説明

印刷装置、印刷装置の制御方法及びプログラム

【課題】印刷データの転送遅延に起因する印刷中断をより確実に抑制する。
【解決手段】各ページが連なった印刷媒体を搬送しながら、固定された印刷ヘッドにより、搬送される印刷媒体の各ページに対して印刷を行う印刷装置であって、外部装置から受信した印刷データを記憶領域に格納する格納手段と、記憶領域に格納された印刷データのうちのNページ分(Nは自然数)の印刷データを印刷ヘッドに転送するために要する転送所要時間を算出する算出手段と、算出手段で算出した転送所要時間がNページ分の印刷媒体の搬送に要する搬送所要時間を超えない範囲で、Nページ分の印刷媒体の搬送速度を設定する設定手段と、設定手段で搬送速度を設定した後にNページ分の印刷データの印刷ヘッドへの転送を開始する制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から受信した印刷データに従った印刷を実行する印刷装置、印刷装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホストコンピュータ等の外部装置から印刷データを受信し、該印刷データに従った印刷を行う印刷装置では、ユーザが外部装置で印刷を指示してから印刷装置で目的とする出力物を得るまでの処理時間を可能な限り短くする必要がある。このため、印刷データを印刷装置から転送している間に、既に転送された印刷データに従った印刷を開始する技術がある。この場合には、印刷データの転送が印刷処理に追いついていかなければ、印刷処理が中断することとなり、結局のところ、処理時間が短縮できていない結果となる。しかし、印刷データが、例えば、写真や図画等のイメージデータである場合には、イメージデータはテキストデータよりもデータ量が大きいことから、外部装置から印刷装置への転送を含む処理時間が長くかかってしまう。このため、イメージデータとテキストデータとで同じ印刷速度の制御を行っても印刷中断を招いてしまう。このため、特許文献1では、イメージデータをレーザビームプリンタで印刷する場合に、テキストデータの印刷速度よりも低速の印刷速度に設定することにより、印刷中断を抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−249182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、印刷内容がすべてテキストデータである場合に印刷速度を高速側に設定し、印刷内容がすべてイメージデータである場合に印刷速度を低速側に設定するもの、すなわち、印刷速度を印刷内容に応じて二者択一で制御するものにすぎないため、印刷データにテキストデータとイメージデータとが混在している場合を想定したものではなく、必ずしも最適な印刷速度を設定できるものではない。例えば、1つの印刷ジョブ内に複数の印刷すべきページが含まれ、1ページ目がテキストデータ、2ページ目がイメージデータであるような場合には、1ページ目の印刷速度が高速に設定され、2ページ目の印刷速度が低速に設定されることとなり、1ページ目を高速に印刷している間に2ページ目の印刷速度を低速にしたところで、1ページ目の印刷終了までに2ページ目の印刷データの転送を完了することは困難であると考えられる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、印刷データの転送遅延に起因する印刷中断をより確実に抑制する印刷装置、印刷装置の制御方法及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る印刷装置は、各ページが連なった印刷媒体を搬送しながら、固定された印刷ヘッドにより、搬送される印刷媒体の各ページに対して印刷を行う印刷装置であって、外部装置から受信した印刷データを記憶領域に格納する格納手段と、前記記憶領域に格納された印刷データのうちのNページ分(Nは自然数)の印刷データを前記印刷ヘッドに転送するために要する転送所要時間を算出する算出手段と、前記算出手段で算出した転送所要時間がNページ分の印刷媒体の搬送に要する搬送所要時間を超えない範囲で、前記Nページ分の印刷媒体の搬送速度を設定する設定手段と、前記設定手段で前記搬送速度を設定した後に前記Nページ分の印刷データの前記印刷ヘッドへの転送を開始する制御手段と、を備える。
【0007】
また、本発明の請求項5に係る印刷装置の制御方法は、各ページが連なった印刷媒体を搬送しながら、固定された印刷ヘッドにより、搬送される印刷媒体の各ページに対して印刷を行う印刷装置の制御方法であって、外部装置から受信した印刷データを記憶領域に格納する格納工程と、前記記憶領域に格納された印刷データのうちのNページ分(Nは自然数)の印刷データを前記印刷ヘッドに転送するために要する転送所要時間を算出する算出工程と、前記算出工程で算出した転送所要時間がNページ分の印刷媒体の搬送に要する搬送所要時間を超えない範囲で、前記Nページ分の印刷媒体の搬送速度を設定する設定工程と、前記設定工程で前記搬送速度を設定した後に前記Nページ分の印刷データの前記印刷ヘッドへの転送を開始する制御工程と、を備える。
【0008】
また、本発明の請求項6に係るプログラムは、コンピュータを、各ページが連なった印刷媒体を搬送しながら、固定された印刷ヘッドにより、搬送される印刷媒体の各ページに対して印刷を行う印刷装置における、外部装置から受信した印刷データを記憶領域に格納する格納手段、前記記憶領域に格納された印刷データのうちのNページ分(Nは自然数)の印刷データを前記印刷ヘッドに転送するために要する転送所要時間を算出する算出手段、前記算出手段で算出した転送所要時間がNページ分の印刷媒体の搬送に要する搬送所要時間を超えない範囲で、前記Nページ分の印刷媒体の搬送速度を設定する設定手段、前記設定手段で前記搬送速度を設定した後に前記Nページ分の印刷データの前記印刷ヘッドへの転送を開始する制御手段として機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印刷データの転送遅延に起因する印刷中断をより確実に抑制する印刷装置、印刷装置の制御方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷システムの構成を示す図である。
【図2】印刷媒体と印刷ヘッドとの位置関係を示す上面図である。
【図3】印刷ヘッドを示す上面図である。
【図4】印刷媒体と印刷ヘッドとの位置関係を示す側面図である。
【図5】印刷装置の処理手順を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る印刷装置の処理手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
[印刷システムの構成(図1)]
印刷システムは、情報処理装置100(ホストコンピュータ)と、情報処理装置100とLAN等のネットワーク300を介して接続された印刷装置200とを備える。
【0012】
情報処理装置100は、CPU101、ROM102、RAM103、HDD104、ネットワークI/F105、ユーザI/F106を備える。
【0013】
CPU101は、情報処理装置100全体を制御する。ROM102は、情報処理装置100のブートプログラム等を記憶する読み取り専用のメモリである。RAM103は、各種データを一時的に記憶し、又は作業領域として用いるためのメモリである。HDD104は、種々のプログラムやデータを記憶するための記憶装置である。ネットワークI/F105は、印刷装置200との間で印刷データを含む種々の情報をやりとりするための通信I/Fである。ユーザI/F106は、マウスやキーボード等の入力装置であり、ユーザからの種々の指示を受け付ける。
【0014】
情報処理装置100は、ユーザI/F106を介してユーザが印刷指示を行った場合に印刷データを生成し、生成した印刷データをネットワークI/F105を介して印刷装置200に送信する。
【0015】
印刷装置200は、各ページが連なった印刷媒体を搬送しながら、固定された印刷ヘッドにより、搬送される印刷媒体の各ページに対して印刷を行う。印刷装置200は、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、ネットワークI/F205、複数の印刷ヘッド206〜209、搬送ユニット220及び先端検知センサ211を備える。
【0016】
CPU201は、印刷装置200全体を制御する。ROM202は、印刷装置200のブートプログラム等を記憶する読み取り専用のメモリである。RAM203は、情報処理装置100から受信した印刷データを含む各種データを一時的に記憶し、又は作業領域として用いるためのメモリである。HDD204は、種々のプログラムやデータを記憶するためのデバイスである。ネットワークI/F205は、情報処理装置100(外部装置)との間で印刷データを含む種々の情報をやりとりするための通信I/Fである。
【0017】
複数の印刷ヘッド206〜209は、図2で示すように、印刷媒体の搬送方向と交差(例えば、直交)する方向に並べて、印刷装置200本体に固定され、印刷ユニット210を構成する。印刷ヘッド206〜209は、印刷媒体のうちの帯状に割り当てられた領域を印刷して印刷媒体全体の印刷を行う。印刷ヘッド206〜209は、本実施形態では、印刷媒体全体をカバーできるように互い違いに固定されている。
【0018】
印刷ヘッド206〜209のそれぞれは、図3で示すように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)等の複数のインクタンクを備える。印刷ヘッド206〜209は、割り当てられた領域に相当する印刷データに従って印刷媒体に印刷を行う。
【0019】
搬送ユニット220は、印刷ヘッド206〜209による印刷処理と同期して印刷媒体を搬送する。印刷媒体の搬送速度は、所定の枚数毎(本実施形態では1枚毎)に切り替えられる。印刷媒体は、本実施形態では、ロール状に巻かれたダイカットラベルである。このため、搬送ユニット220は、駆動モータを含む駆動機構を備え、駆動モータの回転数が制御されることにより、印刷媒体の搬送速度が調整される。ダイカットラベルは、本実施形態では、図2で示すように、剥離紙1に粘着剤付きの型抜きされたラベル3が等間隔に載っているものを想定する。なお、印刷媒体は、ロール状に巻かれたダイカットラベルだけではなく、各ページが折り畳まれたファンホールドタイプのダイカットラベルであってもよいし、他の印刷媒体であってもよい。
【0020】
先端検知センサ211は、図4で示すように、印刷ヘッドよりも搬送方向の上流側において、搬送面に設けられている。先端検知センサ211は、ラベル3の搬送方向の下流側の先端を検知する。
【0021】
印刷装置200は、ネットワークI/F205を介して情報処理装置100から印刷データを受信し、受信した印刷データを一時的にRAM203に格納する。そして、印刷装置200は、RAM203に格納された印刷データを所定のタイミングで印刷ヘッド206〜209に送信する。
【0022】
先端検知センサ211がラベル3の搬送方向の先端を検知した後に、搬送ユニット220がラベル3を所定量Lだけ搬送すると、ラベル3が印刷ヘッド206〜209の下に到達する。そして、印刷ヘッド206〜209が印刷を行っている間にラベル3の搬送を続けると、1ページの印刷を終了したときに、ラベル3の後端が印刷ヘッド206〜209の下に到達し、次のラベルがすぐ後ろに控えている状態になる。
【0023】
そして、次のページの印刷データを情報処理装置100から印刷装置200に送りながら、次のページの印刷データが揃ったところで印刷を開始する。この場合、着目するページの印刷が終了したときに、次のページの印刷データが揃っていれば、印刷を中断することなく次のページの印刷を行うことができる。しかし、着目するページの印刷を終了したときに、次のページのデータが揃っていないと印刷を中断しなければならない。
【0024】
つまり、ラベル3の搬送速度をS[mm/sec]、ラベル3の長さをP[mm]、連続する2つのラベル3の間の距離をG[mm]とすると、1ページの搬送所要時間T1[sec]は、下記の(式1)で算出できる。
T1=(P+G)/S・・・(式1)
また、1ページのデータ量をD[kB]、データ転送レートをR[kB/sec]とすると、1ページ分のデータを転送するために要する転送所要時間T2[sec]は、下記の(式2)で算出できる。
T2=D/R・・・(式2)
ここで、1ページの搬送所要時間T1が、1ページ分の転送所要時間T2よりも小さい場合には、1ページ分の搬送所要時間T1が経過するまでに1ページ分のデータが揃わないため、ページの途中で印刷中断が発生してしまう。つまり、RAM203から印刷ヘッド206〜209のいずれかへの転送で、T1<T2の関係が成り立つと印刷中断が発生してしまう。
【0025】
そこで、印刷装置200で1ページ分のデータ量に基づいてデータ転送時間を算出し、いずれの印刷ヘッドへの転送を行う場合にも、T1>=T2の関係(つまり、下記の(式3))が成り立つように、搬送速度Sを定めれば、印刷中断は発生しない。
(P+G)/S>=D/R・・・(式3)
そのために、前記の各印刷ヘッド206〜209の中で印刷するデータ量が一番多い印刷ヘッドに合わせて(式3)が成り立つ搬送速度Sを求める。
【0026】
[印刷装置の処理手順]
(印刷前の処理(不図示))
まず、印刷を開始する前に、情報処理装置100は、ユーザからの指示に基づいてページ(印刷領域)の長さP、ページ間(非印刷領域)の距離Gを受け付け、印刷装置200に設定する。そして、情報処理装置100は、この設定内容を印刷装置200に送信し、同様の設定を行う旨の指示を行い、印刷装置200がこの指示に従った設定を行う。なお、この設定処理は、印刷装置200がP及びGを先端検知センサ211を用いることにより自動的に検出して設定を行ってもよい。そして、ユーザが情報処理装置100のユーザI/Fを介して印刷指示を行うと、情報処理装置100は、印刷データを生成し、生成した印刷データを印刷装置200に送信する。そして、印刷装置200は、情報処理装置100から受信した印刷データをRAM203に一時的に格納する。そして、以下で示す印刷時の処理に進む。
【0027】
(印刷時の処理(図5))
ここで示す処理は、印刷装置200のCPU201により制御される。まず、印刷装置200は、mページ目の印刷データのデータ量D1を取得する(S11)。このデータ量D1は、例えば、印刷データに属性情報として付加されているものとする。そして、印刷装置200は、mページ目の印刷データの転送所要時間T2を(式2)により算出する(S12)。データ転送レートRは、予め設定されているものとする。そして、印刷装置200は、mページ目の搬送所要時間(式1)とS12で算出したmページ目の印刷データの転送所要時間に基づいて、最適な搬送速度Sを決定し、搬送ユニット220及び各印刷ヘッド206〜209に設定する(S13)。S11〜S14の間には、m−1ページ目の印刷処理及び搬送処理が並列に動作している。しかし、m=1である場合、S11〜S14の間には、印刷処理及び搬送処理は行われない。そして、m−1ページ目の印刷処理及び搬送処理を行っている最中に、印刷装置200は、mページ目の印刷データを各印刷ヘッド206〜209に転送する(S14)。これにより、mページ目の印刷処理及び搬送処理が開始される。
【0028】
次に、印刷装置200は、m+1ページ目の印刷データのデータ量D2を取得する(S15)。このデータ量D2は、例えば、印刷データに属性情報として付加されているものとする。そして、印刷装置200は、m+1ページ目の印刷データの転送所要時間T2を(式2)により算出する(S16)。データ転送レートRは、予め設定されているものとする。そして、印刷装置200は、現在の搬送速度でのm+1ページ目の搬送所要時間(式1)とS16で算出したm+1ページ目の転送所要時間に基づいて、最適な搬送速度Sを決定し、搬送ユニット220及び各印刷ヘッド206〜209に設定する(S17)。S14〜S18の間には、mページ目の印刷処理及び搬送処理が並列に動作している。そして、mページ目の印刷処理及び搬送処理を行っている最中に、印刷装置200は、m+1ページ目の印刷データを各印刷ヘッド206〜209に転送する(S18)。これにより、m+1ページ目の印刷処理及び搬送処理が開始される。以降の処理は同様であるため、説明を省略する。
【0029】
なお、本実施形態では、1ページ目の印刷から最適な搬送速度を決定して、印刷処理及び搬送処理を行うこととしたが、この場合には、1ページ目の転送が開始されるまで、印刷処理及び搬送処理を行わないこととなる。このため、1ページ目の印刷処理及び搬送処理については、最適な搬送速度を決定することなく、印刷データを印刷ヘッドに転送するようにしてもよい。この場合には、予め設定した搬送速度で印刷処理及び搬送処理を行うこととなる。
【0030】
以上述べた通り、本実施形態によれば、印刷データを印刷装置200のRAM203から印刷ヘッド206〜209に転送する際に生じる遅延に起因する印刷中断をより確実に抑制する印刷装置を提供することができる。
【0031】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、RAM203から印刷ヘッド206〜209への1ページ分の印刷データの転送所要時間に基づいて搬送速度を決定した後に、1ページ分の印刷データを印刷ヘッド206〜209に転送して決定した搬送速度に基づいて当該1ページ分の印刷データの搬送処理及び印刷処理を制御する例を示した。これに対して、本実施形態では、RAM203から印刷ヘッド206〜209へのNページ分(Nは2以上の自然数)の印刷データの転送所要時間に基づいて搬送速度を決定した後に、Nページ分の印刷データを印刷ヘッド206〜209に転送して決定した搬送速度に基づいて当該Nページ分の印刷データの搬送処理及び印刷処理を制御する。この場合、RAM203から印刷ヘッド206〜209へのデータ転送が、印刷ヘッド206〜209のそれぞれに未処理の印刷データが残っているうちに完了するのであれば印刷中断は発生しない。
【0032】
ここで、総印刷ページ数の印刷データを搬送するために要する搬送所要時間をT1’[sec]とすると、T1’は下記の(式4)で算出できる。
T1’=N×(P+G)/S・・・(式4)
また、Nページ分の印刷データを転送するために要する転送所要時間をT2’[sec]とすると、T2’は下記の(式5)で算出できる。
T2’=N×D/R・・・(式5)
従って、T1’>=T2’の関係(つまり、下記の(式6))が成り立つように、搬送速度Sを求めれば、印刷待ちページが存在するうちに印刷データの転送が完了するため、印刷中断は発生しない。
(P+G)/S>=D/R・・・(式6)
そのために、前記の各印刷ヘッド206〜209の中で印刷するデータ量が一番多い印刷ヘッドに合わせて(式6)が成り立つ搬送速度Sを求める。
【0033】
(印刷時の処理(図6))
ここで示す処理は、印刷装置200のCPU201により制御される。ここでは、Nページ分の印刷データの単位を「セット」と呼ぶ。まず、印刷装置200は、mセット目のNページ分の印刷データのデータ量D1を取得する(S21)。このデータ量D1は、例えば、印刷データに属性情報として付加されているものとする。そして、印刷装置200は、mセット目のNページ分の印刷データの転送所要時間T2を(式2)により算出する(S22)。データ転送レートRは、予め設定されているものとする。そして、印刷装置200は、mセット目のNページ分の搬送所要時間(式1)とS22で算出したmセット目のNページ分の印刷データの転送所要時間に基づいて、最適な搬送速度Sを決定し、搬送ユニット220及び各印刷ヘッド206〜209に設定する(S23)。S21〜S23の間には、m−1セット目のNページ分の印刷処理及び搬送処理が並列に動作している。しかし、m=1である場合、S21〜S23の間には、印刷処理及び搬送処理は行われない。そして、m−1セット目のNページ分の印刷処理及び搬送処理を行っている最中に、印刷装置200は、mセット目のNページ分の印刷データを各印刷ヘッド206〜209に転送する(S24)。これにより、mセット目のNページ分の印刷処理及び搬送処理が開始される。
【0034】
次に、印刷装置200は、m+1セット目のNページ分の印刷データのデータ量D2を取得する(S25)。このデータ量D2は、例えば、印刷データに属性情報として付加されているものとする。そして、印刷装置200は、m+1セット目のNページ分の印刷データの転送所要時間T2を(式2)により算出する(S26)。データ転送レートRは、予め設定されているものとする。そして、印刷装置200は、現在の搬送速度でのm+1セット目の搬送所要時間(式1)とS26で算出したm+1ページ目の転送所要時間に基づいて、最適な搬送速度Sを決定し、搬送ユニット220及び各印刷ヘッド206〜209に設定する(S27)。S24〜S27の間には、mセット目のNページ分の印刷処理及び搬送処理が並列に動作している。そして、mセット目のNページ分の印刷処理及び搬送処理を行っている最中に、印刷装置200は、m+1セット目のNページ分の印刷データを各印刷ヘッド206〜209に転送する(S28)。これにより、m+1セット目のNページ分の印刷処理及び搬送処理が開始される。以降の処理は同様であるため、説明を省略する。
【0035】
なお、本実施形態では、1セット目の印刷から最適な搬送速度を決定して、印刷処理及び搬送処理を行うこととしたが、この場合には、1セット目の転送が開始されるまで、印刷処理及び搬送処理を行わないこととなる。このため、1セット目の印刷処理及び搬送処理については、最適な搬送速度を決定することなく、印刷データを印刷ヘッドに転送するようにしてもよい。この場合には、予め設定した搬送速度で印刷処理及び搬送処理を行うこととなる。
【0036】
以上述べた通り、本実施形態によれば、印刷データを印刷装置200のRAM203から印刷ヘッド206〜209に転送する際に生じる遅延に起因する印刷中断をより確実に抑制する印刷装置を提供することができる。
【0037】
<他の実施形態>
なお、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形した実施形態にも及ぶことはいうまでもない。例えば、本発明は、複数(4つ)の印刷ヘッドを備える印刷装置について説明したが、1つの印刷ヘッドのみを備える印刷装置にも本発明を適用することができる。また、解像度を変更できるシステムでは、解像度により印刷データのデータ量も変動するため、解像度を変更することによって(式2)や(式3)を満たすことで、印刷中断をしないで最後まで印刷をすることが可能となる。
【0038】
また、第1及び第2の実施形態では、印刷装置200は、情報処理装置100から受信した印刷データを一時的にRAM203に格納し、この格納した印刷データを所定のタイミングで印刷ヘッド206〜209に転送することとしたが、HDD204をメモリ(記憶領域)として機能させて、情報処理装置100から受信した印刷データをHDD204に格納する場合も考えられる。このような場合には、RAM203に格納する場合に比べて転送時間が長くかかり、印刷データの転送遅延が発生しやすいため、特に有効である。
【0039】
また、第1及び第2の実施形態では、印刷ヘッドが、印刷媒体の搬送方向と交差する方向に並べて複数固定されており、複数の印刷ヘッド206〜209のそれぞれが、印刷媒体のうちの割り当てられた領域を印刷して印刷媒体全体の印刷を行う場合を想定して説明したが、1つの印刷ヘッドが、印刷媒体の幅全域に渡るように設ければ、複数設けなくても構わない。
【0040】
また、コンピュータを、第1又は第2の実施形態に係る印刷装置の各手段として機能させるためのプログラムは本発明を構成する。また、このプログラムを格納した記憶媒体は本発明を構成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各ページが連なった印刷媒体を搬送しながら、固定された印刷ヘッドにより、搬送される印刷媒体の各ページに対して印刷を行う印刷装置であって、
外部装置から受信した印刷データを記憶領域に格納する格納手段と、
前記記憶領域に格納された印刷データのうちのNページ分(Nは自然数)の印刷データを前記印刷ヘッドに転送するために要する転送所要時間を算出する算出手段と、
前記算出手段で算出した転送所要時間がNページ分の印刷媒体の搬送に要する搬送所要時間を超えない範囲で、前記Nページ分の印刷媒体の搬送速度を設定する設定手段と、
前記設定手段で前記搬送速度を設定した後に前記Nページ分の印刷データの前記印刷ヘッドへの転送を開始する制御手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記印刷ヘッドは、前記印刷媒体の搬送方向に交差する方向に並べて複数固定されており、前記複数の印刷ヘッドのそれぞれが、前記印刷媒体のうちの割り当てられた領域を印刷して前記印刷媒体全体の印刷を行い、
前記算出手段は、前記Nページ分の印刷データを前記複数の印刷ヘッドのそれぞれに転送するために要する転送所要時間を算出し、
前記設定手段は、前記算出手段で算出した転送所要時間のそれぞれが、Nページ分の印刷媒体の搬送に要する搬送所要時間を超えない範囲で、前記Nページ分の印刷媒体の搬送速度を設定し、
前記制御手段は、前記設定手段で前記搬送速度を設定した後に前記Nページ分の印刷データの、それぞれの印刷ヘッドへの転送を開始することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記Nページ分の印刷データのデータ量及びデータ転送レートに基づいて、前記転送所要時間を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷媒体は、各ページがロール状に巻かれ、又は折り畳まれていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
各ページが連なった印刷媒体を搬送しながら、固定された印刷ヘッドにより、搬送される印刷媒体の各ページに対して印刷を行う印刷装置の制御方法であって、
外部装置から受信した印刷データを記憶領域に格納する格納工程と、
前記記憶領域に格納された印刷データのうちのNページ分(Nは自然数)の印刷データを前記印刷ヘッドに転送するために要する転送所要時間を算出する算出工程と、
前記算出工程で算出した転送所要時間がNページ分の印刷媒体の搬送に要する搬送所要時間を超えない範囲で、前記Nページ分の印刷媒体の搬送速度を設定する設定工程と、
前記設定工程で前記搬送速度を設定した後に前記Nページ分の印刷データの前記印刷ヘッドへの転送を開始する制御工程と、
を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項6】
コンピュータを、
各ページが連なった印刷媒体を搬送しながら、固定された印刷ヘッドにより、搬送される印刷媒体の各ページに対して印刷を行う印刷装置における、
外部装置から受信した印刷データを記憶領域に格納する格納手段、
前記記憶領域に格納された印刷データのうちのNページ分(Nは自然数)の印刷データを前記印刷ヘッドに転送するために要する転送所要時間を算出する算出手段、
前記算出手段で算出した転送所要時間がNページ分の印刷媒体の搬送に要する搬送所要時間を超えない範囲で、前記Nページ分の印刷媒体の搬送速度を設定する設定手段、
前記設定手段で前記搬送速度を設定した後に前記Nページ分の印刷データの前記印刷ヘッドへの転送を開始する制御手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−30453(P2012−30453A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171152(P2010−171152)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】