説明

印刷装置および印刷システム

【課題】連続紙が外乱を受けた場合であっても、連続紙と非接触の状態で印刷を行う印刷部に対して連続紙を適切に搬送することができる印刷装置および印刷システムを提供する。
【解決手段】印刷装置1は、連続紙3と非接触の状態で連続紙3に印刷する印刷部27と、印刷部27の上流側に設けられる基軸駆動ローラ10および第2駆動ローラ12と、印刷部27の下流側に設けられる第1駆動ローラ11と、基軸駆動ローラ10および第1駆動ローラ11の間に設けられ、連続紙3の張力を検出する第1検出部31と、基軸駆動ローラ10および第1駆動ローラ11の上流側であって第2駆動ローラ12の下流側に設けられ、連続紙3の張力を検出する第2検出部32と、第1検出部31の検出結果に基づいて第1駆動ローラ11の回転速度を可変し、第2検出部の検出結果に基づいて第2駆動ローラ12の回転速度を可変する制御部37と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷装置および印刷システムに係り、特に、連続紙を搬送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、駆動ローラと張力検出部と制御部と印刷部とを備えた印刷装置がある。駆動ローラは連続紙を送る。張力検出部は連続紙の張力を検出する。制御部は、張力検出部の検出結果に基づいて駆動ローラの回転速度を可変する。印刷部は連続紙に印刷する(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
例えば、特許文献1では、印刷部は、輪転印刷機を有し、この輪転印刷機を連続紙と接触させた状態で印刷を行う。印刷部の上流側には単一の駆動ローラが設けられている。制御部がこの駆動ローラを制御することにより、印刷部(輪転印刷機)と駆動ローラとの間において、連続紙に適切なテンションが与えられる。この結果、連続紙は適切に張られた状態で搬送される。
【0004】
特許文献2には、2つの印刷部とこれら印刷部同士の間に反転部を備えた、いわゆる印刷システムが開示されている。印刷部は、インクジェット方式であり、非接触の状態で連続紙に印刷を行う。各印刷部の上流側および下流側には、駆動ローラが1つずつ配置されている。これらの駆動ローラの回転速度を制御部が調整することにより、隣接する駆動ローラ同士の間において、連続紙に適切なテンションが与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−60104号公報
【特許文献2】特開2007−69455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、印刷装置または印刷紙システムの上流側には、巻出し装置や塗布装置などの外部装置が設けられている。外部装置は連続紙に外乱を与える場合がある。連続紙が外乱を受けると、連続紙のテンションや速度が変動する。本明細書では、連続紙のテンションの変動や速度の変動を適宜に「連続紙の変動」という。連続紙の変動は、駆動ローラの前後で弱められるが、単一の駆動ローラだけで連続紙の変動を十分に遮断することは困難である。このため、連続紙の変動は駆動ローラの下流側における連続紙に伝わり、連続紙は変動した状態で印刷部に搬送される。
【0007】
ただし、特許文献1のように印刷部が連続紙と接触する場合には、連続紙が変動していてもあまり問題とならない。印刷部自体が連続紙を保持(挟持)し、連続紙の変動を抑えるからである。したがって、連続紙が外乱を受けた場合であっても、印刷部が印刷を行う連続紙は、変動が抑制された状態にある。
【0008】
これに対し、特許文献2のように印刷部が連続紙と接触しない場合、連続紙は変動したまま印刷部を通過する。すなわち、印刷部が印刷を行う連続紙は、変動している状態にある。このため、適切に印刷することが困難であるという不都合が生じる。
【0009】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、連続紙が外乱を受けた場合であっても、連続紙と非接触の状態で印刷を行う印刷部に対して連続紙を適切に搬送することができる印刷装置および印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明の印刷装置は、連続紙と非接触の状態で連続紙に印刷する印刷部と、前記印刷部の上流側もしくは下流側の一方に設けられ、連続紙を搬送する基軸駆動ローラと、前記印刷部の上流側もしくは下流側の他方に設けられ、連続紙を搬送する第1駆動ローラと、前記基軸駆動ローラおよび前記第1駆動ローラの上流側に設けられ、連続紙を搬送する第2駆動ローラと、前記基軸駆動ローラおよび前記第1駆動ローラの間に設けられ、連続紙の張力を検出する第1検出部と、前記基軸駆動ローラおよび前記第1駆動ローラの上流側であって前記第2駆動ローラの下流側に設けられ、連続紙の張力を検出する第2検出部と、前記第1検出部の検出結果に基づいて前記第1駆動ローラの回転速度を可変し、前記第2検出部の検出結果に基づいて前記第2駆動ローラの回転速度を可変する制御部と、を備える印刷装置である。
【0011】
[作用・効果]本発明に係る印刷装置によれば、基軸駆動ローラ、第1駆動ローラおよび第2駆動ローラは、それぞれ連続紙を上流側から下流側に搬送する。印刷部は搬送される連続紙と接触することなく連続紙に印刷する。
【0012】
印刷部の上流側には駆動ローラが少なくとも2つ設けられている。2つの駆動ローラとは、基軸駆動ローラ及び第1駆動ローラのいずれか一方と第2駆動ローラのことである。これら2つの駆動ローラによって連続紙の変動を十分弱めることができる。
【0013】
ここで、印刷部の上流側に設けられる2つの駆動ローラによって画定される搬送区間を「上流側搬送区間」と呼び、基軸駆動ローラと第1駆動ローラによって画定される搬送区間を「印刷用搬送区間」と呼ぶ。
【0014】
第1検出部は印刷用搬送区間における連続紙の張力を検出し、第2検出部は上流側搬送区間における連続紙の張力を検出する。制御部は、第1検出部の検出結果に基づいて第1駆動ローラの回転速度を可変し、印刷用搬送区間における連続紙の張力を調整する。また、制御部は、第2検出部の検出結果に基づいて第2駆動ローラの回転速度を可変し、上流側搬送区間における連続紙の張力を調整する。これにより、連続紙の変動を一層抑制することができる。
【0015】
以上のとおり、駆動ローラの配置と制御部による制御によって、連続紙の変動を好適に抑制することができる。このため、第2駆動ローラの上流側(すなわち、上流側搬送区間の上流側)において連続紙が外乱を受けた場合であっても、印刷部に対して連続紙を適切に搬送することができる。すなわち、印刷部は連続紙と接触しないにも関わらず、印刷部が印刷を行う連続紙は、変動が抑制された状態に保たれている。よって、印刷部は適切に連続紙を印刷することができる。
【0016】
上述した発明において、前記基軸駆動ローラは前記印刷部の上流側に設けられ、前記第1駆動ローラは前記印刷部の下流側に設けられていることが好ましい。これによれば、第1検出部の検出結果に応じて回転速度が可変する第1駆動ローラは、印刷部の上流側ではなく、印刷部の下流側に配置されている。このため、印刷用搬送区間における連続紙の速度をより安定させることができる。
【0017】
上述した発明において、前記制御部は、前記第1検出部によって検出される連続紙の張力が一定となるように前記第1駆動ローラを制御し、前記第2検出部によって検出される連続紙の張力が一定となるように前記第2駆動ローラを制御することが好ましい。これによれば、安定的な連続紙の搬送を実現することができる。
【0018】
上述した発明において、前記制御部は、前記第2検出部によって検出される連続紙の張力が前記第1検出部によって検出される連続紙の張力に比べて高くなるように、前記第1駆動ローラおよび前記第2駆動ローラを制御することが好ましい。換言すれば、制御部は上流側搬送区間の方が印刷用搬送区間に比べて連続紙の張力が大きくなるように制御する。これによれば、連続紙の変動が上流側搬送区間から印刷用搬送区間に伝わることを一層防止することができる。
【0019】
上述した発明において、さらに、前記基軸駆動ローラおよび前記第1駆動ローラの下流側に設けられ、連続紙を搬送する第3駆動ローラと、前記基軸駆動ローラおよび前記第1駆動ローラの下流側であって前記第3駆動ローラの上流側に設けられ、連続紙の張力を検出する第3検出部と、を備え、前記制御部は、前記第3検出部の検出結果に基づいて前記第3駆動ローラの回転速度を可変することが好ましい。
【0020】
これによれば、印刷部の下流側に駆動ローラが少なくとも2つ設けられている。よって、印刷部の下流側においても、これら2つの駆動ローラによって連続紙の変動を好適に弱めることができる。なお、2つの駆動ローラとは、基軸駆動ローラ及び第1駆動ローラの他方と、第3駆動ローラのことである。
【0021】
ここで、印刷部の下流側に設けられる2つの駆動ローラによって画定される搬送区間を「下流側搬送区間」と呼ぶ。第3検出部は、下流側搬送区間における連続紙の張力を検出する。制御部は、第3検出部の検出結果に基づいて第3駆動ローラの回転速度を可変し、下流側搬送区間における連続紙の張力を調整する。これにより、下流側搬送区間のさらに下流側においても、連続紙の変動を一層抑制することができる。
【0022】
以上のとおり、駆動ローラの配置と制御部による制御により、第3駆動ローラの下流側(すなわち、下流側搬送区間の下流側)において連続紙が外乱を受けた場合であっても、印刷部に対して連続紙を適切に搬送することができる。よって、印刷部は適切に連続紙を印刷することができる。
【0023】
上述した発明において、前記制御部は、前記第3検出部によって検出される連続紙の張力が一定となるように前記第3駆動ローラを制御することが好ましい。これによれば、安定的な連続紙の搬送を実現することができる。
【0024】
上述した発明において、前記制御部は、前記第3検出部によって検出される連続紙の張力が前記第1検出部によって検出される連続紙の張力に比べて高くなるように、前記第1駆動ローラおよび前記第3駆動ローラを制御することが好ましい。換言すれば、制御部は下流側搬送区間の方が印刷用搬送区間に比べて連続紙の張力が大きくなるように制御する。これによれば、下流側搬送区間から印刷用搬送区間に連続紙の変動が伝わることを一層防止することができる。
【0025】
上述した発明において、さらに、前記基軸駆動ローラと前記印刷部との間に設けられ、連続紙の速度を検出する速度検出部を備え、前記印刷部は前記速度検出部の検出結果に応じたタイミングで印刷を行うことが好ましい。速度検出部は、第1駆動ローラよりもむしろ基軸駆動ローラに近い位置に配置されている。よって、速度検出部が検出する連続紙の速度は比較的に安定している。印刷部はこのような速度検出部の検出結果に応じたタイミングで印刷するので、印刷の精度を一層向上させることができる。
【0026】
上述した発明において、前記印刷部は、インクジェット方式で印刷することが好ましい。これによれば、インクジェット印刷装置を好適に実現することができる。
【0027】
上述した発明において、前記制御部は、前記基軸駆動ローラの回転速度を一定に調整することが好ましい。これによれば、連続紙が印刷部を通過する速度を一層安定させることができる。
【0028】
また、本発明の印刷システムは、上述した印刷装置を複数備えて、各印刷装置は互いに連続紙を受け渡しつつ、連続紙に印刷する印刷システムにおいて、さらに、隣接する少なくとも1対の前記印刷装置の間における連続紙の張力を検出する装置間検出部を備え、前記装置間検出部の下流側に隣接する前記印刷装置内の前記制御部は、前記装置間検出部の検出結果に基づいて、当該印刷装置内の前記基軸駆動ローラ、前記第1駆動ローラ、および、前記第2駆動ローラの各回転速度をそれぞれ同量ずつ増減させる一律制御を行う印刷システムである。
【0029】
[作用・効果]本発明に係る印刷システムによれば、連続紙は複数の印刷装置に順次、搬送され、各印刷装置において印刷される。ここで、印刷装置と印刷装置との間の搬送区間を、「装置間搬送区間」と呼ぶ。装置間検出部は、少なくともいずれかの装置間搬送区間において連続紙の張力を検出する。
【0030】
装置間検出部の下流側に隣接する印刷装置内の各構成は、次のように動作する。制御部は、第1検出部の検出結果に基づく第1駆動ローラの制御および第2検出部の検出結果に基づく第2駆動ローラの制御のほかに、装置間検出部の検出結果に基づいて一律制御を行う。ここで、一律制御は、各駆動ローラの回転速度を同量ずつ増加または減少させることをいう。この一律制御により、連続紙の速度が上流側搬送区間および印刷用搬送区間にわたって一様に増加または減少する。ただし、各駆動ローラ間の回転速度の差は変わらないので、上流側搬送区間および印刷用搬送区間における連続紙の張力はそれぞれ変わらない。すなわち、一律制御が行われると、連続紙の張力は略一定に保たれたまま、連続紙の速度のみが全体的に変化する。このような一律制御によれば、装置間搬送区間において連続紙が外乱を受けても、印刷装置内においては連続紙の変動を抑制することができる。したがって、印刷部は適切に連続紙を印刷することができる。
【0031】
上述した発明において、前記装置間検出部の下流側に隣接する前記印刷装置内の前記制御部は、前記装置間検出部によって検出された連続紙の張力が閾値以下であるときは前記一律制御を行わず、前記装置間検出部によって検出された連続紙の張力が前記閾値を超えたときに前記一律制御を行うことが好ましい。これによれば、装置間検出部の下流側に隣接する印刷装置内の各構成は、次のように動作する。
【0032】
装置間検出部の検出結果が閾値以下であるときは、装置間搬送区間において連続紙が受ける外乱は比較的に小さいと言える。この場合、制御部は一律制御を行わない。一律制御を行わなくても、印刷部の上流側に設けられる少なくとも2つの駆動ローラによって連続紙の変動を抑制できる。なおかつ、制御部が第1、第2検出部の各検出結果に基づいて第1、第2駆動ローラをそれぞれ制御することにより、連続紙の変動をさらに抑制できる。このように、装置間搬送区間において連続紙が比較的に小さな外乱を受けた場合は、一律制御を行わなくても連続紙の変動を好適に抑制できる。これにより、一律制御を行う頻度を低減でき、連続紙の搬送が却って不安定になるおそれがない。
【0033】
他方、装置間検出部の検出結果が閾値を超えたときは、装置間搬送区間において連続紙が受ける外乱は比較的に大きいと言える。この場合、制御部は一律制御を行う。これにより、装置間搬送区間において連続紙が比較的に大きな外乱を受けた場合は、連続紙の変動を効果的に抑制することができる。
【0034】
以上のとおり、装置間搬送区間において連続紙が受ける外乱の大きさに応じて、制御部は一律制御を選択的に行う。これにより、連続紙の適切な搬送を常に実現することができる。
【0035】
上述した発明において、前記装置間検出部の下流側に隣接する前記印刷装置内の前記制御部は、前記第1検出部の検出結果に基づいて前記第1駆動ローラの回転速度を可変する個別制御、および、前記第2検出部の検出結果に基づいて前記第2駆動ローラの回転速度を可変する個別制御に比べて、前記一律制御を緩やかに行うことが好ましい。これによれば、装置間検出部の下流側に隣接する印刷装置内の各構成は、次のように動作する。
【0036】
制御部は、個別制御に比べて一律制御を緩やかに行う。ここで、「緩やかに」とは、個別制御に比べて一律制御では不感時間を長くすることや、個別制御に比べて一律制御では回転速度の単位時間当たりの変化率を小さくすることなどが例示される。そして、一律制御における不感時間を比較的長くすれば、一律制御の頻度を低減できる。また、一律制御における駆動ローラの回転速度の変化率を比較的小さくすれば、連続紙の速度が急峻に変化することを防止することができる。このように、一律制御は個別制御に比べて緩やかに行われるので、印刷装置内における連続紙の搬送が不安定になることを好適に防止できる。
【0037】
反対に、制御部は、一律制御に比べて個別制御を比較的速やかに行う。これにより、印刷用搬送区間または/および上流側搬送区間において連続紙の張力が変動しても、張力の変動を比較的速やかに打ち消すことができる。
【0038】
上述した発明において、前記装置間検出部の下流側に隣接する前記印刷装置内の前記制御部は、前記一律制御の場合には、前記基軸駆動ローラ、前記第1駆動ローラおよび前記第2駆動ローラの各回転速度を段階的に増減させることが好ましい。これによれば、装置間検出部の下流側に隣接する印刷装置内では、連続紙の速度が急激に変化することがないので、連続紙の搬送が不安定になることを好適に回避できる。
【0039】
上述した発明において、さらに、印刷装置同士の間に設けられ、連続紙を反転させる反転部を備え、前記装置間検出部は、前記反転部と、この反転部の下流側に隣接する前記印刷装置との間に設けられていることが好ましい。これによれば、装置間検出部は少なくとも反転部に付随して設けられている。よって、反転部が連続紙に外乱を与えた場合であっても、各印刷装置は適切に印刷を行うことができる。
【0040】
なお、本明細書は、次のような印刷装置および印刷システムに係る発明も開示している。
【0041】
(1)上述した発明に係る印刷装置において、前記制御部は、前記第1検出部及び前記第2検出部の各検出結果と関係なく前記基軸駆動ローラの回転速度を調整する印刷装置。
【0042】
前記(1)に記載の各発明によれば、印刷用搬送区間における連続紙の速度を安定させることができる。
【0043】
(2)上述した発明に係る印刷装置において、前記基軸駆動ローラおよび前記第1駆動ローラは、それぞれ前記印刷部に近接している印刷装置。
【0044】
前記(2)に記載の発明によれば、印刷用搬送区間を比較的に短くすることができる。このため、例えば、制御部が第1駆動ローラの回転速度を可変すると、それが印刷用搬送区間における連続紙の張力に比較的速やかに反映される。このように、印刷用搬送区間における制御応答性を向上させることができる。
【0045】
(3)上述した発明に係る印刷装置において、前記制御部は、前記第1検出部および前記第2検出部によって検出される連続紙の各張力が、それぞれ連続紙の種類、紙厚および紙質の少なくともいずれかに応じた所定値となるように、前記第1駆動ローラおよび前記第2駆動ローラを制御する印刷装置。
【0046】
前記(3)に記載の発明によれば、一層適切な張力で連続紙を搬送することができる。なお、第1検出部および第2検出部に対応する各所定値は、異なった値であってもよいし、同じ値であってもよい。
【0047】
(4)上述した発明に係る印刷装置において、前記制御部は、前記第3検出部によって検出される連続紙の張力が、前記連続紙の種類、紙厚および紙質の少なくともいずれかに応じた所定値となるように、前記第3駆動ローラを制御する印刷装置。
【0048】
前記(4)に記載の発明によれば、一層適切な張力で連続紙を搬送することができる。
【0049】
(5)上述した発明に係る印刷装置において、前記制御部は、前記第3検出部によって検出される連続紙の張力が、前記第2検出部によって検出される連続紙の張力と等しくなるように、前記第2駆動ローラおよび前記第3駆動ローラを制御する印刷装置。
【0050】
前記(5)に記載の発明によれば、基軸駆動ローラの前後における連続紙の張力の差と、第1駆動ローラの前後における連続紙の張力の差とは、等しくなる。このため、基軸駆動ローラと第1駆動ローラによって画定される印刷用搬送区間において、連続紙の搬送を一層安定させることができる。
【0051】
(6)上述した発明に係る印刷装置において、前記制御部は、前記第2検出部によって検出される連続紙の張力が、前記第1検出部によって検出される連続紙の張力の約1.1倍となるように、前記第1駆動ローラおよび前記第2駆動ローラを制御する印刷装置。
【0052】
前記(6)に記載の発明によれば、上流側搬送区間における連続紙の張力は、印刷用搬送区間の約1.1倍に調整される。この場合、第2駆動ローラが負担する張力は、印刷用搬送区間における連続紙の張力の約1.1倍に相当する張力である。すなわち、第2駆動ローラは、その下流側(すなわち、上流側搬送区間)に、印刷用搬送区間における連続紙の張力の約1.1倍に相当する張力を生み出す。これに対し、印刷部の上流側に隣接する駆動ローラ(基軸駆動ローラおよび第1駆動ローラの一方)が負担する張力は、印刷用搬送区間における連続紙の張力の約1割に当たる張力である。このように、第2駆動ローラに比べて、印刷部の上流側に隣接する駆動ローラの負担を小さくすることができる。このため、第2駆動ローラに比べて印刷部の上流側に隣接する駆動ローラを一層細かく制御することができる。この結果、印刷用搬送区間における連続紙の搬送をきめ細かく制御することができる。
【0053】
(7)上述した発明に係る印刷装置において、前記制御部は、前記第3検出部によって検出される連続紙の張力が、前記第1検出部によって検出される連続紙の張力の約1.1倍となるように、前記第1駆動ローラおよび前記第3駆動ローラを制御する印刷装置。
【0054】
前記(7)に記載の発明によれば、第3駆動ローラに比べて、印刷部の下流側に隣接する駆動ローラの負担を小さくすることができる。このため、印刷部の下流側に隣接する駆動ローラをよりきめ細かく制御することができ、この結果、印刷用搬送区間における連続紙の搬送を一層きめ細かく制御することができる。
【0055】
(8)上述した発明に係る印刷装置において、前記第2駆動ローラの前後における張力の差は、前記印刷部の上流側に隣接する駆動ローラの前後における張力の差に比べて大きい印刷装置。
【0056】
(9)上述した発明に係る印刷装置において、前記第3駆動ローラの前後における張力の差は、前記印刷部の下流側に隣接する駆動ローラの前後における張力の差に比べて大きい印刷装置。
【0057】
前記(8)に記載の発明によれば、第2駆動ローラに比べて、印刷部の上流側に隣接する駆動ローラの負担を小さくすることができる。また、前記(9)に記載の発明によれば、第3駆動ローラに比べて、印刷部の下流側に隣接する駆動ローラの負担を小さくすることができる。よって、これら(8)、(9)に記載の発明によれば、印刷用搬送区間における連続紙の搬送を一層きめ細かく制御することができる。
【0058】
(10)上述した発明に係る印刷装置において、さらに、前記基軸駆動ローラとともに連続紙を両側から押さえる基軸用ニップローラを備える印刷装置。
【0059】
(11)上述した発明に係る印刷装置において、さらに、前記第1駆動ローラとともに連続紙を両側から押さえる第1ニップローラを備える印刷装置。
【0060】
(12)上述した発明に係る印刷装置において、さらに、前記第2駆動ローラとともに連続紙を両側から押さえる第2ニップローラを備える印刷装置。
【0061】
(13)上述した発明に係る印刷装置において、さらに、前記第3駆動ローラとともに連続紙を両側から押さえる第3ニップローラを備える印刷装置。
【0062】
前記(10)から前記(13)に記載の各発明によれば、各駆動ローラにおいて、連続紙の変動を効果的に弱めることができる。
【0063】
(14)上述した発明に係る印刷装置において、前記印刷部は、インクを滴下するインクジェットヘッドである印刷装置。
【0064】
前記(14)に記載の発明によれば、インクジェット印刷装置を好適に実現することができる。
【0065】
(15)上述した発明に係る印刷システムにおいて、前記装置間検出部は、隣接する前記印刷装置の間にそれぞれ設けられている印刷システム。
【0066】
前記(15)に記載の発明によれば、各印刷装置において好適に印刷を行うことができる。
【0067】
(16)上述した発明に係る印刷システムにおいて、前記装置間検出部の下流側に隣接する前記印刷装置内の前記制御部は、前記一律制御の場合には、前記基軸駆動ローラ、前記第1駆動ローラおよび前記第2駆動ローラの各回転速度を徐々に増減させる印刷システム。
【0068】
前記(16)に記載の発明によれば、装置間検出部の下流側に隣接する印刷装置内では、連続紙の速度が急激に変化することがないので、連続紙の搬送が不安定になることを好適に抑制することができる。
【発明の効果】
【0069】
この発明に係る印刷装置によれば、印刷部の上流側に設けられる2つの駆動ローラのさらに上流側において連続紙が外乱を受けた場合であっても、これら2つの駆動ローラは連続紙の変動を好適に弱めることができる。また、制御部は、第1検出部の検出結果に基づいて第1駆動ローラの回転速度を可変し、第2検出部の検出結果に基づいて第2駆動ローラの回転速度を可変する。これにより、上流側搬送区間および印刷用搬送区間における連続紙の各張力を調整し、連続紙の変動をさらに抑制することができる。よって、印刷部に対して連続紙を適切に搬送することができる。したがって、印刷部は、連続紙と接触しないにも関わらず、適切に連続紙を印刷することができる。
【0070】
また、この発明に係る印刷システムによれば、装置間検出部の検出結果に基づいて、装置間検出部の下流側に隣接する印刷装置内の制御部は一律制御を行う。すなわち、制御部は、当該印刷装置内の各駆動ローラの回転速度を同量ずつ増加または減少させる。この一律制御により、連続紙の張力を略一定に保ったまま、連続紙の速度のみを全体的に調整し、連続紙の変動を抑制することができる。したがって、当該印刷装置内の印刷部は適切に連続紙を印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施例1に係る印刷装置の構成を示す図である。
【図2】印刷装置内の連続紙の張力を示す図である。
【図3】実施例2に係る印刷システムの構成を示す図である。
【図4】実施例2に係る印刷システムが備える印刷装置の構成を示す図である。
【実施例1】
【0072】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。図1は、実施例1に係る印刷装置の構成を示す図である。
【0073】
1.概略構成
本実施例に係る印刷装置1は、長尺な連続紙3に対して印刷を行う装置である。この印刷装置1の外部には、連続紙3を印刷装置1に供給する巻出し装置5と、印刷装置1から排出された連続紙3を回収する巻取り装置7が設けられている。
【0074】
印刷装置1は、複数(4つ)の駆動ローラ(10、11、12、13)と、印刷部27と、張力検出部(31、32、33)と、速度検出部35と、制御部37とを備えている。各駆動ローラ(10、11、12、13)は、巻出し装置5から印刷装置1に供給された連続紙3を一方向に搬送し、装置1の外部(巻取り装置7)に送り出す。各張力検出部(31、32、33)は、連続紙3の張力(テンション)を検出する。速度検出部35は、連続紙3の速度を検出する。制御部37は張力検出部(31、32、33)の検出結果に基づいて駆動ローラを制御する。印刷部27は連続紙3と非接触の状態で連続紙3に印刷を行う。この印刷部27は、速度検出部35の検出結果に応じたタイミングで印刷を行う。以下、各構成について具体的に説明する。
【0075】
2.搬送系と印刷部
駆動ローラは、具体的には、基軸駆動ローラ10と第1駆動ローラ11と第2駆動ローラ12と第3駆動ローラ13である。これらは、連続紙3の搬送方向上流側から下流側にかけて、第2駆動ローラ12、基軸駆動ローラ10、第1駆動ローラ11、第3駆動ローラ13の順番で配置されている。印刷部27は、基軸駆動ローラ10と第1駆動ローラ11との間に配置されている。以下では、「連続紙3の搬送方向の上流側」を適宜に「上流側」と呼び、「連続紙3の搬送方向の下流側」を適宜に「下流側」と呼ぶ。
【0076】
そうすると、基軸駆動ローラ10は印刷部27の上流側に隣接する駆動ローラに相当し、第2駆動ローラ12は基軸駆動ローラ10の上流側に隣接する駆動ローラに相当する。また、第1駆動ローラ11は印刷部27の下流側に隣接する駆動ローラに相当し、第3駆動ローラ13は第1駆動ローラ11の下流側に隣接する駆動ローラに相当する。ここで、基軸駆動ローラ10および第1駆動ローラ11は、それぞれ印刷部27に近接していることが好ましい。
【0077】
各駆動ローラ10、11、12、13は、それぞれモータ15、16、17、18に連結されており、モータ15、16、17、18の動力によって回転する。各駆動ローラ10、11、12、13には、それぞれニップローラ20、21、22、23が付設されている。ニップローラ20、21、22、23は、それぞれ回転自在に設けられている。各駆動ローラ10、11、12、13は、対応するニップローラ20、21、22、23とともに連続紙3を両側から押さえる。連続紙3の搬送路には、さらに従動ローラ25が設けられている。各従動ローラ25は回転自在に設けられており、連続紙3を案内する。ニップローラ20、21、22、23は、それぞれ本発明における基軸用ニップローラ、第1ニップローラ、第2ニップローラ、第3ニップローラに相当する。
【0078】
ここで、第2駆動ローラ12と基軸駆動ローラ10によって画定される連続紙3の搬送区間を「上流側搬送区間Lu」と呼び、基軸駆動ローラ10と第1駆動ローラ11によって画定される連続紙3の搬送区間を「印刷用搬送区間Lp」と呼び、第1駆動ローラ11と第3駆動ローラ13によって画定される連続紙3の搬送区間を「下流側搬送区間Ld」と呼ぶこととする。なお、印刷部27は印刷用搬送区間Lpに配置されている。
【0079】
印刷部27は、連続紙3に対してインクジェット方式で印刷する。具体的には、印刷部27は、インク滴を吐出可能な複数のノズル(不図示)を有するインクジェットヘッドによって構成されている。この印刷部27は、連続紙3の上方に連続紙3と離間して設けられている。そして、印刷部27は、連続紙3と接触することなく連続紙3の表面に対して印刷を行う。連続紙3の裏面側であって印刷部27と対向する位置には、従動ローラ28が設けられている。従動ローラ28は回転自在に設けられ、連続紙3を平坦な状態に保つ。
【0080】
さらに、印刷装置1は乾燥部29を備えている。乾燥部29は、下流側搬送区間Lpに設けられ、印刷された連続紙3を乾燥させる。
【0081】
3.検出部
張力検出部は、具体的には、第1張力検出部31と第2張力検出部32と第3張力検出部33である。第1張力検出部31は、印刷用搬送区間Lpに設けられ、この搬送区間Lp内における連続紙3の張力(テンション)を検出する。本実施例では、第1張力検出部31は、基軸駆動ローラ10と印刷部27との間に配置されている。第2張力検出部32は、上流側搬送区間Luに設けられ、この搬送区間Lu内における連続紙3の張力を検出する。第3張力検出部33は、下流側搬送区間Ldに設けられ、この搬送区間Ld内における連続紙3の張力を検出する。各張力検出部31、32、33は、例えば圧力センサ等によって実現されている。第1、第2、第3張力検出部31、32、33は、それぞれこの発明における第1検出部、第2検出部、第3検出部に相当する。
【0082】
速度検出部35は、連続紙3の速度を検出する。速度検出部35は、基軸駆動ローラ10と印刷部27との間に配置されている。本実施例では、速度検出部35は、第1検出部31と印刷部27との間に配置されている。速度検出部35は、印刷部27の近傍であることが好ましい。例えば、速度検出部35は、連続紙3を挟んで印刷部27と対向する位置に配置されることが好ましい。速度検出部35は、例えばエンコーダによって構成されている。
【0083】
4.制御部
制御部37には、第1、第2、第3張力検出部31、32、33の各検出結果と、速度検出部35の検出結果が入力される。制御部37は、モータ15、16、17、18に対して命令を出力する。各モータ15、16、17、18は、それぞれ命令に応じて基軸駆動ローラ10および第1、第2、第3駆動ローラ11、12、13を回転駆動する。このように、制御部37は、基軸駆動ローラ10および第1、第2、第3駆動ローラ11、12、13を制御する。
【0084】
さらに、制御部37は連続紙3の搬送条件などの情報を有している。搬送条件としては、基軸駆動ローラ10の回転速度の設定値(所定値VR)や各搬送区間Lu、Lp、Ldにおける連続紙3の張力の設定値(所定値TH、TL)などが例示される。これら各所定値VR、TH、TLは定数である。これら所定値VR、TH、TLは、連続紙3の種類、紙厚および紙質の少なくともいずれかに応じて設定されていることが好ましい。
【0085】
制御部37は、各種処理を実行する中央演算処理装置(CPU)や、演算処理の作業領域となるRAM(Random-Access Memory)や、上述した搬送条件などの各種情報を記憶する固定ディスク等の記憶媒体等によって実現されている。
【0086】
5.動作
次に、実施例1に係る印刷装置1の動作について説明する。
【0087】
連続紙3は、外部装置である巻出し装置5から印刷装置1内に引き込まれている。印刷装置1内では、連続紙3は、各駆動ローラ10、11、12、13および従動ローラ25、28に所定の順序で掛け回されている。そして、連続紙3は、再び印刷装置1の外部に引き出されて、巻取り装置7に引き込まれている。
【0088】
制御部37が各駆動ローラ10、11、12、13を回転駆動させると、各駆動ローラ10、11、12、13は、それぞれ対応するニップローラ22、20、21、23とともに連続紙3を押さえつつ、連続紙3を搬送する。これにより、連続紙3は、上流側搬送区間Lu、印刷用搬送区間Lpおよび下流側搬送区間Ldの順に搬送されて、印刷装置1から排出される。これに伴い、巻出し装置5は印刷装置1に連続紙3を供給し、巻取り装置7は印刷装置1が排出した連続紙3を回収する。
【0089】
印刷用搬送区間Lpでは、速度検出部35は連続紙3の速度を検出する。印刷部27(インクジェットヘッド)は、速度検出部35の検出結果に応じたタイミングで連続紙3に対してインク滴を吐出する。これにより、印刷部27は、連続紙3と非接触の状態で連続紙3に対して印刷を行う。下流側搬送区間Ldでは、乾燥部29は、印刷された連続紙3を乾燥させる。
【0090】
以下では、制御部37による連続紙3の搬送制御をより詳細に説明する。
【0091】
各張力検出部31、32、33は、それぞれ連続紙3の張力を検出し、検出結果を制御部37に与える。
【0092】
制御部37は、これらの検出結果と搬送条件に基づいて各駆動ローラ10、11、12、13を制御する。本実施例では、制御部37は、搬送条件に基づいて基軸駆動ローラ10を制御する。また、第1張力検出部31の検出結果に基づいて第1駆動ローラ11を制御する。同様に、第2張力検出部32の検出結果に基づいて第2駆動ローラ12を制御し、第3張力検出部33の検出結果に基づいて第3駆動ローラ13を制御する。以下、各駆動ローラ10、11、12、13に分けて制御内容を説明する。
【0093】
基軸駆動ローラ10については、制御部37は、基軸駆動ローラ10の回転速度が所定値VRと等しくなるように基軸駆動ローラ10の回転速度を調整する。なお、基軸駆動ローラ10の制御は、各張力検出部31、32、33の各検出結果と全く関係ない。
【0094】
第1駆動ローラ11については、制御部37は、第1張力検出部31に検出される連続紙3の張力(すなわち、印刷用搬送区間Lpにおける連続紙3の張力)が所定値TLと一致するように、第1駆動ローラ11の回転速度を可変する。
【0095】
例えば、第1張力検出部31によって検出される連続紙3の張力が所定値TLに比べて小さくなった場合は、第1駆動ローラ11の回転速度を上げる。基軸駆動ローラ10の回転速度は一定(所定値VR)であるので、第1駆動ローラ11の回転速度を上げた分だけ、第1駆動ローラ11と基軸駆動ローラ10との回転速度の差が大きくなる。この回転速度の差の増加に伴って、印刷用搬送区間Lpにおける連続紙3の張力は増大し、所定値TLに近づく。他方、第1張力検出部31の検出結果が所定値TLに比べて大きくなった場合は、第1駆動ローラ11の回転速度を低下させる。これにより、第1駆動ローラ11と基軸駆動ローラ10との回転速度の差が小さくなる。これに伴い、印刷用搬送区間Lpにおける連続紙3の張力は減少し、所定値TLに近づく。
【0096】
このように、第1駆動ローラ11の回転速度を可変することで、駆動ローラ11、10の間における回転速度の差を調整し、両駆動ローラによって画定される印刷用搬送区間Lpにおける連続紙3の張力を調整する。なお、基軸駆動ローラ10の回転速度は一定(所定値VR)であるので、第1駆動ローラ11の回転速度を可変するのみで上述した調整を容易に行うことができる。
【0097】
第2駆動ローラ12については、制御部37は、第2張力検出部32に検出される連続紙3の張力(すなわち、上流側搬送区間Luにおける連続紙3の張力)が所定値THと一致するように、第2駆動ローラ12の回転速度を可変する。これにより、駆動ローラ12、10の間における回転速度の差を容易に調整することができ、両駆動ローラによって画定される上流側搬送区間Luにおける連続紙3の張力を容易に調整することができる。
【0098】
第3駆動ローラ13については、制御部37は、第3張力検出部33に検出される連続紙3の張力(すなわち、下流側搬送区間Ldにおける連続紙3の張力)が所定値THと一致するように、第3駆動ローラ13の回転速度を可変する。なお、第3駆動ローラ13に隣接する第1駆動ローラ11の回転速度は一定に調整されない。しかしながら、この場合であっても、制御部37は、第3駆動ローラ13の回転速度のみを可変することで、駆動ローラ13、11の間における回転速度の差を調整し、両駆動ローラによって画定される下流側搬送区間Ldにおける連続紙3の張力を調整する。
【0099】
ここで、所定値THは所定値TLより高い値であることが好ましい(TH>TL)。例えば、所定値THは、所定値TLの約1.1倍であることが好ましい。
【0100】
所定値THとしては、下流側搬送区間Ldのさらに下流側(図1において、符号「Ldd」によって示される搬送区間)における連続紙3の張力の数倍以上であることが好ましい。これによれば、搬送区間Lddにおいて連続紙3が変動しても、連続紙3の変動が下流側搬送区間Ldに伝わることを好適に防止することができる。なお、搬送区間Lddは「第3駆動ローラ13の下流側」と同義である。また、図1において、符号「Luu」は、上流側搬送区間Luのさらに上流側の搬送区間を示す。搬送区間Luuは「第2駆動ローラ12の上流側」と同義である。
【0101】
所定値THの値としては、例えば、20[kgf]から30[kgf]の範囲内の値が例示される。ただし、所定値THは、この数値例に限定されず、適宜な値を設計、選択することができる。
【0102】
上述した制御の結果、印刷装置1内においては、連続紙3の速度は、基本的に基軸駆動ローラ10の回転速度に依存し、略一定に保たれる。特に、基軸駆動ローラ10の下流側に当たる印刷用搬送区間Lpにおいては、他の搬送区間Lu、Ldに比べて連続紙3の速度はより安定している。
【0103】
図2は、印刷装置1内の連続紙3の張力を示す図である。図2において、横軸は連続紙3の搬送路上の位置である。横軸の右側が上流側、左側が下流側を示す。したがって、横軸の右側から左側に向かう方向が、連続紙3の搬送方向に相当する。縦軸は、連続紙3の張力である。図示するように、また、各搬送区間Ld、Lp、Luにおける連続紙3の張力は、それぞれ所定値TH、TL、THに調整される。
【0104】
図示するように、第2駆動ローラ12は、その前後で連続紙3の張力を大幅に増大させる。基軸駆動ローラ10は、その前後で連続紙3の張力を小幅に減少させる。第1駆動ローラ11は連続紙3の張力を小幅に増大させる。第3駆動ローラ13は連続紙3の張力を大幅に減少させる。すなわち、第2駆動ローラ12の前後における張力差ΔT2に比べて、基軸駆動ローラ10の前後における張力差ΔT0は小さい。また、第3駆動ローラ13の前後における張力差ΔT3に比べて、第1駆動ローラ11の前後における張力差ΔT1は小さい。換言すれば、第2駆動ローラ12および第3駆動ローラ13は、比較的大きな張力を生み出しているのに対し、基軸駆動ローラ10および第1駆動ローラ11は比較的小さい範囲で張力を調整している。このことから明らかなように、第2、第3駆動ローラ12、13の動力的な負担が大きいのに比べて、基軸駆動ローラ10、第1駆動ローラ11の動力的な負担は比較的小さい。
【0105】
このように、実施例1に係る印刷装置1によれば、印刷部27の上流側に複数(2つ)の駆動ローラ10、12が設けられている。このため、例えば、連続紙3が巻出し装置5から外乱を受ける等によって第2駆動ローラ12の上流側Luuで連続紙3が変動する場合であっても、2つの駆動ローラ10、12によって連続紙3の変動を好適に弱めることができる。
【0106】
同様に、印刷部27の下流側にも、複数(2つ)の駆動ローラ11、13が設けられている。このため、例えば、連続紙3が巻取り装置7から外乱を受ける等によって第3駆動ローラ13の下流側Lddで連続紙3が外乱を受けても、2つの駆動ローラ11、13によって連続紙3の変動を好適に弱めることができる。
【0107】
また、制御部37は、第1張力検出部31の検出結果に基づいて第1駆動ローラ11の回転速度を可変し、印刷用搬送区間Lpにおける連続紙3の張力を所定値TLに調整する。また、制御部37は、第2張力検出部32の検出結果に基づいて第2駆動ローラ12の回転速度を可変し、上流側搬送区間Luにおける連続紙3の張力を所定値THに調整する。このように、制御部37は、搬送区間Lu、Lpごとに連続紙3の張力を個別に制御する。これにより、上流側搬送区間Luの上流側Luuにおいて連続紙3が変動していても、連続紙3の変動を一層抑制することができる。
【0108】
同様に、制御部37は、第3張力検出部33の検出結果に基づいて第3駆動ローラ13の回転速度を可変し、下流側搬送区間Ldにおける連続紙3の張力を所定値THに調整する。このように、制御部37は、搬送区間Ldについても連続紙3の張力を個別に制御する。これにより、下流側搬送区間Ldの下流側Lddにおいて連続紙3が変動していても、連続紙3の変動を一層抑制することができる。
【0109】
以上のとおり、駆動ローラ10、11、12、13の印刷部27に対する配置と制御部37による制御によって、連続紙3の変動を好適に抑制することができる。このため、連続紙3が外乱を受けて変動しても、印刷部27に対して連続紙3を適切に搬送することができる。すなわち、印刷部27は連続紙3と接触しないにも関わらず、印刷部27が印刷を行う連続紙3は、変動が抑制された状態に保たれている。よって、印刷部27は適切に連続紙3を印刷することができる。
【0110】
また、ニップローラ20、21、22、23を備えているので、各駆動ローラ10、11、12、13において連続紙3の変動を効果的に弱めることができる。
【0111】
また、制御部37は、基軸駆動ローラ10の回転速度が一定(所定値VR)となるように調整する。このため、連続紙3が印刷部27を通過する速度を好適に安定させることができる。
【0112】
また、制御部37は、第1張力検出部31の検出結果が一定(所定値TL)となるように第1駆動ローラ11を制御する。同様に、制御部37は、第2、第3張力検出部32、33の各検出結果がそれぞれ一定(所定値TH)となるように、第2、第3駆動ローラ12、13を制御する。これにより、各搬送区間Lp、Lu、Ldにおける連続紙3の張力はそれぞれ一定に保たれ、安定的な連続紙3の搬送を実現することができる。
【0113】
また、制御部37は、上流側搬送区間Luおよび下流側搬送区間Ldの方が、印刷用搬送区間Lpに比べて連続紙3の張力が大きくなるように制御する。一般に同じ張力差の場合、張力が低い搬送区間から高い搬送区間に比べて、張力が高い搬送区間から低い搬送区間の方が、連続紙3の変動は伝わりにくい。本実施例の場合、印刷用搬送区間Lpには、その両側の搬送区間Lu、Ldのいずれからも連続紙3の変動が伝わりにくいことになる。よって、特に印刷用搬送区間Lpにおいて、安定的な連続紙3の搬送を実現することができる。
【0114】
また、制御部37は、第2駆動ローラ12の前後における張力差ΔT2に比べて、基軸駆動ローラ10の前後における張力差ΔT0が小さくなるように制御する。これにより、第2駆動ローラ12に比べて基軸駆動ローラ10の動力的な負担は小さくなり、基軸駆動ローラ10をより高精度に調整することができる。この結果、連続紙3の速度を精度良く制御することができる。同様に、制御部37は、第3駆動ローラ13の前後における張力差ΔT3に比べて、第1駆動ローラ11の前後における張力差ΔT1が小さくなるように制御する。これにより、第3駆動ローラ13に比べて第1駆動ローラ11の動力的な負担は小さくなり、第1駆動ローラ11をより高精度に制御することができる。この結果、印刷用搬送区間Lpにおける連続紙3の張力を精度良く調整することができる。
【0115】
また、基軸駆動ローラ10は印刷部27の下流側ではなく、上流側に設けられている。このため、印刷用搬送区間における連続紙3の速度を好適に安定させることができる。
【0116】
また、速度検出部35は、基軸駆動ローラ10と印刷部27との間に設けられているので、速度検出部35の位置は第1駆動ローラ11よりも基軸駆動ローラ10に近い。このため、速度検出部35は、速度が比較的に安定している位置で連続紙3の速度を検出することができる。また、速度検出部35は、印刷部27の近傍に設けられているので、印刷部27を通過する連続紙3の速度を精度よく検出することができる。印刷部27による印刷の精度を一層向上させることができる。
【0117】
また、基軸駆動ローラ10および第1駆動ローラ11は、それぞれ印刷部27に近接しているので、印刷用搬送区間Lpを比較的に短い。この結果、制御部37による第1駆動ローラ11の制御は、印刷用搬送区間Lpにおける連続紙3の張力に比較的速やかに反映される。すなわち、印刷用搬送区間Lpにおける制御応答性を向上させることができる。
【0118】
また、所定値VR、TH、TLは、連続紙3の種類、紙厚および紙質の少なくともいずれかに応じて設定されているので、適切な速度および適切な張力で連続紙3を搬送することができる。
【0119】
また、上流側搬送区間Luおよび下流側搬送区間Ldにおける連続紙3の張力の設定値は、所定値THで等しい。このため、基軸駆動ローラ10の前後における連続紙3の張力差ΔT0と、第1駆動ローラ11の前後における連続紙3の張力差ΔT1は等しい。すなわち、印刷用搬送区間Lpの両端にかかる負荷(張力差)は釣り合っているので、印刷用搬送区間Lpにおいて連続紙3の搬送を一層安定させることができる。
【0120】
また、印刷部27はインクジェット方式で印刷するので、インクジェット印刷装置を好適に実現することができる。
【実施例2】
【0121】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図3は、実施例2に係る印刷システムの構成を示す図である。なお、実施例1と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0122】
本実施例2の印刷システム50は、複数(2つ)の印刷装置1、51を備えている。印刷装置1は印刷装置51の上流側に設けられており、印刷装置1から印刷装置51に連続紙3を受け渡す。また、各印刷装置1、51は、連続紙3に対して印刷を行う。以下では、印刷装置1と印刷装置51との間の搬送区間を、「装置間搬送区間Lm」と呼ぶ。
【0123】
装置間搬送区間Lmには反転部61が設けられている。反転部61は、連続紙3の表裏を反転する。反転部61は、連続紙3の搬送角度を変える単一または複数のターンバー(不図示)を備えている。
【0124】
さらに、装置間搬送区間Lmには、装置間張力検出部63が設けられている。本実施例では、装置間張力検出部63は、反転部61と印刷装置51との間に配置されている。装置間張力検出部63は、装置間搬送区間Lmにおける連続紙3の張力を検出する。そして、装置間張力検出部63は、その検出結果を印刷装置51に出力する。装置間張力検出部63は、この発明における装置間検出部に相当する。
【0125】
図4は、印刷装置51の構成を示す図である。なお、印刷装置1が備える構成については、図1と略同じであるので、図示を省略する。
【0126】
図4に示するように、印刷装置51は、印刷装置1と概ね同じ構成である。ただし、印刷装置51内に設けられる制御部67は、印刷装置1内に設けられる制御部37と異なる。以下、制御部67について具体的に説明する。
【0127】
制御部67には、各張力検出部31、32、33の検出結果のほか、装置間張力検出部63の検出結果が入力される。制御部67は、連続紙3の搬送条件として、基軸駆動ローラ10の回転速度の設定値(所定値VR)や各搬送区間Lu、Lp、Ldにおける連続紙3の張力の設定値(所定値TH、TL)などの他に、装置間搬送区間Lmにおける連続紙3の張力の閾値Tthを有している。
【0128】
制御部67は、各種処理を実行する中央演算処理装置(CPU)や、演算処理の作業領域となるRAM(Random-Access Memory)や、上述した搬送条件などの各種情報を記憶する固定ディスク等の記憶媒体等によって実現されている。
【0129】
次に、実施例2に係る印刷システム50の動作について説明する。
【0130】
連続紙3は、外部装置である巻出し装置5から引き出され、印刷装置1、反転部61および印刷装置51を通り、巻取り装置7に引き込まれている。制御部37が印刷装置1内の各駆動ローラ10、11、12、13を回転駆動させるとともに、制御部67が印刷装置51内の各駆動ローラ10、11、12、13を回転駆動させる。これにより、連続紙3は、巻出し装置5から繰り出されて、印刷装置1、反転部61、印刷装置51に順次搬送され、巻取り装置7に回収される。反転部61は連続紙3の表裏を反転する。印刷装置1、51内の各印刷部27は、それぞれ連続紙3と非接触の状態で連続紙3に対して印刷を行う。この結果、連続紙3の両面に対して印刷が行われる。
【0131】
また、制御部37、67は、それぞれ印刷装置1、51内における連続紙3の搬送を制御する。制御部37による搬送制御は、実施例1の動作説明において詳述した通りである。以下では、制御部67による搬送制御について、より詳細に説明する。なお、以下の説明では、特に断らない限り、各構成は印刷装置51内の構成を指す。たとえば、「基軸駆動ローラ10」と記載したときは、印刷装置51内の基軸駆動ローラ10を意味する。
【0132】
制御部67には、各張力検出部31、32、33の検出結果と、装置間張力検出部63の検出結果が入力される。制御部67は、これらの検出結果と搬送条件に基づいて各駆動ローラ10、11、12、13を制御する。ここで、制御部67は、実施例1で説明した搬送制御に加えて、一律制御を行う。この一律制御は、装置間張力検出部63によって検出された連続紙3の張力が閾値Tthを超えた場合に行われる。そうでない場合には一律制御は行われない。
【0133】
一律制御では、制御部67は、各駆動ローラ10、11、12、13の回転速度を同量ずつ増加または減少させる。例えば、各駆動ローラ10、11、12、13の回転速度をV0、V1、V2、V3としたとき、一律制御によって各駆動ローラ10、11、12、13の回転速度はV0±α、V1±α、V2±α、V3±αとなる。これにより、連続紙3の搬送速度は、各搬送区間Lu、Lp、Ldにわたって一様に増加または減少する。ただし、隣接する駆動ローラ同士の間における回転速度の差は変わらないので、各搬送区間Lu、Lp、Ldにおける連続紙3の張力は略一定に保たれる。このような一律制御によれば、装置間搬送区間Lmにおいて連続紙3の張力が変動した場合であっても、印刷装置51内においては連続紙3の変動を好適に抑制することができる。
【0134】
ここで、閾値Tthとしては、印刷装置1、51の外部において連続紙3が通常、とり得る張力に比べて大きい値であることが好ましい。また、閾値Tthは、所定値THの約6分の1から約2分の1に相当する値であることが好ましい。閾値Tthの値としては、5から10[kgf]の範囲内の値であることが好ましい。閾値Tthは、この数値例に限定されず、適宜な値を設計、選択することができる。
【0135】
また、制御部67は、上述の通り、実施例1で説明した搬送制御を行う。具体的には、制御部67は、基軸駆動ローラ10の回転速度が所定値VRと等しくなるように、基軸駆動ローラ10の回転速度を調整する。また、制御部67は、第1張力検出部31によって検出される連続紙3の張力が所定値TLと等しくなるように、第1駆動ローラ11の回転速度を可変する。同様に、第2張力検出部32によって検出される連続紙3の張力が所定値THと等しくなるように、第2駆動ローラ12の回転速度を可変し、第3張力検出部33によって検出される連続紙3の張力が所定値THと等しくなるように、第3駆動ローラ13の回転速度を可変する。ここで、基軸駆動ローラ10の回転速度を調整する制御を「調整制御」と呼び、第1、第2、第3駆動ローラの回転速度を可変する制御をそれぞれ「個別制御」と呼び、上述した「一律制御」と区別する。
【0136】
これら調整制御および個別制御は、一律制御が行われているか否かに関わらず、行われる。よって、装置間搬送区間Lmにおける連続紙3の張力が閾値Tthを超えた場合は、調整制御と個別制御と一律制御が並行して行われる。そうでない場合は、調整制御と個別制御のみが行われる。
【0137】
上述した一律制御を個別制御と比べると、一律制御は、個別制御のいずれよりも緩やかに行われる。ここで、「緩やかに」とは、例えば、個別制御の場合に比べて一律制御の場合には不感時間を長く設定することである。具体的には、装置間検出部63によって検出された連続紙3の張力が閾値Tthを超えた時点から一律制御が開始されるまでの時間を、第1、第2検出部の検出結果に応じて個別制御が開始されるまでの時間に比べて長くすることである。あるいは、「緩やかに」とは、例えば、個別制御の場合に比べて一律制御の場合には回転速度の変化率を小さくすることである。具体的には、個別制御に比べて一律制御では各駆動ローラ10、11、12、13の回転速度をゆっくり増減させたり、徐々に増減させたり、段階的に増減させることである。
【0138】
このように、実施例2に係る印刷システム50によれば、各印刷装置1、51内において、実施例1と同様に連続紙3を好適に搬送することができる。よって、各印刷装置1、51は、連続紙3に対して好適に印刷を行うことができる。
【0139】
また、実施例2では特に、装置間張力検出部63を備えている。そして、この装置間張力検出部63の下流側に隣接する印刷装置51内の制御部67は、当該装置間張力検出部63の検出結果に基づいて一律制御を行う。すなわち、各搬送区間Lu、Lp、Ldにおける連続紙3の張力を変化させることなく、連続紙3の速度を一様に増減させる。これにより、装置間搬送区間Lmにおいて連続紙3が外乱を受けても、印刷装置51内では、連続紙3の変動を好適に抑制することができる。
【0140】
また、制御部67は、この一律制御を選択的に行う。すなわち、装置間搬送区間Lmにおける連続紙3の張力が閾値Tthを超えたときに初めて制御部67は一律制御を行い、装置間搬送区間Lmにおける連続紙3の張力が閾値Tth以下のときには制御部67は一律制御を行わない。
【0141】
装置間搬送区間Lmにおける連続紙3の張力が閾値Tthを超える場合は、装置間搬送区間Lmにおいて連続紙3が受ける外乱は比較的に大きいと言える。このような場合には、一律制御を行うことによって、連続紙3の変動を効果的に抑制することができる。
【0142】
他方、装置間搬送区間Lmにおける連続紙3の張力が閾値Tth以下である場合には、装置間搬送区間Lmにおいて連続紙3が受ける外乱は比較的に小さいと言える。このような場合には、一律制御を行わなくても、印刷部27の上流側に設けられる2つの駆動ローラ10、12、および、制御部67による個別制御によって、連続紙3の変動を好適に抑制することができる。むしろ、一律制御を行わないことにより、一律制御の頻度を低減でき、連続紙3の搬送が不安定になるおそれがない。
【0143】
また、上述した閾値Tthは、比較的に大きな値に設定されているので、一律制御の行う頻度を好適に低減し、一律制御が効果的なときのみ一律制御を行うことができる。
【0144】
また、制御部67は、個別制御に比べて一律制御を緩やかに行う。このため、一律制御の頻度を一層低減でき、あるいは、連続紙3の速度が急激に変化することを回避できる。よって、連続紙3の一層安定的な搬送を実現することができる。
【0145】
反対に、制御部67は、一律制御に比べて個別制御を速やかに行う。したがって、各搬送区間Lu、Lp、Ldにおける連続紙3の張力の変動に対しては、比較的速やかに抑制することができる。
【0146】
また、装置間張力検出部63は、反転部61と印刷装置51との間に設けられている。このため、装置間張力検出部63は、連続紙3が反転部61から受ける外乱を好適に検出することができる。
【0147】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0148】
(1)上述した各実施例では、印刷装置1、51は、第3駆動ローラ13を備えていたが、これに限られない。すなわち、第3駆動ローラ13を省略してもよい。これに伴い、第3張力検出部33も省略してもよい。この変形例であっても、第2駆動ローラ12の上流側において連続紙3が受ける外乱を好適に抑制することができ、印刷部27に対して連続紙3を適切に搬送することができる。
【0149】
(2)上述した各実施例では、印刷装置1、51は、4つの駆動ローラ10、11、12、13を備えていたがこれに限らない。すなわち、5つ以上の駆動ローラを備えるように変更してもよい。
【0150】
(3)上述した各実施例では、基軸駆動ローラ10は印刷部27の上流側に隣接する駆動ローラとして設けられ、第1駆動ローラ11は印刷部27の下流側に隣接する駆動ローラとして設けられていたが、これに限らない。すなわち、基軸駆動ローラ10を印刷部27の下流側に隣接する駆動ローラとして設けるように変更してもよい。これに伴い、第1駆動ローラ11を印刷部27の上流側に隣接する駆動ローラとして設けるように変更してもよい。
【0151】
(4)上述した各実施例では、上流側搬送区間Luおよび下流側搬送区間Ldにおける連続紙3の張力の設定値は、所定値THで等しいが、これに限られない。すなわち、上流側搬送区間Luおよび下流側搬送区間Ldにおける連続紙3の張力の設定値として、それぞれ異なる値を選択してもよい。
【0152】
(5)上述した各実施例では、所定値VRは、基軸駆動ローラ10の回転速度に応じた設定値であったが、これに限られない。例えば、所定値VRに代えて、連続紙3の速度に応じた設定値を採用してもよい。また、所定値TH、TLは、各搬送区間Lu、Lp、Ldにおける連続紙3の張力に応じた設定値であったが、これに限られない。例えば、隣接する2つの駆動ローラ間における回転速度の差に応じた値に変更してもよい。
【0153】
(6)上述した各実施例では、印刷部27は、連続紙3に対してインクジェット方式で印刷するものであり、インクジェットヘッドによって構成されていたが、これに限られない。連続紙3と非接触の状態で連続紙3を印刷するものであれば、印刷部27として適用することができる。たとえば、代替可能な印刷部としては、電子写真、レーザー光による印刷など、適宜の構成、方式による印刷部などが例示される。
【0154】
(7)上述した実施例2では、印刷システム50は、2つの印刷装置1、51を備えていたが、これに限られない。すなわち、3つ以上の印刷装置を備えるように変更してもよい。この場合、装置間搬送区間Lmは2つ以上となる。装置間張力検出部63については、少なくともいずれか1つの装置間搬送区間Lmに設けてもよいし、全ての装置間搬送区間Lmに設けてもよい。あるいは、反転部61が設置されている装置間搬送区間Lmに装置間張力検出部63を設けるように構成してもよい。
【0155】
(8)上述した実施例2では、装置間張力検出部63は印刷装置51の外部に設けられていたが、これに限られない。すなわち、装置間張力検出部63を印刷装置51の内部に設けるように変更してもよい。この場合、第2駆動ローラ12の上流側に装置間張力検出部63を配置することが好ましい。
【0156】
(9)上述した各実施例において、印刷装置1および印刷システム50の外部装置として、巻出し装置5、巻取り装置7等を例示したが、これに限られない。例えば、塗布装置や折り機等を外部装置として備えていてもよい。
【符号の説明】
【0157】
1、51 …印刷装置
3 …連続紙
5 …巻出し装置
7 …巻取り装置
10 …基軸駆動ローラ
11 …第1駆動ローラ
12 …第2駆動ローラ
13 …第3駆動ローラ
20 …ニップローラ(基軸用ニップローラ)
21 …ニップローラ(第1ニップローラ)
22 …ニップローラ(第2ニップローラ)
23 …ニップローラ(第3ニップローラ)
27 …印刷部
31 …第1張力検出部(第1検出部)
32 …第2張力検出部(第2検出部)
33 …第3張力検出部(第3検出部)
35 …速度検出部
37、67 …制御部
50 …印刷システム
61 …反転部
63 …装置間張力検出部(装置間検出部)
Lu …上流側搬送区間
Lp …印刷用搬送区間
Ld …下流側搬送区間
VR …所定値(基軸駆動ローラ10の回転速度の設定定値)
TL …所定値(第1張力検出部31によって検出される連続紙3の張力の設定値)
TH …所定値(第2、第3所定値32、33によって検出される連続紙3の張力の設定値)
Tth …所定値(装置間張力検出部63によって検出される連続紙3の張力の閾値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置であって、
連続紙と非接触の状態で連続紙に印刷する印刷部と、
前記印刷部の上流側もしくは下流側の一方に設けられ、連続紙を搬送する基軸駆動ローラと、
前記印刷部の上流側もしくは下流側の他方に設けられ、連続紙を搬送する第1駆動ローラと、
前記基軸駆動ローラおよび前記第1駆動ローラの上流側に設けられ、連続紙を搬送する第2駆動ローラと、
前記基軸駆動ローラおよび前記第1駆動ローラの間に設けられ、連続紙の張力を検出する第1検出部と、
前記基軸駆動ローラおよび前記第1駆動ローラの上流側であって前記第2駆動ローラの下流側に設けられ、連続紙の張力を検出する第2検出部と、
前記第1検出部の検出結果に基づいて前記第1駆動ローラの回転速度を可変し、前記第2検出部の検出結果に基づいて前記第2駆動ローラの回転速度を可変する制御部と、
を備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記基軸駆動ローラは前記印刷部の上流側に設けられ、
前記第1駆動ローラは前記印刷部の下流側に設けられている印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置において、
前記制御部は、前記第1検出部によって検出される連続紙の張力が一定となるように前記第1駆動ローラを制御し、前記第2検出部によって検出される連続紙の張力が一定となるように前記第2駆動ローラを制御する印刷装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の印刷装置において、
前記制御部は、前記第2検出部によって検出される連続紙の張力が前記第1検出部によって検出される連続紙の張力に比べて高くなるように、前記第1駆動ローラおよび前記第2駆動ローラを制御する印刷装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の印刷装置において、
さらに、前記基軸駆動ローラおよび前記第1駆動ローラの下流側に設けられ、連続紙を搬送する第3駆動ローラと、
前記基軸駆動ローラおよび前記第1駆動ローラの下流側であって前記第3駆動ローラの上流側に設けられ、連続紙の張力を検出する第3検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記第3検出部の検出結果に基づいて前記第3駆動ローラの回転速度を可変する印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷装置において、
前記制御部は、前記第3検出部によって検出される連続紙の張力が一定となるように前記第3駆動ローラを制御する印刷装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の印刷装置において、
前記制御部は、前記第3検出部によって検出される連続紙の張力が前記第1検出部によって検出される連続紙の張力に比べて高くなるように、前記第1駆動ローラおよび前記第3駆動ローラを制御する印刷装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の印刷装置において、
さらに、前記基軸駆動ローラと前記印刷部との間に設けられ、連続紙の速度を検出する速度検出部を備え、
前記印刷部は前記速度検出部の検出結果に応じたタイミングで印刷を行う印刷装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の印刷装置において、
前記印刷部は、インクジェット方式で印刷する印刷装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の印刷装置において、
前記制御部は、前記基軸駆動ローラの回転速度を一定に調整する印刷装置。
【請求項11】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の印刷装置を複数備えて、各印刷装置は互いに連続紙を受け渡しつつ、連続紙に印刷する印刷システムにおいて、
さらに、隣接する少なくとも1対の前記印刷装置の間における連続紙の張力を検出する装置間検出部を備え、
前記装置間検出部の下流側に隣接する前記印刷装置内の前記制御部は、前記装置間検出部の検出結果に基づいて、当該印刷装置内の前記基軸駆動ローラ、前記第1駆動ローラ、および、前記第2駆動ローラの各回転速度をそれぞれ同量ずつ増減させる一律制御を行う印刷システム。
【請求項12】
請求項11に記載の印刷システムにおいて、
前記装置間検出部の下流側に隣接する前記印刷装置内の前記制御部は、前記装置間検出部によって検出された連続紙の張力が閾値以下であるときは前記一律制御を行わず、前記装置間検出部によって検出された連続紙の張力が前記閾値を超えたときに前記一律制御を行う印刷システム。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の印刷システムにおいて、
前記装置間検出部の下流側に隣接する前記印刷装置内の前記制御部は、前記第1検出部の検出結果に基づいて前記第1駆動ローラの回転速度を可変する個別制御、および、前記第2検出部の検出結果に基づいて前記第2駆動ローラの回転速度を可変する個別制御に比べて、前記一律制御を緩やかに行う印刷システム。
【請求項14】
請求項13に記載の印刷システムにおいて、
前記装置間検出部の下流側に隣接する前記印刷装置内の前記制御部は、前記一律制御の場合には、前記基軸駆動ローラ、前記第1駆動ローラおよび前記第2駆動ローラの各回転速度を段階的に増減させる印刷システム。
【請求項15】
請求項11から請求項14のいずれかに記載の印刷システムにおいて、
さらに、印刷装置同士の間に設けられ、連続紙を反転させる反転部を備え、
前記装置間検出部は、前記反転部と、この反転部の下流側に隣接する前記印刷装置との間に設けられている印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−71323(P2013−71323A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212318(P2011−212318)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】