説明

印刷物の情報読み取り方法

【課題】目視では基材上に設けられている複数の情報部がその存在と情報内容が視認されないように隠蔽されながらも情報部の機械読み取りが可能であり、また、赤外線を利用した汎用の読み取り機では情報を正確に読み取る事が難しく、且つ情報部のデータが2値化ではなく複数種類の値を取る事ができる偽造防止印刷物の情報読み取り方法を提供する。
【解決手段】赤外線反射性基材の上に、設定された赤外波長域でそれぞれ反射強度が異なるパターン状情報部を、複数設けてなる印刷物を、複数の赤外波長域の赤外線を用いて、該パターン状情報部の反射強度を読み取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造もしくは改竄を困難とするための偽造防止機能を有する印刷物の真偽判定を行うための印刷物の情報読み取り方法に関するものである。
【0002】
従来から株券、債券、小切手、商品券、宝くじ、定期券等の有価証券類には、機械読み取り可能な情報として、バーコードやOCR文字等の機械読み取り可能な情報部であるコードマークが付されている事が多い。通常、このようなコードマークは、カーボンブラックやロイコ染料等を含有し、近赤外線波長領域の波長の光を吸収する黒色インキ等を用いて形成されている。
【0003】
より具体的には、白色インキの赤外線反射特性および黒色インキの赤外線吸収特性を利用し、機械的に読み取り可能な情報として、黒色インキからなるバーコード状のコードマークを白色インキからなる白色インキ層上に形成しておき、コードマークの部分に赤外線を照射しつつ、そこからの反射光を測定する事により、目視不可能な状態で記録されている情報を読み取れるようにしている。このような構成の不可視情報においては、一般的には、上記黒色インキ等からなる情報が不正に読み取られないように、可視光を遮断し赤外線を透過する隠ぺい層で情報の部分を覆っておき、可視光照射下での目視による情報内容の判別ができないようにしている。
【0004】
上記した近赤外線を吸収する黒色インキ等は可視光波長領域の波長の光に対する光吸収性も有しているため、上記したような隠ぺい層を形成しておいても、隠ぺい力が不十分であると、下部に位置する情報が赤外線読み取り装置により読み取られてしまうのみならず、目視でもその存在が判読され易く、複写等を利用した偽造や変造等を確実に防止する手段としては不十分であった。
【0005】
目視不可能な状態で隠ぺいされている情報の存在がより確実に視認されないようにしようとする手段の一つとしては、可視光波長領域の波長の光の吸収が少なく、しかも可視光波長領域以外の波長領域の波長の光を吸収する材料で情報を形成する事も考えられてきた。例えば、特許文献1には、画像パターンを分割して、一方を赤外領域に吸収を有し可視領域に吸収の無いインキにより、他方を赤外領域と可視領域に吸収を有するインキで構成し、且つ、その画像パターンの近傍および/または重畳してダミーパターンを設けた複写偽造防止技術が開示されている。例えば、赤外線吸収材料としての熱線吸収ガラスや赤外線吸収ガラスを粉砕し、これを顔料化したものをインキ中に含有させた赤外線吸収性インキによりコードマークを形成する手段がある。この赤外線吸収性インキは可視光波長領域での光の吸収が少ないため、目視による存在の確認が難しいことから、偽造・変造・改ざん等に有効な手段として考えられてきた。
【0006】
また、例えば、特許文献2には、赤外線反射性基材の上に、第1の赤外線吸収性インキから構成される第1の印刷画像と、第1の赤外線吸収性インキの赤外線波長域における赤外線吸収性とは異なる赤外線吸収性を有する第2の赤外線吸収印刷インキから構成される第2の印刷画像とを備えた、機械読み取り可能な情報印刷物が開示されている。このような赤外線吸収性インキを用いて情報部が設けられている偽造防止印刷物の情報部は、例えば可視光波長領域(400〜700nm)の波長の光の吸収が少なく、且つ、広範囲に渡る赤外線波長領域(800nm以上)の波長の光を大きく吸収するような分光特性を持つようにしてあるため、確かに目視では読み取ることが難しく、赤外線カメラ等の機械を用いてのみ検知が可能であるという利点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−68979号公報
【特許文献2】特開2005−246719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、情報部を基材上に単に設けただけではその存在が判読され易く、情報部の存在に気づいた第三者が赤外線カメラ等を用いてその情報内容を読み取る事ができてしまう。また、目視不可能な状態で隠蔽されている場合でも、赤外線カメラ等で情報内容を不正に読み取り、この読み取り情報に基づいて偽造や改ざんが行われてしまう。更に、従来の情報部では各々2値化的な情報しか保持できないため、情報量を増やすためには情報部を多数設ける必要があるという問題があった。
【0009】
本発明は、係る従来技術の問題点を解決するものであり、目視では基材上に設けられている複数の情報部がその存在と情報内容が視認されないように隠蔽されながらも情報部の機械読み取りが可能であり、また、赤外線を利用した汎用の読み取り機では情報を正確に読み取る事が難しく、且つ情報部のデータが2値化ではなく複数種類の値を取る事ができる偽造防止印刷物の情報読み取り方法を提供する事を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、赤外線反射性基材の上に、設定された赤外波長域でそれぞれ反射強度が異なるパターン状情報部を、複数設けてなる印刷物を、複数の赤外波長域の赤外線を用いて、該パターン状情報部の反射強度を読み取ることを特徴とする印刷物の情報読み取り方法である。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記設定された赤外波長域でそれぞれ反射強度が異なるパターン状情報部が、前記設定された赤外波長域と異なる他の赤外波長域では反射強度が略同じであることを特徴とする請求項1に記載する印刷物の情報読み取り方法である。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記設定された赤外波長域でそれぞれ反射強度が異なるパターン状情報部が、複数の赤外波長域でそれぞれ異なる分光特性を有する赤外線吸収材料を含むことを特徴とする請求項1または2に記載する印刷物の情報読み取り方法である。
【0013】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記設定された赤外波長域でそれぞれ反射強度が異なるパターン状情報部が、複数の赤外波長域でそれぞれ異なる分光特性を有する赤外線吸収材料を、少なくとも2種類以上、且つ、それぞれ異なる比率で含むことを特徴とする請求項1または2に記載する印刷物の情報読み取り方法である。
【0014】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記設定された赤外波長域でそれぞれ反射強度が異なるパターン状情報部が、特定の赤外線吸収材料を該パターン状情報部ごとに異なる比率で含有することを特徴とする請求項1または2に記載する印刷物の情報読み取り方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の印刷物の情報読み取り方法では、赤外線反射性基材の上に、設定された赤外波
長域でそれぞれ反射強度が異なるパターン状情報部を複数設けてなる印刷物を、複数の赤外波長域の赤外線を用いて、そのパターン状情報部の反射強度の機械読み取りが可能となる。すなわち、設定された赤外波長域の赤外線の照射では、パターン状情報部のそれぞれの反射強度が異なる。また前記設定された赤外波長域と異なる他の特定の赤外波長域の赤外線の照射では、パターン状情報部のそれぞれの反射強度が略同じとなる。このことで、第3者が情報を読み取るべき波長を推測することは困難となり、偽造できない。
【0016】
本発明に係る印刷物には複数のパターン状情報部が形成されており、各々のパターン状情報部は、複数の赤外波長域でそれぞれ異なる分光特性を有する赤外線吸収材料を、少なくとも2種類以上、且つ、それぞれ異なる比率で含むことで形成できる。また、各々のパターン状情報部は、上記とは異なり、1種の赤外線吸収材料を、各パターン状情報部ごとに異なる比率で含有することでも形成できる。本発明に係る印刷物では、情報部を隠蔽または周囲と同色に調色することで、目視では情報部の視認が不可能または困難であるが、赤外線の照射によってはじめて情報部の赤外線反射率を機械読み取りが可能となる。
【0017】
従来の一般的に使用されている赤外線読み取り装置では、情報部の赤外線領域における吸収特性が異なれば違う情報として扱われ、また同じ赤外線波長に吸収率のピーク値が存在する場合には、吸収率のピーク値の違いを情報の違いとして認識せずに同じ情報として認識される。それに対して、本発明の印刷物の情報読み取り方法では、機械読み取りを行う赤外線波長を複数設定し、設定された複数の波長の赤外線を情報部に照射した時の赤外線反射率をそれぞれ検出し、読み取った反射率を決められた閾値によって分類する事により複雑なコード化が可能となる。このため、情報部から得られる情報を第三者が正確に知る事は非常に難しく、偽造や改ざん、またはその他の不正を有効に防止する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る印刷物の、第1の例を平面で示す説明図。
【図2】本発明に係る印刷物の、第1の例を断面で示す説明図。
【図3】本発明に係る印刷物の、第2の例を平面で示す説明図。
【図4】本発明に係る印刷物の、第2の例を断面で示す説明図。
【図5】本発明に係る印刷物の、第3の例を平面で示す説明図。
【図6】本発明に係る印刷物の、第3の例を断面で示す説明図。
【図7】本発明に係る印刷物の、各々使用している赤外線吸収材が異なる場合の赤外線吸収インキの分光特性図。
【図8】本発明に係る印刷物の、各々使用している赤外線吸収材が同一で、その含有濃度が異なる場合の赤外線吸収インキの分光特性図。
【図9】A→B間で機械読み取りを行う事を平面で示す説明図。
【図10】A→B間で機械読み取りを行った情報部の赤外線反射率データとコード生成のための閾値分。
【図11】A→B間で生成されたコードI〜IVを示した図
【図12】C→D間で機械読み取りを行う事を示す平面図
【図13】C→D間で機械読み取りを行った情報部の赤外線反射率データとコード生成のための閾値区分
【図14】C→D間で生成されたコードI〜IVを示した図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の印刷物の情報読み取り方法を、一実施形態に基づいて、以下に図面を用いて説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る印刷物10の第1の事例を平面で示す説明図である。赤外線反射性基材1上に赤外線吸収性インキにより情報部2が設けられており、情報部2は、各々の赤外線吸収性インキに使用される赤外線吸収材が各々異なる特性を有している場合の個別情報部20〜24、または、各々の赤外線吸収性インキに使用される赤外線吸収材を同一とし、その含有濃度を変化させた個別情報部25〜29から構成されている。ここで、X−X’線に沿って設定された波長の赤外線を照射すると、情報部2は照射した赤外線の一部を吸収し、また、赤外線反射性基材1では赤外線を反射するため、情報部2の各々個別情報部の前記設定された波長における赤外線反射率を読み取る事ができる。
【0021】
図2は、図1に示した印刷物10のX−X’線による断面部分の概略の構成を示しており、赤外線反射性基材1上の、情報部2の反対側の面にプロセスインキ(色数は限定されない)により絵柄印刷層3が設けられている事を示している。
【0022】
次に、図3は、本発明に係る印刷物11の第2の事例を平面で示す説明図である。赤外線反射性基材1上に、赤外線吸収性インキにより情報部2が設けられており、情報部2は個別情報部20〜24または25〜29から構成されている。この情報部2の周辺には情報部2を構成する赤外線吸収性インキと色相が同じで、且つ赤外線波長領域の光を吸収しない背景用インキを用いて背景部4が設けられているため、情報部2を視認する事が困難な構成としたものである。
【0023】
また、図4は、図3の印刷物11のY−Y’線による断面部分の概略の構成を示しており、赤外線反射性基材1上の、情報部2と背景部4の反対面にプロセスインキ(色数は限定されない)により絵柄印刷層3が設けられている事を示している。
【0024】
次に図5は、本発明に係る印刷物12の第3の事例を平面で示す説明図である。赤外線反射性基材1上に、赤外線吸収性インキにより情報部2が設けられており、情報部2の周辺部分には情報部2を構成する赤外線吸収性インキと色相が同じで、かつ赤外線波長領域の光を吸収しない背景用インキを用いて背景部4が設けられており、更に、情報部2と背景部4の全面を隠蔽絵柄印刷層5で覆う事により、目視で情報部2を確認する事が不可能な構成としたものである。
【0025】
また、図6は図5の印刷物12のZ−Z’線による断面部分の概略の構成を示しており、赤外線反射性基材1上における情報部2と背景部4の反対面にプロセスインキ(色数は限定されない)により絵柄印刷層3が設けられている事を示している
なお、上記した印刷物の情報部を構成するそれぞれの赤外線吸収性インキは、偽造防止目的として、その視認性が低いことが求められ、可視光波長領域における光の吸収率が20%以下である事好ましい。
【0026】
ここで、本発明の印刷物の読み取り方法で、ある設定された波長の赤外線を情報部に照射した時の赤外線反射率をそれぞれ検出し、読み取った反射率の違いから複数のコードを生成する方法について、具体的に説明する。
【0027】
図7は、個別情報部20〜24の各々の赤外線吸収性インキに使用される赤外線吸収材が各々異なる特性を有している場合の、赤外線吸収特性を示した図である。
【0028】
個別情報部20は図7の20で示されるような吸収特性を有する赤外線吸収インキにより、個別情報部21は図7の21で示されるような吸収特性を有する赤外線吸収インキにより、個別情報部22は図7の22で示されるような吸収特性を有する赤外線吸収インキにより、個別情報部23は図7の23で示されるような吸収特性を有する赤外線吸収インキにより、個別情報部24は図7の24で示されるような吸収特性を有する赤外線吸収インキにより、各々形成されている。
【0029】
個別情報部20〜25が前記特性を持つ場合には、図9に示すようにA点からB点にかけて950nmの赤外線によって機械読み取りを行うと、赤外線反射率は図10に示すような結果となる。読み取り結果は、赤外線反射率の値によってI、II、III、IVの4種類に分類され、図11のようにコード化する事が可能となる。
【0030】
図8は、個別情報部25〜29の各々の赤外線吸収性インキに使用される赤外線吸収材を同一とし、その含有濃度を変化させる事によって赤外線反射率を任意の値に調整した場合の、赤外線吸収特性を示した図である。
【0031】
個別情報部25は図8の25で示されるような吸収特性を有する赤外線吸収インキにより、個別情報部26は図8の26で示されるような吸収特性を有する赤外線吸収インキにより、個別情報部27は図8の27で示されるような吸収特性を有する赤外線吸収インキにより、個別情報部28は図8の28で示されるような吸収特性を有する赤外線吸収インキにより、個別情報部29は図8の29で示されるような吸収特性を有する赤外線吸収インキにより、各々形成されている。
【0032】
個別情報部25〜29が前記特性を持つ場合には、図12に示すようにC点からD点にかけて950nmの赤外線によって機械読み取りを行うと、赤外線反射率は図13に示すような結果となる。読み取り結果は、赤外線反射率の値によってI、II、III、IVの4種類に分類され、図14のようにコード化する事が可能となる。
【0033】
以上、本発明の印刷物の読み取り方法について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。即ち、赤外線反射性基材の上に、機械読み取りを行うための設定された赤外波長域における赤外線の吸収率が2種類以上異なっていれば、その他の異なる赤外波長域における各々の赤外線吸収性インキの吸収特性や吸収率のピークを示す波長が各々異なっていても同一であっても、異なるものと同一のものとが混在していても良い。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0035】
<実施例1>
白色系のコート紙上にオフセット印刷により、各々異なる赤外線吸収材を用いた下記組成の第1〜第6の赤外線吸収性インキ(紫外線硬化型オフセット印刷用インキ)を使用して個別情報部20〜24を各々膜厚2μmで形成した。以下、部は質量部である。
【0036】
[個別情報部20:第1の赤外線吸収性インキの組成]
赤外線吸収剤(図7−20の特性) 15部
FD Sメジウム TPロ (東洋インキ製造社製) 85部
[個別情報部21:第2の赤外線吸収性インキの組成]
赤外線吸収剤(図7−21の特性) 5部
FD Sメジウム TPロ (東洋インキ製造社製) 95部
[個別情報部22:第3の赤外線吸収性インキの組成]
赤外線吸収剤(図7−22の特性) 10部
FD Sメジウム TPロ (東洋インキ製造社製) 90部
[個別情報部23:第4の赤外線吸収性インキの組成]
赤外線吸収剤(図7−23の特性) 8部
FD Sメジウム TPロ (東洋インキ製造社製) 92部
[個別情報部24:第5の赤外線吸収性インキの組成]
赤外線吸収剤(図7―24の特性) 8部
FD Sメジウム TPロ (東洋インキ製造社製) 92部
次に、下記組成の背景用インキ(紫外線硬化型オフセット印刷用インキ)を用い、個別情報部20〜24の印刷に対して段差や抜けがないように、いわゆる毛抜き合わせで、背景部4を膜厚2μmで印刷した。
【0037】
[背景用インキの組成]
FD OL 黄 TC(東洋インキ製造社製) 1.25部
FD OL 紅 TC(東洋インキ製造社製) 2.75部
FD OL 藍 TC(東洋インキ製造社製) 3.00部
FD OL メジウム(東洋インキ製造社製) 95部
以上のようにして、5種類の個別情報部20〜25とその周辺部に毛抜き合わせで背景部4を設けた後、以下の3種類のプロセスインキを用いて絵柄を印刷し、隠蔽絵柄印刷層5を最上層に設け、機械読み取り可能な偽造防止用の印刷物12を得た。
【0038】
[プロセスインキ]
FD OL 黄TCロ (東洋インキ製造社製)
FD OL 紅TCロ (東洋インキ製造社製)
FD OL 藍TCロ (東洋インキ製造社製)。
【0039】
以上のような方法で作製した機械読み取り可能な偽造防止用の印刷物は、プロセスインキからなる隠蔽絵柄印刷層のみが視認でき、隠蔽絵柄印刷層で隠蔽されている各情報部は背景部を、いわゆる毛抜き合わせで印刷しているため、情報部と周辺部との境目を視認する事ができなかった。しかし、950nmに設定された赤外線を検知できる赤外線カメラやセンサーでは、隠蔽絵柄印刷層を検知する事なく、赤外線吸収性インキにより印刷した個別情報部20〜25の5カ所の赤外線吸収率を検知する事ができ、コードI〜IVを生成する事ができた。
【0040】
即ち、3種類のプロセスインキは赤外線を吸収しないため、下層に存在する赤外線吸収性インキからなる情報部のみを検知する事ができ、更に、検知に際しては、設定された赤外線波長を照射した時の赤外線の吸収率が検知可能な読み取り装置で読み取るので、5種類の情報部各々の赤外線吸収率により、予め分類化されたコードからコードを生成する事ができた。
【0041】
一方、一般的な赤外線照射装置の照射下では、個別情報部20,21,22,23,24の5カ所は別々の波長に吸収率のピークがあるために全て別々のコードと認識されるか、波長を設定変更して赤外線を照射した場合でも、950nm以外の波長領域では波長に
よって全く異なる吸収率であるために誤った情報しか検知出来ない。よって、真の情報を隠蔽する事が可能となり、機械読み取りによる偽造や変造などが困難である事が分かった。
【0042】
<実施例2>
次に、実施例2として、白色系のコート紙上にオフセット印刷により、同一の赤外線吸収材を用いながらその含有量を変化させた下記組成の第6〜第10の赤外線吸収性インキ(紫外線硬化型オフセット印刷用インキ)を使用して、個別情報部25〜29を各々膜厚2μmで形成した。
【0043】
[個別情報部25:第6の赤外線吸収性インキの組成]
赤外線吸収剤(図8−25の特性) 1部
FD Sメジウム TPロ (東洋インキ製造社製) 99部
[個別情報部26:第7の赤外線吸収性インキの組成]
赤外線吸収剤(図8−26の特性) 3部
FD Sメジウム TPロ (東洋インキ製造社製) 97部
[個別情報部27:第8の赤外線吸収性インキの組成]
赤外線吸収剤(図8−27の特性) 6部
FD Sメジウム TPロ (東洋インキ製造社製) 94部
[個別情報部28:第9の赤外線吸収性インキの組成]
赤外線吸収剤(図8−28の特性) 9部
FD Sメジウム TPロ (東洋インキ製造社製) 91部
[個別情報部29:第10の赤外線吸収性インキの組成]
赤外線吸収剤(図8―29の特性) 12部
FD Sメジウム TPロ (東洋インキ製造社製) 88部
次に、下記組成の背景用インキ(紫外線効果型オフセット印刷用インキ)を用い、個別情報部25〜29の印刷に対して段差や抜けがないように、いわゆる毛抜き合わせで背景部4を膜厚2μmで印刷した。
【0044】
[背景用インキの組成]
FD OL 黄 TC(東洋インキ製造社製) 1.25部
FD OL 紅 TC(東洋インキ製造社製) 2.75部
FD OL 藍 TC(東洋インキ製造社製) 3.00部
FD OL メジウム(東洋インキ製造社製) 95部
以上のようにして、5種類の個別情報部25〜29とその周辺部に毛抜き合わせで背景部4を設けた後、以下の3種類のプロセスインキを用いて絵柄を印刷し、隠蔽絵柄印刷層5を最上層に設け、機械読み取り可能な偽造防止印刷物12を得た。
【0045】
[プロセスインキ]
FD OL 黄TCロ (東洋インキ製造社製)
FD OL 紅TCロ (東洋インキ製造社製)
FD OL 藍TCロ (東洋インキ製造社製)。
【0046】
以上のような方法で作製した機械読み取り可能な偽造防止用の印刷物12は、プロセスインキからなる隠蔽絵柄印刷層5のみが視認でき、赤外線吸収性インキからなる情報部2は視認する事ができなかった。しかし、波長を950nmの赤外線を検知できるように設定した赤外線カメラやセンサーでは、隠蔽絵柄印刷層5を検知する事なく、赤外線吸収印刷インキにより印刷した個別情報部25〜29の5カ所の赤外線吸収量を検知する事ができ、更に読み取った個別情報部25〜29の各々の赤外線吸収ピーク値によってコードI〜IVを生成する事ができた。
【0047】
実施例2では、赤外線吸収性インキに使用される赤外線吸収材は同一であるために、所望の赤外線反射率を得る方法としては赤外線吸収材の含有濃度を調整するだけで良いため、情報部を形成するにあたり、所望する赤外線反射率を得る事が容易であった。また、個別情報部25〜29の赤外線吸収特性は、950nmにおける吸収率が異なる以外は同一の特性を持っており、一般的な赤外線照射装置による赤外線照射下では、赤外線吸収ピーク率の検知や分類化を行う事ができずに同一コードと認識されてしまった。また、読み取り波長を設定変更した場合でも、950nm以外では個別情報部25〜29の赤外線吸収特性に差がないために、5カ所の情報部はいずれも同一コードと認識されてしまった。よって、本発明の印刷物の情報読み取り方法では、真の情報を隠蔽する事が可能となり、機械読み取りによる偽造や変造などが困難である事が分かった。
【符号の説明】
【0048】
1・・・支持体 2・・・情報部(全体) 3・・・絵柄印刷層
4・・・背景部(背景印刷層) 5・・・隠蔽絵柄印刷層
10・・・本発明に係る第1の例の印刷物 11・・・本発明に係る第2の例の印刷物12・・・本発明に係る第3の例の印刷物
20・・・コードIを生成する個別情報部
21・・・コードIIIを生成する個別情報部
22・・・コードIを生成する個別情報部
23・・・コードIIを生成する個別情報部
24・・・コードIVを生成する個別情報部
25・・・コードIVを生成する個別情報部
26・・・コードIVを生成する個別情報部
27・・・コードIIIを生成する個別情報部
28・・・コードIIを生成する個別情報部
29・・・コードIを生成する個別情報部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線反射性基材の上に、設定された赤外波長域で、それぞれ反射強度が異なるパターン状情報部を複数設けてなる印刷物を、複数の赤外波長域の赤外線を用いて、該パターン状情報部の反射強度を読み取ることを特徴とする印刷物の情報読み取り方法。
【請求項2】
前記設定された赤外波長域で、それぞれ反射強度が異なるパターン状情報部が、前記設定された赤外波長域と異なる他の赤外波長域では反射強度が略同じであることを特徴とする請求項1に記載する印刷物の情報読み取り方法。
【請求項3】
前記設定された赤外波長域でそれぞれ反射強度が異なるパターン状情報部が、複数の赤外波長域でそれぞれ異なる分光特性を有する赤外線吸収材料を含むことを特徴とする請求項1または2に記載する印刷物の情報読み取り方法。
【請求項4】
前記設定された赤外波長域でそれぞれ反射強度が異なるパターン状情報部が、複数の赤外波長域でそれぞれ異なる分光特性を有する赤外線吸収材料を、少なくとも2種類以上、且つ、それぞれ異なる比率で含むことを特徴とする請求項1または2に記載する印刷物の情報読み取り方法。
【請求項5】
前記設定された赤外波長域でそれぞれ反射強度が異なるパターン状情報部が、1種の赤外線吸収材料を該パターン状情報部ごとに異なる比率で含有することを特徴とする請求項1または2に記載する印刷物の情報読み取り方法。

【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−198543(P2010−198543A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45455(P2009−45455)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】