説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】本発明は、ストリークスや濃度ムラを軽減させる印刷装置に関する。
【解決手段】印字ヘッドによって印刷データに基づく印刷処理を記録媒体に行う印刷装置であって、上記印字ヘッドはライン状に複数の発光素子を配設して構成され、注目発光素子と該注目発光素子に隣接する発光素子との干渉受光状態の最大受光値と最小受光値の比率を計算する第1の計算手段と、この第1の計算手段の計算結果に前記注目発光素子が有する固有の光量補正情報を加算して前記注目発光素子に対する光量補正データとする第2の計算手段と、上記第2の計算手段の計算結果である光量補正データに従って前記印刷データに対する光量補正処理を行う光量補正手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストリークスや濃度ムラを軽減する印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等の印刷装置において、LED素子等の発光素子を使用した印字ヘッドが使用され、この印字ヘッドは、印刷データに従った発光を像担持体に行うものであり、例えばライン状に多くのLED素子を配設し、像担持体に発光を行う。
【0003】
特許文献1は上記構成の装置において、トナー画像に濃度ムラが発生する場合、像担持体に書き込むドットをレンズの特性、又はスクリーン角に応じて補正するための補正パラメータを予め記憶させ、この補正パラメータに従って上記ドットを補正することにより、形成画像の濃度ムラを低減する発明を開示する。
【0004】
また、特許文献2に記載された発明は、各LED素子の積分光量で調整値を決定し、駆動条件をLED素子毎に調整していた場合にも発生する画像濃度ムラを緩和できる画像形成装置を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−063138号公報
【特許文献2】特開2001−310499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記先行技術においては、レンズの特性等に起因して光量を均一に補正する手段は開示するが、印字ヘッドのピント要因によるストリークスや濃度ムラに対応することはできない。また、隣接ドットのプロファイル形状を考慮する発明でもなく、ストリークスや濃度ムラを有効に防止できない。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、ピント要因によるストリークスや濃度ムラを軽減し、かつ隣接ドットのプロファイル形状を考慮したストリークスや濃度ムラの軽減を行う印刷装置及び印刷方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は第1の発明によれば、印字ヘッドによって印刷データに基づく印刷処理を記録媒体に行う印刷装置において、前記印字ヘッドはライン状に複数の発光素子を配設して構成され、注目発光素子と該注目発光素子に隣接する発光素子との干渉受光状態の最大受光値と最小受光値の比率を計算する第1の計算手段と、該第1の計算手段の計算結果に前記注目発光素子が有する固有の光量補正情報を加算して前記注目発光素子に対する光量補正データを計算する第2の計算手段と、前記第2の計算手段の計算結果である光量補正データによって前記印刷データに対する光量補正処理を行う光量補正手段とを有する印刷装置を提供することによって達成できる。
【0009】
また、上記課題は第2の発明によれば、印字ヘッドによって印刷データに基づく印刷処理を記録媒体に行う印刷装置において、前記印字ヘッドはライン状に複数の発光素子を配設して構成され、前記発光素子の焦点距離の情報を測定する測定手段と、該測定結果に基づいて補正位置と補正量を計算する第1の計算手段と、該第1の計算手段の計算結果に前記発光素子が有する固有の光量補正情報を加算して前記発光素子に対する光量補正データを計算する第2の計算手段と、前記第2の計算手段の計算結果である光量補正データによって前記印刷データに対する光量補正処理を行う光量補正手段とを有する印刷装置を提供することによって達成できる。
【0010】
また、上記課題は第3の発明によれば、印字ヘッドによって印刷データに基づく印刷処理を記録媒体に行う印刷装置において、前記印字ヘッドはライン状に複数の発光素子を配設して構成され、注目発光素子と該注目発光素子に隣接する発光素子との干渉受光状態の最大受光値と最小受光値の比率を計算する第1の計算手段と、前記注目発光素子の焦点距離の情報を測定する測定手段と、該測定結果に基づいて補正位置と補正量を計算する第2の計算手段と、該第1、第2の計算手段の計算結果に前記注目発光素子が有する固有の光量補正情報を加算して前記注目発光素子に対する光量補正データを計算する第3の計算手段と、前記第3の計算手段の計算結果である光量補正データによって前記印刷データに対する光量補正処理を行う光量補正手段とを有する印刷装置を提供することによって達成できる。
【0011】
また、上記課題は第4の発明によれば、前記光量補正データは、更にプロセス情報を含めて計算する印刷装置を提供することによって達成できる。
【0012】
また、上記課題は第5の発明によれば、印字ヘッドによって印刷データに基づく印刷処理を記録媒体に行う印刷方法において、前記印字ヘッドはライン状に複数の発光素子を配設して成り、注目発光素子と該注目発光素子に隣接する発光素子との干渉受光状態の最大受光値と最小受光値の比率を計算する第1の計算処理と、該第1の計算処理の計算結果に前記注目発光素子が有する固有の光量補正情報を加算して前記注目発光素子に対する光量補正データを計算する第2の計算処理と、前記第2の計算処理の計算結果である光量補正データによって前記印刷データに対する光量補正処理を行う光量補正処理とを行う印刷方法を提供することによって達成できる。
【0013】
また、上記課題は第6の発明によれば、印字ヘッドによって印刷データに基づく印刷処理を記録媒体に行う印刷方法において、前記印字ヘッドはライン状に複数の発光素子を配設して成り、前記発光素子の焦点距離の情報を測定する測定処理と、該測定結果に基づいて補正位置と補正量を計算する第1の計算処理と、該第1の計算手段の計算結果に前記発光素子が有する固有の光量補正情報を加算して前記発光素子に対する光量補正データを計算する第2の計算処理と、前記第2の計算処理の計算結果である光量補正データによって前記印刷データに対する光量補正処理を行う光量補正処理とを行う印刷方法を提供することによって達成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、印字ヘッドの各ドットのピントデータに基づいて、一定レベルを越えたドットの位置と補正量を計算し、各発光素子の光量補正を行い、更に注目ドットと隣接ドットのプロファイル形状に基づき光量補正を行い、ストリークスの低減や濃度の均一化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1のヘッド制御部の構成、及びビデオI/F制御部の構成を具体的に説明する図である。
【図2】本実施形態を説明する印刷装置のシステム構成図である。
【図3】MTFデータ記憶部に記憶されるMTFデータの測定例を示す図である。
【図4】(a)は、制御装置からヘッド駆動装置51への入力信号を示す図であり、(b)は、入力信号に基づくLED素子の発光を示す図であり、(c)は、測定装置により測定した光強度分布の一例を示す図である。
【図5】実施形態1の処理動作を説明するフローチャートである。
【図6】補正の従来例の光プロファイルを示す図である。
【図7】本実施形態の光プロファイルを示す図である。
【図8】実施形態2のヘッド制御部の構成、及びビデオI/F制御部の構成を具体的に説明する図である。
【図9】焦点距離データ記憶部に記憶される焦点距離データの測定例を示す図である。
【図10】(a)は、制御装置からヘッド駆動装置への入力信号を示す図であり、(b)は、入力信号に基づくLED素子の発光の有無を示す図である。
【図11】実施形態2の処理動作を説明するフローチャートである。
【図12】(a)は、焦点距離データ記憶部に記憶される焦点距離データの一例を示す図であり、(b)は、焦点距離データのmドット移動平均を示す図であり、(c)は、(焦点距離データi)−(焦点距離データのmドット移動平均)の計算結果の一例を示す図であり、(d)は、焦点補正データ(FMDi)の一例を示す図である。
【図13】実施形態3の処理動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
図2は、本実施形態を説明する印刷装置のシステム構成図である。同図において、印刷装置1はインターフェイスコントローラ(以下、I/Fコントローラで示す)2、エンジン制御部3で構成され、I/Fコントローラ2は受信制御部4、ROM5、フォント6、表示制御部7、ビデオI/F制御部8、メモリ(SDRAM)9、ASIC(DMA制御部)10、MPU11で構成されている。また、表示制御部7には不図示のオペレーションパネルが接続されている。
【0017】
一方、エンジン制御部3は印字ヘッド制御部(以下、単にヘッド制御部で示す)12、モータ制御部13、MPU14、定着制御部15、高圧制御部16、印字ヘッド17、メインモータ18、各種負荷19、各種センサ20、定着サーミスタ21、定着ヒータ22、高圧部23で構成されている。
【0018】
また、上記構成の印刷装置1には、USB(universal serial bus)インターフェイス、及びLAN(local area network)を介してパーソナルコンピュータ(PC)やプリンタサーバ等のホスト機器25から印刷データが供給される。ホスト機器25から供給された印刷データは、上記受信制御部4に転送され、所定量の印刷データが受信制御部4に転送されると、印刷データはメモリ(SDRAM)9に転送される。メモリ(SDRAM)9に転送された印刷データは、以後MPU11の制御に従って解析処理が行われ、ASIC(DMA制御部)10によって圧縮、伸張処理が行われた後、ビデオI/F制御部8からエンジン制御部3(ヘッド制御部12)に出力される。
【0019】
ヘッド制御部12に出力されたビデオデータには、後述する処理が施され、印字ヘッド17に出力される。尚、モータ制御部13は、メインモータ18の駆動制御を行い、MPU14はヘッド制御部12やモータ制御部13の制御を行うと共に、定着制御部15や高圧制御部16の駆動制御を行う。
【0020】
図1は、上記ヘッド制御部12の構成、及びビデオI/F制御部8の構成を具体的に説明する図である。尚、同図において、ビデオI/F制御部8は説明上ヘッド制御部12に含ませて説明する。
【0021】
ヘッド制御部12はヘッドI/F制御部30、ヘッド補正データ制御部31、基本タイミング生成部32、CPUI/F部33で構成されている。尚、ビデオI/F制御部8にはI/Fコントローラ2によって生成されたビデオデータを格納するビデオRAM8aが接続されている。
【0022】
ヘッドI/F制御部30はドットパターン生成部34、ヘッドデータ送信部35、ヘッド制御信号生成部36、ストローブ信号生成部37で構成され、ドットパターン生成部34はビデオI/F制御部8から供給されたビデオデータの1画素を各階調値に基づき、不図示のパターン登録レジスタを参照してN個の微画素に展開したデータを生成する。
【0023】
ヘッドデータ送信部35はドットパターン生成部34によって生成したデータをヘッド制御信号生成部36から出力されるドットクロック(DCLK)に同期して印字ヘッド17に転送する。尚、ヘッド制御信号生成部36は上記ドットクロック(DCLK)の他、水平同期信号(HSYNC)の出力も行う。
【0024】
また、ストローブ信号生成部37はCPUI/F部33によって設定された階調情報に従って副走査方向をn分割し、対応するストローブ信号を印字ヘッド17に送信する。例えば、副走査方向が3分割の場合、サブライン(1/3)、(2/3)、(3/3)の3種類のストローブ信号を出力し、副走査方向が4分割の場合、サブライン(1/4)、(2/4)、(3/4)、(4/4)の4種類のストローブ信号を出力する。
【0025】
基本タイミング生成部32はCPUI/F部33によって設定される階調情報に従って、副走査方向をn分割した際の対応するタイミング信号を生成し、各部に出力する。CPUI/F部33は上記の階調情報を出力すると共に、アドレスデコード処理、及び各モジュールのレジスト処理等を行う。
【0026】
一方、ヘッド補正データ制御部31は補正RAM40、プロセス情報レジスタ41、補正データ演算部42を備え、補正RAM40はMTFデータ記憶部43、光量補正データ記憶部44、及びヘッド補正データ記憶部45で構成されている。上記光量補正データ記憶部44には印字ヘッド17内のヘッド情報ROM47から光量補正データが供給される。尚、ヘッド情報ROM47に記憶される光量補正データは、印字ヘッド17を構成する各発光素子の光量バラツキを予め測定し、この補正データが光量補正データとして記憶されている。また、上記プロセス情報レジスタ41には、カラー情報や、トナーの粒形や種類によって設定されるプロセス情報が記憶されている。
【0027】
また、MTFデータ記憶部43には、印字ヘッド17に形成されたLED素子毎のMTFデータが記憶されている。図3は上記MTFデータ記憶部43に記憶されるMTFデータの測定例を示す。同図において、MTFデータの測定はヘッド駆動装置51、測定装置52、演算装置53、制御装置54、及び印字ヘッド17で構成され、MTFデータ出力55を得る。具体的には、ヘッド駆動装置51は制御装置54の指示によって印字ヘッド17を駆動し、印字ヘッド17を所定位置に設定し、印字ヘッド17内のLED素子を発光する。図4(a)は、例えば制御装置54からヘッド駆動装置51への入力信号を示し、ヘッド駆動装置51はこの入力信号に従ってLED素子は駆動する。また、図4(b)は上記入力信号に基づくLED素子の発光の有無を示し、例えば●印は発光するLED素子を示し、○印は非発光のLED素子を示す。
【0028】
測定装置52は、例えばCCD素子で構成され、上記LED素子からの発光を受光し、光強度を測定する。具体的には、測定装置52は制御装置54からの指示に従って、印字ヘッド17との焦点距離の設定値から前後にプラス方向及びマイナス方向に移動させ、光強度を測定する。図4(c)は測定装置52により測定した光強度分布の一例である。同図(c)に示すImaxは光強度の最大値を示し、Iminは光強度の最小値を示す。
【0029】
演算装置53は上記焦点距離毎の光強度データから以下の演算式を使用してMTFデータを作成する。また、下記の演算によって取得したMTFデータは前述のMTFデータ記憶部43に記憶される。
MTF=((Imax−Imin)/(Imax+Imin))× 100%
【0030】
上記構成において、以下に本例の処理動作を説明する。
図5は、本例の処理動作を説明するフローチャートである。先ず、プリンタ装置1の電源をオンすると、印字ヘッド17のヘッド情報ROM47から光補正データが読み込まれ、光量補正データ記憶部44に書き込まれる(ステップ(以下、Sで示す)1)。
【0031】
次に、補正データ演算部42は、上記光量補正データと前述のMTFデータ記憶部43に予め記憶されたMTFデータ、及びプロセス情報レジスタ41に記憶されたプロセス情報に基づき演算処理を行う(S2)。具体的には、同図に示すI〜IIIの演算処理を行う。
【0032】
先ず、MTFデータ記憶部43に予め記憶されたMTFデータの平均値を求める(同図に示すI)。すなわち、MTFの平均値(MTFave)をMTFデータ(MTFi)に基づいて計算する(但し、i = ドットNo.1〜nとする)。
MTFave = Σ(MTFi )/ n
【0033】
次に、各ドットのMTFデータとMTFデータ平均値(MTFave)との差にプロセス係数(K)を掛け算し、MTF補正データ(PMDi)を生成する(同図に示すII)。
PMDi =(MTFi−MTFave)× K
【0034】
次に、光量補正データに上記MTF補正データ(PMDi)を加算し、ヘッド補正データを生成する(同図に示すIII)。
ヘッド補正データ(HDi)=MTF補正データ(PMDi)+光量補正データ(Li)
【0035】
次に、補正データ演算部42によって行われた演算結果であるヘッド補正データ(HDi)は、ヘッド補正データ記憶部45に送信され補正データの書き換え処理を行う(S3)。そして、新たなへッド補正データはCPUI/F部33の指示に従って、順次印字ヘッド17に転送され(LDATA[6:0])、印字ヘッド17に形成されたLED素子の光量補正に使用される(S4)。
【0036】
図6に補正の従来例の光プロファイルを示し、図7に本例の光プロファイルを示す。図6に示す従来の補正処理は単一のドットのみを対象とし、例えば同図(a)に示す標準形状のドットを基準にして、同図(b)に示すつぶれ形状のドットに対して光量を下げる補正を行い、同図(c)に示す鋭い形状のドットに対して光量を上げる補正を行っていた。
【0037】
上記処理に対して、本例によれば、上記演算結果によって得られた光量補正データを使用することによって、図7に示すように、隣接ドットの状態を加味した補正を行うことができ、例えば(a)〜(c)は標準形状のドットに対して隣接ドットが標準形状である場合、つぶれ形状である場合、鋭い形状である場合において夫々対応した補正が可能となる。例えば、(a)の標準形状である場合補正は行わず、(b)のつぶれ形状である場合光量を下げる補正を行い、(c)の鋭い形状である場合光量を上げる補正を行い、隣接ドットの形状に対応した光量補正を行うことができる。
【0038】
また、(d)〜(f)はつぶれ形状のドットに対して隣接ドットが標準形状、つぶれ形状、鋭い形状である場合の夫々対応した補正を行う場合を示し、(g)〜(i)は鋭い形状のドットに対して隣接ドットが標準形状、つぶれ形状、鋭い形状である場合の夫々対応した補正を行う場合を示している。
【0039】
以上のように、本例によれば、隣接する発光素子の発光プロファイル形状の干渉を考慮した光量補正データを使用して発光素子の光量補正を行うことができ、ストリークスや濃度ムラの軽減を図ることができる。
(実施形態2)
【0040】
次に、本発明の実施形態2について説明する。
図8は、上記ヘッド制御部12の構成、及びビデオI/F制御部8の構成を具体的に説明する図である。尚、図8は前述の図1と基本的に同じであるが、ヘッド補正データ制御部31の構成が異なり、MTFデータ記憶部43に代えて焦点距離データ記憶部49で構成されている。したがって、図8において、図1と同じ構成については説明を省略する。以下、具体的に説明する。
【0041】
本例のヘッド補正データ制御部31は、補正RAM40、プロセス情報レジスタ41、補正データ演算部42、及びヘッド補正データ記憶部45を備え、補正RAM40は光量補正データ記憶部44、ヘッド補正データ記憶部45、及び焦点距離データ記憶部49で構成されている。焦点距離データ記憶部49には各発光素子に対応する焦点距離のデータが記憶されている。
【0042】
図9は上記焦点距離データ記憶部49に記憶される焦点距離データの測定例を示す。この測定も前述の図3に示す構成と同様であり、ヘッド駆動装置51、測定装置52、演算装置53、制御装置54、及び印字ヘッド17で構成され、焦点距離データ出力60を得る。すなわち、ヘッド駆動装置51は制御装置54の指示によって印字ヘッド17を駆動し、印字ヘッド17を所定位置に設定し、印字ヘッド17内のLED素子を発光する。前述と同様、図10(a)は、例えば制御装置54からヘッド駆動装置51への入力信号を示し、ヘッド駆動装置51はこの入力信号に従ってLED素子は駆動する。また、図10(b)は上記入力信号に基づくLED素子の発光の有無を示す。
【0043】
測定装置52は、例えばCCD素子で構成され、上記LED素子からの発光を受光し、光強度を測定する。具体的には、測定装置52は制御装置54からの指示に従って、印字ヘッド17との焦点距離の設定値から前後にプラス方向及びマイナス方向に移動させ、光強度が最大となる焦点距離データを発光素子毎に測定する。図4(c)〜(e)は、焦点距離が2.110mm(MTF:55)、2.114mm(MTF:61)、2.118mm(MTF:58)の各場合の例を示す。尚、同図(c)〜(e)に示すImaxは光強度の最大値を示し、Iminは光強度の最小値を示す。
【0044】
また、上記演算処理によって取得した各発光素子の焦点距離のデータは、焦点距離データ記憶部49に記憶される。尚、焦点距離データ記憶部49に記憶される焦点距離データの一例を図12(a)に示す。
【0045】
以下、本例の処理動作を説明する。
図11は、本例の処理動作を説明するフローチャートである。前述の実施形態1と同様、先ずプリンタ装置1の電源をオンすると、印字ヘッド17のヘッド情報ROM47より光補正データが読み込まれ、光量補正データ記憶部44に書き込まれる(ステップ(以下、STで示す)1)。
【0046】
次に、補正データ演算部42は、上記光量補正データと焦点距離データ記憶部49に記憶された焦点距離データのデータ、及びプロセス情報レジスタ41に記憶されたプロセス情報に基づき演算処理を行う(ST2)。具体的には、同図に示すI及びIIの演算処理を行う。
【0047】
先ず、焦点距離データ(FCDi)の生成処理を行う(同図に示すI)。この処理は、焦点距離補正レジスタに書き込まれた補正対象の焦点距離の閾値をYとすると、
a.ト゛ットNo.nの焦点距離がY以内の場合は補正しない。すなわち、
-Y≦FCDi≧Yの場合、
MTFデータ焦点補正データ(FMDi)=0
b.一方、ト゛ットNo.nの焦点距離がYを越えた場合、下記の演算式に基づき補正値を生成する。すなわち、
-Y>FCDiまたはY<FCDiの場合、
ドットNo.nの焦点補正データ(FMDi)は
[焦点距離データi] − [ 焦点距離データのmドット移動平均 ] × 係数
であり、焦点補正データ(FMDi)は、
j=m-1
FMDi=(FCDi−1/mΣ(FCDi-j)) × K
j=0
を取得する。尚、図12(b)は焦点距離データのmドット移動平均を示し、同図(c)は(焦点距離データi)−(焦点距離データのmドット移動平均)の計算結果の一例を示す。また、同図(d)は上記例における焦点補正データ(FMDi)の一例を示す。
【0048】
次に、上記焦点補正データ(FMDi)を使用してヘッド補正データを生成する(同図に示すII)すなわち、
ヘッド補正データ(HDi)=焦点補正データ(FMDi)+光量補正データ(Li)
【0049】
次に、上記演算結果であるヘッド補正データ(HDi)は、ヘッド補正データ記憶部45に送信され補正データの書き換え処理が行われる(ST3)。そして、新たなへッド補正データはCPUI/F部33の指示に従って、順次印字ヘッド17に転送され(S4)、印字ヘッド17に形成されたLED素子の光量補正に使用される。
【0050】
以上のように、本例によれば、印字ヘッド17の各ドットのピントデータから特徴的な箇所を抽出し、光量補正値を調整することにより、ストリークスや濃度ムラの軽減を図ることができる。
(実施形態3)
【0051】
次に、本発明の実施形態3について説明する。
本例は実施形態1の処理と実施形態2の処理を組み合わせた処理である。以下、具体的に説明する。
【0052】
図13は、本例の処理を説明するフローチャートである。前述の実施形態1及び2と同様、先ず印刷装置1の電源をオンすると、印字ヘッド17のヘッド情報ROM47より光補正データを読み込み、光量補正データ記憶部44に書き込む(ステップ(以下、STPで示す)1)。
【0053】
次に、補正データ演算部42はMTFデータ記憶部43、及びプロセス情報レジスタ41に記憶されたプロセス情報に基づき演算処理を行う(STP2)。具体的には、以下の演算処理を行う。
【0054】
先ず、MTFデータ記憶部43に予め記憶されたMTFデータの平均値を求める(同図に示すI)。すなわち、MTFの平均値(MTFave)をMTFデータ(MTFi)に基づいて計算する(但し、i = ドットNo.1〜n)。
MTFave = Σ(MTFi )/ n
【0055】
次に、各ドットのMTFデータとMTFデータ平均値(MTFave)との差にプロセス係数(K)を掛け算し、MTF補正データ(PMDi)を生成する(同図に示すII)。
PMDi =(MTFi−MTFave)× K
【0056】
次に、焦点距離データ(FCDi)の生成処理を行う(STP3、同図に示すIII)。この処理は、焦点距離補正レジスタに書き込まれた補正対象の焦点距離をYとすると、
a.ト゛ットNo.nの焦点距離がY以内の場合は補正しない。すなわち、
-Y≦FCDi≧Yの場合、
焦点補正データ(FMDi)=0
b.一方、ト゛ットNo.nの焦点距離がYを越えた場合、下記の演算式に基づき補正値を生成する。すなわち、
-Y>FCDiまたはY<FCDiの場合、
ドットNo.nの焦点補正データ(FMDi)は
[焦点距離データi] − [ 焦点距離データmドット移動平均 ] × 係数
であり、焦点補正データ(FMDi)は、
j=m-1
FMDi=(FCDi−1/mΣ(FCDi-j)) × K
j=0
を取得する。尚、FCDiはドットNo.nの焦点距離データであり、FMDiはドットNo.nの焦点補正データである。
【0057】
次に、上記焦点補正データ(FMDi)を使用してヘッド補正データを生成する(STP4、同図に示すIV)すなわち、
ヘッド補正データ(HDi)=焦点補正データ(FMDi)+光量補正データ(Li)
【0058】
次に、上記演算結果であるヘッド補正データ(HDi)は、ヘッド補正データ記憶部45に送信され補正データの書き換え処理が行われる(STP5)。そして、新たなへッド補正データはCPUI/F部33の指示に従って、順次印字ヘッド17に転送され(STP6)、印字ヘッド17に形成されたLED素子の光量補正に使用される。
【0059】
以上のように、本例によれば、隣接する発光素子の発光プロファイル形状の干渉を考慮した光量補正データを使用して発光素子の光量補正を行うことができ、更に印字ヘッド17の各ドットのピントデータから特徴的な箇所を抽出し、光量補正値を調整することにより、ストリークスや濃度ムラをより軽減することができる。
【符号の説明】
【0060】
1・・・印刷装置
2・・・I/Fコントローラ
3・・・エンジン制御部
4・・・受信制御部
5・・・ROM
6・・・フォント
7・・・表示制御部
8・・・ビデオI/F制御部
9・・・メモリ
10・・DMA制御部
11・・MPU
12・・ヘッド制御部
13・・モータ制御部
14・・MPU
15・・定着制御部
16・・高圧制御部
17・・印字ヘッド
18・・メインモータ
19・・各種負荷
20・・各種センサ
21・・定着サーミスタ
22・・定着ヒータ
23・・高圧部
24・・オペレーションパネル
25・・ホスト機器
30・・ヘッドI/F制御部
31・・ヘッド補正データ制御部
32・・基本タイミング生成部
33・・CPUI/F部
34・・ドットパターン生成部
35・・ヘッドデータ送信部
36・・ヘッド制御信号生成部
37・・ストローブ信号生成部
40・・補正RAM
41・・プロセス情報レジスタ
42・・補正データ演算部
43・・MTFデータ記憶部
44・・光量補正データ記憶部
45・・ヘッド補正データ記憶部
47・・ヘッド情報ROM
49・・焦点距離データ記憶部
51・・ヘッド駆動装置
52・・測定装置
53・・演算装置
54・・制御装置
55・・MTFデータ出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ヘッドによって印刷データに基づく印刷処理を記録媒体に行う印刷装置において、
前記印字ヘッドはライン状に複数の発光素子を配設して構成され、注目発光素子と該注目発光素子に隣接する発光素子との干渉受光状態の最大受光値と最小受光値の比率を計算する第1の計算手段と、
該第1の計算手段の計算結果に前記注目発光素子が有する固有の光量補正情報を加算して前記注目発光素子に対する光量補正データとする第2の計算手段と、
前記第2の計算手段の計算結果である光量補正データに従って前記印刷データに対する光量補正処理を行う光量補正手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
印字ヘッドによって印刷データに基づく印刷処理を記録媒体に行う印刷装置において、
前記印字ヘッドはライン状に複数の発光素子を配設して構成され、前記発光素子の焦点距離の情報を測定する測定手段と、
該測定結果に基づいて補正位置と補正量を計算する第1の計算手段と、
該第1の計算手段の計算結果に前記発光素子が有する固有の光量補正情報を加算して前記発光素子に対する光量補正データとする第2の計算手段と、
前記第2の計算手段の計算結果である光量補正データによって前記印刷データに対する光量補正処理を行う光量補正手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
印字ヘッドによって印刷データに基づく印刷処理を記録媒体に行う印刷装置において、
前記印字ヘッドはライン状に複数の発光素子を配設して構成され、注目発光素子と該注目発光素子に隣接する発光素子との干渉受光状態の最大受光値と最小受光値の比率を計算する第1の計算手段と、
前記注目発光素子の焦点距離の情報を測定する測定手段と、
該測定結果に基づいて補正位置と補正量を計算する第2の計算手段と、
該第1、第2の計算手段の計算結果に前記注目発光素子が有する固有の光量補正情報を加算して前記注目発光素子に対する光量補正データを計算する第3の計算手段と、
前記第3の計算手段の計算結果である光量補正データによって前記印刷データに対する光量補正処理を行う光量補正手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
前記光量補正データは、更にプロセス情報を含めて計算することを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の印刷装置。
【請求項5】
印字ヘッドによって印刷データに基づく印刷処理を記録媒体に行う印刷方法において、
前記印字ヘッドはライン状に複数の発光素子を配設して成り、注目発光素子と該注目発光素子に隣接する発光素子との干渉受光状態の最大受光値と最小受光値の比率を計算する第1の計算処理と、
該第1の計算処理の計算結果に前記注目発光素子が有する固有の光量補正情報を加算して前記注目発光素子に対する光量補正データを計算する第2の計算処理と、
前記第2の計算処理の計算結果である光量補正データによって前記印刷データに対する光量補正処理を行う光量補正処理と、
を行うことを特徴とする印刷方法。
【請求項6】
印字ヘッドによって印刷データに基づく印刷処理を記録媒体に行う印刷方法において、
前記印字ヘッドはライン状に複数の発光素子を配設して成り、前記発光素子の焦点距離の情報を測定する測定処理と、
該測定結果に基づいて補正位置と補正量を計算する第1の計算処理と、
該第1の計算手段の計算結果に前記発光素子が有する固有の光量補正情報を加算して前記発光素子に対する光量補正データを計算する第2の計算処理と、
前記第2の計算処理の計算結果である光量補正データによって前記印刷データに対する光量補正処理を行う光量補正処理と、
を行うことを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−46137(P2011−46137A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197576(P2009−197576)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】