印刷装置、印刷プログラムおよび印刷方法
【課題】背景の粒状感を抑制する。
【解決手段】各画素が白インクのドットの記録率を有する第1画像データと、各画素が非白インクのドットの記録率を有する少なくとも一つの第2画像データとを取得し、上記第1画像データと上記第2画像データとに基づいて、各画素が少なくともドットを記録させるか否かを示す第1ハーフトーンデータと第2ハーフトーンデータとにそれぞれ生成するにあたり、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成し、上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータとに基づいて印刷媒体に上記白インクのドットと上記非白インクのドットとを記録する。
【解決手段】各画素が白インクのドットの記録率を有する第1画像データと、各画素が非白インクのドットの記録率を有する少なくとも一つの第2画像データとを取得し、上記第1画像データと上記第2画像データとに基づいて、各画素が少なくともドットを記録させるか否かを示す第1ハーフトーンデータと第2ハーフトーンデータとにそれぞれ生成するにあたり、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成し、上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータとに基づいて印刷媒体に上記白インクのドットと上記非白インクのドットとを記録する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷プログラムおよび印刷方法に関し、特に、画像データに基づいて印刷媒体に印刷する印刷装置、印刷プログラムおよび印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置において印刷画質の向上は必須課題であり、従来、画像データの階調値に応じて濃色インクと淡色インクの発生比率を調整したり(特許文献1、参照)、印刷・測色条件の相違に起因する色ずれを補償する際に参照する補正テーブルを備えさせたり(例えば特許文献2参照)、様々な工夫が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−291459号公報
【特許文献2】特開2008−72366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、白以外の印刷媒体(透明メディア等)に印刷装置で画像を印刷することが増えてきている。このような印刷媒体に印刷する際には、主たる画像を印刷媒体上に形成させるカラー画像の印刷結果における色再現性を向上するために、カラー画像が印刷される範囲に予め下地となる背景画像を印刷することがある。また、この背景画像としては、白ベタの画像のみならずCMYK等のカラーインクを用いて印刷することになるカラー色成分を有するカラー画像やグラデーション画像も用いられる。このように、同じ箇所に重複して複数画像を印刷する手法は、未だ成熟しておらず、さらなる画質の向上が望まれていた。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、背景画像の画質を向上させることが可能な印刷装置、印刷プログラムおよび印刷方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の印刷装置では、各画素が白インクのドットの記録率を有する第1画像データと、各画素が非白インクのドットの記録率を有する少なくとも一つの第2画像データとを取得する画像データ取得手段が備えられる。ハーフトーン処理手段は、上記第1画像データと上記第2画像データとに基づいて、各画素が少なくともドットを記録させるか否かを示す第1ハーフトーンデータと第2ハーフトーンデータとにそれぞれ生成する。このハーフトーン処理において、上記ハーフトーン処理手段は、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成する。そして、印刷手段は、上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータとに基づいて印刷媒体に上記白インクのドットと上記非白インクのドットとを記録する。
【0007】
かかる構成によれば、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録させることができる。従って、上記非白インクのドットによって生じる粒状感を、上記白インクのドットによって緩和することができる。上記白インクのドットによる粒状感の緩和効果は、上記白インクのドットを観察者側に重ねた場合に顕著となる。従って、上記非白インクのドットに対して、上記白インクのドットを上記印刷媒体の観察者側から重ねて記録させるのが望ましい。むろん、上記白インクのドットに対して、上記非白インクのドットを上記印刷媒体の観察者側から重ねて記録しても、粒状感を緩和することができる。
【0008】
複数の上記非白インクのドットを記録する場合に好適な手法として、上記非白インクのうち粒状感が目立ちやすさが他の上記非白インクよりも大きい上記非白インクのドットと、上記白インクのドットとが上記印刷媒体上において重なって記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成するようにしてもよい。例えば、にじみ特性等により印刷媒体において重ねて記録することが可能なインクのドットの数に制限がある場合には、本手法を適用するのが好ましい。このような制限がある場合でも、上記記録率が小さければ、多くのインクのドットを重ねても、にじみ等の不具合が生じる可能性が低いと考えることができる。従って、上記記録率が小さい場合には、上記白インクのドットと重ならせる上記非白インクの色数を増加させるようにしてもよい。
【0009】
上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータとを生成する具体的なハーフトーン処理の手法として、ディザ法と誤差拡散法が挙げられる。ディザ法の場合、ドットを重ねるインクについて互いに同一のディザマスクを使用することにより、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成することができる。一方、誤差拡散法の場合、拡散誤差または該拡散誤差と比較する閾値を調整することにより、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成することができる。
【0010】
上述した印刷装置は、他の機器に組み込まれた状態で実施されたり他の方法とともに実施されたりする等の各種の態様を含む。また、本発明は前記印刷装置を備える印刷システム、上述した装置の構成に対応した工程を有する印刷方法や印刷制御方法、上述した装置の構成に対応した機能をコンピューターに実現させる印刷プログラム、該印刷プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体、等としても実現可能である。これら印刷システム、印刷方法、印刷制御方法、印刷プログラム、印刷プログラムを記録した媒体、の発明も、上述した作用、効果を奏する。むろん、請求項2〜6に記載した発明も、前記システムや前記方法や前記プログラムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】印刷装置の概略的な構成を示した説明図である。
【図2】PCのハードウェア構成を示したブロック図である。
【図3】プリンターのハードウェア構成を示したブロック図である。
【図4】印刷装置のソフトウェア構成を示したブロック図である。
【図5】主画像と背景画像を概念的に示した説明図である。
【図6】主画像データと背景画像データの組合せの一例を示した説明図である。
【図7】プリンタードライバーの実行する印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】色変換テーブルLUTmの一例を部分的に示した説明図である。
【図9】色変換テーブルLUTbの対応関係の一例を部分的に示した図である。
【図10】S125の処理を模式的に説明する図である。
【図11】ディザマスクとディザ法を説明する図である。
【図12】誤差拡散法の手順を示す模式図である。
【図13】印刷データ作成処理において作成される制御コマンドの一例を示す説明図である。
【図14】プリンターの実行する印刷処理のフローチャートである。
【図15】ラスターバッファーおよびヘッドバッファーの詳細構成を示す説明図である。
【図16】プリンターのプリントヘッドの構成を示す説明図である。
【図17】印刷結果を示す説明図である。
【図18】変形例のプリンターのプリントヘッドの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)本実施例の構成:
(2)プリンタードライバーによる印刷処理:
(3)プリンターでの印刷処理:
(4)印刷結果:
(5)変形例:
【0013】
(1)本実施例の構成:
図1は、本実施例にかかる印刷装置の構成を概略的に示す説明図である。同図において、本実施例の印刷装置は、プリンター100とパーソナルコンピューター200(PC200)を備えている。プリンター100は、インクを吐出して印刷媒体上に画像を形成するインクジェット式プリンターである。PC200は、プリンター100に印刷用の画像データや制御コマンド等からなる印刷制御データを出力することにより、プリンター100に印刷を行わせる印刷制御装置として機能する。プリンター100とPC200は、通信ケーブルや無線通信回線等によって通信可能に接続されている。
【0014】
本実施例のプリンター100は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、ライトシアン(lc)、ライトマゼンタ(lm)、ホワイト(W)の計7色のインクを搭載しており、これらの中から適宜選択された色のインクを用いて印刷を行う。すなわち、プリンター100はWインクを用いることにより、印刷媒体に対して、白色もしくは白色に近い色の下地を形成する印刷を行ったり、カラー画像を印刷したり、下地とカラー画像を所定の順で重複して印刷したりすることができる。
【0015】
(1−1)ハードウェア構成:
図2は、PC200の構成を概略的に示す説明図である。同図に示すように、PC200は、CPU205、RAM210、ROM215、ディスプレイインターフェース225(DIF225)、操作入力機器インターフェース230、ハードディスク235(HD235)、USBインターフェース240を備えている。各部205〜230はバス等の通信回線を介して接続されており、チップセット等の制御コントローラーの制御に従って相互通信可能になっている。ディスプレイインターフェース225には表示装置としてのディスプレイ225aが接続されている。操作入力機器インターフェース230には操作入力機器230aとしてのマウスやキーボードが接続されている。USBインターフェース240は、プリンター100のUSBインターフェース155と通信可能になっている。
【0016】
図3は、プリンター100の構成を概略的に示す説明図である。同図に示すように、プリンター100は、CPU105、RAM110、ROM115、プリントヘッド120、ヘッドコントローラー125、CMYKlclmW各色のインクタンクが搭載されたキャリッジ、キャリッジコントローラー135、キャリッジモーター140、印刷媒体送りモーター145、印刷媒体送りコントローラー150、USBインターフェース155、を備えている。各部105,110,115,125,135,150,155は、バス等の通信回線を介して接続されており、チップセット等の制御コントローラーの制御に従って相互通信可能になっている。CPU105はROM115に記憶されているプログラムを適宜RAMをワークエリアとして利用しつつプログラムに従って演算処理を行うことにより、プリンター100全体を制御する制御部として機能する。
【0017】
プリントヘッド120はインク滴を吐出するノズル群を備えており、キャリッジに搭載されている。インク滴が印刷媒体に着弾し、定着することによりドットが記録される。キャリッジモーター140はキャリッジを所定の方向(主走査方向)に移動させる駆動機構であり、キャリッジコントローラー135の制御に従って動作する。印刷媒体送りモーター145は印刷媒体を主走査方向と直交する方向(副走査方向)に搬送する駆動機構であり、印刷媒体送りコントローラー150の制御に従って動作する。プリントヘッド120の各ノズルは各色のインクタンクに対応するように配置されており、ヘッドコントローラー125の制御に従い、対応するインクタンクのから色インクを取得して吐出する。制御部は、キャリッジコントローラー135と印刷媒体送りコントローラー150とヘッドコントローラー125を連動して制御することにより、印刷媒体上に画像を形成する。
【0018】
(1−2)ソフトウェア構成
図4は、印刷装置のソフトウェア構成を概略的に示す説明図である。PC200のHD235には、アプリケーションプログラムAPLとプリンタードライバーPDrv、主画像用の色変換テーブルLUTm、背景画像用の色変換テーブルLUTb、主画像用のディザマスクDMm、背景画像用のディザマスクDMbが記憶されており、アプリケーションプログラムAPLとプリンタードライバーPDrvをPC200上で実行することにより、図4に示すソフトウェア構成が実現される。
【0019】
<アプリケーション>
アプリケーションプログラムAPLは、透明フィルム等の印刷媒体上へ印刷する画像の画像データを作成してプリンタードライバーに出力するアプリケーションプログラムである。このようなアプリケーションプログラムとしては、レタッチプログラムのように画像を加工・修正するアプリケーション、ドロープログラムのようにコンピューター上で画像を描くアプリケーション、ワープロソフトのように文書を作成するアプリケーション等、様々なプログラムが該当する。
【0020】
アプリケーションプログラムAPLは、画像や文書そのものを表す主画像と、画像や文書の背景を表す背景画像と、をそれぞれに調整可能であるものとする。また、アプリケーションプログラムAPLは、主画像と背景画像の各々に対応する画像データを作成してプリンタードライバーに出力する機能を有しているものとする。本実施例においては、主画像に対応する画像データを主画像データMID、背景画像データに対応する画像データを背景画像データBID(背景画像データが複数ある場合は適宜「第1」、「第2」・・・などを付し、符号は「BID1」、「BID2」等とする。)と記載する。
【0021】
本実施例においては、主画像データはCMYKの各色データの階調値の組合せで構成され、背景画像データは、CMYKの各色データの階調値に加えて白(W)の濃度の階調値を示す濃度値Tで構成されている。なお、本実施例では色データとしてCMYKの4色を採用して説明を行うが、色データはCMYKの組合せに限定されるものではなく、RGBの3原色で表されたRGBデータやL*a*b*の各値で表されたLabデータであっても構わない。
【0022】
また、「主画像」と「背景画像」という名称は、必ずしも一方が主要な画像であり他方が従属的な画像であるといった主従の関係があるものに限る必要は無く、画像データを印刷媒体に印刷するときの印刷順と、印刷結果に対して想定されている観察方向に応じて決定される名称に過ぎない。
図5は、主画像と背景画像を概念的に示した説明図である。図5(a)に示すように、例えば、透明フィルム等の印刷媒体上に先に「背景画像」を印刷してからその後「主画像」を印刷することにより、印刷媒体の印刷面側から観察したときの背景として背景画像が印刷され、背景画像の手前側に主画像が形成されるタイプの印刷が可能となる。
また、図5(b)に示すように、透明フィルム上に先に「主画像」を印刷してからその後「背景画像」を印刷することにより、印刷媒体の印刷されていない面側から観察したときの背景として背景画像が印刷され、背景画像の手前側に主画像が形成されるタイプの印刷が可能となる。
また、図5(c)に示すように、印刷媒体の一方の面を表面として表面から観察されることを想定すると、表面に「主画像」を印刷し、裏面に「背景画像」を印刷することにより、観察方向から見ると「主画像」の背景として「背景画像」が印刷されることになる。また、図5(c)の印刷媒体を裏側から観察する場合も考えられる。
図5(a)〜(c)において、「背景画像」のみに注目すると、「背景画像」が観察者の側に印刷される場合(表面背景タイプ)と、「背景画像」が観察者の反対側に印刷される場合(裏面背景タイプ)とに分類することができる。
【0023】
ユーザーは印刷物の使用態様に応じて、主画像と背景画像のいずれを先に印刷するかを選択する。すなわち印刷面側から観察される印刷物であれば背景画像を先に印刷するように指定し、印刷面の裏面側から観察される印刷物であれば主画像を先に印刷するように指定することになる。アプリケーションプログラムAPLは、印刷順を指定する印刷順指定データsを含む印刷順指定データPODを生成する。さらに、アプリケーションプログラムAPLは、表面背景タイプか裏面背景タイプのどちらに分類されるかを判定し、該分類に応じてプリントヘッド120の主走査方向を指定する走査方向指定データmを印刷順指定データPODに格納する。以上のようにして作成した主画像データMIDと背景画像データBIDと印刷順指定データPODとを含んだ印刷データPDを、アプリケーションプログラムはプリンタードライバーPDrvに出力する。
【0024】
また、主画像データと背景画像データは、各々1つの画像データであってもよいが、複数の画像データの組合せで構成されてもよい。例えば、主画像データを作成する際に複数の画像レイヤーに分けて作成した場合に、各レイヤーデータを各々1つの画像データとして出力した場合がこれに該当する。
【0025】
図6は、主画像データと背景画像データの組合せの一例を示した説明図である。同図は、アプリケーションプログラムAPLから主画像MIを含む主画像データMIDと背景画像BI1を含む第1背景画像データBID1と背景画像BI2を含む第2背景画像データBID2が出力された場合の例である。
【0026】
図6において、第1背景画像データBID1は、白以外の色で構成される背景画像BI1としてのグラデーション画像を表すものである。すなわち、第1背景画像データBID1は、Wインク以外のCMYKlclmインク(非白インク)で印刷される背景画像である。図6においては、第1背景画像データBID1は、画像右端に近づくほど徐々に色が濃くなる画像としてある。
【0027】
また、図6において、第2背景画像データBID2は白画像で構成された背景画像BI2を表すものであり、画素毎に白の濃度、すなわち白インクのドットの記録率やインク被覆率を指定された画像データである。すなわち、第2背景画像データBID2は、CMYKlclmインクを使わずにWインクだけで印刷される背景画像である。図6においては、白画像の濃度を画像の部位毎に異なるように作成された画像を示してあり、画像の左半分は白画像の濃度を最高濃度のN%、画像の中ほどから右4分の1までの濃度を最高濃度のM%、画像の右4分の1の濃度を最高濃度のP%としてある。
【0028】
<プリンタードライバー>
図4に示すように、PC200においてプリンター100のプリンタードライバープログラムをオペレーティングソフト等の基本ソフト上で実行することにより、画像データ取得部M1、色変換部M2、ハーフトーン設定部M3、ハーフトーン処理部M4、印刷データ作成部M5の各モジュールに相当する機能が実現される。また、プリンター100の制御部でファームウェア等の制御プログラムが実行されることにより、コマンド処理部M11に相当する機能が実現される。
【0029】
色変換部M2は、HD235に予め記憶された色変換テーブルLUTm,LUTbを適宜参照しつつ、主画像データMIDや背景画像データBIDを構成する各画素が有するCMYK各色の階調値をプリンター100に搭載されている各インク色のインク量を表す階調値に変換する。各インク量の階調値は、印刷媒体に付着されるインク量、および、ドットの記録率を意味する。この各インク量の階調値は、印刷ヘッドのノズルから各画素に対応する範囲内にと出されるインク量に比例する値であるため、ドットの記録率とも呼ばれる。また、インク量は、非線形的な対応となるものの、印刷媒体におけるインク被覆率とも一意に対応する。なお、色変換部M2は、同一色の淡インクと濃インクと階調値を振り分けるための、いわゆる分版処理も同時に行うように構成されている。
【0030】
ハーフトーン設定部M3は、背景画像データBIDの色変換の結果に基づいて、ハーフトーン処理部M4に使用させる各インクのディザマスクを設定する。ハーフトーン処理部M4は、HD235に予め記憶されたディザマスクDMm、HTRbを適宜参照しつつ、各インク色について生成された階調値を画素毎にインクの吐出/非吐出の2値化するとともに、吐出するインクの量を特定したハーフトーン画像データを生成する。印刷データ作成部M5は、ハーフトーン画像データを受取ってプリンター100で使用される順に並べ替え、一回の主走査にて使用されるデータを単位にして、逐次、プリンター100に出力する。
【0031】
(2)プリンタードライバーによる印刷処理:
(2−1)印刷処理の第1実施形態:
図7は、プリンタードライバーPDrvの実行する印刷処理の流れを示すフローチャートである。同図に示す印刷処理においては、主画像データMIDと第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2と印刷順指定データPODとにより構成される印刷データPDに基づいて印刷を行う。その際、主画像データMIDと第1背景画像データBID1の間、もしくは主画像データMIDと第2背景画像データBID2の間で印刷範囲が重複する場合には、その重複箇所について第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2を修正する。その結果、印刷結果は印刷データPDを作成したユーザーの意図に沿うように修正される。なお、本第1実施形態の印刷処理においては、主画像データMIDは修正されない。
【0032】
本第1実施形態の印刷処理は、アプリケーションプログラムAPLから印刷データPDが入力されたときに開始される。処理が開始されると、ステップS100(以下、「ステップ」の記載を省略する。)において、画像データ取得部M1が、アプリケーションプログラムAPLから入力された主画像データMIDと第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2と印刷順指定データPODを取得する。
【0033】
次にS105において、色変換部M2は、主画像データMIDから主画像のインク量データM_ink(本発明の第1画像データに相当する。)を作成する。すなわち、色変換部M2は、主画像データMIDの中から1つの画素データM_Pixを選択し、色変換テーブルLUTmを参照しつつ、主画像データMIDの各画素データM_Pixをインク色別の階調値であるインク量データ(インク色別階調値)に変換していく。上述したように、本実施例では、CMYKlclmWの計7色のインクを用いて印刷を行う。従って、S105の色変換処理では、色変換テーブルLUTmを参照して、CMYK値を7つのインク色のそれぞれの階調値に変換する。
【0034】
図8は、色変換テーブルLUTmの一例を部分的に示した説明図である。同図に示すように、色変換テーブルLUTmには、予め設定されたCMYK値と各インク色のインク量を示すCMYKlclmの各階調値との対応関係が規定されている。なお、同図に示した色変換テーブルLUTmでは、CMYKの各色データの階調値を0以上100以下の範囲で規定しており、インク量の階調値を0以上255以下の範囲で規定している。また、図8に示すように、本実施例では主画像データMIDから変換して生成されるインク量データにはCMYKlclmの6色のインクが使用され、Wインクは使用されないようになっている。
【0035】
S110において、ハーフトーン処理部M4は、主画像のインク量データM_inkから1画素のインク色別階調値を取り出し、インク色毎にディザマスクDMmを参照してハーフトーン処理(ハーフトーン処理)を行う。ハーフトーン処理は予め設定された主画像用のディザマスクDMmを参照して実行される。そして、ハーフトーン処理部M4は、S110のハーフトーン処理を全画素・全インク色について実施するまで主画像のインク量データM_inkから順次インク色別階調値を取り出してハーフトーン処理を繰り返す。主画像のインク量データM_inkを構成するインク色別階調値についてS110のハーフトーン処理が完了すると、主画像のハーフトーンデータが作成される。S115において、第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2を合成した合成背景画像データBID’を作成し、色変換部M2が合成背景画像データBID’に対して色変換処理を行う。
【0036】
図9は、色変換部M2が背景画像データの色変換を行う際に参照する色変換テーブルLUTbの対応関係の一例を部分的に示した図である。同図に示すように、色変換テーブルLUTbでは、白インクの量を濃度値Tで指定できるようになっている。色変換部M2は色変換テーブルLUTbを参照しながら合成背景画像データBID’の各画素データをインク量データに変換することにより合成背景画像のインク量データB_ink(本発明の第2画像データに相当する。)を作成し、RAM210に記憶する。なお、色変換部M2は、本発明の画像データ取得手段に相当する。
【0037】
インク量データB_inkは、CMYKlclmWの7色のインク毎に作成されており、それぞれ対応するインクのインク量(ドットの記録率)を各画素に格納させている。白インクであるWインクについてのインク量データB_ink(W)は本発明の第1画像データに相当し、非白インクであるCMYKlclmインクについてのインク量データB_ink(C)〜(lm)は本発明の第2画像データに相当する。
【0038】
S120において、ハーフトーン設定部M3は、すべての非白インクについてのインク量データB_ink(C)〜(lm)の全画素が有するインク量のなかから最大の最大インク量IKUを検出し、最大インク量IKUと閾値ITHとを比較する。そして、最大インク量IKUが閾値ITHよりも大きい場合には、重ねインク数制限NDを1に設定する。一方、最大インク量IKUが閾値ITH以下の場合には、重ねインク数制限NDを例えば4に設定する。閾値ITHは、印刷媒体におけるインクのにじみ特性等に応じて設定され、閾値ITH以下のインク量において全インクのドットを重ねて記録しても印刷結果がにじみ等によって破綻しないことが保証される。
【0039】
S125において、ハーフトーン設定部M3は、非白インクについてのインク量データB_ink(C)〜(lm)を取得し、インク量データB_ink(C)〜(lm)の各画素のインク量を粒状性指数GIに変換する。このとき粒状性テーブルGTBを参照する。粒状性指数GIは、特開2005−103921号公報や特開2005−310098号公報や特開2007−281724号公報に開示された指標値を使用することができる。粒状性指数GIは、その値が大きいほど粒状感が目立つことを意味する指数である。
【0040】
図10は、S125の処理を模式的に説明する図である。図10(a)はインク量データB_inkの一例を示し、図10(b)は粒状性テーブルGTBの一例を示している。粒状性テーブルGTBは、各非白インクについてのインク量と粒状性指数GIとの対応関係を規定したルックアップテーブルである。粒状性指数GIの傾向は、印刷媒体に応じて異なるため、印刷対象の印刷媒体に対応する粒状性テーブルGTBが参照される。一般的には色が濃いインクほど粒状性指数GIが大きくなる傾向がある。また、単一のインクでは、図10(c)に図示するように低〜中インク量の領域において粒状性指数GIが大きくなる傾向がある。印刷媒体上においてインクのドットがある程度充填されると、個々のドットが視認され難くなるからである。粒状性テーブルGTBに規定された粒状性指数GIは、各インク単独のグラデーションのカラーパッチを対象の印刷媒体上に印刷し、上述した公報に記載された手法によって測定することができる。
【0041】
S125において、図10(d)に示すように各画素が粒状性指数GIを示す画像データが各非白インクによって得られると、S130において、ハーフトーン設定部M3は、各非白インクについて全画素の粒状性指数GIの平均することにより粒状性平均値GIaveを算出する。S135において、ハーフトーン設定部M3は、各非白インクについての粒状性平均値GIaveと粒状性閾値GTHとを比較する。そして、粒状性平均値GIaveの方が粒状性閾値GTHより大きい非白インクを重ね候補インクとする。なお、粒状性平均値GIaveの平均値ではなく、粒状性指数GIの最大値に基づいて重ね候補インクを決定してもよい。S140において、ハーフトーン設定部M3は、粒状性平均値GIaveの方が粒状性閾値GTHより大きい重ね候補インクの数を判定する。
【0042】
重ね候補インクが一つもない場合、S145において、ハーフトーン設定部M3は、いずれのインクも重ね対象インクとして設定しない。重ね候補インクが一つの場合、S150において、ハーフトーン設定部M3は、唯一の重ね候補インクを重ね対象インクとする。重ね候補インクが複数ある場合、S155において、ハーフトーン設定部M3は、重ねインク数制限NDの数だけ重ね候補インクを粒状性平均値GIaveの大きい順に選択し、該選択した重ね候補インクを重ね対象インクとする。重ねインク数制限NDが4である場合には、4個の重ね候補インクが重ね対象インクとして設定され、重ねインク数制限NDが1である場合には、1個の重ね候補インクが重ね対象インクとして設定される。各非白インクが重ね対象インクであるか否かを示すデータは、RAM210に記憶される。
【0043】
S160において、ハーフトーン設定部M3は、ハーフトーン処理をディザ法によって行うのか、誤差拡散法によって行うのかを選択する。例えば、印刷を行う印刷媒体の種類や、ユーザーが設定した印刷モード(はやい,きれい)等の印刷条件に応じてハーフトーン処理の手法を選択する。なお、ディザ法は、普通紙に印刷する場合や、印刷モード(はやい)が設定された場合に、選択される。一方、誤差拡散法は、専用紙に印刷する場合や、印刷モード(きれい)が設定された場合に、選択される。以降、ハーフトーン処理部M4は、それぞれディザ法と誤差拡散法によるハーフトーン処理を実行する。ここでは、まずディザ法について説明する。
【0044】
S165において、ハーフトーン処理部M4は、RAM210から各非白インクが重ね対象インクであるかそうでないかを示すデータを取得し、重ね対象インクについてのディザマスクDMbをWインクについてのディザマスクDMbと同一のものに設定する。
【0045】
図11(a),(b)はディザマスクDMbと、それによるディザ法を説明する図である。同図に示すように、本実施例では、各インク毎に異なるディザマスクDMbが用意されている。ディザマスクDMbは、複数の画素からなり各画素がインク量の階調値と比較するためのマスク閾値MTHを有している。マスク閾値MTHが小さい画素ほど、インクのドットが記録される確率が高くなる。本実施例では、各インクについてのディザマスクDMbのマスク閾値MTHが特開2007−15359号公報の手法によって最適化されている。この手法によって作成されたディザマスクDMbによれば、ドットが局所的に集中することが防止でき、結果的に粒状感を抑制することができる。
【0046】
図11(a)に示すように、各インク毎に異なるディザマスクDMbが用意されているが、重ね対象インクについては、重ね対象インク本来のディザマスクDMbではなく、白インクのディザマスクDMbを使用することとなる。従って、4つの非白インクが重ね対象インクとされた場合には、4つの重ね対象インクとWインクが同一のディザマスクDMbを使用してハーフトーン処理されることとなる。S170において、ハーフトーン処理部M4は、各インクのインク量データB_inkの各画素のインク量の階調値と、ディザマスクDMbの対応する画素のマスク閾値MTHとを比較し、インク量の階調値の方が大きければドットを記録すると決定し、インク量の階調値の方が大きくなければドットを記録しないと決定する。これにより、各画素のインク量の階調値は、2値化されることとなる。すなわち、各画素がドットを記録するか否かを示すハーフトーンデータが各インクについて生成できる。ハーフトーンデータにおいてドットを記録する画素には階調値「1」が与えられ、ドットを記録しない画素には階調値「0」が与えられることとする。なお、Wインクについてのハーフトーンデータが本発明の第1ハーフトーンデータに相当し、重ね対象インクについてのハーフトーンデータが本発明の第2ハーフトーンデータに相当する。
【0047】
ここで、Wインクと同一のディザマスクDMbを使用して2値化した重ね対象インクについては、各画素についてドットを記録すると決定される確率がWインクと同様となる。すなわち、Wインクにおいてドットが記録されやすい画素については、重ね対象インクについてのドットが記録されやすくなる。従って、Wインクの第1ハーフトーンデータにおいてドットを記録するとされた画素は、重ね対象インクの第2ハーフトーンデータにおいてもドットを記録するとされている可能性が高くなる。次に、誤差拡散法を行う場合について説明する。
【0048】
図12(a)は、誤差拡散法の基本的な手順を示す模式図である。誤差拡散法においては、注目画素について、インク量の階調値(IK)と、左方向と上方向に存在する周辺画素から拡散した拡散誤差ERの合計値teとを加算した判定値JVを算出し、該判定値JVと判定閾値T(127)とを比較する。判定値JVが判定閾値Tよりも大きい場合には注目画素についてドットを記録するとし、判定値JVが判定閾値Tよりも大きくない場合には注目画素についてドットを記録しないとする。ドットを形成する場合、判定値JVからインク量の最大値(255)を差し引いた値の拡散誤差ERが生じ、該拡散誤差ERを周辺の画素に拡散させる。ドットを形成しない場合、判定値JVからインク量の最小値(0)を差し引いた値の拡散誤差ERが生じ、該拡散誤差ERを周辺の画素に拡散させる。以上の処理を、注目画素を順次走査させながら行うことにより、各画素を順に2値化していくことができる。まず、S175において、ハーフトーン設定部M3は、各インクについて基準インクを設定する。
【0049】
この基準インクの設定は、重ね対象インクの数によって異なるものとされる。重ね対象インクが1つである場合には、該重ね対象インクを基準インクとする。重ね対象インクが4つである場合には、重ね対象インクのうち粒状性平均値GIaveが最大のインクを基準インクとする。重ね対象インクが1つもない場合には、いずれのインクも基準インクとして設定しない。基準インクは、非白インクのうち最も粒状感を生じさせるインクであると言うことができる。
【0050】
以上のように基準インクの設定が行われると、ハーフトーン処理部M4は、S177において、該基準インクについて誤差拡散法によるハーフトーン処理を実行する。重ね対象インクが1つもなく、基準インクが設定されなかった場合には、S177はスキップされる。基準インクについてハーフトーン処理を行う場合には、判定値JVのオフセットを無効とする。これにより、図12(a)に示すように誤差拡散法が一様に行われていく。基準インクについてハーフトーン処理が完了すると、該インクについてのハーフトーンデータが生成できたこととなる。このハーフトーンデータを基準ハーフトーンデータとしてRAM210に記憶する(S180)。基準ハーフトーンデータは、本発明の第2ハーフトーンデータに相当する。
【0051】
S182において、ハーフトーン処理部M4は、Wインクについて誤差拡散法によってハーフトーン処理を実行する。Wインクについてハーフトーン処理を行う場合には、判定値JVのオフセットを有効とする。判定値JVのオフセットが有効とされている場合には、図12(b)に示すオフセット処理が各注目画素について実行される。まず、S182aにて、RAM210に記憶された基準ハーフトーンデータを参照することにより、注目画素と同一の位置において基準インクのドットが記録されるか否かを判定する。そして、注目画素と同一の位置において基準インクのドットが記録される場合には、判定値JVをオフセットさせる(S182b)。本実施例では、図12(c)に示すように、一定のオフセット量OS(正値)を判定値JVに加算することにより、判定値JVをオフセットさせる。
【0052】
一方、注目画素と同一の位置において基準インクのドットが記録されない場合には、判定値JVをオフセットさせない(S182c)。これにより、基準インクが記録される画素については、Wインクのドットが記録される確率を高めることができる。すなわち、基準ハーフトーンデータにおいてドットを記録するとされた画素は、Wインクについてのハーフトーンデータにおいてもドットを記録するとされている可能性が高くなる。なお、S182にてWインクについて得られたハーフトーンデータは、本発明の第1ハーフトーンデータに相当する。
【0053】
S185において、ハーフトーン処理部M4は、重ね対象インク(基準インク以外)について誤差拡散法によってハーフトーン処理を実行する。基準インク以外の重ね対象インクが存在しない場合にはS185はスキップされる。基準インク以外の重ね対象インクが複数存在する場合には順次各重ね対象インクについてハーフトーン処理を実行する。この場合の各重ね対象インクの処理順序はどのようなものであってもよい。基準インク以外の重ね対象インクについてハーフトーン処理を行う場合にも、判定値JVのオフセットを有効とする。従って、基準ハーフトーンデータにおいてドットを記録するとされた画素は、基準インク以外の重ね対象インクについてのハーフトーンデータにおいてもドットを記録するとされている可能性が高くなる。また、S182,S185によれば、基準ハーフトーンデータと、基準インク以外の重ね対象インクについてのハーフトーンデータと、Wインクのハーフトーンデータの間で相互に、同一の画素にてドットを記録するとされている可能性が高くなるということができる。
【0054】
S187において、ハーフトーン処理部M4は、重ね対象インクでもWインクでもない残りの非白インクについて誤差拡散法によってハーフトーン処理を実行する。残りの非白インクが存在しない場合にはS187はスキップされ、複数存在する場合には残りの各非白インクについて順次ハーフトーン処理を実行する。この場合も、残りの各非白インクの処理順序はどのようなものであってもよい。残りの非白インクについてハーフトーン処理を行う場合には、判定値JVのオフセットを無効とする。これにより、図12(a)に示すように誤差拡散法が一様に行われていく。以上により、すべてのインクについて誤差拡散法によるハーフトーン処理が完了したこととなる。
【0055】
以上説明したように、重ね対象インクが1つでも存在する場合には、粒状性平均値GIaveが最大の重ね対象インクについてのハーフトーンデータが基準ハーフトーンデータとされ、少なくともWインクについてのハーフトーン処理について判定値JVのオフセットが有効とされる。従って、最も粒状感を生じさせやすい重ね対象インクのドットと、Wインクのドットを同一の画素において記録させるようにすることができる。さらに、重ね対象インクが4つ存在する場合には、Wインクだけでなく、他の重ね対象インクのドットも、基準インクのドットと同一の画素において記録させるようにすることができる。
【0056】
すなわち、本実施例によれば、重ね対象インクのドットが、Wインクのドットと同一の位置に記録される確率を高くすることができる。なお、重ね対象インクが1つも存在しない場合には、他のインクのハーフトーン処理結果に依存しない通常の誤差拡散法がすべてのインクについて行われることとなる。なお、Wインクと重ね対象インクとが同一の画素においてドットを記録するようにハーフトーン処理をすることができればよく、必ずしも重ね対象インクのハーフトーン処理を最初に行わなくてもよい。すなわち、Wインクについてのハーフトーンデータを最初に基準ハーフトーンデータとして生成しておき、該基準ハーフトーンデータを参照して、重ね対象インクについてのハーフトーン処理を実行してもよい。
【0057】
S190において、印刷データ作成部M5は、主画像についての各インクのハーフトーンデータ、背景画像についてのハーフトーンデータ(第1ハーフトーンデータ,第2ハーフトーンデータ)、および、印刷順指定データPODに基づいて、主画像MIや各背景画像BI1,BI2をプリンター100に印刷させるための制御コマンドを作成する。以下の説明では、主画像MIをプリンター100に印刷させるための制御コマンドを作成する場合を例にとって説明するが、合成背景画像をプリンター100に印刷させるための制御コマンドも同様の処理を行って作成されるものとする。
図13は、印刷データ作成処理において作成される制御コマンドの一例を示す説明図である。制御コマンドは、印刷順指定コマンドと、垂直位置指定コマンドと、水平位置指定コマンドと、各ドットデータ(ラスターデータ)およびインクコードを含んで構成されている。
【0058】
印刷順指定コマンドは、アプリケーションプログラムAPLから入力された印刷順指定データPODに基づいて作成される。
図13(a)は印刷順指定コマンドの例である。同図に示すように、印刷順指定コマンドは、コマンド先頭を示す識別子Escと、印刷順指定コマンドであることを示す識別子“j”と、コマンド長(本実施例においては2バイト)nL,nHと、印刷順指定データsと、走査方向指定データmと、を含んで構成されている。例えば、印刷順指定データsの値は、印刷順指定データPODが「M−B印刷」を示す場合は「0」とし、印刷順指定データPODが「B−M印刷」を示す場合は「1」とすることができる。「M−B印刷」とは、主画像を先に印刷して背景画像を後に印刷することを意味し、「M−B印刷」とは背景画像を先に印刷して主画像を後に印刷することを意味する。また、例えば、走査方向指定データmの値は、印刷順指定データPODが「順方向印刷」を示す場合は「0」とし、印刷順指定データPODが「逆方向印刷」を示す場合は「1」とすることができる。
【0059】
ここで、「順方向印刷」とは、プリントヘッド120を順方向に主走査させる間に各インクのドットを記録することを意味し、それにより、非白インク(カラーインク)が先に記録され、Wインクが後に記録されることとなる。一方、「逆方向印刷」とは、プリントヘッド120を逆方向に主走査させる間に各インクのドットを記録することを意味する。それにより、Wインク先が記録され、非白インクが後に記録されることとなる。アプリケーションプログラムAPLは、表面背景タイプ(図5、参照。)の場合に、印刷順を「順方向印刷」としている。反対に、裏面背景タイプ(図5、参照。)の場合には、印刷順を「逆方向印刷」としている。本実施例では、印刷順指定データPODがアプリケーションプログラムAPLによって作成されることとしたが、プリンタードライバーPDrvによって印刷順指定データPODが作成されてもよいし、アプリケーションプログラムAPLが作成した印刷順指定データPODをプリンタードライバーPDrvによって修正してもよい。
【0060】
垂直位置指定コマンドは、ハーフトーン処理部M4の出力した主画像データMIDに対応して作成された主画像のハーフトーンデータに基づいて作成される。垂直位置指定コマンドは、垂直方向(副走査方向:印刷媒体の搬送方向)の画像の開始位置を指定するコマンドである。垂直位置指定コマンドは、全インクに共通のコマンドとして作成される。
【0061】
水平位置指定コマンドは、主画像形成の際の1つのインク色についての水平方向(主走査方向)の画像形成の開始位置を指定するコマンドである。水平位置指定コマンドは、ハーフトーン処理部M4の出力した主画像のハーフトーンデータの各インク色毎に作成される。印刷データ作成部M5は、1つのインク色についてのハーフトーンデータを参照し、水平方向における前記1つのインク色についての主画像のハーフトーンデータの開始位置を特定し、この開始位置を指定するための水平位置指定コマンドを作成する。
【0062】
図13(b)は、ラスターコマンドの例を示す図である。同図に示すように、ラスターコマンドは、コマンド先頭を示す識別子Escと、ラスターコマンドであることを示す識別子iと、インクコードrと、1画素あたりのビット数bと、水平方向(X方向)長さ(本実施例においては2バイト)nL,nHと、垂直方向(Y方向)長さ(本実施例においては2バイト)mL,mHと、ラスターデータ(ドットデータ)d1,d2,・・・,dnと、を含んでいる。ドットデータは1ラスター毎に作成される。インクコードrは各インク色に固有のコードである。HD235には、各インク色に固有のインク略称とインクコードとが対応付けたインクコード表が保存されており、このインクコード表を参照することにより各インク色のインクコードを検索し、ラスターコマンドに付与するべきインクコードを得ることができる。
【0063】
S195において、プリンタードライバーPDrvは、S190で作成された主画像の印刷制御データ(印刷順指定コマンド、垂直位置指定コマンド、水平位置指定コマンド、ラスターコマンド)と背景画像の印刷データをプリンター100へ送信する。以上で、プリンタードライバーPDrvによる処理が完了する。
【0064】
(3)プリンターでの印刷処理:
以上のようにして各実施形態で作成されて出力された印刷制御コマンドがプリンター100に入力されると、プリンター100は印刷制御コマンドに基づいた印刷を実行する。
図14は、プリンター100の実行する印刷処理のフローチャートである。同図に示す処理は、プリンター100の制御部において実行されるコマンド処理部M11によって実行される。
S505では、PC200のプリンタードライバーPDrvから受信した印刷制御データを受信する。
S510では、受信したコマンドの種類を判断し、コマンドの種類に応じてS515〜S530のいずれかの処理を行う。すなわち、受信したコマンドが印刷順指定コマンドの場合はS515に進み、受信したコマンドが水平位置指定コマンドの場合はS520に進み、受信したコマンドが垂直位置指定コマンドの場合はS525に進み、受信したコマンドがラスターコマンドの場合はS530に進む。
【0065】
S515では、受信した印刷順指定コマンドによって指定された印刷順指定データPODをRAM110に保存する。S520では、受信した水平位置指定コマンドによって指定された水平位置を、水平方向の印刷開始位置Xとして更新する。S525では、受信した垂直位置指定コマンドによって指定された垂直位置を、垂直方向の印刷開始位置Yとして更新する。S530では、受信したラスターコマンドに含まれるラスターデータをインクコード別のラスターバッファー132へ記憶する。
【0066】
図15は、ラスターバッファー132およびヘッドバッファー127の詳細構成を示す説明図である。同図の上段にはカラー画像用のラスターバッファー132cを示しており、同図の中段には背景画像用のラスターバッファー132wを示してある。同図に示すように、ラスターバッファー132は、インクコード別に領域が割り当てられている。カラー画像用のラスターバッファー132cは、カラー画像用の各インクコードに対応する領域の集合として構成されており、背景画像用のラスターバッファー132wも、背景画像用の各インクコードに対応する領域の集合として構成されている。
ラスターバッファー132の各領域のX方向のサイズは画像サイズに対応しており、Y方向のサイズはプリントヘッド120の高さの2分の1以上のサイズとなっている。
ラスターバッファー132には、どこまでラスターデータ受信したかを示すY方向のラスターバッファーポインターを有している。
【0067】
図15の下段には、ヘッドバッファー127を示している。図15に示すように、ヘッドバッファー127は、7つのインク色別に領域が割り当てられている。すなわち、ヘッドバッファー127は、シアン用(C,WC用)の領域と、マゼンタ用(M,WM用)の領域と、イエロー用(Y,WY用)の領域と、ブラック用(K,WK用)の領域と、ホワイト用(W,WW用)の領域と、の集合として構成されている。
ヘッドバッファー127の各領域のX方向のサイズは、キャリッジの走査距離に対応しており、Y方向のサイズはプリントヘッド120のノズル列146を構成するノズル数に対応している。またヘッドバッファー127のインク色別の領域のそれぞれは、上流用ヘッドバッファー127uと下流用ヘッドバッファー127lとに2分されている。
【0068】
図16は、プリンター100のプリントヘッド120の構成を示す説明図である。図16(a)および(b)に示すように、プリントヘッド120は、7つのインク色のそれぞれに対応するノズル列146が設けられている。ノズル列146は、Y方向(印刷媒体送り方向)に沿って伸びるように形成されている。
また、図16(c)に示すように、各ノズル列146は、Y方向に沿って並ぶ32個のノズル群により構成されている。本実施例においては、ノズル列146を構成するノズル群のうち、印刷媒体送り方向の上流側半分に位置するノズル群(ノズル1〜ノズル16)を上流ノズル群とし、印刷媒体送り方向の下流側半分に位置するノズル群(ノズル17〜ノズル32)を下流ノズル群とする。本実施例では、印刷媒体送り方向の同一順位の各インクのノズルは、印刷媒体送り方向に関して同一の位置に配置されている。
【0069】
図16(a)に示すように、印刷媒体上に背景画像を先に印刷する際には、プリントヘッド120の各ノズル列146の上流ノズル群を用いて背景画像の形成を行い、下流ノズル群を用いて主画像の形成を行う。また、図16(b)に示すように、印刷媒体上に主画像を先に印刷する際には、プリントヘッド120の各ノズル列146の上流ノズル群を用いて主画像の形成を行い、下流ノズル群を用いて背景画像の印刷を行う。
【0070】
図15に示すように、上流用ヘッドバッファー127uは、上流ノズル群に対応するヘッドバッファーであり、下流用ヘッドバッファー127lは、下流ノズル群に対応するヘッドバッファーである。
【0071】
S535では、プリントヘッド120の高さの2分の1に対応するラスターバッファー132にラスターバッファーが格納されているか否かを判断する。格納されていない場合はS580に進んで、S580でラスらーバッファーポインターを更新する。一方、格納されている場合はS540に進む。
【0072】
S540では、RAM130に記憶された印刷順指定データPODの印刷順指定データsに基づいて、主画像と背景画像のいずれを先に印刷するかを判断する。主画像を先に印刷する場合はS545に進み、背景画像を先に印刷する場合はS550に進む。
S545では、主画像用のラスターバッファー132cから上流用ヘッドバッファー127uへラスターデータを転送すると共に、背景画像用のラスターバッファー132wから下流用ヘッドバッファー127lへラスターデータを転送する。従って、プリントヘッド120の各ノズル列146の上流ノズル群を用いて主画像の形成が行われ、下流ノズル群を用いて背景画像の形成が行われる。
S550では、主画像用のラスターバッファー132cから下流用ヘッドバッファー127lへラスターデータを転送すると共に、背景画像用のラスターバッファー132wから上流用ヘッドバッファー127uへラスターデータを転送する。従って、プリントヘッド120の各ノズル列146の上流ノズル群を用いて背景画像の形成が行われ、下流ノズル群を用いて主画像の形成が行われる。
なお、上流ノズル群と下流ノズル群とでは、物理的な用紙上の印刷位置が異なるため、ラスターバッファー132からラスターデータを転送する際は、上流ノズル群と下流ノズル群との対応するラスターデータが用紙上で対応する位置に印刷されるように、印刷位置の差に相当するタイミング差をつけてラスターバッファー上の転送開始データ位置を決定する。
【0073】
S555では、印刷媒体送りコントローラー150を制御して、印刷媒体PMの印刷開始位置とプリントヘッド120の位置が副走査方向において一致するように、印刷媒体PMを搬送する。
S560では、キャリッジコントローラー135を制御して、印刷媒体PMの印刷開始位置とプリントヘッド120の位置が主走査方向において一致するように、プリントヘッド120を移動する。
【0074】
S565では、RAM130に記憶された印刷順指定データPODの走査方向指定データmの値に基づいて、「順方向印刷」と「逆方向印刷」のいずれが指定されているかを特定する。そして、該特定した方向に主走査する際に、プリントヘッド120の副走査方向の長さに相当する範囲分の印刷を実行する。このとき、上流ノズル群によるドットの記録と下流ノズル群によるドットの記録が並行して実行される。図16(a)に示すように、プリントヘッド120が順方向に主走査する場合、CMYKlclmインク(非白インク)がWインクよりも主走査方向の上流側となり、CMYKlclmインクのドットがWインクのドットよりも先に印刷媒体に記録されることとなる。
【0075】
一方、「逆方向印刷」が指定されている場合には、S567において、逆方向に主走査する際に、上流ノズル群によるドットの記録と下流ノズル群によるドットの記録を実行する。図16(a)に示すように、プリントヘッド120が逆方向に主走査する場合、WインクがCMYKlclmKインク(非白インク)よりも主走査方向の上流側となり、WインクのドットがCMYKlclmKインクのドットよりも先に印刷媒体に記録されることとなる。
【0076】
S570では、ラスターバッファー132のラスターバッファーポインターをクリアする。
S575では、印刷画像PIの全体を印刷完了したか否かを判断する。印刷完了していない場合は、印刷完了したと判断されるまでS505〜S570の処理を繰り返し実行する。印刷完了している場合は、図14の印刷処理を終了する。
【0077】
(4)印刷結果:
図17(a),(b)は、それぞれ表面背景タイプの場合と裏面背景タイプの場合の背景画像BI1,BI2についての印刷(ドット記録)結果を示す模式図である。主画像MIの印刷は行われていない。上述したように、表面背景タイプの場合には各背景画像BI1,BI2についての印刷順を「順方向印刷」とし、裏面背景タイプ(図5、参照。)の場合には各背景画像BI1,BI2についての印刷順を「逆方向印刷」としている。そのため、各インクのドットが重なる場合には、いずれのタイプの印刷でも、非白色インクよりも観察者の側にWインクのドットが存在することとなる。上述したように、ディザ法と誤差拡散法のいずれの場合もWインクの第1ハーフトーンデータにおいてドットを記録するとされた画素は、重ね対象インクの第2ハーフトーンデータにおいてもドットを記録するとされている可能性が高くなっているため、図17(a),(b)に図示するようなドットの重なりを多く生じさせることができる。
【0078】
図17(c)は、Wインクが重ね対象インクに重なった状態を観察した様子を示す模式図である。図示するように、非白インクのドットの上(観察者側)にWインクのドットが重なると、非白インクのドットの輪郭の一部を非白インクのドットによって消失させるかぼかすことができる。従って、特に全体的に明度の高い背景においては、非白インクのドットの輪郭による粒状感を抑制することができる。また、非白インクのドットの輪郭の形状が非白インクのドットによって複雑化し、非白インクのドットの輪郭による色彩の変化の空間周波数を高周波化させることができる。色彩の変化が高周波化すれば、人間に知覚されにくくなるため、粒状感を感じさせにくくすることができる。また、重ね対象インクを、一定の粒状性指数GIよりも大きい粒状感を生じさせる非白インクに限定しているため、効率的に粒状感を抑制することができる。
【0079】
(5)変形例:
上記実施例の誤差拡散法においては、判定値JVをオフセットさせることにより、Wインクのドットと重なり対象インクのドットとが重なるようにしたが、判定閾値Tをオフセットさせることによっても同様の効果を得ることができる。すなわち、図12(b)のオフセット処理において、注目画素と同一の位置においてWインクのドットが記録される場合に、判定値JVをオフセットさせる代わりに、注目画素のインク量に比例したオフセット量OSを判定閾値Tから減算する。これにより、該注目画素についてドットが形成される確率を高めることができる。なお、判定閾値Tのオフセットについては、特開2000−6444号公報の手法を用いることができる。
【0080】
上記実施例の誤差拡散法においては、判定値JVをオフセットさせるオフセット量OSを一定としたが、各インク毎にオフセット量OSの大きさを切り替えるようにしてもよい。オフセット量OSが大きければ大きいほど、Wインクのドットと重ね対象インクのドットとが重なる確率が高くなる。例えば、各インクについての粒状性指数GIの大きさに比例するオフセット量OSを設定することにより、粒状感を生じやせやすい重ね対象インクのドットに対して確実にWインクのドットを重ねさせることができる。
【0081】
上記実施例では、各インクについて単一サイズのドットのみを記録するプリンター100について例示したが、各インクについて複数サイズのドットを記録するプリンターにおいても本発明を適用することができる。例えば、各インクについて、大サイズのドットと、中サイズのドットと、小サイズのドットの3種類のドットが形成されるプリンターにおいて本発明を適用してもよい。この場合、色変換処理によって得られたインク量を、大サイズのドットの記録率と、中サイズのドットの記録率と、小サイズのドットの記録率に振り分けるドット振り分け処理を行った上でハーフトーン処理を行うこととなる。このドット振り分け処理において、非白インクについて小サイズのドットに振り分けられる記録率を、通常の主画像よりも背景画像の方が高くなるようにするのが望ましい。このようにすることにより、非白インク上に重ねて記録される白インクを微小化することができ、背景画像における粒状感を抑制することができる。
【0082】
さらに、複数サイズのドットを記録させるために誤差拡散法によるハーフトーン処理を行う場合には、ドットのサイズに応じてドットの重なりやすさを調整することもできる。前記実施例においては、最も粒状感を生じさせやすい重ね対象インクのドットが形成される注目画素について判定値JVに一定のオフセット量OSを加算するようにしたが、このオフセット量OSを該重ね対象インクのドットのサイズに応じて変化させることにより、ドットのサイズに応じてドットの重なりやすさを調整することができる。ドットのサイズが大きいほどオフセット量OSを大きくするようにすれば、強く粒状感を感じさせるドットについて確実にWインクのドットを重ねて記録させることができる。
【0083】
図18は、本変形例にかかるプリントヘッド620の構成を示す説明図である。同図に示すように、各ノズル列646は、Y方向に沿って並ぶ32個のノズル群により構成されている。図16(c)に示すプリントヘッド120では、印刷媒体送り方向の同一順位の各インクのノズルは、印刷媒体送り方向に関して同一の位置に配置されていたが、プリントヘッド620においては隣接するノズル列646全体の印刷媒体送り方向の位置が、ノズル配列の半ピッチずつ交互にずらされている。すなわち、図18に拡大するように各ノズルが千鳥格子状に配置されている。図面の左側から数えて奇数番目のノズル列646同士(4列)においては各ノズルの印刷媒体送り方向の位置が同一となる。同様に、図面の左側から数えて偶数番目のノズル列646同士(3列)においては各ノズルの印刷媒体送り方向の位置が同一となる。
【0084】
以上のようなプリントヘッド620において、Wインクのドットを記録させるノズル列646を最も右のノズル列646とした場合、これと各ノズルの印刷媒体送り方向の位置が同一となる奇数番目の3列のノズル列646には、最も粒状感を生じさせやすい非白インク(CMYKlclmK)インクを割り当てる。例えば、あるインク量のCMKインクがYlclmインクよりも粒状感を生じさせやすいことが実験的に判明している場合には、CMKインクを奇数番目の3列のノズル列646に割り当てる。偶数番目の3列のノズル列646には、残りのYlclmインクを割り当てる。このように、粒状感を強く生じさせる非白インクを吐出するノズルを、Wインクを吐出するノズルと印刷媒体送り方向の同一位置とすることにより、印刷媒体のインターレーススキャン(ノズル配列の半ピッチ送り)の有無に拘わらず、白インクのドットと粒状感を強く生じさせる非白インクのドットを同一位置に重ねて記録することができる。すなわち、幅広い印刷モードにおいて、本発明の効果を得ることができる。
【0085】
上記実施例では、ドットを記録するプリントヘッド120の主走査方向を表面背景タイプと裏面背景タイプとで切り替えることにより、Wインクのドットが観察者側から重なるようにしたが、他の手法によりWインクのドットを観察者側から重ねるようにしてもよい。例えば、プリントヘッドにおける主走査方両端のノズル列にそれぞれWインクのドットを記録させるようにするとともに、主走査方向に応じてWインクのドットを記録させるノズル列を切り替えるようにしてもよい。このようにすることにより、双方向印刷においてもWインクのドットを観察者側から重ねることができる。また、ノズル列の配列が主走査方向に関して対称なプリントヘッドを用いても同様の印刷を行うことができる。
【0086】
なお、本発明は上述した実施形態や変形例に限られず、上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、等も含まれる。
【符号の説明】
【0087】
100…プリンター、105…CPU、110…RAM、115…ROM、120…プリントヘッド、125…ヘッドコントローラー、135…キャリッジコントローラー、140…キャリッジモーター、145…印刷媒体送りモーター、150…印刷媒体送りコントローラー、155…USBインターフェース、200…パーソナルコンピューター、205…CPU、210…RAM、215…ROM、225…ディスプレイインターフェース、225a…ディスプレイ、230…操作入力機器インターフェース、230a…操作入力機器、235…ハードディスク、240…USBインターフェース、APL…アプリケーションプログラム、PDrv…プリンタードライバー、M1…画像データ取得部、M2…色変換部、M3…ハーフトーン設定部、M4…ハーフトーン処理部、M5…印刷データ作成部、PD…印刷データ、POD…印刷順指定データ、MID…主画像データ、M_ink…主画像のインク量データ、BID…背景画像データ、BID1…第1背景画像データ、BID2…第2背景画像データ、B_ink…背景画像のインク量データ、DMm,DMb…ディザマスク、LUTm…色変換テーブル、LUTb…色変換テーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷プログラムおよび印刷方法に関し、特に、画像データに基づいて印刷媒体に印刷する印刷装置、印刷プログラムおよび印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置において印刷画質の向上は必須課題であり、従来、画像データの階調値に応じて濃色インクと淡色インクの発生比率を調整したり(特許文献1、参照)、印刷・測色条件の相違に起因する色ずれを補償する際に参照する補正テーブルを備えさせたり(例えば特許文献2参照)、様々な工夫が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−291459号公報
【特許文献2】特開2008−72366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、白以外の印刷媒体(透明メディア等)に印刷装置で画像を印刷することが増えてきている。このような印刷媒体に印刷する際には、主たる画像を印刷媒体上に形成させるカラー画像の印刷結果における色再現性を向上するために、カラー画像が印刷される範囲に予め下地となる背景画像を印刷することがある。また、この背景画像としては、白ベタの画像のみならずCMYK等のカラーインクを用いて印刷することになるカラー色成分を有するカラー画像やグラデーション画像も用いられる。このように、同じ箇所に重複して複数画像を印刷する手法は、未だ成熟しておらず、さらなる画質の向上が望まれていた。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、背景画像の画質を向上させることが可能な印刷装置、印刷プログラムおよび印刷方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の印刷装置では、各画素が白インクのドットの記録率を有する第1画像データと、各画素が非白インクのドットの記録率を有する少なくとも一つの第2画像データとを取得する画像データ取得手段が備えられる。ハーフトーン処理手段は、上記第1画像データと上記第2画像データとに基づいて、各画素が少なくともドットを記録させるか否かを示す第1ハーフトーンデータと第2ハーフトーンデータとにそれぞれ生成する。このハーフトーン処理において、上記ハーフトーン処理手段は、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成する。そして、印刷手段は、上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータとに基づいて印刷媒体に上記白インクのドットと上記非白インクのドットとを記録する。
【0007】
かかる構成によれば、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録させることができる。従って、上記非白インクのドットによって生じる粒状感を、上記白インクのドットによって緩和することができる。上記白インクのドットによる粒状感の緩和効果は、上記白インクのドットを観察者側に重ねた場合に顕著となる。従って、上記非白インクのドットに対して、上記白インクのドットを上記印刷媒体の観察者側から重ねて記録させるのが望ましい。むろん、上記白インクのドットに対して、上記非白インクのドットを上記印刷媒体の観察者側から重ねて記録しても、粒状感を緩和することができる。
【0008】
複数の上記非白インクのドットを記録する場合に好適な手法として、上記非白インクのうち粒状感が目立ちやすさが他の上記非白インクよりも大きい上記非白インクのドットと、上記白インクのドットとが上記印刷媒体上において重なって記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成するようにしてもよい。例えば、にじみ特性等により印刷媒体において重ねて記録することが可能なインクのドットの数に制限がある場合には、本手法を適用するのが好ましい。このような制限がある場合でも、上記記録率が小さければ、多くのインクのドットを重ねても、にじみ等の不具合が生じる可能性が低いと考えることができる。従って、上記記録率が小さい場合には、上記白インクのドットと重ならせる上記非白インクの色数を増加させるようにしてもよい。
【0009】
上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータとを生成する具体的なハーフトーン処理の手法として、ディザ法と誤差拡散法が挙げられる。ディザ法の場合、ドットを重ねるインクについて互いに同一のディザマスクを使用することにより、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成することができる。一方、誤差拡散法の場合、拡散誤差または該拡散誤差と比較する閾値を調整することにより、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成することができる。
【0010】
上述した印刷装置は、他の機器に組み込まれた状態で実施されたり他の方法とともに実施されたりする等の各種の態様を含む。また、本発明は前記印刷装置を備える印刷システム、上述した装置の構成に対応した工程を有する印刷方法や印刷制御方法、上述した装置の構成に対応した機能をコンピューターに実現させる印刷プログラム、該印刷プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体、等としても実現可能である。これら印刷システム、印刷方法、印刷制御方法、印刷プログラム、印刷プログラムを記録した媒体、の発明も、上述した作用、効果を奏する。むろん、請求項2〜6に記載した発明も、前記システムや前記方法や前記プログラムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】印刷装置の概略的な構成を示した説明図である。
【図2】PCのハードウェア構成を示したブロック図である。
【図3】プリンターのハードウェア構成を示したブロック図である。
【図4】印刷装置のソフトウェア構成を示したブロック図である。
【図5】主画像と背景画像を概念的に示した説明図である。
【図6】主画像データと背景画像データの組合せの一例を示した説明図である。
【図7】プリンタードライバーの実行する印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】色変換テーブルLUTmの一例を部分的に示した説明図である。
【図9】色変換テーブルLUTbの対応関係の一例を部分的に示した図である。
【図10】S125の処理を模式的に説明する図である。
【図11】ディザマスクとディザ法を説明する図である。
【図12】誤差拡散法の手順を示す模式図である。
【図13】印刷データ作成処理において作成される制御コマンドの一例を示す説明図である。
【図14】プリンターの実行する印刷処理のフローチャートである。
【図15】ラスターバッファーおよびヘッドバッファーの詳細構成を示す説明図である。
【図16】プリンターのプリントヘッドの構成を示す説明図である。
【図17】印刷結果を示す説明図である。
【図18】変形例のプリンターのプリントヘッドの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)本実施例の構成:
(2)プリンタードライバーによる印刷処理:
(3)プリンターでの印刷処理:
(4)印刷結果:
(5)変形例:
【0013】
(1)本実施例の構成:
図1は、本実施例にかかる印刷装置の構成を概略的に示す説明図である。同図において、本実施例の印刷装置は、プリンター100とパーソナルコンピューター200(PC200)を備えている。プリンター100は、インクを吐出して印刷媒体上に画像を形成するインクジェット式プリンターである。PC200は、プリンター100に印刷用の画像データや制御コマンド等からなる印刷制御データを出力することにより、プリンター100に印刷を行わせる印刷制御装置として機能する。プリンター100とPC200は、通信ケーブルや無線通信回線等によって通信可能に接続されている。
【0014】
本実施例のプリンター100は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、ライトシアン(lc)、ライトマゼンタ(lm)、ホワイト(W)の計7色のインクを搭載しており、これらの中から適宜選択された色のインクを用いて印刷を行う。すなわち、プリンター100はWインクを用いることにより、印刷媒体に対して、白色もしくは白色に近い色の下地を形成する印刷を行ったり、カラー画像を印刷したり、下地とカラー画像を所定の順で重複して印刷したりすることができる。
【0015】
(1−1)ハードウェア構成:
図2は、PC200の構成を概略的に示す説明図である。同図に示すように、PC200は、CPU205、RAM210、ROM215、ディスプレイインターフェース225(DIF225)、操作入力機器インターフェース230、ハードディスク235(HD235)、USBインターフェース240を備えている。各部205〜230はバス等の通信回線を介して接続されており、チップセット等の制御コントローラーの制御に従って相互通信可能になっている。ディスプレイインターフェース225には表示装置としてのディスプレイ225aが接続されている。操作入力機器インターフェース230には操作入力機器230aとしてのマウスやキーボードが接続されている。USBインターフェース240は、プリンター100のUSBインターフェース155と通信可能になっている。
【0016】
図3は、プリンター100の構成を概略的に示す説明図である。同図に示すように、プリンター100は、CPU105、RAM110、ROM115、プリントヘッド120、ヘッドコントローラー125、CMYKlclmW各色のインクタンクが搭載されたキャリッジ、キャリッジコントローラー135、キャリッジモーター140、印刷媒体送りモーター145、印刷媒体送りコントローラー150、USBインターフェース155、を備えている。各部105,110,115,125,135,150,155は、バス等の通信回線を介して接続されており、チップセット等の制御コントローラーの制御に従って相互通信可能になっている。CPU105はROM115に記憶されているプログラムを適宜RAMをワークエリアとして利用しつつプログラムに従って演算処理を行うことにより、プリンター100全体を制御する制御部として機能する。
【0017】
プリントヘッド120はインク滴を吐出するノズル群を備えており、キャリッジに搭載されている。インク滴が印刷媒体に着弾し、定着することによりドットが記録される。キャリッジモーター140はキャリッジを所定の方向(主走査方向)に移動させる駆動機構であり、キャリッジコントローラー135の制御に従って動作する。印刷媒体送りモーター145は印刷媒体を主走査方向と直交する方向(副走査方向)に搬送する駆動機構であり、印刷媒体送りコントローラー150の制御に従って動作する。プリントヘッド120の各ノズルは各色のインクタンクに対応するように配置されており、ヘッドコントローラー125の制御に従い、対応するインクタンクのから色インクを取得して吐出する。制御部は、キャリッジコントローラー135と印刷媒体送りコントローラー150とヘッドコントローラー125を連動して制御することにより、印刷媒体上に画像を形成する。
【0018】
(1−2)ソフトウェア構成
図4は、印刷装置のソフトウェア構成を概略的に示す説明図である。PC200のHD235には、アプリケーションプログラムAPLとプリンタードライバーPDrv、主画像用の色変換テーブルLUTm、背景画像用の色変換テーブルLUTb、主画像用のディザマスクDMm、背景画像用のディザマスクDMbが記憶されており、アプリケーションプログラムAPLとプリンタードライバーPDrvをPC200上で実行することにより、図4に示すソフトウェア構成が実現される。
【0019】
<アプリケーション>
アプリケーションプログラムAPLは、透明フィルム等の印刷媒体上へ印刷する画像の画像データを作成してプリンタードライバーに出力するアプリケーションプログラムである。このようなアプリケーションプログラムとしては、レタッチプログラムのように画像を加工・修正するアプリケーション、ドロープログラムのようにコンピューター上で画像を描くアプリケーション、ワープロソフトのように文書を作成するアプリケーション等、様々なプログラムが該当する。
【0020】
アプリケーションプログラムAPLは、画像や文書そのものを表す主画像と、画像や文書の背景を表す背景画像と、をそれぞれに調整可能であるものとする。また、アプリケーションプログラムAPLは、主画像と背景画像の各々に対応する画像データを作成してプリンタードライバーに出力する機能を有しているものとする。本実施例においては、主画像に対応する画像データを主画像データMID、背景画像データに対応する画像データを背景画像データBID(背景画像データが複数ある場合は適宜「第1」、「第2」・・・などを付し、符号は「BID1」、「BID2」等とする。)と記載する。
【0021】
本実施例においては、主画像データはCMYKの各色データの階調値の組合せで構成され、背景画像データは、CMYKの各色データの階調値に加えて白(W)の濃度の階調値を示す濃度値Tで構成されている。なお、本実施例では色データとしてCMYKの4色を採用して説明を行うが、色データはCMYKの組合せに限定されるものではなく、RGBの3原色で表されたRGBデータやL*a*b*の各値で表されたLabデータであっても構わない。
【0022】
また、「主画像」と「背景画像」という名称は、必ずしも一方が主要な画像であり他方が従属的な画像であるといった主従の関係があるものに限る必要は無く、画像データを印刷媒体に印刷するときの印刷順と、印刷結果に対して想定されている観察方向に応じて決定される名称に過ぎない。
図5は、主画像と背景画像を概念的に示した説明図である。図5(a)に示すように、例えば、透明フィルム等の印刷媒体上に先に「背景画像」を印刷してからその後「主画像」を印刷することにより、印刷媒体の印刷面側から観察したときの背景として背景画像が印刷され、背景画像の手前側に主画像が形成されるタイプの印刷が可能となる。
また、図5(b)に示すように、透明フィルム上に先に「主画像」を印刷してからその後「背景画像」を印刷することにより、印刷媒体の印刷されていない面側から観察したときの背景として背景画像が印刷され、背景画像の手前側に主画像が形成されるタイプの印刷が可能となる。
また、図5(c)に示すように、印刷媒体の一方の面を表面として表面から観察されることを想定すると、表面に「主画像」を印刷し、裏面に「背景画像」を印刷することにより、観察方向から見ると「主画像」の背景として「背景画像」が印刷されることになる。また、図5(c)の印刷媒体を裏側から観察する場合も考えられる。
図5(a)〜(c)において、「背景画像」のみに注目すると、「背景画像」が観察者の側に印刷される場合(表面背景タイプ)と、「背景画像」が観察者の反対側に印刷される場合(裏面背景タイプ)とに分類することができる。
【0023】
ユーザーは印刷物の使用態様に応じて、主画像と背景画像のいずれを先に印刷するかを選択する。すなわち印刷面側から観察される印刷物であれば背景画像を先に印刷するように指定し、印刷面の裏面側から観察される印刷物であれば主画像を先に印刷するように指定することになる。アプリケーションプログラムAPLは、印刷順を指定する印刷順指定データsを含む印刷順指定データPODを生成する。さらに、アプリケーションプログラムAPLは、表面背景タイプか裏面背景タイプのどちらに分類されるかを判定し、該分類に応じてプリントヘッド120の主走査方向を指定する走査方向指定データmを印刷順指定データPODに格納する。以上のようにして作成した主画像データMIDと背景画像データBIDと印刷順指定データPODとを含んだ印刷データPDを、アプリケーションプログラムはプリンタードライバーPDrvに出力する。
【0024】
また、主画像データと背景画像データは、各々1つの画像データであってもよいが、複数の画像データの組合せで構成されてもよい。例えば、主画像データを作成する際に複数の画像レイヤーに分けて作成した場合に、各レイヤーデータを各々1つの画像データとして出力した場合がこれに該当する。
【0025】
図6は、主画像データと背景画像データの組合せの一例を示した説明図である。同図は、アプリケーションプログラムAPLから主画像MIを含む主画像データMIDと背景画像BI1を含む第1背景画像データBID1と背景画像BI2を含む第2背景画像データBID2が出力された場合の例である。
【0026】
図6において、第1背景画像データBID1は、白以外の色で構成される背景画像BI1としてのグラデーション画像を表すものである。すなわち、第1背景画像データBID1は、Wインク以外のCMYKlclmインク(非白インク)で印刷される背景画像である。図6においては、第1背景画像データBID1は、画像右端に近づくほど徐々に色が濃くなる画像としてある。
【0027】
また、図6において、第2背景画像データBID2は白画像で構成された背景画像BI2を表すものであり、画素毎に白の濃度、すなわち白インクのドットの記録率やインク被覆率を指定された画像データである。すなわち、第2背景画像データBID2は、CMYKlclmインクを使わずにWインクだけで印刷される背景画像である。図6においては、白画像の濃度を画像の部位毎に異なるように作成された画像を示してあり、画像の左半分は白画像の濃度を最高濃度のN%、画像の中ほどから右4分の1までの濃度を最高濃度のM%、画像の右4分の1の濃度を最高濃度のP%としてある。
【0028】
<プリンタードライバー>
図4に示すように、PC200においてプリンター100のプリンタードライバープログラムをオペレーティングソフト等の基本ソフト上で実行することにより、画像データ取得部M1、色変換部M2、ハーフトーン設定部M3、ハーフトーン処理部M4、印刷データ作成部M5の各モジュールに相当する機能が実現される。また、プリンター100の制御部でファームウェア等の制御プログラムが実行されることにより、コマンド処理部M11に相当する機能が実現される。
【0029】
色変換部M2は、HD235に予め記憶された色変換テーブルLUTm,LUTbを適宜参照しつつ、主画像データMIDや背景画像データBIDを構成する各画素が有するCMYK各色の階調値をプリンター100に搭載されている各インク色のインク量を表す階調値に変換する。各インク量の階調値は、印刷媒体に付着されるインク量、および、ドットの記録率を意味する。この各インク量の階調値は、印刷ヘッドのノズルから各画素に対応する範囲内にと出されるインク量に比例する値であるため、ドットの記録率とも呼ばれる。また、インク量は、非線形的な対応となるものの、印刷媒体におけるインク被覆率とも一意に対応する。なお、色変換部M2は、同一色の淡インクと濃インクと階調値を振り分けるための、いわゆる分版処理も同時に行うように構成されている。
【0030】
ハーフトーン設定部M3は、背景画像データBIDの色変換の結果に基づいて、ハーフトーン処理部M4に使用させる各インクのディザマスクを設定する。ハーフトーン処理部M4は、HD235に予め記憶されたディザマスクDMm、HTRbを適宜参照しつつ、各インク色について生成された階調値を画素毎にインクの吐出/非吐出の2値化するとともに、吐出するインクの量を特定したハーフトーン画像データを生成する。印刷データ作成部M5は、ハーフトーン画像データを受取ってプリンター100で使用される順に並べ替え、一回の主走査にて使用されるデータを単位にして、逐次、プリンター100に出力する。
【0031】
(2)プリンタードライバーによる印刷処理:
(2−1)印刷処理の第1実施形態:
図7は、プリンタードライバーPDrvの実行する印刷処理の流れを示すフローチャートである。同図に示す印刷処理においては、主画像データMIDと第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2と印刷順指定データPODとにより構成される印刷データPDに基づいて印刷を行う。その際、主画像データMIDと第1背景画像データBID1の間、もしくは主画像データMIDと第2背景画像データBID2の間で印刷範囲が重複する場合には、その重複箇所について第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2を修正する。その結果、印刷結果は印刷データPDを作成したユーザーの意図に沿うように修正される。なお、本第1実施形態の印刷処理においては、主画像データMIDは修正されない。
【0032】
本第1実施形態の印刷処理は、アプリケーションプログラムAPLから印刷データPDが入力されたときに開始される。処理が開始されると、ステップS100(以下、「ステップ」の記載を省略する。)において、画像データ取得部M1が、アプリケーションプログラムAPLから入力された主画像データMIDと第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2と印刷順指定データPODを取得する。
【0033】
次にS105において、色変換部M2は、主画像データMIDから主画像のインク量データM_ink(本発明の第1画像データに相当する。)を作成する。すなわち、色変換部M2は、主画像データMIDの中から1つの画素データM_Pixを選択し、色変換テーブルLUTmを参照しつつ、主画像データMIDの各画素データM_Pixをインク色別の階調値であるインク量データ(インク色別階調値)に変換していく。上述したように、本実施例では、CMYKlclmWの計7色のインクを用いて印刷を行う。従って、S105の色変換処理では、色変換テーブルLUTmを参照して、CMYK値を7つのインク色のそれぞれの階調値に変換する。
【0034】
図8は、色変換テーブルLUTmの一例を部分的に示した説明図である。同図に示すように、色変換テーブルLUTmには、予め設定されたCMYK値と各インク色のインク量を示すCMYKlclmの各階調値との対応関係が規定されている。なお、同図に示した色変換テーブルLUTmでは、CMYKの各色データの階調値を0以上100以下の範囲で規定しており、インク量の階調値を0以上255以下の範囲で規定している。また、図8に示すように、本実施例では主画像データMIDから変換して生成されるインク量データにはCMYKlclmの6色のインクが使用され、Wインクは使用されないようになっている。
【0035】
S110において、ハーフトーン処理部M4は、主画像のインク量データM_inkから1画素のインク色別階調値を取り出し、インク色毎にディザマスクDMmを参照してハーフトーン処理(ハーフトーン処理)を行う。ハーフトーン処理は予め設定された主画像用のディザマスクDMmを参照して実行される。そして、ハーフトーン処理部M4は、S110のハーフトーン処理を全画素・全インク色について実施するまで主画像のインク量データM_inkから順次インク色別階調値を取り出してハーフトーン処理を繰り返す。主画像のインク量データM_inkを構成するインク色別階調値についてS110のハーフトーン処理が完了すると、主画像のハーフトーンデータが作成される。S115において、第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2を合成した合成背景画像データBID’を作成し、色変換部M2が合成背景画像データBID’に対して色変換処理を行う。
【0036】
図9は、色変換部M2が背景画像データの色変換を行う際に参照する色変換テーブルLUTbの対応関係の一例を部分的に示した図である。同図に示すように、色変換テーブルLUTbでは、白インクの量を濃度値Tで指定できるようになっている。色変換部M2は色変換テーブルLUTbを参照しながら合成背景画像データBID’の各画素データをインク量データに変換することにより合成背景画像のインク量データB_ink(本発明の第2画像データに相当する。)を作成し、RAM210に記憶する。なお、色変換部M2は、本発明の画像データ取得手段に相当する。
【0037】
インク量データB_inkは、CMYKlclmWの7色のインク毎に作成されており、それぞれ対応するインクのインク量(ドットの記録率)を各画素に格納させている。白インクであるWインクについてのインク量データB_ink(W)は本発明の第1画像データに相当し、非白インクであるCMYKlclmインクについてのインク量データB_ink(C)〜(lm)は本発明の第2画像データに相当する。
【0038】
S120において、ハーフトーン設定部M3は、すべての非白インクについてのインク量データB_ink(C)〜(lm)の全画素が有するインク量のなかから最大の最大インク量IKUを検出し、最大インク量IKUと閾値ITHとを比較する。そして、最大インク量IKUが閾値ITHよりも大きい場合には、重ねインク数制限NDを1に設定する。一方、最大インク量IKUが閾値ITH以下の場合には、重ねインク数制限NDを例えば4に設定する。閾値ITHは、印刷媒体におけるインクのにじみ特性等に応じて設定され、閾値ITH以下のインク量において全インクのドットを重ねて記録しても印刷結果がにじみ等によって破綻しないことが保証される。
【0039】
S125において、ハーフトーン設定部M3は、非白インクについてのインク量データB_ink(C)〜(lm)を取得し、インク量データB_ink(C)〜(lm)の各画素のインク量を粒状性指数GIに変換する。このとき粒状性テーブルGTBを参照する。粒状性指数GIは、特開2005−103921号公報や特開2005−310098号公報や特開2007−281724号公報に開示された指標値を使用することができる。粒状性指数GIは、その値が大きいほど粒状感が目立つことを意味する指数である。
【0040】
図10は、S125の処理を模式的に説明する図である。図10(a)はインク量データB_inkの一例を示し、図10(b)は粒状性テーブルGTBの一例を示している。粒状性テーブルGTBは、各非白インクについてのインク量と粒状性指数GIとの対応関係を規定したルックアップテーブルである。粒状性指数GIの傾向は、印刷媒体に応じて異なるため、印刷対象の印刷媒体に対応する粒状性テーブルGTBが参照される。一般的には色が濃いインクほど粒状性指数GIが大きくなる傾向がある。また、単一のインクでは、図10(c)に図示するように低〜中インク量の領域において粒状性指数GIが大きくなる傾向がある。印刷媒体上においてインクのドットがある程度充填されると、個々のドットが視認され難くなるからである。粒状性テーブルGTBに規定された粒状性指数GIは、各インク単独のグラデーションのカラーパッチを対象の印刷媒体上に印刷し、上述した公報に記載された手法によって測定することができる。
【0041】
S125において、図10(d)に示すように各画素が粒状性指数GIを示す画像データが各非白インクによって得られると、S130において、ハーフトーン設定部M3は、各非白インクについて全画素の粒状性指数GIの平均することにより粒状性平均値GIaveを算出する。S135において、ハーフトーン設定部M3は、各非白インクについての粒状性平均値GIaveと粒状性閾値GTHとを比較する。そして、粒状性平均値GIaveの方が粒状性閾値GTHより大きい非白インクを重ね候補インクとする。なお、粒状性平均値GIaveの平均値ではなく、粒状性指数GIの最大値に基づいて重ね候補インクを決定してもよい。S140において、ハーフトーン設定部M3は、粒状性平均値GIaveの方が粒状性閾値GTHより大きい重ね候補インクの数を判定する。
【0042】
重ね候補インクが一つもない場合、S145において、ハーフトーン設定部M3は、いずれのインクも重ね対象インクとして設定しない。重ね候補インクが一つの場合、S150において、ハーフトーン設定部M3は、唯一の重ね候補インクを重ね対象インクとする。重ね候補インクが複数ある場合、S155において、ハーフトーン設定部M3は、重ねインク数制限NDの数だけ重ね候補インクを粒状性平均値GIaveの大きい順に選択し、該選択した重ね候補インクを重ね対象インクとする。重ねインク数制限NDが4である場合には、4個の重ね候補インクが重ね対象インクとして設定され、重ねインク数制限NDが1である場合には、1個の重ね候補インクが重ね対象インクとして設定される。各非白インクが重ね対象インクであるか否かを示すデータは、RAM210に記憶される。
【0043】
S160において、ハーフトーン設定部M3は、ハーフトーン処理をディザ法によって行うのか、誤差拡散法によって行うのかを選択する。例えば、印刷を行う印刷媒体の種類や、ユーザーが設定した印刷モード(はやい,きれい)等の印刷条件に応じてハーフトーン処理の手法を選択する。なお、ディザ法は、普通紙に印刷する場合や、印刷モード(はやい)が設定された場合に、選択される。一方、誤差拡散法は、専用紙に印刷する場合や、印刷モード(きれい)が設定された場合に、選択される。以降、ハーフトーン処理部M4は、それぞれディザ法と誤差拡散法によるハーフトーン処理を実行する。ここでは、まずディザ法について説明する。
【0044】
S165において、ハーフトーン処理部M4は、RAM210から各非白インクが重ね対象インクであるかそうでないかを示すデータを取得し、重ね対象インクについてのディザマスクDMbをWインクについてのディザマスクDMbと同一のものに設定する。
【0045】
図11(a),(b)はディザマスクDMbと、それによるディザ法を説明する図である。同図に示すように、本実施例では、各インク毎に異なるディザマスクDMbが用意されている。ディザマスクDMbは、複数の画素からなり各画素がインク量の階調値と比較するためのマスク閾値MTHを有している。マスク閾値MTHが小さい画素ほど、インクのドットが記録される確率が高くなる。本実施例では、各インクについてのディザマスクDMbのマスク閾値MTHが特開2007−15359号公報の手法によって最適化されている。この手法によって作成されたディザマスクDMbによれば、ドットが局所的に集中することが防止でき、結果的に粒状感を抑制することができる。
【0046】
図11(a)に示すように、各インク毎に異なるディザマスクDMbが用意されているが、重ね対象インクについては、重ね対象インク本来のディザマスクDMbではなく、白インクのディザマスクDMbを使用することとなる。従って、4つの非白インクが重ね対象インクとされた場合には、4つの重ね対象インクとWインクが同一のディザマスクDMbを使用してハーフトーン処理されることとなる。S170において、ハーフトーン処理部M4は、各インクのインク量データB_inkの各画素のインク量の階調値と、ディザマスクDMbの対応する画素のマスク閾値MTHとを比較し、インク量の階調値の方が大きければドットを記録すると決定し、インク量の階調値の方が大きくなければドットを記録しないと決定する。これにより、各画素のインク量の階調値は、2値化されることとなる。すなわち、各画素がドットを記録するか否かを示すハーフトーンデータが各インクについて生成できる。ハーフトーンデータにおいてドットを記録する画素には階調値「1」が与えられ、ドットを記録しない画素には階調値「0」が与えられることとする。なお、Wインクについてのハーフトーンデータが本発明の第1ハーフトーンデータに相当し、重ね対象インクについてのハーフトーンデータが本発明の第2ハーフトーンデータに相当する。
【0047】
ここで、Wインクと同一のディザマスクDMbを使用して2値化した重ね対象インクについては、各画素についてドットを記録すると決定される確率がWインクと同様となる。すなわち、Wインクにおいてドットが記録されやすい画素については、重ね対象インクについてのドットが記録されやすくなる。従って、Wインクの第1ハーフトーンデータにおいてドットを記録するとされた画素は、重ね対象インクの第2ハーフトーンデータにおいてもドットを記録するとされている可能性が高くなる。次に、誤差拡散法を行う場合について説明する。
【0048】
図12(a)は、誤差拡散法の基本的な手順を示す模式図である。誤差拡散法においては、注目画素について、インク量の階調値(IK)と、左方向と上方向に存在する周辺画素から拡散した拡散誤差ERの合計値teとを加算した判定値JVを算出し、該判定値JVと判定閾値T(127)とを比較する。判定値JVが判定閾値Tよりも大きい場合には注目画素についてドットを記録するとし、判定値JVが判定閾値Tよりも大きくない場合には注目画素についてドットを記録しないとする。ドットを形成する場合、判定値JVからインク量の最大値(255)を差し引いた値の拡散誤差ERが生じ、該拡散誤差ERを周辺の画素に拡散させる。ドットを形成しない場合、判定値JVからインク量の最小値(0)を差し引いた値の拡散誤差ERが生じ、該拡散誤差ERを周辺の画素に拡散させる。以上の処理を、注目画素を順次走査させながら行うことにより、各画素を順に2値化していくことができる。まず、S175において、ハーフトーン設定部M3は、各インクについて基準インクを設定する。
【0049】
この基準インクの設定は、重ね対象インクの数によって異なるものとされる。重ね対象インクが1つである場合には、該重ね対象インクを基準インクとする。重ね対象インクが4つである場合には、重ね対象インクのうち粒状性平均値GIaveが最大のインクを基準インクとする。重ね対象インクが1つもない場合には、いずれのインクも基準インクとして設定しない。基準インクは、非白インクのうち最も粒状感を生じさせるインクであると言うことができる。
【0050】
以上のように基準インクの設定が行われると、ハーフトーン処理部M4は、S177において、該基準インクについて誤差拡散法によるハーフトーン処理を実行する。重ね対象インクが1つもなく、基準インクが設定されなかった場合には、S177はスキップされる。基準インクについてハーフトーン処理を行う場合には、判定値JVのオフセットを無効とする。これにより、図12(a)に示すように誤差拡散法が一様に行われていく。基準インクについてハーフトーン処理が完了すると、該インクについてのハーフトーンデータが生成できたこととなる。このハーフトーンデータを基準ハーフトーンデータとしてRAM210に記憶する(S180)。基準ハーフトーンデータは、本発明の第2ハーフトーンデータに相当する。
【0051】
S182において、ハーフトーン処理部M4は、Wインクについて誤差拡散法によってハーフトーン処理を実行する。Wインクについてハーフトーン処理を行う場合には、判定値JVのオフセットを有効とする。判定値JVのオフセットが有効とされている場合には、図12(b)に示すオフセット処理が各注目画素について実行される。まず、S182aにて、RAM210に記憶された基準ハーフトーンデータを参照することにより、注目画素と同一の位置において基準インクのドットが記録されるか否かを判定する。そして、注目画素と同一の位置において基準インクのドットが記録される場合には、判定値JVをオフセットさせる(S182b)。本実施例では、図12(c)に示すように、一定のオフセット量OS(正値)を判定値JVに加算することにより、判定値JVをオフセットさせる。
【0052】
一方、注目画素と同一の位置において基準インクのドットが記録されない場合には、判定値JVをオフセットさせない(S182c)。これにより、基準インクが記録される画素については、Wインクのドットが記録される確率を高めることができる。すなわち、基準ハーフトーンデータにおいてドットを記録するとされた画素は、Wインクについてのハーフトーンデータにおいてもドットを記録するとされている可能性が高くなる。なお、S182にてWインクについて得られたハーフトーンデータは、本発明の第1ハーフトーンデータに相当する。
【0053】
S185において、ハーフトーン処理部M4は、重ね対象インク(基準インク以外)について誤差拡散法によってハーフトーン処理を実行する。基準インク以外の重ね対象インクが存在しない場合にはS185はスキップされる。基準インク以外の重ね対象インクが複数存在する場合には順次各重ね対象インクについてハーフトーン処理を実行する。この場合の各重ね対象インクの処理順序はどのようなものであってもよい。基準インク以外の重ね対象インクについてハーフトーン処理を行う場合にも、判定値JVのオフセットを有効とする。従って、基準ハーフトーンデータにおいてドットを記録するとされた画素は、基準インク以外の重ね対象インクについてのハーフトーンデータにおいてもドットを記録するとされている可能性が高くなる。また、S182,S185によれば、基準ハーフトーンデータと、基準インク以外の重ね対象インクについてのハーフトーンデータと、Wインクのハーフトーンデータの間で相互に、同一の画素にてドットを記録するとされている可能性が高くなるということができる。
【0054】
S187において、ハーフトーン処理部M4は、重ね対象インクでもWインクでもない残りの非白インクについて誤差拡散法によってハーフトーン処理を実行する。残りの非白インクが存在しない場合にはS187はスキップされ、複数存在する場合には残りの各非白インクについて順次ハーフトーン処理を実行する。この場合も、残りの各非白インクの処理順序はどのようなものであってもよい。残りの非白インクについてハーフトーン処理を行う場合には、判定値JVのオフセットを無効とする。これにより、図12(a)に示すように誤差拡散法が一様に行われていく。以上により、すべてのインクについて誤差拡散法によるハーフトーン処理が完了したこととなる。
【0055】
以上説明したように、重ね対象インクが1つでも存在する場合には、粒状性平均値GIaveが最大の重ね対象インクについてのハーフトーンデータが基準ハーフトーンデータとされ、少なくともWインクについてのハーフトーン処理について判定値JVのオフセットが有効とされる。従って、最も粒状感を生じさせやすい重ね対象インクのドットと、Wインクのドットを同一の画素において記録させるようにすることができる。さらに、重ね対象インクが4つ存在する場合には、Wインクだけでなく、他の重ね対象インクのドットも、基準インクのドットと同一の画素において記録させるようにすることができる。
【0056】
すなわち、本実施例によれば、重ね対象インクのドットが、Wインクのドットと同一の位置に記録される確率を高くすることができる。なお、重ね対象インクが1つも存在しない場合には、他のインクのハーフトーン処理結果に依存しない通常の誤差拡散法がすべてのインクについて行われることとなる。なお、Wインクと重ね対象インクとが同一の画素においてドットを記録するようにハーフトーン処理をすることができればよく、必ずしも重ね対象インクのハーフトーン処理を最初に行わなくてもよい。すなわち、Wインクについてのハーフトーンデータを最初に基準ハーフトーンデータとして生成しておき、該基準ハーフトーンデータを参照して、重ね対象インクについてのハーフトーン処理を実行してもよい。
【0057】
S190において、印刷データ作成部M5は、主画像についての各インクのハーフトーンデータ、背景画像についてのハーフトーンデータ(第1ハーフトーンデータ,第2ハーフトーンデータ)、および、印刷順指定データPODに基づいて、主画像MIや各背景画像BI1,BI2をプリンター100に印刷させるための制御コマンドを作成する。以下の説明では、主画像MIをプリンター100に印刷させるための制御コマンドを作成する場合を例にとって説明するが、合成背景画像をプリンター100に印刷させるための制御コマンドも同様の処理を行って作成されるものとする。
図13は、印刷データ作成処理において作成される制御コマンドの一例を示す説明図である。制御コマンドは、印刷順指定コマンドと、垂直位置指定コマンドと、水平位置指定コマンドと、各ドットデータ(ラスターデータ)およびインクコードを含んで構成されている。
【0058】
印刷順指定コマンドは、アプリケーションプログラムAPLから入力された印刷順指定データPODに基づいて作成される。
図13(a)は印刷順指定コマンドの例である。同図に示すように、印刷順指定コマンドは、コマンド先頭を示す識別子Escと、印刷順指定コマンドであることを示す識別子“j”と、コマンド長(本実施例においては2バイト)nL,nHと、印刷順指定データsと、走査方向指定データmと、を含んで構成されている。例えば、印刷順指定データsの値は、印刷順指定データPODが「M−B印刷」を示す場合は「0」とし、印刷順指定データPODが「B−M印刷」を示す場合は「1」とすることができる。「M−B印刷」とは、主画像を先に印刷して背景画像を後に印刷することを意味し、「M−B印刷」とは背景画像を先に印刷して主画像を後に印刷することを意味する。また、例えば、走査方向指定データmの値は、印刷順指定データPODが「順方向印刷」を示す場合は「0」とし、印刷順指定データPODが「逆方向印刷」を示す場合は「1」とすることができる。
【0059】
ここで、「順方向印刷」とは、プリントヘッド120を順方向に主走査させる間に各インクのドットを記録することを意味し、それにより、非白インク(カラーインク)が先に記録され、Wインクが後に記録されることとなる。一方、「逆方向印刷」とは、プリントヘッド120を逆方向に主走査させる間に各インクのドットを記録することを意味する。それにより、Wインク先が記録され、非白インクが後に記録されることとなる。アプリケーションプログラムAPLは、表面背景タイプ(図5、参照。)の場合に、印刷順を「順方向印刷」としている。反対に、裏面背景タイプ(図5、参照。)の場合には、印刷順を「逆方向印刷」としている。本実施例では、印刷順指定データPODがアプリケーションプログラムAPLによって作成されることとしたが、プリンタードライバーPDrvによって印刷順指定データPODが作成されてもよいし、アプリケーションプログラムAPLが作成した印刷順指定データPODをプリンタードライバーPDrvによって修正してもよい。
【0060】
垂直位置指定コマンドは、ハーフトーン処理部M4の出力した主画像データMIDに対応して作成された主画像のハーフトーンデータに基づいて作成される。垂直位置指定コマンドは、垂直方向(副走査方向:印刷媒体の搬送方向)の画像の開始位置を指定するコマンドである。垂直位置指定コマンドは、全インクに共通のコマンドとして作成される。
【0061】
水平位置指定コマンドは、主画像形成の際の1つのインク色についての水平方向(主走査方向)の画像形成の開始位置を指定するコマンドである。水平位置指定コマンドは、ハーフトーン処理部M4の出力した主画像のハーフトーンデータの各インク色毎に作成される。印刷データ作成部M5は、1つのインク色についてのハーフトーンデータを参照し、水平方向における前記1つのインク色についての主画像のハーフトーンデータの開始位置を特定し、この開始位置を指定するための水平位置指定コマンドを作成する。
【0062】
図13(b)は、ラスターコマンドの例を示す図である。同図に示すように、ラスターコマンドは、コマンド先頭を示す識別子Escと、ラスターコマンドであることを示す識別子iと、インクコードrと、1画素あたりのビット数bと、水平方向(X方向)長さ(本実施例においては2バイト)nL,nHと、垂直方向(Y方向)長さ(本実施例においては2バイト)mL,mHと、ラスターデータ(ドットデータ)d1,d2,・・・,dnと、を含んでいる。ドットデータは1ラスター毎に作成される。インクコードrは各インク色に固有のコードである。HD235には、各インク色に固有のインク略称とインクコードとが対応付けたインクコード表が保存されており、このインクコード表を参照することにより各インク色のインクコードを検索し、ラスターコマンドに付与するべきインクコードを得ることができる。
【0063】
S195において、プリンタードライバーPDrvは、S190で作成された主画像の印刷制御データ(印刷順指定コマンド、垂直位置指定コマンド、水平位置指定コマンド、ラスターコマンド)と背景画像の印刷データをプリンター100へ送信する。以上で、プリンタードライバーPDrvによる処理が完了する。
【0064】
(3)プリンターでの印刷処理:
以上のようにして各実施形態で作成されて出力された印刷制御コマンドがプリンター100に入力されると、プリンター100は印刷制御コマンドに基づいた印刷を実行する。
図14は、プリンター100の実行する印刷処理のフローチャートである。同図に示す処理は、プリンター100の制御部において実行されるコマンド処理部M11によって実行される。
S505では、PC200のプリンタードライバーPDrvから受信した印刷制御データを受信する。
S510では、受信したコマンドの種類を判断し、コマンドの種類に応じてS515〜S530のいずれかの処理を行う。すなわち、受信したコマンドが印刷順指定コマンドの場合はS515に進み、受信したコマンドが水平位置指定コマンドの場合はS520に進み、受信したコマンドが垂直位置指定コマンドの場合はS525に進み、受信したコマンドがラスターコマンドの場合はS530に進む。
【0065】
S515では、受信した印刷順指定コマンドによって指定された印刷順指定データPODをRAM110に保存する。S520では、受信した水平位置指定コマンドによって指定された水平位置を、水平方向の印刷開始位置Xとして更新する。S525では、受信した垂直位置指定コマンドによって指定された垂直位置を、垂直方向の印刷開始位置Yとして更新する。S530では、受信したラスターコマンドに含まれるラスターデータをインクコード別のラスターバッファー132へ記憶する。
【0066】
図15は、ラスターバッファー132およびヘッドバッファー127の詳細構成を示す説明図である。同図の上段にはカラー画像用のラスターバッファー132cを示しており、同図の中段には背景画像用のラスターバッファー132wを示してある。同図に示すように、ラスターバッファー132は、インクコード別に領域が割り当てられている。カラー画像用のラスターバッファー132cは、カラー画像用の各インクコードに対応する領域の集合として構成されており、背景画像用のラスターバッファー132wも、背景画像用の各インクコードに対応する領域の集合として構成されている。
ラスターバッファー132の各領域のX方向のサイズは画像サイズに対応しており、Y方向のサイズはプリントヘッド120の高さの2分の1以上のサイズとなっている。
ラスターバッファー132には、どこまでラスターデータ受信したかを示すY方向のラスターバッファーポインターを有している。
【0067】
図15の下段には、ヘッドバッファー127を示している。図15に示すように、ヘッドバッファー127は、7つのインク色別に領域が割り当てられている。すなわち、ヘッドバッファー127は、シアン用(C,WC用)の領域と、マゼンタ用(M,WM用)の領域と、イエロー用(Y,WY用)の領域と、ブラック用(K,WK用)の領域と、ホワイト用(W,WW用)の領域と、の集合として構成されている。
ヘッドバッファー127の各領域のX方向のサイズは、キャリッジの走査距離に対応しており、Y方向のサイズはプリントヘッド120のノズル列146を構成するノズル数に対応している。またヘッドバッファー127のインク色別の領域のそれぞれは、上流用ヘッドバッファー127uと下流用ヘッドバッファー127lとに2分されている。
【0068】
図16は、プリンター100のプリントヘッド120の構成を示す説明図である。図16(a)および(b)に示すように、プリントヘッド120は、7つのインク色のそれぞれに対応するノズル列146が設けられている。ノズル列146は、Y方向(印刷媒体送り方向)に沿って伸びるように形成されている。
また、図16(c)に示すように、各ノズル列146は、Y方向に沿って並ぶ32個のノズル群により構成されている。本実施例においては、ノズル列146を構成するノズル群のうち、印刷媒体送り方向の上流側半分に位置するノズル群(ノズル1〜ノズル16)を上流ノズル群とし、印刷媒体送り方向の下流側半分に位置するノズル群(ノズル17〜ノズル32)を下流ノズル群とする。本実施例では、印刷媒体送り方向の同一順位の各インクのノズルは、印刷媒体送り方向に関して同一の位置に配置されている。
【0069】
図16(a)に示すように、印刷媒体上に背景画像を先に印刷する際には、プリントヘッド120の各ノズル列146の上流ノズル群を用いて背景画像の形成を行い、下流ノズル群を用いて主画像の形成を行う。また、図16(b)に示すように、印刷媒体上に主画像を先に印刷する際には、プリントヘッド120の各ノズル列146の上流ノズル群を用いて主画像の形成を行い、下流ノズル群を用いて背景画像の印刷を行う。
【0070】
図15に示すように、上流用ヘッドバッファー127uは、上流ノズル群に対応するヘッドバッファーであり、下流用ヘッドバッファー127lは、下流ノズル群に対応するヘッドバッファーである。
【0071】
S535では、プリントヘッド120の高さの2分の1に対応するラスターバッファー132にラスターバッファーが格納されているか否かを判断する。格納されていない場合はS580に進んで、S580でラスらーバッファーポインターを更新する。一方、格納されている場合はS540に進む。
【0072】
S540では、RAM130に記憶された印刷順指定データPODの印刷順指定データsに基づいて、主画像と背景画像のいずれを先に印刷するかを判断する。主画像を先に印刷する場合はS545に進み、背景画像を先に印刷する場合はS550に進む。
S545では、主画像用のラスターバッファー132cから上流用ヘッドバッファー127uへラスターデータを転送すると共に、背景画像用のラスターバッファー132wから下流用ヘッドバッファー127lへラスターデータを転送する。従って、プリントヘッド120の各ノズル列146の上流ノズル群を用いて主画像の形成が行われ、下流ノズル群を用いて背景画像の形成が行われる。
S550では、主画像用のラスターバッファー132cから下流用ヘッドバッファー127lへラスターデータを転送すると共に、背景画像用のラスターバッファー132wから上流用ヘッドバッファー127uへラスターデータを転送する。従って、プリントヘッド120の各ノズル列146の上流ノズル群を用いて背景画像の形成が行われ、下流ノズル群を用いて主画像の形成が行われる。
なお、上流ノズル群と下流ノズル群とでは、物理的な用紙上の印刷位置が異なるため、ラスターバッファー132からラスターデータを転送する際は、上流ノズル群と下流ノズル群との対応するラスターデータが用紙上で対応する位置に印刷されるように、印刷位置の差に相当するタイミング差をつけてラスターバッファー上の転送開始データ位置を決定する。
【0073】
S555では、印刷媒体送りコントローラー150を制御して、印刷媒体PMの印刷開始位置とプリントヘッド120の位置が副走査方向において一致するように、印刷媒体PMを搬送する。
S560では、キャリッジコントローラー135を制御して、印刷媒体PMの印刷開始位置とプリントヘッド120の位置が主走査方向において一致するように、プリントヘッド120を移動する。
【0074】
S565では、RAM130に記憶された印刷順指定データPODの走査方向指定データmの値に基づいて、「順方向印刷」と「逆方向印刷」のいずれが指定されているかを特定する。そして、該特定した方向に主走査する際に、プリントヘッド120の副走査方向の長さに相当する範囲分の印刷を実行する。このとき、上流ノズル群によるドットの記録と下流ノズル群によるドットの記録が並行して実行される。図16(a)に示すように、プリントヘッド120が順方向に主走査する場合、CMYKlclmインク(非白インク)がWインクよりも主走査方向の上流側となり、CMYKlclmインクのドットがWインクのドットよりも先に印刷媒体に記録されることとなる。
【0075】
一方、「逆方向印刷」が指定されている場合には、S567において、逆方向に主走査する際に、上流ノズル群によるドットの記録と下流ノズル群によるドットの記録を実行する。図16(a)に示すように、プリントヘッド120が逆方向に主走査する場合、WインクがCMYKlclmKインク(非白インク)よりも主走査方向の上流側となり、WインクのドットがCMYKlclmKインクのドットよりも先に印刷媒体に記録されることとなる。
【0076】
S570では、ラスターバッファー132のラスターバッファーポインターをクリアする。
S575では、印刷画像PIの全体を印刷完了したか否かを判断する。印刷完了していない場合は、印刷完了したと判断されるまでS505〜S570の処理を繰り返し実行する。印刷完了している場合は、図14の印刷処理を終了する。
【0077】
(4)印刷結果:
図17(a),(b)は、それぞれ表面背景タイプの場合と裏面背景タイプの場合の背景画像BI1,BI2についての印刷(ドット記録)結果を示す模式図である。主画像MIの印刷は行われていない。上述したように、表面背景タイプの場合には各背景画像BI1,BI2についての印刷順を「順方向印刷」とし、裏面背景タイプ(図5、参照。)の場合には各背景画像BI1,BI2についての印刷順を「逆方向印刷」としている。そのため、各インクのドットが重なる場合には、いずれのタイプの印刷でも、非白色インクよりも観察者の側にWインクのドットが存在することとなる。上述したように、ディザ法と誤差拡散法のいずれの場合もWインクの第1ハーフトーンデータにおいてドットを記録するとされた画素は、重ね対象インクの第2ハーフトーンデータにおいてもドットを記録するとされている可能性が高くなっているため、図17(a),(b)に図示するようなドットの重なりを多く生じさせることができる。
【0078】
図17(c)は、Wインクが重ね対象インクに重なった状態を観察した様子を示す模式図である。図示するように、非白インクのドットの上(観察者側)にWインクのドットが重なると、非白インクのドットの輪郭の一部を非白インクのドットによって消失させるかぼかすことができる。従って、特に全体的に明度の高い背景においては、非白インクのドットの輪郭による粒状感を抑制することができる。また、非白インクのドットの輪郭の形状が非白インクのドットによって複雑化し、非白インクのドットの輪郭による色彩の変化の空間周波数を高周波化させることができる。色彩の変化が高周波化すれば、人間に知覚されにくくなるため、粒状感を感じさせにくくすることができる。また、重ね対象インクを、一定の粒状性指数GIよりも大きい粒状感を生じさせる非白インクに限定しているため、効率的に粒状感を抑制することができる。
【0079】
(5)変形例:
上記実施例の誤差拡散法においては、判定値JVをオフセットさせることにより、Wインクのドットと重なり対象インクのドットとが重なるようにしたが、判定閾値Tをオフセットさせることによっても同様の効果を得ることができる。すなわち、図12(b)のオフセット処理において、注目画素と同一の位置においてWインクのドットが記録される場合に、判定値JVをオフセットさせる代わりに、注目画素のインク量に比例したオフセット量OSを判定閾値Tから減算する。これにより、該注目画素についてドットが形成される確率を高めることができる。なお、判定閾値Tのオフセットについては、特開2000−6444号公報の手法を用いることができる。
【0080】
上記実施例の誤差拡散法においては、判定値JVをオフセットさせるオフセット量OSを一定としたが、各インク毎にオフセット量OSの大きさを切り替えるようにしてもよい。オフセット量OSが大きければ大きいほど、Wインクのドットと重ね対象インクのドットとが重なる確率が高くなる。例えば、各インクについての粒状性指数GIの大きさに比例するオフセット量OSを設定することにより、粒状感を生じやせやすい重ね対象インクのドットに対して確実にWインクのドットを重ねさせることができる。
【0081】
上記実施例では、各インクについて単一サイズのドットのみを記録するプリンター100について例示したが、各インクについて複数サイズのドットを記録するプリンターにおいても本発明を適用することができる。例えば、各インクについて、大サイズのドットと、中サイズのドットと、小サイズのドットの3種類のドットが形成されるプリンターにおいて本発明を適用してもよい。この場合、色変換処理によって得られたインク量を、大サイズのドットの記録率と、中サイズのドットの記録率と、小サイズのドットの記録率に振り分けるドット振り分け処理を行った上でハーフトーン処理を行うこととなる。このドット振り分け処理において、非白インクについて小サイズのドットに振り分けられる記録率を、通常の主画像よりも背景画像の方が高くなるようにするのが望ましい。このようにすることにより、非白インク上に重ねて記録される白インクを微小化することができ、背景画像における粒状感を抑制することができる。
【0082】
さらに、複数サイズのドットを記録させるために誤差拡散法によるハーフトーン処理を行う場合には、ドットのサイズに応じてドットの重なりやすさを調整することもできる。前記実施例においては、最も粒状感を生じさせやすい重ね対象インクのドットが形成される注目画素について判定値JVに一定のオフセット量OSを加算するようにしたが、このオフセット量OSを該重ね対象インクのドットのサイズに応じて変化させることにより、ドットのサイズに応じてドットの重なりやすさを調整することができる。ドットのサイズが大きいほどオフセット量OSを大きくするようにすれば、強く粒状感を感じさせるドットについて確実にWインクのドットを重ねて記録させることができる。
【0083】
図18は、本変形例にかかるプリントヘッド620の構成を示す説明図である。同図に示すように、各ノズル列646は、Y方向に沿って並ぶ32個のノズル群により構成されている。図16(c)に示すプリントヘッド120では、印刷媒体送り方向の同一順位の各インクのノズルは、印刷媒体送り方向に関して同一の位置に配置されていたが、プリントヘッド620においては隣接するノズル列646全体の印刷媒体送り方向の位置が、ノズル配列の半ピッチずつ交互にずらされている。すなわち、図18に拡大するように各ノズルが千鳥格子状に配置されている。図面の左側から数えて奇数番目のノズル列646同士(4列)においては各ノズルの印刷媒体送り方向の位置が同一となる。同様に、図面の左側から数えて偶数番目のノズル列646同士(3列)においては各ノズルの印刷媒体送り方向の位置が同一となる。
【0084】
以上のようなプリントヘッド620において、Wインクのドットを記録させるノズル列646を最も右のノズル列646とした場合、これと各ノズルの印刷媒体送り方向の位置が同一となる奇数番目の3列のノズル列646には、最も粒状感を生じさせやすい非白インク(CMYKlclmK)インクを割り当てる。例えば、あるインク量のCMKインクがYlclmインクよりも粒状感を生じさせやすいことが実験的に判明している場合には、CMKインクを奇数番目の3列のノズル列646に割り当てる。偶数番目の3列のノズル列646には、残りのYlclmインクを割り当てる。このように、粒状感を強く生じさせる非白インクを吐出するノズルを、Wインクを吐出するノズルと印刷媒体送り方向の同一位置とすることにより、印刷媒体のインターレーススキャン(ノズル配列の半ピッチ送り)の有無に拘わらず、白インクのドットと粒状感を強く生じさせる非白インクのドットを同一位置に重ねて記録することができる。すなわち、幅広い印刷モードにおいて、本発明の効果を得ることができる。
【0085】
上記実施例では、ドットを記録するプリントヘッド120の主走査方向を表面背景タイプと裏面背景タイプとで切り替えることにより、Wインクのドットが観察者側から重なるようにしたが、他の手法によりWインクのドットを観察者側から重ねるようにしてもよい。例えば、プリントヘッドにおける主走査方両端のノズル列にそれぞれWインクのドットを記録させるようにするとともに、主走査方向に応じてWインクのドットを記録させるノズル列を切り替えるようにしてもよい。このようにすることにより、双方向印刷においてもWインクのドットを観察者側から重ねることができる。また、ノズル列の配列が主走査方向に関して対称なプリントヘッドを用いても同様の印刷を行うことができる。
【0086】
なお、本発明は上述した実施形態や変形例に限られず、上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、等も含まれる。
【符号の説明】
【0087】
100…プリンター、105…CPU、110…RAM、115…ROM、120…プリントヘッド、125…ヘッドコントローラー、135…キャリッジコントローラー、140…キャリッジモーター、145…印刷媒体送りモーター、150…印刷媒体送りコントローラー、155…USBインターフェース、200…パーソナルコンピューター、205…CPU、210…RAM、215…ROM、225…ディスプレイインターフェース、225a…ディスプレイ、230…操作入力機器インターフェース、230a…操作入力機器、235…ハードディスク、240…USBインターフェース、APL…アプリケーションプログラム、PDrv…プリンタードライバー、M1…画像データ取得部、M2…色変換部、M3…ハーフトーン設定部、M4…ハーフトーン処理部、M5…印刷データ作成部、PD…印刷データ、POD…印刷順指定データ、MID…主画像データ、M_ink…主画像のインク量データ、BID…背景画像データ、BID1…第1背景画像データ、BID2…第2背景画像データ、B_ink…背景画像のインク量データ、DMm,DMb…ディザマスク、LUTm…色変換テーブル、LUTb…色変換テーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に背景画像を印刷する印刷装置であって、
各画素が白インクのドットの記録率を有する第1画像データと、各画素が非白インクのドットの記録率を有する少なくとも一つの第2画像データとを取得する画像データ取得手段と、
上記第1画像データと上記第2画像データとに基づいて、各画素が少なくともドットを記録させるか否かを示す第1ハーフトーンデータと第2ハーフトーンデータとにそれぞれ生成するにあたり、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成するハーフトーン処理手段と、
上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータとに基づいて印刷媒体に上記白インクのドットと上記非白インクのドットとを記録する印刷手段と、具備することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
上記印刷手段は、上記非白インクのドットに対して、上記白インクのドットを上記印刷媒体の観察者側から重ねることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
上記画像データ取得手段は、各画素が互いに色が異なる複数の上記非白インクの記録率を有する上記第2画像データを取得するとともに、
上記ハーフトーン処理手段は、上記非白インクのうち粒状感が目立ちやすさが他の上記非白インクよりも大きい上記非白インクのドットと、上記白インクのドットとが上記印刷媒体上において重なって記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項4】
上記ハーフトーン処理手段は、上記記録率が小さいほど、上記白インクのドットと重ならせる上記非白インクの色数を増加させることを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
上記ハーフトーン処理手段は、同一のディザマスクを使用したディザ法によるハーフトーン処理を実行することにより、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
上記ハーフトーン処理手段は、誤差拡散法によるハーフトーン処理において拡散誤差または該拡散誤差と比較する閾値を調整することにより、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
印刷媒体に背景画像を印刷する機能をコンピューターに実現させるための印刷プログラムであって、
各画素が白インクのドットの記録率を有する第1画像データと、各画素が非白インクのドットの記録率を有する少なくとも一つの第2画像データとを取得する画像データ取得機能と、
上記第1画像データと上記第2画像データとに基づいて、各画素が少なくともドットを記録させるか否かを示す第1ハーフトーンデータと第2ハーフトーンデータとにそれぞれ生成するにあたり、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成するハーフトーン処理機能と、
上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータとに基づいて印刷媒体に上記白インクのドットと上記非白インクのドットとを記録する印刷機能と、をコンピューターに実現させることを特徴とする印刷プログラム。
【請求項8】
印刷媒体に背景画像を印刷する印刷方法であって、
各画素が白インクのドットの記録率を有する第1画像データと、各画素が非白インクのドットの記録率を有する少なくとも一つの第2画像データとを取得し、
上記第1画像データと上記第2画像データとに基づいて、各画素が少なくともドットを記録させるか否かを示す第1ハーフトーンデータと第2ハーフトーンデータとにそれぞれ生成するにあたり、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成し、
上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータとに基づいて印刷媒体に上記白インクのドットと上記非白インクのドットとを記録することを特徴とする印刷方法。
【請求項1】
印刷媒体に背景画像を印刷する印刷装置であって、
各画素が白インクのドットの記録率を有する第1画像データと、各画素が非白インクのドットの記録率を有する少なくとも一つの第2画像データとを取得する画像データ取得手段と、
上記第1画像データと上記第2画像データとに基づいて、各画素が少なくともドットを記録させるか否かを示す第1ハーフトーンデータと第2ハーフトーンデータとにそれぞれ生成するにあたり、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成するハーフトーン処理手段と、
上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータとに基づいて印刷媒体に上記白インクのドットと上記非白インクのドットとを記録する印刷手段と、具備することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
上記印刷手段は、上記非白インクのドットに対して、上記白インクのドットを上記印刷媒体の観察者側から重ねることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
上記画像データ取得手段は、各画素が互いに色が異なる複数の上記非白インクの記録率を有する上記第2画像データを取得するとともに、
上記ハーフトーン処理手段は、上記非白インクのうち粒状感が目立ちやすさが他の上記非白インクよりも大きい上記非白インクのドットと、上記白インクのドットとが上記印刷媒体上において重なって記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項4】
上記ハーフトーン処理手段は、上記記録率が小さいほど、上記白インクのドットと重ならせる上記非白インクの色数を増加させることを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
上記ハーフトーン処理手段は、同一のディザマスクを使用したディザ法によるハーフトーン処理を実行することにより、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
上記ハーフトーン処理手段は、誤差拡散法によるハーフトーン処理において拡散誤差または該拡散誤差と比較する閾値を調整することにより、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
印刷媒体に背景画像を印刷する機能をコンピューターに実現させるための印刷プログラムであって、
各画素が白インクのドットの記録率を有する第1画像データと、各画素が非白インクのドットの記録率を有する少なくとも一つの第2画像データとを取得する画像データ取得機能と、
上記第1画像データと上記第2画像データとに基づいて、各画素が少なくともドットを記録させるか否かを示す第1ハーフトーンデータと第2ハーフトーンデータとにそれぞれ生成するにあたり、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成するハーフトーン処理機能と、
上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータとに基づいて印刷媒体に上記白インクのドットと上記非白インクのドットとを記録する印刷機能と、をコンピューターに実現させることを特徴とする印刷プログラム。
【請求項8】
印刷媒体に背景画像を印刷する印刷方法であって、
各画素が白インクのドットの記録率を有する第1画像データと、各画素が非白インクのドットの記録率を有する少なくとも一つの第2画像データとを取得し、
上記第1画像データと上記第2画像データとに基づいて、各画素が少なくともドットを記録させるか否かを示す第1ハーフトーンデータと第2ハーフトーンデータとにそれぞれ生成するにあたり、上記印刷媒体上において上記白インクのドットと上記非白インクのドットとが重って記録されるように上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータを生成し、
上記第1ハーフトーンデータと上記第2ハーフトーンデータとに基づいて印刷媒体に上記白インクのドットと上記非白インクのドットとを記録することを特徴とする印刷方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−84040(P2011−84040A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240541(P2009−240541)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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