説明

印刷組版として使用される円筒形感光エレメントの作製方法

【課題】印刷組版として使用される円筒形感光エレメントの作製方法を提供する。
【解決手段】本発明は、印刷組版として使用される円筒形感光エレメントの作製方法を提供する。この方法は、順応性の外面を有するロール上に円筒形支持体の内面を支持するステップ、支持体の周囲に感光層を巻き付けることによって、感光層を円筒形支持体の外面に接触させて、感光層の第二端部を感光層の第一端部に近接した状態にするステップ、感光層を支持体に貼り合わせ、端部同士をシールして支持体上に連続層を形成するステップ、および感光層または支持体または感光層と支持体の両方を加熱するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷組版として使用される、具体的には凸版印刷組版として使用される円筒形感光エレメントの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に包装材料、例えば厚紙、プラスチックフィルムなどの柔軟で変形しやすい表面への印刷に使用されるフレキソ印刷平版がよく知られている。フレキソ印刷平版は、(特許文献1)および(特許文献2)に記載のものなど、光重合性組成物から作製することができる。この光重合性組成物は、一般にエラストマーバインダー、少なくとも1種類のモノマー、および光開始剤を含む。感光エレメントは一般には、支持体と、カバーシートまたは多層カバーエレメントとの間に挿入された光重合性層を有する。化学線に像様に露光すると、重合、したがってその光重合性層の不溶化が露光された領域において起こる。適切な溶媒で処理することにより、フレキソ印刷用に用いることができる印刷レリーフを残して光重合性層の非露光領域を除去する。
【0003】
光重合性材料は、溶液流延、ホットプレス、カレンダ加工、および押出などの幾つかの周知の方法によってシートまたは層の形にすることができる。フレキソ印刷エレメントとして用いられる光重合性材料を形成する好ましい方法は、その光重合性材料を押出カレンダ加工(extrusion calendering)することによるものである。押出カレンダ加工では、熱した光重合性材料の塊を、層を形成する押出ダイに入れ、その層をカレンダのニップに入れ、まだ熱い間にその光重合性材料を2つの平坦な面、一般には2枚の可撓性フィルムの間で圧延して多層ウェブを形成することによって印刷エレメントを作製する。これらフィルムは、多層または複合フィルムを含むことができる。高温での押出およびカレンダ加工の後、この多層ウェブを、例えば送風で冷却する間、張力をかけた状態に保つことができる。この多層ウェブとしての印刷エレメントを適切なサイズのシートに切断することができる。ポリマー組成物の押出およびカレンダ加工は、例えばGruetzmacher他の(特許文献3)に開示されている。
【0004】
一般には光重合性印刷エレメントはシートの形態で使用されるが、印刷エレメントを連続した円筒形態で使用することには特定の用途および利点がある。連続円筒形印刷エレメントは、そのデザインを平版継目のプリントスルーなしに簡単に印刷することができるので、壁紙、装飾および贈答品用の包装紙、ならびに見当合わせ(registration)の厳しい条件における場合などの連続したデザインのフレキソ印刷に用途を有する。さらに、このような連続印刷エレメントはレーザー露光設備に取り付けるのに適しており、ドラムを交換するか、またはレーザーによる露光用のドラム上に取り付けて正確な見当合わせを達成することができる。さらに、多色画像の見当合わせは、印刷機上に円筒形印刷組版を取り付けることによって非常に精度が高まり、かつ容易になる。
【0005】
継目のない連続印刷エレメントの形成は、幾つかの方法によってなし遂げることができる。光重合性フラットシートエレメントは、通常は印刷スリーブ支持体または印刷シリンダ自体である円筒組版の周囲にこのエレメントを巻き付け、次いでその縁部同士を接合するために加熱して、継目のない連続エレメントを形成することにより再処理することができる。平版の縁部を接合して円筒組版にする方法は、例えば(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、および(特許文献8)に開示されている。これらの方法は、巻付けの後にシートを加熱して、シートを、両縁部を接合するための温度に至らしめるので、完全に円筒形印刷エレメントを形成するためには長時間を要する可能性がある。
【0006】
具体的には(特許文献7)には、間の泡および空気の閉じ込めを避けるために、端部および/または横方向領域の重ね合せによる熱可塑加工可能な感光層の端部および/または領域の継目のない堅固な接合について開示されている。層材料全体を加圧下で加熱し、重ね合せられている端部/領域の接合により、連続的に接合された感光層が生ずる。連続的感光エレメントを形成する多くの方法では、その連続的に接合された感光層は、感光性ポリマー層の望ましい厚さの均一性および印刷組版用の表面特性を得るために一般に研削される。
【0007】
さらに感光性樹脂シリンダはまた、シーメックス法(Seamex process)により感光性ポリマー組成物の層からも作られる。シーメックス法は、平版の端部同士を接合するために、熱活性化プライマー塗膜を有するニッケルスリーブに感光性ポリマー材料の層を巻き付けてその材料と接着させることを伴う。このアセンブリ全体をオーブンに入れて硬化し、感光性ポリマー層をプライマー塗膜と接着させ、また感光性ポリマー層の端部を一緒に溶融する。次いでスリーブ上の感光性ポリマー層を必要な厚さまで研削し、きれいに拭き取り、露光中にネガが感光性ポリマーにくっ付かないようにするために保護塗料を吹き付ける。しかしながら、スリーブに感光性ポリマー層を巻き付け、硬化および溶融し、研削し、吹き付けるこの方法は、完遂するのに約1.5から2日を要する。
【0008】
(特許文献9)および(特許文献10)には、サンダー仕上げ、研削、または追加の艶出し仕上げのステップなしに可撓性スリーブ上に均一な厚さの円筒感光エレメントを形成するための装置および工程が開示されている。この方法は、融解した光重合性材料の流れを、マンドレル上に直接支持されたスリーブ上に供給し、スリーブ上で実質的に一定な厚さを有するようにその融解した光重合性材料をカレンダ加工し、そのスリーブを螺旋状にマンドレルの周囲をマンドレルに沿って移動させてエレメントの外面を研摩し、そのカレンダ加工のステップの間に光重合性材料を加熱することを伴う。第一の方式では可撓性スリーブは、空気が可撓性スリーブの回転および軸方向の動きを可能にするような空気潤滑マンドレル上に取り付けられ、融解した光重合性材料の流れがスリーブとカレンダロールの間隙に供給される。第二の方式では可撓性スリーブは、カレンダロールが予め定められたクリアランスでスリーブの周囲に位置決めされた状態にマンドレル上に取り付けられる。スリーブとカレンダロールの間隙に光重合性材料のソリッドシートが供給される。いったんスリーブの周囲に光重合性材料が行きわたると、光重合性材料とカレンダロールの接触によりスリーブが回転することになる。ソリッドシートの計量を可能にするように、カレンダ加工中にシートはそのガラス転移温度超に加熱される。しかしながらこの方法は、印刷工業のニーズに適応するように様々なサイズ(例えば、印刷組版の内径またはリピート長、および幅)を提供するには設備にかなりの資本投資が必要である。
【0009】
(特許文献11)には、可撓性スリーブがスリーブ支持体上に取り付けられた円筒スリーブ上に円筒感光エレメントを形成する方法が開示されている。このスリーブ支持体は、可撓性スリーブ上の融解した光重合性材料から円筒感光層を形成することに伴う高温および/または高圧から可撓性スリーブを隔離する。このスリーブ支持体は、単独で使用することも、またはマンドレルと併用することもできる。このスリーブ支持体は、可撓性スリーブを支えている間、寸法を変化させないように、あるいは形状を歪めまたは変化させないように実質的に剛性かつ熱安定性である。このスリーブ支持体の特定の表面特性については言及されていない。
【0010】
スリーブ上へ巻き付けられた固い感光層の両端部を接合する間に泡が生ずる恐れがある点で問題が起こる場合がある。泡は、連続印刷組版の圧縮性の差の原因となる恐れがあり、印刷中のインク転写の差を引き起こす。感光性ポリマー層とスリーブ支持体との間の泡、または空気の閉じ込めは、感光性ポリマーとスリーブの接着性の低下を引き起こす。印刷中の印刷機上での印圧(impression)は、泡が一層大きくなる原因である可能性があり、その結果、連続印刷組版から一部または全部の感光性ポリマー層が持ち上がる恐れがある。感光性ポリマー層中の泡は、研削後に感光性ポリマー層の外面で目に見える形になる可能性もある。感光性ポリマー層の外面の泡は、印字領域の不均一性の原因となり、ミスプリントおよび/または不満足な印字品質を引き起こす恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,323,637号明細書
【特許文献2】米国特許第4,427,749号明細書
【特許文献3】米国特許第4,427,759号明細書
【特許文献4】独国特許第28 44 426号明細書
【特許文献5】英国特許第1 579 817号明細書
【特許文献6】欧州特許第0 469 375号明細書
【特許文献7】米国特許第4,883,742号明細書
【特許文献8】米国特許第4,871,650号明細書
【特許文献9】米国特許第5,798,019号明細書
【特許文献10】米国特許第5,916,403号明細書
【特許文献11】米国特許第6,425,327号明細書
【特許文献12】米国特許第6,703,095号明細書
【特許文献13】米国特許第5,301,610号明細書
【特許文献14】米国特許第2,760,863号明細書
【特許文献15】米国特許第3,036,913号明細書
【特許文献16】米国特許第6,531,184号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2001/0012599A1号明細書
【特許文献18】欧州特許出願公開第0 329 228A1号明細書
【特許文献19】米国特許第5,488,781号明細書
【特許文献20】米国特許第4,872,407号明細書
【特許文献21】米国特許第4,520,389号明細書
【特許文献22】米国特許第4,177,074号明細書
【特許文献23】米国特許第4,431,723号明細書
【特許文献24】米国特許第4,517,279号明細書
【特許文献25】米国特許第5,679,485号明細書
【特許文献26】米国特許第5,830,621号明細書
【特許文献27】米国特許第5,863,704号明細書
【特許文献28】米国特許第4,323,636号明細書
【特許文献29】米国特許第4,430,417号明細書
【特許文献30】米国特許第4,045,231号明細書
【特許文献31】米国特許第4,956,252号明細書
【特許文献32】米国特許第5,707,773号明細書
【特許文献33】米国特許第5,015,556号明細書
【特許文献34】米国特許第4,753,865号明細書
【特許文献35】米国特許第4,726,877号明細書
【特許文献36】米国特許第4,894,315号明細書
【特許文献37】国際公開第94/03838号パンフレット
【特許文献38】国際公開第94/3839号パンフレット
【特許文献39】米国特許第5,262,275号明細書
【特許文献40】米国特許第5,719,009号明細書
【特許文献41】欧州特許第0 741 330B1号明細書
【特許文献42】米国特許第5,607,814号明細書
【特許文献43】米国特許第5,766,819号明細書
【特許文献44】米国特許第5,840,463号明細書
【特許文献45】欧州特許出願公開第0 891 877A号明細書
【特許文献46】独国特許出願公開第38 28 551号明細書
【特許文献47】米国特許第3,796,602号明細書
【特許文献48】米国特許第5,215,859号明細書
【特許文献49】国際公開第98/13730号パンフレット
【特許文献50】米国特許第5,279,697号明細書
【特許文献51】米国特許第6,797,454号明細書
【特許文献52】米国特許第5,798,202号明細書
【特許文献53】米国特許第5,804,353号明細書
【特許文献54】米国特許第6,757,216B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、円筒形感光エレメントを作製するための簡単で、比較的迅速で、かつ生産性の高い方法に対するニーズが存在する。その方法は、泡などの欠点のない円筒形感光エレメントを製造することができるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、印刷組版として使用される円筒形感光エレメントを製造するための方法を提供する。この方法は、外面と内面を有する円筒形支持体を、外面を有しかつ支持体の内面がそれと接しているロール上へ取り付けるステップ、および熱可塑性バインダーとモノマーと光開始剤とを含み、接触面により接合される第一端部と第一端部の反対側の第二末端とを有する感光層を設けるステップを含む。この方法は、支持体の周囲に感光層を巻き付けて第二端部を第一端部に近接した状態にすること、その支持体上へ感光層を貼り合わせ、端部同士をシールして支持体上に連続層を形成すること、および感光層または支持体または感光層と支持体の両方を加熱することによって、感光層の接触面を支持体の外面に接触させることを続け、かつそれを含む。この場合、ロールの外面は順応性(compliant)である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】順応性外面を有するロール上へ取り付けられた円筒形支持体を準備し、貼合せロールと上記ロールとの間に感光性組成物の層を設けるステップの一実施形態を含む、円筒形感光エレメントの製造方法の一実施形態の概略的な側面図である。
【図2】感光層および支持体の加熱を示す、本発明の方法におけるステップの一実施形態の概略的な側面図である。
【図3】支持体上への感光層の接触を示す、本発明の方法におけるステップの一実施形態の概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
下記の詳細な説明の全体を通して図面のすべての図において、類似の参照記号は類似の要素を指す。
【0016】
本発明は、印刷組版として使用される円筒形感光エレメントを製造するための方法を提供する。幾つかの実施形態では、この印刷組版は、フレキソ印刷組版および活版印刷組版としての使用を含めて、凸版印刷用に特に適している。凸版印刷は、印刷組版を画像部から印刷する印刷方法であり、印刷組版の画像部は隆起しており、非画像部は凹んでいる。幾つかの実施形態では、この印刷組版は、グラビアまたはグラビア様の印刷に適している。グラビア印刷は、印刷組版を画像部から印刷する印刷方法である。この場合、画像部は凹んでおり、かつそれはインクまたは印刷材料の入っている小さな窪んだカップまたは溜めからなり、かつ非画像部はその版の表面である。グラビア様の印刷は、画像部が凹み、かつそれが印刷中に転写するインクを坦持するための溜めを形成する窪んだ領域からなる凸版印刷組版を使用することを除いて、グラビア印刷に似ている。感光性組成物の形成層から数分で円筒形感光エレメントが得られるこの方法は、他の方法が数日を必要とするのに対し、迅速である。支持体に接着材料を塗布するステップを避け、かつその塗布された接着剤層中におよび得られる円筒印刷組版中に欠陥を伴う可能性を避けて、円筒支持体上に直接に感光層を確実に設けるこの方法は簡単である。この方法はまた、感光層と支持体の接着を促進させるための処理を必要とする外面を有する円筒形支持体の使用を、場合によっては避けることができる。この方法は、その層の近接する両端部を接合するために接触および貼合せの間に感光層中に生ずる泡などの欠陥が生じる可能性を減らす。感光エレメントは像様露光および処理後に、印刷に適した表面を有する円筒印刷エレメントになるように適合される。幾つかの実施形態では、この表面は、凸版印刷に適したレリーフ面である。幾つかの実施形態では、この表面は、グラビアまたはグラビア様印刷に適したインク受容セル面である。
【0017】
この方法は、外面とこの外面の反対側の内面とを有する円筒形支持体を設けるステップを含む。円筒形支持体の内面はロールの外面に隣接しており、その外面は順応性である。ロールは、円筒形感光エレメントを形成するための装置に随伴する基体ロールであっても、またはその基体ロール上へ取り付けられたアダプタであってもよい。アダプタは、基体ロール上に滑り嵌め部または締り嵌め部を有することができる。幾つかの実施形態では、順応性材料の層が、基体ロール上の外面を形成する。他の実施形態では、順応性材料の層が、アダプタの外面を形成する。さらに別の実施形態では、基体ロール上のアダプタは、ロールの外面に望ましい順応性を与えるように順応性材料から形成することができる。
【0018】
ロールの外面を形成する層は、貼り合わせの間、円筒形支持体に順応性支持外面を与えるのに適した任意の材料から構成することができる。貼り合わせ中に力が加わるとこのロールの順応性外面が弾性的に撓み(yield)、感光層の両端部がシールされるにつれて空気を逃がし、それによって光重合性層中への空気の閉じ込めおよび泡の形成を避ける。この順応性外面は十分に弾性的であり、そのためいったん力が取り除かれるとその元の形状を保つか、または実質上保つ。大部分の実施形態では、そのロールの外面が永久歪または破断なしに力に耐えることができるように、その外面は十分に弾力性があることもまた望ましい。この層の適切な弾力性はロールの稼働寿命を延ばし、外面の層がその順応性を失った場合のロールまたはロール外面の交換の必要性を減らす。このロール上の順応性外面は、貼合せロールが及ぼす圧力下で変形する順応性外面の結果として、貼合せロールと上記ロールとの間のニップにおいてより長い接触域を生ずることができる。このロール上の順応性外面は、貼合せおよび加熱のステップが行われる温度における熱および変形に抵抗するべきである。
【0019】
幾つかの実施形態では、ロール上の順応性外面を形成する層は、約40から約70の間のショアAジュロメーター硬度を与えるのに適した任意の材料からなることができる。好適な材料の例には、これらに限定されないが、天然ゴム、合成ゴム、天然エラストマー材料、合成エラストマー材料、および圧縮性発泡体が挙げられる。幾つかの実施形態では、順応性外面は、ゴムまたはシリコーンゴムの層である。幾つかの他の実施形態では、順応性外面は、圧縮力のある発泡体の層である。さらに他の実施形態では、順応性外面は、連続気泡発泡体の層である。圧縮力のある発泡体には、ポリウレタン発泡体、ポリオレフィン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ゴム発泡体などのスポンジおよび発泡体が挙げられる。この発泡体は、連続気泡発泡体でも独立気泡発泡体でもよい。これら発泡体は、その発泡体の望ましい順応性を実質的に損なわないならば、空気を含めた任意の気体により化学的に発泡させることも、また機械的に泡立てることもできる。順応性層は、金属粒子などの添加剤と、ロール表面に望ましい特性を与える補強繊維とを含むことができる。順応性材料が基体ロールまたはアダプタ上に層を形成する幾つかの実施形態では、その層は、0.1から10mm(0.004から0.4インチ)の範囲にあることができる厚さを有する。幾つかの他の実施形態では、順応性層は、7mm(0.28インチ)を超える厚さを有する。
【0020】
ショアAジュロメーター硬度を求めるための適切な方法は、標準試験法ASTM D2240−05またはDIN 53,505によるものである。ASTM D2240−05規格では、(順応性材料の)試験片の厚さが少なくとも6.0mm(0.24インチ)でなければならないと説明しているが、この試験は、ロール上に存在するのと同様の順応性材料の層厚で行われ、したがって順応性層は、その推奨されている試験片の厚さよりも薄い(または厚い)場合があることに注意されたい。この試験は、40〜60%の間の相対湿度および15から18℃の間の温度を有する室内の標準室条件において行われる。ショアAジュロメーター硬度を測定する器具は圧子であり、作業台中または手動(手持ち)で操作される方式であることができる。
【0021】
印刷機上に取り付けられる場合、円筒形支持体の内面は、印刷シリンダまたは印刷シリンダ上へ取り付けられたブリッジアダプタの外面に隣接する。本明細書中でスリーブまたは基体スリーブまたはスリーブ支持体とも称すことがある円筒形支持体は、感光層を坦持し、かつ印刷シリンダおよびロールに簡単に取り付けられ、それらから取り外される機能を円筒エレメントに与える。このスリーブは、回転して滑ることなくロールを把持することが可能であるべきである。円筒形印刷組版の一部としてのスリーブはまた、滑ることなく印刷シリンダを把持することが可能であるべきである。スリーブは、摩擦嵌めまたは締り嵌めを含めた任意の手段によって滑ることなくロール上に保持することができる。スリーブをロールに保持するために用いられる嵌め合せ(fit)は、スリーブを印刷シリンダに保持するために用いられる嵌め合せと同じでも異なってもよい。摩擦または滑り嵌めの場合、ロール(または印刷シリンダ)へスリーブを滑らせて、スリーブの内面とロール(または印刷シリンダ)との間の外面の摩擦によって正しい位置に保持する。幾つかの実施形態では、ロールは、支持体が滑ってロール上に嵌まることができ、かつスリーブとロールとの間の摩擦による回転に対して保持されるように、スリーブ支持体の内径よりも小さい外径を有する。締り嵌めの場合、スリーブは、印刷設備において一般に利用可能な20から100psigの空気で一般に膨張可能であるべきである。スリーブは、それがロール(または印刷シリンダ)上を容易に滑動するように十分膨張すべきであり、そのため締り嵌めの量を超える膨張が必要である。基体ロールまたは印刷シリンダとの一般的な締り嵌めは3から15milであるが、これには限定されない。幾つかの実施形態では、スリーブはロール上へ取り付けられ、摩擦嵌めを用いて保持される。他の実施形態では、スリーブはロール上に取り付けられ、締り嵌めを用いて保持される。大部分の実施形態において、印刷シリンダ上へ円筒形印刷組版をしっかり取り付けるには締り嵌めが適している。
【0022】
スリーブ支持体を適切な嵌合によりロールおよび印刷シリンダ上に取り付けることができるならば、そのスリーブを形成するために使用される材料および構造は特に限定されない。スリーブは、印刷用スリーブを形成するのに通常用いられる任意の材料または材料の組合せからなることができる。スリーブは、単層構造、多層構造、複合構造、ユニタリー構造を有することができる。スリーブは、可撓性、ジュロメーター硬度などに関して均質であるように構築されるべきだが、安定化用の小さなストリップまたはフィラメントなどの要素を含むことができ、ただし、そのようなエレメントが連続印刷組版の印刷する能力に影響を及ぼさないことが前提である。幾つかの実施形態では、スリーブは、スリーブ支持体の少なくとも外面を形成する樹脂組成物の層を含む。幾つかの実施形態では支持体は、1層以上の材料から形成され、その外面として樹脂組成物の層を含む。幾つかの実施形態では、支持体は、完全に樹脂組成物の層から形成される。幾つかの実施形態では、支持体は、充填剤および/または繊維を有する樹脂組成物から形成される。繊維で補強された樹脂組成物から形成される支持体は、複合スリーブの例である。幾つかの実施形態では、支持体は、同じでも異なってもよい1層以上の樹脂組成物から形成される。樹脂組成物として適した材料は限定されない。ただし、その樹脂層が、予熱したとき溶融または流動して感光層をそのスリーブ支持体に付着させないことが前提である。好適な樹脂材料の例には、エポキシ樹脂と、ポリスチレンおよびポリビニル樹脂、例えばポリ塩化ビニルおよびポリ酢酸ビニルと、フェノール樹脂と、芳香族アミン硬化エポキシ樹脂とが挙げられる。幾つかの実施形態では樹脂は、充填剤を含んでもよく、または繊維補強されてもよい。樹脂組成物に使用される繊維は限定されず、これらには、例えばガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、金属繊維、およびセラミック繊維を挙げることができる。スリーブと組み合わせられる繊維には、連続的な織布および/または巻線材料を挙げることができる。好適なスリーブの例は、(特許文献12)に記載されている。一実施形態ではスリーブ支持体は、繊維強化高分子樹脂またはプラスチックからなる群から選択される。幾つかの実施形態ではスリーブ支持体は、円筒形印刷組版においてフロアを構築するためのバックフラッシュ露光に適応するように紫外線を透過する。スリーブは、約0.01から約6.35mm、またはそれを超える(壁)厚を有する。幾つかの実施形態ではスリーブは、約0.25から約0.75mmの間の厚さを有する。幾つかの実施形態ではスリーブは、約0.30から約0.70mmの間の厚さを有する。幾つかの実施形態ではスリーブは、約0.60から約0.80mmの間の厚さを有する。幾つかの実施形態ではスリーブは、約1から約3mmの間の厚さを有する。幾つかの実施形態ではスリーブは、その外面として0.05から0.09mmの間の厚さを有する樹脂組成物の層を含む。
【0023】
スリーブ支持体として、または上記樹脂組成物から作られるスリーブと組み合わせて使用するのに適した他の材料には、印刷平版を作製するために使用される感光エレメント用の支持体として従来から使われている材料が含まれる。スリーブは、可撓性材料の単層または多層から形成することができる。スリーブに使用される好適な可撓性材料の例には、付加ポリマーおよび線状縮合ポリマーにより形成されるものなどの高分子フィルムと、発泡体と、ガラス繊維などの布とが挙げられる。幾つかの実施形態では可撓性材料は、フロアを構築するためのバックフラッシュ露光に適応するように紫外線を透過する。スリーブ支持体にはまた、ニッケルまたはガラスエポキシなどの非透過性の化学線遮断材料を挙げることができる。たとえ金属支持体が放射線に透過性でなくても、ある種の最終用途条件下ではアルミニウムなどの金属もまた支持体において層として使用することができる。多層型スリーブは、(特許文献13)に記載のように可撓性材料の層間に接着剤層または接着テープを含むことができる。
【0024】
任意選択で円筒形感光エレメントは支持体と感光層との間に接着剤層を含んでもよく、またはその支持体の外面が接着を助長する表面を有する。幾つかの実施形態ではスリーブの外面は、接着材料またはテープを含むことができる。支持体の表面の接着剤層は、支持体と光重合性層との間に強力な付着性を与えるように、(特許文献14)に記載のような接着材料またはプライマーの下引層か、あるいはアンカー層であることができる。(特許文献15)中でBurgにより開示されている接着剤組成物もまた有効である。別法では支持体の外面は、支持体と感光層との間の接着を促進させるために火炎処理または電子処理により処理する、例えばコロナ処理することもできる。
【0025】
この方法は、感光性組成物の層を設けるステップを含む。その感光特性が悪影響を受けることなしに熱および圧力の影響下でそれだけで接合することができる任意の熱可塑加工可能な固形感光層が使用に適している。具体的にはこれには、印刷レリーフ平版の作成のためにそれ自体知られているように加熱したとき軟化するか、または圧力下で接着接合を示す固形のポリマー感光層が含まれる。この固形の感光層は、少なくとも熱可塑性バインダーと、モノマーと、光開始剤とを含む。本明細書中で使用する用語「固形の」とは、一定の体積と形状を有し、かつその体積や形状を変える傾向のある力に抵抗する層の物理的状態を指す。この感光層は、一般には室温で固体と考えられる。
【0026】
この感光層は、シート状、帯状、またはストリップ状であることができる。一実施形態では本発明により使用される感光層は、スリーブとの堅固な接触付着を可能にし、かつ連続均質層の形成により感光層の両端部および/または横方向領域の融着を可能にするために、支えられていなくてもよい。幾つかの実施形態は、自立形感光層を使用する。幾つかの実施形態では、先ず使用される感光層を仮の支持体、例えばプラスチックフィルムに貼り付け、次にそれを、例えば感光層がその方法中で使用される直前に剥離することによって取り除くこともまた可能である。
【0027】
幾つかの実施形態では感光性組成物の層は、印刷平版に使用するのに適した感光エレメントから作り出すことができる。すなわちエレメントは、少なくとも可撓性の(シート)支持体と、感光層と、その感光層上の剥離層と、カバーシートとを含むことができる。幾つかの実施形態ではシート支持体は、感光層からの容易な剥離を助長させるケイ素系表面または層を含む。幾つかの実施形態では感光性組成物の層は、ケイ素系表面または層を有する2枚のシート支持体間に形成される感光層から作り出すことができる。1層以上の追加の層、例えばエラストマーのキャップ層を、感光層と共に円筒支持体に移すことができるエレメント中に含めることができる。少なくともこのシート支持体またはカバーシート(および剥離層)は、感光層を加熱する前に、または感光層を支持体に接触させる前に、スリーブ支持体の外面に隣接する感光層の側面から取り除かれる。残っているシート支持体またはカバーシート(および剥離層)は、幾つかの実施形態では感光層をスリーブ支持体に接触させる前に、または貼り合わせる前に取り除くことができ、他の実施形態では感光層をスリーブ支持体に接触させた後に取り除くことができる。幾つかの実施形態では、準備される感光層は、スリーブ上に形成される連続感光層の厚さ以上の厚さを有する。
【0028】
感光層は、接触面によって接合される第一端部およびその第一端部の一般には反対側の第二端部を有する。この第一端部および第二端部は、円筒支持体の周囲に巻き付けられた場合、層を円筒の形にするように互いに少なくとも近接した状態であることができる感光性組成物層の任意の端部であることができる。幾つかの実施形態ではこの第一端部および第二端部は、遠位端であることができる。幾つかの実施形態ではこの第一端部および第二端部は、横方向の端部すなわち縁部であることができる。感光層は、正確に一定の大きさに切断する必要はない。層は、その層をスリーブ上に巻き付けた場合、第一端部と第二端部が近接している状態に切断することができる。幾つかの実施形態では第一端部および第二端部は、その第一端部と第二端部が互いに合う(mate)または当接する場合、近接しているとみなされる。幾つかの他の実施形態では第一端部および第二端部は、その第一端部と第二端部が小さな間隙(例えば、約0.5から1mm、またはその感光層の厚さの約1/2まで)を形成する場合、近接しているとみなされる。この層は、例えば正方形、長方形、台形を含めた任意の所望の形状に、および平行四辺形の形に切断することができる。円筒形に向きを定められたときに少なくとも近接しているこれら端部は、形を切り整えられてもよく、また形を切り整えて互いに合わせてもよい。これら端部の一方または両方の形を切り整えることができる。これら近接した両端部は、感光層を(予)熱する前か、または感光層と支持体を接触させる前に形を切り整えることができる。これら近接した両端部は、感光層の平面(すなわち接触面または外面)に対して直角でも傾斜していてもよい。これら近接した両端部は、斜切りした、面取りした、または楔の形状を有するように形を切り整えることができる。感光層の接触面は、円筒形支持体の外面と直接に接触するようになる層の面である。感光層は、接触面の反対側の外面を含む。
【0029】
任意選択で感光層は、加熱に先立って化学線に全体的に露光させて、層中の重合した材料の浅い層のフロアを形成することができる。フロアを形成するための全体的露光は、しばしばバックフラッシュ露光と呼ばれる。感光層を支持体に接触させる前にその層をバックフラッシュ露光させる実施形態では、形成されるフロアは支持体に隣接することになるので、バックフラッシュ露光は感光層の接触面に施される。幾つかの実施形態ではバックフラッシュ露光は、シート支持体(存在する場合)が感光層の接触面から取り除かれた後に行われる。他の実施形態ではバックフラッシュ露光は、シート支持体(存在する場合)が感光層の接触面から取り除かれる前に行われる。バックフラッシュ時間は、数秒から約10分間の範囲にあることができる。バックフラッシュ露光は、感光層に感光性を与え、ハイライト部のドット解像を改善し、かつまた印刷組版の彫刻深度を確立することができる。フロアは、感光エレメントによりすぐれた機械的完全性を与える。幾つかの実施形態ではバックフラッシュ露光は、円筒形支持体が化学線に透過性であるならば、円筒形感光エレメントが形成された後に行うこともできる。この場合、フロアを形成する露光はまた、支持体と感光層の接着を向上させることもできる。
【0030】
この方法は、スリーブ支持体および/または感光層を加熱するステップを含む。一実施形態ではこの加熱のステップは、加熱を支持体と感光層の接触に先立って行うスリーブ支持体および/または感光層の予熱であることができる。一実施形態ではスリーブ支持体および/または感光層は、支持体の外面にいかなる接着材料もテープも必要とせずにスリーブ支持体への感光層の付着を行うのに十分な温度に予熱される。円筒形支持体および/または感光層の予熱が、その支持体上へ感光層を接着させるのに十分であるということは予想外である。感光層と支持体の接触に先立って支持体および/または層を予熱することが、層の端部同士を少なくともシールし、支持体上に連続層を形成するのに十分な熱を与えることは予想外であり、また驚くべきことである。感光層と支持体の接触に先立って支持体および/または層を予熱することが、層の両端部をシールしかつ融着し、支持体上に連続層を形成するのに十分な熱を与えることができるということは予想外であり、また驚くべきことである。スリーブ支持体の外面および/または感光層の接触面は、接触時にこれら2つの面が、熱可塑性感光層の粘着性のおかげで確実に付着することができるように予熱される。他の実施形態ではスリーブ支持体および/または感光層は、その支持体の外面に接着材料またはテープを有するスリーブ支持体へ感光層を付着させるのを助けるのに十分な温度に予熱される。予熱は、感光層とスリーブの接触に先立って行われる。外面および/または接触面の予熱は、スリーブおよび層の他の部分が互いに接触している一方、まだ接触していないスリーブおよび/または層の部分で行うことができることを理解されたい。
【0031】
幾つかの実施形態ではスリーブ支持体の外面は、感光層をスリーブに付着させ、または接着させ、または接合させるのに十分な温度だが、そのスリーブを歪めまたは変形させまたは劣化させるほど高くはない温度まで予熱されるに過ぎない。幾つかの実施形態ではスリーブの外面は、感光層をスリーブ支持体に付着させるために39℃超の温度まで予熱される。幾つかの実施形態では、外面の予熱はスリーブ中にヒートシンク様の効果を生み出し、感光層とスリーブの接触中にスリーブがスリーブから感光層へ熱を伝えることができるようにし、かつ感光層を、スリーブに付着させるのに十分な粘着性となるようにする。幾つかの実施形態ではスリーブの外面の予熱は、深さを通して(すなわち、完全に壁厚を通して内面まで)スリーブ支持体全体を加熱する。他の実施形態ではスリーブの外面の予熱は、スリーブの表面のみまたはその壁厚の部分的深さを加熱する。樹脂組成物から構成されるスリーブの実施形態の外面を、39℃超まで予熱することにより、感光層の支持体への付着が可能になる。幾つかの実施形態ではスリーブの外面を、40℃から75℃の間で加熱することができる。幾つかの実施形態ではスリーブの外面を、40℃から95℃の間で加熱することができる。幾つかの実施形態ではスリーブの外面を、40℃から105℃の間で加熱することができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、支持体と感光層との間にいずれかの接着材料またはテープを必要としても、あるいは必要としなくても、それにはかかわらず、その層の接触面のみが、感光層を支持体に付着させる、または接着させる、または接合させるのに十分な感光層のガラス転移温度未満の温度まで予熱される。幾つかの実施形態では接触面の予熱は、感光層をスリーブの外面に付着させるのに十分な粘着性になるようにする。幾つかの実施形態では感光層の接触面の予熱は、深さとしての厚さを通して層を完全に加熱する。他の実施形態では感光層の接触面の予熱は、層の接触面または層の厚さの部分的深さのみを加熱する。感光層の接触面をそのガラス転移温度未満まで加熱することにより、層を流動または溶融させることなく感光層を支持体に付着させること、または綴じ合わせて連続層を形成することが可能になる。熱可塑性材料を溶融または流動させる温度まで感光層を加熱することは、層の厚さの不均一性を引き起こす恐れがあるので避けることが望ましい。幾つかの実施形態では感光層の接触面は、40℃から100℃の間で加熱することができる。幾つかの実施形態ではスリーブの外面は、40℃から75℃の間で加熱することができる。幾つかの実施形態ではスリーブの外面は、40℃から65℃の間で加熱することができる。幾つかの実施形態ではスリーブの外面は、40℃から55℃の間で加熱することができる。
【0033】
スリーブ支持体の外面および感光層の接触面の両方を、その支持体と感光層を接触させる前に予熱することができる。幾つかの実施形態ではこの外面および接触面は、両方が同一または実質上同一の温度に予熱される。他の実施形態ではこの外面および接触面は、両方が異なる温度に予熱される。他の実施形態ではスリーブの外面は、感光層の接触面の予熱温度よりも高い温度に予熱される。他の実施形態では感光層の接触面は、スリーブの外面の予熱温度よりも高い温度に予熱される。幾つかの実施形態ではこの接触面および外面は、少なくとも40℃に予熱される。幾つかの実施形態ではこの接触面および外面は、40℃から100℃の間で予熱される。幾つかの実施形態ではこの外面および/または接触面の予熱は10分以下である。幾つかの実施形態ではこの外面および/または接触面の予熱は5分以下である。幾つかの実施形態ではこの外面および/または接触面の予熱は1分以下である。
【0034】
他の実施形態では加熱のステップは、スリーブ支持体と感光層を接触させた後に、その支持体および/または感光層を加熱することができる。スリーブ支持体および/または感光層は、その感光層の熱可塑性のために貼り合わせ時に感光層がスリーブ上に確実に連続層を形成することができるように加熱される。スリーブ支持体および/または感光層は、その感光層のスリーブ支持体との付着を行うのに十分な温度に加熱される。支持ロールは、スリーブ支持体が加熱されるような加熱用手段を含むことができる。しかしながらスリーブ支持体は、感光層をスリーブに付着させる、または接着させる、または接合させるのに十分な温度にのみ加熱されるが、そのスリーブを歪め、または変形させ、または劣化させるほど高くはない。幾つかの実施形態では感光層は、40℃から105℃の間で加熱することができる。幾つかの実施形態ではスリーブは、40℃から100℃の間で加熱することができる。幾つかの実施形態ではスリーブは、40℃から75℃の間で加熱することができる。
【0035】
加熱はまた、感光層を支持体に十分に付着させ、または接着させ、または接合させるために感光層および/またはスリーブを予熱(感光層をスリーブ支持体と接触させる前に)するステップと、後加熱(感光層をスリーブ支持体と接触させた後に)するステップとの併用を含む。
【0036】
感光層はガラス転移温度で溶融または流動する。感光層の材料は、一般には固体と液体との間の鮮明な転移のない粘弾性材料であり、したがってそのガラス転移温度は固体状態と液体状態との間の鮮明な転移温度がないことがある。感光層をそのガラス転移温度未満に加熱することは、その粘弾性材料が流動または溶融しないようにする。感光層を軟化させる、かつ/または粘着性になるようにさせるのには十分だが、流動または溶融する閾値未満である任意の温度まで層を加熱するのが適切である。幾つかの実施形態では感光層は、そのガラス転移温度よりも少なくとも10℃低い温度まで加熱することができる。幾つかの実施形態では感光層は、そのガラス転移温度よりも少なくとも30℃低い温度まで加熱することができる。幾つかの実施形態では感光層は、そのガラス転移温度よりも少なくとも60℃低い温度まで加熱することができる。幾つかの実施形態では感光層は、そのガラス転移温度よりも少なくとも100℃低い温度まで加熱することができる。しかしながら本明細書全体を通して用語「軟化」は、その組成物が固体状態と液体状態との間の鮮明な転移温度を有するか否かに関係なく、その加熱された感光層の挙動を記述するために用いることができる。本発明の目的に対しては感光層を「軟化する」ために広い温度範囲を利用することができる。この方法のうまくいく操作の間の端部のシールおよび融着は、低温では遅く、高温では速い。
【0037】
支持スリーブおよび/または感光層は、伝導、対流、輻射、およびこれらの組合せを含めた任意の適切な加熱手段によって、スリーブ支持体への感光層の付着を達成するのに、またはスリーブ上への感光材料の連続層の形成を達成するのに十分な温度に加熱することができる。幾つかの実施形態ではこの外面および/または接触面は、赤外線加熱ランプなどの輻射エネルギー源によって迅速に加熱することができる。1個以上の輻射エネルギー源を用いて接触面および/または外面を予熱することができる。他の実施形態では支持スリーブおよび/または感光層は、好ましくは非粘着性表面を有し、支持体の外面または感光層の接触面に接触させる加熱ロールとの接触によって加熱することができる。幾つかの実施形態では支持スリーブは、そのスリーブを保持するロールによって加熱することができる。幾つかの実施形態ではスリーブおよび/または感光層を、静止した1個以上の熱源の正面で回転または移動させることができる。他の実施形態では熱源を、感光層および/またはその外面に対して移動させることができる。スリーブを加熱するために使用される熱源とは異なる熱源または同一の熱源を用いて、感光層を加熱することができる。
【0038】
スリーブ支持体に感光層を付着させるのに適した、またその両端部をシールする、またはシールしかつ融着するのに適した温度までスリーブ支持体および/または感光層を加熱するための時間は、スリーブおよび感光層の一方または両方が加熱される場合は、スリーブ組成物、感光性組成物、スリーブの厚さ、感光層の厚さに、加熱が感光層とスリーブ支持体の接触の前および/または後に行われる場合は、加熱の方法、熱源の外面および/または接触面との近さなどに少なくとも左右される。
【0039】
この方法は、支持体の周囲に感光層を巻き付けてその第二端部を第一端部に近接した状態にすることによって、感光層の接触面を支持体の外面と接触させるステップを含む。幾つかの実施形態では接触のステップが、感光層をスリーブ支持体と接触した状態にする。他の実施形態では接触のステップが、感光層をスリーブ支持体上で接着材料またはテープと接触した状態にする。基体ロールに隣接して配置されるロールを使用して、スリーブと感光層を接触させて良好な接触を確実にし、かつ順応性層がスリーブと層との間の空気を除去するのを助け、それによって空気の閉じ込めおよび泡の可能性をできるだけ少なくすることができる。貼合せロールと呼ぶこともできるこのロールは、基体ロール上に取り付けられたスリーブと共にニップを形成し、その間に感光層がある。貼合せロールおよび/または基体ロールは、ニップ部におけるスリーブの外面と貼合せロールとの間の距離、すなわち間隙が変化してニップ部において支持体上の感光層に圧力を加えることができるような相対運動のための手段を含む。基体ロールおよび/または貼合せロールは、その貼合せロールおよび/または基体ロールが動いてその間に感光層を捕えるように定位置にとどまることができる。幾つかの実施形態では貼合せロールは、間隙において0から1mmの間のロール変位の印圧設定(impression setting)を有することができる。0の印圧設定は、感光層の厚さに等しいか、または実質上等しいニップにおける距離を表す。1mmの印圧設定は、感光層の厚さよりも約1mm狭いニップにおける距離を表す。幾つかの実施形態ではロールは、0から0.5mmの間の印圧設定を有することができる。相対運動のための手段はまた、異なる厚さの感光層を有する円筒形感光エレメントの作製に適応させることができる。
【0040】
基体ロール上に取り付けられたスリーブ支持体と貼合せロールとの間のニップ中に感光層の第一端部(前端部)を捕え、基体ロールおよび貼合せロールを回転させて、それによって支持体の外面を感光層の接触面と接触させ、支持体上に感光層を巻き付けることによって層を支持体と接触させる。貼合せロールが密着をもたらすか、またはそのロールの順応性外層上に支持されたスリーブで感光層を押圧するので、空気が感光層と支持体との間に閉じ込められるようにならない。一実施形態では貼合せロールは、そのロールの順応性外層上に支持されたスリーブと感光層の密着を少なくとも与える。他の実施形態では貼合せロールが、感光層をそのロールの順応性外層上に支持されたスリーブに押し付ける。基体ロール(支持体と共に)を少なくとも完全に約1回転、すなわち360度回転させて、支持体上に感光層を巻き付け、かつ第一端部および第二端部を少なくとも互いに近接した状態にする。幾つかの実施形態では基体ロール(支持体と共に)を、360度超、約450度まで回転させて、確実に第一端部および第二端部を少なくとも互いに近接した状態にする。幾つかの実施形態では、基体ロールが少なくとも約360度進み、感光層がスリーブ支持体と接触するように巻き付けられた後、第一端部と第二端部が近接し、互いに当接される。幾つかの実施形態では、基体ロールが少なくとも約360度進み、感光層がスリーブ支持体と接触するように巻き付けられた後、第一端部と第二端部は近接した状態にあり、互いに合わされるまたは当接される。幾つかの実施形態では、基体ロールが少なくとも約360度進み、感光層がスリーブ支持体と接触するように巻き付けられた後、第一端部と第二端部が近接し、互いに小さな間隙を形成する。幾つかの実施形態ではこの間隙は、感光層の厚さの1/2未満である。他の実施形態ではこの間隙は、約0.3から1mmである。
【0041】
印刷平版として使用される感光エレメントからもたらされる感光層と、シート支持体またはカバーシート(および剥離層)とが、接触のステップの間ずっと接触面の反対側の感光層の外面にとどまった場合、そのシート支持体またはカバーシートは、ロールが両端部を接触させるための回転を行った後、かつ両端部の融着前に取り除かれる。一実施形態ではそのカバーシートまたはシート支持体は、感光層がその支持体と接触した後に、基体ロールが最初の一回転まで回転するときに取り除くことができる。
【0042】
幾つかの実施形態では外面および/または接触面の予熱と貼合せとにより、近接した端部同士をシールしかつ融着することができる。幾つかの実施形態では外面および/または接触面の予熱と貼合せとが、近接した端部同士をシールし、その近接した端部同士を融着するためには追加の加熱が必要な場合がある。幾つかの実施形態ではスリーブ支持体および/または感光層の加熱と貼合せとにより、近接した端部同士をシールしかつ融着することができる。感光層の近接した両端部の「シールする」または「シール」とは、その近接した両端部が支持体上に連続層を形成するように共に十分保持されているが、境界線、すなわち近接した両端部が接触した継目または接合部が存在することを意味する。この実施形態における大部分の例では、シールされた近接した両端部における継目または接合部は、円筒形感光エレメントの外面に見えるはずである。他の例では、シールされた近接した両端部における継目または接合部は、印刷の間にはっきり見えるようになるはずである。感光層の近接した両端部の「融着する」または「融着」とは、境界線、すなわち近接した両端部が接触した継目または接合部が存在しないように、近接した両端部が共に保持されかつ接着されて支持体上に連続層を形成することを意味する。貼合せおよび融着の後、感光層は感光材料の連続体になり、その円筒感光エレメントはシームレスとみなすことができる。
【0043】
幾つかの実施形態では感光層をスリーブと接触させた後、その層および/またはスリーブはもはや上記のような予熱手段によって加熱されない。外面および/または接触面の予熱は、スリーブに付着させるために感光層が粘着性になるようにするか、またはその粘着性を維持するようにするのに、および十分に軟化して近接した端部同士をシールし、融着するのに十分である。スリーブ支持体の外面および/または感光層の接触面の予熱が、接着剤またはテープを必要とせずにその層をスリーブに付着することができるだけでなく、貼合せの間に近接した端部同士をシールし、融着させるのに十分であることは驚くべきことである。
【0044】
予熱の幾つかの実施形態では感光層をスリーブと接触させた後、円筒感光エレメントを加熱用手段によってさらに加熱する。上述の外面および/または接触面用の予熱手段もまた、この加熱用の追加の手段として働くことができる。予熱用手段は、加熱用の追加の手段として機能するように適切に向きを揃えることが必要な場合がある。別法では加熱用の追加の手段は、予熱手段から独立していてもよい。加熱用の追加の手段は限定されず、伝導、対流、および輻射法を挙げることができる。外面および/または接触面の予熱は、スリーブに付着させるために感光層が粘着性になるようにするか、またはその粘着性を維持するようにするのに、および十分に軟化して近接した端部同士をシールするのに十分である。この実施形態では円筒感光エレメント、具体的には支持体上の感光層を、その感光層のガラス転移温度未満の温度まで加熱することができる。貼合せの間に近接した両端部を融着するのに十分な程度まで円筒感光エレメントをさらに加熱することが望ましい。感光エレメントは予熱されているので、貼合せの間に接着を完了させ、近接した両端部を融着するために必要とされる感光エレメントの追加の加熱は最小限に過ぎない。
【0045】
この方法は、感光層を支持体に貼り合わせて端部同士をシールしかつ融着し、支持体上に連続層を形成するステップを含む。用語「貼り合わせる」(または貼合せ、貼り合わせた)とは、少なくとも2種類の材料の層同士を一体化させること、すなわち貼合せは、一体構造になるように、かつ円筒形感光エレメントを形成するように感光層をスリーブ支持体に付着させ、または接合することを指す。貼合せロールは、感光層の外面と接触し、押圧して層を支持体上へ貼り合わせる。幾つかの実施形態では、貼合せロールは感光層と接触し、近接した両端部をシールおよび/または融着させながら、ロールはスリーブ(感光層と共に)を回転させ続ける。この実施形態はまた、円筒形支持体上の感光層の厚さの均一性を維持するのを助けることもできる。幾つかの実施形態では貼合せロールは、近接した両端部がシールかつ/または融着しつつある場所でのみ感光層と接触する。この実施形態では基体ロールを部分的にのみ回転させることもでき、または貼合せロールを近接した両端部の場所における加圧接触に適応させることもできる。貼合せロールは、接触の間に用いられる印圧設定と同一または異なる印圧設定を有することができる。幾つかの実施形態では貼合せロールは、0から1mmの間の印圧設定を有することができ、また他の実施形態では貼合せロールは、貼合せおよび融着のために0から0.5mmの間の印圧設定を有することができる。
【0046】
貼合せの間に第一端部と第二端部が互いにシールかつ/または融着して、円筒形支持体上に感光層の連続層を形成する。融着は、材料が塑性すなわち軟化した状態で近接した端部同士を混ぜ合わせることである。両端部の融着は、スリーブおよび/または感光層中に存在している予熱の間に導入された熱により行うことができる。スリーブおよび/または感光層は、少なくともその両端部で層の軟化を達成し、かつ貼合せの間に近接した両端部を融着することができるようにするのに十分な温度に加熱される。スリーブおよび/または層は、両端部が短時間で軟化され、また融着することができ、また連続層を形成するような温度に加熱される。幾つかの実施形態では貼合せ後、連続層には両端部が接触した場所、すなわち両端部がシールされ融着された場所にはっきり見える、または印刷できる継目がない。端部の融着は、感光層がスリーブと接触した後に追加の加熱により支援することができる。貼合せ、融着、および研削の後、連続層には両端部が接触した場所にはっきり見える、または印刷できる継目がない。幾つかの実施形態では近接した両端部をシールしかつ融着するための接触および貼合せのステップは、同一の装置中で行われる。
【0047】
近接した両端部を融着してスリーブ支持体上に連続した継ぎ目のない感光層を形成した後に、円筒感光エレメントを室温まで冷却してからエレメントを基体ロールから取りはずすことができる。円筒感光エレメントは、所望の長さのエレメントに切り整えることができる軸方向端部を有する。
【0048】
任意選択で、いかなる円筒感光層の厚さの不均一性、特にその第一および第二端部が融着した場所における不均一性も、または表面の外乱部も感光層を所望の厚み均一性まで研削することによって取り除くことができる。研削砥石による研削は、所望の厚み均一性を得るために過剰の高分子材料を除去する従来の方法である。
【0049】
任意選択で、感光層をスリーブ支持体に固定したのと同じ本発明の方法によって、または異なる方法によって、他の層を円筒形感光エレメントの外面に貼り付けることができる。外面に追加の層を貼り付けるいずれの方法についても、円筒形感光エレメントを作製するために本発明の方法で使用される最も高い温度を超えない温度で操作するように注意しなければならない。エレメントの外面に貼り付けられる追加の層の例は、現場でマスクを形成するのに適した化学線に不透明な層であることができる。化学線に不透明な層は、任意の手段、例えば(特許文献16)中でBodeらが、また(特許文献17)中でMichelsらが開示している円筒組版の被覆加工によって外面に貼り付けることができる。
【0050】
円筒形感光エレメントを準備するための本発明の方法は、円筒支持体および得られた円筒形エレメントを収容する装置中で行われる。円筒形感光エレメントを作製するための装置10の一実施形態を図1〜3に示す。装置10は、円筒(スリーブ)支持体12を支持するための基体ロール11と、基体ロール11に隣接し、基体ロール(または基体ロール上の支持体)と共にニップ13を形成する貼合せロール14と、支持体12の外面18および/または感光層20の接触面を予熱するための手段15とを含む。この実施形態では基体ロール11は、基体ロールの外面として順応性層21を含む。スリーブ支持体12は、支持体の内面が基体ロールの順応性層21と接触するように基体ロール11上へ取り付けられる。基体ロール11および/または貼合せロール14の位置は相対的に調整することができ、したがってニップ13における支持体12(または基体ロール)の外面18と貼合せロール14の外面19との間の距離を変えることができる。ニップ13における面間の距離を調整できることにより、異なる厚さの感光層を有し、かつ異なる壁厚のスリーブ支持体を有するエレメントの作製に順応する。
【0051】
図1は、装置10の一実施形態であり、円筒形支持体12の内面が基体ロール11の外面の順応性層21と接触するように基体ロール11上で支持体12を支持すること、および貼合せロール14と基体ロール11との間のニップ13中に感光性組成物の層を設けることを含む本発明の方法のステップの一実施形態を示す。感光層20は、円筒支持スリーブ12を保持する基体ロール11と貼合せロール14との間に位置決めされた感光層の第一端部25(または前縁部)と共に可動テーブル22上に存在する。可動テーブルは、スリーブ12に感光エレメントを位置決めするための手段の一実施形態と考えることができる。基体ロール11は、スリーブ12を支持するための手段であり、これは基体ロールがシャフト、ドラム、マンドレルである実施形態を包含することができる。ニップ13におけるスリーブ12の外面18から貼合せロール14の外面19までの距離は、最初は感光層20の全厚よりも大きい。感光層20は、エレメントの前縁部25がまずニップ13に入るように位置決めされる。基体ロール11および貼合せロール14に近接している可動テーブル22を用いて層20を保持し、その位置決めを助けることができる。可動テーブル22は、感光層20をスリーブ支持体12と貼合せロール14との間に正しく配置するために、基体ロール11の軸に平行な第一方向および基体ロール11の軸に直角な第二方向に移動する。感光層20の第一端部25を捕えて貼合せロール14とスリーブ支持体12との間のニップ13に入れるように、貼合せロール14および/または基体ロール11を移動させることができる。
【0052】
図2は、支持体12および感光層20の加熱を示す本発明の方法のステップの一実施形態である。図示の実施形態では加熱用手段15が、支持体12および感光層20を予熱する。この支持体12の外面18および感光層20の接触面34を予熱するための手段15の一実施形態は、複数個の輻射加熱器28として図示されており、各輻射加熱器は、装置10のフレームに連結され、電球との電気的接続を備えた端面支持部(図示せず)中に取り付けられた少なくとも1個の管状赤外線加熱電球30を含む。赤外線を焦点に集め、それをスリーブ支持体12の外面18および感光層の接触面34に向けるように作用する反射板32が電球30の側部に隣接している。端面支持部付きの赤外線加熱電球30と反射板32とを有するこのような加熱器28は、Heraeus Noblelight GmbH(Hanau,Germany)から得ることができる。基体ロール11が回転し、それによってスリーブ支持体12を回転させ、その結果、スリーブの外面18全体が加熱されてから感光層20がスリーブと接触する。感光層20がテーブル22を横断するので、層の接触面34が加熱されてからスリーブと接触する。
【0053】
予熱のための手段15の代替の実施形態では、単一の輻射加熱器28を用いてスリーブ12および/または感光層20を予熱することができる。反射板32を含む加熱器28は、加熱器がその位置を回転させてスリーブ12および/または感光層20の予熱に適応するように装置10上に取り付けることができる。
【0054】
図2はまた、感光層20の接触面34をスリーブ支持体12の外面18に接触させる、具体的には感光層の先頭の部分をスリーブに接触させる実施形態を示す。基体ロール11および/または貼合せロール14は、そのもう一方のロールに対して移動させるための手段(図示せず)を含むことができる。ニップ13に位置する感光層20の前縁部25およびスリーブ支持体が予熱されてから基体ロール11および貼合せロール14はニップ13中に感光層20の前縁部25を捕える。まだ互いに接触していない感光層20およびスリーブ12、すなわち層およびスリーブの非接触部分は、加熱器28によって予熱され続けることができる。少なくとも貼合せロール14は、ロールを感光層20に押し付ける(すなわち、スリーブ支持体12と接触させる)ための手段(図示せず)を含む。貼合せロール14を押し付けるための手段の適切な実施形態を得ることは、全く当業者の技能の範囲内にあり、それらの例には、テンションスプリング、作動シリンダ、印圧設定に関してニップ部における変位間隙(displacement gap)を維持するための回転/平行移動機構(rotation−to−translation mechanism)、および印圧設定に関してニップ部における変位間隙を維持するための平行移動/平行移動機構(translation−to−translation mechanism)が挙げられるがこれらには限定されない。
【0055】
図2および3は、本発明の方法のステップの実施形態を描いたものであり、支持体上への感光層の接触を示す。基体ロール11が回転しており、それによって順応性層21上で支持体12を回転させて感光層20を支持体の外面18に取り付けかつ付着させる。感光層20は、層の接触面34の反対側の面にカバーシートまたは支持シート(図示せず)を含むことができる。ニップ13において感光層20の接触面34は、スリーブ支持体12の外面18と接触し、支持体に付着する。感光層20をスリーブ支持体12に押し付ける貼合せロール14は、支持体12の下にある順応性層21を、ニップ部で感光層へのスリーブ支持体の良好な接触をもたらす加圧力に弾性的に降伏させる。スリーブ支持体12と感光層20との間の良好な接触は、感光層とスリーブ支持体との間の空気を逃がし、かつ/または空気を閉じ込めないようにする。感光層20は、支持体が基体ロール11上で回転するにつれてその支持体と共に移動する。基体ロール11がその回転を完全に終えるか、またはちょうど通過する時に、感光層20の第一端部25は層の第二端部35に少なくとも近接した状態になり、支持体12上に感光性材料の円筒だが多少途切れた層を形成する。支持スリーブの下にある順応性層21によって実現されるスリーブ支持体12と感光層20との間の良好な接触は、接合されたとき空気が両端部間または両端部に閉じ込められるようになる可能性がより少ないので、層20の第二端部35が第一端部25に近接した状態になる場合には特に有利である。
【0056】
基体ロール11は、貼合せロール14がしばらく接触した状態で加圧して層を支持体に貼り合わせ、近接した両端部を融着させるように、支持体12を感光層20と共に回転させ続ける。感光層20の両端部の融着は、支持体上に感光性材料の連続層を形成する。貼合せの一実施形態では、貼合せロール14は感光層20と接触したままであり、基体ロール11は支持体12を回転させ続けて層の厚み均一性を維持し、かつ近接部を融着する。
【0057】
円筒形感光エレメントを作製するための装置は、印刷シリンダ上へフレキソ印刷平版を取り付けるための、例えば(特許文献18)、(特許文献19)、(特許文献20)、および(特許文献21)中に開示されている器具から導き出すことができる。さらに印刷シリンダ上へフレキソ印刷平版を取り付けるための市販の器具は、DuPont(Wilmington,DE)によるCYREL(登録商標)Microflex取付・校正システムとして入手可能である。従来の取付け器具により印刷シリンダ上へ取り付けられるフレキソ印刷平版は、平版上に凸版印刷面を形成するための像様露光および処理のステップをすでに受けており、したがって感光層を円筒の形にする、また近接した両端部を融着するなどの円筒形感光エレメントの作製に関連する問題の幾つかに対処していない。支持体上への未処理、すなわち未露光の感光層の接合に適応するように本発明の記述に従って印刷シリンダ上へ印刷平版を取り付けるために使用される取付け器具を改変することは当業者の技能の範囲内である。幾つかの実施形態では、近接した両端部を少なくともシールし、任意選択で融着するための接触させるステップおよび貼り付けるステップは、同じ装置中で行われる。
【0058】
本発明の方法は、円筒感光エレメントを作製する工程が、スリーブを支持するロール上に順応性表面を存在させることによって容易になるので、貼合せのステップの間の感光層の操作上の取扱いおよび貼付けを簡単にすることによる特別な利点を有する。スリーブを支持するロール上の順応性表面はまた、近接した両端部が接合されかつ融着される場所におけるまたはその周囲の欠陥、泡、または閉じ込められる空気を低減または無くすので有利である。本発明の方法はまた、ある円筒感光エレメントの準備から次の準備への切替えの改善を可能にすることもできる。順応性表面はスリーブ支持体と基体ロールとの間の十分な摩擦を与えることができ、その結果、貼り合わせの間にスリーブと基体ロールとの間で起こる滑りの懸念なしに基体ロール自体を直径数ミリメートルまで小型化することができる。わずかに小型化された基体ロールにより、円筒形感光エレメントが冷えるのを待つ必要なく、そのエレメントを基体ロールから素早くかつ容易に取りはずすことが可能となる。本発明の幾つかの実施形態は、感光層のスリーブ支持体への付着を容易にするためのスリーブと感光層との間の接着剤層または接着テープを必要としない点でさらなる利点を有する。感光層を支持体と接触させるのに先立ってスリーブの外面および/または感光層の接触面を予熱することは接着剤の使用を避ける。これは、接着材料またはテープを貼り付ける余分なステップを無くすことによって円筒形感光エレメントを作製する工程を単純にする。これはまた、接着剤の塗布によって引き起こされる泡、縞などの欠陥の可能性を避ける。
【0059】
感光性組成物
一実施形態では感光エレメントは、熱可塑性バインダーと、少なくとも1種類のモノマーと、光開始剤とを含む光重合性組成物の層を含む。感光層はまた、本明細書中で光重合性層と呼ぶこともできる。本明細書中で用いられる用語「光重合性」とは、光重合性、光架橋性、またはその両方の系を包含することを意図する。光開始剤は、化学線に対して感受性を有する。
【0060】
光重合性層は、熱可塑性バインダーと、少なくとも1種類のモノマーと、光開始剤とを含む組成物から形成される固体エラストマー系の層である。光開始剤は、化学線に対して感受性を有する。本明細書全体を通じて化学線は、紫外線および/または可視光線を含むことになる。この光重合性組成物の固形層を1種以上の溶液および/または熱で処理してフレキソ印刷に適したレリーフを形成する。本明細書中で用いられる用語「固形の」とは、一定の体積および形状を有し、かつその体積や形状を変える傾向のある力に抵抗する層の物理的状態を指す。
【0061】
熱可塑性バインダーは、単一ポリマーまたはポリマーの混合物であることができる。熱可塑性バインダーは、好ましくはゴム弾性である。バインダーは、ポリイソプレン、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、ブタジエン/アクリロニトリル、およびジエン/スチレン熱可塑性−ゴム弾性ブロックコポリマーを含めた共役ジオレフィン炭水化物の天然または合成ポリマーを含む。好ましくはこの熱可塑性バインダーは、A−B−A型ブロックコポリマーのエラストマー性ブロックコポリマーであり、Aは非エラストマー性ブロック、好ましくはビニルポリマー、最も好ましくはポリスチレンを表し、またBはエラストマー性ブロック、好ましくはポリブタジエンまたはポリイソプレンを表す。好ましい熱可塑エラストマー性バインダーは、ポリ(スチレン/イソプレン/スチレン)ブロックコポリマーおよびポリ(スチレン/ブタジエン/スチレン)ブロックコポリマーである。A−B−A型ブロックコポリマーの非エラストマー対エラストマー比は、好ましくは10:90から35:65の範囲である。熱可塑性バインダーは、水性溶媒、半水性溶媒、水、または有機溶媒洗出し溶液中に可溶性でも、膨潤性でも、または分散性でもよい。水性または半水性現像液中で処理することによって洗い出すことができるエラストマー性バインダーは、(特許文献22)中でProskowにより、(特許文献23)中でProskowにより、(特許文献24)中でWornsにより、(特許文献25)中でSuzukiらにより、(特許文献26)中でSuzukiらにより、また(特許文献27)中でSakuraiらにより開示されている。Chenの(特許文献28)中で、Heinzらの(特許文献29)中で、またTodaらの(特許文献30)中で検討されたブロックコポリマーは、有機溶媒溶液中で処理することによって洗い出すことができる。一般に洗出し現像に適した熱可塑性バインダーはまた、光重合性層の未重合域が加熱時に軟化、溶融、または流動する熱処理に使用するのに適している。バインダーは、感光性組成物の少なくとも50重量%の量で存在する。
【0062】
本明細書中で用いられる用語バインダーは、Frydらの(特許文献31)およびQuinnらの(特許文献32)中に開示されているものなどのコア−シェルミクロゲルおよびミクロゲルのブレンド、ならびに予成形した巨大分子ポリマーを包含する。
【0063】
使用することができる他の好適な感光性エラストマーには、ポリウレタンエラストマーが挙げられる。好適なポリウレタンエラストマーの例は、(i)有機ジイソシアナートと、(ii)イソシアナート基を重合することができる少なくとも2個の遊離水素基を有し、かつ1分子当たり少なくとも1個のエチレン不飽和性付加重合可能な基を有する少なくとも1種類の連鎖延長剤と、(iii)最小分子量500を有し、かつイソシアナート基を重合することができる少なくとも2個の遊離水素含有基を有する有機ポリオールとの反応生成物である。これら材料の幾つかのより完全な説明については(特許文献33)を参照されたい。
【0064】
光重合性組成物は、透明で曇りのない感光層が生成される程度までバインダーと共溶性の付加重合する能力のある少なくとも1種類の化合物を含有する。この付加重合する能力のある少なくとも1種類の化合物はまたモノマーと呼ぶこともでき、単一モノマーまたはモノマーの混合物であることができる。光重合性組成物中で使用することができるモノマーは、当業界でよく知られており、少なくとも1個の末端エチレン基を有する付加重合エチレン不飽和性化合物が挙げられるがこれらには限定されない。好適なモノマーの例には、これらには限定されないが、アルコールおよびポリオールのアクリル酸およびメタクリル酸モノエステルと、アルコールおよびポリオールのアクリル酸およびメタクリル酸ポリエステルが挙げられる。アルコールおよびポリオールの例には、アルカノール、アルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、ポリアクリロールオリゴマーなどが挙げられる。単官能および多官能アクリラートまたはメタクリラートの混合物もまた使用することができる。好適なモノマーの他の例には、イソシアナート類、エステル類、エポキシド類などのアクリル酸またはメタクリル酸誘導体が挙げられる。モノマーは、光重合性組成物にゴム弾性特性を与えるように当業者によって適切に選択される。エラストマーのモノマーの例には、これらに限定されないが、アクリル化液状ポリイソプレン、アクリル化液状ブタジエン、高ビニル含量を有する液状ポリイソプレン、および高いビニル含量を有する液状ポリブタジエン(すなわち、1〜2個のビニル基の含量が20重量%を超える)が挙げられる。モノマーのさらなる例は、Chenの(特許文献28)、Frydらの(特許文献34)、Frydらの(特許文献35)、およびFeinbergらの(特許文献36)中に見出すことができる。付加重合の能力のある化合物(モノマー)は、エラストマー組成物の重量を基準にして少なくとも5%、好ましくは10〜20%の量で存在する。
【0065】
光開始剤は、過剰な停止反応なしにモノマーまたはモノマー類の重合を開始させる遊離基を発生する、化学線に感受性である任意の単一化合物または化合物の組合せであることができる。光開始剤は化学線によって活性化され、その吸収スペクトルに一致した放射線に対して感受性を有する。光開始剤の吸収スペクトルは一般に、その化学線に対する最大吸収の波長のところに吸収ピークを含む。これらの特定のUV源に対して感受性であるフレキソ印刷組版として使用される感光エレメントは、一般に310〜400nmを吸収する光開始剤を用いる。既知の種類の光開始剤のいずれか、具体的には、例えば遊離基光開始剤を使用することができる。別法では光開始剤は化合物の混合物であることもでき、放射によって活性化される感光剤によりそれが引き起こされるとき、それら化合物の一つが遊離基を提供する。一実施形態では開始剤は紫外線に対して感受性である。別の実施形態では開始剤は可視光に対して感受性である。光開始剤は、一般にその光重合性組成物の重量を基準にして0.001%から10.0%の量で存在する。
【0066】
光重合性組成物は、所望の最終特性に応じて他の添加剤を含有することができる。光重合性組成物に追加される添加剤には、感光剤、可塑剤、レオロジー変性剤、熱重合開始剤、着色剤、加工助剤、酸化防止剤、オゾン亀裂防止剤、および充填剤が挙げられる。
【0067】
感光層の厚さは、所望の印刷組版の型に応じて、例えば約0.020インチから約0.250インチ以上(約0.05cmから約0.64cm以上)までの広い範囲にわたって変えることができる。幾つかの実施形態では、設けられる感光層の厚さは、スリーブ支持体上の連続感光層の厚さよりも厚い。
【0068】
光重合性層自体は、バインダー、モノマー、光開始剤、および他の成分を混ぜ合せることによる多くの方法で作製することができる。感光層が感光性平版に由来する幾つかの実施形態では、光重合性混合物を熱溶融液の形にし、次いで所望の厚さにカレンダ加工することができる。組成物の溶融、混合、脱気、および濾過の機能を遂行するために押出機を用いることができる。次いでその押し出された混合物を、支持体と一時的なカバーシートとの間でカレンダ加工することができる。別法では光重合性材料を、金型中で支持体と一時的なカバーシートとの間に置くこともできる。次いで熱および/または圧力を加えることによってその材料の層を押圧して平らにする。
【0069】
一実施形態では円筒形感光エレメントは、感光層(または、もし存在するならば他の層)の上部に赤外(IR)感光性層を含むことができる。このIR感光性層は、感光エレメントの一体化マスキング層を形成することができる。好ましいIR感光性層は、化学線を通さない、すなわち少なくとも1.5の光学濃度を有し、かつ赤外線レーザーを用いて、好ましくは剥離により画像形成することができ、かつ処理の間に除去可能、すなわち現像液中に可溶または分散可能であるか、または熱現像の間に除去可能である。IR感光性層は、例えば多置換フタロシアニン化合物、シアニン染料、メロシアニン染料などのその波長(750から20,000nmの間の赤外線範囲)において高い吸収を有する材料、または、例えばカーボンブラック、グラファイト、二酸化クロムなどの無機顔料、またはアルミニウム、銅などの金属を含有する。赤外線吸収材料の量は、通常は層の総重量に対して0.1〜40重量%である。化学線を遮断するための望ましい光学濃度を達成するために、赤外感光性層は、化学線の透過を防ぐ材料を含有する。幾つかの実施形態では光学濃度は、2.0から3.0の間にあることができる。幾つかの実施形態では光学濃度は、2.6から3.4の間にあることができる。この化学線遮断材料は、赤外線吸収材料と同一でも、異なっていてもよく、例えば染料または顔料、具体的には前述の無機顔料であることができる。この材料の量は、通常は層の総重量に対して1〜70重量%である。赤外感光性層は任意選択で、例えばニトロセルロース、あるいはアクリラート、メタクリラート、およびスチレンのホモポリマーまたはコポリマー、あるいはポリアミド、あるいはポリビニルアルコールなどの高分子バインダーを含む。可塑剤、塗布助剤などの他の補助剤もあり得る。通常は赤外感光性層は、前述の成分の溶液または分散物を感光層上に層として塗布し、続いてそれを乾燥することによって作製される。赤外感光性層の厚さは、通常は2nmから50μm、好ましくは4nmから40μmである。これらの赤外感光性層およびそれらの作製法は、例えば(特許文献37)および(特許文献38)中に詳細に記載されている。赤外感光性材料は、任意の適切な方法によって感光層の外面に、好ましくは層を形成するように塗布することができ、その方法には、例えば浸漬、吹付け、ジェッティング、および塗装が挙げられる。塗装の適切な方法の例には、スピンコーティング、浸漬塗装、スロットコーティング、ロール塗装、およびドクターブレード塗布が挙げられる。
【0070】
円筒形感光エレメントは、従来の露光(像様露光および任意選択でバックフラッシュ露光を含めた)のステップと、フレキソ印刷に適した印刷組版上のレリーフ面を形成するための処理のステップとを受けることによって円筒形印刷組版に転換される。
【0071】
露光工程は、通常は裏露光および前面像様露光(front image−wise exposure)を含むが、前者は厳密には必要でない。裏露光または「バックフラッシュ」は、像様露光の前に、その後に、またはその間に行うことができる。像様露光に先立つバックフラッシュが、一般には好ましい。
【0072】
像様露光すると、感光層の放射線露光域は、層の非露光域中では顕著な重合または架橋が起こらずに不溶性状態に転換される。この露光には任意の従来の化学線源を用いることができる。好適な線源の例には、キセノン灯、水銀灯、カーボンアーク、アルゴングロー灯、紫外線を放射する蛍光物質と電子フラッシュ装置とを備えた蛍光灯、および写真用フラッドランプが挙げられる。一般には水銀灯または太陽灯を、感光エレメントから約1.5から約60インチ(約3.8から約153cm)の距離で用いることができる。これらの線源は、一般に310〜400nmの間の長波紫外線を放射する。露光時間は、その放射線の強度とスペクトルエネルギー分布、その感光エレメントからの距離、およびその光重合性材料の性質と量に応じて数秒から数分まで変わる。
【0073】
像様露光は、像を坦持するフォトマスクを通して感光エレメントを露光することによって行うことができる。フォトマスクは、別個のフィルム、すなわちハロゲン化銀フィルムなどの像を坦持する透明ポジ(transparency)またはフォトツールであってもよく、あるいは上記のように感光エレメントと一体化されてもよい。フォトマスクが別個のフィルムであるケースでは、任意選択のカバーシートは、通常は像様露光の前に、剥離層を感光エレメント上に残して剥がされる。フォトマスクは、通常の真空工程によって、例えば普通の真空架台の使用によって感光エレメントの剥離層と密な接触状態にされる。したがって感光エレメントとフォトマスクとの間の実質上均一かつ完全な接触を許容できる時間内に達成することができる。
【0074】
円筒感光エレメント上に一体化フォトマスクを形成することが好ましい。特に好ましい実施形態では感光エレメントは、一体化フォトマスクになるIR感光層を含む。IR感光層は、IRレーザー光線に像様に露光されて感光エレメント上にフォトマスクを形成する。赤外線レーザー露光は、750から20,000nmの範囲の光を放つ様々な型の赤外線レーザーを用いて行うことができる。780から2,000nmの範囲の光を放つダイオードレーザーおよび1064nmの光を放つNd:YAGレーザーを含めた赤外線レーザーが好ましい。いわゆるデジタル画像では放射線を通さない層が赤外線レーザー光線に像様に露光されて光重合性層すなわち現場マスク上に像を形成するか、またはその上方に配置される像を形成する。赤外線レーザー光線は、(特許文献39)および(特許文献40)中でFanが、および(特許文献41)中でFanが開示しているように、光重合性層から赤外感光層(すなわち放射線を通さない層)を選択的に取り除く、すなわち融解または蒸発させることができる。この一体化フォトマスクは、後続のUV前露光のステップ、化学線への像様主露光のステップ、および現像のステップのために感光エレメント上に残る。
【0075】
マスク形成のデジタル法の代替の実施形態では感光エレメントは、最初は赤外感光層を含まないことになる。このケースでは赤外感光層は、上記感光層と共に含まれる赤外感光層と同じものか、または実質上同じものである。一般には光重合性層である支持体の反対側の感光エレメントの面に赤外感光層が隣接するように、赤外感光層を坦持する別個のエレメントが感光エレメントと集合体を形成することになる。この別個のエレメントは、デジタル露光工程を促進させるように突出層(ejection layer)または加熱層などの1層以上の他の層を含むことができる。集合体は、(特許文献42)中でFanらにより、また(特許文献43)、(特許文献44)、および(特許文献45)中でBlanchettにより開示されているように、赤外レーザー光線で像様に露光されて選択的に赤外感光層を転写し、光重合性層上に像を形成するか、またはその上方に配置される像を形成する。転写された赤外感光層の部分のみが、現場マスクを形成する感光エレメント上に存在することになる。
【0076】
さらにマスク像を別個のキャリヤー上に作り出し、次いで熱および/または圧力を加えることによって支持体の反対側の光重合性層の表面に転写することもできる。光重合性層は一般に粘着性であり、転写された画像を保持することができるはずである。次いでその別個のキャリヤーを、前露光および/または像様露光に先立ってエレメントから除去することができる。この別個のキャリヤーは、レーザー光線に像様に露光されて選択的にその材料を除去し、画像を形成する赤外感光層を有することができる。この型のキャリヤーの例は、Rexam,Inc.によるLaserMask(登録商標)画像フィルムである。
【0077】
デジタルマスクの形成を、インクジェットインクの形態の放射線を通さない材料を像様に塗布することによって達成することも考えられる。インクジェットインクの像様の塗布は、光重合性層上に直接でもよく、または感光エレメントの光重合性層の上方に配置することもできる。
【0078】
画像坦持マスクを通しての全体にわたる紫外線への露光に引き続いて、光重合性層中の未重合領域を除去するために感光エレメントを処理し、それによってレリーフ像を形成する。感光性印刷エレメントの処理には、(1)光重合性層を適切な現像液と接触させて未重合領域を洗い出す「湿式」現像、および(2)未重合領域を溶融または軟化させる現像温度まで光重合性層を加熱し、吸収材料と接触させてその未重合領域を逃がす「乾式」現像を挙げることができる。乾式現像はまた、熱現像と呼ぶこともできる。湿式現像は、通常は室温付近で行われる。現像液には、有機溶媒、水性または半水性溶液、あるいは水を挙げることができる。現像液の選択は、除去されるその光重合性組成物の化学的性質によって本質的には決まることになる。好適な有機溶剤現像液には、芳香族または脂肪族炭化水素、脂肪族または芳香族ハロゲン化炭化水素、またはこのような溶剤と適切なアルコールの混合物が挙げられる。他の有機溶剤現像液は、(特許文献46)中に開示されている。好適な半水性現像液は、水と、水混和性有機溶剤と、アルカリ性物質とを含有することができる。好適な水性現像液は、水およびアルカリ性物質を含有することができる。他の好適な水性現像液の組合せが、(特許文献47)中に開示されている。
【0079】
現像時間は変えることができるが、好ましくは約2から約25分間の範囲内である。現像液は、浸漬、吹付け、および刷毛またはロール塗布を含めた任意の都合のよい方法で塗布することができる。ブラッシング助剤を用いて感光性印刷エレメントの未重合部分を除去することができる。現像液および機械的ブラッシング操作を使用する自動処理装置中で洗出しを行い、露光された画像およびフロアを構成するレリーフを残して、得られるフレキソ印刷平版の未重合部分を除去することができる。
【0080】
溶液中での現像による処理に引き続いてフレキソ印刷組版を一般には吸い取るか、または拭き取って乾燥させ、次いで強制空気または赤外線オーブン中でより完全に乾燥する。乾燥時間および温度は変えることができるが、一般には平版は約60℃で約60分から約120分間乾燥することができる。高温は、支持体が収縮する恐れがあり、またそれが見当合わせの問題を引き起こす恐れがあるので推奨されない。
【0081】
熱現像では光重合性層を、未重合領域を液化、すなわち溶融または流動させる、一般には約40℃から200℃の間の現像温度まで加熱することができる。次いで光重合性層を現像材料と接触させて未重合の光重合性組成物を除去することができる。光重合性層の重合した領域は、未重合領域よりも高い融解温度を有し、したがって現像温度では溶融しない((特許文献48)および(特許文献49)参照)。感光性印刷エレメントの熱現像に適した装置は、(特許文献50)および(特許文献51)中に開示されている。
【0082】
別の代替実施形態では画像エレメントを適切に補強し、次いでレーザー光線に像様に露光して補強層を深く像様に彫刻するか、または除去することができる。(特許文献52)、(特許文献53)、および(特許文献54)には、可撓性支持体上の補強エラストマー層をレーザー彫刻することによってフレキソ印刷平版を作製する適切な方法が開示されている。(特許文献52)および(特許文献53)中に開示されている方法は、可撓性支持体上の補強エラストマー層から構成されるフレキソ印刷エレメントの単層、あるいは多層のうちの1層以上の層を補強およびレーザー彫刻することを伴う。エラストマー層は、機械的に、または熱化学的に、または光化学的に、あるいはこれらの組合せにより補強される。機械的補強は、微粉化した粒子材料などの補強剤をエラストマー層中に混ぜることによって得られる。光化学的補強は、光硬化性材料をエラストマー層中に混ぜ、その層を化学線に露光することによって達成される。光硬化性材料には、光開始剤または光開始剤系を有する光架橋可能な系および光重合可能な系が挙げられる。
【0083】
円筒形感光エレメントを用いて作られるフレキソ印刷組版は、光重合過程が完了したこと確実にし、かつ印刷組版が印刷および貯蔵の間ずっと安定なままであることを確実にするために一様に後露光することができる。後露光のステップは、主露光と同じ線源を利用することができる。
【0084】
粘着性除去は、任意選択の現像後の処理であり、フレキソ印刷平版の表面がまだ粘着性である場合に適用することができる。このような粘着性は一般には後露光において除去されない。粘着性は、臭素または塩素溶液による処理、また300nm以下の波長を有する線源への曝露によるなどの当業界でよく知られている方法によって無くすことができる。
【符号の説明】
【0085】
10 装置
11 基体ロール
12 スリーブ支持体、円筒形支持体
13 ニップ
14 貼合せロール
15 加熱用手段
18 支持体の外面
19 貼合せロールの外面
20 感光層
21 順応性層
22 可動テーブル
25 感光層の第一端部、前縁部
28 輻射加熱器
30 赤外線加熱電球
32 反射板
34 感光層の接触面
35 感光層の第二端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷組版として使用される円筒形感光エレメントの製造方法であって、
(a)外面を有するロール上に外面および内面を有する円筒形支持体を取り付けるステップであって、前記支持体の前記内面が前記ロールの前記外面と接触する、ステップ、
(b)熱可塑性バインダー、モノマー、および光開始剤を含む感光層を設けるステップであって、前記層が、接触面によって接合される第一端部と、前記第一端部の反対側の第二端部とを有する、ステップ、
(c)前記感光層を前記支持体の周囲に巻き付けることによって前記感光層の前記接触面を前記支持体の前記外面と接触させて、前記第二端部を前記第一端部に近接した状態にするステップ、
(d)前記支持体上へ前記感光層を貼り合わせ、前記端部同士をシールして前記支持体上に連続層を形成するステップ、および
(e)前記感光層、または前記支持体、または前記感光層と前記支持体の両方を加熱するステップ
を含み、
前記ロールの前記外面が順応性である、方法。
【請求項2】
前記順応性外面が、約40から約70の間のショアAジュロメーター硬度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第二端部が前記第一端部と当接するように、前記第二端部が前記第一端部に近接している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第一端部と前記第二端部との間に間隙が形成されるように、前記第二端部が前記第一端部に近接している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記感光層がある厚さを有し、前記間隙が前記感光層の前記厚さの約1/2以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記接触のステップに先立って、前記第一および/または前記第二端部の形を切り整えて他方の端部と当接させるか、または間隙を形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱のステップが、前記接触のステップの前に、前記接触のステップの後に、または両方の組合せで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱のステップが、前記接触のステップの前に行われ、1)前記支持体の前記外面を39℃を超える温度に予熱するステップと、2)前記感光層の前記接触面をそのガラス転移温度未満の温度に予熱するステップと、1)および2)の組合せとからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
貼合せの間に前記端部同士を融着させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記接触のステップの後に、前記シール用端部同士を貼合せの間に融着させるのに十分な温度まで前記感光層を加熱するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記貼合せのステップの後に、前記支持体の反対側の前記感光層の表面を研削するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記支持体が化学線に対して透明であり、前記方法が、ステップe)の後に前記エレメントを化学線に、前記支持体を通して露光させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記貼合せのステップが、前記感光層を有する前記支持体を回転させること、および前記支持体の反対側の前記感光層の外面を貼合せロールと接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記貼合せロールが、前記感光層を0から1mmの印圧設定で押圧している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法に従って作製される円筒形感光エレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−61131(P2010−61131A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−188545(P2009−188545)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】