説明

印刷版、印刷方法、印刷パターンおよび印刷版の製造方法

【課題】被印刷基材に安定して高精度かつ平坦性の高い画像パターンを形成できる印刷版を提供する。
【解決手段】印刷版(6)は、主表面(21)を有する基材(1)と、主表面(21)上に形成され、印刷時に被印刷物へインクが転写される画線部(7)と、主表面(21)上に形成され、印刷時に被印刷物へインクが転写されない非画線部(8)とを備える。画線部(7)は、主表面(21)に対向する対向面(25)を有する樹脂層(5)と、基材(1)と樹脂層(5)との間に配置され対向面(25)に面接触する溶媒保持層(4)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷版、印刷方法、印刷パターンおよび印刷版の製造方法に関し、特に、印刷法を用いてパターニングするための印刷版、その印刷版を用いた印刷方法、その印刷方法により形成される印刷パターン、およびその印刷版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)素子、半導体デバイス、発光素子などの電子デバイス作製において、フォトリソグラフィー法に替わる低コストの画像形成方法として、印刷法が注目され、研究が行なわれている。電子デバイスの製造プロセスで使用される印刷法に関し、凹版印刷法、凸版印刷法、平版印刷法など、様々な印刷法が提案されている。
【0003】
印刷法はインクが転移するという工程を含むため、高精度な画像を得るためには、各工程においてインクが安定して印刷版から被印刷基体に転写されなければならない。そこで、安定して精度の高い印刷パターンを形成するために、従来の印刷版を改良した印刷方法が種々提案されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、印刷用凹版を用いて、凹部内表面にシリコーンゴムを被覆することで凹部に充填したインクの離型性を向上させることにより、ブランケットへの充分なインク量を転写することができ、安定かつ高精度な画像パターンを形成できる方法が提案されている。
【0005】
また特許文献2には、印刷用凸版を用いて、凸部表面が弾性を有する樹脂から構成されることにより、樹脂が弾性変形するため高精細な画像を形成することができること、さらにその凸部表面の樹脂の表面粗さを制御して、樹脂表面に充分なインク量を確保することにより、高精度な画像パターンを形成できる方法が提案されている。
【0006】
また特許文献3には、インクに対する親液性および撥液性を利用して、インクを分断および転写する印刷用平版を用いることにより、高精度な画像パターンを形成できる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−302939号公報
【特許文献2】特開2008−179114号公報
【特許文献3】特開2004−249696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、印刷版にインク層を形成したときに、インク中の溶媒の沸点が低く乾燥しやすい、またはインク自身が周囲環境の影響を受け乾燥状態がばらつくことにより、均一な画像パターンが形成できない場合がある。
【0009】
図59は、印刷版の画線部を構成する樹脂層5にインク層11を形成した状態を示す断面模式図である。図60は、インク中の溶媒のインク層11からの脱離を示す断面模式図である。図59および図60に示すように、印刷版の画線部が樹脂層5を含んで構成されている場合、画線部上にインク層11を形成すると、インク中の溶媒は、その一部が大気中へ脱離し、一部が樹脂層5に吸収される。溶媒がインク層11から脱離することにより、インクが乾燥する。樹脂層5による溶媒の吸収能力が大きいほど、画線部上のインクはすぐに乾燥してしまう。
【0010】
図61は、乾燥したインクを被印刷基体へ転写した状態を示す断面模式図である。インク層11を被印刷基体の一例としてのブランケット12へ押圧するとき、インク層11から溶媒が脱離してインクが乾燥していると、図61に示すように、インクの一部のみがブランケット12に転写され、一部のインクは樹脂層5上に残存する。または、全てのインクが樹脂層5上に残存し、ブランケット12に転写されない。そのため、インクがブランケット12へ正確に転写されないという問題が生じる。
【0011】
印刷版を用いた印刷回数が増加するとともに樹脂層5中に溶媒が蓄積されていくにつれ、インク層11の乾燥は抑制されていく。そのため、インク層11を形成する工程の前に樹脂層5に溶媒を蓄積する工程を設けることにより、上記課題は解決できると推測される。
【0012】
しかし、樹脂層5に溶媒を蓄積する工程を設けたとしても、印刷回数やインク周辺の雰囲気(温度、湿度)の変動などが生じるため、印刷版の樹脂層5中における溶媒の割合を一定に制御することは困難である。そのため、インク層11の乾燥状態の制御は困難であり、ブランケット12にインクが正確に転写されないという問題が挙げられる。
【0013】
なお、「正確に転写されない」とは、印刷版上にあるインクの全部または一部が被印刷基体(ブランケット12)に転移しないという現象のほかに、転移はするものの印刷版の画線部上にあるインクと、被印刷基体上にあるインクの間で糸曳きが発生し、印刷幅の減少、印刷の中抜け、印刷形状の乱れなどにより印刷品位が劣化することを含む。
【0014】
被印刷基体にインクが正確に転写されない問題の発生は、TFT素子や半導体デバイス、発光素子などの電子デバイスの製造プロセスにおいて、デバイスの特性低下や特性不良の原因となり、電子デバイスの歩留まりの低下や製造コストの増大に繋がってしまう。
【0015】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、被印刷基材に安定して高精度かつ平坦性の高い画像パターンを形成することのできる印刷版を提供することである。また、本発明の他の目的は、その印刷版を用いた印刷方法、その印刷方法により形成される印刷パターン、および、その印刷版の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る印刷版は、主表面を有する基材と、主表面上に形成され、印刷時に被印刷物へインクが転写される画線部と、主表面上に形成され、印刷時に被印刷物へインクが転写されない非画線部とを備える。画線部は、主表面に対向する対向面を有する樹脂部と、基材と樹脂部との間に配置され対向面に面接触する溶媒保持部とを有する。
【0017】
上記印刷版は、非画線部に対し画線部が窪んだ印刷用凹版であってもよく、非画線部に対し画線部が突起した印刷用凸版であってもよい。
【0018】
上記印刷版は、上面が略平面に形成された印刷用平版であって、溶媒保持部は、主表面の全面に面接触してもよい。この場合、樹脂部は、撥インク性を有してもよい。また樹脂部は、シリコーン系樹脂とフッ素系樹脂とのいずれか一方を含んでもよい。
【0019】
上記印刷版において、溶媒保持部は、樹脂部の形成材料よりも溶媒の吸収力が高い材料により形成されていてもよい。
【0020】
本発明に係る印刷方法は、上記のいずれかの局面の印刷版を作製する工程と、溶媒保持部に溶媒を蓄積させる工程と、画線部に液体状のインクを塗布することによりインク層を形成する工程と、インク層を被印刷物へ押圧し、被印刷物にインク層を転写する工程とを備える。
【0021】
本発明に係る印刷パターンは、上記の印刷方法によって基板上に形成される。
本発明に係る一の印刷版の製造方法は、印刷用凹版の製造方法であって、主表面を有する基材を準備する工程と、主表面上にレジストの凸状パターンを形成する工程と、凸状パターン間および凸状パターン上に金属膜を形成する工程と、金属膜を研磨し、レジストを露出させる工程と、レジストを除去し、金属膜と主表面とによって囲まれた凹部を形成する工程と、凹部の底面および側面の全面を被覆する溶媒保持層を形成する工程と、溶媒保持層の表面全面に面接触する樹脂層を形成する工程と、を備える。
【0022】
本発明に係る他の印刷版の製造方法は、印刷用凸版の製造方法であって、主表面を有する基材を準備する工程と、主表面上にレジストの凸状パターンを形成する工程と、凸状パターン間および凸状パターン上に金属膜を形成する工程と、金属膜を研磨し、レジストを露出させる工程と、金属膜上およびレジスト上に溶媒保持層を形成する工程と、溶媒保持層上に樹脂層を形成する工程と、レジストの上部に位置する溶媒保持層および樹脂層を除去する工程と、レジストを除去する工程と、を備える。
【0023】
本発明に係るさらに他の印刷版の製造方法は、印刷用平版の製造方法であって、主表面を有する基材を準備する工程と、主表面上に溶媒保持層を形成する工程と、溶媒保持層上にレジストの凸状パターンを形成する工程と、凸状パターン間および凸状パターン上に撥インク層を形成する工程と、凸状パターンと凸状パターンの上部に位置する撥インク層とを除去し、撥インク層と溶媒保持層とによって囲まれた凹部を形成する工程と、凹部内に親インク層を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明の印刷版によれば、被印刷基材に安定して高精度かつ平坦性の高い画像パターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態1に係る印刷版の構成を示す模式図である。
【図2】図1中に示す領域II付近を拡大して示す断面模式図である。
【図3】実施の形態1の印刷版の製造方法の一例を示す流れ図である。
【図4】基材上にレジスト膜が形成された状態を示す断面模式図である。
【図5】レジストの凸状パターンが形成された状態を示す断面模式図である。
【図6】金属膜を堆積した状態を示す断面模式図である。
【図7】金属膜が研磨された状態を示す断面模式図である。
【図8】金属膜間に凹部が形成された状態を示す断面模式図である。
【図9】凹部に溶媒保持層が形成された状態を示す断面模式図である。
【図10】樹脂層が形成された状態を示す断面模式図である。
【図11】実施の形態1の印刷方法を示す流れ図である。
【図12】溶媒保持層に溶媒を蓄積させた状態を示す断面模式図である。
【図13】溶媒保持層から樹脂層への溶媒の供給を示す部分拡大断面図である。
【図14】インク層を形成した状態を示す断面模式図である。
【図15】インク層を形成した後の樹脂層への溶媒の供給を示す部分拡大断面図である。
【図16】ブランケットをインク層に押圧した状態を示す断面模式図である。
【図17】ブランケットにインクが転写された状態を示す断面模式図である。
【図18】インク層からブランケットへのインクの転写を示す部分拡大断面図である。
【図19】ブランケットを基板に押圧した状態を示す断面模式図である。
【図20】基板にインクが転写された状態を示す断面模式図である。
【図21】実施の形態2に係る印刷版の構成を示す模式図である。
【図22】図21中に示す領域XXII付近を拡大して示す断面模式図である。
【図23】実施の形態2の印刷版の製造方法の一例を示す流れ図である。
【図24】金属膜およびレジスト上に溶媒保持層が形成された状態を示す断面模式図である。
【図25】樹脂層が形成された状態を示す断面模式図である。
【図26】レジスト上の溶媒保持層および樹脂層を除去した状態を示す断面模式図である。
【図27】基板から突起した積層体が形成された状態を示す断面模式図である。
【図28】実施の形態2の印刷方法を示す流れ図である。
【図29】溶媒保持層に溶媒を蓄積させた状態を示す断面模式図である。
【図30】溶媒保持層から樹脂層への溶媒の供給を示す部分拡大断面図である。
【図31】インク層を形成した状態を示す断面模式図である。
【図32】インク層を形成した後の樹脂層への溶媒の供給を示す部分拡大断面図である。
【図33】インク層を基板に押圧した状態を示す断面模式図である。
【図34】基板にインクが転写された状態を示す断面模式図である。
【図35】インク層から基板へのインクの転写を示す部分拡大断面図である。
【図36】実施の形態3に係る印刷版の構成を示す模式図である。
【図37】図36中に示す領域XXXVII付近を拡大して示す断面模式図である。
【図38】保護層が形成された状態を示す断面模式図である。
【図39】実施の形態3の印刷版の製造方法の一例を示す流れ図である。
【図40】基材上に溶媒保持層が形成された状態を示す断面模式図である。
【図41】溶媒保持層上にレジスト膜が形成された状態を示す断面模式図である。
【図42】レジストの凸状パターンが形成された状態を示す断面模式図である。
【図43】撥インク層が形成された状態を示す断面模式図である。
【図44】レジストが除去された状態を示す断面模式図である。
【図45】親インク層が形成された状態を示す断面模式図である。
【図46】実施の形態3の印刷方法を示す流れ図である。
【図47】溶媒保持層に溶媒を蓄積させた状態を示す断面模式図である。
【図48】溶媒保持層から撥インク層への溶媒の供給を示す部分拡大断面図である。
【図49】インク層を形成した状態を示す断面模式図である。
【図50】インク層を形成した後の撥インク層への溶媒の供給を示す部分拡大断面図である。
【図51】ブランケットをインク層に押圧した状態を示す断面模式図である。
【図52】ブランケットにインクが転写された状態を示す断面模式図である。
【図53】インク層からブランケットへのインクの転写を示す部分拡大断面図である。
【図54】ブランケットを基板に押圧した状態を示す断面模式図である。
【図55】基板にインクが転写された状態を示す断面模式図である。
【図56】第一比較例の印刷用凹版の構成を示す断面模式図である。
【図57】第二比較例の印刷用凸版の構成を示す断面模式図である。
【図58】第三比較例の印刷用平版の構成を示す断面模式図である。
【図59】印刷版の画線部を構成する樹脂層にインク層を形成した状態を示す断面模式図である。
【図60】インク中の溶媒のインク層からの脱離を示す断面模式図である。
【図61】乾燥したインクを被印刷基体へ転写した状態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0027】
なお、以下に説明する実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下の実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、上記個数などは例示であり、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る印刷版6の構成を示す模式図である。図2は、図1中に示す領域II付近を拡大して示す断面模式図である。実施の形態1の印刷版6は、印刷用の基材1上に形成された凹状の画線部7と、非画線部8とを備える。画線部7は、印刷時に被印刷物へインクが転写される部分である。非画線部8は、印刷時に被印刷物へインクが転写されない部分である。図1および図2に示すように、実施の形態1の印刷版6は、非画線部8に対し画線部7が窪んだ、印刷用凹版である。
【0029】
図2に拡大して示すように、基材1は、主表面21を有する。画線部7と非画線部8とは、基材1の主表面21上に形成されている。画線部7は、溶媒保持層4と樹脂層5とを有する。樹脂層5は、基材1の主表面21に対向する対向面25を有する。溶媒保持層4は、基材1と樹脂層5との間に配置されている。溶媒保持層4は、樹脂層5の対向面25と面接触する、接触面24を有する。印刷版6の構造は、画線部7の凹部内表面に溶媒保持層4と樹脂層5とが順に積層している、積層体である。また非画線部8は、基材1上に金属膜3が積層されて形成されている。
【0030】
実施の形態1の印刷版6である印刷用凹版を構成する基材1としては、少なくとも充分な剛性をもっていること、寸法が変化しにくいことが要求されるのと同時に、インクに含まれる溶媒に対する耐性が高いものが好ましい。したがって、印刷版6の基材1として用いられる材料としては、有機系の樹脂材料や、金属、ゴム、樹脂、セラミックが挙げられる。たとえばガラス、シリコン、酸化シリコン、石英、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリイミドフィルムなどを、基材1の形成材料として用いることができる。
【0031】
また、後述する金属膜3の堆積工程において、電気めっき法を用いる場合には、基材1自体に導電性のあるものを用いるか、基材1表面に、導電性の膜を形成したものを用いることが好ましい。たとえば、ステンレススチールなどの金属材料、あるいは、ガラス、樹脂などの絶縁体材料の表面に金属膜、透明導電膜を設けたものが、基材1として好適に用いられる。
【0032】
溶媒保持層4は、スポンジ状で、かつ樹脂層5の形成材料である樹脂よりも溶媒の吸収力が高い樹脂材料により形成されていれば、特に限定されない。たとえば、発泡シリコーン、ウレタン樹脂などに代表される内部に気泡が形成された発泡樹脂、および空気含有のゴムが、溶媒保持層4の形成材料として好適に用いられる。
【0033】
樹脂層5としては、平坦性が高く、溶媒保持層4よりも溶媒吸収力が低い樹脂で形成されていればよい。たとえばシリコーンゴム、ニトリルゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴムなどのゴム材料の他に、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリイミドなどの合成樹脂やそれらの共重合体、セルロースなどの天然高分子などを、樹脂層5の形成材料として用いることができる。
【0034】
図3は、実施の形態1の印刷版6の製造方法の一例を示す流れ図である。実施の形態1の印刷版6を製造する方法は特に限定されないが、たとえば図3に示す製造方法としてもよい。図3を参照して、印刷版6の製造方法の一例について説明する。図3に示すように、まず工程(S11)において、主表面21を有する基材1を準備する。続いて工程(S12)において、基材1の主表面21上にレジストを膜状に配置して、レジスト膜2を形成する。図4は、基材1上にレジスト膜2が形成された状態を示す断面模式図である。
【0035】
レジスト膜2の形成材料としては、特に制限されないが、後述するめっき液やエッチング液に対して耐性があり、有機溶媒やアルカリ水溶液などで容易に除去できるものを選択することが好ましい。たとえばアクリル樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂などの樹脂材料から、用途に応じてレジスト膜2の形成材料を選択することができる。これらの樹脂材料のうちの一種を単独で用いてレジスト膜2を形成してもよい。または、二種以上の樹脂材料を組み合わせて用い、レジスト膜2を形成してもよい。
【0036】
レジスト膜2を形成する方法は、特に限定されない。たとえば、バーコート法、ドクターブレード法、スリットコート法、スピンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ミスト法、ディスペンサー法、インクジェット法など、公知の方法を用いて、レジスト膜2を形成することができる。
【0037】
図3に戻って、続いて工程(S13)において、基材1の主表面21上のレジスト膜2をフォトリソグラフィー法を用いて露光・現像し、不要部を除去することによりパターニングする。
【0038】
より具体的には、フォトマスクをレジスト膜2の上面に配置し、フォトマスクを介して、紫外光に代表される活性エネルギー線をレジスト膜2へ照射し、露光する。このとき、レジスト膜2の、フォトマスクの透光部を通過して活性エネルギー線が照射された部分が硬化される。次にフォトマスクをレジスト膜2上から外し、現像を行う。現像により、露光によって光が照射されなかった未硬化部分が除去され、基材1の主表面21上にレジストの凸状パターン31が形成される。図5は、レジストの凸状パターン31が形成された状態を示す断面模式図である。
【0039】
なお、レジストパターンを形成する工程は、フォトリソグラフィー法に限定されない。たとえば、フォトリソグラフィー法以外に、レーザー加工や切削加工などの公知の方法を用いてレジストパターンを形成してもよい。また、フォトマスクを用いる露光方法以外にも、たとえばレジスト樹脂の表面にカーボンやアルミニウムといった光不透過性の層を形成し、これをレーザーによりアブレーションすることにより、透過部を形成した後、露光することも可能である。
【0040】
続いて図3に示す工程(S14)において、レジストの凸状パターン31上の表面33、および隣接する凸状パターン31間の空間32に、金属材料を堆積させ、金属膜3を形成する。図6は、金属膜3を堆積した状態を示す断面模式図である。堆積に用いる金属としては、ニッケル、クロム、銅、金、アルミ、銀、鉄などを挙げることができ、これらの金属の複数を複合して用いても良い。
【0041】
金属膜3の堆積方法としては特に限定されないが、たとえば、めっき法、ウエットコーティング法、CVD法、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法を必要に応じて使用することができる。金属の堆積には特に、凹部に隙間無く均一に埋め込み可能である電気めっき法を用いることが好ましい。この場合は、前述したように、表面に導電性を持つ基材1を用いる。
【0042】
続いて図3に示す工程(S15)において、金属膜3を研磨する。図7は、金属膜3が研磨された状態を示す断面模式図である。金属膜3の研磨は、レジストの表面33aが現れるまで行なわれる。この研磨によって、レジスト膜2および金属膜3の表面が平坦化されている。研磨によってレジストが露出され、図7に示す表面が平坦化された構造を形成できればよく、このときの研磨方法は限定されない。
【0043】
印刷版6に最終的に作成される金属部分の高さ(すなわち、非画線部8の高さ。図2参照)は、このときの研磨によって決定される。レジスト膜2を形成する工程(S12)において形成されるレジスト膜2の膜厚によって、レジストの凸状パターン31間の空間32に堆積される金属膜3の高さが制限される。研磨の程度を調整することによって、当初形成された金属膜3の高さ以下の任意の高さに、金属膜3の表面の高さを設定することができる。
【0044】
続いて図3に示す工程(S16)において、金属膜3間のレジスト膜2が除去され、金属膜3と基材1の主表面21とによって囲まれた凹部35が形成される。図8は、金属膜3間に凹部35が形成された状態を示す断面模式図である。基材1の主表面21から突起した金属膜3の側面が、凹部35の壁面34を形成している。基材1の主表面21の一部が、凹部35の底面36を形成している。凹部35は、金属膜3と基材1とによって囲まれている。
【0045】
レジスト膜2の除去方法は、レジスト膜2の形成材料によるが、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液や、トルエンやアセトンなどの有機溶媒を用いることができる。後述する溶媒保持層4および樹脂層5に影響を与えることなくレジスト膜2を除去できる方法を選択することが好ましい。
【0046】
続いて図3に示す工程(S17)において、凹部35の壁面34および底面36の全面に、溶媒保持層4を形成する。図9は、凹部35に溶媒保持層4が形成された状態を示す断面模式図である。溶媒保持層4は、凹部35の形状に沿った凹形状を有し、凹部35の底面36および壁面34の全面を被覆する。溶媒保持層4の接触面24は、凹部35の底面36に沿う底面26と、凹部35の壁面34に沿う側面27とを含んで構成されている。溶媒保持層4を形成する方法としては、工程(S12)におけるレジスト膜2を形成する方法と同様の方法を用いることができる。
【0047】
続いて図3に示す工程(S18)において、溶媒保持層4の接触面24全面に面接触する樹脂層5を形成する。図10は、樹脂層5が形成された状態を示す断面模式図である。工程(S17)および工程(S18)により、金属膜3と基材1とによって囲まれた凹部35の内部に、溶媒保持層4と樹脂層5とが積層されて形成される。このようにして、溶媒保持層4と樹脂層5との二層構造が形成され、図1および図2に示す印刷版6(印刷用凹版)が作製される。
【0048】
工程(S17)および工程(S18)において、凹部35の内面において高精度に溶媒保持層4および樹脂層5の形状を制御する方法は、特に限定されない。たとえばエッチング、レーザー加工などを用い、画像パターン形状に即して溶媒保持層4をパターニングし、次いで同様の方法で樹脂層5をパターニングすることにより凹部パターンを形成する方法も挙げられる。なお、材料界面の密着性を高めるために、各材料界面にプライマ層が設けてあっても構わない。
【0049】
次に、上述した印刷版6を用いる実施の形態1の印刷方法について説明する。図11は、実施の形態1の印刷方法を示す流れ図である。実施の形態1の印刷方法は、被印刷物の一例としてのブランケット12に画像パターン11aを形成し、その画像パターン11aを基板13上に転写して印刷パターン41を形成する、画像形成方法である。
【0050】
図11に示すように、まず工程(S21)において、上述した実施の形態1の印刷版6である印刷用凹版を作製する。続いて工程(S22)において、塗布装置9aを用いて印刷版6に溶媒を吸収させることによって、溶媒保持層4に溶媒を蓄積させる。図12は、溶媒保持層4に溶媒を蓄積させた状態を示す断面模式図である。
【0051】
溶媒保持層4に蓄積させる溶媒は、溶媒保持層4が吸収できる溶媒であれば特に限定されず、たとえば溶媒保持層4とインクとの相溶性の観点から、インク中に含まれる溶媒であることが好ましい。一例として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸イソプロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトンなどが挙げられる。
【0052】
また、溶媒保持層4に溶媒を吸収させる方法は、特に限定されないが、たとえばバーコート法、スリットコート法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ディスペンサー法、インクジェット法、スプレーコート法、ミスト法などの各種方法が利用される。一例として、図12に示す塗布装置9aとしてバーコータを用い、溶媒を印刷版6の表面に垂らすなどして供給した後にバーコータで引き伸ばすように、図12中に示す矢印に沿ってバーコータを印刷版6上で移動させることにより、溶媒保持層4に溶媒を供給することができる。
【0053】
また、後工程でインク層11を安定して形成するために、印刷版6の最表面に付着した溶媒を除去することが好ましい。溶媒を除去する方法は、特に限定されないが、たとえばエアーや窒素ブローなどの方法が利用される。
【0054】
図13は、溶媒保持層4から樹脂層5への溶媒の供給を示す部分拡大断面図である。図13には、溶媒保持層4へ溶媒が蓄積された後に印刷版6の最表面から溶媒が除去された状態において、溶媒保持層4に蓄積された溶媒の一部が樹脂層5へ移動する様子を、図中に矢印で示している。
【0055】
図13に示すように、溶媒保持層4と樹脂層5とは、二層構造を形成し互いに面接触している。下層に形成された溶媒保持層4は、樹脂層5よりも溶媒吸収力が高く、かつ溶媒を保持することができる材料により形成されている。そのため、溶媒保持層4は、上層に形成された樹脂層5に溶媒を供給し、同時に樹脂層5中の溶媒の割合が常に一定になるよう制御することができる。これにより、樹脂層5に含まれる溶媒の割合を、長時間に亘り常に一定に保つことが可能である。かつ、樹脂層5および溶媒保持層4の周辺の雰囲気を溶媒雰囲気にすることができる。
【0056】
続いて図11に示す工程(S23)において、塗布装置9bを用いて印刷版6の画線部7に液体状のインク材料(インク溶液)を塗布して、画線部7の凹部にインクを充填することにより、インク層11を形成する。図14は、インク層11を形成した状態を示す断面模式図である。
【0057】
インク溶液を印刷版6に塗布する方法は、凹部のみにインクを充填することができれば特に限定されない。たとえば、図14に示す塗布装置9bとしてスクレーパーを用い、印刷版6の表面に塗布したインクを掻き取るように、図14中に示す矢印に沿ってスクレーパーを印刷版6上で移動させることにより、画線部7の凹部にインクを充填することができる。塗布方法はスクレーパーのほかに、たとえばバーコート法、スリットコート法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ディスペンサー法、インクジェット法、スプレーコート法、ミスト法などの各種方法が利用される。
【0058】
インク材料は、インクの固形分および溶媒を含んで構成されている。固形分としては、目的とする画像パターンに求める特性に応じて、種々の導電材料または絶縁材料から選択される。固形分の一例としては、銀、金、銅、ITO(Indium Tin Oxide)、SiO、TiOなどの金属または金属酸化物の微粒子や、ポリイミド、アクリル、フッ素樹脂などの有機系樹脂、SOG(spin-on glass)などが挙げられる。
【0059】
また、溶媒に関しても、上記固形分を分散もしくは溶解できるものであれば特に限定されず、一例として、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸イソプロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトンなどが挙げられる。
【0060】
図15は、インク層11を形成した後の樹脂層5への溶媒の供給を示す部分拡大断面図である。図15には、画線部7の凹部へインクが充填されインク層11が形成された状態において、溶媒保持層4に蓄積された溶媒の一部が樹脂層5へ移動する様子を、図中に矢印で示している。
【0061】
図15に示すように、インクを凹部に充填したとき、樹脂層5に溶媒が一定に蓄積されているため、インク中の溶媒が樹脂層5に吸収されることが少ない。そのため、樹脂層に含まれる溶媒の割合を、長時間に亘り常に一定に保つことが可能である。また、樹脂層5および溶媒保持層4の周辺が溶媒雰囲気となっているため、インク層11中の溶媒が大気中へ揮発してインクが乾燥することを抑制することができる。
【0062】
続いて図11に示す工程(S24)において、中間印刷体としてのブランケット12を準備する。ブランケット12を印刷版6に重ねて接触させ、インク層11を介してブランケット12を印刷版6へ押圧する。このとき、ブランケット12と印刷版6上に形成されたインク層11とを接触させつつ、ブランケット12および印刷版6を押圧する。図16は、ブランケット12をインク層11に押圧した状態を示す断面模式図である。
【0063】
ブランケット12は、印刷版6の表面形状に追従して印刷版6に密着する必要がある。このため、ブランケット12として、ウレタン樹脂や織布などのクッション層材料を用いることが好ましい。また、ブランケット12の形成材料の一例としては、シリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂の他に、ジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサン、メチルフルオロビニルシロキサンもしくはメチルフェニルビニルシロキサンなどのポリマー、または、これらのポリマーと、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)もしくはSBR(スチレンブタジエンゴム)とのブレンドおよび共重合系、または、NBR、EPDMもしくはSBRなどにシリコンオイルなどを混ぜ込んだものなどのゴム部材が挙げられる。
【0064】
続いて図11に示す工程(S25)において、ブランケット12および印刷版6を離隔させることによって、印刷版6とブランケット12とを引き離す。この際、印刷版6の凹部内のインクが、印刷版6からブランケット12に転写され、画像パターン11aが形成される。ブランケット12は、印刷版6の画線部7よりインクが転写される被印刷物の一例である。図17は、ブランケット12にインクが転写された状態を示す断面模式図である。
【0065】
図18は、インク層11からブランケット12へのインクの転写を示す部分拡大断面図である。図15を参照して説明したように、インク層11のインクが乾燥しにくくなっていることにより、インク層11からブランケット12へ転移されるインク量のばらつきが小さくなり、形成される画像パターン11aの平坦性が向上する。また、溶媒保持層4に蓄積された溶媒は常に樹脂層5へ供給されるため、樹脂層5は常に同じ割合で溶媒を蓄積する。このため、印刷回数が増えても初回と同じ画像パターン11aを形成することができる。
【0066】
続いて図11に示す工程(S26)において、最終印刷体としての基板13にブランケット12を重ねて接触させ、ブランケット12を基板13へ押圧する。このとき、ブランケット12に転写されたインクの画像パターン11aと基板13とを接触させつつ、ブランケット12および基板13を押圧する。図19は、ブランケット12を基板13に押圧した状態を示す断面模式図である。
【0067】
続いて工程(S27)において、ブランケット12および基板13を離隔させることによって、基板13とブランケット12とを引き離す。この際、印刷版6からブランケット12に転写された画像パターン11aのインクが、基板13に転写され、印刷パターン41が形成される。図20は、基板13にインクが転写された状態を示す断面模式図である。
【0068】
基板13は、たとえば、ガラス、シリコン、酸化シリコン、石英、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリイミドフィルムから選択される材料により、形成されている。
【0069】
その後、基板13上に形成された印刷パターン41に対して、各インク材料に適した焼成処理を施すことによって、印刷パターン41に含まれる溶媒を蒸発させ、印刷パターン41の固形物を固化させる。以上の工程により、基板13に所望の印刷パターン41が形成される。
【0070】
以上説明したように、実施の形態1の印刷版6では、溶媒保持層4と樹脂層5との二層構造が形成されている。下層に形成された溶媒保持層4は、樹脂層5よりも溶媒吸収力が高く、かつ溶媒を保持することができるように、形成されている。そのため、溶媒保持層4は、上層に形成された樹脂層5に溶媒を供給し、同時に樹脂層5中の溶媒の割合が常に一定になるよう制御することができる。これにより、樹脂層5に含まれる溶媒の割合を、長時間に亘り常に一定に保つことが可能である。かつ、樹脂層5および溶媒保持層4の周辺の雰囲気を溶媒雰囲気にすることができる。
【0071】
印刷版6の画線部7の凹部にインクを充填したとき、樹脂層5に溶媒が一定に蓄積されているため、インク中の溶媒が樹脂層5に吸収されることが少ない。そのため、樹脂層5に含まれる溶媒の割合を、長時間に亘り常に一定に保つことが可能である。また、樹脂層5および溶媒保持層4の周辺が溶媒雰囲気となっているため、インク層11中の溶媒が大気中へ揮発してインクが乾燥することを抑制することができる。
【0072】
インク層11のインクが乾燥しにくくなっていることにより、インク層11からブランケット12へ転移されるインク量のばらつきが小さくなり、形成される画像パターン11aの平坦性が向上する。また、溶媒保持層4に蓄積された溶媒は常に樹脂層5へ供給されるため、樹脂層5は常に同じ割合で溶媒を蓄積する。このため、印刷回数が増えても、初回と同じ画像パターン11aをブランケット12に形成することができる。この画像パターン11aを基板13に転写することにより、長時間に亘り高精細かつ平坦性の高い印刷パターン41を安定して形成することができる。したがって、実施の形態1における画像形成方法を用いて製造された半導体デバイス、電気回路、表示体モジュール、カラーフィルター、発光素子などの、製品の高性能化を図ることができる。
【0073】
(実施の形態2)
図21は、実施の形態2に係る印刷版6の構成を示す模式図である。図22は、図21中に示す領域XXII付近を拡大して示す断面模式図である。実施の形態2の印刷版6は、印刷用の基材1上に形成された凸状の画線部7と、非画線部8とを備える。図21および図22に示すように、実施の形態2の印刷版6は、非画線部8に対し画線部7が突起した、印刷用凸版である。
【0074】
図22に拡大して示すように、基材1は、主表面21を有する。画線部7と非画線部8とは、基材1の主表面21上に形成されている。画線部7は、溶媒保持層4と樹脂層5とを有する。樹脂層5は、基材1の主表面21に対向する対向面25を有する。溶媒保持層4は、基材1と樹脂層5との間に配置されている。溶媒保持層4は、樹脂層5の対向面25と面接触する、接触面24を有する。印刷版6の構造は、基材1上に金属膜3が積層された凸部の表面に、溶媒保持層4と樹脂層5とが順に積層している、積層体である。
【0075】
実施の形態2の印刷版6である印刷用凸版を構成する基材1、溶媒保持層4および樹脂層5の形成材料は、実施の形態1の印刷用凹版と同様の材料を基いることができる。
【0076】
図23は、実施の形態2の印刷版6の製造方法の一例を示す流れ図である。実施の形態2の印刷版6を製造する方法は特に限定されないが、たとえば図23に示す製造方法としてもよい。図23に示す工程(S31)〜(S35)は、図3を参照して説明した実施の形態1の印刷版6の製造方法における工程(S11)〜(S15)と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0077】
なお、印刷版6に最終的に作成される金属膜3の高さは、工程(S35)の研磨によって決定される。高精細な印刷版6を作製する場合には、インクを印刷版6から被印刷物に転写する際に、印刷版6の凹部に流入したインクが溢れ出て、印刷不良を生じることのないように、凹部にはある程度の深さが必要である。例えば60μm以下のライン幅のパターンを形成する場合には、凹部には30μm以上の深さがあることが好ましい。
【0078】
工程(S35)の後、図23に示す工程(S36)において、研磨後の金属膜3の表面3a上およびレジスト膜2の表面33a上に、溶媒保持層4を形成する。図24は、金属膜3およびレジスト膜2上に溶媒保持層4が形成された状態を示す断面模式図である。溶媒保持層4は、金属膜3の表面3aおよびレジスト膜2の表面33aの全面を被覆している。
【0079】
続いて図23に示す工程(S37)において、溶媒保持層4上に樹脂層5を形成する。図25は、樹脂層5が形成された状態を示す断面模式図である。樹脂層5は、溶媒保持層4の表面4a全面に面接触する。工程(S36)および工程(S37)により、金属膜3およびレジスト膜2上に溶媒保持層4と樹脂層5とが積層されて、溶媒保持層4と樹脂層5との二層構造が形成される。なお、材料界面の密着性を高めるために、各材料界面にプライマ層が設けてあっても構わない。
【0080】
続いて図23に示す工程(S38)において、樹脂層5と溶媒保持層4とが金属膜3のパターンと一致するように、レジスト膜2の上部に位置する溶媒保持層4および樹脂層5の不要部を除去することにより、パターニングする。図26は、レジスト上の溶媒保持層4および樹脂層5を除去した状態を示す断面模式図である。レジスト膜2の上部に位置する溶媒保持層4および樹脂層5を除去する方法は、特に限定されないが、たとえばエッチング、レーザー加工などを用い、金属膜3のパターン形状に即して溶媒保持層4および樹脂層5をパターニングすることにより、高精度な凸部パターンを形成することができる。
【0081】
続いて図23に示す工程(S39)において、金属膜3間のレジスト膜2のパターンが除去され、金属膜3、溶媒保持層4および樹脂層5の積層体が基材1から突起した凸形状が形成される。図27は、基材1から突起した積層体が形成された状態を示す断面模式図である。これらの工程により、金属製の金属膜3により形成される凸部と、その凸部の上面に溶媒保持層4と樹脂層5とが積層された、印刷用凸版が作製される。
【0082】
次に、上述した印刷版6を用いる実施の形態2の印刷方法について説明する。図28は、実施の形態2の印刷方法を示す流れ図である。実施の形態2の印刷方法は、被印刷物の一例としての基板13上に印刷パターン41を形成する、画像形成方法である。図28に示すように、まず工程(S41)において、上述した実施の形態2の印刷版6である印刷用凸版を作製する。続いて工程(S42)において、塗布装置9aを用いて印刷版6の溶媒保持層4に溶媒を吸収させることによって、溶媒保持層4に溶媒を蓄積させる。図29は、溶媒保持層4に溶媒を蓄積させた状態を示す断面模式図である。
【0083】
図30は、溶媒保持層4から樹脂層5への溶媒の供給を示す部分拡大断面図である。図30には、溶媒保持層4へ溶媒が蓄積された後に、溶媒保持層4に蓄積された溶媒の一部が樹脂層5へ移動する様子を、図中に矢印で示している。
【0084】
図30に示すように、溶媒保持層4と樹脂層5とは、二層構造を形成し互いに面接触している。下層に形成された溶媒保持層4は、樹脂層5よりも溶媒吸収力が高く、かつ溶媒を保持することができる材料により形成されている。そのため、溶媒保持層4は、上層に形成された樹脂層5に溶媒を供給し、同時に樹脂層5中の溶媒の割合が常に一定になるよう制御することができる。これにより、樹脂層に含まれる溶媒の割合を、長時間に亘り常に一定に保つことが可能である。かつ、樹脂層5および溶媒保持層4の周辺の雰囲気を溶媒雰囲気にすることができる。
【0085】
続いて図28に示す工程(S43)において、塗布装置9bを用いて印刷版6表面に液体状のインク材料(インク溶液)を塗布して、印刷版6の表面にインク層11を形成する。図31は、インク層11を形成した状態を示す断面模式図である。印刷版6にインクを塗布する方法は特に限定されないが、スプレーコート法、ミスト法、ディスペンサー法、インクジェット法などの各種方法が利用される。
【0086】
図32は、インク層11を形成した後の樹脂層5への溶媒の供給を示す部分拡大断面図である。図32には、印刷版6の表面へインクが塗布されインク層11が形成された状態において、溶媒保持層4に蓄積された溶媒の一部が樹脂層5へ移動する様子を、図中に矢印で示している。
【0087】
図32に示すように、インクを凸部に塗布したとき、樹脂層5に溶媒が一定に蓄積されているため、インク中の溶媒が樹脂層5に吸収されることが少ない。そのため、樹脂層に含まれる溶媒の割合を、長時間に亘り常に一定に保つことが可能である。また、樹脂層5および溶媒保持層4の周辺が溶媒雰囲気となっているため、インク層11中の溶媒が大気中へ揮発してインクが乾燥することを抑制することができる。
【0088】
続いて図28に示す工程(S44)において、最終印刷体としての基板13を準備する。印刷版6を上下反転させ、印刷版6を被印刷物の一例としての基板13に重ねて接触させ、印刷版6を基板13へ押圧する。基板13と印刷版6上に形成されたインク層11とを接触させつつ、基板13および印刷版6を押圧する。図33は、インク層11を基板13に押圧した状態を示す断面模式図である。このとき、印刷版6の凹状の非画線部8に付着したインクは、基板13と接触せず印刷版6上に残る。そのため、基板13上に所望の画像パターンが形成される。
【0089】
続いて工程(S45)において、印刷版6を基板13から離隔させることによって、基板13と印刷版6とを引き離す。この際、インク層11のインクが、基板13に転写され、印刷パターン41が形成される。図34は、基板13にインクが転写された状態を示す断面模式図である。
【0090】
図35は、インク層11から基板13へのインクの転写を示す部分拡大断面図である。図32を参照して説明したように、インク層11のインクが乾燥しにくくなっていることにより、インク層11から基板13へ転移されるインク量のばらつきが小さくなり、形成される印刷パターン41の平坦性が向上する。また、溶媒保持層4に蓄積された溶媒は常に樹脂層5へ供給されるため、樹脂層5は常に同じ割合で溶媒を蓄積する。このため、印刷回数が増えても初回と同じ印刷パターン41を形成することができる。
【0091】
その後、基板13上に形成された印刷パターン41に対して、各インク材料に適した焼成処理を施すことによって、印刷パターン41に含まれる溶媒を蒸発させ、印刷パターン41の固形物を固化させる。以上の工程により、基板13に所望の印刷パターン41が形成される。
【0092】
以上説明したように、実施の形態2の印刷版6では、溶媒保持層4と樹脂層5との二層構造が形成されている。下層に形成された溶媒保持層4は、樹脂層5よりも溶媒吸収力が高く、かつ溶媒を保持することができるように、形成されている。そのため、溶媒保持層4は、上層に形成された樹脂層5に溶媒を供給し、同時に樹脂層5中の溶媒の割合が常に一定になるよう制御することができる。これにより、樹脂層5に含まれる溶媒の割合を、長時間に亘り常に一定に保つことが可能である。かつ、樹脂層5および溶媒保持層4の周辺の雰囲気を溶媒雰囲気にすることができる。
【0093】
印刷版6の表面にインクを塗布したとき、樹脂層5に溶媒が一定に蓄積されているため、インク中の溶媒が樹脂層5に吸収されることが少ない。そのため、樹脂層5に含まれる溶媒の割合を、長時間に亘り常に一定に保つことが可能である。また、樹脂層5および溶媒保持層4の周辺が溶媒雰囲気となっているため、インク層11中の溶媒が大気中へ揮発してインクが乾燥することを抑制することができる。
【0094】
インク層11のインクが乾燥しにくくなっていることにより、インク層11から基板13へ転移されるインク量のばらつきが小さくなり、形成される印刷パターン41の平坦性が向上する。また、溶媒保持層4に蓄積された溶媒は常に樹脂層5へ供給されるため、樹脂層5は常に同じ割合で溶媒を蓄積する。このため、印刷回数が増えても、初回と同じ印刷パターン41を基板13に形成することができる。したがって、被印刷基材としての基板13に、長時間に亘り高精細かつ平坦性の高い印刷パターン41を安定して形成することができるので、実施の形態2における画像形成方法を用いて製造された半導体デバイス、電気回路、表示体モジュール、カラーフィルター、発光素子などの製品の高性能化を図ることができる。
【0095】
(実施の形態3)
図36は、実施の形態3に係る印刷版6の構成を示す模式図である。図37は、図36中に示す領域XXXVII付近を拡大して示す断面模式図である。実施の形態3の印刷版6は、基材1の主表面21上に溶媒保持層4が全面に被覆され、その上面に画線部に対応する撥インク層15と、非画線部に対応する親インク層16とが被覆してある、積層体である。
【0096】
図37に拡大して示すように、基材1は、主表面21を有する。撥インク層15と親インク層16とは、基材1の主表面21上に形成されている。撥インク層15および親インク層16は、基材1の主表面21に対向する対向面25を有する。溶媒保持層4は、基材1と撥インク層15および親インク層16との間に配置されている。溶媒保持層4は、撥インク層15および親インク層16の対向面25と面接触する、接触面24を有する。印刷版6の構造は、溶媒保持層4上に撥インク層15および親インク層16が積層している、積層体である。
【0097】
撥インク層15は、印刷時に被印刷物へインクが転写される部分である。親インク層16は、印刷時に被印刷物へインクが転写されない部分である。撥インク層15は、基板13に形成される印刷パターン41の形状に即した形状を有し、親インク層16は、印刷版6上において撥インク層15を除いた全領域に形成されている。
【0098】
図36および図37に示すように、実施の形態3の印刷版6は、上面が略平面に形成された、印刷用平版である。溶媒保持層4は、主表面21の全面に面接触する。印刷版6の表面の親インク層16と撥インク層15とは、平らに形成されてもよく、または多少の凹凸があるように形成されてもよい。
【0099】
インクに対する密着性(接着強度)に関して、親インク層16の表面が最も大きく、ブランケット12の主表面が次に大きく、撥インク層15の表面が最も小さくなるように、撥インク層15を形成する材料が選択される。一例を挙げれば、撥インク層15として、撥インク性を有する樹脂材料、典型的にはシリコーン樹脂系ゴム材料またはフッ素樹脂系ゴム材料を用いることができる。
【0100】
親インク層16を形成する材料としては、レジスト樹脂、ガラス、シリコン、酸化シリコン、石英、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリイミドフィルム、ニッケル、クロム、銅、金、鉄、アルミ等の有機系の樹脂材料や、金属、ゴム、樹脂、セラミックなどを用いることができる。
【0101】
図38は、保護層17が形成された状態を示す断面模式図である。図38に示すように、親インク層16を形成する材料が溶媒を吸収する材料、たとえば樹脂材料である場合、溶媒保持層4から親インク層16へ溶媒が供給されないように、親インク層16と溶媒保持層4との間に保護層17が設けられていてもよい。保護層17を構成する材料としては、たとえば、ガラス、シリコン、酸化シリコン、石英、ニッケル、クロム、銅、金、鉄、アルミなどのセラミック、金属を好適に用いることができる。
【0102】
図39は、実施の形態3の印刷版6の製造方法の一例を示す流れ図である。実施の形態3の印刷版6を製造する方法は特に限定されないが、たとえば図39に示す製造方法としてもよい。図39を参照して、まず工程(S51)において、主表面21を有する基材1を準備する。続いて工程(S52)において、基材1の主表面21上の全面に、溶媒保持層4を形成する。図40は、基材1上に溶媒保持層4が形成された状態を示す断面模式図である。
【0103】
続いて工程(S53)において、溶媒保持層4上にレジストを膜状に配置して、レジスト膜14を形成する。図41は、溶媒保持層4上にレジスト膜14が形成された状態を示す断面模式図である。
【0104】
レジスト膜14の形成には、レジストの他に、感光性樹脂材料を用いても良い。感光性樹脂層の材料としては、ニトリルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴムなどのゴムの他に、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコールなどやそれらの共重合体、セルロースなどの天然高分子から選択することができる。これらを二種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0105】
図39に戻って、続いて工程(S54)において、前工程で形成したレジスト膜14を、フォトリソグラフィー法を用いて露光・現像し不要部を除去することにより、パターニングする。レジスト膜14の不要部が除去されることにより、溶媒保持層4上に、レジストの凸状パターン31が形成される。図42は、レジストの凸状パターン31が形成された状態を示す断面模式図である。レジスト膜14または感光性樹脂をパターニングする方法は限定されず、たとえば実施の形態1で述べた方法が挙げられる。
【0106】
続いて工程(S55)において、レジストの凸状パターン31間の空間32および凸状パターン31の表面33上に、撥インク層15を形成する。図43は、撥インク層15が形成された状態を示す断面模式図である。撥インク層15の形成材料は、高撥液性および高離型性を併せ持つ。そのため、後述する画像形成方法における、ブランケット12にインクを転写させる工程において、印刷版6の撥インク層15上に形成されたインク層11の全量転写を実現することができる。
【0107】
続いて工程(S56)において、レジストの凸状パターン31を除去する。非画線部に対応する部分のレジストの凸状パターン31が除去されることにより、凸状パターン31の表面33上に位置する撥インク層15も同時に除去される。これにより、撥インク層15間に、撥インク層15と溶媒保持層4とによって囲まれた凹部35が形成される。図44は、レジストが除去された状態を示す断面模式図である。レジストを除去する方法は、実施の形態1で説明した方法を用いることができる。
【0108】
続いて工程(S57)において、非画線部に対応する撥インク層15のパターンと溶媒保持層4とによって囲まれた凹部35内に、親インク層16を形成する。図45は、親インク層16が形成された状態を示す断面模式図である。
【0109】
撥インク層15と溶媒保持層4とで囲まれる非画線部領域に親インク層16を形成する方法としては、たとえばバーコート法、スリットコート法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ディスペンサー法、インクジェット法、スプレーコート法、ミスト法などの塗布方法が挙げられる。その他に、金属材料に限定されるが、めっき法、ウエットコーティング法、CVD法、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法により堆積することにより、親インク層16を作製することもできるが、これらに限定されない。なお、材料界面の密着性を高めるために、各材料界面にプライマ層が設けてあっても構わない。
【0110】
これらの工程により、基材1上に溶媒保持層4が全面に形成され、その上面に撥インク層15と親インク層16とがパターニングされた、印刷用平版である印刷版6が作製される。
【0111】
次に、上述した印刷版6を用いる実施の形態3の印刷方法について説明する。図46は、実施の形態3の印刷方法を示す流れ図である。実施の形態3の印刷方法は、被印刷物の一例としてのブランケット12に画像パターン11aを形成し、その画像パターン11aを基板13上に転写して印刷パターン41を形成する、画像形成方法である。
【0112】
図46に示すように、まず工程(S61)において、上述した実施の形態3の印刷版6である印刷用平版を作製する。続いて工程(S62)において、塗布装置9aを用いて印刷版6に溶媒を吸収させることによって、溶媒保持層4に溶媒を蓄積させる。図47は、溶媒保持層4に溶媒を蓄積させた状態を示す断面模式図である。たとえば、塗布装置9aとしてバーコータを用い、有機溶媒10を印刷版6の表面に供給した後にバーコータで引き伸ばすように、図47中に示す矢印に沿ってバーコータを印刷版6上で移動させることにより、溶媒保持層4に有機溶媒10を供給することができる。
【0113】
図48は、溶媒保持層4から撥インク層15への溶媒の供給を示す部分拡大断面図である。図48には、溶媒保持層4へ溶媒が蓄積された後に印刷版6の最表面から溶媒が除去された状態において、溶媒保持層4に蓄積された溶媒の一部が撥インク層15へ移動する様子を、図中に矢印で示している。
【0114】
図48に示すように、溶媒保持層4と撥インク層15とは、二層構造を形成し互いに面接触している。下層に形成された溶媒保持層4は、撥インク層15よりも溶媒吸収力が高く、かつ溶媒を保持することができる材料により形成されている。そのため、溶媒保持層4は、上層に形成された撥インク層15に溶媒を供給し、同時に撥インク層15中の溶媒の割合が常に一定になるよう制御することができる。これにより、撥インク層15に含まれる溶媒の割合を、長時間に亘り常に一定に保つことが可能である。かつ、撥インク層15および溶媒保持層4の周辺の雰囲気を溶媒雰囲気にすることができる。
【0115】
続いて図46に示す工程(S63)において、塗布装置9bを用いて印刷版6の表面全面に液体状のインク材料(インク溶液)を塗布することにより、撥インク層15と親インク層16との両方の表面全面にインク層11を形成する。図49は、インク層11を形成した状態を示す断面模式図である。たとえば、塗布装置9bとしてスクレーパーを用い、インクを印刷版6の表面に供給した後に図49中に示す矢印に沿ってスクレーパーを印刷版6上で移動させることにより、インク層11を形成することができる。親インク層16と撥インク層15との全面にインク層11を形成するためには、インク材料の表面張力が、撥インク層15の臨界表面張力以下になるように、インクを調製する。
【0116】
図50は、インク層11を形成した後の撥インク層15への溶媒の供給を示す部分拡大断面図である。図50には、印刷版6の表面にインクが塗布されインク層11が形成された状態において、溶媒保持層4に蓄積された溶媒の一部が撥インク層15へ移動する様子を、図中に矢印で示している。
【0117】
図50に示すように、インクを撥インク層15の表面に塗布したとき、撥インク層15に溶媒が一定に蓄積されているため、インク中の溶媒が撥インク層15に吸収されることが少ない。そのため、撥インク層15に含まれる溶媒の割合を、長時間に亘り常に一定に保つことが可能である。また、撥インク層15および溶媒保持層4の周辺が溶媒雰囲気となっているため、インク層11中の溶媒が大気中へ揮発してインクが乾燥することを抑制することができる。
【0118】
続いて図46に示す工程(S64)において、中間印刷体としてのブランケット12を準備し、このブランケット12を印刷版6に重ねて接触させ、インク層11を介してブランケット12を印刷版6へ押圧する。このとき、ブランケット12と印刷版6上に形成されたインク層11とを接触させつつ、ブランケット12および印刷版6を押圧する。図51は、ブランケット12をインク層11に押圧した状態を示す断面模式図である。
【0119】
続いて工程(S65)において、ブランケット12および印刷版6を離隔させることによって、印刷版6とブランケット12とを引き離す。この際、印刷版6の撥インク層15に接していたインクのみが、印刷版6からブランケット12に転写され、画像パターン11aが形成される。ブランケット12は、印刷版6の撥インク層15よりインクが転写される被印刷物の一例である。図52は、ブランケット12にインクが転写された状態を示す断面模式図である。
【0120】
上述したように、インクに対する密着性(接着強度)に関して、親インク層16の表面が最も大きく、ブランケット12の主表面が次に大きく、撥インク層15の表面が最も小さくなるように、撥インク層15を形成する材料が選択される。このため、印刷版6の撥インク層15上に形成されたインク層11のみがブランケット12表面に転写され、親インク層16上のインク層11は転写されない。
【0121】
図53は、インク層11からブランケット12へのインクの転写を示す部分拡大断面図である。図50を参照して説明したように、インク層11のインクが乾燥しにくくなっていることにより、インク層11からブランケット12へ転移されるインク量のばらつきが小さくなり、形成される画像パターン11aの平坦性が向上する。すなわち、インク層11は、撥インク層15との界面から分断されることなく離型するため、ブランケット12側へ転移するインク層11(画像パターン11a)の平坦性が向上する。
【0122】
また、溶媒保持層4に蓄積された溶媒は常に撥インク層15へ供給されるため、撥インク層15は常に同じ割合で溶媒を蓄積する。このため、印刷回数が増えても初回と同じ画像パターン11aを形成することができる。
【0123】
続いて図46に示す工程(S66)において、最終印刷体としての基板13を準備し、インクの画像パターン11aを介してブランケット12を基板13に重ねて接触させ、ブランケット12を基板13へ押圧する。このとき、ブランケット12に転写されたインクの画像パターン11aと基板13とを接触させつつ、ブランケット12および基板13を押圧する。図54は、ブランケット12を基板13に押圧した状態を示す断面模式図である。
【0124】
続いて工程(S67)において、ブランケット12および基板13を離隔させることによって、基板13とブランケット12とを引き離す。この際、印刷版6からブランケット12に転写された画像パターン11aのインクが、基板13に転写され、印刷パターン41が形成される。図55は、基板13にインクが転写された状態を示す断面模式図である。
【0125】
その後、基板13上に形成された印刷パターン41に対して、各インク材料に適した焼成処理を施すことによって、印刷パターン41に含まれる溶媒を蒸発させ、印刷パターン41の固形物を固化させる。以上の工程により、基板13に所望の印刷パターン41が形成される。
【0126】
以上説明したように、実施の形態3の印刷版6では、溶媒保持層4と撥インク層15との二層構造が形成されている。下層に形成された溶媒保持層4は、撥インク層15よりも溶媒吸収力が高く、かつ溶媒を保持することができるように、形成されている。そのため、溶媒保持層4は、上層に形成された撥インク層15に溶媒を供給し、同時に撥インク層15中の溶媒の割合が常に一定になるよう制御することができる。これにより、撥インク層15に含まれる溶媒の割合を、長時間に亘り常に一定に保つことが可能である。かつ、撥インク層15および溶媒保持層4の周辺の雰囲気を溶媒雰囲気にすることができる。
【0127】
印刷版6の表面にインクを塗布したとき、撥インク層15に溶媒が一定に蓄積されているため、インク中の溶媒が撥インク層15に吸収されることが少ない。そのため、撥インク層15に含まれる溶媒の割合を、長時間に亘り常に一定に保つことが可能である。また、撥インク層15および溶媒保持層4の周辺が溶媒雰囲気となっているため、インク層11中の溶媒が大気中へ揮発してインクが乾燥することを抑制することができる。
【0128】
インク層11のインクが乾燥しにくくなっていることにより、インク層11からブランケット12へ転移されるインク量のばらつきが小さくなり、形成される画像パターン11aの平坦性が向上する。また、溶媒保持層4に蓄積された溶媒は常に撥インク層15へ供給されるため、撥インク層15は常に同じ割合で溶媒を蓄積する。このため、印刷回数が増えても初回と同じ画像パターン11aをブランケット12に形成することができる。この画像パターン11aを基板13に転写することにより、長時間に亘り高精細かつ平坦性の高い印刷パターン41を安定して形成することができる。したがって、実施の形態3における画像形成方法を用いて製造された半導体デバイス、電気回路、表示体モジュール、カラーフィルター、発光素子などの、製品の高性能化を図ることができる。
【実施例1】
【0129】
以下、実施の形態1の印刷用凹版の製造方法、および実施の形態1における画像形成方法による作用、効果を検証するために行なった、第一実施例および第一比較例について説明する。
【0130】
(実施例)
基材1である50mm角、厚さ0.7mmのFe―Ni(Ni36%)の表面に付着している油分を除去するため、ウォーターバスにより75%に加熱したPercy LK(ヘンケルジャパン)に10分間の浮動浸漬した。次に、上記と同じ設定としたお湯により湯洗を行ない、脱脂剤を洗い流した。基材1表面の酸化膜を除去するため、10%塩酸水溶液に2分間の浮動浸漬を行なった後、水洗により塩酸水溶液を洗い流した。
【0131】
ラミネーターを用いて、ネガ型ドライフィルムレジスト(日立化成工業製:RY−3229)を塗布した。次に、マスクを介して紫外線を照射し、レジストを選択的に露光した。マスクは、印刷パターンとなる部分を除く基板上にレジストが露光されるように設計した。レジストの非露光部は、現像液(1%炭酸ナトリウム水溶液)を用いて30℃で除去した。
【0132】
電気ニッケルめっき液にて、基板上のレジスト非形成部への電気めっきを行なった。めっき金属膜の均一性を得るため、印刷パターンとなる部分以外に導電性材料を形成し、めっき装置電極から電流密度を分散した。電流密度2A/cm、2時間の電気めっき処理を行なった。
【0133】
メタルマスク研磨機を用いて、ドライフィルムレジスト、めっき金属膜の研磨を行なった。ドライフィルムレジストにより形成されたレジストパターンと、レジストパターンを被膜するように成膜されためっき金属膜とを同時に研磨し、基板表面から500μmの厚さまで研磨を行なった。
【0134】
次に、レジスト非露光部の剥離を行なった。ウォーターバスにより50℃に温めたレジスト剥離剤中に基板を置き、5分間の浮動浸漬を行なった。剥離後、純水によりリンスを行い、エアブローにて純水の除去を行なった。
【0135】
続いて、スクレーパーを用いて凹部の内表面に発泡シリコーンゴム組成物(信越シリコーン製:KE−513)を充填し、23℃で24時間かけて硬化させ、発泡シリコーンゴム層を形成した。ここで、発泡シリコーンゴム組成物はKE−513(A)(2液型主剤)とKE−513(B)(2液型硬化剤)を配合比率100:10として混合して得た。次に、この発泡シリコーンゴム層に対し、レーザーを照射し発泡シリコーンゴム層からなる溶媒保持層を形成した。尚、発泡シリコーンゴム層の厚みは約400から460μmで、発泡シリコーンゴム層形成後の凹部深さは約40μm、線幅は約60μmであった。
【0136】
次に、上記と同様の方法にて発泡シリコーンゴム層からなる溶媒保持層が形成された凹部内表面に、シリコーン樹脂組成物(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製:TSE−3250)を充填し、150℃で1時間かけて硬化させ、シリコーン樹脂を形成した。次に、このシリコーン樹脂に対し、レーザーを照射しシリコーン樹脂からなる樹脂層を形成した。尚、シリコーン樹脂層の厚みは約10μmで、シリコーン樹脂層形成後の凹部深さは約30μm、最小線幅は約50μmであった。
【0137】
これらの工程により、画線部7となる凹部内表面に発泡シリコーンゴム層からなる溶媒保持層4とその表面にシリコーン樹脂からなる樹脂層5とが積層された、印刷用凹版を得た。
【0138】
得られた印刷用凹版を用いて、上述した印刷方法によってカラーフィルター用インク(緑)をガラス基板上にパターン印刷した。このとき、インクの乾燥による糸曳きが発生することなく印刷1回目からパターニングすることができ、かつ印刷パターンは印刷回数に依らずほぼ一定であった。これにより、カラーフィルター用インク(緑)が印刷されたガラス基板に対し加熱処理を施し画像パターンを形成した。
【0139】
(比較例)
図56は、第一比較例の印刷用凹版の構成を示す断面模式図である。第一比較例の印刷用凹版は、図2に示す第一実施例の印刷用凹版と比較して、溶媒保持層4が形成されていない点で異なっている。第一比較例の印刷用凹版の製造方法は、第一実施例で発泡シリコーンゴム層を形成する工程を除き、上述した第一実施例の印刷用凹版の製造方法と同様とした。
【0140】
得られた印刷用凹版を用いて、印刷用凹版に溶媒を塗布する工程を除いてガラス基板にカラーフィルター用インク(緑)を印刷したところ、印刷回数が15回目までインクの糸曳きが見られ、パターンを正確に形成することができなかった。また、印刷パターンは印刷回数が15回目以上でも印刷ごとにばらつきが見られ、精度の高い印刷パターンを形成することができなかった。
【0141】
以上の第一実施例および第一比較例による検証により、実施の形態1における画像形成方法によれば、得られる画像パターン精度が向上すること、および長期的に安定した画像パターンを得ることが確認できた。
【実施例2】
【0142】
以下、実施の形態2の印刷用凸版の製造方法、および実施の形態2における画像形成方法による作用、効果を検証するために行なった、第二実施例および第二比較例について説明する。
【0143】
(実施例)
基材1である50mm角、厚さ0.7mmのFe―Ni(Ni36%)の表面に付着している油分を除去するため、ウォーターバスにより75%に加熱したPercy LK(ヘンケルジャパン)に10分間の浮動浸漬した。次に、上記と同じ設定としたお湯により湯洗を行ない、脱脂剤を洗い流した。基材1表面の酸化膜を除去するため、10%塩酸水溶液に2分間の浮動浸漬を行なった後、水洗により塩酸水溶液を洗い流した。
【0144】
ラミネーターを用いて、ネガ型ドライフィルムレジスト(日立化成工業製:RY−3229)を塗布した。次に、マスクを介して紫外線を照射し、レジストを選択的に露光した。マスクは、印刷パターンとなる部分を除く基板上にレジストが露光されるように設計した。レジストの非露光部は、現像液(1%炭酸ナトリウム水溶液)を用いて30℃で除去した。
【0145】
電気ニッケルめっき液にて、基板上のレジスト非形成部への電気めっきを行なった。めっき金属膜の均一性を得るため、印刷パターンとなる部分以外に導電性材料を形成し、めっき装置電極から電流密度を分散した。電流密度2A/cm、2時間の電気めっき処理を行なった。
【0146】
メタルマスク研磨機を用いて、ドライフィルムレジスト、めっき金属膜の研磨を行なった。ドライフィルムレジストにより形成されたレジストパターンと、レジストパターンを被膜するように製膜されためっき金属膜を同時に研磨し、基板表面から50μmの厚さまで研磨を行なった。
【0147】
レジストパターンと金属膜表面にバーコーターを用いて発泡シリコーンゴム組成物(信越シリコーン製:KE−513)を塗布し、23℃で24時間かけて硬化させ、発泡シリコーンゴム層を形成した。ここで、発泡シリコーンゴム組成物はKE−513(A)(2液型主剤)とKE−513(B)(2液型硬化剤)を配合比率100:10として混合して得た。
【0148】
続いて、上記と同様の方法にて発泡シリコーンゴム層からなる溶媒保持層が形成された表面に、シリコーン樹脂組成物(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製:TSE−3250)を塗布し、150℃で1時間かけて硬化させ、シリコーン樹脂層を形成した。
【0149】
次に、非画線部に対応するレジストパターン上に形成された発泡シリコーンゴム層とシリコーン樹脂層に対し、レーザーを照射し2層を除去した。
【0150】
次に、レジスト非露光部の剥離を行なった。ウォーターバスにより50℃に温めたレジスト剥離剤中に基板を置き、5分間の浮動浸漬を行なった。剥離後、純水によりリンスを行い、エアブローにて純水の除去を行なった。
【0151】
これらの工程により、画線部7となる凸部表面に発泡シリコーンゴム層からなる溶媒保持層4とシリコーン樹脂からなる樹脂層5とが積層された、印刷用凸版を得た。なお、発泡シリコーンゴム層の厚みは100μm、シリコーン樹脂層の厚みは10μmであり、画線部7の線幅は30μm、非画線部8の線幅は100μmとした。
【0152】
得られた印刷用凸版を用いて、上述した印刷方法によってカラーフィルター用インク(緑)をガラス基板上にパターン印刷した。このとき、インクの乾燥による糸曳きが発生することなく印刷1回目からパターニングすることができ、かつ印刷パターンは印刷回数に依らずほぼ一定であった。これにより、カラーフィルター用インク(緑)が印刷されたガラス基板に対し加熱処理を施し画像パターンを形成した。
【0153】
(比較例)
図57は、第二比較例の印刷用凸版の構成を示す断面模式図である。第二比較例の印刷用凸版は、図22に示す第二実施例の印刷用凸版と比較して、溶媒保持層4が形成されていない点で異なっている。第二比較例の印刷用凸版の製造方法は、第二実施例で発泡シリコーンゴム層を形成する工程を除き、上述した第二実施例の印刷用凸版の製造方法と同様とした。
【0154】
得られた印刷用凸版を用いて、印刷用凸版に溶媒を塗布する工程を除いてガラス基板にカラーフィルター用インク(緑)を印刷したところ、印刷回数が10回目までインクの糸曳きが見られ、パターンを正確に形成することができなかった。また、印刷パターンは印刷回数が10回目以上でも印刷ごとにばらつきが見られ、精度の高い印刷パターンを形成することができなかった。
【0155】
以上の第二実施例および第二比較例による検証により、実施の形態2における画像形成方法によれば、得られる画像パターン精度が向上すること、および長期的に安定した画像パターンを得ることが確認できた。
【実施例3】
【0156】
以下、実施の形態3の印刷用平版の製造方法、および実施の形態3における画像形成方法による作用、効果を検証するために行なった、第三実施例および第三比較例について説明する。
【0157】
(実施例)
基材1である50mm角、厚さ0.7mmのガラス基板に付着している有機物を除去するため、中性洗剤にて洗浄した後、アセトンおよびIPA(Isopropyl Alcohol)に浸漬させ、超音波洗浄を各々10分間おこなった。その後、純水によりリンスを行ない、エアブローにて純水の除去を行なった。
【0158】
ガラス基板表面にバーコーターを用いて発泡シリコーンゴム組成物(信越シリコーン製:KE−513)を塗布し、23℃で24時間かけて硬化させ、発泡シリコーンゴム層を形成した。ここで、発泡シリコーンゴム組成物はKE−513(A)(2液型主剤)とKE−513(B)(2液型硬化剤)を配合比率100:10として混合して得た。形成した発泡シリコーンゴム層の厚みは約100μmとした。
【0159】
上記と同様の方法にて発泡シリコーンゴム層からなる溶媒保持層が形成された表面に、ネガ型ドライフィルムレジスト(日立化成工業製:RY−3229)を塗布した。次に、マスクを介して紫外線を照射し、レジストを選択的に露光した。マスクは印刷パターンとなる部分を除く基板上にレジストが露光されるように設計した。レジストの非露光部は、現像液(1%炭酸ナトリウム水溶液)を用いて30℃で除去した。
【0160】
次にレジストの上面とパターン間にシリコーン樹脂組成物(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製:TSE−3250)を塗布し、150℃で1時間かけて硬化させ、シリコーン樹脂層を形成した。尚、シリコーン樹脂層の厚みは約2μmとした。
【0161】
次に、レジスト非露光部の剥離を行なった。ウォーターバスにより50℃に温めたレジスト剥離剤中に基板を置き、5分間の浮動浸漬を行なった。これにより、レジストとその上面に位置する撥インク層を除去した。剥離後、純水によりリンスを行い、エアブローにて純水の除去を行なった。続いて非画線部に対応する凹部にマスクを介して蒸着法によりアルミにて被覆した。
【0162】
これらの工程により、基材1全面に発泡シリコーンゴム層からなる溶媒保持層4が形成され、その上面に画線部7に対応するシリコーン樹脂からなる樹脂層と非画線部8に対応するアルミとが積層された、印刷用平版を得た。尚、画線部の線幅は30μm、非画線部の線幅は100μmとした。
【0163】
得られた印刷用凸版を用いて、上述した印刷方法によってカラーフィルター用インク(緑)をガラス基板上にパターン印刷した。このとき、インクの乾燥による糸曳きが発生することなく印刷1回目からパターニングすることができ、かつ印刷パターンは印刷回数に依らずほぼ一定であった。これにより、カラーフィルター用インク(緑)が印刷されたガラス基板に対し加熱処理を施し画像パターンを形成した。
【0164】
(比較例)
図58は、第三比較例の印刷用平版の構成を示す断面模式図である。第三比較例の印刷用平版は、図37に示す第三実施例の印刷用平版と比較して、溶媒保持層4が形成されていない点で異なっている。第三比較例の印刷用平版の製造方法は、第三実施例で発泡シリコーンゴム層を形成する工程を除き、上述した第三実施例の印刷用平版の製造方法と同様とした。
【0165】
得られた印刷用平版を用いて、印刷用平版に溶媒を塗布する工程を除いてガラス基板にカラーフィルター用インク(緑)を印刷したところ、印刷回数が10回目までインクの糸曳きが見られ、パターンを正確に形成することができなかった。また、印刷パターンは印刷回数が10回目以上でも印刷ごとにばらつきが見られ、精度の高い印刷パターンを形成することができなかった。
【0166】
以上の第三実施例および第三比較例による検証により、実施の形態3における画像形成方法によれば、得られる画像パターン精度が向上すること、及び長期的に安定した画像パターンを得ることが確認できた。
【0167】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0168】
1 基材、2 レジスト膜、3 金属膜、3a 表面、4 溶媒保持層、4a 表面、5 樹脂層、6 印刷版、7 画線部、8 非画線部、9a,9b 塗布装置、10 有機溶媒、11 インク層、11a 画像パターン、12 ブランケット、13 基板、14 レジスト膜、15 撥インク層、16 親インク層、17 保護層、21 主表面、24 接触面、25 対向面、26 底面、27 側面、31 凸状パターン、32 空間、33,33a 表面、34 壁面、35 凹部、36 底面、41 印刷パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主表面を有する基材と、
前記主表面上に形成され、印刷時に被印刷物へインクが転写される画線部と、
前記主表面上に形成され、印刷時に被印刷物へインクが転写されない非画線部とを備え、
前記画線部は、前記主表面に対向する対向面を有する樹脂部と、前記基材と前記樹脂部との間に配置され前記対向面に面接触する溶媒保持部とを有する、印刷版。
【請求項2】
前記印刷版は、前記非画線部に対し前記画線部が窪んだ印刷用凹版である、請求項1に記載の印刷版。
【請求項3】
前記印刷版は、前記非画線部に対し前記画線部が突起した印刷用凸版である、請求項1に記載の印刷版。
【請求項4】
前記印刷版は、上面が略平面に形成された印刷用平版であって、
前記溶媒保持部は、前記主表面の全面に面接触する、請求項1に記載の印刷版。
【請求項5】
前記樹脂部は、撥インク性を有する、請求項4に記載の印刷版。
【請求項6】
前記樹脂部は、シリコーン系樹脂とフッ素系樹脂とのいずれか一方を含む、請求項5に記載の印刷版。
【請求項7】
前記溶媒保持部は、前記樹脂部の形成材料よりも溶媒の吸収力が高い材料により形成されている、請求項1から請求項6のいずれかに記載の印刷版。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の印刷版を作製する工程と、
前記溶媒保持部に溶媒を蓄積させる工程と、
前記画線部に液体状のインクを塗布することによりインク層を形成する工程と、
前記インク層を被印刷物へ押圧し、前記被印刷物にインク層を転写する工程とを備える、印刷方法。
【請求項9】
請求項8に記載の印刷方法によって基板上に形成される、印刷パターン。
【請求項10】
主表面を有する基材を準備する工程上にレジストの凸状パターンを形成する工程と、
前記凸状パターン間および前記凸状パターン上に金属膜を形成する工程と、
前記金属膜を研磨し、前記レジストを露出させる工程と、
前記レジストを除去し、前記金属膜と前記主表面とによって囲まれた凹部を形成する工程と、
前記凹部の底面および側面の全面を被覆する溶媒保持層を形成する工程と、
前記溶媒保持層の表面全面に面接触する樹脂層を形成する工程と、を備える、印刷用凹版の製造方法。
【請求項11】
主表面を有する基材を準備する工程と、
前記主表面上にレジストの凸状パターンを形成する工程と、
前記凸状パターン間および前記凸状パターン上に金属膜を形成する工程と、
前記金属膜を研磨し、前記レジストを露出させる工程と、
前記金属膜上および前記レジスト上に溶媒保持層を形成する工程と、
前記溶媒保持層上に樹脂層を形成する工程と、
前記レジストの上部に位置する前記溶媒保持層および前記樹脂層を除去する工程と、
前記レジストを除去する工程と、を備える、印刷用凸版の製造方法。
【請求項12】
主表面を有する基材を準備する工程と、
前記主表面上に溶媒保持層を形成する工程と、
前記溶媒保持層上にレジストの凸状パターンを形成する工程と、
前記凸状パターン間および前記凸状パターン上に撥インク層を形成する工程と、
前記凸状パターンと前記凸状パターンの上部に位置する前記撥インク層とを除去し、前記撥インク層と前記溶媒保持層とによって囲まれた凹部を形成する工程と、
前記凹部内に親インク層を形成する工程と、を備える、印刷用平版の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【公開番号】特開2011−11374(P2011−11374A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155446(P2009−155446)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】