説明

印刷装置、印刷方法、および、コンピュータープログラム

【課題】多段階の画像処理が行われる印刷装置において、エラーからの復帰を迅速に行う技術を提供する。
【解決手段】印刷装置は、第1の画像データに色補正データに基づく色補正を施して第2の画像データを生成する第1画像処理部と、第2の画像データに対して所定の画像処理を施して第3の画像データを生成する第2画像処理部と、第3の画像データが表す画像を印刷する印刷部とを備える。印刷装置は、エラーを検出すると、このエラーの種類に応じて色補正データの修正の要否を判断し、色補正データの修正が必要であると判断された場合には、記憶装置に第1の画像データを蓄積し、色補正データの修正が不要であると判断された場合には、記憶装置に第3の画像データを蓄積する。そして、エラーが解消された場合には、この記憶装置に蓄積された画像データを読み込み、読み込んだ画像データの種類に応じた処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置にエラーが生じた場合の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンターやレーザープリンターなどの印刷装置の高画質化に伴って、POD(プリントオンデマンド)などの印刷ビジネスの分野において、これらの印刷装置が利用されつつある。印刷ビジネスでは、短期間での印刷物の納品が求められるため、印刷装置にエラーが生じた場合でも迅速に印刷を再開させることが好ましい。例えば、特許文献1には、印刷装置にエラーが生じた場合において、ホスト装置等から受信した印刷データを逐次スプールすることで、エラー復帰後の印刷データの受信時間を短縮する技術が開示されている。
【0003】
近年の印刷装置は、印刷物の色調を補正するための色補正処理(カラーキャリブレーション)や、画像データを2値化するハーフトーン処理など、その内部で多段階の画像処理を行う場合がある。そのため、このような印刷装置では、特許文献1記載の技術によって、エラー復帰後に印刷データの受信時間が短縮されたとしても、その後の多段階の画像処理に要する時間を短縮することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−6476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した問題を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、多段階の画像処理が行われる印刷装置において、エラーからの復帰を迅速に行う技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]印刷装置であって、複数の画素から構成される第1の画像データを取得し、該第1の画像データに対して、色補正データに基づく色補正を施して第2の画像データを生成する第1画像処理部と、前記第2の画像データを取得し、該第2の画像データに対して所定の画像処理を施して第3の画像データを生成する第2画像処理部と、前記第3の画像データを取得し、該第3の画像データが表す画像を印刷する印刷部と、前記印刷装置のエラーの発生および該エラーの解消を検出するエラー検出部と、前記エラーが検出された場合において、該エラーの種類に応じて前記色補正データの修正の要否を判断し、前記色補正データの修正が必要であると判断された場合には、所定の記憶装置に前記第1の画像データを蓄積し、前記色補正データの修正が不要であると判断された場合には、前記記憶装置に前記第3の画像データを蓄積する蓄積処理部と、を備え、前記エラーの解消が検出された場合において、(i)前記記憶装置に前記第1の画像データが蓄積されている場合には、前記第1画像処理部は、前記記憶装置から前記第1の画像データを取得して、該第1の画像データに対して修正後の色補正データを用いて前記色補正を施すことで前記第2の画像データを生成し、前記第2画像処理部は、該第2の画像データから前記第3の画像データを生成し、前記印刷部は、該第3の画像データが表す画像を印刷し、(ii)前記記憶装置に前記第3の画像データが蓄積されている場合には、前記印刷部は、前記第3の画像データを前記記憶装置から取得して前記印刷を行う、印刷装置。
【0008】
このような構成の印刷装置では、色補正データの修正が必要なエラーが発生すれば、色補正前の第1の画像データを記憶装置に蓄積し、色補正データの修正が不要なエラーが発生すれば、色補正後の第3の画像データを記憶装置に蓄積する。そのため、エラーの解消後には、エラーの種類に応じて処理可能な段階にまで画像処理が施された画像データを記憶装置から取得することができるので、画像処理に要する時間を短縮することができ、印刷を迅速に再開させることが可能になる。更に、上記構成の印刷装置では、エラーの解消後に、第1の画像データを記憶装置から取得した場合には、修正後の色補正データを用いてこの第1の画像データに対して色補正を施す。そのため、エラーの発生前後において、一定の品質の印刷物を出力することが可能になる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の印刷装置であって、前記第1画像処理部は、前記第1の画像データに対して、色成分毎に用意された色補正データを用いて前記色補正を行い、前記蓄積処理部は、前記色成分毎に前記色補正データの修正の要否を判断し、前記色補正データの修正が必要であると判断された色成分については、前記記憶装置に、該色成分に対応する前記第1の画像データ中のデータを蓄積し、前記色補正データの修正が不要であると判断された色成分については、前記記憶装置に、該色成分に対応する前記第3の画像データ中のデータを蓄積する、印刷装置。
このような構成の印刷装置であれば、色補正データを色成分毎に修正することができ、更に、エラー発生時において、色成分毎に、第1の画像データを蓄積するのか第3の画像データを蓄積するのかを選択することができる。この結果、色補正データの修正が不要な色成分の画像データについては、エラー解消後の画像処理を簡略化することが可能になる。
【0010】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載の印刷装置であって、前記第1画像処理部は、前記色補正に先立ち、前記第1の画像データに対して、該第1の画像データの色空間を、当該印刷装置の色空間に変換する色変換処理を施す、印刷装置。
このような構成の印刷装置であれば、印刷装置の色空間を最大限に利用して高品質な印刷を行うことが可能になる。
【0011】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか一項に記載の印刷装置であって、前記蓄積処理部は、前記エラーの種類として、前記印刷部が前記印刷に用いる印刷材の費消に関するエラーを検出した場合に、前記色補正テーブルの修正が必要であると判断する、印刷装置。
このような構成の印刷装置であれば、インクやトナー、印刷用紙など、印刷物の発色に関係する印刷材が補充あるいは変更された場合にも、色補正テーブルを修正することで、一定の品質の印刷物を出力することが可能になる。
【0012】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれか一項に記載の印刷装置であって、前記第2画像処理部は、前記第2の画像処理として前記第2の画像データにハーフトーン処理を施す、印刷装置。
このような構成の印刷装置であれば、色補正データの修正が不要であれば、エラー発生時に、第3の画像データとして、ハーフトーン処理後の画像データを蓄積することができる。そのため、エラー解消後になんら画像処理を行うことなく、直接的に印刷を再開させることが可能になる。
【0013】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれか一項に記載の印刷装置であって、前記第1画像処理部は、所定のインターフェースによって接続された外部の画像データ送信装置から前記第1の画像データを取得し、前記画像データ送信装置は、前記記憶装置を備えている、印刷装置。
このような構成であれば、印刷装置に記憶装置を備える必要がないため、印刷装置の構成を簡略化することができる。
【0014】
[適用例7]適用例1ないし適用例6のいずれか一項に記載の印刷装置であって、前記エラーが検出された後に、前記第1画像処理部によって前記第1の画像データが連続して複数取得された場合には、前記蓄積処理部は、前記色補正データの修正の要否に応じて、該取得された第1の画像データ、または、該取得された第1の画像データに基づき生成された前記第3の画像データを、前記エラーの解消が検出されるまで、前記記憶装置に順次蓄積する、印刷装置。
このような構成であれば、エラーが発生した場合であっても、印刷装置内での画像処理を停止させることなく、色補正データの修正の要否に応じて、第1の画像データ、あるいは、第3の画像データを記憶装置に順次蓄積させることができる。
【0015】
[適用例8]適用例1ないし適用例7のいずれか一項に記載の印刷装置であって、前記蓄積処理部は、前記エラーが検出された場合に、該エラーの検出時に生成されている前記第1の画像データおよび第3の画像データを、前記記憶装置とは異なる内部記憶装置に保持し、前記エラーの解消が検出された場合には、前記第2画像処理部は、前記記憶装置からの前記第1の画像データの取得に先立ち、前記内部記憶装置に保持された前記第1の画像データを取得し、前記印刷部は、前記記憶装置からの前記第3の画像データの取得に先立ち、前記内部記憶装置に保持された前記第3の画像データを取得する、印刷装置。
【0016】
このような構成であれば、エラー検出時に生成されている画像データを内部記憶装置に保持する。そのため、記憶装置に蓄積されている画像データよりもこの内部記憶装置に保持されている画像データを優先して利用することで、エラー解消後に迅速に印刷を再開することが可能になる。
【0017】
本発明は、上述した印刷装置としての構成のほか、印刷方法や、コンピュータープログラムとしても構成することができる。かかるコンピュータープログラムは、コンピューターが読取可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】印刷システムの概略構成を示す説明図である。
【図2】RIP装置および印刷装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】印刷装置で扱われる画像データの種類を示す図である。
【図4】データ送信処理のフローチャートである。
【図5】データ蓄積処理のフローチャートである。
【図6】印刷処理のフローチャートである。
【図7】エラー処理のフローチャートである。
【図8】第2実施例における色成分毎の処理内容を示す図である。
【図9】第3実施例における印刷システムの構成を示す説明図である。
【図10】第3実施例における復帰処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づき次の順序で説明する。
・第1実施例:
A.印刷システムの概略構成:
B.RIP装置と印刷装置の内部構成:
C.データ送信処理:
D.データ蓄積処理:
E.印刷処理:
・第2実施例:
・第3実施例:
・変形例:
【0020】
・第1実施例:
A.印刷システムの概略構成:
図1は、本発明の第1実施例としての印刷装置200を含む印刷システム10の概略構成を示す説明図である。印刷システム10は、RIP(ラスターイメージプロセッサー)装置100と印刷装置200とを備えている。RIP装置100と印刷装置200とは、イーサネット(登録商標)や、USB、PCI Expressなどの双方向通信が可能な通信路によって接続されている。RIP装置100としては、汎用的なコンピューターを適用することができる。また、印刷装置200としては、インクジェットプリンターやレーザープリンターを適用することができる。
【0021】
RIP装置100は、RIP処理部110と、データ蓄積部120とを備えている。RIP処理部110は、PDL(ページ記述言語)で記述されたベクトル形式の文書データを、複数の画素から構成されるラスターデータに変換する処理を行う。データ蓄積部120には、印刷装置200から転送されるデータが蓄積される(詳細は後述)。RIP装置は、本願の「画像データ送信装置」に相当する。
【0022】
印刷装置200は、操作パネル210とCPU220とプリンターエンジン230とを備えている。操作パネル210は、印刷に関する種々の設定をユーザから受け付けるための種々のボタンを備えている。CPU220は、RIP装置100からラスターデータを受信して、このラスターデータに対して種々の画像処理を施す。プリンターエンジン230は、CPU220によって画像処理が施されたデータに基づいて印刷用紙に対する印刷を行う。
【0023】
印刷装置200は、インク切れ(あるいはトナー切れ。以下同じ)や用紙切れなどのエラーが発生した場合に、印刷装置200によって色変換処理やハーフトーン処理などの画像処理を施したデータを、RIP装置100に転送する機能を備えている。RIP装置100は、こうして転送されたデータをデータ蓄積部120に蓄積する。以下では、このように印刷装置200からRIP装置100に転送されるデータを「待避データ」という。エラーが解消した場合には、RIP装置100から印刷装置200に待避データが転送され、この待避データを用いて印刷が再開される。
【0024】
B.RIP装置と印刷装置の内部構成:
図2は、RIP装置100および印刷装置200の内部構成を示すブロック図である。RIP装置100は、CPU102と、データ蓄積部120と、メモリー130と、通信インターフェース140とが、所定の内部バスによって接続されて構成されている。データ蓄積部120としては、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶装置を採用することができる。
【0025】
CPU102は、メモリー130を作業領域としてアプリケーションプログラム104とプリンタードライバー106とを所定のオペレーティングシステムの下で実行する。本実施例のアプリケーションプログラム104は、PDLで記述された文書データを印刷する機能を備えている。
【0026】
プリンタードライバー114は、その機能部として、RIP処理部110と、入出力制御部108とを備えている。
RIP処理部110は、アプリケーションプログラム104の印刷機能が実行された場合に、アプリケーションプログラム104から文書データを取得し、この文書データを解析してラスターデータに変換(ラスタライズ)する。ラスターデータは、RGB形式またはCMYK形式で各画素の色が表されている。どちらの形式で色が表されているかは、文書データのフォーマットによる。RIP処理部110は、生成したラスターデータに対して、そのデータがラスターデータであることを示す情報や、ラスターデータのサイズ、解像度等をヘッダ情報として付加する。
【0027】
入出力制御部108は、RIP処理部110からラスターデータを取得し、これを、通信インターフェース140を介して、印刷装置200に送信する。また、入出力制御部108は、通信インターフェース140を介して印刷装置200から転送された待避データをデータ蓄積部120に蓄積する。更に、入出力制御部108は、印刷装置200からの問い合わせに応じて、データ蓄積部120に蓄積されているデータの種類を通知する機能を有する。
【0028】
印刷装置200は、CPU220と、ページメモリ222と、プリンターエンジン230と、測色器240と、通信インターフェース250と、を備えている。CPU220は、所定の制御プログラムを図示していないメモリーからロードして実行することで、入出力制御部223、色変換部224、色補正部225、ハーフトーン処理部226、ガンマテーブル生成部227、として機能する。以下これらの各機能部の働きについて図3を交えて説明する。
【0029】
入出力制御部223は、通信インターフェース250と、色変換部224と、色補正部225と、ハーフトーン処理部226と、プリンターエンジン230と、ページメモリ222との間におけるデータの入出力を制御する。
【0030】
色変換部224は、RIP装置100から通信インターフェース250を介して受信したラスターデータ(図3(a)参照)を取得し、このラスターデータの色空間を、印刷装置200が印刷時に使用するインクの種類や性質に応じた色空間に変換する処理(以下、「色変換処理」という)を実行する。具体的には、入出力制御部223から取得したラスターデータの色空間がRGB形式であれば、色変換部224は、3次元ルックアップテーブル(3D−LUT)251を参照して、このラスターデータの色空間を、印刷装置200の色再現範囲を表すCMYK色空間に変換する。また、取得したラスターデータの色空間がCMYK形式であれば、4次元ルックアップテーブル(4D−LUT)252を参照して、このラスターデータの色空間を、印刷装置200の色再現範囲を表すCMYK色空間に変換する。色変換部224は、色変換処理を実行すると、色変換後の画像データをページ毎に、入出力制御部223を介してページメモリ222に記録する。以下、色変換部224によって色変換がなされた画像データを「第1の画像データ」という(図3(b)参照)。第1の画像データは、CMYKの色成分毎に、各画素8ビットのデータを有している。
【0031】
色補正部225は、入出力制御部223を介してページメモリ222から第1の画像データを取得し、この第1の画像データに対して色補正(カラーキャリブレーション)を施す処理(以下、「色補正処理」という)を実行する。色補正処理とは、色変換部224によって色変換がなされた理想的な色と、プリンターエンジン230によって実際に印刷される色との整合(マッチング)を図る処理である。この色補正処理時には、色補正前後の色の対応関係が1対1に記録されたガンマテーブル253が参照される。このガンマテーブル253は、CMYKの色成分毎に計4種類用意されている。以下では、色補正処理後の画像データのことを「第2の画像データ」という(図3(c)参照)。色補正部225は、本願の「第1画像処理部」に相当する。また、ガンマテーブル253は、本願の「色補正データ」に相当する。
【0032】
ハーフトーン処理部226は、色補正部225から第2の画像データを取得し、この第2の画像データに対してハーフトーン処理を施す。ハーフトーン処理とは、多階調(本実施例では、8ビット)で表される第2の画像データを2値化して、ドットを形成するか否かを表す画像データに変換する処理である。ハーフトーン処理の手法としては、例えば、組織的ディザ法や誤差拡散法を用いることができる。ハーフトーン処理部226は、ハーフトーン処理を施した画像データを、入出力制御部223を介してページ毎にページメモリ222に記録する。なお、以下の説明では、ハーフトーン処理後の画像データのことを、「第3の画像データ」という(図3(d)参照)。ハーフトーン処理部226は、本願の「第2画像処理部」に相当する。
【0033】
プリンターエンジン230は、入出力制御部223を介して、ページメモリ222から第3の画像データを取得し、この第3の画像データに基づいて、印刷用紙に画像を印刷する(図3(e)参照)。
【0034】
プリンターエンジン230は、エラー検出部231を備えている。エラー検出部231は、インク切れや用紙切れ、用紙詰まり、印字不良など、印刷物の出力が中断する状況が生じる種々のエラーの検出を行う。エラー検出部231によってこれらのエラーが検出されると、プリンターエンジン230は、第3の画像データの入力を停止し、印刷を中断する。プリンターエンジン230は、エラー検出部231によってエラーが検出されると、CPU220にそのエラーの内容を通知する。CPU220は、プリンターエンジン230からエラーの通知を受けると、その通知を、RIP装置100に転送する。
【0035】
CPU220は、プリンターエンジン230からエラーの通知を受けると、そのエラーの内容に応じて、第1の画像データまたは第3の画像データを待避データとしてRIP処理部110に転送する。具体的には、受信したエラーがインク切れエラーであれば、第1の画像データを待避データとしてRIP処理部110に転送し、その他のエラー(用紙切れ、用紙詰まり、印字不良)であれば、第3の画像データを待避データとしてRIP処理部110に転送する(図3参照)。CPU220は、RIP処理部110に待避データを転送する際に、その待避データにヘッダ情報として、そのデータが待避データであることを示す情報と、待避データの種類(第1の画像データであるか第3の画像データであるか)を示す情報とを付加する。なお、CPU220は、本願の「蓄積処理部」に相当する。
【0036】
ガンマテーブル生成部227は、エラー検出部231によってインク切れエラーが検出された場合に、ガンマテーブル253を自動的に再生成する機能を備える。本実施例では、C,M,Y,Kのインクのうち、1つのインクにインク切れが発生したとしても、全色についてガンマテーブル253の再生成を行うこととする。ガンマテーブル253の再生成にあたり、ガンマテーブル生成部227は、インクの補充後にプリンターエンジン230を制御してC,M,Y,K毎に複数種類のカラーパッチの印刷を行わせる。そして、印刷されたカラーパッチを測色器240によって読み取らせ、測色された色値と、目標とする色値とを比較し、これらの色値が整合するように、ガンマテーブル253を再生成する。測色器240としては、例えば、分光測光器を採用することができる。ガンマテーブルの再生成が終了すると、ガンマテーブル生成部227は、プリンターエンジン230にインク切れエラーの解消を指示する。
【0037】
C.データ送信処理:
図4は、RIP装置100のプリンタードライバー106が常時繰り返し実行するデータ送信処理のフローチャートである。このデータ送信処理が開始されると、プリンタードライバー106は、印刷装置200からエラーを受信したかを判断する(ステップS100)。印刷装置200からエラーを受信していなければ、印刷装置200は、印刷が可能な状態になっている。そこで、プリンタードライバー106は、文書データのラスターデータへの変換に先立ち、まず、データ蓄積部120に、待避データが蓄積されているかを判断する(ステップS102)。
【0038】
待避データがデータ蓄積部120に蓄積されていれば、プリンタードライバー106は、その待避データをデータ蓄積部120から1ページ分、読み出して(ステップS104)、印刷装置200に送信する(ステップS106)。
【0039】
待避データがデータ蓄積部120に蓄積されていなければ、プリンタードライバー106は、アプリケーションプログラム104から文書データを受信したかを判断する(ステップS108)。文書データを受信した場合には、RIP処理部110によって、この文書データをラスターデータに変換し(ステップS110)、入出力制御部108によってラスターデータを印刷装置200に送信する(ステップS106)。以降、文書データの全ページについてラスタライズが完了するまで、以上の処理を繰り返す(ステップS112)。アプリケーションプログラム104から文書データを受信していなければ、プリンタードライバー106は、ステップS110やステップS106の処理をスキップする。
【0040】
ステップS100において、印刷装置200からエラーを受信したと判断すれば、以降、印刷装置200からRIP装置100に待避データが転送されることになる。そこで、プリンタードライバー106は、データ蓄積部120に待避データを格納するための空き容量が存在するかを判断する(ステップS114)。
【0041】
データ蓄積部120が、既に待避データで埋まっており、空きが無いと判断されれば、プリンタードライバー106は、空きができるまでステップS100とステップS114の処理を繰り返すことで待機を行う。この待機期間中に、エラーが解消されてデータ蓄積部120から待避データが印刷装置200に転送されれば、データ蓄積部120の容量に空きが生じることになる。待避データの格納に必要なページ単位の最大データ量は、待避データの種類に応じて予め計算可能である。待避データの種類が第1の画像データであれば、最大で、1ページ当たりCMYKの各成分につい各画素8ビットのデータ量であり、待避データの種類が第3の画像データであれば、最大で、1ページ当たりCMYKの各成分について各画素1ビットのデータ量である。よって、プリンタードライバー106は、これらの既知のデータ量に基づいて、待避データを蓄積可能な空き容量がデータ蓄積部120に存在するかを判断することができる。
【0042】
ステップS114において、データ蓄積部120に空き容量が存在すると判断されれば、プリンタードライバー106は、アプリケーションプログラム104から文書データを受信したかを判断する(ステップS108)。文書データを受信した場合には、プリンタードライバー106は、RIP処理部110によって受信した文書データを1ページ単位でラスターデータに変換し(ステップS110)、入出力制御部108によって、そのラスターデータを印刷装置200に送信する(ステップS106)。以降、文書データの全ページについてラスターデータへの変換が完了するまで、以上の処理を繰り返す(ステップS112)。文書データが受信されない場合には、プリンタードライバー106は、ステップS110やステップS108の処理をスキップする。プリンタードライバー106は、上述した一連の処理を繰り返し実行することで、印刷装置200に対するラスターデータの送信や待避データの送信を行う。
【0043】
以上で説明したデータ送信処理によれば、データ蓄積部120に既に待避データが蓄積されている場合には、ラスターデータの送信に先立って、データ蓄積部120に蓄積されている待避データが印刷装置200に送信される。また、待避データの送信後、印刷装置200にエラーが発生していない場合には、文書データのラスタライズが行われて、ラスターデータが印刷装置200に送信されるが、印刷装置200にエラーが発生している場合であっても、データ蓄積部120に空き容量が存在する限り、文書データのラスタライズが行われて、ラスターデータが印刷装置200に送信されることになる。
【0044】
D.データ蓄積処理:
図5は、RIP装置100のプリンタードライバー106が実行するデータ蓄積処理のフローチャートである。このデータ蓄積処理は、上述したデータ送信処理と同時並列的にRIP装置100において繰り返し実行される処理である。このデータ蓄積処理が実行されると、プリンタードライバー106の入出力制御部108は、印刷装置200から待避データを受信したかを判断する(ステップS200)。待避データを受信すれば、入出力制御部108は、受信した待避データをデータ蓄積部120に蓄積する(ステップS202)。
【0045】
続いて、入出力制御部108は、印刷装置200からデータ破棄指令を受信したかを判断する(ステップS204)。印刷装置200からデータ破棄指令を受信すると、入出力制御部108は、データ蓄積部120に蓄積されている待避データをすべて破棄(消去)し(ステップS206)、上述したデータ送信処理においてラスタライズを行う対象のページを、破棄したデータに含まれる先頭のページに変更する(ステップS208)。つまり、RIP装置100は、印刷装置200からの指示に応じて待避データの破棄を行った場合には、破棄した分のページについて、ラスタライズを最初から処理をやり直すことになる。このように印刷装置200からデータ破棄指令が送信される状況については後で詳しく説明する。プリンタードライバー106は、上述した一連の処理を繰り返し実行する。
【0046】
本実施例では、RIP装置100と印刷装置200とは、双方向通信可能な通信インターフェースで接続されている。そのため、プリンタードライバー106は、ラスターデータの送信を行うデータ送信処理と、待避データの受信を行うデータ蓄積処理とを同時並列的に実行することが可能である。
【0047】
また、本実施例では、データ送信処理のステップS114において、データ蓄積部120の空き容量をチェックしている。そのため、図5に示したデータ蓄積処理での待避データの蓄積時に、データ蓄積部120に容量不足が発生することはない。これは、データ蓄積部120の空き容量が不足している場合には、図4のデータ送信処理において、ラスターデータがRIP装置100から印刷装置200に送信されることがなく、この結果、ラスターデータを画像処理して得られる待避データが印刷装置200において生成されることがないからである。
【0048】
E.印刷処理:
図6は、印刷装置200のCPU220が実行する印刷処理のフローチャートである。この印刷処理は、RIP装置100から受信するデータのページ数分、繰り返し実行される。この印刷処理が開始されると、CPU220は、通信インターフェース250を介してRIP装置100からデータを1ページ分、受信する(ステップS300)。そして、受信したデータが、ラスターデータであるか待避データであるかを判断する(ステップS302)。ラスターデータであるか待避データであるかは、受信したデータのヘッダ情報に記録されたそのデータの種別を表す情報に基づいて判断することができる。
【0049】
受信したデータがラスターデータであれば、CPU220は、色変換部224によって、受信したラスターデータに色変換処理を施して、第1の画像データを生成する(ステップS304)。第1の画像データを生成すると、色変換部224は、生成した第1の画像データを、ページメモリ222にページ単位で記録する。こうして第1の画像データが生成、記録されると、色補正部225が、ページメモリ222から、第1の画像データを読み出して、この第1の画像データに対して、色補正処理を施し、第2の画像データを生成する(ステップS306)。生成された第2の画像データは、ハーフトーン処理部226に入力され、ハーフトーン処理部226によって、ハーフトーン処理が施されることにより、第3の画像データが生成される(ステップS308)。こうして生成された第3の画像データは、ページ単位でページメモリ222に記録される。
【0050】
上記ステップS310において、受信したデータが待避データであると判断された場合には、CPU220は、更に、その待避データのヘッダ情報に基づき、その待避データの種類が、第1の画像データであるか第3の画像データであるかを判断する(ステップS310)。待避データが第1の画像データであれば、その待避データには、既に色変換処理が施されていることになるので、CPU220は、ステップS304による色変換処理をスキップして、色補正部225による色補正処理を施して第2の画像データを生成し(ステップS306)、更に、ハーフトーン処理部226によって、ハーフトーン処理を施すことで第3の画像データを生成し(ステップS340)、生成された第3の画像データをページメモリ222に記録する。これに対して、待避データが第3の画像データであれば、この待避データには、既に色変換処理、色補正処理、および、ハーフトーン処理の全てが施されていることになる。そのため、CPU220は、これらの処理(ステップS304,S306,S308)をすべてスキップし、受信した第3の画像データをページメモリ222にそのまま記録する。
【0051】
以上のようにして、RIP装置100から受信したデータの種類に応じた画像処理を行うと、CPU220は、プリンターエンジン230にエラーが発生したかを判断する(ステップS312)。エラーが発生していれば、後述するエラー処理を実行する(ステップS314)。一方、エラーが発生していなければ、CPU220は、更に、現在、ページメモリ222に記録されている第3の画像データが、印刷すべきページのデータであるかを判断する(ステップS316)。ページメモリ222に記録されている第3の画像データが印刷すべきページのデータであれば、CPU220は、入出力制御部223によって第3の画像データをページメモリ222から読み出し、プリンターエンジン230に送信する(ステップS318)。プリンターエンジン230は、CPU220から第3の画像データの転送を受けると、この第3の画像データに基づいて、印刷用紙に画像の印刷を行う(ステップS320)。
【0052】
上記ステップS316では、ページメモリ222に記録されているデータが、後述するエラー処理において待避データとして一時的に記録されているデータであれば、印刷すべきページのデータではないと判断する。これに対して、ページメモリ222に記録されているデータが、前回正常に印刷されたページに続くページのデータであるか、または、複数部数印刷中のページのデータであれば、印刷すべきページのデータであると判断する。ページメモリ222に記録されている第3の画像データが、印刷すべきページのデータでなければ、CPU220は、ステップS312においてエラーが発生したと判断された場合と同様の処理を実行する。これは、待避データのページメモリ222への記録中(待避データの準備中)にプリンターエンジン230のエラーが回復した場合において、既にページメモリ222内に記録(準備)された待避データを正常にRIP装置100にまで転送するためである。
【0053】
図7は、図6に示した印刷処理のステップS312で実行されるエラー処理のフローチャートである。このエラー処理が開始されると、CPU220は、プリンターエンジン230で発生したエラーの種類が、インク切れエラーであるかを判断する(ステップS400)。
【0054】
発生したエラーの種類がインク切れエラーであれば、CPU220は、色補正前の画像データ、すなわち、第1の画像データを、RIP装置100に転送する待避データとして選択する(ステップS402)。待避データとして第1の画像データを選択すると、CPU220は、インクの補充が完了したかを判断する(ステップS404)。インクの補充が完了すれば、ガンマテーブル生成部227は、ガンマテーブル253の再生成を行う(ステップS406)。ガンマテーブル253の再生成が完了すれば(ステップS408)、CPU220は、プリンターエンジン230にエラーを解除させる(ステップS410)。ステップS404において、インクの補充が完了していないと判断された場合には、CPU220は、ステップS406,S408,S410の処理をスキップする。また、ステップS408において、ガンマテーブル253の再生成が完了していないと判断されれば、CPU220は、ステップS410の処理をスキップする。
【0055】
ステップS400において、発生したエラーの種類がインク切れエラー以外のエラーであると判断されれば、CPU220は、RIP装置100に転送する待避データとして、色補正処理およびハーフトーン処理が完了したデータ、すなわち、第3の画像データを選択する(ステップS412)。待避データとして第3の画像データを選択すると、CPU220は、現在発生しているエラーが解消したかを判断する(ステップS414)。例えば、用紙詰まりエラーであれば、詰まった用紙が取り除かれた場合に、エラーが解消したと判断する。現在発生しているエラーが解消すれば、CPU220は、プリンターエンジン230にエラーを解除させる(ステップS416)。
【0056】
続いて、CPU220は、上述した処理によって選択された待避データが、RIP装置100内のデータ蓄積部120に蓄積可能かを判断する(ステップS418)。具体的には、CPU220は、RIP装置100の入出力制御部108に、データ蓄積部120に現在蓄積されている待避データの種類を問い合わる。そして、例えば、ステップS402において待避データとして第1の画像データが選択されているにもかかわらず、データ蓄積部120に既に第3の画像データが蓄積されていると応答があった場合には、CPU220は、待避データを蓄積することができないと判断する。これは、第1の画像データが選択される場合(つまり、インク切れエラーが発生した場合)には、ガンマテーブル253の再生成が行われるため、RIP装置100から待避データとして、以前のガンマテーブル253によって色補正がなされた第3の画像データが転送されたとしても、その第3の画像データを用いて印刷を行うことができないからである。このように、待避データを蓄積することができないと判断した場合には、CPU220は、RIP装置100に対して、データ破棄指令を送信する(ステップS420)。こうすることで、RIP装置100側では、データ蓄積部120に既に蓄積されていた待避データが破棄されて、破棄されたデータのページ分、再度ラスタライズが行われる(図5参照)。
【0057】
上記ステップS418において、待避データがRIP装置100内のデータ蓄積部120に蓄積可能であると判断された場合には、CPU220は、選択された待避データをRIP装置100に送信する(ステップS422)。例えば、RIP装置100の入出力制御部108に、データ蓄積部120に現在蓄積されている待避データの種類を問い合わせた結果、現在、待避データは蓄積されていないと応答があった場合には、CPU220は、待避データは蓄積可能であると判断する。また、例えば、ステップS412において待避データとして第3の画像データが選択されている場合において、データ蓄積部120に既に第1の画像データが蓄積されていると応答があった場合にも、CPU220は、待避データを蓄積することができると判断する。第3の画像データが待避データとして選択される場合には、インク切れ以外のエラーが発生しており、ガンマテーブル253の再生成は行われないため、既にデータ蓄積部120に蓄積されている第1の画像データが、RIP装置100から転送されてきたとしても、正常に、色補正処理を行うことができるからである。
【0058】
上述した一連のエラー処理が終了すると、CPU220は、図6に示した印刷処理に処理を戻し、RIP装置100から受信したデータのページ数分、図6の印刷処理を繰り返し実行する。
【0059】
以上で説明した本実施例の印刷システム10によれば、印刷装置200にインク切れエラーが発生した場合には、色補正処理前の色変換処理までが施された画像データ(第1の画像データ)を、印刷装置200からRIP装置100に待避させることができる。また、インク切れエラー以外のエラーが発生した場合には、色補正処理後のハーフトーン処理までが施された画像データ(第3の画像データ)を、印刷装置200からRIP装置100に待避させることができる。つまり、本実施例によれば、印刷装置200にエラーが発生した場合には、印刷装置200内部の画像処理を停止させることなく、そのエラーの種類に応じて処理可能な段階まで画像処理が施された画像データを、待避データとしてRIP装置100に順次転送することができる。そのため、エラーの解消後にこのような待避データをRIP装置100から受信する印刷装置200は、既にその待避データに施された画像処理結果を利用することができるので、画像処理に要する時間を短縮することができ、迅速に印刷を再開させることが可能になる。
【0060】
また、本実施例では、インク切れエラーが解消した場合には、ラスターデータの送信に先立って、RIP装置100に待避させていた第1の画像データが印刷装置200に送信される。そのため、インク切れエラーの解消後には、ガンマテーブル生成部227によって再生成されたガンマテーブル253が用いられて、第1の画像データに色補正が施されることになる。そのため、インクの補充によってインクの色調が変わってしまった場合でも、適切に色補正が施された印刷物を出力することができる。
【0061】
また、本実施例では、インク切れエラー以外のエラーが解消した場合には、ラスターデータの送信に先立って、RIP装置100に待避させていた第3の画像データが印刷装置200に送信される。第3の画像データは、ハーフトーン処理後のデータであるため、印刷装置200は、すべての画像処理を省略することができる。この結果、迅速に、印刷を再開させることが可能になる。
【0062】
また、本実施例では、インク切れエラー以外のエラーが発生した場合には、各色1ビットのデータによって構成される第3の画像データが待避データとしてRIP装置100に転送される。そのため、この場合には、RGBあるいはCMYKの色成分毎に8ビットのデータを有する大容量の第1の画像データをRIP装置100に転送する必要がない。この結果、待避データのデータ量を大幅に削減することができる。また、待避データのデータ量が削減されれば、それだけ、エラー解消時にRIP装置100から印刷装置200に待避データを転送する時間を短縮することができる。
【0063】
また、本実施例では、エラーの発生中に画像処理を施した待避データをRIP装置100側に蓄積させるので、印刷装置200側に、待避データを蓄積するための特別な記憶装置を設ける必要がない。そのため、印刷装置200の構成を簡略化することが可能になる。印刷ビジネス向けの印刷装置200は、RIP装置100に比べても高価なものが多く、価格的あるいはシステム的にも装置構成をカスタマイズすることが困難であることが多い。そのため、本実施例のように、汎用のパーソナルコンピューター等で実現可能なRIP装置100側で待避データの蓄積を行わせれば、極めて低コストに印刷システム10を構成することが可能になる。
【0064】
また、本実施例では、RIP装置100は、エラー発生時においてデータ蓄積部120の空き容量を常にチェックし、空き容量が存在しない場合には、ラスターデータの送信を行わないこととした。この場合、印刷装置200側では、ラスターデータが受信されないため、いずれの画像処理も行われることがなく、この結果、待避データも印刷装置200からRIP装置100に転送されることがない。そのため、印刷装置200側に特別な処理を行わせることなく、RIP装置100側のデータ蓄積部120がオーバーフローしてしまうことを抑制することが可能になる。
【0065】
・第2実施例:
上述した第1実施例では、印刷装置200が備えるインクの1色にインク切れが発生した場合であっても、全色についてガンマテーブル253を再生成することとした。これに対して、第2実施例では、インク切れが発生した色成分に対応するガンマテーブル253のみ再生成することとする。装置構成や処理内容は第1実施例と基本的に同様であるが、本実施例では、図6,7の印刷処理において、色成分毎にRIP装置100に待避させる画像データの種類を変更する。具体的には、インク切れが発生した色成分については、第1の画像データ中のこの色成分に対応するデータを待避データとしてデータ蓄積部120に蓄積し、インク切れが生じていない色成分については、第3の画像データ中のこの色成分に対応するデータを待避データとしてデータ蓄積部120に蓄積する。
【0066】
例えば、本実施例において、Kインクにインク切れが生じた場合においてエラーが解消すると、図8に示すように、RIP装置100から印刷装置200には、第1の画像データ中のK成分のデータと、第3の画像データ中のCMY成分のデータとが入力されることになる。そのため、K成分の色については、色補正処理とハーフトーン処理とが施されてページメモリ222に印刷用のK成分のデータが記録される。これに対して、他の色成分については、色補正処理もハーフトーン処理もなされることなく、直接的に、ページメモリ222に印刷用のCMY成分のデータが記録されることになる。
【0067】
以上で説明した第2実施例によれば、インク切れが発生した色成分については第1の画像データ中のその色成分に対応するデータをRIP装置100に待避させ、その他の色成分については、第3の画像データ中のその色成分に対応するデータをRIP装置100に待避させる。この結果、インク切れが発生していない色成分については、エラー解消後の画像処理を簡略化することが可能になる。また、インク切れが発生した色成分については、エラー解消後に、再生成後のガンマテーブル253によって色補正処理が施されるので、適切に色味を調整することが可能になる。
【0068】
・第3実施例:
上記実施例では、印刷装置200が備えるページメモリ222には、色変換後の第1の画像データと、ハーフトーン処理後の第3の画像データとが、それぞれ1ページ分、記録される。これに対して、第3実施例では、エラー発生時の第1の画像データおよび第3の画像データを、エラーが解消されるまで、別途、ページメモリ222内に残しておき、こうしてページメモリ222に残しておいた画像データを利用して、エラー解消直後の印刷処理を行う。
【0069】
図9は、第3実施例における印刷システム10の構成を示す説明図である。本実施例の印刷システム10の構成は、第1実施例の印刷システム10の構成とほぼ同じであるが、ページメモリ222b内に、通常の印刷処理において第1の画像データと第3の画像データとが記録される通常領域AR1と、エラー発生中に第1の画像データと第3の画像データとを保持しておくための復帰用領域AR2とが確保されている点が異なる。本実施例では、入出力制御部223は、プリンターエンジン230からエラーが通知された場合に、通常領域AR1から復帰用領域AR2に、第1の画像データと第3の画像データとを移動させる機能を有している。第1の画像データと第3の画像データの移動後は、CPU220は、通常領域AR1を用いて、待避データの生成を行う。
【0070】
図10は、本実施例において印刷装置200のCPU220が実行する復帰処理のフローチャートである。この復帰処理は、図6に示した印刷処理と同時並列的に実行される処理である。この復帰処理が実行されると、CPU220は、プリンターエンジン230にエラーが発生するまで待機する(ステップS500)。エラーが発生した場合には、CPU220は、入出力制御部223によって、現在、ページメモリ222bの通常領域AR1に記録されている第1の画像データと第3の画像データとを復帰用領域AR2に移動させる(ステップS502)。これらのデータを「コピー」ではなく「移動」させることとしたのは、これらのデータが待避データとして、重複してRIP装置100にも蓄積されることを防止するためである。
【0071】
第1の画像データと第3の画像データとを復帰用領域AR2に移動させると、CPU220は、エラーが解消するまで待機する(ステップS504)。この間、同時並列的に実行されている印刷処理(図6,7参照)によって、通常領域AR1を利用して生成された待避データがRIP装置100に転送されて蓄積される。エラーが解消した場合には、CPU220は、RIP装置100に指令を与えて、図4に示したデータ送信処理を中断させる(ステップS506)。こうすることにより、RIP装置100から印刷装置200への待避データの転送を一時的に停止させることができる。
【0072】
RIP装置100から印刷装置200への待避データの転送を一時的に停止させている間に、CPU220は、ページメモリ222bの復帰用領域AR2に記録されている第1の画像データと第3の画像データとを読み込む(ステップS508)。そして、CPU220は、プリンターエンジン230で発生したエラーの種別がインク切れエラーであったかを判断する(ステップS510)。インク切れエラーであれば、CPU220は、復帰用領域AR2から読み込んだ第1の画像データに対して、色補正部225による色補正処理と、ハーフトーン処理部226によるハーフトーン処理とを施し(ステップS512,S514)、ハーフトーン処理が施された画像データをプリンターエンジン230に送信して印刷を行わせる(ステップS516)。一方、インク切れエラー以外のエラーであれば、CPU220は、復帰用領域AR2から読み込んだ第3の画像データをそのままプリンターエンジン230に送信して印刷を行わせる。以上の一連の処理が完了すると、CPU220は、RIP装置100に指令を与えて、図4に示したデータ送信処理を再開させる(ステップS518)。こうすることにより、引き続き、RIP装置100から転送された待避データを用いた印刷が開始されることになる。
【0073】
以上で説明した第3実施例によれば、ページメモリ222bの復帰用領域AR2に記録されている画像データを用いることで、エラーが解消された際に、RIP装置100からの待避データの転送を待つことなく、即座に、印刷を再開させることができる。また、エラーが発生したページが、文書データ全体の最後の1ページであれば、復帰用領域AR2に記録されている画像データのみを用いることで印刷を完了させることができる。なお、本実施例では、復帰用領域AR2は、第1の画像データと第3の画像データとをそれぞれ1ページ分、記憶可能な領域としたが、2ページ分以上の記憶領域を確保してもよい。
【0074】
上述した第2実施例は、第3実施例にも適用することが可能である。つまり、インク切れエラーに該当する色成分については、復帰用領域AR2に記録されている第1の画像データ中のその色成分のデータを読み込んで、色補正処理およびハーフトーン処理を行い、ハーフトーン処理後のデータをプリンターエンジン230に送信する。一方、その他の色成分については、復帰用領域AR2から読み込んだ第3の画像データ中のその他の色成分のデータを直接的にプリンターエンジン230に送信する。こうすることによっても、迅速に印刷を再開させることが可能である。
【0075】
・変形例:
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこのような実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができる。例えば、ソフトウェアによって実現した機能は、ハードウェアによって実現するものとしてもよい。そのほか、以下の変形が可能である。
【0076】
(1)変形例1:
上記実施例では、ラスターデータの生成や、色変換処理、色補正処理、ハーフトーン処理などの画像処理をページ単位で実行することとした。これに対して、これらの画像処理は、1ページを複数のバンドで分割したバンド単位で行うこととしてもよい。この場合、ページの途中のバンドの印刷中にインク切れエラーが発生した場合には、そのページの最初のバンドの画像データからRIP装置100に蓄積することが好ましい。こうすることで、ガンマテーブル253の再生成によって、ページの途中から異なる色調に調整されてしまうことを抑制することができる。
【0077】
(2)変形例2:
上記実施例では、RIP装置100が備えるデータ蓄積部120に、待避データを蓄積することとした。これに対して、例えば、データ蓄積部120は、印刷装置200に設けることとしてもよい。また、例えば、データ蓄積部120を、NAS(Network Attached Storage)のようなネットワーク接続型の記憶装置として構成し、このような単体の記憶装置にネットワーク経由で待避データを蓄積することとしてもよい。
【0078】
(3)変形例3:
上記実施例では、印刷装置200側で色変換処理を行うこととした。これに対して、色変換処理は、RIP装置100側で行うこととしてもよい。また、ガンマテーブル253の内容を3D−LUT251や4D−LUT252に反映させることで、色変換処理と色補正処理とを同時に行うこととしてもよい。この場合、インク切れエラーが発生した場合には、ガンマテーブル253ではなく、3D−LUT251や4D−LUT252の再生成を行う。また、上記実施例では、色補正処理の後にハーフトーン処理を行うこととしたが、例えば、色補正処理の後、かつ、ハーフトーン処理の前に、クリッピング処理や拡大処理、合成処理等、種々の画像処理を施すこととしてもよい。この場合、例えば、ハーフトーン処理前であり、かつ、これらの画像処理後の画像データを、待避データとしてRIP装置100に蓄積させることも可能である。
【0079】
(4)変形例4:
上記実施例では、インク切れエラーが検出された場合に、ガンマテーブル253を再生成することとしたが、インク切れに限らず、例えば、用紙切れなど、印刷装置200が用いる印刷材の費消に関するエラーを検出した場合に、ガンマテーブル253を再生成することとしてもよい。
【0080】
(5)変形例5:
上記実施例では、インク切れエラーが発生した場合に、印刷装置200の内部に設けられた測色器240を用いて、自動的に、ガンマテーブル253の再生成を行うこととした。これに対して、ガンマテーブル253は、印刷装置200とは別個の測色装置において生成することとしてもよい。具体的には、インクの補充が完了した後に、印刷装置200からカラーパッチを出力させ、測色装置にこのカラーパッチを測色させる。そして、その測色結果に基づき、測色装置に新たなガンマテーブル253を生成させる。こうして新たに生成されたガンマテーブル253は、メモリカードやネットワーク経由で測色装置から印刷装置200に入力する。こうすることによっても、ガンマテーブル253の再生成を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0081】
10…印刷システム
100…RIP装置
102…CPU
104…アプリケーションプログラム
106…プリンタードライバー
108…入出力制御部
114…プリンタードライバー
120…データ蓄積部
130…メモリー
140…通信インターフェース
200…印刷装置
210…操作パネル
220…CPU
222,222b…ページメモリ
223…入出力制御部
224…色変換部
225…色補正部
226…ハーフトーン処理部
227…ガンマテーブル生成部
230…プリンターエンジン
231…エラー検出部
240…測色器
250…通信インターフェース
253…ガンマテーブル
AR1…通常領域
AR2…復帰用領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置であって、
複数の画素から構成される第1の画像データを取得し、該第1の画像データに対して、色補正データに基づく色補正を施して第2の画像データを生成する第1画像処理部と、
前記第2の画像データを取得し、該第2の画像データに対して所定の画像処理を施して第3の画像データを生成する第2画像処理部と、
前記第3の画像データを取得し、該第3の画像データが表す画像を印刷する印刷部と、
前記印刷装置のエラーの発生および該エラーの解消を検出するエラー検出部と、
前記エラーが検出された場合において、該エラーの種類に応じて前記色補正データの修正の要否を判断し、前記色補正データの修正が必要であると判断された場合には、所定の記憶装置に前記第1の画像データを蓄積し、前記色補正データの修正が不要であると判断された場合には、前記記憶装置に前記第3の画像データを蓄積する蓄積処理部と、
を備え、
前記エラーの解消が検出された場合において、
(i)前記記憶装置に前記第1の画像データが蓄積されている場合には、前記第1画像処理部は、前記記憶装置から前記第1の画像データを取得して、該第1の画像データに対して修正後の色補正データを用いて前記色補正を施すことで前記第2の画像データを生成し、前記第2画像処理部は、該第2の画像データから前記第3の画像データを生成し、前記印刷部は、該第3の画像データが表す画像を印刷し、
(ii)前記記憶装置に前記第3の画像データが蓄積されている場合には、前記印刷部は、前記第3の画像データを前記記憶装置から取得して前記印刷を行う、
印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記第1画像処理部は、前記第1の画像データに対して、色成分毎に用意された色補正データを用いて前記色補正を行い、
前記蓄積処理部は、前記色成分毎に前記色補正データの修正の要否を判断し、前記色補正データの修正が必要であると判断された色成分については、前記記憶装置に、該色成分に対応する前記第1の画像データ中のデータを蓄積し、前記色補正データの修正が不要であると判断された色成分については、前記記憶装置に、該色成分に対応する前記第3の画像データ中のデータを蓄積する、印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置であって、
前記第1画像処理部は、前記色補正に先立ち、前記第1の画像データに対して、該第1の画像データの色空間を、当該印刷装置の色空間に変換する色変換処理を施す、印刷装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記蓄積処理部は、前記エラーの種類として、前記印刷部が前記印刷に用いる印刷材の費消に関するエラーを検出した場合に、前記色補正テーブルの修正が必要であると判断する、印刷装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記第2画像処理部は、前記第2の画像処理として前記第2の画像データにハーフトーン処理を施す、印刷装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記第1画像処理部は、所定のインターフェースによって接続された外部の画像データ送信装置から前記第1の画像データを取得し、
前記画像データ送信装置は、前記記憶装置を備えている、印刷装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記エラーが検出された後に、前記第1画像処理部によって前記第1の画像データが連続して複数取得された場合には、前記蓄積処理部は、前記色補正データの修正の要否に応じて、該取得された第1の画像データ、または、該取得された第1の画像データに基づき生成された前記第3の画像データを、前記エラーの解消が検出されるまで、前記記憶装置に順次蓄積する、印刷装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記蓄積処理部は、前記エラーが検出された場合に、該エラーの検出時に生成されている前記第1の画像データおよび第3の画像データを、前記記憶装置とは異なる内部記憶装置に保持し、
前記エラーの解消が検出された場合には、前記第2画像処理部は、前記記憶装置からの前記第1の画像データの取得に先立ち、前記内部記憶装置に保持された前記第1の画像データを取得し、前記印刷部は、前記記憶装置からの前記第3の画像データの取得に先立ち、前記内部記憶装置に保持された前記第3の画像データを取得する、印刷装置。
【請求項9】
印刷装置によって印刷を行う印刷方法であって、
(a)複数の画素から構成される第1の画像データを取得し、該第1の画像データに対して、色補正データに基づく色補正を施して第2の画像データを生成する工程と、
(b)前記第2の画像データを取得し、該第2の画像データに対して所定の画像処理を施して第3の画像データを生成する工程と、
(c)前記第3の画像データを取得し、該第3の画像データが表す画像を印刷する工程と、
(d)前記印刷装置のエラーの発生および該エラーの解消を検出する工程と、
(e)前記エラーが検出された場合において、該エラーの種類に応じて前記色補正データの修正の要否を判断し、前記色補正データの修正が必要であると判断された場合には、所定の記憶装置に前記第1の画像データを蓄積し、前記色補正データの修正が不要であると判断された場合には、前記記憶装置に前記第3の画像データを蓄積する工程と、
(f)前記エラーの解消が検出された場合において、
(f−1)前記記憶装置に前記第1の画像データが蓄積されている場合には、前記記憶装置から前記第1の画像データを取得して、該第1の画像データに対して修正後の色補正データを用いて前記色補正を施すことで前記第2の画像データを生成し、該第2の画像データから前記第3の画像データを生成し、該第3の画像データが表す画像を印刷し
(f−2)前記記憶装置に前記第3の画像データが蓄積されている場合には、前記第3の画像データを前記記憶装置から取得して前記印刷を行う、
印刷方法。
【請求項10】
コンピュータープログラムであって、
複数の画素から構成される第1の画像データを取得し、該第1の画像データに対して、色補正データに基づく色補正を施して第2の画像データを生成する第1画像処理機能と、
前記第2の画像データを取得し、該第2の画像データに対して所定の画像処理を施して第3の画像データを生成する第2画像処理機能と、
前記第3の画像データを取得し、該第3の画像データが表す画像を、印刷機構を制御して印刷する印刷機能と、
前記印刷機構のエラーの発生および該エラーの解消を検出するエラー検出機能と、
前記エラーが検出された場合において、該エラーの種類に応じて前記色補正データの修正の要否を判断し、前記色補正データの修正が必要であると判断された場合には、所定の記憶装置に前記第1の画像データを蓄積し、前記色補正データの修正が不要であると判断された場合には、前記記憶装置に前記第3の画像データを蓄積する蓄積処理機能と、
をコンピューターに実現させるコンピュータープログラムであり、
前記エラーの解消が検出された場合において、
(i)前記記憶装置に前記第1の画像データが蓄積されている場合には、前記第1画像処理機能は、前記記憶装置から前記第1の画像データを取得して、該第1の画像データに対して修正後の色補正データを用いて前記色補正を施すことで前記第2の画像データを生成し、前記第2画像処理機能は、該第2の画像データから前記第3の画像データを生成し、前記印刷機能は、該第3の画像データが表す画像を印刷し、
(ii)前記記憶装置に前記第3の画像データが蓄積されている場合には、前記印刷機能は、前記第3の画像データを前記記憶装置から取得して前記印刷を行う、
コンピュータープログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−126170(P2011−126170A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287516(P2009−287516)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】