド23に供給される。これにより、印刷ヘッド23において印刷用紙8に対して可変部分の印刷がなされることになる。このような処理は、印刷用紙8に含まれる全ページの印刷が終了するまで(ステップSP5にてNoの間)、印刷用紙8の所定の単位領域ごとに繰り返される。
【0062】
ここで「単位領域」とは、印刷用紙8における主走査方向の全幅に係り、かつ、副走査方向に所定の幅となる領域である。この単位領域は、2次元領域に限定されず、主走査方向に沿った1次元領域であってもよい。本実施の形態では、印刷用紙8の一のページは所定数の単位領域に区分される。したがって、一の単位領域に係る印刷を所定の回数行うことによって、印刷用紙8の一のページの印刷が完了することになる。
【0063】
また、このような一の単位領域に係る印刷の前には、その印刷に用いる一の単位領域に係る可変部データ71が、印刷データ処理部22から印刷検査部31に出力されるようになっている(ステップSP3)。この可変部データ71の出力にあたっては、検査モードに応じて可変部データ71の解像度が、可変部データ削減部51により調整されることとなる(ステップSP1,SP2)。
【0064】
すなわち、可変部データ削減部51に入力されるモード信号MSに基づいて検査モードが判定される(ステップSP1)。そして、詳細検査モードのときは、可変部データ71は、全画素がそのまま印刷検査部31に出力される(ステップSP3)。一方、簡易検査モードのときは、可変部データ削減部51により可変部データ71は所定割合で画素の間引きがなされ解像度が低減される(ダウンサンプリング)(ステップSP2)。そして、低解像度の可変部データ71が印刷検査部31に出力されることになる。
【0065】
以上のように印刷系統2は、検査モードに応じての可変部データ71の解像度の調整(ステップSP1,SP2)、可変部データ71の印刷検査部31への出力(ステップSP3)、及び、可変部データ71に基づく印刷(ステップSP4)という一連の処理を一の単位領域ごとに繰り返すことになる。
【0066】
なお、簡易検査モードのときは、印刷検査部31へ出力される可変部データ71の解像度は低減されるが、印刷に用いる可変部データ71の解像度が変更されるわけではない。したがって、印刷の品質そのものは、詳細検査モードと簡易検査モードとで同一である。
【0067】
<1−6.検査処理>
次に、このような印刷系統2の処理と並行してなされる検査系統3の検査処理について、図5と図6中の右側のフローとを参照して説明する。
【0068】
まず、印刷系統2から出力された一の単位領域に係る可変部データ71が、基準データ生成部61に入力される(ステップST1)。次に、その入力された可変部データ71と同一内容のデータを用いて印刷系統2にて印刷された印刷用紙82の単位領域が、撮像センサ32によって走査される。そして、得られた画像データに対して、光学系の歪み補正がなされ、これにより、当該単位領域の内容を示す画像データが被検査データ74として取得される(ステップST2)。
【0069】
ステップST1にて入力された可変部データ71に係る単位領域と、ステップST2にて取得された被検査データ74に係る単位領域とは一致する。検査系統3においては、この一の単位領域に関しての検査が繰り返しなされることになる。以下、その時点の検査対象となる単位領域を「注目単位領域」という。
【0070】
注目単位領域に係る可変部データ71と、注目単位領域に係る被検査データ74とが取得されると、以降はモード信号MSに基づく検査モードに応じた処理がなされることになる。すなわち、簡易検査モードのときは簡易検査処理(ステップST3,ST4)がなされ、一方、詳細検査モードのときは詳細検査処理(ステップST3,ST5)がなされることになる。
【0071】
<簡易検査処理>
最初に、簡易検査処理(図6:ステップST4)について説明する。図7は、簡易検査処理の詳細な流れを示す図である。
【0072】
まず、固定部データメモリ63に記憶された固定部データ72のうちの注目単位領域に対応する部分が取得される。そして、固定部データ削減部62により、この注目単位領域に係る固定部データ72は所定割合で画素の間引がなされ、その解像度が低減される(ステップST21)。
【0073】
次に、この注目単位領域に係る固定部データ72と、印刷系統2から入力された注目単位領域に係る可変部データ71とが基準データ生成部61により合成されて、注目単位領域に係る基準データ73が作成される(ステップST22)。
【0074】
この基準データ73は、被検査データ74との比較に用いる画像データである。被検査データ74は、印刷済の実際の印刷用紙82から得られるものであることから、固定部分と可変部分との双方の内容を含んでいる。したがって、基準データ73も固定部分と可変部分との双方の内容を含む必要がある。このため、基準データ73は、可変部データ71と固定部データ72との合成により生成される。
【0075】
また、基準データ73の生成元となった可変部データ71は予め印刷系統2において解像度が低減され、固定部データ72は固定部データ削減部62により解像度が低減されている。したがって、比較的低解像度の基準データ73が生成されることになる。
【0076】
次に、撮像センサ32によって取得された注目単位領域に係る被検査データ74が、被検査データ削減部65において、ステップST21同様、所定割合で画素の間引きがなされ、その解像度が低減される(ステップST23)。
【0077】
次に、この注目単位領域に係る被検査データ74と、基準データ生成部61により生成された注目単位領域に係る基準データ73とが比較され、同一位置の画素間における誤差が取得される(ステップST24)。続いて、取得された誤差が基準値以内か否かが判定される(ステップST25)。この基準値は、データ比較部64に予め設定されている。
【0078】
比較による誤差が基準値以内のときは(ステップST25にてYes)、印刷用紙8の注目単位領域における印刷状態は良好と判定され、その判定結果が検査結果データ75として制御部1に入力され、印刷検査処理が継続されることになる。
【0079】
一方、比較による誤差が基準値を超えるときは(ステップST25にてNo)、印刷用紙8の注目単位領域における印刷状態は不良と判定され、その判定結果が検査結果データ75として制御部1に入力される。そして、制御部1の制御により、印刷の不良を検出した際に行うべき所定の不良検出処理がなされることになる(ステップST26)。本実施の形態では、不良検出処理として印刷装置10の動作が全て停止されるようになっている。なお、不良検出処理として、不良と判定された注目単位領域にラベルなどで目印を付ける処理を行い、そのまま印刷検査処理が継続されてもよい。
【0080】
<詳細検査処理>
次に、詳細検査処理(図6:ステップST5)について説明する。図8は、詳細検査処理の詳細な流れを示す図である。
【0081】
まず、固定部データメモリ63に記憶された固定部データ72のうちの注目単位領域に対応する部分と、印刷系統2から入力された注目単位領域に係る可変部データ71とがそのまま基準データ生成部61により合成されて、注目単位領域に係る基準データ73が生成される(ステップST31)。
【0082】
この基準データ73の生成元となった可変部データ71と固定部データ72との双方は解像度が低減されていない。したがって、可変部データ71と固定部データ72との双方の全画素が利用された比較的高解像度の基準データ73が生成されることになる。
【0083】
次に、この注目単位領域に係る基準データ73と、撮像センサ32によって取得された注目単位領域に係る被検査データ74とがそのまま比較され、同一位置の画素間における誤差が取得される(ステップST32)。この比較の前に被検査データ74の解像度は低減されていないことから、比較的高解像度の被検査データ74が比較に用いられる。以降は簡易検査処理と同様に、比較による誤差が基準値以内か否かが判定され、その判定に応じた処理がなされることになる(ステップST33,ST34)。
【0084】
<検査処理のまとめ>
このように、簡易検査モードにおいては、検査に用いられる全ての画像データ(可変部データ71、固定部データ72及び被検査データ74)の解像度が低減されてデータ量が削減される一方で、詳細検査モードにおいては、検査に用いられる全ての画像データの全画素が利用されてデータ量が維持される。このため、簡易検査モードでは、双方ともに低解像度となる基準データ73と被検査データ74とが比較され、単位領域ごとに比較するデータ量が比較的少ない簡易検査がなされることになる。一方で、詳細検査モードでは、双方ともに高解像度となる基準データ73と被検査データ74とが比較され、単位領域ごとに比較するデータ量が比較的多い詳細検査がなされることになる。簡易検査においては検査の精度は低くなるが、検査において取り扱うデータ量を大幅に低減することができる。一方で、詳細検査においては高精度な検査を行うことが可能となる。
【0085】
図6に戻り、以上説明した検査系統3の一連の処理は、印刷用紙8の全ての領域に関しての検査が終了するまで(ステップST6にてNoの間)、印刷用紙8の単位領域ごとに繰り返されることとなる。
【0086】
このような処理により、印刷用紙8のうち、詳細検査モードのときに注目単位領域とされた領域は詳細検査の検査対象とされ、詳細検査モードのときに注目単位領域とされた領域は簡易検査の検査対象とされることになる。したがって、印刷用紙8の全ての領域は、詳細検査か簡易検査かのいずれかの検査対象とされるため、印刷装置10においては、印刷用紙8の全ての領域に関しての検査がなされることになる。つまり、印刷用紙8のうちの一部領域が詳細検査の検査対象とされ、印刷用紙8のうちのその一部領域を除く領域が簡易検査の検査対象とされるわけである。
【0087】
ここで仮に、印刷用紙8の全領域を詳細検査の検査対象した場合を想定すると、全領域に高精度な検査を行うことは不可能ではないが、検査において膨大なデータ量を取り扱う必要があり、検査精度の低下、ひいては印刷速度の低下につながるという問題が生じる。一方で仮に、印刷用紙8の全領域を簡易検査の検査対象とした場合を想定すると、取り扱うデータ量は低減できるので検査精度、印刷速度の低下は生じないにせよ、軽微なレベルの不良(詳細検査でしか発見できないレベルの不良)を発見することができない。つまり、いずれの場合も、「検査精度の維持」という技術的要請と「データ量の低減」という技術的要請とが両立されずに競合することになる。
【0088】
これに対して、本実施の形態のように印刷用紙8の一部領域のみを詳細検査の検査対象とすれば、検査において取り扱うデータ量を大幅に低減しつつ、詳細検査を行う際に軽微な不良も発見できることになる。したがってこれにより、「検査精度の維持」及び「データ量の低減」という2つの競合する技術的要請をバランスをとりつつ両立することができるわけである。なお、簡易検査の検査対象となる領域では、軽微な不良を発見できない可能性もある。しかしながら、一般に印刷装置においては発生した不良が自然に改善することは稀である。このため、例えば、所定のイベントごとに定期的に詳細検査を行うようにすれば、ある詳細検査において軽微な不良が発見されたときは、印刷用紙8における不良の発生箇所は前回の詳細検査の対象領域と今回の詳細検査の対象領域との間であると判断できるため、不良の発生箇所を事後的に容易に特定できることになる。
【0089】
<1−7.詳細検査の対象領域>
次に、印刷用紙8のうちの詳細検査の検査対象とする領域について説明する。上述したように、検査モードの切替はモード信号MSに応じてなされるため、印刷用紙8のうちいずれの領域を詳細検査の検査対象とするかは、モード信号MSによって決定される。
【0090】
図9は、モード信号MSと、検査系統3でなされる検査との関係を示すタイムチャートである。モード信号MSは、”H”と”L”とのいずれかの値をとる信号であり、”H”が詳細検査モード、”L”が簡易検査モードに対応している。
【0091】
図9に示すように、モード信号MSが”H”となったときには検査系統3において詳細検査がなされ、それ以外のときにおいては簡易検査がなされる。このため、モード信号MSが”H”となっている期間の長さに応じて、詳細検査がなされる領域の長さも変更される。すなわち、印刷用紙8におけるいずれの位置に、どのような長さの領域に関して詳細検査を行うかは、モード信号MSによって決定されるわけである。
【0092】
以下では、印刷用紙8において詳細検査の検査対象となる領域について3つの具体例を説明する。印刷装置10においてはいずれが採用されてもよい。
【0093】
<第1例:グループごと>
まず、詳細検査の検査対象となる領域の第1例について説明する。図10は、この第1例を示す図である。なお、この図中の上部側が印刷において先行する側(印刷順位が上位となる側)であるものとする。
【0094】
図に示すように、第1例では、印刷用紙8に含まれる複数のグループGのそれぞれにおいて、最後に印刷される後端領域が詳細検査の検査対象Adとされている。すなわち、一のグループGごとに、詳細検査の検査対象Adとして一の領域が設定されている。これによれば、グループGごとに詳細検査がなされるため、グループ単位で印刷が良好か否かを確認することができる。このため、印刷用紙8のグループ単位での管理が容易となる。
【0095】
なお、この例では、詳細検査の検査対象Adとして一のグループGに一の領域のみが設定されているが、複数の領域が設定されてもよい。すなわち、一のグループGごとに少なくとも一の領域が、詳細検査の検査対象Adとされればよい。また、詳細検査の検査対象Adとする領域は、グループGのうちの後端領域には限定されず、グループGのうちで最も先行して印刷される先端領域、所定の情報が印刷された先端領域と後端領域との中間の領域などの他の領域であってもよい。
【0096】
<第2例:用紙ブロックごと>
次に、詳細検査の検査対象となる領域の第2例について説明する。図11は、この第2例を示す図である。なお、この図中においても上部側が印刷において先行する側であるものとする。
【0097】
図に示すように、第2例では、印刷用紙8の全体としての用紙ブロック(用紙ロール)に含まれる複数のページPのうち、印刷順位が最終となる最終ページEPの全体領域が、詳細検査の検査対象Adとされている。このような詳細検査の検査対象Adとなる領域の設定は、印刷装置10にて扱われる全ての用紙ブロックに関して同様になされる。すなわち、一の用紙ブロックごとに、詳細検査の検査対象Adとして一の領域が設定される。これによれば、用紙ブロックごとに詳細検査がなされるため、用紙ブロック単位で印刷が良好か否かを確認することができる。このため、印刷用紙8の用紙ブロック単位での管理が容易となる。
【0098】
なお、この例では、詳細検査の検査対象Adとして一の用紙ブロックに一の領域のみが設定されているが、複数の領域が設定されてもよい。すなわち、一の用紙ブロックごとに少なくとも一の領域が詳細検査の検査対象Adとされればよい。また、詳細検査の検査対象Adとする領域の広さは、一のページの全体領域でなくてもよく、一のページの一部領域であってもよい。
【0099】
さらに、詳細検査の検査対象Adとする領域は、最終ページEPには限定されず、他のページであってもよい。ただし、この図11の例に示すように、最終ページEPもしくは最終ページEPに近い目視可能なページの一の領域を詳細検査の検査対象Adとすれば、印刷が完了した印刷用紙82において、詳細検査の検査対象とされた領域の目視確認を容易にできる。
【0100】
印刷が完了した印刷用紙82は、図12に示すようにロール状に巻き回された状態の用紙ブロックとして印刷装置10から取り外される。このとき、最終ページEP(あるいは最終ページEPに近い目視可能なページ)はロール状の用紙ブロックの最外周に位置することから、その内容は目視で容易に確認可能である。したがって、検査系統3の詳細検査の結果と、目視確認での結果とを容易に対比することができる。例えば、詳細検査の結果が印刷不良とされているときに、その印刷不良とされた領域に関して、実際に印刷不良が発生しているか否かを目視によって容易に確認できることになる。
【0101】
なお、本実施の形態の印刷装置10では、印刷済の印刷用紙82の全体としての用紙ブロックはロール状にされるとしたが、例えば、図13に示すように、用紙ブロックは、それに含まれる複数のページが蛇腹状に織り込まれて直方体状とされるものであってもよい。この場合においては、最終ページEPは直方体状の用紙ブロックの最上部に位置することになる。したがって、この場合であっても、最終ページEPに含まれる一の領域を詳細検査の検査対象Adとすれば、上記と同様に、詳細検査の検査対象Adとされた領域の目視確認を容易にできる。
【0102】
<第3例:組合せ>
また、上記第1例及び第2例を組合わせた領域を、詳細検査の検査対象Adとしてもよい。図14は、このような場合の第3例を示す図である。図に示すように、第3例では、印刷用紙8の一のグループGごとに一の領域が詳細検査の検査対象Adとされ、さらに、用紙ブロックに含まれる複数のページPのうちの最終ページEPの全体領域が詳細検査の検査対象Adとされている。これによれば、グループ単位及び用紙ブロック単位の双方で、印刷が良好か否かを確認することができ、印刷用紙8の管理をさらに容易とすることができる。
【0103】
<1−8.まとめ>
以上第1の実施の形態について説明したように、印刷装置10の検査系統3は、印刷用紙8の単位領域ごとに比較対象となるデータ量が比較的多い詳細検査と、データ量が比較的少ない簡易検査とが可能であり、印刷用紙8の一部領域が詳細検査の検査対象とされ、その他の領域は簡易検査の検査対象とされる。したがって、検査精度を大きく低下させることなく、検査にて取り扱うデータ量を大幅に低減できる。
【0104】
また、印刷装置10は、可変印刷が可能であり、印刷済の印刷用紙82に含まれる複数のページの内容は互いに異なることになる。このため、印刷用紙8の全体に対しての検査を行うことが好ましいが、印刷装置10では、このように印刷用紙8の全体に対しての検査を行うときでも、検査にて取り扱うデータ量を大幅に低減できる。
【0105】
また、可変部分を除いた固定部分を示す固定部データ72は、検査を行う前から固定部データメモリ63に記憶されており、この固定部データ72と印刷系統2から印刷検査部31に入力される可変部データ71とに基づいて基準データ73が生成される。したがって、基準データ73の生成の際には可変部データ71のみを印刷系統2から入力すればよく、入力すべきデータ量を低減できる。
【0106】
また、詳細検査モードでは全画素の可変部データ71が印刷系統2から入力され、簡易検査モードでは解像度が低減された可変部データ71が印刷系統2から入力される。すなわち、印刷系統2から印刷検査部31に入力される可変部データ71のデータ量は、当該可変部データ71を詳細検査に用いるときは詳細検査に十分な量とされ、当該可変部データ71を簡易検査に用いるときは詳細検査には不十分であるが、簡易検査には十分な量とされることになる。したがって、可変部データ71として検査に必要なデータ量のみが入力されるため、基準データ73の生成のために入力するデータ量をさらに低減できることになる。
【0107】
<2.第2の実施の形態>
<2−1.概要>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態の印刷装置10の主たる構成は、図1に示すものと同様である。本実施の形態においては、可変部分に再利用部分が含まれている。
【0108】
図15は、本実施の形態の印刷装置10にて印刷された印刷用紙82の一のページPの内容の例を示す図である。本実施の形態における印刷前の印刷用紙81の態様は、図2に示すものと同様である。図2と図15とを比較してわかるように、本実施の形態の印刷装置10によって印刷される可変部分の一部には、階調データなどの再利用部分Pcが含まれている。
【0109】
このような再利用部分Pcの印刷に用いる再利用データは、図15に示す如く階調データを含む場合が多く、再利用部分Pcを除いた非再利用部分(文字、記号、図形など)の印刷に用いる非再利用データと比較して、非常にデータ量が多くなる。このため、本実施の形態の印刷データ処理部22においては、再利用部分Pcの印刷に用いる候補となる複数の再利用データを予め記憶しておき、可変部分のうちの再利用部分Pcの印刷にあたって再利用データそのものは入力されず、記憶された再利用データが利用されるようになっている。また、印刷検査部31もこれと同様に、複数の再利用データを予め記憶しており、基準データを作成する際にその記憶された再利用データが利用されるようになっている。つまり、予め記憶される複数の再利用データのそれぞれは、繰り返し利用(再利用)されることになる。
【0110】
本実施の形態の印刷装置10の動作の概要は、図4に示すものと同様である。すなわち、第1の実施の形態と同様に、印刷検査処理Ps1として、印刷処理(ステップS12)、及び、検査処理(ステップS22)が並行してなされる。また、この印刷検査処理Ps1の前には、固定部データ72が取得される(ステップS21)。
【0111】
図16は、本実施の形態の印刷検査処理Ps1に係る印刷系統2及び検査系統3の機能の詳細を示すブロック図である。
【0112】
図5と図16とを比較してわかるように、本実施の形態の形態の印刷データ処理部22は、第1の実施の形態と同様にデータ変換部52を備える他、第1の実施の形態の可変部データ削減部51に替えて非再利用データ削減部53を備えている。さらに、印刷データ処理部22は、画像処理機能としてのデータ合成部54と、画像メモリである再利用データメモリ55とを備えている。再利用データメモリ55は、再利用部分の印刷に用いる候補となる複数の再利用データ78を記憶している。
【0113】
また、本実施の形態の印刷検査部31は、第1の実施の形態と同様に、基準データ生成部61と、固定部データ削減部62と、固定部データメモリ63と、データ比較部64と、被検査データ削減部65とを備える他、さらに、画像処理機能としての再利用データ削減部66と、画像メモリである再利用データメモリ67を備えている。本実施の形態においても、画像処理機能としての各部にはそれぞれRIP処理部21からモード信号MSが入力され、検査モードに応じた画像処理がなされるようになっている。
【0114】
また、再利用データメモリ67は、印刷系統2の再利用データメモリ55と同様に、複数の再利用データ79を記憶する。この再利用データメモリ67に記憶される複数の再利用データ79は、印刷系統2の再利用データメモリ55に記憶される複数の再利用データ78と全く同一のもの(同一内容、かつ、同一データ量)となっている。これらの複数の再利用データ78及び複数の再利用データ79は、印刷検査処理Ps1がなされる前から予め記憶される。
【0115】
図17は、本実施の形態の印刷検査処理Ps1における印刷系統2及び検査系統3の処理の詳細を示す図である。図中左側のフローが印刷系統2の印刷処理(図4:ステップS12)の流れを示し、右側のフローが検査系統3の検査処理(図4:ステップS22)の流れを示している。以下、これらの詳細について順に説明する。
【0116】
<2−2.印刷処理>
まず、図16と図17中の左側のフローとを参照して、本実施の形態の印刷系統2の印刷処理について説明する。
【0117】
本実施の形態においても、印刷用紙8に含まれる全ページの印刷が終了するまで(ステップSP16にてNoの間)、印刷用紙8の単位領域ごとに可変部分の印刷がなされる(ステップSP15)。ただし、本実施の形態では可変部データ71は、再利用データ78と非再利用データ76とがデータ合成部54にて合成されることによって生成される(ステップSP14)。
【0118】
可変部データ71の生成元となる再利用データ78と非再利用データ76とのうち、RIP処理部21からは非再利用データ76のみが入力される。一方、再利用データ78としては、再利用データメモリ55に予め記憶されているものが利用される。この再利用データメモリ55には複数の再利用データ78が記憶されているが、いずれの再利用データ78を印刷に用いるかは、RIP処理部21から非再利用データ76とともに入力される配置データ77によって指定される。
【0119】
この配置データ77は、再利用データメモリ55内の複数の再利用データ78のうちから印刷に用いるものを指定するとともに、当該再利用データ78と非再利用データ76とをどのような配置で合成するかをも指定する指定情報である。したがって、配置データ77は、画像データと比較して非常にデータ量が小さなデータとなる。
【0120】
一の単位領域の印刷にあたっては、まず、当該単位領域に係る非再利用データ76と、配置データ77とがRIP処理部21から入力される。次に、配置データ77が参照され、データ合成部54によって、印刷に用いる再利用データ78が再利用データメモリ55から選択される。そして、選択された再利用データ78のうちの印刷すべき単位領域に係る部分と、非再利用データ76とが合成されて可変部データ71が生成される(ステップSP14)。
【0121】
生成された可変部データ71は、データ変換部52によりヘッドデータに変換されて印刷ヘッド23に供給される。これにより、印刷ヘッド23において印刷用紙8に対して、再利用部分を含む可変部分の一の単位領域に係る印刷がなされることになる(ステップSP15)。
【0122】
また、このような一の単位領域に係る印刷の前には、第1の実施の形態の可変部データ71に係る処理と同様にして、その印刷に用いる一の単位領域に係る非再利用データ76が、非再利用データ削減部53により検査モードに応じて解像度が調整された後(ステップSP11,SP12)、印刷データ処理部22から印刷検査部31に出力される(ステップSP13)。
【0123】
またさらに、本実施の形態では、このような非再利用データ76とともに、RIP処理部21から入力された配置データ77も、印刷データ処理部22から印刷検査部31に出力されるようになっている(ステップSP13)。
【0124】
以上のように印刷系統2は、検査モードに応じての非再利用データ76の解像度の調整(ステップSP11,SP12)、非再利用データ76及び配置データ77の印刷検査部31への出力(ステップSP13)、可変部データ71の合成(ステップSP14)、並びに、可変部データ71に基づく印刷(ステップSP15)という一連の処理を一の単位領域ごとに繰り返すことになる。
【0125】
<2−3.検査処理>
次に、このような印刷系統2の処理と並行してなされる検査系統3の検査処理について、図16と図17中の右側のフローとを参照して説明する。
【0126】
本実施の形態の検査系統3においても、第1の実施の形態と同様に、印刷系統2から入力される非再利用データ76に係る一の単位領域に関しての検査が、印刷用紙8の全ての領域に関しての検査が終了するまで(ステップST17にてNoの間)、繰り返しなされることになる。以下、その時点の検査対象となる単位領域を「注目単位領域」という。
【0127】
検査にあたっては、まず、印刷系統2から出力された2つのデータ(注目単位領域に係る非再利用データ76及び配置データ77)の双方が、基準データ生成部61に入力される(ステップST11)。次に、印刷用紙82の注目単位領域が撮像センサ32によって走査され、光学系の歪み補正がなされて、注目単位領域に係る被検査データ74が取得される(ステップST12)。次に、配置データ77が参照され、基準データ生成部61によって、印刷に用いた再利用データ78と同一内容の再利用データ79が再利用データメモリ67から選択される。そして、選択された再利用データ79のうちの注目単位領域に係る部分のみが取得される(ステップST13)。
【0128】
そして以降は、モード信号MSに基づく検査モードに応じた処理がなされることになる。すなわち、検査モードが簡易検査モードのときは簡易検査処理(ステップST14,ST15)がなされ、一方、詳細検査モードのときは詳細検査処理(ステップST14,ST16)がなされることになる。本実施の形態においても、簡易検査処理においては解像度が低減された上でデータの比較がなされる一方で、詳細検査処理においては解像度が低減されずにデータの比較がなされるようになっている。
【0129】
<簡易検査処理>
まず、簡易検査処理(図17:ステップST15)について説明する。図18は、簡易検査処理の詳細な流れを示す図である。
【0130】
まず、注目単位領域に係る再利用データ79が、再利用データ削減部66により、所定割合で画素の間引きがなされ、その解像度が低減される(ステップST41)。
【0131】
次に、この単位画像に係る再利用データ79と、印刷系統2から入力された注目単位領域に係る非再利用データ76とが、配置データ77に基づいて基準データ生成部61により合成されて、注目単位領域に係る可変部データが生成される(ステップST42)。ここで生成される可変部データは、印刷系統2において印刷に用いられた可変部データ71と同一内容のものである。
【0132】
次に、固定部データメモリ63に記憶された固定部データ72のうちの注目単位領域に対応する部分が取得される。そして、固定部データ削減部62により、この注目単位領域に係る固定部データ72は所定割合で画素の間引がなされ、その解像度が低減される(ステップST43)。
【0133】
次に、この注目単位領域に係る固定部データ72と、ステップST42にて生成された注目単位領域に係る可変部データ71とが基準データ生成部61により合成されて、注目単位領域に係る基準データ73が作成される(ステップST44)。
【0134】
この基準データ73の生成元となった再利用データ79と、非再利用データ76と、固定部データ72とのそれぞれは解像度が低減されている。したがって、比較的低解像度の基準データ73が生成されることになる。
【0135】
次に、撮像センサ32によって取得された注目単位領域に係る被検査データ74が、被検査データ削減部65において、ステップST41同様、所定割合で画素の間引きがなされ、その解像度が低減される(ステップST45)。
【0136】
次に、この注目単位領域に係る被検査データ74と、基準データ生成部61により生成された注目単位領域に係る基準データ73とが比較され、同一位置の画素間における誤差が取得される(ステップST46)。以降は第1の実施の形態と同様に、比較による誤差が基準値以内か否かが判定され、その判定に応じた処理がなされることになる(ステップST47,ST48)。
【0137】
<詳細検査処理>
次に、詳細検査処理(図17:ステップST16)について説明する。図19は、詳細検査処理の詳細な流れを示す図である。
【0138】
まず、注目単位領域に係る再利用データ79と、印刷系統2から入力された注目単位領域に係る非再利用データ76とがそのまま、配置データ77に基づいて基準データ生成部61により合成されて、注目単位領域に係る可変部データが作成される(ステップST51)。
【0139】
次に、この生成された可変部データと、固定部データメモリ63に記憶された固定部データ72のうちの注目単位領域に対応する部分とがそのまま基準データ生成部61により合成されて、注目単位領域に係る基準データ73が生成される(ステップST52)。
【0140】
この基準データ73の生成元となった再利用データ79と、非再利用データ76と、固定部データ72とのそれぞれは解像度が低減されていない。したがって、比較的高解像度の基準データ73が生成されることになる。
【0141】
次に、この注目単位領域に係る基準データ73と、撮像センサ32によって取得された注目単位領域に係る被検査データ74とがそのまま比較され、同一位置の画素間における誤差が取得される(ステップST53)。以降は第1の実施の形態と同様に、比較による誤差が基準値以内か否かが判定され、その判定に応じた処理がなされることになる(ステップST54,ST55)。
【0142】
<2−4.まとめ>
このように、本実施の形態においても、簡易検査モードにおいては、検査に用いられる全ての画像データ(非再利用データ76、再利用データ79、固定部データ72及び被検査データ74)の解像度が低減されてデータ量が削減される一方で、詳細検査モードにおいては、検査に用いられる全ての画像データの全画素が利用されてデータ量が維持される。このため、簡易検査モードでは単位領域ごとに比較するデータ量が比較的少ない簡易検査がなされ、詳細検査モードでは単位領域ごとに比較するデータ量が比較的多い詳細検査がなされることになる。したがって、モード信号MSにより詳細検査の対象領域を第1の実施の形態と同様に設定すれば、第1の実施の形態と同様に、「検査精度の維持」及び「データ量の低減」という2つの競合する技術的要請をバランスをとりつつ両立することができる。
【0143】
また、本実施の形態においては、印刷系統2が再利用部分の印刷に用いる候補となる複数の再利用データ78と同一内容の複数の再利用データ79が、検査を行う前から印刷検査部31の再利用データメモリ67に記憶されている。そして、これらのうちの配置データ77によって指定された再利用データ79と、印刷系統2から入力される非再利用データ76と、固定部データメモリ63に記憶された固定部データ72とに基づいて基準データ73が生成される。したがって、可変部分が再利用画像に係る再利用部分を含む場合であっても、データ量が膨大な再利用データを基準データ73の生成のために印刷系統2から入力する必要がないため、入力すべきデータ量を大幅に低減できることになる。
【0144】
なお、本実施の形態においては、印刷系統2に記憶される複数の再利用データ78と、検査系統3に記憶される複数の再利用データ79とは、同一内容、かつ、同一データ量のデータであると説明したが、検査系統3の複数の再利用データ79は、印刷系統2の複数の再利用データ78と同一内容であれば、データ量はそれよりも小さくしてもよい。例えば、検査系統3の複数の再利用データ79のそれぞれのデータ量を、詳細検査には不十分であるが、簡易検査には十分な量とすることで、再利用データメモリ67に記憶すべきデータ量を大幅に低減できることになる。
【0145】
<3.他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような他の実施の形態について説明する。
【0146】
<3−1.可変部分のみ>
上記実施の形態では、印刷済の印刷用紙82の内容には、固定部分と可変部分とが含まれると説明したが、固定部分(プレ印刷)が無く可変部分のみが含まれるものであってもよい。この場合には、基準データ73は、可変部データのみから生成すればよい。また、固定部データ72が必要とならないため、固定部データ削減部62や、固定部データメモリ63が必要とならない。
【0147】
また、印刷内容が、固定部分を含む場合と、固定部分を含まない場合との双方に対応する印刷装置であれば、印刷内容が固定部分を含むか否かに応じて、処理において固定部データを利用するか否かを変更すればよい。
【0148】
<3−2.追加印刷の固定>
また、上記実施の形態では、印刷前の印刷用紙81に含まれる固定部分(プレ印刷)に対して、複数のページのそれぞれに固有の内容を追加的に可変印刷するものであったが、複数のページ間で共通の内容を追加的に印刷するものであってもよい。
【0149】
この場合は、追加印刷する内容は固定されているため、その印刷に用いる印刷データを印刷検査部31に一回入力して所定の画像メモリなどに記憶させておけば、単位領域ごとに印刷データを印刷系統2から印刷検査部31に入力する必要はない。
【0150】
<3−3.領域限定>
また、上記実施の形態では、簡易検査においては、検査に用いる全ての画像データの解像度を低減することでそのデータ量を削減していたが、これには限定されず、例えば、検査に用いる全ての画像データの領域を一部に限定することで、そのデータ量を削減するようにしてもよい。
【0151】
図20は、この場合において検査対象となる領域の例を示す図である。図中においてハッチングで示す領域が、検査対象となる領域を示している。この例に示す印刷用紙8の領域のうち下方の端部領域は詳細検査の検査対象Adとされており、その他の領域は簡易検査の検査対象Aeとされている。
【0152】
図に示すように、詳細検査の検査対象Adに関しては、主走査方向(図中の左右方向)の全体領域に関して検査がなされる。一方で、簡易検査の検査対象Aeに関しては、主走査方向の一部の領域Afのみに限定して検査がなされるようになっている。この場合においては、図に示すように、簡易検査の検査対象Aeに関して検査をする領域Afの主走査方向の位置が、副走査方向に応じて(時間的に)変更されることが好ましい。なお、この場合においても、簡易検査において検査に用いる全ての画像データの解像度を低減することでそのデータ量をさらに削減してもよい。
【0153】
<3−4.テストパターン>
また、印刷用紙8に所定のテストパターンを印刷し、このテストパターンを詳細検査の検査対象としてもよい。図21は、詳細検査の検査対象となる領域の例を示す図である。この例においても、図10の例と同様に、各グループGの後端領域が詳細検査の検査対象Adとされている。ただし、この詳細検査の検査対象Adとなる領域にはそれぞれ、テストパターンTpが印刷されている。
【0154】
図22は、この場合における、印刷系統2でなされる印刷と、検査系統3でなされる検査との関係を示すタイムチャートである。なお、ある単位領域に関しての印刷系統2の印刷と、その同一の単位領域に関しての検査系統3の検査との間には、印刷用紙8の搬送にかかる時間が存在することから、実際にはタイムラグが存在する。しかしながら説明を簡単にするため、図22においては同一の単位領域に係る印刷と検査とは同一時間帯に示している。
【0155】
図9と同様に、モード信号MSが”H”となったときには、検査系統3において詳細検査がなされ、それ以外のときにおいては簡易検査がなされる。そして一方で、モード信号MSが”H”となったときには、印刷系統2では所定のテストパターンTpの印刷がなされ、それ以外のときにおいては通常の印刷がなされる。これにより、所定のテストパターンTpを印刷用紙8に印刷し、その印刷されたテストパターンTpを詳細検査の検査対象とすることができる。このように所定のテストパターンTpを詳細検査の検査対象とすることで、詳細検査の検査精度を大幅に向上できる。
【0156】
<3−5.保守印刷>
また、印刷装置10の印刷品質を維持するためになされる保守印刷の結果が、詳細検査の検査対象とされてもよい。例えば、上記実施の形態の印刷装置10は、インクジェットプリンタであるため、印刷ヘッド23に含まれるノズルの詰まりを防止するために、全てのノズルから強制的にインクを印刷用紙8に吹き付けるフラッシング印刷(保守印刷)が定期的に必要となる。このようなフラッシング印刷を行うと、その結果として、印刷用紙8にはフラッシング画像が形成される。この場合は、このようなフラッシング画像を詳細検査の検査対象とすることになる。
【0157】
図23は、この場合における、印刷系統2でなされる印刷と、検査系統3でなされる検査との関係を示すタイムチャートである。図23においても、同一の単位領域に係る印刷と検査とは同一時間帯に示している。
【0158】
図9と同様に、モード信号MSが”H”となったときには、検査系統3において詳細検査がなされ、それ以外のときにおいては簡易検査がなされる。そして一方で、モード信号MSが”H”となったときには、印刷系統2ではフラッシング印刷がなされ、それ以外のときにおいては通常の印刷がなされる。これにより、フラッシング画像を詳細検査の検査対象とすることができる。
【0159】
このように保守印刷の結果を詳細検査の検査対象とすることで、印刷装置の印刷品質の維持のための処理と、印刷用紙の検査のための処理とを同時に行うことができ、印刷装置の保守のために必要な処理のトータル時間を大幅に短縮できる。
【0160】
<3−6.その他変形例>
また、上記実施の形態では、印刷検査機能をインクジェット方式の印刷装置10に適用する場合について説明を行ったが、オフセット印刷装置や、電子写真方式の印刷装置など、他の方式の印刷装置であっても、上記実施の形態に係る印刷検査機能を適用することが可能である。たとえば、オフセット印刷装置においては、上記の印刷品質を維持するために、いわゆる「捨てベタ」と呼ばれる保守印刷の領域が存在するので、該領域を詳細検査の検査対象とすればよい。
【0161】
また、上記実施の形態においては、印刷検査部31への可変部データ71等の入力は、印刷系統2の印刷データ処理部22からなされていたが、RIP処理部21からなされてもよい。
【0162】
また、印刷系統2から印刷検査部31へ可変部データ71等の画像データを出力するにあたっては、出力前に画像データに非可逆圧縮を施してもよい。これによれば、基準データ73の生成のために印刷検査部31が入力すべきデータ量をさらに低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】印刷装置の概略構成を示す図である。
【図2】印刷前の印刷用紙の一例を示す図である。
【図3】第1の実施の形態における印刷済の印刷用紙の一例を示す図である。
【図4】印刷装置における動作の概要を示す図である。
【図5】第1の実施の形態の印刷検査処理に係る機能の詳細を示す図である。
【図6】第1の実施の形態の印刷検査処理における処理の詳細を示す図である。
【図7】第1の実施の形態の簡易検査処理の詳細な流れを示す図である。
【図8】第1の実施の形態の詳細検査処理の詳細な流れを示す図である。
【図9】モード信号と検査系統の検査との関係を示す図である。
【図10】詳細検査の検査対象となる領域の一例を示す図である。
【図11】詳細検査の検査対象となる領域の一例を示す図である。
【図12】印刷装置から取り外された用紙ブロックの一例を示す図である。
【図13】印刷装置から取り外された用紙ブロックの一例を示す図である。
【図14】詳細検査の検査対象となる領域の一例を示す図である。
【図15】第2の実施の形態における印刷済の印刷用紙の一例を示す図である。
【図16】第2の実施の形態の印刷検査処理に係る機能の詳細を示す図である。
【図17】第2の実施の形態の印刷検査処理における処理の詳細を示す図である。
【図18】第2の実施の形態の簡易検査処理の詳細な流れを示す図である。
【図19】第2の実施の形態の詳細検査処理の詳細な流れを示す図である。
【図20】この場合において検査対象となる領域の例を示す図である。
【図21】詳細検査の検査対象となる領域の例を示す図である。
【図22】モード信号と印刷系統の印刷と検査系統の検査との関係を示す図である。
【図23】モード信号と印刷系統の印刷と検査系統の検査との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0164】
2 印刷系統
3 検査系統
4 搬送系統
8 印刷用紙
10 印刷装置
22 印刷データ処理部
23 印刷ヘッド
31 印刷検査部
32 撮像センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置の印刷物を検査する印刷検査装置であって、
前記印刷装置が印刷に用いる印刷データに基づいて基準データを生成する基準生成手段と、
前記印刷物から被検査データを取得する取得手段と、
前記印刷物の単位領域ごとに、当該単位領域に係る前記基準データと前記被検査データとを比較して検査を行う検査手段と、
を備え、
前記検査手段は、前記単位領域ごとに比較対象となるデータ量が比較的多い詳細検査と、前記データ量が比較的少ない簡易検査とが可能であり、
前記印刷物のうちの一部領域が前記詳細検査の検査対象とされ、
前記印刷物のうちの前記一部領域を除く領域の一部もしくは全部分が前記簡易検査の検査対象とされることを特徴とする印刷検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷検査装置において、
前記印刷物は、複数のページを含み、
前記印刷物の内容は、前記複数のページのそれぞれに固有の可変部分を含むことを特徴とする印刷検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷検査装置において、
前記検査手段が検査を行う前から、前記印刷物の内容のうち前記可変部分を除いた固定部分を示す固定部データを記憶する記憶手段、
をさらに備え、
前記基準生成手段は、前記検査手段の検査にあたって、
前記印刷装置が前記可変部分の印刷に用いる可変部データを入力し、
入力した前記可変部データと、前記記憶手段に記憶された前記固定部データと、に基づいて前記基準データを生成することを特徴とする印刷検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷検査装置において、
前記基準生成手段に入力される前記可変部データのデータ量は、
当該可変部データを前記詳細検査に用いるときは、前記詳細検査に十分な量とされ、
当該可変部データを前記簡易検査に用いるときは、前記詳細検査に不十分で前記簡易検査に十分な量とされることを特徴とする印刷検査装置。
【請求項5】
請求項2に記載の印刷検査装置において、
前記可変部分は、再利用部分と、前記再利用部分を除いた非再利用部分とを含むものであり、
前記検査手段が検査を行う前から、前記印刷装置が前記再利用部分の印刷に用いる候補となる複数の再利用データと同一内容の複数の再利用データを記憶する第1記憶手段と、
前記検査手段が検査を行う前から、前記印刷物の内容のうち前記可変部分を除いた固定部分を示す固定部データを記憶する第2記憶手段と、
をさらに備え、
前記基準生成手段は、前記検査手段の検査にあたって、
前記印刷装置が前記非再利用部分の印刷に用いる非再利用データと、前記印刷装置が前記再利用部分の印刷に用いる再利用データを指定する指定情報と、を入力し、
入力した前記非再利用データと、前記第1記憶手段に記憶された前記複数の再利用データのうち入力した前記指定情報に指定された再利用データと、前記第2記憶手段に記憶された前記固定部データと、に基づいて前記基準データを生成することを特徴とする印刷検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷検査装置において、
前記第1記憶手段に記憶される前記複数の再利用データのそれぞれのデータ量は、前記詳細検査に不十分で前記簡易検査に十分な量とされることを特徴とする印刷検査装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の印刷検査装置において、
前記印刷物は、それぞれが連続ページ群からなる複数のグループに区分され、
前記グループごとに少なくとも一の領域が、前記詳細検査の検査対象とされることを特徴とする印刷検査装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の印刷検査装置において、
前記印刷物は、複数のページが連結状態で含まれる用紙ブロックで構成され、
前記用紙ブロックごとに少なくとも一の領域が、前記詳細検査の検査対象とされることを特徴とする印刷検査装置。
【請求項9】
請求項8に記載の印刷検査装置において、
前記用紙ブロックに含まれる前記複数のページのうち印刷順位が最終もしくは最終に近い目視可能となるページの一の領域が、前記詳細検査の検査対象とされることを特徴とする印刷検査装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の印刷検査装置において、
前記印刷物に含まれるテストパターンが、前記詳細検査の検査対象とされることを特徴とする印刷検査装置。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれかに記載の印刷検査装置において、
前記印刷物に含まれる、前記印刷装置の印刷品質を維持するためになされる保守印刷の結果が、前記詳細検査の検査対象とされることを特徴とする印刷検査装置。
【請求項12】
印刷物を検査可能な印刷装置であって、
印刷に用いる印刷データに基づいて基準データを生成する基準生成手段と、
前記印刷物から被検査データを取得する取得手段と、
前記印刷物の単位領域ごとに、当該単位領域に係る前記基準データと前記被検査データとを比較して検査を行う検査手段と、
を備え、
前記検査手段は、前記単位領域ごとに比較対象となるデータ量が比較的多い詳細検査と、前記データ量が比較的少ない簡易検査とが可能であり、
前記印刷物のうちの一部領域が前記詳細検査の検査対象とされ、
前記印刷物のうちの前記一部領域を除く領域の一部もしくは全部分が前記簡易検査の検査対象とされることを特徴とする印刷装置。
【請求項13】
印刷装置の印刷物を検査する印刷検査方法であって、
前記印刷装置が印刷に用いる印刷データに基づいて基準データを生成する基準生成工程と、
前記印刷物から被検査データを取得する取得工程と、
前記印刷物の単位領域ごとに、当該単位領域に係る前記基準データと前記被検査データとを比較して検査を行う検査工程と、
を備え、
前記検査工程では、前記単位領域ごとに比較対象となるデータ量が比較的多い詳細検査と、前記データ量が比較的少ない簡易検査とが可能であり、
前記印刷物のうちの一部領域が前記詳細検査の検査対象とされ、
前記印刷物のうちの前記一部領域を除く領域の一部もしくは全部分が前記簡易検査の検査対象とされることを特徴とする印刷検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−150746(P2006−150746A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344398(P2004−344398)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】