説明

印刷用プログラム及び画像形成システム

【課題】本文の印刷サイズを縮小することなく、本文及び注釈文字列の情報が損なわれることを防止する。
【解決手段】
EMFファイル101に含まれる1ページ分の印刷データの描画領域(主描画領域)と注釈文字列データ18の描画領域(副描画領域)とが互いに重複しないように、複数の副描画領域が互いに重複しないように、且つ副描画領域の全部が印刷用紙の有効印字領域内に入るように、注釈文字列データ18が示す位置座標又はフォントサイズを変更して注釈文字列を移動又は縮小し、変更した注釈文字列データ18を印刷データに付加して、それをプリンタ2に印刷させる機能を有したプリンタドライバ20をコンピュータ1に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷データにヘッダー又はフッター等の注釈文字列データを付加する機能を備えた印刷用プログラム及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワープロソフト等のアプリケーション上でユーザによる印刷指示を受け付けた場合に、ヘッダー又はフッター等の注釈文字列データを印刷データに付加する機能を備えたプリンタドライバが知られている。
【0003】
しかし、上記機能を使用して印刷した際に、本文(画像等を含む)と注釈文字列とが重複する場合や、複数の注釈文字列が互いに重複する場合が生じて、本文又は注釈文字列の情報が損なわれるという問題点があった{図7(B)参照}。また、コンピュータ装置の入力手段から入力される印刷倍率情報が、描画対象領域の拡大を示している場合に、上記機能を使用して印刷した際には、本文が拡大されるとともに注釈文字列も拡大されてしまうので、注釈文字列の全部又は一部が有効印字領域外にはみ出る場合が生じて、注釈文字列の情報が損なわれるという問題点があった{図8(A)参照}。なお、有効印字領域とは図6に示す点線枠内の領域であり、プリンタが印刷可能な用紙上の領域をいう。
【0004】
そこで、上記問題点を鑑みて下記特許文献1では、本文の印刷データに注釈文字列データを付加する前に、印刷データの描画領域が注釈文字列データの描画領域に重複しないように、その印刷データの描画領域を縮小するプリンタドライバが開示されている。以下、印刷データの描画範囲を主描画領域と称し、注釈文字列データの描画範囲を副描画領域と称す。
【0005】
また、下記特許文献2では、主描画領域と副描画領域とが互いに重複してはならない場合に、重複しないように注釈文字列を移動又は縮小する書式オーバレイ制御方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−73595号公報
【特許文献2】特開平9−319805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の発明は、主描画領域が副描画領域に重複しないように、主描画領域を縮小するので、本文の印刷サイズがユーザの意図しないサイズに縮小される場合がある。また、上記特許文献1では複数の注釈文字列が互いに重複して、又は、注釈文字列の全部若しくは一部が有効印字領域外にはみ出して注釈文字列の情報が損なわれる問題を解決することができない。
【0007】
また、上記特許文献2の発明は、主描画領域と副描画領域とが互いに重複しないように、注釈文字列を移動又は縮小するだけなので、複数の注釈文字列が互いに重複して、又は、注釈文字列の全部若しくは一部が有効印字領域外にはみ出して注釈文字列の情報が損なわれる問題を解決することができない。また、注釈文字列を移動することにより、複数の注釈文字列が互いに重複して、又は、注釈文字列の全部若しくは一部が有効印字領域外にはみ出して注釈文字列の情報が損なわれることも考えられる。
【0008】
本発明の目的は、このような問題点に鑑み、本文の印刷サイズを縮小することなく、本文及び注釈文字列の情報が損なわれることを防止することが可能な印刷用プログラム及び画像形成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様における印刷用プログラムでは、
コンピュータ装置の一時記憶手段に格納される印刷データに、注釈文字列データを付加することを該コンピュータ装置のプロセッサに実行させる印刷用プログラムにおいて、
該印刷データに基づいてその描画領域を主描画領域として計算し、且つ該注釈文字列データに基づいてその描画領域を副描画領域として計算する第1ステップと、
該主描画領域と該副描画領域とが互いに重複するか否かを判定し、且つ該副描画領域の全部又は一部が有効印字領域外にはみ出すか否かを判定する第2ステップと、
該第2ステップで少なくとも一方が肯定判定された場合に、該主描画領域と該副描画領域とが重複しないように、且つ該副描画領域の全部が該有効印字領域内に入るように、該注釈文字列データを変更して注釈文字列を移動又は縮小する第3ステップと、
変更した該注釈文字列データを該印刷データに付加する第4ステップと、
を該プロセッサに実行させる。
【0010】
なお、前記印刷用プログラムは、プリンタドライバ若しくはプリンタドライバ用モジュール(プラグインモジュール)、又は、これらの組合せを含む。そして、前記プロセッサに対する前記第1〜第4ステップは、プリンタドライバ単体若しくはプリンタドライバ用モジュール単体がその全ステップを実行させる場合、複数のプリンタドライバ用モジュールがその各ステップを分担して実行させる場合、又は、プリンタドライバとプリンタドライバ用モジュールがその各ステップを分担して実行させる場合を含む。
【0011】
また、前記注釈文字列データには、注釈文字列の文字情報だけでなく、位置情報及び書式情報なども含まれる。さらに、前記注釈文字列には、本文の意義を説き明かすための文字列に限られず、本文とは関係のない文字列も含まれる。さらにまた、前記コンピュータ装置には、画像形成装置内部に備えられているコンピュータ装置も含まれる。
【0012】
本発明の第2態様における印刷用プログラムでは、第1態様において、
前記注釈文字列は複数存在し、
前記第2ステップでさらに、複数の前記副描画領域が互いに重複するか否かを判定し、肯定判定した場合に前記第3ステップで、該複数の副描画領域が互いに重複しないように、前記注釈文字列データを変更して該注釈文字列を移動又は縮小する。
【0013】
本発明の第3態様における印刷用プログラムでは、第1又は第2態様において、
前記注釈文字列は、前記コンピュータ装置の入力手段から入力される文字列を含む。
【0014】
本発明の第4態様における印刷用プログラムでは、第1乃至第3態様のいずれか1つの態様において、
前記第2ステップで、前記コンピュータ装置の入力手段から入力される印刷倍率情報を考慮して前記主描画領域及び前記副描画領域を計算する。
【0015】
本発明の第5態様における印刷用プログラムでは、第1又は第3態様のいずれか1つの態様において、
前記コンピュータ装置の入力手段から入力される印刷倍率情報が、描画対象領域の拡大を示している場合に、前記副描画領域を拡大することなく前記主描画領域のみを拡大するように、前記第1ステップの前で前記印刷データに対して拡大処理する。
【0016】
本発明の第6態様における画像形成システムは、
印刷データを格納する一時記憶手段と、注釈文字列データを該印刷データに付加する注釈文字列付加手段と、付加した該注釈文字列データを送信する送信手段とを備えたコンピュータ装置と、
該コンピュータ装置と結合されており、該コンピュータ装置から受信した該印刷データを印刷する画像形成装置と、
を有する画像形成システムであって、
該注釈文字列付加手段は、
該印刷データに基づいてその描画領域を主描画領域として計算し、且つ該注釈文字列データに基づいてその描画領域を副描画領域として計算し、
該主描画領域と該副描画領域とが互いに重複するか否かを判定し、且つ該副描画領域の全部又は一部が有効印字領域外にはみ出すか否かを判定し、
これらの判定で少なくとも一方が肯定判定された場合に、該主描画領域と該副描画領域とが重複しないように、且つ該副描画領域の全部が該有効印字領域内に入るように、該注釈文字列データを変更して注釈文字列を移動又は縮小し、
変更した該注釈文字列データを該印刷データに付加することを特徴とした画像形成システム。
【発明の効果】
【0017】
上記第1態様の構成によれば、印刷データの描画領域(主描画領域)と注釈文字列データの描画領域(副描画領域)とが互いに重複しないように、且つ副描画領域の全部が印刷用紙の有効印字領域内に入るように、印刷用プログラムが注釈文字列データを変更して注釈文字列を移動又は縮小するので、本文の印刷サイズを縮小することなく、本文及び注釈文字列の情報が損なわれることを防止することができるという効果を奏する。
【0018】
上記第2態様の構成によれば、複数の注釈文字列が存在する場合に、複数の副描画領域が互いに重複しないように、印刷用プログラムが注釈文字列データを変更して注釈文字列を移動又は縮小するので、注釈文字列の情報が損なわれることを防止することができるという効果を奏する。また、複数の注釈文字列が存在する場合又は注釈文字列に入力手段から入力されるユーザ任意の文字列が含まれる場合には、背景技術の欄で説明した問題点が生ずる可能性が高まるが、この構成により該問題点を解決することができる。
【0019】
上記第4態様の構成によれば、印刷用プログラムが、印刷倍率情報を考慮して主描画領域及び副描画領域を計算するので、印刷倍率情報に基づき注釈文字列が拡大されて注釈文字列の全部又は一部が有効印字領域外にはみ出すことを未然に防ぎ、もって注釈文字列の情報が損なわれることを防止することができる。
【0020】
上記第5態様の構成によれば、コンピュータ装置の入力手段から入力される印刷倍率情報が、描画対象領域の拡大を示している場合において、印刷用プログラムが、副描画領域を拡大することなく主描画領域のみを拡大するように、印刷データに対して拡大処理するので、印刷倍率情報に基づき注釈文字列が拡大されて注釈文字列の全部又は一部が有効印字領域外にはみ出すことを未然に防ぎ、もって注釈文字列の情報が損なわれることを防止することができる。
【0021】
本発明の他の目的、構成及び効果は以下の説明から明らかになる。
【実施例1】
【0022】
図9は、本発明の実施例1に係る画像形成システムのハードウェア構成を示す概略ブロック図である。
【0023】
この画像形成システムは、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ1と、プリンタ2とから構築される。このプリンタ2はPDL対応プリンタであり、プリンタドライバ20によりPDL言語に変換された印刷データをプリンタ2側でビットマップデータに展開して印字する方式を採用している。
【0024】
コンピュータ1では、CPU10にインターフェース11を介して、RAM12、ROM13、HDD14、キーボードやポインティングデバイスなどの対話型入力装置15、表示装置16及びUSBポートやパラレルポートなどの通信ポート17が結合されている。図9では、簡単化のため、複数のインターフェースを1つのブロックで示している。通信ポート17は、ケーブル又は無線の通信媒体を介してプリンタ2に結合されている。
【0025】
RAM12は、主メモリ用である。ROM13には、ブートストラップ及びBIOSが格納されている。HDD14には、オペレーティングシステム(OS)、アプリケーションプログラム、注釈文字列データ18を含むドライバ設定データ及び本発明に係わるプリンタドライバ20を含む各種デバイスドライバが格納されている。このプリンタドライバ20は、印刷データを制御する機能を有するデータ制御モジュール21、印刷データの記述言語をプリンタ2が解釈可能な言語に変換する機能を有するデータ変換モジュール22、及び、本発明に係わる、ヘッダー又はフッター等の注釈文字列データ18のレイアウトを変更する機能を有する注釈文字列レイアウト変更モジュール23を備えている。また、アプリケーションプログラムには、文書や画像等を印刷する機能を有したアプリケーションプログラム24が含まれる。例えば、文書作成ソフト、表計算ソフト、画像ソフト、Webブラウザ等がこれに該当する。
【0026】
なお、プリンタドライバ20単体又は注釈文字列レイアウト変更モジュール23単体は、通常、コンピュータ1が読み取り可能なプログラム記録媒体、例えばフロッピーディスク([フロッピー]は登録商標)、又は、CD−ROM等に記録されており、この記録媒体から読み出されて、HDD14にインストールされる。或いは、他のコンピュータ(サーバ等)の記録媒体に記録されており、LANやインターネット等の通信回線を介してインストールされる。
【0027】
以下に、アプリケーションプログラム24が起動している場合において、ヘッダー又はフッター等の注釈文字列の設定を行い、注釈文字列レイアウト変更モジュール23を利用することにより注釈文字列データ18のレイアウトを変更し、アプリケーションプログラム24により表示装置16の画面上に表示されている内容を用紙に印刷する流れを説明する。
【0028】
アプリケーション24上のメニューバーに表示される印刷メニューがユーザにより押下されると、図2に示すような印刷ダイアログボックス30が表示される。ユーザが、使用するプリンタ名を選択し、詳細設定ボタン31を押下すると、プリンタドライバ20の設定ルーチンが呼び出されて、図3に示すような、選択されたプリンタ名に対応する印刷設定ダイアログボックス32が表示装置16の画面上に表示される。ここで、印刷設定ダイアログボックス32はアプリケーション24によりプリンタドライバ20を介し表示され、このボックスに関する各処理は、プリンタドライバ20がCPU10に対して実行させるものである。次に、印刷設定ダイアログボックス32内のヘッダー/フッター印刷ボタン33を押下すると、図4に示すようなヘッダー/フッター印刷ダイアログボックス40が表示される。
【0029】
このヘッダー/フッター印刷ダイアログボックス40では、ユーザ名、コンピュータ名、ページ番号、日付又はユーザ指定の注釈文字列を、ヘッダー又はフッターとして印刷データに付加するか否か及びその位置をそれらに対応する選択ボックス41〜45から選択できる。具体的には、図4に示すように選択ボックス41〜45からは、「しない」、「左上」46、「中央上」47、「右上」48、「左下」49、「中央下」50、又は、「右下」51が選択できる。これらは、図6に示す用紙上の位置を指す。
【0030】
また、このヘッダー/フッター印刷ダイアログボックス40では、日付の注釈文字列データ18を印刷データに付加する場合に、時刻の文字列をその注釈文字列の後に追加するか否かを、チェックボックス52により選択できる。さらに、ユーザ任意の注釈文字列を入力ボックス53へ入力することにより印刷データに追加することができる。さらにまた、注釈文字列の書式設定に関する「フォント」、「サイズ」、「スタイル」、及び、「色」を、それぞれ選択ボックス54〜57から選択することができる。
【0031】
本実施例1では、ヘッダー/フッター印刷ダイアログボックス40内に表示されている「コンピュータ名を印刷」に対応する選択ボックス42のリストから「左上」46を選択し、「日付を印刷」に対応する選択ボックス44のリストから「左下」49を選択し、「文字列を印刷」に対応する選択ボックス45から「右下」51を選択するものとし、「文字列を印刷」に対応する入力ボックス53には、メールアドレスを記入するものとする。また、図4に示している他の設定は、デフォルト設定を使用するものとする。
【0032】
上記のようにヘッダー/フッターの設定を行った後、図4に示すOKボタン58が押下された場合、この設定内容が注釈文字列データ18としてHDD14に格納されているドライバ設定データ内で確定し、ヘッダー/フッター印刷ダイアログボックス40が閉じられ、同時に図3に示す印刷設定ダイアログボックス32がアクティブになる。
【0033】
印刷設定ダイアログボックス32内のOKボタン60が押下されると、ドライバ設定データ内の他の印刷設定情報、例えば用紙情報及びレイアウト情報などが確定され、このダイアログボックス32が閉じられ、同時に図2に示す印刷ダイアログボックス30がアクティブになる。
【0034】
この印刷ダイアログボックス30内の印刷ボタン61を押下すると、注釈文字列データ18が印刷データに付加されて、用紙にそのデータの内容が形成される。
【0035】
ここで、印刷データに付加されるデータをヘッダー又はフッターデータと表現せず、注釈文字列データ18と表現する理由は、後述のように注釈文字列レイアウト変更モジュール23がヘッダー又はフッターとしての注釈文字列を移動等するため、ヘッダー又はフッターという概念の領域を越えた位置に文字列が付加される場合が生ずるからである。
【0036】
以下に、印刷ボタン61が押下され、用紙に印刷データの内容が形成されるまでの流れを、図1に示す機能ブロック図を用いて説明する。この機能ブロック図は、画像形成システムの本発明に関係した機能部分のみを示している。
【0037】
アプリケーション24は、ユーザによる印刷ボタン61の押下を受け付けると、アプリケーション24で作成した文章データに対応してGDI100の関数を呼び出すとともに、文書データを該関数に引き渡す(文書データをGDI描画コマンドに変換する)。
【0038】
GDI100の関数は、GDI描画コマンドをプリンタドライバ20が解釈可能な描画コマンド(DDIコマンド)に変換し、これをEMF(Enhanced Meta File)ファイル101として、RAM12上又はHDD14上のスプール領域に格納する。
【0039】
プリントスプーラ102は、プリンタ2が印刷可能になったか否かをバックグラウンド処理で確認しており、印刷可能になったときに、スプール領域に格納されているEMFファイル101の内容をプリンタドライバ20に順次引き渡す。
【0040】
プリンタドライバ20は、これに応答して、ドライバ内にあるデータ制御モジュール21を呼び出す。
【0041】
データ制御モジュール21は、これに応答して、プリントスプーラ102から順次受け取る印刷データをデータ変換モジュール22に渡すとともに、そのデータの命令文が改ページであるか否かを判定する。肯定判定した場合には、ドライバ設定データを読み出して、そのデータ内に注釈文字列データ18があるか否かを更に判定し、注釈文字列データ18がある場合には、改ページ命令のデータを渡す前に、注釈文字列レイアウト変更モジュール23を呼び出す。
【0042】
注釈文字列レイアウト変更モジュール23は、これに応答して、EMFファイル101を解釈し、後述のように所定の条件の場合に注釈文字列データ18のレイアウトを変更して、そのデータをデータ制御モジュール21に渡す。
【0043】
データ制御モジュール21は、これに応答して、印刷データを受け取った場合と同様に、その注釈文字列データ18をデータ変換モジュール22に渡し、次に改ページ命令のデータを渡す。このことにより、注釈文字列データ18が改ページ命令の前までの印刷データに付加されることになる。その後、プリントスプーラ102から順次受け取る残ページの印刷データについても上記と同一の処理を繰り返す。
【0044】
ここで、例えば本文の印刷データのみに基づいた印刷結果が図7(A)に示すような場合、注釈文字列データ18を変更せずに印刷すると、図7(B)に示すような印刷結果となり、印刷データの描画領域(主描画領域)と注釈文字列データ18の描画領域(副描画領域)とが互いに重複し、さらに複数の副描画領域が互いに重複する。なお、図7(B)及び図7(C)に示している符号42a、44a、45aは、それぞれコンピュータ名、日付、メールアドレスの注釈文字列を指している。
【0045】
また、対話型入力装置15から入力される印刷倍率情報が、描画対象領域の拡大を示している場合に、注釈文字列データ18を変更せずに印刷すると、図8(A)に示すような印刷結果となり、副描画領域の全部又は一部が有効印字領域62外にはみ出す。なお、図8(A)内のコンピュータ名42aの一部である'st−comp'、並びに、日付44aの全部'日付:2006年10月6日'及びメールアドレス45aの全部'○○○○○○@co.jp'は実際には印刷されないが、説明のために示している。
【0046】
上記問題点を解決するために、本発明の要部である注釈文字列レイアウト変更モジュール23は、EMFファイル101に含まれる1ページ分の印刷データの主描画領域と副描画領域とが互いに重複しないように、複数の注釈文字列データ18の描画領域が互いに重複しないように、且つ注釈文字列データ18の描画領域の全部が印刷用紙の有効印字領域62内に入るように、注釈文字列データ18が示す位置座標又はフォントサイズを変更して注釈文字列を移動又は縮小する。
【0047】
データ変換モジュール22は、データ制御モジュール21から受け取ったデータをプリンタ2が解釈可能なPDL言語に変換し、それをRAWデータとしてプリントスプーラ102に渡す。
【0048】
プリントスプーラ102は、上記RAWデータを、インターフェース11と通信ポート17を介してプリンタ2に送信する。
【0049】
プリンタ2は、プリントスプーラ102から順次受信するRAWデータを解釈し、1ページ分の各レイヤー(注釈文字列のレイヤーを含む)の印刷データをビットマップデータに展開し、合成する。その後、合成したデータに基づいてプリントエンジンの感光ドラムに静電潜像を形成し、これをトナーで現像し、用紙に転写し定着させた後に排紙する。
【0050】
図5は、注釈文字列レイアウト変更モジュール23に従ってCPU10が行う処理を示すフローチャートである。以下、括弧内は図5中のステップ識別符号である。
【0051】
(S1)EMFファイル101から、文字や画像の位置情報及び書式情報等の描画情報、並びに、用紙サイズ情報、印刷倍率情報及びレイアウト情報等の印刷設定情報を含んだ上記改ページ命令前の1ページ分の印刷データを取得する。
【0052】
(S2)文字情報、並びにその位置情報及び書式情報等の描画情報を含んだ注釈文字列データ18を取得する。
【0053】
(S3)注釈文字列の付加数分だけ、以下のステップS4からステップS12までの処理を繰り返す。
【0054】
(S4)EMFファイル101から取得した1ページ分の印刷データに基づいてその印刷データの描画領域を計算し、それを主描画領域としてRAM12に格納するとともに、注釈文字列データ18に基づいてその注釈文字列データ18の描画領域を計算し、それを副描画領域としてRAM12に格納する。なお、計算される描画領域は、例えば文字列、ベクトル図形及びイメージの各描画オブジェクトを矩形領域で近似した領域である。また、対話型入力装置15から入力される印刷倍率情報が対話型入力装置15から入力されている場合には、その倍率を考慮に入れて主描画領域及び副描画領域の矩形領域を計算する。
【0055】
(S5)図形論理積演算を行うことにより、主描画領域と副描画領域とが互いに重複するか否かを判定し、複数の副描画領域が互いに重複するか否かを判定し、且つ副描画領域の全部又は一部が有効印字領域62外にはみ出すか否かを判定する。重複すると判定した場合、又は、はみ出すと判定した場合は次の処理へ進み、そうでない場合は、ステップS11の処理へ進む。
【0056】
(S6)注釈文字列データ18が示す注釈文字列の位置座標、例えばその文字列の矩形枠の左上頂点座標を有効印字領域62内で変更して、注釈文字列を移動する。ここで、移動方法はいかなる態様であってもよいが、本実施例1では、最初に設定された位置座標(図6参照)から例えば1mmピッチでこの位置に応じて上下左右の予め定めた順番で注釈文字列の移動を行っていくものとする。
【0057】
(S7)注釈文字列の位置座標を有効印字領域62内の全ての範囲で変更したか否かを判定する。全ての範囲で変更したと判定した場合、次の処理へ進み、そうでない場合はステップS4の処理へ戻る。
【0058】
(S8)注釈文字列データ18が示すフォントサイズを例えば1ポイント小さく変更して、注釈文字列を縮小する。
【0059】
(S9)フォントサイズが許容サイズか否かを判定する。フォントサイズが許容サイズ、つまり下限サイズ以上であると判定した場合は、ステップS4の処理へ戻り、そうでない場合は、次の処理へ進む。
【0060】
(S10)注釈文字列データ18を該当するページの印刷データに付加できない旨を表示装置16の画面上に表示し、ステップS12の処理へ進む。
【0061】
(S11)1つの注釈文字列に関する注釈文字列データ18内のレイアウト情報を確定する。
【0062】
(S13)注釈文字列データ18をデータ制御モジュール21に渡して、データ制御モジュール21により、そのデータは、印刷データを受け取った場合と同様に、データ変換モジュール22に渡され、その後更に、改ページ命令のデータが渡される。このことにより、注釈文字列データ18が改ページ前の印刷データに付加されることになる。
【0063】
本実施例1では、主描画領域と副描画領域とが互いに重複しないように、且つ副描画領域の全部が印刷用紙の有効印字領域62内に入るように、注釈文字列レイアウト変更モジュール23が注釈文字列データ18の示す位置座標又はフォントサイズを変更してプリンタ2によって印刷される注釈文字列を移動又は縮小するので、本文の印刷サイズを縮小することなく、本文及び注釈文字列の情報が損なわれることを防止することができるという効果を奏する。
【0064】
また、複数の注釈文字列を付加する際は、複数の副描画領域が互いに重複しないように、注釈文字列データ18が示す注釈文字列の位置座標又はフォントサイズを変更して注釈文字列を移動又は縮小するので、注釈文字列の情報が損なわれることを防止することができるという効果を奏する。なお、複数の注釈文字列が存在する場合や注釈文字列データ18の中にユーザによる任意の文字列を含む場合には、背景技術の欄で説明した問題点が生ずる可能性が高まるが、この構成により該問題点を解決することができる。
【実施例2】
【0065】
実施例2では、印刷データをEMF形式ではなく、RAW形式でスプールする画像形成システムにおいて、本発明に係わる機能構成を説明する。
【0066】
図10は、本発明の実施例2に係る画像形成システムのシステム概略ブロック図である。
【0067】
実施例1と同様に印刷ダイアログボックス30、印刷設定ダイアログボックス32及びヘッダー/フッター印刷ダイアログボックス40において印刷設定がされた後、図2に示す印刷ボタン61が押下される。この押下後、用紙に印刷データの内容が形成されるまでの流れを、図10に示す機能ブロック図を用いて以下に説明する。
【0068】
アプリケーション24は、ユーザによる印刷ボタン61の押下を受け付けると、アプリケーション24で作成した文章データに対応してGDI100の関数を呼び出すとともに、文書データを該関数に引き渡す(文書データをGDI描画コマンドに変換する)。
【0069】
GDI100の関数は、GDI描画コマンドをプリンタドライバ20が解釈可能な描画コマンド(DDIコマンド)に変換し、そのコマンドデータをプリンタドライバ20に順次引き渡す。
【0070】
プリンタドライバ20は、これに応答して、ドライバ内にあるデータ制御モジュール21を呼び出す。
【0071】
データ制御モジュール21は、これに応答して、データ変換モジュール22に、上記変換されて順次受け取るコマンドデータを印刷データとして渡すとともに、そのデータをページバッファ103に格納する。また、データ変換モジュール22に上記データを渡す際に、そのデータの命令文が改ページであるか否かを判定する。肯定判定した場合には、ドライバ設定データを読み出して、そのデータ内に注釈文字列データ18があるか否かを更に判定し、注釈文字列データ18がある場合には、改ページ命令のデータを渡す前に、注釈文字列レイアウト変更モジュール23を呼び出す。
【0072】
注釈文字列レイアウト変更モジュール23は、これに応答して、ページバッファに格納される1ページ分の印刷データを解釈し、上記実施例1と同様に、所定の条件の場合に注釈文字列データ18のレイアウトを変更して、そのデータをデータ制御モジュール21に渡す。
【0073】
データ制御モジュール21は、これに応答して、印刷データを受け取った場合と同様に、その注釈文字列データ18をデータ変換モジュール22に渡し、次に改ページ命令のデータを渡す。このことにより、注釈文字列データ18が改ページ命令の前までの印刷データに付加されることになる。その後、改ページ命令の後にGDI関数100から順次受け取る残ページの印刷データについても上記と同一の処理を繰り返す。
【0074】
データ変換モジュール22は、データ制御モジュール21から受け取ったデータをプリンタ2が解釈可能なPDL言語に変換し、それをRAWファイル101Aとして、RAM12上又はHDD14上のスプール領域に格納する。
【0075】
プリントスプーラ102は、プリンタ2が印刷可能になったか否かをバックグラウンド処理で確認しており、印刷可能になったときに、スプール領域に格納されている上記RAWファイル101Aを、インターフェース11と通信ポート17を介してプリンタ2に送信する。
【0076】
プリンタ2は、プリントスプーラ102から受信するRAWファイル101Aを解釈し、それに含まれる1ページ分の各レイヤー(注釈文字列のレイヤーを含む)の印刷データをビットマップデータに展開し、合成する。その後、合成したデータに基づいてプリントエンジンの感光ドラムに静電潜像を形成し、これをトナーで現像し、用紙に転写し定着させた後に排紙する。
【0077】
なお、本発明の実施例1又は2には他にも種々の変形例が含まれる。
【0078】
例えば、プリンタ2は、プリント機能を備えたものであればよく、例えば複合機の一部であってもよい。
【0079】
また、通信ポート17は、USBポートやパラレルポートに限定されるものではなく、シリアルポートやSCSIポート等の通信を行うためのポートであればよい。
【0080】
さらに、プリンタドライバ20の記録媒体は、HDD14、フロッピーディスク([フロッピー]は登録商標)、CD−ROM、又は、サーバのHDDに限定されるものではなく、外付けの外部HDD、フラッシュメモリ、MD、SDカード、又は、CFカードであってもよい。
【0081】
さらにまた、上記実施例では、上記注釈文字列レイアウト変更モジュール20が、コンピュータ1のCPU10に対して処理を行わせる構成を説明したが、注釈文字列レイアウト変更モジュール20がプリンタ2のHDDに格納され、プリンタ2のCPUに対して処理を行わせる構成であってもよい。
【0082】
また、上記実施例で説明した図1又は図10に示す機能ブロック図は、OSがWindows(登録商標)を前提とした一態様に過ぎず、Windowsを前提とした他の態様であってもよく、また他のOS、例えばLinux(登録商標)を前提とした他の態様であってもよい。
【0083】
さらに、上記実施例1では、印刷データをEMF形式でスプールし、上記実施例2では、RAW形式でスプールする画像形成システムの構成を説明したが、印刷データをスプールしない構成であってもよい。
【0084】
さらにまた、プリンタ2がPDL対応プリンタである場合を説明したが、プリンタ2がホストベースプリンタ(ダムプリンタ)であってもよい。その場合は、実施例と異なり、プリンタ2が印刷データと注釈文字列データとを合成せず、プリンタドライバ20がビットマップ展開をした後に、それらを合成する。なお、この場合、ビットマップ展開をした後に、注釈文字列レイアウト変更モジュール23を使用して、注釈文字列の移動等をする構成であってもよい。
【0085】
また、図5に示すフローチャートは、注釈文字列レイアウト変更モジュール23の処理の一態様に過ぎず、特に移動処理と縮小処理の順番は問わない。
【0086】
さらに、対話型入力装置15から入力される印刷倍率情報が、描画対象領域の拡大を示している場合に、副描画領域を拡大することなく主描画領域のみを拡大するように、主描画領域及び副描画領域を計算する前に注釈文字列レイアウト変更モジュール23が印刷データに対して拡大処理をする構成を備えていてもよい。
【0087】
さらにまた、上記実施例では、プリンタドライバ20が、データ制御モジュール21、データ変換モジュール22及び注釈文字列レイアウト変更モジュール23を有し、それぞれのモジュールが各処理を行う構成を説明したが、プリンタドライバ20や他のモジュール等の印刷用プログラムが、当該各処理の全部又は一部を行う構成であってもよい。
【実施例3】
【0088】
上述の実施例1又は2では、注釈文字列を移動又は縮小することにより、発明が解決しようとする課題の欄で説明した問題点を解決したが、この構成では、注釈文字列が長すぎると、過度に移動又は縮小されて、その文字列を認識することが困難になってしまう場合が生ずる。
【0089】
よって、本実施例3では、注釈文字列レイアウト変更モジュール23が印刷される注釈文字列を二段に分割することにより、その視認性を確保する構成を説明する。
【0090】
以下、注釈文字列レイアウト変更モジュール23が注釈文字列を二段分割する方法を説明する。
【0091】
本実施例3に係わる画像形成システムのハードウェア構成及びシステム構成は、実施例1で説明したものと同一である。
【0092】
図11は、本実施例3に係わる注釈文字列レイアウト変更モジュール23に従ってCPU10が行う処理を示すフローチャートである。括弧内は図11中のステップ識別符号である。
【0093】
(S20〜S23)実施例1で説明した図5中のステップS1〜S4と同様の処理を行う。
【0094】
(S24)図形論理積演算を行うことにより、主描画領域と副描画領域とが互いに重複するか否かを判定し、複数の副描画領域が互いに重複するか否かを判定し、且つ副描画領域の全部又は一部が有効印字領域62外にはみ出すか否かを判定する。重複すると判定した場合、又は、はみ出すと判定した場合は次の処理へ進み、そうでない場合は、ステップS30の処理へ進む。
【0095】
(S25)実施例1で説明した図5中のステップS6と同様に注釈文字列の位置座標を変更して、印刷される注釈文字列を移動する。
【0096】
(S26)注釈文字列の位置座標を有効印字領域62内の全ての範囲で変更したか否かを判定する。全ての範囲で変更したと判定した場合、次の処理へ進み、そうでない場合はステップS23の処理へ戻る。
【0097】
(S27)注釈文字列データ18が示す注釈文字列が既に二段分割されているか否かを判定する。二段分割されていると判定した場合はステップS29の処理へ進み、そうでない場合は次の処理へ進む。
【0098】
(S28)注釈文字列データ18が示す注釈文字列を二段に分割し、ステップS23の処理へ戻る。ここで、分割方法はいかなる態様であってもよいが、本実施例3では、例えば注釈文字列を前部と後部の半分に分割して、後部が前部の次段に配置されるように注釈文字列データ18を変更する。なお、半角文字、全角文字はともに1文字として数えるものとし、文字数が半分に割り切れない場合(注釈文字列を半分に分割できない場合)は、前部文字数が後部文字数より1つ多くなるように分割する。
【0099】
(S29〜32)実施例1で説明した図5中のステップS10〜S13と同様の処理を行う。
【0100】
プリンタ2に対して注釈文字列データ18を付加した印刷データを用紙に印刷させると、本来図7(B)に示すような印刷結果が得られるが、以上の構成により図12に示すような印刷結果が得られる。
【0101】
他の点は、実施例1と同一である。
【0102】
本実施例3では、主描画領域と副描画領域とが互いに重複しないように、且つ副描画領域の全部が印刷用紙の有効印字領域62内に入るように、また注釈文字列が複数存在する場合にはさらに、複数の副描画領域が互いに重複しないように、注釈文字列データを変更して注釈文字列を移動し、移動しても重複又ははみ出す場合には二段に分割するので、本文の印刷サイズを縮小することなく、本文及び注釈文字列の情報が損なわれることを防止することができるという効果を奏する。
【0103】
なお、本実施例3には他にも種々の変形例が含まれる。
【0104】
例えば、図11に示すステップS29の前に、実施例1で説明した図5中のステップS8及びステップS9のような注釈文字列を縮小するステップを追加してもよい。
【0105】
さらに、図11に示すフローチャートは、注釈文字列レイアウト変更モジュール23の処理の一態様に過ぎず、特に移動処理と分割処理の順番は問わない。
【実施例4】
【0106】
図13(A)は、実施例1に係わる注釈文字列レイアウト変更モジュール23が、1ページごとの印刷データの描画領域(主描画領域)に対して注釈文字列を移動又は縮小した印刷結果である。なお、図中の斜線領域は、主描画領域を表す。
【0107】
図13(A)に示すように実施例1では、1ページごとの主描画領域に対して注釈文字列を移動又は縮小するので、EMFファイル101に複数ページの印刷データが含まれる場合(印刷文書が複数のページからなる場合)、全ページにわたって注釈文字列の位置やサイズが異なる結果となる。また、実施例2及び3の発明においても同様である。
【0108】
よって、本実施例4では、注釈文字列レイアウト変更モジュール23が全ページを重ねて印刷した場合の描画領域を主描画領域として計算することで、注釈文字列の位置やサイズに統一感を持たせる構成を説明する。ここで、全ページを重ねて印刷した場合の描画領域とは、例えば図13(B)に示す斜線領域を指す。当該図は、図13(A)に示している全ページを重ねて印刷した場合の描画領域を示す図である。
【0109】
以下、本実施例4に係わる注釈文字列レイアウト変更モジュール23に応じてCPU10が行う処理を図5のフローチャートを用いて説明する。なお、本実施例4ではEMFファイル101に複数ページからなる印刷データが含まれているものとする。
【0110】
(S1)EMFファイル101、すなわち全ページ分の印刷データを取得する。
【0111】
(S2)文字情報、並びにその位置情報及び書式情報等の描画情報を含んだ注釈文字列データ18を取得する。
【0112】
(S3)注釈文字列の付加数分だけ、以下のステップS4からステップS12までの処理を繰り返す。
【0113】
(S4)取得したEMFファイル101に基づいて、図13(A)に示すような各ページそれぞれの印刷データの描画領域を計算し、これら全ての描画領域の図形論理和を求めて、それを主描画領域{図13(B)に示す斜線領域}としてRAM12に格納する。さらに、注釈文字列データ18に基づいてその注釈文字列データ18の描画領域を計算し、それを副描画領域としてRAM12に格納する。なお、計算される描画領域は、例えば文字列、ベクトル図形及びイメージの各描画オブジェクトを矩形領域で近似した領域である。また、対話型入力装置15から入力される印刷倍率情報が対話型入力装置15から入力されている場合には、その倍率を考慮に入れて主描画領域及び副描画領域の矩形領域を計算する。
【0114】
(S5)図形論理積演算を行うことにより、主描画領域と副描画領域とが互いに重複するか否かを判定し、複数の副描画領域が互いに重複するか否かを判定し、且つ副描画領域の全部又は一部が有効印字領域62外にはみ出すか否かを判定する。重複すると判定した場合、又は、はみ出すと判定した場合は次の処理へ進み、そうでない場合は、ステップS11の処理へ進む。
【0115】
(S6〜S13)実施例1で説明した処理と同様の処理を行う。
【0116】
なお、主描画領域と副描画領域とが互いに重複等する場合には、印刷データに含まれる最初の改ページ命令においてデータ制御モジュール21により呼び出された時に、注釈文字列レイアウト変更モジュール23が注釈文字列データ18を変更するが、それ以降の改ページ命令において呼び出された時は、全ページを重ねて印刷した場合の描画領域と注釈文字列の描画領域とが互いに重ならないよう等、最初に呼び出された際に注釈文字列データ18を既に変更しているので、注釈文字列データ18を最初に変更した後、更に変更することはない。即ち、図5に示すフローチャートが実行されて注釈文字列データ18が変更された後、更にそのフローチャートが実行された場合、図5に示すステップS5において肯定判定されることはない。よって、全ページにわたって同一の注釈文字列データ18を使用することができ、注釈文字列の位置やサイズが統一される。
【0117】
以上の処理により、本来図13(A)に示すような印刷結果であるところから、注釈文字列データ18を変更し、全ページにわたって注釈文字列の位置やサイズを統一すると、図14に示すような印刷結果が得られる。しかしながら、全ページを重ねて印刷した場合の描画領域(主描画領域)は、1ページごとの印刷データの描画領域に比べて広くなる可能性が高いので、主描画領域に重ならないように注釈文字列が過度に移動又は縮小されるおそれがある。よって、本実施例4では、図15に示すように、ヘッダー/フッター印刷ダイアログボックス40a内のチェックボックス200から全ページにわたって注釈文字列の位置やサイズを統一させるか否かを選択することができる。ここで、注釈文字列レイアウト変更モジュール23は、チェックがある場合には全ページを重ねて印刷した場合の描画領域を主描画領域として計算し、チェックがない場合には一ページ分の印刷データの描画領域を主描画領域として計算する。
【0118】
他の点は、実施例1と同一である。
【0119】
なお、本実施例4に係わる上記発明を実施例3で説明した図11に示すフローチャートに適用してもよい。
【0120】
本実施例4では、全ページを重ねて印刷した場合の描画領域(主描画領域)と注釈文字列データ18の描画領域(副描画領域)とが互いに重複しないように、且つ副描画領域の全部が印刷用紙の有効印字領域62内に入るように、また注釈文字列が複数存在する場合にはさらに、複数の副描画領域が互いに重複しないように、注釈文字列データ18を変更して注釈文字列を移動、縮小又は二段分割するので、全ページにわたる注釈文字列の位置やサイズの統一感が失われることなく、且つ本文の印刷サイズを縮小することなく、本文及び注釈文字列の情報が損なわれることを防止することができるという効果を奏する。
【実施例5】
【0121】
前述の実施例1〜4では、注釈文字列レイアウト変更モジュール23がCPU10に対して、有効印字領域62内で注釈文字列を移動させる構成を説明したが、注釈文字列を移動させた結果、図4又は図15に示す選択ボックス41〜45において選択した印刷位置からユーザの想定を超えた場所に注釈文字列が付加されてユーザの意図しない印刷結果を得ることになる場合がある{図8(B)又は図12参照}。
【0122】
よって、本実施例5では、注釈文字列の移動範囲を、ユーザが指定した印刷位置に対応する許容領域に限定して、本文及び注釈文字列の情報が損なわれることを防止するとともに、ユーザの意図しない印刷結果を得ることを防止する構成を述べる。
【0123】
本実施例5に係わる画像形成システムのハードウェア構成及びシステム構成は、実施例1で説明したものと同一である。
【0124】
図16は、ユーザが指定した位置に対応する許容領域を示す図である。本実施例5では、図4に示す選択ボックス41〜45から印刷位置「左上」46、「中央上」47、「右上」48、「左下」49、「中央下」50又は「右下」51を選択した場合の、注釈文字列の移動範囲はそれぞれ許容領域300、301、302、303、304又は305に限定される。
【0125】
例えば、印刷位置「左上」46が選択されて、「左上」46に対応する注釈文字列の位置座標情報を注釈文字列データ18が含む場合に、本実施例5に係わる注釈文字列レイアウト変更モジュール23は、CPU10に対し、図5に示す処理を行わせる。ただし、ステップS7では、注釈文字列の位置座標、例えば注釈文字列を含む矩形の左上頂点座標を印刷位置「左上」46に対応する許容領域300内において1mmピッチで変更させ、ステップS8では、該領域内の全範囲にわたって位置座標を変更したか否かを判定させる。
【0126】
本実施例5では、注釈文字列の移動範囲を、ユーザが選択した印刷位置の許容領域に限定するので、本文及び注釈文字列の情報が損なわれることを防止するとともに、ユーザの意図しない印刷結果を得ることを防止することができるという効果を奏する。
【0127】
なお、本実施例5には他にも種々の変形例が含まれる。
【0128】
前述した位置座標の変更範囲は一例に過ぎず、例えば選択ボックス41〜45から印刷位置「左上」46が選択された場合には、許容領域300、301及び302を含んだ許容領域内で位置座標を変更するようにしてもよい。
【0129】
また、実施例5に係わる発明は、実施例1に係わる発明に適用されるだけでなく、他の全ての実施例に係わる発明に適用可能である。
【実施例6】
【0130】
前述の実施例1〜5では、図4又は図15に示す選択ボックス41〜45から複数の注釈文字列が指定されて印刷された際、そのうちの少なくとも一つの注釈文字列と、本文や他の注釈文字列とが重複しない領域がなくなり、その注釈文字列の情報が損なわれる場合がある。
【0131】
本実施例6では、実施例1において、前記ケースによりユーザにとってより重要な注釈文字列の情報が損なわれることを防止する構成を説明する。
【0132】
本実施例6に係わる画像形成システムのハードウェア構成及びシステム構成は、実施例1で説明したものと同一である。
【0133】
図17は、本実施例6に係わるヘッダー/フッター印刷ダイアログボックス40bを表す図である。
【0134】
このヘッダー/フッター印刷ダイアログボックス40b内には、注釈文字列の種類と選択ボックス41〜45との間に、選択ボックス310〜314が設けられている。この選択ボックス310〜314からは、各注釈文字列の移動優先順位を選択することができ、OKボタン58が押下されると、選択した内容は注釈文字列データ18の一部として確定される。ここで、選択ボックス310〜314はそれぞれ独立しているので、注釈文字列間で移動優先順位が重複する場合がある。そのような場合には、OKボタン58の押下により注釈文字列データ18が確定される際に、注釈文字列間で移動優先順位が重複しないように、該順位を変更する。例えば、図17に示すヘッダー/フッター印刷ダイアログボックス40bにおいて、移動優先順位が重複する注釈文字列の中で他の注釈文字列より上方に位置する注釈文字列の移動優先順位を先に確定し、他の注釈文字列の同一移動優先順位を繰り下げる。
【0135】
本実施例6に係わる注釈文字列レイアウト変更モジュール23は、CPU10に対して、図5に示す処理を行わせる。ただし、ステップS4〜S11までの処理は、この移動優先順位の高い注釈文字列データ18から先に行わせる。
【0136】
本実施例6では、注釈文字列の移動優先順位をユーザにより選択させることで、本文や他の注釈文字列と重複しない領域がなくなり、ユーザにとって重要な注釈文字列の情報が損なわれることを防止することができるという効果を奏する。
【0137】
なお、本実施例6に係わる発明は、実施例1に係わる発明に適用されるだけでなく、他の全ての実施例に係わる発明に適用可能である。
【実施例7】
【0138】
前述の実施例1〜6では、注釈文字列データ18が印刷データに付加された後すぐに、プリントスプーラ102によってその印刷データがプリンタ2に送られて、印刷が開始される。よって、印刷が終わるまで、ユーザは注釈文字列データ18が付加された後の印刷内容を確認できず、ユーザの意図しない印刷結果が得られる場合がある。
【0139】
本実施例7では、実施例1において、本文及び注釈文字列の情報が損なわれることを防止するとともに、ユーザの意図しない印刷結果を得ることを防止することができる構成を説明する。なお、この構成を備えることで更に、注釈文字列の設定と印刷とを再度行うことを未然に防ぎ、手間と用紙の浪費を削減することができる。
【0140】
本実施例7に係わる画像形成システムのハードウェア構成及びシステム構成は、実施例1で説明したものと同一である。
【0141】
本実施例7に係わる注釈文字列レイアウト変更モジュール23は、CPU10に対して、図5に示す処理を行わせる。ただし、ステップS13においてデータ制御モジュール21の処理に移行させる前に、印刷処理を続行するか否かをユーザに選択させるために、図18に示すような印刷プレビューダイアログボックス320を表示装置16の画面上に表示させる。
【0142】
この印刷プレビューダイアログボックス320には、注釈文字列データ18を含む印刷データの印刷内容を示す印刷プレビュー321と、OKボタン322と、キャンセルボタン323と、が含まれる。ここで、OKボタン322の押下があると、処理は続行(この場合、次ページ以降もOKボタン322が押されたとみなす。)されて、プリンタ2による印刷が開始される。また、キャンセルボタン323の押下があると、処理は中止されて、図4に示すヘッダー/フッター印刷ダイアログボックス40が表示装置16の画面上に表示される。
【0143】
本実施例7では、データ制御モジュール21に処理を渡す前に、前記印刷プレビューダイアログボックス320を表示させ、処理を続行させるか否かをユーザに判断させるので、本文及び注釈文字列の情報が損なわれることを防止するとともに、ユーザの意図しない印刷結果を得ることを防止することができるという効果を奏する。
【0144】
なお、本実施例7には他にも種々の変形例が含まれる。
【0145】
例えば、本実施例7では、1ページ分だけ印刷プレビュー321が表示されることになるが、次ページ以降の印刷プレビュー321も表示されるようにしてもよい。
【0146】
また、注釈文字列レイアウト変更モジュール23が、CPU10に対して、データ制御モジュール21の処理に移行させる前に、印刷プレビューダイアログボックス320を表示させる構成を説明したが、印刷データがプリンタ2に送信される前までに印刷プレビューダイアログボックス320を表示させる構成であればよく、例えば注釈文字列レイアウト変換モジュール23からデータ制御モジュール21の処理に移行させた後且つプリントスプーラ102がプリンタ2へデータを送信する前に、注釈文字列レイアウト変更モジュール23を呼び出させ、印刷プレビューダイアログボックス320を表示させる構成であってもよい。
【0147】
さらに、注釈文字列レイアウト変更モジュール23が、印刷プレビューダイアログボックス320を表示させる構成を説明したが、プリンタドライバ20や他のモジュール等の印刷用プログラムが表示させる構成であってもよい。
【0148】
さらにまた、本実施例7に係わる発明は、実施例1に係わる発明に適用されるだけでなく、他の全ての実施例に係わる発明に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】画像形成システムの本発明に関係した部分を示す機能ブロック図である。
【図2】表示装置の画面上に表示される印刷ダイアログボックスを表した図である。
【図3】表示装置の画面上に表示される印刷設定ダイアログボックスを表した図である。
【図4】表示装置の画面上に表示されるヘッダー/フッター印刷ダイアログボックスを表した図である。
【図5】実施例1又は3に係わる注釈文字列付加モジュールに従ってCPUが行う処理を示すフローチャートである。
【図6】有効印字領域、並びに、ヘッダー及びフッターの始点に関する説明図である。
【図7】(A)は本文の印刷データの印刷結果を示す図であって、(B)は注釈文字列データそのままに基づいて本文の印刷データに注釈文字列を付加した印刷結果を示す図であり、(C)は本文の印刷データと注釈文字列データに基づいて注釈文字列を移動又は縮小した後に本文の印刷データに注釈文字列データを付加した印刷結果を示す図である。
【図8】(A)は印刷倍率情報が描画対象領域の拡大を示している場合に、注釈文字列データを本文の印刷データに変更せずにそのまま付加した印刷結果を示す図であり、(B)は印刷倍率情報が描画対象領域の拡大を示している場合に、本文の印刷データと注釈文字列データに基づいて注釈文字列を移動又は縮小した後に本文の印刷データに注釈文字列データを付加した印刷結果を示す図である。
【図9】本発明の実施例1に係る画像形成システムのハードウェア構成を示す概略ブロック図である。
【図10】本発明の実施例2に係る画像形成システムのシステム概略ブロック図である。
【図11】実施例2に係わる注釈文字列付加モジュールに従ってCPUが行う処理を示すフローチャートである。
【図12】実施例2に係わる発明を適用した印刷結果である。
【図13】(A)は、実施例1に係わる発明を適用した印刷結果である。(B)は、(A)に示している全ページを重ねて印刷した場合の描画領域を示す図である。
【図14】実施例3に係わる発明を適用した印刷結果である。
【図15】実施例3に係わるヘッダー/フッター印刷ダイアログボックスを表した図である。
【図16】ユーザが指定した位置に対応する許容領域を示す図である。
【図17】実施例6に係わるヘッダー/フッター印刷ダイアログボックスを表した図である。
【図18】表示装置の画面上に表示される印刷プレビューダイアログボックスを表した図である。
【符号の説明】
【0150】
1 コンピュータ
2 プリンタ
10 CPU
11 インターフェース
12 RAM
13 ROM
14 HDD
15 対話型入力装置
16 表示装置
17 通信ポート
18 注釈文字列データ
20 プリンタドライバ
21 データ制御モジュール
22 データ変換モジュール
23 注釈文字列レイアウト変更モジュール
24 アプリケーションプログラム
30 印刷ダイアログボックス
31 詳細設定ボタン
32 印刷設定ダイアログボックス
33 ヘッダー/フッター印刷ボタン
40、40a、40b ヘッダー/フッター印刷ダイアログボックス
41〜45 選択ボックス
42a コンピュータ名
44a 日付
45a メールアドレス
46 「左上」
47 「中央上」
48 「右上」
49 「左下」
50 「中央下」
51 「右下」
52 チェックボックス
53 入力ボックス
54〜57 選択ボックス
58 OKボタン
60 OKボタン
61 印刷ボタン
62 有効印字領域
100 GDI
101 EMFファイル
101A RAWファイル
102 プリントスプーラ
103 ページバッファ
200 チェックボックス
300、301、302、303、304、305 許容領域
310〜314 選択ボックス
320 印刷プレビューダイアログボックス
321 印刷プレビュー
322 OKボタン
323 キャンセルボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ装置の一時記憶手段に格納される印刷データに、注釈文字列データを付加することを該コンピュータ装置のプロセッサに実行させる印刷用プログラムにおいて、
該印刷データに基づいてその描画領域を主描画領域として計算し、且つ該注釈文字列データに基づいてその描画領域を副描画領域として計算する第1ステップと、
該主描画領域と該副描画領域とが互いに重複するか否かを判定し、且つ該副描画領域の全部又は一部が有効印字領域外にはみ出すか否かを判定する第2ステップと、
該第2ステップで少なくとも一方が肯定判定された場合に、該主描画領域と該副描画領域とが重複しないように、且つ該副描画領域の全部が該有効印字領域内に入るように、該注釈文字列データを変更して注釈文字列を移動又は縮小する第3ステップと、
変更した該注釈文字列データを該印刷データに付加する第4ステップと、
を該プロセッサに実行させることを特徴とする印刷用プログラム。
【請求項2】
前記注釈文字列は複数存在し、
前記第2ステップでさらに、複数の前記副描画領域が互いに重複するか否かを判定し、肯定判定した場合に前記第3ステップで、該複数の副描画領域が互いに重複しないように、前記注釈文字列データを変更して該注釈文字列を移動又は縮小することを特徴とする請求項1に記載の印刷用プログラム。
【請求項3】
前記注釈文字列は、前記コンピュータ装置の入力手段から入力される文字列を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷用プログラム。
【請求項4】
前記第2ステップで、前記コンピュータ装置の入力手段から入力される印刷倍率情報を考慮して前記主描画領域及び前記副描画領域を計算することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の印刷用プログラム。
【請求項5】
前記コンピュータ装置の入力手段から入力される印刷倍率情報が、描画対象領域の拡大を示している場合に、前記副描画領域を拡大することなく前記主描画領域のみを拡大するように、前記第1ステップの前で前記印刷データに対して拡大処理することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の印刷用プログラム。
【請求項6】
印刷データを格納する一時記憶手段と、注釈文字列データを該印刷データに付加する注釈文字列付加手段と、付加した該注釈文字列データを送信する送信手段とを備えたコンピュータ装置と、
該コンピュータ装置と結合されており、該コンピュータ装置から受信した該印刷データを印刷する画像形成装置と、
を有する画像形成システムであって、
該注釈文字列付加手段は、
該印刷データに基づいてその描画領域を主描画領域として計算し、且つ該注釈文字列データに基づいてその描画領域を副描画領域として計算し、
該主描画領域と該副描画領域とが互いに重複するか否かを判定し、且つ該副描画領域の全部又は一部が有効印字領域外にはみ出すか否かを判定し、
これらの判定で少なくとも一方が肯定判定された場合に、該主描画領域と該副描画領域とが重複しないように、且つ該副描画領域の全部が該有効印字領域内に入るように、該注釈文字列データを変更して注釈文字列を移動又は縮小し、
変更した該注釈文字列データを該印刷データに付加することを特徴とした画像形成システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2008−176386(P2008−176386A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6966(P2007−6966)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】