説明

印刷色再現条件の評価方法及びその選択方法、色変換方法及びその装置並びにプログラム

【課題】膨大な数の条件組み合わせの中から印刷物の色再現性の良し悪しを容易に且つ適切に評価できる印刷色再現条件の評価方法及、その選択方法及び色変換方法を提供する。
【解決手段】評価対象とする各指定群(メディア36群、ラミネートフイルム40群及び光源LS群)を指定し、各指定群の中から選択し得るすべての印刷色再現条件を候補条件として設定し、各前記候補条件に対応する各メディア36に印刷して得られる印刷物38の第1の分光データと、各ラミネートフイルム40の第2の分光データと、各光源LSの第3の分光データとに基づいて各印刷プロファイルをそれぞれ生成し、生成された各候補条件に対応する各印刷プロファイルに基づいて画像データの画素に対応する再現色を予測し、予測された再現色と印刷の際の目標色とに基づいて画素上での色の再現可否を判別し、判別された再現可否に基づいて各候補条件を評価するための条件評価情報を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メディア、保護膜及び観察光源に関する情報が含まれる印刷色再現条件を、カラー画像を表す画像データに対して適用する場合における色再現性を予測して評価する印刷色再現条件の評価方法及びその選択方法、色変換方法及びその装置並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインクジェット技術の飛躍的進歩に伴い、インクジェット方式の印刷機による高速・高画質を両立したカラー大判印刷が可能になりつつある。この印刷機は、個人的・家庭的用途だけでなく、最近では、特に商業用途において幅広い分野で用いられている。この印刷機を用いることにより、例えば、店頭POP(Point of Purchase)や壁面ポスターのみならず、屋外広告・看板等の大サイズメディア、ロールメディア、厚手の硬質メディアに対しても印刷が可能である。
【0003】
このような多様な商業的需要に応えるため、印刷に用いられる印刷媒体(以下「メディア」という場合がある。)も多種多彩である。例えば、合成紙・厚紙・アルミ蒸着紙等の紙類、塩化ビニル・PET等の樹脂、繊維織物の両面に合成樹脂フイルムを貼り合わせたターポリン等が用いられる。
【0004】
広告印刷には需要者の視覚を通じてその購買意欲を喚起させる効果が期待されることから、印刷物(印刷された印刷媒体)の色の仕上がりは特に重要である。従来から、印刷物の色管理手段として、ICC(International Color Consortium)プロファイルの作成方法、指定色の調整方法、最適な印刷条件・観察条件の選択方法等の様々なカラーマッチング技術が多数開示されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、印刷ジョブデータにて表現しようとする色域と、印刷装置の印刷プロファイルとに基づいて、前記色域の再現度合を基準として複数の印刷装置の中からいずれかの印刷装置を選択する装置及び方法が開示されている(特許文献1の[0004]、[0036]及び図15等を参照)。
【0006】
また、特許文献2には、データ属性の異なる複数のプロファイルを組み合わせて入出力デバイスのプロファイルを構成するシステムが開示されている。例えば、印刷出力条件プロファイルとして紙に関するパラメータ(特許文献2の[0047]、図4参照)が、観察条件プロファイルとして観察光源に関するパラメータ(同[0049]、図6参照)がそれぞれ設定される。これにより、観察光源やメディアの種類に応じて画像データを容易に処理可能であり、高精度な色再現を行うことができる(同[0086]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−266891号公報
【特許文献2】特開平7−154623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記特許文献1及び2に開示されている技術的思想に関連してなされたものであり、膨大な数の条件組み合わせの中から印刷物の色再現性の良し悪しを容易に且つ適切に評価できる印刷色再現条件の評価方法及びその選択方法、色変換方法及びその装置並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る印刷色再現条件の評価方法は、メディア、保護膜及び観察光源に関する情報が含まれる印刷色再現条件を、カラー画像を表す画像データに対して適用する場合における色再現性を予測して評価する方法に関する。
【0010】
そして、評価対象とするメディア群、保護膜群及び観察光源群を指定する指定ステップと、指定された前記メディア群、前記保護膜群及び前記観察光源群の中から選択し得るすべての印刷色再現条件を候補条件として設定する設定ステップと、設定された各前記候補条件に対応する各メディアに印刷して得られる印刷物の光学物性値と、各保護膜の光学物性値と、各観察光源の分光分布とに基づいて各印刷プロファイルをそれぞれ生成するプロファイル生成ステップと、生成された各前記候補条件に対応する各前記印刷プロファイルに基づいて前記画像データの画素に対応する再現色を予測する予測ステップと、予測された前記再現色と印刷の際の目標色とに基づいて前記画素上での色の再現可否を判別する判別ステップと、判別された前記再現可否に基づいて各前記候補条件を評価するための条件評価情報を生成する条件評価情報生成ステップとを備えることを特徴とする。
【0011】
このように、評価対象として指定されたメディア群、保護膜群及び観察光源群の中から選択し得るすべての印刷色再現条件を候補条件として設定し、画像データの各画素上での色の再現可否を判別し、該再現可否に基づいて各前記候補条件を評価するための条件評価情報を生成するようにしたので、作業者が予め指定した評価対象の範囲内で効率良く条件を絞り込むことが可能であるとともに、異なる印刷色再現条件毎に印刷物を形成して該印刷物の色再現性を評価する必要がなくなり、膨大な数の条件組み合わせの中から印刷物の色再現性の良し悪しを容易に且つ適切に評価できる。
【0012】
また、前記判別ステップは、前記目標色が印刷の際の再現ガマットに属するか否かによって前記画素上での色の再現可否を判別することが好ましい。
【0013】
さらに、前記条件評価情報は、前記画像データの画素数に対する、再現可能であると判別された色に対応する画素数の割合であることが好ましい。これにより、画像データ全体における色再現率を容易に把握できる。
【0014】
さらに、前記条件評価情報は、前記カラー画像の各画素に対応する色についての前記再現可否を可視化して判別可能となるように、各前記画素の画素値が決定された評価用画像データであることが好ましい。これにより、評価用画像データを可視化することで、画像データの色再現性の良し悪しを一見して把握できる。
【0015】
さらにまた、前記評価用画像データは、前記印刷色再現条件における保護膜を被覆しないときの印刷色再現条件下で、前記カラー画像の各画素に対応する色についての前記再現可否を可視化してさらに判別可能となるように、各前記画素の画素値が決定された画像データであることが好ましい。これにより、評価用画像データを可視化することで、印刷物に保護膜を被覆したときの色再現性への影響度を一見して把握できる。
【0016】
さらに、前記評価用画像データを表示するステップをさらに備えることが好ましい。
【0017】
さらに、前記カラー画像のうち所定の画像領域を設定するステップをさらに備え、前記再現可否は、設定された前記画像領域内の各画素上で判別されることが好ましい。
【0018】
さらに、色空間座標のうち所定の色領域を設定するステップをさらに備え、前記再現可否は、設定された前記色領域内の色に対応する各画素上で判別されることが好ましい。
【0019】
さらに、前記条件評価情報は、前記再現可否の結果に基づいて決定された数値に対して前記カラー画像の画像領域に応じた重み付けをし、該カラー画像の画素毎に加算して得られた評価値であることが好ましい。これにより、画像領域に応じた評価値の軽重を設けることができる。
【0020】
さらに、前記条件評価情報は、前記再現可否の結果に基づいて決定された数値に対して色空間座標の色領域に応じた重み付けをし、前記カラー画像の画素毎に加算して得られた評価値であることが好ましい。これにより、色領域に応じた評価値の軽重を設けることができる。
【0021】
さらにまた、前記印刷色再現条件における保護膜を被覆するときのプロファイルに係る黒点の色値と、前記印刷色再現条件における保護膜を被覆しないときのプロファイルに係る黒点の色値とを一致させるように黒点補正をするステップをさらに備えることが好ましい。これにより、保護膜の被覆の有無によらず特にシャドー領域の色再現性を略一致させることができる。
【0022】
さらにまた、前記黒点補正を行うか否かを選択するステップをさらに備えることが好ましい。
【0023】
さらに、前記画像データの画素を間引いて新たな画像データを生成するステップをさらに備え、前記画像データに代えて前記新たな画像データを用いることで、前記印刷色再現条件を前記画像データに適用する場合における色再現性を予測して評価することが好ましい。これにより、印刷色再現評価に要する所要時間を短縮することができる。
【0024】
さらに、前記メディアが反射メディアである場合は、前記メディアに係る印刷物の光学物性値は分光反射率であるとともに、前記保護膜の光学物性値は該保護膜の光波長毎の固有反射率、散乱係数及び吸収係数のうちの独立な2つの光学物性値であることが好ましい。
【0025】
さらに、前記メディアが透過メディアである場合は、前記メディアに係る印刷物及び前記保護膜の光学物性値は分光透過率であることが好ましい。
【0026】
本発明に係る印刷色再現条件の選択方法は、上記したいずれかの印刷色再現条件の評価方法を用いて、得られた評価結果に基づいて一の印刷色再現条件を選択するステップを備えることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る色変換方法は、上記した印刷色再現条件の選択方法を用いて、選択された前記一の印刷色再現条件に対応する印刷プロファイルを用いて、前記画像データを色変換するステップを備えることを特徴とする。
【0028】
本発明に係る色変換装置は、上記した印刷色再現条件の選択方法を用いて前記一の印刷色再現条件選択する条件選択部と、前記条件選択部により選択された前記一の印刷色再現条件に対応する印刷プロファイルを用いて、前記画像データを色変換する色変換処理部とを有することを特徴とする。
【0029】
本発明に係るプログラムは、メディア、保護膜及び観察光源に関する情報が含まれる印刷色再現条件を、カラー画像を表す画像データに対して適用する場合における色再現性を予測して評価するためコンピュータに、評価対象とするメディア群、保護膜群及び観察光源群を指定する手段、指定された前記メディア群、前記保護膜群及び前記観察光源群の中から選択し得るすべての印刷色再現条件を候補条件として設定する手段、設定された各前記候補条件に対応する各メディアに印刷して得られる印刷物の光学物性値と、各保護膜の光学物性値と、各観察光源の分光分布とに基づいて各印刷プロファイルをそれぞれ生成する手段、生成された各前記候補条件に対応する各前記印刷プロファイルに基づいて前記画像データの画素に対応する再現色を予測する手段、予測された前記再現色と印刷の際の目標色とに基づいて前記画素上での色の再現可否を判別する手段、判別された前記再現可否に基づいて各前記候補条件を評価するための条件評価情報を生成する手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る印刷色再現条件の評価方法及びその選択方法、色変換方法及びその装置並びにプログラムによれば、評価対象として指定されたメディア群、保護膜群及び観察光源群の中から選択し得るすべての印刷色再現条件を候補条件として設定し、画像データの各画素上での色の再現可否を判別し、該再現可否に基づいて各前記候補条件を評価するための条件評価情報を生成するようにしたので、作業者が予め指定した評価対象の範囲内で効率良く条件を絞り込むことが可能であるとともに、異なる印刷色再現条件毎に印刷物を形成して該印刷物の色再現性を評価する必要がなくなり、膨大な数の条件組み合わせの中から印刷物の色再現性の良し悪しを容易に且つ適切に評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態に係る色変換装置が組み込まれた印刷システムの斜視説明図である。
【図2】図1に示すカラーチャートの概略正面図である。
【図3】図1に示す色変換装置の機能ブロック図である。
【図4】図3に示すプロファイル生成部の機能ブロック図である。
【図5】図3に示す測色値算出部の機能ブロック図である。
【図6】図3に示す色再現シミュレーション部の機能ブロック図である。
【図7】印刷色再現条件の評価変数を設定する画面の一例を示す図である。
【図8】各候補条件に対する色再現性シミュレーションの評価結果を表示する画面の一例を示す図である。
【図9】本実施形態に係る印刷システムを用いて、適切に色調整された保護膜付印刷物を得るためのフローチャートである。
【図10】図10A〜図10Cは、黒点補正によるガマット変換過程を説明する図である。
【図11】条件評価情報に基づいて各候補条件を評価する方法に関するフローチャートである。
【図12】図12A〜図12Cは、図3の色再現シミュレーション部で生成された評価用画像データの表示例を示す図である。
【図13】ラミネートフイルムの光学物性値を推定するために作製された測定試料の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る印刷色再現条件の評価方法についてそれを実施する色変換装置並びに印刷システムとの関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
図1は、本実施形態に係る色変換装置としての画像処理装置16が組み込まれた印刷システム10の斜視説明図である。
【0034】
印刷システム10は、LAN12と、編集装置14と、色変換装置としての画像処理装置16と、印刷機18と、ラミネート処理装置20と、測色計22とを基本的に備える。
【0035】
LAN12は、イーサネット(登録商標)等の通信規格に基づいて構築されているネットワークである。編集装置14と、画像処理装置16と、データベースDBとは、前記LAN12を介して有線又は無線により相互に接続されている。
【0036】
編集装置14は、文字、図形、絵柄や写真等から構成されるカラー画像の配置をページ毎に編集が自在であり、ページ記述言語(以下、PDLという。)による電子原稿、例えば、4色(CMYK)や3色(RGB)のカラーチャンネルからなる8ビット画像データを生成する。
【0037】
ここで、PDLとは、印刷や表示等の出力単位である「ページ」内で文字、図形等の書式情報、位置情報、色情報(濃度情報を含む)等の画像情報を記述する言語である。例えば、PDF(Portable Document Formatの略で、ISO32000−1:2008に規定)、AdobeSystems社のPostScript(登録商標)やXPS(XML Paper Specification)等が知られている。
【0038】
また、編集装置14には図示しないカラースキャナが接続されており、該カラースキャナは、所定の位置にセットされたカラー原稿を光学的に読み取ることで、前記電子原稿の構成要素となるカラー画像データを取得可能である。
【0039】
画像処理装置16は、後述のように、PDLによる電子原稿をビットマップ形式(ラスタ画像の一種)に展開し、所望の画像処理、例えば、色変換処理、画像拡縮処理や配置処理等を行い、印刷機18の印刷方式に適した印刷信号に変換し、前記印刷機18に前記印刷信号を送信する各機能を有している。
【0040】
また、画像処理装置16は、CPU・メモリ等を有する本体24と、カラー画像を表示する表示装置26と、入力部としての入力装置28(キーボード30及びマウス32)を備えている。さらに、画像処理装置16には、電子データの記録・消去が自在な可搬型メモリ34や測色計22が接続されている。
【0041】
印刷機18は、C、M、Y、Kの各色(プロセスカラー)からなる標準インクと、LC、LM等の淡色やW(白色)等のオプションインクとを組み合わせてカラー画像を形成するインクジェット方式の印刷装置である。この印刷機18は、外部(例えば、画像処理装置16)から受信した印刷信号に基づいて各色のインクの射出制御を行うことにより、印刷媒体としてのメディア36(図1では、ロール状の未印刷のメディア36)上にカラー画像を印刷し、印刷物38(印刷物38の一種であるカラーチャート38cが含まれる。)を形成する。
【0042】
ラミネート処理装置20は、印刷物38の画像形成面上に、必要に応じて更にその裏面に、保護膜としてのラミネートフイルム40を貼付させた状態で、図示しない加熱ローラを用いて加熱・加圧処理を施すことにより、印刷物38の画像形成面が保護された保護膜付印刷物42を形成する。
【0043】
メディア36の基材には、合成紙・厚紙・アルミ蒸着紙等の紙類、塩化ビニル・PET等の樹脂やターポリン等を用いることができる。保護膜には、ラミネートフイルム40に限られず、液体、ニス、透明インク、クリアトナー、並びにアクリル板等の保護板等を用いることができる。
【0044】
測色計22は、測定対象物の色値を測定する。ここで色値とは、三刺激値XYZ、均等色空間の座標値L***等のみならず、波長に対する光学物性値の分布(以下、「分光データ」という。)、例えば、分光放射分布(分光分布)、分光感度分布、分光反射率又は分光透過率が含まれる。また、測色計22を用いた測色により得られた色値を「測色値」という場合がある。
【0045】
図1では、印刷システム10は光源LS下に設置されている。保護膜付印刷物42(又は印刷物38)の掲示場所に応じて、観察光源としての光源LSの分光分布が異なる場合がある。
【0046】
図2は、図1に示すカラーチャート38cの概略正面図である。
【0047】
カラーチャート38cは、メディア36上に印刷された、色の異なる100個の略同形状のカラーパッチ44と、該カラーパッチ44の行方向及び列方向の配列位置を特定する数字列46及びアルファベット文字列48と、前記カラーチャート38cの印刷条件を識別する情報からなる印刷情報50とから構成される。
【0048】
各カラーパッチ44は、縦方向には10個のカラーパッチ44が隙間なく配置され、横方向には10個のカラーパッチ44が所定間隔の隙間を設けながら配置されている。各カラーパッチ44の色は、CMYK値の各信号レベルの範囲(百分率では0%〜100%、8ビット階調である場合は0〜255)の所定の値が設定されている。
【0049】
数字列46は、上から順に(01)〜(10)の文字列として、各カラーパッチ44の左方部にその位置に対応するように設けられている。一方、アルファベット文字列48は、左から順番に(A)〜(J)の文字列として、各カラーパッチ44の上方部にその位置に対応するように設けられている。
【0050】
印刷情報50には、印刷機18の機種、シリアル番号若しくは登録名、後述する印刷モード、メディア36の種類、印刷日時等が印刷されている。
【0051】
図3は、本実施形態に係る色変換装置としての画像処理装置16の機能ブロック図である。なお、電子原稿は白抜実線矢印の方向に、カラーチャート38c用の画像データは白抜破線矢印の方向に、その他の各種データは実線矢印の方向にそれぞれ供給されることを表す。
【0052】
画像処理装置16の本体24は、編集装置14側から供給される電子原稿を入力するI/F52と、該I/F52を介して供給された電子原稿のPDL形式をビットマップ形式に展開するRIP54(ラスタイメージングプロセッサ)と、該RIP54により展開された電子原稿のCMYK値(あるいはRGB値)に対して所定の色変換処理を施して新たなCMYK値の画像データを得る色変換処理部56と、該色変換処理部56により色変換されて得られた新たなCMYK値の画像データを印刷機18に適した印刷信号(インク射出制御データ)に変換する印刷機ドライバ58と、該印刷機ドライバ58により変換された印刷信号を印刷機18側に出力するI/F60とを備える。
【0053】
また、本体24は、印刷機18毎にプロファイルを生成するプロファイル生成部62と、プロファイルが備える色変換LUTに対して後述する黒点補正を行う黒点補正処理部64と、カラーチャート38cを印刷するための画像データを生成する画像データ生成部66と、ラミネートフイルム40の光学物性値を推定する光学物性値推定部68と、電子原稿の画像データを用いて色再現性のシミュレーションを行う色再現シミュレーション部70と、表示装置26との接続を可能とするI/F72と、入力装置28(キーボード30及びマウス32)との接続を可能とするI/F74と、測色計22との接続を可能とするI/F76と、可搬型メモリ34との接続を可能とするI/F78とを備える。
【0054】
さらに、本体24は、その内部の各構成要素から供給される各種データを記憶し、あるいは記憶している各種データを各構成要素に供給する記憶部80を備えている。該記憶部80は、RIP54と、色変換処理部56と、プロファイル生成部62と、黒点補正処理部64と、画像データ生成部66と、光学物性値推定部68と、色再現シミュレーション部70と、I/F72と、I/F74と、I/F76と、I/F78とにそれぞれ接続されている。
【0055】
なお、色変換処理部56は、デバイス依存データからデバイス非依存データに変換する目標プロファイル処理部82と、デバイス非依存データからデバイス依存データに変換する印刷プロファイル処理部84とを備える。ここで、デバイス依存データとは、各種デバイスを適切に駆動するためのCMYK値、RGB値等で定義されるデータである。また、デバイス非依存データとは、HSV(Hue−Saturation−Value)、HLS(Hue−Lightness−Saturation)、CIELAB、CIELUV、XYZ等の表色系で定義されるデータである。
【0056】
なお、RIP54は、電子原稿のビットマップ形式化の際に、印刷機18の解像度等に対応した画像拡縮処理や、印刷フォーマットに対応した回転・反転処理等の種々の画像処理を行うことができる。
【0057】
また、印刷機ドライバ58は、CMYK値からインク各色(CMYK、LC、LM、又はW)に対応するインク射出制御用データを作成する。このインク射出制御用データは、印刷機18のインク射出動作(ON・OFFやインクドット径の大小等)との間でその印刷機18固有のデータ定義に従って関連付けられている。その際、8ビット多階調画像から2値画像等の低階調画像への変換を要するが、ディザマトリクス法や誤差拡散法等の公知のアルゴリズムを用いることができる。
【0058】
さらに、目標プロファイル処理部82又は印刷プロファイル処理部84は、印刷機18の印刷モードに応じてプロファイルを補正することができる。ここで、印刷モードとは、印刷ヘッドのノズル数、印刷ヘッドの走査時におけるインク射出タイミング(片方向/双方向)、パス数、搭載インク色数及びその種類、インク射出制御用データ作成のアルゴリズム等の、印刷に関する各種設定をいう。
【0059】
さらに、CPU等で構成される図示しない制御部は、この画像処理に関するすべての制御を行う。すなわち、本体24内部の各構成要素の制御(例えば、記憶部80のデータ読出し・書込み)のみならず、I/F76を介して測色計22から測色データを取得する制御等も含まれる。
【0060】
本実施形態に係る画像処理装置16は以上のように構成され、上述した各画像処理機能は、基本プログラム(オペレーティングシステム)上で動作する応用プログラムを用いて実現することができる。
【0061】
図4は、図3に示すプロファイル生成部62の機能ブロック図である。
【0062】
プロファイル生成部62は、データ選択部86と、測色値算出部88と、LUT生成部90とから基本的に構成される。
【0063】
データ選択部86は、記憶部80から読み出された、設定データ100と、メディアの分光データ群102と、ラミネートフイルムの分光データ群104と、観察光源の分光データ群106とに基づいて、プロファイル生成条件におけるメディアの分光データ(以下、第1の分光データ112という。)、ラミネートフイルムの分光データ(以下、第2の分光データ114という。)、及び観察光源の分光データ(以下、第3の分光データ116という。)を選択する。ここで、設定データ100は、作業者により設定されるメディア36、ラミネートフイルム40及び光源LSの種類であり、プロファイル生成条件に関する設定データである。
【0064】
測色値算出部88は、データ選択部86により選択された第1、第2及び第3の分光データ112、114及び116に基づいて、プロファイル生成条件における測色値データ120を算出する。
【0065】
LUT生成部90は、測色値算出部88により算出された測色値データ120と、各カラーパッチ44(図2参照)に対応するCMYK値データ122とに基づいて、プロファイル生成条件における色変換LUT124を生成する。
【0066】
本実施形態では、100個のカラーパッチ44(パッチ番号は0〜99)に対するそれぞれの分光データが設けられており、光波長はλ1〜λ41である41点のデータを有している。例えば、λ1=400nm、……、λ41=800nmの10nm間隔とすることができる。
【0067】
図5は、図3に示す測色値算出部88の機能ブロック図である。
【0068】
測色値算出部88は、反射率・透過率予測部88aと、Lab演算部88bとから基本的に構成される。
【0069】
反射率・透過率予測部88aは、データ選択部86から供給された第1及び第2の分光データ112、114に基づいて、メディア36の種類に応じた数理モデルを適用して保護膜付印刷物42の分光反射率又は分光透過率(以下、第4の分光データ118という。)を予測する。
【0070】
ここで、メディア36が反射メディアである場合は、第1の分光データ112はメディア36の分光反射率であり、第2の分光データ114は、ラミネートフイルム40の各光波長に対する固有反射率、散乱係数、吸収係数(光学物性値)である。また、メディア36が透過メディアである場合は、第1の分光データ112はメディア36の分光透過率であり、第2の分光データ114は、ラミネートフイルム40の分光透過率(光学物性値)である。
【0071】
Lab演算部88bは、データ選択部86から供給された第3の分光データ116と、反射率・透過率予測部88aにより予測された第4の分光データ118と、図示しない等色関数(標準的な観測者の視覚特性を考慮した分光データ)とに基づいて、プロファイル生成条件における測色値データ120を算出する。
【0072】
図6は、図3の色再現シミュレーション部70の機能ブロック図である。
【0073】
色再現シミュレーション部70は、画像データに対して拡大処理又は縮小処理を施す画像拡縮処理部130と、デバイス依存データからデバイス非依存データに変換して各画素に対応する目標色を算出する目標色算出部132と、評価対象として指定されたメディア36群、ラミネートフイルム40群及び光源LS群(以下、総称して「各指定群」という場合がある。)の中から候補条件を設定する候補条件設定部134と、第1、第2及び第3の分光データ112、114、及び116に基づいてプロファイルを生成するプロファイル生成部136と、印刷プロファイルに基づいて画像データの各画素に対応する再現色を予測する再現色予測部138と、各画素上での色の再現可否を判別する再現可否判別部140と、後述する条件評価情報を生成する条件評価情報生成部142と、各候補条件を評価するための評価用画像データ生成部144と、デバイス非依存データ(L***値)で定義された評価用画像データをデバイス依存データ(RGB値)に変換する表示プロファイル処理部146とから構成される。
【0074】
図7は、印刷色再現条件の評価変数を設定する画面の一例を示す図である。
【0075】
設定画面150には、上方から下方に順番に、テキストボックス152a及び[開く]と表示されたボタン152bと、テキストボックス154a及び[開く]と表示されたボタン154bと、[重要色指定]と表示されたボタン156と、2個のチェックボックス158、160と、3個のプルダウンメニュー162、164、166と、[追加]と表示された3個のボタン168、170、172と、3個の表示欄174、176、178と、[確定]、[削除]、[全削除]と表示されたボタン180、182、184とが設けられている。
【0076】
設定画面150の左上部に位置するテキストボックス152aとボタン152bは左右方向に隣接して設けられている。テキストボックス152aの左方には「印刷画像」と表示されている。設定画面150の右上部に位置するテキストボックス154aとボタン154bは左右方向に隣接して設けられている。テキストボックス154aの左方には「プロファイル」と表示されている。
【0077】
テキストボックス152a、154aの下方に設けられたチェックボックス158、160は、マウス32(図1参照)のクリック動作によってチェックマークの付加・削除が自在である。チェックボックス158、160の右方にはそれぞれ「高彩度重視」、「シャドー重視」と表示されている。
【0078】
設定画面150の中央部に位置するプルダウンメニュー162、164、166は左右方向に並設されており、欄には「塩ビB」、「マットC」、「F8」とそれぞれ表示されている。プルダウンメニュー162、164、166の上方には「メディア」、「ラミネート」、「観察光源」とそれぞれ表示されており、下方には、ボタン168、170、172がそれぞれ配設されている。
【0079】
3個の表示欄174、176、178は、ボタン168、170、172のさらに下方に、且つ、「候補条件リスト」と表示された枠186の内部に設けられている。表示欄174には「塩ビA」、「塩ビB」と表示され、表示欄176には「マットA」、「マットB」、「マットC」と表示され、表示欄178には「F8」と表示されている。
【0080】
図8は、各候補条件に対する色再現性シミュレーションの評価結果を表示する画面の一例を示す図である。
【0081】
設定画面190には、表示欄192と、[画像表示]と表示された複数のボタン194とが設けられている。
【0082】
表示欄192は、9行5列のマトリクス状に設けられた欄で構成されており、上から第1行目に相当する項目欄196、左から第1列目に相当する「メディア」の表示欄198、第2列目に相当する「ラミネート」の表示欄200、第3列目に相当する「観察光源」の表示欄202、第4列目に相当する「ガマット内」の表示欄204、第5列目に相当する「重要色精度」の表示欄206とから構成される。
【0083】
図9は、本実施形態に係る印刷システム10を用いて、適切な色の保護膜付印刷物42を得るためのフローチャートである。主に図1を参照しながら説明する。
【0084】
先ず、作業者は、評価対象とするメディア36群、ラミネートフイルム40群、光源LS群を指定する(ステップS1)。
【0085】
作業者は、図7に示す設定画面150のプルダウンメニュー162、164、166及びボタン168、170、172を用いて各指定群を入力する。ここでは、メディア36群の入力方法について説明する。
【0086】
作業者は、プルダウンメニュー162を用いて、予め登録されているメディア36の全種類の中から、候補条件として追加したいメディア36の種類を選択する。そうすると、プルダウンメニュー162の欄にその種類名(図7の例では「塩ビB」)が表示される。その状態で、作業者が[追加]ボタン168を押下すると、その下方の表示欄174内の最下段の直下に「塩ビB」が追加される。同様の作業を繰り返すことにより、メディア36の種類を適宜追加することができる。
【0087】
また、プルダウンメニュー164及びボタン170を用いて表示欄176にラミネートフイルム40の種類を追加可能であり、プルダウンメニュー166及びボタン172を用いて表示欄178に光源LSの種類を追加可能である。
【0088】
さらに、作業者は、マウス32(図1参照)のクリック動作により表示欄174、176、178内のいずれか項目を選択した後に、[削除]ボタン182を押下すると、その項目は削除される。なお、一度削除された項目についても上記の追加動作によって再度入力できることはいうまでもない。
【0089】
さらに、作業者は、[全削除]ボタン184を押下することで、表示欄174、176、178に表示された項目をすべて削除することができる。
【0090】
次いで、作業者は、条件評価情報に基づいて各候補条件を評価する(ステップS2)。
【0091】
ここで、条件評価情報とは、印刷しようとする電子原稿のデータに対する印刷色再現条件の適合性(色再現性)を評価するための情報であり、単一又は複数の評価値のみならず評価用画像データが含まれる。条件評価情報の生成方法や評価方法に関し、詳細は後述する。
【0092】
次いで、作業者は、ステップS2で行われた評価結果に基づいて、候補条件の中から一の印刷色再現条件(以下、「選択条件」という。)を選択する(ステップS3)。また、選択条件に対応する印刷プロファイルもあわせて選択される。
【0093】
なお、印刷機18に適切なプロファイルが登録(記憶部80等に記憶)されていない場合、印刷プロファイルは図3に示すプロファイル生成部62により生成される。なお、印刷プロファイルの生成方法は、色再現シミュレーション部70の一部を構成するプロファイル生成部136による生成方法と同様であるため、後に詳細に説明する。
【0094】
次いで、作業者は、印刷機18を用いて電子原稿を印刷して印刷物38を得る(ステップS4)。ここで、電子原稿の印刷の際の、画像処理装置16による画像処理の流れについて、図3を参照しながら詳細に説明する。
【0095】
編集装置14から供給された電子原稿(PDL形式)が、LAN12及びI/F52を介して画像処理装置16に入力されると、前記電子原稿は、RIP54によりそれぞれ8ビットのCMYKビットマップ形式(デバイス依存の画像データ)に展開され、目標プロファイル処理部82によりL***(デバイス非依存の画像データ)に変換され、印刷プロファイル処理部84によりCMYK値(デバイス依存の画像データ)に変換され、印刷機ドライバ58により印刷信号(すなわち、インク射出制御データ)に変換され、I/F60を介して印刷機18に供給される。その後、印刷機18により所望の印刷物38が印刷される。
【0096】
このとき、設定画面150(図7参照)のテキストボックス154aで設定されたプロファイルを目標プロファイルとして用いる。また、ステップS3で選択された選択条件に対応するプロファイルを印刷プロファイルとして用いる。
【0097】
これらの目標プロファイル及び印刷プロファイルは、記憶部80から黒点補正処理部64に供給され、必要に応じて黒点補正処理部64により黒点補正がなされた後に、目標プロファイル処理部82及び印刷プロファイル処理部84に供給される。
【0098】
例えば、印刷物38にラミネートフイルム40を被覆する場合は、黒点補正処理部64により印刷プロファイルが有する色変換LUT124を黒点補正することができる。
【0099】
ここで、黒点補正とは、第1プロファイルに係るガマット(以下、「第1ガマット」という。)境界上の黒点の色値と、第2プロファイルに係るガマット(以下、「第2ガマット」という。)境界上の黒点の色値とを一致させるようにマッピングする色変換処理である。
【0100】
黒点補正を行うアルゴリズムとしては、例えば、特開2004−153554号公報に開示された手法を用いることができる。この手法の概要について図10A〜図10Cを参照しながら説明する。
【0101】
図10Aは、黒点補正を行う前の第1ガマット210及び第2ガマット212の位置関係を示すグラフである。このグラフの横軸はa*、縦軸はL*で定義されており、三次元色空間L***の断面図を表す。図10B及び図10Cに示すグラフの座標軸定義についても同様である。
【0102】
例えば、第1ガマット210は、メディア36にラミネートフイルム40を被覆せずに光源LS下で観察した場合のガマットであるとする。また、第2ガマット212は、メディア36にラミネートフイルム40を被覆して光源LS下で観察した場合のガマットであるとする。すなわち、ラミネートフイルム40の被覆の有無によって第1ガマット210と第2ガマット212との差異が生じた場合について考える。
【0103】
第1ガマット210における白点をwt1、黒点をbk1とし、第2ガマット212における白点をwt2、黒点をbk2とする。
【0104】
先ず、第1ガマットの黒点bk1と第2ガマットの黒点bk2とを一致させるように、各ガマットを下方に平行移動する。このようにして平行移動後の第1ガマット210s、第2ガマット212sが得られる。図10Bに示すように、黒点bk1の変換後の黒点bk1’の色値、黒点bk2の変換後の黒点bk2’の色値はともに(0,0,0)で一致する。
【0105】
次いで、bk1’とbk2’の一致性を維持しつつ、第1ガマット210sの白点wt1’と第2ガマット212sの白点wt2’とを一致させるように、ガマット変換を行う。ここで、第1ガマット210sの領域は第2ガマット212sの領域よりも大きいので、第2ガマット212sを上方に拡大する変換を行う。
【0106】
本実施の形態では、色順応モデルの一種であるVon−Kries変換を応用して、黒点を固定しつつ白点を一致させる方法を用いている。変換アルゴリズムはこれに限られることなく、例えば、ガマットの相似変換(比率の変更)、Bradford変換、CIECAM97s変換、CIECAM02s変換等を用いてもよい。
【0107】
このようにして、Von−Kries変換後の第2ガマット212kが得られる。図10Cに示すように、白点wt1’の色値、白点wt2’の変換後の白点wt2”の色値は一致する。
【0108】
以上のように、第1プロファイルに係る黒点の色値と第2プロファイルに係る黒点の色値とを一致させるようにマッピング(本実施の形態では、ガマットの平行移動)をすることにより、印刷物38と保護膜付印刷物42との間において、特にシャドー領域内の色再現性を略一致させることができる。
【0109】
次いで、図9に戻って、印刷機18により得られた印刷物38に対してラミネート処理を施す(ステップS5)。
【0110】
具体的には、印刷物38の画像形成面上に(必要に応じて更にその裏面に)ラミネートフイルム40を貼付させた状態で、ラミネート処理装置20が備える図示しない加熱ローラを用いて加熱・加圧処理を施すことにより保護膜付印刷物42を得る。これにより、画像の擦過性・堅牢性を向上させることができる。なお、印刷物38にラミネートフイルム40を被覆させない場合は、ステップS5を省略できることはいうまでもない。
【0111】
次いで、保護膜付印刷物42のカラー画像の色を評価し(ステップS6)、画像の色が適切か否かを判断する(ステップS7)。所望の色合いが得られたか否かについての評価方法としては、画像の全体的外観又は部分的外観に着目し、作業者等の目視により良否を判断する方法、あるいは、測色計22を用いて保護膜付印刷物42の所定の箇所を測色し、その値が所望の範囲内に収まるか否かで判断する方法等が使用される。
【0112】
この画像評価の結果、保護膜付印刷物42の画像の色が適切でないと判断された場合は、他の候補条件の中から別の印刷色再現条件を選択し、印刷と評価を繰り返す(ステップS3〜S7)。このようにして、所望の色の保護膜付印刷物42が得られる。
【0113】
以上、本実施形態に係る印刷システム10を用いて、適切に色調整された保護膜付印刷物42を得るためのフローチャートについて説明した。次いで、各候補条件を評価する方法(ステップS2)について更に詳細に説明する。
【0114】
図11は、条件評価情報に基づいて各候補条件を評価する方法に関するフローチャートである。
【0115】
先ず、各指定群の中から選択し得るすべての印刷色再現条件を候補条件として設定する(ステップS21)。ここで、各指定群とは、設定画面150(図7参照)で指定され、表示欄174、176、178に表示されたメディア36群、ラミネートフイルム40群、光源LS群である。
【0116】
図6に示すように、評価対象となり得る各指定群の情報は、記憶部80から候補条件設定部134に供給され、候補条件設定部134により候補条件が設定される。候補条件は、各指定群の中から選択し得るすべての印刷色再現条件であり、通常は、メディア36群、ラミネートフイルム40群、光源LS群の全通りの組合せを採ることができる。なお、所定の印刷色再現条件について予め制限しておき、その印刷色再現条件のみを除外するようにしてもよい。ここでは、N個の候補条件を設定するものとする。
【0117】
次いで、各候補条件に対応する印刷プロファイルをそれぞれ生成する(ステップS22)。
【0118】
図6に示すように、記憶部80から供給された各分光データと、候補条件設定部134から供給された候補条件とに基づいて、プロファイル生成部136により各印刷プロファイルが生成される。以下、図4及び図5を参照しながら説明する。
【0119】
図4に示すように、記憶部80から供給された設定データ100、メディアの分光データ群102、ラミネートフイルムの分光データ群104及び観察光源の分光データ群106の中から、各候補条件としての設定データ100と対応付けられた第1、第2及び第3の分光データ112、114、及び116がデータ選択部86により選択される。
【0120】
さらに、図5に示すように、測色値算出部88の一部を構成する反射率・透過率予測部88aにより、第1及び第2の分光データ112、114に基づいて、所定の数理モデルを適用して第4の分光データ118(すなわち、保護膜付印刷物42の分光反射率又は分光透過率)が予測される。
【0121】
メディア36が反射メディアである場合、クベルカ・ムンク(以下、「Kubelka−Munk」という。)モデルを適用することができる。具体的には、以下の(1)式に基づいて、保護膜付印刷物42の分光反射率Rが予測される。なお、各変数とも光波長毎の関数であるが、説明の便宜のため省略する。
R=[(Rg−R∞)/R∞−R∞(Rg−1/R∞)exp{Sx(1/R∞−R∞)}]/[(Rg−R∞)−(Rg−1/R∞)exp{Sx(1/R∞−R∞)}] …(1)
【0122】
ここで、[Rg]は印刷物38単体の分光反射率(第1の分光データ112)、[R∞]はラミネートフイルム40の分光固有反射率、[S]はラミネートフイルム40の単位厚さ当たりの散乱係数、[x]はラミネートフイルム40の厚さを表す(“New Contribution to the Optics of Intensely Light−Scattering Materials.Part I,JOURNAL OF THE OPTICAL SOCIETY OF AMERICA,VOLUME38、NUMBER5,PP,448−457,MAY,1948 参照)。
【0123】
一方、メディア36が透過メディアである場合、メディア36とラミネートフイルム40との分光透過率の乗算により、保護膜付印刷物42の分光透過率を精度良く推定できる。
【0124】
図5に戻って、Lab演算部88bにより、第3の分光データ116及び第4の分光データ118に基づいて、プロファイル生成条件における測色値データ120が算出される。ここで、プロファイル生成条件における測色値データ120は、実測データに基づいて推定された、光源LSの下で保護膜付印刷物42を観察する場合におけるL***である。
【0125】
具体的には、各カラーパッチ44の三刺激値XYZは、光源LSの分光放射分布と、保護膜付印刷物42の分光反射率(又は分光透過率)と、等色関数とを乗算し、可視光波長の範囲内で積分した値に相当する。この三刺激値XYZと所定の演算式に基づいて、測色値データ120としての各カラーパッチ44のL***が算出される。本実施形態では、100個のカラーパッチ44をそれぞれ測定したので、100組のL***が得られる。
【0126】
そして、図4に示すLUT生成部90により、100組の測色値データ(L***)120及び100組のCMYK値データ122との対応関係に基づいて印刷プロファイルとしての3次元データ(L***)を4次元データ(CMYK)に変換する色変換LUT124を生成することができる。
【0127】
つまり、保護膜付印刷物42の分光反射率(又は分光透過率)に基づいて色変換テーブルの各格子点に対応する各分光反射率(又は分光透過率)が決定され、該各分光反射率(又は分光透過率)に基づいて保護膜付印刷物42のプロファイルが生成される。
【0128】
このように構成しているので、メディア36、ラミネートフイルム40及び光源LSの単体の分光データを一度取得すれば、保護膜付印刷物42その物を形成することなく印刷プロファイルを推定できる。これにより、プロファイル生成のための一連の作業の回数を低減することができる。この一連の作業とは、印刷機18によるカラーチャート38cの印刷(待ち時間を含む。)、ラミネート処理装置20によるラミネート処理、測色計22による測色である。
【0129】
このようにして、各候補条件に対応する印刷プロファイルをそれぞれ生成する(ステップS22)。
【0130】
次いで、図11に戻って、目標プロファイルを用いて画像データの各画素における目標色をそれぞれ算出する(ステップS23)。
【0131】
図6に示すように、実際に印刷する電子原稿と同じデータは、画像拡縮処理部130に供給され、該画像拡縮処理部130により必要に応じてラスタライズ処理が施された後、画像データの画素が間引かれ(すなわち画像縮小処理がなされ)、新たな画像データ(以下、「間引き画像データ」という。)が生成される。これにより、以降の画像処理に対する所要時間を短縮することができるので好ましい。
【0132】
その後、間引き画像データは、画像拡縮処理部130から目標色算出部132に供給され、該目標色算出部132によりデバイス非依存データである目標色データ(例えば、L***)に変換される。この変換には、記憶部80から供給された目標プロファイルが備える色変換LUT124が用いられる。なお、間引き画像データがデバイス非依存データである場合は、この処理を省略できることはいうまでもない。
【0133】
次いで、i=1とし、候補条件の対応番号を表すiを初期化する(ステップS24)。
【0134】
次いで、i番目の印刷プロファイルを用いて、間引き画像データの各画素における再現色を予測する(ステップS25)。目標色算出部132から供給された目標色データは、再現色予測部138により、プロファイル生成部136で生成されたi番目の印刷プロファイル(色変換LUT124)を用いて各画素に対応する再現色に変換される。
【0135】
次いで、画像データの各画素について色の再現可否を判別する(ステップS26)。目標色算出部132から供給された目標色データと、再現色予測部138から供給された再現色データ(あるいはプロファイル生成部136から供給された印刷プロファイル)とを用いて、画素毎にこの判別処理がなされる。
【0136】
具体的には、各画素に対応する目標色が、印刷プロファイルが形成するガマット(以下、「再現ガマット」という。)の範囲に属するか否かによって判別することができる。また、各画素に対応する再現色と目標色との色差が所定の範囲内に収まるか否かによって判別するようにしてもよい。再現ガマットの範囲内の色であれば精度良く色再現できるので、色差によりガマット属否(例えば、ΔE<3ならば再現ガマットの範囲内)を推定してもよい。
【0137】
次いで、i番目の印刷プロファイル、すなわちi番目の候補条件における条件評価情報を生成する(ステップS27)。
【0138】
再現可否判別部140から供給された各画素上での再現可否の結果は、条件評価情報生成部142に供給され、該条件評価情報生成部142により条件評価情報が生成される。条件評価情報は、上述した通り、単一又は複数の評価値であってもよく、評価用画像データであってもよい。
【0139】
第1の条件評価情報として、画像データの画素数に対する、再現可能であると判別された色に対応する画素数の割合(百分率)、すなわち再現可能率を用いてもよい。
【0140】
また、再現可能率の第1変形例として、色空間座標の色領域に応じた重み付けをし、画素毎に加算して評価値を得るようにしてもよい。これにより、作業者が色再現性を重視した色領域における評価比重が高くなるので、作業者の要求に適う印刷色再現条件を選択し易くなる。例えば、作業者は、図7に示す[重要色指定]ボタン156を押下することで、図示しない別の設定画面に遷移され、表示される色空間座標マップのうち作業者が重要視する所定の色領域を自在に選択できるようにしてもよい。
【0141】
さらに、再現可能率の第2変形例として、画像データの画像領域に応じた重み付けをし、画素毎に加算して評価値を得るようにしてもよい。これにより、作業者が色再現性を重視した画像領域における評価比重が高くなるので、作業者の要求に適う印刷色再現条件を選択し易くなる。例えば、作業者は、図7に示す[重要色指定]ボタン156を押下することで、図示しない別の設定画面に遷移され、表示されるカラー画像のうち作業者が重要視する所定の画像領域を自在に選択できるようにしてもよい。
【0142】
さらに、再現可能率の第3変形例として、高彩度色を重視する評価値を得るようにしてもよい。例えば、彩度が所定の値を超えた色についての評価比重を高くすることができる。図7に示す[高彩度重視]チェックボックス158にチェックマークを付加した状態がONに相当し、チェックボックス158からチェックマークを削除した状態がOFFに相当する。
【0143】
さらに、再現可能率の第4変形例として、シャドー色を重視する評価値を得るようにしてもよい。例えば、明度が所定の値を超えない色についての評価比重を高くすることができる。図7に示す[シャドー重視]チェックボックス160にチェックマークを付加した状態がONに相当し、チェックボックス160からチェックマークを削除した状態がOFFに相当する。
【0144】
第2の条件評価情報として、各画素のアドレスに対応する画像データを用いてもよい。これにより、各画素における色再現可否の状態を区別することができる。例えば、目標色が再現ガマットの範囲内の色であり、且つ、再現色との色差が所定の範囲内であるときは「3」、目標色が再現ガマットの範囲内の色であるが再現色との色差が所定の範囲を超えるときは「2」、目標色が再現ガマットの範囲内の色ではないが再現色との色差が所定の範囲内であるときは「1」、目標色が再現ガマットの範囲内の色でなく、且つ、再現色との色差が所定の範囲を超えるときは「0」を与えた4値画像データを生成してもよい。
【0145】
このようにして生成された条件評価情報は、評価用画像データ生成部144に供給されるか、あるいは記憶部80に一旦記憶される。その後、条件評価情報は、評価用画像データ生成部144により評価用画像データに変換される。
【0146】
後述するように、目標色が再現ガマットに属しないと判別された画素の値を、属しない旨を可視化して判別可能となるような値に置き換えてもよい。すなわち、表示装置26等に出力されたその評価用画像を観察する際、目標色が再現ガマットに属すると判別された画素の色値と比較して、明確に識別可能である異なる色値に変換してもよい。
【0147】
例えば、黒色、灰色等の無彩色や、赤色や青色等の高彩度色でもよい。あるいは、画像データのヒストグラムを解析し、使用頻度が低い色を用いてもよい。そうすれば、作業者は、色の再現可否について視覚的・感覚的に把握できる。
【0148】
次いで、N個の全候補条件について完了したか否かを判定し(ステップS28)、完了していないと判定された場合はiをカウントアップし(ステップS29)、次のi+1番目の候補条件について同様の動作を繰り返す(ステップS25〜S27)。
【0149】
最後に、評価結果を表示する(ステップS30)。生成された評価用画像データは、評価用画像データ生成部144から表示プロファイル処理部146に供給され、該表示プロファイル処理部146によりRGB値に変換され、I/F72を介して表示装置26側に供給され、該表示装置26により可視画像として表示される。
【0150】
図12A〜図12Cは、図3の色再現シミュレーション部70で生成された評価用画像データの表示例を示す図である。なお、実際は、ウィンドウ220にカラー画像が表示されるものであるが、説明の便宜上、色彩を省略し輪郭のみを描画している。
【0151】
図12Aは、メディア36が「塩ビB」、ラミネートフイルム40が「マットB」、光源LSが「F8」である場合における評価画像データを示す。
【0152】
作業者は、図8に示す[画像表示]ボタン194bを押下すると、別のウィンドウ220が新たに表示される。ウィンドウ220の中央部には第1の評価用画像データ222が表示されており、その下方にはチェックボックス224、[閉じる]と表示されたボタン226がそれぞれ設けられている。なお、作業者がボタン226を押下すると、ウィンドウ220は閉じられ非表示になる。
【0153】
図8の表示欄204に示されるように、再現可能率は78%であり、カラー画像の色再現性が低いことが確認できる。色再現性の差異を判別しにくい場合は、作業者は、マウス32(図1参照)を用いて、「ガマット表示」なるチェックボックス224にチェックマークを付加すると(チェックボックス230)、図12Bに示すように、目標色が再現ガマットの範囲に属さないと判別された画素の値は、グレーに相当する値(例えば、8ビット階調表示で、R=G=B=30)に置き換えられて第2の評価用画像データ228として表示される(ハッチングで示した領域)。これにより、作業者は色再現性の良し悪しを一見して把握できる。
【0154】
さらに、図12Bのダブルハッチングで示した領域は、一例として青色に相当する値に相当する値(例えば、8ビット階調表示で、R=G=0、B=255)で表示されている。この領域は、ラミネートフイルム40を被覆しない場合は再現ガマットの範囲内の色であるが、ラミネートフイルム40を被覆する場合は再現ガマットの範囲外の色である画素の集合を表す。これにより、ラミネートフイルム40の有無による影響度を一見して把握できる。
【0155】
図12Cは、メディア36が「塩ビA」、ラミネートフイルム40が「マットC」、光源LSが「F8」である場合における評価画像データを示す。作業者は、図8に示す[画像表示]ボタン194gを押下すると、別のウィンドウ220が新たに表示される。
【0156】
図8の表示欄204に示されるように、再現可能率は92%であり、カラー画像の色再現性が高いことが確認できる。チェックボックス230にチェックマークを付加しても、第3の評価用画像データ232ではグレーや青色に置換された画素がほとんど目立つことなく表示される。
【0157】
このようにして、各候補条件が評価され(ステップS2)、一の印刷色再現条件が選択される(ステップS3)。最も評価結果の良い候補条件を自動的に選択してもよいし、作業者による選択の一助にしてもよい。
【0158】
ところで、印刷プロファイルの生成に用いられる、メディアの分光データ群102、ラミネートフイルムの分光データ群104、観察光源の分光データ群106の取得方法について詳細に説明する。
【0159】
第1に、メディア36の分光データ(第1の分光データ112)の取得方法について説明する。具体的には、本体24に接続された測色計22を用いて、メディア36の分光反射率又は分光透過率を直接取得する方法について、主に図3を参照しながら説明する。
【0160】
作業者は、表示装置26に表示された図示しない設定画面上からカラーチャート38cの印刷の要求を行う。すると、本体24の画像データ生成部66によりカラーチャート38cを印刷するための画像データ(CMYK値)が生成され、印刷機ドライバ58に供給され、電子原稿の印刷と同様の動作により印刷機18側に供給される。このように、カラーチャート38c(図2参照)が印刷される。
【0161】
なお、各カラーパッチ44の画素値に対応するCMYK値データ122(図4参照)は、予め記憶部80に記憶されており、画像データの生成の際に前記記憶部80から読み出される。
【0162】
作業者は、ラミネート処理装置20(図1参照)によるラミネート処理を行わずに、画像処理装置16に接続された測色計22を用いて、カラーチャート38c(図2参照)の各カラーパッチ44の分光データを測定する。なお、メディア36が反射メディアである場合は分光反射率を測定し、メディア36が透過メディアである場合は分光透過率を測定する。
【0163】
例えば、図2のように、数字列46及びアルファベット文字列48で示される(A)列の(01)〜(10)、(B)列の(01)〜(10)のように、各カラーパッチ44を測色する順番を予め決定しておくことが好ましい。作業者による測色完了の通知に基づいて、各カラーパッチ44に対応する分光データが、I/F76を介して、メディア36の種類を関連付けて記憶部80に保存される(図3参照)。
【0164】
第2に、ラミネートフイルム40の分光データ(第2の分光データ114)の取得方法について説明する。
【0165】
ラミネートフイルム40の分光透過率については、本体24に接続された測色計22を用いて測定することができる。一方、測色計22を用いて、R∞(固有反射率)及びSx(散乱係数)を直接測定することは困難である。
【0166】
そこで、測色計22を用いて測定試料を測色し、未知の変数であるR∞及びSxを実験的に推定する方法について、主に図13を参照しながら説明する。
【0167】
図13は、ラミネートフイルム40の光学物性値を推定するために作製された測定試料240の概略断面図である。測定試料240は、白色の不透明体からなる分光反射率Rg1の基材242と、黒色材244と、測定対象としてのラミネートフイルム40とから構成される。
【0168】
作業者は、測色計22を用いて測定試料240の各部位の分光反射率を測定する。その結果、基材242上にラミネートフイルム40を被覆したときの分光反射率をR1、前記基材242上に黒色材244を設けたときの分光反射率をRg2、前記基材242上に前記黒色材244を介してラミネートフイルム40を被覆したときの分光反射率をR2(R1>R2)とする測定値が得られたとする。
【0169】
この測定値は、図3に示す画像処理装置16(本体24)が備えるI/F76を介して、記憶部80に一旦記憶される。その後、光学物性値推定部68に供給され、以下に示す数式にしたがってのような演算処理が行われる。
【0170】
ラミネートフイルム40の固有反射率R∞は、数学的解析により、
R∞={C−√(C2−4)}/2 …(2)
C={(R1+Rg2)(R2・Rg1−1)−(R2+Rg1)(R1・Rg2−1)}/(R2・Rg1−R1・Rg2) …(3)
として算出される(紙の特集:「たかが紙、されど紙、やはり紙」、“紙の特性と評価方法及び規格の動向” (2004、日本画像学会誌150) 参照)。なお、R1<R2の場合は(3)式の添字1及び2を逆にする。
【0171】
ここで、固有反射率R∞は、試料が無限の厚みを有すると仮定した場合の反射率である。したがって、同一種類のラミネートフイルム40を多数枚重ねて形成することが可能である場合、固有反射率R∞を直接測定して求めてもよい。
【0172】
次いで、実測値Rn(n=1又は2)と、実測値Rgn(n=1又は2)と、(2)式で算出したR∞とを用いて、ラミネートフイルム40の散乱係数S及び厚さxは、
S・x=ln[{(R∞−Rgn)(1/R∞−Rn)}/{(R∞−Rn)(1/R∞−Rgn)}]/(1/R∞−R∞) …(4)
として算出できる(「色彩再現の基礎と応用技術」88ページ(21)式(トリケップス)参照)。
【0173】
ここで、Sは単位厚さ当たりの散乱係数であり、xはラミネートフイルム40の厚さである。散乱係数の定義に関して、説明の便宜上、Sx(=S・x)を膜厚xでの散乱係数(つまり、1つの変数)として定義するが、S、Sxのいずれを用いてもよい。また、吸収係数Kも同様である。
【0174】
このように、基材242、黒色材244、及びラミネートフイルム40を組み合わせた測定試料240を用いて、ラミネートフイルム40の光学物性値(固有反射率R∞及び散乱係数Sx)を推定することができる。
【0175】
第3に、ラミネートフイルム40の分光放射分布(第3の分光データ116)の取得方法について説明する。
【0176】
メディア36が反射メディアである場合、作業者は、図示しない非接触測色計を白色基準板に指向させて測定を行うことにより、光源LSの分光データを直接的に取得することができる。また、メディア36が透過メディアである場合、作業者は、前記非接触測色計を光源に指向して測定を行うことにより、光源LSの分光データを直接的に取得することができる。
【0177】
なお、第1、第2及び第3の分光データ112、114、116は、上述した方法のほか、データベースDB(図1参照)に分光データを管理させておき、必要に応じて該データベースDBから所望の分光データを取得できる構成であってもよい。さらに、本体24に接続した可搬型メモリ34(図1参照)から所望の分光データを取得してもよい。
【0178】
以上のように、評価対象とする各指定群(メディア36群、ラミネートフイルム40群及び光源LS群)の中から選択し得るすべての印刷色再現条件を候補条件として設定し、設定された各前記候補条件に対応する各メディア36に印刷して得られる印刷物38の第1の分光データ112と、各ラミネートフイルム40の第2の分光データ114と、各光源LSの第3の分光データ116とに基づいて各印刷プロファイルをそれぞれ生成し、生成された各前記候補条件に対応する各前記印刷プロファイルに基づいて画像データの画素に対応する再現色を予測し、予測された前記再現色と印刷の際の目標色とに基づいて前記画素上での色の再現可否を判別し、判別された前記再現可否に基づいて各前記候補条件を評価するための条件評価情報を生成するようにしたので、作業者は、予め指定した評価対象の範囲内で効率良く条件を絞り込むことが可能であるとともに、異なる印刷色再現条件毎に印刷物38を形成して該印刷物38の色再現性を評価する必要がなくなり、膨大な数の条件組み合わせの中から印刷物38の色再現性の良し悪しを容易に且つ適切に評価できる。
【0179】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0180】
例えば、本実施形態では、カラーチャート38cが有するカラーパッチ44の個数を100個、分光データの数を41点、光波長の間隔を10nmとしているが、色再現精度、画像処理時間等を総合的に勘案し、これらを自由に変更できるように構成してもよい。
【0181】
また、本実施の形態では、保護膜付印刷物42の測色値の予測式としてKubelka−Munkモデルを用いているが、その変形式、あるいは他の数理モデルも適用できることはいうまでもない。
【0182】
さらに、プロファイル生成部62とプロファイル生成部136、目標プロファイル処理部82と目標色算出部132、印刷プロファイル処理部84と表示プロファイル処理部146は、LUT処理機能としてそれぞれ同じであるから、共通モジュールとして使用してもよい。
【0183】
さらに、本実施形態では、印刷機18がインクジェット方式である構成を採っているがこれに限定されることなく、電子写真、感熱方式等であっても本発明の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0184】
10…印刷システム 14…編集装置
16…画像処理装置 18…印刷機
20…ラミネート処理装置 22…測色計
24…本体 26…表示装置
36…メディア 38…印刷物
38c…カラーチャート 40…ラミネートフイルム
42…保護膜付印刷物 44…カラーパッチ
52、60、72、74、76、78…I/F
54…RIP 56…色変換処理部
58…印刷機ドライバ 62、136…プロファイル生成部
64…黒点補正処理部 66…画像データ生成部
68…光学物性値推定部 70…色再現シミュレーション部
80…記憶部 82…目標プロファイル処理部
84…印刷プロファイル処理部 86…データ選択部
88…測色値算出部 88a…反射率・透過率予測部
88b…Lab算出部 90…LUT生成部
100…設定データ 102…メディアの分光データ群
104…ラミネートフイルムの分光データ群 106…観察光源の分光データ群
112…第1の分光データ 114…第2の分光データ
116…第3の分光データ 118…第4の分光データ
120…測色値データ 122…CMYK値データ
124…色変換LUT 130…画像拡縮処理部
132…目標色算出部 134…候補条件設定部
138…再現色予測部 140…再現可否判別部
142…条件評価情報生成部 144…評価用画像データ生成部
146…表示プロファイル処理部
162、164、166…プルダウンメニュー
152a、154a…テキストボックス
152b、154b、156、168、170、172、180、182、184、194、194b、194g…ボタン
158、160…チェックボックス
174、176、178、192、198、200、202、204、206…表示欄
186…枠 196…項目欄
210、210s…第1ガマット
212、212s、212k…第2ガマット
240…測定試料 242…基材
244…黒色材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディア、保護膜及び観察光源に関する情報が含まれる印刷色再現条件を、カラー画像を表す画像データに対して適用する場合における色再現性を予測して評価する印刷色再現条件の評価方法であって、
評価対象とするメディア群、保護膜群及び観察光源群を指定する指定ステップと、
指定された前記メディア群、前記保護膜群及び前記観察光源群の中から選択し得るすべての印刷色再現条件を候補条件として設定する設定ステップと、
設定された各前記候補条件に対応する各メディアに印刷して得られる印刷物の光学物性値と、各保護膜の光学物性値と、各観察光源の分光分布とに基づいて各印刷プロファイルをそれぞれ生成するプロファイル生成ステップと、
生成された各前記候補条件に対応する各前記印刷プロファイルに基づいて前記画像データの画素に対応する再現色を予測する予測ステップと、
予測された前記再現色と印刷の際の目標色とに基づいて前記画素上での色の再現可否を判別する判別ステップと、
判別された前記再現可否に基づいて各前記候補条件を評価するための条件評価情報を生成する条件評価情報生成ステップと
を備えることを特徴とする印刷色再現条件の評価方法。
【請求項2】
請求項1記載の印刷色再現条件の評価方法において、
前記判別ステップは、前記目標色が印刷の際の再現ガマットに属するか否かによって前記画素上での色の再現可否を判別する
ことを特徴とする印刷色再現条件の評価方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷色再現条件の評価方法において、
前記条件評価情報は、前記画像データの画素数に対する、再現可能であると判別された色に対応する画素数の割合である
ことを特徴とする印刷色再現条件の評価方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷色再現条件の評価方法において、
前記条件評価情報は、前記カラー画像の各画素に対応する色についての前記再現可否を可視化して判別可能となるように、各前記画素の画素値が決定された評価用画像データである
ことを特徴とする印刷色再現条件の評価方法。
【請求項5】
請求項4記載の印刷色再現条件の評価方法において、
前記評価用画像データは、前記印刷色再現条件における保護膜を被覆しないときの印刷色再現条件下で、前記カラー画像の各画素に対応する色についての前記再現可否を可視化してさらに判別可能となるように、各前記画素の画素値が決定された画像データである
ことを特徴とする印刷色再現条件の評価方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の印刷色再現条件の評価方法において、
前記評価用画像データを表示するステップをさらに備える
ことを特徴とする印刷色再現条件の評価方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の印刷色再現条件の評価方法において、
前記カラー画像のうち所定の画像領域を設定するステップをさらに備え、
前記再現可否は、設定された前記画像領域内の各画素上で判別される
ことを特徴とする印刷色再現条件の評価方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の印刷色再現条件の評価方法において、
色空間座標のうち所定の色領域を設定するステップをさらに備え、
前記再現可否は、設定された前記色領域内の色に対応する各画素上で判別される
ことを特徴とする印刷色再現条件の評価方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の印刷色再現条件の評価方法において、
前記条件評価情報は、前記再現可否の結果に基づいて決定された数値に対して前記カラー画像の画像領域に応じた重み付けをし、該カラー画像の画素毎に加算して得られた評価値である
ことを特徴とする印刷色再現条件の評価方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の印刷色再現条件の評価方法において、
前記条件評価情報は、前記再現可否の結果に基づいて決定された数値に対して色空間座標の色領域に応じた重み付けをし、前記カラー画像の画素毎に加算して得られた評価値である
ことを特徴とする印刷色再現条件の評価方法。
【請求項11】
請求項10記載の印刷色再現条件の評価方法において、
前記印刷色再現条件における保護膜を被覆するときのプロファイルに係る黒点の色値と、前記印刷色再現条件における保護膜を被覆しないときのプロファイルに係る黒点の色値とを一致させるように黒点補正をするステップをさらに備える
ことを特徴とする印刷色再現条件の評価方法。
【請求項12】
請求項11記載の印刷色再現条件の評価方法において、
前記黒点補正を行うか否かを選択するステップをさらに備える
ことを特徴とする印刷色再現条件の評価方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の印刷色再現条件の評価方法において、
前記画像データの画素を間引いて新たな画像データを生成するステップをさらに備え、
前記画像データに代えて前記新たな画像データを用いることで、前記印刷色再現条件を前記画像データに適用する場合における色再現性を予測して評価する
ことを特徴とする印刷色再現条件の評価方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の印刷色再現条件の評価方法において、
前記メディアが反射メディアである場合は、前記メディアに係る印刷物の光学物性値は分光反射率であるとともに、前記保護膜の光学物性値は該保護膜の光波長毎の固有反射率、散乱係数及び吸収係数のうちの独立な2つの光学物性値である
ことを特徴とする印刷色再現条件の評価方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の印刷色再現条件の評価方法において、
前記メディアが透過メディアである場合は、前記メディアに係る印刷物及び前記保護膜の光学物性値は分光透過率である
ことを特徴とする印刷色再現条件の評価方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の印刷色再現条件の評価方法を用いて、得られた評価結果に基づいて一の印刷色再現条件を選択するステップを備える
ことを特徴とする印刷色再現条件の選択方法。
【請求項17】
請求項16記載の印刷色再現条件の選択方法を用いて、選択された前記一の印刷色再現条件に対応する印刷プロファイルを用いて、前記画像データを色変換するステップを備える
ことを色変換方法。
【請求項18】
請求項16記載の印刷色再現条件の選択方法を用いて前記一の印刷色再現条件選択する条件選択部と、
前記条件選択部により選択された前記一の印刷色再現条件に対応する印刷プロファイルを用いて、前記画像データを色変換する色変換処理部と
を有することを特徴とする色変換装置。
【請求項19】
メディア、保護膜及び観察光源に関する情報が含まれる印刷色再現条件を、カラー画像を表す画像データに対して適用する場合における色再現性を予測して評価するためコンピュータに、
評価対象とするメディア群、保護膜群及び観察光源群を指定する手段、
指定された前記メディア群、前記保護膜群及び前記観察光源群の中から選択し得るすべての印刷色再現条件を候補条件として設定する手段、
設定された各前記候補条件に対応する各メディアに印刷して得られる印刷物の光学物性値と、各保護膜の光学物性値と、各観察光源の分光分布とに基づいて各印刷プロファイルをそれぞれ生成する手段、
生成された各前記候補条件に対応する各前記印刷プロファイルに基づいて前記画像データの画素に対応する再現色を予測する手段、
予測された前記再現色と印刷の際の目標色とに基づいて前記画素上での色の再現可否を判別する手段、
判別された前記再現可否に基づいて各前記候補条件を評価するための条件評価情報を生成する手段
として機能させることを特徴とするプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−182373(P2011−182373A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47617(P2010−47617)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】