説明

印刷装置、及び、印刷方法

【課題】印刷画像の画質劣化を抑制することができる印刷装置の提供。
【解決手段】第1の色インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列及び第1の色とは異なる複数色のインクを吐出するノズルが同色のインクを吐出するノズルごとに所定方向に並ぶ第2ノズル列を移動方向に移動させながらノズルからインクを吐出させる吐出動作と、第1ノズル列に属するノズルの数が第2ノズル列に属する各色インクを吐出するノズルの数よりも多く、第1ノズル列に属するノズルのうち、ある吐出動作において移動方向に沿う複数のドット列を形成する複数のノズルであって各ドット列の一部を形成する複数のノズルである第1ノズル群と別の吐出動作において複数のドット列を形成する複数のノズルであり各ドット列の別の一部を形成する複数のノズルであって第1ノズル群よりも所定方向の一の方向側に位置する第2ノズル群との間のノズルからはインクが吐出されない印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及び、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の一つとして、インクを吐出するノズルが所定方向に並んだノズル列を所定方向と交差する移動方向に移動しながら画像を形成する動作と、ノズル列に対して媒体を所定方向に搬送する動作を繰り返すインクジェットプリンター(以下、プリンター)がある。モノクロ印刷を高速化するために、ブラックインクを吐出するノズル数を、カラーの各色インク(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン)を吐出するノズル数よりも多くするとよい。そして、ブラックインクを吐出するノズルを所定方向に並べたブラックノズル列と、カラーインクを吐出するノズルを、同色インクを吐出するノズルごとに所定方向に並べたカラーノズル列と、を移動方向に並べて配置したプリンターが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このようなプリンターでは、カラー印刷に比べてモノクロ印刷の1回の媒体搬送量を長くすることができ、印刷時間を短縮できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−246048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブラックインクはテキスト印刷に使用されることが多く、ブラックの濃度を濃く印刷することで、高品質なテキスト画像が得られる。そのため、ブラックインクとカラーインクの両方を使用して印刷する場合に、カラーの各色インクのノズル数と同数のブラックノズルしか使用せず、カラーノズルと同様に、例えば、移動方向に沿う1つのドット列を1つのブラックノズルで印刷したとする。そうすると、媒体上の単位領域に短期間に多量のブラックインクが吐出され、ブラックの色材の沈み込み量が増加してブラックの濃度が淡くなり、印刷画像の画質が劣化してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、印刷画像の画質劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する為の主たる発明は、(A)第1の色インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列と、(B)前記第1ノズル列と前記所定方向と交差する移動方向に並ぶ第2ノズル列であって、前記第1の色とは異なる複数色のインクを吐出するノズルが同色のインクを吐出する前記ノズルごとに前記所定方向に並ぶ第2ノズル列と、(C)前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を前記移動方向に移動させながら前記ノズルからインクを吐出させる吐出動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる動作とを、繰り返す制御部と、(D)を有し、(E)前記第1ノズル列に属する前記ノズルの数が、前記第2ノズル列に属する前記ノズルのうちの各色インクを吐出する前記ノズルの数よりも多く、前記移動方向に沿うドット列を形成する前記第1ノズル列の前記ノズルの数が、前記移動方向に沿うドット列を形成する前記第2ノズル列のうちの各色インクを吐出する前記ノズルの数よりも多く、前記第1ノズル列に属する前記ノズルのうち、ある前記吐出動作において前記移動方向に沿う複数のドット列を形成する複数の前記ノズルであって各前記ドット列の一部を形成する複数の前記ノズルである第1ノズル群と、別の前記吐出動作において前記複数のドット列を形成する複数の前記ノズルであり各前記ドット列の別の一部を形成する複数の前記ノズルであって前記第1ノズル群よりも前記所定方向の前記一の方向側に位置する第2ノズル群と、の間の前記ノズルからはインクが吐出されない、(F)ことを特徴とする印刷装置である。
【0007】
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1Aは印刷システムの全体構成ブロック図であり、図1Bはプリンターの概略図である。
【図2】ヘッドにおけるノズル配列を示す図である。
【図3】モノクロモードの印刷方法を説明する図である。
【図4】3色カラーモードの印刷方法を説明する図である。
【図5】比較例の4色モードの印刷方法を説明する図である。
【図6】本実施形態の4色モードの印刷方法を説明する図である。
【図7】変形例の印刷方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0010】
即ち、(A)第1の色インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列と、(B)前記第1ノズル列と前記所定方向と交差する移動方向に並ぶ第2ノズル列であって、前記第1の色とは異なる複数色のインクを吐出するノズルが同色のインクを吐出する前記ノズルごとに前記所定方向に並ぶ第2ノズル列と、(C)前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を前記移動方向に移動させながら前記ノズルからインクを吐出させる吐出動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる動作とを、繰り返す制御部と、(D)を有し、(E)前記第1ノズル列に属する前記ノズルの数が、前記第2ノズル列に属する前記ノズルのうちの各色インクを吐出する前記ノズルの数よりも多く、前記移動方向に沿うドット列を形成する前記第1ノズル列の前記ノズルの数が、前記移動方向に沿うドット列を形成する前記第2ノズル列のうちの各色インクを吐出する前記ノズルの数よりも多く、前記第1ノズル列に属する前記ノズルのうち、ある前記吐出動作において前記移動方向に沿う複数のドット列を形成する複数の前記ノズルであって各前記ドット列の一部を形成する複数の前記ノズルである第1ノズル群と、別の前記吐出動作において前記複数のドット列を形成する複数の前記ノズルであり各前記ドット列の別の一部を形成する複数の前記ノズルであって前記第1ノズル群よりも前記所定方向の前記一の方向側に位置する第2ノズル群と、の間の前記ノズルからはインクが吐出されない、(F)ことを特徴とする印刷装置である。
このような印刷装置によれば、媒体の単位領域あたりに短期間に吐出される第1の色インク量を低減でき、また、第1の色インクを吐出する時間間隔を長くすることができる。その結果、第1の色の濃度が淡くなってしまうことを抑制でき、印刷画像の画質劣化を抑制できる。
【0011】
かかる印刷装置であって、前記第2ノズル列では、前記所定方向の前記一の方向側から順に、第2の色インクを吐出するノズルが前記所定方向に並ぶ第3ノズル群と、第3の色インクを吐出するノズルが前記所定方向に並ぶ第4ノズル群と、第4の色インクを吐出するノズルが前記所定方向に並ぶ第5ノズル群と、が並び、前記第3ノズル群は、前記第2ノズル群と前記所定方向の位置が等しく、前記第4ノズル群は、前記第1ノズル列に属する前記ノズルのうちの前記第1ノズル群と前記第2ノズル群の間の前記ノズルと前記所定方向の位置が等しく、前記第5ノズル群は、前記第1ノズル群と前記所定方向の位置が等しいこと。
このような印刷装置によれば、全てのドット列を印刷する際に、第1の色インクを吐出する時間間隔を長くすることができる。
【0012】
かかる印刷装置であって、前記第1の色インクは、ブラックの顔料インクであること。
このような印刷装置によれば、ブラックの濃度が淡くなってしまうことを抑制でき、印刷画像の画質劣化を抑制できる。
【0013】
また、第1の色インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列、及び、前記第1ノズル列と前記所定方向と交差する移動方向に並ぶ第2ノズル列であって、前記第1の色とは異なる複数色のインクを吐出するノズルが同色のインクを吐出するノズルごとに前記所定方向に並ぶ第2ノズル列を、前記移動方向に移動させながら前記ノズルからインクを吐出させる吐出動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる動作とを、繰り返す印刷装置の印刷方法であって、前記第1ノズル列に属する前記ノズルの数が、前記第2ノズル列に属する前記ノズルのうちの各色インクを吐出する前記ノズルの数よりも多く、前記移動方向に沿うドット列を形成する前記第1ノズル列の前記ノズルの数を、前記移動方向に沿うドット列を形成する前記第2ノズル列のうちの各色インクを吐出する前記ノズルの数よりも多くし、前記第1ノズル列に属する前記ノズルのうち、ある前記吐出動作において前記移動方向に沿う複数のドット列を形成する複数の前記ノズルであって各前記ドット列の一部を形成する複数の前記ノズルである第1ノズル群と、別の前記吐出動作において前記複数のドット列を形成する複数の前記ノズルであり各前記ドット列の別の一部を形成する複数の前記ノズルであって前記第1ノズル群よりも前記所定方向の前記一の方向側に位置する第2ノズル群と、の間の前記ノズルからはインクを吐出しないことを特徴とする印刷方法である。
このような印刷方法によれば、媒体の単位領域あたりに短期間に吐出される第1の色インク量を低減でき、また、第1の色インクを吐出する時間間隔を長くすることができる。その結果、第1の色の濃度が淡くなってしまうことを抑制でき、印刷画像の画質劣化を抑制できる。
【0014】
===印刷システムについて===
以下、印刷装置をインクジェットプリンター(以下、プリンター)とし、プリンターとコンピューターが接続された印刷システムを例に挙げて実施形態を説明する。
【0015】
図1Aは、印刷システムの全体構成ブロック図であり、図1Bは、プリンター1の概略図である。コンピューター60は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンター1に出力する。コンピューター60には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラム(プリンタードライバー)がインストールされている。このプリンタードライバーは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されている。または、インターネットを介してプリンタードライバーをコンピューター60にダウンロード可能してもよい。
【0016】
コンピューター60から印刷指令および印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー10(制御部に相当)により各ユニットを制御し、媒体Sに画像を印刷する。また、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。コントローラー10内のインターフェース部11は、外部装置であるコンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13は、CPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12は、ユニット制御回路14により各ユニットを制御する。
【0017】
搬送ユニット20は、媒体Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時には搬送方向に所定の搬送量で媒体Sを搬送させるものである。
キャリッジユニット30は、ヘッド41を搬送方向と交差する方向(以下、移動方向という)に移動させるためのものであり、キャリッジ31を有する。
【0018】
ヘッドユニット40は、画像を形成するためのものであり、ヘッド41を有する。ヘッド41の下面には、インク吐出部であるノズルが複数設けられ、各ノズルにはインクが充填された圧力室が設けられている。なお、ノズルからのインク吐出方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて、圧力室を膨張・収縮させることによりインクを吐出するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってインクを吐出するサーマル方式でもよい。
【0019】
図2は、ヘッド41におけるノズル配列を示す図である。図は、ヘッド41の上面からノズル配置を仮想的に見た様子を示す。ヘッド41には、搬送方向(所定方向)に180個のノズルが所定間隔D(例えば180dpi)おきに並んだノズル列が2つ移動方向に並んで配置されている。搬送方向下流側のノズルから順に小さい番号を付す(#1〜#180)。移動方向左側のノズル列が「ブラックノズル列K」であり、移動方向右側のノズル列が「カラーノズル列Co」である。
【0020】
ブラックノズル列K(第1ノズル列に相当)に属するノズルは全てブラックインク(第1の色インク)を吐出する。ブラックノズル列Kに属するノズルのうち、搬送方向下流側の1/3のノズル(#1〜#60)をまとめて「第1ブラックノズル群(K1)(第1ノズル群に相当)」と呼び、搬送方向中央部の1/3のノズル(#61〜#120)をまとめて「第2ブラックノズル群(K2)」と呼び、搬送方向上流側の1/3のノズル(#121〜#180)をまとめて「第3ブラックノズル群(K3)(第2ノズル群に相当)」と呼ぶ。
【0021】
一方、カラーノズル列Co(第2ノズル列に相当)は3色のインクを吐出するノズルを有する。カラーノズル列Coに属するノズルのうち、搬送方向下流側の1/3のノズル(#1〜#60)からはイエローインクが吐出され、搬送方向中央部の1/3のノズル(#61〜#120)からはマゼンタインクが吐出され、搬送方向上流側の1/3のノズル(#121〜#180)からはシアンインクが吐出される。イエローインクを吐出するノズルをまとめて「イエローノズル群(第5ノズル群に相当)」と呼び、マゼンタインクを吐出するノズルをまとめて「マゼンタノズル群(第4ノズル群に相当)」と呼び、シアンインクを吐出するノズルをまとめて「シアンノズル群(第3ノズル群に相当)」と呼ぶ。
【0022】
このように、本実施形態のヘッド41では、ブラックインクを吐出するノズル数(180個)が、カラーの各色インク(YMC)を吐出するノズル数(60個)よりも多い。そして、3色のカラーインク(YMC)を吐出するノズル数の合計数(60個×3色)が、ブラックインクを吐出するノズル数に相当する。即ち、カラーの各色インクを吐出するノズル数の3倍のノズル数がブラックインクを吐出するノズル数に相当する。また、第1ブラックノズル群K1とイエローノズル群Yの各搬送方向の位置が等しく、第2ブラックノズル群K2とマゼンタノズル群Mの各搬送方向の位置が等しく、第3ブラックノズル群K3とシアンノズル群Cの各搬送方向の位置が等しい。
【0023】
このような構成のプリンター1において、ヘッド41を移動方向に移動させながらノズルからインク滴を断続的に吐出させて媒体上に画像を形成する画像形成処理と、媒体をヘッド41に対して搬送方向の下流側に搬送する搬送処理とを繰り返す。その結果、先の画像形成処理により形成された画像の位置とは異なる位置に次の画像形成処理にて画像を形成することができ、媒体上に2次元の画像を印刷することができる。なお、ヘッド41がインク滴を吐出しながら移動方向に1回移動する動作(1回の画像形成処理)を「パス」と呼ぶ。
【0024】
===印刷モードについて===
本実施形態のプリンター1では、3種類の印刷モードを選択可能とする。1つ目の印刷モードは、「モノクロモード」であり、ブラックインクだけを吐出して、即ち、ブラックノズル列Kだけを使用して印刷を行う。モノクロモードは、主にテキスト文書を印刷する際に使用される。2つ目の印刷モードは、「3色カラーモード」であり、3色のカラーインク(イエロー、マゼンタ、シアン)を吐出して、即ち、カラーノズル列Coだけを使用して印刷を行う。3色カラーモードは、主に写真などの画像を印刷する際に使用される。3つ目の印刷モードは、「4色モード」であり、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のインクを吐出して、即ち、ブラックノズル列Kとカラーノズル列Coの両方を使用して印刷を行う。4色モードは主にテキスト文書と画像の両方を印刷する際に使用される。
【0025】
なお、本実施形態のプリンター1では、ブラックノズル列Kから吐出されるブラックインクを「顔料インク」とし、カラーノズル列Coから吐出される3色のカラーインク(YMC)を「染料インク」とする。顔料インクは、滲み難く、ブラックの色味を強く(濃度を濃く)表現できるが、媒体表面に色材が留まるため画像に光沢感がでにくいという性質を有する。そのため、テキスト文書を印刷する際には、ブラックの顔料インクを使用することで、滲みによる文字のつぶれ抑制した、ブラックの濃度の濃い、読み易いテキスト文書を印刷することができる。一方、染料インクは、光沢感のある画像を印刷できるが、滲み易いという性質を有する。そのため、写真などの画像を印刷する際には、染料インクが適する。
【0026】
===各印刷モードの印刷について===
プリンター1に接続されたコンピューター60内のプリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから画像データの印刷指令を受信すると、表示装置(ディスプレイ等)にウィンドウを表示させ、前述の3種類の印刷モード(モノクロモード、3色カラーモード、4色モード)の中の1つの印刷モードをユーザーに選択させる。または、プリンタードライバーが受信した画像データに基づいて印刷モードを決定してもよい。以下、各印刷モードの印刷方法について説明する。
【0027】
<モノクロモード>
図3は、モノクロモードの印刷方法を説明する図である。図中では、説明の簡略のためにノズル数を減らし、ブラックノズル列Kのノズル数を9個とし、カラーの各色インクのノズル数を3個ずつとする。図3の左図のヘッド41では、モノクロモードにおいて印刷に使用する「吐出ノズル」と、印刷に使用しない「不吐出ノズル」を示す。なお、ブラックノズルを黒丸で示し、イエローノズルを白丸で示し、マゼンタノズルを斜線の丸で示し、シアンノズルを三角で示す。モノクロモードでは、図示するように、ブラックノズル列Kに属する全ノズルが吐出ノズルであり、イエロー、マゼンタ、シアンのノズルは不吐出ノズルである。
【0028】
テキスト文書の印刷(モノクロ印刷)では高速印刷が要求されることが多いため、本実施形態では、モノクロモードが選択された場合に、ブラックノズル列Kに属する全ノズル(K#1〜K#9)を使用してバンド印刷を実施する。図3の右図が、バンド印刷の様子を示し、各パスにおけるブラックノズルの位置関係を示す。なお、実際はヘッド41に対して媒体が搬送方向に搬送されるが、図3ではヘッド41(ノズル)の位置を搬送方向にずらしている。また、右図では例えばブラックノズル列Kの最下流側ノズルK#1を「K1」と示す。
【0029】
「バンド印刷」とは、あるパスで形成された移動方向に沿うドット列(以下、ラスターライン)の間に、他のパスのラスターラインが形成されない印刷方法である。つまり、バンド印刷では、搬送方向の印刷解像度がブラックノズル列KのノズルピッチD(例えば180dpi)に相当する。そして、バンド印刷では、ヘッド41が移動方向へ移動しながら画像を形成する動作と、1回のパスで形成された画像幅分だけ媒体が搬送される動作(図3では媒体搬送量が9D)と、が交互に繰り返される。その結果、モノクロモードでは、ブラックのラスターラインがブラックノズル列KのノズルピッチDおきに形成される。
【0030】
このようにモノクロモードでは、ブラックの吐出ノズル数を比較的に多くして、バンド印刷を実施することで、高速印刷を実現する。即ち、モノクロモードでの高速印刷を実現するために、図2に示すノズル配置とし、ブラックノズルの数を、カラーの各インク(YMC)を吐出するノズル数の3倍とする。
【0031】
<3色カラーモード>
図4は、3色カラーモードの印刷方法を説明する図である。3色カラーモードでは、ブラックノズルは不吐出ノズルであり、イエロー、マゼンタ、シアンのノズルが吐出ノズルとなる。3色カラーモードでは、モノクロモード(テキスト文書)に比べて、高速印刷よりも印刷画像の向上が要求されることが多い。そこで、3色カラーモードでは、モノクロモードに比べて、搬送方向の印刷解像度を高くする。ここでは、3色カラーモードの搬送方向の印刷解像度を、モノクロモードの搬送方向の印刷解像度D(例:180dpi)の2倍の解像度(例:360dpi)とする。また、カラーの各色インクを吐出するノズル数(図4では3個)は、モノクロモードでブラックインクを吐出するノズル数(図3では9個)よりも少ない。そのため、3色カラーモードでは、1回の媒体搬送量を1.5Dとする。その結果、例えば、パス1にて2個のシアンノズルC8,C9にて形成されるラスターラインの間に、パス2にてシアンノズルC7にてラスターラインを形成することができる。また、図4の右図に示すように、印刷開始位置よりも搬送方向上流側のノズルでは、移動方向に3種類のカラーノズル(シアンノズル、マゼンタノズル、イエローノズル)が並んでいる。これは、移動方向に並ぶ3種類のカラーノズルによって1つのラスターラインが形成される事を示す。
【0032】
このように3色カラーモードの印刷では、ヘッド41が移動方向へ移動しながら画像を形成する動作と、カラーノズル列CoのノズルピッチDの1.5倍の搬送量1.5Dで媒体を搬送する動作と、が交互に繰り返される。その結果、1つのラスターラインを3種類のカラーノズルで形成することができ、また、モノクロモードよりも3色カラーモードの方が搬送方向の印刷解像度を高くすることができる。ただし、3色カラーモードでは、カラーの各色インクを吐出するノズル数(図4では3個)がモノクロモードでブラックインクを吐出するノズル数(図3では9個)よりも少なく、搬送方向の印刷解像度をモノクロモードよりも高くする。そのため、モノクロモードに比べて3色カラーモードでは1回の媒体搬送量が短く、印刷時間が長くなる。しかし、3色カラーモードではモノクロモードに比べて高速印刷を要求されないため問題はなく、本実施形態のヘッド41のように(図2)、カラーの各色(YMC)のノズル数をブラックのノズル数よりも少なくすることで、ヘッド41の低コスト化、小型化が図れる。
【0033】
<4色モード>
図5は、比較例の4色モードの印刷方法を説明する図である。本実施形態の4色モードの印刷方法を説明する前に、比較例の印刷方法を説明する。前述のように、4色モードでは、カラーインク(YMC)とブラックインク(K)の両方を使用して印刷する。そして、比較例の4色モードの印刷方法では、図5の左図に示すように、カラーノズル列Coの全てのノズル、即ち、イエロー、マゼンタ、シアンノズルのノズルが吐出ノズルとなり、ブラックノズル列Kの搬送方向上流側の1/3のノズル(K#7〜K#9、第3ブラックノズル群K3)が吐出ノズルとなる。そして、ブラックノズル列Kの搬送方向下流側の1/3のノズル(K#1〜K#3、第1ブラックノズル群K1)、及び、ブラックノズル列Kの中央の1/3のノズル(K#4〜K#6、第2ブラックノズル群K2)が不吐出ノズルとなる。即ち、比較例では、カラーの各色インク(YMC)を吐出するノズル数(図5では3個)と、ブラックインクを吐出するノズル数(3個)を等しくする。
【0034】
また、4色モードにおいても3色カラーモードと同様にモノクロモードよりも高画質な画像を印刷するために、4色モードの搬送方向の印刷解像度を、モノクロモードの搬送方向の印刷解像度よりも高くする。ここでは、4色モードの搬送方向の印刷解像度を、モノクロモードの搬送方向の印刷解像度D(例:180dpi)の2倍の解像度(例:360dpi)とする。そのため、比較例の4色モードでは1回の媒体搬送量が1.5Dとなる。その結果、図5の右図に示すように、印刷開始位置よりも搬送方向上流側のノズルでは、移動方向にブラックノズルと3種類のカラーノズルが並んでおり、1つのラスターラインを4色のノズル(YMCK)によって印刷できることが分かる。また、移動方向にブラックの吐出ノズルが1つと3色カラーの吐出ノズルが各々1つずつ並ぶ。そのため、比較例の4色モードでは、各色のラスターラインをそれぞれ1つのノズルで形成することになる。例えば、印刷開始位置の直ぐ上流側のブラックのラスターラインはブラックノズルK8のみによって形成され、シアンのラスターラインはシアンノズルC8のみによって形成され、マゼンタのラスターラインはマゼンタノズルM5のみによって形成され、イエローのラスターラインはイエローノズルY2のみによって形成される。また、比較例の4色モードでは、ブラックノズル列Kに属するノズルのうち、シアンノズル(C7〜C9)に対応するブラックノズル(K7〜K9)を吐出ノズルとするため、媒体上の所定領域に対してシアンのドットが形成されるパスとブラックのドットが形成されるパスとが等しくなる。
【0035】
ところで、ブラックノズルからはブラックの顔料インクが吐出され、カラーノズルからは各色の染料インクが吐出される。通常、顔料インクは媒体表面に色材が留まるが、媒体上の単位領域に対して同時又は短期間に多量の顔料インクが吐出されると、顔料インクの色材(顔料)が媒体内部に沈み込む性質を有する。これは、媒体の単位領域に吐出されるインク量が増えると、媒体内部に浸透するインクの溶媒成分量(例えば水)が増えるので溶媒成分と共に色材が媒体内部に沈み込み易くなったり、色材(顔料)の自重により色材が媒体内部に沈み込み易くなったりするからと考えられる。そのため、媒体上の単位領域に対して同時又は短期間に吐出される顔料インクの量が多いと、色材(顔料)が媒体内部に沈み込み、印刷画像におけるブラックの濃度が低下してしまう。なお、この現象は、媒体内部に顔料成分が沈み込む場合に発生し、特に、媒体として普通紙を使用する場合に発生する。また、染料インクにおいても単位領域あたりに吐出されるインク量が増えると濃度が淡くなる現象がみられるが、染料は元々溶媒に溶け込み易く、媒体内部に浸透するため、顔料インクに比べて濃度が淡くなる度合いが低い。
【0036】
前述のモノクロモード(図3)では、比較例の4色モード(図5)に比べて、搬送方向の印刷解像度が低く、ノズルピッチDおきにラスターラインが形成される。一方、比較例の4色モードでは、あるパスで形成されたラスターライン間に次のパスでラスターラインが形成される。そのため、比較例の4色モードでは、モノクロモードに比べて、短期間に(連続する2回のパス間に)媒体上の単位領域に吐出されるブラックの顔料インクの量が多くなる。即ち、比較例の4色モードでは、媒体上の所定領域(2つのラスターラインが形成される領域)に対して先のパスで顔料インクが吐出された後、先のパスの顔料インクの溶媒が媒体内部に沈み込んだり乾燥したりする前に、その所定領域に対して次のパスにて顔料インクが吐出されてしまう。その結果、比較例の4色モード時にはモノクロモード時に比べて媒体内部に沈み込む顔料(色材)が多くなり、比較例の4色モードで印刷された画像のブラックの濃度が淡くなり、印刷画像が劣化してしまう。特に、ブラックの濃度が低下すると視認され易く、印刷画像の劣化に繋がる。
【0037】
なお、比較例の4色モードでは(図5)、カラーの各色の吐出ノズル数とブラックの吐出ノズル数が同じであり、カラーの各ノズルの印刷方法とブラックノズルの印刷方法は同じである(先のパスで形成したラスターライン間に次のパスでラスターラインが形成される)。即ち、カラーの染料インクもブラックの顔料インクと同様に、短期間に(連続する2回のパス間に)媒体上の単位領域に吐出されるカラーの染料インクの量が多い。ただし、染料インクは顔料インクに比べて、短期間に媒体上の単位領域に対して吐出されるインク量が多くとも、濃度が淡くなる度合いが低いため、問題はない。
【0038】
また、顔料のブラックインクは文字を印刷する際に使用されることが多く、顔料のブラックインクが滲んでしまうと、文字がつぶれて、文字を判別することが難しくなってしまう。顔料インクは染料インクに比べて滲み難いとはいえ、媒体上の単位領域に短期間に吐出される顔料インク量が増えれば、画像が滲み易くなる。そのため、比較例の4色モードの印刷(図5)では、モノクロモードの印刷(図3)に比べて、ブラックインクが滲み、文字を判別することが難しくなる虞がある。
【0039】
つまり、媒体上の単位領域に短期間に吐出されるブラックの顔料インク量が増えると、媒体内部に顔料成分(色材)が沈み込み、ブラックの濃度が淡く、画像が滲みやすくなるため、印刷画像の画質が劣化してしまう。そこで、本実施形態では、染料のカラーインクと顔料のブラックインクの両方を使用して印刷する際に(4色モードにおいて)、媒体上の単位領域に短期間に吐出するブラックの顔料インク量を抑え、印刷画像の画質劣化を抑制することを目的とする。
【0040】
図6は、本実施形態の4色モードの印刷方法を説明する図である。本実施形態の4色モードの印刷方法では、図6の左図に示すように、カラーノズル列Coの全てのノズル、即ち、イエロー、マゼンタ、シアンのノズルを吐出ノズルとし、ブラックノズル列Kのうちの搬送方向下流側の1/3のノズル(K#1〜K#3、第1ブラックノズル群K1)と搬送方向上流側の1/3のノズル(K#7〜K#9)を吐出ノズルとする。そして、ブラックノズル列Kの搬送方向中央の1/3のノズル(K#4〜k#6)を不吐出ノズルとする。即ち、本実施形態の4色モードの印刷では(図6)、ブラックインクを吐出するノズル数(図6では6個)を、カラーの各色インクを吐出するノズル数(図6では3個)よりも多くする。更に、ブラックノズル列Kにおいて、吐出ノズルの間(K#1〜K#3とK#7〜K#9)に不吐出ノズル(K#4〜K#6)を設ける。
【0041】
なお、本実施形態のプリンター1では、3種類の印刷モードを選択可能とし、印刷モードに応じて、ブラックノズル列Kの吐出ノズルおよび不吐出ノズルが異なる(図3,図4,図6)。そのため、プリンタードライバーが印刷モードに応じて吐出ノズルに印刷データを割り当てるようにしてもよいし、プリンター1のコントローラー10が印刷モードに応じて吐出ノズルに印刷データを割り当てるようにしてもよい。
【0042】
また、本実施形態の4色モードでは3色カラーモードと同様に搬送方向の印刷解像度を、モノクロモードの搬送方向の印刷解像度D(例:180dpi)の2倍の解像度(例:360dpi)とする。そのため、1回の媒体搬送量がブラックノズル列KのノズルピッチDの1.5倍の長さとなる。その結果、図6の右図に示すように、印刷開始位置よりも搬送方向上流側のノズルでは、移動方向に、ブラックの吐出ノズルが2つと3色カラーの吐出ノズルが各々1つずつ並ぶ。即ち、本実施形態の4色モードでは、1つのラスターラインが形成される媒体上の領域(以下、列領域と呼ぶ)に対して、ブラックの吐出ノズルが2つと3色カラーの吐出ノズルが各々1つずつ対応付けられる。例えば、印刷開始位置の直ぐ上流側の列領域には、パス1のブラックノズルK8とシアンノズルC8と、パス3のマゼンタノズルM5と、パス5のブラックノズルK2とイエローノズルY2が対応付けられる。
【0043】
つまり、比較例の4色モード(図5)ではブラックのラスターラインを1つのノズル(1回のパス)で印刷するのに対して、本実施形態の4色モード(図6)ではブラックのラスターラインを2つのノズルで(2回のパスに分けて)印刷する。なお、3色カラーの各ラスターライン(YMC)は、本実施形態の4色モードにおいても比較例の4色モードと同様に、各色の1つのノズル(1回のパス)で印刷する。
【0044】
ここで、1つのドットが形成される媒体上の領域を画素領域とし、1つの列領域は移動方向に並ぶ複数の画素領域から構成されるとする。本実施形態の4色モードでは、1つの列領域に対して3色カラーの吐出ノズルが色ごとに1つずつ対応付けられる。そのため、3色カラーの各吐出ノズルには1つの列領域に属する全画素領域が割り当てることになる。例えば、印刷データが、ある列領域に属する全画素領域にイエローのドットを形成するように指示している場合、その列領域に対応付けられた1つのイエローノズルが全画素領域にドットを形成することになる。一方、1つの列領域に対してブラックの吐出ノズルは2つ対応付けられる。そのため、ある列領域に対応付けられた2つのブラックノズルのうちの一方のブラックノズルに、その列領域に属する画素領域のうちの一部の画素領域を割り当て(例えば1個おきの画素領域を割り当て)、他方のブラックノズルに残りの画素領域を割り当てることになる。
【0045】
そのため、本実施形態の4色モード(図6)と比較例の4色モード(図5)では搬送方向の印刷解像度が同じであるが、比較例では1つのブラックのラスターラインが1回のパスで形成されるのに対して、本実施形態では1つのブラックのラスターラインが2回のパスで形成される。よって、本実施形態の方が比較例に比べて、媒体上の単位領域に短期間に吐出される顔料インク量が少ない。具体的には、比較例(図5)では、連続する2回のパス(例えばパス1とパス2)で搬送方向に並ぶ2つのラスターラインが形成されるのに対して、本実施形態(図6)では、連続する2回のパス(例えばパス1とパス2)で搬送方向に並ぶ2つのラスターラインの一部のドットが形成される。そして、所定時間経過後の連続する2回のパス(例えばパス5とパス6)で搬送方向に並ぶ2つのラスターラインの残りのドットが形成される。このように本実施形態では比較例に比べて、媒体上の単位領域に短期間に吐出されるブラックの顔料インク量を少なくすることができるため、顔料成分(色材)が媒体内部に沈み込んでしまうことを抑制でき、ブラックの濃度が淡くなってしまうことを抑制できる。その結果、本実施形態の4色モードでは比較例の4色モードに比べて、ブラックの濃度の濃い高画質な画像を印刷することができる。
【0046】
以上をまとめると、本実施形態では、カラーの各色インクを吐出するノズル数(図6では3個)よりもブラックインクを吐出するノズル数(図6では6個)を増やし、カラーの各色のラスターラインを形成するノズル数(1個)およびパス数(1回)よりも、ブラックのラスターラインを形成するノズル数(2個)およびパス数(2回)を多くする。そうすることで、本実施形態では比較例に比べて、媒体上の単位領域に短期間に吐出されるブラックの顔料インク量を減らすことができ、ブラックの濃度が淡くなってしまうことを抑制できる。また、ブラックの画像が滲んでしまうことを抑制できる。
【0047】
なお、図6に示すように、顔料ブラックインクとシアンインク、および、顔料ブラックインクとイエローインクは、同じパスで同じ列領域に対して吐出される。ただし、ブラックインクとカラーインクが同じ画素領域に重ねて吐出されたり近傍領域に吐出されたりすることは少ない。そのため、媒体上の或る領域が、例えば、ブラックノズル列Kの吐出ノズルとシアンノズル列Cの吐出ノズルと同時に対向したとしても、ブラックの顔料インクがシアンの染料インクの影響を受けることは少なく、顔料の沈み込みを抑制することができる。また、比較例では1つのブラックノズルで1つのラスターラインを形成するため、そのノズルの特性の影響を受け易いが、本実施形態では2つのブラックノズルで1つのラスターラインを形成するため、ノズルの特性差を緩和することができる。
【0048】
更に、本実施形態では、ブラックノズル列Kにおいて、搬送方向下流側の第1ブラックノズル群K1(図6ではK#1〜K#3・第1ノズル群に相当)と搬送方向上流側の第3ブラックノズル群K3(K#7〜K#9・第3ノズル群に相当)を吐出ノズルとし、その間の第2ブラックノズル群K2(K#4〜K#6)を不吐出ノズルとする(第1ノズル群と第2ノズル群の間のノズルからはインクを吐出しない)。図6の右図に示すように、例えば、印刷開始位置の直ぐ上流側の列領域は、まずパス1にて、第3ブラックノズル群K3のノズルK8とシアンノズルC8と対向し、次にパス3にて、第2ブラックノズル群K2のノズルK5とマゼンタノズルM5と対向し、最後にパス5にて、第1ブラックノズル群K1のノズルK2とイエローノズルY2と対向する。そのため、パス1のブラックノズルK8とパス3のブラックノズルK5の2つのノズルでもラスターラインを形成できるところを、本実施形態では、パス1のブラックノズルK8とパス5のブラックノズルK2でラスターラインを形成する。そうすることで、本実施形態では、1つのラスターラインを形成するために顔料ブラックインクを吐出する時間間隔を出来る限り長くする。その結果、後のパス5にてブラックの顔料インクが吐出されるまでに、先のパス1にて吐出されたブラックの顔料インクの乾燥が進むため、先のパス1にて吐出されたブラックの顔料インクが後のパス5にて吐出されるブラックの顔料インクに影響を及ぼしてしまうことを抑制でき、後のパスで吐出されたブラックの顔料インクの色材が媒体内部に沈み込んでしまうことをより抑制できる。その結果、ブラックの濃度をより濃く印刷することができる。
【0049】
つまり、本実施形態では、ブラックノズル列Kにおいて、2つの吐出ノズル群(第1ブラックノズル群K1と第3ブラックノズル群K3)の間に、不吐出ノズル群(第2ブラックノズル群K2)を設ける。そうして、ブラックの1つのラスターラインを複数のパスで印刷する際に、先のパスで顔料のブラックインクを吐出してから、次に顔料のブラックインクを吐出するまでの時間を出来る限り長く確保する。その結果、媒体内部への顔料成分(色材)の沈み込みや顔料ブラックインクの滲みを抑制できる。
【0050】
また、本実施形態のヘッド41は(図2)、3色のカラーノズル群が搬送方向に並んでおり、各カラーノズル群(YMC)と3つのブラックノズル群(K1〜K3)が対応している。そして、1つの列領域に対して、3色のカラーノズル群(YMC)にそれぞれ属するノズルが必ず対応付けられるため、1つの列領域は3つのブラックノズル群(K1〜K3)にそれぞれ属する3つのブラックノズルと対向することになる。そこで、イエローノズル群Yに対応する第1ブラックノズル群K1に属するノズル、及び、シアンノズル群Cに対応する第3ブラックノズル群K3に属するノズルを「吐出ノズル」とし、マゼンタノズル群Mに対応する第2ブラックノズル群K2に属するノズルを「不吐出ノズル」とする。つまり、カラーの各色インクを吐出するノズル群(YMC)が3つ以上である場合、搬送方向上流側および下流側に位置する2つのカラーノズル群にそれぞれ対応する2つのブラックノズル群を「吐出ノズル」とし、搬送方向中央に位置するカラーノズル群に対応するブラックノズル群を「不吐出ノズル」に設定するとよい。そうすることで、全ての列領域が2つの吐出ノズルと対向する間に1つの不吐出ノズルと対向することができ、2回に分けて吐出される顔料ブラックインクの乾燥時間を出来る限り長く確保することができる。
【0051】
また、ノズルは長時間使用しないとノズル周辺のインクが増粘し、吐出不良を起こす虞がある。そのため、ノズルを長時間使用しなかった場合には、ノズルのクリーニング(例えば、フラッシング)を実施する必要がある。比較例の4色モードの印刷では(図5)、3つのブラックノズル群K1〜K3のうち、1つのブラックノズル群K3(K#7〜K#9)しか使用しないため、2つのブラックノズル群K1,K2に対してクリーニングを実施しなければならない。これに対して、本実施形態の4色モードの印刷では(図6)、3つのブラックノズル群K1〜K3のうち、2つのブラックノズル群K1,K3(K#1〜K#3とK#7〜K#9)を使用するため、1つのブラックノズル群K2に対してのみクリーニングを実施すればよい。このように本実施形態では比較例に比べてクリーニングを実施するノズル数を減らすことができ、印刷以外に使用されるインク消費量を削減することができる。
【0052】
===変形例===
図7は、変形例の印刷方法を説明する図である。ここまで、カラーのインク数を3色とし、カラーの3つのノズル群(YMC)が搬送方向に並んだカラーノズル列Coを例に挙げているが、これに限らない。例えば、イエロー、マゼンタ、シアンの他に、グリーンGやオレンジO、(又はライトマゼンタLm、ライトシアンLc)を吐出するプリンターがある。図7は、5色のカラーインクをそれぞれ吐出するノズル群(YMC,O,G)が搬送方向に並んだカラーノズル列Coと、それに対応するブラックノズル列Kによる印刷例を示す。即ち、図7では、ブラックノズル列Kに属するノズル数が、カラーの各色インクのノズル数の5倍のノズル数に相当する。
【0053】
図7では、搬送方向最下流側のイエローノズル群Yに対応するブラックノズル(K1〜K3)と搬送方向中央部のシアンノズル群Cに対応するブラックノズル(K7〜K9)と搬送方向最上流側のグリーンノズル群Gに対応するブラックノズル(K13〜K15)を吐出ノズルとし、その間の、マゼンタノズル群Mに対応するブラックノズル(K4〜K6)とオレンジOに対応するブラックノズル(K10〜K12)を不吐出ノズルとする。その結果、図中の太枠内のノズルの並びで示すように、ブラックの顔料インクが3回に分けて吐出され、1つのラスターラインが形成される。また、ブラックの顔料インクが吐出される間に3回のパスが設けられ、この間に先に吐出されたブラックの顔料インクを乾燥させることができる。即ち、媒体上の単位領域に短期間に吐出されるブラックの顔料インク量を減らすことができ、媒体内部への顔料の沈み込みや顔料インクの滲みを抑制できる。
【0054】
ただし、これに限らず、例えば、搬送方向最下流側のイエローノズル群Yに対応するブラックノズル(K1〜K3)と搬送方向最上流側のグリーンノズル群Gに対応するブラックノズル(K13〜K15)を吐出ノズルとし、その間のブラックノズル(K4〜K12)を不吐出ノズルとしても良い。
【0055】
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてインクジェットプリンターを有する印刷システムについて記載されているが、印刷方法等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0056】
<ノズル配列について>
前述の実施形態のヘッド41では(図2)、ブラックノズル列Kのノズルとカラーノズル列Coのノズルの搬送方向の位置が等しいが、これに限らない。例えば、ブラックノズル列Kのノズルとカラーノズル列Coのノズルを、搬送方向に例えばノズルピッチDの半分の長さをずらしてもよい。この場合、ブラックのドット列とカラーのドット列が搬送方向に半ノズルピッチ(D/2)ずれて形成される。ブラックインクとカラーインクが重ねて形成されることは少ないが、例えば、ブラックのドットとカラーのドットが移動方向に隣り合って形成されるとする。このとき、ブラックノズル列Kとカラーノズル列Coが半ノズルピッチ(D/2)ずれていれば、ブラックのドットとカラーのドットは移動方向にも搬送方向にもずれることになり、お互いに影響を及ぼし難くなる。即ち、カラーの染料インクが媒体内部に浸透したり媒体表面に濡れ広がったりする際に、ブラックの顔料成分が影響を受けて媒体内部に沈み込んだり媒体表面に広がったりすることを防止でき、ブラックの濃度を濃く印刷することができる。なお、ブラックノズル列Kとカラーノズル列Coが搬送方向にノズルピッチよりも狭い範囲で(例えば半ノズルピッチ)ずれている場合にも、イエローノズル群Yと第1ブラックノズル群K1の搬送方向の位置が等しく、マゼンタノズル群Mと第2ブラックノズル群K2の搬送方向の位置が等しく、シアンノズル群Cと第3ブラックノズル群K3の搬送方向の位置が等しいと言える。また、ヘッド41内のノズル配置において、ブラックインクのノズルを1つのノズル列にするに限らず、他の色インクのノズルを1つのノズル列にしてもよい。
【0057】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、ヘッド41を移動方向に移動しながら画像を形成する動作と媒体を搬送方向に搬送する動作を繰り返すプリンター1を例に挙げているが、これに限らない。例えば、印刷領域に搬送された連続用紙に対して、連続用紙の搬送方向に沿ってヘッドを移動しながら画像を形成する動作と、搬送方向と交差する紙幅方向にヘッドを移動する動作を繰り返し、画像を完成させ、その後、未だ画像が印刷されていない媒体部分を印刷領域に搬送するプリンターであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、
50 検出器群、60 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1の色インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列と、
(B)前記第1ノズル列と前記所定方向と交差する移動方向に並ぶ第2ノズル列であって、前記第1の色とは異なる複数色のインクを吐出するノズルが同色のインクを吐出する前記ノズルごとに前記所定方向に並ぶ第2ノズル列と、
(C)前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を前記移動方向に移動させながら前記ノズルからインクを吐出させる吐出動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる動作とを、繰り返す制御部と、
(D)を有し、
(E)前記第1ノズル列に属する前記ノズルの数が、前記第2ノズル列に属する前記ノズルのうちの各色インクを吐出する前記ノズルの数よりも多く、
前記移動方向に沿うドット列を形成する前記第1ノズル列の前記ノズルの数が、前記移動方向に沿うドット列を形成する前記第2ノズル列のうちの各色インクを吐出する前記ノズルの数よりも多く、
前記第1ノズル列に属する前記ノズルのうち、ある前記吐出動作において前記移動方向に沿う複数のドット列を形成する複数の前記ノズルであって各前記ドット列の一部を形成する複数の前記ノズルである第1ノズル群と、別の前記吐出動作において前記複数のドット列を形成する複数の前記ノズルであり各前記ドット列の別の一部を形成する複数の前記ノズルであって前記第1ノズル群よりも前記所定方向の前記一の方向側に位置する第2ノズル群と、の間の前記ノズルからはインクが吐出されない、
(F)ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記第2ノズル列では、前記所定方向の前記一の方向側から順に、第2の色インクを吐出するノズルが前記所定方向に並ぶ第3ノズル群と、第3の色インクを吐出するノズルが前記所定方向に並ぶ第4ノズル群と、第4の色インクを吐出するノズルが前記所定方向に並ぶ第5ノズル群と、が並び、
前記第3ノズル群は、前記第2ノズル群と前記所定方向の位置が等しく、
前記第4ノズル群は、前記第1ノズル列に属する前記ノズルのうちの前記第1ノズル群と前記第2ノズル群の間の前記ノズルと前記所定方向の位置が等しく、
前記第5ノズル群は、前記第1ノズル群と前記所定方向の位置が等しい、
印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置であって、
前記第1の色インクは、ブラックの顔料インクである、
印刷装置。
【請求項4】
第1の色インクを吐出するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列、及び、前記第1ノズル列と前記所定方向と交差する移動方向に並ぶ第2ノズル列であって、前記第1の色とは異なる複数色のインクを吐出するノズルが同色のインクを吐出するノズルごとに前記所定方向に並ぶ第2ノズル列を、前記移動方向に移動させながら前記ノズルからインクを吐出させる吐出動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と媒体との相対位置を前記所定方向の一の方向に相対移動させる動作とを、繰り返す印刷装置の印刷方法であって、
前記第1ノズル列に属する前記ノズルの数が、前記第2ノズル列に属する前記ノズルのうちの各色インクを吐出する前記ノズルの数よりも多く、
前記移動方向に沿うドット列を形成する前記第1ノズル列の前記ノズルの数を、前記移動方向に沿うドット列を形成する前記第2ノズル列のうちの各色インクを吐出する前記ノズルの数よりも多くし、
前記第1ノズル列に属する前記ノズルのうち、ある前記吐出動作において前記移動方向に沿う複数のドット列を形成する複数の前記ノズルであって各前記ドット列の一部を形成する複数の前記ノズルである第1ノズル群と、別の前記吐出動作において前記複数のドット列を形成する複数の前記ノズルであり各前記ドット列の別の一部を形成する複数の前記ノズルであって前記第1ノズル群よりも前記所定方向の前記一の方向側に位置する第2ノズル群と、の間の前記ノズルからはインクを吐出しない、
ことを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−104788(P2011−104788A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259180(P2009−259180)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】